説明

シフトレジスタ型光メモリ装置

【課題】光信号を電気信号に変換することなく一時的に記憶する光バッファメモリにおいて、簡便な構成でシフトレジスタ機能を実現する。
【解決手段】複数個の双安定半導体レーザがm×nの行列状に配置されたレーザアレイを用いる。最終列の双安定半導体レーザを除く双安定半導体レーザの出力光がレーザアレイにおいて一方に隣接する列の双安定半導体レーザに垂直に入力されるように光路を形成する。これにより、双安定半導体レーザに記録された情報を順に隣の列に送ることができる。光路内には光が逆方向に戻ることを防止するために光アイソレータを配置する。さらに光路内に配置される空間光変調器によって、光の情報を隣の列に移すタイミングを制御する。光学系としてはミラーアレイやハーフミラーを組み合わせたものを好適に利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を電気信号に変換することなく一時的に記憶する光バッファメモリに関する。詳細には、双安定半導体レーザを用いた光バッファメモリにおいて、シフトレジスタ機能を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の光ファイバ通信では、光信号を電気信号に変換することなく一時的に記憶することができるバッファメモリが求められている。例えば、将来的には光信号のままIP(Internet Protocol)パケットの経路制御を行うフォトニックパケットネットワークが実現することが見込まれているが、フォトニックIPルータにおいて出力ポートの衝突を回避するためには、光IPパケットを一時的に保持する必要がある。すなわち、フォトニックIPルータにおいて光バッファメモリが必要とされる。
光信号を電気信号に変換することなく一時的に記憶する方法として、従来からファイバ遅延線を用いた光バッファメモリが知られている。しかし、読み出しの細かなタイミング制御が困難であるという問題があった。
【0003】
そこで、この問題を解決することを目的として、双安定半導体レーザを用いた光バッファメモリが開発、開示された(例えば非特許文献1参照)。しかしこれには、ビット数が多くなると光入出力部が複雑になるという問題があった。そこで、これを解決する手法としてシフトレジスタ構成を有する光バッファメモリが開発された。例えば非特許文献2には、双安定半導体レーザを用いたシフトレジスタ機能付き光バッファメモリとして、個別の双安定半導体レーザ、光アイソレータ、光ゲート、偏光子を用いた構成が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003-337355号公報([0049]−[0056]、図6、図7)
【非特許文献1】森, 佐藤, 河口,“偏光双安定面発光半導体レーザを用いた2ビット光バッファメモリ”,2006年電子情報通信学会ソサイエティ大会, C-3-28, p.150, 2006.
【非特許文献2】H. Kawaguchi, T. Mori, Y. Sato and Y. Yamayoshi, "Optical buffer memory using polarization-bistable vertical-cavity surface-emitting lasers", Japanese Journal of Applied Physics, vol. 45, no. 34, p. L894, 2006.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、シフトレジスタ機能付き光バッファメモリにおいて、上記のように双安定半導体レーザや光ゲート等を個別の素子で構成した場合、多ビットのデータを記録するために多数の素子が必要となり、全体が大規模な構成になるといった問題があった。
【0006】
そこで、多数の偏光双安定面発光半導体レーザを2次元アレイ状に集積化し、空間的に並列に光を入出力する構成が案出された。特許文献1には、こういった双安定半導体レーザを2次元平面上に集積化したレーザアレイを用いたシフトレジスタ機能付き光バッファメモリの例が示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1において開示されているような従来の2次元レーザアレイを用いた光バッファメモリでは、レーザの出力光を別のレーザに転送する際に、逆方向への光の伝搬を防ぐために斜めに光を入射する必要があり、光入力効率の低下が問題となっていた。一方、光入力効率の高めるためには垂直光を入射することが望ましいが、逆方向への光の伝搬を防ぐためには光アイソレータを使用する必要がある。しかし、双方向の光が交錯しているため光アイソレータを挿入することは構造上困難であった。さらにまた、反射器で光を集光するために幾何学的形状が制限されるといった問題も存在していた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のような問題を解決するために成された本発明に係るシフトレジスタ型光メモリ装置は、
時系列信号として入力される光信号を各双安定半導体レーザに1ビットずつ記録し、記録された光信号を所定のタイミングで時系列信号として読み出す光メモリ装置において、
a)複数個の双安定半導体レーザがm×nの行列状に配置されたレーザアレイと、
b)最終列の双安定半導体レーザを除く双安定半導体レーザの出力光がレーザアレイにおいて一方に隣接する列の双安定半導体レーザに垂直に入力されるように光路を形成するシフトレジスタ光学系と、
c)前記シフトレジスタ光学系によって形成される光路上に、順方向の出力光のみが通過するように配置される光アイソレータと、
d)前記シフトレジスタ光学系によって形成される光路上に配置される空間光変調器と、
を備えたことを特徴としている。
【0009】
また、本発明のシフトレジスタ型光メモリ装置では、前記シフトレジスタ光学系を、
少なくともn−1個の互いに平行なミラー要素から成り、各ミラー要素は前記レーザアレイにおける最終列の双安定半導体レーザを除く各列の双安定半導体レーザからの出力光に対応するミラーアレイと、
複数の平面ミラーと、
ハーフミラーと、
から構成するのが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るシフトレジスタ型光メモリ装置によれば、以下に挙げるような優れた効果が得られる。
・双安定半導体レーザが2次元アレイ状に集積化されたレーザアレイを用いることにより、簡単な構成で多ビットのデータを記録/再生可能である。
・シフトレジスタ光学系により、双安定半導体レーザの出力光が隣接する列の双安定半導体レーザに順次入力される構成が実現される。これによって、簡単な構成で光メモリ装置にシフトレジスタ機能を付与することができる。
・双安定半導体レーザに入力光が垂直に入力されるように光路が形成されているため、高い光入力効率が得られる。またこれにより、双安定半導体レーザ間の間隔を狭めることができるから、双安定半導体レーザの一層の高集積化が可能となる。
・光路上に光アイソレータを配置することにより、隣接する双安定半導体レーザに光を入射する際に隣接する双安定半導体レーザの出力光が逆方向に伝搬してしまうという問題を回避することができる。
・光アイソレータや空間光変調器などを個別に設ける必要が無く、全体的に簡便な構成であるため、低コスト化を図ることができる。動作電力も小さい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係るシフトレジスタ型光メモリ装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明に係るシフトレジスタ型光メモリ装置1の全体構成図である。シフトレジスタ型光メモリ装置1は、入力光変換部2と、第一レンズアレイ3、第二レンズアレイ4、第三レンズアレイ9と、複数個の双安定半導体レーザがm×nの行列状に配置されたレーザアレイ5、光アイソレータ6、空間光変調器7、偏光子8、光変調器アレイ10、出力光変換部11、ミラーアレイ20、第一平面ミラー21、第二平面ミラー22、ハーフミラー23を含んでいる。
【0012】
レーザアレイ5には、複数個の双安定半導体レーザがm×nの行列状に配置されている。図1では左右方向を行、奥行き方向を列とし、4×4の行列状に合計16個の双安定レーザが配置されているものとする。なお、以下では、図1において一番左の列を1列目とし、次いで2列目、…と呼ぶ。また、一番手前の行を1行目とし、次いで2行目、…と呼ぶ。また、本明細書では「双安定レーザ」を適宜「レーザ」と略称する。
従来知られているように(例えば非特許文献2参照)、双安定半導体レーザは外部からの光入力が無い場合にはレーザの発振偏光を保持し、外部から光が入力されるとレーザの発振偏光が切り替わるという特性を有している。従って0゜偏光と90゜偏光の光により、二値情報を扱う光メモリとして利用することが可能である。
【0013】
図1に示す例では、ミラーアレイ20、第一平面ミラー21、第二平面ミラー22、ハーフミラー23によってシフトレジスタ光学系が構成されている。シフトレジスタ光学系によって、レーザアレイ5において最終列の双安定半導体レーザを除く双安定半導体レーザの出力光が、レーザアレイ5において一方に隣接する列の双安定半導体レーザに垂直に入力されるように光路が形成されている。基本的にこれらミラーアレイ20、第一平面ミラー21、第二平面ミラー22、ハーフミラー23は、いずれも光の進行方向を90°回転させる。また、ハーフミラー23は、光を一部透過し、一部反射させる。
【0014】
ミラーアレイ20は、n−1個(図1の例では4−1=3個)の互いに平行なミラー要素(第一ミラー要素20−1、第二ミラー要素20−2、第三ミラー要素20−3)から成り、各ミラー要素はレーザアレイ5の各列の双安定半導体レーザからの出力光を受け、それを反射させる。すなわち、第一ミラー要素20−1は1列目を構成する双安定半導体レーザからの出力光のみを反射させ、第二ミラー要素20−2は2列目の双安定半導体レーザからの出力光のみを反射させ、第三ミラー要素20−3は3列目の双安定半導体レーザからの出力光を反射させる。また、ミラーアレイ20は、図1において下方向からの光を左方向に反射させるが、第一ミラー要素20−1よりも第二ミラー要素20−2の方が上に配置されており、第二ミラー要素20−2よりも第三ミラー要素20−3の方が上に配置されている。このミラー要素の配置により、ある列のレーザからの出力光が順次、隣接する列のレーザに垂直に入力される。
【0015】
このシフトレジスタ型光メモリ装置1には入力信号光、セット光、リセット光の三種類の光信号が入力される。入力信号光は、ディジタルデータで変調された光信号である。セット光は入力信号光の記録すべきビットを示す光パルスであり、リセット光はレーザの偏光をリセットするための光パルスである。入力信号光とセット光は90゜偏光、リセット光を0゜偏光にして入力光変換部に入力される。
【0016】
入力光変換部2の構成の一例を図2に示す。入力光変換部2は、時系列信号として入力される光信号を1ビットずつ時間遅延を付けて空間的に分離するための装置である。ここでは簡単のため、4ビット分の信号(注入光a〜d)のみを考える。入力信号光は、まず光分波器aで2つに分けられ、一方は2ビット分の時間遅延を持った光遅延器aに入力される。それぞれの光は光分波器bと光分波器cでさらに2つに分けられ、一方は1ビット分の時間遅延を持った光遅延器bと光遅延器cに入力される。これより、入力信号光は4つに分岐され、注入光dに対して注入光c、注入光b、注入光aはそれぞれ1ビット、2ビット、3ビットの時間遅延を持つ。一方、セット光とリセット光は光合波器eで合波された後、光分波器d、光分波器e、光分波器fで4つに分岐され、それぞれ光合波器a、光合波器b、光合波器c、光合波器dにより入力信号光と合波される。
図2に示す入力光変換部2は全て平面光回路(Planar Lightwave Circuit;PLC)によって構成しているが、これに限られるものではなく、図3に示すように光ファイバカプラにより光分波器と光合波器を、光ファイバ遅延線により光遅延器を構成することも可能である。またPLCと光ファイバを併用することも可能である。
【0017】
入力光変換部2から出力される注入光a、注入光b、注入光c、注入光dは、第一レンズアレイ3によって平行光とされる。次にミラーアレイ20のミラーの無い部分を通過またはミラーアレイを避けて通過し、第一平面ミラー21、平面ミラー22、ハーフミラー23で反射し、第二レンズアレイ4により集光されレーザアレイ5の1列目のレーザに入力される。注入光a、注入光b、注入光c、注入光dがそれぞれレーザアレイの1列目の1行目、2行目、3行目、4行目のレーザに入力される。
【0018】
レーザアレイの各列に記録されたデータ(0°偏光または90°偏光)を次の列にシフトさせる方法について説明する。
レーザアレイの1列目のレーザの出力光は第二レンズアレイ4によって平行光となり、ハーフミラー23を通過し、光アイソレータ6を下から上に通過し、空間光変調器7に入力される。光アイソレータ6は、一方向に光を通過し逆方向の光は通過しない素子である。この場合は矢印のように図1の下から上方向(順方向)に光が通過するように配置されている。本明細書では、光が進行すべき向きを順方向と呼ぶ。
空間光変調器7は、面内の一部分のみ光のオン/オフ(透過/阻止)が制御可能な素子である。例えばレーザアレイ5における1列目のレーザからの出力光だけを透過させ、他の列からの出力光は透過させず阻止するといった制御が可能である。空間光変調器7としては液晶を用いたものや磁気光学効果を用いたものを利用できる。
レーザアレイ5の1列目に相当する部分の空間光変調器7をオンにすると、1列目のレーザの出力光は空間光変調器7を通過し、ミラーアレイ20のミラーで反射し、第一平面ミラー21、第二平面ミラー22、ハーフミラー23でそれぞれ90°回転するように反射し、第二レンズアレイ4により集光され、レーザアレイ5の2列目のレーザに上書き入力される。同様に、2列目のレーザの出力光は3列目のレーザに入力され、3列目のレーザの出力光は4列目のレーザに入力される。ここで、例えば3列目のレーザの出力光がハーフミラー23で左側に反射し、図1の矢印と逆方向に伝搬する光は、光アイソレータ6に対して上方向から入力されるので光アイソレータ6を通過せず、2列目のレーザに入力されることは無い。
【0019】
最終列(本実施例では4列目)に記録されたデータを出力する方法について説明する。
4列目のレーザの出力光は第二レンズアレイ4によって平行光となり、ハーフミラー23、光アイソレータ6、空間光変調器7を通過し(光アイソレータ6、空間光変調器7を避けて通ってもよい)、ミラーアレイ20のミラーの無い部分を通過またはミラーアレイ20を避けて通過し、偏光子8に入力される。偏光子8は、特定の方向の偏光成分のみを通過する素子であり、ここでは90゜偏光の光を通過し、0゜偏光の光は通過しないように配置する。これにより、4列目のレーザの発振偏光が90゜の場合のみ偏光子8を通過して第三レンズアレイ9で集光され、光変調器アレイ10に入力される。
【0020】
光変調器アレイ10と出力光変換部11の構成を図4に示す。レーザアレイの4列目の1行目、2行目、3行目、4行目のレーザの出力光がそれぞれレーザ出力光a、レーザ出力光b、レーザ出力光c、レーザ出力光dである。各レーザ出力光はそれぞれ光変調器a、光変調器b、光変調器c、光変調器dに入力されて強度変調される。光変調器としては、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)結晶を用いたマッハツェンダ型光変調器や、半導体を用いた電界吸収型光変調器などを好適に使用することができる。光変調器アレイ10からの出力光は出力光変換部11に入力される。光変調器出力光b、光変調器出力光dは、それぞれ1ビット分の時間遅延を持った光遅延器a、光遅延器bに入力され、光合波器a、光合波器bにより光変調器出力光a、光変調器出力光cと合波され、後者は2ビット分の時間遅延を持った光遅延器cに入力され、前者と後者が光合波器cで合波され出力信号光として出力される。これより、光変調器出力光a、光変調器出力光b、光変調器出力光c、光変調器出力光dの順に時系列にパルスが並んだ出力信号光が得られる。図4では4つの光変調器と出力光変換部をPLCに集積化した構成としているが、これに限られるものではなく、図5に示すように個別の光変調器と光ファイバカプラによる光合波器と光ファイバ遅延線による光遅延器とで構成することも可能であり、またPLCと光ファイバを併用することも可能である。
【0021】
以上の実施例では、4行4列のレーザアレイを用いた場合について述べたが、これに限られるものではなく、任意の行数、列数のレーザアレイを使用することが可能であり、また必ずしも行数と列数が等しい必要は無い。具体的には、m行n列のレーザアレイを使用してm×nビットの光バッファメモリを構成する場合、入力光変換部2をm分岐、第一レンズアレイ3のレンズ数をm、第二レンズアレイ4のレンズ数をm×n、空間光変調器7の分割数をn、ミラーアレイのミラー数をn−1、第三レンズアレイ9のレンズ数をm、光変調器アレイ10の光変調器数をm、出力光変換部をm合波とすれば良い。
【0022】
一般に、空間光変調器は高速な変調が困難である。このため本実施例では、空間光変調器7とは別に高速な光変調器である光変調器アレイ10を用意して4列目のレーザの出力光の変調を行なっている。これにより、内部の光転送よりも高速な変調信号を出力することが出来る。もし出力信号光の変調速度が空間光変調器7の速度以下で良い場合は、光変調器アレイ10を省略して空間光変調器7の4列目で出力光の変調を行なうことも可能である。
【0023】
出力信号光にはなるべく大きな光パワーが求められており、光変調器アレイ10や出力光変換部11に光損失があるため、高いレーザ出力光パワーが求められる。一方、低消費電力化のためにはなるべく小さな光パワーでレーザを動作させてレーザの消費電力を抑える必要がある。そこで、外部に光を出力するレーザ(本実施例では4列目のレーザ)の光パワーを大きく設定し、それ以外のレーザは内部の光転送に必要なだけの小さな光パワーに設定することにより、高い出力信号光パワーと低消費電力動作を両立することが出来る。
【0024】
また、一般に半導体レーザは、光パワーを大きくするとより高速な動作が可能となる。よって、高速な入力信号を記録するためには、レーザの光パワーを大きくする必要がある。一方、低消費電力化のためにはなるべく小さな光パワーでレーザを動作させてレーザの消費電力を抑える必要がある。そこで、入力信号を記録する1列目のレーザの光パワーを大きく設定し、内部の光転送は入力信号の1/mの低速で良いため、それ以外のレーザは小さな光パワーに設定することにより、高速な入力信号の記録と低消費電力動作を両立することが出来る。また、入力信号を記録するレーザと外部に光を出力するレーザを大きな光パワーに設定し、それ以外のレーザは小さな光パワーに設定することも可能である。
光パワーを大きくするためにはレーザの注入電流を大きくすればよい。
【0025】
本発明に係るシフトレジスタ型光メモリ装置では、同一波長の注入光が1列目のレーザに入力されるため、1列目を構成する各レーザの波長は注入光の波長に合わせる必要がある。そして、1列目のレーザの出力光が2列目のレーザに入力され、同様にして最終列まで繰り返されるため、結局全てのレーザの波長を注入光の波長に合わせる必要がある。しかし、完全に均一なレーザアレイを作製することは難しく、実際のレーザアレイでは個々のレーザの波長に僅かなずれが発生する。そこで、半導体レーザは温度によって波長が変わることを利用し、図6(a)に示すように各レーザの近傍にヒータを配置して各レーザの温度を調整して波長の調整を行なうとよい。レーザアレイ中の近傍のレーザの波長ずれが少なく緩やかに波長が変化している場合は、図6(b)に示すようにヒータの数をレーザの数より少なく(例えばレーザ4個に対してヒータ1個程度)することが可能である。ヒータとしては、抵抗の他に半導体のpn接合によるダイオードを用いることも可能である。
【0026】
次に、図7のタイミングチャートを用いてシフトレジスタ機能付き光バッファメモリの動作を説明する。入力信号光は、b0からb15までの16ビットのデータで変調された光信号である。入力信号光は、入力光変換部の光遅延器によって遅延入力信号光a、b、c、dのように1ビットずつタイミングの異なる信号に変換され、セット光およびリセット光と合波されて注入光a、b、c、dのようになる。注入光aは入力信号光のb0とセット光のタイミングが一致しており、同様に注入光b、c、dはそれぞれ入力信号光のb1、b2、b3とセット光のタイミングが一致している。レーザへの入力光パワーを、入力信号光とセット光のそれぞれはレーザの偏光スイッチング閾値よりも低く、かつ入力信号光とセット光が合波された場合はレーザの偏光スイッチング閾値よりも高くなるように設定しておく。注入光a、b、c、dをレーザアレイの1列目の1、2、3、4行目のレーザに入力すると、まず最初のリセット光により1列目の全てのレーザの発振偏光が0°にリセットされ、次に入力信号光とセット光が同時にレーザに入力された時のみレーザの発振偏光が90°に切り替わる。これにより、入力信号光のb0、b1、b2、b3がそれぞれ1列目の1、2、3、4行目のレーザの発振偏光状態として記録される。つまり、b0が“1”の場合は1列1行目のレーザが90°偏光、b0が“0”の場合は0°偏光となる。
【0027】
注入光が無い場合はこれらの発振偏光が保持されるので、1列目のレーザ出力はb0-3に相当する偏光で発振を続ける。空間光変調器7の1列目をオンにすると、1列目のレーザの出力光が2列目のレーザに入力され、1列目のレーザの発振偏光状態が2列目のレーザに転送される。これより、2列目のレーザ出力がb0-3に相当する発振偏光となる。転送後は、1列目のレーザに次のデータb4-7を記録する。同様にして、空間光変調器7の2列目をオンにすると、3列目のレーザ出力がb0-3に相当する発振偏光となり、空間光変調器7の3列目をオンにすると、4列目のレーザ出力がb0-3に相当する発振偏光となる。偏光子8により4列目のレーザ出力の90°偏光成分を抽出し、光変調器によりパルス化すると、b0-3に対応した光変調器出力光が得られる。そして出力光変換部の光遅延器によって遅延光変調器出力光a、b、c、dのように1ビットずつタイミングの異なる信号に変換され、合波されて入力信号光と同じビットパターンb0、b1、b2、b3の出力信号光となる。同様にしてb4からb15が記録/再生される。
【0028】
以上の説明では光バッファメモリに記録可能なビット数が16ビットで入力信号光のビット数も16ビットの場合について述べた。もし入力信号光のビット数が光バッファメモリに記録可能なビット数よりも多い場合は、セット光と入力信号光が同時にレーザに入力された時に記録される原理上、光バッファメモリに記録可能なビット数のみを抽出して記録する機能を併せ持っている。よって、光スイッチ等で記録可能なビット数のみを切り出すといった処理は不要である。また、逆に入力信号光のビット数が光バッファメモリに記録可能なビット数よりも少ない場合は、自動的に残りのビットは“0”が記録再生されるので問題は無い。
以上の実施例では、データの“1”を90°偏光、データの“0”を0°偏光に割り当てたが、これに限られるものではなく、逆にデータの“1”を0°偏光に割り当てても同様に光バッファメモリとして動作可能であることは言うまでもない。
【0029】
[消去後書込方式]
双安定半導体レーザに記録されたデータを他の双安定半導体レーザに転送するシフトレジスタ機能を実現する方法として、二つの方式が考えられる。一つは既に述べた上書き方式で、もう一つが消去後書込方式である。
消去後書込方式のシフトレジスタ型光メモリ装置では、レーザアレイの一列目以外の双安定半導体レーザにリセット光を入力するリセット光入力部を更に設け、また、前記シフトレジスタ光学系によって形成される光路上に偏光子を設ける。
好適には、上述した上書き方式におけるミラーアレイのミラー要素をハーフミラーとし、さらに、レーザアレイの一列目以外の双安定半導体レーザにリセット光を入力するリセット光入力部を備え、該リセット光入力部から出力されるリセット光の光路が、ハーフミラーである各ミラー要素を透過することにより、前記シフトレジスタ光学系によって形成される光路に重ね合されるようにするとよい。
【0030】
以下、この消去後書込方式のシフトレジスタ型光メモリ装置の例について説明する。
図8は、本発明に係るシフトレジスタ型光メモリ装置1の他の構成(消去後書込方式)の全体構成図である。入力光変換部2に入力される第一リセット光は上書き方式のリセット光と同じである。第一空間光変調器31は上書き方式の空間光変調器7と同様の機能を持つが、90°偏光の光に対してのみ変調されるもので良い。光アイソレータ6は上書き方式の光アイソレータと同様の機能を持つが、90°偏光の光に対してのみ逆方向の伝搬を阻止するもので良い。入力信号光、セット光、入力光変換部2、第一レンズアレイ3、第一平面ミラー21、第二平面ミラー22、ハーフミラー23、第二レンズアレイ4、レーザアレイ5、第三レンズアレイ9、光変調器アレイ10、出力光変換部11、出力信号光は、図1に示した上書き方式のシフトレジスタ型光メモリ装置と同一である。
また、入力信号光、セット光、第一リセット光が入力光変換部2に入力され、入力光変換部2から出力される注入光a、注入光b、注入光c、注入光dがレーザアレイ5の1列目のレーザに入力されるところまでは上述した上書き方式と同じである。
【0031】
なお、図8では注入光a、注入光b、注入光c、注入光dが第二空間光変調器32を通過しているが、第二空間光変調器32の注入光a、注入光b、注入光c、注入光dに対応する部分は常に透過状態としておく。第二リセット光は0°偏光の連続光である。光ファイバの端面から出射された第二リセット光はある角度で広がり、レンズ33によって平行光にされる。図8では第二リセット光の伝搬をレーザアレイ5の各レーザに第二リセット光分波部43対応した線で描いているが、実際には光が連続的に広がって伝搬する。第二空間光変調器32は、図11(a)に示すようにレーザアレイの列に対応する部分毎に光の透過/阻止が制御可能な素子であり、0°偏光の光に対してのみ変調されるもので良い。第二空間光変調器32の1列目(注入光a〜d)に対応する部分は、2列目等と同様の変調器を設け常に透過状態にする、または変調器を設けずに透明な領域とする。もしくは注入光が第二空間光変調器32を避けて伝搬するように第二空間光変調器32を配置することもできる。これにより、注入光aから注入光dがレーザの1列目に入力される。
【0032】
ハーフミラーアレイ30は、互いに平行な複数のハーフミラーであるハーフミラー要素30−1、第二ハーフミラー要素30−2、第三ハーフミラー要素30−3から成り、その配置は上述した上書き方式のミラーアレイ20と同様である。第二空間光変調器32を透過した第二リセット光は、ハーフミラーアレイ30のハーフミラー要素を透過し、第一平面ミラー21および第二平面ミラー22で反射した後、ハーフミラー23で反射し、第二レンズアレイ4で集光されてレーザアレイ5の1列目以外のレーザに入力される。
【0033】
レーザアレイ5のレーザの出力光は、レンズアレイ4で平行光となり、ハーフミラー23を通過し、偏光子8に入力される。偏光子8は、90°偏光の光を通過し、0°偏光の光を阻止する素子である。よって、レーザの発振偏光が90°の場合にレーザ出力光が偏光子8を通過し、光アイソレータ6を下から上の方向に通過し、第一空間光変調器31でレーザアレイ5の列毎に透過/阻止が制御される。レーザの発振偏光が0°の場合は、偏光子8で光が阻止されて光アイソレータや第一空間光変調器31に入力されないので、光アイソレータ6と第一空間光変調器31は90°偏光の光に対してのみ機能すれば良く、0°偏光と90°偏光の両方に対して機能する必要がある上書き方式と比べて、光アイソレータ6と第一空間光変調器31の構成を簡略化することができる。このように、光アイソレータおよび空間光変調器は、偏光子8を通過する偏光状態の光のみに作用するようにすればよい。
【0034】
第一空間光変調器31を通過した光は、ハーフミラーアレイ30のハーフミラー要素で反射し、第一平面ミラー21および第二平面ミラー22で反射し、次いでハーフミラー23で反射し、第二レンズアレイ4で集光されてレーザアレイ5において隣接する右側の列の双安定半導体レーザに入力される。レーザの出力光が隣接する一方のレーザに入力される構造は上書き方式と同様である。図8の矢印と逆方向に伝搬する光は、90°偏光の場合は光アイソレータ6を通過せず、0°偏光の場合は偏光子8を通過しないので、逆方向に光が伝搬してレーザに入力されることは無い。最終列である4列目のレーザの出力光は第二レンズアレイ4によって平行光となり、ハーフミラー23、偏光子8、光アイソレータ6、第一空間光変調器31を通過し、ハーフミラーアレイ30のハーフミラー要素の無い部分を通過またはハーフミラーアレイ30を避けて通過し、第三レンズアレイ9で集光され光変調器アレイ10に入力される。これより、4列目のレーザの発振偏光が90°の場合のみ、偏光子8を通過して光変調器アレイ10に入力される。
【0035】
消去後書込方式のシフトレジスタ型光メモリ装置においても上書き方式のシフトレジスタ型光メモリ装置の場合と同様に、入力光変換部2をPLCまたは光ファイバ、もしくは両者の組合せで構成することや、光変調器アレイ10と出力光変換部11をPLCまたは光ファイバもしくは両者の組合せで構成することが可能である。また、本実施例は4行4列のレーザアレイ5を用いた場合について述べたが、これに限られるものではなく、任意の行数、列数のレーザアレイを使用することがもちろん可能である。
【0036】
また、消去後書込方式のシフトレジスタ型光メモリ装置でも、第一空間光変調器31とは別に高速な光変調器である光変調器アレイ10を設けることにより、内部の光転送よりも高速な変調信号を出力するようにしている。もし出力信号光の変調速度が第一空間光変調器31の速度以下で良い場合は、光変調器アレイ10を省略し、第一空間光変調器31の4列目で出力光の変調を行なうことも可能である。
さらに、消去後書込方式のシフトレジスタ型光メモリ装置においても、上述した上書き方式のシフトレジスタ型光メモリ装置の場合と同様に、入力信号を記録する1列目のレーザの光パワーを大きく設定し、それ以外のレーザは小さな光パワーに設定してもよい。入力信号を記録する列のレーザと外部に光を出力する列のレーザを大きな光パワーに設定し、それ以外のレーザは小さな光パワーに設定してももちろんよい。
さらにまた、上書き方式の場合と同様に、図6に示すようにレーザアレイ5においてヒータを設けることもできる。
【0037】
また、入力信号光のビット数が光バッファメモリに記録可能なビット数よりも多い場合および少ない場合においても、上書き方式と同様に問題無い。また上記の実施例では、データの“1”を90°偏光、データの“0”を0°偏光に割り当てたが、これに限られるものではなく、逆にデータの“1”を0°偏光に割り当て、第一リセット光および第二リセット光を90°偏光としても同様に光バッファメモリとして動作させることが可能である。
【0038】
上記では第二リセット光を各レーザに分配する方法として、図8に示すように光ファイバから出射されて広がった光をレンズ33で平行光にする方法を示したが、第二リセット光をレーザの数(n×m個)に合わせて分岐する方法もある。図9は1つの光を4行4列に分岐させるために設けられるリセット光分波部の構成例であり、図9(a)は上面図、図9(b)は側面図である。このリセット光分波部は、第二空間光変調器32およびレンズ33に替えてシフトレジスタ型光メモリ装置に設けられるものであり、第一リセット光分波部41、リセット光分波用レンズアレイ42、第二リセット光分波部43とから構成される。
第一リセット光分波部41は、光分波器41−a、41−b、41−cの三つの光分波器を備えており、入力された第二リセット光を4つ(リセット光rs−a、リセット光rs−b、リセット光rs−c、リセット光rs−d)に分波する。
リセット光分波用レンズアレイ42は、第一リセット光分波部41の後段(光の進行方向)に設けられ、第一リセット光分波部41によって分波された光をそれぞれ平行光にする。
【0039】
第二リセット光分波部43は図9(b)に示すようにリセット光分波用レンズアレイ42のさらに後段に設けられ、3つのハーフミラーHM1、HM2、HM3、および3つのミラーM1、M2、M3を備えている。これらのミラー及びハーフミラーは図9(a)に示されるように、全て第一リセット光分波部41によって分波された光を全て反射させることができる長さ(図9(a)においては上下方向の長さ)を有しており、いずれも入力されるリセット光の進行方向に対して45°の傾きをもつように配置されている。
ハーフミラーHM1はリセット光分波用レンズアレイ42より入力される第二リセット光の進行方向に設けられる。ここでは図9(b)を参照しつつ第一リセット光分波部41によって4つに分波された第二リセット光の一つであるリセット光rs−aを例にとって考える。
【0040】
ハーフミラーHM1の後方にはハーフミラーHM2が設けられる。入力されたリセット光rs−aは、ハーフミラーHM1において半分が透過してリセット光rs−a1となって後方(図9(b)においては左方)に進行し、半分が反射してリセット光rs−a2となって下方に進む。
リセット光rs−a1は次にハーフミラーHM2において半分が透過してリセット光rs−a3として後方に進み、半分が反射してリセット光rs−a4となって下方に進む。
ハーフミラーHM2の下方にはミラーM2が設けられており、ハーフミラーHM2を透過せずに反射したリセット光rs−a4はこのミラーM2で反射して、上記リセット光rs−a3の下方を後段に向かって進行する。
また、ハーフミラーHM1の下方にはミラーM1が設けられており、ハーフミラーHM1を透過せずに反射したリセット光rs−a2はこのミラーM1によって後方に向かうように進行し、ミラーM1の後方に設けられているハーフミラーHM3に到達する。リセット光rs−a2はこのハーフミラーHM3において半分が透過してリセット光rs−a5となって後段に進む。ハーフミラーHM3において透過せずに反射した光はリセット光rs−a6として下方に進むが、ハーフミラーHM3の下方に設けられているミラーM3によって左方に反射し、後段に進む。
ハーフミラーHM2とミラーM2の間隔とハーフミラーHM3とミラーM3の間隔を等しくし、ハーフミラーHM1とミラーM1の間隔をハーフミラーMH2とミラーM2の間隔の2倍にすることにより、入力されたリセット光rs−aが1/4ずつ分波された光であるリセット光rs−a3、rs−a4、rs−a5、rs−a6もまた、それぞれ等間隔となって後段に送られる。
このようにして、リセット分波部により、一つの光が4×4=16に分波される。
【0041】
図13に示すタイミングチャートを用いて消去後書込み方式の動作を説明する。入力信号光から1列目のレーザ出力までは、上述した上書き方式の場合(図7)と同様である。1列目から2列目にデータを転送する場合は、まず第二空間光変調器32の2列目をオンにして「2列目のリセット光」に示すように0°偏光のリセット光を2列目のレーザに入力し、2列目のレーザ出力を0°偏光にリセットする。その後、第一空間光変調器31の1列目をオンにして「1列目の空間光変調器出力」に示すように1列目のレーザが90°偏光の場合のみ90°偏光の光を2列目のレーザに入力する。これより、1列目の各レーザが90°偏光の場合にのみ2列目の各レーザの発振偏光が90°に切り替わる。結果的に、1列目のレーザの発振偏光状態が2列目のレーザに転送されることになる。転送後は、1列目に次のデータを記録する。同様にして、2列目のデータを3列目に転送し、3列目のデータを4列目に転送する。偏光子8により4列目のレーザ出力の90°偏光成分を抽出し、光変調器アレイ10によりパルス化し、出力光変換部11により遅延を付加して合波すると、上書き方式の場合と同様に記録されたデータが再生される。
【0042】
[連続的にデータを記録する方法]
図10(a)は空間変調器のレーザアレイの列に対応した分割例(独立動作可能な箇所を示す例)を示しており、上述した上書き方式のシフトレジスタ型光メモリ装置及び消去後書込方式のシフトレジスタ型光メモリ装置の両者に適用可能である。しかし、この構成では、最初の一列分のデータを一列目のレーザに記録し、転送を行った後でなければ次の新たな一列分のデータを一列目に記録することができないため、最初の一列分のデータと次の一列分のデータを記録する間に、記録ができない時間が存在してしまう。この問題を解決して連続的にデータを記録するためには、空間光変調器において、レーザアレイ上の双安定半導体レーザの各列の出力光に対応する箇所(一列)を複数の箇所(ブロック)に分割するとよい。これによって、一列分のデータを全て記録完了する前に、既に記録したブロック分のデータを転送して次のデータの記録に備えることができるようになる。図10(b)は、一列を前半と後半の二つのブロックに分割する例である。この場合は、データを前半、後半の順に4列目まで転送する。この他、図10(c)に示すように1列目のみ分割し、2列目以降は分割しないようにしてもよい。
【0043】
まず、図1に示すような全体構成を有する上書き方式のシフトレジスタ型光メモリ装置において連続的にデータを記録する方法について、図14のタイミングチャートを参照しつつ説明する。なお、空間光変調器7は、図10(c)に示した例のように4列に分割されており、そのうち1列目はさらに二分割されているものとする。
入力信号光は、時間的に連続したb0からb15までの16ビットのデータで変調された光信号である。入力光変換部を例えば図12に示す例のように変更することにより、前半(注入光aと注入光b)と後半(注入光cと注入光d)のセット光とリセット光のタイミングをそれぞれ2ビット分異なるようにする。そして入力信号光に対しては、注入光aと注入光cが1ビット遅延、注入光bと注入光dが遅延なしとなり、遅延入力信号光a、b、c、dに示すタイミングとなる。これより、注入光a、b、c、dはそれぞれ入力信号光のb0、b1、b2、b3とセット光のタイミングが一致し、注入光c、dは注入光a、bよりもセット光とリセット光のタイミングが2ビット分遅れている。注入光a、b、c、dをそれぞれレーザアレイの1列目の1、2、3、4行目のレーザに入力すると、1列目の前半にb0とb1が記録され、2ビット分の時間だけ遅れて1列目の後半にb2とb3が記録される。空間光変調器の1列目の前半をオンにすると、1列目の前半のレーザの出力光が2列目の前半のレーザに入力され、1列目の前半のレーザの発振偏光状態が2列目の前半のレーザに転送され、2列目の前半のレーザ出力がb0-1に相当する発振偏光となる。その後、1列目の前半がリセットされ、次のデータ(b4とb5)が1列目の前半に記録される。2ビット分の時間だけ遅れて空間光変調器の1列目の後半をオンにすると、同様にして2列目の後半のレーザ出力がb2-3に相当する発振偏光となる。その後、1列目の後半がリセットされ、次のデータ(b6とb7)が1列目の後半に記録される。2列目のレーザにb0-1とb2-3が共存する時間内に空間光変調器の2列目をオンにすると、b0-1とb2-3が同時に3列目のレーザに転送され、3列目のレーザ出力がb0-3に相当する発振偏光となる。空間光変調器の3列目をオンにすると、4列目のレーザ出力がb0-3に相当する発振偏光となる。4列目にb0-3、3列目にb4-7、2列目にb8-11、1列目にb12-15が記録された状態で、再生までの時間待ちを行なう。再生時には、図14に示すように以降のデータについての転送を順次行なうと、4列目のレーザ出力は4ビットの時間間隔でb4-7、b8-11、b12-15の順に切り替わる。偏光子8により4列目のレーザ出力の90°偏光成分を抽出し、光変調器によりパルス化し、出力光変換部の光遅延器によって遅延光変調器出力光a、b、c、dのように1ビットずつタイミングの異なる信号に変換され、合波されて、入力信号光と同様の連続したb0からb15が再生される。
【0044】
以上のように空間光変調器の1列を前半と後半に分割しタイミングをずらして動作させることにより、連続的にデータを記録することが出来る。ここでは1列を前半と後半の2つに均等に分割したが、これに限られるものではなく、行数が多い場合は3分割以上に分割することも可能であり、不均等に分割することも可能である。また、上記の例では2列目以降は分割せずに転送したが、これに限られるものではなく、空間光変調器の全列を分割して最終列まで分割して転送してもよい。
【0045】
次に、図8に示すような全体構成を有する消去後書込方式のシフトレジスタ型光メモリ装置において連続的にデータを記録する方法について、図15のタイミングチャートを参照しつつ説明する。第一空間光変調器31は図10(c)に示した例のように4列に分割されており、そのうち1列目はさらに二分割されているものとする。
この場合もまた、上述した上書き方式のシフトレジスタ型光メモリ装置において連続的にデータを記録する場合と同様に、入力光変換部2を図12のように変更する。そして、入力信号光の入力から1列目のレーザ出力までは、上記の上書き方式と同様の動作を行う。
【0046】
1列目から2列目にデータを転送する場合は、まず第二空間光変調器32の2列目をオンにして「2列目のリセット光」に示すように0°偏光のリセット光を2列目のレーザに入力し、2列目のレーザ出力を0°偏光にリセットする。その後、第一空間光変調器31の1列目の前半をオンにして「1列目の前半の空間光変調器出力」に示すように1列目の前半のレーザが90°偏光の場合のみ90°偏光の光を2列目のレーザの前半に入力する。その後、第一空間光変調器31の1列目の後半をオンにして「1列目の後半の空間光変調器出力」に示すように1列目の後半のレーザが90°偏光の場合のみ90°偏光の光を2列目のレーザの後半に入力する。これにより、1列目の各レーザが90°偏光の場合のみ2列目の各レーザの発振偏光が90°に切り替わる。結果的に、1列目のレーザの発振偏光状態が2列目のレーザに転送されることになる。データを2列目から3列目に転送する場合は、第二空間光変調器32の3列目をオンにして「3列目のリセット光」に示すように0°偏光のリセット光を3列目のレーザに入力し、3列目のレーザ出力を0°偏光にリセットする。その後、第一空間光変調器31の2列目をオンにして「2列目の空間光変調器出力」に示すように2列目のレーザが90°偏光の場合のみ90°偏光の光を3列目のレーザに入力し、2列目のレーザの発振偏光状態が3列目のレーザに転送される。同様にして4列目まで転送し、以降のデータについても図15のタイミングチャートに示すように順次転送を行なうと、4列目のレーザ出力は4ビットの時間間隔でb4-7、b8-11、b12-15の順に切り替わる。偏光子8により4列目のレーザ出力の90°偏光成分を抽出し、光変調器によりパルス化し、出力光変換部により遅延を付加して合波すると、連続したb0からb15のデータが再生される。
【0047】
以上のように、第一空間光変調器31の1列を前半と後半に分割し、タイミングをずらして動作させることにより、連続したデータを記録することが出来る。本実施例では1列を前半と後半の2つに均等に分割したが、もちろんこれに限られるものではなく、行数が多い場合は3分割以上に分割することも可能であり、不均等に分割することも可能である。また、図11(c)に示すように第二空間光変調器32の2列目を分割し、2列目のレーザのリセットを前半と後半に分割して行なうことも可能である。さらに、図10(b)に示すように第一空間光変調器31の全列を分割し、図11(b)に示すように第二空間光変調器32の全列を分割して、4列目まで前半、後半の順に分割してリセット、転送を行なうことも可能である。
【0048】
以上、本発明に係るシフトレジスタ型光メモリ装置について具体例を挙げつつ説明を行ったが、これらは例に過ぎないことは明らかである。即ち、本発明の精神内において適宜改良や変更を行ったとしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係るシフトレジスタ型光メモリ装置1の全体構成図。
【図2】入力光変換部の構成の一例を示す図。
【図3】入力光変換部の構成の他の例を示す図。
【図4】光変調器アレイ及び出力光変換部の構成例を示す図。
【図5】光変調器アレイ及び出力光変換部の他の構成例を示す図。
【図6】レーザアレイにヒータを設ける場合の構成例。
【図7】本発明に係るシフトレジスタ型光メモリ装置の動作を示すタイミングチャート。
【図8】本発明に係るシフトレジスタ型光メモリ装置1の他の構成の全体構成図。
【図9】1つの光を4行4列に分岐させるために設けられるリセット光分波部の構成例であり、(a)上面図、(b)側面図。
【図10】空間光変調器の分割例を示す図であり、(a)レーザアレイの列に対応した分割例、(b)一列を二つのブロックに分割する例、(c)1列目のみ分割する例。
【図11】第二空間光変調器の分割例を示す図であり、(a)レーザアレイの列に対応した分割例、(b)一列を二つのブロックに分割する例、(c)1列目のみ分割する例。
【図12】入力光変換部の他の構成例を示す図。
【図13】消去後書込方式のシフトレジスタ型光メモリ装置の動作を説明するタイミングチャート。
【図14】上書き方式のシフトレジスタ型光メモリ装置において連続的にデータを記録する場合のタイミングチャートの例。
【図15】消去後書込方式のシフトレジスタ型光メモリ装置において連続的にデータを記録する場合のタイミングチャートの例。
【符号の説明】
【0050】
1…シフトレジスタ型光メモリ装置
2…入力光変換部
3…第一レンズアレイ
4…第二レンズアレイ
5…レーザアレイ
6…光アイソレータ
7…空間光変調器
8…偏光子
9…第三レンズアレイ
10…光変調器アレイ
11…出力光変換部
20…ミラーアレイ
20−1…第一ミラー要素
20−2…第二ミラー要素
20−3…第三ミラー要素
21…第一平面ミラー
22…第二平面ミラー
23…ハーフミラー
30…ハーフミラーアレイ
30−1…第一ハーフミラー要素
30−2…第二ハーフミラー要素
30−3…第三ハーフミラー要素
31…第一空間光変調器
32…第二空間光変調器
33…レンズ
41…第一リセット光分波部
42…リセット光分波用レンズアレイ
43…第二リセット光分波部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列信号として入力される光信号を各双安定半導体レーザに1ビットずつ記録し、記録された光信号を所定のタイミングで時系列信号として読み出す光メモリ装置において、
a)複数個の双安定半導体レーザがm×nの行列状に配置されたレーザアレイと、
b)最終列の双安定半導体レーザを除く双安定半導体レーザの出力光がレーザアレイにおいて一方に隣接する列の双安定半導体レーザに垂直に入力されるように光路を形成するシフトレジスタ光学系と、
c)前記シフトレジスタ光学系によって形成される光路上に、順方向の出力光のみが通過するように配置される光アイソレータと、
d)前記シフトレジスタ光学系によって形成される光路上に配置される空間光変調器と、
を備えたことを特徴とするシフトレジスタ型光メモリ装置。
【請求項2】
前記シフトレジスタ光学系が、
少なくともn−1個の互いに平行なミラー要素から成り、各ミラー要素は前記レーザアレイにおける最終列の双安定半導体レーザを除く各列の双安定半導体レーザからの出力光に対応するミラーアレイと、
複数の平面ミラーと、
ハーフミラーと、
から構成されることを特徴とする請求項1に記載のシフトレジスタ型光メモリ装置。
【請求項3】
さらに、前記レーザアレイの一列目以外の双安定半導体レーザにリセット光を入力するリセット光入力部を備え、
前記シフトレジスタ光学系によって形成される光路上に偏光子を設けた
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシフトレジスタ型光メモリ装置。
【請求項4】
前記ミラーアレイのミラー要素がハーフミラーであり、
さらに、前記レーザアレイの一列目以外の双安定半導体レーザにリセット光を入力するリセット光入力部を備え、該リセット光入力部から出力されるリセット光の光路が、該ハーフミラーを透過することにより、前記シフトレジスタ光学系によって形成される光路に重ね合される
ことを特徴とする請求項2に記載のシフトレジスタ型光メモリ装置。
【請求項5】
前記光アイソレータおよび前記空間光変調器が、所定の偏光状態の光のみに作用するものであることを特徴とする請求項3又は4に記載のシフトレジスタ型光メモリ装置。
【請求項6】
前記空間光変調器よりも高速に動作する、光の強度を変調するための光変調器を前記レーザアレイにおける最終列の双安定半導体レーザの出力光の光路上に備えた
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のシフトレジスタ型光メモリ装置。
【請求項7】
前記レーザアレイにおいて、一列目及び/又は最終列の双安定半導体レーザの光パワーが他の双安定半導体レーザの光パワーよりも大きいことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のシフトレジスタ型光メモリ装置。
【請求項8】
前記レーザアレイの面内に、双安定半導体レーザの波長を調節するための一又は複数個の、個々に温度調節が可能なヒータを配置することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のシフトレジスタ型光メモリ装置。
【請求項9】
前記空間光変調器が、前記レーザアレイ上の双安定半導体レーザの各列の出力光に対応する箇所毎に独立して動作可能であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のシフトレジスタ型光メモリ装置。
【請求項10】
前記空間光変調器が、前記レーザアレイ上の双安定半導体レーザの各列の出力光に対応する箇所において、一列目に対応する箇所のみが、又は全ての箇所が更に複数領域に分割されており、各箇所が独立して動作可能であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のシフトレジスタ型光メモリ装置。
【請求項11】
請求項10に記載のシフトレジスタ型光メモリ装置において、
前記空間光変調器の一列目に対応する複数箇所をそれぞれタイミングをずらして動作させることにより、連続的に光信号を記録することを特徴とするシフトレジスタ型光メモリ装置における光信号の記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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