説明

シャフトの結合構造

【課題】簡易な構成によりガタの少ないステアリングシャフトの結合構造を提供する。
【解決手段】シャフトの結合構造において、ロアシャフト32と、ロアシャフト32が挿入可能な中空部を有するアッパシャフト30と、を備える。ロアシャフト32とアッパシャフト30とが互いに周方向に回転不能にかつ軸方向に摺動可能に嵌合されている。ロアシャフト32は、アッパシャフト30に挿入されている部分の端部が全周にわたって中央部よりも薄く形成されている環状薄肉部32cと、環状薄肉部32cの内周面を径方向に押圧するように撓ませられた弾性部材44と、を有する。環状薄肉部32cは、撓んでいる弾性部材44により径方向の外側に向かって押圧された場合に弾性変形可能なように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のステアリング装置におけるシャフトの結合構造の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者の任意の操作ポジション設定を可能とするために、ステアリングホイールを前後方向に移動するテレスコピック機構を採用したステアリング装置が考案されている。このようなテレスコピック機構は、内周部にセレーションが形成されたシャフトに外周部にセレーションが形成されたシャフトを挿入し、互いに回転不能にかつ軸方向に摺動可能に結合する構造を採用することで実現されている。
【0003】
このようなシャフト間の結合構造においては、部品のばらつきによっては回転方向のガタが発生することが想定される。そこで、回転方向のガタを抑制する1つの方法として、シャフトのセレーション表面に樹脂をコーティングすることが行われている。しかしながら、樹脂をコーティングするためには樹脂を溶解・凝固する設備が必要であり、また樹脂をコーティングした後にセレーションの形状に樹脂コート層を加工する工程が必要となり、コストの増大を招いている。
【0004】
そこで、上述のように樹脂コート層を形成することで回転方向のガタの発生を抑制する代わりに、特許文献1や特許文献2には、インナーシャフトにアウターシャフトを組み付けた後、調整ネジを締め付けることにより、拡径部材が拡がり、インナーシャフトがアウターシャフトに対して径方向外方に押圧されることでガタが抑制される結合構造が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、スプリングピンの付勢力によりスリットの形成された雄軸の中空端部を径方向外方に拡径して、全てのニードルローラに予圧をかけることでガタを防止するステアリング用伸縮軸が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−347954号公報
【特許文献2】特開2003−276615号公報
【特許文献3】特開2003−247560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1や2に記載の結合構造では、拡径部材の形状が複雑であるとともに貫通孔をインナーシャフトやアウターシャフトに形成しなければならず、また、組立て時に貫通孔を介して調整ネジを締め付ける必要があり、製造コストや組立てコストの増大を招くことになる。また、特許文献3に記載の伸縮軸では、雄軸にスリットを形成する必要があるため、製造コストの増大を招くことになる。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構成によりガタの少ないシャフトの結合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のシャフトの結合構造は、第1のシャフトと、前記第1のシャフトが挿入可能な中空部を有する第2のシャフトと、を備える。前記第1のシャフトと前記第2のシャフトとが互いに周方向に回転不能にかつ軸方向に摺動可能に嵌合されているシャフトの結合構造であって、前記第1のシャフトは、前記第2のシャフトに挿入されている部分の端部が全周にわたって中央部よりも薄く形成されている環状薄肉部と、該環状薄肉部の内周面を径方向に押圧するように撓ませられた弾性部材と、を有する。前記環状薄肉部は、撓んでいる前記弾性部材により径方向の外側に向かって押圧された場合に弾性変形可能なように構成されている。
【0010】
この態様によると、第1のシャフトが第2のシャフトに挿入された状態で弾性部材により環状薄肉部が内側から径方向の外側に向かって押圧され、少なくとも第1のシャフトの端部が外側に向かって弾性変形することで、第1のシャフトがより第2のシャフトに密着する。その結果、簡易な構成でガタの発生が抑制される。また、第1のシャフトの端部に環状薄肉部を設けるため、第1のシャフトの加工が容易となる。
【0011】
前記第1のシャフトは、その外周面の軸方向に直線状に伸びる溝が周方向に複数形成されており、前記第2のシャフトは、その内周面の軸方向に直線上に伸びるとともに前記溝にはまるような凸部が周方向に複数形成されていてもよい。
【0012】
前記弾性部材は、環状の部材であり、その一部が軸方向に切り欠かれている切り欠き部を有してもよい。これにより、切り欠き部を挟む両端部を近づけることで容易に弾性部材を撓ませることができ、組立ての際の作業性を向上することができる。
【0013】
前記弾性部材は、その外周の周方向の長さが前記環状薄肉部の内周の周方向の全長の1/2より長くてもよい。これにより、弾性部材が環状薄肉部の内側で所定の位置からずれたり外れたりすることが低減される。
【0014】
前記弾性部材は、第1のシャフトの軸方向から見てU字断面形状を有する筒状バネであってもよい。これにより、簡易な構成で弾性部材を実現することができ、製造コストを低減することができる。
【0015】
前記弾性部材は、その外周面に突起が形成されていてもよい。これにより、弾性部材や環状薄肉部を高い加工精度で仕上げなくても、弾性部材により環状薄肉部が押圧される箇所のばらつきが低減され、突起の位置に対応した環状薄肉部の内側の所望の箇所が安定して押圧され、環状薄肉部が設計通りに弾性変形しやすくなる。
【0016】
前記突起は、前記弾性部材の外周面のうち、中央部を含む前記環状薄肉部内周の周方向全長の1/2に相当する領域よりも両端部側にそれぞれ形成されていてもよい。これにより、少なくとも一対の突起と、弾性部材の中央部近傍の箇所とにより環状薄肉部を内側から押圧することが可能となるため、環状薄肉部を全周にわたって径方向の外側に向かってより均一に弾性変形させることができる。
【0017】
前記第1のシャフトは、前記環状薄肉部の該第1のシャフトの中央部に近い側に前記弾性部材の端部が突き当たる突き当て部を有していてもよい。これにより、環状薄肉部の内側に弾性部材を設ける際に軸方向の位置決めが容易となり、組立ての際の作業性を向上することができる。
【0018】
前記第1のシャフトは、アルミ合金からなってもよい。これにより、軽量化を図ることができる。また、鉄系の合金と比較して、環状薄肉部を所望量弾性変形させるために必要な弾性部材のバネ定数を抑えることができ、弾性部材の小型化・軽量化を図ることができるとともに、組立ての際の作業性を向上することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡易な構成によりガタの少ないステアリングシャフトを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0021】
はじめに、本発明に係るシャフトの結合構造を好適に採用するステアリング装置を説明する。図1は、本実施の形態に係るステアリング装置の一部を説明するための外観図である。ステアリング装置10は、ステアリングホイール12、ステアリングシャフト14、ステアリングコラム16、ユニバーサルジョイント(図示省略)等を含んで構成されている。ステアリングホイール12は、円環状のリム12a、ステアリングシャフト14に差し込むハブ12b、リム12aとハブ12bを接続するスポーク12cで構成され、車両を操舵するために運転者により回転操作される。ステアリングシャフト14は、上端側においてステアリングホイール12をナット14aで固着し、ステアリングホイール12の回転力を伝達する役割をもち、ステアリングホイール12とステアリングシャフト14とが同時に回転するように構成される。
【0022】
ステアリングコラム16は、アウターチューブ(外筒)18、インナーチューブ(内筒)20を備える。アウターチューブ18は、取付けブラケット38を介して車両のフレームなどに固定されている。また、ステアリングコラム16のステアリングホイール12の固定側は、コラムカバー22に覆われている。コラムカバー22には、イグニッションキースイッチなど各種スイッチ類(図示省略)が配置されている。なお、ステアリングコラム16には、チルト機構(後述)やテレスコピック機構などが配置される。
【0023】
図2は、ステアリングコラム16の外観を示す側面図である。ステアリングシャフト14は、アッパシャフト30とロアシャフト32を備え、コラム軸方向にて伸縮可能かつトルク伝達可能に構成されている。ステアリングコラム16は、ステアリングシャフト14を回転自在に支持する。
【0024】
アッパシャフト30は、アウターチューブ18に対して軸受(図示省略)を介して回転自在かつコラム軸方向移動不能に支持されており、図中の右端ではステアリングホイール12が一体回転可能に組み付けられるようになっている。一方、ロアシャフト32は、インナーチューブ20に軸受(図示省略)を介して回転自在に支持されていて、図中左端にてユニバーサルジョイントを介して伸縮可能かつトルク伝達可能な中間軸(共に図示省略)に連結される。中間軸はユニバーサルジョイントを介してステアリングギヤボックス(共に図示省略)に連結される。
【0025】
アウターチューブ18は、下端部にてインナーチューブ20の上端部にコラム軸方向へ摺動可能に嵌合連結されていて、下端部に固着したコラム側ブラケット34にてチルト及びテレスコピック調整可能な上方支持機構Aを介して車体の一部(図示省略)に固着されている車体側ブラケットに組み付けられている。なお、コラム側ブラケット34はアウターチューブ18と一体となるように固着されて、ステアリングコラム16の一部を構成している。また、インナーチューブ20は、下端部に固着した取付けブラケット36にて回動可能な下方支持機構Bを介して車体の一部(図示省略)に傾動可能に組み付けられている。
【0026】
上方支持機構Aは、ステアリングコラム16の傾動を許可・規制可能でアッパシャフト30に組み付けられるステアリングホイール12の傾斜角度を調整可能なチルト機構と、ステアリングシャフト14とステアリングコラム16のコラム軸方向伸縮を許可・規制可能でステアリングホイール12のコラム軸方向位置を調整可能なテレスコピック機構を一体的に備えたものである。
【0027】
この上方支持機構Aは、車体側ブラケットに前方へ移動離脱可能に組み付けられる取付けブラケット38を備えるとともに、この取付けブラケット38に対してコラム側ブラケット34を固定・解除可能(解除状態にてチルト調整可能かつテレスコピック調整可能)な締結用ボルト40、操作レバー37、スラスト軸受、カムプレート、ナット、カラー、偏心カム(共に図示省略)等を備えている。
【0028】
取付けブラケット38は、コラム側ブラケット34を上下方向にて傾動可能(チルト可能)かつコラム軸方向に移動可能(テレスコピック可能)に支持するものであり、左右一対のアーム42を有するとともに、これらアーム42より上方に一対の取付部60を有していて、これらの取付部60に設けた各スリット孔にて、樹脂カプセルと金属カラーを介して、取付ボルトを用いて車体側ブラケットに組み付けられる。
【0029】
締結用ボルト40は、取付けブラケット38の両アーム42に設けた左右一対の円弧状挿通孔とコラム側ブラケット34に設けた左右一対の直線状挿通孔とに挿通されている。両アーム42の円弧状挿通孔は、図1に示した下方支持機構Bの回動中心を中心とする円弧状のチルト長孔であり、チルト調整を可能とするものである。コラム側ブラケット34の直線状挿通孔は、コラム軸方向に沿って形成された直線状のテレスコピック長孔であり、テレスコピック調整を可能とするものである。なお、操作レバー37は、連結プレート37aを用いて締結用ボルト40の頭部に連結されている。
【0030】
下方支持機構Bは、ステアリングコラム16におけるインナーチューブ20を傾動(回動)可能に支持するものであり、インナーチューブ20の下端部に固着したブラケット36に形成した取付孔72に回転自在に嵌合されるカラー70と、このカラー70を車体の一部(図示省略)に固定するボルトおよびナット(図示省略)等によって構成されている。
【0031】
図3は、本実施の形態に係るステアリングシャフト14の一部破断面図である。図4は、ロアシャフト32の断面図である。本実施の形態に係るステアリングシャフトの結合構造は、ロアシャフト32と、ロアシャフト32が挿入可能な中空部を有するアッパシャフト30と、弾性部材44と、を備える。
【0032】
ロアシャフト32は、伸縮可能かつトルク伝達可能な中間軸にユニバーサルジョイントを介して連結される図中左端とは反対側の端部32aが中空になっている。換言すると、ロアシャフト32は、アッパシャフト30に挿入されている部分の端部32aが全周にわたって中央部32bよりも薄く形成されている環状薄肉部32cを有している。
【0033】
なお、本実施の形態に係るロアシャフト32は、環状薄肉部32cより厚みのある中央部32bが中実であるが、これに限られるものではなく、中央部32bが環状薄肉部32cより厚みのある中空の筒形状を有していてもよい。また、ロアシャフト32は、その外周面の軸方向に直線状に伸びる溝32dが周方向に複数形成されている、いわゆるセレーション形状に加工されている。なお、ロアシャフト32の外周面の溝はスプライン形状に加工されていてもよい。
【0034】
一方、アッパシャフト30は、ステアリングホイール12と一体回転可能に組み付けられる図中右端とは反対側の図中左端に開口部30aが設けられており、ロアシャフト32が挿入可能なように少なくとも開口部30aから所定の長さは中空となっている。また、アッパシャフト30の内周面には、ロアシャフト32の外周面に形成されている溝32dと嵌合するように、開口部30aから所定の長さにわたって軸方向に直線上に伸びる凸部30bが周方向に複数形成されている。
【0035】
したがって、本実施の形態に係るシャフトの結合構造においては、ロアシャフト32の溝32dにアッパシャフト30の凸部30bがはまり込むため、互いに周方向に回転不能にかつ軸方向に摺動可能に嵌合されることになる。
【0036】
図5(a)は、図3のX−X断面図である。図5(b)は、図5(a)のB領域を拡大した断面図である。図6は、弾性部材44の外観を示す斜視図である。弾性部材44は、環状薄肉部32cの内周面を径方向に押圧するように撓ませられた状態で、環状薄肉部32cの内側に設けられている。そして、環状薄肉部32cは、撓んでいる弾性部材44により径方向の外側に向かって押圧された場合に弾性変形可能なように構成されている。
【0037】
したがって、ロアシャフト32がアッパシャフト30に挿入された状態で弾性部材44により環状薄肉部32cが内側から径方向の外側に向かって押圧されると、少なくともロアシャフト32の端部が外側に向かって弾性変形し、ロアシャフト32がよりアッパシャフト30に密着する。そのため、アッパシャフト30とロアシャフト32との間にわずかな隙間が生じていても、ロアシャフト32の端部に形成されている環状薄肉部32cが径方向外側に広がることで、ロアシャフト32に対するアッパシャフト30の回転方向のガタの発生が抑制される。また、ロアシャフト32の端部に環状薄肉部32cを設けるため、ロアシャフト32の加工が容易となる。
【0038】
本実施の形態に係る弾性部材44は、ロアシャフト32の軸方向から見てU字断面形状を有する筒状のクリップバネであり、その一部が軸方向に切り欠かれている切り欠き部44aを有している。
【0039】
そのため、例えば、板状の部材を筒状に変形させるというような簡易な方法により、構成が単純な弾性部材を製造することができるため、製造コストを低減することができる。また、切り欠き部44aを挟む両端部44bを近づけることで容易に弾性部材44を撓ませることができ、環状薄肉部32cに弾性部材44を装着する際の作業性を向上することができる。
【0040】
また、弾性部材44は、その外周の周方向の長さL1(図6参照)が、環状薄肉部32cの内周の周方向の全長L2の1/2より長く、つまり円周長の半分より長くなるように切り欠き部44aの幅が設定されている。そのため、弾性部材44が環状薄肉部32cの内側で所定の位置からずれたり外れたりすることが低減される。
【0041】
弾性部材44は、その外周面に一対の突起44cが形成されている。このため、弾性部材44や環状薄肉部32cを高い加工精度で仕上げなくても、弾性部材44により環状薄肉部32cが押圧される箇所のばらつきが低減され、突起44cの位置に対応した環状薄肉部32cの内側の所望の箇所が安定して押圧され、環状薄肉部32cが設計通りに弾性変形しやすくなる。その結果、アッパシャフト30とロアシャフト32との間にわずかな隙間が生じていても、ロアシャフト32の端部が広がることで、ロアシャフト32に対するアッパシャフト30の回転方向のガタの発生を抑制することができる。
【0042】
なお、環状薄肉部32cの厚みや弾性部材44の形状、バネ定数の最適な値は、環状薄肉部32cが撓んでいる弾性部材44により径方向の外側に向かって押圧された場合の弾性変形量が所望の値となるように、ステアリングシャフト14の径や各部品の設計公差、材質を考慮して実験により設定することができる。
【0043】
例えば、ロアシャフト32の材質がアルミ合金の場合、ロアシャフト32自体の軽量化だけでなく、鉄系の合金と比較して、環状薄肉部32cを所望量弾性変形させるために必要な弾性部材44のバネ定数を低く抑えることができる。そのため、弾性部材44の小型化・軽量化を図ることができるとともに、組立ての際に弾性部材44を撓ませることが容易となり作業性を向上することができる。
【0044】
本実施の形態に係る突起44cは、弾性部材44の外周面のうち、中央部44dを含む環状薄肉部32cの内周の周方向の全長L2の1/2に相当する領域よりも両端部44b側にそれぞれ形成されている。これにより、弾性部材44は、一対の突起44cが環状薄肉部32cの内周面を押圧する反力により下方に向かう力が働き、弾性部材44の中央部44dが環状薄肉部32cの内側を押圧することが可能となる。
【0045】
そのため、弾性部材44は、少なくとも一対の突起44cと、弾性部材44の中央部44d近傍の接触箇所とにより環状薄肉部32cを内側から押圧することが可能となり、環状薄肉部32cを全周にわたって径方向の外側に向かってより均一に弾性変形させることができる。これにより、ステアリングシャフト14を回転操作する際のロアシャフト32とアッパシャフト30との間のガタの発生がより低減される。
【0046】
また、図4に示すように、ロアシャフト32は、環状薄肉部32cのロアシャフト32の中央部32bに近い側に弾性部材44の端部が突き当たる突き当て部32eを有している。これにより、環状薄肉部32cの内側に弾性部材44を設ける際に軸方向の位置決めが容易となり、組立ての際の作業性を向上することができる。また、ロアシャフト32は、突き当て部32eからロアシャフトの開口部32fまでの距離D1を、弾性部材44の端部から突起44cまでの距離D2より大きくなるように設定されている。
【0047】
これにより、環状薄肉部32cの内部に弾性部材44を装着する際に、突起44cが環状薄肉部32cの内周面の所望の位置を押圧するように調整する必要がなく、組立ての際の作業性を向上することができる。また、突起44cは、環状薄肉部32cの内部に弾性部材44が装着された状態で、開口部32f近傍に位置するように形成されている。これにより、環状薄肉部32cを所定量弾性変形させるために必要なバネ力を抑えることができ、弾性部材44の板厚の低減、ひいては軽量化、低コスト化が図られる。また、弾性部材44を撓ませやすくなるので、作業性の向上が図られる。
【0048】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における処理の組合せや順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0049】
例えば、本実施の形態の弾性部材44は、筒状のバネだけでなく、環状のバネであってもよい。これにより、筒状の場合と比較して構造が簡易となり、製造の容易性や小型化による材料の少量化から製造コストを低減することができる。また、弾性部材44に形成される突起44cは、軸に垂直な同一平面に一対だけ形成されている場合だけでなく、軸方向に複数対形成されていてもよく、あるいは、軸に垂直な別々の平面にそれぞれ形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施の形態に係るステアリング装置の一部を説明するための外観図である。
【図2】ステアリングコラムの外観を示す側面図である。
【図3】本実施の形態に係るステアリングシャフトの一部破断面図である。
【図4】ロアシャフトの断面図である。
【図5】図5(a)は、図3のX−X断面図である。図5(b)は、図5(a)のB領域を拡大した断面図である。
【図6】弾性部材の外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
10 ステアリング装置、 14 ステアリングシャフト、 16 ステアリングコラム、 18 アウターチューブ、 20 インナーチューブ、 30 アッパシャフト、 30a 開口部、 30b 凸部、 32 ロアシャフト、 32a 端部、 32b 中央部、 32c 環状薄肉部、 32d 溝、 32e 突き当て部、 32f 開口部、 44 弾性部材、 44a 切り欠き部、 44b 両端部、 44c 突起、 44d 中央部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のシャフトと、
前記第1のシャフトが挿入可能な中空部を有する第2のシャフトと、を備え、
前記第1のシャフトと前記第2のシャフトとが互いに周方向に回転不能にかつ軸方向に摺動可能に嵌合されているシャフトの結合構造であって、
前記第1のシャフトは、前記第2のシャフトに挿入されている部分の端部が全周にわたって中央部よりも薄く形成されている環状薄肉部と、該環状薄肉部の内周面を径方向に押圧するように撓ませられた弾性部材と、を有し、
前記環状薄肉部は、撓んでいる前記弾性部材により径方向の外側に向かって押圧された場合に弾性変形可能なように構成されていることを特徴とするシャフトの結合構造。
【請求項2】
前記第1のシャフトは、その外周面の軸方向に直線状に伸びる溝が周方向に複数形成されており、
前記第2のシャフトは、その内周面の軸方向に直線上に伸びるとともに前記溝にはまるような凸部が周方向に複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシャフトの結合構造。
【請求項3】
前記弾性部材は、環状の部材であり、その一部が軸方向に切り欠かれている切り欠き部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のシャフトの結合構造。
【請求項4】
前記弾性部材は、その外周の周方向の長さが前記環状薄肉部の内周の周方向の全長の1/2より長いことを特徴とする請求項3に記載のシャフトの結合構造。
【請求項5】
前記弾性部材は、第1のシャフトの軸方向から見てU字断面形状を有する筒状バネであることを特徴とする請求項3または4に記載のシャフトの結合構造。
【請求項6】
前記弾性部材は、その外周面に突起が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のシャフトの結合構造。
【請求項7】
前記突起は、前記弾性部材の外周面のうち、中央部を含む前記環状薄肉部の内周の周方向全長の1/2に相当する領域よりも両端部側にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項6に記載のシャフトの結合構造。
【請求項8】
前記第1のシャフトは、前記環状薄肉部の該第1のシャフトの中央部に近い側に前記弾性部材の端部が突き当たる突き当て部を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のシャフトの結合構造。
【請求項9】
前記第1のシャフトは、アルミ合金からなることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のシャフトの結合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−144835(P2009−144835A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323378(P2007−323378)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100791)アイシン軽金属株式会社 (137)
【Fターム(参考)】