説明

シクロアルキル基を用いる放射性標識方法

本発明は、18Fにより標識するのに適する新規なシクロアルキル化合物、このような化合物の製造方法、このような化合物を含む組成物、このような化合物又は組成物を含んで成るキット、及びそのような化合物の使用、陽電子照射トモグラフィー(PET)による診断的造影のための組成物又はキット、に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、18Fにより標識するのに適する新規なシクロアルキル化合物、このような化合物の製造方法、このような化合物を含む組成物、このような化合物又は組成物を含んで成るキット、及びそのような化合物の使用、ポジトロン照射トモグラフィー(PET)による診断的造影のための組成物又はキット、に関する。
【背景技術】
【0002】
分子造影法は、癌、神経及び心臓の分野における最も慣用的方法より早い、疾患の発達又は療法的有効性を検出する可能性を有する。光学造影及びMRIのごとき幾つかの有望な分子造影法が開発される中で、PETは、定量的及び動態的データを提供する高い感受性及び能力のために、医薬の開発のため特に興味深い。
【0003】
陽電子照射性同位体には、炭素、窒素、及び酸素が含まれる。これらの同位体は、PET造影のため、基の分子と同様に生物学的に及び化学的に機能するトレーサーを作るために、標的化合物中で、非放射性対応物と置換わることができる。他方、18Fは、その比較的長い半減期(109.6分)にため、最も便利は標識化同位体であり、このため診断用トレーサーの調製、及びそれに続く生物学的過程の研究が可能となる。更に、その低いβ+エネルギー(635keV)も有利である。
【0004】
疾患、例えば固形癌又は脳の疾患を標的化又は可視化するイン−ビボ造影剤として使用される、18Fで標識された放射性医薬のため、脂肪族18F-フッ素化反応は特に重要である。18Fで標識された放射性医薬の使用における非常に重要な技術的目標は、当該放射性化合物の迅速な調製と投与である。なぜなら、18F放射性同位体は僅か約110分という短い半減期を有するからである。
【0005】
分子造影、特にPETにおける放射性標識された造影剤は多くの欠点を有する:
1.直接に、又はいわゆる配合団(prosthetic groups)を介して間接的に導入される放射性標識の位置が代謝的に不安定である可能性があり、したがって像の品質を損なう可能性のある放射性標識された代謝物が生ずる可能性がある。
2.接合法(conjugation methods)による配合団(prosthetic groups)を介しての放射性標識の生物分子への導入が、増加した親脂性を含めて多くの因子のために、接合した生物分子の薬理動態及び挙動を変える可能性がある。
【0006】
放射性標識造影剤、特にPET造影剤の代謝は、文献に十分に記載されている。スキーム1に示されるのは、代謝を受けることが知られているPETトレーサーの若干の例である、 [11C]SCH23390 (De Jesus et al., J. Radioanalytical Nucl. Chem., 1988, 125, 65-73), [18F]FFMZ (Chang et al., Nucl. Med. Bio., 2005, 32, 263-268), [18F]FE-SA4503 (Kawamura et al., Nucl. Med. Bio., 2003, 30, 273-284, Elsinga et al., Synapse, 2002, 43, 259-267), S-[11C]SME-IMPY, N-[11C]SME-IMPY (Cai et al., J. Med. Chem., 2008, 51, 148-158), [18F]FET (Langen et al., Nucl. Med. Biol., 2006, 33, 287-294), [18F]FETO (Ettlinger et al., Eur. J. Nucl. Med. Mol. Imaging, 2006, 33, 928-931 and references cited within) 及び [18F]FEOBV (Mulholland et al., Synapse, 1998, 30, 263-274)。
【0007】
【化1】


スキーム1:代謝を受けることが知られている放射性標識された造影剤の構造
【0008】
スキーム1の例は、ヘテロ原子、例えば酸素、窒素及び硫黄に結合された、放射性標識されたアルキル又はフルオロアルキル鎖が大幅に代謝を受けることを強調する。[18F]フルオロエトキシ基について、最初の主たる代謝産物は[18F]フルオロエタノールであると信じられる。フルオロエタノールの代謝は既に報告されている(Treble, Biochemistry, 1962, 82, 129-134)。したがって、[18F]フルオロエタノールは、異なる生物学的経路、例えば酸化及びクエン酸サイクルを介して更に[18F]フルオロアセトアルデヒド、[18F]フルオロアセテート及び[18F]フルオロシトレートに代謝されるであろう。これらの代謝産物は体内で異なる挙動を示しそしてかなりのバックグラウンドノイズを生じさせることができ、このノイズは、標識の部位が更に代謝的に安定である放射性標識された造影剤に較べて、最終的には一層貧弱な像品質を与えるであろう。
【0009】
文献において、シクロアルキル環により置換されたヘテロ原子は、アルキル基により置換された場合に較べて代謝的に安定であることが報告されている。これはセロトニン5-HT1A アミノピリミジン部分アゴニストの場合であり、窒素上で置換されたシクロプロピル基が一層バルキーなアルキル基により置換された場合、ヒト肝ミクロソーム中での安定性が低下した(Dounay et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 2009, 19, 1159-1163)。これはまた11-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1(11-β-HSD-1)インヒビターについて示され、窒素がシクロアルキル環により置換された場合、これらはアルキル又はバルキーなアルキル対応物に較べて、マウス肝ミクロソーム中で代謝的に安定であった(Sorensen et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 2006, 16, 5958-5962)。シクロアルキル基を介しての改良された安定性の他の例には、PDE4インヒビター(Chauret et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 2002, 12, 2149-2152)及びNK1選択的アンタゴニスト(Bioorg. Med. Chem. Lett., 2006, 16, 3859-3863)が含まれる。
【0010】
大多数の生物分子、特に大きな生物分子、例えばペプチド、単鎖断片、抗体及びアプタマーの放射性標識化は、間接法を介して行われ、この場合、定義された反応成分を含む配合団(prothetic group)又はシントン(synthon)が先ず合成され、そして次に、注目の生物分子内で定義された反応成分に結合される。これらの結合条件は、好ましくは水性媒体中で且つ穏和な条件下で行われる。放射性標識された配合団を用いる最もありふれた結合体は、芳香族環に結合された放射性標識、例えば[125I] Bolton-Hunterの試薬、[18F]SFB、[18F]FBCHO、[18F]FPB 及び[18F]FBAM(スキーム2)である。
【0011】
【化2】

【0012】
芳香族炭素−フッ素結合は、典型的には、イン−ビボで非常に安定であるが、しかしながらこのベンゼン環の付加は注目の生物分子の親脂性を付与し、そしてそのために化合物の生物学的特性、例えば結合親和性、生物分配(biodistribution)などを変更するであろう。この点は、Wester及びSchotteliusの下記の供述により述べられている「幾分高い親脂性を有する生成物をもたらすが、4-[18F]フルオロベンゾイル成分はペプチド標識として広範に使用されている」(PET Chemistry - The Driving Force in Molecular Imaging, Ernst Schering Foundation Symposium Proceedings Vol. 64. Chapter 4, 79-111, Springer Berlin Heidelberg, Eds. Schubiger, Friebe and Lehmann)。他の非−芳香族配合団は、一次位置に[18F]フッ素原子を有する脂肪族炭素鎖を含む傾向があり、これはやはりイン−ビボ代謝/脱フッ素化を一層受けやすい。
【0013】
芳香族配合団を有する生物分子の増加した親脂性を報告する多くの刊行物が存在する。すなわち、[18F]SFBを有するαvβ6特異的ペプチド (Hausner et al., J. Med. Chem., 2008, 51, 5901-5904)、[18F]SFBを伴うニューロテンシン(Neurotensin)(8-13)ペプチド(Bergmann et al., Nucl. Med. Bio. 2002, 29, 61-72)、[131I]SIBを有する走化性ヘキサペプチド(Pozzi et al., Appl. Radiat. Isot., 2006, 64, 668-676)、[18F]FBCHOを有するLTB4アンタゴニスト(Rennen et al., Nucl. Med. Biol., 2007, 34, 691-695)、オクタペプチド(Guhlke et al., Nucl. Med. Biol., 1994, 21, 819-825)、αvβ3(Haubner et al., J. Nucl. Med., 1999, 40, 1061)である。
【0014】
文献において、非天然α−環状アミノ酸、特にアミノシクロペンタンカルボン酸(ACPC)が腫瘍の増殖を阻害することが知られている(Connors et al., Biochem. Pharmacol. 1960, 5, 108-129; Martel et al., Can. J. Biochem. Physiol., 1959, 37, 433-439)。これらのアミノ酸は、主としてPET同位体により放射性標識されており、そして腫瘍造影剤として探索されている。これらのPET−標識された環状アミノ酸は、スキーム3に示されるようにC-11及びF-18両方により標識されている。すなわち、[11C]ACBC(Washburn et al., J. Nucl. Med., 1979, 20, 1055-1061)、[11C]ACPC(Washburn et al., Cancer Res., 1978, 38, 2271-2273)、3-[18F]anti -FACBC(Shoup et al., J. Nucl. Med., 1999, 40, 331)、3-[18F]syn-FACBC(Yu et al., Bioorg. Med. Chem., 2009, 17, 1982-1990)及び2-[18F]FACPC(WO2007/001958A2)である。これらは、シクロアルキル環に導入されたPET放射性同位体を伴う単なる例示である。
【0015】
【化3】

【0016】
これらの放射性標識された環状アミノ酸は知られているが、放射性標識された環状アルキル環の、注目の生物分子に導入することができる代謝的に安定な基としての使用はまだ探索されていない。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、物質の安定性、特に代謝的安定性を増強するためのフルオロシクロアルキル環の使用に関する。好ましくは、本発明は、放射性同位体を含有する物質の安定性を増強することに関する。好ましい放射性同位体は、放射性ハロゲンであり、最も好ましい放射性ハロゲンはフッ素−18であろう。スキーム4は、特に代謝が起こるであろう位置における放射性標識の安定性を増強するための方法に関する。
【0018】
【化4】

【0019】
本発明の他の観点は、注目の生物分子に接合することができるシントン(synthon)としての、フルオロシクロアルキル環の使用である。フルオロシクロブチルカルボン酸及びフルオロシクロブチルアルデヒドのclogP値が、これらと類似する芳香族誘導体と比較される(スキーム5)。
カルボン酸(Δ=+1,72)及びアルデヒド(Δ=+1,38)シントン(synthons)の両者につき、芳香族類似体とシクロブチル類似体との間で、clogP値にかなりの相違があることが明らかに見て取れる。
【0020】
【化5】

【0021】
生来のアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチド[Dab-RGDF]のclogP値を、シクロブチルカルボン酸接合誘導体[Dab(3-フルオロシクロブタノイル)-RGDF](Dab = 2,4.ジアミノブチン酸)、及び安息香酸誘導体[Dab(4-フルオロベンゾイル)-RGDF]と比較する場合、clogPの相違が+1,78であることが明瞭にわかる(スキーム6)。ベンゾイル化された誘導体のこの追加の親脂性はまた、ペプチドの薬理動態プロフィールに変化を与えるであろう。
【0022】
【化6】

【0023】
生来のペプチドを接合したシクロブチルアルデヒド及びベンズアルデヒドに対して比較する場合(スキーム6)も同じであり、clogPの相違はベンゾイル化されたペプチドについてまた+1,49であり−この有意な親脂性の相違はやはりペプチドの薬理動態に影響を与えるであろう。
【0024】
【化7】

【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、精製されたトルエン−4−スルホン酸3-[18F]フルオロ−シクロブチルエステル(31)のクロマトグラム(放射性追跡)である。
【図2】図2は、精製された(S)-2-アミノ-3-[4-(3-[18F]フルオロ-シクロブトキシ)-フェニル]-プロピオン酸(32)の、非放射性参照(cold reference)と比較した場合のクロマトグラム(放射性追跡)である。
【0026】
【図3】図3は、メチルN-(tert-ブトキシカルボニル)-O-(cis-3-フルオロシクロブチル)-L-チロシネート(33)の反応混合物のクロマトグラム(放射性追跡)である。
【図4】図4は、(cis)-ベンジル3-[18F])フルオロシクロブタンカルボキシレート(35)のクロマトグラム(放射性追跡)である。
【図5】図5は、3-[18F]フルオロシクロブタンカルボキシレート(36)のクロマトグラム(放射性追跡)である。
【0027】
【図6】図6は、A549ヒト肺癌細胞系への化合物29の取り込みを示す。
【図7】図7は、A549ヒト肺癌細胞系への化合物29の取り込みを示す。
【図8】図8は、放射性標識された[18F]化合物32bのA549細胞への取り込みを示す。
【図9】図9は、放射性標識された化合物32b ([18F]標識)のA549細胞への取り込み及び競争実験を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
第一の観点において、本発明は、放射性同位体による標識化のために適当な式Iの新規な化合物に関する。
【0029】
【化8】

【0030】
式中、
Aは、H、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(R')(R")、P(O)(R')R"、, C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、又はSO2NR'であり;
Bは、H、-O-、=O、S、=S、N、N(R')、NYR'、P(R')(R")、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2, 又は SO2NR'であり;
Yは、N、NR'、O又はSであり;
Cは、H、脱離基(LG)、又はR'であり;
Dは、H、脱離基(LG)、又は R'であり;
【0031】
Eは、不存在、H、OR'、SR'、NR'、CR'p、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、SO2NR'、又は W-Zであり、ここでWはリンカーであり、そしてZは標的剤又はベクターであり;
Fは、不存在、H、OR'、SR'、NR'、CR'p、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、SO2NR'、又は W-Zであり、ここでWはリンカーであり、そしてZは標的基又はベクターであり;
pは1〜3であり;
【0032】
R'は、H、OH、NH、分岐した若しくは直鎖のC1-C6アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6アルコキシ、分岐した若しくは直鎖のC1-C6アルキレン、置換された若しくは非置換のアリール、置換された若しくは非置換のヘテロアリール、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m、又は-O(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]mであり;
nは、1〜6であり、そしてmは1〜6であり;
【0033】
R"は、H、OH、NH、分岐した若しくは直鎖のC1-C6アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6アルコキシ、分岐した若しくは直鎖のC1-C6アルキレン、置換された若しくは非置換のアリール、置換された若しくは非置換のヘテロアリール、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m、又は-O(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]mであり;
nは、1〜6であり、そしてmは1〜6であり;
Xは、(CH2)q 又はC(R'R")であり;
Qは、0〜2であり;
A又はBが=Oである場合E又はFは不存在である。
また、上記化合物の医薬的塩、又はジアステレオマーもしくはエナンチオマーも含まれる。
【0034】
式Iの化合物は、場合によっては、発明化合物の官能部分において保護基により保護されている。既知の保護基は、アルコール保護基、アミン保護基、アミノキシ保護基、カルボニル保護基、カルボン酸保護基、ケトン保護基、アルデヒド保護基、アミノアルコール保護基、ホスフェート保護基である。当業者に知られているか又は当業者に自明でありそして教科書「Greene及びWuts, Protecting groups in Organic Synthesis, fourth edition」に記載されているものが引用により本発明に含まれるがそれらに限定されない。式Iの保護された化合物は、式Iaの化合物である。
【0035】
O−保護基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル及びt-ブチルを含む群から選択される。好ましくは、O−保護基は、メチル、エチル及びt-ブチルを含んで成る群から選択される。更に好ましくは、O−保護基はt-ブチルである。
【0036】
N−保護基は、カルボベンジルオキシ(Cbz)、tert-ブチルオキシカルボニル(BOC)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、及びトリフェニルメチルを含んで成る群から選択される。好ましくは、N−保護基は、カルボベンジルオキシ(Cbz)、tert-ブチルオキシカルボニル(BOC)及び9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)を含んで成る群から選択される。更に好ましくは、N−保護基は、tert-ブチルオキシカルボニル(BOC)又は9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)である。
【0037】
好ましくは、A及びBは相互に独立し、H、-O-、=O、-S-、=S、N(R')、NYR'、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'又はC(O)R'R"である。
更に好ましくは、Aは-O-、=O、-S-、=S、N(R')、NYR'、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'又はC(O)R'R"であり、そしてBはHである。
更に好ましくは、Bは-O-、=O、-S-、=S、N(R')、NYR'、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'又はC(O)R'R"であり、そしてAはHである。
更に一層好ましくは、Aは-O-、C(O)又はC(O)Oであり、そしてBはHである。
更に一層好ましくは、Bは-O-、C(O)又はC(O)Oであり、そしてAはHである。
【0038】
脱離基(LG)は、放射性同位体原子により置き代わることができる適当な脱離基である。脱離基は、当業者に知られているか又は当業者に自明のものであり、そしてSynthesis (1982), p. 85-125, 表2(p. 86); (この表2の最後のものは修正される必要がある:「n-C4F9S(O)2-O-nonaflat」であり「n-C4H9S(O)2-O-nonaflat」ではない);Carey及びSundberg, Organische Synthese, (1995), 頁279-281, 表5.8;或いはNetscher, Recent Res. Dev. Org. Chem., 2003, 7, 71-83, スキーム1、2、10、及び15、に記載されているか又は名称が記載されてるものから採用されるが、これらに限定されない。
【0039】
脱離基(LG)は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨウド、メシルオキシ、トシルオキシ、トリフルオロメチルスルホニルオキシ、ノナフルオロブチルスルホニルオキシ、(4-ブロモ-フェニル)スルホニルオキシ、(4-ニトロ-フェニル)スルホニルオキシ、(2-ニトロ-フェニル)スルホニルオキシ、(4-イソプロピル-フェニル)スルホニルオキシ、(2,4,6-トリ-イソプロピル-フェニル)スルホニルオキシ、(2,4,6-トリメチル-フェニル)スルホニルオキシ、(4-テルブチル-フェニル)スルホニルオキシ及び(4-メトキシ-フェニル)スルホニルオキシを含んで成る群から選択される。好ましくは、LGは、ヨウド、ブロモ、クロロ、メシルオキシ、トシルオキシ、(4-ニトロ-フェニル)スルホニルオキシ及び(2-ニトロ-フェニル)スルホニルオキシを含んで成る群から選択される。
【0040】
更に好ましくは、LGは、メシルオキシ、トシルオキシ、トリフルオロメチルスルホニルオキシ及び(4-ニトロ-フェニル)スルホニルオキシを含んで成る群から選択される。
好ましくは、Dが脱離基(LG)の場合、CはHである。
好ましくは、Cが脱離基(LG)である場合、DはHである。
好ましくは、D又はCは脱離基(LG)ではない。
【0041】
Wは、当業界でよく知られているリンカーであり、標的剤又はベクターを小部分に結合させるために適当である。
好ましくは、Wは、NR'、O、C(R'R")、分岐した若しくは直鎖のC1-C6アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6アルコキシ、分岐した若しくは直鎖のC1-C6アルキレン、置換された若しくは非置換のアリール、又は置換された若しくは非置換のヘテロアリール、アミノ酸、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m、又は-O(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]mであるが、これらに限定されない。
nは、1〜6であり、そしてmは1〜6である。
【0042】
標的剤又はベクターは、典型的には、合成小分子、医薬として活性な化合物(すなわち、医薬分子)、代謝物、シグナル伝達分子、ホルモン、ペプチド、タンパク質、受容体アンタゴニスト、受容体アゴニスト、受容体インバース(inverse)アゴニスト、ビタミン、必須栄養素、アミノ酸、脂肪酸、脂質、核酸、モノ−,ジ−、トリ−若しくはポリ−サッカライド、ステロイドなどから成る群から選択される。上記の選択肢の幾つかはそれらの意味において重複することが理解されよう。すなわち、ペプチドは例えばまた医薬として活性な化合物でもあることができ、或いはホルモンはシグナル伝達分子又はペプチドホルモンであることもできる。更に、上記の物質クラスの誘導体も含まれると理解されよう。
【0043】
標的剤又はベクター(又は任意にはいずれかの代謝物)は、好ましくは、哺乳類体内の標的部位に特異的に結合する成分である。この文脈における特異的結合は、化合物標的剤又はそのためのベクターが、周囲の組織又は細胞に較べて、上記の標的部位により多く蓄積することを意味する。例えば、標的剤又はベクターは、哺乳類体内の疾患部位に優先的に発現される受容体、又はインテグリンもしくは酵素に特異的に結合でき、または哺乳類体内の疾患部位に優先的に発現されるトランスポーターにより特異的に輸送されうる。幾つかの態様において、受容体、インテグリン、酵素又はトランスポーターは、哺乳類体内の病的部位で排他的に発現され、すなわち健常体では異なるか又は存在しない部位に発現される。この逆も真である。
【0044】
この文脈において、標的剤及びベクターは、哺乳類体内の疾患部位で排他的に発現され又は存在し、そして非疾患部位では発現又は存在しない(後者は、疑いなく非常に好ましいとしても、実際に達成されるのは稀であるが)受容体/又はインテグリン/又は酵素/又はトランスポーターと好ましくは特異的に結合すると理解されよう。
【0045】
特異的結合の例には、感染、炎症、癌、血小板凝集、血管新生、壊死、虚血、組織酸素圧低下、新生血管、アルツハイマー病斑、アテローム性動脈硬化斑、膵臓島細胞、血栓、セロトニントランスポーター、神経エピネフリン斑、LAT1トランスポーター、アポトシス細胞、マクロファージ、好中球、EDBフィブロネクチン、受容体チロシンキナーゼ、心臓交感神経などへの結合が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
好ましい態様において、標的剤又はベクターは、合成小分子、医薬として活性な化合物(医薬)、ペプチド、代謝物、シグナル伝達分子、ホルモン、タンパク質、受容体アンタゴニスト、受容体アゴニスト、受容体逆(inverse)アゴニスト、ビタミン、必須栄養素、アミノ酸、脂肪酸、脂質、核酸、モノ−、ジ−、トリ−若しくはポリサッカライド、ステロイド、ホルモンなどから成る群から選択することができる。
【0047】
さらに具体的には、標的剤又はベクターは、グルコース、ガラクトース、フラクトース、マンニトール、シュウクロース、スタキオース及びこれらの誘導体、グルタミン、グルタメート、チロシン、ロイシン、メチオニン、トリプトファン、アセテート、コリン、チミジン、葉酸、メトトレキセート、Arg-Gly-Asp(RGD)ペプチド、走化性ペプチド、αメラノトロピンペプチド、ソマトスタチン、ボンベシン(bombesin)、ヒトプロ−インシュリン連結ペプチド及びその類似体、GPIIb/IIIa-結合化合物、PF4-結合化合物、αvβ3、αvβ6又はα4β1インテグリン−結合化合物、ソマトスタチン受容体結合化合物、GLP-1受容体結合化合物、シグマ2受容体結合化合物、シグマ1受容体結合化合物、末梢ベンゾジアゼピン受容体結合化合物、PSMA結合化合物、エストロゲン受容体結合化合物、アンドロゲン受容体結合化合物、セロトニントランスポーター結合化合物、神経エアピネフリントランスポーター結合化合物、ドパミントランスポーター結合化合物、LATトランスポーター結合化合物、ホルモン例えばペプチドホルモン、などから成る群から選択することができる。
【0048】
好ましい態様において、式Iの化合物は、式中、
Eが、H、OR'、SR’、NR'、又はCR'p であり、そしてFが、H、OR'、SR'、NR'、又はCR'である、式I*と称する化合物である。
好ましくは、Eは、不存在、H、C(R')(R")、CR'R"、又はW-Zであり、ここでWは、リンカーであり、Zは、標的剤又はベクターである。更に好ましくは、Eは、H、C(R')(R")、CR'R"、又はW-Zであり、ここでWはリンカーであり、そしてZは標的剤又はベクターである。好ましくは、Eは、不存在、H、C(R')(R")、又はCR'R"である。
【0049】
好ましくは、Fは不存在、H、C(R')(R")、CR'R"、又はW-Zであり、ここで、Wはリンカーであり、そしてZは標的剤又はベクターである。更に好ましくは。FはH、C(R')(R")、CR'R"、又はW-Zであり、ここでWはリンカーであり、そしてZは標的剤又はベクターである。好ましくは、Fは不存在、H、C(R')(R")、又はCR'R"である。
【0050】
好ましくは、R'は、H、OH、NH、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルコキシ、置換された若しくは非置換のアリール、好ましくはフェニル、置換された若しくは非置換の ヘテロアリール、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m、又は or -O(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]mであり、ここで、nは1〜6であり、そしてmは1〜6である。好ましくは、nは1〜3又は4〜6であり、そしてmは1〜3又は4〜6である。好ましくは、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキルは、メチル、エチル又はブチルである。更に好ましくは、R'はH、OH、メチル、エチル又はブチルである。
【0051】
好ましくは、R"は、H、OH、NH、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルコキシ、置換された若しくは非置換のアリール、好ましくはフェニル、置換された若しくは非置換のヘテロアリール、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m、又は-O(CH2)n,,[O(CH2)n-O(CH2)n]mであり、ここでnは1〜6であり、そしてmは1〜6である。好ましくは、nは1〜3又は4〜6であり、そしてmは1〜3又は4〜6である。好ましくは、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキルは、メチル、エチル又はブチルである。更に好ましくは、R"はH、OH、メチル、エチル、ブチル又はフェニルである。好ましくは、Xは(CH2)q であり、ここでqは1又は2であり、好ましくは1である。
【0052】
一つの態様において、本発明は、下記の式Iに示される、直接標識化のために適当であり、放射性同位体による標識化のために適当である、新規な化合物に関する。
【0053】
【化9】

【0054】
式中、
Aは、H、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(R')(R")、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、又はSO2NR'であり;
Bは、H、-O-、=O、S、=S、N、N(R')、NYR'、P(R')(R")、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、又はSO2NR'であり;
Yは、N、NR'、-O- 又はSであり;
Cは、H、脱離基(LG)、又はR'であり;
Dは、H、脱離基(LG)、又はR'であり;
【0055】
Eは、不存在、H、OR'、SR'、NR'、CR'p,、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、SO2NR'、又はW-Zであり、ここで、Wはリンカーであり、そしてZは標的剤又はベクターであり;
Fは、不存在、H、OR'、SR'、NR'、CR'p、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、SO2NR'、又は W-Zであり、ここで、Wはリンカーであり、そしてZは標的剤又はベクターであり;
pは1〜3であり;
【0056】
R'は、H、OH、NH、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルコキシ、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキレン、置換された若しくは非置換の アリール、置換された若しくは非置換のヘテロアリール、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m 、又は-O(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]mであり; nは1〜6であり、そしてmは1〜6であり;
【0057】
R"は、H、OH、NH、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルコキシ、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキレン、置換された若しくは非置換の アリール、置換された若しくは非置換の ヘテロアリール、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m、又は-O(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]mであり;
nは、1〜6であり、そしてmは1〜6であり;
Xは、(CH2)q 又は C(R'R")であり;
qは、0〜2であり;
但し、少なくともE又はFはW-Zであり;そして
A又はBがOの場合、E又はFは不存在である。
更に、上記化合物の医薬的又は適切な塩、ジアステレオマー及びエナンチオマーに関する。
【0058】
第二の態様において、本発明は、放射性同位体による標識化のために適切であり、間接的標的化のために適切である、下記式Iで示される新規な化合物に関する。
【0059】
【化10】

【0060】
式中、
Aは、H、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(R')(R")、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、又はSO2NR'であり;
Bは、H、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(R')(R")、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、又はSO2NR'であり;
Yは、N、NR'、-O- 又はSであり;
Cは、H、脱離基(LG)、又はR'であり;
Dは、H、脱離基(LG)、又はR'であり;
【0061】
Eは、不存在、H、OR'、SR'、NR'、CR'p、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、又はSO2NR'であり;
Fは、不存在、H、OR'、SR'、NR'、CR'p、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、又はSO2NR'であり;
pは、1〜3であり;
【0062】
R'は、H、OH、NH、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルコキシ、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキレン、置換された若しくは非置換の アリール、置換された若しくは非置換のヘテロアリール、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m、又は-O(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]mであり;
nは、1〜6であり、そしてmは1〜6であり;
R"は、H、OH、NH、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルコキシ、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキレン、置換された若しくは非置換の アリール、置換された若しくは非置換のヘテロアリール、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m、又は-O(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]mであり;
【0063】
nは1〜6であり、そしてmは1〜6であり;
Xは、(CH2)q 又はC(R'R")であり;
qは、0〜2であり;
但し、A又はBが=Oである場合、E又はFは不存在であり、
E及びFが同時に不存在ではありえない。
更に、上記化合物の医薬的又は適当な塩、ジアステレオマー及びエナンチオマーに関する。
【0064】
第三の態様において、本発明は、式Iの新規な化合物に関し、式中、
Aは、結合、-O-、-S-、N、N(R')、NYR'、P(R')(R")、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、又はSO2NR'であり;
Bは、結合、-O-、-S-、N、N(R')、NYR'、P(R')(R")、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、又はSO2NR’である。
好ましくは、A及び/又はBは結合である。
態様及び好ましい特徴は一緒に組合せることができ、そして本発明の範囲内である。
【0065】
本発明の化合物は下記の物:
【化11】


であるが、これらに限定されない。
【0066】
cis-ベンジル 3-(トシルオキシ)シクロブタンカルボキシレート
【化12】

【0067】
cis-3-(ベンジルオキシ)シクロブチル トルエン-4-スルホート
【化13】

【0068】
trans-3-{3-[N-(2-{4-[4-ベンジルオキシ)フェニル]ピペラジン-1-イル}-2-オキソエチル)カルバモイル]フェノキシ}シクロブチル トルエン-4-スルホネート
【化14】

【0069】
メチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[trans-3-(トシルオキシ)シクロブチル]-L-チロシネート
【化15】

【0070】
メチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[cis-3-(トシルオキシ)シクロブチル]-L-チロス
【化16】

【0071】
cis-メチル 3-(トシルオキシ)シクロブタンカルボキシレート
【化17】

【0072】
cis-シクロブタン-1,3-ジイル bis(トルエン-4-スルホネート
【化18】

【0073】
第二の観点において、本発明は、式IIの新規な化合物に関する。
【化19】

【0074】
式中、
Aは、H、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(R')(R")、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、又はSO2NR'であり;
Bは、H、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(R')(R")、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、又はSO2NR'であり;
Yは、N、NR'、O又はSであり;
Cは、H、放射性同位体、ハロゲン、又はR'であり;
Dは、H、放射性同位体、ハロゲン、又はR'であり;
【0075】
Eは、不存在、H、OR'、SR'、NR'、CR'p,、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、SO2NR'、又はW-Zであり、ここで、Wはリンカーであり、そしてZは標的剤であり;
Fは、不存在、H、OR'、SR'、NR'、CR'p,、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、SO2NR'、又はW-Zであり、ここでWはリンカーであり、そしてZは標的剤であり;
pは1〜3であり;
【0076】
R'は、H、OH、NH、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルコキシ、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキレン、置換された若しくは非置換の アリール、置換された若しくは非置換のヘテロアリール、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m 、又は-O(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]mであり;
nは1〜6であり、そしてmは1〜6であり;
R"は、H、OH、NH、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルコキシ、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキレン、置換された若しくは非置換の アリール、置換された若しくは非置換のヘテロアリール、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m 、又は-O(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m, であり;
【0077】
nは1〜6であり、そしてmは1〜6であり;
Xは、(CH2)q 又はC(R'R")であり;
qは、0〜2であり;
A又はBが =Oである場合、E又はFは不存在である。
更に、医薬的塩、ジアステレオマー及びエナンチオマーに関する。
【0078】
Wは、当業界においてよく知られているリンカーであり、標的剤又はベクターを小成分に結合させるために適切なものである。
好ましくは、Wは、NR'、-O-、C(R'R")、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルコキシ、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキレン、置換された若しくは非置換の アリール、又は置換された若しくは非置換のヘテロアリール、アミノ酸、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m、又は-O(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m, から選択されるが、これらに限定されず;
nは1〜6であり、そしてmは1〜6である。
【0079】
式IIの化合物は、場合によっては、本発明の化合物の官能基において保護基により保護される。既知の保護基は、アルコール保護基、アミン保護基、アミノキシ保護基、カルボニル保護基、カルボン酸保護基、ケトン保護基、アルデヒド保護基、アミノアルコール保護基、ホスフェート保護基である。
式IIの保護された化合物は、式IIaの化合物と称される。
【0080】
好ましくは、A及びBは、相互に独立して、H、-O-、=O、-S-、=S、N(R')、NYR'、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、又はC(O)R'R"である。
更に好ましくは、Aは-O-、=O、-S-、=S、N(R')、NYR'、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'又はC(O)R'R"であり;そしてBはHである。
更に好ましくは、Bは-O-、=O、-S-、=S、N(R')、NYR’、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'又はC(O)R'R"であり、そしてAはHである。
更に好ましくは、Aは-O-、C(O)、又はC(O)Oであり;そしてBはHである。
更に好ましくは、Bは-O-、C(O)、、又はC(O)Oであり、そしてAはHである。
【0081】
Wは、当業界においてよく知られており、そして標的剤又はベクターを、小分子に結合させるために適当である。
好ましくは、Wは、NR'、-O-、C(R'R")、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルコキシ、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキレン、置換された若しくは非置換の アリール又は置換された若しくは非置換の ヘテロアリール、アミノ酸、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m 又は-O(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m, であり;
nは1〜6であり、そしてmは1〜6である。
【0082】
標的剤又はベクターは、典型的には、合成小分子、医薬として活性な化合物(すなわち、医薬分子)、代謝物、シグナル伝達分子、ホルモン、ペプチド、タンパク質、受容体アンタゴニスト、受容体アゴニスト、受容体逆(inverse)アゴニスト、ビタミン、必須栄養素、アミノ酸、脂肪酸、脂質、核酸、モノ−、ジ−、トリ−若しくはポリサッカライド、ステロイドなどから成る群から選択される。上記の選択肢のいくつかは、それらの意味の範囲内で重複することが理解されるであろう。すなわち、例えばペプチドはまた、医薬として活性な化合物である可能性があり、或いはホルモンは、例えばシグナル伝達分子又はペプチドホルモンである可能性がある。更に、上記の物質クラスの誘導体も含まれることが理解されるであろう。
【0083】
標的剤又はベクター(又は場合によっては任意の代謝物)は好ましくは、哺乳類体内の標的部位に特異的に結合する成分である。この文脈において特異的結合は、化合物標的剤又はそのもののためのベクターが、周囲組織又は細胞に較べて、大幅にこの標的部位において促進することを意味する。例えば、標的剤又はベクターは、哺乳類体内の疾患部位で優先的に発現される受容体、インテグリン又は酵素に特異的に結合し、或いは標的剤又はベクターは、哺乳類体内の疾患部位で優先的に発現されるトランスポーターにより特異的に輸送されるであろう。幾つかの態様において、受容体、インテグリン、酵素、又はトランスポーターは、哺乳類体内の疾患部位において、すなわち健常対象において異なるか又は存在しない部位に、排他的に発現され、逆も真である。
【0084】
この文脈において、標的剤及びベクターは、哺乳類体内の疾患部位で排他的に発現され又は存在し、そして非疾患部位では発現又は存在しない(後者は、疑いなく非常に好ましいとしても、実際に達成されるのは稀であるが)受容体/又はインテグリン/又は酵素/又はトランスポーターと好ましくは特異的に結合すると理解されよう。
【0085】
特異的結合の例には、感染、炎症、癌、血小板凝集、血管新生、壊死、虚血、組織酸素圧低下、新生血管、アルツハイマー病斑、アテローム性動脈硬化斑、膵臓島細胞、血栓、セロトニントランスポーター、神経エピネフリン斑、LAT1トランスポーター、アポトシス細胞、マクロファージ、好中球、EDBフィブロネクチン、受容体チロシンキナーゼ、心臓交感神経などの部位への特異的結合が含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
好ましい態様において、標的剤又はベクターは、合成小分子、医薬として活性な化合物(医薬)、ペプチド、代謝物、シグナル伝達分子、ホルモン、タンパク質、受容体アンタゴニスト、受容体アゴニスト、受容体逆(inverse)アゴニスト、ビタミン、必須栄養素、アミノ酸、脂肪酸、脂質、核酸、モノ−、ジ−、トリ−若しくはポリサッカライド、ステロイド、ホルモンなどから成る群から選択することができる。
【0087】
さらに具体的には、標的剤又はベクターは、グルコース、ガラクトース、フラクトース、マンニトール、シュウクロース、スタキオース及びこれらの誘導体、グルタミン、グルタメート、チロシン、ロイシン、メチオニン、トリプトファン、アセテート、コリン、チミジン、葉酸、メトトレキセート、Arg-Gly-Asp(RGD)ペプチド、走化性ペプチド、αメラノトロピンペプチド、ソマトスタチン、ボンベシン(bombesin)、ヒトプロ−インシュリン連結ペプチド及びその類似体、GPIIb/IIIa-結合化合物、PF4-結合化合物、αvβ3、αvβ6又はα4β1インテグリン−結合化合物、ソマトスタチン受容体結合化合物、GLP-1受容体結合化合物、シグマ2受容体結合化合物、シグマ1受容体結合化合物、末梢ベンゾジアゼピン受容体結合化合物、PSMA結合化合物、エストロゲン受容体結合化合物、アンドロゲン受容体化合物、セロトニントランスポーター結合化合物、神経エアピネフリントランスポーター結合化合物、ドパミントランスポーター結合化合物、LAT1トランスポーター結合化合物、ホルモン例えばペプチドホルモン、などから成る群から選択することができる。
【0088】
好ましい態様において、式Iの化合物は、式中、
Eが、H、OR'、SR’、NR'、又はCR'p であり、そしてFが、H、OR'、SR'、NR'、又はCR'pである、式I*と称する化合物である。
好ましくは、Eは、不存在、H、C(R')(R")、CR'R"、又はW-Zであり、ここでWは、リンカーであり、Zは、標的剤又はベクターである。更に好ましくは、Eは、H、C(R')(R")、CR'R"、又はW-Zであり、このでWはリンカーであり、そしてZは標的剤又はベクターである。好ましくは、Eは、不存在、H、C(R')(R")、又はCR'R"である。
【0089】
好ましくは、Fは不存在、H、C(R')(R")、CR'R"、又はW-Zであり、ここで、Wはリンカーであり、そしてZは標的剤又はベクターである。更に好ましくは。FはH、C(R')(R")、CR'R"、又はW-Zであり、ここでWはリンカーであり、そしてZは標的剤又はリンカーである。好ましくは、Fは不存在、H、C(R')(R")、又はCR'R"である。
【0090】
好ましくは、R'は、H、OH、NH、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルコキシ、置換された若しくは非置換のアリール、好ましくはフェニル、置換された若しくは非置換の ヘテロアリール、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m、又は-O(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]mであり、ここで、nは1〜6であり、そしてmは1〜6である。好ましくは、nは1〜3又は4〜6であり、そしてmは1〜3又は4〜6である。好ましくは、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキルは、メチル、エチル又はブチルである。更に好ましくは、R'はH、OH、メチル、エチル又はブチルである。
【0091】
好ましくは、R"は、H、OH、NH、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルコキシ、置換された若しくは非置換のアリール、好ましくはフェニル、置換された若しくは非置換のヘテロアリール、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m、又は-O(CH2)n,,[O(CH2)n-O(CH2)n]mであり、ここでnは1〜6であり、そしてmは1〜6である。好ましくは、nは1〜3又は4〜6であり、そしてmは1〜3又は4〜6である。好ましくは、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキルは、メチル、エチル又はブチルである。更に好ましくは、R"はH、OH、メチル、エチル、ブチル又はフェニルである。好ましくは、Xは(CH2)q であり、このでqは1又は2であり、好ましくは1である。
【0092】
適当な放射性同位体は当業界においてよく知られている(Handbook of Nuclear Chemistry, Vol. 4 (Vol. Ed. F. Roesch;Ed. Vertes, A., Nagy, S., Klencsar, Z.,) Kluver Academic Publishers, 2003; pp 119-202)。放射性同位体は、18F、11C、123I、124I、125I、131I、64Cu2+67Cu2+89Zr、68Ga3+67Ga3+111In3+14C、3H、32P、89Zr及び33Pの群から選択される。特に、陽電子放射トモグラフィー(PET)のために、18F、123I、124I、125I、又は 131Iが、陽電子放射放射性同位元素として好ましく、18Fが更に好ましい。本発明はまた、すべての放射性同位体対応物、すなわちコールド同位体、例えば19Fを含む。
【0093】
好ましくは、Dが放射性同位体である場合、CはHである。
好ましくは、Dが放射性同位体である場合、DはHである。
好ましくは、Eは、H、OR'、SR'、NR'、又はCR'p であり、そしてFはH、OR'、SR'、NR'、又はCR'pである。
好ましい態様において、式IIの化合物は、式IIの化合物においてEがH、OR'、SR'、NR'、又はCR'p であり、そしてFがH、OR'、SR'、NR'、又はCR'p の化合物であり、式II*と称される。
【0094】
第一の態様において、本発明は、放射性同位体による直接的又は間接的標識化から得られる、下記式IIの新規化合物に関する。
【0095】
【化20】

【0096】
式中、
Aは、H、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(R')(R")、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、又はSO2NR'であり;
Bは、H、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(R')(R")、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、又はSO2NR'であり;
Yは、N、NR'、-O-又はSであり;
Cは、H、放射性同位体、ハロゲン、又はR'であり;
Dは、H、放射性同位体、ハロゲン、又はR'であり;
【0097】
Eは、不存在、H、OR'、SR'、NR'、CR'p,、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、SO2NR'、又はW-Zであり、ここで、Wはリンカーであり、そしてZは標的剤であり;
Fは、不存在、H、OR'、SR'、NR'、CR'p,、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、SO2NR'、又はW-Zであり、ここでWはリンカーであり、そしてZは標的剤であり;
pは1〜3であり;
【0098】
R'は、H、OH、NH、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルコキシ、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキレン、置換された若しくは非置換の アリール、置換された若しくは非置換のヘテロアリール、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m 、又は-O(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]mであり;
nは1〜6であり、そしてmは1〜6であり;
R"は、H、OH、NH、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルコキシ、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキレン、置換された若しくは非置換の アリール、置換された若しくは非置換のヘテロアリール、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m 、又は-O(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m, であり;
【0099】
nは1〜6であり、そしてmは1〜6であり;
Xは、(CH2)q 又はC(R'R")であり;
Qは、0〜2であり;
但し、少なくともC又はDは放射性同位体であり、
A又はBがOの場合、E又はFは不存在であり、
少なくともE又はFはW-Zである。
更に、これらの医薬的塩、ジアステレオマー及びエナンチオマーに関する。
【0100】
第二の態様において、本発明は、放射性同位体により標識化され、間接的標識化のために適切な、式IIの新規な化合物に関する。
【0101】
【化21】

【0102】
式中、
Aは、H、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(R')(R")、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、又はSO2NR'であり;
Bは、H、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(R')(R")、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、又はSO2NR'であり;
Yは、N、NR'、-O-又はSであり;
Yは、N、NR'、O又はSであり;
【0103】
Cは、H、放射性同位体、ハロゲン又はR'であり;
Dは、H、放射性同位体、ハロゲン又はR'であり;
Eは、不存在、H、OR'、SR'、NR'、CR'p,、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、 P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、SO2NR'であり;
Fは、不存在、H、OR'、SR'、NR'、CR'p,、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、SO2NR'であり;
pは1〜3であり;
【0104】
R'は、H、OH、NH、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルコキシ、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキレン、置換された若しくは非置換のアリール、置換された若しくは非置換のヘテロアリール、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m 、又は-O(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]mであり;
nは1〜6であり、そしてmは1〜6であり;
R"は、H、OH、NH、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルコキシ、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキレン、置換された若しくは非置換のアリール、置換された若しくは非置換のヘテロアリール、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m 、又は-O(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]mであり;
【0105】
nは1〜6であり、そしてmは1〜6であり;
Xは、(CH2)q 又はC(R'R")であり;
qは、0〜2である;
但し、少なくともC又はDは放射性同位体であり;
A又はBが=Oである場合、E又はFは不存在である。
更に、上記化合物の医薬的塩、ジアステレオマー及びエナンチオマーに関する。
【0106】
好ましくは、A-E 及び/又はB-F は、第二の態様の式IIの化合物をW-Zにカップリングするための適切な成分であり、ここで、Wはリンカーであり、そしてZは標的剤又はベクターであり、そして式IIIa又はIIIbの化合物に対応する。
【0107】
式IIIa又はIIIbの化合物は、下記の式により定義される。
【化22】

【0108】
式中、
LG1 は、脱離基であり;
Aは、H、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(R')(R")、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、又はSO2NR'であり;
Bは、H、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(R')(R")、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、又は SO2NR'であり;,
Yは、N、NR'、-O-又はSであり;
【0109】
Cは、H、放射性同位体、ハロゲン、又はR'であり;
Dは、H、放射性同位体、ハロゲン、又はR'であり;
R'は、H、OH、NH、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルコキシ、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキレン、置換された若しくは非置換のアリール、置換された若しくは非置換のヘテロアリール、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m 、又は-O(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]mであり;
nは1〜6であり、そしてmは1〜6であり;
【0110】
R"は、H、OH、NH、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6 アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルコキシ、分岐した若しくは直鎖のC1-C6 アルキレン、置換された若しくは非置換のアリール、置換された若しくは非置換のヘテロアリール、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m 、又は-O(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]mであり;
nは1〜6であり、そしてmは1〜6であり;
Xは、(CH2)q 又はC(R'R")であり;
Qは、0〜2である。
更に、上記化合物の医薬的塩、ジアステレオマー及びエナンチオマーに関する。
【0111】
好ましくは、LG1 は、式IIIa及びIIIbの化合物をW-Zとカップリングさせるのに適当なA-E又はB-Fである。更に、LG1 は、式IIIa及びIIIbの化合物をW-Zとカップリングさせるのに適当な当業界において知られている任意のカップリング剤であり、ここで得られる化合物はA-W-Z 及び/又はB-W-Zを有する第一の態様の式IIの化合物であり、或いはA及び/又はBが結合である第一の態様の式IIの化合物である。
【0112】
第三の態様において、本発明は式II、IIIa又はIIIbの新規な化合物に関し、ここで
Aは、結合、-O-、-S-、N、N(R')、NYR'、P(R')(R")、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、又はSO2NR'であり;
Bは、結合、-O-、-S-、N、N(R')、NYR'、P(R')(R")、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、又はSO2NR'である。
好ましくは、A及び/Bは結合である。
【0113】
態様及び好ましい特徴は組合せることができ、そして本発明の範囲内にある。
本発明の化合物は下記のとおり:
【化23】


であるが、これらに限定されない。
【0114】
trans-メチル 3-フルオロシクロブタンカルボキシレート
【化24】

【0115】
trans-ベンジル 3-フルオロシクロブタンカルボキシレート
【化25】

【0116】
N-(2-{4-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]ピペラジン-1-イル}-2-オキソエチル)-3-[cis-(3-フルオロシクロブチル)オキシ]ベンズアミド
【化26】

【0117】
O-(cis-3-[18F]フルオロシクロブチル)-L-チロシン
【化27】

【0118】
N-(2-{4-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]ピペラジン-1-イル}-2-オキソエチル)-3-[cis-(3-[18F]フルオロシクロブチル)オキシ]ベンズアミド
【化28】

【0119】
trans-3-[18F]フルオロシクロブチル トルエン-4-スルホネート
【化29】

【0120】
第三の観点において、本発明は式I又はIIの化合物の製造方法に関する。スキーム8を参照のこと
【化30】

【0121】
一つの態様において、式Iの化合物を得るための方法は、
● 式Ia(マイナスLG)の化合物を得るために、所望により、脱離基を有しない式Iの化合物(式I(マイナスLG))に保護基を加え;
● 脱離基を有しない式I(式I(マイナスLG))の化合物を式I又はIaの化合物を得るために、LGと反応せしめ;そして
● 式Iの化合物を得るために、所望により、式Iaの化合物を脱保護する;
工程を含んで成る方法。
【0122】
好ましくは、式Iの化合物を得る方法は、
● 式Iの化合物を得るために、脱離基を有しない式Iの化合物(式I(マイナスLG)をLGと反応させる
工程を含んで成る方法。
式Ia(マイナスLG)及びIaの化合物は、適当な保護基により保護された官能基を有する。
【0123】
第二の態様において、当該方法は式IIの化合物を得るための直接標識化法であって、
● 所望により、式Iaの化合物を得るために、式Iの化合物に保護基を加え;
● 式II又はIIaの化合物を得るために、式I又はIaの化合物を放射性同位体により放射性標識し;そして、
● 所望により、式IIの化合物を得るために、式IIaの化合物を脱保護する;
工程を含んでなる方法。
【0124】
好ましくは、式IIの化合物を得るための方法は、
● 式IIの化合物を得るために、式Iの化合物を放射性同位体により放射性標識する工程を含んで成る方法。
【0125】
第三の態様において、当該方法は式IIの化合物を得るための間接標識化法であって、
● 所望により、式I*aの化合物を得るために、式I*の化合物に保護基を加え;
● 式II*又はII*aの化合物(標的剤又はベクター成分を伴わない式IIの化合物)を得るために、式I*又はI*aの化合物(標的剤又はベクター成分を伴わない式Iの化合物)を放射性同位体により放射性標識し;
● 式II又はIIaの化合物を得るために、式II*又はII*aの化合物(標的剤又はベクター成分を伴わない式IIの化合物)を、標識剤又はベクター成分と反応させ;そして
● 所望により、式IIの化合物を得るために、式IIaの化合物を脱保護する;
工程を含んで成る方法。
【0126】
好ましくは、式IIの化合物を得る方法は、
● 式II*の化合物(標的剤又はベクター成分を有さない式IIの化合物)を得るために、式I*の化合物(標的剤又はベクター成分を有しない式Iの化合物)を放射性同位体により放射性標識し;そして
● 式IIの化合物を得るために、式II*の化合物(標的剤又はベクター成分を有さない式IIの化合物)を標的剤又はベクター成分と反応させる;
工程を含んで成る方法。
【0127】
更に好ましくは、式IIの化合物を得るための方法は、
● 式IIの化合物(式中、Eは、不存在、H、OR'、SR'、NR'、CR'p であり、そしてFは、不存在、H、OR'、SR'、NR'、CR'p であり、pは1〜3である)を得るために、式Iに化合物(式中、Eは、不存在、H、OR'、SR'、NR'、CR'pであり、そしてFは不存在、H、OR'、SR'、NR'、CR'p であり、pは1〜3である)を、放射性同位体により放射性標識する;
工程を含んで成る方法。
式I、II、IIIa及びIIIbの化合物の態様及び好ましい特徴が本発明に含まれる。
【0128】
本発明の第四の観点において、本発明は、式I、Ia、I*、I*a、II、IIa、II*又はII*aの化合物、或いはそれらの無機又は有機酸の医薬として許容される塩、水和物、錯体、エステル、アミド、溶剤又はプロドラッグ、及び医薬として許容されるキャリヤー、希釈剤、賦形剤又はアジュバントを含んで成る医薬組成物に関する。一つの態様において、医薬組成物は、医薬として許容される塩、水和物、錯体、エステル、アミド、溶媒和物又はプロドラッグである式Iの化合物を含んで成る。
【0129】
第五の観点において、本発明は、放射性医薬組成物を調製するためのキットに関し、当該キットはシールされたバイアルを含んでなり、このバイアルは、式I又はIIの化合物、それらの無機又は有機酸の医薬として許容される塩、水和物、錯体、エステル、アミド、溶媒和物、又はプロドラッグ、及び更に所望により化学一般式I又はIIを有する化合物との混合物として供給される、許容されるキャリヤー、希釈剤、賦形剤又はアジュバントを含んで成る。更に好ましくは、本発明はキットに関し、当該キットは、上に定義した化合物又は組成物であって粉末状のもの、及びヒトを含む動物に投与するための、化合物又は組成物の溶液をを調製するための適切な溶媒を含む容器を含んで成る。
【0130】
第六の態様において、本発明は、陽電子放射トモグラフィー(PET)又は単一光子放射コンピュータ化トモグラフィー(SPECT)による造影のために脱保護される式IIの化合物に関する。
本発明は、陽電子放射トモグラフィー(PET)又は単一光子放射コンピュータ化トモグラフィー(SPECT)による造影のための放射性医薬の製造における、脱保護されるまたはされない式IIの化合物の使用に関する。
種々の疾患及び生理的機能不全が、標的剤に依存して特定され得る。
【0131】
定義
本発明の目的のため、用語「標的剤」又はベクターは、次の意味を有すべきである:標的剤又はベクターは、それに結合された放射性核種を生物系における特定の部位に標的化する又は向ける化合物又は成分である。標的剤又はベクターは、哺乳類体内の標的部位に結合するか又は蓄積する任意の化合物又は化学的存在であることができ、すなわち当該化合物は周囲組織に較べて標的部位に、より大きな程度で局在化する。
【0132】
用語「アルキル」は、本明細書において使用される場合、C1〜C6 直鎖又は分岐鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、又はネオペンチルを意味する。アルキル基はペルフルオロ化されていてもよく、又はハロゲン、ヒドロキシル、C1-C4 アルコキシ、又は C6-C12 アリール(これは、1〜3個のハロゲン原子により置換されていてもよい)から成る群から選択される1〜5個の置換基により置換されていてもよい。更に好ましくは、アルキル基は、C1 〜C4 又は C1 〜C3 アルキルである。
【0133】
用語「アルケニル」は、本明細書において使用される場合、少なくとも1個の二重結合を含みそして2〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の1価基又は価基を意味し、例えばエテニル、プロプ-2-エン-1-イル、ブタ-1-エニル、ペンタ-1-エニル、ペンタ-1,4-ジエニルなどである。
【0134】
用語「アルキニル」は、本明細書において使用される場合、少なくとも1個の三重結合を含みそして2〜10個の炭素原子を有する、置換された若しくは非置換の、分岐した若しくは直鎖の1価基又は2価基を意味し、例えばエチニル、プロプ-1-イニル、ブツ-1-イニル、ペント-1-イニル、ペント-3-イニルなどである。
【0135】
アルケニル基及びアルキニル基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、 -CO2H、-CO2アルキル、-NH2,、-NO2、-N3、-CN、C1-C20 アシル、又はC1-C6 アシルオキシから成る群から選択される1又は複数の置換基により置換されていてもよい。
【0136】
用語「アリール」は、本明細書において使用される場合、5〜10個の環原子を含む芳香族炭素環又はヘテロ環を意味し、例えば、フェニル、ナフチル、フリル、チエニル、ピリジル、ピラゾリル、ピリミジニル、オキサゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、キノリル、又はチアゾリルである。アリール基は、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、-CO2H、-CO2アルキル、-NH2、アルキル-NH2、C1-C20 アルキル-チオラニル、-NO2、-N3、-CN、C1-C20 アルキル、C1-C20 アシル、又はC1-C20 アシルオキシから成る群から選択される1又は複数の置換基により置換されていてもよい。ヘテロ原子は、芳香族特性を喪失させない限り酸化されていてもよく、例えばピリジン成分はピリジンN-オキシドに酸化されてもよい。
【0137】
用語「置換された」が使用される場合はいつでも、「置換された」を用いる表現中に示される原子上の1個又は複数個の水素が、示された群から選択されたものにより置き換えられることを意味し、但し、示された原子の通常の原子価を超えず、そして置換が化学的に安定な化合物、すなわち、反応混合物からの有用な程度の純度への単離及び医薬組成物の形成に対して耐えるだけの強靭さを有する化合物をもたらすことを条件とする。置換基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ、(C1-C6)カルボニル、シアノ、ニトリル、トリフルオロメチル、(C1-C6)スルホニル、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ及び(C1-C6)スルファニルから選択することができよう。
【0138】
ハロゲンは、クロロ、ヨウド、フルオロ及びブロモを意味する。好ましくは、ハロゲンはヨウド又はフルオロを意味する。
【0139】
本発明の放射性同位体はPET放射性同位体及びSPECT放射性同位体である。適当なPET放射性同位体(29)は当業界においてよく知られている(Handbook of Nuclear Chemistry, Vol. 4 (Vol. Ed. F. Roesch;Ed. Vertes, A., Nagy, S., Klencsar, Z.,) Kluver Academic Publishers, 2003; pp 119-202)。SPECT造影用の適当な放射性同位体含有錯体(30)は当業界においてよく知られている(Handbook of Nuclear Chemistry, Vol. 4 (Vol. Ed. F. Roesch;Ed. Vertes, A., Nagy, S., Klencsar, Z.,) Kluver Academic Publishers, 2003; pp 279-310)。
【0140】
放射性標識は、放射性同位体含有錯体であり、そして/又は化合物又は錯体に共有結合している成分又は原子である。放射性同位体は、99mTc、18F、11C、123I、124I、125I、131I、64Cu2+67Cu2+89Zr、68Ga3+67Ga3+111In3+14C、3H、32P、89Zr及び33Pの群から選択される。特に、陽電子放射トモグラフィ(PET)のためには、陽電子放射用放射性同位体として、18F、68Ga、64Cu又は124Iが好ましく、更に好ましくは18F又は68Gaである。単一光子放射コンピュータ制御トモグラフィー(SPECT)のためには、123I、125I、111In、及び99mTcが好ましく、更に好ましくは123I又は99mTcである。
【0141】
用語「脱離基」は、それ自体として又は他の基の部分として本明細書で使用する場合、当業者に知られており又は当業者にとって自明であり、そして原子又は原子の群が化学物質から親核性剤により検出できることを意味する。例は下記の文献において提供されている:Synthesis (1982), p. 85-125, Table 2 on p. 86 (このTable2の最後の部分は修正されなければならない、“n-C4H9S(O)2-O- nonaflat”ではなく、“n-C4F9S(O)2-O- nonaflat”である); Carey and Sundberg, Organische Synthese, (1995), page 279-281, table 5.8; 又はNetscher, Recent Res. Dev. Org. Chem., 2003, 7, 71-83, scheme 1, 2, 10 and 15 and others); (Coenen, Fluorine-18 Labeling Methods: Features and Possibilities of Basic Reactions, (2006), in: Schubiger P.A., Friebe M., Lehmann L., (eds), PET-Chemistry - The Driving Force in Molecular Imaging. Springer, Berlin Heidelberg, pp.15-50, explicitly: scheme 4 pp. 25, scheme 5 pp 28, table 4 pp 30, Fig 7 pp 33)。
【0142】
用語「アミノ酸」が使用される場合はいつもそれを意味する。
用語「N-保護基」(アミノ保護基)は、それ自体として又は他の基の部分として本明細書で使用される場合、当業者に知られており又は当業者にとって自明であり、保護基のクラス、すなわちカルバメート、アミド、イミド、N-アルキルアミン、N-アリールアミン、イミン、エナミン、ボラン、N-P 保護基、N-スルフェニル、N-スルホニル及びN-シリルから選択されるがこれらに限定されず、そして教科書Greene and Wuts, Protecting groups in Organic Synthesis, third edition, page 494-653(これを引用により本明細書に組み入れる)に記載されているものから選択されるがそれらに限定されない。
【0143】
用語「O-保護基」は、本明細書において使用される場合、化合物のカルボン酸官能部位以外の部位を含む反応が行われながら、カルボン酸官能基をブロック又は保護するために使用されるカルボン酸保護基を意味する。カルボン酸保護基は、Greene, "Protective Groups in Organic Synthesis" pp. 152-186 (1981)に開示されており、これを引用により本明細書に組み入れる。このようなカルボキシ保護基は当業界においてよく知られており、カルボキシル基の保護において広範に使用されている。代表的なカルボキシ保護基は、アルキル(例えば、メチル、エチル又はtert-ブチルなど)、アリールアルキル、例えばフェネチル又はベンジル、及びそれらの置換された誘導体、例えばアルコキシベンジル又はニトロベンジルなどである。
【0144】
用語「タンパク質」は、本明細書において使用される場合、少なくとも約20個又はそれより多くのアミノ酸(D体及び/又はL体の両方)を有する任意のタンパク質、例えばペプチド、酵素、糖タンパク質、ホルモン、受容体、抗原、抗体、増殖因子、などであるが、これらに限定されない。タンパク質の意味には、約20個より多くのアミノ酸、約50個より多くのアミノ酸残基、そして時には約100個又は200個より多くのアミノ酸残基を有するものが含まれる。
【0145】
用語「ペプチド」は、本明細書において使用される場合、少なくとも1個のペプチド結合を含むあらゆる存在を意味し、そしてD及び/又はLアミノ酸のいずれを含んでいてもよい。用語ペプチドの意味は、本明細書において上に定義した用語「タンパク質」と、ときには重複するであろう。すなわち、本発明のペプチドは少なくとも2〜約100個のアミノ酸を有し、好ましくは2〜約50個のアミノ酸を有する。しかしながら、最も好ましくは、ペプチドは2〜約20個のアミノ酸を有し、そして幾つかの態様では2〜約15個のアミノ酸を有する。
【0146】
用語「小分子」は、約1000原子単位より小さい全ての分子を含むことが意図される。本発明の幾つかの態様において、小分子は天然由来であってもよく又は合成的に製造されてもよいペプチドある。他の態様において、小分子は、有機の非−ペプチド/タンパク質性分子であり、そして好ましくは合成的に製造される。特定の態様において、小分子は、医薬的に活性な化合物(すなわち、医薬)、またはそのプロドラッグ、医薬品の代謝物、又は天然の生物学的過程、例えば刺激剤に応答しての酵素的機能又は生体機能と関連する反応の生成物であり、小分子は一般に約75〜約1000の分子量を有する。
【0147】
実験の部
略号
【表1】

【0148】
1. 実験化学
1.1 trans-3-フルオロシクロブタンカルボン酸(5)のコールド合成−合成経路1
化合物5は配合団(prosthetic group)であり、そして後で、ペプチドのごとき生物分子又は小分子と既知のカップリング法によりカップリングさせることができる。
【0149】
メチル 3-オキソシクロブタンカルボキシレート(1)
【化31】


ジクロロメタン(2500 mL)中3-オキソシクロブタンカルボン酸(50 g, 438 mmol)、メタノール(17.75 mL; 438 mmol)、4-N,N-ジメチルアミノピリジン(5.37 g, 43.7 mmol)及びN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-N'-エチルカルボジイミド・ヒドロクロリド(126 g, 657 mmol)を、一晩室温で撹拌した。混合物を水(3×200 mL)で洗浄し、そして一緒にした水相をジクロロメタン2×100 mL)により逆抽出した。一緒にした有機相を、0.5M 塩酸 (200 mL)、半飽和炭酸水素ナトリウム (100 mL)、水 (100 mL) 及び食塩水 (100 mL)により洗浄した。混合物を硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして真空中で濃縮乾固し、メチル 3-オキソシクロブタンカルボキシレート (1) (54 g; 421 mmol; 96%)を得、これを更に精製することなく使用した。
【0150】
cis-メチル 3-ヒドロキシシクロブタンカルボキシレート (2)
【化32】

【0151】
メタノール中メチル 3-オキソシクロブタンカルボキシレート (1) (50 g, 390 mmol) の溶液を、氷浴上で冷却した。硼水素化ナトリウム (15 g, 397 mmol) を滴加した後、混合物を0℃にて2時間撹拌し、この時点までにTLC-分析(ジクロロメタン/10% メタノール、過マンガン酸カリ)は反応の完了を示した。pHが7になるまでジオキサン中4M塩酸を添加した後、混合物をメタノール (1000 mL) により希釈し、そして室温にて一晩撹拌した。
【0152】
混合物を蒸発乾固し、そしてジクロロメタン (300 mL) 中に再懸濁した。これを、水(2×150 mL)、炭酸水素ナトリウム飽和溶液(2×150 mL)、水(150 mL)及び食塩水(100 mL)により洗浄した。溶媒を減圧下で除去し、そして粗化合物をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン=1:1)により精製し、(cis)-メチル 3-ヒドロキシシクロブタンカルボキシレート(2)(20.06 g; 154 mmol, 39 %)(主として cis)を得た。化合物2は、コールド[19F]-標識化(ヒドロキシが[19F]により置き換えられる)に前駆体である。
【0153】
cis-メチル 3-(トシルオキシ)シクロブタンカルボキシレート(3)
【化33】

【0154】
ジクロロメタン(300 mL)中(cis)-メチル 3-ヒドロキシシクロブタンカルボキシレート(2)(10 g, 76.8 mmol)の溶液に、ピリジン(9.4 mL)及びトシル無水物(tosyl anhydride)(27.56 g, 84.5 mmol)を加えた。この混合物を室温にて一晩撹拌した。この混合物を真空中で濃縮し、ジエチルエーテル(200 mL)中に再懸濁し、そして0.5M 塩酸(2×60 mL)、炭酸水素ナトリウム飽和溶液(2×60 mL)、水(60 mL)及び食塩水(50 mL)により洗浄し、そして次に硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、そして濃縮して油状の標記化合物を、主としてcis体として得た(18 g)。
【0155】
これを、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン=1:4)により精製して、 主としてcis-メチル 3-(トシルオキシ)シクロブタンカリボキシレートの画分(3)(14.9 g)及び汚染画分(1.5 g; cis-メチル 3-(トシルオキシ)シクロブタンカルボキシレート=1:1)を得た。前記第一画分(14.9 g)をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル, 1200 ml;及び溶離剤として、酢酸エチル/ヘプタン=0:1〜1:4のグラジエント)により更に精製し、cis-メチル 3-(トシルオキシ)シクロブタンカルボキシレートの純粋画分(3)(4.9 g)、トランス-異性体により汚染された画分(4.95 g)及び更に汚染された2個の画分(それぞれ、0.84 g及び1.38 g)を得た。Cy=45−55%)。
化合物3は、ホット[18F]-標識化(トシルが[18F]により置き換えられる)の前駆体である。
【0156】
trans-メチル 3-フルオロシクロブタンカルボキシレート(4)
【化34】

【0157】
trans-メチル 3-フルオロシクロブタンカルボキシレート(4)を、cis-メチル 3-ヒドロキシシクロブタンカルボキシレート(2)から、trans-ベンジル 3-フルオロシクロブタンカルボキシレート(9)について記載するのと同じ方法で得る。
【0158】
trans- 3-フルオロシクロブタンカルボン酸(5)
【化35】

【0159】
trans- 3-フルオロシクロブタンカルボン酸(5)を、trans-メチル 3-フルオロシクロブタンカルボキシレート(4)から、下記の方法と同じ方法で得る。
【0160】
1.2 trans- 3-フルオロシクロブタンカルボン酸(5)のコールド合成−合成経路2
ベンジル 3-オキソシクロブタンカルボキシレート(6)
【化36】

【0161】
乾燥トルエン(100 mL )中3-オキソシクロブタンカルボン酸(10 g, 87,6 mmol)に、ベンジルアルコール(9,1 mL, 87,6 mmol)及びp-トルエンスルホン酸(0,4 g, 2,1 mmol)を加えた。反応混合物を、Dean-Stark条件下で3時間加熱した。反応混合物を真空中で濃縮乾固して、粗生成物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン、0−100%グラジエント)を用いる精製により、ベンジル 3-オキソシクロブタンカルボキシレート(6)(16 g; 89%を)無色の油状物として得た。
1H NMR CDCl3: δ ppm 7.30 (s, 5H), 5.10 (s, 2H), 3.43-3.29 (m, 2H), 3.28-3.13 (m, 3H).
【0162】
cis-ベンジル 3-ヒドロキシシクロブタンカルボキシレート(7)
【化37】

【0163】
乾燥テトラフラン中ベンジル 3-オキソシクロブタンカルボキシレート(6)(16 g, 78,3 mmol)の溶液をアルゴンの下で−78℃に冷却した。この溶液に、テトラヒドロフラン(78,4 mL, 78,3mmol)中1M リチウム トリ-tert-ブトキシアルミノヒドリドを滴加した。完全な添加の後、反応混合物を−78℃にて3時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(100 mL)の添加により反応を停止した。有機物を酢酸エチルで抽出し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、そして溶媒を減圧下で除去した。
【0164】
粗製化合物を、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/へキサン、0−100%グラジエント)により精製し、cis-ベンジル 3-ヒドロキシシクロブタンカルボキシレート(7)(14,5 g; 90 %)(主としてcis体)を無色の油状物として得た。
1H NMR CDCl3: δ ppm 7.30 (s, 5H), 5.08 (s, 2H), 4,19-4,01 (m, 1H), 2,65-2,47 (m, 3H), 2,22-2,06 (m, 2H)
化合物7は、コールド[19F]-標識化(ヒドロキシが[19F]により置き換えられる)のための前駆体である。
【0165】
(cis)-ベンジル 3-(トシルオキシ)-シクロブタンカルボキシレート(8)
【化38】

【0166】
乾燥ジクロロメタン(75 mL)中cis-ベンジル 3-ヒドロキシシクロブタンカルボキシレート(7)(2,24 g, 11 mmol)の溶液に、ピリジン(5,34 ml, 66 mmol)を加えた。この溶液に、乾燥ジクロロメタン(23 mL)中p-トルエンスルホニルクロリド(4,19 g, 22 mmol)の溶液を、徐々に滴加した。混合物を、室温にて72時間撹拌した。この混合物を真空濃縮し、そしてジクロロメタン(300 mL)中に再懸濁し、そして2M 塩酸(150 mL)、水(150mL)、2M 水酸化ナトリウム(150 mL)及び水(150 mL)により洗浄した。有機相を、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、そして濃縮して黄色油状物を得た。これをカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン、0−100%グラジエント)により精製し、cis-ベンジル 3-(4-メチルベンゼンスルホニル)-シクロブタンカルボキシレート(8)(2,1 g, 53,6%)を白色結晶として得た。
【0167】
1H NMR CDCl3: δ ppm 7.77 (d, 2H), 7,36-7,29 (m, 7H), 5.09 (s, 2H), 4,74 (quint, 1H), 2,73-2,61 (m, 1H), 2,54-2,37 (m, 4H), 2,45 (s, 3H)
13C NMR CDCl3: δ ppm 172,91, 144,87, 135,54, 133,74, 129,82, 128,54, 128,30, 128,12, 127,74, 69,49, 66,66, 34,07, 29,57, 21,58
1H NOESY により確認され、4.74 ppm 及び 2.70 ppm(シクロブチル環中のメチンプロトンに対応する)におけるプロトン間に明瞭なOverhauser効果を示すcis異性体
化合物8は、ホット[18F]-標識化(トシレートが[18F]により置き換えられる)のための前駆体である。
【0168】
trans-ベンジル 3-フルオロシクロブタンカルボキシレート(9)
【化39】

【0169】
乾燥ジクロロメタン(50 mL)及び乾燥テトラヒドロフラン(50 mL)中 cis-ベンジル 3-ヒドロキシシクロブタンカルボキシレート(7)(6,4 g, 31 mmol)の溶液を、−78℃に冷却した。この溶液に、Deoxo-Fluor(商標)(テトラヒドロフラン中2,33M、20 mL, 46,6 mmol)を滴加した。添加が完了した後、黄色の溶液を−78℃にて3時間撹拌した。この反応混合物を室温になるまで放置し、そして室温にて50分間撹拌した。2M 水酸化ナトリウム(50mL、ガスの発生)の慎重な添加により反応を停止した。有機物を酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、そして真空濃縮した。粗製物を3連蒸留(0.05ミリバールにて沸点102−104℃)により精製し、trans-ベンジル 3-フルオロシクロブタンカルボキシレート(9)(2,7g, 42%)を無色の油状物として得た。
【0170】
1H NMR CDCl3: δ ppm 7.40-7,33 (m, 5H), 5.24 (dq, 1H), 5,14 (s, 2H), 3,22-3,11 (m, 1H), 2,69-2,41 (m, 4H)
13C NMR CDCl3: δ ppm 175.04, 135,76, 128,58, 128,30, 128,11, 86,20, 207,47, 66,59, 34,10, 30,92
1H NOESYにより確認され、5.24ppm及び3.22-3.11ppm(シクロブチル環中のメチンプロトンに対応する)におけるプロトン間にOverhauser効果を示さないtrans異性体
【0171】
trans-3-フルオロシクロブタンカルボン酸(5)
【化40】

【0172】
メタノール(50 mL )中trans-ベンジル 3-フルオロシクロブタンカルボキシレート(9)(2,7 g, 13 mmol)の溶液に、メタノール(50 mL)中Pd/C(10%, 200 mg)のスラリーを、アルゴンの下で添加した。フラスコを脱気し、そして水素ガスで再度満たした。反応混合物を室温にて5時間撹拌した。TLCは出発物質が存在しないことを示した。反応混合物を、セライトを通して濾過し、そして真空濃縮した。粗製物を3連蒸留(0.9−1.0ミリバールにて沸点83−85℃)により精製し、trans-3-フルオロシクロブタンカルボン酸(5)(1.53g, 定量的)を結晶性白色固体として得た。
【0173】
1H NMR CDCl3: δ ppm 5.23 (dq, 1H), 3,20-3,08 (m, 1H), 2,72-2,42 (m, 4H)
13C NMR CDCl3: δ ppm 182,04, 86,0, 34,05, 30,85.
1H NOESYにより確認され、5.23ppm及び3.20-3.08ppm(シクロブチル環中のメチンプロトンに対応する)におけるプロトン間にOverhauser効果を示さないtrans異性体
【0174】
1.3 trans-3-フルオロシクロブタノール(15)及びtrans-3-フルオロシクロブチル 4-メチルベンゼンスルホネート(16)及び[18F]標識化のための前駆体(12,13)のコールド合成−スキーム10
化合物15は配合団(prosthetic group)であり、そして化合物16は、アミノ酸又はペプチドとのカップリングのために適当な脱離基により置換された配合団である。スキーム9
【0175】
cis-3-(ベンジルオキシ)シクロブタン-1-オール(10)
【化41】

【0176】
エタノール(170 mL)中3-(ベンジルオキシ)シクロブタノン(Chem. Ber., 1957, 90, 1424 and Appl. Radiat. Isot. 2003, 58, 657, 11.16 g; 63.3 mmol)の氷冷した溶液に、硼水素化ナトリウム(2.4 g; 63.4 mmol)を小分けして加えた(最初の添加のみ発熱を示した)。混合物を0℃にて3時間撹拌し、この時点までにTLC分析(酢酸エチル/ヘプタン=1:2)は、出発物質の完全な転換を示した。混合物を、セライトを通して濾過し、そして蒸発乾固した。1H-NMRは、硼酸塩が単離されたことを示した。ガスの使用を伴って混合物をメタノール(250 mL)に再溶解した。この溶液に、1M塩酸(約15mL)を1mLずつ、pH(約7)の変化が観察されなくなるまで添加した。
【0177】
混合物を真空濃縮し、そしてエタノールでストリップした。混合物を水(30 mL)とジエチルエーテル(60 mL)との間で分配した。相を分離し、そして水相をジエチルエーテル(2×60 mL)により抽出した。一緒にした有機相を1M炭酸ナトリウム、水及び食塩水で洗浄し、そして硫酸ナトリウム上で乾燥した。減圧下での濃縮乾固により、cis-3-(ベンジルオキシ)シクロブタン-1-オール(10)(10.33 g; 57.9 mmol; 91.5%)が、主としてcisの形態で得られた。
化合物10は、コールド[19F]-標識化(ヒドロキシが[19F]により置き換えられる)のための前駆体である。
【0178】
cis-3-ベンジルオキシシクロブチルトルエン-4-スルホネート(11)
【化42】

【0179】
ジクロロメタン(280 mL)中cis-3-(ベンジルオキシ)シクロブタン-1-オール(10)(11.3 g; 63.4 mmol)の溶液を0℃に冷却し、そしてトリエチルアミン(13.2 mL)を添加し、続いてジクロロメタン(40 mL)中p-トルエンスルホニルクロリド(14.5 g; 76 mmol)を滴加した。混合物を0℃にて3時間撹拌し、そして更に室温にて40時間撹拌した。この混合物を、水(2×50 mL)により洗浄し、そして水相をジクロロメタン(50 mL)により逆抽出した。一緒にした有機相を食塩水で洗浄し、そして硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして真空濃縮して粗製6(22.59 g)を主としてcis-3-ベンジルオキシシクロブチルトルエン-4-スルホネートとして得た。
【0180】
カラムクロマトグラフィー(シリカゲル(600 g);溶離剤として酢酸エチル/ヘプタン(1:6))による精製が、cis-3-ベンジルオキシシクロブチルトルエン-4-スルホネートの純粋な画分(6.08 g)及び不純画分(7.8 g)をもたらし、この不純画分をもう一度精製して純粋なcis-3-ベンジルオキシシクロブチルトルエン-4-スルホネート(6.1 g)及び汚染された画分(2.7 g)並びに幾らかの出発物質(1.77 g)を得た。cis-3-ベンジルオキシシクロブチルトルエン-4-スルホネート(11)の合計収量は、12.1 g; 36.4 mmol; 57.5%である。この化合物はまた、酢酸エチル/ヘプタンから結晶化する。
【0181】
(cis)-3-ヒドロキシシクロブチルトルエン-4-スルホネート(12)
【化43】

【0182】
cis-3-(ベンジルオキシ)シクロブチルトルエン-4-スルホネート(11)(6.1 g, 18.35 mmol、画分2の第二のカラムクロマトグラフィーの後)をエタノール(110 mL)に溶解し、そして溶液を通して窒素を泡立てた。Pd-木炭(10%; 2.28 g)の添加の後、混合物を風船圧力の下で一晩水素添加した。触媒をセライト上での濾過により除去した。全ての揮発性物質の真空蒸発により、標記化合物が油状物として得られた(4.1 g; 16.9 mmol; 92%)。
【0183】
cis-シクロブタン-1,3-ジイルビス(トルエン-4-スルホネート)(13)
【化44】

【0184】
ジクロロメタン中cis-3-ヒドロキシシクロブチルトルエン-4-スルホネート(12)(4.29 g; 17.7 mmol)の溶液を0℃に冷却した。ピリジン(2.9 mL)を添加し、次にp-トルエンスルホン酸無水物(8.67 g; 26.6 mmol; 1.5 当量)を添加した。混合物を室温にて週末に亘って撹拌した。混合物を濃縮乾固し、そしてジエチルエーテル(750 mL)に再懸濁した。懸濁液を、0.5M 塩酸(2×10 mL)、炭酸水素ナトリウム飽和溶液(15 mL)及び食塩水で洗浄した。混合物を硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして減圧下で蒸発乾固して、粗製cis-シクロブタン-1,3-ジイルビス(トルエン-4-スルホネート) (5.3 g)を得た。
【0185】
粗cis-シクロブタン-1,3-ジイルビス(トルエン-4-スルホネート)(525 mg)の第二のバッチを、cis-3-ヒドロキシシクロブチルトルエン-4-スルホネート(0.9 g)から調製した。粗生成物画分を一緒にし、そして溶離剤として酢酸エチル/ヘプタン(1:6)を用いるカラムクロマトグラフィーにより精製して、純粋なcis-シクロブタン-1,3-ジイルビス(トルエン-4-スルホネート)(4.95 g; 12.5 mmol)及び第2の純粋画分(400 mg; 1 mmol)を得た。cis-シクロブタン-1,3-ジイルビス(トルエン-4-スルホネート)の合計収量は、5.35 g; 13.5 mmol; 64%、である。
化合物13は、ホット[18F]-標識化(1つのトシレートが[18F]により置き換えられる)のための前駆体である。
【0186】
trans-(3-フルオロシクロブチル)ベンジルエーテル(14)
【化45】

【0187】
25 mLの乾燥ジクロロメタン中0.9 g (5.54 mmol)のcis-3-(ベンジルオキシ)シクロブタン-1-オール(10)の氷冷した溶液に、0.86 ml (6.54 mmol)のジエチルアミノサルファートリフルオリドを、窒素の下で加えた。混合物を、0℃にて2時間撹拌し、そして25℃にて更に一晩撹拌した。黄褐色の反応混合物を20 mLの水で洗浄し、有機相を分離し、そして水相を抽出した(2×ジクロロメタン)。有機相を一緒にし、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、そして真空濃縮した。残渣を、酢酸エチル及びヘキサンのグラジエントを用いてシリカクロマトグラフィーにより精製した。生成物は、TLC(酢酸エチル/へキサン1:2)において、Rf〜0.66の単一スポットを示した。
【0188】
収量:306 mg (30%)
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ ppm 2.34 - 2.63 (m, 4 H) 4.31 - 4.41 (m, 1 H) 4.43 (s, 2 H) 5.14 - 5.40 (dm, 1 H) 7.28 - 7.58 (m, 5 H)
19F-NMR (400 MHz, CDCl3): δ ppm = -176.44
【0189】
trans-3-フルオロシクロブタン-1-オール(15)
【化46】

【0190】
10 mLのメタノール中152 mg(0.84 mmol)のtrans-(3-フルオロシクロブチル)ベンジルエーテル(14)の溶液を、140 mgの10% 木炭上パラジュム(50%湿重量)と共に撹拌した。混合物を水素の陽圧の下で25℃にて撹拌した。混合物を濾過し、そして溶媒を蒸発させた。生成物は、TLC(酢酸エチル/へキサン1:2)において、Rf〜0.26の単一スポットを示した。
収量: 54 mg (71%)
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ ppm 2.23 - 2.62 (dm, 4 H) 4.64 - 4.68 (m, 1 H) 5.17 - 5.37 (dm, 2 H)
19F NMR (376 MHz, CDCl3): δ ppm -178.28 (m, 1 F)
【0191】
trans-3-フルオロシクロブチルトルエン-4-スルホネート(16)
【化47】

【0192】
5 mLのジクロロメタン中50 mg(0.56 mmol)trans-3-フルオロシクロブタン-1-オール(15)の溶液を0℃に冷却し、そして82 μL(1 mmol)のピリジンを添加し、次に201 mg(0.62 mmol)のp-トルエンスルホン酸無水物を添加した。混合物を窒素雰囲気下で0℃にて5時間撹拌し、そして一晩おいて25℃にした。黄色の溶液を真空濃縮した。得られた残渣を5mL の塩酸(0.5 M)に溶解し、ジエチルエーテルにより抽出した。有機相を飽和炭酸水素ナトリウム及び飽和塩化ナトリウム水溶液により洗浄した。混合物を、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、そして真空蒸発させた。粗油状物を少量の酢酸エチルに溶解し、そして酢酸エチル及びヘキサンのグラジエントを用いてシリカクロマトグラフィーにより精製した。生成物は、TLC(酢酸エチル/へキサン1:2)において、Rf〜0.53の単一スポットを示した。
【0193】
収量: 59 mg(43%)
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ ppm 2.47 (s, 3 H) 2.48 - 2.62 (m, 4 H) 5.02 - 5.09 (m, 1 H) 5.10 - 5.29 (dm, 1 H) 7.36 (d, 2 H) 7.79 (d, 2 H)
19F NMR (376 MHz, CDCl3) δ ppm -178.83
【0194】
【化48】

【0195】
【化49】

【0196】
1.4 2-{2-[4-(シクロブチルオキシ)フェニル]-5,7-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル}-N,N-ジエチルアセトアミド(17)の合成
【化50】

【0197】
2 mLの乾燥N,N-ジメチルホルムアミド中14.8 mg(42.56 mmol)のN,N-ジエチル-2-[2-(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル]アセトアミドに、窒素の下で、7 mgの水酸化ナトリウムを添加し、そして25℃にて5分間撹拌し、次に11.3 μL のシクロブチルブロミドを添加し、そして25℃にて一晩撹拌した。この反応混合物に10 mL の氷水を添加し、そしてジクロロメタン(3×10 mL)により抽出した。一緒にした有機相を水(10 mL)及び飽和塩化ナトリウム溶液(水性、10 mL)により洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥し、濾過し、そして真空蒸発させた。残渣を95%ジクロロメタン/5%メタノールを用いてシリカクロマトグラフィーにより、次に調製用HPLC(ACE 5μm C18 250x10mm, 50% アセトニトリル/水、流速: 3mL/分)により精製した。生成物の画分を集め、そして一晩凍結乾燥し、白色固体を得た。
【0198】
収量: 10 mg(57%)
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ ppm 1.12 (t, 3 H) 1.21 (t, 3 H) 1.66 - 1.78 (m, 1 H) 1.83 - 1.94 (m, 1 H) 2.12 - 2.26 (m, 2 H) 2.43 - 2.52 (m, 2 H) 2.54 (s, 3 H) 2.74 (s, 3 H) 3.42 (q, 2 H) 3.51 (q, 2 H) 3.91 (s, 2 H) 4.70 (quin, 1 H) 6.51 (s, 1 H) 6.90 (d, 2 H) 7.74 (d, 2 H)
【0199】
1.5 N-(2-{4-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]ピペラジン-1-イル}-2-オキソエチル)-3-[(3-フルオロシクロブチル)オキシ]ベンズアミド(24))、及び [18F]-標識化のための前駆体(23)のコールド合成
ベンジル 2-(3-アセトキシベンゾイルアミノ)アセテート(18)
【化51】

【0200】
30.4 g(90 mmol)のグリシンベンジルエステルp-トルエンスルホン酸塩を2相系ジクロロメタン及び炭酸水素ナトリウム飽和水溶液に溶解した。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥し、そして蒸発させた。13.09 g(79.25 mmol)の遊離アミンを得、これを更に精製することなく次のカップリング反応に使用する。
【0201】
150 mLのテトラヒドロフラン及び11 mLのトリエチルアミン(79.25 mmol)中14.28 g(79.25 mmol)の3-アセトキシ安息香酸の溶液に、−15℃にて11.39 ml(87.2 mmol)のイソブチルクロロホルメートを滴加し、そして溶液をこの温度にて更に15分間維持した。次に、この冷溶液に、50 mLのテトラヒドロフラン及び50 mLのジクロロメタン中13.09 gのグリシンベンジルエステル及び11 mLのトリエチルアミン(79.25 mmol)を徐々に添加し、温度を更に15分間10℃より低く維持し、そして次に室温になるまで放置した。一晩撹拌した後、溶媒を蒸発させ、そして残渣を、酢酸エチル/エタノールのグラジエントを用いてシリカゲル上でクロマトグラフィー処理した。
収量: 24.6 g(95 %)
【0202】
2-(3-アセトキシベンゾイルアミノ)-酢酸(19)
【化52】

【0203】
300 mLのメタノール中19.64 g(60 mmol)の(3-アセトキシベンゾイルアミノ)-酢酸ベンジルエステル(18)の溶液に、3gの木炭上Pd(10%)を添加し、そして懸濁液を水素の下で室温にて一晩撹拌した。触媒を濾去し、そして溶媒を蒸発させた。
収量: 14.2 g(定量的)
【0204】
ベンジル 4-ピペラジン-1-イルフェニルエーテル(20)
【化53】

【0205】
全てのガラス製品を100℃で乾燥した。60 mLのトルエン中4.32 g(50.16 mmol)のピペラジンの溶液に、459 mg(0.5 mmol)のトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)及び423 mg(0.68 mmol)のBINAP (2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ジナフチル)を添加した。次に、40 mLのテトラヒドロフラン中12 g(45.6 mmol)の4-ベンジルオキシ-ブロモベンゼンの溶液を添加し、次にテトラヒドロフラン中6.56 g(68.27 mmol)のt-酪酸ナトリウムの懸濁液を加えた。
【0206】
反応混合物を3時間環流し、そして室温にて一晩撹拌した。溶媒を蒸発させた後、残渣を、ジクロロメタン/メタノールグラジエントを用いてシリカゲル上でクロマトグラフィー処理した。
収量:12.2 g(45.7%)
【0207】
3-[N-(2-{4-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]ピペラジン-1-イル}-2-オキソエチル)カルバモイル]フェニルアセテート(21)
【化54】

【0208】
70 mLのテトラヒドロフラン及び0.40 mlのトリエチルアミン(2.87 mmol)中654 mg(2.76 mmol)の(3-アセトキシベンゾイルアミノ)酢酸(19)の溶液に、−15℃にて、0.396 mL(3.03 mmol)のクロロ蟻酸イソブチルを滴加し、そして溶液をこの温度でさらに15分間維持した。次に、この冷溶液に、30 mlのテトラヒドロフラン及び30 mlのジクロロメタン中740 mgの1-(4-ベンジルオキシフェニル)ピペラジン(20)及び1.7 mLのトリエチルアミン(12.25 mmol)を徐々に添加し、温度を10℃より低く更に15分間維持し、そして次に室温になるまで放置した。一晩撹拌した後、溶剤を蒸発させ、そして残渣を、ヘキサン/酢酸エチルのグラジエントを用いてシリカゲル上でクロマトグラフィー処理した。
収量: 390 mg(30%)
【0209】
N-(2-{4-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]ピペラジン-1-イル}-2-オキソエチル)-3-ヒドロキシベンズアミド(22)
【化55】

【0210】
230 mg(0.47 mmol)の酢酸3-{2-[4-(4-(ベンジルオキシフェニル)ピペラジン-1-イル]-2-オキソエチルカルバモイル}フェニルエステル(21)を30 mLのエタノールに溶解し、そして0℃に冷却した。1.5 mLの3N水酸化ナトリウムを添加した後、溶液を1時間撹拌し、pHが7より低くなるまで氷酢酸を添加し、そして溶媒を蒸発させた。原産物をエタノールから晶析させた。
収量: 200 mg(95%)
化合物22は、コールド[19F]-標識化(ヒドロキシが[19F]により置き換えられる)のための前駆体である。
【0211】
trans-3-{3-[N-(2-{4-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]ピペラジン-1-イル}-2-オキソエチル)カルバモイル]フェノキシ}シクロブチルトルエン-4-スルホネート(23)
【化56】

【0212】
3 mLのN,N-ジメチルホルムアミド中111 mgのN-(2-{4-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]ピペラジン-1-イル}-2-オキシエチル)-3-ヒドロキシベンズアミド(22)に、198 mg(0,5 mmol)のシクロブタンジトシレート及び69 mg(0,5 mmol)の炭酸カリウムを添加した。反応混合物をマイクロウエーブ(高)中で100℃にて90分間加熱した。溶媒を蒸発させ、そして粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール)により精製した。
収量: 65 mg(39%)
化合物23は、ホット[18F]-標識化(トシレートが[18F]により置き換えられる)のための前駆体である。
【0213】
N-(2-{4-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]ピペラジン-1-イル}-2-オキソエチル)-3-[cis-(3-フルオロシクロブチル)オキシ]ベンズアミド(24)
【化57】

【0214】
3 mLのテトラヒドロフラン中60 mg(0,09 mmol)のN-{2-[4-(4-ベンジルオキシフェニル)-ピペラジン-1-イル]-2-オキソエチル}-3-(3-トルエンスルホニルオキシシクロブチルオキシ)ベンズアミドに63 mg(0,2 mmol)のテトラブチルアンモニウムフルオリド3水和物を添加した。反応混合物をマイクロウエーブ(正常)中で100℃にて90分間加熱した。63 mg(0,2 mmol)のテトラブチルアンモニウムフルオリド3水和物の他の部分を添加し、そしてマイクロウエーブ(正常)中で100℃にて30分間加熱した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、そして溶媒を蒸発させた。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製した。
収量: 12 mg(26 %)
【0215】
1.6 [19F]-フルオロ標識されたチロシン及び直接標識化のための前駆体のコールド合成−スキーム11
メチル O-[trans-3-(ベンジルオキシ)シクロブチル]-N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-チロシネート(25)
【化58】

【0216】
25 mLの乾燥N,N-ジメチルホルムアミド中1.02 g(3.35 mmol)のBoc-Tyr-OMe及び1.327 g(7.37 mmol)のcis-3-(ベンジルオキシ)シクロブタノール(10)の溶液に、1.197 mL(7.37 mmol)のアゾジカルボン酸ジエチルを添加した。黄色溶液を窒素雰囲気下で5分間撹拌し、そして1.975 g(7.37 mmol)のトリフェニルホスフィンを添加した。混合物を、窒素の下で25℃にて23時間撹拌し、そして80℃にて19ミリバールにて減圧下で濃縮した。粗油状物を50 mLのクロロホルムに溶解し、そして30 mLの水で3回洗浄してN,N-ジメチルホルムアミドを除去した。有機相を無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、濾過し、そして溶媒を真空濃縮して5.556 gの褐色の油状物を得た。粗生成物を、酢酸エチル及びヘキサンのグラジエントを用いるシリカクロマトグラフィーにより精製した。生成物は、TLC(酢酸エチル/へキサン1:2)において単一スポット、Rf〜0.46、を示した。
【0217】
収量: 1.35g(88%)
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ ppm 1.43 (s, 9 H) 2.38 - 2.56 (m, 4 H) 2.94 - 3.11 (m, 2 H) 3.72 (s, 3 H) 4.30 - 4.39 (m, 1 H) 4.46 (s, 2 H) 4.50 - 4.60 (m, 1 H) 4.78 - 4.88 (m, 1 H) 4.90 - 5.00 (m, 1 H) 6.71 (d, 2 H) 7.02 (d, 2 H) 7.29 - 7.42 (m, 5 H)
【0218】
メチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-(trans-3-ヒドロキシシクロブチル)-L-チロシネート(26)
【化59】

【0219】
20 mLのメタノール中1.346 g(2.96 mmol)のメチル O-[trans-3-(ベンジルオキシ)シクロブチル]-N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-チロシネート(25)の溶液を、500 mgの10%の木炭上パラジウム(50% ウエット)と共に撹拌した。この混合物を、水素の陽圧の下で25℃にて撹拌した。混合物を濾過し、そして溶媒を蒸発させた。油状物をジクロロメタン中に溶解し、セライトを通して濾過し、ジクロロメタンで洗浄し、そして減圧下で蒸発させた。生成物は、TLC(酢酸エチル)において単一スポット、Rf〜0.54、を示した。
【0220】
収量: 1.02g(93%)
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ ppm 1.42 (s, 9 H) 1.80 (br. s., 1 H) 2.34 - 2.59 (m, 4 H) 3.02 (m, 2 H) 3.72 (s, 3 H) 4.47 - 4.59 (m, 1 H) 4.60 - 4.70 (m, 1 H) 4.79 - 4.90 (m, 1 H) 4.96 (d, 1 H) 6.71 (d, 2 H) 7.02 (d, 2 H)
【0221】
メチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-(cis-3-フルオロシクロブチル)-L-チロシネート(27)
【化60】

【0222】
658 mg(1.80 mmol)のメチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-(trans-3-ヒドロキシシクロブチル)-L-チロシネート(26)を、25 mLの乾燥ジクロロメタンに、窒素の下で撹拌しながら溶解した。溶液を、氷浴を用いて0℃に冷却し、そして358 μL(2.70 mmol)のジエチルアミノサルファートリフルオリドを添加した。混合物を0℃にて3時間撹拌し、そして次に一晩にわたり室温にした。粗生成物を、酢酸エチル及びヘキサンのグラジエントを用いるカラムクロマトグラフィーにより精製した。生成物は、TLC(酢酸エチル/へキサン1:2)において単一スポット、Rf〜0.62、を示した。
【0223】
収量: 257 mg(38%)
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ ppm 1.42 (s, 9 H) 2.36 - 2.53 (m, 2 H) 2.95 - 3.08 (m, 4 H) 3.72 (s, 3 H) 4.17 - 4.27 (m, 1 H) 4.50 - 4.60 (m, 1 H) 4.73 - 5.02 (m, 2 H) 6.73 (d, 2 H) 7.03 (d, 2 H)
19F NMR (376 MHz, CDCl3): δ ppm = -169.27 8 (m)
【0224】
N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-(cis-3-フルオロシクロブチル)-L-チロシン(28)
【化61】

【0225】
1mLのメタノール中11 mg(30.8 μmol)のメチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-(cis-3-フルオロシクロブチル)-L-チロシネート(27)の溶液に、1M 水酸化リチウムを添加した。透明な混合物を25℃にて6時間撹拌した。TLCは完全な転換を示した。80 μLの 1M 塩酸により混合物を中和し、そして蒸発させた。生ずる油状物を酢酸エチルに溶解した。混合物を飽和塩化ナトリウム水溶液により洗浄し、そして蒸発乾固し、酢酸エチルに再溶解し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、そして蒸発させて10 mgを得た。
【0226】
収量: 10 mg(92%)
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ ppm 1.29 - 1.49 (m, 9 H) 2.33 - 2.51 (m, 2 H) 2.92 - 3.18 (m, 4 H) 4.16 - 4.27 (m, 1 H) 4.52 (d, J=5.56 Hz, 1 H) 4.83 (d, J=56.08 Hz, 1 H) 4.99 (d, J=7.58 Hz, 1 H) 6.05 (br. s., 0 H) 6.74 (d, J=8.34 Hz, 2 H) 7.09 (d, J=8.34 Hz, 2 H)
19F NMR (376 MHz, CDCl3): δ ppm = -169.22 (m)
【0227】
O-(cis-3-フルオロシクロブチル)-L-チロシントリフルオロアセテート塩(FCBT)(29)
【化62】

【0228】
9 mg(25.4 μmol)のN-(tert-ブトキシカルボニル)-O-(cis-3-フルオロシクロブチル)-L-チロシン(28)をジクロロメタンに溶解し、そしてジクロロメタン中100 μL 25%(v/v)のトリフルオロ酢酸により25℃にて1時間処理した。混合物を蒸発させ、そして7.5 mgの白色固体を得た。
収量: 7 mg(73%)
1H NMR (300 MHz, MeOD): δ ppm 2.19 - 2.36 (m, 2 H) 2.95 - 3.12 (m, 3 H) 3.24 (dd, 1 H) 4.16 (dd, 1 H) 4.27 - 4.37 (m, 1 H) 4.77 (quin, 1 H) 6.85 (d, 2 H) 7.20 (d, 2 H)
19F NMR (376 MHz, MeOD): δ ppm = -170.43 (m)
【0229】
メチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[trans-3-(トシルオキシ)シクロブチル]-L-チロシネート(30a)
【化63】

【0230】
145.3 mg(0.40 mmol)のメチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-(trans-3-ヒドロキシシクロブチル)-L-チロシネート(26)を16 mLの乾燥ジクロロメタンに窒素の下で溶解し、そして0℃に冷却した。これに、62.9 mg(0.80 mmol)のピリジンを添加し、次に194.7 mg(0.60 mmol)のp-トルエンスルホン酸無水物を添加した。混合物を窒素雰囲気の下で0℃にて5時間撹拌し、一晩25℃にした。混合物を減圧下で濃縮し、そして酢酸エチル及びヘキサンのグラジエントを用いるシリカクロマトグラフィーにより精製した。生成物は、TLC(酢酸エチル/へキサン1:1)において単一スポット、Rf〜0.58、を示した。
【0231】
収量: 162 mg(78%)
1H NMR: (400 MHz, CDCl3) δ ppm 1.42 (s, 9 H) 2.44 - 2.54 (m, 5 H) 2.49 - 2.66 (m, 2 H) 3.01 (qd, 2 H) 3.71 (s, 3 H) 4.49 - 4.58 (m, 1 H) 4.79 (tt, 1 H) 4.94 (d, 1 H) 5.00 - 5.09 (m, 1 H) 6.64 (d, 2 H) 7.00 (d, 2 H) 7.36 (d, 2 H) 7.80 (d, 2 H)
化合物30aは、ホット[18F]-標識化(トシレートが[18F]により置き換えられる)のための前駆体である。
【0232】
メチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[cis-3-(トシルオキシ)シクロブチル]-L-チロス(30b)
【化64】

【0233】
100 mg(0.27 mmol)のメチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-(trans-3-ヒドロキシシクロブチル)-L-チロシネート(26)及び137 mg(0.54 mmol)のピリジン4-メチルベンゼンスルホネート(PPTS)を2mLの乾燥テトラヒドロフランに溶解し、そして窒素の下で撹拌した。143 mg(0.54 mmol)のトリフェニルホスフィンを1mLのテトラヒドロフラン中の溶液として添加し、そして混合物を氷浴中で冷却した。この混合物に86 μL(0.54 mmol)のアゾジカルボン酸ジエチルを添加し、そして0℃にて10分間撹拌し、次に25℃にて一晩撹拌した。懸濁液を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム及び飽和塩化ナトリウム(水性)により洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムにより乾燥し、濾過し、そして蒸発乾固した。粗油状物を少量の酢酸エチルに溶解し、そして酢酸エチル及びヘキサンのグラジエントを用いるカラムクロマトグラフィーにより精製した。生成物は、TLC(酢酸エチル/へキサン2:1)において単一スポット、Rf〜0.59、を示した。
【0234】
収量: 34 mg(24%)
1H NMR: (300 MHz, CDCl3) δ ppm 1.41 (s, 9 H) 2.34 (dtd, 2 H) 2.46 (s, 3 H) 2.85 (dtd, 2 H) 2.91 - 3.10 (m, 2 H) 3.70 (s, 3 H) 4.21 (quin, 1 H) 4.47 - 4.68 (m, 2 H) 4.95 (d, 1 H) 6.65 (d, 2 H) 7.00 (d, 2 H) 7.35 (d, 2 H) 7.80 (d, 2 H)
化合物30bは、ホット[18F]-標識化(トシレートが[18F]により置き換えられる)のための前駆体である。
【0235】
【化65】

【0236】
2. 実験的−放射性化学
2.1 [18F]フルオロ標識チロシン:間接法
3-[18F]フルオロシクロブチルトルエン-4-スルホネート(31)
【化66】

【0237】
放射性フッ素化において、[18F]フルオリド(705 MBq)を、QMAカートリッジ(1M炭酸水素ナトリウムにより平衡化され、10 mLの水により洗浄される)から2mLの、5 mgのKryptofix(K222)及び1.8 mgの炭酸カリウムを含む0.14 mL水/0.86 mLアセトニトリルを用いて、反応バイアルに溶出した。溶剤を蒸発させ、そして残渣を90℃にて明N2-流の下で乾燥し、更にアセトニトリルを添加し、そして乾燥工程を反復した。500 μLのアセトニトリル中前駆体(cis-シクロブチルビス-(4-メチルベンゼンスルホネート(13)5 mg)を反応バイアルに加え、反応混合物を130℃にて20分間撹拌した。
【0238】
粗生成物を、ウォーターズ(Waters)C18ライト(5 mLのエタノール、5 mLの水により平衡化)を通して精製し、3mLの水で洗浄し、そして1mLのアセトニトリル又は1mLのジメチルスルホキシドにより洗浄した。反応混合物及び単離された生成物を放射性TLC及び放射性HPLCにより分析した。放射性化学収率は40%(崩壊を補正)であり、そして放射性化学純度は99%より高かった。
化合物31は、化合物32の合成のための[18F]-中間体である。
図1は、精製されたトルエン-4-スルホン酸3-[18F]フルオロ-シクロブチルエステル(31)のクロマトグラム(放射性追跡)を示し、そして下の表2は、当該クロマトグラムに随伴する。
【0239】
【表2】

【0240】
ナトリウム O-(cis-3-[18F]フルオロシクロブチル)-L-トシレート(32a)(間接法1)
【化67】

【0241】
ジメチルスルホキシド(1mL)中トルエン-4-スルホン酸3-[18F]フルオロシクロブチルエステル(31)を、L-チロシン2ナトリウム塩(J. Nuc. Med., 1999, 40, p205, 7 mg)の溶液に添加し、そして150℃にて15分間撹拌した。反応混合物を半調製用HPLC(C-18 逆相カラム、アセトニトリル/水=45/55、流速=4mL/分)により精製した。得られる生成物を放射性HPLCにより分析し、そして同時注入により確認した。生成物は、91%より高い放射性化学純度をもって単離された。
【0242】
O-(cis-3-[18F]フルオロシクロブチル)-L-チロシン(32b)(間接法2)
【化68】

【0243】
ジメチルスルホキシド中トルエン-4-スルホン酸3-[18F]フルオロシクロブチルエステル(31)を、22.1 μLの10%水酸化ナトリウム(水性)中L−チロシン(5mg)の溶液に加えた。反応混合物を150℃にて10分間加熱した。この反応混合物に15 mLの水pH2を添加し、そしてHPLC(Synergi Hydro RP 4μ 250 x 10mm;水中15%アセトニトリルpH2;流速3mL/分)により精製した。生成物のピークを集め、水(pH 2)により希釈し、そしてC18 SPE(カートリッジを5mLのエタノール及び10 mLの水により前条件調節したもの)に通した。SPEを水pH2(5mL)により洗浄した。
【0244】
生成物を、エタノール及び水の1:1混合物pH2(1.5 mL)により溶出した。Starting from 881 MBq [18F]フルオリドから出発して、44 MBq(12% d.c.)の所望生成物を144分で得た。生成物を放射性HPLC(ACE 3 C18 50 x 4.6 mm; 溶媒A水+0.1%;溶媒B:アセトニトリル+0.1%トリフルオロ酢酸:グラジエント 7分間で5%Bから95%Bへ)により分析し、そして所望生成物のピーク(RT=2.768分)が観察され、そして参照化合物の注入により確認された。
【0245】
図2は、コールド参照と比較しての、精製された(S)-2-アミノ-3-[4-(3-[18F]フルオロ-シクロブトキシ)-フェニル]-プロピオン酸(32b)のクロマトグラム(放射性追跡)を示し、そして下の表3及び4は、当該クロマトグラムに随伴する。
【0246】
【表3】

【0247】
【表4】

【0248】
2.2 [18F]フルオロ標識されたチロシン−直接法
メチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-(cis-3--[18F]フルオロシクロブチル)-L-チロシネート(33)
【化69】

【0249】
放射性フッ素化において、[18F]フルオリド(668 MBq)を、QMAカートリッジ(0.5 M炭酸カリウムにより平衡化され、10 mLの水で洗浄される)から、2mLの、5 mgのKryptofix(K222)及び1mgの炭酸カリウムを含む0.05 mL水/0.95 mLアセトニトリルを用いて、反応バイアルに溶出した。溶剤を蒸発させ、そして残渣を90℃にて明N2-流の下で乾燥し、更にアセトニトリルを添加し、そして乾燥工程を反復した。500 μLのアセトニトリル中前駆体(メチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-(trans-3-{[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ}シクロブチル)-L-チロシネート(30a)3 mg)を反応バイアルに加え、反応混合物を110℃にて10分間撹拌した。
【0250】
反応混合物を放射性HPLCにより分析し、所望生成物のピーク(RT=5.274)が観察され、そして参照化合物の注入により確認された。
図3は、メチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-(cis-3-フルオロシクロブチル)-L-チロシネート(33)反応混合物のクロマトグラム(放射性追跡)を示し、そして下の表5は、当該クロマトグラムに随伴する。
【0251】
【表5】

【0252】
2.3 (cis)-メチル 3-[18F]フルオロシクロブタンカルボキシレートの合成−フルオロ標識化
(cis)-メチル 3-[18F]フルオロシクロブタンカルボキシレート(34)
【化70】

【0253】
放射性フッ素化において、[18F]フルオリド(483 MBq)を、QMAカートリッジ(1M炭酸水素ナトリウムにより平衡化され、10 mLの水により洗浄される)から1mLの、5 mgのKryptofix(K222)及び1.8 mgの炭酸カリウムを含む0.14 mL水/0.86 mLアセトニトリルを用いて、反応バイアルに溶出した。溶剤を蒸発させ、そして残渣を90℃にて明N2-流の下で乾燥し、更にアセトニトリルを添加し、そして乾燥工程を反復した。500 μLのジメチルスルホシキド中前駆体cis-メチル 3-(4-メチルベンゼンスルホニル)シクロブタンカルボキシレート(3)5 mgを反応バイアルに加え、反応混合物を125℃にて20分間撹拌した。反応混合物を放射性TLC及び放射性HPLCにより分析した。放射性化学収率は43%(崩壊を補正)であった。
【0254】
2.4 trans-3-[18F]フルオロシクロブタンカルボン酸(36)の合成−フルオロ標識化
trans-ベンジル 3-[18F]フルオロシクロブタンカルボキシレート(35)
【化71】

【0255】
放射性フッ素化において、[18F]フルオリド(1385 MBq)を、QMAカートリッジ(0.5 M炭酸カリウムにより平衡化され、10 mLの水で洗浄される)から、1mLの、5 mgのKryptofix(K222)及び1mgの炭酸カリウムを含む0.05 mL水/0.95 mLアセトニトリルを用いて、反応バイアルに溶出した。溶剤を蒸発させ、そして残渣を90℃にて明N2-流の下で乾燥し、更にアセトニトリルを添加し、そして乾燥工程を反復した。500 μLのジメチルスルホシキド中前駆体cis-ベンジル 3-(4-メチルベンゼンスルホニル)シクロブタンカルボキシレート(8)4.7 mgを反応バイアルに加え、反応混合物を180℃にて10分間撹拌した。生成物をHPLC及び放射性TLCにより分析した。生成物は参照化合物との同時注入により確認した。
【0256】
粗生成物を、ウォーターズC18ライト(5 mLのエタノール、5 mLの水により平衡化)を通し、そして3mLの水で洗浄することにより精製し、そして1mLのアセトニトリルにより溶出した。反応混合物及び単離された生成物を、放射性TLC及び放射性HPLCにより分析した。2種類の異性体を、半調製用HPLC(C18逆相カラム、アセトニトリル/水=55/45、流速=3 mL/分)により分離した。生成物画分(同時注入により確認)を30 mLの水により希釈し、そして平衡化されたウォーターズ(Waters)C18カートリッジに付加し、そして1mLのエタノールにより溶出し、更に精製することなく使用した。
【0257】
図4及び表6は、trans-ベンジル 3-[18F]フルオロシクロブタン-カルボキシレート(35)のクロマトグラム(放射性追跡)を示す。
【0258】
【表6】

【0259】
trans-3-[18F]フルオロシクロブタンカルボン酸(36)
【化72】


1 mLのエタノール中trans-ベンジル 3-[18F]フルオロシクロブタンカルボキシレート(35)を、1.0 mLの1M水酸化ナトリウムにより25℃にて5分間処理し、そして1M 塩酸により中和した。放射性化学収率は17%(崩壊を補正)であり、そして放射性化学純度は99%より高かった。
図5及び表7は、(trans)-3-[18F]フルオロシクロブタンカルボキシレート(36)のクロマトグラム(放射性追跡)を示す。
【0260】
【表7】

【0261】
2.5 N-(2-{4-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]ピペラジン-1-イル}-2-オキソエチル)-3-(cis-3-フルオロシクロブチルオキシ)ベンズアミドの合成−フルオロ標識化
N-(2-{4-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]ピペラジン-1-イル}-2-オキソエチル)-3-(cis-3-[18F]フルオロシクロブチルオキシ)ベンズアミド(37)
【化73】

【0262】
放射性フッ素化において、[18F]フルオリド(604 MBq)を、QMAカートリッジ(0.5 M炭酸カリウムにより平衡化され、10 mLの水で洗浄される)から、8μLの、1.5 mLアセトニトリル及び500 μLの水中40%水酸化テトラブチルアンモニウム(水性)を用いて、反応バイアルに溶出した。溶剤を蒸発させ、そして残渣を120℃にて明N2-流の下で乾燥し、更にアセトニトリルを添加し、そして乾燥工程を反復した。500 μLのアセトニトリル中前駆体N-{2-[4-(4-ベンジルオキシフェニル)ピペラジン-1-イル]-2-オキソエチル}-3-(cis-3-トルエンスルホニルオキシシクロブチルオキシ)-ベンズアミド(23)2mgを反応バイアルに加え、反応混合物を100℃にて15分間撹拌した。反応混合物を、HPLC(7分間にわたる5−95%水中アセトニトリル+0.1%トリフルオロ酢酸のグラジエントを用いるC18逆相カラム、流速=2 mL/分)により分析した。
【0263】
3. 実験生物学
3.1 取込み
【化74】


O-(cis-3-フルオロシクロブチル)-L-チロシントリフルオロ酢酸塩(29)(FCBT)
【0264】
材料及び方法
細胞を、測定の1〜2日前に接種し、そして48ウエルプレート中で半−コンフルエンシーまで増殖させた。測定に先立ち、細胞培養培地を除去し、そして細胞をリン酸緩衝液(PBS)+0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)により洗浄した。測定緩衝液(PBS+0.1%BSA)の添加の後、37 KBqの放射性トレーサー[H-3]-D-チロシンを即座に加え、そして細胞と共に、37℃にて、5%のCO2を含む加湿された雰囲気中で30分間インキュベートした。トランスポーター特性及び競争の研究のため、細胞を100 μM F-DOPA又は化合物29(FCBT)と共に30分間同時インキュベートして放射能の取り込みをモニターした。トレーサー取り込みを停止するため30分後にインキュベーション緩衝液を除去し、細胞を洗浄しそして1M水酸化ナトリウムにより細胞を溶解した。次に、細胞溶解物中の放射能の量をシンチレーションカウンターにより決定した。
【0265】
化合物がLAT1により輸送されるか否かを研究するため、細胞を37 kBqの放射性トレーサー[H-3]-D-チロシンと共にインキュベートし、そして細胞と共に37℃にて5%のCO2を含む加湿された雰囲気中で30分間インキュベーションを行った。次に、細胞をPBSにより洗浄し、そして新鮮な測定緩衝液を、100μM濃度のコールド化合物を含む細胞に添加し、そして細胞を更に30分間インキュベートした。トレーサーの流出を停止するため、30分後にインキュベーション緩衝液を除去し、細胞を洗浄し、そして1M水酸化ナトリウムにより溶解した。次に、細胞溶解物中の放射能の量をシンチレーションカウンターにおいて決定した。
【0266】
適用されたトレーサー量のアリコットをガンマーカウンターにおいて測定することにより、トレーサーの崩壊を補正するためにサンプルと共に分当りカウント(cpm)の総量を決定した。ウエル当りの細胞数は、測定の開始前に3個のウエルにおいてトリプシン処理により細胞を離した後に決定し、そして顕微鏡下で細胞チャンバー中で係数した。細胞の平均値を計算した。異なる研究間のトレーサー取り込みを比較するため100,000細胞に標準化した。
【0267】
結果
A549ヒト肺癌細胞系は、30分後に、適用された[H-3]-D-チロシンの2.8%の取り込みを示した(図1)。この取り込みは、測定緩衝液中にF-DOPAが存在すれば1.8%に減少し、測定緩衝液中に化合物29(FCBT)が存在すれば更に1.1%に減少した。このことは、細胞への取り込みに関し、F-DOPA及び化合物29(FCBT)が、D-チロシンと効果的に競争することを明瞭に示す。これらは、流出実験が行われた場合、上記の効果が、トランスポーターブロッキングのためであり輸送についての競争のためではないことを排除する。チロシンのごとき大形の芳香族アミノ酸の取り込みを担当するLATトランスポーターは、1アミノ酸を細胞から輸送する交換体(exchanger)であり、各アミノ酸についてそれは細胞内に輸送する。
【0268】
化合物29(FCBT)が確かにLATトランスポーターの基質であれば、細胞からのD−チロシンの流出を刺激するはずである。図2における実験は、30分の後、100,000細胞当り投与された量の0.7%へのD−チロシンの流出を示した。F-DOPAの添加は、D−チロシンの流出を増加させ、30分後100,000細胞当り投与された量の僅かに0.11%が細胞内に残った。化合物29(FCBT)の効果はより大きく、そして30分後に細胞内に残ったD−チロシンの量は100,000細胞当り投与された量の僅かに0.08%に過ぎなかった。図6及び7を参照のこと。
【0269】
3.2 ラット肝細胞におけるイン−ビトロ代謝安定性の研究(肝イン−ビボ血液クリアランス(CL)の計算を含む)
ハンウイスター(Han Wistar)ラットからの肝細胞を2−段階灌流法により単離した。灌流の後、ラットから肝臓を注意深く摘出した。すなわち、肝臓カプセルを開き、そして肝細胞を丁寧に、氷冷WMEを含むペトリ皿に振り出した。得られた細胞懸濁液を、セライトガーゼを通して50 mLのファルコンチューブに濾過し、そして50 × gにて3分間室温にて遠心分離した。細胞ペレットを30 mLのWMEに再懸濁し、そしてパーコール(Percoll(商標))グラジエントを通して100×gにて2回遠心分離した。肝細胞をウイリアム培地E(Williams' medium E(WME))により再び洗浄し、そして5%のFCSを含む培地に再懸濁した。細胞の生存を、トリパンブルー排除(trypan blue exclusion)より決定した。
【0270】
代謝安定性測定のため、肝細胞を、5%のFCSを含むWME中でガラスバイアルに、0.5×106生存細胞/mLの密度で分配した。被験化合物を、最終濃度が1μMとなるように添加した。インキュベーションの間、肝細胞懸濁液を連続的に振とうし、そしてアリコットを2、8、16、30、45及び60分に採取し、これに同体積の冷メタノールを即座に加えた。サンプルを−20℃にて一晩凍結し、次に3000 rpmにて15分間遠心分離し、そしてLCMS/MS 検出を用いるAgilent 1200 HPLC-系により分析した。
【0271】
被験化合物の半減期は、濃度−時間プロットーから決定した。半減期から内因性クリアランスを計算した。追加のパラメーターである肝血流、イン−ビボ肝細胞の量及びイン−ビトロ肝細胞と共に、イン−ビボ血液クリアランス(CL)を計算した。次のパラメーター値を使用した:肝血流−4.2L/h/kg ヒト;比肝重量−32g/kgラット体重;肝細胞イン−ビボ−1.1 x 108 細胞/g 肝臓、肝細胞イン−ビトロ−0.5 x 106/mL。
両化合物はラット肝細胞中で非常に安定であった。
【0272】
【表8】

【0273】
3.3 イン−ビトロ血漿安定性の研究
この研究は、異なる種の血漿中の被験化合物の安定性を決定する。被験化合物を、 0.3 μMの濃度において、異なる時点(2、30及び60)について雄性ラット及び雌性ヒトの血漿中でインキュベートした。サンプルを−20℃にて一晩凍結し、次に3000 rpmにて15分間遠心分離し、そして上清を、LCMS/MS検出を用いるAgilent 1200 HPLC-系により分析した。
被験化合物の安定性は、異なる時点における残留量を0分での量と比較することにより定量化し、最初の濃度の%として表現した。
ラット血漿における血漿安定性試験は、両化合物がラット血漿中で60分まで安定することを示す。ヒト血漿中のどこでも、参照化合物O-(2-[19F]フルオロエチル)-L-チロシン(FET)は60分の後50%の分解を示し、他方化合物29は60分の後、なんら分解を示さなかった。
【0274】
【表9】

【0275】
3.4 化合物17; イン−ビトロ結合
2-{2-[4-(シクロブチルオキシ)フェニル]-5,7-ジメチルピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル}-N,N-ジエチルアセトアミド(17)
【化75】


IC50 = 4.81 nM
Ki = 7.74 nM
【0276】
DPA-714; イン−ビトロ結合 (J. Nuc. Med., 2008, 49, p814):
【化76】


Ki = 7.0 nM
【0277】
3.5 細胞取り込み実験
本発明者は、放射性ラベルされた[18F]化合物32bのA549細胞への取り込みを研究した。90000個のA549細胞を、48ウエルインキュベーションプレート(Becton Dickinson; Cat. 353078)のキャビティーに対して接種し、そして10%のFCSが補充されたGlutaMAX(Invitrogen; Cat. 31331)培地を含むRPMI 1640中で2日間、インキュベータ(37℃、5%CO2)においてインキュベートした。細胞をPBSにより一度洗浄し、そして次に0.25 MBqの化合物32b([18F]により 標識化)を含むPBS中で10〜30分間37℃にてインキュベートした。インキュベーションの後、細胞を一度冷PBSにより洗浄し、そして1M NaOHにより溶解し、そして最後に溶解物をガンマーカウンターで測定した。
【0278】
化合物32b([18F]により標識化)は、全ての試験された腫瘍細胞において良好な蓄積を示した。化合物32b([18F]により標識化)は時間と共に増加し、30分後には549細胞において106細胞当り適用された量の5.87%の最高に達し、その後一定であった(図8を参照のこと)。
【0279】
3.6 競争実験
本発明者は、放射性標識された化合物32b([18F]により標識化)のA549細胞への取り込みを研究した。100000個のA549細胞を48ウエルインキュベーションプレート(Becton Dickinson; Cat. 353078)のキャビティーに対して接種し、そして10%のFCSが補充されたGlutaMAX(Invitrogen; Cat. 31331)培地を含むRPMI 1640中で2日間、インキュベータ(37℃、5%CO2)においてインキュベートした。細胞をPBSにより一度洗浄し、そして次に0.25 MBqの、競争のために、1mMの冷[19F]化合物29又は1mM冷FETを加えた化合物32b([18F]により標識化)の放射性トレーサーを含むPBS中で30分間37℃にてインキュベートした。インキュベーションの後、細胞を一度冷PBSにより洗浄し、そして1M NaOHにより溶解し、そして最後に溶解物をガンマーカウンターで測定した。ブロッキング効果を、ブロックされていない化合物の取り込みと比べての、ブロックされた化合物の取り込み%として計算した(図9を参照のこと)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式I:
【化1】

[式中:
Aは、H、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(R')(R")、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R”、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R”、SO、SO2、又はSO2NR'であり;
Bは、H、-O-、=O、S、=S、N、N(R')、NYR'、P(R')(R")、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、又はSO2NR'であり;
Yは、N、NR'、O又はSであり;
Cは、H,脱離基(LG)又はR'であり;
Dは、H、脱離基(LG)、又はR'であり;
Eは、不存在、H、OR'、SR'、NR'、CR'p、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'C(O)R'R"、SO、SO2、SO2NR'、又はW-Zであり、ここでWはリンカーであり、そしてZは標的剤又はベクターであり;
Fは、不存在、H、OR'、SR'、NR'、CR'p、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、SO2NR'、又は W-Zであり、ここでWはリンカーであり、そしてZは標的剤又はベクターであり;
P は1〜3であり;
R'は、H、OH、NH、分岐した若しくは直鎖のC1-C6アルキル、分岐したもしくは直鎖のO-C1-C6アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6アルコキシ、分岐した若しくは直鎖のC1-C6アルキレン、置換された若しくは非置換のアリール、又は置換された若しくは非置換のヘテロアリール、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m、又は-O(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m であり;
nは、1〜6であり、そしてmは1〜6であり;
R”は、H、 OH、NH、分岐した若しくは直鎖のC1-C6アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6アルコキシ、分岐した若しくは直鎖のC1-C6アルキレン、置換された若しくは非置換のアリール、又は置換された若しくは非置換のヘテロアリール、CO(CH2)n[O(CH2)n-O(CH2)n]m、又は-O(CH2)n[O(CH2)n-O(CH2)n]mでり;
nは1〜6であり、そしてmは1〜6であり;
Xは、(CH2)q 又はC(R'R")であり;
Qは、0〜2であり;
A又はBが=Oの場合、E又はFは不存在である]
で表される化合物、又はその医薬的塩、又はそれらのジアステレオマー若しくはエナンチオマー。
【請求項2】
式Iの化合物が官能基において保護されていてもよい、請求項1に記載の化合物(式Iaの化合物)。
【請求項3】
Eが標的基でもなくベクター成分でもない、請求項1又は2に記載の化合物(式I*の化合物)。
【請求項4】
下記式II:
【化2】

[式中、
Aは、H、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(R')(R")、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、又はSO2NR'であり;
Bは、H、-O-、=O、S、=S、N、N(R')、NYR'、P(R')(R")、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、又はSO2NR'であり;
Yは、N、NR'、O又はSであり;
Yは、N、NR'、O又はSであり;
Cは、H、放射性同位体、ハロゲン又はR'であり;
Dは、H、放射性同位体、ハロゲン又はR'であり;
Eは、不存在、H、OR'、SR'、NR'、CR'p、-O-、=O、-S-、=S、N、N(R')、NYR'、P(O)(R')R"、C(R')(R")、CR'R"、C(O)、C(O)O、C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、SO2NR'、又は W-Zであり、ここでWはリンカーであり、そしてZは標的剤であり;
Fは、不存在、H、OR'、SR'、NR'、CR'p、-O-、=O、-S-、=S, N, N(R’), NYR’, P(O)(R’)R”, C(R’)(R”), CR’R”, C(O), C(O)O, C(O)OR'、C(O)R'R"、SO、SO2、SO2NR'、又はW-Zであり、ここでWはリンカーであり、そしてZは標的剤であり;
pは、1〜3であり;
R'は、H、OH、NH、分岐した若しくは直鎖のC1-C6アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6アルコキシ、分岐した若しくは直鎖のC1-C6アルキレン、置換された若しくは非置換のアリール又は置換された若しくは非置換のヘテロアリール、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m、又は-O(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]mであり;
nは、1〜6であり、そしてmは、1〜6であり;
R"は、H、OH、NH、分岐した若しくは直鎖のC1-C6アルキル、分岐した若しくは直鎖のO-C1-C6アルキル、分岐した若しくは直鎖のC1-C6アルコキシ、分岐した若しくは直鎖のC1-C6アルキレン、置換された若しくは非置換のアリール、置換された若しくは非置換のヘテロアリール、CO(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]m、又は-O(CH2)n,[O(CH2)n-O(CH2)n]mであり;
Nは、1〜6であり、そしてmは、1〜6であり;
Xは、(CH2)q 又はC(R'R")であり;
Qは、0〜2であり;
A又はBが=Oである場合、E又はFは不存在である]
で表される化合物、又はその医薬的塩、又はそれらのジアステレオマー若しくはエナンチオマー。
【請求項5】
式IIの化合物が官能基において保護されていてもよい、請求項4に記載の化合物(式IIaの化合物)。
【請求項6】
Eが標的基でもなくベクター成分でもない、請求項4又は5に記載の化合物(式II*の化合物)。
【請求項7】
前記放射性同位体が、18F、123I、124I、125I、又は131Iでり、更に好ましくは18Fである、請求項4〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
式I、Ia、I*、I*a、II、IIa、II*若しくはII*aの化合物、或いは当該化合物の無機若しくは有機酸の医薬として許容される塩、水和物、複合体、エステル、アミド、溶媒和物又はプロドラッグ、及び医薬として許容されるキャリヤ、希釈剤、賦形剤又はアジュバントを含んで成る医薬組成物。
【請求項9】
式Iの化合物を得る方法において、
● 所望により、式Ia(マイナスLG)の化合物を得るために、脱離基を有しない式Iの化合物(式I(マイナスLG))に保護基を加え;
● 式I又はIaの化合物を得るために、脱離基を有しない式I又はIa(式I(マイナスLG))の化合物をLGと反応せしめ;そして
● 所望により、式Iの化合物を得るために、式Iaの化合物を脱保護する;
工程を含んで成る方法。
【請求項10】
式IIの化合物を得るための直接標識化方法であって、
● 所望により、式Iaの化合物を得るために、式Iの化合物に保護基を加え;
● 式II又はIIaの化合物を得るために、式I又はIaの化合物を放射性同位体により放射性標識し;そして、
● 所望により、式IIの化合物を得るために、式IIaの化合物を脱保護する;
工程を含んでなる方法。
【請求項11】
式IIの化合物を得るための間接標識化方法であって、
● 所望により、式I*aの化合物を得るために、式I*の化合物に保護基を加え;
● 式II*又はII*aの化合物(標的剤又はベクター成分を伴わない式IIの化合物)を得るために、式I*又はI*aの化合物(標的剤又はベクター成分を伴わない式Iの化合物)を放射性同位体により放射性標識し;
● 式II又はIIaの化合物を得るために、式II*又はII*aの化合物(標的剤又はベクター成分を伴わない式IIの化合物)を、標識剤又はベクター成分と反応させ;そして
● 所望により、式IIの化合物を得るために、式IIaの化合物を脱保護する;
工程を含んで成る方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2012−532834(P2012−532834A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518830(P2012−518830)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004199
【国際公開番号】WO2011/006621
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(300049958)バイエル ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】