説明

シアノベンゾチアゾールコンジュゲートによるタンパク質標識

本発明は、式Iのシアノベンゾチアゾール誘導体でタンパク質を部位特異的に標識するための化合物および方法を提供する。例えば、本発明は、システイン残基を末端とするタンパク質のN末端を標識する方法を提供する。本発明は、さらにN末端で標識されたタンパク質の検出のためにN末端で標識されたタンパク質を単離する方法および方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2008年3月27日に出願された米国仮特許出願第61/040,073号(参照することにより本明細書に組み入れられる)に対して、米国特許法§119(e)下で、優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
フルオロフォアによる生体分子の部位特異的標識は、標識化学の注意深い選択、標識効率のための標識反応の最適化および標識された生体分子の特性評価、部位特異性、ならびに官能基の維持をしばしば必要とする。タンパク質のために2つの最も一般に使用されるアプローチは、スルフヒドリル基または第一級アミンへの化学的カップリングに基づき、それは、与えられたタンパク質中のシステイン(Cys)残基およびリジン残基の特有の含量および分布の結果として、異なるタンパク質上に異なる標識パターンをもたらす。フルオロフォアによるタンパク質の部位特異的標識のために最も一般的な方法は、チオール反応試薬によるCys特異的標識である。この反応の間に、表面に暴露されたCys残基を持つタンパク質は、マレイミド、ヨードアセトアミド、またはフルオロフォアの他の反応性コンジュゲートによって共有結合で修飾される(Waggoner, Methods Enzymol., 246:362 (1995); Haugland、Handbook of Fluorescent Probes and Research Products、第8版、2002年; Selvin、Methods Enzymol., 246:300 (1995))。システインがまれなアミノ酸であり、部位特異的変異誘発を使用して他のアミノ酸と容易に置換することができるので、これは小さなタンパク質(約200残基未満)のための選択の方法である(Kunkel et al., Methods Enzymol., 205:125 (1991))。
【0003】
対象となるタンパク質にCys残基がないならば、標識の取り込みの部位は、高分解能三次元構造の検査(X線結晶構造解析または核磁気共鳴を使用して作成される)後に選択される。標識は、酵素活性またはタンパク質配列の空間的配置(「タンパク質折り畳み」としても公知である)を混乱させるべきでない。続いて、選択部位に存在するアミノ酸(好ましくは、Cysの側鎖に類似した電荷、サイズ、および疎水性の側鎖を有する)は、部位特異的変異誘発を使用して、Cysによって置換される(Kunkel et al., 1991)。
【0004】
未修飾タンパク質が単一の既存のCysを有するならば、構造的情報から、Cys側鎖の表面接近容易性の測定(Kapanidis et al., J. Mol. Biol., 312:453 (2001))と共に、存在するCysが標識に使用できるかどうかを決定することでき、そうでない場合には、既存のCysは構造的に類似するアミノ酸のセリンに変換することができ、その後にCys不含有タンパク質のための手順を行なうことができる。
【0005】
発現タンパク質ライゲーション(EPL)(Muir, Annu. Rev. Biochem., 72:249 (2003))と呼ばれる最近開発されたアプローチにおいて、タンパク質は、インテインドメインおよび親和性タグを持つC末端融合物で発現される。結果として生じる融合タンパク質は、親和性マトリックス上で発現宿主のタンパク質から分離することができる。固定化タンパク質を高濃度のチオールにより処理することは、インテインと標的タンパク質との間のペプチド結合の切断を導く。切断されたタンパク質は、カップリング部位で生来のペプチド結合を生成する生来の化学的ライゲーションによってN末端でCysを持つペプチド(または、実際は任意の分子)にカップリングされうる、C末端上のチオエステル基を保有する(Dawson et al., Science, 266:776 (1994))。このアプローチはタンパク質工学のためにうまく使用されたが、その欠点は、標的タンパク質の可溶性および折り畳みに影響を及ぼしうる大きな融合タンパク質を発現する必要があること、ならびに標的タンパク質の隣接残基の影響に起因してインテインスプライシング効率が異なることに関する(Zhang et al., Gene, 275:241 (2001))。
【0006】
代替戦略は、組換えタンパク質のN末端Cys上にフルオロフォアなどのチオエステルコンジュゲート官能基がカップリングされるものである(Schuler et al., Bioconjugate Chem., 13:1039 (2002))。いくつかの事例において、効率はタンパク質の間で変化するが、ポジション2のCysは発現宿主のアミノペプチダーゼによるメチオニン切断に際してN末端となる(Gentle et al., Bioconjugate Chem., 15:658 (2004))。別の戦略において、N末端Cysは、標的タンパク質にN末端で融合したインテインドメインの自己切断によって生成される。あるいは、N末端Cys残基は、適切に操作されたプロテアーゼ切断部位のタンパク質分解による切断によって生成することができる。切断部位の+1ポジションにCysがあることを許容することが示されたプロテアーゼには、第X因子、プレシジョンプロテアーゼ、およびTEVプロテアーゼがある(Cotton et al., Chem. Biol., 7:253 (2000); Tolbert et al., Angew. Chem. Int. Ed., 41:2171 (2002))。
【0007】
したがって、タンパク質またはペプチドの特異的部位への部位特異的な化学基の連結を支援する化合物、組成および方法が必要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、タンパク質などの生体分子の同定、定量化および/または精製を支援することができるフルオロフォアまたは他の検出できる基、例えば、レポーターモイエティ、親和性モイエティ、抗原、クエンチャー化合物、光架橋モイエティ、または固体支持体、に連結されたシアノベンゾチアゾールを提供する。例えば、かかるシアノベンゾチアゾール誘導体は、N末端でシステイン(「Cys」)残基を含有するタンパク質との迅速かつ特異的な反応が可能である。N末端Cys残基を有するタンパク質と反応することによって、シアノベンゾチアゾール誘導体はタンパク質のN末端でレポーターモイエティまたは他の官能基を導入することができる。1つの実施形態において、反応は、シアノベンゾチアゾール誘導体のシアノ基上のCysチオールの求核攻撃、続いて付随する環化によって進行させることができる。
【0009】
環化は安定したチアゾリン環を提供し、それによって、対象となるタンパク質のN末端へベンゾチアゾール誘導体を共有結合で添付する。誘導体は、シアノベンゾチアゾールの、例えば6’位に共有結合で連結された少なくとも1つのレポーターモイエティまたは親和性モイエティを含むことができる。内部Cys側鎖へのシアノベンゾチアゾール誘導体の付加は容易に除去することができる。除去は、Cys溶液を加え、典型的には約1乃至約10分間、多くの場合約2乃至約5分間、インキュベーションすることによって達成できる。
【0010】
本発明は、本発明のシアノベンゾチアゾール誘導体を使用して、対象となるタンパク質のN末端でレポーターモイエティまたは他の官能基を導入する方法もまた提供し、それによる標識タンパク質を提供する。Cys含有タンパク質は、ポジション2でCysを有するか、もしくはCysを有するように操作されたタンパク質、インテイン仲介性の方法によって調製されたタンパク質、または適切なプロテアーゼにより調製されたタンパク質でありえる。1つの実施形態において、誘導体は、以下の一般構造X−L−M(式中、Xはレポーターモイエティまたは親和性モイエティ、Lは省略可能なリンカー、Mはシアノベンゾチアゾールである)を有する。1つの実施形態において、Lは光切断できる。1つの実施形態において、Lは酵素の認識部位である。1つの実施形態において、Lは光切断できない。1つの実施形態において、Lは酵素の認識部位ではない。1つの実施形態において、X−L−Mは検出できないが、X−L−MとN末端Cys含有タンパク質との間の反応の産物は検出できる。1つの実施形態において、X−L−Mは検出できるが、X−L−MとN末端Cys含有タンパク質との間の反応の産物は検出できない。別の実施形態において、X−L−M、およびX−L−MとN末端Cys含有タンパク質との間の反応の産物は、例えば光学的に、区別することができる。
【0011】
本方法の適用は、タンパクの質構造および機能の検出または分析のためのタンパク質の部位特異的標識を含むが、これらに限定されない。本発明は、2−シアノベンゾチアゾールの誘導体を使用して、対象となる酵素などの分子を検出する分析を実行する方法もまた提供する。対象となる酵素は、キナーゼ、ホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、スルファターゼ、ペプチダーゼ、グリコシダーゼ、およびプロテアーゼ、例えば、アポトーシスに関与するプロテアーゼを含むが、これらに限定されない。本発明は、かかる分析において使用することができる新規の化合物および組成をさらに提供する。
【0012】
したがって、本発明は、特定の実施形態に従って、N末端でタンパク質を標識するインビトロの方法を提供する。方法は、少なくとも1つのレポーターモイエティまたは親和性モイエティを含むシアノベンゾチアゾールの誘導体と、末端Cys、例えば、N末端Cysを備えた少なくとも1つのタンパク質を含む混合物、例えば、タンパク質抽出物(溶解物)、精製タンパク質、またはタンパク質合成系の成分、を接触させることを含む。シアノベンゾチアゾール誘導体は、シアノベンゾチアゾールのベンゾモイエティに添付された少なくとも1つのレポーターモイエティまたは親和性モイエティを含むことができる。例えば、レポーターモイエティまたは親和性モイエティは、シアノベンゾチアゾールの4’、5’、6’または7’位に添付されうる。特定の実施形態において、レポーターモイエティまたは親和性モイエティは、シアノベンゾチアゾールの6’位に添付される。
【0013】
1つの実施形態において、末端Cysタンパク質を含有する混合物は、細胞溶解物、例えば、市販のライブラリーからの細胞溶解物である。1つの実施形態において、混合物は、少なくとも1つの核酸分子、例えば、mRNAやtRNA、アミノ酸および/またはチャージしたtRNA、リボソーム、1以上の翻訳開始因子、1以上の伸長因子、および1以上の終止因子、例えば、タンパク質合成系を含むことができる。その混合物は組み合わせた真核生物の転写/翻訳混合物でもありえる。
【0014】
シアノベンゾチアゾール誘導体は、任意のインビトロの翻訳系(例えば、コムギ麦芽抽出物、昆虫細胞溶解物、ウサギ網状赤血球溶血液(reticulocyte lysate)、原核生物の(例えばS30)大腸菌(E.coli)、カエル卵母細胞溶解物、イヌ膵臓溶解物、ヒト細胞溶解物、または精製したもしくは半精製した真核生物の翻訳因子の混合物を含むが、これらに限定されない真核生物の翻訳系)と共に用いることができる。1つの実施形態において、次にN末端でレポーターモイエティまたは親和性モイエティを有するタンパク質は、検出、単離、および/または定量される。
【0015】
1つの実施形態は、タンパク質、ペプチド、または他のカルボキシ含有分子のC末端部に、選択した化学基(例えば、フルオロフォアまたは他の検出できる基)を特異的に添付する方法を提供する。方法は、ベンゾチアゾール誘導体、例えば、式Iの化合物と、標識される分子を有する混合物を接触させることを含む。不安定な誘導体は、任意にチェイス試薬により除去することができ、それによって安定した検出できる基を持つ分子を有する混合物を産出する。
【0016】
本発明のベンゾチアゾール化合物は、式Iの化合物を含む。
【化1】

【0017】
可変し得る(variable)Zは、H、F、Cl、Br、I、CN、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルエステル(例えば、−CO2(アルキル))、カルボキシ、カルボン酸塩、アルキルアミド(−C(=O)NH(アルキル))、ホスフェート(−OPO(OH)2)、アルキルホスホネート、スルフェート(−OSO3H)、アルキルスルホネート、ニトロ、または任意に不飽和であり、任意にアミノ、ヒドロキシ、オキソ(=O)、ニトロ、チオールもしくはハロで置換された(C1−C10)アルキルであり得る。基Zは、シアノベンゾチアゾールの4’、5’または7’位に位置することができる。特定の実施形態において、Zは7’位に位置する。
【0018】
各R1は、独立して、H、F、Cl、Br、I、CN、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ、または(C1−C6)アルキルチオでありえ、各アルキル、アルコキシ、またはアルキルチオは、F、Cl、Br、I、アミノ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルスルホネート、またはCO2M(式中、MはH、有機陽イオンまたは無機陽イオン)で任意に置換され;nは0、1または2である。基R1(複数可)は、シアノベンゾチアゾールの4’、5’または7’位に位置することができる。特定の実施形態において、Zは7’位に位置することができる。
【0019】
基Yは、1以上(例えば、1、2、3、4、1〜5、または1〜6)のハロ、ヒドロキシ、オキソ、(C1−C6)アルキル、または(C1−C6)アルコキシで任意に置換され、かつ1以上(例えば、1、2、3、4、1〜5、または1〜6)のN(R1)、O、Sまたは−N−C(=O)−基で任意に中断された(C1−C16)アルキルを含む連結基でありえるか、またはYは存在しないことがありえる。用語「任意に中断される」は、連結基の1つのまたは両方の末端炭素を含む、連結基の1以上、例えば、1、2、3、4、1〜5、または1〜6つの炭素原子を、O、N(R1)、S、または−N−C(=O)−基で置き換えることができることを意味する。いくつかの実施形態において、例えば、Xがアジド(N3)である場合、Yは任意に存在しないことがありえる。例えば、いくつかの実施形態において、Yは、−(C1−C6)アルキル−、−O−(C1−C6)アルキル−、−O−(C1−C6)アルキル−O−、−O−(C1−C6)アルキル−NH−、−O−(C1−C6)アルキル−(CO)NH−、−NH−(C1−C6)アルキル−NH−、−NH−(CO)(C1−C6)アルキル−NH−、−NH−(CO)(C1−C6)アルキル−(CO)−NH−または−O−(C1−C6)アルキル−(CO)NH−(C1−C6)アルキル−でありえる。
【0020】
基Xは、レポーターモイエティ、親和性モイエティ、クエンチャー、光架橋モイエティ、固体支持体、N3、H、またはOHでありえる。特定の実施形態において、XがHまたはOHである場合、式Iの化合物は、例えば、Yが存在しない場合、2−ニトリルモイエティの炭素原子または窒素原子ではない任意の原子の放射性モイエティまたは同位体バリアントを含む。
【0021】
シアノベンゾチアゾールに添付された官能基は、検出できるかもしくは検出が可能であるか、または単離が可能な何らかの分子(またはその一部分)でありえる。それらのモイエティは、核酸分子(すなわちDNAまたはRNA、例えば、オリゴヌクレオチド)、薬物、タンパク質、ペプチド(例えば、リガンドによって認識されるエピトープ)、ハプテン(例えば、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH))、炭水化物、ビオチン、樹脂、酵素のための基質、フルオロフォア、発色団、および同種のもの、またはその組み合わせを含むが、これらに限定されない。例えば、核酸レポーターモイエティは、ハイブリダイゼーション、増幅、核酸レポーターに特異的な核酸結合タンパク質への結合、酵素的分析(例えば、核酸分子がリボザイムであるならば)によって検出することができるか、または、核酸分子がそれ自体検出できるかもしくは検出が可能な分子(例えば、放射標識またはビオチン)を含むならば、その分子に適切な分析によって検出することができる。
【0022】
核酸レポーターは、マイクロアレイまたはリボゾームディスプレイにおけるタンパク質の検出および/または単離に有用でありえる。T7ポリメラーゼ(IDAT)での増幅による免疫PCRおよび免疫検出も核酸レポーターの検出に適用可能である。例えば、シアノベンゾチアゾールに添付した核酸レポーターを用いてN末端Cys含有タンパク質を標識し、核酸を例えば蛍光ヌクレオチドの存在下で増幅し、次に増幅核酸を検出する(公開米国出願2002/0028450(Greene et al.)を参照)。タンパク質ベースのまたはペプチドベースのレポーターモイエティまたは親和性モイエティは、リガンド結合(例えばタンパク質またはペプチドに特異的な抗体への結合)、または生化学的活性、酵素活性もしくは発光活性によって検出することができ、例えば、タンパク質ベースのモイエティは、輸送ドメイン、抗体、カスパーゼ、ルシフェラーゼまたは緑色蛍光タンパク質(GFP)でありえる。
【0023】
親和性モイエティおよびそれらの対応するリガンド(例えば、マルトースおよびマルトース結合タンパク質、ビオチンおよびアビジンまたはストレプトアビジン、ならびにヒスチジンタグおよびコバルト、亜鉛、ニッケルまたは銅などの金属)は、例えば、ビーズ、樹脂、またはマルチウェルプレートのウェルなどの固体支持体上のタンパク質の検出および単離における特定の使用がある。タンパク質のN末端に配置された、UV励起および/または可視励起の蛍光検出によって検出できるものなどの、蛍光(または生物発光)レポーターは、リン酸化のようにリアルタイムで系の変化を感知するために使用することができる。さらに、金属イオンの化学センサー、例えば、Cu2+のための9−カルボニル−アントラセン修飾グリシル−ヒスチジル−リジンなどの蛍光分子、または1対の蛍光分子、例えば、フルオレセインおよびローダミンは、タンパク質バイオセンサーを形成するために、標識タンパク質に用いることができる。
【0024】
BODIPY、ローダミングリーン、GFP、または赤外色素などの、生物発光レポーターまたは蛍光レポーターは、例えば、BRET、FRET、LRETまたは電気泳動、例えば、キャピラリー電気泳動、を使用する相互作用研究においても使用される。相互作用研究のために、1以上の特異的な分子を標識タンパク質と組み合わせて(単離前または単離後のいずれかで)、標識タンパク質および1以上の分子を含有する混合物を形成する。
【0025】
そして1以上の分子と1以上の標識タンパク質の相互作用を検出することができる。したがって、かかるタンパク質、例えば、組換え遺伝子産物、遺伝子融合産物、酵素、サイトカイン、ホルモン、免疫原性タンパク質、炭水化物結合タンパク質、脂質結合タンパク質、核酸結合タンパク質、およびその断片を含む、ヒトタンパク質、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質、および寄生生物タンパク質を、検出、単離、および定量するために、シアノベンゾチアゾールの誘導体はタンパク質合成または合成タンパク質の混合物中で使用することができる。
【0026】
天然に存在する遺伝子または組換え遺伝子によってコードされるタンパク質を、本発明の方法を使用して、モイエティで標識することができる。次に、モイエティを含有するタンパク質は、当技術分野において公知の方法によって検出および/または単離することができる。例えば、タンパク質は、電気泳動またはゲル濾過、高圧液体クロマトグラフィーもしくは高速圧力液体クロマトグラフィー、質量分析、親和性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、化学的抽出、磁気ビーズ分離、沈殿、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、またはその任意の組み合わせを含む任意の手段によって、モイエティの特有の特性、例えば、モイエティの特異的なスペクトル特性を利用して、検出および/または単離することができる。単離タンパク質は、構造的および機能的な研究、診断適用の開発、薬物の開発のためのツールとしての生物学的または薬学的な試薬の調製、ならびにタンパク質相互作用の研究またはタンパク質複合体の単離および特性評価に用いることができる。
【0027】
本発明はキットも検討する。1つの実施形態において、キットは、レポーターモイエティまたは親和性モイエティを有するシアノベンゾチアゾールの誘導体、ならびに任意に標識タンパク質の検出、同定、および/または精製のための1以上の試薬(例えば、ビーズ、樹脂、カラム、および同種のものなどの試薬)を含む。別の実施形態において、キットは、シアノベンゾチアゾールの誘導体および少なくとも1つの試薬を含む。特定の実施形態において、試薬および誘導体は、個別の収容手段(例えばチューブ、バイアル、および同種のもの)中にある。いくつかのキットは、シアノベンゾチアゾールの固定化誘導体、またはシアノベンゾチアゾール誘導体を固定化する試薬を含む。かかるキットは、細胞翻訳系または無細胞翻訳系から任意に単離される、1以上のN末端で標識されたタンパク質を調製するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】様々な実施形態に記載の、本発明の組成および方法において有用な特定の特異的な化合物を図示した図である。
【図2(a)】様々な実施形態に記載の、本発明の組成および方法において有用な特定の特異的な化合物を図示した図である。
【図2(b)】様々な実施形態に記載の、本発明の組成および方法において有用な特定の特異的な化合物を図示した図である。
【図3】紫外線光に暴露してイメージングカメラ上で存在する紫外線光を遮断するフィルターを通して集めたときに、TLCプレート上で存在する蛍光種からの蛍光放射を検出する、アンビス・イメージング・システム・セット(Ambis Imaging system set)で取り込んだ薄層クロマトグラフィー(TLC)プレートの画像を示した図である。
【図4】本発明の化合物を、N末端システイン残基を有するタンパク質と共にインキュベートしたときに観察された標識の相対度を図示する。この相対度は、N末端Cys残基を有するタンパク質を、等しい量の第2のタンパク質(N末端アラニン残基を有するという点でのみN末端Cysタンパク質とは異なるタンパク質)で置き換えた同一の反応に対するものであり、両タンパク質は、実施例5において記載されるように、TEVプロテアーゼによる切断によって生成することができる。
【図5】実施例5に従って調製した蛍光ゲル画像およびクマシー染色ゲルを示し、TEVプロテアーゼによる融合物コンストラクトの切断によってN末端システインによるタンパク質を調製できることを示した図である。タンパク質は、シアノベンゾチアゾール試薬によりN末端で標識することができ、次に後続する工程において第2のプロテアーゼにより選択的に切断することができる。
【図6】実施例5の手順に記載の、ペプチド鎖切断、およびN末端でのみ標識したペプチドのクマシー染色ゲルを図示した図である。略称CN−BTは、本明細書に記載されるようなシアノベンゾチアゾール誘導体試薬;HT=ハロタグ;GST=グルタチオン−S−トランスフェラーゼ;TMR=テトラメチルローダミン;UC=未切断;およびFXa=第Xa因子プロテアーゼによる切断を示す。
【図7】実施例5の手順に記載の、ペプチド鎖切断、および非特異的に標識されたペプチド(内部システインおよびN末端システインの両方)のクマシー染色ゲルを図示した図である。略称CN−BTは、本明細書に記載されるようなシアノベンゾチアゾール誘導体試薬;HT=ハロタグ;GST=グルタチオン−S−トランスフェラーゼ;TMR=テトラメチルローダミン;UC=未切断;およびFXa=第Xa因子プロテアーゼによる切断を示す。
【図8(a)】実施例6において記載されるようなタンパク質間相互作用の検出に使用する標識の結果を図示した図である。
【図8(b)】実施例6において記載されるようなタンパク質間相互作用の検出に使用する標識の結果を図示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
定義
本明細書において使用される時、以下の用語および表現は示された意味を有する。本発明の化合物が非対称的に置換された炭素原子を含有し、光学活性体またはラセミ体で単離されうることが認識されるだろう。たとえば、ラセミ体の分割、または光学活性な出発材料からの合成による、光学活性体の調製法は、当技術分野において周知である。すべてのキラル体、ジアステレオマー体、ラセミ体および構造のすべての幾何学的な異性体は、本発明の一部である。
【0030】
ラジカル、置換基、および範囲について以下にリストされた特定値は、図解のみのためのものであり、それらは他の定義された値、またはラジカルおよび置換基のための定義された範囲内の他の値を除外しない。
【0031】
本明細書において使用される時、用語「置換された」は、基上の1以上(例えば、1、2、3、4、または5、いくつかの実施形態において1、2または3、および他の実施形態において1または2)の水素が、1以上の「置換基」(例えば、1以上の当業者に公知の適切な基の選択)で置き換えられるが、但し、指示された原子の標準原子価を上回らず、置換は安定化合物をもたらすことを示すように意図される。適切な置換基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリフルオロメチルチオ、ジフルオロメチル、アシルアミノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、ケト、チオキソ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルフィニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルフィニル、ヘテロアリールスルホニル、複素環スルフィニル、複素環スルホニル、リン酸、硫酸、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシル(アルキル)アミン、およびシアノを含む。さらに、適切な指示された基は、例えば、−X、−R、−O−、−OR、−SR、−S−、−NR2、−NR3、=NR、−CX3、−CN、−OCN、−SCN −N=C=O、−NCS、−NO、−NO2、=N2、−N3、NC(=O)R、−C(=O)R、−C(=O)NRR −S(=O)2O、−S(=O)2OH、−S(=O)2R、−OS(=O)2OR、−S(=O)2NR、−S(=O)R、−OP(=O)O2RR、−P(=O)O2RR −P(=O)(O−)2、−P(=O)(OH)2、−C(=O)R、−C(=O)X、−C(S)R、−C(O)OR、−C(O)O−、−C(S)OR、−C(O)SR、−C(S)SR、−C(O)NRR、−C(S)NRR、−C(NR)NRR(式中、各Xは、独立してハロゲン(「ハロ」):F、Cl、Br、またはIであり;各Rは、独立してH、アルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、保護基またはプロドラッグモイエティである)を含むことができる。当業者によって容易に理解されるように、置換基がケト(=O)もしくはチオキソ(=S)、または同種のものである場合、置換された原子の2個の水素原子が置き換えられる。いくつかの実施形態において、1以上の前述の基は、明らかに実施形態から除外することができる。
【0032】
用語「安定化合物」および「安定構造」は、反応混合物から有用な程度の純度まで単離物を残存させるのに十分に頑強な化合物を指す。安定化合物のみが本発明で請求されるが、特定の不安定化合物(例えば容易に単離することができないもの)を、本明細書に記載される方法において用いることができる。
【0033】
ある偏左右異性体は、他のものと比較して、優れた特性または活性を示しうる。必要な場合、ラセミ化合物の材料の分離は、キラルカラムを使用するHPLCによって、またはTucker et al., J. Med. Chem., 37: 2437 (1994)によって記載されるようなカンフォニッククロライド(camphonic chloride)などの分割剤を使用する分割によって達成することができる。キラル化合物は、キラル触媒またはキラルリガンド(例えばHuffman et al., J. Org. Chem., 60: 1590 (1995))を使用して、直接合成することもできる。
【0034】
本明細書において使用される時、用語「アルキル」は、例えば、1乃至20個の炭素原子、および多くの場合1乃至約12、1乃至約6、または1乃至約4個の炭素原子を有する分岐炭化水素、非分岐炭化水素、または環状炭化水素を指す。具体例は、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−メチル−1−プロピル、2−ブチル、2−メチル−2−プロピル(t−ブチル)、1−ペンチル、2−ペンチル,3−ペンチル、2−メチル−2−ブチル、3−メチル−2−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−1−ブチル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル,2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3−メチル−3−ペンチル、2−メチル−3−ペンチル、2,3−ジメチル−2−ブチル、3,3−ジメチル−2−ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、および同種のものを含むが、これらに限定されない。アルキルは、無置換であるか、または置換されうる。アルキルはさらに任意に、部分的または完全に不飽和でありえる。それゆえ、アルキル基の列挙はアルケニル基およびアルキニル基の両方を含む。上で記載および例示されるようにアルキルは一価炭化水素ラジカルでありえるか、または二価炭化水素ラジカル(すなわちアルキレン)でありえる。
【0035】
用語「アルケニル」は、モノラジカルの分岐または非分岐の部分的に不飽和の炭化水素鎖(すなわち、炭素−炭素sp2二重結合)を指す。1つの実施形態において、アルケニル基は、2乃至10個の炭素原子、または2乃至6個の炭素原子を有することができる。別の実施形態において、アルケニル基は2乃至4個の炭素原子を有する。具体例は、エチレンまたはビニル、アリル、シクロペンテニル、5−ヘキセニル、および同種のものを含むが、これらに限定されない。アルケニルは、無置換であるか、または置換されうる。
【0036】
用語「アルキニル」は、完全な不飽和の点を有する、モノラジカルの分岐または非分岐の炭化水素鎖(すなわち炭素−炭素sp三重結合)を指す。1つの実施形態において、アルキニル基は2乃至10個の炭素原子、または2乃至6個の炭素原子を有することができる。別の実施形態において、アルキニル基は2乃至4個の炭素原子を有することができる。この用語は、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、1−オクチニルなどの基、および同種のものによって例示される。アルキニルは、無置換であるか、または置換されうる。
【0037】
用語「シクロアルキル」は、単一の環式環または複数の縮合環を有する3乃至10個の炭素原子の環状アルキル基を指す。かかるシクロアルキル基は、一例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル、および同種のものなどの単環構造物、またはアダマンタニル、および同種のものなどの多重環構造物を含む。シクロアルキルは、無置換であるか、または置換されうる。シクロアルキル基は一価または二価でありえ、アルキル基について上記されるように任意に置換されうる。シクロアルキル基は、任意に1以上の不飽和の部位を含むことができ、例えば、シクロアルキル基は、例えば、シクロヘキセン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、および同種のものなどの、1以上の炭素−炭素二重結合を含むことができる。
【0038】
用語「アルコキシ」は、基アルキル−O−(式中、アルキルは本明細書において定義された通りである)を指す。1つの実施形態において、アルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソ−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペンタオキシ、n−ヘキサオキシ、1,2−ジメチルブトキシ、および同種のものを含む。アルコキシは、無置換であるか、または置換されうる。
【0039】
本明細書において使用される時、「アリール」は、親の芳香族環系の単一の炭素原子からの1つの水素原子の除去から誘導される芳香族炭化水素基を指す。ラジカルは、親の環系の飽和炭素原子または不飽和炭素原子に存在しうる。アリール基は6乃至20個の炭素原子を有することができる。アリール基は、単環(例えば、フェニル)または複数の縮合(融合)環を有することができ、そこでは少なくとも1つの環は芳香族(例えば、ナフチル、ジヒドロフェナントレニル、フルオレニル、またはアントリル)である。典型的なアリール基は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、および同種のものから誘導されるラジカルを含むが、これらに限定されない。アリールは、無置換であるか、またはアルキル基について上記されるように、任意に置換されうる。
【0040】
用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを指す。同様に、用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を指す。
【0041】
用語「ハロアルキル」は、本明細書において定義されるような1以上のハロ基(同じまたは異なりうる)で置換された、本明細書において定義されるようなアルキルを指す。1つの実施形態において、ハロアルキルは、1、2、3、4または5個のハロ基で置換されうる。別の実施形態において、ハロアルキルは、1、2または3個のハロ基で置換されうる。用語ハロアルキルは、ペルフルオロ−アルキル基も含む。代表的なハロアルキル基は、一例として、トリフルオロメチル、3−フルオロドデシル、12,12,12−トリフルオロドデシル、2−ブロモオクチル、3−ブロモ−6−クロロヘプチル、1H,1H−ペルフルオロオクチル、および同種のものを含む。ハロアルキルは、アルキル基について上記されるように任意に置換されうる。
【0042】
用語「ヘテロアリール」は、1、2または3個の芳香環を含有し、芳香環中に少なくとも1つの窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を含有する単環式環系、二環式環系、または三環式環系として本明細書において定義され、それは無置換であるか、または「置換された」の定義で上記されるように、例えば、1以上(特に1乃至3)の置換基で置換されうる。典型的なヘテロアリール基は、1以上のヘテロ原子に加えて2〜20個の炭素原子を含有する。ヘテロアリール基の具体例は、2H−ピロリル、3H−インドリル、4H−キノリジニル、アクリジニル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾチアゾリル、β−カルボリニル、カルバゾリル、クロメニル、シンノリニル、ジベンゾ[b,d]フラニル、フラザニル、フリル、イミダゾリル、イミジゾリル、インダゾリル、インドリシニル、インドリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフチリジニル、オキサゾリル、ペリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナルサジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリミジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、テトラゾリル、およびキサンテニルを含むが、これらに限定されない。1つの実施形態において、用語「ヘテロアリール」は、炭素を含有する5または6個の環原子、ならびに非過酸化酸素、硫黄およびN(Z)(式中、Zは存在しないか、またはH、O、アルキル、アリールもしくは(C1−C6)(アルキル)アリールである)から独立して選択される、1、2、3または4個のヘテロ原子を含有する単環式芳香環を意味する。別の実施形態において、ヘテロアリールは、それから誘導される約8乃至10個の環原子のオルト融合二環式複素環、特にベンゾ誘導体、またはそれにプロピレンジラジカル、トリメチレンジラジカルもしくはテトラメチレンジラジカルを融合させることによって誘導されるものを意味する。
【0043】
用語「複素環」は、酸素、窒素および硫黄の群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有し、用語「置換された」下で本明細書において定義されるような1以上の基で任意に置換された、飽和環系または部分的に不飽和の環系を指す。複素環は、1以上のヘテロ原子を含有する単環式基、二環式基、または三環式基でありえる。複素環基は、環へ添付されたオキソ基(=O)またはチオキソ基(=S)も含有することができる。複素環基の非限定的具体例は、1,3−ジヒドロベンゾフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、1,4−ジチアン、2H−ピラン、2−ピラゾリン、4H−ピラン、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、インドリニル、イソクロマニル、イソインドリニル、モルホリン、ピペラジニル、ピペリジン、ピペリジル、ピラゾリジン、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピロリジン、ピロリン、キヌクリジン、およびチオモルホリンを含む。
【0044】
例示のためであり限定するものではないが、用語「複素環」は、Paquette, Leo A.; Principles of Modern Heterocyclic Chemistry(W.A. Benjamin、ニューヨーク、1968年)、特に章1、3、4、6、7および9;The Chemistry of Heterocyclic Compounds、「A Series of Monographs」(ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社、ニューヨーク、1950年から現在)の特に13、14、16、19および28巻;ならびにJ. Am. Chem. Soc., 82: 5566 (1960)中に記載される、複素環のモノラジカルを含むことができる。1つの実施形態において、「複素環」は、本明細書において定義されるような「炭素環」を含み、そこでは1以上(例えば1、2、3または4個)の炭素原子はヘテロ原子(例えばO、N、またはS)で置き換えられている。
【0045】
例示のためであり限定するものではないが、複素環の具体例は、ジヒドロキシピリジル、テトラヒドロピリジル(ピペリジル)、チアゾリル、テトラヒドロチオフェニル、硫黄酸化テトラヒドロチオフェニル、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、ピペリジニル、4−ピペリドニル、ピロリジニル、2−ピロリドニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロイソキノリニル、アゾシニル、トリアジニル、6H−1,2,5−チアジアジニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、チエニル、チアントレニル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチニル、2H−ピロリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H−インドリル、1H−インダゾリ(indazoly)、プリニル、4Hキノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フラザニル、フェノキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペラジニル、インドリニル、イソインドリニル、キヌクリジニル、モルホリニル、オキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、オキシンドリル、ベンゾオキサゾリニル、イサチノイル、およびビス−テトラヒドロフラニルを含む。
【0046】
例示のためであり限定するものではないが、炭素結合複素環は、ピリジンの2、3、4、5もしくは6位、ピリダジンの3、4、5もしくは6位、ピリミジンの2、4、5もしくは6位、ピラジンの2、3、5もしくは6位、フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロールもしくはテトラヒドロピロールの2、3、4もしくは5位、オキサゾール、イミダゾールもしくはチアゾールの2、4もしくは5位、イソオキサゾール、ピラゾールもしくはイソチアゾールの3、4もしくは5位、アジリジンの2もしくは3位、アゼチジンの2、3もしくは4位、キノリンの2、3、4、5、6、7もしくは8位、またはイソキノリンの1、3、4、5、6、7もしくは8位で結合される。炭素結合複素環は、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、5−ピリジル、6−ピリジル、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、5−ピリダジニル、6−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、6−ピリミジニル、2−ピラジニル、3−ピラジニル、5−ピラジニル、6−ピラジニル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、および同種のものを含む。
【0047】
例示のためであり限定するものではないが、窒素結合複素環は、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2−ピロリン、3−ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2−イミダゾリン、3−イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2−ピラゾリン、3−ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、1H−インダゾールの1位、イソインドールまたはイソインドリンの2位、モルホリンの4位、およびカルバゾールまたはβ−カルボリンの9位で結合されうる。1つの実施形態において、窒素結合複素環は、1−アジリジル、1−アゼテジル、1−ピロリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル、および1−ピペリジニルを含む。
【0048】
用語「炭素環」は、単環として3乃至8個の炭素原子、二環として7乃至12個の炭素原子、および多環として最大約30個の炭素原子を有する飽和環、不飽和環または芳香環を指す。単環式炭素環は典型的には3乃至6個の環原子、さらにより典型的には5または6個の環原子を有する。二環式炭素環は、7乃至12個の環原子(例えば、ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]または[6,6]系としてアレンジされる)、またはビシクロ[5,6]もしくは[6,6]系としてアレンジされる9または10個の環原子を有する。炭素環の具体例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1−シクロペンタ−1−エニル、1−シクロペンタ−2−エニル、1−シクロペンタ−3−エニル、シクロヘキシル、1−シクロヘキサ−1−エニル、1−シクロヘキサ−2−エニル、1−シクロヘキサ−3−エニル、フェニル、スピリルおよびナフチルを含む。炭素環は、アルキル基について上記されるように任意に置換されうる。
【0049】
用語「アルカノイル」または「アルキルカルボニル」は、−C(=O)R(式中、Rは前に定義されるようなアルキル基である)を指す。
【0050】
用語「アシルオキシ」または「アルキルカルボキシ」は、−O−C(=O)R(式中、Rは前に定義されるようなアルキル基である)を指す。アシルオキシ基の具体例は、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、およびペンタノイルオキシを含むが、これらに限定されない。上で定義されるような任意のアルキル基をアシルオキシ基を形成するために使用することもできる。
【0051】
用語「アルコキシカルボニル」は、−C(=O)OR(または「COOR」)(式中、Rは前に定義されるようなアルキル基である)を指す。
【0052】
用語「アミノ」は、−NH2を指す。アミノ基は、用語「置換された」について本明細書において定義されるように、任意に置換されうる。用語「アルキルアミノ」は−NR2(式中、少なくとも1個のRはアルキルであり、第2のRはアルキルまたは水素である)を指す。用語「アシルアミノ」は、N(R)C(=O)R(式中、各Rは独立して水素またはアルキルまたはアリールである)を指す。
【0053】
用語「アミノ酸」は、D型またはL型の天然のアミノ酸残基(例えば、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Hyl、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、およびVal)に加えて、天然に存在しないアミノ酸(例えば、ホスホセリン、ホスホスレオニン、ホスホチロシン、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸;馬尿酸、オクタヒドロインドール−2−カルボン酸、スタチン、1,2,3,4,−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、ペニシラミン、オルニチン、シトルリン、α−メチル−アラニン、パラ−ベンゾイルフェニルアラニン、フェニルグリシン、プロパルギルグリシン、サルコシン、およびtert−ブチルグリシン)を含む。この用語は、従来のアミノ保護基(例えば、アセチルオキシカルボニルまたはベンジルオキシカルボニル)を持つ天然のアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸に加えて、カルボキシ末端で保護された天然のアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸も含む(例えば(C1−C6)アルキル、フェニルまたはベンジルのエステルまたはアミドとして;またはα−メチルベンジルアミドとして)。他の適切なアミノ保護基およびカルボキシ保護基は当業者に公知である(例えば、Greene, T.W.; Wutz, P.G.M. Protecting Groups In Organic Synthesis、第2版、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社、ニューヨーク(1991)、およびその中に引用される参照文献を参照)。
【0054】
用語「ペプチド」は、2乃至35個のアミノ酸(例えば上記で定義したような)またはぺプチジル残基の配列について説明する。配列は、直線状または環状でありえる。例えば、環状ペプチドは調製することができるか、または配列中の2個のシステイン残基間のジスルフィド架橋の形成から生じうる。好ましくはペプチドは、3乃至20個、または5乃至15個のアミノ酸を含む。米国特許第4,612,302号;第4,853,371号;および4,684,620において開示されるように、または実施例中で本明細書において以下に記載されるように、ペプチド誘導体を調製することができる。本明細書において具体的に列挙したペプチド配列は、左側にアミノ末端および右側にカルボキシ末端で書いてある。
【0055】
用語「サッカライド」は、糖または他の炭水化物、特に単糖を指す。サッカライドは、C6−ポリヒドロキシ化合物(典型的にはC6−ペンタヒドロキシ)および多くの場合環状グリカールでありえる。この用語は、公知の単糖およびそれらの誘導体に加えて、2以上のモノサッカライド残基を持つポリサッカライドを含む。アミノ酸の定義で上記されるように、サッカライドはヒドロキシル基上に保護基を含むことができる。サッカライドのヒドロキシル基は、1以上のハロ基またはアミノ基で置き換えられうる。さらに、1以上の炭素原子は、例えばケトン基またはカルボキシル基へ酸化することができる。
【0056】
用語「中断される」は、各々の指示された原子の標準原子価を上回らず、中断が安定化合物をもたらすならば、用語「中断される」を使用する表現において参照される特定の炭素鎖の2つの隣接した炭素原子(およびそれらが添付されている水素原子(例えば、メチル(CH3)、メチレン(CH2)またはメチン(CH)))の間に別の基が挿入されることを示す。炭素鎖を中断することができる適切な基は、例えば、1以上の非過酸化オキシ(−O−)、チオ(−S−)、イミノ(−N(H)−)メチレンジオキシ(−OCH2O−)、カルボニル(−C(=O)−)、カルボキシ(−C(=O)O−)、カルボニルジオキシ(−OC(=O)O−)、カルボキシラト(−OC(=O)−)、イミン(C=NH)、スルフィニル(SO)およびスルホニル(SO2)を含む。アルキル基は、1以上(例えば、1、2、3、4、5または約6)の前述の適切な基によって中断することができる。中断の部位は、アルキル基の炭素原子とアルキル基が添付されている炭素原子との間でもありえる。特定の実施形態において、1以上の前述の基は実施形態から除外される。
【0057】
上記の基(1以上の置換基を含有する)のいずれかに関して、かかる基が立体的に実際的でないおよび/または合成的に非実行可能な置換または置換パターンを含有しないことは当然理解される。さらに、本発明の化合物は、これらの化合物の置換から生じる立体化学的異性体をすべて含む。特定の実施形態において、本発明の化合物は、米国特許第5,424,440号(Klem et al.)において開示された化合物を含まない。
【0058】
本明細書に記載される化合物内の選択された置換基は、再帰的程度まで存在する。このコンテクストにおいて、「再帰的置換基(recursive substituent)」は、置換基がそれ自体の別の実例を列挙できることを意味する。かかる置換基の再帰的性質のために、理論的には、任意の与えられた請求において多数のものが存在しうる。医薬品化学および有機化学の当業者は、かかる置換基の総数が意図した化合物の所望される特性によって合理的に限定されることを理解する。かかる特性は、例示のためであり限定するものではないが、分子量、可溶性またはlogPなどの物理的特性、意図した標的に対する活性などの適用性、および合成の容易性などの実用的な特性を含む。
【0059】
再帰的置換基は、本発明の意図される態様である。医薬品化学および有機化学の当業者は、かかる置換基の使途の広さを理解する。再帰的置換基が本発明の請求において存在する程度まで、上で記載したように総数は決定される。
【0060】
本明細書において使用される時、用語「リンカー」は、2つの化学基をともに共有結合で添付し、酵素または別の分子によって切断されうる酵素のための基質を含むか、または感光性である原子鎖(典型的には炭素鎖)である。鎖は、1以上の窒素原子、酸素原子、カルボニル基、(置換された)芳香環、またはペプチド結合によって任意に中断され、および/またはこれらの基のうちの1つはリンカーを形成する原子鎖の1つまたは両方の端部に生じうる。多くのリンカーが当技術分野において周知であり、固体支持体または樹脂などの別の基に本明細書に記載される化合物または式を連結するために使用することができる。例えば、Peptides: Chemistry and Biology、ワイリー−VCH、ワインハイム(2002)、212−223ページにおいてSewald and Jakubkeによって;およびOrganic Synthesis on Solid Phase、ワイリー−VCH、ワインハイム(2002)においてDorwaldによって、記載されるリンカーおよび固体支持体を参照。
【0061】
本明細書において使用される時、「フルオロフォア」は、ある波長領域でエネルギーの吸収が可能であり、吸収範囲とは別の波長領域でエネルギーを放出することができる分子を含む。特定の実施形態において、フルオロフォアは、約250nm乃至約900nmでエネルギーの吸収が可能であり、約260nm乃至約910nmの波長領域でエネルギーを放出することができる分子である。用語「励起波長」は、フルオロフォアがエネルギーを吸収する波長の範囲を指す。用語「放射波長」は、フルオロフォアがエネルギーまたは蛍光を放出する波長の範囲を指す。
【0062】
フルオロフォアは、フルオロセイン、テキサスレッド、DAPI、PI、アクリジンオレンジ、アレクサフルオル(例えば、アレクサ 350、アレクサ405またはアレクサ488)、Cy3、Cy5およびCy7などのシアニン色素、クマリン、エチジウムブロマイド、フルオレセイン、BODIPY、ロードール、Rox、5−カルボキシフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン、アントラセン、2−アミノ−4−メトキシナフタレン、フェナレノン、アクリドン、フッ素化キサンテン誘導体、α−ナフトール、β−ナフトール、1−ヒドロキシピレン、クマリン(例えば、7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC)または7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン(AFC))、ローダミン(例えば、テトラメチルローダミン、ローダミン−110、カルボキシローダミン)、クレシルバイオレット、またはレゾルフィンに加えて、米国特許第6,420,130号(Makings, et al.)(この開示は参照することによって本明細書に組み入れられる)において開示されたフルオロフォアを含むが、これらに限定されない。フルオロフォアは、式Ar−[CH=CH]n−[CH=]mAr(式中、Arはアリール基またはヘテロアリール基であり;nは1、2、3または4であり;mは0または1であり;式中、各Arは四級窒素または共鳴を介する四級化が可能な窒素を含む)の化合物などのシアニン色素を含む。かかるアリール基またはヘテロアリール基の具体例は、ジメチル−アミノフェニル、イミダゾール、ピリジン、ピロール、キノリン、チアゾール、およびインドールを含み、各々は任意に置換される。フルオロフォアは、本質的に蛍光性であるか、または生物学的化合物への結合に際して蛍光の変化を示す化合物でありえる、すなわち、蛍光発生的でありえるか、または強度をクエンチングによって減少させることができる。フルオロフォアは、フルオロフォアの可溶性、分光特性または物理的特性を変更する置換基を含有することができる。様々なフルオロフォアは当業者に公知であり、ベンゾフラン、キノリン、キナゾリノン、インドール、ベンゾアゾール、ボラポリアザインダセン、およびキサンテン(フルオロセイン、ローダミンおよびロードールを含む)に加えて、インビトロゲン・モレキュラー・プローブス(Invitrogen Molecular Probes)社から入手可能な多数のフルオロフォアについて記載するRichard P. Haugland’s The Handbook, A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies(第10版、2005年)中で記載される他のフルオロフォアも含むが、これらに限定されない。
【0063】
「蛍光発生的分析」または「蛍光発生的反応」は、反応の産物が蛍光性である反応を含む。「蛍光発生的分析試薬」は、基質に加えて、蛍光発生的反応のためのコファクター(複数可)またはタンパク質(例えば酵素)などの他の分子(複数可)を含むことができる。
【0064】
用語「固体支持体」は、シリカートまたはポリマー粒子などの固体形態で反応混合物から単離することができる支持体を指す。固体支持体は、ビーズ、マイクロタイタープレート、エッペンドルフチューブ、およびスライドなどの様々な粒子および表面を含む。表面は、セファロース、セルロース、アルギナート、ポリスチレンもしくは他のプラスチックなどのポリマー、および/または膜およびガラスを含む他の表面でありえる。多くの一般的な固体支持体が、Peptides: Chemistry and Biology、ワイリー−VCH、ワインハイム(2002)、212−223ページにおいてSewald and Jakubkeによって;およびOrganic Synthesis on Solid Phase、ワイリー−VCH、ワインハイム(2002)においてDorwaldによって記載される。シアノベンゾチアゾールを、固体支持体に非特異的に(表面への吸着を介して)または特異的に(「サンドイッチ」ELISAでのように、シアノベンゾチアゾールに特異的抗体による捕捉を介して)のいずれかで連結することができる。固体支持体の表面上の検出抗体は酵素に共有結合で連結することができるか、またはバイオコンジュゲーションを介して酵素に連結した二次抗体によってそれ自体を検出することができる。ELISA「サンドイッチ」試験手順の具体例については、Schuurs and van Weemen, J. Immunoassay 1980;1:229-49を参照。
【0065】
用語「レポーターモイエティ」は、生物学的混合物または非生物学的混合物(例えばフルオロフォア、発色団、または放射性元素)中で検出することができる分子の部分を指す。レポーターモイエティは、リガンドアナログに添付されたときに、レポーター分子がその生来の特性(例えば、分光特性、コンフォーメーション、および/または活性)を保持して、エネルギー伝達ペアのメンバーとして機能することが可能であり、本明細書において開示された方法で使用される分子でありえる。レポーターモイエティは、シアノベンゾチアゾールに連結したレポーター分子でありえる。レポーター分子の具体例は、核酸、ボラポリアザインダセン、クマリン、キサンテン、シアニン、ならびに適切な活性化に際して検出できるシグナルの産生が可能な、色素、蛍光タンパク質、発色団および化学発光化合物を含む発光分子を含むが、これらに限定されない。用語「色素」は、観察でき検出できるシグナルを産生する光を放射する化合物を指す。「色素」は、ピグメント、フルオロフォア、化学発光化合物、発光化合物および発色団を含むが、これらに限定されない、リン光化合物、蛍光化合物および非蛍光化合物を含む。用語「発色団」は、機器類の補助なしで観察することができる可視スペクトルの光を放射および/または反射する標識を指す。
【0066】
用語「親和性モイエティ」、「親和性標識」、および/または「親和性分子」は、対象となる分子、生体分子、または材料に非共有結合または共有結合で効果的に結合することができる分子の部分を指す(例えば、ビオチン、Hisタグ、またはキチン)。親和性モイエティはアクセプター基を含有する分子でありえる。したがって、親和性モイエティを含むシアノベンゾチアゾール誘導体は、別の分子(例えば、生物学的起源または非生物学的起源でありえる親和性モイエティに結合する分子)との親和性モイエティの選択的な相互作用があるので、標識された分子または複合体の同定および分離を促進するために使用することができる。
【0067】
用語、「クエンチャー」または「クエンチングモイエティ」は、強い光子吸収体であり、非蛍光性であるかまたは本質的に非蛍光性であり、その周辺の他の分子の蛍光を効果的にクエンチングする、分子または分子の一部分を指す。クエンチングモイエティは、再放射されない(非蛍光性)か、または検出できるようにドナー分子によって放射されたエネルギーとは異なる波長で再放射される、エネルギー供与体からのエネルギーの吸収が可能なモイエティでありえる。この点では、特定の実施形態において、クエンチャーは本質的には非蛍光性または蛍光性でありえる。シアノベンゾチアゾールに連結できるクエンチャーモイエティのいくつかの具体例は、キサンテン、キサンテン誘導体、シアニン、シアニン誘導体、ジメチルアミノアゾスルホン酸(DABSYL)、およびジメチルアミノアゾ−カルボン酸(DABCYL)を含む。多数のクエンチングモイエティは当技術分野において周知であり、キサンテン、シアニン、およびRichard P. Haugland’s The Handbook, A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies(第10版、2005年)中で開示された他の化合物を含む。クエンチャーおよび蛍光のクエンチングは、Principles of Fluorescence Spectroscopy、第2版、ニューヨーク:クルーワー・アカデミック/プレナム(Kluwer Academic/Plenum)社(1999)中でJ. Lakowiczによってさらに記載され;特に、8章(「Quenching of Fluorescence」)237−264ページ;および第3版、ニューヨーク:スプリンガー・サイエンス(Springer Science)社(2006)、8章278−327ページ、ならびにその中で引用された参照文献を参照。特定の実施形態において、クエンチャーは、ドナーに添付されたときに蛍光ドナーからの放射を減少させることができる、発色団分子または化合物の一部でありえる。クエンチングは、蛍光共鳴エネルギー転移、光誘起電子移動、項間交差の常磁性増強、デクスター交換カップリング、および暗複合体の形成などの励起子カップリングを含む複数の機構のいずれかによっても起こりうる。
【0068】
用語「アクセプター」は、エネルギー伝達を介して作動するクエンチャーを指す。アクセプターは蛍光として転移エネルギーを再放射することができ、「アクセプター蛍光モイエティ」である。アクセプターの具体例は、クマリンおよび関連フルオロフォア、キサンテン(フルオレセイン、ロードールおよびローダミンなど)、レゾルフィン、シアニン、ジフルオロボラジアザインダセン、ならびにフタロシアニンを含む。他のアクセプターの化学的クラスは、一般的には光として転移エネルギーを再放射しない。具体例は、いくつかのインジゴ、ベンゾキノン、アントラキノン、アゾ化合物、ニトロ化合物、インドアニリン、ならびにジフェニルメタンおよびトリフェニルメタンを含む。
【0069】
用語「光架橋モイエティ」は、光励起に際して別の分子、生体分子または対象となる材料に共有結合で結合することができる分子の部分を指す。例えば、光架橋モイエティを含む化合物は、光励起に際してタンパク質を架橋するために使用することができる。
【0070】
用語「対象となる酵素」は、本発明の方法または当技術分野において公知の他の方法を使用して標識することができる任意の酵素を指す。対象となる酵素は、例えば、キナーゼ、ホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、スルファターゼ、ペプチダーゼ、グリコシダーゼ、プロテアーゼ(例えば、アポトーシスに関与するプロテアーゼ)、ヒドロラーゼ、オキシドリダクターゼ、リアーゼ、トランスフェラーゼ、イソメラーゼ、リガーゼ、タンパク質キナーゼ、タンパク質ホスファターゼ、エステラーゼ、イソメラーゼ、グリコシラーゼ、シンセターゼ、脱水素酵素、オキシダーゼ、リダクターゼ、メチラーゼ、および同種のものを含む。さらなる対象となる酵素は、エステル(有機および無機の両方)の作製または加水分解、糖鎖付加、およびアミド結合の加水分解に関与するものを含む。任意のクラスにおいて、キナーゼにおけるように、さらなる細分がありえ、キナーゼは、ペプチドおよびタンパク質中のセリン、スレオニンおよび/またはチロシン残基のリン酸化に特異的でありえる。
【0071】
対象となる他の酵素は、酵素活性を示す任意のタンパク質、例えば、リパーゼ、ホスホリパーゼ、スルファターゼ、ウレアーゼ、ペプチダーゼ、プロテアーゼ、およびエステラーゼを含み、酸性ホスファターゼ、グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ、ガラクトシダーゼ、カルボキシルエステラーゼ、およびルシフェラーゼを含む。1つの実施形態において、酵素は加水分解酵素である。加水分解酵素の具体例は、アルカリフォスファターゼおよび酸性ホスファターゼ、エステラーゼ、デカルボキシラーゼ、ホスホリパーゼD、P−キシロシダーゼ、β−D−フコシダーゼ、チオグルコシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、α−D−ガラクトシダーゼ、α−D−グルコシダーゼ、β−D−グルコシダーゼ、β−D−グルクロニダーゼ、α−D−マンノシダーゼ、β−D−マンノシダーゼ、β−Dフルクトフラノシダーゼ、ならびにβ−D−グルコシドウロナーゼ(glucosiduronase)を含む。
【0072】
さらなる対象となる酵素はヒドロラーゼであり、カルボン酸エステルヒドロラーゼ、チオールエステルヒドロラーゼ、リン酸モノエステルヒドロラーゼ、リン酸ジエステルヒドロラーゼ、3リン酸モノエステルヒドロラーゼ、硫酸エステルヒドロラーゼ、2リン酸モノエステルヒドロラーゼ、リン酸トリエステルヒドロラーゼ、5’−ホスホモノエステルを産生するエキソデオキシリボヌクレアーゼ、5’−ホスホモノエステルを産生するエキソリボヌクレアーゼ、3’−ホスホモノエステルを産生するエキソリボヌクレアーゼ、リボ核酸またはデオキシリボ核酸のいずれかで活性のあるエキソヌクレアーゼ、リボ核酸またはデオキシリボ核酸のいずれかで活性のあるエキソヌクレアーゼ、5’−ホスホモノエステルを産生するエンドデオキシリボヌクレアーゼ、5’−ホスホモノエステル以外を産生するエンドデオキシリボヌクレアーゼ、変更した塩基に特異的な部位特異的エンドデオキシリボヌクレアーゼ、5’−ホスホモノエステルを産生するエンドリボヌクレアーゼ、5’−ホスホモノエステル以外を産生するエンドリボヌクレアーゼ、リボ核酸またはデオキシリボ核酸のいずれかで活性のあるエンドリボヌクレアーゼ、リボ核酸またはデオキシリボ核酸グリコシラーゼで活性のあるエンドリボヌクレアーゼなどの、エステル結合に作用する酵素;グリコシダーゼ(例えば、O−グリコシル化合物およびS−グリコシル化合物を加水分解する酵素、ならびにN−グリコシル化合物を加水分解する酵素);トリアルキルスルホンイウムヒドロラーゼまたはエーテルヒドロラーゼなどの、エーテル結合に作用する酵素;アミノペプチダーゼ、ジペプチターゼ、ジペプチジルペプチダーゼおよびトリペプチジルペプチダーゼ、ペプチジルジペプチダーゼ、セリンタイプカルボキシペプチダーゼ、メタロカルボキシペプチダーゼ、システインタイプカルボキシペプチダーゼ、オメガペプチダーゼ、セリンエンドペプチダーゼ、システインエンドペプチダーゼ、アスパラギン酸エンドペプチダーゼ、メタロエンドペプチダーゼ、スレオニンエンドペプチダーゼ、ならびに未知の触媒機構のエンドペプチダーゼなどの、ペプチド結合に作用する酵素(ペプチドヒドロラーゼ);直線状アミド、環状アミド、直線状アミジン、環状アミジン、ニトリル、または他の化合物などのペプチド結合以外の炭素−窒素結合に作用する酵素;亜リン酸含有無水物およびスルホニル含有無水物中のものなどの酸無水物に作用する酵素;酸無水物に作用する酵素(膜間移動を触媒する);酸無水物に作用するか、または細胞の移動および細胞レベル以下の移動に関与する酵素;炭素−炭素結合(例えば、ケトン物質中の)に作用する酵素;ハロゲン化物結合(例えばC−ハロゲン化物化合物中の)に作用する酵素、リン−窒素結合に作用する酵素;硫黄−窒素結合に作用する酵素;炭素−リン結合に作用する酵素;ならびに硫黄−硫黄結合に作用する酵素含むが、これらに限定されない。
【0073】
用語「ポリ−ヒスチジントラクト」または「Hisタグ」は、2乃至10個のヒスチジン残基を含む分子、例えば、5乃至10残基のポリ−ヒスチジントラクトを指す。ポリ−ヒスチジントラクトは、固定化した金属(例えば、ニッケル、亜鉛、コバルトまたは銅)キレートカラム上で、または別の分子(例えば、Hisタグと反応性の抗体)との相互作用を介して、共有結合で連結した分子の親和性精製を可能にする。
【0074】
リンカー
リンカー戦略を用いて、レポーターモイエティ(例えば、フルオロフォア、親和性モイエティ、またはビオチン、樹脂、炭水化物、オリゴペプチド、色素もしくは薬物モイエティなどの別の標識基)をシアノベンゾチアゾールに連結し、N末端システインを有するタンパク質との反応が可能なシアノベンゾチアゾール誘導体を産出する。リンカーまたは「連結基」の使用は当技術分野において周知である。
【0075】
連結基は、(C1−C6)アルキル基または(C1−C6)アルコキシ基などのアルキル鎖またはアルコキシ鎖でありえる。鎖は、アルデヒド基、アセチル基、スルホキシド基、スルホン基、ニトロ基、シアノ基またはその組み合わせなどの、1以上の電子求引性基の置換基Rを有することができる。共有結合の調製のための特定のリンカーおよび方法は、例えば、米国特許第7,282,339号(Beechem et al.)において;Sewald and JakubkeによるPeptides: Chemistry and Biology、ワイリー−VCH、ワインハイム(2002)、212−223ページにおいて;およびDorwaldによるOrganic Synthesis on Solid Phase、ワイリー−VCH、ワインハイム(2002)において記載され、それらは参照することにより本明細書に組み入れられる。
【0076】
特定の実施形態において、連結基は、式W−Aの二価ラジカル(式中、Aは(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニル、(C2−C6)アルキニル、(C3−C8)シクロアルキル、または(C6−C10)アリールであり;Wは、−N(R)C(=O)−、−C(=O)N(R)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)2−、−N(R)−、−C(=O)−、または直接結合であり;各Rは、独立してH、(C1−C6)アルキルまたは保護基である)でありえ;リンカー基は、レポーターモイエティなどの2つの他の分子モイエティ(例えばシアノベンゾチアゾールモイエティおよび上で定義されるような基X)をともに連結する。
【0077】
固定化
本発明は、固定化したシアノベンゾチアゾール誘導体、およびシアノベンゾチアゾール誘導体を固定化する方法を含む。いくつかの固定化されたシアノベンゾチアゾールは、ベンゾ環上の(例えば、6’−位での)位置で固体支持体に連結したものを含む。他の固定化されたシアノベンゾチアゾールは、生体活性基(例えばビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、またはその誘導体)、抗体もしくは抗原などによる非共有結合相互作用、またはニッケルカラムに対するHisタグによって、固体支持体の表面に結合されるものを含む。さらに、他の固定化されたシアノベンゾチアゾールは、対象となる末端Cys含有タンパク質とシアノベンゾチアゾールを反応させ、続いて対象となるタンパク質を結合する予定の固体支持体表面上に適切な抗体を有する固体支持体と結合させることによって調製することができる。
【0078】
標識方法
本発明は、タンパク質の標識および検出、ならびに/または細胞翻訳系もしくは無細胞翻訳系からの標識タンパク質の単離のための方法を含む。単離タンパク質は直接使用することができるか、またはさらに精製および/または操作することができる。1つの実施形態において、方法は、定義されたタンパク質(例えば、定義されたタンパク質の集団)と共に用いるか、または細胞もしくは発現ライブラリーから得たものなどの1以上の定義されていないタンパク質を含むタンパク質のセットと共に用いることができる。
【0079】
1以上のタンパク質は、真核生物細胞(例えば、酵母細胞、トリ細胞、植物細胞、昆虫細胞、またはヒト細胞、サル細胞、マウス細胞、イヌ細胞、ウシ細胞、ウマ細胞、ネコ細胞、ヒツジ細胞、ヤギ細胞もしくはブタ細胞を含むがこれらに限定されない哺乳類細胞)もしくは原核生物細胞、または2以上の異なる生物からの細胞を含むサンプル、または細胞溶解物もしくはその上清からでありえる。
【0080】
本明細書において開示される方法は、任意の検出できる分子または検出が可能な分子により、N末端にCysを持つタンパク質を標識することを含む。Cysは、組換え技術(例えば、インテイン仲介性スプライシングによって融合タンパク質中のものなどのCysを暴露させるか、または適切なプロテアーゼ部位を挿入する)を介してタンパク質に付加することができるか、Cysは、N末端アミノペプチダーゼに感受性のあるタンパク質中のポジション2に天然に存在しうるか、または合成の様々な合成技術(例えばペプチドライゲーション、またはリバースプロテオリシスを介する)によって付加することができる(例えば、Wehofsky, J. Amer. Chem. Soc. 125:6126 (2003)およびChang, P.N.A.S. 91:12,544 (1994)を参照)。例えば、その少なくとも1つがN末端Cysを有するタンパク質の調製物を、フルオロフォアを有するシアノベンゾチアゾールの誘導体と反応させて、N末端に共有結合で連結されたフルオロフォアを含む少なくとも1つのタンパク質を形成する。リンカー基は、シアノベンゾチアゾールへのレポーターモイエティまたは親和性モイエティの連結を促進するために用いることができる。
【0081】
A.標識のための例示的なモイエティ
標識は、検出できるか、または検出が可能な分子(モイエティ)を含み、1つの実施形態において、本明細書に記載される化合物および方法において有用なモイエティは、シアノベンゾチアゾールの誘導体を介してCysのアミノ基に共有結合で連結されることが可能な分子である。化合物および方法において有用なモイエティは、モイエティを含むタンパク質の検出および任意に定量化ならびに/または単離を促進する、1以上の特性を有する。1つの物理的特性は、放射もしくは吸収などの特徴的な電磁気スペクトル特性、磁性、電子スピン共鳴、静電容量、誘電率または導電率である。特定の実施形態において、モイエティは、強磁性、常磁性、反磁性、発光性、電気化学発光性、蛍光性、リン光性、染色性、抗原性、または特有な質量を有しうる。
【0082】
関連するモイエティは、核酸分子(すなわち、DNAまたはRNA、例えば、ヌクレオチド類似体を有するものなどのオリゴヌクレオチドもしくはヌクレオチド、タンパク質の結合が可能なDNA、対象となる遺伝子に対応する一本鎖もしくは二本鎖DNA、対象となる遺伝子に対応するRNA、終止コドンを欠くmRNA、アミノアシル化開始tRNA、アミノアシル化アンバーサプレッサーtRNA、またはRNAiのための二本鎖RNA)、タンパク質(例えば、発光タンパク質)、ペプチド、ペプチド核酸、リガンドによって認識されるエピトープ(例えば、ビオチンまたはストレプトアビジン)、ハプテン、アミノ酸、脂質、脂質二分子層、固体支持体、フルオロフォア、発色団、レポーター分子、放射性核種(例えば放射性測定で使用される放射性同位体または安定同位体など)、電子不透過性分子、X線造影試薬、MRIまたはX線の造影剤(例えば、バリウム、ヨウ素、マンガン、ガドリニウム(III)または酸化鉄粒子)、および同種のものを含むが、これらに限定されない。
【0083】
1つの実施形態において、モイエティは、糖タンパク質、ポリサッカライド、三重項増感剤(例えばCALI)、薬物、毒素、脂質、ビオチン、または固体支持体(自己組織化単分子層として、電子不透過性であり、発色団であるなど)、ナノ粒子、酵素、酵素のための基質、酵素の阻害剤(例えば自殺基質)、コファクター(例えばNADP)、コエンザイム、スクシンイミジルエステルまたはアルデヒド、グルタチオン、NTA、ビオチン、cAMP、ホスファチジルイノシトール、cAMPのためのリガンド、金属、スピントラップとして使用されるニトロキシドまたはニトロン(電子スピン共鳴(ESR)によって検出される)、金属キレーター(例えば、造影剤としての使用のため、時間分解蛍光において、または金属の捕捉のため)、光ケージド化合物(例えば照射がフルオロフォアなどのケージド化合物を遊離する場合)、インターカレーター(例えば、ソラーレンもしくはDNAの結合に有用な別のインターカレーターなど、または光活性化できる分子など)、三リン酸塩またはホスホアミダイト(例えば、DNAまたはRNAへの基質の取り込みを可能にする)、抗体、ヘテロ二官能性架橋剤(コンジュゲートタンパク質または他の分子にとって有用なものなど)、架橋剤(ヒドラジド、アリールアジド、マレイミド、ヨードアセトアミド/ブロモアセトアミド、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、ピリジルジスルフィドなど混合ジスルフィド、グリオキサール/フェニルグリオキサール、ビニルスルホン/ビニルスルホンアミド、アクリルアミド、ボロン酸エステル、ヒドロキサム酸、イミダートエステル、イソシアネート/イソチオシアネート、またはクロロトリアジン/ジクロロトリアジンを含むがこれらに限定されない)、糖タンパク質、ポリサッカライド、脂質二分子層を含む脂質であるか;または固体支持体(例えば、セファロースビーズまたはセルロースビーズ)、膜、ガラス(例えばスライドグラス)、セルロース、アルギナート、プラスチックポリマーまたは他の合成的に調製されるポリマー(例えば、エッペンドルフチューブまたはマルチウェルプレートのウェル)、自己組織化単分子層、表面プラズモン共鳴チップ、または電子伝導表面との固体支持体であり、薬物、アミノアシル化tRNA(アミノアシル化開始tRNAまたはアミノアシル化アンバーサプレッサーtRNAなど)、Ca2+を結合する分子、K+を結合する分子、Na+を結合する分子、pH感受性分子、放射性核種、電子不透過性分子、NOの存在下において蛍光を発するかまたは活性酸素に感受性のある分子、酵素のための非タンパク質基質、酵素の阻害剤、可逆的または不可逆的のいずれかである阻害剤、キレート剤、架橋基(例えば、スクシンイミジルエステルまたはアルデヒド)、グルタチオン、ビオチンまたは他のアビジン結合分子、アビジン、ストレプトアビジン、ホスファチジルイノシトール、ヘム、cAMPのためのリガンド、金属、NTAを含み、1つの実施形態において、1以上の色素(例えばキサンテン染料)、カルシウム感受性色素(例えば、1−[2−アミノ−5−(2,7−ジクロロ−6−ヒドロキシ−3−オキシ−9−キサンテニル)−フェノキシ]−2−(2’−アミノ−5’−メチルフェノキシ)エタン−N,N,N’,N’−四酢酸(Fluo−3))、ナトリウム感受性色素(例えば、1,3−ベンゼンジカルボン酸,4,4’−[1,4,10,13−テトラオキサ−7,16−ジアザシクロオクタデカン−7,16−ジイルビス(5−メトキシ−6,2−ベンゾフランジイル)]ビス(PBFI))、NO感受性色素(例えば、4−アミノ−5−メチルアミノ−2’,7’−ジフルオレセイン)、または他のフルオロフォアを含む。1つの実施形態において、モイエティは放射性核種ではない。別の実施形態において、モイエティは、診断法において有用な分子を含む放射性核種(例えば,3H、14C、35S、125I、131I)である。
【0084】
例示的なモイエティは、ハプテン(例えば、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)などの免疫原性の促進に有用な分子)、切断できるモイエティ(例えば、光切断できるビオチン)、および蛍光モイエティ(例えば、N−ヒドロキシ−スクシンイミド(NHS)で修飾したクマリン、およびスクシンイミドまたはスルホノスクシンイミドで修飾したBODIPY(UVおよび/または可視光励起蛍光検出によって検出することができる)、ローダミン(例えばR110)、ロードール、CRG6、テキサスメチルレッド(カルボキシテトラメチルローダミン)、5−カルボキシ−X−ローダミン、またはフルオロセイン、クマリン誘導体(例えば、7−アミノクマリンおよび7−ヒドロキシクマリン)、2−アミノ−4−メトキシナフタレン、1−ヒドロキシピレン、レゾルフィン、フェナレノンまたはベンゾフェナレノン(米国特許第4,812,409号)、アクリジノン(米国特許第4,810,636号)、アントラセン、ならびにα−ナフトールおよびβ−ナフトールの誘導体、フッ素化フルオレセインおよびロードールを含むフッ素化キサンテン誘導体(例えば、米国特許第6,162,931号))、生物発光分子(例えば、ルシフェリン、セレンテラジン、ルシフェラーゼ)、化学発光分子(例えば安定化ジオキセタン)、ならびに電気化学発光分子を含む。
【0085】
親和性モイエティの具体例は、免疫原性分子(例えば、タンパク質、ペプチド、炭水化物または脂質のエピトープ、すなわち、その分子に特異的な抗体を調製するのに有用な任意の分子);ビオチン、アビジン、ストレプトアビジンおよびその誘導体;金属結合分子;ならびにこれらの分子の断片および組み合わせなどの分子を含む。例示的な親和性分子は、His5(HHHHH)(配列番号:1)、His×6(HHHHHH)(配列番号:2)、C−myc(EQKLISEEDL)(配列番号:3)、フラッグ(DYKDDDDK)(配列番号:4)、Steptタグ(WSHPQFEK)(配列番号:5)、HAタグ(YPYDVPDYA)(配列番号:6)、チオレドキシン、セルロース結合ドメイン、キチン結合ドメイン、S−ペプチド、T7ペプチド、カルモデュリン結合ペプチド、C−エンドRNAタグ、金属結合ドメイン、金属結合反応基、アミノ酸反応基、インテイン、ビオチン、ストレプトアビジン、およびタンパク質結合マルトースを含む。
【0086】
例えば、タンパク質のN末端にビオチンが存在することで、アビジン分子(例えば表面(例えばビーズ、マイクロウェル、ニトロセルロースおよび同種のもの)の上にコートしたアビジン分子)に対してそれらのタンパク質の選択的結合が可能になる。適切な表面は、クロマトグラフ分離のための樹脂、プラスチック(結合プレートのための組織培養表面、マイクロタイターディッシュおよびビーズなど)、セラミックスおよびガラス、磁気微粒子を含む粒子、ポリマーならびに他のマトリックスを含む。処理表面を例えばリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、非新生タンパク質および他の翻訳試薬および単離された新生タンパク質を除去する。いくつかの事例において、これらの材料は、光ファイバー、 ChemFET、およびプラズモン検出器などの生体分子検出装置の一部でありえる。
【0087】
親和性分子の別の具体例はダンシルリジンである。ダンシル環系と相互作用する抗体は市販で入手可能か(シグマ・ケミカル(Sigma Chemical)社;セントルイス、ミズーリ)、または、Antibodies: A Laboratory Manual(Harlow and Lane, 1988)中で記載されるものなどの公知のプロトコールを使用して調製することができる。例えば、抗ダンシルの抗体はクロマトカラムの充填材料上に固定化される。この方法(親和性カラムクロマトグラフイー)は、固定化された抗体と、カラム上に保持されるべき基質(例えば親和性モイエティに連結されたベンゾチアゾール誘導体)との間の複合体を、固定化した抗体との相互作用に起因して形成させるが、他の分子はカラムを通過させることによって、分離を遂行する。次に、複合体は抗体−抗原相互作用の破壊によって遊離させることができる。イオン交換樹脂または親和性セファロース樹脂などの特異的なクロマトカラム材料、セファクリル樹脂、セファデックス樹脂および他のクロマトグラフィー樹脂は市販で入手可能である(シグマ・ケミカル社;セントルイス、ミズーリ;ファルマシア・バイオテク(Pharmacia Biotech)社;ピスカタウェイ、ニュージャージー)。ダンシルリジンは蛍光特性があるので便利に検出することができる。
【0088】
アクセプター分子として抗体を用いる場合、分離は、フィルターまたは他の表面(ビーズ、プレートまたは樹脂などの)上での抗体の免疫沈降および固定化などの他の生化学的分離方法を介しても実行することができる。ビーズは、しばしば磁場を使用して混合物から分離される。
【0089】
別のクラスのモイエティは、電磁放射を使用して検出できる分子を含み、キサンテンフルオロフォア、ダンシルフルオロフォア、クマリンおよびクマリン誘導体、蛍光アクリジニウムモイエティ、ベンゾピレンベースのフルオロフォアに加えて、7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、ならびに3−N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール4−イル)−2,3−ジアミノ−プロピオン酸を含むが、これらに限定されない。好ましくは、蛍光分子は生来のアミノ酸とは異なる波長で高量子収率の蛍光を有し、より好ましくはスペクトルの可視部分、またはUV部分および可視部分の両方において、励起できる高量子収率の蛍光を有する。あらかじめ選ばれた波長での励起に際して、肉眼で、または従来の蛍光検出方法を使用してのいずれかで、分子を低濃度で検出できる。ルテニウムキレートおよびその誘導体またはニトロキシドアミノ酸およびその誘導体などの電気化学発光分子は、フェムトモーラー範囲およびそれ以下で検出できる。
【0090】
1つの実施形態において、任意に検出できるモイエティは、以下の1つ:
【化2】

(式中、R1は、例えば、(C1−C8)アルキルであり、1以上の置換基で任意に置換される)を含む。
【0091】
モイエティ標識タンパク質の単離および/または検出に用いることができる方法は、ゲル濾過クロマトグラフィー、高速圧力クロマトグラフィーまたは高圧液体クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、電気泳動、キャピラリー電気泳動、および等電点電気泳動法を含むクロマトグラフ技術を含む。分離の他の方法(例えば、電気泳動、等電点電気泳動法および質量分析)は、検出および後続する単離のためにも有用である。
【0092】
分離は、フィルターまたは他の表面(ビーズ、プレートまたは樹脂などの)上の抗体の免疫沈降および固定化などの他の生化学的分離方法を介しても実行することができる。例えば、タンパク質は、タンパク質特異的抗体により常磁性粒子をコートすることによって単離することができる。磁場を使用して、ビーズをタンパク質翻訳抽出物から分離する。
【0093】
タンパク質を検出するようにデザインされた多くの装置は、特異的なアクセプター分子(例えば固定化されたアクセプター分子)と標的タンパク質の相互作用に基づく。タンパク質が親和性モイエティを含有していれば、固定化されたアクセプター基との標的分子の相互作用に起因して変わる材料の表面プラズモン、光散乱および電子特性の変化の感知に基づいた生体検出器などのかかる装置も、タンパク質を検出するために使用することができる。
【0094】
B.過剰な標識試薬のクエンチング
1つの実施形態において、過剰な未反応標識(例えば化合物3028)の蛍光は、標識反応へのクエンチング試薬の添加によってクエンチングすることができる。クエンチング試薬は、例えば公知の蛍光クエンチャーにコンジュゲートした任意のβ−メルカプトエチラミンでありえる。かかるクエンチング試薬の1つの可能な具体例は化合物3191である。
【化3】

β−メルカプトエチラミンは任意の未反応標識試薬のシアノベンゾチアゾールモイエティと反応することができ、それによって標識試薬のフルオロフォアにクエンチャーをコンジュゲートする。この種のクエンチング試薬は、タンパク質に既にコンジュゲートされた任意の標識と反応しないか、またはクエンチングしない。
【0095】
電磁放射を使用して検出できるモイエティ
電磁放射を使用して検出できるモイエティは、ダンシルフルオロフォア、クマリンおよびクマリン誘導体、蛍光アクリジニウムモイエティ、ベンゾピレンベースのフルオロフォア、に加えて7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、ならびに3−N−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール4−イル)−2,3−ジアミノ−プロピオン酸を含むが、これらに限定されない。1つの実施形態において、蛍光モイエティは生来のアミノ酸とは異なる波長で高量子収率の蛍光を有し、スペクトルのUV部分または可視部分のいずれか、またはスペクトルのUV部分および可視部分の両方で励起することができる高量子収率の蛍光を有する。あらかじめ選ばれた波長での励起に際して、肉眼的に、または従来の蛍光検出方法を使用して、モイエティを低濃度で検出できる。ルテニウムキレートおよびその誘導体またはニトロキシドアミノ酸およびその誘導体などの電気化学発光標識は、フェムトモーラー範囲およびそれ以下で検出できる。
【0096】
蛍光モイエティに加えて、電磁場および放射線に対するモイエティの相互作用および応答に基づいた物理的特性を備えた様々なモイエティは、タンパク質産生を検出するために使用することができる。これらの特性は、電磁スペクトルのUV領域、可視領域および赤外領域への吸収、ラマン活性でありさらに共鳴ラマン分光によって増強することができる発色団の存在、電子スピン共鳴活性および核磁気共鳴活性、ならびに分子質量(例えば、質量分析計による)を含む。モイエティのこれらの電磁分光学的特性は、好ましくは生来のアミノ酸は保持しないか、または生来のアミノ酸の特性から容易に区別できる。
【0097】
検出できる電磁分光特性を備えた蛍光モイエティおよび他のモイエティは、様々な器具(分光計または蛍光計および同種のものなど)によって検出し、生来のアミノ酸の電磁分光特性と区別することができる。分光計は、蛍光分光計、ラマン分光計、吸収分光計、電子スピン共鳴分光計、可視分光計、赤外分光計および紫外分光計を含む。別個の電気的性質を持つモイエティなどの他のモイエティは、電流計または電圧計または他の分光計などの装置によって検出することができる。電磁場と標識の特有な相互作用に関するモイエティの物理的特性は、蛍光分光計、ラマン分光計、吸収分光計、または電子スピン共鳴分光計などの器具を使用して、容易に検出できる。モイエティは、検出を可能にする外部応力または薬剤(電磁場または反応物分子など)に応答した色変化などの、化学反応、生化学反応、電気化学反応または光化学反応も行うことができる。
【0098】
蛍光化合物のどのクラスが使用されるかに関係なく、検出は、細胞タンパク質系または無細胞タンパク質系において存在する他の生体分子からのタンパク質の物理的分離を含みうる。タンパク質分離は、例えば、ゲル電気泳動またはカラムクロマトグラフイーを使用して実行することができる。フルオロフォアを含有するタンパク質のゲル電気泳動による検出は、従来の蛍光検出方法を使用して遂行することができる。無細胞系におけるタンパク質合成後に、反応混合物(タンパク質合成のために必要なすべての生体分子に加えて、タンパク質を含有する)を、ポリアクリルアミドまたはアガロースからなるゲル上にロードする。反応混合物のロードに続いて、適用する電場の方向でゲル上のタンパク質を空間的に分離する電圧が加えられる。タンパク質は分離され、ゲル染色前の技術またはクマシーブルー染色などのゲル染色後の技術を使用して可視化することができる、1セットの分離したバンドまたは重複するバンドとして出現する。ゲル上のタンパク質バンドの移動はタンパク質の分子量の関数であり、ローディング位置からの距離の増加は分子量の低下となる関数である。適切な波長で励起されたときに、N末端Cys標識タンパク質を含有するゲル上のバンドは蛍光を示す。これらのバンドは、肉眼で、写真でまたは分光計で検出することができ、所望されるならばタンパク質はゲル切片から精製される。
【0099】
タンパク質の分子量および量は、標識した(例えば、蛍光標識した)所定の分子量のタンパク質の1セットのバンドと、ゲル上のバンド位置を比較することによって決定することができる。例えば、既知の量で既知の分子量(ウシ血清アルブミン、66kD;ブタの心臓フマラーゼ、48.5kD;カルボニックアンヒドラーゼ、29kD;β−ラクトグロブリン、18.4kD;α−ラクトグロブリン、14.2kD;シグマ・ケミカル社;セントルイス、ミズーリ)を持つ市販で入手可能な標準的なマーカータンパク質を含有するキャリブレーションゲルに比べたゲル上の相対位置から、分子量25,000のタンパク質を決定することができる。キャリブレーションタンパク質は、モイエティを持つタンパク質と同じ方法を使用して、検出を便利にするために類似したモイエティを含有することができる。これは、モイエティに類似するかまたは同一である分子と直接キャリブレーションタンパク質を反応させることによって、多くの事例において遂行することができる。したがって、pIまたは分子量に基づいて選択されたような1以上のキャリブレーションタンパク質(タンパク質マーカー)は、例えば、フルオレセイン、ローダミン、BODIPYまたは赤外線タイプモイエティを使用して、本発明の方法によって標識することができ、任意に単離することができる。
【0100】
例えば、キャリブレーションタンパク質は、それらの蛍光性の相当物を得るように塩化ダンシル、またはNHS修飾BODIPY FLにより修飾することができる。これらの蛍光タンパク質はPAGEを使用して分析することができる。蛍光モイエティを含有するサンプルタンパク質とともにこれらの蛍光キャリブレーションタンパク質を組み合わせた検出は、合成されたタンパク質の分子量および量の両方を正確に決定することができる。必要であるならば、各々のキャリブレーションおよびタンパク質の内のモイエティの量は、正確な定量化を行うために決定することができる。所定のレベルの蛍光モイエティを持つタンパク質は、モイエティ持つサンプルタンパク質の定量化を行うために有利に使用することができる。
【0101】
キャピラリー電気泳動、等電点電気泳動法、低圧クロマトグラフィーおよび高性能液体クロマトグラフィーまたは高速圧力液体クロマトグラフィーを含む、タンパク質分離の他の方法は、電磁放射により検出できるモイエティを含有するサンプルタンパク質の検出ならびに後続する単離および精製に有用である。これらの事例において、個別のタンパク質は、モイエティの放射波長で蛍光検出器によって個別に分析できる画分へと分離される。あるいは、オンライン蛍光検出はタンパク質がカラム分画システムから出現するときに、タンパク質を検出するために使用することができる。保持時間の関数としての蛍光のグラフは、産生されたタンパク質の量および純度の両方に対する情報を提供する。
【0102】
標識タンパク質の使用および例示的な検出方法
本発明の方法によって調製されたモイエティ含有タンパク質は、特定のタンパク質の量または存在の検出、タンパク質の単離、ハイスループットスクリーニングまたはロースループットスクリーニングの促進、タンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質−DNA相互作用または他のタンパク質ベースの相互作用の検出(例えば、モイエティを使用するタンパク質マイクロアレイを使用して、アレイにタンパク質を結合させるか、または結合したタンパク質を検出する)、タンパク質の免疫原性の促進(例えば、1以上のタンパク質のN末端は、タンパク質に対する抗体の産生を促進しさらに免疫の前に抗原精製を促進するハプテンで標識することができる)、特定の細胞位置または細胞レベル以下の位置へのタンパク質の標的化(例えば、タンパク質局在化ドメインである標識は、タンパク質を、核、葉緑体もしくはミトコンドリアへ、または例えば肝臓特異的抗体を介して特異的細胞へ標的化することができる)、タンパク質の部位特異的配向の提供(例えば、モイエティのためのリガンドは、半固体表面もしくは固体表面に添付されるか、または半固体表面もしくは固体表面(ガラスなど)へ添付された任意の長さのリンカー(例えばポリエチレングリコール(「PEG」)のような有機リンカー)に添付される)、レポーター標識(例えばルシフェラーゼ)および対象となるタンパク質(例えばCYP450)を含むキメラタンパク質の調製、タンパク質マーカーの調製、またはタンパク質上のペプチド、抗原エピトープおよび結合部位のマッピングを、含むがこれらに限定されない任意の目的に有用である。
【0103】
さらに、標識タンパク質には、タンパク質ディスプレイ技術および指向性進化における使用がある。リボソームディスプレイ技術、核酸−タンパク質融合ディスプレイ技術およびファージディスプレイ技術は、タンパク質−タンパク質相互作用および指向性進化を研究するために広く使用されている。リボソーム関連ディスプレイ技術において、インビトロの溶解物発現系は、mRNA−タンパク質−リボソーム複合体またはmRNA−タンパク質/cDNA−タンパク質/DNA−タンパク質融合産物の産生のために用いられる(公表済みの米国特許出願第2001/0046680号ならびに米国特許第6,194,550号;6,207,446;および5,922,545を参照)。本発明の誘導体を使用するタンパク質のN末端標識は、標的の単離、同定および選択を支援する。このアプローチは、リボソーム/核酸−タンパク質ディスプレイベースのタンパク質マイクロアレイにおけるタンパク質相互作用の検出にも有用である。したがって、本発明の誘導体は、タンパク質標的の単離、特性評価および同定に特に有用である。
【0104】
ファージディスプレイにおけるインビトロの溶解物ベースのタンパク質発現の使用は、公表済みの米国特許出願第2001/0029025号中で記載されている。cDNA/mRNAライブラリーは本発明の誘導体と共に細胞溶解物中で発現され、cDNAを発現するファージディスプレイライブラリーは、インビトロで発現させたタンパク質に対してスクリーニングされる。相互作用するタンパク質は、クローニング工程の必要性なしにN末端標識によって容易に同定することができる。このアプローチは指向性進化におけるタンパク質バリアントの選択にも有用である。さらに、本発明の誘導体を使用してインビトロで合成される標識タンパク質は、例えば、ファージディスプレイベースのタンパク質マイクロアレイ/ビーズ技術と共に使用して、ファージディスプレイを伴うタンパク質相互作用を検出するために使用することができる。多重化も可能である。
【0105】
細胞溶解物中のインビトロの転写および翻訳がタンパク質の指向性進化に使用される、指向性進化のための別のアプローチは、公表済み米国特許出願第2001/0039014号中に記載される。このアプローチにおいて、本発明の誘導体と共にN末端標識を使用して、改善された機能を持つ変異タンパク質の単離、精製、および特性評価を容易に遂行することができる。
【0106】
さらに、標識タンパク質は、例えば、エンドサイトーシス、透過化または顕微注射を介して細胞に導入することができる。
【0107】
質量分析は分子の質量を測定する。生物学における質量分析の使用は急速に進歩しており、炭水化物、タンパク質、核酸、生体分子複合体の分析を含む多様な領域において適用される。例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析(MS)の開発は、タンパク質、オリゴヌクレオチドおよびオリゴ糖を含む生体分子の分析のために重要なツールを提供してきた。この技術の成功は、高精度(0.01%)および高感度(フェムトモル以下の量)で、大きな生体分子および非共有結合性複合体(>500,000Da)の分子量を決定する能力に由来する。今までのところ、迅速DNA塩基配列決定、生物活性ペプチドのためのスクリーニングおよび膜タンパク質の分析を含む生物学および医学の多様な領域において適用可能であることが見出されている。
【0108】
表面プラズモン共鳴(SPR)は、タンパク質/タンパク質相互作用を研究するために使用することができる。SPRは、光学的性質(特に結合後の表面の屈折率)の変化に基づく。次に、この変化(非常に正確に測定することができる)は、結合の程度および率の両方を検出するために使用することができる。例えば、前面上にリガンド単層を有する薄い金層の裏面に可変角度で当たる入射光は、リガンド単層へと貫通する。相互作用が表面プラズモンにより起こり、反射光は、特定の角度で、プラズモン共鳴に起因して最小まで減少する。最小の位置が検出され、屈折率の計算ができる。リガンドによる分子の結合は屈折率を変化させる。高分子表面上のタンパク質の吸着、DNAへのタンパク質結合性、金表面上の自己組織化単分子層とのタンパク質の相互作用、リン脂質層とのタンパク質の相互作用、および抗体抗原相互作用を測定するために、SPRが使用されてきた。例えば、カルボキシメチル化デキストランマトリックスのセンサーチップ(バイオコア(Biocore))はストレプトアビジンで前固定化されている。本発明の方法によって調製されたビオチン標識タンパク質を、1以上のタンパク質と接触させ、接触の前および後に光学的性質を決定した。
【0109】
電気泳動を用いて、タンパク質を検出および/もしくは単離するか、または翻訳系において翻訳されるタンパク質と分子の相互作用を検出することができる。多くのタンパク質は複数のタンパク質パートナーと同時に相互作用することができる。例えば、あるタンパク質は最大86個の細胞内で相互作用するタンパク質を有することができる。電気泳動と併用した標識タンパク質(例えば、親和性標識、フルオロフォア標識、発光標識または生物発光標識で標識した)の使用は、無限の数の同時に起こるタンパク質−タンパク質相互作用および/またはタンパク質−核酸相互作用の観察を可能にする。
【0110】
したがって、本発明の方法は、タンパク質が単離されていないか、またはその機能が同定されていない場合でさえ、特異的な遺伝子の発現タンパク質との可能な相互作用の迅速なスクリーニングを、非常に多数の分子について可能にする。それは、タンパク質を単離する必要性なしに、分子(例えば化合物)との相互作用について迅速にスクリーニングされる予定の遺伝子のプールによって発現されるタンパク質のライブラリーも可能にする。例えば、分子のライブラリーをスクリーニングして、特異的な標的タンパク質のリガンドとして働くものを同定することができる。分子は、化合物のコンビナトリアルライブラリーの一部でありえるか、または治療用化合物を含有しうる天然サンプルなどの複雑な生物学的混合物中に存在しうる。分子は結合によって新生タンパク質と相互作用するか、または化学的修飾もしくは酵素的修飾によって新生タンパク質の構造もしくは他の特性の変化を引き起こすことができる。
【0111】
特異的な分子の相互作用は、特異的な分子に暴露された新生タンパク質の存在または非存在を、暴露されていない新生タンパク質の類似した分析または測定と、比較することによって決定することができる。次に、分子の結合強度は、タンパク質合成系へ加えた特異的な分子の濃度の変更、ならびに非複合体化新生タンパク質および複合体化新生タンパク質へ割り当てられたバンドの相対強度の変化の測定によって、確認することができる。複合体化タンパク質または非複合体化タンパク質の検出および/または単離は、ゲル電気泳動(ポリアクリルアミドゲルなどのゲル中のタンパク質の電気泳動度を測定する)に加えて、キャピラリー電気泳動(CE)を使用して実行することができる(例えば、米国特許第5,571,680号(Chen)を参照)。CEは、分子の電荷対質量比に比例するタンパク質の電気泳動の移動時間を測定する。
【0112】
1つの実施形態において、種々の標識は、対象となる2以上のタンパク質へ導入され、例えば、各タンパク質のN末端で、または1つのタンパク質のN末端および他のタンパク質の内部で導入される。例えば、各々の異なるタンパク質は、種々のタンパク質上の標識とは異なる波長で光を放射する標識を含む。2つの標識タンパク質を、結合のために好ましい条件下で混合する。次に結合混合物をCEにかけ、2つのタンパク質の複合体に加えて、非複合体化タンパク質を検出する。さらに、第2の標識(第1の標識の近接に対して感受性のある)を持つ対象となるタンパク質について可能性のあるリガンドを標識すること(例えば、FRET、BRETまたはLRETを使用する)は、2つの標識の近接の検出を可能にする。
【0113】
CEの1つの形態(親和性キャピラリー電気泳動と時には呼ばれる)は、結合がタンパク質の電荷対質量比の変化を結合事象後に生ずる限り、小さなリガンドを含む他の分子とタンパク質の相互作用に高度に感受性があることが見出されてきた。例えば、新生タンパク質と抗体の相互作用は、形成された複合体の有効な電気泳動度の変化に起因して検出することができる。しかしながら、タンパク質が蛍光色素などの特異的に検出できる電磁スペクトル特性を備えた標識を有するならば、最も高い感度を得ることができる。電気泳動クロマトグラム中のピークの検出は主として可視光線のレーザーに誘起された放射によって遂行される。CEに有用な蛍光色素の具体例は、フルオロセイン、ローダミン、テキサスレッドおよびBODIPYを含む。
【0114】
標識タンパク質への1以上の分子の結合に関与する相互作用に加えて、リン酸化、プロテオリシス、および糖鎖付加を含むがこれらに限定されない標識タンパク質の修飾をもたらす相互作用は、電気泳動を使用して検出することができる。
【0115】
サンプル中の対象となるタンパク質の濃度を決定するために、サンプルを、対象となる対応標識タンパク質、ならびに対象となる標識タンパク質および対象となる未標識タンパク質の両方に結合するタンパク質と混合することができる。次に混合物をCEにかけることができ、対象となるタンパク質の濃度が決定される(例えば、米国特許第5,571,680号(Chen)を参照)。「サンドイッチ」ELISAでのように、この技術は、例えばシアノベンゾチアゾールに特異的な抗体による捕捉を介する、例えばELISAに類似した技術を使用して、標識および/または未標識タンパク質の捕捉にも使用することができる。ELISA「サンドイッチ」試験手順の具体例については、Schuurs and van Weemen, J. Immunoassay 1980;1:229-49を参照。
【0116】
一般的な合成方法
標識および検出できるモイエティ(例えばシアノベンゾチアゾールまたはその誘導体に共有結合で連結されるもの)は、対象となるペプチドとの反応後に複雑な混合物中のその分子を即座に検出することを可能にする。標識は、本明細書に記載される技術による化学合成によって、または当業者に周知の技術によって、シアノベンゾチアゾールコアに付加されるものでありえる。例えば、コア分子上への蛍光標識または他の標識の添付は、化学的修飾によって遂行することができる。Greg T. Hermanson、Bioconjugate Techniques、アカデミックプレス(Academic Press)社、サンディエゴ、カリフォルニア(1996)を参照。本明細書に記載される化合物を調製するのに使用することができる一般的な合成方法に関する追加情報は、Michael B. Smith and Jerry MarchによるMarch’s Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms, and Structure、第5版、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社;およびWuts et al.(1999)、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、ジョン・ワイリー・アンド・サン社中に見出すことができる。
【0117】
本発明の化合物を調製する方法は、特定の実例において異性体を生ずることができる。本発明の方法はこれらの異性体の分離を常に必要とするとは限らないが、所望されるならば、かかる分離は当技術分野において公知の方法によって遂行することができる。例えば、分取高性能液体クロマトグラフィー法は、例えば、キラルパッキングを備えたカラムの使用によって、異性体精製のために使用することができる。
【0118】
連結基Yにシアノベンゾチアゾールを連結して式Iの化合物を形成する一般的な方法は、当技術分野において典型的に周知である。かかる「連結」反応または「カップリング」反応は、標準的な技術である。様々なベンゾチアゾール誘導体に連結基をカップリングするのに使用する技術は、Hermanson’s Bioconjugate Techniquesなどの標準的なハンドブック中に見出すことができる。当然、当業者は、適切なシアノベンゾチアゾールと基Y−Xとの間の反応だけではなく、適切に官能基化された基X(適切な親電子性物質または求核分子を持つ基Xなどの)とシアノベンゾチアゾール−Y基との間の反応によっても、式Iの化合物を調製することができることを認識するだろう。例えば、連結基上の第1級ヒドロキシル基はトルエンスルホニル基などの離脱基に変換することができ、次にその基は求核分子(例えば脱プロトン化6’−ヒドロキシシアノベンゾチアゾール)で置換することができる。シアノベンゾチアゾール−Y基を形成する具体的な例は、Zhou(J. Amer. Chem. Soc. 2006, 128(10), 3122を参照)によって記載される。
【0119】
式Iの化合物の調製に有用な多数のスクシンイミジルエステルは、例えば、インビトロゲン社から、市販で入手可能である。さらに、当業者は、スクシンイミジルエステルの調製に試薬および条件を一般に使用することができる。Hermanson’s Bioconjugate Techniquesは、式Iの化合物の調製に使用することができる連結反応の広汎な説明を、特にパートI(「機能的標的」および「反応基の化学」について記載する)(1〜416ページ)中で提供する。例えば、スクシンイミジルエステルの調製に使用される一般的な試薬は、N−ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」、J. Am. Chem. Soc., 86:1839 (1964))、およびジシクロヘキシル−カルボジイミド(「DCC」)または1,3−ジメチルアミノプルプロピル(dimethylaminoprproply)−エチルカルボジイミドなどのカルボジイミド活性化剤を含む。あるいは、「自己活性化」NHS誘導体は、N−トリフルオロアセチル−スクシンイミド(「TFA−NHS」)、N,N−ジスクシンイミジルカルボナート(Tetrahedron Lett., 22:4817 (1981))、またはO−(N−スクシンイミジル)−N,N,N’,N’−ビス(テトラメチレン)ウラニウムヘキサフルオロホスファートなどが使用されうる。ベンゾチアゾールまたは活性化されている連結基の反応性および可溶性に依存して、条件は有機溶媒から水性溶媒にわたりうる。例えば、適切な有機溶媒はジメチルホルムアミド(「DMF」)でありえる。これらの反応は、ヒンダードアミン塩基(例えば、トリエチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン)などの塩基の存在下において実行することができるが、水性条件は約6.5乃至約8.5の範囲にpHを調整することを含みうる。
【0120】
基X−Yが、環状ヌクレオチド、核酸または多くの化学療法薬およびタンパク質などと共に、アミンを含有している場合、次にかかる基のスクシンイミジルエステルを、カップリング反応において使用することができる。基Xが、多くのクエンチャー、タンパク質、化学療法薬およびアビジンなどと共に、酸を含有している場合、次に酸はスクシンイミジルエステルに変換され、シアノベンゾチアゾールに以前に連結したアミン末端Y基と組み合わせることができる。スルホスクシンイミジルエステル、テトラフルオロフェニルエステル、スルホジクロロフェノールエステル、イソチオシアネート、塩化スルホニル、ジクロロトリアジン、アリールハライド、またはアシルアジドなどの他の活性基は、アミンと連結するために、スクシンイミジルエステルの代わりに使用することができる。さらに、当業者は、容易に、酸化、還元および置換反応を含む標準的な形質転換を使用して、適切なアミンまたは酸に特定の有機モイエティを変換することができる。さらに、保護基は式Iの特定の化合物の調製を簡単にするために使用することができる。保護基の使用は当技術分野において周知である(例えば、Greene、Protecting Groups In Organic Synthesis;ワイリー:ニューヨーク、1981年を参照)。
【0121】
以下の実施例は上述の発明を説明するように意図され、およびその範囲を狭めるように解釈されるべきではない。当業者は、本発明を実行することができるかもしれない他の多くの方法を実施例が示唆することを、容易に認識するだろう。本発明の範囲内にとどまるならば、多くの変形および修飾が行われうることが理解される。
【実施例】
【0122】
実施例1
シアノベンゾチアゾール誘導体の調製
パートA。4−(3−(2−シアノベンゾ[d]チアゾール−6−イルオキシ)プロピルカルバモイル)−2−(3−(ジメチルアミノ)−6−(ジメチルイミニオ)−6H−キサンテン−9−イル)ベンゾアートの合成;「2−シアノ−(6−オキソプロピルアミドテトラメチル−5’−カルボキシローダミン)ベンゾチアゾール」(化合物3028):
【化4】

【0123】
方法A:
ジクロロメタン(1mL)、トリフルオロ酢酸(1mL)およびアニソール(250μL)中に、100mgの6−(N−Boc−3−アミノプロピルオキシ)−2−シアノ−ベンゾチアゾール(または「tert−ブチル3−(2−シアノベンゾ[d]チアゾール−6−イルオキシ)プロピルカルバマート」(W. Zhou, J. Amer. Chem. Soc. 2006, 128(10), 3122))を含有するフラスコを、0℃で撹拌した。2時間後に溶媒を蒸発させた。エーテル(2mL)を加えて産物を沈殿させた。白色固体を2mLのジエーテルエーテルで2回洗浄し、真空下で乾燥した。固体はさらなる精製なしに使用された。
【0124】
上述の固体を含有するフラスコへ、1mLのDMFおよびDIPEA(50μL)中に溶解した6−TAMRA SE(138mg、0.3mmol、1当量)を加えた。室温で24時間後に、減圧下で溶媒を除去した。90%ヘプタン/10%メタノール溶出剤でシリカを通して、残留物を溶出した。適切な画分を組み合わせ、蒸発させた。フィルムを1mLのアセトン中に溶解し6mLのジエチルエーテルで沈殿させて、10mgの固体化合物3028を得た。1H NMR (300 MHz, DMSO) δ 8.78 (t, 1H, J = 5.6), 8.20 (td, 2H, J = 4.1, 8.3), 8.03 (d, 1H, J = 9.0), 7.78 (s, 2H), 7.20 (dd, 1H, J = 2.5, 9.1), 6.92 (d, 5H, J = 23.2), 4.09 (t, 2H, J = 5.9), 3.41 (dd, 3H, J = 6.1, 11.9), 3.19 (s, 12H), 2.43 (d, 10H, J = 1.7), 1.98 (dd, 2H, J = 6.0, 12.1)。
【0125】
あるいは、化合物は分取逆相HPLCによって精製することができる。
フルオレセイン標識、アレクサ633標識、ビオチン標識およびIC−5標識を持つ類似した化合物は、適切なFAM−SE(シグマ社)、ビオチンSE(シグマ社)、アレクサ−633−SE(インビトロゲン社)またはIC−5−SE(バイオサーチ・テクノロジーズ(Biosearch Technologies)社、カタログ番号FC−1065S−25)でTAMRA−SEを置き換えて、方法Aを使用して合成された。当業者によって容易に認識されるように、対象となる他の基(レポーターモイエティ、親和性標識、クエンチャーモイエティ、光架橋モイエティ、または固体支持体を含む)に連結されたシアノベンゾチアゾール誘導体を調製するために、類似した技術を使用することができる。
【0126】
パートB。以下の化合物は、6−TAMARA SEの代わりに適切な5,6FAM−SE、またはBodipy488−SE、ビオチン−SE、またはIC−5−SEを利用する方法Aを使用して合成した。
4(および5)−(3−(2−シアノベンゾ[d]チアゾール−6−イルオキシ)プロピルカルバモイル)−2−(3−ヒドロキシ−6−オキソ−6H−キサンテン−9yl)安息香酸(例えば、化合物3066):
【化5】

異性体の混合物(66%:35%);1H NMR (300 MHz, DMSO) δ 10.12 (s), 8.90 (t), 8.76 (t), 8.44 (d), 8.22 (dd), 8.11 (m), 7.89 (d), 7.82 (d), 7.66 (s), 7.33 (m), 7.21 (dd), 6.66 (d), 6.54 (m), 4.18 (t), 4.08 (t), 3.50 (dd), 3.37 (t), 2.07 (m), 1.97 (m), 1.22 (s), 0.83 (t).C322137S についてのMS:計算値592.1;実測値592。
【0127】
(Z)−N−(3−(2−シアノベンゾ[d]チアゾール−6−イルオキシ)プロピル)−3−(1−(ジフルオロボリル)−5−((3,5−ジメチル−2H−ピロール−2−イリデン)メチル)−1H−ピロール−2−イル)プロパンアミド(化合物3226):
【化6】

1H NMR (300 MHz, DMSO) δ 8.17 (d, 1H, J = 9.1), 8.07 (t, 1H, J = 5.7), 7.87 (d, 1H, J = 2.5), 7.67 (s, 1H), 7.35 (dd, 1H, J = 2.5, 9.1), 7.08 (d, 1H, J = 3.9), 6.56 (s, 0H), 6.39 (d, 1H, J = 4.0), 6.33 (s, 1H), 4.12 (t, 2H, J = 6.3), 3.30 (dd, 2H, J = 6.4, 12.2), 3.12 (t, 2H, J = 7.5), 2.50 (s, 3H), 2.28 (s, 3H), 1.95 ( p, 2H, J = 6.4). C2524BF252SについてのMS計算値508;実測値507。
【0128】
N−(3−(2−シアノベンゾ[d]チアゾール−6−イルオキシ)プロピル)−5−((3aS,4S,6aR)−2−オキソ−ヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド(化合物3167):
【化7】

1H NMR (300 MHz, DMSO) δ 8.18 (d, 1H, J = 9.1), 7.92 (dd, 2H, J = 4.1, 6.2), 7.36 (dd, 1H, J = 2.6, 9.1), 6.44 (s, 2H), 4.32 (dd, 1H, J = 4.4, 7.7), 4.14 (m, 3H), 3.26 (q, 2H, J = 6.5), 3.10 (m, 1H), 2.83 (dd, 1H, J = 5.1, 12.4), 2.60 (d, 1H, J = 12.3), 2.10 (t, 2H, J = 7.3), 1.94 (t, 2H, J = 6.4), 1.52 (m, 4H), 1.33 (m, 2H). C2125532についてのMS計算値460.1;実測値460.4。
【0129】
2−((1E,3E,5E)−5−(1−(6−(3−(2−シアノベンゾ[d]チアゾール−6−イルオキシ)プロピルアミノ)−6−オキソヘキシル)−3,3−ジメチルインドリン−2−イリデン)ペンタ−1,3−ジエニル)−1−エチル−3,3−ジメチル−3H−インドリウムクロライド(化合物3272):
【化8】

1H NMR (300 MHz, DMSO) δ 8.31 (t, 2H, J = 13.1), 8.11 (d, 1H, J = 9.1), 7.84 (m, 2H), 7.60 (d, 2H, J = 7.0), 7.29 (m, 6H), 6.55 (t, 1H, J = 12.3), 6.26 (dd, 2H, J = 4.0, 13.8), 4.08 (m, 7H), 3.84 (s, 15H), 3.54 (s, 0H), 3.19 (d, 2H, J = 5.9), 2.49 (dt, 4H, J = 1.8, 3.7), 2.30 (s, 0H), 2.05 (m, 2H), 1.85 (m, 2H), 1.66 (d, 12H, J = 2.8), 1.52 (dd, 2H, J = 7.3, 14.7), 1.33 (dd, 2H, J = 7.3, 14.9), 1.24 (t, 3H, J = 7.1).C445052+についてのMS計算値712.4;実測値712。
【0130】
パートC。4−(6−(2−シアノ−5−フルオロベンゾ[d]チアゾール−6−イルオキシ)ヘキシルカルバモイル)−2−(3−(ジメチルアミノ)−6−(ジメチルイミニオ)−6H−キサンテン−9−イル)ベンゾアート(化合物3086)の合成:
【化9】

【0131】
5−フルオロ−6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリル(200mg)を、アセトン(2mL)、炭酸カリウム(284mg)およびtert−ブチル6−ブロモヘキシルカルバマート(265μL)と共に、電子レンジ中で50Wで40分間65℃まで加熱した。その後、さらに150μLのtert−ブチル6−ブロモヘキシルカルバマートを加え、反応を75Wで23分間80℃まで加熱した。反応を酢酸エチルおよび重炭酸塩間で分配し、クエン酸水およびブラインで洗浄し、蒸発させた。ヘプタン:酢酸エチル(3:1)の混合物でシリカカラムを通して、粗製品を溶出した。収率78%。
【0132】
tert−ブチル6−(2−シアノ−5−フルオロベンゾ[d]チアゾール−6−イルオキシ)ヘキシルカルバマート(200mg)を、ジクロロメタン(3mL)、トリフルオロ酢酸(3mL)およびアニソール(300μL)の冷却(0℃)溶液に加えた。15分後に大部分の溶媒は蒸発し、30mLのジエチルエーテルを加えた。沈殿を単離した(165mg)。
【0133】
6−(6−アミノヘキシロキシ)−5−フルオロベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリル(50mg)を、上述の方法Aにおけるように、6−TAMRA−SE(65mg)と共に撹拌した。収量10mg。1H NMR (300 MHz, DMSO) δ 8.67 (t, 1H, J = 5.8), 8.17 (q, 2H, J = 8.2), 8.05 (dd, 2H, J = 9.7, 21.1), 7.78 (s, 1H), 6.90 (d, 5H, J = 26.3), 4.08 (t, 2H, J = 6.4), 3.17 (s, 11H), 1.73 (m, 2H), 1.48 (m, 2H), 1.35 (s, 4H).C3936FN55SについてのMS計算値706.2;実測値706。
【0134】
パートD。4−(6−(2−シアノ−7−ニトロベンゾ[d]チアゾール−6−イルオキシ)ヘキシルカルバモイル)−2−(3−(ジメチルアミノ)−6−(ジメチルイミニオ)−6H−キサンテン−9−イル)ベンゾアート(化合物3087)の合成:
【化10】

【0135】
6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリル(352mg)を、ZrO(NO32×H2O(462mg)およびアセトン(7mL)と共に、電子レンジ中で100℃(200W)で10分間加熱した。産物をジクロロメタンにより抽出し、ヘプタン:酢酸エチル(1:1)でシリカを通して溶出した。収量222mg
【0136】
6−ヒドロキシ−7−ニトロベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリル(100mg)を、アセトン(2mL)、炭酸カリウム(125mg)およびtert−ブチル6−ブロモヘキシルカルバマート(139mg)と共に、電子レンジ中で50Wで30分間70℃まで加熱した。その後、さらに150μLのtert−ブチル6−ブロモヘキシルカルバマートを加え、反応を75Wで30分間80℃まで加熱した。その後、さらに300μLのtert−ブチル6−ブロモヘキシルカルバマート、炭酸セシウム(162mg)およびダイグライム(1mL)を加え、反応を75Wで250分間100℃まで加熱した。反応を酢酸エチルおよび重炭酸塩の間で分配し、クエン酸水およびブラインで洗浄し、蒸発させた。ヘプタン:酢酸エチル(2:1)の混合物でシリカカラムを通して、粗製品を溶出した。収量44%。
【0137】
tert−ブチル6−(2−シアノ−7−ニトロベンゾ[d]チアゾール−6−イルオキシ)ヘキシルカルバマート(50mg)を、ジクロロメタン(1mL)、トリフルオロ酢酸(1mL)およびアニソール(99μL)の冷却(0℃)溶液に加えた。30分後に、大部分の溶媒は蒸発し、30mLのジエチルエーテルを加えた。沈殿を単離し、さらなる精製なしに使用した。
【0138】
6−(6−アミノヘキシロキシ)−7−ニトロベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリル(51mg)を、上述の方法Aにおけるように、6−TAMRA−SE(50mg)と共に撹拌した。収量13mg1H NMR (300 MHz, DMSO) δ 8.72 (t, 1H), 8.58 (d, 1H, J = 7.3), 8.22 (d, 2H, J = 8.0), 7.83 (s, 2H), 6.98 (d, 5H), 4.39 (t, 2H), 3.24 (s, 15H), 1.82 (m, 2H), 1.52 (m, 4H), 1.40 (m, 2H). C393667SについてのMS計算値733.2;実測値733.6。
【0139】
パートE。4−(6−(2−シアノベンゾ[d]チアゾール−6−イルアミノ)−6−オキソヘキシルカルバモイル)−2−(3−(ジメチルアミノ)−6−(ジメチルイミニオ)−6H−キサンテン−9−イル)ベンゾアート(化合物3082)の合成:
【化11】

【0140】
6−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ヘキサン酸(316mg)を、無水THF(10mL)、6−アミノベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリル(200mg)、イソ−ブチルクロロホルマート(193μL)、およびN−メチルモルホリン(314μL)と共に−4℃で混合した。反応を室温で一晩放置した。反応を酢酸エチルおよび重炭酸塩の間で分配した。酢酸エチル層を蒸発させ、ヘプタン:酢酸エチル(1:2)でシリカを通して、残留物を溶出した。収量354mg。
【0141】
tert−ブチル6−(2−シアノベンゾ[d]チアゾール−6−イルアミノ)−6−オキソヘキシルカルバマート(350mg)を、ジクロロメタン(4mL)、トリフルオロ酢酸(4mL)およびアニソール(400μL)の冷却(0℃)溶液に加えた。135分後に、大部分の溶媒は蒸発し、10mLのアセトニトリルおよび30mLのジエチルエーテルを加えた。混合物を一晩放置した。沈殿を単離し、さらなる精製なしに使用した。
【0142】
6−アミノ−N−(2−シアノベンゾ[d]チアゾール−6−イル)ヘキサンアミド(100mg)を、上述の方法Aにおけるように、6−TAMRA−SE(122mg)と共に撹拌した。収量(22mg)。1H NMR (300 MHz, DMSO) δ 10.31 (s, 1H), 8.67 (dd, 2H, J = 3.8, 7.2), 8.12 (m, 3H), 7.77 (s, 1H), 7.63 (dd, 1H, J = 2.1, 9.1), 3.17 (s, 14H), 2.31 (t, 2H, J = 7.4), 1.57 (m, 2H), 1.47 (m, 2H), 1.31 (m, 2H).C393665SについてのMS:計算値:701.2;実測値701.6。
【0143】
実施例2
(E)−N−(2−(2−アミノ−3−メルカプトプロパンアミド)エチル)−4−((4−(ジメチルアミノ)フェニル)ジアゼニル)ベンズアミド(化合物3191)の合成:
【化12】

【0144】
(E)−2,5−ジオキソピロリジン−1−イル4−((4−(ジメチルアミノ)フェニル)ジアゼニル)−ベンゾアート(200mg)を、ジメチルホルムアミド(5mL)、tert−ブチル1−(2−アミノエチルアミノ)−1−オキソ−3−(トリチルチオ)プロパン−2−イルカルバマート(333mg)、およびジイソプロピルエチルアミン(285μL)と共に混合した。12時間後に、反応を酢酸エチルおよびクエン酸水の間で分配した。有機層を重炭酸塩次にブラインで洗浄した。蒸発後に、ヘプタン:酢酸エチル(1:1)でシリカを通して、残留物を溶出した。収量:242mg。
【0145】
(E)−tert−ブチル1−(2−(4−((4−(ジメチルアミノ)フェニル)ジアゼニル)ベンズアミド)−エチルアミノ)−1−オキソ−3−(トリチルチオ)プロパン−2−イルカルバマート(240mg)を、トリフルオロ酢酸(10mL)、水(500μL)およびトリイソプロピルシラン(100μL)の冷却溶液に、加えた。5時間後に、ジエチルエーテル(50mL)を沈殿産物に加え、化合物3191を得た。産物を分取逆相HPLCによってさらに精製した。収量60mg。1H NMR (300 MHz, DMSO) δ 8.56 (m, 2H), 8.18 (s, 3H), 7.92 (d, 2H, J = 8.5), 7.75 (d, 4H, J = 8.3), 6.78 (d, 2H, J = 8.2), 3.85 (m, 1H), 3.35 (m, 3H), 3.20 (m, 1H), 3.01 (s, 6H), 2.85 (m, 2H), 2.50 (s, 1H).
【0146】
実施例3
シアノベンゾチアゾール誘導体によるN末端のペプチド標識
この実施例において、シアノベンゾチアゾール−ローダミン試薬を、様々な濃度のシステイン残基含有材料を含有する溶液に加える。溶液は、N末端システイン残基と試薬との間で付加物を形成できる条件下で、シアノベンゾチアゾール−ローダミン試薬と共にインキュベートされる。試薬とのインキュベーション後に、新しく標識された種の存在は、シリカ薄層クロマトグラフィー(TLC)プレートの上での反応混合物の一部分の分画および蛍光種の存在の検討によって検出される。
【0147】
システイン残基を含有している5つの異なる材料を、シアノベンゾチアゾール−ローダミン試薬と反応させた。トシン酸(シグマ社)は、ジスルフィド結合によって結合されるアミノ末端システイン残基およびカルボキシ末端システイン残基を含有するペプチド(ペプチド配列:Cys−Tyr−Ile−Gln−Asn−Cys)(配列番号:7)である。ペプチド中のジスルフィド結合を還元するために、50μlの1mMトシン酸を、5μlの1Mヘペス(pH8.0)および0.25μlのボンドブレーカー(ピアース・ケミカル(Pierce Chemical)社)および46μlの水と混合した。酸化型トシン酸溶液を生成するために、50μLのトシン酸(1mM)を、5μLの1Mヘペス(pH8.0)および45μlの水と混合した。バッケム(Bachem)H4696(バッケム・バイオサイエンス社、キング・オブ・プラシャ、ペンシルバニア)は、内部システイン残基を含有するペプチド(Gly−Cys−Lys−Asn−Phe−Phe−Trp−Lys)(配列番号:8)である。バッケムH4696の実施溶液は、48μlの5mMバッケムH4696を、0.25μlのボンドブレーカーおよび1μlのヘペス(pH8.0)と混合することによって作製した。バッケムH4702は、N末端システイン残基を含有するペプチド(Cys−Lys−Asn−Phe−Phe−Trp−Lys−Thr)(配列番号:9)である。バッケムH4702の実施溶液は、48μlの5mMバッケムH4702を、0.25μlのボンドブレーカーおよび1μlの1Mヘペス(pH8.0)と混合することによって作製した。10mMのCys−Glyジペプチド(シグマ社;15mg)および20mMシステイン(シグマ社)の実施溶液も作製された。
【0148】
シアノベンゾチアゾール標識反応のための反応緩衝液は、500μLの1Mヘペス(pH7.5)を7.5mLの水と混合することによって作製した。試薬対ペプチドの様々なモル比の検査を可能にするように6セットの反応を構成した。各セットは、異なるシステイン材料を含む6つの反応を含んでいた。ペプチド:検査された試薬の相対モル比は、0.3:1乃至2:1で変化させた。すべての反応に、75μlの反応緩衝液を加えた。各セットにおける各反応に、異なる量の水を加えた。すなわち第1のセットに16.7μl、第2のセットに13.3μl、第3のセットに10μl、第4セットに6.7μlおよび第5のセットに3.3μlであった。反応チューブの第6のセットは、シアノベンゾチアゾール試薬に対するシステイン材料が最も高い比率であるように、水を加えなかった。1つの反応チューブを、20μlの水を加えたペプチドのない対照として構成した。
【0149】
システイン(2.5μlの20mMシステインを水により100μlにした)、バッケムH4696(10μlの上述の溶液を水により100μlにした)、バッケムH4702(10μlの上述の溶液を水により100μlにした)、およびCys−Gly(5μlの上述の溶液を水により100μlにした)の希釈溶液を、異なる反応チューブに加え、各6セットの最終的な反応容積を95μlにした。酸化型トシン酸および還元型トシン酸も異なる反応チューブに加え、各6セットの最終的な反応容積を95μlにした。全体として、各6セットの各反応チューブは異なるシステイン溶液を含有していた。
【0150】
すべての反応チューブに、5μlの1mMシアノベンゾチアゾール−ローダミン試薬を加え、混合した。室温で15分のインキュベーション後に、各反応チューブからの1μlを、シリカゲルTLCプレートの上にスポットした。90容のEtOH、10容の水および1容氷酢酸の混合物中でプレートを現像した。現像後にプレートを風乾し、紫外線下で可視化して、反応が進行して完了したことを確認した。
【0151】
緩衝液およびシアノベンゾチアゾール−ローダミン試薬のみを含むペプチドのない対照反応は、〜0.8のRf値で強い蛍光スポット、および〜0.4のRf値で弱いスポットを生じた。これは、もとの未反応シアノベンゾチアゾール試薬の移動度を同定し、試薬が反応条件によって影響されないことを実証する。
【0152】
図3は、紫外線光に暴露し、イメージングカメラ上で存在する紫外線光を遮断するフィルターを通して集めたときに、TLCプレート上で存在する蛍光種からの蛍光発光を検出する、アンビス・イメージング・システム・セット上で取り込んだ薄層クロマトグラフィー(TLC)プレートの画像を示す。増量したシステインを使用した反応(レーン2〜7)は、少量の他の種(付加物)の存在と共に、〜0.42のRf値の移動度を持つ新しく強い蛍光付加物の存在を示す。システインおよびベンゾチアゾールのモル量がほぼ等しくなるまで、新しい蛍光種の量は増加する(レーン4〜5)。これは、1)システインとシアノベンゾチアゾール−ローダミン試薬との間の反応が迅速である(〜15分)こと、および2)1モルのシアノベンゾ−チアゾール試薬と反応するために約1モル当量システインが反応に必要とされることを実証する。
【0153】
増量したバッケムH4696(内部システインを持つペプチド)を使用した反応(レーン8〜13)は、シアノベンゾチアゾール試薬単独で見られたものと本質的には同じ(レーン1)蛍光移動度パターンを示した。これは、1)内部システインがシアノベンゾチアゾール試薬と反応することができない、2)大量のペプチドがシアノベンゾチアゾール試薬と反応するために必要である、または3)形成される付加物のどれかが不安定であり出発材料へ戻り、急速に付加物の検出をほとんど不可能にする、のいずれかが最も可能性が高いことを実証する。
【0154】
これとは対照的に、バッケムH4702(N末端システインを含有するペプチド)の量を増加させた反応は、有意な量の非常に低移動度の付加物を示した(レーン14〜19)。新しい付加物形成の量は増加し、対応する未反応シアノベンゾチアゾール試薬は減少した。したがって、シアノベンゾチアゾール試薬は、N末端システインを持つペプチドと共に安定した付加物を形成することができる。これは、システインとの反応を介するルシフェリンの形成で見られたものに類似した、アミノ酸上のN末端アミノ基の攻撃を介する環状ベンゾチアゾール産物の形成によって引き起こされる可能性が最も高い。しかしながら、N末端システイン基が、酸化型トシン酸との反応(レーン20〜25)でのように、ジスルフィド結合に関与するならば、新しい付加物は形成されず、未反応シアノベンゾチアゾール試薬の減少はペプチドを増量しても起こられない。
【0155】
トシン酸中のジスルフィド結合が遊離システイン(上述の還元型トシン酸)に還元されるならば、結果として生じるN末端システインはシアノベンゾチアゾール試薬との反応に利用可能であり(レーン26〜31)、低移動度の新しい付加物が形成される。新しい付加物はシステイン反応で見られたものに類似した様式で形成され、すなわち、形成される付加物の量は、1モルシアノベンゾチアゾール試薬に対する1モル当量還元型トシン酸の比率に依存的である。ジペプチドCys−Glyとの反応(レーン32−37)から、小さなペプチドにおいてでさえ、シアノベンゾチアゾール試薬によってN末端システインが迅速に標識されることも実証される。
【0156】
したがって、この実施例は、シアノベンゾチアゾール試薬が、利用可能なN末端システインを含有するペプチドを、大きいか小さいかに関わらず、容易に標識することができることを実証する。
【0157】
実施例4
シアノベンゾチアゾール試薬によるタンパク質の標識
この実施例において、N末端システイン残基を持つタンパク質を、本発明の化合物で標識した。標識の量を、溶液中の他のタンパク質に対して、およびN末端システイン残基をアラニン残基と交換した以外は標的タンパク質と同一であるタンパク質で標的タンパク質を置き換えた並列反応に対して、比較した。実施例は以下のことを実証する。1)融合タンパク質コンストラクトは、TEVプロテアーゼにより消化したときに、コンストラクトがN末端システインを持つ対象となるタンパク質を生成するように構築することができる;2)蛍光性モイエティを含有する本発明の化合物に暴露されたときに、反応においけるN末端システイン残基のない他のタンパク質は蛍光をほとんどまたは全く獲得しないのだが、N末端システイン残基を持つタンパク質(適切にデザインされた融合タンパク質コンストラクトのTEVプロテアーゼによる消化によって産生されたものなど)を暴露すると高度に蛍光性になる、および;3)TEV消化に際してシステイン残基を暴露するものに同一のTEVに消化された融合コンストラクト(しかしそれはアラニン残基を暴露する)を含有する並列反応では、N末端システインを有するタンパク質と同一であるがN末端システインをアラニンで置き換えたタンパク質を含む溶液中のタンパク質の標識は、ほとんどまたは全くない。
【0158】
これらの点を実証するために、実験(以下に詳細に記載される)は、下記の工程を行って実行された。A)組換えDNAクローンは大腸菌中で融合タンパク質を発現するようにデザインされて構築され、i)融合タンパク質種の迅速で容易な精製のためのインタクトな融合コンストラクトのN末端での親和性タンパク質タグ[GST]に続いて、ii)TEVプロテアーゼ認識部位をコードするタンパク質配列に続いて、iii)別のタンパク質セグメントを有する。1つのコンストラクトは融合コンストラクトのTEV切断によって産生されたタンパク質の新しいN末端でシステイン残基を暴露するが、他のコンストラクトは新しいN末端でアラニン残基を暴露するという点でのみ異なる2つのコンストラクトを生成した;B)大腸菌中の組換えDNAの発現、および細菌が融合タンパク質を発現したという確認;C)親和性タンパク質タグを用いることによる大腸菌溶解物からの融合タンパク質の精製、ならびに;D)融合コンストラクトの消化、続いてインタクトな融合タンパク質および切断された融合タンパク質の両方のPBI化合物3128への暴露(図2(a)を参照)、続いて反応混合物中のタンパク種の標識を検出する分析。
【0159】
工程A)。融合タンパク質ペアをコードする組換えDNA種の構築。
原核生物のプロモーター、および翻訳開始領域、続いてインフレームでグルタチオンSトランスフェラーゼ[GST、親和性タンパク質タグ]のコード配列をコードしたプラスミド種がデザインされた。1つのバージョンは、GST、続いてインフレームでTEVプロテアーゼのための認識配列を含有するコード配列、続いてシステイン、続いてインフレームで他のタンパク質を有していた。第2のプラスミド種は、上述のプラスミドと同一であるが、TEV部位の後にコードされたシステインをアラニンで置き換えるようにデザインした。次に、甲虫ルシフェラーゼのタンパク質コード領域は、すべてのこれらのポリペプチドセグメントをコードした1つの連続的なコード領域があるように、TEVプロテアーゼ部位をコードするコード配列の端部とインフレームで融合された。
【0160】
プラスミドをDNA配列分析によって確認した。
GST−Luc(AlaおよびCys)のアミノ酸およびヌクレオチドの配列は以下の通りである。
【0161】
アミノ酸配列GST−(TEV−Cys)−Luc
MSPILGYWKIKGLVQPTRLLLEYLEEKYEEHLYERDEGDKWRNKKFELGLEFPNLPYYIDGDVKLTQSMAIIRYIADKHNMLGGCPKERAEISMLEGAVLDIRYGVSRIAYSKDFETLKVDFLSKLPEMLKMFEDRLCHKTYLNGDHVTHPDFMLYDALDVVLYMDPMCLDAFPKLVCFKKRIEAIPQIDKYLKSSKYIAWPLQGWQATFGGGDHPPKSGGGGGENLYFQCIAMEDAKNIKKGPAPFYPLEDGTAGEQLHKAMKRYALVPGTIAFTDAHIEVNITYAEYFEMSVRLAEAMKRYGLNTNHRIVVCSENSLQFFMPVLGALFIGVAVAPANDIYNERELLNSMNISQPTVVFVSKKGLQKILNVQKKLPIIQKIIIMDSKTDYQGFQSMYTFVTSHLPPGFNEYDFVPESFDRDKTIALIMNSSGSTGLPKGVALPHRTACVRFSHARDPIFGNQIIPDTAILSVVPFHHGFGMFTTLGYLICGFRVVLMYRFEEELFLRSLQDYKIQSALLVPTLFSFFAKSTLIDKYDLSNLHEIASGGAPLSKEVGEAVAKRFHLPGIRQGYGLTETTSAILITPEGDDKPGAVGKVVPFFEAKVVDLDTGKTLGVNQRGELCVRGPMIMSGYVNNPEATNALIDKDGWLHSGDIAYWDEDEHFFIVDRLKSLIKYKGYQVAPAELESILLQHPNIFDAGVAGLPDDDAGELPAAVVVLEHGKTMTEKEIVDYVASQVTTAKKLRGGVVFVDEVPKGLTGKLDARKIREILIKAKKGGKSKLV(配列番号:10)
【0162】
GST−(TEV−Cys)−Lucのヌクレオチド配列
atgtcccctatactaggttattggaaaattaagggccttgtgcaacccactcgacttcttttggaatatcttgaagaaaaatatgaagagcatttgtatgagcgcgatgaaggtgataaatggcgaaacaaaaagtttgaattgggtttggagtttcccaatcttccttattatattgatggtgatgttaaattaacacagtctatggccatcatacgttatatagctgacaagcacaacatgttgggtggttgtccaaaagagcgtgcagagatttcaatgcttgaaggagcggttttggatattagatacggtgtttcgagaattgcatatagtaaagactttgaaactctcaaagttgattttcttagcaagctacctgaaatgctgaaaatgttcgaagatcgtttatgtcataaaacatatttgaatggtgatcatgtaacccatcctgacttcatgttgtatgacgctcttgatgttgttttatacatggacccaatgtgcctggatgcgttcccaaaattagtttgtttcaaaaaacgtattgaagctatcccacaaattgataagtacttgaaatccagcaagtatatagcatggcctttgcagggctggcaagccacgtttggtggtggcgaccatcctccaaaatccggaggtggtggcggagaaaacctgtacttccaatgcatcgccATGGAAGACGCCAAAAACATAAAGAAAGGCCCGGCGCCATTCTATCCTCTAGAGGATGGAACCGCTGGAGAGCAACTGCATAAGGCTATGAAGAGATACGCCCTGGTTCCTGGAACAATTGCTTTTACAGATGCACATATCGAGGTGAACATCACGTACGCGGAATACTTCGAAATGTCCGTTCGGTTGGCAGAAGCTATGAAACGATATGGGCTGAATACAAATCACAGAATCGTCGTATGCAGTGAAAACTCTCTTCAATTCTTTATGCCGGTGTTGGGCGCGTTATTTATCGGAGTTGCAGTTGCGCCCGCGAACGACATTTATAATGAACGTGAATTGCTCAACAGTATGAACATTTCGCAGCCTACCGTAGTGTTTGTTTCCAAAAAGGGGTTGCAAAAAATTTTGAACGTGCAAAAAAAATTACCAATAATCCAGAAAATTATTATCATGGATTCTAAAACGGATTACCAGGGATTTCAGTCGATGTACACGTTCGTCACATCTCATCTACCTCCCGGTTTTAATGAATACGATTTTGTACCAGAGTCCTTTGATCGTGACAAAACAATTGCACTGATAATGAATTCCTCTGGATCTACTGGGTTACCTAAGGGTGTGGCCCTTCCGCATAGAACTGCCTGCGTCAGATTCTCGCATGCCAGAGATCCTATTTTTGGCAATCAAATCATTCCGGATACTGCGATTTTAAGTGTTGTTCCATTCCATCACGGTTTTGGAATGTTTACTACACTCGGATATTTGATATGTGGATTTCGAGTCGTCTTAATGTATAGATTTGAAGAAGAGCTGTTTTTACGATCCCTTCAGGATTACAAAATTCAAAGTGCGTTGCTAGTACCAACCCTATTTTCATTCTTCGCCAAAAGCACTCTGATTGACAAATACGATTTATCTAATTTACACGAAATTGCTTCTGGGGGCGCACCTCTTTCGAAAGAAGTCGGGGAAGCGGTTGCAAAACGCTTCCATCTTCCAGGGATACGACAAGGATATGGGCTCACTGAGACTACATCAGCTATTCTGATTACACCCGAGGGGGATGATAAACCGGGCGCGGTCGGTAAAGTTGTTCCATTTTTTGAAGCGAAGGTTGTGGATCTGGATACCGGGAAAACGCTGGGCGTTAATCAGAGAGGCGAATTATGTGTCAGAGGACCTATGATTATGTCCGGTTATGTAAACAATCCGGAAGCGACCAACGCCTTGATTGACAAGGATGGATGGCTACATTCTGGAGACATAGCTTACTGGGACGAAGACGAACACTTCTTCATAGTTGACCGCTTGAAGTCTTTAATTAAATACAAAGGATATCAGGTGGCCCCCGCTGAATTGGAATCGATATTGTTACAACACCCCAACATCTTCGACGCGGGCGTGGCAGGTCTTCCCGACGATGACGCCGGTGAACTTCCCGCCGCCGTTGTTGTTTTGGAGCACGGAAAGACGATGACGGAAAAAGAGATCGTGGATTACGTCGCCAGTCAAGTAACAACCGCGAAAAAGTTGCGCGGAGGAGTTGTGTTTGTGGACGAAGTACCGAAAGGTCTTACCGGAAAACTCGACGCAAGAAAAATCAGAGAGATCCTCATAAAGGCCAAGAAGGGCGGAAAGTCCAAATTGgtttAA(配列番号:11)
【0163】
GST−(TEV−Ala)−Lucのアミノ酸配列
SPILGYWKIKGLVQPTRLLLEYLEEKYEEHLYERDEGDKWRNKKFELGLEFPNLPYYIDGDVKLTQSMAIIRYIADKHNMLGGCPKERAEISMLEGAVLDIRYGVSRIAYSKDFETLKVDFLSKLPEMLKMFEDRLCHKTYLNGDHVTHPDFMLYDALDVVLYMDPMCLDAFPKLVCFKKRIEAIPQIDKYLKSSKYIAWPLQGWQATFGGGDHPPKSGGGGGENLYFQAIAMEDAKNIKKGPAPFYPLEDGTAGEQLHKAMKRYALVPGTIAFTDAHIEVNITYAEYFEMSVRLAEAMKRYGLNTNHRIVVCSENSLQFFMPVLGALFIGVAVAPANDIYNERELLNSMNISQPTVVFVSKKGLQKILNVQKKLPIIQKIIIMDSKTDYQGFQSMYTFVTSHLPPGFNEYDFVPESFDRDKTIALIMNSSGSTGLPKGVALPHRTACVRFSHARDPIFGNQIIPDTAILSVVPFHHGFGMFTTLGYLICGFRVVLMYRFEEELFLRSLQDYKIQSALLVPTLFSFFAKSTLIDKYDLSNLHEIASGGAPLSKEVGEAVAKRFHLPGIRQGYGLTETTSAILITPEGDDKPGAVGKVVPFFEAKVVDLDTGKTLGVNQRGELCVRGPMIMSGYVNNPEATNALIDKDGWLHSGDIAYWDEDEHFFIVDRLKSLIKYKGYQVAPAELESILLQHPNIFDAGVAGLPDDDAGELPAAVVVLEHGKTMTEKEIVDYVASQVTTAKKLRGGVVFVDEVPKGLTGKLDARKIREILIKAKKGGKSKLV(配列番号:12)
【0164】
GST−(TEV−Ala)−Lucのヌクレオチド配列
atgtcccctatactaggttattggaaaattaagggccttgtgcaacccactcgacttcttttggaatatcttgaagaaaaatatgaagagcatttgtatgagcgcgatgaaggtgataaatggcgaaacaaaaagtttgaattgggtttggagtttcccaatcttccttattatattgatggtgatgttaaattaacacagtctatggccatcatacgttatatagctgacaagcacaacatgttgggtggttgtccaaaagagcgtgcagagatttcaatgcttgaaggagcggttttggatattagatacggtgtttcgagaattgcatatagtaaagactttgaaactctcaaagttgattttcttagcaagctacctgaaatgctgaaaatgttcgaagatcgtttatgtcataaaacatatttgaatggtgatcatgtaacccatcctgacttcatgttgtatgacgctcttgatgttgttttatacatggacccaatgtgcctggatgcgttcccaaaattagtttgtttcaaaaaacgtattgaagctatcccacaaattgataagtacttgaaatccagcaagtatatagcatggcctttgcagggctggcaagccacgtttggtggtggcgaccatcctccaaaatccggaggtggtggcggagaaaacctgtacttccaagcgatcgccATGGAAGACGCCAAAAACATAAAGAAAGGCCCGGCGCCATTCTATCCTCTAGAGGATGGAACCGCTGGAGAGCAACTGCATAAGGCTATGAAGAGATACGCCCTGGTTCCTGGAACAATTGCTTTTACAGATGCACATATCGAGGTGAACATCACGTACGCGGAATACTTCGAAATGTCCGTTCGGTTGGCAGAAGCTATGAAACGATATGGGCTGAATACAAATCACAGAATCGTCGTATGCAGTGAAAACTCTCTTCAATTCTTTATGCCGGTGTTGGGCGCGTTATTTATCGGAGTTGCAGTTGCGCCCGCGAACGACATTTATAATGAACGTGAATTGCTCAACAGTATGAACATTTCGCAGCCTACCGTAGTGTTTGTTTCCAAAAAGGGGTTGCAAAAAATTTTGAACGTGCAAAAAAAATTACCAATAATCCAGAAAATTATTATCATGGATTCTAAAACGGATTACCAGGGATTTCAGTCGATGTACACGTTCGTCACATCTCATCTACCTCCCGGTTTTAATGAATACGATTTTGTACCAGAGTCCTTTGATCGTGACAAAACAATTGCACTGATAATGAATTCCTCTGGATCTACTGGGTTACCTAAGGGTGTGGCCCTTCCGCATAGAACTGCCTGCGTCAGATTCTCGCATGCCAGAGATCCTATTTTTGGCAATCAAATCATTCCGGATACTGCGATTTTAAGTGTTGTTCCATTCCATCACGGTTTTGGAATGTTTACTACACTCGGATATTTGATATGTGGATTTCGAGTCGTCTTAATGTATAGATTTGAAGAAGAGCTGTTTTTACGATCCCTTCAGGATTACAAAATTCAAAGTGCGTTGCTAGTACCAACCCTATTTTCATTCTTCGCCAAAAGCACTCTGATTGACAAATACGATTTATCTAATTTACACGAAATTGCTTCTGGGGGCGCACCTCTTTCGAAAGAAGTCGGGGAAGCGGTTGCAAAACGCTTCCATCTTCCAGGGATACGACAAGGATATGGGCTCACTGAGACTACATCAGCTATTCTGATTACACCCGAGGGGGATGATAAACCGGGCGCGGTCGGTAAAGTTGTTCCATTTTTTGAAGCGAAGGTTGTGGATCTGGATACCGGGAAAACGCTGGGCGTTAATCAGAGAGGCGAATTATGTGTCAGAGGACCTATGATTATGTCCGGTTATGTAAACAATCCGGAAGCGACCAACGCCTTGATTGACAAGGATGGATGGCTACATTCTGGAGACATAGCTTACTGGGACGAAGACGAACACTTCTTCATAGTTGACCGCTTGAAGTCTTTAATTAAATACAAAGGATATCAGGTGGCCCCCGCTGAATTGGAATCGATATTGTTACAACACCCCAACATCTTCGACGCGGGCGTGGCAGGTCTTCCCGACGATGACGCCGGTGAACTTCCCGCCGCCGTTGTTGTTTTGGAGCACGGAAAGACGATGACGGAAAAAGAGATCGTGGATTACGTCGCCAGTCAAGTAACAACCGCGAAAAAGTTGCGCGGAGGAGTTGTGTTTGTGGACGAAGTACCGAAAGGTCTTACCGGAAAACTCGACGCAAGAAAAATCAGAGAGATCCTCATAAAGGCCAAGAAGGGCGGAAAGTCCAAATTGgtttA(配列番号:13)
【0165】
工程B)。融合タンパク質の発現。
確認したプラスミドで形質転換された培養菌を増殖し、タンパク質発現を誘導した。培養の増殖後に、予想されるサイズの融合タンパク質生成の発現を、タンパク質バンドを検出するクマシーブルー染色による細胞サンプルのSDS PAGE分画によって確認した。融合タンパク質の発現は、細胞溶解物中の全可溶性タンパクの1〜5%であると推測された。
【0166】
工程C)。融合タンパク質の精製。
培養の増殖後に、細胞を遠心分離によって回収し、処理の準備ができるまで−20℃で凍結した。いったん精製の準備ができれば、細胞沈殿を解凍して緩衝液A(1×PBS(pH7.3)、1mM PMSF、ロッシュ(Roche)社のコンプリート・プロテアーゼ・タブレットを50mLあたり1個)中に再懸濁し、1グラム細胞ペーストあたり緩衝液の8〜10mLの比率でこの緩衝液中に細胞を再懸濁した。次に細胞を超音波処理によって溶解し、不溶性細胞残屑は溶解細胞の4℃で10分間3900×Gの遠心分離によって沈殿させた。
【0167】
遠心分離後に、沈殿の上の上清を注意深く除去し、1×PBS(pH7.3)中で平衡化されたグルタチオンセファロース(GEヘルスケア(GE Healthcare)社から)のカラムに適用した。適用後に、カラムを10〜20カラム体積の1×PBS緩衝液(pH7.3)で洗浄し、次に、50mMトリスHCl緩衝液(pH8.0)中に10〜15mMグルタチオンを含有する溶液を適用してタンパク質を溶出した。このプロセスの間に溶出された材料の画分を回収し、少量の画分をSDS PAGEによって分析した。予想されるように、融合タンパク質は、グルタチオン含有カラム緩衝液がカラムから溶出している画分中で非常に濃縮された。非常に濃縮された融合タンパク質の画分をプールし、10mMヘペス緩衝液(pH7.5、50mM NaCl)に対して透析した。
【0168】
工程D)。融合タンパク質の消化および標識。
透析された融合タンパク質のタンパク質濃度は、製造業者のプロトコールの通りピアース社のクマシー・プラス(Coomassie Plus)タンパク質試薬の使用によって決定した。等量のペアのタンパク質コンストラクトを、ProTEVプロテアーゼ緩衝剤中に〜1μMに希釈した。ProTEVを加え、融合タンパク質を4℃で一晩で消化した。ProTEV緩衝液は、50mMヘペス(pH7.0)、0.5mM EDTA、1mM DTTであった。消化物のサンプルをSDS PAGEによって分析した。TEV切断部位の後にアラニンを持つ融合コンストラクト、およびTEV切断部位の後にシステインを持つコンストラクトは両方とも、新しいタンパク種(TEV部位でのコンストラクトの切断について予想されるサイズ)の出現およびインタクトな融合タンパク質バンドの消失に基づいて、90%以上まで消化された。
【0169】
次に2つの消化物のサンプルを、10mMヘペス(pH7.5)を含有する新鮮なチューブ中に置き、PBI化合物3028のサンプルを2mMアセトニトリルのストック(図3におけるように;DMSOも使用することができる)から加えて、最終濃度10μMのPBI 3028を産生する。溶媒としてDMSOを使用するとき、6.5mMのストック溶液を使用した。設定時間間隔で、これらの標識反応のサンプルを、試薬を含有する新しいチューブに加えて、標識試薬のシアノベンゾチアゾールモイエティと反応させることによって、標識反応を終了した。この溶液はシステインHCl(停止反応において最終濃度1〜5mM)および等濃度のTCEPを含有した。10倍低い濃度のTCEPでさえ効果的であることがさらに見出された。この停止液は酸度を低減し、タンパク質の沈殿を阻害するために、〜200mMヘペス(pH8.0)中で作製するとよい。従来の研究は、この溶液の試薬との反応により、標識試薬が所望される化学種に迅速に変換されることを示していた。
【0170】
時刻がきたサンプルがすべて回収された後、サンプルをSDS PAGE電気泳動によって分析し、続いてタイフーン(Typhoon)でイメージングを行なった。イメージング後に、ゲルをシンプリーブルー・セーフステイン(SimplyBlue SafeStain)(商標)(インビトロゲン)で染色して、タンパク質バンドを可視化した。クマシー染色の前のゲルの蛍光スキャンニングおよびクマシー染色後から得られたゲル画像の比較を行なった(クマシー染色ゲルは示さない)。蛍光ゲル画像を図4中に示す。蛍光ゲル画像中で見られるように、ベンゾチアゾール色素コンジュゲートのインキュベーションにおいて、Cys N末端タンパク質パートナーは高度に蛍光性になったが、これらの反応における他のタンパク種(クマシー染色ゲル上で可視である)は、ほとんどまたは全く標識されなかった(TEVの後にCysのある消化サンプルvsTEVの後にAlaのある消化サンプル)。さらに、TEVプロテアーゼによる切断がアミノ末端アラニンを有する新しいタンパク種をもたらす反応は、高度に蛍光標識されなかった。最後に、融合タンパク質コンストラクトがTEVプロテアーゼにより消化されない場合、標識はほとんどまたは全く見られない(融合タンパク質の未切断のAlaバージョンおよびCysバージョン)。したがって、消化された融合タンパク質コンストラクトが強く標識されることを可能にするシステイン残基は、内部システイン残基で試薬に暴露されるならば、高度に標識されない。図の右側下部の大きな暗スポットは、そのレーン中にロードした着色タンパク質スタンダードから生じる。
【0171】
これらの観察は、完全に特異的な標識とまではいかなくても、本発明の化合物によるN末端システイン残基の標識について少なくとも非常に強い選択性があることを実証する。さらに、標識はシステイン残基であるタンパク質のN末端に依存的であり、かかるタンパク質はプロテアーゼによる融合タンパク質コンストラクトの消化によって生成することができる。
【0172】
実施例5
シアノベンゾチアゾール標識試薬による蛍光タグ付加タンパク質のN末端標識の確認
この実施例において、非常に特異的な融合タンパク質コンストラクトが、様々なシアノベンゾチアゾール標識試薬で標識される。次に、2回目はTEV消化タンパク質の新しいアミノ末端から少数のアミノ酸のみを切断する第2の部位特異的プロテアーゼに、タンパク質を暴露する。この切断により、第2の消化の前に達成された標識の特異性の検査が可能になる。したがって、タンパク質が新しいアミノ末端でのみ標識されるならば、消化されたタンパク質上の蛍光はすべて第2のプロテアーゼの作用によって除去されるに違いない。しかしながら、タンパク質が複数の部位で標識されているならば、第2のプロテアーゼによる標識タンパク質の処理は、最初の産物よりもわずかに小さくまだ高度に蛍光性である第2のタンパク種を生成するだろう。
【0173】
GST−TEVプロテアーゼ部位−Cys−第Xa因子プロテアーゼ部位−ハロタグ(バージョン2)のセグメントの順序で、2つのタンパク質パートナーの間に2つのプロテアーゼ切断部位を有する融合コンストラクトが産生された。このタンパク質を大腸菌中で発現させ、供給業者の説明書に従って、GST融合タンパク質のための親和性樹脂(典型的にはGEヘルスケア社グルタチオンセファロース4ファーストフロー)の使用によって精製した。
【0174】
単離された融合タンパク質の純度をSDS PAGE電気泳動によって検討し、所望される全長タンパク質を多量に含有することが見出された。このタンパク質を透析し、次にProTEVプロテアーゼで消化した。切断後に、消化物のサンプルは異なる添付色素セグメントを備えたシアノベンゾチアゾール標識剤で標識された。個別のサンプルはハロタグTMRリガンドで標識され、タンパク質配列内でハロタグタンパク質を十分標識することが示された。ハロタグ(登録商標)技術およびハロタグTMRリガンドの使用に対する情報については、Technical Manual HaloTag (r) Technology: Focus on Imaging、パート番号TM260(http://www.promega.com/tbs/tbs.htm;でプロメガ(Promega)社から利用可能)、およびM. Urh et al.、「Halolink (tm) Resin For Protein Pull-Down And Analysis」Cell Notes 2006, 14, 15-19、(http://www.promega.com/cnotes/でプロメガ社から利用可能)を参照。
【0175】
標識後に、各薬剤で標識された精製タンパク質のサンプルを第Xa因子で消化した。第Xa因子消化後に、未消化の標識タンパク質および第Xa因子消化標識タンパク質のサンプルをSDS PAGEゲル上で分画し、ゲルはタイフーンイメージャー上でイメージングした。イメージング後に、タンパク質の蛍光に依存しない方法を使用してタンパク質を可視化するために、ゲルをクマシーブリリアントブルーで染色した。蛍光ゲルイメージおよびクマシー染色ゲルイメージを図5中に示す。
【0176】
予想されるように、融合コンストラクトをハロタグリガンドで標識し(したがって、シアノベンゾチアゾール試薬による標識が期待されるタンパク質パートナーを標識するが、タンパク質セグメントのほぼ中央に標識を添付する)、第Xa因子で消化したとき、標識タンパク質はわずかなサイズだけ変化し蛍光は保っていた(図5中のゲルの最初の2レーン)。しかしながら、シアノベンゾチアゾール試薬で標識したサンプルを消化したとき、標識タンパク質バンドに関連する蛍光のほとんどすべては、最初の標識タンパク質の移動度を有するタンパク種に関連した非常に少量の蛍光を除いて、タンパク質から除去された(図5中で蛍光の損失を図示するペアのレーンは、3028 TMR、3168アレクサ、および3272である)。
【0177】
ゲルのこのセグメントをクマシーで染色したとき、標識タンパク質よりもわずかに小さなタンパク質が、融合タンパク質を第Xa因子で処理したレーン中に多量に存在することが見出された(下部パネル、図5)。このタンパク質バンドが蛍光性でなく、さらに標識タンパク質のアミノ末端からの少数のアミノ酸のみの除去から生じるので、蛍光標識は、コンストラクトから消化された少数のアミノ酸(標識タンパク質種のアミノ末端)の上にあったに違いない。
【0178】
図5、6および7は、それぞれ、切断結果、ならびにN末端でのみの標識およびシステイン残基での非特異的標識から予想される結果を表現するゲルを図示する。
【0179】
シアノベンゾチアゾール標識試薬が、図6中に図示されるように内部システインではなくN末端のみを標識するならば、標識から下流のプロテアーゼ部位でのタンパク質の切断により除去される対象となるタンパク質上にシアノベンゾチアゾール標識があることが予想される。ハロタグリガンド対照のような内部ラベルは第2のプロテアーゼのタンパク質の切断で除去されなかった。これらのサンプルのSDS−PAGEゲルの蛍光スキャンから、第2のプロテアーゼの切断後にシアノベンゾチアゾールに標識されたバンドからの蛍光の消失が示される。ハロタグリガンド標識タンパク質はサイズのシフトを示すが、蛍光標識が除去されなかったので、蛍光性のままであり、図6の蛍光ゲル図解において図示される。
【0180】
シアノベンゾチアゾール標識試薬が、図7中に図示されるように内部システインに添付するならば、第2のプロテアーゼの標識タンパク質の切断がより低分子量(ハロタグリガンド標識対照タンパク質に実質的に類似するように見える)の蛍光バンドを残すことが予想され、それは図7の蛍光性ゲル図解において図示される。
【0181】
GST−(TEV−Cys−FXa)−HaloTagのアミノ酸配列
MSPILGYWKIKGLVQPTRLLLEYLEEKYEEHLYERDEGDKWRNKKFELGLEFPNLPYYIDGDVKLTQSMAIIRYIADKHNMLGGCPKERAEISMLEGAVLDIRYGVSRIAYSKDFETLKVDFLSKLPEMLKMFEDRLCHKTYLNGDHVTHPDFMLYDALDVVLYMDPMCLDAFPKLVCFKKRIEAIPQIDKYLKSSKYIAWPLQGWQATFGGGDHPPKSGGGGGENLYFQCIAMIEGRAMGSEIGTGFPFDPHYVEVLGERMHYVDVGPRDGTPVLFLHGNPTSSYLWRNIIPHVAPSHRCIAPDLIGMGKSDKPDLDYFFDDHVRYLDAFIEALGLEEVVLVIHDWGSALGFHWAKRNPERVKGIACMEFIRPIPTWDEWPEFARETFQAFRTADVGRELIIDQNAFIEGALPMGVVRPLTEVEMDHYREPFLKPVDREPLWRFPNELPIAGEPANIVALVEAYMNWLHQSPVPKLLFWGTPGVLIPPAEAARLAESLPNCKTVDIGPGLFLLQEDNPDLIGSEIARWLPGLV (配列番号:14)
【0182】
GST−(TEV−Cys−FXa)−HaloTagのヌクレオチド配列
atgtcccctatactaggttattggaaaattaagggccttgtgcaacccactcgacttcttttggaatatcttgaagaaaaatatgaagagcatttgtatgagcgcgatgaaggtgataaatggcgaaacaaaaagtttgaattgggtttggagtttcccaatcttccttattatattgatggtgatgttaaattaacacagtctatggccatcatacgttatatagctgacaagcacaacatgttgggtggttgtccaaaagagcgtgcagagatttcaatgcttgaaggagcggttttggatattagatacggtgtttcgagaattgcatatagtaaagactttgaaactctcaaagttgattttcttagcaagctacctgaaatgctgaaaatgttcgaagatcgtttatgtcataaaacatatttgaatggtgatcatgtaacccatcctgacttcatgttgtatgacgctcttgatgttgttttatacatggacccaatgtgcctggatgcgttcccaaaattagtttgtttcaaaaaacgtattgaagctatcccacaaattgataagtacttgaaatccagcaagtatatagcatggcctttgcagggctggcaagccacgtttggtggtggcgaccatcctccaaaatccggaggtggtggcggagaaaacctgtacttccaatgcatcgctatgatagagggtagagctatgggatccgaaatcggtacaggcttccccttcgacccccattatgtggaagtcctgggcgagcgtatgcactacgtcgatgttggaccgcgggatggcacgcctgtgctgttcctgcacggtaacccgacctcgtcctacctgtggcgcaacatcatcccgcatgtagcaccgagtcatcggtgcattgctccagacctgatcgggatgggaaaatcggacaaaccagacctcgattatttcttcgacgaccacgtccgctacctcgatgccttcatcgaagccttgggtttggaagaggtcgtcctggtcatccacgactggggctcagctctcggattccactgggccaagcgcaatccggaacgggtcaaaggtattgcatgtatggaattcatccggcctatcccgacgtgggacgaatggccagaattcgcccgtgagaccttccaggccttccggaccgccgacgtcggccgagagttgatcatcgatcagaacgctttcatcgagggtgcgctcccgatgggggtcgtccgtccgcttacggaggtcgagatggaccactatcgcgagcccttcctcaagcctgttgaccgagagccactgtggcgattccccaacgagctgcccatcgccggtgagcccgcgaacatcgtcgcgctcgtcgaggcatacatgaactggctgcaccagtcacctgtcccgaagttgttgttctggggcacacccggcgtactgatccccccggccgaagccgcgagacttgccgaaagcctccccaactgcaagacagtggacatcggcccgggattgttcttgctccaggaagacaacccggaccttatcggcagtgagatcgcgcgctggctccccgggctggtttaa(配列番号:15)
【0183】
実施例6
タンパク質相互作用反応における標識タンパク質の使用
この実施例は、タンパク質相互作用研究においてベンゾチアゾール色素コンジュゲートで標識されたタンパク質を使用することができることを実証する。本発明の化合物の標識に依存せずに無細胞発現系の発現されたタンパク質を容易に同定するために、反応のセットのうち1つは、フルオロテクト(FluoroTect)(商標)グリーンリズ・インビトロ翻訳標識システム(GreenLys in vitro Translation Labeling System)(プロメガ社)を含有する並列のタンパク質発現反応を行なった。フルオロテクトにより発現されたタンパク質は、タンパク質の内部から末端まで加えられた色素で蛍光標識される。標識は、488nmの光へタンパク質のサンプルを暴露すること、および510nm以上の放射光を検出することによって検出される。特定のこの第2の標識方法の使用は、タンパク質のN末端の標識に使用される本発明の化合物からのシグナルと、フルオロテクトによるタンパク質の標識の容易な区別を可能にする。本発明の化合物によりN末端で標識されたタンパク質は、488nmの光によってあまり励起されないが、633nmの光によって強く励起される。一方、フルオロテクト色素は633nmの光によってあまり励起されないが、488nmの光によって強く励起される。したがって、488nmおよび633nmの個別の励起波長を使用して下記の反応からのサンプルをスキャンすることによって、本発明の化合物を使用して標識されたタンパク種から、インビトロタンパク質合成反応において作製されたタンパク種を区別することができる。
【0184】
供給業者によって推奨されるような反応で組み立てたSP6 TnTハイ・イールド・エクストラクト(High Yield Extract)(プロメガ社、マディソン、ウイスコンシン)を使用して、20μgの指示DNAを反応へ加えることによって、3つの250μLの翻訳反応を行なった。加えた3つのコンストラクトは以下のものをコードする。1)ハロタグとプロテインキナーゼAの触媒サブユニットとの間の融合タンパク質;2)金属結合ペプチドを発現するコンストラクト、続いてTEV切断部位、続いてシステイン残基およびプロテインキナーゼAの調節サブユニット(RIαとしても公知)、および;3)第3の反応は第2の反応に同一であるが、10μLのフルオロテクト(プロメガ社)も含有する。反応を25℃で120分間インキュベートした。
【0185】
3つの225μLの翻訳反応のサンプルを、120分間インキュベーションの後に、製造業者の推奨に従ってマイクロバイオスピンカラム(バイオラッド(BioRad)社)を通して処理した。マイクロバイオスピン処理後に、12μLの20×ProTEV緩衝液の、2.4μLの0.1M DTT、および〜10UのProTEVプロテアーゼ(プロメガ社)を室温で加え、チューブを60分間インキュベートした。TEV処理後に、30μLのMagneHisを使用してプロテアーゼを除去した。処理された溶解物へ、2.8μLの2mM TCEPおよび3.8μLの125μM PBI 3168を加え、チューブを室温で60分間インキュベートした。最後に、新たに還元したシステインをこれらのチューブへ加えて、過剰なベンゾチアゾール試薬と反応させる。
【0186】
400μLのハロリンク(HaloLink)磁気ビーズ(プロメガ社カタログ番号G9311)のサンプルを洗浄し、製造業者の推奨に従って300μL中に再懸濁し、再び製造業者によって記載されるように、次に50μLのスラリーを使用して50μLのSP6翻訳反応からのハロタグ融合タンパク質を捕捉する。プロメガ社のカタログ番号G1911またはカタログ番号G1912のような他のハロリンク樹脂も使用することができる。M. Urh et al.、「Halolink(tm) Resin For Protein Pull-Down And Analysis」Cell Notes 2006, 14, 15-19(www.promega.com/cnotes/で利用可能)を参照。洗浄後に、樹脂をキナーゼ緩衝液(40mMトリスHCl(pH7.5)、20mM MgCl2、0.1mg/mLのBSA)中に再懸濁し、樹脂をシアノベンゾチアゾールに標識されたプレイタンパク質と共にインキュベートした。これらのインキュベーションおよび1×洗浄緩衝液による洗浄後に、タンパク質溶液のサンプルをSDS PAGEゲル上で分画し、SDS PAGE電気泳動およびゲルによって分析し、633nmのレーザーの励起を使用してイメージングした。
【0187】
フルオロテクト産物の検出のためのレーザースキャニングによって生じたイメージの可視化は、プルダウンされた特異的なタンパク質を示した(図8(b))。633nmのレーザーによる図8のゲルのスキャニングから、赤色のシアノベンゾチアゾール由来色素を持つプルダウンの検出が示される。サンプルでは対照樹脂よりも高い相互作用が観察され、タンパク質:タンパク質相互作用の検出に標識を使用できることを実証する。
【0188】
図8(a)(赤色シアノベンゾチアゾール色素標識のみを示す波長でスキャンした)は、PBI 3168の蛍光のプルダウンのスキャニングを示す(アレクサ633 SEおよびシアノベンゾチアゾールに連結された対応する第一級アミンから調製された;633nmの光によって励起後に蛍光を放出する)。図8(b)において、同じゲルをフルオロテクトについてスキャンした。すべてがプルダウンされ、ベイトおよびプレイは以下のとおりである。
レーン1+4、ベイト=緩衝液、プレイ=RI−α。
レーン2+5、ベイト=TNT高収率溶解物(翻訳なし)、プレイ=RI−α。
レーン3+6、ベイト=ハロタグ−PKA、プレイ=RI−α。
レーン1〜3中のサンプルは翻訳の間にフルオロテクトで標識されたが、4〜6は標識されなかった。遠赤外(633nm)はフルオロテクトからのスペクトルを分離するので使用され、したがって色素間のクロストークは観察されなかった。図8(b)において、少量のRI−αはTEVによって切断されなかったので、RI−αの二重線が見える。ゲル上のはるかに高分子量の弱いバンドは恐らくオリゴマーであり、図8(a)中にも存在する。このシアノベンゾチアゾール標識例において若干の非特異的標識種が存在するが、タンパク質:タンパク質相互作用を検出するシアノベンゾチアゾール標識法の能力は明らかに実証される。
【0189】
488nmまたは523nmのレーザーによるゲルのスキャニングは、固定化されたPKAによるRIαの特異的なプルダウンを可能にした。RIαを対照樹脂へ加えたならば、このタンパク質の捕捉はるかに少なく、したがってPKAとPKA調節サブユニットとの間の周知の相互作用の結果としてこれらの結果がもたらされることが確認される。
【0190】
すべての出版物、特許および特許文献は、個別に参照することによって組み入れられるように、参照することによって本明細書に組み入れられる。本発明は、様々な具体的かつ好ましい実施形態および技術に関して記載された。しかしながら、本発明の趣旨および範囲内にあるなら、多くの変形および修飾が行われてもよいことを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化1】

(式中、
Zは、H、F、Cl、Br、I、CN、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルエステル、カルボキシ、カルボン酸塩、アルキルアミド、ホスフェート、アルキルホスホネート、スルフェート、アルキルスルホネート、ニトロ、または任意に不飽和であり、任意にアミノ、ヒドロキシ、オキソ(=O)、ニトロ、チオールもしくはハロで置換された(C1−C10)アルキルであり;
各R1は、独立して、H、F、Cl、Br、I、CN、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシ、または(C1−C6)アルキルチオであり、各アルキル、アルコキシ、またはアルキルチオは、任意にF、Cl、Br、I、アミノ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルキルスルホネート、もしくはCO2M(式中、MはH、有機陽イオン、または無機陽イオン)で置換され;
nは、0、1、または2であり;
Yは、1以上のハロ、オキソ(=O)、(C1−C6)アルキル、または(C1−C6)アルコキシで任意に置換され、かつ1以上のN(R1)、O、S、または−N−C(=O)−基で任意に中断された(C1−C16)アルキルを含む連結基であるか、またはXがN3である場合Yは任意に存在せず;および
Xは、レポーターモイエティ、親和性モイエティ、クエンチャー、光架橋モイエティ、固体支持体、N3、H、またはOHであり、XがHまたはOHである場合、式Iの化合物は、放射性モイエティ、または2−ニトリルモイエティの炭素もしくは窒素原子以外の原子の同位体バリアントを含む)。
【請求項2】
ZがHまたはFであり、R1がHまたはFである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Zが、水素、フッ素、ニトロ、またはアルキルスルホネートである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Xがフルオロフォアである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
式Iの化合物が、
【化2】

である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
Xが、レポーターモイエティ、親和性モイエティ、クエンチャー、光架橋モイエティ、または固体支持体である、請求項3に記載の化合物。
【請求項7】
式Iの化合物が、
【化3】

である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
Xが、N3、アレクサ−663、
【化4】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
式Iの化合物が、
【化5】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
タンパク質のN末端を標識する方法であって、
1以上の異なるタンパク質でありそのうちの少なくとも1つがN末端においてシステインを有するタンパク質、を含む分子集団を有する混合物を、請求項1に記載の化合物であって、式I中のXが、レポーターモイエティまたは親和性モイエティである化合物と接触させて、前記システインに共有結合された前記レポーターモイエティまたは前記親和性モイエティを含む1以上のタンパク質をもたらす工程、
を含む方法。
【請求項11】
前記レポーターモイエティを検出する工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記親和性モイエティを含むタンパク質を単離する工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
N末端で標識されたタンパク質を検出する方法であって、
a)請求項1に記載の化合物であって、式I中のXが、レポーターモイエティまたは親和性モイエティである化合物と接触させた、1以上の異なるタンパク質でありそのうちの少なくとも1つがN末端においてシステインを有するタンパク質、を含む分子集団を有する混合物を提供する工程であって、前記タンパク質の1以上が、前記システインに共有結合された前記レポーターモイエティまたは前記親和性モイエティを含む工程、及び
b)前記混合物中の前記レポーターモイエティまたは前記親和性モイエティの存在または非存在を検出する工程、
を含む方法。
【請求項14】
N末端で標識されたタンパク質を単離する方法であって、
a)請求項1に記載の化合物であって、式I中のXが親和性モイエティである化合物と接触させた、1以上の異なるタンパク質でありそのうちの少なくとも1つがN末端においてシステインを有するタンパク質、を含む分子集団を有する混合物を提供する工程であって、前記タンパク質の1以上が、前記システインに共有結合された前記親和性モイエティを含む工程、及び
b)前記親和性モイエティを含む前記1以上のタンパク質を単離する工程、
を含む方法。
【請求項15】
前記混合物が無細胞翻訳系を含む、請求項10、13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記無細胞翻訳系が、コムギ麦芽抽出物、昆虫細胞溶解物、ウサギ網状赤血球溶血液、カエル卵母細胞溶解物、イヌ膵臓溶解物、ヒト細胞溶解物、精製したもしくは半精製した真核生物の翻訳因子の混合物、またはそれらの組み合わせである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記混合物がインタクトな真核生物細胞を含む、請求項10、13または14に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞が、組織培養細胞または初代細胞であり、前記細胞が任意にヒト細胞である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記レポーターモイエティを含む前記タンパク質を単離する工程をさらに含む、請求項10または13に記載の方法。
【請求項20】
前記モイエティを含む前記タンパク質が、組換え遺伝子産物、遺伝子融合産物、酵素、サイトカイン、炭水化物結合タンパク質、脂質結合タンパク質、核酸結合タンパク質、ホルモン、免疫原性タンパク質、ヒトタンパク質、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質、寄生生物タンパク質、またはその断片である、請求項10、13または14に記載の方法。
【請求項21】
前記レポーターモイエティがフルオロフォアである、請求項10または13に記載の方法。
【請求項22】
前記親和性モイエティが、3つ以上のアミノ酸のペプチドである、請求項10、13または14に記載の方法。
【請求項23】
前記ペプチドが、エピトープまたは3つ以上の連続したヒスチジン残基を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記モイエティが核酸である、請求項10、13または14に記載の方法。
【請求項25】
前記モイエティがRNAまたはDNAである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記親和性モイエティがハプテンである、請求項10、13または14に記載の方法。
【請求項27】
前記モイエティがビオチンを含み、前記ビオチンが、任意に、光切断できるビオチンモイエティである、請求項10、13または14に記載の方法。
【請求項28】
N末端で標識されたタンパク質を検出する方法であって、
a)請求項1に記載の化合物であって、式I中のXが、レポーターモイエティまたは親和性モイエティである化合物、と反応させた、1以上の異なるタンパク質でありそのうちの少なくとも1つがN末端においてシステインを含むN末端で標識されたタンパク質、を含む分子集団を有する混合物を提供する工程
b)前記N末端で標識されたタンパク質を含む混合物を、前記異なるタンパク質と相互作用するように選択されるかまたは相互作用すると疑われる第2のタンパク質を含むサンプルと組み合わせて、この相互作用が複合体をもたらし、第2の混合物を提供する工程、及び
c)前記複合体中の前記レポーターモイエティまたは前記親和性モイエティの存在を検出する工程、
を含む方法。
【請求項29】
前記第2の混合物から1つの複合体を単離する工程をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第2のタンパク質が融合タンパク質である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記融合タンパク質が、合成基質を結合する第3のタンパク質を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第3のタンパク質が変異体デハロゲナーゼを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記合成基質が、固体支持体およびデハロゲナーゼ基質を含む、請求項32に記載の方法。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【公表番号】特表2011−515698(P2011−515698A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501816(P2011−501816)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/001905
【国際公開番号】WO2009/142678
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(593089149)プロメガ コーポレイション (57)
【氏名又は名称原語表記】Promega Corporation
【Fターム(参考)】