説明

シェーグレン症候群を含むドライアイ疾患治療用アデノシンA3レセプターアゴニスト

患者にA3アデノシンレセプターアゴニスト(A3RAg)を投与することを含むシェーグレン症候群の治療及び/又は予防方法。A3RAgは局所投与又は経口投与することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェーグレン症候群の治療に有用な組成物及び方法に関するものである
【背景技術】
【0002】
眼球前方の涙液膜は、角膜の充全性の維持、微生物の侵入に対する保護、視力の保全に重要な役割を果たすものである。一方、これらの機能は、下部ムチン組織、実質的中部水性成分、及びそれに重なる脂質層を含む涙液膜構造の安定性、張度、及び/又は組成に決定的に依存するものである。涙液膜の変化、不全、又は欠如は、角膜上皮の難治性乾燥、角膜潰瘍及び穿孔形成、感染性疾患の罹患率増加、及び最終的には深刻な視覚障害及び失明につながるものである。乾性角膜結膜炎(KCS)、又は単にドライアイと集合的に診断される涙液膜の機能障害に苦しむ患者は世界中に無数に存在する。これまでのところ、全世界的なKCSの最大の単一原因は、トラコーマが未だ流行している国々を除いて、シェーグレン症候群である。
【0003】
シェーグレン症候群は、免疫細胞が涙液及び唾液を生成する腺を攻撃、破壊する自己免疫疾患である。シェーグレン症候群は、狼蒼、強皮症、及び慢性関節リウマチ等の多発筋炎、も伴うものである。リウマチ的状態に起因するシェーグレン症候群は、二次性シェーグレン症候群に分類される。この疾患の特徴的な症状は口内乾燥及びドライアイである。加えて、シェーグレン症候群は、皮膚、鼻、及び膣の乾燥を起こす場合があり、腎臓、血管、肺、肝臓、膵臓、及び脳を含む身体の他の器官を冒すこともある。シェーグレン症候群の眼科学的臨床症状は、例えば、異物性感覚、焼灼感、及び痒みである。
【特許文献1】米国特許第5688774号明細書
【特許文献2】米国特許第5773423号明細書
【特許文献3】米国特許第5573772号明細書
【特許文献4】米国特許第5443836号明細書
【特許文献5】米国特許第6048865号明細書
【特許文献6】国際公開第95/02604号パンフレット
【特許文献7】国際公開第99/20284号パンフレット
【特許文献8】国際公開第99/06053号パンフレット
【特許文献9】国際公開第97/27173号パンフレット
【特許文献10】米国特許出願第09/700751号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シェーグレン症候群の治療法は知られておらず、腺の分泌を回復させる特定の方法も分かっていない。一般的に、治療は症状によって支持的なものである。湿分補充療法は乾燥症状を緩和する場合がある。非ステロイド系の抗炎症性薬品を筋骨格症状を治療するのに用いることができる。深刻な合併症の患者には、コルチコステロイド又は免疫抑制剤を処方することが可能である。
【0005】
科学文献のリポートにおいて、エストロゲン、シクロスポリンA、又はグルココルチコイドを体系的又は局所的に投与することによってこの疾患による目の症状を緩和する可能性について示唆されている。しかしながら、他の研究においてはそのような医療行為は効果的でなく、実際、疾患を促進及び/又は増幅させる可能性があることが示されている。実際に、エストロゲンの作用はシェーグレン症候群の原因に関与している可能性がある。他の研究では、ブロムヘキシン又はイソブチルメチルキサンチン等の涙液刺激剤が目の症状を回復させることが示唆されている。しかしながら、これらの薬品の効果は、主観的であり、タキフィラキシーに影響されやすく、及び/又は機能的な反応性の涙液組織の要求によって限定される場合がある。体系的なアンドロゲン治療によって、シェーグレン症候群及びそれに伴う疾患を治療する可能性についても提唱されている。しかしながら、最近のリポートにおいて、体系的なアンドロゲン治療はシェーグレン症候群における複数の免疫不全の治療には不適切であることが指摘されている。
【0006】
従って、現在処方されているシェーグレン症候群におけるKCSに対する治療法は、目の前部表面の潤滑を促す人工涙代替物をしばしば適用するものである。残念ながら、この治療法は治癒をもたらすものではなく、固有の目の免疫病理を回復させるものでもなく、慢性的で非常に不快な視覚を脅かす疾患に伴うKCSを生じる結果となっている。
【0007】
二次性シェーグレン症候群は、慢性関節リューマチ(RA)、紅班性狼蒼、強皮症、及びリウマチ性疾患を含む他の多くの疾患に見られる慢性的自己免疫疾患である。これは目の乾燥(乾性角膜結膜炎)、口内乾燥、並びに他の管及び筋骨格症状の兆候によって主に特徴付けられる。この疾患は治癒が不可能で、治療は症状を緩和させることを目的としている。慢性関節リューマチ患者の20%までが二次性シェーグレン症候群の臨床的又は潜在性症状の何れかを有している。
【0008】
アデノシンレセプターは4つの主要なクラス:A1、A2a、A2b、及びA3に分類される。A3アデノシンレセプターは、Gタンパク質付随細胞表面レセプターのファミリーに属するものである。レセプターの活性化は、その内在化及びその後のアデニリルシクラーゼ活性、cAMPの形成、及びプロテインキナーゼA(PKA)の発現、の阻害につながり、様々な情報伝達経路(1,2)が開始される。PKAはcAMPの活性化により親分子から解離する触媒性サブユニットPKAcを含む。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はA3アデノシンレセプターアゴニスト(A3RAg)をヒト被検者に投与することによって、シェーグレン症候群の症状が緩和されるという驚くべき発見に基づくものである。
【0010】
従って、本発明は、その一つの実施形態において、治療が必要な患者に効果量のA3RAgを投与することを含むヒト被検者におけるシェーグレン症候群(SS)の治療に関するものである。一つの好ましい実施形態において、A3RAgは、例えば、目又は皮膚に、局所的に投与される。
【0011】
シェーグレン症候群(SS)という語は、本発明のコンテクストにおいて、免疫細胞が涙液及び唾液を生成する腺を攻撃し、破壊する自己免疫疾患を意味する。本発明の一つの実施形態において、この語は二次性シェーグレン症候群に分類される疾患を意味するものである。一つの好ましい実施形態において、二次性シェーグレン症候群はリウマチ的状態に起因するものである。この疾患の症状は、目、口、皮膚、鼻、膣の乾燥を含む場合があり、腎臓、血管、肺、肝臓、膵臓、脳を含む他の器官を冒す場合もある。
【0012】
本発明の方法は、シェーグレン症候群を含むドライアイの眼科的な臨床症状及び兆候を治療又は予防するものと考えられる。シェーグレン症候群の眼科的な臨床症状には、異物性感覚、焼灼感、及び痒みが含まれるが、これらに限定されるものではなく、シェーグレン症候群の臨床兆候には、フルオレセイン及びローズベンガルによって染色される角膜及び結膜のびらん並びに涙膜破断時間が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
本発明のコンテクストにおける「治療」という語は、患者の健康状態の向上は勿論、この疾患の臨床症状の向上全てを意味するものである。例えば、ドライアイ症状の減少によって向上が為される。
【0014】
本発明のコンテクストにおける「アデノシンA3レセプターアゴニスト」(A3RAg)という語は、アデノシンA3レセプター(A3R)に特異的に結合することによって、当該レセプターを全体的又は部分的に活性化させることのできる全ての分子を意味する。従って、A3RAgは、A3Rに結合して活性化させることによってその主要な効果を発揮する分子である。これは、それが投与される際の投与量においては、実質的にA3Rのみに結合してA3Rのみを活性化させることを意味する。一つの好ましい実施形態において、A3RAgのヒトアデノシンA3レセプターに対する結合親和性(K)は、100nM未満、一般的には50nM未満、好ましくは20nM未満、より好ましくは10nM未満、理想的には5nM未満の範囲である。ヒトアデノシンA3Rに対するKが、2nM未満、望ましくは1nM未満、のA3RAgが特に好ましい。
【0015】
幾つかのA3RAgは、より親和性の低い(即ち、Kの高い)他のレセプターとも作用して活性化させることができることには注意すべきである。本発明のコンテクストにおいて、ある分子のA3Rに対する親和性が他の全てのアデノシンレセプター(即ち、A1、A2a、及びA2b)に対する親和性よりも、少なくとも3倍(即ち、A3Rに対するそのKが少なくとも3倍低い)、好ましくは10倍、望ましくは20倍、最も好ましくは少なくとも50倍より大きい場合に、当該分子はA3RAg(即ち、A3Rに結合し活性化させることによってその主要な効果を発揮する分子)であると考えられる。
【0016】
ヒトA3Rに対するA3RAgの親和性、並びに他のヒトアデノシンレセプター(A1、A2a、及びA2b)に対するその相対的親和性は、結合実験等の多数のアッセイによって求めることができる。結合実験の例には、レセプターを含む膜を用い、結合した放射性アゴニストをA3RAgが置き換える能力を測定する方法、それぞれのヒトアデノシンレセプターを示す細胞を用い、機能アッセイにおいて、cAMPレベルの増加又は減少によってアデニレートシクラーゼの効果を測定する等のダウンストリーム・シグナリングをA3RAgが活性化又は非活性化させる能力を測定する方法、等が含まれる。A3RAgの投与レベルがその血中レベルがA1、A2a、及びA2bのアデノシンレセプターのKレベルに近づくレベルに達するように増加されるならば、投与後にA3Rの活性化に加えてこれらのレセプターの活性化が起こる場合があることは明らかである。従って、その血中レベルが実質的にA3Rのみを活性化させるような投与量でA3RAgが投与されることが好ましい。
【0017】
幾つかのアデノシンA3レセプターアゴニストの特徴及びそれらの調製方法は、とりわけ特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、及び出願人による係属中の特許出願である特許文献10に詳細に記載されており、それら全ての開示がここに援用される。
【0018】
より詳細には、下記の特定の例が特許文献1の第4コラム、第67行〜第6コラム、第16行;第5コラム、第40〜45行;第6コラム、第21〜42行;第7コラム、第1〜11行;第7コラム、第34〜36行;及び第7コラム、第60〜61行、に記載されている。
−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン;
−(3−ヨードベンジル)−9−ヒドロキシエチルアデニン;
R−N−(3−ヨードベンジル)−9−(2,3−ジヒドロキシプロピル)アデニン;
S−N−(3−ヨードベンジル)−9−(2,3−ジヒドロキシプロピル)アデニン;
−(3−ヨードベンジルアデニン−9−イル)酢酸;
−(3−ヨードベンジル)−9−(3−シアノプロピル)アデニン;
2−クロロ−N−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン;
2−アミノ−N−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン;
2−ヒドラジド−N−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン;
−(3−ヨードベンジル)−2−メチルアミノ−9−メチルアデニン;
2−ジメチルアミノ−N−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン;
−(3−ヨードベンジル)−9−メチル−2−プロピルアミノアデニン;
2−ヘキシルアミノ−N−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン;
−(3−ヨードベンジル)−2−メトキシ−9−メチルアデニン;
−(3−ヨードベンジル)−9−メチル−2−メチルチオアデニン;
−(3−ヨードベンジル)−9−メチル−2−(4−ピリジルチオ)アデニン;
(1S,2R,3S,4R)−4−(6−アミノ−2−フェニルエチルアミノ−9H−プリン−9−イル)シクロペンタン−1,2,3−トリオール;
(1S,2R,3S,4R)−4−(6−アミノ−2−クロロ−9H−プリン−9−イル)シクロペンタン−1,2,3−トリオール;
(±)−9−[2a,3a−ジヒドロキシ−4a−(N−メチルカルバモイル)シクロペンタ−1a−イル)]−N−(3−ヨードベンジル)−アデニン;
2−クロロ−9−(2’−アミノ−2’,3’−ジデオキシ−a−D−5’−メチル−アラビノ−フロンアミド)−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
2−クロロ−9−(2’,3’−ジデオキシ−2’−フルオロ−a−D−5’−メチル−アラビノ−フロンアミド)−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
9−(2−アセチル−3−デオキシ−a−D−5−メチル−リボフロンアミド)−2−クロロ−N(3−ヨードベンジル)アデニン;
2−クロロ−9−(3−デオキシ−2−メタンスルホニル−a−D−5−メチル−リボフロンアミド)−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
2−クロロ−9−(3−デオキシ−a−D−5−メチル−リボフロンアミド)−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
2−クロロ−9−(3,5−1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキシ−a−D−5−リボフラノシル)−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
2−クロロ−9−(2’,3’−O−チオカルボニル−a−D−5−メチル−リボフロンアミド)−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
9−(2−フェノキシチオカルボニル−3−デオキシ−a−D−5−メチル−リボフロンアミド)−2−クロロ−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
1−(6−ベンジルアミノ−9H−プリン−9−イル)−1−デオキシ−N,4−ジメチル−a−D−リボフラノシズロンアミド);
2−クロロ−9−(2,3−ジデオキシ−a−D−5−メチル−リボフロンアミド)−N−ベンジルアデニン;
2−クロロ−9−(2’−アジド−2’,3’−ジデオキシ−a−D−5’−メチル−アラビノ−フロンアミド)−N−ベンジルアデニン;
2−クロロ−9−(a−D−エリスロフラノシド)−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
−(ベンゾジオキサンメチル)アデノシン;
1−(6−フルフリルアミノ−9H−プリン−9−イル)−1−デオキシ−N−メチル−a−D−リボフラノシズロンアミド);
−[3−(L−プロリルアミノ)ベンジル]アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド;
−[3−(a−アラニルアミノ)ベンジル]アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド;
−[3−(N−T−Boc−a−アラニルアミノ)ベンジル]アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド;
6−(N’−フェニルヒドラジニル)プリン−9−a−リボフラノシド−5’−N−メチルウロンアミド;
6−(O−フェニルヒドロキシルアミノ)プリン−9−a−リボフラノシド−5’−N−メチルウロンアミド;
9−(a−D−2’,3’−ジデオキシエリスロフラノシル)−N−[3−(a−アラニルアミノ)ベンジル]アデノシン;
9−(a−D−エリスロフラノシド)−2−メチルアミノ−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
2−クロロ−N−(3−ヨードベンジル)−9−(2−テトラヒドロフリル)−9H−プリン−6−アミン;
2−クロロ−(2’−デオキシ−6’−チオ−L−アラビノシル)アデニン;及び
2−クロロ−(6’−チオ−L−アラビノシル)アデニン。
【0019】
特許文献2の第6コラム、第39行〜第7コラム、第14行において、好ましい化合物には以下の式のものが含まれる。
【0020】
【化6】

【0021】
ここでXはRNC(=O)であり、R及びRは同一又は相違しており、水素、C〜C10アルキル基、アミノ基、C〜C10ハロアルキル基、C〜C10アミノアルキル基、及びC〜C10シクロアルキル基からなる群から選択され、Rは、水素、ハロ基、C〜C10アルコキシ基、アミノ基、C〜C10アルケニル基、及びC〜C10アルキニル基からなる群から選択され、Rは、R−及びS−1−フェニルエチル基、非置換ベンジル基、並びにC〜C10アルキル基、アミノ基、ハロ基、C〜C10ハロアルキル基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アセタミド基、C〜C10アルコキシ基、及びスルホ基からなる群から選択される置換基によって1つ又はそれ以上の位置を置換されたベンジル基、からなる群より選択される。より好ましい化合物には、R及びRが同一又は相違しており、特にRが、水素又はハロ基、特に水素、である場合に、水素、及びC〜C10アルキル基からなる群から選択される上記式で示されるものが含まれる。これらに加えて、好ましい化合物は、特にRが非置換のベンジル基である場合に、Rが水素であり、Rも水素である化合物である。更に好ましい化合物は、RがC〜C10アルキル基又はC〜C10シクロアルキル基、特にC〜C10アルキル基、より好ましくはメチル基である化合物である。特に好ましい化合物は、Rが水素であり、RがC〜C10アルキル基又はC〜C10シクロアルキル基であり、RがR−又はS−1−フェニルエチル基、或いはハロ基、アミノ基、アセタミド基、C〜C10ハロアルキル基、及びスルホ基、ここでスルホ誘導体はトリエチルアンモニウム塩等の塩である、からなる群から選択される置換基によって1つ又はそれ以上の位置を置換されたベンジル基、である化合物である。特に好ましい化合物の例は、IB−MECAである。加えて、Rが式:R−C=C−(ここでRはC〜Cアルキル基である)のC〜C10アルキン基である化合物が特に好ましい。同様に好ましいのは、Rが水素以外であり、特にRが、ハロ基、C〜C10アルキルアミノ基、又はC〜C10アルキルチオ基である化合物であり、Rが水素である場合に、RがC〜C10アルキル基であり、及び/又はRが置換ベンジル基である化合物がより好ましい。そのような好ましい化合物には、2−クロロ−N−(3−ヨードベンジル)−9−[5−(メチルアミド)−a−D−リボフラノシル]−アデニン、N−(3−ヨードベンジル)−2−メチルアミノ−9−[5−(メチルアミド)−a−D−リボフラノシル]−アデニン、及びN−(3−ヨードベンジル)−2−メチルチオ−9−[5−(メチルアミド)−a−D−リボフラノシル]−アデニンが含まれる。
【0022】
更に好ましい化合物は特許文献2の第7コラム、第60行〜第8コラム、第6行に、下記の式を有する改質されたキサンチン−7−リボシドとして明記されている。
【0023】
【化7】

【0024】
特に好ましい化合物は、XがOであり、RがRNC(=O)であり、R及びRは同一又は相違しており、水素、C〜C10アルキル基、アミノ基、C〜C10ハロアルキル基、C〜C10アミノアルキル基、及びC〜C10シクロアルキル基からなる群から選択され、R及びRは同一又は相違しており、C〜C10アルキル基、R−及びS−1−フェニルエチル基、非置換ベンジル基、並びにC〜C10アルキル基、アミノ基、ハロ基、C〜C10ハロアルキル基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アセタミド基、C〜C10アルコキシ基、及びスルホ基からなる群から選択される置換基によって1つ又はそれ以上の位置を置換されたベンジル基、からなる群から選択され、Rは、ハロ基、ベンジル基、フェニル基、及びC〜C10シクロアルキル基からなる群から選択される化合物である。
【0025】
特許文献8の実施例19〜33、及び原明細書の請求項13には、下記の群からなる選択される化合物が開示されている。
−(4−ビフェニル−カルボニルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(2,4−ジクロロベンジル−カルボニルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(4−メトキシフェニル−カルボニルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(4−クロロフェニル−カルボニルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(フェニル−カルボニルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(ベンジルカルバモイルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(4−スルホンアミド−フェニルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(4−アセチル−フェニルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−((R)−a−フェニルエチルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−((S)−a−フェニルエチルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(5−メチル−イソオキサゾール−3−イル−カルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(1,3,4−チアジアゾール−2−イル−カルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(4−n−プロポキシ−フェニルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−ビス−(4−ニトロフェニルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;及び
−ビス−(5−クロロ−ピリジン−2−イル−カルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド。
【0026】
本発明の一つの実施形態において、A3RAgはアデノシンA3レセプターに結合して活性化することによりその主要な効果を発揮する化合物であり、下記の一般式(I)の範囲内のプリン誘導体である。
【0027】
【化8】

【0028】
ここでRは、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、又はシアノアルキル基、或いは下記の一般式(II)の基である:
【0029】
【化9】

【0030】
ここで、Yは酸素原子、硫黄原子、又はCHであり、
はH、アルキル基、RNC(=O)−、又はHORであって、ここで
及びRは同一又は相違しており、水素、アルキル基、アミノ基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、BOC−アミノアルキル基、及びシクロアルキル基からなる群から選択されるか、又は共に結合して2〜5個の炭素原子を含有する複素環を形成し、
はアルキル基、アミノ基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、BOC−アミノアルキル基、及びシクロアルキル基からなる群から選択され、
はH、ヒドロキシル基、アルキルアミノ基、アルキルアミド基、又はヒドロキシアルキル基であり、
及びXは、独立して、水素、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、アジド基、ハロ基、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシ基、ニトリロ基、ニトロ基、トリフルオロ基、アリール基、アルカリル基、チオ基、チオエステル基、チオエーテル基、−OCOPh、又は−OC(=S)OPh、であり、或いはX及びXは共に酸素であって、>C=Sに結合して5員環を形成するか、或いはX及びXは式(III)の環を形成する。
【0031】
【化10】

【0032】
ここで、R’及びR”は独立してアルキル基を表し、
は、水素、ハロ基、アルキルエーテル基、アミノ基、ヒドラジド基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、ピリジルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、チオ基、及びアルキルチオ基、からなる群から選択され、
は、式:−NRで表される基であり、ここで
は、水素原子、又はアルキル基、置換アルキル基、及びアリール−NH−C(Z)−基(ここで、ZはO、S、又はNRであり、Rは上記と同様の定義を有する)からなる群から選択され、Rが水素である場合には、
は、非置換、又は1つ若しくはそれ以上の位置をアルキル基、アミノ基、ハロ基、ハロアルキル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アセトアミド基、アルコキシ基、及びスルホン酸又はそれらの塩からなる群から選択される置換基によって置換されたR−及びS−1−フェニルエチル基、ベンジル基、フェニルエチル基、又はアニリド基;ベンゾジオキサンメチル基、フルフリル基、L−プロピルアラニル基、アミノベンジル基、β−アラニルアミノベンジル基、T−BOC−β−アラニルアミノベンジル基、フェニルアミノ基、カルバモイル基、フェノキシ基、又はシクロアルキル基からなる群から選択され;或いはRは下記の式の基である:
【0033】
【化11】

【0034】
或いは、Rがアルキル又はアリール−NH−C(Z)−基である場合に、Rは、ヘテロアリール−NR−C(Z)−、ヘテロアリール−C(Z)−、アルカリール−NR−C(Z)−、アルカリール−C(Z)−、アリール−NR−C(Z)−、及びアリール−C(Z)−、(ここでZは酸素、スルホ基、又はアミン基である)からなる群から選択されるか、又は上記化合物の生理学的に許容される塩である。
【0035】
一つの好ましい実施形態において、A3RAgは一般式(IV)で表されるヌクレオシド誘導体である:
【0036】
【化12】

【0037】
ここで、X、R、及びRは上述の定義のもの、及び当該化合物の生理学的に許容される塩である。
【0038】
本発明の化合物の置換基の一部を形成する非環状炭水化物基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アラールキル基、アルカリール基、アルキルアミン基、等)は、分枝又は非分枝のものであり、1つ又は2〜12の炭素原子を含むことが好ましい。
【0039】
本発明において用いられる化合物の「生理学的に許容される塩」という語により、斯界に知られる方法によって調製され、医薬業界で通常使用される、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アンモニウム、及びプロタミン亜鉛の塩を含む、全ての非毒性アルカリ金属、アルカリ土類金属及びアンモニウム塩を意味する。この語は、本発明の化合物を適当な有機酸又は無機酸と反応させることによって一般的に調製される非毒性「酸付加塩」も含むものである。酸付加塩は、生物学的効果及び遊離塩基の定性的特性を保ち、毒性又は望ましくない塩ではない塩である。例として、とりわけ、鉱酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタリン酸、等に由来する酸が含まれる。有機酸には、とりわけ、酒石酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、リンゴ酸、マロン酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、グリコール酸、グルコン酸、ピルビン酸、コハク酸、サリチル酸、及びp−トルエンスルホン酸等のアリールスルホン酸、が含まれる。
【0040】
本発明の一般式(IV)に従って用いることのできるA3RAgの特定の例としては、これらに限定されるものではないが、N−2−(4−アミノフェニル)エチルアデノシン(APNEA)、N−(4−アミノ−3−ヨードベンジル)アデノシン−5’−(N−メチルウロンアミド)(AB−MECA)、N−(3−ヨードベンジル)アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド(IB−MECA)、及び2−クロロ−N−(3−ヨードベンジル)アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド(CI−IB−MECA)、が含まれる。
【0041】
他の実施形態において、A3RAgは、2−プリン位置がアルコキシ基、アミノ基、アルケニル基、アルキニル基、又はハロゲンによって置換されることのある、N−ベンジルアデノシン−5’−N−アルキルウロンアミド−N−オキシド、又はN−ベンジルアデノシン−5’−N−ジアルキルウロンアミド−N−オキシド、等のアデノシンのオキシド誘導体である。
【0042】
上記A3RAgは、薬学的に許容されるキャリヤと共に患者に投与することが可能である。経口投与の場合には、キャリヤは経口投与に適したものである。投与が局所的なものである場合には、キャリヤは、局所投与に適したものであり、その一例には眼球投与がある。
【0043】
「薬学的に許容されるキャリヤ」という語は、A3RAgと反応せず、希釈剤又はキャリヤとして製剤に加えることができるか、又は製剤に形態又はコンシステンシーを付与する全ての不活性な非毒性物質を意味する。経口製剤は、丸剤、カプセル形体、シロップ形体、芳香粉末、及び他の様々な形体であることができる。キャリヤは、時に、製剤の所望される形体に基づいて選択される。また、キャリヤは、時に、活性成分の標的組織への到達又は浸透を向上させ、薬剤の安定性を向上させ、クリアランス速度を低下させ、緩効性を付与し、所望されない副作用を減少させる、等の効果を有する。また、キャリヤは、食用香味を製剤に付与する等、製剤を安定させる物質(例えば、保存剤)であることができる。キャリヤは慣習的に用いられているものを全て含み、A3RAgに対する溶解性及び反応性の欠如等の化学的、物理学的考慮、及び投与ルートによってのみ限定される。キャリヤには、添加剤、色素、希釈剤、緩衝剤、粉末化剤、湿潤剤、保存剤、香料、及び薬理学的に適合したキャリヤが含まれる。加えて、キャリヤは、予期される仕様で活性成分の作用に影響を与える物質と定義される補助剤であることができる。キャリヤの一般的な例には、(a)活性物質の有効量が水、生理食塩水、天然果汁、アルコール、シロップ、等の希釈剤中に溶解された液体溶液、(b)それぞれが所定量のA3RAgを固体又は粉体として含有するカプセル(例えば、界面活性剤、潤滑剤、及び不活性充填剤、等を含む、普通、ハード、又はソフトなゼラチンタイプのもの)、錠剤、(活性物質がショ糖及びアカシア又はトラガカント等の香味剤中に存在する、或いは活性物質がゼラチン及びグリセリン等の不活性ベース中に存在する)ロゼンジ、及びトローチ、(c)粉末、(d)適当な液体中の懸濁剤、(e)適当なエマルション、(f)リポソーム配合物、その他が含まれる。
【0044】
本発明のコンテクストにおいて、「有効量」という語は、シェーグレン症候群の病理的症状から患者を保護することとなるA3RAgの量を指す。本発明において、「有効量」は、複数の被検者に様々な量のA3RAgを投与し、次に生理学的反応(例えば、幾つかの治療的に有益な効果を組み合わせる集積「SSインデックス」)を量の関数としてプロットすることによって容易に求めることができる。その代わりに、有効量は、時に、適切な動物モデルに対して実験を行い、複数の変換方法のうちの一つを用いてヒトに当てはめる、或いは血漿濃度又は一定時間の血漿濃度の曲線下面積(AUC)を測定し、比較可能な血漿濃度又はAUCを生じるように有効量を計算する、ことによっても求めることができる。知られているように、有効量は、投与仕様(例えば、経口投与は特定の血漿レベル又はAUCを達成するのに静脈投与よりも高い投与量を必要とする場合がある)、年齢、体重、体表面積、性別、健康状態、及び被検者の遺伝要素、他に処方されている薬、等の様々な要素に依存する。
【0045】
以下において、特に言及されない限り、投与量は重量/Kgで示され、これはそれぞれの投与において治療される被検者の体重1キログラムに対して投与されるA3RAg(例えば、IB−MECA又はCI−IB−MECA)の重量を意味する。例えば、mg/Kg及びマイクログラム/Kgは、それぞれ、治療される被検者の体重1キログラムに対して投与される剤のミリグラム、及びマイクログラムを指す。
【0046】
マウスにおける有効量は一般的に約1000マイクログラム/Kg未満、好ましくは約500マイクログラム/Kg未満である。一般的な投与量は、約1マイクログラム/Kg〜約200マイクログラム/Kgであり、好ましい投与量は約5マイクログラム/Kg〜約150マイクログラム/Kgである。これに対応するヒトにおける有効量は、以下に説明される手法によって求めることのできる、マウスにおいて観察される量に対するヒト対応量である。
【0047】
「ヒト対応」という語は、0.001〜1mg/Kgの量のA3RAgをマウス又はラットに投与した際に見られるのと同様の効果をヒトにおいて生じさせる量を意味する。知られているように、この投与量は、体重、体表面積、活性成分の吸収率、剤のクリアランス速度、新陳代謝速度、その他の幾多のパラメータに依存し、それらに基づいて決定することのできるものである。
【0048】
ヒト対応量は、以下に説明されるような多数の変換基準に基づいて計算することができ、或いは血漿レベルが上記のように特定された量をマウスに投与した後のものと類似したものとなる投与量、若しくは特定の投与範囲においてマウスと類似した総合暴露量(即ち、時間を関数とした当該剤の血漿レベルの曲線下面積(AUC))を生じる投与量である。
【0049】
ラットに投与したXmg/Kgの量を、斯界に広く知られる適応可能な変換式の一つを用いて、他の種(特にヒト)における対応量に変換することができることは良く知られている。変換式の例は以下の通りである。
変換I:
【0050】
【表1】

【0051】
体表面積依存投与量変換:ラット(150g)からヒト(70kg)へは、ラット投与量の1/7である。これは、例えば、ラットにおける0.001〜1mg/Kgは、ヒトにおける約0.14〜140マイクログラム/Kgに対応することを意味する。ヒトの平均体重が70Kgであると仮定して、これは約0.01〜約10mgのヒトへの絶対投与量と解される。
【0052】
変換II:
下記の変換因子:マウス=3、ラット=67。変換因子を動物の体重に掛けることによってヒト対応量のmg/Kgからmg/mへ変換。
【0053】
【表2】

【0054】
この式によれば、ラットの0.001〜1mg/Kgに対応するヒトの量は0.16〜64μg/Kgであり、即ち、体重が約70Kgのヒトに対する絶対投与量は、変換Iに示される範囲と類似して、約0.011〜約11mgである。
【0055】
変換III:
変換の他の方法は、動物への投与後に見られるのと同様の血漿レベル又はAUCを生じる投与量を設定することによる。例えば、マウスへのIB−MECAの経口投与後に為された測定に基づき、及びIB−MECAが健康な男性ボランティアに投与された臨床実験において人間に対して行われた測定に基づき、マウスにおける1マイクログラム/Kg〜1000マイクログラム/Kgの投与量が、ヒトにおける約0.14〜140マイクログラム/Kgの投与量、即ち、70Kgの人間において0.01〜10mgの総合投与量、に対応すると結論付けることができる。
【0056】
上記の治療方法に加えて、本発明は、上に定義される有効量のA3RAgと薬学的に許容されるキャリヤとを含むシェーグレン症候群の治療用医薬組成物、並びにシェーグレン症候群を患い治療を必要とする被検者に投与する医薬組成物を調製するための上記A3RAgの使用、をその範囲に包含するものである。一つの好ましい実施形態において、医薬組成物は経口使用のために配合される。医薬組成物における有効量は、意図する治療法及び所望される治療投与量に依存することは理解される。一つの例として、投与量が1日当り1mgであり、所望される投与法が毎日1回である場合には、医薬組成物における活性成分の量は1mgである。この毎日の投与量を2回の投与で行うことが意図される場合には、医薬組成物中の活性成分の量は0.5mgとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
本発明に従って実施された以下の実験の記述によって、本発明をこれから例証する。これらの例は、限定する性質のものではなく、例証することを意図するものであることは理解される。上の記述に照らして、これらの例に多くの改良及び変更を加えることができることは明白である。従って、添付された特許請求の範囲内において、本発明を以下に特に記述した以外の無数の可能な方法で実施することができることは理解される。
【0058】
(実施例)
以下の非制限的実施例は、関節リウマチ(RA)、及び主にドライアイを発症し、点眼剤(涙液代替剤)による数年の治療を受けた二次性シェーグレン症候群の患者についてのものである。この患者は、進行性のRAの治療のために、IB−MECAを用いたフェーズ2の臨床試験に参加した。この患者のドライアイの症状は、涙液代替剤の使用を中止する程度にまで相当に向上した。
【0059】
方法:患者は、進行性の関節リウマチ患者に対してIB−MECAを12週間に渡り毎日経口投与する安全性及び予備有効性についての、フェーズ2、多施設、無作為化、二重マスク、平行グループ、広範投薬量、治験に参加した。
【0060】
患者はRAを7年患っている53歳の女性であり、以前に3種の疾患修飾抗リウマチ薬(DMARDs)による治療を受けており、2〜3年のドライアイの病歴があり一日に数回、涙液代替剤で治療している。4週間のDMARDウォッシュアウト期間の後、この患者は、12週間の間、0.1、1.0、又は4.0mgq12hのうち何れかの投薬量のIB−MECAによる治療を受けた。現在、患者は、最初の12週間の治験の長期延長プロトコルの下でIB−MECAによる治療を継続している。
【0061】
結果:この患者におけるRAの状態には、関節の腫れ及び圧痛の、急性期反応物質(ESR及びCRP)、患者及び医師の共通評価、患者の苦痛及び障害の評価、の客観的測定に代表される顕著な向上があった。この治験においては二次性シェーグレン症候群の症状の評価は患者の評価の一部ではなかったものの、この患者は、ドライアイのために何年も連続して涙液代替剤を使用した後であるのに、およそ3〜4週間のIB−MECAの投与後には涙液代替剤を必要としなくなり、現在、ドライアイの症状はないことを報告している。
【0062】
結論:IB−MECAによる治療は、進行性のRA患者の二次性シェーグレン症候群におけるドライアイ症状の実質的な向上をもたらした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体にA3アデノシンレセプターアゴニスト(A3RAg)を投与することを含む、個体におけるシェーグレン症候群の治療及び/又は予防方法。
【請求項2】
前記A3RAgが経口投与される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記A3RAgが局所投与される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記A3RAgが目に投与される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記A3RAgが一般式(I)の範囲内:
【化1】

ここでRは、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、又はシアノアルキル基、或いは下記の一般式(II)の基であり:
【化2】

ここで、Yは、酸素原子、硫黄原子、又はCHであり、
は、H、アルキル基、RNC(=O)−、又はHORであって、ここで
及びRは、同一又は相違しており、水素、アルキル基、アミノ基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、BOC−アミノアルキル基、及びシクロアルキル基からなる群から選択されるか、又は共に結合して2〜5個の炭素原子を含有する複素環を形成し、
は、アルキル基、アミノ基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、BOC−アミノアルキル基、及びシクロアルキル基からなる群から選択され、
は、H、ヒドロキシル基、アルキルアミノ基、アルキルアミド基、又はヒドロキシアルキル基であり、
及びXは、独立して、水素、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、アジド基、ハロ基、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシ基、ニトリロ基、ニトロ基、トリフルオロ基、アリール基、アルカリル基、チオ基、チオエステル基、チオエーテル基、−OCOPh、又は−OC(=S)OPhであり、或いはX及びXは共に酸素であって、>C=Sに結合して5員環を形成するか、或いはX及びXは式(III)の環を形成し:
【化3】

ここで、R’及びR”は、独立してアルキル基を表し、
は、水素、ハロ基、アルキルエーテル基、アミノ基、ヒドラジド基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、ピリジルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、チオ基、及びアルキルチオ基からなる群から選択され、
は、式:−NRで表される基であり、ここで
は、水素原子、又はアルキル基、置換アルキル基、及びアリール−NH−C(Z)−基(ここで、Zは、O、S又はNRであり、Rは前記と同様の定義を有する)からなる群から選択され、Rが水素である場合には、
は、非置換、又は1つ若しくはそれ以上の位置をアルキル基、アミノ基、ハロ基、ハロアルキル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アセトアミド基、アルコキシ基、及びスルホン酸又はそれらの塩からなる群から選択される置換基によって置換されたR−及びS−1−フェニルエチル基、ベンジル基、フェニルエチル基、又はアニリド基;ベンゾジオキサンメチル基、フルフリル基、L−プロピルアラニル基、アミノベンジル基、β−アラニルアミノベンジル基、T−BOC−β−アラニルアミノベンジル基、フェニルアミノ基、カルバモイル基、フェノキシ基、又はシクロアルキル基からなる群から選択され;或いはRは下記の式の基であり:
【化4】

或いは、Rがアルキル又はアリール−NH−C(Z)−基である場合に、Rは、ヘテロアリール−NR−C(Z)−、ヘテロアリール−C(Z)−、アルカリール−NR−C(Z)−、アルカリール−C(Z)−、アリール−NR−C(Z)−、及びアリール−C(Z)−、(ここでZは酸素、スルホ基、又はアミン基である)からなる群から選択されるか、又は前記化合物の生理学的に許容される塩である、
の化合物である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記A3RAgが一般式(IV):
【化5】

ここで、X、R、及びRは、請求項5における定義と同様である、
のヌクレオシド誘導体、及び当該化合物の生理学的に許容される塩である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記A3RAgが、N−2−(4−アミノフェニル)エチルアデノシン(APNEA)、N−(4−アミノ−3−ヨードベンジル)アデノシン−5’−(N−メチルウロンアミド)(AB−MECA)、N−(3−ヨードベンジル)アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド(IB−MECA)、及び2−クロロ−N−(3−ヨードベンジル)アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド(CI−IB−MECA)から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記A3RAgがIB−MECAである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
シェーグレン症候群を含むドライアイの眼科的な臨床症状及び兆候を治療するための請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記シェーグレン症候群の眼科的な臨床症状が、異物性感覚、焼灼感、及び痒みからなる群から選択され、前記シェーグレン症候群の臨床兆候が、フルオレセイン及びローズベンガルによって染色される角膜及び結膜のびらん並びに涙膜破断時間からなる群から選択される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記シェーグレン症候群が二次性シェーグレン症候群である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
有効量のA3RAgと薬学的に許容されるキャリヤとを含むシェーグレン症候群の治療用医薬組成物。
【請求項13】
経口投与用である請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
局所投与用である請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
目への投与用である請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
シェーグレン症候群を患い、神経痛の保護治療を必要とする被検者に投与する医薬組成物を調製するためのA3RAgの使用。
【請求項17】
前記医薬組成物が経口投与用である請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記医薬組成物が局所投与用である請求項16に記載の使用。
【請求項19】
前記医薬組成物が目への投与用である請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記A3RAgが、
−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン;
−(3−ヨードベンジル)−9−ヒドロキシエチルアデニン;
R−N−(3−ヨードベンジル)−9−(2,3−ジヒドロキシプロピル)アデニン;
S−N−(3−ヨードベンジル)−9−(2,3−ジヒドロキシプロピル)アデニン;
−(3−ヨードベンジルアデニン−9−イル)酢酸;
−(3−ヨードベンジル)−9−(3−シアノプロピル)アデニン;
2−クロロ−N−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン;
2−アミノ−N−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン;
2−ヒドラジド−N−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン;
−(3−ヨードベンジル)−2−メチルアミノ−9−メチルアデニン;
2−ジメチルアミノ−N−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン;
−(3−ヨードベンジル)−9−メチル−2−プロピルアミノアデニン;
2−ヘキシルアミノ−N−(3−ヨードベンジル)−9−メチルアデニン;
−(3−ヨードベンジル)−2−メトキシ−9−メチルアデニン;
−(3−ヨードベンジル)−9−メチル−2−メチルチオアデニン;
−(3−ヨードベンジル)−9−メチル−2−(4−ピリジルチオ)アデニン;
(1S,2R,3S,4R)−4−(6−アミノ−2−フェニルエチルアミノ−9H−プリン−9−イル)シクロペンタン−1,2,3−トリオール;
(1S,2R,3S,4R)−4−(6−アミノ−2−クロロ−9H−プリン−9−イル)シクロペンタン−1,2,3−トリオール;
(±)−9−[2a,3a−ジヒドロキシ−4a−(N−メチルカルバモイル)シクロペンタ−1a−イル)]−N−(3−ヨードベンジル)−アデニン;
2−クロロ−9−(2’−アミノ−2’,3’−ジデオキシ−a−D−5’−メチル−アラビノ−フロンアミド)−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
2−クロロ−9−(2’,3’−ジデオキシ−2’−フルオロ−a−D−5’−メチル−アラビノ−フロンアミド)−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
9−(2−アセチル−3−デオキシ−a−D−5−メチル−リボフロンアミド)−2−クロロ−N(3−ヨードベンジル)アデニン;
2−クロロ−9−(3−デオキシ−2−メタンスルホニル−a−D−5−メチル−リボフロンアミド)−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
2−クロロ−9−(3−デオキシ−a−D−5−メチル−リボフロンアミド)−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
2−クロロ−9−(3,5−1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキシ−a−D−5−リボフラノシル)−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
2−クロロ−9−(2’,3’−O−チオカルボニル−a−D−5−メチル−リボフロンアミド)−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
9−(2−フェノキシチオカルボニル−3−デオキシ−a−D−5−メチル−リボフロンアミド)−2−クロロ−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
1−(6−ベンジルアミノ−9H−プリン−9−イル)−1−デオキシ−N,4−ジメチル−a−D−リボフラノシズロンアミド);
2−クロロ−9−(2,3−ジデオキシ−a−D−5−メチル−リボフロンアミド)−N−ベンジルアデニン;
2−クロロ−9−(2’−アジド−2’,3’−ジデオキシ−a−D−5’−メチル−アラビノ−フロンアミド)−N−ベンジルアデニン;
2−クロロ−9−(a−D−エリスロフラノシド)−N−(3−ヨードベンジル)アデニン;
−(ベンゾジオキサンメチル)アデノシン;
1−(6−フルフリルアミノ−9H−プリン−9−イル)−1−デオキシ−N−メチル−a−D−リボフラノシズロンアミド);
−[3−(L−プロリルアミノ)ベンジル]アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド;
−[3−(a−アラニルアミノ)ベンジル]アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド;
−[3−(N−T−Boc−a−アラニルアミノ)ベンジル]アデノシン−5’−N−メチルウロンアミド;
6−(N’−フェニルヒドラジニル)プリン−9−a−リボフラノシド−5’−N−メチルウロンアミド;
6−(O−フェニルヒドロキシルアミノ)プリン−9−a−リボフラノシド−5’−N−メチルウロンアミド;
9−(a−D−2’,3’−ジデオキシエリスロフラノシル)−N−[3−(a−アラニルアミノ)ベンジル]アデノシン;
9−(a−D−エリスロフラノシド)−2−メチルアミノ−N−(3−ヨードベンジルベンジル)アデニン;
2−クロロ−N−(3−ヨードベンジル)−9−(2−テトラヒドロフリル)−9H−プリン−6−アミン;
2−クロロ−(2’−デオキシ−6’−チオ−L−アラビノシル)アデニン;
2−クロロ−(6’−チオ−L−アラビノシル)アデニン;
−(4−ビフェニル−カルボニルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(2,4−ジクロロベンジル−カルボニルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(4−メトキシフェニル−カルボニルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(4−クロロフェニル−カルボニルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(フェニル−カルボニルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(ベンジルカルバモイルアミノ)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(4−スルホンアミド−フェニルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(4−アセチル−フェニルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−((R)−a−フェニルエチルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−((S)−a−フェニルエチルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(5−メチル−イソオキサゾール−3−イル−カルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(1,3,4−チアジアゾール−2−イル−カルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−(4−n−プロポキシ−フェニルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;
−ビス−(4−ニトロフェニルカルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド;及び
−ビス−(5−クロロ−ピリジン−2−イル−カルバモイル)−アデノシン−5’−N−エチルウロンアミド、
からなる群から選択される請求項5に記載の方法。
【請求項21】
前記A3RAgが式(IV)からなる群より選択される請求項6に記載の方法:
ここで、XはRNC(=O)であり、R及びRは同一又は相違しており、水素、C〜C10アルキル基、アミノ基、C〜C10ハロアルキル基、C〜C10アミノアルキル基、及びC〜C10シクロアルキル基からなる群から選択され、Rは、水素、ハロ基、C〜C10アルコキシ基、アミノ基、C〜C10アルケニル基、及びC〜C10アルキニル基からなる群から選択され、Rは、R−及びS−1−フェニルエチル基、非置換ベンジル基、並びにC〜C10アルキル基、アミノ基、ハロ基、C〜C10ハロアルキル基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アセタミド基、C〜C10アルコキシ基、及びスルホ基からなる群から選択される置換基によって1つ又はそれ以上の位置を置換されたベンジル基、からなる群より選択される。
【請求項22】
前記活性成分が式(IV)からなる群より選択される請求項21に記載の方法:
ここで、R及びRが同一又は相違しており、水素、及びC〜C10アルキル基からなる群から選択され、Rは水素又はハロ基であるか、
が水素であり、Rが水素であり、Rが非置換のベンジル基であるか、
がC〜C10アルキル基又はC〜C10シクロアルキル基であり、RがR−又はS−1−フェニルエチル基、或いはハロ基、アミノ基、アセタミド基、C〜C10ハロアルキル基、及びスルホ基(ここでスルホ誘導体は塩である)、からなる群から選択される置換基によって1つ又はそれ以上の位置を置換されたベンジル基、であるか、
が式:R−C=C−(ここでRはC〜Cアルキル基である)のC〜C10アルキン基であるか、或いは
が、ハロ基、C〜C10アルキルアミノ基、又はC〜C10アルキルチオ基であり、Rが水素であり、RがC〜C10アルキル基であり、Rが置換ベンジル基である。

【公表番号】特表2008−508256(P2008−508256A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523232(P2007−523232)
【出願日】平成17年7月18日(2005.7.18)
【国際出願番号】PCT/IL2005/000762
【国際公開番号】WO2006/011130
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(507028608)キャン−ファイト・バイオファーマ・リミテッド (12)
【Fターム(参考)】