説明

シミュレーション方法、シミュレーション装置、及びシミュレーションプログラム

【課題】シミュレーション方法において、露光マスクの投影像をシミュレーションするのに要する計算時間を短縮化すること。
【解決手段】演算部4aが、露光マスク16に入射する入射光の振幅ベクトルEinc(sx, sy)と、露光マスク16から出る透過光の振幅ベクトルEtrans(sx, sy; f, g)との間の変換行列を求めるステップP3と、演算部4aが、露光マスク16を透過する前の露光光の振幅ベクトルEinc(sx', sy')を変換行列に乗じることにより、露光マスク16を透過した露光光の振幅ベクトルEtrans(sx', sy'; f, g)を求めるステップP5と、演算部4aが、露光マスク16を透過した露光光の振幅ベクトルEtrans(sx', sy'; f, g)に基づいて、露光マスク16の投影像の光強度を算出するステップとを有するシミュレーション方法による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレーション方法、シミュレーション装置、及びシミュレーションプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
LSI等の半導体装置の製造工程では、配線やゲート電極等のデバイスパターンを形成するために、フォトリソグラフィが多用されている。
【0003】
そのフォトリソグラフィでは、マスクパターンが形成された露光マスクに露光光を照射する。そして、露光マスクを出た露光光を投影光学系により基板上に投影することにより、マスクパターンの縮小投影像を基板上に結像させ、基板上のフォトレジストを感光させる。
【0004】
但し、露光光は露光マスクにおいて回折するので、基板上に投影されたマスクパターンの形状が目標とするデバイスパターンと同じ形になるとは限らない。
【0005】
そこで、半導体装置の設計段階では、与えられたマスクパターンから目標とするデバイスパターンが得られるかどうかを確認するため、シミュレーションによってマスクパターンの投影像を予測することが行われる。
【0006】
そのシミュレーションは、例えばHopkinsの近軸近似の投影光学理論に基づいて行われる。
【0007】
この方法によって十分な近似精度が得られる場合としては、投影光学系の開口数(NA)がそれほど大きくなく、露光マスクに対する露光光の入射角度も小さい場合等がある。また、マスクパターンの大きさが露光光の波長に対してずっと大きく、露光マスクを出た露光光の回折角度が小さい場合もこの方法によってよい近似が得られる。
【0008】
しかしながら、近年のデバイスパターンの微細化に伴い、露光光の波長以下の大きさのデバイスパターンが要求されることもあり、そのような場合には上記の近軸近似による計算では十分な精度が期待できない。
【0009】
このような問題を解決するため、露光マスクを通る露光光の振る舞いを二次元又は三次元のマックスウェル方程式により算出し、これにより露光マスクを透過した露光光の回折光をより厳密に計算することも行われている。その計算手法としては、例えば有限差分法(FDTD)や結合波動解析(RCWA)等が使用される。
【0010】
しかしながら、マックスウェル方程式を解くには膨大な計算資源と計算時間を要し、半導体装置の設計が長期化するという問題を招いてしまう。
【特許文献1】特開2004−247737号公報
【特許文献2】特開平7−220995号公報
【特許文献3】特開2004−31962号公報
【特許文献4】特開平7−273005号公報
【非特許文献1】M. Born & E. Wolf, "Principles of Optics", PERGAMON PRESS, Oxford
【非特許文献2】K. S. Lee, "Numerical Solution of Initial Boundary Value Problems Involving Maxwell's Equations in Isotropic Media", IEEE Trans, On Antennas and Propagation (1966)
【非特許文献3】M. G. Moharam and T.K. Gaylord, "Rigorous coupled-wave analysis of planar-grating diffraction", J. Opt. Soc. Am. (1981)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
シミュレーション方法、シミュレーション装置、及びシミュレーションプログラムにおいて、露光マスクの投影像をシミュレーションするのに要する計算時間を短縮化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下の開示の一観点によれば、演算部が、露光マスクに入射する入射光の振幅ベクトルと、前記露光マスクから出る透過光の振幅ベクトルとの間の変換行列を求めるステップと、前記演算部が、前記露光マスクを透過する前の露光光の振幅ベクトルを前記変換行列に乗じることにより、前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルを求めるステップと、前記演算部が、前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルに基づいて、前記露光マスクの投影像の光強度を算出するステップとを有するシミュレーション方法が提供される。
【0013】
また、その開示の別の観点によれば、露光マスクの投影像の光強度をシミュレーションする演算部を備え、前記演算部が、前記露光マスクに入射する入射光の振幅ベクトルと、前記露光マスクから出る透過光の振幅ベクトルとの間の変換行列を求め、前記演算部が、前記露光マスクを透過する前の露光光の振幅ベクトルを前記変換行列に乗じることにより、前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルを求め、前記演算部が、前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルに基づいて、前記露光マスクの前記投影像の光強度を算出するシミュレーション装置が提供される。
【0014】
そして、その開示の更に別の観点によれば、露光マスクに入射する入射光の振幅ベクトルと、前記露光マスクから出る透過光の振幅ベクトルとの間の変換行列を求めるステップと、前記露光マスクを透過する前の露光光の振幅ベクトルを前記変換行列に乗じることにより、前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルを求めるステップと、前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルに基づいて、前記露光マスクの投影像の光強度を算出するステップとをコンピュータに実行させるためのシミュレーションプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0015】
以下の開示では、露光マスクを透過する前の露光光の振幅ベクトルを変換行列に乗じることにより、露光マスクを透過した露光光の振幅ベクトルを求める。これによれば、マックスウェル方程式等の波動方程式を数値的に解くことなしに、露光マスクを透過した露光光の振幅ベクトルを求めることができ、露光マスクの投影像の光強度を短時間でシミュレーションすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(1)予備的事項
本実施形態について説明する前に、本実施形態の予備的事項について説明する。
【0017】
既述のように、半導体装置の設計段階では、シミュレーションにより露光マスクの投影像を予測する。
【0018】
以下に、そのシミュレーションの一例について説明する。
【0019】
図1は、露光装置の模式図である。
【0020】
この露光装置は、照明絞り11、露光マスク16、及び投影レンズ13を備える。このうち、照明絞り11は、解像度の向上に有効な4重極照明を実現するものであって、四つの開口11aが照明光源として機能する。
【0021】
また、露光マスク16は、石英基板等の透明基板の上に、クロムパターン等のマスクパターン12を形成してなる。その露光マスク16上のマスクパターン12は、投影レンズ13によってシリコン基板等の基板14上に縮小投影される。
【0022】
図2は、その露光マスク16の投影像を予測するシミュレーションに使用するシミュレーション装置の機能ブロック図である。
【0023】
このシミュレーション装置1は、ユーザがデータ入力を行うための入力部2と、シミュレーション内容を実行する制御部4と、シミュレーション結果等を表示する表示部5とを有する。このうち、制御部4は、後述のような演算を行う演算部4aに加え、演算結果等を格納するための記憶部4bを有する。
【0024】
シミュレーション1としては、例えばパーソナルコンピュータ等の電子計算機を使用でき、その場合には電子計算機本体のCPU(Central Processing Unit)が演算部として機能し、RAM(Random Access Memory)等のメモリが記憶部4bとして機能する。
【0025】
図3は、このシミュレーション装置1を用いたシミュレーション方法のフローチャートである。
【0026】
最初のステップS1では、入力部2からの入力に基づいて、演算部4aが照明光源を複数のコヒーレントな点光源11b(図1参照)に仮想的に分割する。各点光源11bの位置は、絞り11の平面内に設定されたsx-sy直交座標系の座標(sx、sy)により特定される。
【0027】
次に、ステップS2に移り、入力部2を介してユーザが露光光の偏光方向や強度等の条件を制御部4に入力することにより、演算部4aが、各点光源11bから出る露光光の振幅ベクトルEinc(sx, sy)を決定する。
【0028】
なお、以下で単に「ベクトル」という場合には、成分表示をする場合を除いて、矢印等のベクトル表記を省略する。
【0029】
上記の振幅ベクトルEincは点光源11bの位置座標(sx、sy)に依存するので、本例ではその振幅ベクトルを位置座標(sx、sy)の関数として決定する。なお、この振幅ベクトルEinc(sx, sy)は、sx-sy直交座標系に平行な平面内に成分を有する二次元のベクトルであって、次の式(1)のように成分表示される。
【0030】
【数1】

【0031】
このような露光光が露光マスク16を透過すると、マスクパターン12に起因した回折によって様々な回折次数を持った回折光が発生する。
【0032】
そこで、次のステップS3では、露光マスク16を透過した露光光の振幅ベクトルEtrans(sx, sy;f, g)を回折次数f、gの関数として求める。なお、回折前の露光光の振幅ベクトルが点光源11bの位置座標(sx、sy)に依存するので、この振幅ベクトルEtrans(sx, sy;f, g)も位置座標(sx、sy)の関数となる。
【0033】
更に、この振幅ベクトルEtrans(sx, sy;f, g)は、既述のEinc(sx, sy)と同様に、sx-sy直交座標系に平行な平面内に成分を有する二次元のベクトルである。
【0034】
回折次数f、gは、回折光の進行方向に相当するものであって、図4のような幾何学的意味を有する。
【0035】
図4は、その回折次数について説明するための斜視図であって、露光マスク16と投影レンズ13の斜視図に相当する。
【0036】
この例では、露光マスク16を出た回折光が、投影レンズ13の入射点Pに入射している。このとき、投影レンズ13の面内にx-y直交座標系をとり、当該直交座標系における入射点Pの位置座標が(xd, yd)であるとする。なお、x軸とy軸の方向は、それぞれ既述のsx軸とsy軸に平行である。また、投影レンズ13と露光マスク16との間隔はzであるとする。
【0037】
この場合、この回折光の回折次数f、gは、次の式(2)、(3)で定義される。
【0038】
【数2】

【0039】
なお、式(2)、(3)において、λは露光光の波長を表す。
【0040】
本ステップでは、演算部4aが有限差分法や結合波動解析等によりマックスウェル方程式を数値的に解くことにより、一つの点光源11bから出た回折前の入射光の振幅ベクトルEinc(sx, sy)を利用して、回折光の振幅ベクトルEtrans(sx, sy;f, g)を計算する。
【0041】
次に、ステップS4に移行する。
【0042】
ステップS4では、上記の回折光の振幅ベクトルEtrans(sx, sy;f, g)が、全ての点光源11bについて計算されたか否かが判断される。この判断は、演算部4aが行うものである。
【0043】
そして、計算されていない(NO)と判断された場合には、ステップS2に戻り、計算がなされていない点光源11bについて振幅ベクトルEtrans(sx, sy;f, g)を算出する。
【0044】
一方、計算された(YES)と判断された場合には、ステップS5に移行する。
【0045】
そのステップS5では、投影レンズ13により基板14上に投影されたマスクパターン12の光強度I(x, y)を以下のように計算する。
【0046】
一つの点光源11bから出た露光光の基板14上での光強度は、振幅ベクトルEtrans(sx, sy;f, g)を逆フーリエ変換したものの絶対値の二乗になることが知られている。
【0047】
そこで、まず振幅ベクトルEtrans(sx, sy;f, g)の成分表示を次の式(4)のように表す。
【0048】
【数3】

【0049】
次に、露光光は、投影レンズ13を通過した後、進行方向が変化するのと、レンズ透過特性の影響を受けて、その振幅ベクトルは次にようになる。
【0050】
【数4】

【0051】
式(5)の3行2列の行列は、投影レンズの瞳透過関数行列であり、露光光が投影レンズ13を通過したときのその振幅ベクトルが被る進行方向、位相、及び振幅の変化を表すものである。
【0052】
また、露光光が投影レンズ13を通過した後は、露光光が基板14に対して縮小転写される。そのため、基板14に入射するときの露光光14の振幅ベクトルは、投影レンズ13の縮小率Mにみあった変化も被るため、結局、露光光の振幅ベクトルは次の式(6)のようになる。
【0053】
【数5】

【0054】
この結果、振幅ベクトルは、次の式(7)のような3成分となる。
【0055】
【数6】

【0056】
次に、成分表示(7)を用いて、振幅ベクトルE'trans(sx, sy;f, g)の各成分の逆フーリエ変換を次の式(8)〜(10)のように行う。
【0057】
【数7】

【0058】
式(8)〜(10)において、F(Etransx')(sx, sy, x, y)、F(Etransy')(sx, sy, x, y)、及びF(Etransz')(sx, sy, x, y)は、それぞれ振幅ベクトルE'trans(sx, sy;f, g)の成分毎の逆フーリエ変換を示す。なお、F(Etransx') (sx, sy, x, y)、F(Etransy') (sx, sy, x, y)、及びF(Etransz')(sx, sy, x, y)のそれぞれの独立変数x, yは、基板14に設定されたx-y直交座標系の位置座標(x, y)である。そのx-y直交座標系のx軸とy軸は、それぞれ既述のsx軸とsy軸に平行である。
【0059】
なお、投影レンズ13を透過できる露光光は、次式(11)を満たすものに限られることが知られている。
【0060】
【数8】

【0061】
そのため、式(8)〜(10)における積分領域を式(11)の範囲に限定した。
【0062】
位置座標が(sx, sy)である一つの点光源から出た露光光の基板14の位置(x, y)での光強度I0(sx, sy, x, y)は、逆フーリエ変換(8)〜(10)により得られたベクトルの絶対値の二乗に等しく、次の式(12)から計算される。
【0063】
【数9】

【0064】
ここで、異なる点光源11bから出た露光光は互いに干渉しないため、露光マスク16の投影像の光強度I(x, y)は、式(12)を各光源11bについて総和したものとなる。
【0065】
そこで、上記の光強度I0(sx, sy, x, y)を座標sx, syについて総和することにより、次の式(13)のようにして基板14上でのトータルの光強度I(x, y)を算出する。
【0066】
【数10】

【0067】
以上により、このシミュレーション方法の主要ステップが終了する。
【0068】
この方法では、ステップS3において、露光マスク12を透過した露光光の振幅ベクトルEtrans(sx, sy;f, g)を求めるためにマックスウェル方程式を数値的に解く。マックスウェル方程式のような波動方程式は、計算するのに長時間を要するうえに、記憶部4bに大きな記憶領域を必要とするので、計算回数をなるべく少なくするのが望まれる。
【0069】
しかしながら、半導体装置の設計段階では、目標とするデバイスパターンに最適な露光条件を求めるため、露光条件を変えながら光強度I(x, y)を何度も算出する。そのような露光条件としては、例えば開口11aの大きさや位置、及び開口11aから出る露光光の偏光分布等がある。
【0070】
したがって、上記の方法では、露光条件を変えるたびにマックスウェル方程式を解かねばならず、最適な露光条件を見つけるまでに莫大な時間を要してしまう。特に、開口11aの大きさ等を変化させながら光強度I(x, y)を算出する場合には、変化の前後で重複する部分の点光源について重複して計算することになり、無駄な計算が増えてしてしまう。
【0071】
計算回数を減らすために、照明絞り11において点光源が分布する可能性がある領域内で格子点を適当に選び出し、格子点ごとに振幅ベクトルEtrans(sx, sy;f, g)を算出する方法も考えられる。この場合は、任意の位置の点光源についての振幅ベクトルEtrans(sx, sy;f, g)を、当該点光源に最も近い格子点での値で近似することになる。
【0072】
但し、露光マスク12に入射する露光光の振動方向(偏光方向)が照明絞り11の面内において連続的に分布しているとは限らないので、露光マスク12を透過後の振幅ベクトルEtrans(sx, sy;f, g)は一般には位置座標(sx, sy)の連続関数にはならない。よって、上記のように近似したのでは、計算精度が大きく劣化するおそれがある。
【0073】
本願発明者は、このような知見に基づいて、以下に説明するような本実施形態に想到した。
【0074】
(2)本実施形態
以下に、本実施形態に係るシミュレーション方法について説明する。なお、以降の説明では、予備的事項で説明したのと同じベクトルや構成要素には予備的事項と同じ表現を用い、以下ではその説明を省略する。
【0075】
このシミュレーション方法は、図1に示した露光装置における露光マスク16の投影像の光強度をシミュレーションするのに使用され、図2に示したシミュレーション装置1を用いて実行することができる。
【0076】
本実施形態では、そのシミュレーションにおいてJones Matrixを利用する。
【0077】
Jones Matrixは、次の式(14)のように定義される。
【0078】
【数11】

【0079】
式(14)に示されるように、Jones Matrixは、露光マスク12を透過する前の露光光の振幅ベクトルEinc(sx, sy)と、露光マスク12を透過した後の露光光の振幅ベクトルEtrans(sx, sy;f, g)との間の変換行列である。
【0080】
既述のように振幅ベクトルEinc(sx, sy)は点光源11bの位置座標sx、syの関数である。また、振幅ベクトルEtrans(sx, sy;f, g)は、位置座標sx、syと回折次数f、gとの関数である。よって、式(14)で定義されるJones Matrixも、位置座標sx、syと回折次数f、gとに依存した2行2列の行列である。
【0081】
このようなJones Matrixを利用して、以下のようにして光強度のシミュレーションを行う。
【0082】
図5は、このシミュレーション方法のフローチャートである。
【0083】
本実施形態では、CD(Compact Disc)等の記録媒体やインターネット等の電気通信回線を介してシミュレーション装置1にシミュレーションプログラムをインストールし、図5のフローチャートに沿ってシミュレーションを行う。
【0084】
最初のステップP1では、照明光源として機能する開口11aを複数のコヒーレントな点光源11bに仮想的に分割する。
【0085】
図6は、その分割方法について模式的に示す平面図であって、照明絞り11の拡大断面図に相当する。
【0086】
図6に示されるように、照明絞り11の平面内にはsx-sy直交座標系が設定される。そして、点光源11bの各々は矩形状であって、点光源11bの位置は矩形内の代表点、例えばsx-sy直交座標系の格子点Rの位置座標(sx、sy)により特定される。
【0087】
本ステップは、ユーザが点光源11bの分布や分割数を入力部2から入力し、それに基づいて演算部4aが自動的に行う。
【0088】
点光源11bの分布は特に限定されない。但し、半導体装置の設計段階では、開口11aの大きさや位置を様々に変更しながらシミュレーションを行うので、シミュレーションが想定される全ての開口11aを覆うように点光源11aを分布させるのが好ましい。
【0089】
次に、ステップP2に移る。
【0090】
本ステップでは、各点光源11bから出たx方向に偏光した露光光の振幅ベクトルを次の式(15)のように表す。
【0091】
【数12】

【0092】
そして、式(15)で表される露光光がマスクパターン12を透過した後の振幅ベクトルを算出する。この計算は、演算部4aが有限差分法や結合波動解析等によりマックスウェル方程式を数値的に解くことにより行われるものであって、計算結果である振幅ベクトルを次の式(16)のように表す。
【0093】
【数13】

【0094】
同様に、各点光源11bから出たy方向に偏光した露光光の振幅ベクトルを次の式(17)のように表す。
【0095】
【数14】

【0096】
そして、演算部4aがマックスウェル方程式を数値的に解くことにより、y方向に偏光したこの露光光がマスクパターン12を透過した後の振幅ベクトルを算出する。計算結果である振幅ベクトルは上記の式(16)のように表される。
【0097】
これらの計算は、ステップP1で分割された個々の点光源11bのそれぞれについて行われる。
【0098】
なお、式(15)、(17)の成分表示をする際のx方向とy方向は、それぞれ既述のsx方向とsy方向に平行にするものとする。
【0099】
次に、ステップP3に移る。
【0100】
上記した式(15)と式(16)は、マスクパターン12を透過する前後での露光光の振幅ベクトルであるから、Jones Matrixの定義から次の式(18)を満たす。
【0101】
【数15】

【0102】
この式(18)から、Jones Matrixの1列目の成分を次の式(19)、(20)のように計算できる。
【0103】
【数16】

【0104】
同様の理由で式(17)と式(16)は次の式(21)のようにJones Matrixで結び付けられる。
【0105】
【数17】

【0106】
そして、この式(21)からJones Matrixの2列目の成分を次の式(22)、(23)のように計算できる。
【0107】
【数18】

【0108】
本ステップでは、このような計算を演算部4aが行うことにより、Jones Matrixの四つの成分を点光源11b毎に求め、それらの成分を位置座標sx、syと回折次数f、gの関数として求める。そして、その計算により得られた各成分Jxx、Jxy、Jyx、Jyyは、パラメータsx、sy、f、gと対応付けられて、記憶部4b(図1参照)にテーブルとして格納される。
【0109】
その計算では、上記の式(15)、(17)のように一方の成分が0となるような偏光光を利用することで、Jones Matrixの計算が式(19)、(20)、(22)、(23)のように簡略化することができる。
【0110】
なお、式(15)、(17)中の0でない方の成分を1にしてもよい。このようにすると、式(19)、(20)、(22)、(23)の分母が1となるので計算が更に簡単になる。
【0111】
続いて、ステップP4に移る。
【0112】
本ステップでは、入力部2を介してユーザが露光光の偏光方向や強度等の条件を制御部4に入力する。これにより、演算部4aが、照明として機能する開口11aの任意の場所Q(図6参照)での露光光の振幅ベクトルEincを決定する。
【0113】
図6に示されるように、それぞれの点光源11bの代表点はsx-sy直交座標系の格子点Rで表されるが、場所Qは格子点ある必要はなく、計算したい任意の点を場所Qとして選択してよい。
【0114】
以下では、格子点と区別するため、場所Qの座標をプライムを付して(sx,' sy')と表す。そして、本ステップでは、演算部4aが、場所Qでの露光光の振幅ベクトルEincを場所Qの座標(sx,' sy')の関数として求める。
【0115】
このようにして求めた振幅ベクトルEincの成分表示は、次の式(24)のようになる。
【0116】
【数19】

【0117】
次いで、ステップP5に移り、ステップP4で算出した振幅ベクトルEinc(sx,' sy')にステップP3で算出したJones Matrixを乗じることにより、次の式(25)のようにしてマスクパターン12を透過した露光光の振幅ベクトルEtrans(sx', sy';f, g)を計算する。
【0118】
【数20】

【0119】
本ステップは、演算部4aが記憶部4bに格納されたJones Matrixの各成分を参照し、場所Qの座標(sx', sy')毎に振幅ベクトルEtrans(sx', sy';f, g)を計算する。
【0120】
なお、図6に示したように、開口11aの格子点Rの座標(sx, sy)と、計算に使用する場所Qの座標(sx', sy')とは必ずしも一致しないので、式(25)は近次式となる。そして、これらの座標(sx, sy)、(sx', sy')が互いに大きく異なっていると、式(25)の近似精度が低下してしまう。
【0121】
そのため、Jones Matrixの各成分としては、振幅ベクトルEinc(sx,' sy')中の座標(sx,' sy')の近傍での点光源11bの位置座標(sx, sy)を使用するのが好ましい。本実施形態では、座標(sx,' sy')に最も近い点光源11bの位置座標(sx, sy)でのJones Matrixの各成分を使用する。
【0122】
なお、このように場所Qとは異なる格子点RでのJones Matrixの値を使用しても、Jones Matrixは入射光の偏光方向に無関係であるから、仮に入射光の偏光方向が不連続に分布していたとしても、それによって近似の精度が大きく低下することはない。
【0123】
上記の式(25)の計算は単純な行列の積なので、マックスウェル方程式を数値的に計算する場合よりも短時間で計算が終了する。
【0124】
次に、ステップP6に移り、上記の振幅ベクトルEtrans(sx', sy';f, g)が、計算したい全ての場所Qについて計算されたか否かを演算部4aが判断する。
【0125】
そして、計算されていない(NO)と判断された場合には、ステップP5に戻り、計算がなされていない場所Qについて振幅ベクトルEtrans(sx', sy';f, g)を算出する。
【0126】
一方、計算された(YES)と判断された場合には、ステップP7に移行する。
【0127】
そのステップP7では、演算部4aが、既述の式(5)〜(7)を利用して振幅ベクトルEtrans(sx', sy';f, g)から投影レンズ13を透過した後の振幅ベクトルE'trans(sx', sy' ;f, g)を求める。その後、演算部4aは、既述の式(8)〜(10)と同様にして振幅ベクトルE'trans(sx', sy' ;f, g)を逆フーリエ変換し、変換後のベクトルの絶対値の二乗を次式(26)のように算出する。
【0128】
【数21】

【0129】
露光マスク16の基板14上での投影像の光強度I(x, y)は、全ての場所Qからの寄与を合わせたものである。
【0130】
そこで、演算部4aが上記の光強度I0(sx', sy', x, y)を座標sx', sy'について総和することにより、次の式(27)のようにして基板14上でのトータルの光強度I(x, y)を算出する。
【0131】
【数22】

【0132】
以上により、本実施形態に係るシミュレーション方法の主要ステップが終了した。
【0133】
本実施形態によれば、ステップP2においてマックスウェル方程式を解くものの、ステップP3でJones Matrixを一度計算した後は、そのJones Matrixを利用して露光光の振幅ベクトルEtrans(sx', sy'; f, g)を計算する。
【0134】
したがって、各座標sx', sy'についてのEtrans(sx', sy'; f, g)の計算にはマックスウェル方程式は不要であり、Jones Matrixを利用した単純な行列計算によって振幅ベクトルEtrans(sx', sy'; f, g)を計算でき、計算時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0135】
なお、ステップP3でのJones Matrixの計算の前段階として、本実施形態ではステップP2においてマックスウェル方程式を解く。そのステップP2での演算部4aの計算回数が多すぎると、計算時間の長期化を防止しようとする本実施形態の本来の目的が没却されることになる。計算時間の短縮化が見込まれるのは、ステップP2での計算回数が、ステップP5で振幅ベクトルEtrans(sx', sy'; f, g)を算出するための計算回数よりも少ない場合であり、その場合に本実施形態の実益を得ることができる。
【0136】
そのステップP2での計算回数を抑えるには、ステップP1での点光源11bの分割数を少なくすればよい。但し、その分割数を少なくし過ぎると、式(25)の右辺の座標(sx, sy)、(sx', sy')が大きく異なってしまい、式(25)の近似精度が低下する。よって、計算回数と近似精度とを比較衡量し、点光源11bの分割数を決定するのが好ましい。
【0137】
更に、本実施形態では、開口11aの大きさや位置を変えることにより様々な露光条件でシミュレーションする場合でも、一度Jones Matrixを計算してしまえば、後はそれに露光光の振幅ベクトルEinc(sx', sy')を乗ずるだけで振幅ベクトルEtrans(sx', sy'; f, g)を計算できる。
【0138】
そのため、振幅ベクトルEtrans(sx', sy'; f, g)を計算するのに何度もマックスウェル方程式を計算する必要がなくなり、目標とするデバイスパターンに最適な露光条件を短時間で求めることができ、半導体装置の設計時間を短縮することが可能となる。
【0139】
次に、本実施形態によって計算時間がどの程度短縮できるかについての調査結果を説明する。
【0140】
この調査では、図1に示したような4重極照明において、光軸と各開口11aの中心との距離を0.4NAに固定した。また、露光波長はArFレーザ光の193nmとし、投影レンズ13の開口数NAは1.35とした。
【0141】
マスクパターン12としては、ラインとスペースとが交互に配置されたLSパターンを想定した。そのラインとスペースの幅は同一である。透明基板12としては、屈折率Nが1.56で吸収率Kが0の石英基板を想定し、ラインとしては屈折率Nが0.84で吸収率Kが1.65の厚さが60nmのクロムパターンを想定した。
【0142】
なお、投影レンズ13の縮小率Mは1/4である。露光方法としては、投影レンズ13と基板14の間に水を浸す液浸露光を想定している。露光光であるArFレーザ光に対する水の屈折率Nは1.44である。このような液浸露光は、大NA化に伴う焦点深度の低下を防止するのに有用である。
【0143】
図7は、この調査結果を示すグラフである。
【0144】
図7の横軸は、光源の分割数であって、点光源11bの数に相当する。一方、縦軸は、基板14に投影されたLSパターンの明部のピーク強度比である。そのピーク強度比は、本実施形態と予備的事項のそれぞれのシミュレーション方法で計算された明部のピーク強度同士の比である。
【0145】
また、この調査では、本実施形態と予備的事項のそれぞれにおいて、様々なラインの幅(L)についてシミュレーションを行った。なお、ラインの幅は、マスクパターン12が基板14上に投影された状態での値である。
【0146】
図7に示されるように、光源分割数を2000程度とすると、全てのラインの幅(L)について、予備的事項のシミュレーション結果の±0.02%以内の精度を得ることができる。
【0147】
そこで、次の調査では、光源分割数を2600とする。
【0148】
図8は、本実施形態と予備的事項のそれぞれにおいて、シミュレーションに要した計算時間を調査して得られたグラフである。
【0149】
なお、この調査では、図7の調査では固定していた露光条件を様々に変更し、各露光条件について光強度をシミュレーションした。変更した露光条件は、各開口11aを出た露光光の偏光方向である。図8の縦軸は、そのように変更した露光条件の数を示す。
【0150】
予備的事項に係るシミュレーション方法では、一つの露光条件につき約1450秒の計算時間を要した。したがって、露光条件を変更したときの計算時間は、1450秒×露光条件の数となり、図8のように露光条件の数に比例して増大する。
【0151】
これに対し、本実施形態に係るシミュレーション方法では、Jones Matrixを算出するまでのステップP2〜P3で約16600秒を要したが、その後はJones Matrixを用いた行列計算であり、一つの露光条件に対して約4秒しか要しない。よって、露光条件が増えても、それぞれの露光条件についてシミュレーションするのに要する時間は、予備的事項と比較して大幅に短縮できた。
【0152】
以上、本実施形態について詳細に説明したが、本実施形態は上記に限定されない。例えば、上記では4重極照明を例に挙げたが、2重極照明や輪帯照明に対しても本実施形態を適用し得る。
【0153】
以上説明した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0154】
(付記1) 演算部が、露光マスクに入射する入射光の振幅ベクトルと、前記露光マスクから出る透過光の振幅ベクトルとの間の変換行列を求めるステップと、
前記演算部が、前記露光マスクを透過する前の露光光の振幅ベクトルを前記変換行列に乗じることにより、前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルを求めるステップと、
前記演算部が、前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルに基づいて、前記露光マスクの投影像の光強度を算出するステップと、
を有することを特徴とするシミュレーション方法。
【0155】
(付記2) 前記演算部が、前記露光光を出す照明を複数の点光源に分割するステップを更に有し、
前記変換行列を求めるステップにおいて、前記演算部が前記変換行列を前記点光源毎に計算することにより、前記変換行列を前記点光源の位置座標の関数として算出し、
前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルを求めるステップにおいて、前記演算部が、前記照明の任意の場所から出た前記露光光の振幅ベクトルを、該場所の近傍の前記点光源の位置座標での前記変換行列に乗じることにより、前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルを前記照明の場所毎に求めることを特徴とする付記1に記載のシミュレーション方法。
【0156】
(付記3) 前記変換行列を求めるステップにおいて、前記演算部が、該変換行列を前記透過光の回折次数の関数として求めることを特徴とする付記1又は付記2に記載のシミュレーション方法。
【0157】
(付記4) 前記演算部が、マックスウェル方程式を解くことにより、前記点光源から出た露光光の振幅ベクトルに基づいて、前記露光マスクを透過した前記透過光の振幅ベクトルを前記点光源の位置座標と前記透過光の回折次数の関数として算出するステップを更に有し、
前記変換行列を求めるステップにおいて、前記演算部が、前記マックスウェル方程式を解いて算出された前記透過光の前記振幅ベクトルと、前記点光源から出た前記露光光の前記振幅ベクトルと前記変換行列の積とを等置したベクトル方程式を解くことにより、前記変換行列を前記位置座標と前記回折次数の関数として求めることを特徴とする付記3に記載のシミュレーション方法。
【0158】
(付記5) 前記マックスウェル方程式を解いて前記振幅ベクトルを算出するステップにおいて前記演算部が行う計算の回数が、前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルを求めるステップにおいて前記演算部が行う計算の回数よりも少ないことを特徴とする付記4に記載のシミュレーション方法。
【0159】
(付記6) 前記投影像の前記光強度を算出するステップは、
前記演算部が、前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルの各成分を前記回折次数について逆フーリエ変換し、該逆フーリエ変換により得られたベクトルの絶対値の二乗を算出し、該算出された値を前記場所の位置座標について総和することにより行われることを特徴とする付記3〜5のいずれかに記載のシミュレーション方法。
【0160】
(付記7) 前記変換行列として、Jones Matrixを用いることを特徴とする付記1〜6のいずれかに記載のシミュレーション方法。
【0161】
(付記8) 露光マスクの投影像の光強度をシミュレーションする演算部を備え、
前記演算部が、
前記露光マスクに入射する入射光の振幅ベクトルと、前記露光マスクから出る透過光の振幅ベクトルとの間の変換行列を求め、
前記演算部が、前記露光マスクを透過する前の露光光の振幅ベクトルを前記変換行列に乗じることにより、前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルを求め、
前記演算部が、前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルに基づいて、前記露光マスクの前記投影像の光強度を算出することを特徴とするシミュレーション装置。
【0162】
(付記9) 露光マスクに入射する入射光の振幅ベクトルと、前記露光マスクから出る透過光の振幅ベクトルとの間の変換行列を求めるステップと、
前記露光マスクを透過する前の露光光の振幅ベクトルを前記変換行列に乗じることにより、前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルを求めるステップと、
前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルに基づいて、前記露光マスクの投影像の光強度を算出するステップと、
をコンピュータに実行させるためのシミュレーションプログラム。
【0163】
(付記10) 露光マスクに入射する入射光の振幅ベクトルと、前記露光マスクから出る透過光の振幅ベクトルとの間の変換行列を求めるステップと、
前記露光マスクを透過する前の露光光の振幅ベクトルを前記変換行列に乗じることにより、前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルを求めるステップと、
前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルに基づいて、前記露光マスクの投影像の光強度を算出するステップと、
をコンピュータに実行させるためのシミュレーションプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】図1は、露光装置の模式図である。
【図2】図2は、シミュレーション装置の機能ブロック図である。
【図3】図3は、予備的事項に係るシミュレーション方法のフローチャートである。
【図4】図4は、回折次数の幾何学的意味について説明するための斜視図である。
【図5】図5は、本実施形態に係るシミュレーション方法のフローチャートである。
【図6】図6は、光源の分割方法について模式的に示す平面図である。
【図7】図7は、光源の分割数とピーク強度比との関係について調査して得られたグラフである。
【図8】図8は、本実施形態と予備的事項のそれぞれにおいて、シミュレーションに要した計算時間を調査して得られたグラフである。
【符号の説明】
【0165】
1…シミュレーション装置、2…入力部、3…表示部、4…制御部、4a…演算部、4b…記憶部、11…照明絞り、11a…開口、11b…点光源、12…マスクパターン、13…投影レンズ、14…基板、16…露光マスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
演算部が、露光マスクに入射する入射光の振幅ベクトルと、前記露光マスクから出る透過光の振幅ベクトルとの間の変換行列を求めるステップと、
前記演算部が、前記露光マスクを透過する前の露光光の振幅ベクトルを前記変換行列に乗じることにより、前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルを求めるステップと、
前記演算部が、前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルに基づいて、前記露光マスクの投影像の光強度を算出するステップと、
を有することを特徴とするシミュレーション方法。
【請求項2】
前記演算部が、前記露光光を出す照明を複数の点光源に分割するステップを更に有し、
前記変換行列を求めるステップにおいて、前記演算部が前記変換行列を前記点光源毎に計算することにより、前記変換行列を前記点光源の位置座標の関数として算出し、
前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルを求めるステップにおいて、前記演算部が、前記照明の任意の場所から出た前記露光光の振幅ベクトルを、該場所の近傍の前記点光源の位置座標での前記変換行列に乗じることにより、前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルを前記照明の場所毎に求めることを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション方法。
【請求項3】
前記変換行列を求めるステップにおいて、前記演算部が、該変換行列を前記透過光の回折次数の関数として求めることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシミュレーション方法。
【請求項4】
前記演算部が、マックスウェル方程式を解くことにより、前記点光源から出た露光光の振幅ベクトルに基づいて、前記露光マスクを透過した前記透過光の振幅ベクトルを前記点光源の位置座標と前記透過光の回折次数の関数として算出するステップを更に有し、
前記変換行列を求めるステップにおいて、前記演算部が、前記マックスウェル方程式を解いて算出された前記透過光の前記振幅ベクトルと、前記点光源から出た前記露光光の前記振幅ベクトルと前記変換行列の積とを等置したベクトル方程式を解くことにより、前記変換行列を前記位置座標と前記回折次数の関数として求めることを特徴とする請求項3に記載のシミュレーション方法。
【請求項5】
前記マックスウェル方程式を解いて前記振幅ベクトルを算出するステップにおいて前記演算部が行う計算の回数が、前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルを求めるステップにおいて前記演算部が行う計算の回数よりも少ないことを特徴とする請求項4に記載のシミュレーション方法。
【請求項6】
露光マスクの投影像の光強度をシミュレーションする演算部を備え、
前記演算部が、
前記露光マスクに入射する入射光の振幅ベクトルと、前記露光マスクから出る透過光の振幅ベクトルとの間の変換行列を求め、
前記演算部が、前記露光マスクを透過する前の露光光の振幅ベクトルを前記変換行列に乗じることにより、前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルを求め、
前記演算部が、前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルに基づいて、前記露光マスクの前記投影像の光強度を算出することを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項7】
露光マスクに入射する入射光の振幅ベクトルと、前記露光マスクから出る透過光の振幅ベクトルとの間の変換行列を求めるステップと、
前記露光マスクを透過する前の露光光の振幅ベクトルを前記変換行列に乗じることにより、前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルを求めるステップと、
前記露光マスクを透過した前記露光光の振幅ベクトルに基づいて、前記露光マスクの投影像の光強度を算出するステップと、
をコンピュータに実行させるためのシミュレーションプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate