説明

シャフトシール装置の組み付け方法及びシャフトシール装置

【課題】簡単な工程により取り付け長が高精度に設計基準値となるようにシャフトシール装置を組み付けることのできるシャフトシール装置の組み付け方法を提供する。
【解決手段】端面シール104をシャフト102の所定位置に設置するとともに、シャフト102上において固定環103が組み付けられる正規位置から端面シール104側に所定の調整距離だけ離れた固定環103押し込み位置を規定するスペーサー107をシャフト102に設置する第1工程と、固定環103をハウジング101に挿入し、固定環103の摺動面がスペーサー107に突き当たるまで固定環103を端面シール104方向に押し込む第2工程と、固定環103を調整距離だけ端面シール104から離れる方向に戻す第3工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば空調機用の圧縮機、ポンプ、原動機等の回転装置に適用して好適な、ハウジングとシャフトとの間の被密封流体をシールするシャフトシール装置の組み付け方法、及び、そのシャフトシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば空調機用の圧縮機等の回転装置に適用されるシャフトシール装置(以下、単にシャフトシールと称する場合もある。)として、図9に示すような端面リップシールが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
図9に示す端面リップシール900は、回転装置のハウジング901に密封的に取り付けられる固定側の密封環(以下、固定環と称する。)903と、シャフト902に密接嵌合されて一体で回転するゴム材製の端面シール(以下、ゴム端面シールと称する。)904とを有し、ゴム端面シール904に形成される突出リップ905が固定環903の端面に対して外径方向へ傾斜して延在密接することにより密封摺動面が形成され、これにより、突出リップ905の外周部に存在する被密封流体Q’が、固定環103より内径側、背面側の大気空間A’へ漏洩するのを防止する構成となっている。
【特許文献1】特開2003−214541号公報
【0003】
このような構成の端面リップシール900を組み付ける際には、ゴム端面シール904は、シャフト902の段差端面902aに突き当てられる。すなわち、ゴム端面シール904の組み付け位置は、シャフト段差端面902aが基準とされる。一方、ゴム端面シール904と対向して密封摺動面を形成する固定環903は、パッキン907,908、補強ケース909及びシールリップ910を構成部として有する固定側シール906を介して回転装置のハウジング901の段差端面901aに突き当てられる。すなわち、固定環903の組み付け位置は、ハウジング段差端面901aが基準とされる。
従って、固定環903とゴム端面シール904とを回転装置に組み付けた際の両部品間の軸方向距離(以下、シール取り付け長と称する。)L1は、回転装置のハウジング901とシャフト902との取り合い寸法(相対位置)に依存する。
【0004】
ところで、このような構成の端面リップシール900においては、固定環903とゴム端面シール904とを回転装置に組み付けた際のシール取り付け長L1がシール性能に大きく影響し、これを適切な長さにすることが重要である。
【0005】
具体的には、ゴム端面シール904と固定環903とが離れると、突出リップ905の摺動面面積が小さくなって摺動面の負荷応力が大きくなるが、その離れ方が大きくなると、突出リップ905の摺動面面積が極端に小さくなって負荷応力が集中し、摺動面の過剰摩耗や突出リップ905の破損が発生する可能性がある。さらには、突出リップ905が固定環903の摺動面に対して十分に追随できない状態、あるいは届かない状態となり、いわゆる「シール面の開き」が発生する可能性が生じる。
【0006】
また、反対に、ゴム端面シール904と固定環903とが近接すると、摺動面の直径が大きくなり、摺動面の相対すべり速度を増大させ、また、摺動面の受圧面積を増大させ、摺動面にかかる圧力による荷重を増大させ、さらに、突出リップ905の弾性反発力による摺動面荷重も大きくなる。その結果、摺動面温度の異常上昇や摺動面の過剰摩耗、さらには突出リップ905の破損が惹起される可能性が生じる。
【0007】
すなわち、固定環903とゴム端面シール904との距離、すなわちシール取り付け長L1が所定の設計基準値より大きくずれた場合には、いずれも被密封流体Q’の漏れに帰する不具合が発生する可能性が高くなり、このような端面リップシール900について所望の性能を発揮させるためには、シール組み付け時において、シール取り付け長L1をできるだけ設計基準値に近い寸法に管理することが重要である。
【0008】
一方で、前述したように、このような端面リップシール900では、ゴム端面シール904がシャフト902に対して嵌合固定されているため、ゴム端面シール904がシャフト902上を軸方向に作動する構造、さらには、バネ等の弾発手段によって固定環903に対して押圧される構造を持たない。従って、シール取り付け長L1の許容公差は、固定環903の摺動面に対してゴム端面シール904の突出リップ905が弾性変形しながら追随できる範囲に制限される。換言すると、突出リップ905の長さにより制限される。
【0009】
シール取り付け長L1の許容公差を拡大するために突出リップ905の長さを長くすることは、摺動面の直径、すなわち摺動面の相対すべり速度を増大させ、また、摺動面の受圧面積、すなわち摺動面にかかる圧力による荷重を増大させることになるため好ましくない。従って、突出リップ905の長さはできるだけ短くすることが設計上必要である。その結果、端面リップシール900のシール取り付け長L1の許容公差は、例えばメカニカルシール等の端面シールと比較すると極めて小さい値に制限される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のシャフトシール(例えば端面リップシール900)の組み付け方法では、シール取り付け長(L1)を設計基準値通りに管理すること、すなわち許容公差内で組み付けることが非常に難しいという問題がある。
前述したように、従来の端面リップシール900の組み付け方法においては、シール取り付け長L1は、回転装置のハウジング901とシャフト902との取り合い寸法(相対位置)に依存する。しかし、回転装置は、端面リップシール900よりも構造体の寸法が大きく、かつ、通常はハウジング901やシャフト902以外にも多数の部品(ベアリング等)が使用される。そのため、ハウジング901とシャフト902との取り合い寸法の公差、すなわちばらつきはある程度の値となり、その結果、端面リップシール900のシール取り付け長L1のばらつきもある程度の範囲となる。このばらつきの範囲を、前述したようなメカニカルシールと比較して極めて小さいようなごくわずかな範囲に抑えることは非常に困難である。
【0011】
そのために従来は、端面リップシール900を組み付ける前に、一度、回転装置を仮組みしてハウジング901とシャフト902との相対位置を計測し、次に、回転装置を分解して固定環903の取り付け基準面となるハウジング段差端面901aあるいはゴム端面シール904の取り付け基準面となるシャフト段差端面902aの一方あるいは両方に、計測した相対位置と設計基準値との差を修正するための、例えばシム、金属ワッシャー等の別部品を装着した上で、端面リップシール900を組み付けて、再度回転装置を組み立てるというような方法を行っていた。
【0012】
しかしそのような組み付け方法は、実質的に回転装置を2度組み立てることとなり作業が煩雑で工数が多くなり組み立て時間が長くなるという問題がある。また、装着する部品の寸法精度や再組み立てする際の再現性等の問題から、実際に最終的に組み付けられた端面リップシール900のシール取り付け長L1を厳密に設計基準値とするには限界があった。
【0013】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、簡単な工程により、シール取り付け長が高精度に設計基準値となるようにシャフトシール装置を組み付けることのできるシャフトシール装置の組み付け方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、簡単な工程によりシール取り付け長が高精度に設計基準値となるように組み付けることができるシャフトシール装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、請求項1に係る本発明のシャフトシール装置の組み付け方法は、シャフトが通過するハウジングに固定される固定環と、前記シャフトに固定される端面シールとを有し、前記固定環の摺動面に前記端面シールの突出リップを摺動可能に密接させることにより前記シャフトに沿って被密封流体をシールするシャフトシール装置の組み付け方法であって、前記端面シールを前記シャフトの所定位置に設置するとともに、当該シャフト上において前記固定環が組み付けられる正規位置から前記端面シール側に所定の調整距離だけ離れた固定環押し込み位置を規定するスペーサーを前記シャフトに設置する第1工程と、前記固定環を前記ハウジングに挿入し、前記固定環の摺動面が前記スペーサーに突き当たるまで前記固定環を前記端面シール方向に押し込む第2工程と、前記固定環を前記調整距離だけ前記端面シールから離れる方向に戻す第3工程とを有するものである。
【0015】
また、請求項2に係る本発明のシャフトシール装置の組み付け方法は、前記第2工程においては、前記ハウジングに対して前記シャフトの軸方向に移動及び固定が自在なシール固定部品を介して、前記固定環を前記端面シール方向に押し込み、前記第3工程においては、前記シール固定部品を前記調整距離だけ前記端面シールから離れる方向に戻した後、固定側シール部品を前記端面シールから離れる方向で前記シール固定部品に当接するまで押し戻すことにより、前記固定環を前記調整距離だけ前記端面シールから離れる方向に戻すものである。
【0016】
また、請求項3に係る本発明のシャフトシール装置の組み付け方法は、前記第3工程においては、前記被密封流体が収容される空間内の圧力を上げることにより、前記摺動面に印加される圧力荷重により前記固定側シール部品を前記シール固定部品に当接するまで押し戻すものである。
【0017】
また、請求項4に係る本発明のシャフトシール装置の組み付け方法は、前記スペーサーは、前記シャフトの所定の基準面と前記固定環押し込み位置との距離に相当する長さを有し、前記端面シールの外周に嵌合する環状のスペーサーであって、前記第1工程においては、前記端面シール及び前記スペーサーを、順次、前記シャフトに嵌合させ、当該シャフトの前記基準面に突き当たるまで移動させることにより、あるいは、前記スペーサーを前記端面シールの外周に嵌合して一体化した前記端面シール及び前記スペーサーを、前記シャフトに嵌合させ、当該シャフトの前記基準面に突き当たるまで移動させることにより、前記端面シール及び前記スペーサーを前記シャフトに設置するものである。
【0018】
また、請求項5に係る本発明のシャフトシール装置の組み付け方法は、前記スペーサーは前記端面シールの一部を突出させることにより当該端面シールと一体的に形成されたものであって、前記第1工程においては、前記スペーサーが一体的に形成された前記端面シールを、前記シャフトに嵌合させ、当該シャフトの所定の基準面に突き当たるまで移動させることにより、前記端面シール及び前記スペーサーを前記シャフトに設置するものである。
【0019】
また、請求項6に係る本発明のシャフトシール装置は、シャフト及び当該シャフトを通過させるハウジングに設置されて、前記シャフトに沿って被密封流体をシールするシャフトシール装置であって、前記ハウジングに密封固定される固定環と、前記シャフトに密封固定され、前記固定環の摺動面に突出リップを摺動可能に密接させる端面シールと、前記シャフト上において前記固定環が組み付けられる正規位置から前記端面シール側に所定の調整距離だけ離れた固定環押し込み位置を規定するスペーサーとを有するものである。
【0020】
また、請求項7に係る本発明のシャフトシール装置は、前記スペーサーは、前記シャフトの所定の基準面と、前記固定環押し込み位置との距離に相当する長さを有し、前記端面シールの外周に嵌合する環状のスペーサーであることを特徴とするものである。
【0021】
また、請求項8に係る本発明のシャフトシール装置は、前記スペーサーは、前記端面シールと一体的に形成されていることを特徴とするものである。
【0022】
また、請求項9に係る本発明のシャフトシール装置は、前記スペーサーは、前記摺動面と対向する側の環状の端面に切り欠き部が形成されていることを特徴とするものである。
【0023】
また、請求項10に係る本発明のシャフトシール装置は、前記ハウジングに対して前記シャフトの軸方向に移動及び固定が自在なシール固定部品であって、当該シャフトシール装置の組み付け時に前記固定環を前記固定環押し込み位置まで前記ハウジングに押し込み、その後前記調整距離だけ前記端面シールから離れる方向に戻されて前記固定環の設置位置を規定するシール固定部品をさらに有するものである。
【0024】
また、請求項11に係る本発明のシャフトシール装置は、前記シール固定部品は、内側に係合切り欠き部を有することを特徴とするものである。
【0025】
また、請求項12に係る本発明のシャフトシール装置は、前記シール固定部品は、少なくとも前記シャフトの軸方向の両端部において、前記ハウジングの内面に嵌合されるように形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
請求項1に係る本発明のシャフトシール装置の組み付け方法によれば、固定環を一旦スペーサに突き当たる位置まで押し込むことにより、固定環の位置を、シャフト上の位置を基準として管理することができる。そして、その後、これを所定の微小な調整距離だけ戻して設置しているので、端面シールとの相対的な位置関係、すなわち端面シールとの間隔を、高精度に所望の間隔とすることができる。すなわち、簡単な工程により、シール取り付け長が高精度に設計基準値となるようにシャフトシール装置を組み付けることができる。
【0027】
また、請求項2に係る本発明のシャフトシール装置の組み付け方法によれば、固定環のスペーサーまでの押し込み、及び、固定環の所定の微小調整距離の押し戻しを、シール固定部品を移動させることにより実現することができる。すなわち、簡単な工程により、前述したような高精度なシャフトシール装置の組み付けが可能となる。
【0028】
また、請求項3に係る本発明のシャフトシール装置の組み付け方法によれば、装置内の圧力を上げることにより固定環を固定側シール部品方向に戻しているため、ハウジングに嵌合した固定環を、簡単な工程により適切に押し戻すことができる。
【0029】
また、請求項4に係る本発明のシャフトシール装置の組み付け方法によれば、スペーサーの長さを適切に選択することができ、これにより固定環の戻し量、位置調整量を適切な量とすることができるので、シール性能を適切に維持しながら、簡単かつわずかな調整作業により、前述したような高精度なシャフトシール装置の組み付けが可能となる。
【0030】
また、請求項5に係る本発明のシャフトシール装置の組み付け方法によれば、組み付ける部品の数が減るので工程を簡略化することができ、より一層効率よく簡単な工程により、前述したような高精度なシャフトシール装置の組み付けが可能となる。
【0031】
また、請求項6に係る本発明によれば、固定環と端面シールとの相対的な位置関係、すなわち固定環と端面シールとの間隔を、高精度に所望の間隔とすることができ、従って簡単な工程により、シール取り付け長が高精度に設計基準値となるように組み付けることのできるシャフトシール装置を提供することができる。
【0032】
また、請求項7に係る本発明によれば、スペーサーの長さを適切に選択することができ、これにより固定環の戻し量、位置調整量を適切な量とすることができるので、シール性能を適切に維持しながら、簡単かつわずかな調整作業により、前述したような高精度な組み付けが可能なシャフトシール装置を提供することができる。
【0033】
また、請求項8に係る本発明によれば、部品の数がより少なく、よってより簡単な工程で高精度に組み付けが可能なシャフトシール装置を提供することができる。
【0034】
また、請求項9に係る本発明によれば、摺動面の潤滑・冷却性能と強度のバランスが適切なシャフトシール装置を提供することができる。
【0035】
また、請求項10に係る本発明によれば、固定環のスペーサーまでの押し込み、及び、固定環の所定の微小調整距離の押し戻しを、シール固定部品の移動により、より簡単な工程で高精度に行うことのできるシャフトシール装置を提供することができる。
【0036】
また、請求項11に係る本発明によれば、シール固定部品の移動や、固定環の位置の検証を簡単に行うことのできるシャフトシール装置を提供することができる。
【0037】
また、請求項12に係る本発明によれば、シール固定部品により固定環を適切に、すなわち軸方向に垂直に適切に押し込むことができ、シール性能の高いシャフトシール装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。
図1は、本実施形態を示すシャフトシール装置100の半断面図である。
本実施形態のシャフトシール装置100は、回転装置のシャフト102に取り付けられて、シャフト102が通過するハウジング101内において、シャフト102に沿って被密封流体Qと大気空間Aとをシールするものである。
【0039】
図1に示すように、シャフトシール装置100は、回転装置のハウジング101に取り付けられる固定側シール部品120及び固定環103、及び、シャフト102に密接嵌合されて一体で回転するゴム端面シール104を有する。そしてシャフトシール装置100は、ゴム端面シール104に形成される突出リップ105が固定環103の端面たる摺動面103aに対して外径方向へ傾斜して密接し、これにより、突出リップ105の外周部に存在する被密封流体Qが、固定環103より内径側、背面側の大気空間Aへ漏洩するのが防止される構成となっている。
また、本実施形態のシャフトシール装置100は、さらに、スペーサー107及びシール固定部品108を有し、これらにより、固定環103及びゴム端面シール104を、設計基準値通りに厳密かつ容易にハウジング101及びシャフト102に組み付けることができる構成となっている。
【0040】
ゴム端面シール104は、図示のごとく、断面がL形で、内部に補強環109が埋設され、その周囲をゴム材が被覆した構成である。ゴム端面シール104の端部の、固定環103の摺動面103aと対向する位置には、断面がV形状に外方へ延在した突出リップ105が形成されている。突出リップ105は、固定環103の摺動面103aに向かって発散するように外方へ傾斜しており、突出リップ105の先端角部である密接面は、対向する摺動面103aに弾性接触してシールする。この突出リップ105は外周側から被密封流体の圧力を受けると傾斜角度を水平方向へ小さくなるように変形して摺動面103aに圧接するように構成されている。
【0041】
ゴム端面シール104の表面ゴム材の材質は、 被密封流体の種類により選定され、例えばニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(HNBR)、アクリルゴム(ACM)、シリコンゴム(VMQ)、フッ素ゴム(FKM)等が使用される。
また、ゴム端面シール104の補強環109は、例えば鉄、鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、エンジニアプラチック等により形成され、切削加工、プレス加工、又はモールド成形により製作される。
【0042】
固定環103は、固定側シール部品120を介してハウジング101に設置され、ゴム端面シール104側の端面がゴム端面シール104の突出リップ105が圧接される摺動面103aとして形成されている部材である。固定環103は、例えば超硬合金、炭化珪素、セラミックス、鋳鉄、エンジニアプラスチック等の、ゴム端面シール104の表面ゴム材よりも硬質の材料により形成される。なお、潤滑条件が厳しい回転装置においては、自己潤滑性に優れるカーボン、又はカーボンと硬質材の複合材を選定することも可能である。
【0043】
固定側シール部品120は、その内周部のシャフト102の端部側(ゴム端面シール104の遠位側)にシールリップ124を有するとともに、内周部のゴム端面シール104側に固定環103を保持する。
固定側シール部品120は、第1パッキン121、第1パッキン121を介してハウジング101に固定される円環状の補強ケース122、補強ケース122の内周側で補強ケース122とシールリップ124及び固定環103との間に介在される第2パッキン123、及び、シールリップ124を有する。
第1パッキン121は、補強ケース122とハウジング101との間から被密封流体が漏洩しないように、補強ケース122とハウジング101との間をシールしている。
また、第2パッキン123は、固定環103の外周面と補強ケース122の内周面との間を密封し、さらに、シールリップ124の固定環103側の端面と、補強ケース122の支持部126の端面との間を密封して被密封流体が漏洩しないようにしている。
【0044】
シールリップ124は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の低摩擦係数の性質を有する合成樹脂により形成されている。このシールリップ124は、成形時の原形がリング板に形成されて、さらにリング板を曲げ加工して外周が固定側シール部品120による保持部として形成されると共に、内周が軸方向を成す筒状に形成されたリップに構成されている。そして、このリップのシール接合面124aの先端内周面が、シャフト102とシャープに密接してシールする。
【0045】
スペーサー107は、シャフトシール装置100の組み付け時において、ハウジング101に装着される固定環103の位置をシャフト102の位置を基準として管理するための部材であって、最初にハウジング101に嵌合された固定環103の位置を、シャフト102のシャフト段差端面102aから所定の位置に規定するための部材である。
本実施形態において、スペーサー107は、ゴム端面シール104の外周に嵌合することで、ゴム端面シール104と一体的に組み立てられた構成である。
【0046】
図2に示すように、スペーサー107には、固定環103の摺動面103a側の端面に切り欠き107aが形成されている。すなわち、スペーサー107の摺動面103a側の端面は、切り欠き107a及び突起部107bが交互に形成された形状である。
スペーサー107の切り欠き107aは、固定環103の摺動面103aの潤滑・冷却を考えると、寸法は大きいこと、すなわち被密封流体Q及び潤滑液に対する開口面積が大きいことが好ましいが、反面、切り欠き107aの寸法を大きくし過ぎると強度が低下する。強度が低下すると、シール組み付け時にシャフト段差端面102aと固定環103の摺動面103aとに挟まれて圧縮される際に、容易に変形してしまい、シール取り付け長を規定する部品としての機能を果たせない。従って、スペーサー107の切り欠き107a及び突起部107bの形態は、摺動面の潤滑・冷却性能と強度のバランスを考慮して適切に決定する必要がある。
本実施形態において、スペーサー107の材質はステンレス鋼で、外径はφ21mmであり、その固定環103側端部周縁を8等配し、その各等配区間に幅2.7mmで高さ1.5mmの突起部107bを形成した構成である。
【0047】
なお、本実施形態において、スペーサー107はステンレス鋼により構成したが、その他の材料で構成してもよい。但し、前述したように、スペーサー107は圧縮強度に優れる材質である必要があり、従って、例えば鉄、炭素鋼、鋳鉄、アルミニウム、エンジニアプラチック等が使用され、切削加工、プレス加工又はモールド成形により製作される。
また、スペーサー107は、ゴム端面シール104と一体で回転するため、軽量であることが好ましい。そのためには、スペーサー107の本体に穴あけ加工を施したような構成であってもよい。
【0048】
シール固定部品108は、固定環103及び固定側シール部品120をシャフト102に沿ってハウジング101内に挿入するとともにその位置を規定するための部材であり、ハウジング101に対して軸方向の移動及び固定が自在に可能な構成の部材である。本実施形態においてシール固定部品108は、図1にその断面形状を示すように、両端部を除く外周面にねじ溝108aが形成されている円筒部材である。ハウジング101のシール固定部品108が挿入される部分の内周面にもねじ溝101aが形成されており、シール固定部品108は、これらのねじ溝101a及び108aを係合させてハウジング101に挿入されることにより、ハウジング101の内部をシャフト102に沿って移動可能であるとともに、所望の位置に精度よく固定される。
【0049】
シール固定部品108には、図3にその平面形状を示すように、その内径側に係合切り欠き108cが形成されている。シャフトシール100組み付けの際、係合切り欠き108cに図示せぬ専用工具を係合させて、シール固定部品108をハウジング101にねじ込んで、シール固定部品108をハウジング101に取り付ける。なお、本実施形態において係合切り欠き108cは3等配に形成されているが、4等配、6等配等、任意の等配で任意の形状でよい。
【0050】
また、この係合切り欠き108cは、生産管理工程においてシール固定部品108あるいは固定側シール部品120の位置を計測するためにも使用される。例えば計測器のプローブを係合切り欠き108cの隙間を通して固定側シール部品120の背面に突き当て、ハウジング101の任意の端面からシール固定部品108の固定端面108d(図1参照)までの距離L3を計測することで、シール取り付け位置(あるいはシール取り付け長L1)を確認することができる。なお、計測器としてはレーザー変位計を使用することも可能である。
【0051】
シール固定部品108の両端には、ハウジング101の内径に嵌合するように形成された嵌め合い部108b(図1参照)が設けられている。これにより、ハウジング101に対するシール固定部品108の幾何公差、例えば固定端面108dの直角度の管理が容易となる。
【0052】
このように、本実施形態のシャフトシール装置100は、ゴム端面シール104の組み付け基準面であるシャフト段差端面102aと固定環103との間にスペーサー107が具備され、また、固定環103及び固定側シール部品120が、ハウジング101に対して軸方向の移動及び固定が自在なシール固定部品108により固定される構成となっている。
そして、そのスペーサー107の軸方向の寸法L2は、シール取り付け長L1よりも若干小さく形成してある。
なお、シール取り付け長L1は、回転装置に対してシャフトシール装置100を正規の位置に取り付けた状態において、固定環103の摺動面103aからシャフト段差端面102aまでの軸方向の寸法である。
【0053】
次に、本発明に係るシャフトシール装置100の組み付け方法について説明する。
まず、図4に示すように、スペーサー107をゴム端面シール104の外周に嵌合させて一体化する。そして、シャフト102とハウジング101の組み立てが完了した回転装置に対して、一体化されたゴム端面シール104とスペーサー107を、圧入治具を用いて図示のごとくシャフト102の軸端側からハウジング101内に挿入し、シャフト102に嵌合させると共にシャフト段差端面102aに突き当てる。
【0054】
次に、図5に示すように、固定環103及び固定側シール部品120を、シール固定部品108を介して、すなわちシール固定部品108をねじ込むことによりにより、ハウジング101に圧入し、固定環103の摺動面103aをスペーサー107の突起部107bに規定の荷重で突き当てる。なお、本実施形態において、固定環103及び固定側シール部品120の圧入荷重は、3.0kNとする。また、この圧入荷重は、シール固定部品108を締め付けるトルクにより管理する。
【0055】
なお、この状態において、固定環103の摺動面103aからシャフト段差端面102aまでの距離はスペーサー107の軸方向の寸法L2によって規定され、固定環103及びシール固定部品108は、正規の取り付け位置(シール取り付け長L1)よりも所定の微小距離(調整距離)だけシャフト段差端面102a寄りに位置することになる。
なお、この時には、スペーサー107の圧縮変形の量(固定環103を3.0kNで圧入した場合、本実施形態のスペーサー107は0.2mm変形される)をも考慮して、摺動面103aとシャフト段差端面102aとの距離L2を規定される。
また、これにより、ゴム端面シール104の突出リップ105も、通常の状態よりも圧縮変形されている。
【0056】
続いて、図6に示すように、シール固定部品108をシャフト102の軸端方向に規定の距離(調整距離)分戻して、シール固定部品108を正規の取り付け位置にセットする。前述したように、シール固定部品108とハウジング101とはねじにより係合されているので、シール固定部品108を回転させることにより、その位置を微調整することができ、これによりシール固定部品108を所定の微小距離(調整距離)戻して正規位置にセットする。本実施形態においては、シール固定部品108を0.6mmだけ戻す。また、その戻し量は、実際の作業においてはねじの回転数に置き換えることで管理する。
なお、シール固定部品108を戻した時点では、固定環103は固定側シール部品120を介してハウジング101に嵌合保持されているので、スペーサー107の突起部107bに突き当たった位置に留まったままである。
【0057】
そして最後に、図7に示すように、回転装置の機内圧力を所定の圧力まで上げ、固定環103の摺動面103aにかかる圧力荷重により固定側シール部品120をシャフト102の軸端方向に押し戻し、シール固定部品108の固定端面108dに当接させる。これにより、固定環103は正規の取り付け位置にセットされる。なお、固定環103を軸端側に戻すための機内圧力は、回転装置の仕様圧力(耐圧)以下であることが望ましい。本実施形態においては、前述の機内圧力は10.0MPaであり、回転装置の仕様圧力(耐圧)以下である。なお、固定環103の外径を大きくして受圧面積を拡大することで、固定環103を軸端側に戻すために必要な機内圧力を低減することができ、固定環103の形状を適切に設計することで、回転装置の仕様圧力以下で適切に固定環103が戻される圧力を規定することができる。
本実施形態においては、シール固定部品108を0.6mmだけ戻したが、スペーサー107の0.2mmの変形も戻るので、固定環103の摺動面103aとスペーサー107の突起部107bの先端との間は、0.4mmとなる。
【0058】
このように、本実施形態のシャフトシール装置100の組み付け方法によれば、シャフトシール装置100の固定環103及びゴム端面シール104のシール取り付け長L1を設計基準値通りに厳密かつ容易に管理でき、シールの密封性能及び信頼性を大幅に向上させることができる。
すなわち、本発明に係るシャフトシール装置100では、ゴム端面シール104及び固定環103の取り付け基準が、共にシャフト段差端面102aに統一されていることから、ハウジング101と固定環103との相対位置、及びハウジング101とシャフト102の相対位置を管理する必要がない。換言すると、ゴム端面シール104及び固定環103のシール取り付け長L1が、回転装置のハウジング101とシャフト102との取り合い寸法の公差(寸法のばらつき)に影響されないと言える。従って、従来技術のように回転装置のハウジング901とシャフト902(図9参照)との取り合い寸法(相対位置)を予め計測する必要がなく、また、前述寸法の設計基準値との差異を修正するために、例えばシム、金属ワッシャー等の別部品を使用する必要もない。
【0059】
なお、本実施形態は本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を何ら限定するものではない。本実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含み、また任意好適な種々の改変が可能である。
【0060】
例えば、前述した実施形態においてスペーサー107は、ゴム端面シール104の外周に嵌合されてゴム端面シール104と一体的な構成とされてシャフト102に装着された。しかしながら、そもそもスペーサーをゴム端面シールと一体的に形成してもよい。そのような構成のゴム端面シール及びスペーサーの構成を有するシャフトシールを図8に示す。
【0061】
図8に示すシャフトシール200において、ゴム端面シール204は、固定環103の摺動面103aに対向する端面(突出リップ205が形成されている側の端面)の周縁部が、固定環103の方向に突出した構成とされ、この突出部207がスペーサー107の作用を有する構成となっている。すなわち、このような構成において、ゴム端面シール204の、突出部207の先端までの長さL2がスペーサー107の長さと同じになるように構成され、組み付け工程においては、固定環103が、その摺動面103aが突出部207に突き当たるまでシャフト102に沿って挿入され、その後所定の微小距離引き戻されて正規の位置に設置される。
【0062】
図8に示すゴム端面シール204の周縁の突出部207は、ゴム端面シール204に内在される補強環209をこのような突出した形状にプレス加工し、この補強環209に沿ってゴム材210を形成されることにより形成される。この際、図示のごとく、突出部207の先端のゴム207aの肉厚は他の部分と比べて十分に薄く形成する。このように構成しておくことにより、組み付け工程において、ゴム端面シール204が固定環103により軸方向に圧縮される際のゴム端面シール204の軸方向寸法L2の変化量を抑えることができ、正確に固定環103及びゴム端面シール204を組み付けることができる。
【0063】
なお、組み付け工程において固定環103によりゴム端面シール204が圧縮される際の突出部207の変形を考慮して、ゴム端面シール204の突出部207までの長さL2を設定しておくようにしてもよい。
なお、このような構成のゴム端面シール204においても、その突出部207に、図2に示した本実施形態のスペーサー107のような摺動面103aの潤滑及び冷却を目的とする切り欠き107aを設けることもできる。
【0064】
また、前述した実施形態においては、ゴム端面シール104側、すなわちシャフト102側にスペーサー107を設けた構成であったが、固定環103側、すなわちハウジング101側にスペーサーを設けるような構成であってもよい。その場合、そのスペーサーは、固定環103に別部材たるスペーサーが装着されて構成されてもよいし、固定環103の一部(例えば、ゴム端面シールの周縁に対向する周縁部)を突出させて固定環103と一体的に構成されてもよい。
【0065】
また、前述した実施形態においては、固定環103の摺動面103aの潤滑及び冷却のために、スペーサー107に切り欠き107aを設けた。しかしながら、固定環103の摺動面103aに同様の切り欠き、溝、開口等を設けるようにしてもよい。
【産業上の利用分野】
【0066】
本発明のシャフトシール装置及びその組み付け方法は、空調機用の圧縮機、ポンプ、原動機等の回転装置に好適に適用可能である。また、ハウジングとシャフトとの間の被密封流体をシールする装置であれば、任意の装置に対して適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、本発明の一実施形態のシャフトシール装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、図1に示したシャフトシール装置のスペーサーの構造を示す図である。
【図3】図3は、図1に示したシャフトシール装置のシール固定部品の構造を示す図である。
【図4】図4は、図1に示したシャフトシール装置の組み付け方法を説明するための第1の図である。
【図5】図5は、図1に示したシャフトシール装置の組み付け方法を説明するための第2の図である。
【図6】図6は、図1に示したシャフトシール装置の組み付け方法を説明するための第3の図である。
【図7】図7は、図1に示したシャフトシール装置の組み付け方法を説明するための第4の図である。
【図8】図8は、本発明に係るシャフトシール装置のゴム端面シール及びスペーサーの他の実施形態を示す図である。
【図9】図9は、従来のシャフトシール装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
100…シャフトシール装置
101…ハウジング
102…シャフト
103…固定環
104…ゴム端面シール
105…突出リップ
107…スペーサー
109…補強環
108…シール固定部品
120…固定側シール部品
121…第1パッキン
122…補強ケース
123…第2パッキン
124…シールリップ
125,126…支持部
200…シャフトシール装置
204…ゴム端面シール
205…突出リップ
207…突出部
209…補強環
210…ゴム材
900…端面リップシール(シャフトシール装置)
901…ハウジング
902…シャフト
903…固定環(固定側密封環)
904…ゴム端面シール
905…突出リップ
906…固定側シール
907,908…パッキン
909…補強ケース
910…シールリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトが通過するハウジングに固定される固定環と、前記シャフトに固定される端面シールとを有し、前記固定環の摺動面に前記端面シールの突出リップを摺動可能に密接させることにより前記シャフトに沿って被密封流体をシールするシャフトシール装置の組み付け方法であって、
前記端面シールを前記シャフトの所定位置に設置するとともに、当該シャフト上において前記固定環が組み付けられる正規位置から前記端面シール側に所定の調整距離だけ離れた固定環押し込み位置を規定するスペーサーを前記シャフトに設置する第1工程と、
前記固定環を前記ハウジングに挿入し、前記固定環の摺動面が前記スペーサーに突き当たるまで前記固定環を前記端面シール方向に押し込む第2工程と、
前記固定環を前記調整距離だけ前記端面シールから離れる方向に戻す第3工程と
を有するシャフトシール装置の組み付け方法。
【請求項2】
前記第2工程においては、前記ハウジングに対して前記シャフトの軸方向に移動及び固定が自在なシール固定部品を介して、前記固定環を前記端面シール方向に押し込み、
前記第3工程においては、前記シール固定部品を前記調整距離だけ前記端面シールから離れる方向に戻した後、固定側シール部品を前記端面シールから離れる方向で前記シール固定部品に当接するまで押し戻すことにより、前記固定環を前記調整距離だけ前記端面シールから離れる方向に戻す
ことを特徴とする請求項1に記載のシャフトシール装置の組み付け方法。
【請求項3】
前記第3工程においては、前記被密封流体が収容される空間内の圧力を上げることにより、前記摺動面に印加される圧力荷重により前記固定側シール部品を前記シール固定部品に当接するまで押し戻すことを特徴とする請求項2に記載のシャフトシール装置の組み付け方法。
【請求項4】
前記スペーサーは、前記シャフトの所定の基準面と前記固定環押し込み位置との距離に相当する長さを有し、前記端面シールの外周に嵌合する環状のスペーサーであって、
前記第1工程においては、
前記端面シール及び前記スペーサーを、順次、前記シャフトに嵌合させ、当該シャフトの前記基準面に突き当たるまで移動させることにより、あるいは、
前記スペーサーを前記端面シールの外周に嵌合して一体化した前記端面シール及び前記スペーサーを、前記シャフトに嵌合させ、当該シャフトの前記基準面に突き当たるまで移動させることにより、
前記端面シール及び前記スペーサーを前記シャフトに設置することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシャフトシール装置の組み付け方法。
【請求項5】
前記スペーサーは前記端面シールの一部を突出させることにより当該端面シールと一体的に形成されたものであって、
前記第1工程においては、前記スペーサーが一体的に形成された前記端面シールを、前記シャフトに嵌合させ、当該シャフトの所定の基準面に突き当たるまで移動させることにより、前記端面シール及び前記スペーサーを前記シャフトに設置することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシャフトシール装置の組み付け方法。
【請求項6】
シャフト及び当該シャフトを通過させるハウジングに設置されて、前記シャフトに沿って被密封流体をシールするシャフトシール装置であって、
前記ハウジングに密封固定される固定環と、
前記シャフトに密封固定され、前記固定環の摺動面に突出リップを摺動可能に密接させる端面シールと、
前記シャフト上において前記固定環が組み付けられる正規位置から前記端面シール側に所定の調整距離だけ離れた固定環押し込み位置を規定するスペーサーと
を有することを特徴とするシャフトシール装置。
【請求項7】
前記スペーサーは、前記シャフトの所定の基準面と、前記固定環押し込み位置との距離に相当する長さを有し、前記端面シールの外周に嵌合する環状のスペーサーであることを特徴とする請求項6に記載のシャフトシール装置。
【請求項8】
前記スペーサーは、前記端面シールと一体的に形成されていることを特徴とする請求項6に記載のシャフトシール装置。
【請求項9】
前記スペーサーは、前記摺動面と対向する側の環状の端面に切り欠き部が形成されていることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のシャフトシール装置。
【請求項10】
前記ハウジングに対して前記シャフトの軸方向に移動及び固定が自在なシール固定部品であって、当該シャフトシール装置の組み付け時に前記固定環を前記固定環押し込み位置まで前記ハウジングに押し込み、その後前記調整距離だけ前記端面シールから離れる方向に戻されて前記固定環の設置位置を規定するシール固定部品
をさらに有することを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載のシャフトシール装置。
【請求項11】
前記シール固定部品は、内側に係合切り欠き部を有することを特徴とする請求項10に記載のシャフトシール装置。
【請求項12】
前記シール固定部品は、少なくとも前記シャフトの軸方向の両端部において、前記ハウジングの内面に嵌合されるように形成されていることを特徴とする請求項10又は11に記載のシャフトシール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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