説明

シクロデキストリン誘導体を含む注射用メルファラン組成物並びにその製造及び使用方法

本発明は、メルファラン及びシクロデキストリン誘導体を含んでなる薬学的組成物、並びにその製造及び使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メルファラン及びシクロデキストリン誘導体を含む薬学的組成物、並びに例えばメルファランに治療応答性である障害及び疾患を治療するための、その製造及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メルファランは、ビスクロロエチルアミンタイプのアルキル化剤であり、休止腫瘍細胞及び急速に分裂する腫瘍細胞の両方に対して有効である。例えば、特許文献1〜3を参照のこと。注射用メルファラン組成物(注射用アルケラン(登録商標)、GlaxoSmithKline)は、経口療法が適切でない多発性骨髄腫を有する患者の緩和療法について米国食品医薬品局によって認可され、経口用メルファラン組成物(アルケラン(登録商標)錠剤、GlaxoSmithKline)は、多発性骨髄腫の緩和療法について、及び切除不可能な上皮性卵巣がんの緩和について、認可された。
【0003】
注射用アルケラン(登録商標)(GlaxoSmithKline)は、メルファラン塩酸塩(メルファラン50mgと等価)及びポビドン20mgを含有する無菌非発熱性凍結ドライパウダーを、クエン酸ナトリウム(0.2g)、プロピレングリコール(6mL)、エタノール(96%、0.52mL)及び、10mLの総体積のための水を含有する無菌希釈剤で先ず希釈した後に、静脈内投与される。通常の静脈内用量は16mg/m2であり、15〜20分にわたって単回注入として投与される。メルファランは、2週間隔で、次いで、毒性からの十分な回復後、4週間隔で、4用量で静脈内投与される。
【0004】
注射用アルケラン(登録商標)(GlaxoSmithKline)ラベルによれば、注射用アルケラン(登録商標)の投与後、メルファランの薬物血漿中濃度は、双指数関数的に急速に減少し、分布相及び最終消失相半減期は、それぞれ、およそ10分及び75分である。平均全身クリアランスは、7〜9mL/分/kg(250〜325mL/分/m2)である。研究は、6週毎の0.5mg/kgの反復投薬で、メルファランのクリアランスは、第1コース後の8.1mL/分/kgから、第3コース後の5.5mL/分/kgへ減少したが、第3コース後はあまり減少しなかったことを報告した。10又は20mg/m2用量のメルファランの投与後の骨髄腫患者における平均(±SD)ピークメルファラン血漿中濃度は、それぞれ、1.2±0.4及び2.8±1.9μg/mLであった。メルファラン50mgの静脈内投与後、メルファランの定常状態の分布容積は、0.5L/kgである。血漿タンパク質へのメルファラン結合の程度は、60%〜90%の範囲に及ぶ。血清アルブミンは主要な結合性タンパク質であり、一方、α1−酸性糖タンパク質は血漿タンパク質結合の約20%を占めるようである。薬物のおよそ30%は血漿タンパク質へ(共有結合的に)不可逆的に結合される。免疫グロブリンとの相互作用は無視できることが分った。
【0005】
メルファランは、主としてモノヒドロキシメルファラン及びジヒドロキシメルファランへの化学的加水分解によって血漿から排出される。これらの加水分解産物を除いては、他のメルファラン代謝産物はヒトにおいて観察されていない。
【0006】
静脈内メルファランと経口メルファランとを比較する対照試験は、静脈内投与されたメルファランで、より大きな骨髄抑制を示した。さらに、アナフィラキシーを含む過敏性反応が、静脈内メルファランを受容した患者のおよそ2%において生じた。メルファランはまた、水溶液中において急速な加水分解を受ける。非特許文献1を参照のこと。注射用アルケラン(登録商標)(GlaxoSmithKline)製品中のメルファランもまた、再構成時にクエン酸塩誘導体を急速に形成し、溶液からのメルファランの沈澱に起因して冷蔵することができない。
【0007】
担体及び/又は希釈剤としてシクロデキストリン誘導体を含むメルファラン組成物が公知である。例えば、非特許文献2〜4、及び特許文献4〜6を参照のこと。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,032,584号
【特許文献2】米国特許第3,032,585号
【特許文献3】米国特許第4,997,651号
【特許文献4】米国特許第4,983,586号
【特許文献5】米国特許第5,024,998号
【特許文献6】米国特許第6,583,125号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】S.A.Stout et al.,Int.J.Pharm.24:193(1985)
【非特許文献2】N.J.Medlicott,et al.,J.Pharm.Sci.87:1138 (1998)
【非特許文献3】D.Q.Ma et al.,Int.J.Pharm.189:227(1999)
【非特許文献4】D.Q.Ma et al.,J.Pharm.Sci.89:275(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
必要とされるものは、静脈内メルファランの毒物学及び副作用プロフィールを最小限にすることができるメルファラン製剤である。さらに必要とされるものは、増加したバイオアベイラビリティー及び/又は改善した治療開始速度を有する静脈内メルファラン製剤である。周囲及び/又は冷蔵条件下で安定であり、かつ、有機可溶化剤(例えば、エタノール及び/又はプロピレングリコールなど)の必要性なしに完全に溶解されたメルファランを提供することができる、静脈内投与に適したメルファラン組成物もまた必要とされる。さらに必要とされるものは、メルファランと共に誘導体を急速に形成する成分を含まない組成物である。さらに必要とされるものは、改善された安定性を有し、それによって、より長い持続注入を可能にし、単回の好都合な投与から患者が受けるメルファラン曝露時間を延長する、静脈内投与に適したメルファラン組成物である。本明細書に記載するように、メルファラン及びシクロデキストリン誘導体を含む経口又は非経口投与に適した組成物を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、塩酸塩としてのメルファラン25mg〜125mg、任意の緩衝剤、及び式Iのシクロデキストリン誘導体を含む薬学的組成物に関する:
【化1】

式中、nは4、5又は6であり;式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、独立して、−H、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基、又は場合により置換される直鎖又は分枝鎖C1−C6基であり;式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つは、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基であり;ここで、薬学的組成物は約4〜約6のpHを有し;ここで、水溶液での薬学的組成物の希釈は、メルファランが、希釈後、5時間以内で約25℃で2%以下、又は10時間以内で約25℃で4%又はそれ未満分解する、注入の準備ができているメルファラン溶液を提供し;ここで、シクロデキストリン誘導体は、メルファランに対して50:1〜100:1(w/w)の比で存在する。
【0012】
本発明はまた、塩酸塩としてのメルファラン150mg〜250mg、任意の緩衝剤、及び式Iのシクロデキストリン誘導体を含む薬学的組成物に関する:
【化2】

式中、nは4、5又は6であり;式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、独立して、−H、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基、又は場合により置換される直鎖又は分枝鎖C1−C6基であり;式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つは、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基であり;ここで、薬学的組成物は約4〜約6のpHを有し;ここで、水溶液での薬学的組成物の希釈は、メルファランが、希釈後、5時間以内で約25℃で2%以下、又は10時間以内で約25℃で4%又はそれ未満分解する、注入の準備ができているメルファラン溶液を提供し;ここで、シクロデキストリン誘導体は、メルファランに対して25:1〜35:1(w/w)の比で存在する。
【0013】
ある実施態様において、シクロデキストリン誘導体は、式IIの化合物である:
【化3】

式中、R=(H)21-x又は(−(CH24−SO3-Na+x、x=6.0〜7.1。
【0014】
ある実施態様において、シクロデキストリン誘導体は、式IIの化合物:
【化4】

式中、R=(H)21-x又は(−(CH24−SO3-Na+x、x=6.0〜7.1
であり;かつ
薬学的組成物は塩酸塩としてのメルファラン約50mgを含み、シクロデキストリン誘導体はメルファランに対して50:1〜100:1(w/w)の濃度で存在し;又は
薬学的組成物は塩酸塩としてのメルファラン約50mgを含み、シクロデキストリン誘導体はメルファランに対して約55:1(w/w)の比で存在し;又は
薬学的組成物は塩酸塩としてのメルファラン約200mgを含み、シクロデキストリン誘導体はメルファランに対して25:1〜35:1(w/w)の比で存在し;又は
薬学的組成物は塩酸塩としてのメルファラン約200mgを含み、シクロデキストリン誘導体はメルファランに対して約27:1、約30:1、又は約32:1(w/w)の比で存在する。
【0015】
本発明は、新生物疾患に罹患する対象を治療する方法に関し、該方法は、組成物を水性希釈剤で希釈し、メルファラン25mg〜125mgと式Iのシクロデキストリン誘導体とを含む希釈薬学的組成物を提供する工程:
【化5】

式中、nは4、5又は6であり;式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、独立して、−H、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基、又は場合により置換される直鎖又は分枝鎖C1−C6基であり;式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つは、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基であり;ここで、希釈薬学的組成物は、約4〜約6のpHを有し;ここで、シクロデキストリン誘導体は、メルファランに対して少なくとも50:1(w/w)の濃度で存在し;ここで、希釈薬学的組成物中のメルファランは、希釈後、5時間以内で約25℃で2%以下、又は10時間以内で約25℃で4%又はそれ未満分解する;並びに、その必要がある対象へ注射によって希釈薬学的組成物を投与する工程を含む。
【0016】
ある実施態様において、新生物疾患は、骨髄腫、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、黒色腫、悪性黒色腫、乳がん、卵巣がん、精巣がん、進行性前立腺がん、神経内分泌がん、転移性黒色腫(例えば、転移性眼内黒色腫、転移性皮膚黒色腫など)、転移性神経内分泌腫瘍、転移性腺がん、肝細胞がん、骨原性肉腫、真性多血症(polycythemia veraplasma)、形質細胞新生物、アミロイドーシス、硬化性粘液水腫、及びそれらの併発より選択される。ある実施態様において、新生物疾患は多発性骨髄腫であり、投与は全身性であり、多発性骨髄腫の緩和療法を提供する。
【0017】
本発明はまた、幹細胞移植の必要がある対象を前処置するための方法に関し、該方法は、幹細胞移植の必要がある対象へ1日当たり50mg/m2〜300mg/m2のメルファラン用量を投与する工程を含み、ここで、メルファラン用量を、メルファランと式Iのシクロデキストリン誘導体とを含む薬学的組成物で投与し:
【化6】

式中、nは4、5又は6であり;式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、独立して、−H、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基、又は場合により置換される直鎖又は分枝鎖C1−C6基であり;式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つは、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基であり;ここで、薬学的組成物は、約4〜約6のpHを有し;ここで、シクロデキストリン誘導体は、メルファランに対して少なくとも25:1(w/w)の比で存在する。
【0018】
ある実施態様において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つは、ヒドロキシ置換C3基である。
【0019】
ある実施態様において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、独立して、シクロデキストリン誘導体1個当たり4〜8の置換度を有する直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基であり、残りの置換基は−Hである。
【0020】
ある実施態様において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つは、直鎖C4−(アルキレン)−SO3-基で置換されている。
【0021】
ある実施態様において、薬学的組成物又は希釈薬学的組成物は、アルコールを実質的に含まない。
【0022】
ある実施態様において、水性希釈剤は生理食塩液である。
【0023】
ある実施態様において、希釈薬学的組成物を投与前に約0.5時間〜約48時間保存する。ある実施態様において、本発明の薬学的組成物中のメルファランは、希釈後、5時間以内で約25℃で2%以下、又は10時間以内で約25℃で4%又はそれ未満分解する。
【0024】
ある実施態様において、新生物疾患に罹患するか又は幹細胞移植の必要がある対象は、小児の対象である。
【0025】
ある実施態様において、投与を静脈内で行う。ある実施態様において、投与を四肢灌流を介して行う。
【0026】
ある実施態様において、投与は2日又はそれより多い期間に及ぶ。
【0027】
ある実施態様において、投与は、等価用量のメルファランを含有しかつシクロデキストリン誘導体を欠くメルファラン製剤によって提供されるメルファランCmaxよりも少なくとも20%又はそれ以上大きいメルファランCmaxを対象に提供する。ある実施態様において、投与は、等価用量のメルファランを含有しかつシクロデキストリン誘導体を欠くメルファラン製剤によって提供されるメルファランAUC0-tよりも少なくとも20%又はそれ以上大きいメルファランAUC0-tを対象に提供する。
【0028】
ある実施態様において、本発明の方法は、濃縮メルファラン組成物を水性希釈剤で希釈し、薬学的組成物を提供する工程を含む。ある実施態様において、濃縮メルファラン組成物は、メルファラン50mg〜500mgを含む。ある実施態様において、濃縮メルファラン組成物は、メルファラン約200mgを含む。
【0029】
本発明はまた、塩酸塩としてのメルファラン25mg〜125mg及び任意の水溶性ポリマーを含む第1の容器と、水性希釈剤、任意の緩衝剤、及び式Iのシクロデキストリン誘導体を含む第2の容器とを含む薬学的キットに関し:
【化7】

式中、nは4、5又は6であり;式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、独立して、−H、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基、又は場合により置換される直鎖又は分枝鎖C1−C6基であり;式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つは、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基であり;ここで、シクロデキストリン誘導体は、メルファランに対して少なくとも50:1(w/w)の濃度で第2の容器中に存在し;ここで、第1の容器及び第2の容器を合わせることが、希釈後、5時間以内で約25℃で2%以下、又は10時間以内で約25℃で4%又はそれ未満分解する約4〜約6のpHを有する希釈薬学的組成物を提供する。
【0030】
本発明はまた、塩酸塩としてのメルファラン150mg〜250mg及び任意の水溶性ポリマーを含む第1の容器と、水性希釈剤、任意の緩衝剤、及び式Iのシクロデキストリン誘導体を含む第2の容器とを含む薬学的キットに関し:
【化8】

式中、nは4、5又は6であり;式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、独立して、−H、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基、又は場合により置換される直鎖又は分枝鎖C1−C6基であり;式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つは、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基であり;ここで、シクロデキストリン誘導体は、メルファランに対して25:1〜35:1(w/w)の濃度で第2の容器中に存在し;ここで、第1の容器及び第2の容器を合わせることが、希釈後、5時間以内で約25℃で2%以下、又は10時間以内で約25℃で4%又はそれ未満分解する約4〜約6のpHを有する希釈薬学的組成物を提供する。
【0031】
ある実施態様において、第1の容器は、ポビドンを10mg〜30mgの量で含み、第2の容器は、第1の容器及び第2の容器が合わされると約4〜約6のpHを提供するために十分な濃度でpH調整剤を含む。
【0032】
ある実施態様において、第2の容器中に存在するシクロデキストリン誘導体は、式IIの化合物であり:
【化9】

式中、R=(H)21-x又は(−(CH24−SO3-Na+x、x=6.0〜7.1;ここで、第1の容器は、塩酸塩としてのメルファラン約200mgを含み;ここで、シクロデキストリン誘導体は、メルファランに対して約27:1、約30:1、又は約32:1(w/w)の量で第2の容器中に存在する。
【0033】
本発明のさらなる実施態様、特徴及び利点、並びに本発明の種々の実施態様の構成、構造及び実施を、添付の図面を参照して、下記において詳細に説明する。
【0034】
本明細書に組み入れられ本明細書の一部を形成する添付の図面は、本発明の1つ又はそれ以上の実施態様を示し、説明と一緒に、本発明の原理を説明すること、並びに当業者が本発明を製造及び使用することを可能にすることにさらに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】pH及びシクロデキストリン誘導体濃度の関数としての遊離塩基メルファランの溶解度の図示を提供する。
【図2】シクロデキストリン誘導体濃度の関数としてのpH7.5での遊離塩基メルファラン及びメルファラン塩酸塩の溶解度の図示を提供する。
【図3】本発明の単位投薬形態を作製するためのプロセスを説明するフローチャートを提供する。
【図4】本発明の単位投薬形態を作製するためのプロセスを説明するフローチャートを提供する。
【図5】シクロデキストリン誘導体(SBE6.5−β−CD)を含有するメルファラン製剤とシクロデキストリンフリーのメルファラン製剤(注射用アルケラン(登録商標)、GlaxoSmithKline)とを使用しての雄性Sprague−Dawleyラットへの静脈内投与後のメルファランの用量標準化全血(図5A)及び血漿(図5B)中濃度の図示を提供する。
【図6】シクロデキストリン誘導体(SBE6.5−β−CD)を含有するメルファラン製剤の静脈内投与後及びシクロデキストリンフリーのメルファラン製剤(注射用メルファランHCl、Bioniche Pharma USA)の静脈内投与後のヒト患者における平均血漿中メルファラン濃度の図示を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
ここで、本発明の1つ又はそれ以上の実施態様を、添付の図面を参照して説明する。図面において、同様の参照番号は、同一の又は機能的に類似した要素を示し得る。さらに、参照番号の左端の数字は、参照番号が最初に現れる図面を示し得る。
【0037】
発明の詳細な説明
本明細書は、本発明の特徴を組み入れる1つ又はそれ以上の実施態様を開示する。開示される実施態様は、本発明を例示するに過ぎない。本発明の範囲は、開示される実施態様に限定されない。本発明は、本明細書に添付される特許請求の範囲によって定義される。
【0038】
本明細書の全体にわたって、量に関しての用語「約」の使用は、その量を含むように意図される。例えば、「約10mL」は、「10mL」、並びに記載のエンティティーに関しておよそ10mLであると当技術分野において理解される値を含むように本明細書において意図される。
【0039】
本発明は、本明細書に開示される様々な局面及び実施態様のコンビネーション及びサブコンビネーションを含む。さらに、特定の特徴、構造、又は特性がある実施態様に関連して記載される場合、明示的に記載されるか否かにかかわらず、他の実施態様に関連してこのような特徴、構造、又は特性を実施することは、当業者の知識内にあることが理解される。本発明のこれらの及び他の局面は、下記の詳細な説明、実施例、特許請求の範囲、及び添付の図を参照すると明らかとなる。
【0040】
メルファラン
本発明の組成物、製剤及び単位投薬形態は、下記の化学構造を有するメルファランを含む:
【化10】

【0041】
本明細書において使用される場合、用語「メルファラン」は、上記化合物、4−[ビス(クロロエチル)アミノ]フェニルアラニンのL−異性体、並びにその付加塩、多形、溶媒和物、水和物、脱水物、共結晶、無水物、及びアモルファス形態を指す。メルファランはキラル原子を含有し、従って、本明細書において使用される場合、「メルファラン」は、L−異性体の実質的に純粋な形態を指し得る。本明細書において使用される場合、「実質的に純粋な」は、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、又は99.9%以上の純度を有するメルファランを指す。
【0042】
メドファランとして公知の、上記化合物のD−異性体は、ある特定の動物腫瘍に対して活性がより低く、染色体に対して効果をもたらすために必要とされる用量は、メルファランで必要とされるものよりも多い。ラセミ(DL−)形態は、メルファラン(merphalan)又はサルコリシンとして公知である。ある実施態様において、本発明の組成物は、メドファランを実質的に含まない。ある実施態様において、本発明の組成物は、95%以上、98%以上、99%以上、99.9%以上、又は99.99%以上の純度を有する塩酸塩としてのメルファランを含む。
【0043】
メルファランは、選択されたヒト新生物疾患に対して活性である二官能性アルキル化剤である。メルファランについての分子式はC1318Cl222であり、遊離塩基形態の分子量は305.20g/molである。メルファランは、水(pH7)中において事実上不溶性であり、約2.5のpKaを有する。
【0044】
ある実施態様において、本発明の薬学的組成物及び投薬形態は、塩酸塩としてのメルファランを含む。本明細書において使用される場合、「塩酸塩としてのメルファラン」は、上記化合物の塩酸付加塩を指す。しかし、メルファランの量及び濃度は、遊離塩基メルファランの等価質量に関して提供される。従って、「塩酸塩としてのメルファラン」5mgは、考慮した場合は約5.6mgの総質量を提供する塩酸付加塩を除いて、活性薬剤メルファラン5mgを指す。
【0045】
シクロデキストリン誘導体
本発明の組成物、製剤及び/又は単位投薬形態は、シクロデキストリン誘導体を含む。本明細書において使用される場合、「シクロデキストリン誘導体」は、環状1→4立体配置で連結された5個以上のα−D−グルコピラノシド単位を含み、かつ、エーテル結合を介して2、3及び/又は6位で1つ又はそれ以上のグルコピラノシド単位へ結合された置換基(−O−R−、式中、Rは置換基を指す)を含む、環状オリゴ糖を指す。
【0046】
ある実施態様において、シクロデキストリン誘導体は、式Iの化合物である:
【化11】

式中、nは4、5又は6であり、式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、独立して、−H、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基、及び場合により置換される直鎖又は分枝鎖C1−C6基より選択される。
【0047】
ある実施態様において、本発明での使用のためのシクロデキストリンは、平均置換度(「ADS」)に基づいて選択され、これは、本明細書において使用される場合、シクロデキストリン1分子当たりの平均の置換基数を指す。シクロデキストリン誘導体についての平均置換度は、WO2009/018069において詳細に記載されており、これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。本明細書において使用される場合、本発明での使用のためのシクロデキストリン誘導体組成物は、以下の表記法によって参照される:置換基のADSを示す下付き文字を伴って、置換基は略記され(例えば、スルホブチルエーテル基は「SBE」と略記される)、シクロデキストリン構造が定義されされる。例えば、6.5のADSを有するスルホブチルエーテル誘導体化β−シクロデキストリン組成物は、「SBE6.5−β−CD」と呼ばれる。第2の例として、スルホブチルエーテル基及びヒドロキシプロピル基の両方で誘導体化されたシクロデキストリン分子を含むβ−シクロデキストリン組成物は、「SBE4.2−HP2.5−β−CD」と呼ばれ、ここで、スルホブチルエーテル基のADSは4.2であり、ヒドロキシプロピル基のADSは2.5である。
【0048】
本発明での使用に適したシクロデキストリン誘導体は、−H、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基、及び場合により置換される直鎖又は分枝鎖C1−C6基より独立して選択される置換基(式I及びIIにおいて、それぞれ、R1〜R9及びR)を有するシクロデキストリン組成物を含む。
【0049】
ある実施態様において、式IのR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つは、直鎖C4−(アルキレン)−SO3-基で置換されている。本発明での使用に適した例示的なC1−C8−(アルキレン)−SO3-基としては、スルホエチル、スルホプロピル、1−メチル−スルホプロピル、スルホブチル、1−メチル−スルホブチル、2−メチル−スルホブチル、1−メチル−スルホブタ−3−イル、2−エチル−スルホブチル、3−エチル−スルホブチル、スルホペンチル、1−スルホペンタ−3−イル、スルホヘキシル、スルホヘプチル、スルホオクチルなど、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
ある実施態様において、式IのR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、独立して、シクロデキストリン誘導体1個当たり4〜8、4〜7.5、4〜7、4〜6.5、4.5〜8、4.5〜7.5、4.5〜7、5〜8、5〜7.5、5〜7、5.5〜8、5.5〜7.5、5.5〜7、5.5〜6.5、6〜8、6 7.5、6〜7.1、6.5〜7、約6.5、又は約7のADSを有する直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基であり、残りの置換基は−Hである。
【0051】
ある実施態様において、置換基は、場合により置換される直鎖又は分枝鎖C1−C6基である。本明細書において使用される場合、「置換される」は、以下より選択される1つ又はそれ以上の任意の置換基を指す:ハロゲン(即ち、−F、−Cl、−Br、−I)、−NO2、−C≡N、−OR22、−SR22、−SO222、−C(=O)OR22、−C(=O)R22、−C(=O)N(R222、−SO2N(R222、−SO2N(H)C(=O)R22、−SO2N(H)C(=O)OR22(式中、R22はHではない)、−N(R222、−N(R22)SO222、−N(R22)C(O)m22(式中、m=1又は2)、−N(R22)C(O)N(R222、−N(R22)SO2N(R222、−O−C(=O)R22、−O−C(=O)OR22、−O−C(=O)N(R222、−C(=O)N(H)SO2N(R222、−C(=O)N(H)SO222、オキソ(又はケト、即ち、=O)、チオキソ(即ち、=S)、イミノ(即ち、=NR22)、−NR22−C(=NR22)R22、−NR22−C(=NR22)N(R222、−C(=NR22)N(R222、−O−C(=NR22)N(R222、−O−C(=NR22)R22、−C(=NR22)R22、−C(=NR22)OR22、及びそれらのイオン形態(例えば、−N+(R222-など、式中、X−は薬学的に許容されるアニオンである)、式中、R22は、独立して、各出現で、H及びC1−C4アルキルより選択される。
【0052】
例示的な置換される直鎖又は分枝鎖C1−C6基としては、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピル、3−オキソブチル、及び2−エトキシ−エチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
ある実施態様において、式IのR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つは、ヒドロキシ置換C3基である。ある実施態様において、シクロデキストリン誘導体は、1〜8、2〜8、3〜7、4〜7.5、4.3〜7.5、約1、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.3、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、又は約7.5のADSを有するヒドロキシ置換C3基を含むβ−シクロデキストリンを含む。
【0054】
本発明での使用に適している、例示的なシクロデキストリン組成物、及びその製造方法としてはまた、米国特許第5,134,127号、第5,241,059号、第5,376,645号、第5,874,418号、第6,046,177号、第6,133,248号、第6,153,746号、第6,204,256号、第7,034,013号、第7,629,331号、及び第7,635,773号、米国公開第2009/0012042号、及びPCT公開第WO 2005/117911号に記載されるものが挙げられ、これらの各々の内容は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0055】
ある実施態様において、シクロデキストリン誘導体は、式IIの化合物である:
【化12】

式中、R=(H)21-x又は(−(CH24−SO3-Na+x。ある実施態様において、
x=6.0〜7.1。ある実施態様において、式IIのシクロデキストリン誘導体は、約2163g/molの平均分子量を有する。
【0056】
ある実施態様において、シクロデキストリン誘導体は、約7のADSを有するスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンである(例えば、カプチゾル(CAPTISOL)(登録商標)、CyDex Pharmaceuticals,Inc.,Lenexa,KS)。カプチゾル(登録商標)シクロデキストリンは、ブチルエーテルスペーサー基又はスルホブチルエーテル(SBE)によって親油性シクロデキストリン空洞から分離されたスルホン酸ナトリウム塩を有するポリアニオン性β−シクロデキストリン誘導体である。カプチゾル(登録商標)シクロデキストリンは、非経口的に、経口的に、又は吸入を介して投与される場合、安全であることが示され、β−シクロデキストリンに関連する腎毒性を示さない。β−シクロデキストリンと比べて、カプチゾル(登録商標)スルホアルキルエーテルシクロデキストリンは、同等の又はより高い錯体形成特性と、50倍の改善である、100mL当たり90gを超える優れた水溶性とを提供する。メルファランは、カプチゾル(登録商標)と低結合親和性を有する(Ka=3×102-1)。
【0057】
ある実施態様において、シクロデキストリン誘導体は、薬学的に許容されるアニオン又はカチオンと共に場合により塩を形成し得るイオン性基を有する置換基を含む。本発明の負に帯電したシクロデキストリン誘導体と共に塩を形成するために好適な薬学的に許容されるカチオンとしては、H+、Li+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、アンモニウム及びアミンカチオン、例えば、(C1−C6)−アルキルアミン、(C4−C8)−シクロアルキルアミン(例えば、ピペリジン、ピラジンなど)、(C1−C6)−アルカノールアミン、及び(C4−C8)−シクロアルカノールアミンなどのカチオン、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。ある実施態様において、薬学的に許容されるカチオンはNa+である。本発明の正に帯電したシクロデキストリン誘導体と共に塩を形成するために好適な薬学的に許容されるアニオンとしては、ハロゲン化物(例えば、Cl-など)、(C1−C6)−アルキル酸(例えば、酢酸、シュウ酸、フマル酸、コハク酸など)のアニオン、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
薬学的組成物及び単位投薬形態
本発明は、メルファラン及びシクロデキストリン誘導体を含む薬学的組成物及び単位投薬形態に関する。本発明の薬学的組成物は、対象への非経口投与に適している。薬学的組成物の非経口投与としては、注射が挙げられ得るが、これに限定されない。非経口投与は、汚染物質に対する対象の自然防御を回避するので、薬学的組成物は、無菌であるか、又は投与前に滅菌することができる。
【0059】
例示的な薬学的組成物としては、投与の準備ができている液剤、懸濁剤又は乳剤、薬学的に許容されるビヒクルに溶解される及び/又はこれで希釈される準備ができている液剤、懸濁剤又は乳剤、並びに薬学的に許容されるビヒクルに溶解される及び/又はこれで希釈される準備ができている乾燥プロダクトが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
一般的に、本発明の薬学的組成物は、メルファランでの治療を受け入れる状態を治療するために適した濃度でメルファランを含む。従って、本発明の薬学的組成物は、その必要がある対象への投与のための治療有効量のメルファランを含む単位投薬形態を作製するために使用され得る。ある実施態様において、本発明は、希釈無しでの投与に適している濃度でメルファランを含む単位投薬形態に関する。あるいは、本発明の単位投薬形態は、その必要がある対象への投与前に希釈され得る。
【0061】
本発明はまた、塩酸塩としてのメルファラン25mg〜125mg、25mg〜100mg、25mg〜75mg、25mg〜50mg、50mg〜125mg、50mg〜100mg、75〜125mg、100〜125mg、約25mg、約50mg、約75mg、約100mg、又は約125mg、任意の緩衝剤、及び式Iのシクロデキストリン誘導体を含む薬学的組成物に関し:
【化13】

式中、nは4、5又は6であり;式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、独立して、−H、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基、又は場合により置換される直鎖又は分枝鎖C1−C6基であり;式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つは、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基であり;ここで、薬学的組成物は、約4〜約6、約4〜約5、約4.5〜約6、約5〜約6、約5.5〜約6、約4、約4.5、約5、約5.5、又は約6のpHを有し;ここで、水溶液での薬学的組成物の希釈は、メルファランが、希釈後、5時間以内で約25℃で2%以下、又は10時間以内で約25℃で4%又はそれ未満分解する溶液を提供し;ここで、シクロデキストリン誘導体は、メルファランに対して50:1〜100:1、55:1〜60:1、約50:1、約55:1、又は約60:1(w/w)の比で存在する。
【0062】
本発明はまた、塩酸塩としてのメルファラン150mg〜300mg、150mg〜250mg、150mg〜225mg、175mg〜250mg、200mg〜250mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、又は約250mg、任意の緩衝剤、及び式Iのシクロデキストリン誘導体を含む薬学的組成物に関し:
【化14】

式中、nは4、5又は6であり;式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、独立して、−H、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基、又は場合により置換される直鎖又は分枝鎖C1−C6基であり;式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つは、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基であり;ここで、薬学的組成物は約4〜約6のpHを有し;ここで、水溶液での薬学的組成物の希釈は、メルファランが、希釈後、5時間以内で約25℃で2%以下、又は10時間以内で約25℃で4%又はそれ未満分解するメルファラン溶液を提供し;ここで、シクロデキストリン誘導体は、メルファランに対して25:1〜35:1、又は約27:1、約30:1、若しくは約32:1(w/w)の比で存在する。
【0063】
ある実施態様において、シクロデキストリン誘導体は、式IIの化合物:
【化15】

式中、R=(H)21-x又は(−(CH24−SO3-Na+x、x=6.0〜7.1
である。
【0064】
ある実施態様において、シクロデキストリン誘導体は、式IIの化合物:
【化16】

式中、R=(H)21-x又は(−(CH24−SO3-Na+x、x=6.0〜7.1
であり;かつ
薬学的組成物は、塩酸塩としてのメルファラン約50mgを含み、シクロデキストリン誘導体は、メルファランに対して50:1〜100:1、55:1〜60:1、約50:1、約55:1、又は約60:1(w/w)の濃度で存在し;又は
薬学的組成物は、塩酸塩としてのメルファラン約200mgを含み、シクロデキストリン誘導体は、メルファランに対して25:1〜35:1、又は約27:1、約30:1、若しくは約32:1(w/w)の比で存在する。
【0065】
無菌の液剤、懸濁剤、乳剤などは、本明細書に列挙される他の任意の成分と共に好適な溶媒又は担体中へメルファランを混合し、続いて滅菌することによって、作製され得る。無菌散剤は、任意の追加の賦形剤と共にメルファランを含む乾燥固体(例えば、散剤)を提供するために、無菌の液剤、懸濁剤、又は乳剤を噴霧乾燥、無菌噴霧乾燥、真空乾燥、又は凍結乾燥することによって、作製され得る。
【0066】
ある実施態様において、本発明は、塩酸塩としてのメルファラン約50mgと、約10mLの体積への生理食塩液での希釈で約4〜約6のpHを提供するための十分な量の酸、塩基、又はその組み合わせと、式IIのシクロデキストリン誘導体とからなる固体薬学的組成物に関し:
【化17】

式中、R=(H)21-x又は(−(CH24−SO3-Na+x、x=6.0〜7.1;ここで、水溶液での固体薬学的組成物の希釈は、メルファランが、希釈後、5時間以内で約25℃で2%以下、又は10時間以内で約25℃で4%又はそれ未満分解するメルファラン溶液を提供し;ここで、シクロデキストリン誘導体は、メルファランに対して約55:1(w/w)の比で存在する。
【0067】
ある実施態様において、本発明は、塩酸塩としてのメルファラン約200mgと、約20mLの体積への生理食塩液での希釈で約4〜約6のpHを提供するための十分な量の酸、塩基、又はその組み合わせと、式IIのシクロデキストリン誘導体とからなる固体薬学的組成物に関し:
【化18】

式中、R=(H)21-x又は(−(CH24−SO3-Na+x、x=6.0〜7.1;ここで、水溶液での固体薬学的組成物の希釈は、メルファランが、希釈後、5時間以内で約25℃で2%以下、又は10時間以内で約25℃で4%又はそれ未満分解するメルファラン溶液を提供し;ここで、シクロデキストリン誘導体は、メルファランに対して約27:1、約30:1、又は約32:1(w/w)の比で存在する。
【0068】
ある実施態様において、本発明の薬学的組成物又は単位投薬形態は、対象への投与前に液体担体又は希釈剤で希釈される固体(例えば、散剤)又は溶液を含む。従って、本発明の薬学的組成物及び単位投薬形態としては、無菌の液剤、懸濁剤又はディスパージョンを提供するために即席で希釈又は可溶化され得る、メルファランを含む無菌の水性液剤、懸濁剤及びディスパージョン、並びに無菌固体(例えば、散剤)が挙げられる。
【0069】
ある実施態様において、本発明の組成物、製剤及び/又は単位投薬形態は、薬学的に許容される賦形剤を含む。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される」は、
正しい医学的判断の範囲内で、合理的なベネフィット/リスク比に見合った、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の可能性のある合併症を伴わない、ヒト及び動物の組織との接触に適している、賦形剤、化合物、材料、及び/又は組成物を指す。
【0070】
ある実施態様において、本発明の薬学的組成物及び単位投薬形態は、実質的に均質である。本明細書において使用される場合、「均質な」は、全体にわたって成分の均一分布を有する、本発明の混合物、溶液、懸濁液、組成物、投薬形態、及び/又は製剤に言及する。均質性は、一様性と同義であり、サンプル内一様性、バッチ間一様性、実行間一様性、及び/又は投薬形態間一様性を指し得る。例えば、サンプル、混合物、又は組成物の第1部分を分析し、これを同一のサンプル、混合物、又は組成物の第2部分と比較することによって、サンプル内一様性は測定され得る。実質的に均質な組成物の組成の典型的な偏差(例えば、賦形剤の質量パーセンテージの変動など)は、約5%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下、又は実験誤差内である。
【0071】
ある実施態様において、本発明の薬学的組成物又は単位投薬形態は、薬学的に許容される賦形剤を含む。本明細書において使用される場合、用語「賦形剤」は、薬学的組成物を作製するためにメルファラン及びスルホアルキルエーテルシクロデキストリンと混合され得る不活性物質を指す。
【0072】
本発明での使用に適した薬学的に許容される賦形剤としては、担体、水溶性ポリマー、保存剤、抗酸化剤、pH調整剤(例えば、酸性化剤、アルカリ化剤、及び/又は緩衝剤)、充填剤、錯体形成促進剤、凍結防止剤、密度調整剤、電解質、矯味矯臭剤、フラグランス、凍結乾燥助剤(例えば、充填剤及び/又は安定化剤)、可塑剤、溶解促進剤、安定化剤、甘味剤、表面張力調整剤、揮発性調節剤、粘度調整剤、及びそれらの併発が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、当業者は、The Handbook of Pharmaceutical Excipients,5th Ed.,The Pharmaceutical Press and American Pharmacists Association,London,UK and Washington,DC(2006)に列挙されるものを含む薬学的に許容される賦形剤が、本発明において使用され得ることを認識し、これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0073】
ある実施態様において、本発明の薬学的組成物又は単位投薬形態は、薬学的に許容される担体を含む。本明細書において使用される場合、「担体」は、本発明の薬学的組成物又は単位投薬形態を運ぶ及び/又は希釈するために適したビヒクルを指す。本発明での使用に適した薬学的に許容される担体としては、液体、固体、コロイド、ゲル、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明での使用に適した液体担体としては、溶媒、液体分散媒など、例えば、しかしこれらに限定されないが、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリルエステル、及びそれらの組み合わせが挙げられる。ある実施態様において、液体担体は、デキストロース溶液、生理食塩液、血漿、及び乳酸リンゲル液より選択される。
【0074】
ある実施態様において、本発明の薬学的組成物又は単位投薬形態は、水溶性ポリマー、例えば、しかしこれらに限定されないが、N−ポリビニルピロリドンのホモポリマー(例えば、「ポビドン」)、低分子量ヒドロキシプロピルセルロース、低分子量メチルセルロース、低分子量ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど、及びそれらの組み合わせを含む。
【0075】
ある実施態様において、希釈後、シクロデキストリン誘導体は、約75mM、約100mM、又は約125mMの濃度で、希釈された薬学的組成物中に存在する。
【0076】
ある実施態様において、希釈後、メルファランは、0.1mg/mL〜50mg/mL、0.15mg/mL〜40mg/mL、0.2mg/mL〜30mg/mL、0.3mg/mL〜25mg/mL、0.4mg/mL〜20mg/mL、0.45mg/mL〜15mg/mL、0.5mg/mL〜10mg/mL、約0.45mg/mL、約1mg/mL、約1.5mg/mL、約2mg/mL、約2.5mg/mL、又は約5mg/mLの濃度で、希釈された薬学的組成物中に存在する。
【0077】
ある実施態様において、本発明の組成物での使用のための希釈剤及び/又は薬学的組成物は、可溶化剤、例えば、しかしこれらに限定されないが、水、アルコール(例えば、エタノールなど)、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリルエステル、及びそれらの組み合わせを含まない。従って、ある実施態様において、希釈剤は、水及び任意の張度調節剤から本質的になる(例えば、注射用の0.9%生理食塩液など)。
【0078】
ある実施態様において、薬学的組成物又は単位投薬形態のpHは制御される。ある実施態様において、本発明の薬学的組成物又は単位投薬形態は、薬学的に許容される緩衝剤及び/又はpH調整剤(例えば、酸性化剤及び/又はアルカリ化剤)を含む。ある実施態様において、本発明の薬学的組成物又は単位投薬形態は、水性希釈剤での希釈後、約4〜約6、約4〜約5、約5〜約6、約4、約5、約5.5、又は約6のpHを有する。
【0079】
ある実施態様において、対象への投与前に希釈される薬学的組成物又は単位投薬形態は、約2〜約6、約3〜約6、約4〜約6、又は約5〜約6のpHを有する。ある実施態様において、(例えば、液体担体での)希釈後、本発明の単位投薬形態は、その必要がある対象への投与時に、約4〜約6、約4〜約5、約5〜約6、約4、約4.5、約5、約5.5、又は約6のpHを有する。
【0080】
ある実施態様において、本発明の薬学的組成物又は単位投薬形態は、緩衝剤を含む。ある実施態様において、本発明の薬学的組成物又は単位投薬形態は、約4〜約6、約4〜約5、約5〜約6、約4、約4.5、約5、約5.5、又は約6のpHを有する希釈組成物を提供するために適した緩衝剤を含む。ある実施態様において、緩衝剤は、約0.01M〜約10M、約0.01M〜約5M、又は約0.01M〜約1Mの濃度で存在する。
【0081】
ある実施態様において、本発明の薬学的組成物又は単位投薬形態は、pH調整剤、例えば、これらに限定されないが、酸性化剤(例えば、クエン酸、HClなど)、アルカリ化剤(例えば、NaOHなど)、酸の塩形態(例えば、クエン酸ナトリウムなど)、及びそれらの組み合わせを含む。ある実施態様において、本発明の薬学的組成物又は単位投薬形態は、約4〜約6、約4〜約5、約5〜約6、約4、約4.5、約5、約5.5、又は約6のpHを有する希釈組成物を提供するために十分な量でpH調整剤を含む。ある実施態様において、本発明の薬学的組成物又は単位投薬形態は、クエン酸ナトリウムを50mg〜500mg、75mg〜400mg、100mg〜300mg、150mg〜250mg、又は約200mgの量で含む。
【0082】
ある実施態様において、本発明の薬学的組成物又は単位投薬形態は、第2治療剤を含む。好適な第2治療剤としては、白金化合物、代謝拮抗物質、ニトロソ尿素、コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、細胞傷害性抗生物質、インターフェロン、オピオイド、抗ヒスタミン薬、増量剤(volume expander)、昇圧薬、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる第2治療剤としては、ドキソルビシン、ボルテゾミブ、リツキシマブ、サリドマイド、レナリドマイド、ゲムシタビン、チオテパ、フルダラビン、カルムスチン、エトポシド、シタラビン、顆粒球コロニー刺激因子、ADH−1、トポテカン、パリフェルミン、プレドニゾン、三酸化ヒ素、アスコルビン酸、ブスルファン、ブチオニンスルホキシミン、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
本明細書において使用される場合、「単位投薬形態」は、その全部が単回投与で対象へ投与されるように意図される、特定量のメルファランを含有する組成物を指す。単位投薬形態は、そこから単位用量が量り分けられる、薬学的組成物の反復投与量の供給源、例えば、薬瓶とは区別され得る。
【0084】
ある実施態様において、本発明の単位投薬形態は、治療有効量のメルファランを含む。本明細書において使用される場合、「治療有効量」は、治療される疾患又は障害の症状の軽減を含む、研究者、獣医、医師又は他の臨床医によって求められる組織、系、動物又はヒトにおける生物学的反応又は薬効反応を誘発するメルファランの量を指す。
【0085】
単位投薬形態は、本発明の薬学的組成物、及び場合により、1つ又はそれ以上の薬学的に許容される賦形剤を典型的に含み、ここで、単位投薬形態中に存在するメルファランの量は、その必要がある対象への単回投与に十分である。本発明の単位投薬形態としては、液体の液剤、液体の懸濁剤、液体のディスパージョン、乳剤、ゲル剤、散剤、錠剤、カプセル剤、カプレット剤などが挙げられるが、これらに限定されない。メルファランでの治療に従順である疾患又は状態の治療は、本発明の単位投薬形態の周期的な投与、例えば、2週毎に1回、4週毎に1回、又はある他の間隔を含み得る。
【0086】
ある実施態様において、本発明の単位投薬形態は、塩酸塩としてのメルファラン25mg〜125mg又は150mg〜250mgを含む。ある実施態様において、本発明の単位投薬形態は、塩酸塩としてのメルファラン50mg又は200mgを含む。
【0087】
ある実施態様において、本発明の単位投薬形態は固体である。ある実施態様において、本発明の固体単位投薬形態は、凍結乾燥固体又は無菌噴霧乾燥固体である。ある実施態様において、本発明の投薬形態は、所定量の液体担体での希釈及び/又は再構成に適している。例えば、本発明の単位投薬形態(例えば、液体又は固体)は、液体担体5mL〜500mL、10mL〜100mL、又は10mL〜50mLで希釈され得る。
【0088】
本発明の薬学的組成物及び単位投薬形態は、安定している。本明細書において使用される場合、安定性は、希釈されていない固体又は液体投薬形態の貯蔵寿命、又は希釈された液体投薬形態の分解に対する耐性のいずれかを指し得る。特に、静脈内投与に適した現在入手可能なメルファラン組成物は、水溶液中でのメルファランの急速な分解に起因して、希釈後、可能な限り早く使用されなければならない。しかし、本発明の投薬形態は、希釈後かなりの時間の間、例えば、少なくとも90分から少なくとも48時間まで又はそれ以上、安定している。従って、固体又は液体単位投薬形態が希釈される実施態様において、希釈は、投与直前に、又は治療効力の著しい低下を伴わない投与前のいつかに、行われ得る。これは、本発明の液体薬学的組成物又は液体単位投薬形態が、使用より90分〜48時間前に(即ち、その必要がある対象への非経口投与より前に)希釈されることを可能にする。
【0089】
ある実施態様において、本発明の薬学的組成物中のメルファランは、約75mM又は約125mMの濃度でシクロデキストリン誘導体を含む希釈組成物を提供するための水性希釈剤での希釈後、5時間以内で約25℃で2%以下、又は10時間以内で約25℃で4%又はそれ未満分解する。
【0090】
水溶液中のメルファランの一次分解産物は、メルファランモノヒドロキシド(モノヒドロキシメルファランとしても公知)であり、これは、加水分解反応によって進行する。例えば、S.A.Stout et al.,Int.J.Pharm.24:193(1985)を参照のこと。ある実施態様において、本発明の薬学的組成物の希釈は、希釈組成物が室温(約25℃)で維持される場合、希釈の5時間以内で2%以下のメルファランモノヒドロキシド濃度(メルファランの100%初期濃度に基づく)を提供する。ある実施態様において、本発明の薬学的組成物の希釈は、希釈組成物が室温(約25℃)で維持される場合、希釈の10時間以内で4%以下のメルファランモノヒドロキシド濃度(メルファランの100%初期濃度に基づく)を提供する。ある実施態様において、本発明の薬学的組成物の希釈は、希釈組成物が約10℃以下の温度で維持される場合、希釈の24時間以内で2%以下、又は希釈の48時間以内で4%以下のメルファランモノヒドロキシド濃度(メルファランの100%初期濃度に基づく)を提供する。
【0091】
さらに、本発明の薬学的組成物は、メルファランが著しく低下することなく、希釈前に長期間保存することができる。例えば、メルファラン及びシクロデキストリン誘導体を含む固体薬学的組成物は、25℃で少なくとも2年間の保存後メルファラン分解物(degradant)を2質量%以下、25℃で少なくとも3年間の保存後メルファラン分解物を5質量%以下含有する。
【0092】
ある実施態様において、本発明のドライパウダー薬学的組成物は、室温で2年間の保存後、2%以下のメルファランモノヒドロキシド(メルファランの100%初期濃度に基づく)を形成する。
【0093】
薬学的キット
本発明はまた、塩酸塩としてのメルファラン25mg〜125mg及び任意の水溶性ポリマーを含む第1の容器と、水性希釈剤、任意の緩衝剤、及び式Iのシクロデキストリン誘導体を含む第2の容器とを含む薬学的キットに関し:
【化19】

式中、nは4、5又は6であり;式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、独立して、−H、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基、又は場合により置換される直鎖又は分枝鎖C1−C6基であり;式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つは、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基であり;ここで、シクロデキストリン誘導体は、メルファランに対して少なくとも50:1(w/w)の濃度で第2の容器中に存在し;ここで、第1の容器及び第2の容器を合わせることが、希釈後5時間以内で約25℃で2%又はそれ未満分解する約4〜約6のpHを有する希釈薬学的組成物を提供する。
【0094】
本発明はまた、塩酸塩としてのメルファラン150mg〜250mg及び任意の水溶性ポリマーを含む第1の容器と、水性希釈剤、任意の緩衝剤、及び式Iのシクロデキストリン誘導体を含む第2の容器とを含む薬学的キットに関し:
【化20】

式中、nは4、5又は6であり;式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、独立して、−H、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基、又は場合により置換される直鎖又は分枝鎖C1−C6基であり;式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つは、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基であり;ここで、シクロデキストリン誘導体は、メルファランに対して25:1〜35:1(w/w)の濃度で第2の容器中に存在し;ここで、第1の容器及び第2の容器を合わせることが、希釈後5時間以内で約25℃で2%又はそれ未満分解する約4〜約6のpHを有する希釈薬学的組成物を提供する。
【0095】
あるいは、第1の容器は、メルファラン(上述の量)及びシクロデキストリン誘導体(上述の通り)、任意の水溶性ポリマー(例えば、ポビドンなど)、及び任意のpH調整剤を含み;第2の容器は、希釈剤(例えば、水、生理食塩液など)、任意の張度調節剤、及び任意のpH調整剤を含む。
【0096】
本発明のキットでの容器としての使用に適した材料としては、ガラス(例えば、ホウケイ酸ガラス、アンバーガラスなど)、プラスチック(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリスチレン、ポリカーボネートなど、及びそれらの組み合わせ)、金属(例えば、ホイル)など、及びそれらの組み合わせ(例えば、プラスチックコーティングされたガラス及び/又は金属)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
本発明の薬学的キットでの使用に適した容器としては、バイアル、ボトル、サシェなどが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、裂く、切断する、ねじ蓋を取り除く、栓を取り除く、突き刺す、搾るなど、及びそれらの組み合わせによって、容器が開かれ得る及び/又は内容物がそこから取り出され得る。
【0098】
ある実施態様において、第1の容器は、ポビドンを10mg〜30mg、15mg〜25mg、又は約20mgの量で含む。ある実施態様において、第2の容器は、第1の容器及び第2の容器を合わせると約4〜約6のpHを提供するために十分な濃度でpH調整剤(例えば、酸性化剤、アルカリ化剤、及び/又は緩衝剤)を含む。ある実施態様において、第2の容器は、クエン酸ナトリウムを50mg〜500mg、75mg〜400mg、100mg〜300mg、150mg〜250mg、又は約200mgの量で含む。
【0099】
ある実施態様において、第2の容器中に存在するシクロデキストリン誘導体は、式IIの化合物であり:
【化21】

式中、R=(H)21-x又は(−(CH24−SO3-Na+x、x=6.0〜7.1;ここで、第1の容器は、塩酸塩としてのメルファラン約200mgを含み;ここで、シクロデキストリン誘導体は、メルファランに対して約27:1、約30:1、又は約32:1(w/w)の量で第2の容器中に存在する。
【0100】
投与及び治療の方法
ある実施態様において、本発明は、その必要がある対象へ本発明の薬学的組成物又は単位投薬形態を投与する工程を含む、その必要がある対象へメルファランを送達する方法に関する。本発明の方法は、本発明の薬学的組成物又は単位投薬形態の非経口投与を含む。
【0101】
ある実施態様において、薬学的組成物又は単位投薬形態(又はその希釈形態)は、静脈内投与される。静脈内投与としては、ボーラス注射、静脈内注入、四肢灌流、正常体温四肢分離注入、経皮的肝灌流など、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物の投与はまた、カニューレ、中心静脈ライン(central line)、末梢穿刺中心静脈カテーテルラインなどを使用する点滴ライン及び/又は注射によって行われ得る。
【0102】
ある実施態様において、本発明の薬学的組成物は、15分〜6時間、30分〜4時間、45分〜3時間、1時間〜2時間、約15分、約30分、約45分、約1時間、約1.5時間、約2時間、約2.5時間、約3時間、約4時間、約5時間、又は約6時間の継続時間の間、注入物として投与される。
【0103】
ある実施態様において、本発明は、1つ又はそれ以上の理由のためにメルファランの経口組成物が適していない対象へ本発明の薬学的組成物又は単位投薬形態を非経口投与することに関する。例えば、対象が、若すぎる、嚥下することができない、手術を受けている、無能力である、又は経口経路によって投与されたメルファランの吸収を遮断する疾患を有する場合があるために、メルファランの経口組成物が適切でない場合がある。さらに、本発明の薬学的組成物の非経口投与は、メルファランのインビボ濃度の急速な増加が必要とされる、対象における状態を治療するために有用である。
【0104】
ある実施態様において、本発明は、ヒト対象へ本発明の薬学的組成物及び又は単位投薬形態を投与することによって、ヒト対象における疾患を治療及び又は予防する方法に関する。ある実施態様において、本発明は、対象へ薬学的組成物又は単位投薬形態を投与する工程を含む、メルファランでの治療に従順である疾患又は障害に罹患している対象を治療する方法に関する。本明細書において使用される場合、用語「治療する」、「治療すること」及び「治療」は、症状の発生を予防するために疾患状態/病態の臨床症状の発症前に本発明の組成物を投与すること、並びに疾患状態/病態のこのような症状、局面又は特性を減少させる又は除去するために疾患状態/病態の1つ又はそれ以上の臨床症状の発症後に組成物を投与することを指す。このような治療は、有用であるために絶対的である必要はない。さらに、用語「治療する」及び「治療」は、治療的処置及び予防的な、維持又は予防的手段の両方を指し、ここで、目的は、望ましくない生理学的状態、障害又は疾患を予防する又は減速させる(減らす)ことか、又は有利な又は望ましい臨床結果を得ることである。本発明の目的のために、有利な又は望ましい臨床結果としては、症状又は徴候の軽減;病態、障害又は疾患の程度の減少;病態、障害又は疾患の状態の安定化(即ち、悪化しないこと);病態、障害又は疾患進行の遅延又は発症の延期;検出可能又は検出不可能に関わらず、病態、障害又は疾患状態の改善、寛解(部分的又は全体的にかかわらない);又は、病態、障害又は疾患の改善又は向上が挙げられるが、これらに限定されない。治療は、過度のレベルの副作用を伴わずに、臨床的に顕著な反応を誘発することを含む。治療はまた、治療を受けない場合に予想される生存と比較して生存を延長することを含む。
【0105】
本明細書において使用される場合、用語「対象」は、ヒト及び非ヒト、例えば、これらに限定されないが、家畜、動物園の動物、競技用の動物、及びペット(例えば、ネコ、イヌ、マウス、モルモット、ウマ、ウシ、及びヒツジ)を含む、哺乳動物などの温血動物を指す。ある実施態様において、対象はヒト対象である。本発明の薬学的組成物及び単位投薬形態の投与に適したヒト対象としては、小児、成人、及び老年対象が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のある実施態様において、対象は小児の対象である。例えば、米国食品医薬品局によれば、「小児」対象は、21歳までであり、新生児(出生〜約1ヶ月)、幼児(約1ヶ月〜約2歳)、児童(約2〜約12歳)及び青年(約12〜約21歳)を含む。Guidance for Industry and FDA Staff, Premarket Assessment of Pediatric Medical Devices, U.S. Dept. of Health and Human Services, Food and Drug Administration, Center for Devices and Radiological Health, and Center for Biologics Evaluation and Research(May 14,2004)を参照のこと。本発明のある実施態様において、対象は成人である。本明細書において使用される場合、「成人」対象は18歳以上である。ある実施態様において、対象は、約50歳以上の成人である。本発明のある実施態様において、対象は老年である。老年対象は、少なくとも約65歳である。ある実施態様において、対象は約70歳以上である。
【0106】
ある実施態様において、対象は、これらに限定されないが、先天性欠損症、免疫不全症、複合免疫不全症、重症複合免疫不全症、不完全な幹細胞を伴う先天性好中球減少症、再生不良性貧血、及びそれらの併発などの障害に罹患する小児の対象である。
【0107】
ある実施態様において、対象は、骨髄非破壊的処置を受ける予定である老年対象である。
【0108】
ある実施態様において、本発明は、対象へ有効量(即ち、治療有効量)の本発明の組成物を投与する工程を含む、メルファランでの治療に従順である状態を有するか又はこれを発症する危険性がある対象を治療するためのを含む。メルファランでの治療に従順である状態としては、新生物疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
ある実施態様において、メルファランでの治療に従順である状態を有するか又はこれを発症する危険性がある対象への投与のための治療有効量は、塩酸塩としてのメルファラン25mg〜125mg、40mg〜110mg、40mg〜75mg、40mg〜60mg、約40mg、約50mg、約60mg、約75mg、又は約100mgである。本発明の方法はまた、治療的に有効なメルファラン投薬量を提供するために最初のメルファラン用量から上方へ又は下方へ用量設定する工程を含む。治療有効用量は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、10回、12回、又は必要に応じてそれ以上投与され得る。
【0110】
ある実施態様において、本発明は、幹細胞移植に治療応答性である疾患、障害又は状態を治療する方法に関し、該方法は、その必要がある対象へ本発明の薬学的組成物又は単位投薬形態を投与する工程、続いて対象が幹細胞移植を受ける工程を含む。
【0111】
ある実施態様において、本発明の方法は、以下より選択される障害に罹患する対象へ薬学的組成物又は単位投薬形態(又はその希釈形態)を投与する工程を含む:骨髄腫、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、悪性黒色腫、転移性黒色腫(例えば、転移性眼内黒色腫、転移性皮膚黒色腫など)、乳がん、卵巣がん、精巣がん、進行性前立腺がん、骨髄異形成症候群、神経内分泌がん(例えば、転移性神経内分泌腫瘍など)、転移性腺がん、肝細胞がん、骨原性肉腫、真性多血症、形質細胞新生物、アミロイドーシス、硬化性粘液水腫、及びそれらの併発。
【0112】
ある実施態様において、本発明の方法は、幹細胞移植(例えば、造血幹細胞移植)が適応とされている対象に薬学的組成物又は単位投薬形態(又はその希釈形態)を投与する工程を含む。ある実施態様において、幹細胞移植が適応とされている対象は、白血病、がん、非悪性疾患、及びそれらの併発より選択される疾患又は障害に罹患している。ある実施態様において、幹細胞移植が適応とされている対象は、骨髄腫、多発性骨髄腫、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(「NHL」)、白血病、急性骨髄性白血病(「AML」)、ホジキン病、急性リンパ芽球性白血病(「ALL」)、骨髄異形成症候群(「MDS」)、骨髄増殖性疾患(「MPD」)、慢性骨髄性白血病(「CML」)、神経芽腫、再生不良性貧血、慢性顆粒球性白血病、神経芽腫、鎌状赤血球症、骨原性肉腫、ユーイング肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、形質細胞新生物、アミロイドーシス、硬化性粘液水腫、及びそれらの併発より選択される疾患又は障害に罹患している。ある実施態様において、幹細胞移植が適応とされている対象は、化学療法での長期間の治療から利益を得ないと考えられるか、又は化学療法に対して既に抵抗性である対象である。
【0113】
従って、本発明の薬学的組成物及び単位投薬形態は、メルファランでの治療に従順である状態の治療、並びに、幹細胞移植を受けるためにその必要がある対象を前処置するための使用に有用である。
【0114】
投与される薬学的組成物の量は、望まれる治療について治療的に有効である。例えば、多発性骨髄腫の治療についての治療有効量は、投与されると、この障害に関連する1つ又はそれ以上の症状を減らす量を指す。
【0115】
ある実施態様において、本発明は、幹細胞移植を行うために対象を前処置する方法に関し、該方法は、対象へ有効量の本発明の薬学的組成物又は単位投薬を(例えば、静脈内に)投与する工程を含む。従って、本発明の薬学的組成物及び単位投薬形態は、幹細胞移植による治療に従順である状態に罹患する対象を治療するために有用である。本明細書において使用される場合、「幹細胞移植」は、自家及び/又は同種移植処置を含む。
【0116】
本発明の薬学的組成物は、幹細胞移植についての準備における「高強度」又は骨髄破壊的(myeloblative)前処置レジメンでの、又は幹細胞移植についての準備における「減量強度」前処置レジメンでの、メルファランの投与に適している。本明細書において使用される場合、「減量強度」前処置は、150mg/m2未満のメルファラン用量がいずれかの用量で対象へ投与される投薬を指す。ある実施態様において、本発明の薬学的組成物は、幹細胞移植による治療に従順である状態に罹患する50歳以上である対象へ投与される。
【0117】
ある実施態様において、メルファランは、幹細胞移植の必要がある対象へ、50mg/m2〜300mg/m2、50mg/m2〜250mg/m2、50mg/m2〜225mg/m2、50mg/m2〜200mg/m2、50mg/m2〜175mg/m2、50mg/m2〜150mg/m2、100mg/m2〜300mg/m2、100mg/m2〜250mg/m2、100mg/m2〜225mg/m2、100mg/m2〜200mg/m2、100mg/m2〜175mg/m2、100mg/m2〜150mg/m2、125mg/m2〜300mg/m2、125mg/m2〜250mg/m2、125mg/m2〜225mg/m2、125mg/m2〜200mg/m2、150mg/m2〜300mg/m2、150mg/m2〜250mg/m2、200mg/m2〜300mg/m2、200mg/m2〜250mg/m2、約50mg/m2、約100mg/m2、約125mg/m2、約150mg/m2、約175mg/m2、約200mg/m2、約250mg/m2、又は約300mg/m2の用量で投与される。
【0118】
ある実施態様において、投与は、4週間隔で投与される投薬量を含む。ある実施態様において、投薬量は、2回、3回、4回、5回、6回、8回、又は10回投与される。例えば、ある実施態様において、約100mg/m2の用量が、投与間が4週間隔で3回投与される。ある実施態様において、約200mg/m2の用量が、投与間が4週間隔で2回投与される。最終投与に続いて、幹細胞移植が行われ得る。
【0119】
本発明の薬学的組成物及び単位投薬形態は、単独で、又は他の薬剤又は薬学的組成物と共に、投与され得る。ある実施態様において、本発明の方法は、メルファラン以外のアルキル化剤、白金化合物、代謝拮抗物質、ニトロソ尿素、コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、細胞傷害性抗生物質、インターフェロン、オピオイド、抗ヒスタミン薬、増量剤(volume expander)、昇圧薬、及びそれらの組み合わせより選択される第2治療剤を対象へ投与する工程を含む。さらなる第2治療剤としては、シスプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、ボルテゾミブ、リツキシマブ、サリドマイド、レナリドマイド、ゲムシタビン、チオテパ、フルダラビン、カルムスチン、エトポシド、シタラビン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、ADH−1、トポテカン、パリフェルミン、プレドニゾン、三酸化ヒ素、アスコルビン酸、ブスルファン、シクロホスファミド、N,N’,N”−トリエチレンチオホスホルアミド、ブチオニンスルホキシミン、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。第2治療剤は、(メルファランに加えて)少なくとも1つのさらなる治療薬剤を含む本発明の薬学的組成物又は単位投薬形態で、又は別個の薬学的組成物又は単位投薬として、対象へ投与され得る。
【0120】
ある実施態様において、本発明の薬学的組成物及び/又は単位投薬形態は、他の治療活性薬剤の組み合わせ、例えば、これらに限定されないが、カルムスチン、エトポシド及びシタラビン;ブスルファン及びチオテパ;ドキソルビシン及びボルテゾミブ;三酸化ヒ素及びクエン酸;サリドマイド及びリツキシマブ;サリドマイド及びプレドニゾン;並びにブスルファン、フルダラビン及びG−CSFと共に投与される。
【0121】
ある実施態様において、本発明の薬学的組成物及び単位投薬形態は、メルファランのバイオアベイラビリティー、治療開始速度、及び/又は治療効力を増強し得る。従って、本発明はまた、その必要がある対象へ本発明の薬学的組成物又は単位投薬形態を経口又は非経口投与する工程を含む、その投与に続いてのメルファランの治療開始までの時間を短縮する方法に関し、ここで、経口又は非経口投与される組成物又は単位投薬によって提供されるメルファランの治療開始までの時間は、シクロデキストリン誘導体を除外しかつ等価用量のメルファランを含有する経口投与される参照組成物によって提供されるメルファランの治療開始までの時間よりも短い。ある実施態様において、本発明の薬学的組成物又は単位投薬形態の投与に続いてのメルファランの治療開始までの時間は、シクロデキストリン誘導体を除外しかつ等価用量のメルファランを含有する静脈内投与される参照組成物によって提供されるメルファランの治療開始までの時間と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%短縮される。
【0122】
ある実施態様において、本発明の投薬形態からのメルファランの溶解は、メルファラン及び/又はその代謝産物の、薬物動態パラメータ及び/又はインビボ濃度に関連し得る。メルファラン及びその代謝産物のインビボ濃度、並びにメルファランの活性形態に関連する薬物動態パラメータは、例えば、本発明の組成物を投与した後に対象の血漿をサンプリングすることによって測定され得る。測定され得る薬物動態パラメータとしては、AUC0-t、AUCt-∞、AUC0-∞、及びln(AUCLAST)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
本明細書において使用される場合、「AUC0-t」は、メルファラン投与後の濃度時間曲線下面積(即ち、時間に対する血漿中濃度のプロット)を指す。面積は、好都合なことに「台形公式」によって決定される:データポイントを直線セグメントによって連結し、垂線を横座標から各データポイントまで描き、このように構築された三角形及び台形の面積の合計を計算する。
【0124】
本明細書において使用される場合、「AUCt-∞」は、濃度時間曲線下面積を指し、ここで、最終濃度は、排出速度定数に基づいてベースラインへ外挿される。
【0125】
本明細書において使用される場合、「AUC0-∞」は、AUC0-t及びAUCt-∞についての濃度時間曲線下面積の合計を指す。
【0126】
本明細書において使用される場合、「ln(AUCLAST)」は、最後に測定された血漿中濃度をエンドポイントとして使用して、自然対数スケールに対して血漿中濃度をプロットすることによって決定される濃度時間曲線下面積を指す。
【0127】
本明細書において使用される場合、「IntraCV」は、サンプルセットの平均値によって割られたサンプルセット内の標準偏差である、イントラアッセイ変動係数を指し、結果はパーセンテージで報告される。
【0128】
ある実施態様において、本発明の組成物からのヒト対象におけるメルファランのバイオアベイラビリティーは、シクロデキストリン誘導体を欠く製剤(例えば、注射用アルケラン(登録商標)(GlaxoSmithKline)又は注射用メルファランHCl(Bioniche Pharma USA))からの等価用量のメルファランの投与で観察されるものよりも実質的に大きい。例えば、本発明の投薬形態は、同量のメルファランを含有しかつシクロデキストリン誘導体を欠くメルファラン製剤(例えば、注射用アルケラン(登録商標)(GlaxoSmithKline)又は注射用メルファランHCl(Bioniche Pharma USA))の対象への投与後に観察されるAUC0-t又はAUC0-∞よりも少なくとも20%又はそれ以上、少なくとも25%又はそれ以上、少なくとも30%又はそれ以上、少なくとも40%又はそれ以上、少なくとも50%又はそれ以上、少なくとも60%又はそれ以上、又は少なくとも70%又はそれ以上大きいAUC0-t又はAUC0-∞を有し得る。
【0129】
ある実施態様において、本発明の組成物からのメルファランのバイオアベイラビリティーは、シクロデキストリン誘導体を欠く製剤(例えば、注射用アルケラン(登録商標)(GlaxoSmithKline)又は注射用メルファランHCl(Bioniche Pharma USA))からの等価用量のメルファランの投与で観察されるものよりも大きい。例えば、本発明の投薬形態は、同量のメルファランを含有しかつシクロデキストリン誘導体を欠くメルファラン製剤(例えば、注射用アルケラン(登録商標)(GlaxoSmithKline)又は注射用メルファランHCl(Bioniche Pharma USA))の対象への投与後に観察されるAUC0-t又はAUC0-∞よりも少なくとも20%又はそれ以上、少なくとも25%又はそれ以上、少なくとも30%又はそれ以上、少なくとも40%又はそれ以上、少なくとも50%又はそれ以上、少なくとも60%又はそれ以上、又は少なくとも70%又はそれ以上大きいAUC0-t又はAUC0-∞を有し得る。ある実施態様において、本発明の組成物からのメルファランのAUC0-t又はAUC0-∞は、シクロデキストリン誘導体を欠く製剤(例えば、注射用アルケラン(登録商標)(GlaxoSmithKline)又は注射用メルファランHCl(Bioniche Pharma USA))からの等価用量のメルファランの投与で観察されるAUC0-t又はAUC0-∞よりも20%〜70%、20%〜60%、20%〜50%、30%〜70%、30%〜60%、30%〜50%、40%〜70%、40%〜60%、又は50%〜70%大きい。
【0130】
ある実施態様において、本発明の組成物からのメルファランの最大血漿中濃度(Cmax)は、シクロデキストリン誘導体を欠く製剤(例えば、注射用アルケラン(登録商標)(GlaxoSmithKline)又は注射用メルファランHCl(Bioniche Pharma USA))からの等価用量のメルファランの投与で観察されるCmaxよりも少なくとも20%又はそれ以上、少なくとも25%又はそれ以上、少なくとも30%又はそれ以上、少なくとも40%又はそれ以上、少なくとも50%又はそれ以上、少なくとも60%又はそれ以上、又は少なくとも70%又はそれ以上大きい。ある実施態様において、本発明の組成物からのメルファランの最大血漿中濃度(Cmax)は、シクロデキストリン誘導体を欠く製剤(例えば、注射用アルケラン(登録商標)(GlaxoSmithKline)又は注射用メルファランHCl(Bioniche Pharma USA))からの等価用量のメルファランの投与で観察されるCmaxよりも20%〜70%、20%〜60%、20%〜50%、30%〜70%、30%〜60%、30%〜50%、40%〜70%、40%〜60%、又は50%〜70%大きい。
【0131】
ある実施態様において、本発明の組成物からのメルファランの治療開始速度は、シクロデキストリン誘導体を欠く製剤(例えば、注射用アルケラン(登録商標)(GlaxoSmithKline)又は注射用メルファランHCl(Bioniche Pharma
USA))からの等価用量のメルファランの投与で観察されるものよりも速い。例えば、本発明の投薬形態は、シクロデキストリン誘導体を欠く製剤(例えば、注射用アルケラン(登録商標)(GlaxoSmithKline)又は注射用メルファランHCl(Bioniche Pharma USA))からの等価用量のメルファランの投与で観察されるtmaxよりも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、又は約30%速い、又は約35%速い、Cmaxまでの時間(即ち、tmax)を有する。ある実施態様において、本発明の投薬形態は、シクロデキストリン誘導体を欠く製剤(例えば、注射用アルケラン(登録商標)(GlaxoSmithKline)又は注射用メルファランHCl(Bioniche Pharma USA))からの等価用量のメルファランの投与で観察されるtmaxよりも5%〜35%、5%〜30%、5%〜25%、5%〜20%、10%〜35%、15%〜35%、20%〜35%、又は25%〜30%速い、Cmaxまでの時間(即ち、tmax)を有する。
【0132】
ある実施態様において、本発明の薬学的組成物は、シクロデキストリン誘導体無しで同様の用量のメルファランを非経口投与された患者と比較して、非経口投与後の患者において低下した割合の過敏症を提供する。
【0133】
ある実施態様において、本発明の薬学的組成物は、シクロデキストリン誘導体無しで同様の用量のメルファランを非経口投与された患者と比較して、非経口投与後の患者(例えば、白血球カウント<1,000/mL及び/又は血小板カウント<25,000を経験する患者)において低下した割合の重篤な骨髄毒性を提供する。
【0134】
ある実施態様において、本発明の薬学的組成物は、シクロデキストリン誘導体無しで同様の用量のメルファランを非経口投与された患者と比較して、非経口投与後の患者において低下した死亡率を提供する。
【0135】
本発明を一般的に説明したが、本明細書に提供される実施例を参照することによって、さらなる理解を得ることができる。これらの実施例は、例示目的のためにのみ提供され、限定的であるようには意図されない。
【実施例】
【0136】
実施例
実施例1
種々のpHでの及び種々のシクロデキストリン誘導体濃度での溶液中における遊離塩基メルファラン(Chemwerth,Woodbridge,CT)の溶解速度を調べた。手順は以下の通りであった:遊離塩基メルファランを、シクロデキストリン誘導体(SBE6.5−β−CD、カプチゾル(登録商標))を含有する溶液へ添加し、次いで、1〜5分間ボルテックス混合し、必要ならば、透明溶液が達成されるまで、氷水中において超音波処理した。
【0137】
【表1】

【0138】
上記の表中のデータを参照して、遊離塩基メルファランの溶解は、シクロデキストリン誘導体の濃度にかかわらず、pH1.1で非常に迅速であった。溶解後、次いで、溶液を水酸化ナトリウムで中和した。
【0139】
この実施例における遊離塩基メルファランの溶液は、シクロデキストリン誘導体を含有する溶液への遊離塩基メルファランの添加によって、又はメルファランへ0.1M HCl溶液を添加し次いでシクロデキストリン誘導体を添加することによって、又は遊離塩基メルファラン及びシクロデキストリン誘導体を同時に溶解することによって、調製することができた。しかし、超音波処理が、溶解増大及び溶液中での乾燥物質の脱凝集のためには、混合及び/又は振盪よりも優れていた。
【0140】
実施例2
遊離塩基メルファラン(Chemwerth,Woodbridge,CT)の結合を、pH5及びpH7でのシクロデキストリン誘導体濃度の関数として研究し、データを遊離塩基メルファラン結合の文献報告と比較した。pH5溶液は、100mM酒石酸水素ナトリウム緩衝剤を含有し、0.9%塩化ナトリウム溶液中の水酸化ナトリウムを使用してpH5へ調節した。pH7溶液は、各々50mMの一塩基性及び二塩基性リン酸塩並びに0.9%塩化ナトリウムを含有した。0、50、75及び100mM SBE6.5−β−CD(カプチゾル(登録商標))を含有する溶液を調製し、過剰の遊離塩基メルファランを各溶液の2mLサンプルへ添加した。遊離塩基メルファランの添加後、サンプルを30秒間ボルテックス混合し、氷水浴中において20分間超音波処理し、次いで、室温で30分間エンドオーバーエンド回転によって混合した。次いで、サンプルを遠心分離し、透明な上澄みを水で希釈し、HPLCによって分析した。
【0141】
HPLCによって行った全てのメルファランアッセイは、下記のプロトコルを利用した。SCL−10Aシステムコントローラー、SIL−10Aオートインジェクター、LC−10AT液体クロマトグラフ、SPD−10A UV分光光度計検出器、CTO−10Aカラムオーブン、及びClass−VPクロマトグラフィー実験用自動化ソフトウェアを備えたShimadzu HPLCを利用した。カラムは、5μm粒度を有するZorbax(登録商標)RX−C18 4.6mm x 150mmカラム(Agilent Technologies,Santa Clara,CA)であった。500:250:10(v/v)の比率のリン酸緩衝生理食塩液(pH7.4):メタノール:氷酢酸の移動相を使用する定組成溶離のために、サンプルをカラム上へ注入した(20μL)。高塩化物濃度を有することによってメルファラン変換を減少させるか又は名目上抑えるために、移動相を選択した。サンプルを注入直前に調製した。検出は260 nmにおいてであった。
【0142】
文献手順は、pH7.5の25mMリン酸緩衝溶液中のSBE7−β−CD(平均M.W.=2248g/mol)の0、10、20、30、40、50、75及び100mM溶液へ過剰量のメルファランを添加することを含んだ。懸濁液は、堅くキャップされたバイアル中に置かれ、1時間超音波処理され、25℃で23時間撹拌された。次いで、サンプルは遠心分離され、透明な上澄みが二重蒸留水で希釈され、HPLCによって分析された。D.Q.Ma et al.,J.Pharm.Sci.89:275(1999)を参照のこと。
【0143】
遊離塩基メルファラン可溶化研究からのデータを図1に提供する。図1を参照して、遊離塩基メルファランは、以前の文献報告において提供されたものよりも顕著に低い溶解性促進を示した。同文献を参照のこと。SBE6.5−β−CDによって提供された遊離塩基メルファランの溶解性促進は予想よりも低かったので、さらなる相溶解度試験を、メルファラン塩酸塩を使用して行った。
【0144】
実施例3
メルファラン塩酸塩(USP参照標準)及び遊離塩基メルファラン(Chemwerth)とシクロデキストリン誘導体(SBE6.5−β−CD、カプチゾル(登録商標)、平均M.W.=2163g/mol)との結合を、pH7.5でのシクロデキストリン誘導体濃度の関数として測定した。温度を22℃に維持し、25mMリン酸緩衝液を各溶液へ添加した。データを、pH7.5の25mMリン酸緩衝液中のSBE7−β−CD(平均M.W.=2248g/mol)との遊離塩基メルファラン結合の文献報告と比較した(実施例2を参照のこと)。
【0145】
種々のSBE6.5−β−CD溶液の1mLサンプルへ過剰のメルファラン塩酸塩又は遊離塩基メルファランを添加することによって、サンプルを調製した。サンプルを30秒間ボルテックス混合し、20〜24℃で60分間超音波処理し、次いで、22℃で60分間エンドオーバーエンド回転によって混合した。次いで、サンプルを遠心分離し、透明な上澄みを水で希釈し、HPLCによって分析した。データを図2に提供する。図2を参照して、メルファラン塩酸塩は、25mMを超える全てのシクロデキストリン誘導体濃度について、遊離塩基メルファランと比較して、顕著な溶解性促進を示した。
【0146】
実施例4
塩酸塩としてのメルファランを含む薬学的組成物を、図3において図で概説されるプロセスによって作製した。図3を参照して、注射用水、USPを、15〜20℃の温度でステンレススチールミキサー中に入れ、約4.6のpHが達成されるまで塩酸を添加した。得られた溶液を、ボルテックス(但し発泡又は泡立ち無し)を生じさせるために十分な速度で約15分間撹拌し、ボルテックス撹拌しながらシクロデキストリン誘導体(27.2g SBE6.5−β−CD、カプチゾル(登録商標))を徐々に添加し、得られた溶液を約15分間撹拌し、完全な溶解を確実にした。得られた溶液は約2.5のpHを有した。ボルテックス撹拌しながら塩酸塩としてのメルファラン(516mg)を徐々に添加し、得られた溶液を約15分間撹拌し、完全な溶解を確実にした。次いで、溶液が約5.6のpHを有するまで、ボルテックス撹拌しながら、塩基(2N NaOH)を徐々に添加した。次いで、UV/vis分光光度計(260nmの検出波長)を使用して、溶液をアッセイした。溶液は、5.16mg/mLの濃度でメルファランを含み、メルファランは、シクロデキストリン誘導体に対して約1:55w/wの比で存在した。次いで、溶液を滅菌フィルター(0.22μm PVDF)に通し、10〜15℃へ冷却した。
【0147】
実施例5
実施例4において得られた液体薬学的組成物を凍結乾燥し、塩酸塩としてのメルファラン50mgを含む再構成可能な及び/又は希釈可能なドライパウダーを得た。ガラスバイアルに溶液(10mL)を満たし、5℃の予め冷却された棚の上のトレー中に置いた。バイアルを約30分間熱平衡化させ、次いで凍結乾燥し、各バイアル中においてドライパウダーを得た。バイアルを約400mTorrの圧力の窒素で充填し、次いで密封した。
【0148】
実施例6
最終溶液が10mg/mLの濃度でメルファランを含有し、メルファランがシクロデキストリン誘導体に対して約1:27w/wの比で存在したことを除いて、実施例4において説明されかつ図3において図で概説されるプロセスによって、塩酸塩としてのメルファランを含む薬学的組成物を作製した。
【0149】
実施例7
実施例6において得られた液体薬学的組成物を凍結乾燥し、塩酸塩としてのメルファラン200mgを含む再構成可能な及び/又は希釈可能なドライパウダーを得た。ガラスバイアルを溶液(20mL)で満たし、5℃の予め冷却された棚の上のトレー中に置いた。バイアルを約30分間熱平衡化させ、次いで凍結乾燥し、各バイアル中においてドライパウダーを得た。バイアルを約400mTorrの圧力の窒素で充填し、次いで密封し、包装し、ラベルを貼った。バイアルを、凍結乾燥、充填、密封、包装、及びラベリング手順の全ての局面の間、光への曝露から保護した。
【0150】
予言実施例A
実施例4及び6において得られた液体薬学的組成物を無菌噴霧乾燥し、無菌的に充填される自由流動性粉末を得る。自由流動性粉末は、実施例4又は6において作製された凍結ドライパウダーの溶解特性に対応するか又はこれを超える。
【0151】
実施例8
塩酸塩としてのメルファランを含む薬学的組成物を、図4において図で概説されるプロセスによって作製した。図4を参照して、注射用水、USPを、18〜25℃の温度でステンレススチールミキサー中に入れ、得られた溶液を、ボルテックス(但し発泡又は泡立ち無し)を生じさせるために十分な速度で撹拌した。ボルテックス撹拌しながらシクロデキストリン誘導体(SBE6.5−β−CD、カプチゾル(登録商標))を徐々に添加し、得られた溶液を約15分間撹拌し、完全な溶解を確実にした。次いで、得られた溶液を約2〜8℃へ冷却した。ボルテックス撹拌しながら塩酸塩としてのメルファランを徐々に添加し、得られた溶液を約15分間撹拌し、完全な溶解を確実にした。溶液が約5〜6(標的pH5.5)のpHを有するまで、ボルテックス撹拌しながら、塩基(2N NaOH)を徐々に添加した。次いで、インプロセスコントロール(「IPC」)アッセイを行い、pHをモニタリングし、注射用水、USPを使用して、溶液を最終標的体積へ希釈した。次いで、UV/vis分光光度計(260nmの検出波長)を使用して溶液をアッセイし、バイオバーデンアッセイを行った。次いで、溶液を滅菌フィルター(0.22μm PVDF)に通し、15〜25℃へ冷却した。最後に、IPCアッセイを行った。
【0152】
実施例9
実施例8において調製した溶液を凍結乾燥し、塩酸塩としてのメルファランを含む再構成可能な及び/又は希釈可能なドライパウダーを得た。凍結乾燥のために、ガラスバイアルに溶液(10mL)を満たし、5℃の予め冷却された棚の上のトレー中に置いた。バイアルを約1時間熱平衡化させ、次いで凍結乾燥し、各バイアル中においてドライパウダーを得た。バイアルを窒素で充填し、密封し、包装し、ラベルを貼った。バイアルを、凍結乾燥、充填、密封、包装、及びラベリング手順の全ての局面の間、光への曝露から保護した。
【0153】
予言実施例B
実施例8において得られた液体薬学的組成物を無菌噴霧乾燥し、無菌的に充填される自由流動性粉末を得る。自由流動性粉末は、実施例9において作製された凍結ドライパウダーの溶解特性に対応するか又はこれを超える。
【0154】
実施例10
注射用水、USPでの希釈後の本発明の薬学的組成物の特性を、様々な分析法によって分析した。結果を下記の表に列挙する。組成物A〜Dを実施例8〜9に記載の方法によって作製した。希釈組成物は、それぞれ、75mM、100mM、125mM、及び125mMの濃度でSBE6.5−β−CD(カプチゾル(登録商標))を含有した。組成物の各々は、希釈前に約1.3%〜約2.5%の含水率を有した。
【0155】
【表2】

【0156】
実施例11
本発明の薬学的組成物の希釈でのメルファラン塩酸塩の安定性を測定した。シクロデキストリン誘導体(SBE6.5−β−CD、カプチゾル(登録商標)、平均M.W.=2163g/mol)を含有する薬学的組成物を等張生理食塩液で希釈し、それぞれ、75mM及び125mMの濃度でシクロデキストリン誘導体を含有する0.45mg/mLメルファラン溶液を得た。メルファランを時間の関数としてアッセイし、メルファランの5%又は10%減少(100%の初期メルファラン濃度に基づく)に必要な時間を測定した。データを下記の表に提供する。シクロデキストリン誘導体を含有する溶液中のその初期濃度の90%又は95%へメルファランが低下するために必要とされた時間を、参照製品(注射用アルケラン(登録商標)、GlaxoSmithKline)中のメルファランの安定性と比較した。
【0157】
【表3】

【0158】
上記の表中のデータを参照して、本発明の薬学的組成物からの希釈後のメルファラン安定性は、シクロデキストリン誘導体を含有しない参照メルファラン製剤と比較して、75mM及び125mMのシクロデキストリン誘導体濃度で、それぞれ、およそ4.2倍及び6.8倍の改善を示した。
【0159】
実施例12
本発明の薬学的組成物の希釈でのメルファラン塩酸塩の安定性を、温度及び保存条件の関数として測定した。メルファラン(50mg)及びシクロデキストリン誘導体(SBE6.5−β−CD、カプチゾル(登録商標)、平均M.W.=2163g/mol、270mg)を含有する薬学的組成物を、等張生理食塩液(8.5mL)で希釈し、濃縮溶液を得た。濃縮溶液を10倍さらに希釈し、希釈溶液を得た。濃縮及び希釈メルファラン溶液の各々を、25℃/60%相対湿度で、又は冷蔵庫(約10℃)中において保存し、メルファラン含有量を時間の関数としてモニタリングした。データを下記の表に提供する。
【0160】
【表4】

【0161】
上記の表中のデータを参照して、本発明の薬学的組成物からの希釈後のメルファランの安定性は、シクロデキストリン誘導体を含有しない現在入手可能なメルファラン薬学的組成物と比較して顕著な改善を提供した。
【0162】
実施例13
凍結乾燥メルファラン塩酸塩組成物の安定性を、温度及び保存条件の関数として、希釈前及び後に測定した。CyDex Pharmaceuticals,Inc.の指導の下でBioConvergence LLC,Bloomington,INによって研究は行われた。
【0163】
メルファラン(50mg)及びポビドン(20mg)を含む組成物を、シクロデキストリン誘導体(SBE6.5−β−CD、カプチゾル(登録商標)、平均M.W.=2163g/mol、270mg)、クエン酸ナトリウム(200mg)、及び蒸留水(10mL)を含む組成物で希釈し、濃縮メルファラン溶液(5mg/mL)を得た。濃縮溶液の安定性の試験に加えて、さらに11倍希釈し、メルファラン(0.45mg/mL)を含有する希釈溶液を得た。
【0164】
再構成された濃縮溶液(5mg/mLメルファラン)の動力学的安定性を、ガラスバイアル中での保存で測定し、再構成された希釈溶液(0.45mg/mLメルファラン)の動力学的安定性を、冷蔵温度(約2〜8℃)及び室温(約25℃、蛍光灯下でモニタリング)での、50mL Baxter INTRAVIA(登録商標)バッグ中での保存で測定した。
【0165】
希釈(0.45mg/mlメルファラン)組成物の動力学的安定性の評価を、50mL I型ガラス容器中において測定した:生理食塩液(8.5mL)を使用して再構成を行い、アリコート(4.5mL)を各バイアルから取り出し、生理食塩液45.5mLを有する4個のガラス容器へ注入した。ある量をt=0分析のために各容器から取り出した後、容器を室温で(「RT」、約25℃、蛍光灯下)又は冷蔵庫中において(約2〜8℃)保存し、メルファラン含有量を時間の関数としてモニタリングした。データを下記の表に提供する。
【0166】
【表5】

【0167】
上記の表中のデータを参照して、本発明の薬学的組成物からの希釈後のメルファラン安定性は、5時間まで室温で維持することができ、2%未満のメルファラン分解を示すか、又は10時間まで室温で維持することができ、4%未満のメルファラン分解を示す、安定した組成物を提供した。冷蔵した場合、希釈メルファラン組成物は、24時間まで保存することができ、2%未満のメルファラン分解を示した。さらに、凍結乾燥された薬学的組成物は、室温で2年間まで保存することができ、2%未満のメルファラン分解を示した。
【0168】
さらに、実施例12及び13を参照して、本発明の薬学的組成物は、シクロデキストリン誘導体の使用が提案された他の製剤と比較して、メルファラン安定性の顕著な改善を提供した。例えば、D.Q.Ma et al.,Int.J.Pharm.189:227(1999)は、シクロデキストリン誘導体を含有する溶液での希釈で、室温で48時間後、60%を超えるメルファラン減少を示す、メルファラン組成物を提供した。顕著なことに、上記の表中のデータは、本発明の薬学的組成物の希釈で、多くとも30%のメルファラン減少が、室温で48時間以内で観察されたことを示している。メルファラン減少は、溶液が低温(例えば、冷蔵庫中)で保存される場合、2%又は3%ほどの低くへ低下し得た。
【0169】
実施例14
本発明の薬学的組成物での使用に適したシクロデキストリン誘導体の溶血可能性を、メルファランについて以前に市販された希釈用ビヒクル(注射用アルケラン(登録商標)、GlaxoSmithKline)と比較して分析した。絶食させた対象から得られた齧歯動物(SPRAGUE DAWLEY(登録商標)又はWistar Han IGSラット)及びヒト赤血球において、分光測光技術を使用して、溶血可能性を評価した。正常生理食塩液(0.9%塩化ナトリウム)を、様々な濃度のシクロデキストリン誘導体含有希釈用ビヒクル及びシクロデキストリンフリー希釈用ビヒクルに対しての比較のために、ブランク(又はバックグラウンド)として及びネガティブコントロールとして使用した。リン酸緩衝生理食塩液中のTriton X−100(1%)を含有するポジティブコントロールも利用した。絶食させた(≧8時間)成人対象からヒト赤血球を採取した。様々なサンプルの成分を下記の表に列挙する。
【0170】
【表6】

【0171】
ラット及びヒトヒト赤血球を様々な濃度の希釈用ビヒクルへ曝し、等式(1)を使用して溶血可能性を評価した:
540(テスト物品)−A540(ネガティブコントロール)×100=%溶血 (1)
【0172】
溶血結果を下記の表に提供し、ここで、グループAは、シクロデキストリン誘導体ビヒクルへ曝されたラット赤血球を指し;グループBは、注射用アルケラン(登録商標)(GlaxoSmithKline)希釈用ビヒクルへ曝されたラット赤血球を指し;グループCは、シクロデキストリン誘導体ビヒクルへ曝されたヒト赤血球を指し;グループDは、注射用アルケラン(登録商標)(GlaxoSmithKline)希釈用ビヒクルへ曝されたヒト赤血球を指す。各実験についてのネガティブコントロールは、0.13未満の吸光度を提供し、各実験についてのポジティブコントロールは、約2.8〜3の吸光度を提供した。
【0173】
【表7】

【0174】
上記の表中の溶血データを参照して、高濃度で(例えば、希釈無し、生理食塩液での1:2希釈、及び生理食塩液での1:4希釈)シクロデキストリン誘導体を含有した溶液は、ラット赤血球中において減少した溶血を提供し、これはまた、注射用アルケラン(登録商標)(GlaxoSmithKline)希釈剤と比較して約30%の分光測光吸収の減少として示された。ヒト血球中における溶血テストは高濃度で分光測光吸光度の同様の減少を示した一方、シクロデキストリン誘導体溶液も注射用アルケラン(登録商標)(GlaxoSmithKline)希釈用ビヒクルも、ヒト赤血球中において溶血を誘発しなかった。
【0175】
実施例15
研究を行い、これによって、SAE6.5−β−CD(カプチゾル(登録商標)、CyDex Pharmaceuticals,Inc.,Lenexa,KS)と会合されたメルファランは、未会合メルファランと同一のタンパク質結合を示すことが測定された。CyDex Pharmaceuticals,Inc.の指導の下でAnalytical Biochemistry Laboratories,Inc.,Columbia,MOによって研究は行われた。
【0176】
予備研究
予備研究を行い、これによって、放射標識メルファラン、[14C]−メルファラン(Moravek Biochemicals,Inc.,Brea,CA)は、限外濾過装置へ非特異的に結合しないことが測定された。下記の化合物の混合物をヒト血漿限外濾過液(Biochemed,Winchester,VA)へ添加し、単独での又はSAE6.5−β−CDと組み合わせての[14C]−メルファランのタンパク質結合を測定した:
1.[14C]−メルファラン及びメルファラン;並びに
2.[14C]−メルファラン及びメルファラン及びSAE6.5−β−CD。
【0177】
十分に立証されたタンパク質結特性を有する化合物である、放射標識ワルファリン、[3H]−ワルファリン(Moravek Biochemicals,Inc.,Brea,CA)を、全ての実験においてポジティブコントロールとして使用した。
【0178】
粉末状物質(適用可能な場合)をシンチレーションバイアル(20mL)中へ量り分け、ポジティブディスプレイスメントピペットを使用して、放射標識化合物をバイアルへ添加した。次いで、ガラス血清ピペットを使用して、ブランクヒト血漿限外濾過液(5mL)をバイアルへ添加した。次いで、混合物を短時間ブレンドした。ヒト血漿限外濾過液へのテスト化合物の添加の0.5、1、及び5分後に混合物をサンプリングすることによって、血漿タンパク質結合の時間依存性を測定した。サンプルアリコート(3x1mL)を、限外濾過装置中へ入れ、サンプルを直ちに遠心分離した(25℃で5分間1600g)。次いで、バイアル中に残っていた溶液を液体シンチレーション計数(LSC)分析のために小分けした(2×0.1mL)。
【0179】
95%を超える回収が、全ての実験において[3H]−ワルファリンについて観察された。タンパク質結合実験において、[3H]−ワルファリンは、99%超がタンパク質結合された。30kDの分子量カットオフを有する限外濾過装置へ適用した放射標識メルファラン(単独で又はSAE6.5−β−CDと組み合わせて)は、平均で97%を超える放射能回収を示した:[14C]−メルファランは単独で、97.7%の回収を示し(n=3)、SAE6.5−β−CDを伴う[14C]−メルファランは、97.6%の回収を示した(n=3)。結果は、限外濾過装置への放射標識メルファランの最小限(即ち、2.4%未満)の非特異的結合が存在したことを示した。
【0180】
タンパク質結合研究
タンパク質結合研究のために、放射標識メルファラン、非放射標識メルファラン、及びSAE6.5−β−CD(適用可能な場合)を、シンチレーションバイアルへ添加し(20mL)、窒素流下でブロー乾燥し、各実験において存在する溶媒の量を標準化した。メタノール(50μL)をバイアルへ添加し、ガラス血清ピペットを使用して、ブランクヒト血漿(5mL)をバイアルへ添加した。次いで、混合物を短時間ブレンドした。次いで、アリコート(3x1mL)をバイアルから限外濾過装置中へ入れ、続いて遠心分離した(25℃で5分間2,000g)。バイアルへのヒト血漿の添加と遠心分離の開始との時間間隔は、0.5、1、5、10、及び30分であった。次いで、バイアル中に残っていた溶液をLSC分析のために二重で小分けした(0.1、0.05、及び0.025mLの体積で)。
【0181】
cpmからdpm変換のためのH数法(H−number method)を備えたシンチレーションカウンター(Beckman Instruments,Inc.Schaumberg,IL)を使用して、サンプル放射能を定量した。ガラスシンチレーションバイアル(7mL)中のサンプル(5mL)を用いてLSC分析を行い、ここから、バイアルへ添加した同量のシンチレーション流体を使用してバックグラウンド測定を行った。結果を下記の表に提供する:
【0182】
【表8】

【0183】
結果は、SAE6.5−β−CDの非存在下で[14C]−メルファランは、ヒト血漿中で1分後に64.3%タンパク質結合されたことを示した。同程度のタンパク質結合が、SAE6.5−β−CDの存在下での[14C]−メルファランについて観察された:64.3%(0.5分、n=3)、64.4%(1分、n=3)、及び67.2%(5分、n=3)。研究によって、SAE6.5−β−CDは、放射標識[14C]−メルファランのタンパク質結合に影響を与えないことが示された。
【0184】
実施例16
スルホアルキルエーテルシクロデキストリンがメルファランのインビボ薬物動態を混乱させる可能性を調べるために、研究を行った。送達ビヒクル中においてSBE6.5−β−CDの存在又は非存在下で雄性Sprague Dawleyラットへ静脈内投与後、メルファランについて薬物動態パラメータを測定した。
【0185】
一晩絶食させた雄性Sprague Dawleyラットにおいて、メルファランの薬物動態を研究した。全ての実験手順は、Institutional Animal Experimentation Ethics Committee(Monash University Ethics承認番号VCPA/2008/02)のガイドラインに従って承認及び実行された。
【0186】
投薬の前日に、市販のBASi CULEX(登録商標)カニューレ(CULEX(登録商標)自動血液サンプリング装置と共の使用のため)を、イソフルラン麻酔(2%)下で各ラットの左頸動脈中へ挿入した。ポリエチレンカニューレをまた右頸静脈中へ挿入した。肩甲骨上に出現するように皮下に通すことによって、カニューレを体外に出した。
【0187】
手術直後から実験終了まで、ラットをCULEX(登録商標)自動血液サンプラー中のRATURN(登録商標)代謝ケージ内に収容した。全てのラットが、手術の1時間以内に、通常のグルーミング、飲水及び睡眠行動に戻った。麻酔から目覚めた直後に動物に少量の食物を提供したが、次いで、薬物投与前の16〜18時間絶食させた。動物は常に自由に水を飲んだ。薬物投与の4時間後に食物を元に戻した。各実験の終わりに、ラットをペントバルビトンの単回致死注射によって犠牲にした。
【0188】
シクロデキストリン誘導体フリーのメルファラン製剤を、注射用アルケラン(登録商標)(GlaxoSmithKline)についての製品挿入物通りに調製した。単回の注射用アルケラン(登録商標)(GlaxoSmithKline)バイアルの内容物を、無菌希釈剤10mL(アルケラン(登録商標)製品と共に提供され、クエン酸ナトリウム0.2g、プロピレングリコール6mL、エタノール(96%)0.52mL及び水を含有する)で再構成した。次いで、溶液を0.9%正常生理食塩液でさらに希釈し(0.9%生理食塩液10mL中の注射用アルケラン(登録商標)(GlaxoSmithKline)2mL、即ち、総体積12mL)、得られた製剤を、0.22μm注射器フィルターで濾過することによって滅菌し、その後、ラットへ投与した。IV製剤中のメルファランの測定濃度は0.54mg/mL(遊離塩基として)であり、最終溶液のpHは5〜6(pH試験紙を使用して確認)であった。調製の30分以内に、製剤を動物へ投与した。
【0189】
SBE6.5−β−CD(27% w/v)を含有する製剤を、SBE6.5−β−CDをMilli−Q水に溶解することによって調製した。次いで、注射用アルケラン(登録商標)(GlaxoSmithKline)バイアルの内容物を、SBE6.5−β−CD溶液10mLで再構成した。次いで、この溶液を0.9%生理食塩液で希釈し(0.9%生理食塩液10mL中に2mL)、得られた製剤を、0.22μm注射器フィルターで濾過することによって滅菌し、その後、ラットへ投与した。従って、最終製剤は、4.5%(w/v) SBE6.5−β−CDを含有した。メルファラン(遊離塩基として)の測定濃度は0.58mg/mLであり、最終溶液のpHはpHは5〜6(pH試験紙を使用して確認)であった。調製の30分以内に、製剤を動物へ投与した。
【0190】
総用量体積は1mLであり、全ての用量を頸静脈カニューレを介して手動で注入した。完全な用量を10分期間にわたって送達し、カニューレをヘパリン添加生理食塩液(10U/mL)で洗い流し、用量の完全な投与を確実にした。
【0191】
動脈血及び尿のサンプルを、以下のスケジュールに従って集めた:血液/血漿サンプリング時間は、投薬前、並びに投薬後5、10(注入の終了)、15、25、40、55、70、100、130、190、250、370、及び490分であり;尿サンプリング間隔は、0−70分、70−130分、130−190分、190−250分、250−310分、310−370分、370−430分、430−490分、及び490−1450分であった。
【0192】
動脈血を、ヘパリン、COMPLETE(登録商標)(プロテアーゼ阻害薬カクテル)、フッ化カリウム、及びEDTAを含有するホウケイ酸バイアル(4℃で)中へ直接集め、血液/血漿サンプルにおけるエクスビボ分解についての可能性を最小限にした。いったん集めると、全血のアリコート(50μL)を新たな微小遠心管中へ移した。残りの血液を遠心分離し、上澄みの血漿を除去した。全ての血液、血漿及び尿サンプルをドライアイス上に直ちに(スナップ)凍結し、次いで、分析まで保存のために−20℃フリーザーへ移した。
【0193】
全血、血漿、尿、及び投薬溶液のサンプル中のメルファラン濃度を、LC−MSを使用して測定した。
【0194】
アセトニトリルでのタンパク質沈殿を使用して、サンプル調製を行った。血漿及び血液のアリコート(50μL)を、内部標準(10μL)、アセトニトリル(130μL)で処理し、ボルテックスし、遠心分離した。上澄みを取り出し、LC/MSによって分析した。標準サンプルを、それぞれのブランクマトリックス中に溶液標準をスパイクすることによって調製した。メルファラン遊離塩基のストック溶液を、ジメチルスルホキシド中において10mg/mLの濃度で調製した。このストック溶液をアセトニトリル水溶液(50% v/v)中においてさらに希釈し、較正標準の作製のためのスパイク溶液を得た。
【0195】
Waters Acquity UPLC(Waters Corp.,Milford,MA)が連結されたMicromass Quattro Premier PR三連四重極質量分析計上のLC−MS/MSによって、全てのサンプルをアッセイした。分析的分離を、同一の材料のPhenomenex Polar Security Guardカラムを備えたPhenomenex Polar逆相カラム(50mm×1.0mm内径、4μm粒度)上において行った(Torrance,CA)。サンプル(7.5μL)をカラム上へ注入し、Milli−Q水中のメタノール(2% v/v)及びギ酸(0.05% v/v)の水溶液(溶媒A)と、ギ酸を含有するアセトニトリル(0.05% v/v)(溶媒B)とからなる三元勾配溶媒システムを使用して、化合物を溶出した(0.15mL/分の流速で)。LC−MS分析について使用した勾配条件を下記の表に列挙する。
【0196】
【表9】

【0197】
分析物の溶出を、内部標準(ジアゼパム)としてジアゼパム(0.2μg/mL)を使用する多重反応モニタリング(MRM)によって確認した。インレットコーン電圧は、メルファラン及び内部標準について、それぞれ、20eV及び40eVであり、衝突エネルギーは、メルファラン及び内部標準について、それぞれ、15eV及び27eVであった。メルファラン及び内部標準の溶出を、それぞれ、以下の遷移304.94>267.88及び285.17>154.02を使用して、モニタリングした。メルファランは2.0分の保持時間を示し、内部標準は2.8分の保持時間を示した。
【0198】
3.2kVのキャピラリー電圧、650Vのディテクターマルチプラーゲイン、並びにそれぞれ90℃及び300℃のソースブロック温度及び脱溶媒和温度を用いての、ポジティブモードエレクトロスプレーイオン化を使用して、質量分析を行った。それぞれ、500 L/時間及び0.38mL/分の脱溶媒和ガス(窒素)及び衝突ガス(アルゴン)フローを維持した。血液及び血漿標準についての定量下限値(LLQ)は、5.0ng/mLであり、希釈尿サンプルについてのLLQは0.5ng/mLであった。
【0199】
血漿濃度データ及び血液濃度データの両方を分析し、WINNONLIN(登録商標)ソフトウェア(WINNONLIN(登録商標)プロフェショナルバージョン5.2.1,Pharsight Corp.,Mountain View,CA)を使用して、薬物動態パラメータを得た。静脈内投与後の総クリアランス(全血又は血漿についての、CLtotal)を、CLtotal=用量/AUCのように計算し、式中、AUCは、線形台形法を使用して得られた全血又は血漿中濃度対時間曲線下面積である。分布容積(Vz)を、Vz=CLtotal/λzのように計算し、式中、λzは、i.v.投与後の排出速度定数である。
【0200】
SBE6.5−β−CDを含有する製剤(n=4)とシクロデキストリンフリーの製剤(n=5)とを使用しての静脈内投与後の全血及び血漿中のメルファランの平均用量標準化濃度対時間プロフィールを、下記の表に示す。
【0201】
【表10】

【0202】
図5A−5Bは、SBE6.5−β−CD含有メルファラン製剤(●)、n=4、と、シクロデキストリンフリーの(○)、n=5、メルファラン製剤(注射用アルケラン(登録商標)、GlaxoSmithKline)とについての、静脈内投与後のメルファランの用量標準化全血(図5A)及び血漿(図5B)中濃度の図示を提供する。図5A−5Bを参照して、単一標準偏差を示すエラーバーを伴う平均値としてデータを示す。メルファランは、全血及び血漿の両方において双指数関数的薬物動態を示し、見かけの最終消失半減期と共に、見かけの最終消失相は、投与後8時間の血液サンプリング期間内に十分に規定された。SBE6.5−β−CD(27% w/v)を含有する製剤及びシクロデキストリンフリーの製剤についての平均全血及び血漿中濃度対時間プロフィールは、本質的に重ね合わせることが可能であり、2つの製剤間に薬物動態パラメータのいずれにおいても統計的有意差は存在しなかった(p>0.05)。従って、上記の表に示されるように、ラットにおいて、SBE6.5−β−CDを含有するメルファラン製剤についてのインビボ薬物動態パラメータは、シクロデキストリンフリーの製剤(即ち、注射用アルケラン(登録商標)、GlaxoSmithKline)についての薬物動態パラメータと本質的に同一であった。
【0203】
さらに、両方の製剤において、投薬後24時間までの未変化化合物として排出された尿中に排出されたメルファラン用量のパーセンテージは、低かった:シクロデキストリンフリーの製剤については、平均値は2.7±1.7%であり、SBE6.5−β−CDを含有する製剤については、平均値は2.3±2%であった。
【0204】
データは、メルファランの半減期、AUC、分布容積、クリアランス、及び腎排出度を含む、薬物動態パラメータは、注射用アルケラン(登録商標)(GlaxoSmithKline)とSAE6.5−β−CDを含有するメルファラン製剤とで本質的に不変であったことを示している。具体的には、SBE6.5−β−CD有り及び無しでのメルファランの平均全血及び血漿中濃度対時間プロフィールは、本質的に重ね合わせることが可能であった。結果は、SBE6.5−β−CDは、ラットモデルにおけるメルファランについての血液又は血漿対時間プロフィールにおいて観察可能な差異は有さないかったことを示している。さらに、ラットモデルにおいてメルファランの尿中排泄の見かけの差異はなかった。
【0205】
実施例17
プロピレングリコールフリーの希釈用ビヒクルを使用して注射によって投与されたメルファラン塩酸塩の第IIa相・多施設・非盲検・無作為化効能及び安全性試験を、自家移植のための準備において骨髄破壊的前処置を受けた3人のヒト多発性骨髄腫患者において行った。試験は継続中である。
【0206】
研究の第一の目標は、注射によって高用量のメルファラン塩酸塩を受容する多発性骨髄腫患者における骨髄破壊及び好中球生着の割合を測定することであった/あり、ここで、ある用量は、プロピレングリコール希釈剤を使用して投与され、ある用量は、プロピレングリコールフリーの希釈剤を使用して投与された。投与は、自家幹細胞移植前に、骨髄破壊的療法として使用された。
【0207】
研究の第二の目標は、以下を測定することである:(a)自家幹細胞移植前にプロピレングリコール希釈剤及びプロピレングリコールフリーの希釈剤の両方を使用する注射によって高用量メルファラン塩酸塩を受容する多発性骨髄腫患者における血小板生着の割合;(b)自家幹細胞移植の前にプロピレングリコール希釈剤及びプロピレングリコールフリーの希釈剤の両方を使用する注射によって高用量メルファラン塩酸塩を受容する多発性骨髄腫患者における好中球及び血小板の生着までの中位時間;(c)自家幹細胞移植前にプロピレングリコール希釈剤及びプロピレングリコールフリーの希釈剤を使用する注射によって高用量メルファラン塩酸塩を受容する多発性骨髄腫患者における日+100での自家幹細胞移植での奏効率(厳密な完全奏効[sCR]、完全奏効[CR]、非常に良い部分奏効[VGPR]、部分奏効[PR]、安定している疾患[SD]、又は進行性疾患[PD]);(d)自家幹細胞移植を受ける多発性骨髄腫患者におけるプロピレングリコール希釈剤及びプロピレングリコールフリーの希釈剤の両方を使用しての注射による高用量メルファラン塩酸塩の毒性プロフィール;(e)プロピレングリコール希釈剤及びプロピレングリコールフリーの希釈剤を使用する注射によって高用量メルファラン塩酸塩を受容する多発性骨髄腫患者における自家幹細胞移植後の最初の100日の間の治療関連死亡率;並びに(f)自家幹細胞移植を受ける多発性骨髄腫患者におけるプロピレングリコールフリーの希釈剤(即ち、シクロデキストリン誘導体)を使用する注射によるメルファラン塩酸塩の薬物動態と比較してのプロピレングリコール希釈剤を使用する注射によるメルファラン塩酸塩の薬物動態。
【0208】
研究に登録する前に、患者を選別した。以下のクラスのいずれかからの患者を研究に含めるに適格であった:
診断時又はその後に治療を必要とする症候性多発性骨髄腫を有する患者;
移植のための適切な一次導入療法を受容した自家幹細胞移植療法に適格である多発性骨髄腫を有する患者;
移植時に70歳以下である患者(70歳を超える患者は、機関実施基準に基づく基準を患者が満たす場合、個々の場合に応じて適格であり得る);
別のバッグ中に保存される2×106 CD34+細胞/kgの予備品と共の、少なく
とも2×106 CD34+細胞/患者体重kgを含有する操作されていない、凍結保存された、末梢血幹細胞又は骨髄幹細胞移植片として定義される、適切な自己移植片を有する患者;
並びに
以下によって測定されるような適切な臓器機能を有する患者:
− 心臓:安静時の左室駆出分画>40%;
− 肝臓:ビリルビン<2×正常上限値かつALT/AST<3×ULN;
− 腎臓:クレアチニンクリアランス>40mL/分;及び
− 肺:DLCO、FEV1、FVC>予測値の50%(Hgbについて補正)又はO2飽和>室内空気での92%。
【0209】
全ての患者は、機関のガイドラインに従って、制吐薬、水分補給、及び感染予防を受けた。患者は、入院に関する機関のガイドラインに従った。好中球生着まで、患者は毎日の検査室検査(ディファレンシャル及び血小板を伴うCBC並びに基本化学パネル)のために戻り、次いで、自家幹細胞移植日+30まで毎週の安全性評価のために戻った。下記の安全性、効能、及び薬物動態評価を、メルファランの第1投薬前に、及び下記の投薬後の時点で行った:
−12個の血液サンプルを薬物動態評価のために特定の時点で採取した。血液サンプルをメルファラン用量の受容の直前及び後に集めた;
−バイタルサインを、各用量のメルファランの受容後の最初の8時間の間、1時間ごとに記録し、次いで、退院まで1日1回、次いで日+30まで毎週、繰り返した。体重を退院時及び日+30に集めた;
−10〜20秒リズムストリップと共に、12誘導心電計(ECG)を、退院まで週2回集め、次いで、12誘導ECG(リズムストリップ無し)を日+30まで毎週集めた;
−集中身体検査を退院まで毎日行い、次いで、完全身体検査を日+30まで毎週行った;
−AE/SAEについての毒性類別及び評価は、全研究期間の間、NCI−CTC AEバージョン3.0に従った;
−ディファレンシャル及び血小板カウントを伴う完全血液カウントを、好中球及び血小板生着まで毎日、次いで日+30まで毎週、行った;
−Eastern Cooperative Groupパフォーマンスステータスを、退院時に、次いで、日+30まで毎週、検査した;
−基本血清化学パネル(ナトリウム、カリウム、塩化物、グルコース、クレアチニン、炭酸水素塩、及びBUN)を、好中球生着まで毎日;
−完全血清化学パネル(ナトリウム、カリウム、塩化物、マグネシウム、炭酸水素塩、グルコース、総タンパク質、アルブミン、カルシウム、リン酸塩、尿酸、BUN、クレアチニン、CPK、総ビリルビン、アルカリホスファターゼ、LDH、SGOT、及びSGPT)を日+30まで毎週モニタリングした;
−尿検査(比重、pH、タンパク質、グルコース、ケトン、亜硝酸塩、RBC、及びWBC)を、退院まで週2回、次いで日+30まで毎週、モニタリングした;並びに
−併用薬を、全研究期間の間、記録した。
【0210】
200g/m2のメルファラン用量を2つの別個の連続用量の100mg/m2へ分割し、患者が自家幹細胞移植を受容する前の2つの別個の日(第−3日及び第−2日)に投与した。体表面積の計算のために、理想体重未満又は100%〜130%の体重である患者については、実際の体重を使用した。理想体重の130%を超える体重である患者には、患者の調節体重を計算することによって得られた体表面積に基づいて投薬した。
【0211】
プロピレングリコール希釈剤を含む組成物(即ち、注射用メルファランHCl、Bioniche Pharma USA)又はシクロデキストリン誘導体を含む組成物(SBE6.5−β−CD、カプチゾル(登録商標)、125mMの濃度で)のいずれかによって最初のメルファラン用量100mg/m2を受容する(第−3日に)ように、患者を無作為に選択した。シクロデキストリン誘導体を含む組成物として100mg/m2の第1メルファラン用量を無作為に受容した(第−3日に)患者は、次いで、プロピレングリコール希釈剤を含む組成物を使用して100mg/m2の第2メルファラン用量を受容した(第−2日に)。逆に、プロピレングリコール希釈剤を含む組成物として100mg/m2の第1メルファラン用量を無作為に受容した(第−3日に)患者は、次いで、シクロデキストリン誘導体を含む組成物を使用して100mg/m2の第2メルファラン用量を受容した(第−2日に)。
【0212】
シクロデキストリン誘導体を含む組成物について、塩酸塩としてのメルファランを含有するドライパウダー組成物を、0.45mg/mL以下のメルファラン濃度及び125mMのシクロデキストリン濃度まで、正常生理食塩液で希釈した。希釈溶液を中心静脈カテーテルによって60分にわたって注入した。
【0213】
本明細書上記に記載のプロトコルを使用して、シクロデキストリンフリーの組成物(注射用メルファランHCl、Bioniche Pharma USA)を使用して、プロピレングリコール希釈剤を含む組成物を投与した。
【0214】
骨髄破壊的前処置後の1日の休息に続いて(第−1日)、患者に、2×106 CD34+細胞/患者体重kgの最小細胞用量で自己移植片を受容させた(第0日)。プロダクトの凍結保存及び解凍は、Foundation for the Accreditation of Cellular Therapy基準及び地方機関のプラクティスと一致した。移植片を機関のプロトコルによって注入した。日+5に開始して、絶対好中球数が500/mm3よりも大きくなるまで、G−CSFを5μg/kg/日の用量で投与した。
【0215】
メルファランの薬物動態評価のための血液サンプルをメルファランの各投薬後に集め、インビボメルファラン分布についての薬物動態パラメータを評価した。薬物動態パラメータの評価のためのサンプルを、メルファラン投与の直前、並びにメルファラン注入終了後の0、10、20、30、60、90、120、180、240、360、及び480分に、静脈血サンプル5mLを採取することによて集めた。薬物動態パラメータをノンパラメトリック薬物動態データ分析技術によって測定した。血漿中薬物濃度−時間データから計算した薬物動態パラメータは、以下を含んだ:
− 個々の生データから誘導される、Cmax
− 個々の生データから誘導される、Tmax
− 見かけの最終一次排出速度定数(kel);
− 見かけの排出tス;
− 台形公式によって計算される、最後の測定可能な時点までの血漿中濃度−時間曲線下面積(AUC0-t);及び
−kelで割った最後の測定可能な時点での濃度から決定される、最後の測定可能な時点から無限大へ外挿される血漿中濃度−時間曲線下面積(AUCt-∞)。
【0216】
血漿中濃度及び薬物動態パラメータを、記述統計学を使用して要約した。患者1〜3からのデータを下記の表に示す。
【0217】
【表11】

【0218】
図6は、シクロデキストリン誘導体(SBE6.5−β−CD)を含有するメルファラン製剤の静脈内投与後及びシクロデキストリンフリーのメルファラン製剤(注射用メルファランHCl、Bioniche Pharma USA)の静脈内投与後のヒト患者における平均血漿中メルファラン濃度の図示を提供する。図6及び上記の表中のデータを参照して、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体と共に投与されたメルファランのインビボ分布は、メルファランの最大インビボ濃度のほぼ50%増加、及び血漿中濃度曲線下面積(即ち、AUC0-t及びAUC0-∞の両方について)のおよそ30%増加を提供した。上記の表に示されるように、患者2及び3についてのデータは、同様の薬物動態結果を示した。ラットモデルおいてこれらのメルファラン製剤について得られた薬物動態データを考慮して、ヒト患者におけるSBE6.5−β−CD含有メルファラン製剤についてのCmax及びAUCの増大は、完全に予想外であった。
【0219】
上述したように、試験は継続中である。全ての患者の治療企図解析(intent−to−treat analysis)に基づく、第一の効能エンドポイントは、骨髄破壊の割合及び好中球生着の割合である。下記の定義がこれらのエンドポイントについて使用される:
【0220】
骨髄破壊は、下記のいずれかとして定義される:
− 0.5×109/L未満の絶対好中球数;
− 0.1×109/L未満の絶対リンパ球数;又は
− 20,000/mm3未満の血小板数若しくは輸血を必要とする出血。
【0221】
細胞カウントがこれらのカットオフレベル未満に低下する2連続日のうちの最初の日が、骨髄破壊日として記録される。
【0222】
好中球生着は、3つの連続する毎日の評価での0.5×109/Lを超える絶対好中球数と定義される。
【0223】
第二の効能エンドポイントは、下記の基準に基づく:
− 3つの連続する毎日の評価での>20,000/mm3の非輸血血小板測定として定義される、血小板生着の割合;
− 絶対好中球数が0.5×109/Lを超える3つの評価のうちの最初のものとして定義される、好中球生着までの時間;
− 非輸血血小板測定が20,000/mm3を超える3つの連続する毎日の評価のうちの最初のものとして定義される、血小板生着までの時間;
− 自家幹細胞移植日+100までに3つの連続する毎日の評価での0.5×109/Lを超える絶対好中球数へ到達しないこととして定義される、非生着の割合;
− 最初の100日以内の生着した後の0.5×109/L未満の絶対好中球数の発生として定義される、後期移植不全又は後期拒絶の割合;
− 日+100でのInternational Working Group基準に従って定義される、多発性骨髄腫奏効率(sCR、CR、VGPR、PR、SD、又はPD);並びに
− 日+100での再発又は進行を伴わない死亡として定義される、治療関連死亡率。
【0224】
臨床試験は、シクロデキストリン誘導体(SBE6.5−β−CD)と共に投与されたメルファランは、幹細胞移植前の前処置として、幹細胞移植が適応とされている対象における使用について、治療的に有効かつ安全であることを実証すると予想される。
【0225】
実施例18
プロピレングリコールフリーのビヒクルを使用する注射によって投与されたメルファラン塩酸塩の第IIb相・多施設・非盲検・無作為化効能及び安全性試験を、症候性多発性骨髄腫を有しかつASCTに適格であるヒト多発性骨髄腫患者において行った。
【0226】
シクロデキストリン誘導体を含むメルファラン組成物を使用して第−3日及び第−2日にプロピレングリコールフリーのメルファラン組成物(100mg/m2)を全ての患者に投与したことを除いて、研究のパラメータは実施例17に記載のものと同様であった。他の点では、包含基準、排除基準、安全性基準、投薬、治療、及び効能エンドポイントは、実施例17において上述したものと同様であった。
【0227】
結論
これらの実施例は、本発明の可能性のある実施態様を示す。本発明の種々の実施態様を上述したが、限定ではなく、例としてのみ示したことが理解されるべきである。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の種々の変更が行われ得ることが、当業者に明らかである。従って、本発明の外延及び範囲は、上述の例示的な実施態様のいずれによっても限定されないが、下記の特許請求の範囲及びそれらの均等物に従ってのみ定義される。
【0228】
雑誌論文又は要旨、公開された又は対応の米国又は外国の特許出願、発行された又は外国の特許、又は任意の他の文書を含む、本明細書において引用される全ての文書は、引用した文書に示される全てのデータ、表、図、及び本文を含めて、参照により本明細書に各々全体が組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新生物疾患に罹患する対象を治療する方法であって、
組成物を水性希釈剤で希釈し、メルファラン25mg〜125mgと式I
【化1】

[式中、nは4、5又は6であり;
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、独立して、−H、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基、又は場合により置換される直鎖又は分枝鎖C1−C6基であり;
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つは、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基である]
のシクロデキストリン誘導体とを含む希釈薬学的組成物を備える工程であって、
ここで、希釈薬学的組成物は、約4〜約6のpHを有し;
シクロデキストリン誘導体は、メルファランに対して少なくとも50:1(w/w)の濃度で存在し;
希釈薬学的組成物中のメルファランは、希釈後5時間以内で約25℃で2%又はそれ未満分解する、該工程;及び
必要がある対象に注射によって希釈薬学的組成物を投与する工程;
を含む、上記方法。
【請求項2】
新生物疾患が、骨髄腫、多発性骨髄腫、黒色腫、急性骨髄性白血病、悪性黒色腫、乳がん、卵巣がん、精巣がん、進行性前立腺がん、神経内分泌がん、転移性黒色腫、転移性神経内分泌腫瘍、転移性腺がん、肝細胞がん、骨原性肉腫、真性多血症(polycythemia veraplasma)、形質細胞新生物、アミロイドーシス、硬化性粘液水腫、及びそれらの併発より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
新生物疾患が多発性骨髄腫であり、投与が全身性であり、多発性骨髄腫の緩和療法を提供する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つが、ヒドロキシ置換C3基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9が、独立して、シクロデキストリン誘導体1個当たり4〜8の置換度を有する直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基であり、残りの置換基が−Hである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つが、直鎖C4−(アルキレン)−SO3-基で置換されている、請求項1〜3又は5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
シクロデキストリン誘導体が、式II
【化2】

[式中、R=(H)21-x又は(−(CH24−SO3-Na+x、x=6.0〜7.1
である]
の化合物であり;
薬学的組成物が、塩酸塩としてのメルファラン約50mgを含み;
シクロデキストリン誘導体が、メルファランに対して50:1〜100:1(w/w)の濃度で存在する、
請求項1〜3、5又は6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
希釈薬学的組成物がアルコールを実質的に含まない、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
水性希釈剤が生理食塩液である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
新生物疾患に罹患する対象が小児の対象である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
希釈薬学的組成物中のメルファランが、希釈後10時間以内で約25℃で4%又はそれ未満分解する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
希釈薬学的組成物を投与前に約0.5時間〜約18時間保存する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
投与が、等価用量のメルファランを含有しかつシクロデキストリン誘導体を欠くメルファラン製剤によって提供されるメルファランCmaxよりも少なくとも20%又はそれ以上大きいメルファランCmaxを新生物疾患に罹患する対象に提供する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
投与が、等価用量のメルファランを含有しかつシクロデキストリン誘導体を欠くメルファラン製剤によって提供されるメルファランAUC0-tよりも少なくとも20%又はそれ以上大きいメルファランAUC0-tを新生物疾患に罹患する対象に提供する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
幹細胞移植が適応とされている対象を前処置するための方法であって、
幹細胞移植が適応とされている対象に1日当たり50mg/m2〜300mg/m2のメルファラン用量を投与する工程であって、メルファラン用量は、メルファランと式I
【化3】

[式中、nは4、5又は6であり;
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、独立して、−H、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基、又は場合により置換される直鎖又は分枝鎖C1−C6基であり;
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つは、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基である]
のシクロデキストリン誘導体とを含む薬学的組成物で投与され、
ここで、薬学的組成物は、約4〜約6のpHを有し;
ここで、シクロデキストリン誘導体は、メルファランに対して少なくとも25:1(w/w)の比で存在する、該工程;
を含む、上記方法。
【請求項16】
投与が2日又はそれより多い期間に及ぶ、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
幹細胞移植の必要がある対象が小児の対象である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
投与を静脈内で行う、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
投与を四肢灌流を介して行う、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つがヒドロキシ置換C3基である、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
シクロデキストリン誘導体が、式II
【化4】

[式中、R=(H)21-x又は(−(CH24−SO3-Na+x、x=6.0〜7.1
である]
の化合物であり;
薬学的組成物が、塩酸塩としてのメルファラン約200mgを含み;
シクロデキストリン誘導体が、メルファランに対して25:1〜35:1(w/w)の比で存在する、
請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
幹細胞移植が適応とされている対象が、骨髄腫、多発性骨髄腫、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病、急性骨髄性白血病、ホジキン病、急性リンパ芽球性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病、神経芽腫、再生不良性貧血、慢性顆粒球性白血病、神経芽腫、鎌状赤血球症、骨原性肉腫、ユーイング肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、形質細胞新生物、アミロイドーシス、硬化性粘液水腫、及びそれらの併発より選択される疾患又は障害に罹患している、請求項15〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
濃縮メルファラン組成物を水性希釈剤で希釈して、薬学的組成物を備える工程を含む、請求項15〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
濃縮メルファラン組成物がメルファラン50mg〜500mgを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
濃縮メルファラン組成物が約200mgを含む、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
薬学的組成物がアルコールを実質的に含まない、請求項15〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
水性希釈剤が生理食塩液である、請求項23〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
薬学的組成物中のメルファランが、希釈後10時間以内で約25℃で4%又はそれ未満分解する、請求項23〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
薬学的組成物を投与前に約0.5時間〜約12時間保存する、請求項23〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
投与が、等価用量のメルファランを含有しかつシクロデキストリン誘導体を欠くメルファラン製剤によって提供されるメルファランCmaxよりも少なくとも20%又はそれ以上大きいメルファランCmaxを、幹細胞移植が適応とされている対象に提供する、請求項15〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
投与が、等価用量のメルファランを含有しかつシクロデキストリン誘導体を欠くメルファラン製剤によって提供されるメルファランAUC0-tよりも少なくとも20%又はそれ以上大きいメルファランAUC0-tを、幹細胞移植が適応とされている対象に提供する、請求項15〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
塩酸塩としてのメルファラン25mg〜125mg;
任意の緩衝剤;及び
式I
【化5】

[式中、nは4、5又は6であり;
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、独立して、−H、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基、又は置換されていてもよい直鎖又は分枝鎖C1−C6基であり;
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つは、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基である]
のシクロデキストリン誘導体;
を含んでなる薬学的組成物であって、
ここで、薬学的組成物は約4〜約6のpHを有し;
水溶液での薬学的組成物の希釈は、メルファランが希釈後5時間以内で約25℃で2%又はそれ未満分解する希釈薬学的組成物を提供し;
シクロデキストリン誘導体は、メルファランに対して50:1〜100:1(w/w)の比で存在する;
上記薬学的組成物。
【請求項33】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つがヒドロキシ置換C3基である、請求項32に記載の薬学的組成物。
【請求項34】
シクロデキストリン誘導体が、式II
【化6】

[式中、R=(H)21-x又は(−(CH24−SO3-Na+x、x=6.0〜7.1
である]
の化合物であり;
薬学的組成物が、塩酸塩としてのメルファラン約50mgを含んでなり;
シクロデキストリン誘導体が、メルファランに対して約55:1(w/w)の比で存在する;
請求項32に記載の薬学的組成物。
【請求項35】
塩酸塩としてのメルファラン150mg〜250mg;
任意の緩衝剤;及び
式I
【化7】

[式中、nは4、5又は6であり;
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、独立して、−H、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基、又は置換されていてもよい直鎖又は分枝鎖C1−C6基であり;
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つは、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基である]
のシクロデキストリン誘導体;
を含む薬学的組成物であって、
ここで、薬学的組成物は約4〜約6のpHを有し;
水溶液での薬学的組成物の希釈は、メルファランが希釈後5時間以内で約25℃で2%又はそれ未満分解するメルファラン溶液を提供し;
ここで、シクロデキストリン誘導体は、メルファランに対して25:1〜35:1(w/w)の比で存在する;
上記薬学的組成物。
【請求項36】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9少なくとも1つがヒドロキシ置換C3基である、請求項35に記載の薬学的組成物。
【請求項37】
シクロデキストリン誘導体が、式II
【化8】

[式中、R=(H)21-x又は(−(CH24−SO3-Na+x、x=6.0〜7.1
である]
の化合物であり;
薬学的組成物が、塩酸塩としてのメルファラン約200mgを含んでなり;
シクロデキストリン誘導体が、メルファランに対して約30:1(w/w)の比で存在する;
請求項35に記載の薬学的組成物。
【請求項38】
塩酸塩としてのメルファラン25mg〜125mg及び任意の水溶性ポリマーを含む第1の容器;及び
水性希釈剤、任意の緩衝剤、及び式I
【化9】

[式中、nは4、5又は6であり;
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、独立して、−H、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基、又は置換されていてもよい直鎖又は分枝鎖C1−C6基であり;
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つは、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基である]
のシクロデキストリン誘導体を含んでなる第2の容器;
を含んでなる薬学的キットであって:
ここで、シクロデキストリン誘導体は、メルファランに対して少なくとも50:1(w/w)の濃度で第2の容器中に存在し;
第1の容器及び第2の容器を合わせることが、希釈後5時間以内で約25℃で2%又はそれ未満分解する約4〜約6のpHを有する希釈薬学的組成物を提供する;
上記薬学的キット。
【請求項39】
塩酸塩としてのメルファラン150mg〜250mg及び任意の水溶性ポリマーを含む第1の容器;及び
水性希釈剤、任意の緩衝剤、及び式I
【化10】

[式中、nは4、5又は6であり;
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、独立して、−H、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基、又は置換されていてもよい直鎖又は分枝鎖C1−C6基であり;
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つは、直鎖又は分枝鎖C1−C8−(アルキレン)−SO3-基である]
のシクロデキストリン誘導体を含んでなる第2の容器を含んでなる薬学的キットであって:
ここで、シクロデキストリン誘導体は、メルファランに対して25:1〜35:1(w/w)の濃度で第2の容器中に存在し;
第1の容器及び第2の容器を合わせることが、希釈後5時間以内で約25℃で2%又はそれ未満分解する約4〜約6のpHを有する希釈薬学的組成物を提供する;
上記薬学的キット
【請求項40】
第1の容器が、ポビドンを10mg〜30mgの量で含んでなり、第2の容器が、第1の容器及び第2の容器を合わせると約4〜約6のpHを与えるに十分な濃度でpH調整剤を含んでなる、請求項38または39に記載の薬学的キット。
【請求項41】
シクロデキストリン誘導体が、式II
【化11】

[式中、R=(H)21-x又は(−(CH24−SO3-Na+x、x=6.0〜7.1
である]
の化合物であり;
第1の容器が、塩酸塩としてのメルファラン約200mgを含み;
シクロデキストリン誘導体が、メルファランに対して約30:1(w/w)の量で第2の容器中に存在する;
請求項39に記載の薬学的キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−528795(P2012−528795A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513334(P2012−513334)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/036736
【国際公開番号】WO2010/138920
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(501278788)サイデックス・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】