説明

シャフトドライブ駆動式自動二輪車およびギアハウジングのセット方法

【課題】小サイズ化、軽量化に適するギアハウジングを備えたシャフトドライブ駆動式自動二輪車を提供する。
【解決手段】車体フレームに連結されるアーム部材18と、ドライブシャフト42に連結される駆動ギア44と、前記駆動ギアと噛み合って動力を後輪に伝える伝達ギア35と、前記駆動ギアと伝達ギアとが相互に噛合した状態で配置されるギアハウジング30と、前記アーム部材及び/又は前記ギアハウジングに支持される車軸22と、前記車軸に回転可能に取り付けられる後輪20とを備え、前記伝達ギアは前記車軸を中心として回転可能に後輪に取り付けられており、前記ギアハウジングは前記伝達ギアを回転可能に支持する外方軸受37を備えており、その軸受は前記駆動ギアに近接した位置であって該駆動ギアの側端よりも車体側面側外方に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトドライブ機構を備えたシャフトドライブ駆動式自動二輪車に関し、詳しくは、シャフトドライブ機構を構成するギアハウジングとその組立てならびにセット方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シャフトドライブ駆動式の自動二輪車では、後輪(駆動輪)の一方の側面にギアハウジング(ギアボックス又はギアケースともいう。)が構築されている。ギアハウジングは、車体の動力源(エンジン、モータ等)に繋がるドライブシャフトの先端部に連結した駆動ギア(一般的には小径ベベルギア)と、動力をドライブシャフトから後輪に伝える伝達ギア(一般的には大径ベベルギア)とを噛合した状態で収容する部材であり、これらギアを回転可能に支持する軸受を備えている。
例えば、特許文献1には、従来の典型的なシャフトドライブ機構とギアハウジング(ギアケース)が記載されている。
【0003】
【特許文献1】実開昭62−127092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動二輪車の運動性能や操縦性を向上させるためには、車両重心付近に重量物をまとめ、更には前輪荷重割合を高めることが好ましい。シャフトドライブ駆動式の二輪車でも事情は同じであり、そのためにはギアハウジングの軽量化やスモールサイズ化が好ましいが、安易な軽量化、小サイズ化はシャフトドライブ機構自体の強度、及び信頼性の低下を招くため好ましくない。
【0005】
そこで本発明は、上記自動二輪車の性能向上に資するべく創出されたものであり、シャフトドライブ機構の信頼性を損なうことなく小サイズ化(好ましくはさらに軽量化)を実現し得る構成のギアハウジングを提供することを目的の一つとする。また、他の一つの目的は、そのようなギアハウジングを備えた自動二輪車を提供することである。また、他の一つの目的は、そのようなギアハウジングを組立てる方法、さらに組み立てたギアハウジングを所定位置にセットする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため本発明により提供される自動二輪車は、シャフトドライブ機構を備える自動二輪車である。そして、車体フレームと、前記車体フレームに連結されるアーム部材と、動力源(典型的にはエンジン及び/又はモータ)からの動力を伝達するドライブシャフトと、前記ドライブシャフトに連結される駆動ギアと、前記駆動ギアと噛み合って動力を後輪に伝える伝達ギアと、前記駆動ギアと伝達ギアとが相互に噛合した状態でその内部に配置されるギアハウジングと、前記アーム部材及び/又は前記ギアハウジングに支持される車軸と、前記車軸に回転可能に取り付けられる後輪とを備える。
好ましくは、前記伝達ギアは、前記車軸を中心として回転可能に後輪に取り付けられている。また、前記ギアハウジングは、前記伝達ギアを回転可能に支持する第1の軸受を備えており、その第1の軸受は前記駆動ギアに近接した位置であって、該駆動ギアの側端よりも車体側面側外方に配置されていることを特徴とする。
【0007】
このような構成のギアハウジングでは、上記第1の軸受(ベアリング)が、駆動ギアよりも車体側面(典型的には後輪側面方向であってギアハウジングの設けられている側の側面)の外方に配置される。これにより、駆動ギアの先端と伝達ギアを支持する当該第1の軸受(以下「外方軸受」ともいう。)との接触を防止しつつ、当該第1の軸受(外方軸受)と駆動ギアとの車両前後方向の距離を縮めることができる。
この距離を縮めることによって、軸受それ自体の機能を損なうことなく、ギアハウジングのサイズを小さくすることができる。また、小径化は軽量化にも繋がり、車両中央部へのマス集中及び前輪荷重の増大に寄与することができる。従って、例えば図1で示されるV型エンジン搭載自動二輪車のように、前輪荷重が軽くなりがちな構成の自動二輪車への本発明のギアハウジングの適用は好ましい。
【0008】
好ましい一態様では、前記駆動ギアは、その歯当たり面の先端を越える位置で軸受(以下「第3の軸受」ともいう。)を介してギアハウジングに支持されており、前記第1の軸受(外方軸受)は、当該第3の軸受に対し車両前後方向で重複(オーバーラップ)させて配置されている。
このような配置により、ギアハウジングの更なる小サイズ化、軽量化を実現することができる。
【0009】
好ましい他の一態様では、前記伝達ギアにおける前記駆動ギアと噛合して回転する歯当たり面の背面に近接する位置に、該伝達ギアを回転可能に支持する軸受(以下「第2の軸受」ともいう。)が更に配置されている。
このような位置に軸受を配置し且つ伝達ギアを当該第2の軸受にて回転可能に支持することによって、当該伝達ギアに発生するスラスト力(軸方向力)を当該軸受で受けることができる。これにより、当該伝達ギアの回転軸方向への振れやずれを抑え、信頼性の高いシャフトドライブ機構を実現することができる。
【0010】
特に好ましくは、前記第1の軸受及び/又は第2の軸受はボールベアリングである。かかる構成によると、伝達ギアに発生するスラスト力を当該軸受で確実に受けることができる。
【0011】
好ましい他の一態様では、前記ギアハウジングは前記第1の軸受を車体側面外方から車軸に沿って車幅中心側に押圧する軸受押圧部材を備える。
このような軸受押圧部材を備えることによって、外方軸受の車体側面外方からの配置と固定、延いてはギアハウジングの構築が容易に行われる。
【0012】
また、特に好ましい一態様では、前記車軸の一端には雄ねじが形成されており、前記軸受押圧部材には、前記車軸の雄ねじが螺合する雌ねじが形成されている。
このような構成の軸受押圧部材と車軸が使用されることにより、外方軸受の固定と車軸(即ち後輪を貫通している状態のもの)及び後輪の組付けと固定を同時に行うことができる。また、車軸固定のための部材(例えば固定用ナット)を省くことができるため、ギアハウジングの小サイズ化、軽量化をさらに向上させることができる。
【0013】
また、ここで開示される技術によると、従来よりも小サイズ化(さらに好ましくは軽量化)を実現したシャフトドライブ機構のギアハウジングを組立て、そして当該ギアハウジングを所定の位置にセットすることができる。
従って、本発明は他の側面として、ドライブシャフトに連結される駆動ギアと該駆動ギアから伝達される動力を後輪に伝える伝達ギアとが相互に噛合された状態で配置されるギアハウジングを組立て、セットする方法を提供する。
ここで開示されるギアハウジングのセット方法は、前記駆動ギアと伝達ギアとを相互に噛合させた状態でギアハウジング構成部材(一つとは限らず複数の構成部材であり得る)に組み付けてギアハウジングを組立てる第1の工程(即ち本発明によって提供されるギアハウジング組立て方法に相当する)と、車軸を中心に前記伝達ギアが回転可能なように、前記ギアハウジング構成部材に後輪を取り付ける第2の工程と、車軸を中心に前記伝達ギアが回転可能なように、前記ギアハウジング構成部材に後輪が取り付けられた組立て体に、該車軸を取り付ける第3の工程とを包含する。
そして、前記第1の工程は、前記伝達ギアが第1の軸受(外方軸受)によって回転可能に支持されるように、且つ、該第1の軸受が前記駆動ギアに近接した位置であって該駆動ギアの側端よりも車体側面側外方に配置されるように、該第1の軸受(外方軸受)を含むギアハウジング構成部材(一つとは限らず複数の構成部材であり得る)を車体側面方向から組み付けることを含む。
ここで開示されるギアハウジングセット方法によると、軸受それ自体の機能を損なうことなく、小径化及び軽量化に適するギアハウジングを組み立て、所定位置にセットすることができる。このため、車両中央部へのマス集中及び前輪荷重の増大に寄与することができる。例えば図1で示されるV型エンジン搭載自動二輪車に好適なギアハウジングを組立てる(製造する)ことができる。
【0014】
ここで開示されるギアハウジングセット方法の好適な一態様では、前記第1の工程は、前記駆動ギアを歯当たり面の先端を越える位置で軸受(第3の軸受)を介してギアハウジングに支持し、前記第1の軸受(外方軸受)を該第3の軸受に対し車両前後方向で重複(オーバーラップ)させて配置することを含む。
この態様の方法によると、より小サイズのギアハウジングを組立て、セットすることができる。
【0015】
ここで開示されるギアハウジングセット方法の好適な他の一態様では、前記第1の工程は、前記伝達ギアにおける前記駆動ギアと噛合して回転する歯当たり面の背面に近接する位置に、該伝達ギアを回転可能に支持する軸受(第2の軸受)を配置することを含む。
この態様の方法によると、当該伝達ギアの回転軸方向への振れやずれを抑え、より高い信頼性のギアハウジング(延いてはシャフトドライブ機構)を形成することができる。
【0016】
ここで開示されるギアハウジングセット方法の好適な他の一態様では、車体側面外方から軸受押圧部材をギアハウジングに組み付けることにより、前記第1の軸受(外方軸受)を前記車軸に沿って車幅中心側に押圧することを含む。
この態様の方法によると、軸受押圧部材を使用することによって、外方軸受の車体側面外方からの配置と所望する部位での固定を容易に行うことができる。延いては、ギアハウジングの組立て(構築)とセットが容易となる。
【0017】
ここで開示されるギアハウジングセット方法の特に好適な一態様では、前記車軸の一端には雄ねじが形成されており、前記軸受押圧部材には雌ねじが形成されており、前記押圧とともに後輪に装着された前記車軸の雄ねじを前記雌ねじに螺合させることを含む。
この態様の方法によると、上記構成の軸受押圧部材と車軸を使用することによって、外方軸受の固定と車軸及び後輪の組付けと固定を同時に行うことができる。このため、ギアハウジングの組立て及びセットと後輪の組付け(即ちシャフトドライブ機構を備えた自動二輪車の足回り)を効率よく構築することができる。また、車軸固定のための部材(例えば固定用ナット)を省くことができるため、ギアハウジングの小サイズ化、軽量化をさらに向上させ、製造コスト削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施する車両として好適な自動二輪車とは、モーターサイクルの意味であり、原動機付自転車(モーターバイク)、スクーターを含む。車体を傾動させて旋回可能な車両(いわゆる鞍乗り型車両)はここでいう自動二輪車に包含され得る。前輪および後輪の少なくとも一方を2輪以上にして、単にタイヤの数のカウントで三輪車・四輪車(またはそれ以上)と呼ばれるものも本発明の実施に支障がない限り、ここでいう「自動二輪車」に包含され得る。
以下、本発明の好適な実施形態を図面を参照しつつ説明するが、本発明をかかる具体例に限定することを意図したものではない。本実施形態に係る自動二輪車は、以下に説明するシャフトドライブ機構(特にギアハウジングの構成)以外の構成に関しては従来の自動二輪車と同様でよく、そのような従来技術の詳細な説明は省略する。
【0019】
図1は、シャフトドライブ機構を備えた自動二輪車10の側面図である。この図に示すように、本実施形態に係る自動二輪車10は、大まかにいって、車体フレーム11に枢支されたフロントフォーク12と、該フロントフォーク12の下端に装備された前輪13と、前輪13の後方に装備されたエンジンユニット14と、エンジンユニット14の下方に配設される排気装置17と、車体フレーム11に連結するアーム部材18と、該アーム部材18に付設されるギアハウジング30と、アーム部材18及びギアハウジング30に取り付けられる後輪20とを備える。
図1のII−II線断面図である図2に示すように、アーム部材18は、後輪20を挟むように左右両側面に配設されており(以下、「左アーム部材18A」及び「右アーム部材18B」という。)、それらのうち左アーム部材18Aには、後述するギアハウジング30を含むシャフトドライブ機構が設けられている。
なお、本実施形態に係る自動二輪車10には、一般的な自動二輪車と同様、燃料タンク、シート、ヘッドライトその他のランプ類、各種計器類、風防等が付設されるが、これらは本発明の説明に全く必要がないため、図示は省略する。
【0020】
図示されるように、本実施形態に係るエンジンユニット14は、いわゆるV型多気筒エンジン14Aを搭載して成るユニットである。このユニット14の下部には、従来の自動二輪車と同様、クランクケース15及びミッションケース16が設けられている。V型エンジン14A(動力源)で生じた動力は、クランクケース15内のクランク軸(図示せず)に伝達される。ミッションケース16内には、図示しない変速装置を構成する変速ギア群が装備されており、クランク軸からエンジン動力が伝達される。かかる変速装置から更に動力が図示しない出力軸に伝達され、ユニバーサルジョイント部を介して本実施形態に係るシャフトドライブ機構のドライブシャフト42に伝達される。
図2に示すように、かかるドライブシャフト42は、左アーム部材18Aの内部に収容される。ドライブシャフト42の先端にはユニバーサルジョイント部42が設けられており、その先端には当該ユニバーサルジョイント部42を介してベベルギアである駆動ギア44が連結される。図1及び図2に示すように、左アーム部材18Aの後端には、本実施形態に係るギアハウジング30が付設される。ギアハウジング30の詳細な構成については後述する。
【0021】
一方、左右両アーム部材18A,18Bの間には車軸22が支持される。この車軸22には、回転可能に後輪20が取り付けられる。後輪20は、車軸22を通す貫通孔25Aを構成するハブ25及びその周囲に円盤状に拡がるスポーク(キャスト)23と、その外周縁部であるリム27と、当該リム27に取り付けられたタイヤ21と、ブレーキ用ディスク29とを備える。
このハブ25とスポーク23により構成される貫通孔25Aの内壁には2つの軸受(ボールベアリング26,ニードルベアリング24)が装着されており、当該貫通孔25Aにはパイプ状の車軸22が挿入される。すなわち、後輪20は回転可能に車軸22に取り付けられる。また、車軸22にはディスクブレーキユニット60が付設される。
また、図2及び図3に示すように、スポーク23に隣接して環状のベベルギアである伝達ギア35がハブ25の一部(ボス部材25B)にスプライン嵌合されることによってハブ25周縁に配置される。これにより、伝達ギア35は車軸22を中心軸(但し本実施形態では車軸22は回転しない)として後輪20と一体に回転し得、駆動ギア44からの動力を後輪20にダイレクトに伝達することができる。
図示されるように、この伝達ギア35には、歯当たり面35Aが形成されている本体部分から軸方向に延伸するボス部35Bを備える。ボス部35Bの先端は、後述するギアハウジング30の外方軸受(上記第1の軸受に相当するボールベアリング)37に回転可能に支持される。
【0022】
図2から図4に示すように、ギアハウジング30は、車体左側面に露出して視認されるハウジング本体部材(ギアハウジング構成部材)33と、当該本体部材33の車体側面側中央に形成された凹みに装着されるキャップ部材に相当する軸受押圧部材(ギアハウジング構成部材)32と、後輪に面する側(以下「裏面側」ともいう。)に配置される裏面側カバー部材に相当する軸受支持部材(ギアハウジング構成部材)34とを備える。
ハウジング本体部材33は中央に車軸22及びハブ25の一部を通し得る開口部が形成された環状部材であり、4本のボルト49によって左アーム部材18Aの後端に取り付けられる(図4参照)。また、図4に示すように、軸受支持部材(裏面側カバー部材)34はハウジング本体部材33に車体側面外方6本、裏面側2本、計8本のボルト39によって固定される、また、軸受押圧部材(キャップ部材)32はハウジング本体部材33に計6本のボルト48によって固定される。これらギアハウジング構成部材相互のボルト締着によってギアハウジング30が構成される。
【0023】
次に、後輪20及び車軸22の車体(アーム部材18)への取り付けと本実施形態に係るギアハウジング30の構成ならびに組立て及び所定位置へのセットの手順について併せて説明する。
図2及び図3に示すように、上記駆動ギア(ベベルギア)44の歯当たり面44Aと伝達ギア35の歯当たり面35Aとが図3の符号Xで示されるようにうまく噛み合う(噛合する)ようにしてこれらをハウジング本体部材33及び軸受支持部材34に組み付ける。
具体的には、図3に示すように、内側に軸受(上記第2の軸受に相当するボールベアリング)36が付設された軸受支持部材(裏面側カバー部材)34を車体内方(後輪側)から伝達ギア35と組み付ける。ここで、本実施形態に係る軸受支持部材(裏面側カバー部材)34には、歯当たり面35Aの背面に近接する位置に軸受36が配置されており、伝達ギア35は、その歯当たり面35Aの背面側で回転可能にギアハウジング30に支持される。このような位置に軸受(ボールベアリング)36を設けることによって、伝達ギア35に発生するスラスト力(軸方向力)を当該軸受(ボールベアリング)36で受けることができる。これにより、伝達ギア35の回転軸方向への振れやずれを抑え、信頼性の高いシャフトドライブ機構を実現することができる。
【0024】
一方、車体側面の外方からハウジング本体部材33を駆動ギア44及び伝達ギア35に組み付ける。ここでハウジング本体部材33の内側には、駆動ギア44を回転可能に支持するための2つの軸受(即ちボールベアリング46と上記第3の軸受に相当するニードルベアリング47)が付設されており、図示されるように、それら軸受46,47を介して駆動ギア44は歯当たり面44Aの先端を越える位置(第3の軸受:ニードルベアリング47)とギア基幹部位置(ボールベアリング46)の両方で、回転可能にギアハウジング30に支持される。
さらにハウジング本体部材33の表面側(開口部の内側)には、駆動ギア44に近接した位置であって駆動ギア44よりも車体側面外方に外方軸受(ボールベアリング37)が付設されており、図示されるように、伝達ギア35はボス部35B先端付近で当該軸受37を介して回転可能に支持される。また、本実施形態では、図示されるように、外方軸受(第1の軸受)37は該第3の軸受47に対し車両前後方向に重複する(オーバーラップする)ように配置されている。
このような位置に軸受(外方軸受)37を設けることによって、図示されるように、駆動ギア44の先端と当該軸受37との接触を防止しつつ、車両前後方向の当該軸受37と駆動ギア44との距離を縮められる。これにより、軸受(ボールベアリングが好ましい。)それ自体の機能を損なうことなく、アーム部材18Aに付設されるギアハウジング30のサイズを小さくし、軽量化を図ることができる。また、マス集中及び前輪荷重の増大に寄与することができる。
【0025】
而して、上述のように、各ギアハウジング構成部材33,34と伝達ギア35及び駆動ギア44とを組み付け、ハウジング本体部材33をアーム部材18にボルト49で固定し、さらにボルト39によってハウジング構成部材33,34を相互に固定することによってギアハウジング30が組立てられる。
そして、この組み付けた状態のハウジング本体部材33及び軸受支持部材34(即ちギアハウジング構成部材33,34)に車軸22を中心に伝達ギア35が回転可能なように後輪20を取り付ける。これにより、ギアハウジング30を介してドライブシャフト42(駆動ギア44を含む)と後輪20とが連結される。
【0026】
次いで、車軸22を貫通孔25Aに通す。車軸22の両端は、右アーム部材18Bの取付孔18Cとギアハウジング30に形成される取付孔31にそれぞれ固定される。その取付孔31に固定される側の車軸22の先端部側面には雄ねじ22Aが形成されている。
そして、ハウジング本体部材33の中央開口部を車体側面外方から塞ぐように軸受押圧部材(一つのハウジング構成部材であるキャップ部材)32を装着し、計6本のボルト48によって固定する。このとき、本実施形態に係る軸受押圧部材32の中央に形成されている車軸取付孔31の内壁には雌ねじ31Aが形成されており、相対する車軸22の雄ねじ22Aと螺合させることができる。これにより、車軸22を固定する器具を別途に使用することなく、車軸22を所定位置に容易に固定することができる。また、図示されるように、軸受押圧部材32によって、外方軸受37を軸方向に押圧し、ハウジング本体部材33と当該軸受押圧部材32との間の所定位置で外方軸受37を確実に固定することができる。
【0027】
図1及び図4に示すように、ハウジング本体部材33の上部(車体装着時)には、ブリーザ機能付きギアオイル注入ポート部50が形成されている。図4に示すように、このポート部50は、ギアハウジング内にギアオイルを供給する供給路57と、該供給路57の開口部に開閉可能に取り付けられる開閉ボルト56と、そのボルト56の開口部に圧入された通気構造のブリーザ本体54とその上に通気を妨げない状態で被せられるブリーザキャップ52とから構成されている。かかる構成のブリーザ機能付きギアオイル注入ポート部50を設けたことにより、従来のようにギアオイル注入部とブリーザ部とを別々に設けなくてよい。このため、ギアハウジング30の構造がよりシンプルになり、加工費の削減に資する。また、ギアハウジング組立てに要する部品数を削減し、ギアハウジング組立てやメンテナンスに要する時間の短縮と労力低減を図ることができる。
また、図4に示すように、ハウジング本体部材33の下部(車体装着時)には、ハウジング30内からギアオイル等を排出するための図示しないドレン機構が設けられており、排出口の開閉を行うドレンボルト59が装着されている。
【0028】
以上、本発明の好適な一実施形態を図面を参照しつつ説明したが、本発明の範囲をかかる図面に記載した形態に限定するものではなく、本発明の目的・構成・効果を逸脱しない限りにおいて種々の変更例が包含され得る。
例えば、上記実施形態では、アーム部材内にドライブシャフトが配備されているがこの形態に限定されない。例えば、アーム部材とドライブシャフトとが別個独立に配置されてもよい。
また、上記実施形態では、ギアハウジングとアーム部材とが一体であるがこの形態に限定されない。例えば、アーム部材とギアハウジングとが別個独立に形成されてもよい。
また、ギアハウジングを構成する各部材の形状や数は、適用する自動二輪車のタイプや形態に応じて異なり得るため、特に限定されない。
また、上記実施形態の外方軸受では、特に好適な形態としてボールベアリングを採用しているがこの形態に限定されず、他の形態・種類の軸受でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、シャフトドライブ機構に含まれるギアハウジングの小サイズ化、軽量化に資する発明であるから、シャフトドライブ機構を備えた自動二輪車に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】一実施形態に係る自動二輪車を示す側面図である。
【図2】図1におけるII−II線に沿う断面図である。
【図3】一実施形態に係るギアハウジングの構成を示す図2の要部拡大図である。
【図4】一実施形態に係るギアハウジングの表面の形態を示す正面図である。
【図5】ギアハウジングに装備されるブリーザ機能付きギアオイル注入ポート部の構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
10 自動二輪車
11 車体フレーム
14 エンジンユニット
15 クランクケース
16 ミッションケース
18 アーム部材(18A 左アーム部材、18B 右アーム部材)
20 後輪
22 車軸
22A 雄ねじ
25 ハブ
30 ギアハウジング
31 車軸取付孔
32 軸受押圧部材(キャップ部材)
32A 雌ねじ
33 ハウジング本体部材
34 軸受支持部材(裏面側カバー部材)
35 伝達ギア
35A 歯当たり面
35B ボス部
36,37,46,47 軸受
42 ドライブシャフト
44 駆動ギア
44A 歯当たり面
50 ブリーザ機能付きギアオイル注入ポート部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームに連結されるアーム部材と、
動力源からの動力を伝達するドライブシャフトと、
前記ドライブシャフトに連結される駆動ギアと、
前記駆動ギアと噛み合って動力を後輪に伝える伝達ギアと、
前記駆動ギアと伝達ギアとが相互に噛合した状態でその内部に配置されるギアハウジングと、
前記アーム部材及び/又は前記ギアハウジングに支持される車軸と、
前記車軸に回転可能に取り付けられる後輪と、
を備えた自動二輪車であって、
前記伝達ギアは、前記車軸を中心として回転可能に後輪に取り付けられており、
前記ギアハウジングは、前記伝達ギアを回転可能に支持する第1の軸受を備えており、
前記第1の軸受は前記駆動ギアに近接した位置であって、該駆動ギアの側端よりも車体側面側外方に配置されている、自動二輪車。
【請求項2】
前記駆動ギアは、歯当たり面の先端を越える位置で第3の軸受を介してギアハウジングに支持されており、
前記第1の軸受は、第3の軸受に対し車両前後方向で重複させて配置されている、請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記第1の軸受はボールベアリングである、請求項1又は2に記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記伝達ギアにおける前記駆動ギアと噛合して回転する歯当たり面の背面に近接する位置に、該伝達ギアを回転可能に支持する第2の軸受が更に配置されている、請求項1〜3のいずれかに記載の自動二輪車。
【請求項5】
前記第2の軸受はボールベアリングである、請求項4に記載の自動二輪車。
【請求項6】
前記ギアハウジングは前記第1の軸受を車体側面外方から車軸に沿って車幅中心側に押圧する軸受押圧部材を備える、請求項1〜5のいずれかに記載の自動二輪車。
【請求項7】
前記車軸の一端には雄ねじが形成されており、
前記軸受押圧部材には、前記車軸の雄ねじが螺合する雌ねじが形成されている、請求項6に記載の自動二輪車。
【請求項8】
ドライブシャフトに連結される駆動ギアと該駆動ギアから伝達される動力を後輪に伝える伝達ギアとが相互に噛合された状態で配置されるギアハウジングのセット方法であって、
前記駆動ギアと伝達ギアとを相互に噛合させた状態でギアハウジング構成部材に組み付けてギアハウジングを組立てる第1の工程と、
車軸を中心に前記伝達ギアが回転可能なように、前記ギアハウジング構成部材に後輪を取り付ける第2の工程と、
車軸を中心に前記伝達ギアが回転可能なように、前記ギアハウジング構成部材に後輪が取り付けられた組立て体に、該車軸を取り付ける第3の工程とを包含し、
前記第1の工程は、
前記伝達ギアが第1の軸受によって回転可能に支持されるように、且つ、該第1の軸受が前記駆動ギアに近接した位置であって該駆動ギアの側端よりも車体側面側外方に配置されるように、該第1の軸受を含むギアハウジング構成部材を車体側面方向から組み付けることを含む、ギアハウジングのセット方法。
【請求項9】
前記第1の工程は、
前記駆動ギアを歯当たり面の先端を越える位置で第3の軸受を介してギアハウジングに支持し、前記第1の軸受を該第3の軸受に対し車両前後方向で重複させて配置することを含む、請求項8に記載のギアハウジングセット方法。
【請求項10】
前記第1の工程は、
前記伝達ギアにおける前記駆動ギアと噛合して回転する歯当たり面の背面に近接する位置に、該伝達ギアを回転可能に支持する第2の軸受を配置することを含む、請求項8又は9に記載のギアハウジングセット方法。
【請求項11】
車体側面外方から軸受押圧部材をギアハウジングに組み付けることにより、前記第1の軸受を前記車軸に沿って車幅中心側に押圧することを含む、請求項8〜10のいずれかに記載のギアハウジングセット方法。
【請求項12】
前記車軸の一端には雄ねじが形成されており、前記軸受押圧部材には雌ねじが形成されており、
前記押圧とともに後輪に装着された前記車軸の雄ねじを前記雌ねじに螺合させることを含む、請求項11に記載のギアハウジングセット方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−106363(P2007−106363A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−301921(P2005−301921)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】