説明

シザースギヤ

【課題】本発明は、効率的な作業で相手ギヤに組付けられるシザースギヤを提供する。
【解決手段】本発明のシザースギヤは、ばね部材25の付勢によりサブギヤ20の歯部21がメインギヤ10の歯部12からずれる歯ずれ範囲を、組立時、作動時に関わらず、規制する規制部35を設けた。これにより、シザースギヤは、相手ギヤに組付け前では歯筋や固定部位を合わせる際のシザースギヤのねじり量は少なくてすむうえ、歯筋や固定部位を合わせるためのピン部材などがなくとも、相手ギヤに噛み合わせられる。そのうえ、相手ギヤに組付けた後は、ピン部材などといった組付け後に不要になる不要部品を外す作業も不要となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックラッシュを解消しながら相手ギヤと噛み合わせるシザースギヤに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンやトランスミッションなど、ギヤの噛合いで回転トルクを伝えたりする動力伝達系では、シザースギヤを採用して、ギヤの歯部間に生ずるバックラッシュを解消しながら回転トルクを伝えることが行なわれつつある。
こうした動力伝達系で用いられるシザースギヤは、一般に、相手ギヤと噛合うメインギヤの側部にサブギヤ(メインギヤと同一の歯数)を並行に配置し、ばね部材でサブギヤの歯部を相手ギヤの歯部に挟み付け、バックラッシュをなくしたまま、相手ギヤと噛合いが行われる構造にしている。
【0003】
ところで、こうしたシザースギヤの相手ギヤへの組付けには、独特な手法が用いられている。具体的には、特許文献1にも開示されているように、シザースギヤのサブギヤを、ばね部材の弾性力に抗して、例えば複数歯分、ずらして、メインギヤの歯部の歯筋と合わせ、ピン部材などを用いて、その状態を保っておく。そして、この状態で、シザースギヤのメインギヤとサブギヤを相手ギヤに噛み合せる。噛み合わせを終えたら、ピン部材を外してサブギヤの拘束を解除すると、相手ギヤの歯部に、ばね部材の付勢力が加わるサブギヤの歯部が、メインギヤの歯部に挟み付く、という手法が用いられている。
【特許文献1】特開2006−77826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、こうしたシザースギヤは、相手ギヤに組付ける前や組付け後の作業がかなり面倒である。すなわち、相手ギヤとの組付け前の歯筋を固定部位に合わせる際は、かなり多くのねじり量が必要である。しかも、シザースギヤの組付けを終えた後も、ピン部材を取り外すという作業が求められる。このため、相手ギヤとの組付け作業はかなり面倒である。特に歯筋や固定部位を合わせるピン部材は不要部品となるので、同部品の脱着作業は相手ギヤに組み込む作業の効率を損なう要因となっている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、効率的な作業で相手ギヤに組付けられる可能なシザースギヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、ばね部材の付勢によりサブギヤの歯部がメインギヤの歯部からずれる歯ずれ範囲を、組立時、作動時(運転時)に関わらず、規制する規制部を設けた構造とした。
同構成によると、サブギヤの歯部がメインギヤの歯部からずれる歯ずれ範囲は、組立時、作動時に関わらず、規制部によって規制されるから、相手ギヤに組付け前では歯筋や固定部位を合わせる際のシザースギヤのねじり量は少なくてすむ。しかも、組付け前の歯筋や固定部位を合わせるためのピン部材などがなくとも、相手ギヤに噛み合わせられる。そのうえ、相手ギヤに組付けた後は、上記ピン部材などといった組付け後に不要になる不要部品を外す作業も不要となる。このため、シザースギヤは、相手ギヤとの歯筋や固定部位を合わせる際や相手ギヤと組付け後における作業が軽減され、容易に相手ギヤに組込める。
【0007】
請求項2に記載の発明は、歯ずれ範囲を、相手ギヤの歯部の歯先部が入り込み可能な範囲に規制した。
これにより、メインギヤの歯部とサブギヤの歯間幅間は、相手ギヤの歯部の歯先部を受け入れられる状態となるから、メインギヤの歯部とサブギヤの歯部間へ相手ギヤの歯部を進入させさせすれば、次第にメインギヤの歯部とサブギヤの歯部間が、ばね部材の弾性力に抗して、相手ギヤの歯部で押し広げられ、当該メインギヤの歯部とサブギヤの歯部が相手ギヤの歯部を挟み込んだ状態に組付く。
【0008】
請求項3に記載の発明は、簡単な構造で歯ずれ範囲の規制が行なえるよう、規制部は、メインギヤおよびサブギヤの一方に設けられた突当て部と、他方に設けられた突当て部を受ける受け部とを有し、付勢によりメインギヤからずれるサブギヤを突当て部と受け部とで受け止め、歯ずれ範囲を規制する構造とした。
請求項4に記載の発明は、特に簡単な構造で規制部が成立するよう、受け部は、サブギヤに形成された当該サブギヤの周方向に延びる開口部で構成され、突当て部は、メインギヤ側から突き出て開口部内に移動可能に挿入されるピン部から構成されることとした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、シザースギヤは、組立時、作動時(運転時)に関わらず、サブギヤとメインギヤとの歯ずれ範囲が規制されているので、相手ギヤとの組付け前は歯筋や固定部位を合わせる際のねじり量が少なくてすみ、作業が容易となる。しかも、組付け前の歯筋や固定部位を合わせるためのピン部材などがなくとも、相手ギヤに噛み合わせることができる。そのうえ、組付け後は、歯筋や固定部位を合わせるピン部材など不要部材は不要のまま、相手ギヤに組付けることができる。このため、シザースギヤは、相手ギヤ歯筋や固定部位を合わせる際や相手ギヤと組付け後における作業量が軽減される。
【0010】
それ故、シザースギヤは、効率的な作業で相手ギヤに組付けることができる。
請求項2の発明によれば、相手ギヤが受け入れ可能となっているメインギヤの歯部とサブギヤの歯間幅へ相手ギヤの歯部を進入させて、相手ギヤと噛み合わせれば、面倒な歯筋を揃えたり、揃えた歯筋でサブギヤを保持したり、同サブギヤの保持を解除したりする作業を必要とせずに、容易に相手ギヤに組付けることができる。
【0011】
したがって、容易、かつ効率的にシザースギヤを相手ギヤに組付けることができる。
請求項3の発明によれば、突当て部と受け部という組み合わせで、簡単に相手ギヤの歯先部が入り込み可能な範囲の規制が実現できる。
請求項4の発明によれば、特に簡単なピン構造で規制部を成立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を図1〜図7に示す第1の実施形態にもとづいて説明する。
図1は、例えばレシプロエンジンのカムシャフト端部の周辺の構造が示されていて、同図中1はシリンダヘッド、2は同シリンダヘッド1の上部に回転自在に配設されたカムシャフト、3はシリンダヘッド1の上部を覆うように設けたカバーである。
カムシャフト2の端部には、本発明の要部となるシザースギヤ5が設けられている。このシザースギヤ5は、相手ギヤとなるドリブンギヤ6の歯部6aと噛合っている。これで、図示しないクランクシャフトからの軸出力がカムシャフト2へ伝達されるようにしてある。
【0013】
このシザースギヤ5の分解した構造が図2に示され、同シザースギヤ5の単品の外観が図4に示されている。
これら各図を参照してシザースギヤ5の構造を説明すると、同図中10は、シザースギヤ本体9を構成するメインギヤ、20は同じくサブギヤである。このうちメインギヤ10は、図2に示されるように例えば外周部に多数の歯部12が形成された円板状の本体部11と、本体部11の軸心部に形成された短円柱状のボス部13とを有した構造となっている。ボス部13は、カムシャフト2の端部とボルト部材(図示しない)で締結される部位である。このため、ボス部13端には、カムシャフト端が嵌る凹部14が形成され、ボス部13の中心部には、ボルト部材が挿通する孔部15が形成してある。
【0014】
サブギヤ20は、図1および図2に示されるようにメインギヤ10の側部に同軸で並行に配置される部品である。このためサブギヤ20は、図2に示されるように外周部にメインギヤ10と同一の歯数の歯部21が形成され、軸心部にボス部13と挿脱可能な孔部22が形成された環状のギヤ部品から構成される。そして、このサブギヤ20が、軸心部(孔部22)をメインギヤ10のボス部13の外周面に回動自在に挿入させることによって、メインギヤ10の本体部11の側部に並行に配置させてある。
【0015】
また図2に示されるようにサブギヤ20のメインギヤ10と反対側の側部には、ばね部材25が設けられている。このばね部材25は、相手ギヤの歯部、ここではドリブンギヤ6の歯部6aに対する挟み込み力を発生する部品である。同ばね部材25には、ボス部13の周りに組付く、例えばスナップリングのようなU字状の外形をもつばね部材が用いられている。具体的には、ばね部材25は、ボス部13の周りに沿って円弧状に配置された円弧部27と、円弧部27の両側からサブギヤ20の外周側へ延びる一対の端部28とを有した部材で構成される。またばね部材25の各端部28には一対の係合凹部29が形成してある。
【0016】
ばね部材25の各端部28は、メインギヤ10とサブギヤ20にそれぞれ係合される。具体的にはサブギヤ20の係合は、例えばサブギヤ20の外側部の所定位置にピン部材31aを突設し、このピン部材31にばね部材25の一方の端部に有る係合凹部29を係合させる。メインギヤ10の係合は、例えば、サブギヤ20と隣接するメインギヤ10の側部のうちピン部材31aからメインギヤ10の回転方向へ所定に離れた地点にピン部材31bを突設する。そして、このピン部材31bの先端部と、ばね部材25の他方の端部に有る係合凹部29とを、サブギヤ20に形成した開口部、例えばサブギヤ20の周方向に延びる長孔32を通じて係合させる。このときのばね部材25の狭まる方向の挙動により、サブギヤ20の歯部21の歯筋は、メインギヤ10の歯部12の歯筋からずれる方向へ付勢される。なお、ピン部材31a,31bは、圧入により各ギヤ10,20に取付けてある。
【0017】
シザースギヤ本体9には、このときのメインギヤ10の歯筋とサブギヤ20の歯筋との歯ずれ範囲L(図3)を、組立時および作動時(運転時)に関わらず、所定に規制する規制する規制部35が設けられている。この規制部35には、メインギヤ10に突当て部35aを設け、サブギヤ20に受け部35bを設けて、突当て部35aを受け部35bで受け止めることによって歯ずれ範囲Lを所定の範囲に規制する構造が用いられている。本実施形態では、規制部35は、例えばばね部材25端を係合するピン構造を流用した構造が用いられている。同構造には、図6に示されるようにメインギヤ10に設けたピン部材31b(本願のピン部に相当)を突当て部35aとし、サブギヤ20に形成した長孔32(本願の開口部に相当)を受け部35bとして用いて、ピン部材35bと長孔32の端32aとが突き当たる位置で、相手ギヤの歯先部が入る隙間を確保する構造が用いてある。具体的には長孔32のピン部材31a側の端32aの位置を、今までの歯筋を揃える位置から退避させた地点に定めて、メインギヤ10とサブギヤ20の歯ずれ範囲Lを規制させている。本実施形態は、この規制構造を用いて歯ずれ範囲Lを、相手ギヤの歯先部が入り込み可能な範囲に規制している。具体的には、図6に示されるように長孔32の端32aは、ずれた歯部12(メインギヤ)と歯部21(サブギヤ)間の歯間幅Xが、相手ギヤであるドリブンギヤ6aの歯部6aの歯先部6bの歯先幅Yより、若干大きくなると、ピン部材31bと突き当たる地点に形成されている。これで、歯間幅Xを歯先部幅Yが入り込める隙間量に規制している。むろん、長孔32は、図7に示されるように相手ギヤとの噛み合いを許容する長さ寸法を有していて、その先に反対側の端32bがある。
【0018】
なお、歯間幅Xにする組付け方には、例えば図3に示されるように、まず、ボス部13の外周面にばね部材25を嵌めて、サブギヤ20から突き出ているピン部材31aに同方向側の係合凹部29を係合させる。続いて、残るばね部材25の片側を広げる方向へ変位させて、残る係合凹部29を、残るピン部材31bの圧入位置に位置決める。その後、ピン部材31bを、係合凹部29から、長孔端32aを通して、メインギヤ10の側部(ピン圧入地点)へ圧入させて、ピン部材31bと長孔端32aとを係合させるという、予ばね荷重を与えながらピン部材31bを長孔端32aに突き当てる手法が用いられている。
【0019】
またボス部13の外周面には環状の溝部36が形成されている。ばね部材25は、この環状の溝部36内に嵌挿されることによって固定させてある。そして、ばね部材25の拡げられるときに生ずるよれ変形を利用して、サブギヤ20をメインギヤ10へ押え付けている。なお、図2および図3中37は、ばね部材25を溝部36内へ組付け易くするよう、溝部36の底面両側に形成した切欠き部を示す。
【0020】
こうした構造により、図4に示されるようにシザースギヤ5は、相手ギヤが入る歯間幅Xを外周部全体にもつ部品にしている。
このシザースギヤ5は、組立時および作動時(運転時)に関わらず、規制部35にてサブギヤ20の歯部21がメインギヤ10の歯部12からずれる歯ずれ範囲Lが規制されるため、ドリブンギヤ6の組付け前の歯筋や固定部位を合わせる際に行なうシザースギヤ5のねじり量は少なくてすむ。しかも、歯筋や固定部位を合わせる部品がなくとも、サブギヤ20とメインギヤ10との歯ずれを用いて、相手ギヤであるドリブンギヤ6に噛み合わせることができる。そのうえ、ドリブンギヤ6に組付けた後は、歯筋や固定部位を合わせる部品を取り外す作業も不要になる。つまり、同部品の脱着作業も不要になる。
【0021】
それ故、シザースギヤ5は、相手ギヤであるドリブンギヤ6の組付け前の歯筋や固定部位を合わせる際の作業、さらには組付け後における作業量が軽減でき、容易にドリブンギヤ6に組み込むことができる。
特に歯ずれ範囲Lを、ドリブンギヤ6の歯部6aの歯先部6bが入り込み可能な範囲に規制すると、さらに効率よくシザースギヤ5をドリブンギヤ6に組付けることができる。
【0022】
すなわち、この点を、例えば図1に示されるように既に所定位置に設置されているカムシャフト2のシザースギヤ5に、ドリブンシャフト8端に有るドリブンギヤ6を組付けるときを例に挙げて説明すると、まず、図5および図6に示されるようにシザースギヤの歯間幅Xに、ドリブンシャフト8端に有るドリブンギヤ6の歯部6aを合わせる。続いて、歯部6aが歯間幅X内へ進入するようドリブンギヤ6を押し込む。
【0023】
このとき、シザースギヤ5のメインギヤ10とサブギヤ20の歯間幅Xは、既に図4および図6に示されるようにドリブンギヤ6の歯先部6bが受け入れられる幅寸法に定められている。つまり、メインギヤ10の歯部12とサブギヤ20の歯部21間へ、そのまま、ドリブンギヤ6の歯部6aが進入させることが可能となっている。そのため、シザースギヤ5の組付けは、歯間幅L内へ歯部21を進入するだけでよい。
【0024】
すなわち、メインギヤ10とサブギヤ20の歯部幅Xは、ドリブンギヤ6の歯部6aが進入されると、ばね部材25の弾性力に抗して次第に押し広げられる。この状態は、図7に示されるようにドリブンギヤ6が所定の位置にまで進入するまで続く。このため、ドリブンギヤ6の歯部6aは、ばね部材25の変形がもたらす弾性力によって、そのまま、メインギヤ10の歯部12およびサブギヤ20の歯部21で挟み込まれ続ける。つまり、ギヤ間の噛合い部に生ずるバックラッシュが解消される。
【0025】
これにより、シザースギヤ5は、メインギヤ10の歯部6aとサブギヤ20の歯部21間へ相手ギヤの歯部を進入させさえすれば、今までの歯筋を揃えたり、揃えた歯筋でサブギヤ20を保持したり、同サブギヤ20の保持を解除したりするなど面倒な作業を必要とせずに、簡単、かつ効率的に相手ギヤに組付けることができる。
また、歯間幅Xの規制(歯ずれ範囲L)には、突当て部35aと同突当て部35aを受ける受け部35bとを組み合わせた構造を用いると、簡単に行なえる。しかも、突当て部としてピン部材31bを用い、開口部として長孔32を用いて、歯間幅X(歯ずれ範囲L)を規制すると、簡単な構造ですむ。そのうえ、ピン構造には、ばね部材25を係合するピン構造を流用すると、シザースギヤ5の部品点数の増加が抑えられるから、構造やコストの点で有利である。特に、同構造は、相手ギヤの歯先部が入り込める歯ずれ位置で突き当たるように規制しやすい。
【0026】
図8は、本発明の第2の実施形態を示す。
本実施形態は、第1の実施形態のようなサブギヤ20の外側にばね部材25を組付けて、相手ギヤを挟み付けるシザースギヤ5でなく、メインギヤ10とサブギヤ20との間にU字状のばね部材25を組付けて相手ギヤを挟み付けるシザースギヤ40に本発明を適用したものである。
【0027】
具体的には図8に示すシザースギヤ40は、ばね部材25の一方の端部28がサブギヤ20の内側の側面から突き出たピン部材31aに係合され、他方の端部28がメインギヤ10の内側の側面から突き出たピン部材31bに係合されて、相手ギヤの歯部(いずれも図示しない)に対しメインギヤ10の歯部12とサブギヤ20の歯部21とを挟み付ける構造となっている。そして、スナップピン41で止まるコーン形のスプリング42で、サブギヤ20を外側からメインギヤ10へ押し付けている。
【0028】
同シザースギヤ40の規制部35は、ピン部材31bを延長し、同ピン部材31bが向き合うサブギヤ20の板面部分に、第1の実施形態と同様、サブギヤ20の周方向に沿って延びる長孔32(本願の開口部に相当)を形成して、同長孔32内にピン部材31bの先端部を移動可能に挿入させている。そして、第1の実施形態と同様、長孔32にて、サブギヤ20とメインギヤ19との歯ずれ範囲を規制、具体的には相手ギヤの歯部の歯先部が入り込み可能な歯間幅Xに規制している。
【0029】
このようにしても第1の実施形態と同様の効果を奏する。むろん、長孔32の一端側は、歯ずれ範囲を規制するためのピン部材31bと突き当たる端となり、他端側は相手ギヤとの噛み合いを許容する部分となる。
図9および図10は、本発明の第3の実施形態を示す。
本実施形態は、第2の実施形態の変形例で、規制部35は、第1,2の実施形態のようなばね部材25の端部を係合するピン構造を流用した一体的な構造ではなく、全く別体な構造で、シザースギヤ40に設けたものである。
【0030】
本実施形態の規制部35は、例えばサブギヤ20の内周部に組付けてある。具体的には規制部35は、図9中の破線および図10(図9中のA−A線に沿う断面図)に示されるように、サブギヤ20の孔部22を通るボス部13部分(メインギヤ10)の外周面にピン部45を突設し、サブギヤ20の孔部22の内面に、突き出たピン部45の先端部を変位可能に収める凹部46(本願の開口部に相当)を形成する。そして、凹部46の壁面とピン部45の当接によって、第1,2の実施形態と同様、歯ずれ範囲を規制、具体的にはあ相手ギヤの歯部の歯先部が入り込み可能な歯間幅Xの範囲に規制したものである。このため凹部46は、周方向の一端が、歯ずれ範囲を規制するピン部45と突き当たる端46aにしてあり、他端側が、相手ギヤとの噛み合いを許容する許容部分46aとしてある。むろん、ピン部45と凹部46を反対に配置した構造でも構わない。
【0031】
このようにしても第1,2の実施形態と同様の効果を奏する。
但し、図8〜図10において、第2の実施形態と同じ部分には同一符号を付してその説明を省略した。
なお、本発明は第1〜3の実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。上述した実施形態では、本発明のシザースギヤを、レシプロエンジンのカムシャフトに駆動力を伝える動力伝達経路に適用した例を挙げたが、これに限らず、他の装置や他の動力伝達経路に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るシザースギヤが適用されたエンジン部分を示す斜視図。
【図2】シザースギヤの構造を、歯ずれ範囲を規制する構造と共に示す分解斜視図。
【図3】同歯ずれ範囲の規制の仕方を説明する斜視図。
【図4】(a)はシザースギヤ単品の外観を示す斜視図、(b)はシザースギヤのメインギヤとサブギヤとが所定の歯間幅に規制された状態を示す断面図。
【図5】シザースギヤと相手ギヤとが組付けられるときを説明する斜視図。
【図6】同組付けられるときのシザースギヤの歯部と相手ギヤの歯部とを示す断面図。
【図7】シザースギヤと相手ギヤとが所期に噛み合った状態を示す断面図。
【図8】本発明の第2の実施形態の要部となるシザースギヤの断面図。
【図9】本発明の第3の実施形態の要部となるシザースギヤの断面図。
【図10】図9中のA−A線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0033】
5 シザースギヤ
6 ドリブンギヤ(相手ギヤ)
10 メインギヤ
12 メインギヤの歯部
20 サブギヤ
21 サブギヤの歯部
25 ばね部材
31b ピン部材(突当て部、ピン部)
32 長孔(受け部、開口部)
35 規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手ギヤの歯部と噛合可能な歯部を外周部に有するメインギヤと、
前記メインギヤの側部に同軸で並行に配置された当該メインギヤと同一の歯数を有するサブギヤと、
前記サブギヤを相手ギヤの歯部に対し挟み込む方向へ付勢するばね部材と、
組立時、作動時に関わらず、前記付勢により前記サブギヤの歯部が前記メインギヤの歯部からずれる歯ずれ範囲を規制する規制部と
を具備したことを特徴とするシザースギヤ。
【請求項2】
前記歯ずれ範囲を、相手ギヤの歯部の歯先部が入り込み可能な範囲に規制することを特徴とする請求項1に記載のシザースギヤ。
【請求項3】
前記規制部は、前記メインギヤおよび前記サブギヤの一方に設けられた突当て部と、他方に設けられた前記突当て部を受ける受け部とを有し、前記付勢によりメインギヤからずれるサブギヤを前記突当て部と前記受け部とで受け止め、前記歯ずれ範囲に規制するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシザースギヤ。
【請求項4】
前記受け部は、前記サブギヤに形成された当該サブギヤの周方向に延びる開口部から構成され、
前記突当て部は、前記メインギヤ側から突き出て前記開口部内に移動可能に挿入されるピン部から構成される
ことを特徴とする請求項3に記載のシザースギヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−96264(P2010−96264A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267377(P2008−267377)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】