説明

シェルアンドチューブ式熱交換器

【課題】 チューブの高密度化、管路の長尺化により伝熱面積の増大を図り、熱効率に優れるとともに、チューブの特別な保持手段が不要で、組立作業性、生産性に優れたシェルアンドチューブ式熱交換器を提案する。
【解決手段】 シェル10内に複数のチューブ1を軸方向に沿って収納し、熱交換する一方の流体がチューブ1内を流通し、他方の流体がシェル10とチューブ1の間隔内を流通し、二種類の流体が熱交換を行うシェルアンドチューブ式熱交換器において、チューブ1をスパイラル加工して螺旋状に形成し、複数のチューブ1を、各チューブ1が離間した状態で同軸的に束ね、シェル10内に配置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種の熱関連装置に用いられるシェルアンドチューブ式熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シェルアンドチューブ式熱交換器は、筒状のシェル(胴体)内に複数のチューブ(伝熱管)をシェルの軸方向に沿って収納し、熱交換する一方の流体がチューブ内を流通し、他方の流体がシェルとチューブの間隔内を流通し、チューブの管壁を介して二種類の流体が熱交換を行うものである。シェルアンドチューブ式熱交換器は、構成が簡単で信頼性が高く、メンテナンスも容易であり、加熱・冷却・蒸発・凝縮等、様々な用途に適用し、各種の熱関連装置に用いられている。
【0003】
シェルアンドチューブ式熱交換器の一例として、特許文献1に示す構造のものがある。この熱交換器は、多数のチューブをバッフルコイルで巻装してシェル内に収納し、チューブ内を高温・高圧ガスが流通し、シェルとチューブの間隔内を水が流通し、水を加熱して給湯を得るものである。チューブをバッフルコイルで巻装することで、各チューブが離間した状態を維持するとともに、バッフルコイルにより水流の乱流を生じさせ、熱効率の向上を図ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4505778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シェルアンドチューブ式熱交換器は、プレートフィンアンドチューブ式熱交換器に比べて伝熱面積が小さく、熱効率に劣り、能力の増大に伴って熱交換器が大型化、重量化、長尺化する課題がある。また、チューブが長尺化するとチューブの自重で撓みを生じ、各チューブが当接した塊状となり、熱交換に寄与する伝熱面積の減少を招く。これを防止するため、特許文献1に示すバッフルコイルその他、各チューブが離間した状態を維持するための保持手段が必要とされ、構造が複雑となる課題もある。
【0006】
この発明は、こうした課題を解決することを目的とするもので、チューブの高密度化、管路の長尺化により伝熱面積の増大を図り、熱効率に優れた新規構成のシェルアンドチューブ式熱交換器を提案することを目的とするものである。また、チューブの特別な保持手段が不要で、組立作業性、生産性に優れたシェルアンドチューブ式熱交換器を提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
こうした目的を達成するため、この発明は、シェル10内に複数のチューブ1を軸方向に沿って収納し、熱交換する一方の流体がチューブ1内を流通し、他方の流体がシェル10とチューブ1の間隔内を流通し、二種類の流体が熱交換を行うシェルアンドチューブ式熱交換器において、チューブ1をスパイラル加工して螺旋状に形成し、複数のチューブ1を、各チューブ1が離間した状態で同軸的に束ね、シェル10内に配置したことを特徴とするものである。
【0008】
また、この発明のシェルアンドチューブ式熱交換器は、熱交換する一方の流体が燃焼排気であり、他方の流体が水であり、燃焼排気の潜熱を回収する廃熱回収用熱交換器に適用するものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明のシェルアンドチューブ式熱交換器は、チューブ1をスパイラル加工して螺旋状に形成し、複数のチューブ1を、各チューブ1が離間した状態で同軸的に束ね、シェル10内に配置したので、従来の直管状のチューブを用いたシェルアンドチューブ式熱交換器に比べ、各チューブ1の管路が長尺化されるとともに、複数のチューブ1は束ねられて高密度に配置され、伝熱面積が大幅に増大される。また、シェル10とチューブ1の間隔内を流通する流体は、各チューブ1間のスパイラル状の間隙内を畝るように乱流を生じて流通し、伝熱面積の増大と相奏功し、極めて熱効率に優れるものである。
【0010】
また、チューブ1をスパイラル加工して螺旋状に形成したので、チューブ1自体が剛性を有し、各チューブ1が離間した状態を維持可能で、チューブ1の特別な保持手段が不要となり、組立作業性、生産性に優れるものである。
【0011】
また、この発明のシェルアンドチューブ式熱交換器を廃熱回収用熱交換器に適用すれば、熱効率の向上により、従来品に比べ、小型、軽量、短尺の廃熱回収用熱交換器を製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施例のチューブの(A)平面図、(B)正面図。
【図2】正面図。
【図3】図2中、A−A線断面図。
【図4】平面図。
【図5】端板の平面図。
【図6】図5中、B−B線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、この発明の具体的な実施形態を図面を用いて説明する。
図面はこの発明の実施例で、エンジンやボイラー等の燃焼排気をそのまま廃棄することなく、これに含まれる潜熱を回収する廃熱回収用熱交換器に本発明のシェルアンドチューブ式熱交換器を適用したものである。廃熱回収用熱交換器は、高温の燃焼排気と水との間で熱交換を行い、熱エネルギーの二次利用、燃焼排気の低温下、システム全体としての熱効率の向上を図るものである。
【0014】
最初に、この廃熱回収用熱交換器の構成を説明する。
チューブ1は、スパイラル加工されて螺旋状に形成され(図1参照)、4本のチューブ1を同軸的に束ねた状態で、筒状のシェル10内に軸方向に沿って収納し、全体が構成されている。
【0015】
シェル10の両開口端は端板12を接合して封止され、図5に示すように、端板12に90度の間隔で4個の孔13が開孔されている。孔13には突縁13aが形成され、各チューブ1の両管端部が孔13を貫通し、突縁13aに接合されている。このようにして、各チューブ1の両管端部を端板12に接合することで、4本のチューブ1が、各チューブ1が離間した状態で同軸的に束ねられ、シェル10内に配置されている。
【0016】
シェル10の両開口端には、端板12とヘッダー空間17を保って蓋体15が接合され、一方の蓋体15に流体の入口16a、他方の蓋体15に流体の出口16bが開孔している。各チューブ1の開口端はヘッダー空間17内に開口し、各チューブ1と両ヘッダー空間17が連通し、入口16aから各チューブ1を分流して出口16bへ至る、熱交換する一方の流体の流通路が形成されている。
【0017】
シェル10の側壁に、一方の端部に近接して入口11a、他方の端部に近接して出口11bが開孔し、入口11aから各チューブ1とシェル10との間隔内を流通して出口11bへ至る、熱交換する他方の流体の流通路が形成されている。燃焼排気は、熱交換の過程で低温下して浸食性の結露を生じるので、各部材の素材として、耐食性に優れたステンレス鋼が用いられ、各部材は気密、液密に接合され、流体の漏洩が防止されている。
【0018】
次に、この廃熱回収用熱交換器の作動を説明する。
エンジンやボイラー等の燃焼排気は、入口16aから一端のヘッダー空間17内へ流入し、各チューブ1を分流して流通し、水は、入口11aからシェル10内へ流入し、各チューブ1間のスパイラル状の間隙内を畝るように流通する。そして、各チューブ1の管壁を介して燃焼排気と水との間で熱交換が行われ、低温下された燃焼排気が出口16bから排気され、加熱された高温水が出口11bから吐出され、燃焼排気に含まれる潜熱が回収される。
【0019】
以上、実施例について説明したが、この発明のシェルアンドチューブ式熱交換器は、加熱・冷却・蒸発・凝縮等、様々な用途に適用し、チューブ1の径、スパイラルのピッチ、適用本数等を流体の流量や特性に応じて設定することで、各種の熱関連装置に用いる熱交換器に適用可能である。なお、この発明の明細書及び請求の範囲の記載で、複数のチューブ1を同軸的に束ねるとは、必ずしも各チューブ1のスパイラルの軸心が完全一致することを意味するものではなく、偏心状態も含む広義の意味である。
【符号の説明】
【0020】
1 チューブ
10 シェル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル10内に複数のチューブ1を軸方向に沿って収納し、熱交換する一方の流体がチューブ1内を流通し、他方の流体がシェル10とチューブ1の間隔内を流通し、二種類の流体が熱交換を行うシェルアンドチューブ式熱交換器において、
チューブ1をスパイラル加工して螺旋状に形成し、複数のチューブ1を、各チューブ1が離間した状態で同軸的に束ね、シェル10内に配置したことを特徴とするシェルアンドチューブ式熱交換器。
【請求項2】
熱交換する一方の流体が燃焼排気であり、他方の流体が水であり、燃焼排気の潜熱を回収する廃熱回収用熱交換器である請求項1に記載のシェルアンドチューブ式熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−189248(P2012−189248A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52251(P2011−52251)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(511062933)株式会社石川エナジーリサーチ (1)
【Fターム(参考)】