説明

シミュレーション装置およびプログラム

【課題】対象が複雑な系のモデルであっても、仮想の発音体の音が得られるシミュレーション装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】既存品および開発品について、従来のシミュレーション方法により、それらの音響特性(周波数スペクトル)を生成し、それらの差異(比率)を算出する。そして、該差異に基づいて既存品が実際に発した音に基づいて生成されたスペクトルである既存品実測スペクトルを補正し、特性予測スペクトルを生成する。既存品の音を特性予測スペクトルに基づいて変形することにより、開発品が発する音を予測して発音させることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想発音体が発する音を解析・可聴化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、波動音響シミュレーションは、その対象物、対象空間、拘束条件などが単純なモデルの場合(たとえば金属板や木板を打撃した音など)は、実物の現象を精度良く再現可能であった。しかし、対象物が複雑な条件を有する発音体である場合、シミュレーションの解の精度は悪く、定性的な音響特性は類似していても定量的には実物の現象との差異が大きかった。
【0003】
以上に述べた問題点を解消するために、以下に述べるような技術が提案されている。
特許文献1においては、音響特性解析において、成形品の局所的な物性データを計算し、該物性データを局所的な領域ごとに与えて計算することにより、精度良く音響特性を解析する技術が開示されている。
特許文献2においては、振動・音響解析の音圧スペクトルデータを時系列波形に変換し、その波形をスピーカで再生して評価する技術が開示されている。
特許文献3においては、比較的大規模な音場の音場解析において、防吸音部材の物理特性を理論値や実測値を用いて計算する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−090758号公報
【特許文献2】特開2005−308726号公報
【特許文献3】特開2006−065466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1および2の技術においては、解析で設定する入力条件のうち、構造体の拘束条件、支持条件、結合条件、吸音条件などの境界条件、音源や振動体の加振条件、構造体の振動減衰係数などを正確に与えることは難しく、これらの誤差がシミュレーションの精度を下げるとの問題点があった。
【0005】
また、このシミュレーションの解をそのまま用いてスピーカ再生した場合、実物が発する音との聴感的な差異が大きく、適切な音の評価ができなかった。
また、シミュレーションにおいて精度の良い周波数帯域のみのデータを用いてスピーカ再生した場合、すなわち帯域を限定して音再生をした場合も、実物が発する音と聴感的な差異が大きく、適切な音の評価ができなかった。
また、特許文献3の技術においては、理論値の利用では、理論モデルの妥当性や解析対象モデルとの整合性、実測値の利用では実音場ではなく材料単体の理想的な条件での実測、等の点から解析精度に限界があった。
【0006】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、対象が複雑な系のモデルであっても、発音特性が精度良くシミュレーションできるシミュレーション装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシミュレーション装置は、特定の発音体の発音特性をシミュレートする既存発音体シミュレーション手段と、仮想の発音体の発音特性をシミュレートする仮想発音体シミュレーション手段と、前記特定の発音体を実際に発音させた際の発音特性を測定する既存発音体測定手段と、前記既存発音体シミュレーション手段と前記仮想発音体シミュレーション手段とによるそれぞれのシミュレーション結果を比較し、その差異を表す差異データを生成する第1の差異データ生成手段と、前記差異データを用いて、前記既存発音体測定手段による測定結果を補正し、前記仮想の発音体の発音特性である仮想発音体予測データを生成する第1の特性補正手段とを具備することを特徴とする。
上記の構成において、前記第1の差異データ生成手段は、前記既存発音体シミュレーション手段によるシミュレーション結果と前記仮想発音体シミュレーション手段によるシミュレーション結果から、周波数応答に関する差異を算出し、前記既存発音体測定手段は、前記特定の発音体を実際に発音させた際の周波数応答を測定しても良い。また、前記第1の差異データ生成手段は、前記既存発音体シミュレーション手段によるシミュレーション結果と前記仮想発音体シミュレーション手段によるシミュレーション結果から、位相特性に関する差異を算出し、前記既存発音体測定手段は、前記特定の発音体を実際に発音させた際の位相特性を測定しても良い。
【0008】
本発明に係る別の態様のシミュレーション装置は、特定の発音体の発音特性をシミュレートする既存発音体シミュレーション手段と、仮想の発音体の発音特性をシミュレートする仮想発音体シミュレーション手段と、前記特定の発音体を実際に発音させた際の発音特性を測定する既存発音体測定手段と、前記既存発音体シミュレーション手段によるシミュレーション結果と前記既存発音体測定手段による測定結果とを比較し、その差異を表す差異データを生成する第2の差異データ生成手段と、前記差異データを用いて、前記仮想発音体シミュレーション手段によるシミュレーション結果を補正し、前記仮想の発音体の発音特性である仮想発音体予測データを生成する第2の特性補正手段とを具備することを特徴とする。
上記の構成において、前記第2の差異データ生成手段は、前記既存発音体シミュレーション手段によるシミュレーション結果と前記既存発音体測定手段による測定結果とから、周波数応答に関する差異を算出し、前記既存発音体測定手段は、前記特定の発音体を実際に発音させた際の周波数応答を測定しても良い。また、前記第2の差異データ生成手段は、前記既存発音体シミュレーション手段によるシミュレーション結果と前記既存発音体測定手段による測定結果とから、位相特性に関する差異を算出し、前記既存発音体測定手段は、前記特定の発音体を実際に発音させた際の位相特性を測定しても良い。
上記の構成において、前記特定の発音体の演奏内容を表す音データを受取る受取手段と、前記受取手段が受取った音データを、前記仮想発音体予測データに基づいて変形し出力する音データ変形手段とを具備していても良い。
【0009】
本発明に係るシミュレーション装置は、上記の構成において、特定の構造体に係る音の伝達特性をシミュレートする伝達特性シミュレート手段と、前記伝達特性シミュレート手段によるシミュレーション結果を用いて前記仮想発音体予測データを補正して、前記仮想の発音体が発音した音が前記特定の構造体を伝達した結果の複合体発音特性を予測する第1の予測データ補正手段とを具備していても良い。また、特定の構造体に係る音の伝達特性を測定する伝達特性測定手段と、前記伝達特性測定手段による測定結果を用いて前記仮想発音体予測データを補正して、前記仮想の発音体が発音した音が前記特定の構造体を伝達した結果の複合体発音特性を予測する第2の予測データ補正手段とを具備していても良い。
【0010】
本発明に係るシミュレーション装置は、上記の構成において、特定の構造体に係る音の伝達特性をシミュレートする既存構造体シミュレーション手段と、仮想の構造体に係る音の伝達特性をシミュレートする仮想構造体シミュレーション手段と、前記特定の構造体が音を伝達する際の伝達特性を測定する既存構造体測定手段と、前記既存構造体シミュレーション手段と前記仮想構造体シミュレーション手段とによるそれぞれのシミュレーション結果を比較し、その差異を表す差異データを生成する第3の差異データ生成手段と、前記差異データを用いて、前記既存構造体測定手段による測定結果を補正し、前記仮想の構造体による音の伝達特性である仮想構造体予測データを生成する第3の特性補正手段と、前記仮想発音体予測データを、前記第3の特性補正手段が生成した仮想構造体予測データに基づいて補正して、前記仮想の発音体が発音した音が前記仮想の構造体を伝達した結果の複合体発音特性を予測する第3の予測データ補正手段とを具備していても良い。また、特定の構造体に係る音の伝達特性をシミュレートする既存構造体シミュレーション手段と、仮想の構造体に係る音の伝達特性をシミュレートする仮想構造体シミュレーション手段と、前記特定の構造体が音を伝達する際の伝達特性を測定する既存構造体測定手段と、前記既存構造体シミュレーション手段によるシミュレーション結果と前記既存構造体測定手段による測定結果とを比較し、その差異を表す差異データを生成する第4の差異データ生成手段と、前記差異データを用いて、前記仮想構造体シミュレーション手段によるシミュレーション結果を補正し、前記仮想の構造体による音の伝達特性である仮想構造体予測データを生成する第4の特性補正手段と、前記仮想発音体予測データを、前記第4の特性補正手段が生成した仮想構造体予測データに基づいて補正して、前記仮想の発音体が発音した音が前記仮想の構造体を伝達した結果の複合体発音特性を予測する第4の予測データ補正手段とを具備していても良い。
【0011】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、特定の発音体の発音特性をシミュレートする既存発音体シミュレーション手段と、仮想の発音体の発音特性をシミュレートする仮想発音体シミュレーション手段と、前記特定の発音体を実際に発音させた際の発音特性を測定する既存発音体測定手段と、前記既存発音体シミュレーション手段と前記仮想発音体シミュレーション手段とによるそれぞれのシミュレーション結果を比較し、その差異を表す差異データを生成する第1の差異データ生成手段と、前記差異データを用いて、前記既存発音体測定手段による測定結果を補正し、前記仮想の発音体の発音特性である仮想発音体予測データを生成する第1の特性補正手段として機能させることを特徴とする。
本発明に係るプログラムの別の態様は、コンピュータを、特定の発音体の発音特性をシミュレートする既存発音体シミュレーション手段と、仮想の発音体の発音特性をシミュレートする仮想発音体シミュレーション手段と、前記特定の発音体を実際に発音させた際の発音特性を測定する既存発音体測定手段と、前記既存発音体シミュレーション手段によるシミュレーション結果と前記既存発音体測定手段による測定結果とを比較し、その差異を表す差異データを生成する第2の差異データ生成手段と、前記差異データを用いて、前記仮想発音体シミュレーション手段によるシミュレーション結果を補正し、前記仮想の発音体の発音特性である仮想発音体予測データを生成する第2の特性補正手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るシミュレーション装置およびプログラムによれば、発音特性が精度良くシミュレーションできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施する際の最良の形態について説明する。
(A;構成)
図1は、本発明に係る仮想音生成装置1の全体構成を示す図である。仮想音生成装置1は、例えばパーソナルコンピュータで構成される。仮想音生成装置1は、制御部11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、操作部14、表示部15、HDD16(Hard Disk Drive)、音声処理部17、および音声処理部17に接続されたスピーカ18およびマイクロホン19を有する。上記各部はバスを介して互いに接続されている。
【0014】
制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、ROM12に格納された制御プログラムを実行することにより各部の制御を行う。
ROM12は、制御部11が実行する制御プログラムを格納している。
RAM13は、制御部11によってワークエリアとして利用される。
【0015】
操作部14は、例えばキーボードやマウスであり各種の操作子を備える。操作部14はユーザによる操作内容を表す操作信号を制御部11へ出力する。
表示部15は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示手段である。このディスプレイの画面には、音データの処理に係る各種設定を行うための操作画面が表示される。
HDD16は、大容量の記憶装置である。
【0016】
音声処理部17は、D/A(Digital/Analog)変換器とA/D変換器とアンプとからなる。マイクロホン19から入力された音を表すアナログ信号は、A/D変換器によりデジタルデータに変換され、制御部11に出力される。また、制御部11から受取った音を表すデジタルデータはD/A変換によりアナログ信号に変換され、アンプにより振幅が調整された後、スピーカ18に出力される。
スピーカ18は、音声処理部17から受取ったアナログ信号に基づいて音声を放音する。
マイクロホン19は、音を表すアナログ信号を出力する。
以上が仮想音生成装置1の構成である。
【0017】
(B;動作)
次に、上記の構成を有する仮想音生成装置1の動作について説明する。
【0018】
(B−1;処理の概要)
処理内容の詳細な説明に入る前に、処理の概要について説明する。
本発明に係る仮想音生成装置1は、「実在しない発音体」がどのような音を発音するか、実在する発音体との関連性に基づいてシミュレーションする装置である。後述する動作例においては、現行モデルのキーボード(以下、既存品)に基づいて、開発中のキーボード(以下、開発品)の発音を予測する場合を例にとって説明する。
【0019】
図2は、本発明に係る仮想音生成装置1が実行する処理の流れを概念的に示した図である。図中、シミュレーション手段110、解析手段111、差分算出手段112、補正手段113、合成手段114、変形手段115は、制御部11により実現される手段である。以下では、図中の各処理過程に付されたアルファベット(a〜i)を参照しながら説明する。
まず、従来のシミュレーションを実行するシミュレーション手段110により、既存品Eおよび開発品Dの発音特性(周波数応答)をシミュレートし(a、b)、それぞれのシミュレーション結果を表す既存品シミュレーションスペクトルおよび開発品シミュレーションスペクトルを生成する。そして、差分算出手段112により、既存品シミュレーションスペクトルと開発品シミュレーションスペクトルの差分を表す比率データを算出する(c)。一方、既存品Eを実際に発音させ(d)、解析手段111により該実際の発音を解析することにより既存品の発音特性を解析し(e)、解析結果である既存品実測スペクトルを生成する。次に、補正手段113において、上記比率データに基づいて、上記既存品実測スペクトルを補正することにより、新たなスペクトル(特性予測スペクトル)を生成する(f)。該生成された特性予測スペクトルは、既存品Eによる実際の発音に基づく発音特性に対して既存品Eと開発品Dのシミュレーション結果の差分が加味されていることから、開発品Dの発音特性を精度良く予測したデータとなる。合成手段114において、上記特性予測スペクトルと、既存品実測スペクトルの一部を合成し、合成スペクトルを生成する(g)。そして変形手段115において、既存品Eにより発音された音(音データ)(h)を、上記生成された合成スペクトルに基づいて変形することで(i)、開発品Dの音を模した予測音データを生成する。
【0020】
(B−2;処理の詳細)
以下では、仮想音生成装置1が実行する処理の詳細を説明する。図3は、仮想音生成装置1の制御部11が行う処理の流れを示したフローチャートである。
【0021】
ステップSA10において、制御部11は、既存品について、従来のシミュレーションにより発音特性(周波数応答)をシミュレートする。ここで、従来のシミュレーションとは、各種の条件(構造体の拘束条件、支持条件、結合条件、吸音条件などの境界条件、音源や振動体の加振条件、構造体の振動減衰係数など)を入力することにより、既存品による発音の周波数応答を算出するものである。具体的には、例えばホワイトノイズ(すべての周波数成分で同じ強度であるノイズ)の音データを既存品に発音させた場合に、出力される音の周波数帯域ごとの強度を示す周波数スペクトルを生成する。
図4は、既存品について、従来のシミュレーションにより生成された周波数スペクトル(以下、既存品シミュレーションスペクトル)を示す。なお、本実施形態においては、周波数が300Hz以下の成分についてシミュレートする。
なお、シミュレーションの対象は、キーボードのスピーカ部分で、寸法が300mm(幅)×高さ100mm(高さ)×150mm(奥行)である。採用したシミュレーション手法は、要素数1105、節点数1089とした境界要素法である。
【0022】
ステップSA20において、制御部11は、従来のシミュレーションにより開発品の発音特性(周波数応答)をシミュレートする。そのシミュレート方法はステップSA10と同様である。
図5は、従来のシミュレーションにより開発品について生成された周波数スペクトル(以下、開発品シミュレーションスペクトル)である。なお、開発品シミュレーションスペクトルについても、周波数が300Hz以下の成分についてシミュレートする。
【0023】
図6には、ステップSA10およびステップSA20において生成された、既存品および開発品の周波数スペクトルを示す。図6に示したシミュレーション結果から、開発品は、既存品よりも特定の周波数帯域(100Hz〜200Hzと、210Hz〜280Hz)における周波数成分が強調されるとの傾向が予測できる。
【0024】
ステップSA30において、制御部11は、図6に見られたような既存品と開発品との差異を数値化したデータである「比率データ」を生成する。具体的には、周波数帯域ごとに、開発品シミュレーションスペクトルの値を既存品シミュレーションスペクトルの値で除した比の値を算出する。図7は、そのようにして生成された比率データを示す。該比率データにおいて、値が1を超える周波数成分は、開発品において既存品よりも強調されていることを表し、逆に値が1を下回る周波数成分は、既存品において開発品よりも強調されていることを表す。
【0025】
ステップSA40において、制御部11は、既存品に実際にホワイトノイズを入力して発音させ、出力される音の周波数帯域ごとの振幅強度を示す周波数スペクトル(以下、既存品実測スペクトル)を生成する。
具体的には、既存品にホワイトノイズを入力して発音させた音を収音し、該収音された音を表す音データをフーリエ変換し、パワースペクトルを経時的に生成する。そして、該パワースペクトルにおける振幅特性の時間平均を周波数帯域ごとに算出する。なお、既存品実測スペクトルは、周波数300Hz以上の周波数帯域についても生成される。
【0026】
図8に、ステップSA10およびステップSA40において生成された、既存品シミュレーションスペクトルおよび既存品実測スペクトルを示す。なお、既存品実測スペクトルは、周波数300Hz以下の周波数帯域について取り出して示す。同図に示されるように、既存品シミュレーションスペクトルは、既存品実測スペクトルの定性的な傾向は捉えているものの、その絶対値には乖離が見られる。ここで見られる乖離は、従来のシミュレーションにおいて各種条件の設定時に生じる誤差や既存品実測スペクトルを求める際に生じる誤差などに由来する。
【0027】
ステップSA50において、制御部11は、ステップSA40で得られた既存品実測スペクトルに、ステップSA30において生成された比率データを積算することにより補正し、新たな周波数スペクトル(以下、特性予測スペクトル)を生成する。すなわち、既存品実測スペクトルの各周波数帯域の値に、比率データにおいて対応する周波数帯域の値を積算する。
図9は、そのようにして生成された特性予測スペクトルを示す。該特性予測スペクトルにおいては、図8に示した既存品実測スペクトルにおける、100Hz〜200Hzと、210Hz〜280Hzの周波数成分が強調されている。該強調されている周波数成分は、図7に示した比率データにおいて値が1を越える周波数帯域である。
【0028】
ここで、特性予測スペクトルについて簡単にまとめる。図10には、開発品シミュレーションスペクトルと、開発品実測スペクトルが示されている。開発品実測スペクトルとは、既存品実測スペクトルと同様の周波数スペクトルを開発品について生成したものである。本発明は、そもそも開発品が開発される前に開発品の音響特性を予測することが目的であるため、開発品は未だ実在しないとの状況を想定しているが、ここでは開発品の音響特性を予測した特性予測スペクトルの精度を検証するために、完成した開発品の開発品実測スペクトルを示す。
【0029】
同図において、開発品シミュレーションスペクトルは定性的な傾向は捉えているものの、開発品実測スペクトルとの乖離が見られる。ここで見られる乖離は、既存品についてシミュレーションと実測との間に見られた乖離(図8参照)と同様に、従来のシミュレーションにおいて各種条件の設定時に生じる誤差や開発品実測スペクトルを求める際に生じる誤差などに由来する。
【0030】
図11には、特性予測スペクトルと、開発品実測スペクトルが示されている。同図からも明らかであるように、特性予測スペクトルは、従来のシミュレーションにより生成された開発品シミュレーションスペクトル(図10参照)よりも、開発品実測スペクトルを精度良く予測できていることがわかる。
【0031】
さて、図8においては、既存品実測スペクトルの周波数300Hz以下の成分について示したが、図12には、全ての周波数帯域について横軸を対数表示して示す。
ステップSA60において、制御部11は、特性予測スペクトルを、図12に示す既存品実測スペクトルと合成する。すなわち、特性予測スペクトルの周波数300Hz以下の部分と、既存品実測スペクトルの周波数300Hzを上回る部分をつなぎ合わせ、新たな周波数スペクトル(以下、合成スペクトル)を生成する。
図13は、生成された合成スペクトルを示した図である。図14には、図11にも示した開発品実測スペクトルを全ての周波数について示す。両図を比較すると明らかであるように、合成スペクトルは、開発品実測スペクトルの特に低周波数帯域について精度良く予測できていることがわかる。
【0032】
ステップSA70において、制御部11は、既存品が内蔵する音源により発音された音を表す音データをマイクロホン19から受取る。ここでは、既存品であるキーボードにより任意の演奏がなされ、該演奏音が収音されれば良い。
【0033】
ステップSA80において、制御部11は、ステップSA70において受取った音データに対し、ステップSA60において生成した合成スペクトルを積算することにより、開発品から発音されると予測される音(予測音)を表す予測音データを生成し、音声処理部17に出力する。音声処理部17は、受取った予測音データをアナログ信号に変換し、スピーカ18から放音させる。該放音された音は、ステップSA70における既存品による演奏が、あたかも開発品により発音されているように音響特性が変換されている。
【0034】
(B−3;まとめ)
以上の処理をまとめる。従来のシミュレーションにおいては、各種条件の設定時に入力されるパラメータに理想値からの誤差が生じていた。該誤差は、既存品および開発品の複雑な構造などに由来するものであり、パラメータを制御することにより該誤差を小さくすることには限界があった。
本発明においては、既存品と開発品それぞれについて、従来のシミュレーションにより音響特性(周波数スペクトル)の差分(比)を算出する処理を行った。該処理は、シミュレーション結果同士で差分を生成するものであるため、上記シミュレーションの設定時に生じる誤差の多くが互いにキャンセルされる。一方、既存品と開発品との間の差異についてはキャンセルされない。その結果、既存品と開発品との差異を精度良く抽出したデータ(比率データ)が生成される。そして、比率データに基づいて既存品実測スペクトルが補正されることにより、開発品実測スペクトルを精度良く予測した特性予測スペクトルが生成される。最終的に、特性予測スペクトルを既存品による音データに対し積算することにより、既存品の音データを開発品の音を模した音データに変換することが可能となる。このようにして生成された音データは、実物が発する音と聴感的な差異が小さく、仮想の発音体の音を適切に評価することが可能である。
なお、本実施形態においては、周波数300Hz以下の成分について特性予測スペクトルを生成して開発品の音の予測に用いたが、周波数がより高い成分についても特性予測スペクトルを生成しても良い。
また、シミュレーション手法は、差分法、境界要素法、有限要素法等、種々の手法から、計算精度、計算時間、計算容量等の計算条件に応じて適宜選択すればよい。
【0035】
(C;変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以下のように種々の態様で実施することができる。なお、以下に説明する種々の実施形態を、適宜組み合わせて実施することも可能である。
【0036】
(1)上記実施形態においては、既存品シミュレーションスペクトルと開発品シミュレーションスペクトルとの差異に基づいて既存品実測スペクトルを補正し、開発品実測スペクトルを予測したデータである特性予測スペクトルを生成する場合について説明した。しかし、既存品シミュレーションスペクトル、開発品シミュレーションスペクトル、および既存品実測スペクトルを以下のようなアルゴリズムで処理することにより特性予測スペクトルを生成するようにしても良い。その場合の処理の概略を以下に説明する。なお、一例として、図15に示したフローチャートに沿って処理を行う場合について説明する。また、処理の流れを概念的に示した図16を参照して説明する。なお、図16において、シミュレーション手段1100、解析手段1110、差分算出手段1120、補正手段1130、合成手段1140、変形手段1150は、制御部11により実現される手段である。
【0037】
まず、シミュレーション手段1100は、既存品Eの発音特性をシミュレートし、既存品シミュレーションスペクトルを生成する(ステップSB10)。また、既存品Eに実際に音を発音させ、該実際の発音を解析手段1110により解析し、既存品実測スペクトルを生成する(ステップSB20)。ステップSB10およびステップSB20は、それぞれ上記実施形態に説明したステップSA10およびステップSA40の処理内容と同じであるため、詳細な説明を省略する。
次に、ステップSB30において、差分算出手段1120は、既存品実測スペクトルと既存品シミュレーションスペクトルとを比較し、その差分を表す比率データを算出する。比率データは、周波数帯域ごとに既存品実測スペクトルの値を既存品シミュレーションスペクトルの値で除した比の値に基づいて生成する。
ステップSB40において、シミュレーション手段1100は、開発品Dの発音特性をシミュレートし、開発品シミュレーションスペクトルを生成する。ステップSB40は、上記実施形態に説明したステップSA20の処理内容と同じであるため、詳細な説明を省略する。
ステップSB50において、補正手段1130は、ステップSB40で生成された開発品シミュレーションスペクトルを、ステップSB30で生成された比率データを用いて補正し、新たな周波数スペクトル(特性予測スペクトル)を生成する。その補正方法は、上記実施形態に説明したステップSA50と同様であるため、詳細な説明を省略する。
該生成された特性予測スペクトルには、開発品Dのシミュレーションによる発音特性に対して、既存品について見られたシミュレーションと実測との差異(シミュレーションによる誤差)が加味されていることから、開発品実測スペクトルを精度良く予測したスペクトルとなる。
ステップSB60において、合成手段1140は、特性予測スペクトルを既存品実測スペクトルの一部と合成し、新たな周波数スペクトル(合成スペクトル)を生成する。ステップSB70において既存品を実際に発音させて音データを得る。ステップSB80において、変形手段1150は、上記合成スペクトルに基づいて該音データを変形して予測音データを生成する。
【0038】
上記実施形態における処理方法と、本変形例(1)に示した処理方法とでは、互いに同じ既存品および開発品について処理を行った場合であっても、生成される特性予測スペクトルや、開発品の予測音データは異なったものとなる。そこで、上記実施形態における処理方法と、本変形例(1)に示した処理方法とをユーザが選択することができるようにしても良い。例えば、既存品や開発品の材質・形状に応じていずれかの処理方法を選択しても良いし、既存品シミュレーションスペクトルや開発品シミュレーションスペクトルの生成に用いた「従来のシミュレーション」における設定内容に応じていずれかの処理方法を選択しても良い。また、両方法により生成された予測音データを共に出力するようにしても良い。
【0039】
(2)上記実施形態においては、比率データを生成する際、周波数帯域ごとに、既存品シミュレーションスペクトルの値を開発品シミュレーションスペクトルの値で除した比の値を計算する場合について説明した。しかし、上記比率データは、既存品シミュレーションスペクトルおよび開発品シミュレーションスペクトルについて、周波数帯域ごとの値の差を計算しても良い。また、上記各周波数における比の値または差の値に所定の係数を乗じたスペクトルを比率データとしても良い。
【0040】
(3)上記実施形態においては、マイクロホン19により収音された既存品による実際の音に基づいて既存品実測スペクトルを生成する場合について説明した。しかし、既存品実測スペクトルが予め得られている場合には、該スペクトルを記憶手段(ROM12、RAM13、HDD16など)に記憶しておき、適宜用いれば良い。
【0041】
(4)上記実施形態においては、既存品にホワイトノイズを発音させ、該発音された音をマイクロホン19で収音し解析することにより既存品実測スペクトルを生成する場合について説明した。しかし、ホワイトノイズに限らず、他の音を発音させることにより既存品実測スペクトルを生成しても良い。
【0042】
(5)上記実施形態においては、本発明を開発中の電子楽器(例えば、キーボード)が発する音の予測に用いる場合について説明した。しかし、本発明は、電子楽器が発音する音の予測に限られない。例えば、電子楽器以外の発音体であるゲーム機、スピーカ装置、携帯電話機などに本発明を適用しても良いし、ゴルフの打撃音、カメラのシャッター音、自動車のドアミラーの風切り音など、発音を目的とされていないものが生じる音について評価するために用いても良い。
【0043】
(6)上記実施形態においては、本発明に係る仮想音生成装置1に特徴的な機能を実現するための制御プログラムを、ROM12に予め書き込んでおく場合について説明したが、磁気テープ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光記録媒体、光磁気記録媒体、RAM、ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に上記制御プログラムを記録して配布するとしても良く、インターネット網などの電気通信回線経由のダウンロードにより上記制御プログラムを配布するようにしても良い。
【0044】
(7)上記実施形態においては、開発品が発する音の周波数応答についてシミュレーションを行う場合について説明した。しかし、以下のようにして、開発品が発する音の他の特性についてシミュレーションしても良い。
例えば、音の振幅の減衰特性についてシミュレーションしても良い。その場合の実施形態を以下に簡潔に説明する。仮想音生成装置1の構成は、ROM12に格納された制御プログラムを除いて、上記実施形態と同様である。
その処理内容は、以下の通りである。まず、既存品および開発品について、従来のシミュレーション方法により振幅の減衰特性をシミュレートする。例えば、既存品のキーボードの筐体の中には大きな空洞があるため音の減衰が比較的遅く、開発品のキーボードの筐体の中には小さい空洞があるため音の減衰が比較的早い、などのようにシミュレートされる。そして、既存品と開発品の間で、シミュレーションによる減衰特性波形の差分(比)を算出する。一方、既存品を実際に発音させ、既存品による発音の減衰特性を測定する。次に、上記減衰特性波形の差分(比)に基づいて、上記既存品による発音の減衰特性を補正することにより、新たな減衰特性波形を生成する。該生成された減衰特性波形には、既存品による発音の減衰特性に対して、シミュレーションにおいて見られた既存品と開発品の間での減衰特性波形の差分が加味されていることから、開発品による発音の減衰特性を精度良く予測したデータとなる。この後、既存品により発音された音の振幅を該生成された減衰特性波形に基づいて変形することで、減衰特性が開発品と類似した音データが生成される。以上に説明した振幅の減衰特性を制御する処理は、上記実施形態における周波数応答に関するシミュレーションと併せて行っても良い。
また、音の位相特性についてシミュレーションしても良い。シミュレーションおよび実測により得られる周波数応答からは、振幅(Amplitude)と位相(Phase)の情報を抽出することができる。すなわち、周波数応答を複素数として表記した場合、振幅は複素数の絶対値として算出され、位相は虚部と実部の比のアークタンジェントとして算出される。既存品および開発品に関するシミュレーション結果、および既存品に関する実測結果から、開発品が発する音の位相特性をシミュレーションし、開発品が発する音と位相特性が類似した音を生成しても良い。
【0045】
(8)上記実施形態においては、キーボードという複数のユニットから構成されるシステム全体における発音特性をシミュレーションする場合について説明した。しかし、一旦該発音体を構成する各ユニットについて本発明に係るシミュレーション方法を用いて発音特性をシミュレートし、該シミュレーション結果を用いてシステム全体における発音特性をシミュレートしても良い。以下では、具体例を挙げて説明する。
(例1)キーボードは、入力された音信号に基づいて音を自ら発音するユニットであるスピーカ(発音体)、および自らは発音せず、前記発音体に音響的に接続して発音体の音を伝搬させるユニット(構造体)であるスピーカキャビネットやキーボードキャビネットなど、複数のユニットから構成される。そこで、スピーカについては本発明に係るシミュレーション方法で発音特性をシミュレートし、前記スピーカ以外のユニットについては実測の結果または他のシミュレーション手段により得られる最も良いシミュレーション結果を採用し、それらの結果を組み合わせて評価することにより、キーボードというシステム(上記発音体と構造体とによる複合体)の発音特性をシミュレートしても良い。例えば、実測により、スピーカキャビネットおよびキーボードキャビネットが高周波数成分を低減する傾向があるなどといったことが判明した場合、本発明のシミュレーション方法をスピーカに適用して得られた発音特性(周波数応答)の高周波数部分に変更を加えたものを、仮想のスピーカが内蔵されたキーボード(発音体と構造体から構成される複合体)の発音特性とシミュレートしても良い。
(例2)また、上記組み合わせによるシミュレーション方法を以下のように応用しても良い。例えば、上記実施形態のようにして発音特性が明らかになった仮想のキーボード(発音体)を、既存または仮想の音響空間(構造体)に設置する場合について考える。このような場合、該音響空間が有する音の伝達特性を、実測または他のシミュレーション手段により得ておき、本発明に係るシミュレーション方法により得られたキーボードの発音特性と組み合わせることにより、上記キーボードが設置された音響空間(複合体)から漏れ聞こえるキーボードの漏洩音の特性を評価する、といったことも可能である。例えば、従来のシミュレーション方法により、仮想の音響空間が高周波数成分を低減する傾向があるなどといったことが判明した場合、本発明のシミュレーション方法により得られたキーボードの発音特性(周波数応答)の高周波数部分に変更を加えたものを、仮想のキーボードが設置された仮想の音響空間の発音特性(漏れ聞こえる音の特性)としても良い。
(例3)上記例1および2においては、本発明に係るシミュレーション方法と、実測または他のシミュレーション手段とを組み合わせてシステム全体の発音特性を評価する場合について説明した。しかし、本発明に係るシミュレーション方法を複数組み合わせて新たな発音特性をシミュレートしても良い。例えば、仮想のキーボード(発音体)を仮想の音響空間(構造体)に設置した場合について以下のようにシミュレートすることも可能である。
まず、仮想の音響空間による音の「伝達特性」を、以下に説明する方法Aまたは方法Bに示すように、本発明を応用したシミュレーション方法によりシミュレートしておく。
(方法A)従来のシミュレーション方法で、既存および仮想の音響空間について音の伝達特性(周波数応答)をシミュレートする。一方、既存の音響空間内にホワイトノイズの音源を置き、漏れ聞こえる音を実測するなどして、既存の音響空間の音の伝達特性を測定する。そして、該実測された既存の音響空間の音の伝達特性を、上記仮想と既存の音響空間に関するシミュレーション結果の比で補正することにより、仮想の音響空間の伝達特性をシミュレートする。
(方法B)従来のシミュレーション方法で、既存および仮想の音響空間について音の伝達特性(周波数応答)をシミュレートする。一方、既存の音響空間内にホワイトノイズの音源を置き、漏れ聞こえる音を実測するなどして、既存の音響空間の音の伝達特性を測定する。そして、仮想の音響空間に関するシミュレーション結果を、実測された既存の音響空間の音の伝達特性と既存の音響空間に関するシミュレーション結果の比で補正することにより、仮想の音響空間の伝達特性をシミュレートする。
また、上記実施形態に記載されたシミュレーション方法によりキーボードの発音特性についても別途シミュレートする。そして、該キーボードの発音特性と上記方法Aまたは方法Bによりシミュレーションされた音響空間の伝達特性とを組み合わせることにより、仮想のキーボードが設置された仮想の音響空間(複合体)から発音される(漏れ聞こえる)音の特性をシミュレーションすることができる。
以上のようなシミュレーション方法によれば、システムを構成する1または複数のユニット(この場合、音響空間とキーボード)について本発明に係るシミュレーションを行えば、その結果に基づいてシステム全体(キーボードが備え付けられた音響空間)の発音特性がシミュレートされる。
なお、上記説明において、「構造体」として、キーボードにおけるスピーカキャビネットやキーボードキャビネット、発音体が設置される音響空間(部屋)などを例示した。これらの構造体は、構造体自体に空隙を有していたり、発音体と複合体を形成した際に該複合体内に空隙が生じたりする。従って、該複合体全体としての発音特性には、空気を介して音が伝搬されることによる効果が含まれていると考えられる。しかし、「構造体」はそのような空気伝搬を行う構造に限られるものではない。発音体から発せられた音を構造体自体の振動により固体伝搬音として伝搬する構造体でも良い。該構造体として、例えば、コンクリートの床や発音体を支持するシャフトなどの構造体が挙げられ、床の上に設置されたキーボード、シャフトで支持されたスピーカ、空間に設置されたゲーム機等のように、発音体の複雑な設置状況や支持状態を含めてシミュレートすることが困難である場合などにも適用することが可能である。
また、システムに含まれる特定のユニットのみを取り替えた場合のシステム全体の音響特性を評価するような場合に、該取り替えたユニットの発音特性をシミュレートしさえすれば、システム全体のシミュレーションを行うことなくシステム全体のシミュレートが可能である。また、特に精密なシミュレーションを要求されるユニット(例えば、スピーカ周辺)などに対して本発明に係るシミュレーション方法を適用し、他のユニットについては簡易なシミュレーション方法を用いる、といったことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】仮想音生成装置の構成を示した図である。
【図2】仮想音生成装置の処理の流れを示すブロック図である。
【図3】仮想音生成装置の処理内容を表すフローチャートである。
【図4】既存品シミュレーションスペクトルである。
【図5】開発品シミュレーションスペクトルである。
【図6】既存品シミュレーションスペクトルおよび開発品シミュレーションスペクトルである。
【図7】比率データである。
【図8】既存品シミュレーションスペクトルおよび既存品実測スペクトルである。
【図9】特性予測スペクトルである。
【図10】開発品シミュレーションスペクトルおよび開発品実測スペクトルである。
【図11】特性予測スペクトルおよび開発品実測スペクトルである。
【図12】既存品実測スペクトルである。
【図13】合成スペクトルである。
【図14】開発品実測スペクトルである。
【図15】変形例(1)に係る仮想音生成装置の処理内容を示すフローチャートである。
【図16】変形例(1)に係る仮想音生成装置の処理の流れを示すブロック図である。
【符号の説明】
【0047】
1…仮想音生成装置、11…制御部、12…ROM、13…RAM、14…操作部、15…表示部、16…HDD、17…音声処理部、18…スピーカ、19…マイクロホン、110、1100…シミュレーション手段、111、1110…解析手段、112、1120…差分算出手段、113、1130…補正手段、114、1140…合成手段、115、1150…変形手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の発音体の発音特性をシミュレートする既存発音体シミュレーション手段と、
仮想の発音体の発音特性をシミュレートする仮想発音体シミュレーション手段と、
前記特定の発音体を実際に発音させた際の発音特性を測定する既存発音体測定手段と、
前記既存発音体シミュレーション手段と前記仮想発音体シミュレーション手段とによるそれぞれのシミュレーション結果を比較し、その差異を表す差異データを生成する第1の差異データ生成手段と、
前記差異データを用いて、前記既存発音体測定手段による測定結果を補正し、前記仮想の発音体の発音特性である仮想発音体予測データを生成する第1の特性補正手段と
を具備することを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項2】
特定の発音体の発音特性をシミュレートする既存発音体シミュレーション手段と、
仮想の発音体の発音特性をシミュレートする仮想発音体シミュレーション手段と、
前記特定の発音体を実際に発音させた際の発音特性を測定する既存発音体測定手段と、
前記既存発音体シミュレーション手段によるシミュレーション結果と前記既存発音体測定手段による測定結果とを比較し、その差異を表す差異データを生成する第2の差異データ生成手段と、
前記差異データを用いて、前記仮想発音体シミュレーション手段によるシミュレーション結果を補正し、前記仮想の発音体の発音特性である仮想発音体予測データを生成する第2の特性補正手段と
を具備することを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項3】
前記第1の差異データ生成手段は、前記既存発音体シミュレーション手段によるシミュレーション結果と前記仮想発音体シミュレーション手段によるシミュレーション結果から、周波数応答に関する差異を算出し、
前記既存発音体測定手段は、前記特定の発音体を実際に発音させた際の周波数応答を測定する
ことを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項4】
前記第1の差異データ生成手段は、前記既存発音体シミュレーション手段によるシミュレーション結果と前記仮想発音体シミュレーション手段によるシミュレーション結果から、位相特性に関する差異を算出し、
前記既存発音体測定手段は、前記特定の発音体を実際に発音させた際の位相特性を測定する
ことを特徴とする請求項1または3に記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
前記第2の差異データ生成手段は、前記既存発音体シミュレーション手段によるシミュレーション結果と前記既存発音体測定手段による測定結果とから、周波数応答に関する差異を算出し、
前記既存発音体測定手段は、前記特定の発音体を実際に発音させた際の周波数応答を測定することを特徴とする請求項2に記載のシミュレーション装置。
【請求項6】
前記第2の差異データ生成手段は、前記既存発音体シミュレーション手段によるシミュレーション結果と前記既存発音体測定手段による測定結果とから、位相特性に関する差異を算出し、
前記既存発音体測定手段は、前記特定の発音体を実際に発音させた際の位相特性を測定することを特徴とする請求項2または5に記載のシミュレーション装置。
【請求項7】
前記特定の発音体の演奏内容を表す音データを受取る受取手段と、
前記受取手段が受取った音データを、前記仮想発音体予測データに基づいて変形し出力する音データ変形手段と
を具備することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のシミュレーション装置。
【請求項8】
特定の構造体に係る音の伝達特性をシミュレートする伝達特性シミュレート手段と、
前記伝達特性シミュレート手段によるシミュレーション結果を用いて前記仮想発音体予測データを補正して、前記仮想の発音体が発音した音が前記特定の構造体を伝達した結果の複合体発音特性を予測する第1の予測データ補正手段と
を具備することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のシミュレーション装置。
【請求項9】
特定の構造体に係る音の伝達特性を測定する伝達特性測定手段と、
前記伝達特性測定手段による測定結果を用いて前記仮想発音体予測データを補正して、前記仮想の発音体が発音した音が前記特定の構造体を伝達した結果の複合体発音特性を予測する第2の予測データ補正手段と
を具備することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のシミュレーション装置。
【請求項10】
特定の構造体に係る音の伝達特性をシミュレートする既存構造体シミュレーション手段と、
仮想の構造体に係る音の伝達特性をシミュレートする仮想構造体シミュレーション手段と、
前記特定の構造体が音を伝達する際の伝達特性を測定する既存構造体測定手段と、
前記既存構造体シミュレーション手段と前記仮想構造体シミュレーション手段とによるそれぞれのシミュレーション結果を比較し、その差異を表す差異データを生成する第3の差異データ生成手段と、
前記差異データを用いて、前記既存構造体測定手段による測定結果を補正し、前記仮想の構造体による音の伝達特性である仮想構造体予測データを生成する第3の特性補正手段と、
前記仮想発音体予測データを、前記第3の特性補正手段が生成した仮想構造体予測データに基づいて補正して、前記仮想の発音体が発音した音が前記仮想の構造体を伝達した結果の複合体発音特性を予測する第3の予測データ補正手段と
を具備することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のシミュレーション装置。
【請求項11】
特定の構造体に係る音の伝達特性をシミュレートする既存構造体シミュレーション手段と、
仮想の構造体に係る音の伝達特性をシミュレートする仮想構造体シミュレーション手段と、
前記特定の構造体が音を伝達する際の伝達特性を測定する既存構造体測定手段と、
前記既存構造体シミュレーション手段によるシミュレーション結果と前記既存構造体測定手段による測定結果とを比較し、その差異を表す差異データを生成する第4の差異データ生成手段と、
前記差異データを用いて、前記仮想構造体シミュレーション手段によるシミュレーション結果を補正し、前記仮想の構造体による音の伝達特性である仮想構造体予測データを生成する第4の特性補正手段と、
前記仮想発音体予測データを、前記第4の特性補正手段が生成した仮想構造体予測データに基づいて補正して、前記仮想の発音体が発音した音が前記仮想の構造体を伝達した結果の複合体発音特性を予測する第4の予測データ補正手段と
を具備することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のシミュレーション装置。
【請求項12】
コンピュータを、
特定の発音体の発音特性をシミュレートする既存発音体シミュレーション手段と、
仮想の発音体の発音特性をシミュレートする仮想発音体シミュレーション手段と、
前記特定の発音体を実際に発音させた際の発音特性を測定する既存発音体測定手段と、
前記既存発音体シミュレーション手段と前記仮想発音体シミュレーション手段とによるそれぞれのシミュレーション結果を比較し、その差異を表す差異データを生成する第1の差異データ生成手段と、
前記差異データを用いて、前記既存発音体測定手段による測定結果を補正し、前記仮想の発音体の発音特性である仮想発音体予測データを生成する第1の特性補正手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項13】
コンピュータを、
特定の発音体の発音特性をシミュレートする既存発音体シミュレーション手段と、
仮想の発音体の発音特性をシミュレートする仮想発音体シミュレーション手段と、
前記特定の発音体を実際に発音させた際の発音特性を測定する既存発音体測定手段と、
前記既存発音体シミュレーション手段によるシミュレーション結果と前記既存発音体測定手段による測定結果とを比較し、その差異を表す差異データを生成する第2の差異データ生成手段と、
前記差異データを用いて、前記仮想発音体シミュレーション手段によるシミュレーション結果を補正し、前記仮想の発音体の発音特性である仮想発音体予測データを生成する第2の特性補正手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−116169(P2009−116169A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290790(P2007−290790)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】