シクロメタル化遷移金属錯体及びこれを用いた有機電界発光素子
【課題】シクロメタル化遷移金属錯体及びこれを用いた有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】下記化学式
で表わされる金属錯体。有機電界発光素子の有機膜形成時に利用可能であり、400〜650nm波長領域で発光するだけでなく、赤色、緑色の発光物質と共に使用して白色光を出すことができる。
【解決手段】下記化学式
で表わされる金属錯体。有機電界発光素子の有機膜形成時に利用可能であり、400〜650nm波長領域で発光するだけでなく、赤色、緑色の発光物質と共に使用して白色光を出すことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロメタル化遷移金属錯体及びこれを用いた有機電界発光素子に係り、より詳細には、三重項MLCT(Metal−to−Ligand Charge−Transfer)で青色領域から赤色領域までの光の発光が可能なシクロメタル化遷移金属錯体と、これを有機膜の形成材料として採用している有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(有機EL素子)は、蛍光性または燐光性有機化合物薄膜(以下、有機膜という)に電流を流すと、電子と正孔とが有機膜で結合することによって光が発生する現象を用いた自発光型表示素子であって、軽量であり、部品が単純、製作工程が簡単な構造を有しており、高画質で、かつ広視野角を確保している。また、高色純度及び動映像を完璧に具現でき、低消費電力、低電圧駆動により携帯用電子機器に適した電気的特性を有している。
【0003】
一般的な有機EL素子は、基板上にアノードが形成されており、このアノード上にホール輸送層、発光層、電子輸送層、及びカソードが順次に形成されている構造を有している。ここで、ホール輸送層、発光層、及び電子輸送層は、有機化合物を含む有機膜である。上述のような構造を有する有機EL素子の駆動原理は、次の通りである。前記アノード及びカソード間に電圧を印加すると、アノードから注入されたホールは、ホール輸送層を経て発光層に移動する。一方、電子は、カソードから電子輸送層を経て発光層に注入され、発光層領域でキャリアが再結合して励起子を生成する。この励起子が放射失活する際に物質のバンドギャップに該当する波長の光が放出される。
【0004】
前記有機EL素子の発光層の形成材料は、その発光メカニズムにより一重項状態の励起子を利用する蛍光物質と、三重項状態を利用する燐光物質に区別される。このような蛍光物質もしくは燐光物質を単独で、または適切なホスト物質にドーピングして発光層を形成し、電子励起の結果、ホストに一重項励起子及び三重項励起子が形成される。この時、一重項励起子と三重項励起子の統計的生成比率は1:3である。
【0005】
発光層の形成材料として蛍光物質を使用する有機EL素子は、ホストで生成された三重項が浪費されるという不利な点を有する。一方、発光層の形成材料として燐光物質を使用する場合には、一重項励起子と三重項励起子とをいずれも使用できるので、内部量子効率100%に到達できるという長所を有している(非特許文献1)。したがって、発光層の形成材料として燐光物質を使用する場合、蛍光物質よりはるかに高い発光効率を有しうる。
【0006】
有機分子にIr、Pt、Rh、Pdのような重金属を導入すれば、重金属原子効果により発生するスピン軌道カップリングを通じて三重項状態と一重項状態が混ざるようになるが、これによって禁止帯への遷移が可能になり、常温でも効果的に燐光が発生しうる。
【0007】
最近、内部量子効率が100%に至る燐光を用いた高効率の緑色、赤色の物質が開発された。
【0008】
燐光を用いた高効率発光材料として、Ir、Ptなどの遷移金属を含む多様な物質が発表されているが、高効率のフルカラーディスプレイや低消費電力の白色発光の応用を実現するために要求される特性を満足させる物質は、緑色領域、赤色領域に限定されており、青色領域の適切な燐光物質が開発されていないため、燐光性フルカラーの素子開発に障害となっている。
【0009】
前記問題点を解決するために青色発光物質が開発されている(特許文献1、特許文献2)。また、分子配列を変形してHOMO−LUMOの差を大きくできるバルキー性官能基や配位子場強度の大きい官能基(例:シアノ基)を導入した有機金属錯体が開発された(非特許文献2)。その他にも、一般式Ir(ppy)2P(ph)3Y(但し、Y=ClまたはCNである)のIr錯体(特許文献3)、シクロメタル化配位子、キレートジホスフィン、塩素、及びシアノ基を有するIr(III)錯体(特許文献4)が開発された。
【0010】
また、特許文献5には、窒素原子と炭素原子とよりなるシクロメタル化金属錯体及びこれを含んだ有機EL素子が開示されている。
【0011】
しかし、これら物質は、何れもまだ色純度や発光効率、寿命などの側面で満足できるほどの物性を示していない実情である。
【特許文献1】国際公開第02/15645号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0064681号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0182441号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0048689号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2002/0134984号明細書
【非特許文献1】Baldo,et al.,Nature,Vol.395,151−154,1998
【非特許文献2】Mat. Res. Soc. Symp. Proc. 708, 119, 200; 3rd Chitose International Forum on Photonics Science and Technology, Chitose, Japan, 6−8 October, 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しょうとする第一の技術的課題は、三重項MLCTで青色から赤色に至る光を効率的に発光できるシクロメタル化金属錯体を提供することである。
【0013】
本発明が解決しょうとする第二の技術的課題は、青色から赤色に至る光を効率的に発光できる有機EL素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記第一の技術的課題を達成するために、本発明では、下記化学式1で表されるシクロメタル化金属錯体を提供する:
【0015】
【化1】
【0016】
(化学式1)
前記式中、
Mは、遷移金属であり、
Xは、NまたはCであり、
Lは、中性配位子であり、
CY1及びCY2は、置換もしくは非置換の芳香族または脂肪族環であり、
mは、1または2であり、
A4は、置換もしくは非置換のイミダゾリレン、もしくはピラゾリレン、またはこれらの誘導体であり、A1、A2、及びA3はそれぞれ独立して水素原子、置換もしくは非置換のイミダゾリルもしくはピラゾリル、またはこれらの誘導体である。
【0017】
第二の技術的課題を達成するために、本発明では、一対の電極間に有機膜を含む有機EL素子において、前記有機膜が前記化学式1のシクロメタル化金属錯体を含む有機EL素子を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のシクロメタル化金属錯体は、三重項MLCTで青色から赤色領域までの光を効率的に発光できる。このような有機金属錯体は、有機EL素子の有機膜の形成時に利用可能であり、高効率の燐光材料であって、400〜650nm波長領域で発光するだけでなく、緑色発光物質または赤色発光物質と共に使用して白色光を出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0020】
本発明によるシクロメタル化遷移金属錯体は、非炭素配位キレート配位子を含むことによって、高性能の効率的な青色発光が可能である。
【0021】
本発明のシクロメタル化金属錯体は、下記化学式1の構造を有する:
【0022】
【化2】
【0023】
(化学式1)
前記式中、
Mは、遷移金属であり、
Xは、NまたはCであり、
Lは、中性配位子であり、
CY1及びCY2は、置換もしくは非置換の芳香族または脂肪族環であり、
mは、1または2であり、
A4は、置換もしくは非置換のイミダゾリレンもしくはピラゾリレン、またはこれらの誘導体であり、A1、A2、及びA3はそれぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のイミダゾリルもしくはピラゾリル、またはこれらの誘導体である。
【0024】
本発明の他の一具現例によれば、前記シクロメタル化金属錯体は、下記化学式2ないし4で表される:
【0025】
【化3】
【0026】
(化学式2)
【0027】
【化4】
【0028】
(化学式3)
【0029】
【化5】
【0030】
(化学式4)
前記式中、
Mは、遷移金属であり、
Xは、NまたはCであり、
Lは、中性配位子であり、
CY1及びCY2は置換もしくは非置換の芳香族または脂肪族環であり、
mは、1または2であり、
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、置換基または水素原子であり、
nは、1ないし3の整数である。
【0031】
前記化学式2によるシクロメタル化遷移金属錯体は、遷移金属にホウ素イミダゾール配位子が連結された錯体であるということにその特徴があり、化学式3と4とは、ホウ素ピラゾール配位子が連結された錯体であるということにその特徴がある。
【0032】
本発明の一具現例によれば、前記化学式1において、A1ないしA4は、それぞれ独立してアルキル基(望ましくは、炭素数1ないし30、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし10)、(なお、前記アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、cyclo−ヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−iso−プロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2−メチル−1−iso−プロピルプロピル基、1−エチル−3− メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−iso− プロピルブチル基、2−メチル−iso− プロピル基、1−t−ブチル−2− メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、等の炭素数1〜30の直鎖、分岐または環状の炭化水素基などが挙げられる。)、アルケニル基(望ましくは、炭素数2ないし30、さらに望ましくは、2ないし20、特に望ましくは、2ないし10)、(なお、前記アルケニル基としては、例えば炭素数2〜10個のアルケニル基が好ましく、具体的には、ビニル基、アリル基、プロペニレン基、メタアリル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−オクテニル基などを好ましく挙げることができる。)、アルキニル基(望ましくは、炭素数2ないし30、さらに望ましくは、2ないし20、特に望ましくは、2ないし10)、(なお、前記アルキニル基としては、例えば炭素数2〜10個のアルキニル基が好ましく、エチニル基、2−プロピニル基、2−ペンチニル基、1−メチル−3−ペンチニル基、1,1−ジメチル−2−ペンチニル基、1−メチル−3−へキシニル基、4−オクチニル基などを挙げることができる。)、アリール基(望ましくは、炭素数6ないし30、さらに望ましくは、炭素数6ないし20、特に望ましくは、炭素数6ないし12)、(なお、前記アリール基の例としては、フェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、トリクロロフェニル基、ブロモフェニル基、フロロフェニル基、ペンタフロロフェニル基、ヨウ化フェニル基等のハロゲン化フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、エチルフェニル基、ジメチルエチルフェニル基、iso−プロピルフェニル基、t−ブチルフェニル基、t−ブチルメチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、トリフロロメチルフェニル基、等のアルキル誘導体置換フェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロポキシフェニル基、ヘキシルオキシフェニル基、シクロヘキシルオキシフェニル基、オクチルオキシフェニル基、2−エチルヘキシルオキシフェニル基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシフェニル基、メチルエトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、1−エトキシ−4− メトキシフェニル基、クロロメトキシフェニル基、エトキシエトキシフェニル基、エトキシエトキシエトキシフェニル基等のアルコキシ基置換フェニル基、メチルチオフェニル基、エチルチオフェニル基、t−ブチルチオフェニル基、ジ−tert− ブチルチオフェニル基、2−メチル−1− エチルチオフェニル基、2−ブチル−1− メチルチオフェニル基、等のアルキルチオ基置換フェニル基、N,N−ジメチルアミノフェニル基、N,N−ジエチルアミノフェニル基、N,N−ジプロピルアミノフェニル基、N,N−ジブチルアミノフェニル基、N,N−ジアミルアミノフェニル基、N,N−ジヘキシルアミノフェニル基、N−メチル−N− エチルアミノフェニル基、N−ブチル−N− エチルアミノフェニル基、N−ヘキシル−N− エチルアミノフェニル基、4−(N,N− ジメチルアミノ)−エチルフェニル基、4−(N,N− ジエチルアミノ)−メチルフェニル基、3−(N,N− ジメチルアミノ)−エチルフェニル基、2−(N,N− ジメチルアミノ)−エチルフェニル基等のアルキルアミノフェニル基、ナフチル基、クロロナフチル基、ジクロロナフチル基、トリクロロナフチル基、ブロモナフチル基、フロロナフチル基、ペンタフロロナフチル基、ヨウ化ナフチル基等のハロゲン化ナフチル基、エチルナフチル基、ジメチルエチルナフチル基、iso−プロピルナフチル基、t−ブチルナフチル基、t−ブチルメチルナフチル基、オクチルナフチル基、ノニルナフチル基、トリフロロメチルナフチル基等のアルキル誘導体置換ナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基、プロポキシナフチル基、ヘキシルオキシナフチル基、シクロヘキシルオキシナフチル基、オクチルオキシナフチル基、2−エチルヘキシルオキシナフチル基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシナフチル基、メチルエトキシナフチル基、ジメトキシナフチル基、クロロメトキシナフチル基、エトキシエトキシナフチル基、エトキシエトキシエトキシナフチル基等のアルコキシ基置換ナフチル基、メチルチオナフチル基、エチルチオナフチル基、t−ブチルチオナフチル基、メチルエチルチオナフチル基、ブチルメチルチナフチル基等のアルキルチオ基置換ナフチル基、N,N−ジメチルアミノナフチル基、N,N−ジエチルアミノナフチル基、N,N−ジプロピルアミノナフチル基、N,N−ジブチルアミノナフチル基、N,N−ジアミルアミノナフチル基、N,N−ジヘキシルアミノナフチル基、N−メチル−N− エチルアミノナフチル基、N−ブチル−N− エチルアミノナフチル基、N−ヘキシル−N− エチルアミノナフチル基、4−(N,N− ジメチルアミノ)−エチルナフチル基、4−(N,N− ジエチルアミノ)−メチルナフチル基、3−(N,N− ジメチルアミノ)−エチルナフチル基、2−(N,N− ジメチルアミノ)−エチルナフチル基等のアルキルアミノナフチル基などを挙げることができる。)アミノ基(−N(R’)(R’’))(望ましくは、(R’)(R’’)の合計炭素数が0ないし30、さらに望ましくは、0ないし20、特に望ましくは、0ないし10、なお前記R’、R’’は、炭化水素基である)、アルコキシ基(望ましくは、炭素数1ないし30、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし10)、(なお、前記アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、iso−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、iso−ペンチルオキシ基、neo−ペンチルオキシ基、1,2−ジメチル−プロピルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、cyclo−ヘキシルオキシ基、1,3−ジメチルブチルオキシ基、1−iso−プロピルプロピルオキシ基、1,2−ジメチルブチルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、1,4−ジメチルペンチルオキシ基、2−メチル−1−iso− プロピルプロピルオキシ基、1−エチル−3− メチルブチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3−メチル−1−iso− プロピルブチルオキシ基、2−メチル−1−iso− プロピルオキシ基、1−t−ブチル−2− メチルプロピルオキシ基、n−ノニルオキシ基等の炭素数1〜20の直鎖又は分枝のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、プロポキシエトキシ基、ブトキシエトキシ基、3−メトキシプロピルオキシ基、3−エトキシプロピルオキシ基、ジメトキシメトキシ基、ジエトキシメトキシ基、ジメトキシエトキシ基、ジエトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、ブチルオキシエトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシアルコキシ基、アルコキシアルコキシアルコキシアルコキシ基、クロロメトキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、トリフルオロメトキシ基、1,1,1,3,3,3,− ヘキサフルオロ−2− プロピルオキシ基等のハロゲン化アルコキシ基、ジメチルアミノエトキシ基、ジエチルアミノエトキシ基などのアルキルアミノアルコキシ基、ジアルキルアミノアルコキシ基等が挙げられる。)アリールオキシ基(望ましくは、6ないし30、さらに望ましくは、6ないし20、特に望ましくは、6ないし12)、複素環オキシ基(望ましくは、炭素数1ないし30、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし12)、アシル基(望ましくは、炭素数1ないし30、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし12)、アルコキシカルボニル基(望ましくは、炭素数2ないし30、さらに望ましくは、炭素数2ないし20、特に望ましくは、2ないし12)、アリールオキシカルボニル基(望ましくは、炭素数7ないし30、さらに望ましくは、7ないし20、特に望ましくは、7ないし12)、アシルオキシ基(望ましくは、炭素数2ないし30、さらに望ましくは、炭素数2ないし20、特に望ましくは、炭素数2ないし10)、アシルアミノ基(望ましくは、炭素数2ないし30、さらに望ましくは、2ないし20、特に望ましくは、2ないし10)、アルコキシカルボニルアミノ基(望ましくは、炭素数2ないし30、さらに望ましくは、炭素数2ないし20、特に望ましくは、2ないし12)、アリールオキシカルボニルアミノ基(望ましくは、炭素数7ないし30、さらに望ましくは、炭素数7ないし20、特に望ましくは、7ないし12)、スルホニルアミノ基(望ましくは、1ないし30、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし12)、スルファモイル基(望ましくは、炭素数0ないし30、さらに望ましくは、0ないし20、特に望ましくは、0ないし12)、カルバモイル基(望ましくは、炭素数1ないし30、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし12)、アルキルチオ基(望ましくは、炭素数1ないし30、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし12)、アリールチオ基(望ましくは、炭素数6ないし30、さらに望ましくは、6ないし20、特に望ましくは、6ないし12)、複素環チオ基(望ましくは、炭素数1ないし30、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし12)、スルホニル基(望ましくは、炭素数1ないし30)、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし12)、スルフィニル基(望ましくは、炭素数1ないし30、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし12)、ウレイド基(望ましくは、炭素数1ないし30、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし12)、燐酸アミド基(望ましくは、炭素数1ないし30、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし12)、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基(望ましくは、炭素数1ないし30、さらに望ましくは、1ないし12)、シリル基(望ましくは、炭素数3ないし40、さらに望ましくは、3ないし30、特に望ましくは、3ないし24)、及びシリルオキシ基(望ましくは、炭素数3ないし40、さらに望ましくは、3ないし30、特に望ましくは、3ないし24)よりなる群から選択された置換基に置換されたイミダゾールまたはピラゾールでありうる。
【0033】
前記化学式1のシクロメタル化遷移金属錯体は、具体的には下記化学式5の化合物でありうる。
【0034】
【化6】
【0035】
(化学式5)
前記式中、
Mは、遷移金属であり、
Lは、中性配位子であり、
mは、1または2であり、
R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、Rn及びR'は、それぞれ独立して、置換基または水素原子であり、ここで、nは、1ないし3の整数であり、
前記n1は、1ないし4の整数である。
【0036】
前記化学式1ないし化学式4において、CY1、CY2は、置換または非置換のベンジン環とナフタレン環のような芳香族炭化水素環;置換または非置換のピリジン環、ピラジン環、キノリン環、フラン環、チオフェン環のような芳香族ヘテロ環;置換または非置換のシクロヘキセン環のような脂肪族炭化水素環;ピラン環のような脂肪族ヘテロ環などを含みうる。
【0037】
すなわち、前記シクロメタル化配位子(CYN−CYC)は、下記構造式で表されるが、これに限定されるものではない。
【0038】
【化7a】
【0039】
【化7b】
【0040】
【化7c】
【0041】
また、前記CY1、CY2を置換する基としては、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、第1〜3級アミノ基などが好ましい。
【0042】
前記式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は、互いに独立して一置換または多置換の官能基であって、水素、ハロゲン原子、−OR、−N(R)2、−P(R)2、−POR、−PO2R、−PO3R、−SR、−Si(R)3、−B(R)2、−B(OR)2、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R)、−CN、−NO2、−SO2、−SOR、−SO2R、−SO3R、C1−C20のアルキル基、またはC6−C20のアリール基であり、前記Rは、前記の通りであり、Zは、S、O、またはNR0(R0は、水素または C1−C20のアルキル基)である。
【0043】
前記化学式1ないし化学式5において中性配位子として使われるLは、例えば、下記のようであるが、これに限定されるものではない。
【0044】
【化8】
【0045】
前記R1、R2、R3は、それぞれ独立して、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、またはヘテロアリール基でありうる。
【0046】
また、前記中性配位子の水素もアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、またはヘテロアリール、シリル、ニトリル、ヒドロキシ、ハロゲン基に置換できる。
【0047】
前記化学式1ないし5中、遷移金属Mは、Ru、Rh、Os、Ir、Pt、またはAuでありうる。
【0048】
前記化学式1によるシクロメタル化遷移金属錯体は、下記化合物のうち何れか一つで具体化されうるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
【化9】
【0050】
(化学式6)
【0051】
【化10】
【0052】
(化学式7)
【0053】
【化11】
【0054】
(化学式8)
【0055】
【化12】
【0056】
(化学式9)
【0057】
【化13】
【0058】
(化学式10)
【0059】
【化14】
【0060】
(化学式11)
【0061】
【化15】
【0062】
(化学式12)
【0063】
【化16】
【0064】
(化学式13)
【0065】
【化17】
【0066】
(化学式14)
【0067】
【化18】
【0068】
(化学式15)
【0069】
【化19】
【0070】
(化学式16)
本発明によるシクロメタル化遷移金属錯体は、400nmないし650nmの波長帯で発光特性を有する。
【0071】
本発明によるシクロメタル化遷移金属錯体は、シクロメタル化モイエティを提供する出発物質である[Ir(C^N)2ClL]2誘導体を利用してワッツ(Watts)グループにより報告された方法(F.O.Garces,R.J.Watts,Inorg.Chem.1988,(35),2450)によって合成可能である。
【0072】
以下、本発明の実施例による遷移金属錯体の合成経路を説明する。
【0073】
下記反応式を参照すれば、前記出発物質[Ir(C^N)2ClL]2誘導体及びホウ素化合物をジクロロメタン及びメタノールなどの溶媒と混合し、これを50℃で2ないし48時間攪拌して本発明のホウ素イミダゾール配位子含有のシクロメタル化遷移金属錯体を合成できる。
【0074】
【化20】
【0075】
前記式中、X、L、R1、R2、R3、R4、CY1、及びCY2は、前記化学式1〜5で定義した通りである。
【0076】
本発明の有機EL素子は、本発明によるシクロメタル化遷移金属錯体を利用して有機膜、特に、発光層を形成して製作される。この時、前記化学式1で表される遷移金属錯体は、発光層の形成物質である燐光ドーパント材料として非常に有用であり、青色波長領域で優れた発光特性を示す。
【0077】
本発明による遷移金属錯体を燐光ドーパントとして使用する場合、有機膜は、高分子ホスト、高分子と低分子の混合物ホスト、低分子ホスト、及び非発光高分子マトリックスよりなる群から選択された一つ以上をさらに含みうる。ここで、高分子ホスト、低分子ホスト、非発光高分子マトリックスとしては、有機EL素子用の発光層形成時に一般的に使われるものであれば、何れも使用可能である。
【0078】
前記高分子ホストの例としては、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリフルオレンなどがあり、前記低分子ホストの例としては、4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)、4,4’−ビス[9−(3,6−ビフェニルカルバゾリル)]−1,1’−ビフェニル、9,10−ビス[(2’,7’−t−ブチル)−9’,9”−スピロビフルオレニルアントラセン、テトラフルオレンなどがあり、前記非発光高分子マトリックスとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
本発明による遷移金属錯体の含有量は、発光層形成材料の総質量100質量部を基準として、1ないし30質量部であることが望ましい。そして、かかるイリジウム金属錯体を発光層に導入しようとする場合には、真空蒸着法、スパッタリング法、プリンティング法、コーティング法、インクジェット法、電子ビームを用いた法などが利用できる。
【0080】
また、本発明による遷移金属錯体は、緑色発光物質または赤色発光物質と共に使用して白色光を発光させることができる。
【0081】
ここで、有機膜の厚さは、30ないし100nmであることが望ましい。前記有機膜は、発光層以外に電子輸送層、正孔輸送層のように有機EL素子で一対の電極の間に形成される有機化合物よりなる膜を称する。このような有機EL素子は、一般的に知られた正極/発光層/負極、正極/バッファ層/発光層/負極、正極/正孔輸送層/発光層/負極、正極/バッファ層/正孔輸送層/発光層/負極、正極/バッファ層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/負極、正極/バッファ層/正孔輸送層/発光層/正孔遮断層/負極などの構造で形成できるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
この時、前記バッファ層の素材としては、一般的に使われる物質を使用でき、望ましくは、フタロシアニン銅、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、またはそれらの誘導体を使用できるが、これに限定されるものではない。
【0083】
前記正孔輸送層の素材としては、一般的に使われる物質を使用でき、望ましくは、ポリトリフェニルアミンを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0084】
前記電子輸送層の素材としては、一般的に使われる物質を使用でき、望ましくは、ポリオキサジアゾールを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0085】
前記正孔遮断層の素材としては、一般的に使われる物質を使用でき、望ましくは、LiF、BaF2、またはMgF2などを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0086】
本発明の有機EL素子は、特別な装置や方法を必要とせず、通常の発光材料を用いた有機EL素子の製作方法によって製作可能である。
【0087】
本発明によるシクロメタル化金属錯体は、400ないし650nm領域で発光できる。このような有機金属錯体を用いた発光ダイオードは、フルカラー表示用の光源照明、バックライト、屋外掲示板、光通信、内部装飾などに使用可能である。
【実施例】
【0088】
以下、本発明について実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明が下記実施例のみに限定されるものではない。
【0089】
参考例1.F2ppyダイマーの合成
【0090】
【化21】
【0091】
500mLの枝付きフラスコに19.85g(125mmol)の2−ブロモピリジン、25.00g(158mmol)の2,4−ジフルオロフェニルボロン酸、100mLのトルエン、エタノール48mL、及び水95mLで製造した2Mの炭酸ナトリウム溶液を加え、これを窒素雰囲気下、常温で攪拌した。次いで、前記反応混合物に4.53g(3.92mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を入れて、窒素雰囲気下で光を遮断したまま15時間還流した。
【0092】
前記反応終了後、反応混合物の温度を常温に調節し、酢酸エチルと水を利用して抽出した後、カラムクロマトグラフィ(トルエン:ヘキサン=10:1)に分離して薄い茶色の液体(F2ppyH)を得た。
【0093】
【表1】
【0094】
前記過程によって合成した2−(4,6−ジフルオロフェニルピリジン)単量体及びIrCl3・nH2Oを用いて黄色粉末であるF2ppyダイマーを合成した。この時、合成法は、J.Am.Che.Soc.,1984,106,6647〜6653を参照した。
【0095】
【表2】
【0096】
参考例2.MeOF2ppyダイマーの合成
【0097】
【化22】
【0098】
2−ブロモピリジンの代わりに2−ブロモ−4−メチルピリジンを使用することを除いては、参考例1と同じ方法でMeF2ppyダイマーを合成した。
【0099】
参考例3.DMAF2ppyダイマーの合成
【0100】
【化23】
【0101】
2−ブロモピリジンの代わりに2−ブロモ−4−ジメチルアミノピリジン25.26g(1.25x104mmol)を使用することを除いては、参考例1と同じ方法でDMAF2ppyダイマーを合成した。
【0102】
【表3】
【0103】
実施例1.化合物(7)の合成((MeOF2ppy)2IrMe−imz Bimz4)
【0104】
【化24】
【0105】
(工程1.MeOF2ppyIrMe−imz Clの合成)
MeOF2ppyダイマー0.1mmol及びN−メチルイミダゾール0.25mmolをCHCl320ml中、40℃で6時間攪拌した。減圧下に溶媒を蒸発させ、黄緑色の粉末を溶離液としてCH2Cl2とアセトン(10:0.5)を使用するシリカカラムに通過させた。溶媒の蒸発後、緑色粉末を得た。1H NMR及びMassスペクトルでMeOF2ppyIrMe−imz Cl化合物を確認した。
【0106】
(工程2.(MeOF2ppy)2IrMe−imz Bimz4の合成)
MeOF2ppyIrMe−imz Cl 0.1mmolをクロロホルム10mL中に溶解させた。ここにNaBimz40.5mmolを加えてからメタノール10mLを加えた。混合物を50℃で4ないし6時間攪拌した。溶媒を減圧下に蒸発させて除去し、CH2Cl220mLで処理し、次いでろ過した。減圧下の蒸発によってCH2Cl2を除去して黄緑色の粉末を得た(収率:65%)。1H NMR及びMassスペクトルで(MeOF2ppy)2IrMe−imz Bimz4の化合物を確認した。
【0107】
実施例2.化合物(8)の合成((DMAF2ppy)2IrMe−imz Bimz4)
【0108】
【化25】
【0109】
相応するダイマー(DMAF2ppyダイマー)から(MeOF2ppy)2IrMe−imz Bimz4と同じ方式で合成して錯体、(DMAF2ppy)2IrMe−imz Bimz4を得た(収率:65%)。1H NMR及びMassスペクトルで(DMAF2ppy)2IrMe−imz Bimz4の化合物を確認した。
【0110】
実施例3.化合物(9)の製造((F2ppy)2IrPh−imz Bimz4)
【0111】
【化26】
【0112】
相応するダイマー(F2ppyダイマー)から(MeOF2ppy)2IrMe−imz Bimz4と同じ方式で合成して錯体、(F2ppy)2IrPh−imz Bimz4を得た(収率:65%)。1H NMR及びMassスペクトルで(F2ppy)2IrPh−imz Bimz4の化合物を確認した。
【0113】
実施例4.化合物(13)の製造((F2ppy)2IrBenz−iso−CN Bimz4)
【0114】
【化27】
【0115】
(工程1.F2ppyIrBenz−iso−CN Clの合成)
F2ppyダイマー0.1mmol及びベンジルイソシアニド(ベンズ−イソ−ニトリル)0.25mmolをCHCl320ml中、室温で24時間攪拌した。減圧下に溶媒を蒸発させ、黄色粉末を溶離液としてCH2Cl2とアセトン(10:0.5)を使用するシリカカラムに通過させた。溶媒の蒸発後、黄色粉末を得た。1H NMR及びMassスペクトルでF2ppyIrBenz−iso−CN Cl化合物を確認した。
【0116】
(工程2.(F2ppy)2IrBenz−iso−CN Bimz4の合成)
F2ppyIrBenz−iso−CN Cl 0.1mmolをクロロホルム10mL中に溶解させた。ここにNaBimz40.5mmolを加えてからメタノール10mLを加えた。混合物を50℃で4ないし6時間攪拌した。溶媒を減圧下に蒸発させて除去し、CH2Cl220mLで処理し、次いでろ過した。減圧下の蒸発によってCH2Cl2を除去して黄色粉末を得た(収率:50%)。1H NMR及びMassスペクトルで(F2ppy)2IrBenz−iso−CN Bimz4の化合物を確認した。
【0117】
実施例5.化合物(15)の製造((F2ppy)2IrP(n−Bu)3 Bimz4)
【0118】
【化28】
【0119】
(工程1.F2ppyIrP(n−Bu)3 Clの合成)
F2ppyダイマー0.1mmol及びトリ−n−ブチルホスフィン0.25mmolをCHCl320ml中、室温で24時間攪拌した。減圧下に溶媒を蒸発させ、黄色粉末を溶離液としてCH2Cl2とアセトン(10:1)を使用するシリカカラムに通過させた。溶媒の蒸発後、黄色粉末を得た。1H NMR及びMassスペクトルでF2ppyIrP(n−bu)3 Cl化合物を確認した。
【0120】
(工程2.(F2ppy)2IrP(n−Bu)3 Bimz4の合成)
F2ppyIrP(n−bu)3 Cl 0.1mmolをクロロホルム10mL中に溶解させた。ここにNaBimz40.5mmolを加えてからメタノール10mLを加えた。混合物を50℃で4ないし6時間攪拌した。溶媒を減圧下に蒸発させて除去し、CH2Cl220mLで処理し、次いでろ過した。減圧下の蒸発によってCH2Cl2を除去して黄色粉末を得た(収率:60%)。1H NMR及びMassスペクトルで(F2ppy)2IrP(n−bu)3 Bimz4の化合物を確認した。
【0121】
前記工程により得られた化合物などの発光特性は、前記化合物をジクロロメタンに溶解して10-4M溶液に製造した後、溶液状態での発光特性を調べた。
【0122】
前記実施例から得た化合物の発光特性及びCIE(色座標)特性をまとめて下記表1に表し、図2ないし図4にPLスペクトルを表した。
【0123】
【表4】
【0124】
前記表4から、ホウ素イミダゾール錯体化合物を導入することによって、優れた燐光特性を有するドーパントが形成され、特に、置換基の導入によって強い電場効果により440〜470nm領域で発光する青色燐光材料として適しているということが分かる。
【0125】
図8及び図9は、本発明の実施例1による化合物7の相異なる濃度でのエネルギー転移を示した図面である。これは、ホスト物質としてmCPを使用し、ドーパント物質として実施例1で合成した化合物7の(MeOF2ppy)2IrMe−imz4を使用した場合の濃度変化によるエネルギー転移の強度を表した。
【0126】
図8及び9では、濃度が上昇するほどmCPの強度が低下し、ドーパントの強度が高くなって、エネルギー転移がなされることが分かる。また、図9では、濃度が10%以上になるほどドーパントの強度が低下することが分かる。
【0127】
有機EL素子の製作
実施例6
ITOがコーティングされた透明電極基板20を洗浄した後、ITOを感光性樹脂とエッチング液を利用してパターニングしてITO電極パターン10を形成し、これをさらに洗浄した。このように洗浄された結果物上にPEDOT{poly(3,4−ethylenedioxythiophene)}[AI 4083] を約50nmの厚さにコーティングした後、120℃で約5分間ベーキングしてホール注入層11を形成した。
【0128】
前記ホール注入層11の上部に、トルエン17.4g中にPS53.1gを溶解させたポリスチレン溶液3.3gにmCP29mg及び(F2ppy)2IrPh−imz4 [化学式9]2.5mgを混合して得た発光層の形成用の組成物を前記ホール注入層の上部にスピンコーティングし、100℃で1時間ベーキング処理した後、真空オーブン内で溶媒を完全に除去して厚さ40nmの発光層12を形成させた[PS24質量%、mCP70質量%、(F2ppy)2IrPh−imz46質量%]。
【0129】
次いで、前記高分子発光層12の上部に真空蒸着器を利用して真空度を4×10−6torr以下に維持しつつBAlqを真空蒸着して40nm厚さの電子輸送層15を形成し、次いで、この上部にLiFを0.1Å/secの速度で真空蒸着して10nm厚さの電子注入層を形成した。
【0130】
次いで、Alを10Å/sec の速度で蒸着して200nm厚さのカソード14を蒸着し、有機EL素子を完成した。この時、封止過程は、乾燥した窒素ガス雰囲気下のグローブボックスにBaO粉末を入れて金属缶で密封した後、UV硬化剤で最終処理する過程を通じて行われた。
【0131】
前記EL素子は、多層型素子であって、概略的な構造は、図13に示す通りであり、発光面積は9mm2であった。
【0132】
実施例7
(MeOF2ppy)2IrMe−imz4(化学式7)の含有量を6質量%使用したことを除いては実施例6と同様にEL素子を製作した。
【0133】
実施例8
(MeOF2ppy)2IrMe−imz4(化学式7)の含有量を8質量%使用したことを除いては実施例6と同様にEL素子を製作した。
【0134】
実施例9
(MeOF2ppy)2IrMe−imz4(化学式7)の含有量を10質量%使用したことを除いては実施例6と同様にEL素子を製作した。
【0135】
実施例10
(F2ppy)2IrP(n−bu3)Bimz4(化学式15)の含有量を10質量%使用したことを除いては実施例6と同様にEL素子を製作した。
【0136】
デバイス性能評価結果(最大発光波長、色座標、輝度、ターンオン電圧など)は表2にまとめた。
【0137】
【表5】
【0138】
前記の内容からホウ素イミダゾール錯体配位子を導入すると、優れた燐光特性を有するドーパントが形成され、青色燐光材料として適しているということが分かる。また、多様なメイン配位子を導入することによって、赤色、緑色、及び青色のフルカラーの具現が可能であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明は、有機EL素子の関連技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明の実施例1による化合物の質量分析スペクトルである。
【図2】本発明の実施例3による化合物の質量分析スペクトルである。
【図3】本発明の実施例4による化合物の質量分析スペクトルである。
【図4】本発明の実施例5による化合物の質量分析スペクトルである。
【図5】本発明の実施例1による化合物のPLスペクトルである。
【図6】本発明の実施例2による化合物のPLスペクトルである。
【図7】本発明の実施例3による化合物のPLスペクトルである。
【図8】本発明の実施例1による化合物の相異なる濃度でのエネルギー転移を示した図面である。
【図9】本発明の実施例1による化合物の相異なる濃度でのエネルギー転移を示した図面である。
【図10】本発明の実施例7による有機EL素子のELスペクトルを示したグラフである。
【図11】本発明の実施例6ないし9による有機EL素子の輝度効率を示したグラフである。
【図12】本発明の実施例6ないし9による有機EL素子の外部量子効率を示したグラフである。
【図13】本発明の実施例6ないし10による有機EL素子の構造を概略的に示した図面である。
【符号の説明】
【0141】
10 ITO電極パターン、
11 ホール注入層、
12 発光層、
14 カソード、
15 電子輸送層、
20 基板。
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロメタル化遷移金属錯体及びこれを用いた有機電界発光素子に係り、より詳細には、三重項MLCT(Metal−to−Ligand Charge−Transfer)で青色領域から赤色領域までの光の発光が可能なシクロメタル化遷移金属錯体と、これを有機膜の形成材料として採用している有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(有機EL素子)は、蛍光性または燐光性有機化合物薄膜(以下、有機膜という)に電流を流すと、電子と正孔とが有機膜で結合することによって光が発生する現象を用いた自発光型表示素子であって、軽量であり、部品が単純、製作工程が簡単な構造を有しており、高画質で、かつ広視野角を確保している。また、高色純度及び動映像を完璧に具現でき、低消費電力、低電圧駆動により携帯用電子機器に適した電気的特性を有している。
【0003】
一般的な有機EL素子は、基板上にアノードが形成されており、このアノード上にホール輸送層、発光層、電子輸送層、及びカソードが順次に形成されている構造を有している。ここで、ホール輸送層、発光層、及び電子輸送層は、有機化合物を含む有機膜である。上述のような構造を有する有機EL素子の駆動原理は、次の通りである。前記アノード及びカソード間に電圧を印加すると、アノードから注入されたホールは、ホール輸送層を経て発光層に移動する。一方、電子は、カソードから電子輸送層を経て発光層に注入され、発光層領域でキャリアが再結合して励起子を生成する。この励起子が放射失活する際に物質のバンドギャップに該当する波長の光が放出される。
【0004】
前記有機EL素子の発光層の形成材料は、その発光メカニズムにより一重項状態の励起子を利用する蛍光物質と、三重項状態を利用する燐光物質に区別される。このような蛍光物質もしくは燐光物質を単独で、または適切なホスト物質にドーピングして発光層を形成し、電子励起の結果、ホストに一重項励起子及び三重項励起子が形成される。この時、一重項励起子と三重項励起子の統計的生成比率は1:3である。
【0005】
発光層の形成材料として蛍光物質を使用する有機EL素子は、ホストで生成された三重項が浪費されるという不利な点を有する。一方、発光層の形成材料として燐光物質を使用する場合には、一重項励起子と三重項励起子とをいずれも使用できるので、内部量子効率100%に到達できるという長所を有している(非特許文献1)。したがって、発光層の形成材料として燐光物質を使用する場合、蛍光物質よりはるかに高い発光効率を有しうる。
【0006】
有機分子にIr、Pt、Rh、Pdのような重金属を導入すれば、重金属原子効果により発生するスピン軌道カップリングを通じて三重項状態と一重項状態が混ざるようになるが、これによって禁止帯への遷移が可能になり、常温でも効果的に燐光が発生しうる。
【0007】
最近、内部量子効率が100%に至る燐光を用いた高効率の緑色、赤色の物質が開発された。
【0008】
燐光を用いた高効率発光材料として、Ir、Ptなどの遷移金属を含む多様な物質が発表されているが、高効率のフルカラーディスプレイや低消費電力の白色発光の応用を実現するために要求される特性を満足させる物質は、緑色領域、赤色領域に限定されており、青色領域の適切な燐光物質が開発されていないため、燐光性フルカラーの素子開発に障害となっている。
【0009】
前記問題点を解決するために青色発光物質が開発されている(特許文献1、特許文献2)。また、分子配列を変形してHOMO−LUMOの差を大きくできるバルキー性官能基や配位子場強度の大きい官能基(例:シアノ基)を導入した有機金属錯体が開発された(非特許文献2)。その他にも、一般式Ir(ppy)2P(ph)3Y(但し、Y=ClまたはCNである)のIr錯体(特許文献3)、シクロメタル化配位子、キレートジホスフィン、塩素、及びシアノ基を有するIr(III)錯体(特許文献4)が開発された。
【0010】
また、特許文献5には、窒素原子と炭素原子とよりなるシクロメタル化金属錯体及びこれを含んだ有機EL素子が開示されている。
【0011】
しかし、これら物質は、何れもまだ色純度や発光効率、寿命などの側面で満足できるほどの物性を示していない実情である。
【特許文献1】国際公開第02/15645号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0064681号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0182441号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0048689号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2002/0134984号明細書
【非特許文献1】Baldo,et al.,Nature,Vol.395,151−154,1998
【非特許文献2】Mat. Res. Soc. Symp. Proc. 708, 119, 200; 3rd Chitose International Forum on Photonics Science and Technology, Chitose, Japan, 6−8 October, 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しょうとする第一の技術的課題は、三重項MLCTで青色から赤色に至る光を効率的に発光できるシクロメタル化金属錯体を提供することである。
【0013】
本発明が解決しょうとする第二の技術的課題は、青色から赤色に至る光を効率的に発光できる有機EL素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記第一の技術的課題を達成するために、本発明では、下記化学式1で表されるシクロメタル化金属錯体を提供する:
【0015】
【化1】
【0016】
(化学式1)
前記式中、
Mは、遷移金属であり、
Xは、NまたはCであり、
Lは、中性配位子であり、
CY1及びCY2は、置換もしくは非置換の芳香族または脂肪族環であり、
mは、1または2であり、
A4は、置換もしくは非置換のイミダゾリレン、もしくはピラゾリレン、またはこれらの誘導体であり、A1、A2、及びA3はそれぞれ独立して水素原子、置換もしくは非置換のイミダゾリルもしくはピラゾリル、またはこれらの誘導体である。
【0017】
第二の技術的課題を達成するために、本発明では、一対の電極間に有機膜を含む有機EL素子において、前記有機膜が前記化学式1のシクロメタル化金属錯体を含む有機EL素子を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のシクロメタル化金属錯体は、三重項MLCTで青色から赤色領域までの光を効率的に発光できる。このような有機金属錯体は、有機EL素子の有機膜の形成時に利用可能であり、高効率の燐光材料であって、400〜650nm波長領域で発光するだけでなく、緑色発光物質または赤色発光物質と共に使用して白色光を出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0020】
本発明によるシクロメタル化遷移金属錯体は、非炭素配位キレート配位子を含むことによって、高性能の効率的な青色発光が可能である。
【0021】
本発明のシクロメタル化金属錯体は、下記化学式1の構造を有する:
【0022】
【化2】
【0023】
(化学式1)
前記式中、
Mは、遷移金属であり、
Xは、NまたはCであり、
Lは、中性配位子であり、
CY1及びCY2は、置換もしくは非置換の芳香族または脂肪族環であり、
mは、1または2であり、
A4は、置換もしくは非置換のイミダゾリレンもしくはピラゾリレン、またはこれらの誘導体であり、A1、A2、及びA3はそれぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のイミダゾリルもしくはピラゾリル、またはこれらの誘導体である。
【0024】
本発明の他の一具現例によれば、前記シクロメタル化金属錯体は、下記化学式2ないし4で表される:
【0025】
【化3】
【0026】
(化学式2)
【0027】
【化4】
【0028】
(化学式3)
【0029】
【化5】
【0030】
(化学式4)
前記式中、
Mは、遷移金属であり、
Xは、NまたはCであり、
Lは、中性配位子であり、
CY1及びCY2は置換もしくは非置換の芳香族または脂肪族環であり、
mは、1または2であり、
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、置換基または水素原子であり、
nは、1ないし3の整数である。
【0031】
前記化学式2によるシクロメタル化遷移金属錯体は、遷移金属にホウ素イミダゾール配位子が連結された錯体であるということにその特徴があり、化学式3と4とは、ホウ素ピラゾール配位子が連結された錯体であるということにその特徴がある。
【0032】
本発明の一具現例によれば、前記化学式1において、A1ないしA4は、それぞれ独立してアルキル基(望ましくは、炭素数1ないし30、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし10)、(なお、前記アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、cyclo−ヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−iso−プロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2−メチル−1−iso−プロピルプロピル基、1−エチル−3− メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−iso− プロピルブチル基、2−メチル−iso− プロピル基、1−t−ブチル−2− メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、等の炭素数1〜30の直鎖、分岐または環状の炭化水素基などが挙げられる。)、アルケニル基(望ましくは、炭素数2ないし30、さらに望ましくは、2ないし20、特に望ましくは、2ないし10)、(なお、前記アルケニル基としては、例えば炭素数2〜10個のアルケニル基が好ましく、具体的には、ビニル基、アリル基、プロペニレン基、メタアリル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−オクテニル基などを好ましく挙げることができる。)、アルキニル基(望ましくは、炭素数2ないし30、さらに望ましくは、2ないし20、特に望ましくは、2ないし10)、(なお、前記アルキニル基としては、例えば炭素数2〜10個のアルキニル基が好ましく、エチニル基、2−プロピニル基、2−ペンチニル基、1−メチル−3−ペンチニル基、1,1−ジメチル−2−ペンチニル基、1−メチル−3−へキシニル基、4−オクチニル基などを挙げることができる。)、アリール基(望ましくは、炭素数6ないし30、さらに望ましくは、炭素数6ないし20、特に望ましくは、炭素数6ないし12)、(なお、前記アリール基の例としては、フェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、トリクロロフェニル基、ブロモフェニル基、フロロフェニル基、ペンタフロロフェニル基、ヨウ化フェニル基等のハロゲン化フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、エチルフェニル基、ジメチルエチルフェニル基、iso−プロピルフェニル基、t−ブチルフェニル基、t−ブチルメチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、トリフロロメチルフェニル基、等のアルキル誘導体置換フェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロポキシフェニル基、ヘキシルオキシフェニル基、シクロヘキシルオキシフェニル基、オクチルオキシフェニル基、2−エチルヘキシルオキシフェニル基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシフェニル基、メチルエトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、1−エトキシ−4− メトキシフェニル基、クロロメトキシフェニル基、エトキシエトキシフェニル基、エトキシエトキシエトキシフェニル基等のアルコキシ基置換フェニル基、メチルチオフェニル基、エチルチオフェニル基、t−ブチルチオフェニル基、ジ−tert− ブチルチオフェニル基、2−メチル−1− エチルチオフェニル基、2−ブチル−1− メチルチオフェニル基、等のアルキルチオ基置換フェニル基、N,N−ジメチルアミノフェニル基、N,N−ジエチルアミノフェニル基、N,N−ジプロピルアミノフェニル基、N,N−ジブチルアミノフェニル基、N,N−ジアミルアミノフェニル基、N,N−ジヘキシルアミノフェニル基、N−メチル−N− エチルアミノフェニル基、N−ブチル−N− エチルアミノフェニル基、N−ヘキシル−N− エチルアミノフェニル基、4−(N,N− ジメチルアミノ)−エチルフェニル基、4−(N,N− ジエチルアミノ)−メチルフェニル基、3−(N,N− ジメチルアミノ)−エチルフェニル基、2−(N,N− ジメチルアミノ)−エチルフェニル基等のアルキルアミノフェニル基、ナフチル基、クロロナフチル基、ジクロロナフチル基、トリクロロナフチル基、ブロモナフチル基、フロロナフチル基、ペンタフロロナフチル基、ヨウ化ナフチル基等のハロゲン化ナフチル基、エチルナフチル基、ジメチルエチルナフチル基、iso−プロピルナフチル基、t−ブチルナフチル基、t−ブチルメチルナフチル基、オクチルナフチル基、ノニルナフチル基、トリフロロメチルナフチル基等のアルキル誘導体置換ナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基、プロポキシナフチル基、ヘキシルオキシナフチル基、シクロヘキシルオキシナフチル基、オクチルオキシナフチル基、2−エチルヘキシルオキシナフチル基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシナフチル基、メチルエトキシナフチル基、ジメトキシナフチル基、クロロメトキシナフチル基、エトキシエトキシナフチル基、エトキシエトキシエトキシナフチル基等のアルコキシ基置換ナフチル基、メチルチオナフチル基、エチルチオナフチル基、t−ブチルチオナフチル基、メチルエチルチオナフチル基、ブチルメチルチナフチル基等のアルキルチオ基置換ナフチル基、N,N−ジメチルアミノナフチル基、N,N−ジエチルアミノナフチル基、N,N−ジプロピルアミノナフチル基、N,N−ジブチルアミノナフチル基、N,N−ジアミルアミノナフチル基、N,N−ジヘキシルアミノナフチル基、N−メチル−N− エチルアミノナフチル基、N−ブチル−N− エチルアミノナフチル基、N−ヘキシル−N− エチルアミノナフチル基、4−(N,N− ジメチルアミノ)−エチルナフチル基、4−(N,N− ジエチルアミノ)−メチルナフチル基、3−(N,N− ジメチルアミノ)−エチルナフチル基、2−(N,N− ジメチルアミノ)−エチルナフチル基等のアルキルアミノナフチル基などを挙げることができる。)アミノ基(−N(R’)(R’’))(望ましくは、(R’)(R’’)の合計炭素数が0ないし30、さらに望ましくは、0ないし20、特に望ましくは、0ないし10、なお前記R’、R’’は、炭化水素基である)、アルコキシ基(望ましくは、炭素数1ないし30、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし10)、(なお、前記アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、iso−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、iso−ペンチルオキシ基、neo−ペンチルオキシ基、1,2−ジメチル−プロピルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、cyclo−ヘキシルオキシ基、1,3−ジメチルブチルオキシ基、1−iso−プロピルプロピルオキシ基、1,2−ジメチルブチルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、1,4−ジメチルペンチルオキシ基、2−メチル−1−iso− プロピルプロピルオキシ基、1−エチル−3− メチルブチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3−メチル−1−iso− プロピルブチルオキシ基、2−メチル−1−iso− プロピルオキシ基、1−t−ブチル−2− メチルプロピルオキシ基、n−ノニルオキシ基等の炭素数1〜20の直鎖又は分枝のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、プロポキシエトキシ基、ブトキシエトキシ基、3−メトキシプロピルオキシ基、3−エトキシプロピルオキシ基、ジメトキシメトキシ基、ジエトキシメトキシ基、ジメトキシエトキシ基、ジエトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、ブチルオキシエトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシアルコキシ基、アルコキシアルコキシアルコキシアルコキシ基、クロロメトキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、トリフルオロメトキシ基、1,1,1,3,3,3,− ヘキサフルオロ−2− プロピルオキシ基等のハロゲン化アルコキシ基、ジメチルアミノエトキシ基、ジエチルアミノエトキシ基などのアルキルアミノアルコキシ基、ジアルキルアミノアルコキシ基等が挙げられる。)アリールオキシ基(望ましくは、6ないし30、さらに望ましくは、6ないし20、特に望ましくは、6ないし12)、複素環オキシ基(望ましくは、炭素数1ないし30、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし12)、アシル基(望ましくは、炭素数1ないし30、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし12)、アルコキシカルボニル基(望ましくは、炭素数2ないし30、さらに望ましくは、炭素数2ないし20、特に望ましくは、2ないし12)、アリールオキシカルボニル基(望ましくは、炭素数7ないし30、さらに望ましくは、7ないし20、特に望ましくは、7ないし12)、アシルオキシ基(望ましくは、炭素数2ないし30、さらに望ましくは、炭素数2ないし20、特に望ましくは、炭素数2ないし10)、アシルアミノ基(望ましくは、炭素数2ないし30、さらに望ましくは、2ないし20、特に望ましくは、2ないし10)、アルコキシカルボニルアミノ基(望ましくは、炭素数2ないし30、さらに望ましくは、炭素数2ないし20、特に望ましくは、2ないし12)、アリールオキシカルボニルアミノ基(望ましくは、炭素数7ないし30、さらに望ましくは、炭素数7ないし20、特に望ましくは、7ないし12)、スルホニルアミノ基(望ましくは、1ないし30、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし12)、スルファモイル基(望ましくは、炭素数0ないし30、さらに望ましくは、0ないし20、特に望ましくは、0ないし12)、カルバモイル基(望ましくは、炭素数1ないし30、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし12)、アルキルチオ基(望ましくは、炭素数1ないし30、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし12)、アリールチオ基(望ましくは、炭素数6ないし30、さらに望ましくは、6ないし20、特に望ましくは、6ないし12)、複素環チオ基(望ましくは、炭素数1ないし30、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし12)、スルホニル基(望ましくは、炭素数1ないし30)、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし12)、スルフィニル基(望ましくは、炭素数1ないし30、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし12)、ウレイド基(望ましくは、炭素数1ないし30、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし12)、燐酸アミド基(望ましくは、炭素数1ないし30、さらに望ましくは、1ないし20、特に望ましくは、1ないし12)、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基(望ましくは、炭素数1ないし30、さらに望ましくは、1ないし12)、シリル基(望ましくは、炭素数3ないし40、さらに望ましくは、3ないし30、特に望ましくは、3ないし24)、及びシリルオキシ基(望ましくは、炭素数3ないし40、さらに望ましくは、3ないし30、特に望ましくは、3ないし24)よりなる群から選択された置換基に置換されたイミダゾールまたはピラゾールでありうる。
【0033】
前記化学式1のシクロメタル化遷移金属錯体は、具体的には下記化学式5の化合物でありうる。
【0034】
【化6】
【0035】
(化学式5)
前記式中、
Mは、遷移金属であり、
Lは、中性配位子であり、
mは、1または2であり、
R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、Rn及びR'は、それぞれ独立して、置換基または水素原子であり、ここで、nは、1ないし3の整数であり、
前記n1は、1ないし4の整数である。
【0036】
前記化学式1ないし化学式4において、CY1、CY2は、置換または非置換のベンジン環とナフタレン環のような芳香族炭化水素環;置換または非置換のピリジン環、ピラジン環、キノリン環、フラン環、チオフェン環のような芳香族ヘテロ環;置換または非置換のシクロヘキセン環のような脂肪族炭化水素環;ピラン環のような脂肪族ヘテロ環などを含みうる。
【0037】
すなわち、前記シクロメタル化配位子(CYN−CYC)は、下記構造式で表されるが、これに限定されるものではない。
【0038】
【化7a】
【0039】
【化7b】
【0040】
【化7c】
【0041】
また、前記CY1、CY2を置換する基としては、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、第1〜3級アミノ基などが好ましい。
【0042】
前記式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は、互いに独立して一置換または多置換の官能基であって、水素、ハロゲン原子、−OR、−N(R)2、−P(R)2、−POR、−PO2R、−PO3R、−SR、−Si(R)3、−B(R)2、−B(OR)2、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R)、−CN、−NO2、−SO2、−SOR、−SO2R、−SO3R、C1−C20のアルキル基、またはC6−C20のアリール基であり、前記Rは、前記の通りであり、Zは、S、O、またはNR0(R0は、水素または C1−C20のアルキル基)である。
【0043】
前記化学式1ないし化学式5において中性配位子として使われるLは、例えば、下記のようであるが、これに限定されるものではない。
【0044】
【化8】
【0045】
前記R1、R2、R3は、それぞれ独立して、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、またはヘテロアリール基でありうる。
【0046】
また、前記中性配位子の水素もアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、またはヘテロアリール、シリル、ニトリル、ヒドロキシ、ハロゲン基に置換できる。
【0047】
前記化学式1ないし5中、遷移金属Mは、Ru、Rh、Os、Ir、Pt、またはAuでありうる。
【0048】
前記化学式1によるシクロメタル化遷移金属錯体は、下記化合物のうち何れか一つで具体化されうるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
【化9】
【0050】
(化学式6)
【0051】
【化10】
【0052】
(化学式7)
【0053】
【化11】
【0054】
(化学式8)
【0055】
【化12】
【0056】
(化学式9)
【0057】
【化13】
【0058】
(化学式10)
【0059】
【化14】
【0060】
(化学式11)
【0061】
【化15】
【0062】
(化学式12)
【0063】
【化16】
【0064】
(化学式13)
【0065】
【化17】
【0066】
(化学式14)
【0067】
【化18】
【0068】
(化学式15)
【0069】
【化19】
【0070】
(化学式16)
本発明によるシクロメタル化遷移金属錯体は、400nmないし650nmの波長帯で発光特性を有する。
【0071】
本発明によるシクロメタル化遷移金属錯体は、シクロメタル化モイエティを提供する出発物質である[Ir(C^N)2ClL]2誘導体を利用してワッツ(Watts)グループにより報告された方法(F.O.Garces,R.J.Watts,Inorg.Chem.1988,(35),2450)によって合成可能である。
【0072】
以下、本発明の実施例による遷移金属錯体の合成経路を説明する。
【0073】
下記反応式を参照すれば、前記出発物質[Ir(C^N)2ClL]2誘導体及びホウ素化合物をジクロロメタン及びメタノールなどの溶媒と混合し、これを50℃で2ないし48時間攪拌して本発明のホウ素イミダゾール配位子含有のシクロメタル化遷移金属錯体を合成できる。
【0074】
【化20】
【0075】
前記式中、X、L、R1、R2、R3、R4、CY1、及びCY2は、前記化学式1〜5で定義した通りである。
【0076】
本発明の有機EL素子は、本発明によるシクロメタル化遷移金属錯体を利用して有機膜、特に、発光層を形成して製作される。この時、前記化学式1で表される遷移金属錯体は、発光層の形成物質である燐光ドーパント材料として非常に有用であり、青色波長領域で優れた発光特性を示す。
【0077】
本発明による遷移金属錯体を燐光ドーパントとして使用する場合、有機膜は、高分子ホスト、高分子と低分子の混合物ホスト、低分子ホスト、及び非発光高分子マトリックスよりなる群から選択された一つ以上をさらに含みうる。ここで、高分子ホスト、低分子ホスト、非発光高分子マトリックスとしては、有機EL素子用の発光層形成時に一般的に使われるものであれば、何れも使用可能である。
【0078】
前記高分子ホストの例としては、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリフルオレンなどがあり、前記低分子ホストの例としては、4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)、4,4’−ビス[9−(3,6−ビフェニルカルバゾリル)]−1,1’−ビフェニル、9,10−ビス[(2’,7’−t−ブチル)−9’,9”−スピロビフルオレニルアントラセン、テトラフルオレンなどがあり、前記非発光高分子マトリックスとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
本発明による遷移金属錯体の含有量は、発光層形成材料の総質量100質量部を基準として、1ないし30質量部であることが望ましい。そして、かかるイリジウム金属錯体を発光層に導入しようとする場合には、真空蒸着法、スパッタリング法、プリンティング法、コーティング法、インクジェット法、電子ビームを用いた法などが利用できる。
【0080】
また、本発明による遷移金属錯体は、緑色発光物質または赤色発光物質と共に使用して白色光を発光させることができる。
【0081】
ここで、有機膜の厚さは、30ないし100nmであることが望ましい。前記有機膜は、発光層以外に電子輸送層、正孔輸送層のように有機EL素子で一対の電極の間に形成される有機化合物よりなる膜を称する。このような有機EL素子は、一般的に知られた正極/発光層/負極、正極/バッファ層/発光層/負極、正極/正孔輸送層/発光層/負極、正極/バッファ層/正孔輸送層/発光層/負極、正極/バッファ層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/負極、正極/バッファ層/正孔輸送層/発光層/正孔遮断層/負極などの構造で形成できるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
この時、前記バッファ層の素材としては、一般的に使われる物質を使用でき、望ましくは、フタロシアニン銅、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、またはそれらの誘導体を使用できるが、これに限定されるものではない。
【0083】
前記正孔輸送層の素材としては、一般的に使われる物質を使用でき、望ましくは、ポリトリフェニルアミンを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0084】
前記電子輸送層の素材としては、一般的に使われる物質を使用でき、望ましくは、ポリオキサジアゾールを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0085】
前記正孔遮断層の素材としては、一般的に使われる物質を使用でき、望ましくは、LiF、BaF2、またはMgF2などを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0086】
本発明の有機EL素子は、特別な装置や方法を必要とせず、通常の発光材料を用いた有機EL素子の製作方法によって製作可能である。
【0087】
本発明によるシクロメタル化金属錯体は、400ないし650nm領域で発光できる。このような有機金属錯体を用いた発光ダイオードは、フルカラー表示用の光源照明、バックライト、屋外掲示板、光通信、内部装飾などに使用可能である。
【実施例】
【0088】
以下、本発明について実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明が下記実施例のみに限定されるものではない。
【0089】
参考例1.F2ppyダイマーの合成
【0090】
【化21】
【0091】
500mLの枝付きフラスコに19.85g(125mmol)の2−ブロモピリジン、25.00g(158mmol)の2,4−ジフルオロフェニルボロン酸、100mLのトルエン、エタノール48mL、及び水95mLで製造した2Mの炭酸ナトリウム溶液を加え、これを窒素雰囲気下、常温で攪拌した。次いで、前記反応混合物に4.53g(3.92mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を入れて、窒素雰囲気下で光を遮断したまま15時間還流した。
【0092】
前記反応終了後、反応混合物の温度を常温に調節し、酢酸エチルと水を利用して抽出した後、カラムクロマトグラフィ(トルエン:ヘキサン=10:1)に分離して薄い茶色の液体(F2ppyH)を得た。
【0093】
【表1】
【0094】
前記過程によって合成した2−(4,6−ジフルオロフェニルピリジン)単量体及びIrCl3・nH2Oを用いて黄色粉末であるF2ppyダイマーを合成した。この時、合成法は、J.Am.Che.Soc.,1984,106,6647〜6653を参照した。
【0095】
【表2】
【0096】
参考例2.MeOF2ppyダイマーの合成
【0097】
【化22】
【0098】
2−ブロモピリジンの代わりに2−ブロモ−4−メチルピリジンを使用することを除いては、参考例1と同じ方法でMeF2ppyダイマーを合成した。
【0099】
参考例3.DMAF2ppyダイマーの合成
【0100】
【化23】
【0101】
2−ブロモピリジンの代わりに2−ブロモ−4−ジメチルアミノピリジン25.26g(1.25x104mmol)を使用することを除いては、参考例1と同じ方法でDMAF2ppyダイマーを合成した。
【0102】
【表3】
【0103】
実施例1.化合物(7)の合成((MeOF2ppy)2IrMe−imz Bimz4)
【0104】
【化24】
【0105】
(工程1.MeOF2ppyIrMe−imz Clの合成)
MeOF2ppyダイマー0.1mmol及びN−メチルイミダゾール0.25mmolをCHCl320ml中、40℃で6時間攪拌した。減圧下に溶媒を蒸発させ、黄緑色の粉末を溶離液としてCH2Cl2とアセトン(10:0.5)を使用するシリカカラムに通過させた。溶媒の蒸発後、緑色粉末を得た。1H NMR及びMassスペクトルでMeOF2ppyIrMe−imz Cl化合物を確認した。
【0106】
(工程2.(MeOF2ppy)2IrMe−imz Bimz4の合成)
MeOF2ppyIrMe−imz Cl 0.1mmolをクロロホルム10mL中に溶解させた。ここにNaBimz40.5mmolを加えてからメタノール10mLを加えた。混合物を50℃で4ないし6時間攪拌した。溶媒を減圧下に蒸発させて除去し、CH2Cl220mLで処理し、次いでろ過した。減圧下の蒸発によってCH2Cl2を除去して黄緑色の粉末を得た(収率:65%)。1H NMR及びMassスペクトルで(MeOF2ppy)2IrMe−imz Bimz4の化合物を確認した。
【0107】
実施例2.化合物(8)の合成((DMAF2ppy)2IrMe−imz Bimz4)
【0108】
【化25】
【0109】
相応するダイマー(DMAF2ppyダイマー)から(MeOF2ppy)2IrMe−imz Bimz4と同じ方式で合成して錯体、(DMAF2ppy)2IrMe−imz Bimz4を得た(収率:65%)。1H NMR及びMassスペクトルで(DMAF2ppy)2IrMe−imz Bimz4の化合物を確認した。
【0110】
実施例3.化合物(9)の製造((F2ppy)2IrPh−imz Bimz4)
【0111】
【化26】
【0112】
相応するダイマー(F2ppyダイマー)から(MeOF2ppy)2IrMe−imz Bimz4と同じ方式で合成して錯体、(F2ppy)2IrPh−imz Bimz4を得た(収率:65%)。1H NMR及びMassスペクトルで(F2ppy)2IrPh−imz Bimz4の化合物を確認した。
【0113】
実施例4.化合物(13)の製造((F2ppy)2IrBenz−iso−CN Bimz4)
【0114】
【化27】
【0115】
(工程1.F2ppyIrBenz−iso−CN Clの合成)
F2ppyダイマー0.1mmol及びベンジルイソシアニド(ベンズ−イソ−ニトリル)0.25mmolをCHCl320ml中、室温で24時間攪拌した。減圧下に溶媒を蒸発させ、黄色粉末を溶離液としてCH2Cl2とアセトン(10:0.5)を使用するシリカカラムに通過させた。溶媒の蒸発後、黄色粉末を得た。1H NMR及びMassスペクトルでF2ppyIrBenz−iso−CN Cl化合物を確認した。
【0116】
(工程2.(F2ppy)2IrBenz−iso−CN Bimz4の合成)
F2ppyIrBenz−iso−CN Cl 0.1mmolをクロロホルム10mL中に溶解させた。ここにNaBimz40.5mmolを加えてからメタノール10mLを加えた。混合物を50℃で4ないし6時間攪拌した。溶媒を減圧下に蒸発させて除去し、CH2Cl220mLで処理し、次いでろ過した。減圧下の蒸発によってCH2Cl2を除去して黄色粉末を得た(収率:50%)。1H NMR及びMassスペクトルで(F2ppy)2IrBenz−iso−CN Bimz4の化合物を確認した。
【0117】
実施例5.化合物(15)の製造((F2ppy)2IrP(n−Bu)3 Bimz4)
【0118】
【化28】
【0119】
(工程1.F2ppyIrP(n−Bu)3 Clの合成)
F2ppyダイマー0.1mmol及びトリ−n−ブチルホスフィン0.25mmolをCHCl320ml中、室温で24時間攪拌した。減圧下に溶媒を蒸発させ、黄色粉末を溶離液としてCH2Cl2とアセトン(10:1)を使用するシリカカラムに通過させた。溶媒の蒸発後、黄色粉末を得た。1H NMR及びMassスペクトルでF2ppyIrP(n−bu)3 Cl化合物を確認した。
【0120】
(工程2.(F2ppy)2IrP(n−Bu)3 Bimz4の合成)
F2ppyIrP(n−bu)3 Cl 0.1mmolをクロロホルム10mL中に溶解させた。ここにNaBimz40.5mmolを加えてからメタノール10mLを加えた。混合物を50℃で4ないし6時間攪拌した。溶媒を減圧下に蒸発させて除去し、CH2Cl220mLで処理し、次いでろ過した。減圧下の蒸発によってCH2Cl2を除去して黄色粉末を得た(収率:60%)。1H NMR及びMassスペクトルで(F2ppy)2IrP(n−bu)3 Bimz4の化合物を確認した。
【0121】
前記工程により得られた化合物などの発光特性は、前記化合物をジクロロメタンに溶解して10-4M溶液に製造した後、溶液状態での発光特性を調べた。
【0122】
前記実施例から得た化合物の発光特性及びCIE(色座標)特性をまとめて下記表1に表し、図2ないし図4にPLスペクトルを表した。
【0123】
【表4】
【0124】
前記表4から、ホウ素イミダゾール錯体化合物を導入することによって、優れた燐光特性を有するドーパントが形成され、特に、置換基の導入によって強い電場効果により440〜470nm領域で発光する青色燐光材料として適しているということが分かる。
【0125】
図8及び図9は、本発明の実施例1による化合物7の相異なる濃度でのエネルギー転移を示した図面である。これは、ホスト物質としてmCPを使用し、ドーパント物質として実施例1で合成した化合物7の(MeOF2ppy)2IrMe−imz4を使用した場合の濃度変化によるエネルギー転移の強度を表した。
【0126】
図8及び9では、濃度が上昇するほどmCPの強度が低下し、ドーパントの強度が高くなって、エネルギー転移がなされることが分かる。また、図9では、濃度が10%以上になるほどドーパントの強度が低下することが分かる。
【0127】
有機EL素子の製作
実施例6
ITOがコーティングされた透明電極基板20を洗浄した後、ITOを感光性樹脂とエッチング液を利用してパターニングしてITO電極パターン10を形成し、これをさらに洗浄した。このように洗浄された結果物上にPEDOT{poly(3,4−ethylenedioxythiophene)}[AI 4083] を約50nmの厚さにコーティングした後、120℃で約5分間ベーキングしてホール注入層11を形成した。
【0128】
前記ホール注入層11の上部に、トルエン17.4g中にPS53.1gを溶解させたポリスチレン溶液3.3gにmCP29mg及び(F2ppy)2IrPh−imz4 [化学式9]2.5mgを混合して得た発光層の形成用の組成物を前記ホール注入層の上部にスピンコーティングし、100℃で1時間ベーキング処理した後、真空オーブン内で溶媒を完全に除去して厚さ40nmの発光層12を形成させた[PS24質量%、mCP70質量%、(F2ppy)2IrPh−imz46質量%]。
【0129】
次いで、前記高分子発光層12の上部に真空蒸着器を利用して真空度を4×10−6torr以下に維持しつつBAlqを真空蒸着して40nm厚さの電子輸送層15を形成し、次いで、この上部にLiFを0.1Å/secの速度で真空蒸着して10nm厚さの電子注入層を形成した。
【0130】
次いで、Alを10Å/sec の速度で蒸着して200nm厚さのカソード14を蒸着し、有機EL素子を完成した。この時、封止過程は、乾燥した窒素ガス雰囲気下のグローブボックスにBaO粉末を入れて金属缶で密封した後、UV硬化剤で最終処理する過程を通じて行われた。
【0131】
前記EL素子は、多層型素子であって、概略的な構造は、図13に示す通りであり、発光面積は9mm2であった。
【0132】
実施例7
(MeOF2ppy)2IrMe−imz4(化学式7)の含有量を6質量%使用したことを除いては実施例6と同様にEL素子を製作した。
【0133】
実施例8
(MeOF2ppy)2IrMe−imz4(化学式7)の含有量を8質量%使用したことを除いては実施例6と同様にEL素子を製作した。
【0134】
実施例9
(MeOF2ppy)2IrMe−imz4(化学式7)の含有量を10質量%使用したことを除いては実施例6と同様にEL素子を製作した。
【0135】
実施例10
(F2ppy)2IrP(n−bu3)Bimz4(化学式15)の含有量を10質量%使用したことを除いては実施例6と同様にEL素子を製作した。
【0136】
デバイス性能評価結果(最大発光波長、色座標、輝度、ターンオン電圧など)は表2にまとめた。
【0137】
【表5】
【0138】
前記の内容からホウ素イミダゾール錯体配位子を導入すると、優れた燐光特性を有するドーパントが形成され、青色燐光材料として適しているということが分かる。また、多様なメイン配位子を導入することによって、赤色、緑色、及び青色のフルカラーの具現が可能であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明は、有機EL素子の関連技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明の実施例1による化合物の質量分析スペクトルである。
【図2】本発明の実施例3による化合物の質量分析スペクトルである。
【図3】本発明の実施例4による化合物の質量分析スペクトルである。
【図4】本発明の実施例5による化合物の質量分析スペクトルである。
【図5】本発明の実施例1による化合物のPLスペクトルである。
【図6】本発明の実施例2による化合物のPLスペクトルである。
【図7】本発明の実施例3による化合物のPLスペクトルである。
【図8】本発明の実施例1による化合物の相異なる濃度でのエネルギー転移を示した図面である。
【図9】本発明の実施例1による化合物の相異なる濃度でのエネルギー転移を示した図面である。
【図10】本発明の実施例7による有機EL素子のELスペクトルを示したグラフである。
【図11】本発明の実施例6ないし9による有機EL素子の輝度効率を示したグラフである。
【図12】本発明の実施例6ないし9による有機EL素子の外部量子効率を示したグラフである。
【図13】本発明の実施例6ないし10による有機EL素子の構造を概略的に示した図面である。
【符号の説明】
【0141】
10 ITO電極パターン、
11 ホール注入層、
12 発光層、
14 カソード、
15 電子輸送層、
20 基板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1:
【化1】
(化学式1)
前記式中、
Mは、遷移金属であり、
Xは、NまたはCであり、
Lは、中性配位子であり、
CY1及びCY2は、芳香族または脂肪族環であり、
mは、1または2であり、
A4は、置換もしくは非置換のイミダゾリレンもしくはピラゾリレン、またはこれらの誘導体であり、A1、A2、及びA3はそれぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のイミダゾリルもしくはピラゾリル、またはこれらの誘導体である、
で表される金属錯体。
【請求項2】
前記化学式1の化合物が下記化学式2ないし化学式4:
【化2】
(化学式2)
【化3】
(化学式3)
【化4】
(化学式4)
前記式中、
Mは、遷移金属であり、
Xは、NまたはCであり、
Lは、中性配位子であり、
CY1及びCY2は置換もしくは非置換の芳香族または脂肪族環であり、
mは、1または2であり、
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、置換基または水素原子であり、
nは、1ないし3の整数である、
を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の金属錯体。
【請求項3】
前記A1ないしA4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基よりなる群から選択される置換基により置換されることを特徴とする請求項1または2に記載の金属錯体。
【請求項4】
前記化学式1の化合物が下記化学式5:
【化5】
(化学式5)
前記式中、
Mは、遷移金属であり、
Lは、中性配位子であり、
mは、1または2であり、
R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、Rn及びR'は、それぞれ独立して、置換基または水素原子であり、ここで、nは、1ないし3の整数であり、
前記n1は、1ないし4の整数である、
の構造を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の金属錯体。
【請求項5】
Mは、Ru、Rh、Os、Ir、Pt、またはAuであることを特徴とする請求項1に記載の金属錯体。
【請求項6】
前記化学式1の遷移金属錯体は、下記式で表示される化合物:
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
のうち何れか一つであることを特徴とする請求項1に記載の金属錯体。
【請求項7】
一対の電極の間に有機膜を含む有機電界発光素子において、
前記有機膜が請求項1ないし6のうち何れか1項の金属錯体を含むことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項8】
前記有機膜は、高分子ホスト、高分子ホストと低分子ホストとの混合物、低分子ホスト、及び非発光高分子マトリックスよりなる群から選択された少なくとも一つをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
前記有機膜は、緑色発光物質または赤色発光物質をさらに含むことを特徴とする請求項7または8に記載の有機電界発光素子。
【請求項1】
下記化学式1:
【化1】
(化学式1)
前記式中、
Mは、遷移金属であり、
Xは、NまたはCであり、
Lは、中性配位子であり、
CY1及びCY2は、芳香族または脂肪族環であり、
mは、1または2であり、
A4は、置換もしくは非置換のイミダゾリレンもしくはピラゾリレン、またはこれらの誘導体であり、A1、A2、及びA3はそれぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のイミダゾリルもしくはピラゾリル、またはこれらの誘導体である、
で表される金属錯体。
【請求項2】
前記化学式1の化合物が下記化学式2ないし化学式4:
【化2】
(化学式2)
【化3】
(化学式3)
【化4】
(化学式4)
前記式中、
Mは、遷移金属であり、
Xは、NまたはCであり、
Lは、中性配位子であり、
CY1及びCY2は置換もしくは非置換の芳香族または脂肪族環であり、
mは、1または2であり、
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、置換基または水素原子であり、
nは、1ないし3の整数である、
を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の金属錯体。
【請求項3】
前記A1ないしA4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基よりなる群から選択される置換基により置換されることを特徴とする請求項1または2に記載の金属錯体。
【請求項4】
前記化学式1の化合物が下記化学式5:
【化5】
(化学式5)
前記式中、
Mは、遷移金属であり、
Lは、中性配位子であり、
mは、1または2であり、
R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、Rn及びR'は、それぞれ独立して、置換基または水素原子であり、ここで、nは、1ないし3の整数であり、
前記n1は、1ないし4の整数である、
の構造を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の金属錯体。
【請求項5】
Mは、Ru、Rh、Os、Ir、Pt、またはAuであることを特徴とする請求項1に記載の金属錯体。
【請求項6】
前記化学式1の遷移金属錯体は、下記式で表示される化合物:
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
のうち何れか一つであることを特徴とする請求項1に記載の金属錯体。
【請求項7】
一対の電極の間に有機膜を含む有機電界発光素子において、
前記有機膜が請求項1ないし6のうち何れか1項の金属錯体を含むことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項8】
前記有機膜は、高分子ホスト、高分子ホストと低分子ホストとの混合物、低分子ホスト、及び非発光高分子マトリックスよりなる群から選択された少なくとも一つをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
前記有機膜は、緑色発光物質または赤色発光物質をさらに含むことを特徴とする請求項7または8に記載の有機電界発光素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−213723(P2006−213723A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29026(P2006−29026)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】
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