サーマルプリンタ
【課題】蓄熱パラメータが補正不足であるか過補正であるかを一目で認識することができるサーマルプリンタを提供する。
【解決手段】サーマルプリンタは、サーマルヘッド2の加熱により複数の印刷原色Y、M、Cを組み合わせた混色を記録媒体Paの印刷領域Arに印刷するものであって、印刷要求に係る印刷内容を印刷領域Arに印刷し、印刷要求の一つであるテスト印刷要求に基づいて印刷領域Arにおける第1領域Ar1に検査対象である印刷原色Yを所定階調(目標印刷階調255)で印刷するとともに、第1領域Ar1の副走査方向に隣接する第2領域Ar2に複数の印刷原色Y、M、Cのうち検査対象である印刷原色Y以外の少なくとも1つの印刷原色M、Cと検査対象の印刷原色Mとの混色を、検査対象である印刷原色Yの階調(目標印刷階調128)が第1領域Ar1における階調(目標印刷階調255)よりも小さくなるように印刷する。
【解決手段】サーマルプリンタは、サーマルヘッド2の加熱により複数の印刷原色Y、M、Cを組み合わせた混色を記録媒体Paの印刷領域Arに印刷するものであって、印刷要求に係る印刷内容を印刷領域Arに印刷し、印刷要求の一つであるテスト印刷要求に基づいて印刷領域Arにおける第1領域Ar1に検査対象である印刷原色Yを所定階調(目標印刷階調255)で印刷するとともに、第1領域Ar1の副走査方向に隣接する第2領域Ar2に複数の印刷原色Y、M、Cのうち検査対象である印刷原色Y以外の少なくとも1つの印刷原色M、Cと検査対象の印刷原色Mとの混色を、検査対象である印刷原色Yの階調(目標印刷階調128)が第1領域Ar1における階調(目標印刷階調255)よりも小さくなるように印刷する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドの発熱抵抗体を加熱制御して記録媒体に印刷するサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンタは、サーマルヘッドの発熱抵抗体に対する加熱制御を通じて染料または顔料を紙などの記録媒体に転写させることにより、又は、熱を感知すると色が変化する感熱紙などの記録媒体をサーマルヘッドで加熱することにより、記録媒体に印刷する印刷装置である。
【0003】
サーマルプリンタは、サーマルヘッドの熱量すなわち印刷階調が大きいほど記録媒体への印刷濃度が濃くなり、印刷階調が小さいほど印刷濃度が薄くなることを利用して、発熱抵抗体へのパルス通電により印刷すべき印刷内容に応じて印刷階調を変化させ所望の印刷を行う。ところが、サーマルヘッドの熱が放熱しきらずサーマルヘッドに留まると、この蓄熱が印刷濃度、ひいては印刷品質に悪影響を与えることがある。
【0004】
この悪影響の一例である尾引現象について図10の(a)を用いて説明する。図10の(a)に示す印刷例は、印刷領域Arに所望の印刷内容Pr1を印刷する例であり、印刷内容Pr1を印刷する目的で発熱抵抗体に対して一秒間当たりパルス数F1で通電を行い、その後、印刷内容Pr1の印刷を終了する目的で発熱抵抗体に対するパルス通電をパルス数F1からパルス数F2へ低下させている。このパルス数F2は発熱抵抗体によって染料等が記録媒体Paに転写されない範囲で次の印刷のために発熱抵抗体を予熱状態に保つ値とされる。ところが、発熱抵抗体に対するパルス通電をパルス数F1からパルス数F2に低下させて印刷を終了しても、サーマルヘッドに残留している蓄熱によって染料等の転写が即時に終了せず引き続き尾引部位NGが印刷されてしまう現象(尾引現象)が生じることがある。
【0005】
そこで、従来のサーマルプリンタでは、例えば図10の(b)や特許文献1に示すようにパルス通電のパルス数を低下させるタイミングを早めて尾引現象の発生を低減する等、上記の悪影響対策のためにサーマルヘッドの蓄熱に基づいて発熱抵抗体に対する通電制御を補正する蓄熱補正制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−230206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の蓄熱補正制御は予め設定された蓄熱パラメータに基づいて通電パルス数を本来の値よりも低い側にシフトさせるものであり、サーマルヘッドの蓄熱具合はプリンタ機体毎に異なるので、プリンタの製造工程においてプリンタ機体毎に適切な蓄熱パラメータを設定する必要がある。特に複数の印刷原色の濃度を調整しつつ各原色を組み合わせて種々の色を表現するカラープリンタでは、蓄熱パラメータを印刷原色毎に的確に設定することが要求される。
【0008】
蓄熱パラメータの調整はテスト印刷の印刷結果を確認して行うが、従来のテスト印刷では印刷すべきテスト印刷内容として所定の印刷領域に検査対象である印刷原色を帯状に印刷するテストパターンが多く、かかるテストパターン印刷後即時に印刷を終了して補正により尾引が解消したかどうか確認していたのが通例である。
【0009】
即時に印刷を終了する場合、図11の(a)に示すように、印刷階調を目標印刷階調255から目標印刷階調0にするために前述したように通電パルス数をF1からこれよりも低いパルス数F2に落とす制御が行われる。このパルス数F2は発熱抵抗体によって印刷がされない範囲で次の印刷のために発熱抵抗体を予熱状態に保つ値とされ、そのパルス数F2は蓄熱パラメータを通じた補正により決定される。このようなテストパターン印刷機能を有するプリンタにおいて、蓄熱パラメータの調整が上記パルス数F2において適切とされるプリンタ機体を想定する。蓄熱パラメータが適切である場合には、テストパターン印刷後、副走査方向(用紙送り方向)に隣接する領域が白紙の状態になるだけで、尾引部位NGが印刷されてしまう尾引現象が発生することはない。
【0010】
一方、図11(b)に示すように、蓄熱パラメータが補正不足である場合には、テストパターンの印刷後に発熱抵抗体に対してパルス数F2(調整適切時)より大きいパルス数F0で通電されることになり、尾引部位NGが印刷されたり、その印刷濃度が濃くなったりするので、蓄熱パラメータが補正不足であることをテスト印刷の印刷結果を通じて認識することが可能であった。
【0011】
しかしながら、図11の(c)に示すように、蓄熱パラメータが過補正である場合には、テストパターンの印刷後に発熱抵抗体に対してパルス数F2(調整適切時)より小さいパルス数F3で通電されることになり、蓄熱パラメータの調整が適切である図11(a)の場合と同様、テストパターン印刷後、副走査方向に隣接する領域が単に白紙の状態になるだけで、印刷結果が同じになる。よって、蓄熱パラメータが過補正であることをテスト印刷の印刷結果を通じて認識できず、蓄熱パラメータの調整漏れが生じる場合があり、実際の印刷において過補正により次の印刷領域における印刷階調の低下を招くなど、印刷品質が低下するおそれがあった。
【0012】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、蓄熱パラメータが補正不足であるか過補正であるかを一目で認識することができ、蓄熱パラメータを調整する作業効率を向上させるとともに、蓄熱パラメータの調整漏れを低減し、ひいては印刷品質を向上させたサーマルプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0014】
すなわち、本発明の一構成に係るサーマルプリンタは、サーマルヘッドの加熱により複数の印刷原色を組み合わせた混色を記録媒体の印刷領域に印刷するサーマルプリンタであって、所定の印刷要求に基づいて前記サーマルヘッドの加熱を制御することにより当該印刷要求に係る印刷内容を前記印刷領域に印刷する制御部を具備してなり、前記制御部は印刷要求の一つであるテスト印刷要求に基づいて前記印刷領域における第1領域に検査対象である印刷原色を所定階調で印刷するとともに、前記第1領域の副走査方向に隣接する第2領域に前記複数の印刷原色のうち前記検査対象である印刷原色以外の少なくとも1つの印刷原色と当該検査対象の印刷原色との混色を、当該検査対象である印刷原色の階調が前記第1領域における階調よりも小さくなるように印刷することを特徴とする。
【0015】
従来では、検査対象である印刷原色が印刷される第1領域以外の第2領域には印刷しないものであるため、蓄熱パラメータの補正不足についてはテスト印刷の印刷結果を通じて認識可能であったものの、蓄熱パラメータが過補正である場合の印刷結果は蓄熱パラメータが適切である場合と同じであるため、蓄熱パラメータが過補正であることをテスト印刷の印刷結果を通じて認識できないものであったが、これに対して本発明では、第2領域において検査対象である印刷原色の階調を第1領域での階調より小さくしつつ他の印刷原色との混色を印刷し、蓄熱パラメータの状況に応じて第2領域の混色が変化するため、第2領域の色変化を通じて蓄熱パラメータが補正不足であるか過補正であるかを認識することができ、蓄熱パラメータの調整を適正化するとともに、当該蓄熱パラメータを調整する作業効率を向上させることができる。
【0016】
特に、蓄熱パラメータの状況を一目で容易に認識するためには、前記複数の印刷原色は、シアン、マゼンタ、イエローを含み、前記制御部は、前記第1領域において前記複数の印刷原色のうちいずれか1つの印刷原色を検査対象として印刷するとともに、前記第2領域において当該検査対象である印刷原色以外の二つの印刷原色と当該検査対象である印刷原色との混色を印刷することが好ましい。
【0017】
蓄熱パラメータの微量な調整漏れを的確に認識するためには、前記第2領域に印刷される混色は、前記複数の印刷原色を同じ階調で組み合わせた中間色であることが有効である。
【0018】
第2領域の色変化を人の目で認識しやすくし、蓄熱パラメータを調整する作業効率を一層向上させるためには、前記第2領域に印刷される混色は、シアン、マゼンタ、イエローを同じ階調で組み合わせたグレーであることが望ましい。
【0019】
複数の印刷原色に対する各蓄熱パラメータの状況を同時に認識するためには、前記複数の印刷原色は、シアン、マゼンタ、イエローを含み、前記制御部は、前記第1領域において前記複数の印刷原色のうちいずれか2つ以上の印刷原色を検査対象として主走査方向に並列的な帯をなすように印刷するとともに、前記第2領域において当該検査対象である印刷原色以外の2つの印刷原色と当該検査対象である印刷原色との混色を前記各帯の副走査方向に連続するように印刷することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以上説明した構成であるから、蓄熱パラメータの状況に応じて第2領域の混色が変化するため、第2領域の色変化を通じて蓄熱パラメータの状況を一目で容易に認識させ、蓄熱パラメータを調整する作業効率を向上させることができるとともに、従来においては現象上の認識ができずに調整漏れの原因となっていた過補正を認識可能にして、ひいては印刷品質を有効に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るサーマルプリンタがテスト印刷で印刷するテスト印刷内容を示す模式図。
【図2】同サーマルプリンタを示す機能ブロック図。
【図3】同サーマルプリンタの制御部をより詳細に示す構成図。
【図4】同サーマルプリンタに係る蓄熱パラメータが適切である場合のテスト印刷に関する模式図。
【図5】同サーマルプリンタに係る蓄熱パラメータが過補正である場合のテスト印刷に関する模式図。
【図6】同サーマルプリンタに係る蓄熱パラメータが補正不足である場合のテスト印刷に関する模式図。
【図7】他の実施形態に係るサーマルプリンタがテスト印刷で印刷するテスト印刷内容を示す模式図。
【図8】さらに他の実施形態に係るサーマルプリンタがテスト印刷で印刷するテスト印刷内容を示す模式図。
【図9】上記以外の実施形態に係るサーマルプリンタがテスト印刷で印刷するテスト印刷内容を示す模式図。
【図10】従来のサーマルプリンタで行う蓄熱補正制御に関する模式図。
【図11】従来のサーマルプリンタの蓄熱補正制御で用いる蓄熱パラメータに関する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係るサーマルプリンタを、図面を参照して説明する。
【0023】
サーマルプリンタは、図2に示すように、通電されることにより発熱する複数の発熱抵抗体3が1ラインを構成するように配列されたサーマルヘッド2と、紙などの記録媒体Paをサーマルヘッド2へ供給する用紙送り駆動部5と、インクリボンPbをサーマルヘッド2へ供給するインクリボン駆動部4と、制御部1とを有している。この実施形態においても、発熱抵抗体3の配列方向を主走査方向、これに直交する用紙送り方向を副走査方向と称する。
【0024】
発熱抵抗体3は、図1及び図2に示すように、記録媒体Paにおける印刷領域Arの1ラインを構成する画素毎に対応して設けられ、通電による発熱でインクリボンPbの顔料を記録媒体Paへ転写することにより、対応する画素の印刷を行うものであり、記録媒体Paを副走査方向に移動させて供給することにより、印刷領域Arの主走査方向の画素をライン単位で印刷しつつ、印刷領域Arの副走査方向の何れか一方向である印刷方向に沿って順に画素の印刷を行う。
【0025】
制御部1は、外部から入力された印刷要求信号(通常印刷要求やテスト印刷要求を含む)に基づいて発熱抵抗体3への通電、インクリボン駆動部4及び用紙送り駆動部5の駆動を制御することにより、記録媒体Paの印刷領域Arに所望の印刷内容を印刷するものである。制御部1は、発熱抵抗体3への通電を制御して印刷階調を目標の印刷階調にする通電制御部12と、インクリボン駆動部4の駆動を制御するインクリボン駆動制御部17と、用紙送り駆動部5の駆動を制御する用紙送り駆動制御部18と、印刷制御部11と、記憶部14とを有している。通電制御部12には、通電制御を補正する蓄熱補正制御部13が含まれる。
【0026】
印刷制御部11は、外部から入力された印刷要求(通常印刷要求、テスト印刷要求を含む)に基づいて、通電制御部12及び用紙送り駆動制御部14に対して印刷を行う上で必要な制御を行う。
【0027】
記憶部14は、テスト印刷要求がなされたときに印刷されるテスト印刷内容(テストパターン)15と、サーマルプリンタ機体毎に適切に調整されるべき蓄熱パラメータ16とを予め記憶している。記憶部14は、プリンタ外部からアクセス可能であり、蓄熱パラメータ16は適切に調整したものに書き換え可能に構成されている。
【0028】
蓄熱補正制御部13は、通電制御部12による発熱抵抗体3に対する通電制御を、記憶部14に予め記憶されている蓄熱パラメータ16に基づいて補正し、サーマルヘッド2の蓄熱に基づいた適切な印刷に資するものである。通電パルス数の決定には蓄熱パラメータが関与しており、蓄熱パラメータの補正は通電パルス数の変更をもたらす。
【0029】
なお、印刷制御部11は外部からのテスト印刷要求に係る印刷内容として記憶部14に予め記憶されているテスト印刷内容15を印刷しているが、テスト印刷要求とともに外部から受信するテスト印刷内容を印刷するように構成してもよい。
【0030】
以下に、上記のサーマルプリンタを実現する具体的な構成を説明する。
【0031】
図3に示すように、サーマルプリンタは、サーマルヘッド2の発熱抵抗体3と、インクリボン駆動部4と、用紙送り駆動部5と、これらに電気的に接続される制御部1とを備えている。
【0032】
制御部1は、CPU21と、揮発性メモリ22と、不揮発性メモリ23と、インクリボン駆動制御回路24と、通電制御回路25と、用紙送り駆動制御回路26と、通信インターフェイス27とを備え、これらがCPU21を中心に接続されている。CPU21は図示しない印刷制御処理ルーチンや蓄熱補正制御処理ルーチンを実行することにより印刷制御部11及び蓄熱補正制御部13を実現する。不揮発性メモリ23は、CPU21により実行される各プログラムやテスト印刷内容15や蓄熱パラメータ16やその他恒久的に用いるデータを記憶している。不揮発性メモリ23に記憶されるプログラムは、例えば図示しない印刷制御処理ルーチンが挙げられる。揮発性メモリ22はCPU21が実行するプログラムやプログラムを実行する際に用いられるデータを一時的に記憶する。インクリボン駆動制御回路24は、インクリボン駆動部4に接続されており、CPU21からの駆動指令に基づいて、インクリボン駆動部4の駆動を制御する。通電制御回路25は、サーマルヘッド2の発熱抵抗体3に接続されており、CPU21からの駆動指令に基づいて発熱抵抗体3に対して通電を行う。用紙送り駆動制御回路26は、用紙送り駆動部5に接続されており、CPU21からの駆動指令に基づいて、用紙送り駆動部5の駆動を制御する。通信インターフェイス27は、外部の情報処理装置に接続されており、外部からの印刷要求信号をCPU21に伝達する。
【0033】
次にサーマルプリンタがテスト印刷で記録媒体Paの印刷領域Arに印刷するテスト印刷内容15について図1を用いて説明する。
【0034】
本実施形態のサーマルプリンタは、イエロー、マゼンタ、シアンを含む複数の印刷原色を用いるカラー型プリンタであり、一の印刷原色を印刷した後に残りの印刷原色を順に重畳させ、印刷濃度を調整した各印刷原色の重畳により種々の色を表現する。
【0035】
テスト印刷においてサーマルプリンタは、図1に示すように、印刷領域Arの第1領域Ar1において複数の印刷原色Y、M、C(イエロー、マゼンタ、シアン)を検査対象として主走査方向に並列的な帯をなすように印刷する設定がなされている。具体的には、領域Ar1y(第1領域Ar1)に印刷原色Y(イエロー)を目標印刷階調255で印刷し、主走査方向に沿って領域Ar1yに隣接する領域Ar1m(第1領域Ar1)に印刷原色M(マゼンタ)を目標印刷階調255で印刷し、主走査方向に沿って領域Ar1mに隣接する領域Ar1c(第1領域Ar1)に印刷原色C(シアン)を目標印刷階調255で印刷する。
【0036】
第1領域Ar1に対して、さらにサーマルプリンタは、印刷領域Arにおける第1領域Ar1以外の第2領域Ar2に、印刷原色Y(イエロー)、印刷原色M(マゼンタ)、印刷原色C(シアン)を同じ階調(目標印刷階調128)に設定してこれらの重畳した中間色(グレー)を印刷する。第2領域Ar2は、副走査方向に沿って第1領域Ar1の印刷方向下流側に隣接(連続)する領域であり、第1領域Ar1と共に記録媒体Paの印刷領域Arに含まれる領域であって、実際の手順は第1領域Ar1の印刷原色Y(イエロー)に引き続いて第2領域Ar2の印刷原色Y(イエロー)を印刷し、次に第1領域Ar1の印刷原色M(マゼンタ)に引き続いて第2領域Ar2の印刷原色M(マゼンタ)を印刷し、更に第1領域Ar1の印刷原色C(シアン)に引き続いて第2領域Ar2の印刷原色C(シアン)を印刷する。
【0037】
以下、第1領域Ar1において印刷原色Y(イエロー)が印刷される部分および当該部分と副走査方向に隣接する第2領域Ar2に注目して説明する。他の二つの印刷原色M、Cについては同様であるので説明を省略する。
【0038】
すなわち、サーマルプリンタは、第1領域Ar1に検査対象である印刷原色Y(イエロー)を所定の目標印刷階調255で印刷するとともに、第2領域に印刷原色Y(イエロー)と検査対象である印刷原色Y以外の二つの印刷原色M(マゼンタ)及び印刷原色C(シアン)との混色(グレー)を、第2領域Ar2における検査対象の印刷原色Y(イエロー)の目標印刷階調128が第1領域Ar1における目標印刷階調255より小さくなるように印刷する。一方、上記印刷原色Y(イエロー)が印刷される領域に重ねて印刷原色M(マゼンダ)、印刷原色C(シアン)が印刷される際の目標印刷階調は、第1領域Ar1において0、第2領域Ar2において各々128である。手順は上に述べた通りである。
【0039】
以下、上記のテスト印刷内容15の印刷結果について蓄熱パラメータ16の調整が適切である場合と、蓄熱パラメータ16が過補正、補正不足である場合とを比較して説明する。
【0040】
まず、蓄熱パラメータ16の調整が適切である場合について説明する。記録媒体Paへの印刷結果は、図4の(a)に示す印刷原色M(マゼンタ)及び印刷原色C(シアン)の印刷時に印加されるパルス数に対応した印刷階調と、図4の(b)に示す印刷原色Y(イエロー)の印刷時に印加されるパルス数に対応した印刷階調との重ね合わせにより、図4の(c)に示すように各印刷原色が印刷される。具体的には、第2領域Ar2には各印刷原色Y、M、Cが等しく目標印刷階調128(したがって同じパルス数F4)に設定され、同じ濃度30で重畳された中間色のグレーが印刷される。ここで、第2領域Ar2において印刷原色Y(イエロー)、印刷原色M(マゼンタ)及び印刷原色C(シアン)を印刷する際に上記パルス数F4は適正な蓄熱パラメータに基づいた値であると仮定する。
【0041】
次に、蓄熱パラメータ16が過補正である場合について説明する。記録媒体Paへの印刷結果は、図5の(a)に示す印刷原色M(マゼンタ)及び印刷原色C(シアン)の印刷時に印加されるパルス数F4に対応した印刷階調と、図5の(b)に示す印刷原色Y(イエロー)の印刷時に印加されるパルス数F5に対応した印刷階調との重ね合わせにより、図5の(c)に示すように各印刷原色の濃度が印刷される。蓄熱パラメータ16が過補正であると、第2領域Ar2での印刷原色Y(イエロー)の印刷時に印加されるパルス数F5は、蓄熱パラメータ16が適正に調整されているときのパルス数F4よりも小さくなる。すると、印刷原色Y(イエロー)の濃度が、蓄熱パラメータ16が適切に調整されている場合の濃度30よりも薄い濃度20になり、他の印刷原色M(マゼンタ)及び印刷原色C(シアン)の濃度30よりも薄くなり、第2領域Ar2が印刷原色Y(イエロー)の反対色であるブルーの強いグレーとなる。
【0042】
一方、蓄熱パラメータ16が補正不足である場合について説明する。記録媒体Paへの印刷結果は、図6の(a)に示す印刷原色M(マゼンタ)及び印刷原色C(シアン)の印刷時に印加されるパルス数に対応した印刷階調と、図6の(b)に示す印刷原色Y(イエロー)の印刷時に印加されるパルス数F6に対応した印刷階調との重ね合わせにより、図6の(c)に示すように各印刷原色の濃度が印刷される。蓄熱パラメータ16が補正不足であると、第2領域Ar2での印刷原色Y(イエロー)の印刷時に印加されるパルス数F6は、蓄熱パラメータ16が適正に調整されているときのパルス数F4よりも大きくなる。すると、印刷原色Y(イエロー)の濃度が、蓄熱パラメータ16が適切に調整されている場合の濃度30よりも濃い濃度40になり、他の印刷原色M(マゼンタ)及び印刷原色C(シアン)の濃度30よりも濃くなり、第2領域Ar2が印刷原色Y(イエロー)の強いグレーとなる。
【0043】
このように、蓄熱パラメータ16が過補正である場合に検査対象の印刷原色Y(イエロー)の濃度20が他の印刷原色M、C(マゼンタ、シアン)の濃度30よりも薄く印刷され、第2領域Ar2の混色が印刷原色Y(イエロー)の反対色であるブルーの強いグレーとなる。よって、第2領域Ar2の混色における検査対象である印刷原色Yの反対色の濃度を通じて蓄熱パラメータ16が過補正であることを一目で容易に認識することが可能となる。
【0044】
また、蓄熱パラメータ16が補正不足である場合に検査対象の印刷原色Y(イエロー)の濃度40が他の印刷原色M、C(マゼンタ、シアン)の濃度30よりも濃く印刷され、第2領域Ar2の混色が検査対象である印刷原色Y(イエロー)の強いグレーとなる。よって、第2領域Ar2の混色における検査対象の印刷原色Yの濃度を通じて蓄熱パラメータ16が補正不足であることを一目で容易に認識することが可能となる。
【0045】
以上のように、本実施形態に係るサーマルプリンタは、サーマルヘッド2の加熱により複数の印刷原色Y、M、Cを組み合わせた混色を記録媒体Paの印刷領域Arに印刷するサーマルプリンタであって、所定の印刷要求に基づいてサーマルヘッド2の加熱を制御することにより印刷要求に係る印刷内容を印刷領域Arに印刷する制御部1を具備してなり、制御部1は印刷要求の一つであるテスト印刷要求に基づいて印刷領域Arにおける第1領域Ar1に検査対象である印刷原色Yを所定階調(目標印刷階調255)で印刷するとともに、第1領域Ar1の副走査方向に隣接する第2領域Ar2に複数の印刷原色Y、M、Cのうち検査対象である印刷原色Y以外の少なくとも1つの印刷原色M、Cと検査対象の印刷原色Yとの混色を、検査対象である印刷原色Yの階調(目標印刷階調128)が第1領域Ar1における階調(目標印刷階調255)よりも小さくなるように印刷することを特徴とする。
【0046】
従来では、検査対象である印刷原色Yが印刷される第1領域Ar1以外の第2領域Ar2には印刷しないものであるため、蓄熱パラメータ16の補正不足についてはテスト印刷の印刷結果を通じて認識可能であったものの、蓄熱パラメータ16が過補正である場合の印刷結果は蓄熱パラメータ16が適切である場合と同じであるため、蓄熱パラメータ16が過補正であることをテスト印刷の印刷結果を通じて認識できないものであったが、これに対して本実施形態では、第2領域Ar2において検査対象である印刷原色Yの階調(目標印刷階調128)を第1領域Ar1での階調(目標印刷階調255)より小さくしつつ他の印刷原色M、Cとの混色を印刷し、蓄熱パラメータ16の状況に応じて第2領域Ar2の混色が変化するため、第2領域Ar2の色変化を通じて蓄熱パラメータ16が補正不足であるか過補正であるかを認識することができ、蓄熱パラメータ16の調整を適正化するとともに、当該蓄熱パラメータを調整する作業効率を向上させることができる。
【0047】
特に、複数の印刷原色Y、M、Cは、シアン、マゼンタ、イエローを含み、制御部1が第1領域Ar1において複数の印刷原色Y、M、Cのうちいずれか1つの印刷原色Yを検査対象として印刷するとともに、第2領域Ar2において検査対象である印刷原色Y以外の二つの印刷原色M、Cと検査対象である印刷原色Yとの混色を印刷するので、蓄熱パラメータ16が補正不足である場合に第2領域Ar2が検査対象である印刷原色Yの強い混色になり、蓄熱パラメータ16が過補正である場合に検査対象である印刷原色Yの反対色(ブルー)の強い混色になり、第2領域Ar2の混色に応じて蓄熱パラメータ16の状況を一目で容易に認識することができる。
【0048】
さらに、第2領域Ar2に印刷される混色が複数の印刷原色Y、M、Cを同じ階調で組み合わせた中間色であるので、蓄熱パラメータ16が少しでも補正不足または過補正であると中間色に他の色が加味され、蓄熱パラメータ16の微量な調整漏れを的確に認識することができる。
【0049】
さらに、第2領域Ar2に印刷される混色がシアン、マゼンタ、イエローを同じ階調で組み合わせたグレーであるので、グレーを基準とした第2領域Ar2の色変化は人の目で認識しやすく、蓄熱パラメータを調整する作業効率を一層向上させることができる。
【0050】
さらに、複数の印刷原色Y、M、Cは、シアン、マゼンタ、イエローを含み、制御部1が第1領域Ar1において複数の印刷原色Y、M、Cのうちいずれか2つ以上の印刷原色Y、M、Cを検査対象として主走査方向に並列的な帯をなすように印刷するとともに、第2領域Ar2において検査対象である印刷原色Y以外の2つの印刷原色M、Cと検査対象である印刷原色Yとの混色を各帯の副走査方向に連続するように印刷するので、複数の印刷原色Y、M、Cに対する各蓄熱パラメータ16の状況を同時に認識し、蓄熱パラメータ16を調整する作業効率をより的確に向上させることができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0052】
例えば、本実施形態では印刷すべきテスト印刷内容を、複数の印刷原色Y、M、C(イエロー、マゼンタ、シアン)を検査対象として主走査方向に並列な帯をなすように印刷しているが、図7に示すように、単一の印刷原色Y(イエロー)を検査対象として第1領域Ar1に帯を成すようにしてもよい。
【0053】
さらに、本実施形態では第1領域Ar1の印刷方向下流側に第2領域Ar2が隣接しているが、図8に示すように、副走査方向における第1領域Ar1の上流側に第2領域Ar3が隣接していてもよい。ただし、サーマルヘッド2の蓄熱による印刷結果への影響は印刷方向の下流側に至るほど大きくなるので、第2領域が第1領域の印刷方向下流側に配置されている方が効果的である。
【0054】
さらに本実施形態では、検査対象である印刷原色Yを第1領域Ar1に印刷し、第2領域に他の二つの印刷原色M、Cとの混色を印刷しているが、図9に示すように、第2領域Ar2に他の印刷原色のうち少なくとも一つの印刷原色との混色を印刷してもよい。
【0055】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1………制御部
2………サーマルヘッド
3………発熱抵抗体
4………インクリボン駆動部
5………用紙送り駆動部
Y、M、C…印刷原色
Pa……記録媒体
Ar……印刷領域
Ar1…第1領域
Ar2…第2領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドの発熱抵抗体を加熱制御して記録媒体に印刷するサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンタは、サーマルヘッドの発熱抵抗体に対する加熱制御を通じて染料または顔料を紙などの記録媒体に転写させることにより、又は、熱を感知すると色が変化する感熱紙などの記録媒体をサーマルヘッドで加熱することにより、記録媒体に印刷する印刷装置である。
【0003】
サーマルプリンタは、サーマルヘッドの熱量すなわち印刷階調が大きいほど記録媒体への印刷濃度が濃くなり、印刷階調が小さいほど印刷濃度が薄くなることを利用して、発熱抵抗体へのパルス通電により印刷すべき印刷内容に応じて印刷階調を変化させ所望の印刷を行う。ところが、サーマルヘッドの熱が放熱しきらずサーマルヘッドに留まると、この蓄熱が印刷濃度、ひいては印刷品質に悪影響を与えることがある。
【0004】
この悪影響の一例である尾引現象について図10の(a)を用いて説明する。図10の(a)に示す印刷例は、印刷領域Arに所望の印刷内容Pr1を印刷する例であり、印刷内容Pr1を印刷する目的で発熱抵抗体に対して一秒間当たりパルス数F1で通電を行い、その後、印刷内容Pr1の印刷を終了する目的で発熱抵抗体に対するパルス通電をパルス数F1からパルス数F2へ低下させている。このパルス数F2は発熱抵抗体によって染料等が記録媒体Paに転写されない範囲で次の印刷のために発熱抵抗体を予熱状態に保つ値とされる。ところが、発熱抵抗体に対するパルス通電をパルス数F1からパルス数F2に低下させて印刷を終了しても、サーマルヘッドに残留している蓄熱によって染料等の転写が即時に終了せず引き続き尾引部位NGが印刷されてしまう現象(尾引現象)が生じることがある。
【0005】
そこで、従来のサーマルプリンタでは、例えば図10の(b)や特許文献1に示すようにパルス通電のパルス数を低下させるタイミングを早めて尾引現象の発生を低減する等、上記の悪影響対策のためにサーマルヘッドの蓄熱に基づいて発熱抵抗体に対する通電制御を補正する蓄熱補正制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−230206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の蓄熱補正制御は予め設定された蓄熱パラメータに基づいて通電パルス数を本来の値よりも低い側にシフトさせるものであり、サーマルヘッドの蓄熱具合はプリンタ機体毎に異なるので、プリンタの製造工程においてプリンタ機体毎に適切な蓄熱パラメータを設定する必要がある。特に複数の印刷原色の濃度を調整しつつ各原色を組み合わせて種々の色を表現するカラープリンタでは、蓄熱パラメータを印刷原色毎に的確に設定することが要求される。
【0008】
蓄熱パラメータの調整はテスト印刷の印刷結果を確認して行うが、従来のテスト印刷では印刷すべきテスト印刷内容として所定の印刷領域に検査対象である印刷原色を帯状に印刷するテストパターンが多く、かかるテストパターン印刷後即時に印刷を終了して補正により尾引が解消したかどうか確認していたのが通例である。
【0009】
即時に印刷を終了する場合、図11の(a)に示すように、印刷階調を目標印刷階調255から目標印刷階調0にするために前述したように通電パルス数をF1からこれよりも低いパルス数F2に落とす制御が行われる。このパルス数F2は発熱抵抗体によって印刷がされない範囲で次の印刷のために発熱抵抗体を予熱状態に保つ値とされ、そのパルス数F2は蓄熱パラメータを通じた補正により決定される。このようなテストパターン印刷機能を有するプリンタにおいて、蓄熱パラメータの調整が上記パルス数F2において適切とされるプリンタ機体を想定する。蓄熱パラメータが適切である場合には、テストパターン印刷後、副走査方向(用紙送り方向)に隣接する領域が白紙の状態になるだけで、尾引部位NGが印刷されてしまう尾引現象が発生することはない。
【0010】
一方、図11(b)に示すように、蓄熱パラメータが補正不足である場合には、テストパターンの印刷後に発熱抵抗体に対してパルス数F2(調整適切時)より大きいパルス数F0で通電されることになり、尾引部位NGが印刷されたり、その印刷濃度が濃くなったりするので、蓄熱パラメータが補正不足であることをテスト印刷の印刷結果を通じて認識することが可能であった。
【0011】
しかしながら、図11の(c)に示すように、蓄熱パラメータが過補正である場合には、テストパターンの印刷後に発熱抵抗体に対してパルス数F2(調整適切時)より小さいパルス数F3で通電されることになり、蓄熱パラメータの調整が適切である図11(a)の場合と同様、テストパターン印刷後、副走査方向に隣接する領域が単に白紙の状態になるだけで、印刷結果が同じになる。よって、蓄熱パラメータが過補正であることをテスト印刷の印刷結果を通じて認識できず、蓄熱パラメータの調整漏れが生じる場合があり、実際の印刷において過補正により次の印刷領域における印刷階調の低下を招くなど、印刷品質が低下するおそれがあった。
【0012】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、蓄熱パラメータが補正不足であるか過補正であるかを一目で認識することができ、蓄熱パラメータを調整する作業効率を向上させるとともに、蓄熱パラメータの調整漏れを低減し、ひいては印刷品質を向上させたサーマルプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0014】
すなわち、本発明の一構成に係るサーマルプリンタは、サーマルヘッドの加熱により複数の印刷原色を組み合わせた混色を記録媒体の印刷領域に印刷するサーマルプリンタであって、所定の印刷要求に基づいて前記サーマルヘッドの加熱を制御することにより当該印刷要求に係る印刷内容を前記印刷領域に印刷する制御部を具備してなり、前記制御部は印刷要求の一つであるテスト印刷要求に基づいて前記印刷領域における第1領域に検査対象である印刷原色を所定階調で印刷するとともに、前記第1領域の副走査方向に隣接する第2領域に前記複数の印刷原色のうち前記検査対象である印刷原色以外の少なくとも1つの印刷原色と当該検査対象の印刷原色との混色を、当該検査対象である印刷原色の階調が前記第1領域における階調よりも小さくなるように印刷することを特徴とする。
【0015】
従来では、検査対象である印刷原色が印刷される第1領域以外の第2領域には印刷しないものであるため、蓄熱パラメータの補正不足についてはテスト印刷の印刷結果を通じて認識可能であったものの、蓄熱パラメータが過補正である場合の印刷結果は蓄熱パラメータが適切である場合と同じであるため、蓄熱パラメータが過補正であることをテスト印刷の印刷結果を通じて認識できないものであったが、これに対して本発明では、第2領域において検査対象である印刷原色の階調を第1領域での階調より小さくしつつ他の印刷原色との混色を印刷し、蓄熱パラメータの状況に応じて第2領域の混色が変化するため、第2領域の色変化を通じて蓄熱パラメータが補正不足であるか過補正であるかを認識することができ、蓄熱パラメータの調整を適正化するとともに、当該蓄熱パラメータを調整する作業効率を向上させることができる。
【0016】
特に、蓄熱パラメータの状況を一目で容易に認識するためには、前記複数の印刷原色は、シアン、マゼンタ、イエローを含み、前記制御部は、前記第1領域において前記複数の印刷原色のうちいずれか1つの印刷原色を検査対象として印刷するとともに、前記第2領域において当該検査対象である印刷原色以外の二つの印刷原色と当該検査対象である印刷原色との混色を印刷することが好ましい。
【0017】
蓄熱パラメータの微量な調整漏れを的確に認識するためには、前記第2領域に印刷される混色は、前記複数の印刷原色を同じ階調で組み合わせた中間色であることが有効である。
【0018】
第2領域の色変化を人の目で認識しやすくし、蓄熱パラメータを調整する作業効率を一層向上させるためには、前記第2領域に印刷される混色は、シアン、マゼンタ、イエローを同じ階調で組み合わせたグレーであることが望ましい。
【0019】
複数の印刷原色に対する各蓄熱パラメータの状況を同時に認識するためには、前記複数の印刷原色は、シアン、マゼンタ、イエローを含み、前記制御部は、前記第1領域において前記複数の印刷原色のうちいずれか2つ以上の印刷原色を検査対象として主走査方向に並列的な帯をなすように印刷するとともに、前記第2領域において当該検査対象である印刷原色以外の2つの印刷原色と当該検査対象である印刷原色との混色を前記各帯の副走査方向に連続するように印刷することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以上説明した構成であるから、蓄熱パラメータの状況に応じて第2領域の混色が変化するため、第2領域の色変化を通じて蓄熱パラメータの状況を一目で容易に認識させ、蓄熱パラメータを調整する作業効率を向上させることができるとともに、従来においては現象上の認識ができずに調整漏れの原因となっていた過補正を認識可能にして、ひいては印刷品質を有効に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るサーマルプリンタがテスト印刷で印刷するテスト印刷内容を示す模式図。
【図2】同サーマルプリンタを示す機能ブロック図。
【図3】同サーマルプリンタの制御部をより詳細に示す構成図。
【図4】同サーマルプリンタに係る蓄熱パラメータが適切である場合のテスト印刷に関する模式図。
【図5】同サーマルプリンタに係る蓄熱パラメータが過補正である場合のテスト印刷に関する模式図。
【図6】同サーマルプリンタに係る蓄熱パラメータが補正不足である場合のテスト印刷に関する模式図。
【図7】他の実施形態に係るサーマルプリンタがテスト印刷で印刷するテスト印刷内容を示す模式図。
【図8】さらに他の実施形態に係るサーマルプリンタがテスト印刷で印刷するテスト印刷内容を示す模式図。
【図9】上記以外の実施形態に係るサーマルプリンタがテスト印刷で印刷するテスト印刷内容を示す模式図。
【図10】従来のサーマルプリンタで行う蓄熱補正制御に関する模式図。
【図11】従来のサーマルプリンタの蓄熱補正制御で用いる蓄熱パラメータに関する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係るサーマルプリンタを、図面を参照して説明する。
【0023】
サーマルプリンタは、図2に示すように、通電されることにより発熱する複数の発熱抵抗体3が1ラインを構成するように配列されたサーマルヘッド2と、紙などの記録媒体Paをサーマルヘッド2へ供給する用紙送り駆動部5と、インクリボンPbをサーマルヘッド2へ供給するインクリボン駆動部4と、制御部1とを有している。この実施形態においても、発熱抵抗体3の配列方向を主走査方向、これに直交する用紙送り方向を副走査方向と称する。
【0024】
発熱抵抗体3は、図1及び図2に示すように、記録媒体Paにおける印刷領域Arの1ラインを構成する画素毎に対応して設けられ、通電による発熱でインクリボンPbの顔料を記録媒体Paへ転写することにより、対応する画素の印刷を行うものであり、記録媒体Paを副走査方向に移動させて供給することにより、印刷領域Arの主走査方向の画素をライン単位で印刷しつつ、印刷領域Arの副走査方向の何れか一方向である印刷方向に沿って順に画素の印刷を行う。
【0025】
制御部1は、外部から入力された印刷要求信号(通常印刷要求やテスト印刷要求を含む)に基づいて発熱抵抗体3への通電、インクリボン駆動部4及び用紙送り駆動部5の駆動を制御することにより、記録媒体Paの印刷領域Arに所望の印刷内容を印刷するものである。制御部1は、発熱抵抗体3への通電を制御して印刷階調を目標の印刷階調にする通電制御部12と、インクリボン駆動部4の駆動を制御するインクリボン駆動制御部17と、用紙送り駆動部5の駆動を制御する用紙送り駆動制御部18と、印刷制御部11と、記憶部14とを有している。通電制御部12には、通電制御を補正する蓄熱補正制御部13が含まれる。
【0026】
印刷制御部11は、外部から入力された印刷要求(通常印刷要求、テスト印刷要求を含む)に基づいて、通電制御部12及び用紙送り駆動制御部14に対して印刷を行う上で必要な制御を行う。
【0027】
記憶部14は、テスト印刷要求がなされたときに印刷されるテスト印刷内容(テストパターン)15と、サーマルプリンタ機体毎に適切に調整されるべき蓄熱パラメータ16とを予め記憶している。記憶部14は、プリンタ外部からアクセス可能であり、蓄熱パラメータ16は適切に調整したものに書き換え可能に構成されている。
【0028】
蓄熱補正制御部13は、通電制御部12による発熱抵抗体3に対する通電制御を、記憶部14に予め記憶されている蓄熱パラメータ16に基づいて補正し、サーマルヘッド2の蓄熱に基づいた適切な印刷に資するものである。通電パルス数の決定には蓄熱パラメータが関与しており、蓄熱パラメータの補正は通電パルス数の変更をもたらす。
【0029】
なお、印刷制御部11は外部からのテスト印刷要求に係る印刷内容として記憶部14に予め記憶されているテスト印刷内容15を印刷しているが、テスト印刷要求とともに外部から受信するテスト印刷内容を印刷するように構成してもよい。
【0030】
以下に、上記のサーマルプリンタを実現する具体的な構成を説明する。
【0031】
図3に示すように、サーマルプリンタは、サーマルヘッド2の発熱抵抗体3と、インクリボン駆動部4と、用紙送り駆動部5と、これらに電気的に接続される制御部1とを備えている。
【0032】
制御部1は、CPU21と、揮発性メモリ22と、不揮発性メモリ23と、インクリボン駆動制御回路24と、通電制御回路25と、用紙送り駆動制御回路26と、通信インターフェイス27とを備え、これらがCPU21を中心に接続されている。CPU21は図示しない印刷制御処理ルーチンや蓄熱補正制御処理ルーチンを実行することにより印刷制御部11及び蓄熱補正制御部13を実現する。不揮発性メモリ23は、CPU21により実行される各プログラムやテスト印刷内容15や蓄熱パラメータ16やその他恒久的に用いるデータを記憶している。不揮発性メモリ23に記憶されるプログラムは、例えば図示しない印刷制御処理ルーチンが挙げられる。揮発性メモリ22はCPU21が実行するプログラムやプログラムを実行する際に用いられるデータを一時的に記憶する。インクリボン駆動制御回路24は、インクリボン駆動部4に接続されており、CPU21からの駆動指令に基づいて、インクリボン駆動部4の駆動を制御する。通電制御回路25は、サーマルヘッド2の発熱抵抗体3に接続されており、CPU21からの駆動指令に基づいて発熱抵抗体3に対して通電を行う。用紙送り駆動制御回路26は、用紙送り駆動部5に接続されており、CPU21からの駆動指令に基づいて、用紙送り駆動部5の駆動を制御する。通信インターフェイス27は、外部の情報処理装置に接続されており、外部からの印刷要求信号をCPU21に伝達する。
【0033】
次にサーマルプリンタがテスト印刷で記録媒体Paの印刷領域Arに印刷するテスト印刷内容15について図1を用いて説明する。
【0034】
本実施形態のサーマルプリンタは、イエロー、マゼンタ、シアンを含む複数の印刷原色を用いるカラー型プリンタであり、一の印刷原色を印刷した後に残りの印刷原色を順に重畳させ、印刷濃度を調整した各印刷原色の重畳により種々の色を表現する。
【0035】
テスト印刷においてサーマルプリンタは、図1に示すように、印刷領域Arの第1領域Ar1において複数の印刷原色Y、M、C(イエロー、マゼンタ、シアン)を検査対象として主走査方向に並列的な帯をなすように印刷する設定がなされている。具体的には、領域Ar1y(第1領域Ar1)に印刷原色Y(イエロー)を目標印刷階調255で印刷し、主走査方向に沿って領域Ar1yに隣接する領域Ar1m(第1領域Ar1)に印刷原色M(マゼンタ)を目標印刷階調255で印刷し、主走査方向に沿って領域Ar1mに隣接する領域Ar1c(第1領域Ar1)に印刷原色C(シアン)を目標印刷階調255で印刷する。
【0036】
第1領域Ar1に対して、さらにサーマルプリンタは、印刷領域Arにおける第1領域Ar1以外の第2領域Ar2に、印刷原色Y(イエロー)、印刷原色M(マゼンタ)、印刷原色C(シアン)を同じ階調(目標印刷階調128)に設定してこれらの重畳した中間色(グレー)を印刷する。第2領域Ar2は、副走査方向に沿って第1領域Ar1の印刷方向下流側に隣接(連続)する領域であり、第1領域Ar1と共に記録媒体Paの印刷領域Arに含まれる領域であって、実際の手順は第1領域Ar1の印刷原色Y(イエロー)に引き続いて第2領域Ar2の印刷原色Y(イエロー)を印刷し、次に第1領域Ar1の印刷原色M(マゼンタ)に引き続いて第2領域Ar2の印刷原色M(マゼンタ)を印刷し、更に第1領域Ar1の印刷原色C(シアン)に引き続いて第2領域Ar2の印刷原色C(シアン)を印刷する。
【0037】
以下、第1領域Ar1において印刷原色Y(イエロー)が印刷される部分および当該部分と副走査方向に隣接する第2領域Ar2に注目して説明する。他の二つの印刷原色M、Cについては同様であるので説明を省略する。
【0038】
すなわち、サーマルプリンタは、第1領域Ar1に検査対象である印刷原色Y(イエロー)を所定の目標印刷階調255で印刷するとともに、第2領域に印刷原色Y(イエロー)と検査対象である印刷原色Y以外の二つの印刷原色M(マゼンタ)及び印刷原色C(シアン)との混色(グレー)を、第2領域Ar2における検査対象の印刷原色Y(イエロー)の目標印刷階調128が第1領域Ar1における目標印刷階調255より小さくなるように印刷する。一方、上記印刷原色Y(イエロー)が印刷される領域に重ねて印刷原色M(マゼンダ)、印刷原色C(シアン)が印刷される際の目標印刷階調は、第1領域Ar1において0、第2領域Ar2において各々128である。手順は上に述べた通りである。
【0039】
以下、上記のテスト印刷内容15の印刷結果について蓄熱パラメータ16の調整が適切である場合と、蓄熱パラメータ16が過補正、補正不足である場合とを比較して説明する。
【0040】
まず、蓄熱パラメータ16の調整が適切である場合について説明する。記録媒体Paへの印刷結果は、図4の(a)に示す印刷原色M(マゼンタ)及び印刷原色C(シアン)の印刷時に印加されるパルス数に対応した印刷階調と、図4の(b)に示す印刷原色Y(イエロー)の印刷時に印加されるパルス数に対応した印刷階調との重ね合わせにより、図4の(c)に示すように各印刷原色が印刷される。具体的には、第2領域Ar2には各印刷原色Y、M、Cが等しく目標印刷階調128(したがって同じパルス数F4)に設定され、同じ濃度30で重畳された中間色のグレーが印刷される。ここで、第2領域Ar2において印刷原色Y(イエロー)、印刷原色M(マゼンタ)及び印刷原色C(シアン)を印刷する際に上記パルス数F4は適正な蓄熱パラメータに基づいた値であると仮定する。
【0041】
次に、蓄熱パラメータ16が過補正である場合について説明する。記録媒体Paへの印刷結果は、図5の(a)に示す印刷原色M(マゼンタ)及び印刷原色C(シアン)の印刷時に印加されるパルス数F4に対応した印刷階調と、図5の(b)に示す印刷原色Y(イエロー)の印刷時に印加されるパルス数F5に対応した印刷階調との重ね合わせにより、図5の(c)に示すように各印刷原色の濃度が印刷される。蓄熱パラメータ16が過補正であると、第2領域Ar2での印刷原色Y(イエロー)の印刷時に印加されるパルス数F5は、蓄熱パラメータ16が適正に調整されているときのパルス数F4よりも小さくなる。すると、印刷原色Y(イエロー)の濃度が、蓄熱パラメータ16が適切に調整されている場合の濃度30よりも薄い濃度20になり、他の印刷原色M(マゼンタ)及び印刷原色C(シアン)の濃度30よりも薄くなり、第2領域Ar2が印刷原色Y(イエロー)の反対色であるブルーの強いグレーとなる。
【0042】
一方、蓄熱パラメータ16が補正不足である場合について説明する。記録媒体Paへの印刷結果は、図6の(a)に示す印刷原色M(マゼンタ)及び印刷原色C(シアン)の印刷時に印加されるパルス数に対応した印刷階調と、図6の(b)に示す印刷原色Y(イエロー)の印刷時に印加されるパルス数F6に対応した印刷階調との重ね合わせにより、図6の(c)に示すように各印刷原色の濃度が印刷される。蓄熱パラメータ16が補正不足であると、第2領域Ar2での印刷原色Y(イエロー)の印刷時に印加されるパルス数F6は、蓄熱パラメータ16が適正に調整されているときのパルス数F4よりも大きくなる。すると、印刷原色Y(イエロー)の濃度が、蓄熱パラメータ16が適切に調整されている場合の濃度30よりも濃い濃度40になり、他の印刷原色M(マゼンタ)及び印刷原色C(シアン)の濃度30よりも濃くなり、第2領域Ar2が印刷原色Y(イエロー)の強いグレーとなる。
【0043】
このように、蓄熱パラメータ16が過補正である場合に検査対象の印刷原色Y(イエロー)の濃度20が他の印刷原色M、C(マゼンタ、シアン)の濃度30よりも薄く印刷され、第2領域Ar2の混色が印刷原色Y(イエロー)の反対色であるブルーの強いグレーとなる。よって、第2領域Ar2の混色における検査対象である印刷原色Yの反対色の濃度を通じて蓄熱パラメータ16が過補正であることを一目で容易に認識することが可能となる。
【0044】
また、蓄熱パラメータ16が補正不足である場合に検査対象の印刷原色Y(イエロー)の濃度40が他の印刷原色M、C(マゼンタ、シアン)の濃度30よりも濃く印刷され、第2領域Ar2の混色が検査対象である印刷原色Y(イエロー)の強いグレーとなる。よって、第2領域Ar2の混色における検査対象の印刷原色Yの濃度を通じて蓄熱パラメータ16が補正不足であることを一目で容易に認識することが可能となる。
【0045】
以上のように、本実施形態に係るサーマルプリンタは、サーマルヘッド2の加熱により複数の印刷原色Y、M、Cを組み合わせた混色を記録媒体Paの印刷領域Arに印刷するサーマルプリンタであって、所定の印刷要求に基づいてサーマルヘッド2の加熱を制御することにより印刷要求に係る印刷内容を印刷領域Arに印刷する制御部1を具備してなり、制御部1は印刷要求の一つであるテスト印刷要求に基づいて印刷領域Arにおける第1領域Ar1に検査対象である印刷原色Yを所定階調(目標印刷階調255)で印刷するとともに、第1領域Ar1の副走査方向に隣接する第2領域Ar2に複数の印刷原色Y、M、Cのうち検査対象である印刷原色Y以外の少なくとも1つの印刷原色M、Cと検査対象の印刷原色Yとの混色を、検査対象である印刷原色Yの階調(目標印刷階調128)が第1領域Ar1における階調(目標印刷階調255)よりも小さくなるように印刷することを特徴とする。
【0046】
従来では、検査対象である印刷原色Yが印刷される第1領域Ar1以外の第2領域Ar2には印刷しないものであるため、蓄熱パラメータ16の補正不足についてはテスト印刷の印刷結果を通じて認識可能であったものの、蓄熱パラメータ16が過補正である場合の印刷結果は蓄熱パラメータ16が適切である場合と同じであるため、蓄熱パラメータ16が過補正であることをテスト印刷の印刷結果を通じて認識できないものであったが、これに対して本実施形態では、第2領域Ar2において検査対象である印刷原色Yの階調(目標印刷階調128)を第1領域Ar1での階調(目標印刷階調255)より小さくしつつ他の印刷原色M、Cとの混色を印刷し、蓄熱パラメータ16の状況に応じて第2領域Ar2の混色が変化するため、第2領域Ar2の色変化を通じて蓄熱パラメータ16が補正不足であるか過補正であるかを認識することができ、蓄熱パラメータ16の調整を適正化するとともに、当該蓄熱パラメータを調整する作業効率を向上させることができる。
【0047】
特に、複数の印刷原色Y、M、Cは、シアン、マゼンタ、イエローを含み、制御部1が第1領域Ar1において複数の印刷原色Y、M、Cのうちいずれか1つの印刷原色Yを検査対象として印刷するとともに、第2領域Ar2において検査対象である印刷原色Y以外の二つの印刷原色M、Cと検査対象である印刷原色Yとの混色を印刷するので、蓄熱パラメータ16が補正不足である場合に第2領域Ar2が検査対象である印刷原色Yの強い混色になり、蓄熱パラメータ16が過補正である場合に検査対象である印刷原色Yの反対色(ブルー)の強い混色になり、第2領域Ar2の混色に応じて蓄熱パラメータ16の状況を一目で容易に認識することができる。
【0048】
さらに、第2領域Ar2に印刷される混色が複数の印刷原色Y、M、Cを同じ階調で組み合わせた中間色であるので、蓄熱パラメータ16が少しでも補正不足または過補正であると中間色に他の色が加味され、蓄熱パラメータ16の微量な調整漏れを的確に認識することができる。
【0049】
さらに、第2領域Ar2に印刷される混色がシアン、マゼンタ、イエローを同じ階調で組み合わせたグレーであるので、グレーを基準とした第2領域Ar2の色変化は人の目で認識しやすく、蓄熱パラメータを調整する作業効率を一層向上させることができる。
【0050】
さらに、複数の印刷原色Y、M、Cは、シアン、マゼンタ、イエローを含み、制御部1が第1領域Ar1において複数の印刷原色Y、M、Cのうちいずれか2つ以上の印刷原色Y、M、Cを検査対象として主走査方向に並列的な帯をなすように印刷するとともに、第2領域Ar2において検査対象である印刷原色Y以外の2つの印刷原色M、Cと検査対象である印刷原色Yとの混色を各帯の副走査方向に連続するように印刷するので、複数の印刷原色Y、M、Cに対する各蓄熱パラメータ16の状況を同時に認識し、蓄熱パラメータ16を調整する作業効率をより的確に向上させることができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0052】
例えば、本実施形態では印刷すべきテスト印刷内容を、複数の印刷原色Y、M、C(イエロー、マゼンタ、シアン)を検査対象として主走査方向に並列な帯をなすように印刷しているが、図7に示すように、単一の印刷原色Y(イエロー)を検査対象として第1領域Ar1に帯を成すようにしてもよい。
【0053】
さらに、本実施形態では第1領域Ar1の印刷方向下流側に第2領域Ar2が隣接しているが、図8に示すように、副走査方向における第1領域Ar1の上流側に第2領域Ar3が隣接していてもよい。ただし、サーマルヘッド2の蓄熱による印刷結果への影響は印刷方向の下流側に至るほど大きくなるので、第2領域が第1領域の印刷方向下流側に配置されている方が効果的である。
【0054】
さらに本実施形態では、検査対象である印刷原色Yを第1領域Ar1に印刷し、第2領域に他の二つの印刷原色M、Cとの混色を印刷しているが、図9に示すように、第2領域Ar2に他の印刷原色のうち少なくとも一つの印刷原色との混色を印刷してもよい。
【0055】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1………制御部
2………サーマルヘッド
3………発熱抵抗体
4………インクリボン駆動部
5………用紙送り駆動部
Y、M、C…印刷原色
Pa……記録媒体
Ar……印刷領域
Ar1…第1領域
Ar2…第2領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッドの加熱により複数の印刷原色を組み合わせた混色を記録媒体の印刷領域に印刷するサーマルプリンタであって、
所定の印刷要求に基づいて前記サーマルヘッドの加熱を制御することにより当該印刷要求に係る印刷内容を前記印刷領域に印刷する制御部を具備してなり、
前記制御部は印刷要求の一つであるテスト印刷要求に基づいて前記印刷領域における第1領域に検査対象である印刷原色を所定階調で印刷するとともに、前記第1領域の副走査方向に隣接する第2領域に前記複数の印刷原色のうち前記検査対象である印刷原色以外の少なくとも1つの印刷原色と当該検査対象の印刷原色との混色を、当該検査対象である印刷原色の階調が前記第1領域における階調よりも小さくなるように印刷することを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記複数の印刷原色は、シアン、マゼンタ、イエローを含み、
前記制御部は、前記第1領域において前記複数の印刷原色のうちいずれか1つの印刷原色を検査対象として印刷するとともに、前記第2領域において当該検査対象である印刷原色以外の二つの印刷原色と当該検査対象である印刷原色との混色を印刷する請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記第2領域に印刷される混色は、前記複数の印刷原色を同じ階調で組み合わせた中間色である請求項1又は2のいずれかに記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記第2領域に印刷される混色は、シアン、マゼンタ、イエローを同じ階調で組み合わせたグレーである請求項1〜3のいずれかに記載のサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記複数の印刷原色は、シアン、マゼンタ、イエローを含み、
前記制御部は、前記第1領域において前記複数の印刷原色のうちいずれか2つ以上の印刷原色を検査対象として主走査方向に並列的な帯をなすように印刷するとともに、前記第2領域において当該検査対象である印刷原色以外の2つの印刷原色と当該検査対象である印刷原色との混色を前記各帯の副走査方向に連続するように印刷する請求項1〜4のいずれかに記載のサーマルプリンタ。
【請求項1】
サーマルヘッドの加熱により複数の印刷原色を組み合わせた混色を記録媒体の印刷領域に印刷するサーマルプリンタであって、
所定の印刷要求に基づいて前記サーマルヘッドの加熱を制御することにより当該印刷要求に係る印刷内容を前記印刷領域に印刷する制御部を具備してなり、
前記制御部は印刷要求の一つであるテスト印刷要求に基づいて前記印刷領域における第1領域に検査対象である印刷原色を所定階調で印刷するとともに、前記第1領域の副走査方向に隣接する第2領域に前記複数の印刷原色のうち前記検査対象である印刷原色以外の少なくとも1つの印刷原色と当該検査対象の印刷原色との混色を、当該検査対象である印刷原色の階調が前記第1領域における階調よりも小さくなるように印刷することを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記複数の印刷原色は、シアン、マゼンタ、イエローを含み、
前記制御部は、前記第1領域において前記複数の印刷原色のうちいずれか1つの印刷原色を検査対象として印刷するとともに、前記第2領域において当該検査対象である印刷原色以外の二つの印刷原色と当該検査対象である印刷原色との混色を印刷する請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記第2領域に印刷される混色は、前記複数の印刷原色を同じ階調で組み合わせた中間色である請求項1又は2のいずれかに記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記第2領域に印刷される混色は、シアン、マゼンタ、イエローを同じ階調で組み合わせたグレーである請求項1〜3のいずれかに記載のサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記複数の印刷原色は、シアン、マゼンタ、イエローを含み、
前記制御部は、前記第1領域において前記複数の印刷原色のうちいずれか2つ以上の印刷原色を検査対象として主走査方向に並列的な帯をなすように印刷するとともに、前記第2領域において当該検査対象である印刷原色以外の2つの印刷原色と当該検査対象である印刷原色との混色を前記各帯の副走査方向に連続するように印刷する請求項1〜4のいずれかに記載のサーマルプリンタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−143643(P2011−143643A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7006(P2010−7006)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】
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