説明

シクロデキストリンを用いてフロルフェニコールおよび構造的に関連する抗生物質の溶解度を高めるための化合物および方法

水中のフロルフェニコール(FFC)の比較的低い溶解度(1.3mg/mL)は、豚および家禽の肺疾患の処置のための薬用飲料水系におけるその使用を限定する。現在の処方物は、自動プロポーショナー混合タンクシステムにおいて必要とされるFFC濃度13.5mg/mLに到達するように大量の有機溶媒を使用し、当該分野の使用者にとっての実施上の不利益を伴う。本発明は、FFCおよび関連する構造の抗生物質の水溶解度における、天然シクロデキストリンおよび改変シクロデキストリンとの複合体形成の効果に関する。さらに、本発明は、上記混合タンクシステムに必要とされるFFCの用量を実現し、大容量の有機溶媒を防ぐための、FFC−シクロデキストリン系における助溶剤としてのポリエチレングリコール(PEG−300)の効果に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(1.発明の分野)
本発明は、改良された水溶性を有するフロルフェニコール含有処方物に関する。特に、本発明は、シクロデキストリンを用いてフロルフェニコールの複合体を形成させ、その水溶性を改良することに関する。
【背景技術】
【0002】
(2.関連技術の説明)
フロルフェニコールは、広域抗生物質であり、畜牛、豚、家禽、および魚における用途のために獣医学的処置として開発された、チアンフェニコールおよびクロラムフェニコールに構造的に関連する。
【0003】
Nuflor(登録商標)飲料水濃縮物は、23mg/mlのフロルフェニコールを含む経口用溶液となるように設計されたSchering−Ploughの製品である。この製品は、豚および家禽のための飲料水系への添加剤として開発された。上記飲料水中に400mg/ガロン(約0.1mg/ml)の濃度で投薬される場合、上記製品はブロイラーにおけるE.Coli airsacculitisに起因する死亡率を最小化し、豚におけるActinobacillus pleuropneumonia、P.multocida、Mycoplasma、Salmonella cholera suis、およびStreptococcus suis II型に関連する呼吸器疾患を最小化する。
【0004】
Nuflor(登録商標)製品に関連する1つの課題は、水中でのフロルフェニコールの溶解度が比較的低いことである。代表的には、上記製品は大量の飲料水源に直接添加されるか、または、上記製品はプロポーショナー混合タンクシステムを通して大量の飲料水源中へ添加されるかのいずれかである。これらの方法は、大量の飲料水中での400mg/ガロン(約0.1mg/mL)の有効濃度でだけでなく、代表的なプロポーショナーの混合比1:128(1ガロンに対し1オンス)での使用を可能にするために約13.5mg/mlの濃度でもまた、処方物が可溶であることを必要とする。水中でのフロルフェニコールの溶解度(1.23mg/mL)は、問題を最小限にして大量の飲料水の中へ直接添加することを可能にする;しかし、プロポーショナーシステムに必要とされる濃度は10倍高い。したがって、フロルフェニコールの水溶性を改良するための努力がなされてきた。
【0005】
シクロデキストリンは、α−1,4結合で連結されたα−D−グルコピラノース単位を含む一群の環状オリゴマーである。3つの周知の天然に存在するCDがある:α、β、およびγであり、これらはそれぞれ6つ、7つ、8つのグルコピラノース単位から構成される(図1)。加えて、改変CD(例えば、HP−βシクロデキストリンおよびスルホアルキルエーテル−シクロデキストリンがあり、これらは柔軟性、および様々な分子フレームを組み込む能力を有する)もまた公知である。これらの特異な構造のおかげでCDは複合体形成を示すことが公知である。複合体形成は、ホストの空洞内へのゲスト分子の可逆的な取り込み(entrapment)によって新たな実体(すなわち、包接複合体)を得ることと定義される。
【0006】
シクロデキストリンは、非共有結合性包接複合体を形成することにより、様々な薬剤の見かけの溶解度、安定性、および生物学的利用能を増加させるその能力に起因して、薬学的処方物に使用される。シクロデキストリンとの複合体化は、水溶性の乏しい薬学的化合物の溶解度を高める有用な方法である。シクロデキストリンは、ホストとして作用して、水溶液中で有機分子および無機分子との包接複合体を形成する能力がある。ホストであるシクロデキストリンとゲスト分子との間の包接複合体の形成は、一般的に、シクロデキストリンの空洞の大きさとゲスト分子の大きさとの相関関係である。天然のシクロデキストリンはサイズおよび形状に関して幾分制限があるので、改変シクロデキストリンは天然のシクロデキストリンに付随する制限を克服するために使用されてきた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明の組成物は、代表的には、溶媒中での再構成の準備がされた溶解性粉末、溶解性顆粒、または凍結乾燥粉末/ケーキの形態である。
【0008】
他の可能性のある処方物としては、限定はされないが、使用準備のされた溶液、カプセル、および錠剤、ならびに局所使用に有用な他の処方物が挙げられる。
【0009】
本発明によると、本発明の1つの局面は以下を含有する組成物を提供する:
a)約2.5重量%〜約35重量%のフロルフェニコールまたは薬学的に受容可能なその塩;
b)約0.5重量%〜約20重量%のシクロデキストリン;ならびに
c)約20重量%〜約95重量%の水、溶媒、および/またはこれらの混合物。
【0010】
上記組成物は、水および/または溶媒を除去することによって複合体を形成させることによるフロルフェニコールとシクロデキストリンとの密接に結合した複合体の形態であり得る。
【0011】
有機溶媒およびシクロデキストリンの組み合わせは、水中のフロルフェニコールの溶解度を改良することにおいて著しい効果を有する。そのような相乗作用は、溶液中の必要とされる薬物濃度を達成し、かつ時間が経っても溶液中に上記薬物を保つのに必要な溶媒の量を減少させる。このことは、例えば、動物用飲料水系のための自動プロポーショナー混合タンクシステムといった分野における実際の使用に対して多くの利点を生み出す。このことはまた、潜在的には、使用者にとって使いやすいフロルフェニコール濃縮液を提供し、それにより、取り扱うことおよび適切に配置することが困難である、大量の溶媒および大容積の容器の使用を避ける。さらには、フロルフェニコールの溶解度を高めるときのシクロデキストリンと有機溶媒との併用作用は、処方物中のシクロデキストリンの量を減少させるために使用され得、それゆえに上記製品の全体的なコストを制限し得る。
【0012】
加えて、薬物フロルフェニコールと、天然および/または改変シクロデキストリンとの水中での複合体形成は、比較的高い計算結合定数を有することが、溶解度の研究を用いて示されてきた(図5および図6)。このことは、フロルフェニコールの溶解度を高めることによって、水中でシクロデキストリンを伴う薬物フロルフェニコールの処方物へ利点を提供し、有機溶媒の相互補助(co−aid)無しに水中での所望される濃度に到達するためのツールを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、α、β、およびγシクロデキストリンの化学構造の図解表現である。
【図2】図2は、シクロデキストリンの物理的構造の例示である。
【図3】図3は、SBE−β−CDおよびHP−β−CDの化学構造の図解表現である。
【図4】図4は、フロルフェニコールの化学構造の図解表現である。
【図5】図5は、βシクロデキストリン中のフロルフェニコールについての相溶解度図である。
【図6】図6は、γシクロデキストリン中のフロルフェニコールについての相溶解度図である。
【図7】図7は、HP−βシクロデキストリン中のフロルフェニコールについての相溶解度図である。
【図8】図8は、Captisol(一種のスルホアルキルエーテルシクロデキストリン)中のフロルフェニコールについての相溶解度図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本発明は、動物用飲料水系における用途のために、フロルフェニコールまたは薬学的に受容可能なその塩を含む組成物を提供する。いくつかの好ましい本発明の局面において、フロルフェニコールは水性処方物、溶媒性処方物、水/溶媒性処方物、粉末、顆粒、または凍結乾燥粉末/ケーキ中に存在する。他の処方物としては、使用準備のされた溶液、カプセル、および錠剤、ならびに局所使用のための他の処方物が挙げられる。上記の各処方物は、急速な溶解速度プロフィールで抗生物質治療用量に到達するように、上記飲料水系へ直接添加され得る。
【0015】
本発明の処方物の鍵成分の1つは、薬物フロルフェニコールである。フロルフェニコールは、遊離塩基として、またはその塩形態で、および任意のその誘導体(例えば、ホスフェート誘導体、および任意のフロルフェニコールプロドラッグ)でもまた調製され得る。フロルフェニコールは吸湿性ではなく、そのため、処方物中へのその組み込みは、水の吸収に起因する不安定さをもたらさない。フロルフェニコールはまた、[R−(R,S)]−2,2−ジクロロ−N−[1−(フルオロメチル)−2−ヒドロキシ−2−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−エチル]アセトアミドとしても知られる(図4を参照)。この好ましい抗生物質の製造プロセス、およびそのようなプロセスに有用な中間体は、米国特許第4,311,857号、同第4,582,918号、同第4,973,750号、同第4,876,352号、同第5,227,494号、同第4,743,700号、同第5,567,844号、同第5,105,009号、同第5,382,673号、同第5,352,832号、および同第5,663,361号明細書に記載される。別の好ましい抗生物質は、チアンフェニコールである。前記の薬学的に受容可能な塩はまた、本明細書中に記載される処方物への添加に対して企図される。
【0016】
本発明のいくつかの局面において、組成物中に含まれるフロルフェニコールの量は、約2.5重量%〜約35重量%の範囲であり得る。好ましい局面において、フロルフェニコールの量は、約15重量%〜約25重量%であるが、より好ましい局面においては、その量は約20重量%〜約25重量%である。
【0017】
本発明の組成物は、好ましくはシクロデキストリンを含む。上記シクロデキストリンは、天然のシクロデキストリン、改変シクロデキストリン、またはこれらの混合物であり得る。天然のシクロデキストリンの非制限的なリストとしては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、およびこれらの混合物が挙げられる。改変シクロデキストリンとしては、例えば、HP−βシクロデキストリン、スルホアルキル−シクロデキストリン、メチル化シクロデキストリン、エチル化シクロデキストリン、およびこれらの混合物が挙げられ得る。
【0018】
本発明の組成物中に含まれるシクロデキストリンの量は、上記組成物の約0.5重量%〜約20重量%である。好ましくは、その量は上記組成物の約0.5重量%〜約15重量%であり、より好ましくは、上記組成物の約5重量%〜約10重量%である。
【0019】
本発明の組成物はまた、好ましくは、水、溶媒、またはこれらの混合物を含む。溶媒とシクロデキストリンとの相乗作用を引き起こす組み合わせは、水中のフロルフェニコールの溶解度を著しく改善する。そのような相乗作用は、溶液中の必要とされる薬物濃度を達成し、かつ時間が経っても溶液中に上記薬物を保つのに必要な溶媒の量を減少させる。結果として、動物用飲料水のための自動プロポーショナー混合タンクシステムを通して上記薬物を投与することがより容易になる。加えて、使用者にとって使いやすいフロルフェニコール濃縮液が実現され、それにより、取り扱うことおよび適切に配置することが困難である、大量の溶媒および大容積の容器の使用が避けられる。さらには、フロルフェニコールの溶解度を高めるときのシクロデキストリンと上記有機溶媒との併用作用は、処方物中のシクロデキストリンの量を減少させるために使用され得、それゆえに上記製品の全体的なコストを制限し得る。
【0020】
溶媒の非制限的な例としては、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、2−ピロール(pyrol)、N−メチルピロール、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0021】
上記水は、代表的には、上記組成物の約20重量%〜約95重量%の量で存在する。好ましい実施形態においては、上記水は、上記組成物の約40重量%〜約80重量%の量で存在し、より好ましくは、上記組成物の約5重量%〜約10重量%の量で存在する。
【0022】
代表的には、上記溶媒は、上記組成物の約20重量%〜約95重量%の量で存在する。好ましくは、上記溶媒は、上記組成物の約40重量%〜約80重量%の量で存在し、より好ましくは、上記組成物の約5重量%〜約10重量%の量で存在する。
【0023】
本発明の組成物が水と溶媒の混合物を含む場合、溶媒:水の比は、代表的には、約1〜約10の範囲にある。好ましくは、上記比は約1〜約5であり、より好ましくは、約1〜約3である。
【0024】
慣例的な賦形剤(例えば、着色剤、充填剤、希釈剤、界面活性剤、甘味剤、矯味矯臭剤(flavoring)、保存剤、抗酸化剤、安定剤、および、他の補助的な薬学的に受容可能な成分など、ならびにこれらの混合物)は、処方物に添加され得る。例えば、処方物は、追加の一般的賦形剤(例えば、結合剤、滑沢剤、希釈剤、界面活性剤、溶媒、およびこれらの混合物)もまた含み得る。1つの好ましい希釈剤は、無水ラクトースである。他の適した希釈剤としては、限定はされないが、微結晶性セルロース、ソルビトール、デンプン、およびリン酸カルシウムが挙げられる。希釈剤の量は、約0重量%〜約40重量%の範囲であり得る。1つの好ましい滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムであるが、他の適した滑沢剤としては、限定はされないが、リン酸カルシウムおよび/または第二リン酸カルシウムが挙げられ得る。滑沢剤の量は、約0重量%〜約5重量%の範囲であり得る。1つの好ましい界面活性剤は、Tween80であるが、他の適した界面活性剤としては、限定はされないが、ラウリル硫酸ナトリウムが挙げられ得る。界面活性剤の量は、約0重量%〜約10重量%の範囲であり得る。1つの好ましい結合剤は、水溶液またはアルコール溶液中で2重量%と20重量%の間の範囲である、ポリビニルピロリドン(PVP)30である。適した代替物の非限定的なリストは、ポリビニルピロリドン90、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリルアミド(polyacrilamide)、およびポリビニルアルコールを含み得る。
【0025】
所望される場合、他の任意の不活性成分が本組成物へ添加され得る。そのような成分としては、保存剤、抗酸化剤、安定剤、着色剤、甘味剤、および矯味矯臭剤が挙げられる。例示的な保存剤としては、p−ヒドロキシ安息香酸メチル(メチルパラベン)、およびp−ヒドロキシ安息香酸プロピル(プロピルパラベン)が挙げられる。例示的な抗酸化剤としては、ブチルヒドロキシアニソールおよびモノチオグリセロールナトリウムが挙げられる。本発明に使用するための好ましい安定剤としては、例えば、BHTまたはクエン酸が挙げられる。本発明の処方物中の活性成分のうちのいずれかの崩壊を防ぐための特に好ましい安定剤は、約0.01%(w/w)と約0.05%(w/w)の間の濃度のBHTである。他の適した安定剤としては、例えば、フマル酸、リンゴ酸、および酒石酸が挙げられる。安定な酸が保存剤として使用される場合、安定な酸は、発泡性処方物中の酸成分および塩基成分の間の化学量論の比に従って、酸成分に加えて添加され得るか、または酸成分の一部として添加され得る。例示的な甘味剤としては、マンニトール、ラクトース、スクロース、およびデキストロースが挙げられる。
【0026】
なおも本発明のさらなる局面において、上記化合物は、フロルフェニコールの効果に干渉しないか、さもなければ妨害しない第二の薬学的に活性な構成物を含有し得る。他の活性成分は本発明の処方物と組み合され得ることが理解される。そのような成分としては、例えば、抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド、NSAID(例えば、フルニキシン)、COX−インヒビター、および他の鎮痛剤)、抗寄生虫性化合物(例えば、アベルメクチン化合物(例えば、イベルメクチン、ドラメクチン(doramectin)、ミルベマイシン、セラメクチン(selamectin)、エマメクチン(emamectin)、エプリノメクチン(eprinomectin)、およびモキシデクチン)、ならびに/または、必要に応じて殺吸虫剤)が挙げられ得る。また、処方物中で第二抗生物質を使用することも好まれ得る。好ましい抗生物質としては、テトラサイクリンが挙げられ得る。特に好ましいのは、クロロテトラサイクリンおよびオキシテトラサイクリンである。他の好ましい追加の抗生物質としては、β−ラクタム(例えば、ペニシリン、セファロスポリン(例えば、ペニシリン、アモキシシリン、またはアモキシシリンとクラブラン酸との組み合わせ)、あるいは他のβラクタマーゼインヒビター、セフチオフール、セフキノームなど)が挙げられる。また、好ましい抗生物質としては、フルオロキノロン(例えば、エンロフロキサシン、ダノフロキサシン、ジフロキサシン、オルビフロキサシン(orbifloxacin)、およびマルボフロキサシン(marbofloxacin))、ならびにマクロライド系抗生物質(例えば、チルミコシン、ツラスロマイシン(tulathromycin)、エリスロマイシン、アジスロマイシン、およびその薬学的に受容可能な塩)などが挙げられる。あるいは、本発明の処方物と組み合わせて、昆虫成長抑制剤(insect growth regulator)を含み得る。
【0027】
本発明の他の局面において、疾患およびフロルフェニコールに影響されやすい(florfenicol−susceptible)状態を処置する、または予防する方法が提供される。上記方法は、本明細書中に記載される組成物の十分な量を水へ導入する工程、および結果として生じる溶液を、被験体により摂取される液体の一部分として、それを必要とする被験体に投与する工程を包含する(例えば、上記処方物は、家畜類へ処置用量および治療用量を投与するために、その飲料水系に添加され得る)。
【0028】
投与される量は、水中への上記化合物の導入の結果生じるフロルフェニコール溶液の治療有効量または予防有効量である。この実施形態の大多数の局面において、水に添加される化合物の量は、飲料水系中のフロルフェニコールの濃度を約0.01mg/mL〜約0.2mg/mLにするのに十分な量である。好ましくは、上記濃度は、大量の飲料水中で約0.1±0.09mg/mLであり、水溶液が代表的なプロポーショナー混合比(1:128ガロン)で使用される場合、約13.5±0.1mg/mLの濃度である。処置される状態、および処置される動物のタイプ、サイズ、重量等に応じて、適した処置期間が約1日〜約5日の範囲であること、または、上記の濃度で新規化合物を飲料水中で使用することが必要とされる場合には、5日より長い範囲であることが企図される。当業者によって理解されるように、動物は処置された水を自由に飲む。それにもかかわらず、上記の期間にわたってそれが飲用可能であるとき、十分な量のフロルフェニコールが、それを必要とする動物へ投与されることが企図される。
【0029】
本発明の化合物は、所望される場合、上記活性成分を含む圧縮錠剤、顆粒、または凍結乾燥粉末/ケーキの形態の化合物を含む1つ以上の単位剤形を含み得る、パックまたはディスペンサー(dispenser)装置(例えば、FDA承認キット)中に入れて提供され得る。上記パックは、例えば、金属箔またはプラスチック箔(例えば、ブリスターパック)を備え得る。パックはまた、金属プラスチック箔で密閉された、使用準備の出来ている溶解性生分解性容器からなり得る。パックまたはディスペンサー装置は、投与に対する指示が添えられ得る。パックまたはディスペンサー装置はまた、薬の製造、使用、または販売を規制する政府機関により規定される形態で容器に関連する通知が添えられ得る。上記通知は、組成物の形状について、または、ヒトへの投与もしくは獣医学的投与についての上記機関による承認を反映している。そのような通知は、例えば、処方薬に対する米国食品医薬品局により認可される品質表示(labeling)について、または認可された製品の挿入物についてであり得る。相溶性の薬学的キャリアー中に処方される本発明の化合物を含む組成物はまた、調製され、適切な容器中に配置され、必要とされる状況の処置のためのラベルが貼られる。したがって、上記キットは、それを必要とする被験体における細菌感染または他の疾患の処置または予防と組み合わせて使用され得、そして、本明細書記載される化合物の十分な量、および、それを必要とする被験体に与えられる飲料水中へ上記化合物を導入するための指示書を含み得る。
【実施例】
【0030】
以下の実施例は、本発明の特定の実施例を例示するために提供され、いずれのどんな様式においてもその範囲を限定することは意図されず、そう解釈すべきでもない。
【0031】
相溶解度分析は、薬物を測定するために使用される方法の1つである:CD結合定数および薬物の溶解度のその結果が、HiguchiおよびConnorsによる文献中で広範囲に記載されてきた。そのような実験において、物質(S)の溶解度は、リガンド(L)(この場合はシクロデキストリン)の濃度の増加と併せてモニターされる。上記実験は、溶媒のみを含む一本のチューブを除いて、濃度を増加させながら同体積のリガンド溶液を含む一連のチューブまたはバイアル中で実施される。各チューブへ既知量の物質または薬物を加え、サンプルを一定の温度で平衡に達せさせる。次いで、この溶液相を全物質濃度について分析する。溶解性複合体が形成する場合、上記物質濃度はリガンド濃度を増加させると共に変わるはずである。溶解度の挙動は、全リガンド濃度に対して全物質濃度を表すことによる相図を用いて測定され得る。
【0032】
混合溶媒(例えば、水/PEG−300)中のフロルフェニコールの溶解度、およびβシクロデキストリンとのフロルフェニコール複合体を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いる溶解度の研究により評価した。HPLCシステムは、Millennium Chromatography管理データソフトウェアと接続されたWaters 2996フォトダイオードアレイ検出器を備えるWaters Alliance分離モジュールから構成された。HPLCの移動相はアセトニトリルおよび0.1%のリン酸水溶液(30:70 v/v)からなった。Phenomenx(登録商標)、Luna C8 5ミクロンカラムを使用した。流速は1.0mL/分であり、検出波長は260nmであった。結合定数を、Higuchi Connors法を用いて、溶解度研究用プロットから計算した。水性CD/PEG−300系におけるフロルフェニコールの溶解度もまた、同じ技術を用いて調査した。
【0033】
実験の第一セットにおいて、相溶解度の研究を天然シクロデキストリンおよび改変シクロデキストリン中のFFCについて実施した。これらの研究の結果を、以下の表I、表II、表III、表IV、および表Vにおいて報告し、相溶解度図を図5、図6、図7、および図8において報告する。
【0034】
【表1】

【0035】
計算されたFFCの溶解度Sは4.90E−07Mであった。
【0036】
【表2】

【0037】
FFC:CD複合体の計算結合定数は1429.57M−1であった。
【0038】
【表3】

【0039】
FFC:γ−CD複合体の計算結合定数は612.43M−1であった。
【0040】
【表4】

【0041】
FFC:HP−CD複合体の計算結合定数は816.652M−1であった。
【0042】
【表5】

【0043】
FFC:Captisol(登録商標)複合体の計算結合定数は1020.92M−1であった。
【0044】
実験の第二セットにおいて、PEG−300を助溶剤として使用した場合の、異なるパーセンテージのPEG−300の効果をFFC−シクロデキストリン複合体系において調査した。
【0045】
異なるパーセンテージのPEG−300および異なるモル濃度のシクロデキストリンの存在下で、FFC−CD複合体について得た結果を以下の表VIおよび表VIIにおいて報告する。
【0046】
【表6】

【0047】
【表7】

【0048】
FFCについて得た溶解度の結果に基づいて、シクロデキストリンとの複合体化は、飲料水系において使用するフロルフェニコール(および関連する構造の抗生物質)の濃縮溶液処方物に対する、高パーセンテージの有機溶媒の使用の代替であることを例示した。さらに、PEG−300をFFC:シクロデキストリン複合体に対する助溶剤として使用した場合、FFCの溶解度は大いに増加した。
【0049】
シクロデキストリンと薬物(例えば、フロルフェニコール)との間の複合体形成を、異なる技術を用いて達成し得る。一つの技術においては、上記複合体を水溶液中で形成させ得る。例えば、上記薬物の飽和水溶液を10%シクロデキストリンへ加え、24時間インキュベートする。過剰な薬物を除去し、上記溶媒をこの時点で加え得る。第二の技術においては、上記複合体を最小量の溶媒を用いて「ペースト技術」により形成させ、シクロデキストリンおよび上記薬物のペーストを処方物へ加える。第三の技術においては、上記シクロデキストリン/薬物複合体を、連続的な撹拌の下で上記溶媒中にて直接形成させる。
【0050】
飲料水系において使用の可能性のある処方物の非限定的な例としては、以下が挙げられる:

実施例1:
成分 %(w/w)
フロルフェニコール 1.5%
HP−βCD 10%
水 十分量

実施例1において報告した処方物は、透明な溶液であった。または代替としては、上記処方物は凍結乾燥され、水中で再構成される粉末として提供され得た。
【0051】

実施例2:
成分 %(w/w)
フロルフェニコール 4.5%
HP−βCD 30%
水 十分量

実施例2において報告される処方物は透明な溶液であった。または代替としては、上記処方物は凍結乾燥され、水中で再構成される粉末として提供され得た。
【0052】

実施例3:
成分 %(w/w)
フロルフェニコール 2%
βCD 20%
PEG−300 30%
水 十分量

実施例3において報告される処方物は透明な溶液であった。または代替としては、上記処方物は凍結乾燥され、水中で再構成される粉末として提供され得た。
【0053】
FFC:CD複合体化によって、所望されるFFC溶解度を達成すること、自動プロポーショナー混合タンクシステムにおいて所望される濃度を有すること、および時間が経過しても溶液中に薬物を維持することが可能である。さらに、複数の可溶化剤(例えば、β−CDおよびPEG−300)を含有するサンプルは、水中でのFCC溶解度の著しい増加を示す。PEG−300とシクロデキストリン溶液との相乗作用が、自動プロポーショナー混合タンクシステムにおいて必要とされる濃度を達成するのに必要な溶媒(ポリエチレングリコール)の量を減少させた。PEG−300とシクロデキストリンとの相乗的組み合わせはまた、使用者にとって使いやすいFFC濃縮溶液を提供し、それにより、取り扱うことおよび適切に配置することが困難である大量の溶媒および大容積の容器の使用を防ぐ。
【0054】
本発明の特定の現在好ましい実施形態が本明細書中に記載されたが、記載された実施形態の変更および改変が本発明の意図および範囲から逸脱すること無しになされ得ることは、本発明が属する分野の当業者には明らかである。
【0055】
よって、本発明は、添付の特許請求の範囲および法律の適用規則により要求される範囲に対してのみ限定されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)約2.5重量%〜約35重量%のフロルフェニコールまたは薬学的に受容可能なその塩;
b)約0.5重量%〜約20重量%のシクロデキストリン;ならびに
c)約20重量%〜約95重量%の水、溶媒、および/またはこれらの混合物
を含む組成物。
【請求項2】
前記フロルフェニコールまたは薬学的に受容可能なその塩が前記組成物の約15重量%〜約25重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記フロルフェニコールまたは薬学的に受容可能なその塩が前記組成物の約20重量%〜約25重量%である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記シクロデキストリンが、天然シクロデキストリン、改変シクロデキストリン、またはこれらの混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記天然シクロデキストリンがα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記改変シクロデキストリンが、HP−βシクロデキストリン、スルホアルキル−シクロデキストリン、メチル化シクロデキストリン、エチル化シクロデキストリン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記シクロデキストリンが前記組成物の約0.5重量%〜約15重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記シクロデキストリンが前記組成物の約5重量%〜約10重量%である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記水が前記組成物の約40重量%〜約80重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記水が前記組成物の約5重量%〜約10重量%である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記溶媒がポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、2−ピロール、N−メチルピロール、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記溶媒が前記組成物の約10重量%〜約60重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記溶媒が前記組成物の約15重量%〜約40重量%である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
保存剤、抗酸化剤、安定剤、着色剤、甘味剤、矯味矯臭剤、およびこれらの混合物からなる群の構成要素をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
疾患を処置または予防する方法であって:
直接水の中へ、またはプロポーショナー混合タンクシステムを通して水の中へ請求項1に記載の組成物を導入する工程;および
該水への該組成物の導入の結果得られる生成物の治療有効量を、その必要のある被験体へ投与する工程
を包含する方法。
【請求項16】
前記被験体に投与されるフロルフェニコールまたは薬学的に受容可能なその塩の濃度が、約0.01mg/ml〜約0.2mg/mlである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
被験体の疾患を処置または予防するためのキットであって、請求項1に記載の組成物、および該被験体へ与えられる飲料水中へ該組成物を導入するための指示書を含むキット。
【請求項18】
フロルフェニコール複合体であって、請求項1に記載の組成物を形成すること、ならびに前記水、溶媒、および/またはこれらの混合物を除去して該複合体を形成することによって調製されるフロルフェニコールとシクロデキストリンとの密接に結合した組み合わせを含む、複合体。
【請求項19】
前記溶媒:水の比が約1〜約10である、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記溶媒:水の比が約1〜約5である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記溶媒:水の比が約1〜約3である、請求項20に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−525059(P2010−525059A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506241(P2010−506241)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/005225
【国際公開番号】WO2008/133901
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(503442097)シェーリング−プラウ・リミテッド (47)
【住所又は居所原語表記】Weystrasse20,Lucerne6,CH−6000,Switzerland
【Fターム(参考)】