説明

サーマルヘッドおよびその製造方法、並びにサーマルプリンタ

【課題】印字耐久性と印字効率を向上させたサーマルヘッドおよびその製造方法、並びにサーマルプリンタを提供する。
【解決手段】支持基板3と、グレーズ層5と、グレーズ層5の表面に設けられた発熱抵抗体7と、発熱抵抗体7の表面に形成された一対の電極部8とを備え、一対の電極部8のそれぞれが、厚さh1の平坦面30aと平坦面30aから発熱抵抗体7表面の中心C方向に設けられた傾斜面30bとを有する厚電極部30と、厚さh1より厚さh2を有し、厚電極部30を覆うように形成された薄電極部31を備えるサーマルヘッドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドおよびその製造方法、並びにサーマルプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、サーマルプリンタに用いられ、印刷データに基づいて複数の発熱素子を選択的に駆動することによって感熱紙等の感熱記録媒体に印字を行うサーマルヘッドが知られている(例えば、特許文献1参照。)。サーマルヘッドの発熱素子は発熱抵抗体と発熱抵抗体に電力を供給するための電極を備えており、発熱抵抗体の両側には一対の電極が接続されている。
【0003】
サーマルヘッドの印字効率を高めるためには、発熱抵抗体の抵抗値に対する電極の配線抵抗値の比率を低くして、電極における電力損失を減らすことが望ましい。そして、電極の膜厚を厚くすることにより、発熱抵抗体の抵抗値に対する電極の配線抵抗値の比率を低くすることができる。しかしながら、電極の膜厚を厚くすると電極の先端部において発熱抵抗体との間に段差が生じ、発熱抵抗体の上部で搬送される紙への熱の伝達効率が低下してしまうという問題がある。そこで、特許文献1では、発熱抵抗体の表面に形成された一対の電極の先端から一定距離までの電極の膜厚をその他の部分より薄くすることで、熱の伝達効率の低下を防止して印字効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−36614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、電極の膜厚の厚い厚電極部を形成した後に、厚電極部を覆うように電極の膜厚の薄い薄電極部を形成する。しかしながら、厚電極部がその先端まで一様の膜厚であり、先端の断面形状が直角に近い形状となっている。また、薄電極部の膜厚は厚電極部の膜厚より薄いので、厚電極部の先端部において薄電極部の段切れやバリが発生する。そのため、厚電極部の先端部において、薄電極部が連続膜として形成されずに途切れてしまう等の不良が発生する可能性が高い。そして、薄電極部の不良が発生すると、薄電極部を保護する保護膜に断層が生じる等、サーマルヘッドの印字耐久性が損なわれるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、印字耐久性と印字効率を向上させたサーマルヘッドおよびその製造方法、並びにサーマルプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の第1の態様は、支持基板と、該支持基板の表面に形成された蓄熱層と、該蓄熱層の表面に設けられた発熱抵抗体と、該発熱抵抗体の表面に形成された一対の電極とを備え、該一対の電極のそれぞれが、第1の厚さの平坦面と、該平坦面から前記発熱抵抗体表面の中心方向に設けられ該中心に向かって徐々に厚さを薄くした傾斜面とを有する厚電極部と、前記第1の厚さより薄い第2の厚さを有し、前記傾斜面よりも先端位置を前記発熱抵抗体表面の中心近くとして前記厚電極部を覆うように形成された薄電極部を備えるサーマルヘッドを提供する。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、厚電極部が平坦面から発熱抵抗体表面の中心方向に設けられその中心に向かって徐々に厚さを薄くした傾斜面を有し、それを覆うように薄電極部が形成されているので、厚電極部の先端位置において薄電極部に断層やバリが発生することが防止され、薄電極部が連続膜として形成される。従って、連続的なつながりをもった面を備え、局所的に高抵抗部分のない均一な薄電極部が形成されるので、サーマルヘッドの印字耐久性が向上する。
さらに、一対の電極の上に形成される保護膜も連続膜として形成され、その保護膜によって発熱抵抗体と一対の電極が保護されるので、サーマルヘッドの印字耐久性が向上する。また、連続膜として形成される薄電極部の上に保護膜が形成されるので、保護膜に断層が生じることや、その断層により保護膜と電極が剥離することや、その断層から腐食性イオン等が侵入するという不具合の発生が防止される。それにより、サーマルヘッドの印字耐久性が向上する。
【0009】
また、薄電極部が、傾斜面よりも先端位置を発熱抵抗体表面の中心近くとして厚電極部を覆うように形成されているので、電極の先端位置における発熱抵抗体との段差が低くなって感熱紙と発熱抵抗体上部との接触性が改善され、発熱抵抗体から感熱紙への熱の伝達効率が向上する。また、この構造は、発熱抵抗体で発生した熱が電極を介して拡散するのを防止するという効果を奏する。従って、サーマルヘッドの印字効率が向上する。
【0010】
上記態様においては、前記支持基板表面における前記発熱抵抗体に対向する領域に凹部が形成された構成であってもよい。
このようにすることで、支持基板と蓄熱層との間に空洞部が形成される。この空洞部は発熱抵抗体の表面で一対の電極が形成されていない位置に対応する位置に設けられており、発熱抵抗体から発生した熱を遮断する断熱層として機能する。従って、発熱抵抗体が発生した熱が、蓄熱層を介して支持基板に伝わって放散してしまうことを抑制できる。これにより、サーマルヘッドの印字効率が向上する。
【0011】
また、上記態様においては、前記傾斜面が、一様な傾斜で前記厚電極部の厚さを徐々に薄くしたテーパ形状で形成された構成であってもよい。
【0012】
また、上記態様においては、前記厚電極部が、前記サーマルヘッドに対向して配置されるプラテンローラにより送り出される感熱紙の送り方向に沿って設けられた前記傾斜面を有するとともに、前記送り方向に直交する方向の端部が直角に近い断面とされた構成であってもよい。
このようにすることで、感熱紙の送り方向に直交する方向については、傾斜面を形成するために調整されたエッチング液を用いずに済むので、サーマルヘッドの製造が容易になるという利点がある。また、感熱紙の送り方向に直交する方向の端部に、直角に近い断面とされた電極部を設けることができるので、微細な電極配線を形成することが可能になる。
【0013】
また、上記態様においては、前記傾斜面が、段階的に前記厚電極部の厚さを薄くした階段形状で形成されており、前記階段形状における段差が前記第2の厚さ以下とされた構成であってもよい。
【0014】
また、上記態様においては、前記傾斜面と前記発熱抵抗体の表面とがなす角度が45°以下である構成であってもよい。
このようにすることで、より確実に、薄電極部が連続膜として形成され、サーマルヘッドの耐久性と印字効率が向上する。
【0015】
本発明の第2の態様は、支持基板の表面に蓄熱層を形成する蓄熱層形成工程と、該蓄熱層形成工程により形成された前記蓄熱層の表面に発熱抵抗体を形成する抵抗体形成工程と、該抵抗体形成工程により形成された発熱抵抗体の表面に、第1の厚さの平坦面と該平坦面から前記発熱抵抗体表面の中心方向に設けられ該中心に向かって徐々に厚さを薄くした傾斜面とを有する一対の厚電極部を形成する第1の電極形成工程と、前記第1の厚さより薄い第2の厚さを有する一対の薄電極部を、前記傾斜面よりも前記薄電極部の先端位置を前記発熱抵抗体表面の中心近くとして前記厚電極部を覆うように形成する第2の電極形成工程とを備えるサーマルヘッドの製造方法を提供する。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、平坦面から発熱抵抗体表面の中心方向に設けられその中心に向かって徐々に厚さを薄くした傾斜面を有する一対の厚電極部を形成し、厚電極部を覆うように薄電極部が形成されるので、厚電極部の先端位置において薄電極部に断層やバリが発生することが防止され、薄電極部が連続膜として形成される。従って、連続的なつながりをもった面を備え、局所的に高抵抗部分のない均一な薄電極部が形成されるので、サーマルヘッドの印字耐久性が向上する。
さらに、一対の電極の上に形成される保護膜も連続膜として形成され、その保護膜によって発熱抵抗体と一対の電極が保護されるので、サーマルヘッドの印字耐久性が向上する。また、連続膜として形成される薄電極部の上に保護膜が形成されるので、保護膜に断層が生じることや、その断層により保護膜と電極が剥離することや、その断層から腐食性イオン等が侵入するという不具合の発生が防止される。それにより、サーマルヘッドの印字耐久性が向上する。
【0017】
また、薄電極部が、傾斜面よりも先端位置を発熱抵抗体表面の中心近くとして形成されるので、電極部の先端位置における発熱抵抗体との段差が低くなって印字紙と発熱抵抗体上部との接触性が改善され、発熱抵抗体から紙への熱の伝達効率が向上する。また、この構造は、発熱抵抗体で発生した熱が電極を介して拡散するのを防止するという効果を奏する。従って、サーマルヘッドの印字効率が向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、印字耐久性と印字効率を向上させたサーマルヘッドおよびその製造方法、並びにサーマルプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るサーマルプリンタの概略構成図である。
【図2】図1のサーマルヘッドを保護膜側から見た平面図である。
【図3】図2のサーマルヘッドの発熱抵抗体部分のA−A矢視断面図である。
【図4】図2のサーマルヘッドの製造方法を示すフローチャートである。
【図5】図4の第1の電極形成工程の詳細を示すフローチャートである。
【図6】図4の第2の電極形成工程の詳細を示すフローチャートである。
【図7】図2のサーマルヘッドの製造過程における状態を示す発熱抵抗体部分のA−A矢視断面図であり、(a)は第1の電極形成工程、(b)は第2の電極形成工程(薄電極層形成工程)、(c)は第2の電極形成工程(薄電極層除去工程)、(d)は第2の電極形成工程(薄電極パターン用レジストマスク除去工程)、(e)は保護膜形成工程における状態をそれぞれ示している。
【図8】図2のサーマルヘッドの製造過程における状態を示す平面図であり、(a)は第1の電極形成工程、(b)は第2の電極形成工程(薄電極層除去工程)、(c)は第2の電極形成工程(薄電極パターン用レジストマスク除去工程)における状態をそれぞれ示している。
【図9】図2のサーマルヘッドの製造過程における状態を示す平面図であり、(a)は第2の電極形成工程(薄電極層形成工程)、(b)は保護膜形成工程における状態をそれぞれ示している。
【図10】図2のサーマルヘッドの製造過程における状態を示す平面図であり、(a)は第1の電極形成工程、(b)は第2の電極形成工程(薄電極層除去工程)、(c)は第2の電極形成工程(薄電極パターン用レジストマスク除去工程)における状態をそれぞれ示している。
【図11】空洞部が設けられたサーマルヘッドの発熱抵抗体部分のA−A矢視断面図である。
【図12】階段形状の傾斜面の電極部を備えるサーマルヘッドの発熱抵抗体部分のA−A矢視断面図である。
【図13】図11のサーマルヘッドの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態に係るサーマルヘッドについて、図面を参照して説明する。
本実施形態に係るサーマルヘッド1は、図1に示されるサーマルプリンタ10に用いられるものである。サーマルプリンタ10は、印刷データに基づいて、サーマルヘッド1が備える複数の発熱抵抗素子を選択的に駆動することによって、感熱紙12等の印刷対象物に印刷する。
【0021】
サーマルプリンタ10は、本体フレーム11と、中心軸が水平に配置されるプラテンローラ13と、プラテンローラ13の外周面に対向して配置されるサーマルヘッド1と、サーマルヘッド1を支持している放熱板(図示略)を備える。また、サーマルプリンタ10は、プラテンローラ13とサーマルヘッド1との間に感熱紙12を送り出す紙送り機構17と、サーマルヘッド1を感熱紙12に対して所定の押圧力で押し付ける加圧機構19とを備えている。
【0022】
プラテンローラ13には、加圧機構19の作動により、感熱紙12を介してサーマルヘッド1が押し付けられるようになっている。これにより、プラテンローラ13からの反力が感熱紙12を介してサーマルヘッドに与えられるようになっている。
放熱板は、例えば、アルミ等の金属、樹脂、セラミックスまたはガラス等からなる板状部材であり、サーマルヘッド1の固定および放熱を目的とするものである。
【0023】
サーマルヘッド1は、図2に示されるように、矩形状の支持基板3の長手方向に複数配列された発熱抵抗体7および電極部8を備えている。矢印Yは、紙送り機構17による感熱紙12の送り方向を示している。
【0024】
図2の発熱抵抗体7部分のA−A矢視断面図が、図3に示されている。本発明の一実施形態に係るサーマルヘッド1は、支持基板3と、支持基板3の上端面(表面)に形成されたグレーズ層5と、グレーズ層5上に設けられた発熱抵抗体7と、発熱抵抗体7の両側に設けられた一対の電極部8と、発熱抵抗体7および電極部8を覆い、これらを磨耗や腐食から保護する保護膜9とを有している。また、サーマルヘッド1の一対の電極部8のそれぞれが、厚さh1の平坦面30aと平坦面30aから発熱抵抗体7表面の中心C方向に設けられ中心Cに向かって徐々に厚さを薄くした傾斜面30bとを有する厚電極部30と、厚さh1より薄い厚さh2を有し傾斜面30bよりも先端位置を発熱抵抗体7表面の中心C近くとして厚電極部30を覆うように形成された薄電極部31を備えている。
【0025】
支持基板3は、例えば、300μm〜1mm程度の厚さを有するガラス基板やシリコン基板等の絶縁性の基板である。ここでは、支持基板3として、99.5%のアルミナ成分を有するセラミック板を用いる。グレーズ層5は、例えば、厚さ10μm〜100μm程度のガラス材質によって構成されており、発熱抵抗体7から発生した熱を蓄える蓄熱層として機能する。
【0026】
発熱抵抗体7は、グレーズ層5の上面において、図2に示されるように、支持基板3の長手方向に所定間隔をあけて複数配列されている。発熱抵抗体7は、例えばTa(タンタル)を主成分とするTa−N、Ta−SiO膜から構成されている。発熱抵抗体7の具体的な形成方法については後述する。
【0027】
電極部8は、発熱抵抗体7を発熱させるためのものであり、図2に示されるように、各発熱抵抗体7の配列方向に直交する方向の一端に接続される共通電極8Aと、各発熱抵抗体7の他端に接続される個別電極8Bとから構成されている。共通電極8Aは、全ての発熱抵抗体7に一体的に接続され、個別電極8Bは個々の発熱抵抗体7にそれぞれ接続されている。
【0028】
個別電極8Bに選択的に電圧を印加すると、選択された個別電極8Bとこれに対向する共通電極8Aとが接続されている発熱抵抗体7に電流が流れ、発熱抵抗体7が発熱するようになっている。この状態で、加圧機構19の作動により、発熱抵抗体7の発熱部分を覆う保護膜9の表面部分(印刷部分)に感熱紙12を押し付けることで、感熱紙12が発色して印刷されるようになっている。
【0029】
また、共通電極8Aおよび個別電極8Bは、図3に示されるように、厚電極部30と薄電極部31を備える。厚電極部30は、厚さh1の平坦面30aと、平坦面30aから発熱抵抗体7表面の中心C方向に設けられ中心Cに向かって一様な傾斜で徐々に厚さを薄くしたテーパ形状の傾斜面30bを備える。厚電極部30は、Alを主成分とするAl,Al−Si,Al−Si−Cu膜等から構成されており、厚さh1が1μm〜3μmとされている。薄電極部31は、厚さh1よりも薄い厚さh2を有し、傾斜面30bよりも先端位置を発熱抵抗体7表面の中心C近くとして厚電極部30を覆うように形成される。
【0030】
薄電極部31は、厚電極部30と同材料で構成されており、厚さh2が0.1μm〜0.5μmとされている。また、薄電極部31は、厚電極部30の平坦面30aに対応する部分に形成される基端部31aと、傾斜面30bに対応する部分に形成される傾斜部31bと、発熱抵抗体7の表面に対応する部分に形成される先端部31cとを備え、それらが連続膜として形成されている。
【0031】
次に、上記構成を有するサーマルヘッド1の製造方法について以下に説明する。
本実施形態に係るサーマルヘッド1の製造方法は、図4に示されるように、支持基板3表面に蓄熱層として機能するグレーズ層5を形成する蓄熱層形成工程S1と、グレーズ層5の表面に発熱抵抗体7を形成する抵抗体形成工程S2と、発熱抵抗体7の表面に厚さh1の平坦面30aと平坦面30aから発熱抵抗体7表面の中心C方向に設けられ中心Cに向かって徐々に薄くした傾斜面30bとを有する一対の厚電極部30を形成する第1の電極形成工程S3と、厚さh2の一対の薄電極部31を厚電極部30が覆われるように形成する第2の電極形成工程S4と、発熱抵抗体7の表面と表面に形成された一対の電極8を覆うように形成された保護膜9を形成する保護膜形成工程S5を備える。以下、サーマルヘッド1の製造方法の各工程について具体的に説明する。
【0032】
以下の説明において、図7は、図2のサーマルヘッドの製造過程における状態を示す発熱抵抗体部分のA−A矢視図であり、(a)は第1の電極形成工程、(b)は第2の電極形成工程(薄電極層形成工程)、(c)は第2の電極形成工程(薄電極層除去工程)、(d)は第2の電極形成工程(薄電極パターン用レジストマスク除去工程)、(e)は保護膜形成工程における状態をそれぞれ示している。また、図8は、図2のサーマルヘッド1の製造過程における状態を示す平面図であり、(a)は第1の電極形成工程、(b)は第2の電極形成工程(薄電極層除去工程)、(c)は第2の電極形成工程(薄電極パターン用レジストマスク除去工程)における状態をそれぞれ示している。また、図9は、図2の製造過程における状態を示す平面図であり、(a)は第2の電極形成工程(薄電極層形成工程)、(b)は保護膜形成工程における状態をそれぞれ示している。
【0033】
蓄熱層形成工程S1では、支持基板3の上端面(表面)に、ガラス材質のグレーズを塗布することにより、グレーズ層5を形成する。
【0034】
抵抗体形成工程S2では、グレーズ層5上の全面に、Ta(タンタル)を主成分とするTa‐N、Ta−SiO膜等の発熱抵抗材料を、スパッタリングにより0.1μm〜0.5μmの一様の厚さに形成する。その後、フォトリソグラフィを用いて発熱抵抗体パターン用レジストマスクを形成し、さらに、エッチングを行うことにより、グレーズ層5上に、発熱抵抗体7を形成する。発熱抵抗体7は、支持基板3の長手方向に所定の間隔をあけて複数形成する。
【0035】
第1の電極形成工程S3は、図5に示されるように、サブ工程として、グレーズ層5上に厚電極層を形成する厚電極層形成工程S21と、厚電極層上の発熱部7Aの両側に間隔をあけて厚電極パターン用レジストマスク21を形成する厚電極パターン用レジストマスク形成工程S22と、浸透性を有する溶剤を用いたエッチング処理により厚電極層の厚電極パターン用レジストマスク21で被膜されていない領域を除去する厚電極層除去工程S23と、厚電極パターン用レジストマスク21を除去する厚電極パターン用レジストマスク除去工程S24とを備える。
【0036】
厚電極層形成工程S21では、発熱抵抗体7に電力を供給するための電極材料として、Alを主成分とするAl,Al−Si,Al−Si−Cu膜等から構成される厚電極層を、スパッタリング等により、グレーズ層5上に1μm〜3μmの厚さh1で形成する。
【0037】
厚電極パターン用レジストマスク形成工程S22では、図7(a)および図8(a)に示されるように、厚電極層上における発熱部7Aの両側にフォトレジストを塗布し、フォトマスクを用いて露光現像して、発熱部7Aを挟んで(間隔をあけて)形成された厚電極パターン用レジストマスク21を形成する。
【0038】
厚電極層除去工程S23では、リン酸、酢酸、硝酸および純水等からなる混合酸性水溶液などを、その混合比によりフォトレジストとの密着力を調整したエッチング液を用いてエッチング処理を行う。例えば、硝酸の混合比率を増やすことにより、フォトレジストのエッチング液への溶解度が高まる。その結果として、エッチングの進行とともにフォトレジストの密着力が低下する。この場合において、密着力の低いエッチング液でAl膜(電極層)をエッチングすると、エッチング液はAlエッチングと同時に、厚電極パターン用レジストマスク21とAl膜との界面にも入り込み、厚電極層の表面に沿う方向にもエッチングが進行する。
【0039】
この厚電極層の表面に沿う方向と膜厚方向のエッチング速度を適切に調整することで、エッチング終了時において、厚電極層に、厚さh1の平坦面30aと、平坦面30aから発熱抵抗体7表面の中心C方向に設けられ中心Cに向かって徐々に厚さを薄くした傾斜面30bを形成することができる。また、傾斜面30bは、図8(c)に示されるように、発熱抵抗体7の長手方向だけでなく、発熱抵抗体7の長手方向に直交する短手方向にも同様に設けられる。
【0040】
なお、この傾斜面30bは、グレーズ層5の表面に対して3°以上、かつ45°以下の角度で形成することが好ましい。また、傾斜面30bは、グレーズ層の表面に対して3°以上、かつ30°以下の角度で形成することが更に好ましい。このような傾斜角度とすることで、薄電極部31が厚電極部30上に連続膜として形成され、サーマルヘッド1の耐久性と印字効率が向上する。また、3°以上、かつ45°以下の傾斜面30bとすることで、プラテンローラ13や感熱紙12がサーマルヘッド1に与える圧力および摩擦力に対する耐久性を高めることができる。
【0041】
厚電極パターン用レジストマスク除去工程S24では、厚電極パターン用レジストマスク21を有機溶剤などの剥離液を用いて除去することで、傾斜面30bが形成された厚電極部30を露出させる。
【0042】
以上のように、第1の電極形成工程S3は、サブ工程として、厚電極層形成工程S21、厚電極パターン用レジストマスク形成工程S22、厚電極層除去工程S23、および厚電極パターン用レジストマスク除去工程S24を実行することにより、厚電極部30を形成する。
【0043】
第2の電極形成工程S4は、図6に示されるように、サブ工程として、厚電極部30上および発熱抵抗体7上に薄電極層を形成する薄電極層形成工程S31と、薄電極層上の発熱部の両側に間隔をあけて薄電極パターン用レジストマスク22を形成する薄電極パターン用レジストマスク形成工程S32と、浸透性を有する溶剤を用いたエッチング処理により薄電極層の薄電極パターン用レジストマスク22で被膜されていない領域を除去する薄電極層除去工程S33と、薄電極パターン用レジストマスク22を除去する薄電極パターン用レジストマスク除去工程S34とを備える。
【0044】
薄電極層形成工程S31では、図7(b)および図9(a)に示されるように、発熱抵抗体7に電力を供給するための電極材料としてAlを主成分とするAl,Al−Si,Al−Si−Cu膜等から構成される薄電極層を、スパッタリング等により、グレーズ層5上に0.1μm〜0.5μmの一様の厚さh2で形成する。
【0045】
薄電極パターン用レジストマスク形成工程S32では、薄電極層上における発熱部7Aの両側にフォトレジストを塗布し、フォトマスクを用いて露光現像して、発熱部7Aを挟んで(間隔をあけて)形成された薄電極パターン用レジストマスク22を形成する。
【0046】
薄電極層除去工程S33では、リン酸、酢酸、硝酸および純水等からなる混合酸性水溶液などを、その混合比によりフォトレジストとの密着力を調整したエッチング液を用いてエッチング処理を行う。この工程S33では、薄い薄電極層のみを除去する。この薄電極層は、厚電極層に比べて非常に薄いので、端部に緩やかな傾斜面を形成する必要がない。従って、工程S33では、厚電極層除去工程S23で使用したエッチング液のほか、圧電極層除去工程S23で使用したエッチング液に比べて硝酸の混合比率の低いエッチング液を使用することもできる。このエッチング処理により、発熱部7A上の薄電極パターン用レジストマスク22が除去された後、図7(c)および図8(b)に示される状態となる。
【0047】
薄電極パターン用レジストマスク除去工程S34では、図7(d)および図8(c)に示されるように、薄電極パターン用レジストマスク22を有機溶剤などの剥離液を用いて除去することで、薄電極部31を露出させる。図8(c)に示されるように、露出した薄電極部31は、厚電極部30の平坦面30aに対応する部分に形成される基端部31aと、傾斜面30bに対応する部分に形成される傾斜部31bと、発熱抵抗体7の表面に対応する部分に形成される先端部31cとを備え、それらが連続膜として形成されている。
【0048】
以上のように、第2の電極形成工程S4は、サブ工程として、薄電極層形成工程S31、薄電極パターン用レジストマスク形成工程S32、薄電極層除去工程S33、および薄電極パターン用レジストマスク除去工程S34を実行することにより、薄電極部31を形成する。
【0049】
保護膜形成工程S5では、図7(e)および図9(b)に示されるように、発熱抵抗体7および電極部8の酸化防止と耐摩耗のために、これらを覆うようにSiとSiOなどの混合膜をスパッタリング等により3μm〜6μm程度の厚さで被覆することで保護膜9を形成する。
【0050】
このようにして製造された本実施形態に係るサーマルヘッド1によれば、支持基板3と、支持基板3の表面に形成されたグレーズ層5と、グレーズ層5の表面に設けられた発熱抵抗体7と、発熱抵抗体7の表面に形成された一対の電極部8とを備え、一対の電極部8のそれぞれが、厚さh1の平坦面30aと、平坦面30aから発熱抵抗体7表面の中心C方向に設けられ中心Cに向かって徐々に厚さを薄くした傾斜面30bとを有する厚電極部30と、厚さh1より薄い厚さh2を有し、傾斜面30bよりも先端位置を発熱抵抗体7表面の中心C近くとして厚電極部30を覆うように形成された薄電極部31を備えるので、以下の効果を奏する。
【0051】
すなわち、本実施形態に係るサーマルヘッド1によれば、厚電極部30が平坦面30aから発熱抵抗体7表面の中心C方向に設けられその中心Cに向かって徐々に厚さを薄くした傾斜面30bを有し、それを覆うように薄電極部31が形成されているので、厚電極部30の先端位置において薄電極部31に断層やバリが発生することが防止され、薄電極部31が連続膜として形成される。従って、連続的なつながりをもった面を備え、局所的に高抵抗部分のない均一な薄電極部31が形成されるので、サーマルヘッド1の印字耐久性が向上する。
さらに、電極部8の上に形成される保護膜9も連続膜として形成され、その保護膜9によって発熱抵抗体7と一対の電極部8が保護されるので、サーマルヘッド1の印字耐久性が向上する。また、連続膜として形成される薄電極部31の上に保護膜9が形成されるので、保護膜9に断層が生じることや、その断層により保護膜9と電極部8が剥離することや、その断層から腐食性イオン等が侵入するという不具合の発生が防止される。それにより、サーマルヘッド1の印字耐久性が向上する。
【0052】
また、薄電極部31が、傾斜面30aよりも先端位置を発熱抵抗体7表面の中心C近くとして厚電極部30を覆うように形成されているので、電極部8の先端位置における発熱抵抗体7との段差が低くなって感熱紙と発熱抵抗体7上部との接触性が改善され、発熱抵抗体7から感熱紙への熱の伝達効率が向上する。従って、サーマルヘッド1の印字効率が向上する。
【0053】
また、本実施形態に係るサーマルヘッド1は、傾斜面30bと発熱抵抗体7の表面とがなす角度が45°以下であるので、薄電極部31が連続膜として形成され、サーマルヘッド1の耐久性と印字効率が向上する。
【0054】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係るサーマルヘッドについて、図面を参照して説明する。
第1の実施形態においては、サーマルヘッド1が備える支持基板3の形状として、図3に示されるような平板形状を採用した。それに対して、第2の実施形態においては、支持基板3に凹部を設けた形状を採用したものである。図11は、サーマルヘッド1の発熱抵抗体7部分のA−A矢視断面図である。支持基板3の上端面(表面)には、支持基板3の長手方向に延びる矩形上の凹部50が設けられており、上板基板60によって凹部50が覆われることにより、上板基板60と支持基板3との間に空洞部が形成される。
【0055】
支持基板3は、例えば、300μm〜1mm程度の厚さを有するガラス基板やシリコン基板等の絶縁性の基板である。ここでは、支持基板3として、ガラス基板を用いる。上板基板60は、例えば、厚さ10μm〜100μm程度のガラス材質によって構成されており、発熱抵抗体7から発生した熱を蓄える蓄熱層として機能する。
【0056】
なお、第2の実施形態に係るサーマルヘッド1は、支持基板3と上板基板60を除いた他の構成は、第1の実施形態に係るサーマルヘッド1と同様であるので説明を省略する。
【0057】
上板基板60と支持基板3の間に形成された空洞部は、全ての発熱抵抗体7に対向する連通構造を有しており、発熱抵抗体7から発生した熱が上板基板60から支持基板3へ伝わることを抑制する中空断熱層として機能する。空洞部を中空断熱層として機能させることで、発熱抵抗体7の下方の上板基板60を介して支持基板3に伝わる熱量よりも、発熱抵抗体7の上方へ伝わって印字等に利用される熱量を大きくすることができる。従って、発熱抵抗体7が発生した熱が、上板基板60を介して支持基板3に伝わって放散してしまうことを抑制できる。これにより、サーマルヘッド1の印字効率が向上する。
【0058】
次に、第2の実施形態に係るサーマルヘッド1の製造方法について以下に説明する。
本実施形態に係るサーマルヘッド1の製造方法は、図13に示されるように、支持基板3表面に上板基板60の裏面を積層状態に接合する接合工程S41と、上板基板60の表面に発熱抵抗体7を形成する抵抗体形成工程S42と、発熱抵抗体7の表面に厚さh1の平坦面30aと平坦面30aから発熱抵抗体7表面の中心C方向に設けられ中心Cに向かって徐々に薄くした傾斜面30bとを有する一対の厚電極部30を形成する第1の電極形成工程S43と、厚さh2の一対の薄電極部31を厚電極部30が覆われるように形成する第2の電極形成工程S44と、発熱抵抗体7の表面と表面に形成された一対の電極8を覆うように形成された保護膜9を形成する保護膜形成工程S45を備える。以下、サーマルヘッド1の製造方法の接合工程S41について具体的に説明する。なお、図13のS42〜S45は、図4のS2〜S5と同様であるので説明を省略する。
【0059】
接合工程S41では、上板基板60の下端面(裏面)と、支持基板3の上端面(表面)とを高温融着や陽極接合によって接合する。この際、支持基板3と上板基板5とは乾燥状態で接合され、この接合された接合基板は、例えば200℃以上で軟化点以下となる温度で熱処理が行われる。
【0060】
このようにして製造された本実施形態に係るサーマルヘッド1によれば、支持基板3と、支持基板3の表面に積層状態に接合された上板基板60と、上板基板60の表面に設けられた発熱抵抗体7と、発熱抵抗体7の表面に形成された一対の電極部8とを備え、一対の電極部8のそれぞれが、厚さh1の平坦面30aと、平坦面30aから発熱抵抗体7表面の中心C方向に設けられ中心Cに向かって徐々に厚さを薄くした傾斜面30bとを有する厚電極部30と、厚さh1より薄い厚さh2を有し、傾斜面30bよりも先端位置を発熱抵抗体7表面の中心C近くとして厚電極部30を覆うように形成された薄電極部31を備えるので、以下の効果を奏する。
【0061】
すなわち、本実施形態に係るサーマルヘッド1によれば、厚電極部30が平坦面30aから発熱抵抗体7表面の中心C方向に設けられその中心Cに向かって徐々に厚さを薄くした傾斜面30bを有し、それを覆うように薄電極部31が形成されているので、厚電極部30の先端位置において薄電極部31に断層やバリが発生することが防止され、薄電極部31が連続膜として形成される。従って、連続的なつながりをもった面を備え、局所的に高抵抗部分のない均一な薄電極部31が形成されるので、サーマルヘッド1の印字耐久性が向上する。
さらに、電極部8の上に形成される保護膜9も連続膜として形成され、その保護膜9によって発熱抵抗体7と一対の電極部8が保護されるので、サーマルヘッド1の印字耐久性が向上する。また、連続膜として形成される薄電極部31の上に保護膜9が形成されるので、保護膜9に断層が生じることや、その断層により保護膜9と電極部8が剥離することや、その断層から腐食性イオン等が侵入するという不具合の発生が防止される。それにより、サーマルヘッド1の印字耐久性が向上する。
【0062】
また、薄電極部31が、傾斜面30aよりも先端位置を発熱抵抗体7表面の中心C近くとして厚電極部30を覆うように形成されているので、電極部8の先端位置における発熱抵抗体7との段差が低くなって感熱紙と発熱抵抗体7上部との接触性が改善され、発熱抵抗体7から感熱紙への熱の伝達効率が向上する。従って、サーマルヘッド1の印字効率が向上する。
【0063】
また、本実施形態に係るサーマルヘッド1は、傾斜面30bと発熱抵抗体7の表面とがなす角度が45°以下であるので、薄電極部31が連続膜として形成され、サーマルヘッド1の耐久性と印字効率が向上する。
【0064】
また、本実施形態に係るサーマルヘッド1は、支持基板3の表面における発熱抵抗体7に対向する領域に凹部50が形成された態様である。
このようにすることで、支持基板3と上板基板60との間に空洞部が形成される。この空洞部は発熱部(発熱抵抗体7の表面で一対の電極部8が形成されていない位置)に対応する位置に設けられており、発熱抵抗体7から発生した熱を遮断する断熱層として機能する。従って、発熱抵抗体7が発生した熱が、上板基板60を介して支持基板3に伝わって放散してしまうことを抑制できる。これにより、サーマルヘッド1の印字効率が向上する。
【0065】
また、本実施形態に係るサーマルヘッドは、凹部50が、傾斜面30bに対応する位置よりも発熱抵抗体7表面の中心C方向に形成され、かつ、電極部8の薄電極部31の先端部31cが、空洞部に対向する領域内に形成された態様である。
このようにすることで、電極部8における熱伝導率の低い領域が空洞部に対向する領域より中心Cの外側まで広がり、電極部8を介して発熱抵抗体7から上板基板60の平面方向への熱が放散してしまうことを抑制することができる。これにより、サーマルヘッドの印字効率が向上する。
【0066】
<他の実施形態>
第1及び第2の実施形態においては、傾斜面30bの形状として、平坦面30aから発熱抵抗体7表面の中心C方向に向かって一様な傾斜で徐々に厚さを薄くしたテーパ形状を採用したが、中心C方向に向かって段階的に厚さを薄くした階段形状を採用してもよい。図12は、階段形状の傾斜面の電極部を備えるサーマルヘッドの発熱抵抗体部分のA−A矢視断面図である。なお、複数の段差30b´からなる階段形状の傾斜面30bは、傾斜面30bの平均的な傾斜角が発熱抵抗体7の表面に対して3°以上、45°以下の角度となるようにするのが望ましい。また、階段形状の傾斜面30bの段差は、傾斜面30bの平均的な傾斜角が発熱抵抗体7の表面に対して3°以上、30°以下の角度となるようにするのが更に望ましい。なお、傾斜面30bの各段差30b´は、薄電極部31の厚さh2以下とするのが望ましい。
【0067】
また、第1及び第2の実施形態においては、厚電極部30の傾斜面30bを発熱抵抗体7の長手方向だけでなく、発熱抵抗体7の長手方向に直交する方向にも同様に設ける方法を採用したが、傾斜面30bを発熱抵抗体7の長手方向のみに設ける方法を採用してもよい。この場合、第1の電極形成工程S3において、図10(a)に示されるように、電極部8とする領域だけでなくその他の領域にも厚電極パターン用レジストマスク21を形成するようにする。
【0068】
また、薄電極パターン用レジストマスク22は、図10(b)に示されるもの、すなわち、図8(b)と同様のものを形成する。このようにすると、図10(c)に示されるように、テーパ形状の傾斜面30bが発熱抵抗体7の長手方向のみに設けられたサーマルヘッド1が製造される。ここで、発熱抵抗体7の長手方向とは、図10(c)に示されるように感熱紙の送り方向に沿った方向をいい、発熱抵抗体7の短手方向とは、感熱紙の送り方向に直交する方向をいう。この場合、発熱抵抗体7の短手方向の端部にはテーパ形状の傾斜面が設けられていない電極部が設けられる。薄電極層では、短手方向に流れる電流は、長手方向に比べて少ない。また、保護膜9の短手方向にかかるプラテンローラ13の荷重も、長手方向に比べて小さい。従って、厚電極層および薄電極層の発熱抵抗体7の短手方向については、ゆるやかな傾斜面を形成するために調整されたエッチング液を用いずに済むので、厚電極パターン用レジストマスク21を簡易な形状とすることができ、サーマルヘッド1の製造が容易になるという利点がある。また、発熱抵抗体7の短手方向の端部に直角に近い断面とされた電極部を設けることができるので、微細な電極配線を形成することが可能になる。
【0069】
また、第2の実施形態においては、接合工程S41の後に抵抗体形成工程S42を行う方法を採用したが、S41とS42の工程の間に薄板化工程を追加する方法を採用してもよい。薄板化工程は、薄板ガラスを支持基板3に接合した後に薄板ガラスをエッチングや研磨等により所望の厚さとなるように加工する工程である。このようにすることで、高価な薄板ガラスを用いることなく十分な薄さの上板基板60を備えたサーマルヘッド1を製造することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 サーマルヘッド
3 支持基板
5 グレーズ層
7 発熱抵抗体
8 電極部
9 保護膜
10 サーマルプリンタ
30 厚電極部
30a 平坦面
30b 傾斜面
31 薄電極部
31a 基端部
31b 傾斜部
31c 先端部
50 凹部
60 上板基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
該支持基板の表面に形成された蓄熱層と、
該蓄熱層の表面に設けられた発熱抵抗体と、
該発熱抵抗体の表面に形成された一対の電極とを備え、
該一対の電極のそれぞれが、
第1の厚さの平坦面と、該平坦面から前記発熱抵抗体表面の中心方向に設けられ該中心に向かって徐々に厚さを薄くした傾斜面とを有する厚電極部と、
前記第1の厚さより薄い第2の厚さを有し、前記傾斜面よりも先端位置を前記発熱抵抗体表面の中心近くとして前記厚電極部を覆うように形成された薄電極部を備えるサーマルヘッド。
【請求項2】
前記支持基板の表面に凹部が形成され、
前記凹部が、前記発熱抵抗体に対向する領域に形成された請求項1に記載のサーマルヘッド。
【請求項3】
前記凹部が、前記傾斜面に対応する位置よりも前記発熱抵抗体表面の中心方向に形成され、かつ、前記薄電極部が、前記空洞部に対向する領域内に形成された請求項2に記載のサーマルヘッド。
【請求項4】
前記傾斜面が、一様な傾斜で前記厚電極部の厚さを徐々に薄くしたテーパ形状で形成された請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のサーマルヘッド。
【請求項5】
前記厚電極部が、前記サーマルヘッドに対向して配置されるプラテンローラにより送り出される感熱紙の送り方向に沿って設けられた前記傾斜面を有するとともに、前記送り方向に直交する方向の端部が直角に近い断面とされた請求項4に記載のサーマルヘッド。
【請求項6】
前記傾斜面が、段階的に前記厚電極部の厚さを薄くした階段形状で形成されており、前記階段形状における段差が前記第2の厚さ以下とされた請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のサーマルヘッド。
【請求項7】
前記傾斜面と前記発熱抵抗体表面とがなす角度が45°以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のサーマルヘッド。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のサーマルヘッドを備えるサーマルプリンタ。
【請求項9】
支持基板の表面に蓄熱層を形成する蓄熱層形成工程と、
該蓄熱層形成工程により前記支持基板に形成された前記蓄熱層の表面に発熱抵抗体を形成する抵抗体形成工程と、
該抵抗体形成工程により形成された前記発熱抵抗体の表面に、第1の厚さの平坦面と該平坦面から前記発熱抵抗体表面の中心方向に設けられ該中心に向かって徐々に厚さを薄くした傾斜面とを有する一対の厚電極部を形成する第1の電極形成工程と、
前記第1の厚さより薄い第2の厚さを有する一対の薄電極部を、前記傾斜面よりも前記薄電極部の先端位置を前記発熱抵抗体表面の中心近くとして前記厚電極部を覆うように形成する第2の電極形成工程とを備えるサーマルヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記支持基板の表面には凹部が形成されており、
前記凹部が、前記発熱抵抗体に対向する領域に形成された請求項9に記載のサーマルヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−82092(P2013−82092A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222185(P2011−222185)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】