説明

シャフト抜け止め構造

【課題】簡単な構成で、安定した組立作業を行うことができるシャフト抜け止め構造を提供する。
【解決手段】シャフト12の周方向凹溝15に嵌合される環状形状体16を備え、シャフト12が被挿入体3の挿入孔3aに挿入された状態で、被挿入体3に設けられた嵌合部23に環状形状体が嵌合してシャフト12の抜けを規制するシャフト抜け防止構造である。環状形状体16は、一部が分断されてなる開口部17を有し、シャフト12の被挿入体3の挿入孔3aへの挿入時における縮径が可能とされる。シャフト12の周方向凹溝15に嵌合したシャフト挿入前での自由状態における最大偏心状態において、シャフト軸心と挿入孔軸心とを一致させた状態で、軸心方向から見て、環状形状体16の最外径部位が挿入孔の入口端縁の内径よりも内径側に位置する略三角形状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は等速自在継手の内輪に挿入されたシャフトの抜け防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の駆動系等に組み込む等速自在継手においては、ブーツ交換等の整備工数の簡素化を目的に、継手内部部品とシャフトとを分解可能に嵌合させた抜け止め構造が従来から採用されている。例えば固定式等速自在継手ではスプライン嵌合された内輪とシャフトが丸サークリップ(止め輪)で抜け止めされている。このタイプの抜止め構造の場合、丸サークリップは予めシャフトのサークリップ溝に装着される。内輪に対してサークリップ付きシャフトを組み込む時は、サークリップが内輪スプライン小径部を縮径状態で通過し、所定の位置にて拡径することにより、内輪を抜け止めする構造となっている。そして、シャフトを引き抜く際に内輪のサークリップと干渉する当接面に角度を設けて、サークリップとの干渉力の分力によりサークリップを縮径させて嵌合を外す仕組みにしている(特許文献1)。
【0003】
前述のようにサークリップが内輪スプライン小径部を縮径状態で通過可能とするためには、シャフトのサークリップ溝深さをサークリップの縮径を許容する深さに設定する必要がある。つまり、サークリップ自然径時の内径に対してサークリップ溝底径を小さく設定する必要がある。しかし、このようにサークリップ溝底径を小さく設定すると、シャフトにサークリップを装着した状態でサークリップがシャフト溝内で半径方向に位置ずれしやすくなる。
【0004】
図10は、サークリップSがシャフト71のサークリップ溝72内で位置ずれした場合の不具合を示す。この図10では、シャフト71が挿入される被挿入体としては、トリポード型等速自在継手のトラニオン73である。なお、トリポード型等速自在継手は、内周に軸方向に延びる3本のトラック溝を有し、各トラック溝の向かい合った側壁にローラ案内面を形成した外側継手部材と、半径方向に突出した3本の脚軸を有する前記トラニオン73と、各脚軸に回転自在に担持され外側継手部材のトラック溝内に収容されるローラとを備える。
【0005】
トラニオン73は、シャフト71が挿入される挿入孔74aを有するボス部74と、このボス部74の円周方向三等分位置から半径方向に突出した前記脚軸75とを備える。ボス部74の挿入孔74aには雌スプライン76が形成されるとともに、シャフト71の端部に雄スプライン77が形成さて、シャフト71の端部がボス部74の挿入孔74aに挿入されて、ボス部74側の雌スプライン76とシャフト71側の雄スプライン77とが嵌合する。
【0006】
この場合、シャフト抜け止め構造mによって、シャフト71の端部がボス部74の挿入孔74aに挿入された場合、シャフト71の抜けを規制する。シャフト抜け止め構造mは、シャフト71の雄スプライン77に設けられる周方向凹溝72と、この周方向凹溝72に嵌合するサークリップSとを備える。
【0007】
組立る場合、サークリップSをサークリップ溝72に嵌入し、この状態で、シャフト71を垂直に立てて、トラニオン73の挿入孔74aに挿入する。この際、自由状態でのサークリップSの外径寸法Dがトラニオン73の挿入孔74aの開口部端縁78の内径寸法D1よりも小さく設定される。このため、この嵌入(挿入)時において、図11(a)に示すように、サークリップSとシャフト71との軸心とが一致していれば、サークリップSの外径が、トラニオン73の開口部端縁78の内径よりも内径側に位置して、サークリップSが装着されているシャフト71をトラニオン73の挿入孔74aに嵌入(挿入)していくことができる。
【0008】
しかしながら、サークリップSの内径は周方向凹溝(サークリップ溝)72の底面径よりも大きく設定され、サークリップSは周方向凹溝72に遊嵌状に嵌合している。このため、シャフト挿入時には、図11(b)に示すように、サークリップSがシャフト軸心に対して偏心する場合がある。このように、偏心すれば、サークリップSの最外径部位80がトラニオン73の挿入孔74aの内径よりも外径側へ突出することになる。
【0009】
このように、サークリップSがシャフト71中心から偏ると、図10に示すように、サークリップSの外径(最外径部位)から下ろした垂線Vがトラニオン73の挿入孔74aの入口開口部(開口部端縁)78から外径側へはみ出す。この状態でシャフト71を挿入孔74aに挿入すると、サークリップSが挿入孔74aの入口開口部78の縁に噛み込んでシャフト71の挿入が不可能になることがある。
【0010】
このため、サークリップSが偏心した場合、別途サークリップSを治具等で縮径させて、この縮径状態を維持しながら、シャフト71をトラニオン73の挿入孔74aに挿入する必要が生じる。しかしながら、外側継手部材内部において、治具にてサークリップSを縮径させるスペースの確保が困難である。そこで、従来からサークリップ(止め輪)の偏心を防止する方法が種々提案されている(特許文献2〜特許文献4)。
【0011】
特許文献2に記載のものは、シャフト溝に弾性体を配置して、これによって、シャフト嵌入(挿入)前におけるクリップ(止め輪)のシャフト軸心に対する偏心を防止するものである。特許文献3に記載のものは、止め輪の形状を特殊な形状として偏心を防止するものである。すなわち、一部が分断されてなる合口部近傍に端部迫り出し部を設けるとともに、端部迫り出し部とスナップ(クリップ)全体の中央部との間に中間迫り出し部を設けたものである。特許文献4に記載のものでは、シャフト溝(サークリップ溝)にテーパ面等からなる規制部を設けている。この規制部でもって、サークリップの偏りを阻止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平8−68426号公報
【特許文献2】特開平1−154316号公報
【特許文献3】特開2005−337282号公報
【特許文献4】特開2007−270904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献2に記載のものでは、止め輪以外に弾性体を必要として、部品点数の増加を招き、コスト高となるとともに、弾性体をシャフト溝に嵌着させる等の作業を必要として組立作業性に劣ることになる。
【0014】
また、特許文献3に記載のものでは、湾曲部や屈曲部が多くクリップの形状が複雑化している。このため、製品管理が難しくコスト高となる。
【0015】
特許文献4に記載のものでは、規制部を構成するテーパ面のテーパ角度の管理が必要で、加工性に劣る。しかも、シャフト挿入時には、シャフトの先端が下方を向く状態とし、鉛直方向に沿って挿入する方法に限られる。このため、組立方法の自由度が小さくなって、組立作業性に劣る。
【0016】
そこで、本発明は斯かる実情に鑑み、簡単な構成で、安定した組立作業を行うことができるシャフト抜け止め構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のシャフト抜け防止構造は、シャフトの周方向凹溝に嵌合される環状形状体を備え、このシャフトが被挿入体の挿入孔に挿入された状態で、この被挿入体に設けられた嵌合部に前記環状形状体が嵌合してシャフトの抜けを規制するシャフト抜け防止構造であって、前記環状形状体は、一部が分断されてなる開口部を有し、シャフトの被挿入体の挿入孔への挿入時における縮径が可能とされるとともに、シャフトの周方向凹溝に嵌合したシャフト挿入前での自由状態における最大偏心状態において、シャフト軸心と挿入孔軸心とを一致させた状態で、軸心方向から見て、環状形状体の最外径部位が挿入孔の入口端縁の内径よりも内径側に位置する略三角形状である。
【0018】
環状形状体は一部が分断されてなる開口部を有し、シャフトの被挿入体の挿入孔への挿入時における縮径が可能であるので、シャフトの被挿入体の挿入孔への挿入を安定して行うことができる。しかも、シャフトの周方向凹溝に嵌合したシャフト挿入前においては、環状形状体がシャフトに対して偏心した状態であっても、環状形状体の最外径部位が挿入孔の入口端縁の内径よりも内径側に位置する。このため、シャフトの被挿入体の挿入孔に挿入するときに、環状形状体が被挿入体の入口端縁において噛み込むことなく、挿入していくことができる。
【0019】
このように、環状形状体が最大に偏心しても、被挿入体の入口端縁に環状形状体が収まるため、シャフトの嵌入方向(挿入方向)は、垂直方向(上下方向)に限るものではなく、水平方向等であっても、シャフトを被挿入体に挿入していくことができる。
【0020】
環状形状体は、開口部側の一対の端部円弧部と、この端部円弧部を連結する中間円弧部とを備えたものでもって構成することができる。この際、環状形状体は、全円弧部の曲率半径を同一とするのが好ましい。
【0021】
所定設定引き抜き力以上の引き抜き力がシャフトに付与された状態で、環状形状体を縮径させるガイド用テーパ部を前記嵌合部に設けるのが好ましい。このようなガイド用テーパ部を設けることによって、所定設定引き抜き力以上の引き抜き力をシャフトに付与すれば、環状形状体がガイド用テーパ部にガイドされて縮径する。これによって、環状形状体は被挿入体に対する嵌合状態が解除されて、シャフトの被挿入体からの引き抜きを許容する。ここで、所定設定引き抜き力とは、この抜け防止構造が用いられる等速自在継手等において、通常の使用状態において作用しない大きな引き抜き力である。
【0022】
被挿入体はトリポード型等速自在継手のトラニオンであって、前記トリポード型等速自在継手は、内周に軸方向に延びる3本のトラック溝を有し、各トラック溝の向かい合った側壁にローラ案内面を形成した外側継手部材と、半径方向に突出した3本の脚軸を有する前記トラニオンと、各脚軸に回転自在に担持され外側継手部材のトラック溝内に収容されるローラと、脚軸の外周面とローラの内周面との間に配設される複数の針状のころとを備え、前記シャフトが前記トラニオンに嵌合する中間シャフトである場合がある。
【0023】
脚軸の外周面に、前記針状のころが収容されてころの摺動面を構成する溝部を設けるのが好ましい。このような溝部を設けることによって、針状のころの抜けが規制されるとともに、形成される摺動面によってころが安定して摺動することになる。
【0024】
前記トリポード型等速自在継手は、トラニオンの各脚軸の外周に複数の針状のころを介してローラを外嵌してなるトラニオンキットを形成した後、このトラニオンキットを外側継手部材にカップ底内面に配置した状態とし、この状態において、周方向凹溝に前記環状形状体を嵌合させたシャフトをこの環状形状体とともにトラニオンキットのトラニオンに挿入したものが好ましい。
【0025】
被挿入体は摺動型等速自在継手の内側継手部材であって、摺動型等速自在継手は、円筒状内周面に軸方向に延びる複数の直線状案内溝を設けた外側継手部材と、球面状外周面に軸方向に延びる複数の直線状案内溝を設けた前記内側継手部材と、前記外側継手部材の案内溝と内側継手部材の案内溝が協働して形成するボールトラックに一個ずつ配されたトルク伝達ボールと、前記トルク伝達ボールを保持するケージとを備え、前記ケージの球面状外周面の曲率中心と球面状内周面の曲率中心を、継手中心を挟んで軸方向に互いに逆方向に等距離だけオフセットさせ、前記シャフトが前記内側継手部材に嵌合する中間シャフトであるように構成できる。
【0026】
被挿入体は固定型等速自在継手の内側継手部材であって、固定型等速自在継手は、球状の内周面に複数の曲線状のトラック溝が形成された外側継手部材と、球状の外周面に前記外側継手部材のトラック溝と対をなす複数の曲線状のトラック溝が形成された内側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と前記内側継手部材のトラック溝との間に介在された複数のボールと、前記外側継手部材と前記内側継手部材との間に配置され、前記ボールを保持するケージとを備え、前記シャフトが前記内側継手部材に嵌合する中間シャフトであるように構成できる。
【0027】
被挿入体はトランスミッション内のサイドギアであり、前記シャフトが等速自在継手の外側継手部材のステム部であるように構成できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のシャフト抜け防止構造では、シャフトの被挿入体の挿入孔への挿入を安定して行うことができ、組立性の向上を図ることができる。また、シャフトの被挿入体の挿入孔に挿入するときに、環状形状体が被挿入体の入口端縁において噛み込むことなく、挿入していくことができる。このため、挿入(嵌入)開始が安定して環状形状体の損傷や破損を回避することができる。この場合、シャフトの嵌入方向(挿入方向)は、垂直方向(上下方向)に限るものではなく、水平方向等であっても、シャフトを被挿入体に挿入していくことができ、組立方法の自由度が広く、組立性に優れる。
【0029】
また、環状形状体は、開口部側の一対の端部円弧部と、この端部円弧部を連結する中間円弧部とを備えたものでもって構成することができ、形状の複雑化を招くことがなく、低コストで安定して生産することができる。
【0030】
ガイド用テーパ部を設けることによって、所定設定引き抜き力以上の引き抜き力をシャフトに付与すれば、シャフトの被挿入体からの引き抜きが許容され、分解作業の簡略化を図ることができる。所定設定引き抜き力以上の引き抜き力が付与されなければ、この引き抜きを行うことができない。このため、組立後の使用時においては、不意に分解されることがなく、安定した機能(シャフト抜け防止機能)を発揮することができる。
【0031】
被挿入体がトリポード型等速自在継手のトラニオンである場合に、脚軸の外周面に溝部を設ければ、針状のころの抜けが規制され、組立作業時等の内部部品(トラニオンと針状のころとローラ等の組立体)の分離(分解)作業の簡略化を図ることができる。また、形成される摺動面によってころが安定して摺動することになり、高精度のトルク伝達が可能となる。
【0032】
このシャフト抜け防止構造は、固定型等速自在継手であっても、摺動型等速自在継手であってもよく、種々のタイプの等速自在継手に対応することができ、汎用性に優れる。さらには、トランスミッションのサイドギアと、等速自在継手の外側継手部材のステム部との嵌合構造において、シャフト抜け防止構造を用いることができ、その組立性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のシャフト抜け防止構造の環状形状体の正面図である。
【図2】本発明のシャフト抜け防止構造を用いた摺動型等速自在継手の縦断面図である。
【図3】前記図2の摺動型等速自在継手の横断面図である。
【図4】前記環状形状体をシャフトに嵌合させた状態を示し、(a)は偏心していない場合の簡略図であり、(b)は偏心している場合の簡略図である。
【図5】被挿入体に設けられたガイド用テーパ部を示す断面図である。
【図6】本発明のシャフト抜け防止構造を用いた摺動型等速自在継手の組立方法を示す縦断面図である。
【図7】本発明のシャフト抜け防止構造を用いたトラミッション内のサイドギアを示す断面図である。
【図8】ボールタイプの摺動型等速自在継手を示す断面図である。
【図9】ボールタイプの固定型等速自在継手を示す断面図である。
【図10】従来のシャフト抜け防止構造の課題を説明するための組立図である。
【図11】従来のシャフト抜け防止構造において用いたサークリップとシャフトとの関係を示し、(a)は偏心していない場合の簡略図であり、(b)は偏心している場合の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下本発明の実施の形態を図1〜図9に基づいて説明する。
【0035】
図2と図3に本発明にかかるシャフト抜け防止構造を用いた等速自在継手(トリポード型等速自在継手)を示す。このトリポード型等速自在継手は、内周に軸方向に延びる3本のトラック溝2を有し、各トラック溝2の向かい合った側壁にローラ案内面2a、2aを形成した外側継手部材1と、半径方向に突出した3本の脚軸4を有するトラニオン5と、各脚軸4に回転自在に担持され外側継手部材1のトラック溝2内に収容されるローラ7と、脚軸4の外周面とローラ7の内周面との間に配設される複数の針状のころ6とを備える。なお、外側継手部材1はマウス部1aと、このマウス部1aの底壁8から突設されるステム部1bとを備える。
【0036】
トラニオン5は、シャフト12が挿入される挿入孔3aを有するボス部3と、このボス部3の円周方向三等分位置から半径方向に突出した前記脚軸4とを備える。また、脚軸4の外径面(外周面)には、前記針状のころ6が収容されてころ6の摺動面を構成する溝部11が設けられている。なお、この溝部11の脚軸付根側及び脚軸先端側にそれぞれ環状溝9、10が設けられている。
【0037】
ボス部3の挿入孔3aには雌スプライン13が形成されるとともに、シャフト12の端部に雄スプライン14が形成されて、シャフト12の端部がボス部3の挿入孔3aに挿入されて、ボス部3側の雌スプライン13とシャフト12側の雄スプライン14とが嵌合する。
【0038】
そして、シャフト12の端部がボス部3の挿入孔3aに挿入された場合、本発明にかかるシャフト抜け止め構造Mによって、シャフト12の抜けが規制されることになる。シャフト抜け止め構造Mは、シャフト12の雄スプライン14に設けられる周方向凹溝15と、この周方向凹溝15に嵌合する環状形状体16とを備える。そして、シャフト12の周方向凹溝15に嵌合した状態でボス部3の挿入孔3aに挿入されて、図5に示すように、この環状形状体16がボス部3の挿入孔3aの継手奥側開口縁部に設けられた嵌合部23に嵌合する。嵌合部23は継手奥側開口縁部に設けられた周方向切欠部からなる。
【0039】
この嵌合部23は図5に示すように、ボス部3の継手奥側の端面28に開口するとともに、継手開口側の端部には、ガイド用テーパ部23aが設けられている。このガイド用テーパ部23aは、継手奥側から継手開口側に向かって縮径し、そのテーパ角をαとした場合、α≧15°としている。なお、このテーパ角は、シャフト軸心と直交する面と、ガイド用テーパ部23aとが成す角度である。
【0040】
また、シャフト12には、雄スプライン14よりも継手開口側に、継手奥側から継手開口側へ拡開するテーパ面24が設けられ、ボス部3の挿入孔3aの継手開口側に、継手奥側から継手開口側へ拡開するテーパ面25が設けられている。すなわち、環状形状体16がボス部3の挿入孔3aの継手奥側開口縁部に設けられた嵌合部23に嵌合した状態において、シャフト12側のテーパ面24がボス部3側のテーパ面25に当接する。
【0041】
このため、嵌合部23に環状形状体16が嵌合した状態において、図2に示す矢印A方向の引き抜き力がシャフト12に作用した場合、環状形状体16は嵌合部23のガイド用テーパ部23aに当接してシャフト12の引き抜きを規制することができる。また、環状形状体16が嵌合部23に嵌合している状態では、シャフト12側のテーパ面24とボス部3側のテーパ面25とが当接しているので、シャフト12に継手奥側への矢印B方向の押圧力が作用しても、この矢印B方向の移動を規制することができる。
【0042】
環状形状体16は、図1に示すように、一部が分断されてなる開口部17を有する略三角形状に形成されている。この場合、開口部17側の一対の端部円弧部18,19と、この端部円弧部18,19を連結する中間円弧部20とを備える。各円弧部18,19,20の曲率半径R1、R2、R3を同一に設定している。なお、この曲率半径R1、R2、R3は、各円弧部18,19,20の外径面の半径である。また、第1の円弧部18と中間円弧部20との間にはコーナ部21が設けられ、第2の円弧部19と中間円弧部20との間にはコーナ部22が設けられている。この実施形態における環状形状体16は、その断面形状を円形とし、その線径dを全長にわたって同一としている。
【0043】
中間円弧部20の曲率中心O3は、環状形状体16の中心Oを通る中心線L3上に配置され、第1の端部円弧部18の曲率中心O1は、中心線Lに対して60°傾斜した中心線L1上に配置され、第2の端部円弧部19の曲率中心O2は、中心線Lに対して60°傾斜した中心線L2上に配置される。すなわち、曲率中心O1と曲率中心O2と曲率中心O3とは、正三角形の頂点に配置されることになる。このため、第1の端部円弧部18、第2の端部円弧部19、及び中間円弧部20は、図11に示すような円形リング体のものに比べて内径側に位置する(縮減されている)ことになる。
【0044】
このように、環状形状体16は三角おむすび形状となって、この場合、コーナ部21,22間寸法をW3とし、第2コーナ部22と第2の円弧部18との間寸法をW1とし、第1コーナ部21と第1の円弧部19との間寸法をW2とした場合、W1=W2=W3となる。また、開口部17の開口長さTとしては、自由状態で周方向凹溝15の底面径よりも小さく、嵌合させる際には、弾性的に拡大して周方向凹溝15に嵌合させることが可能なものとされる。
【0045】
このため、図4(a)に示すように、環状形状体16をシャフト12の周方向凹溝15に嵌合した際に、環状形状体16の中心Oと、シャフト12の軸心とが一致していれば、環状形状体16の最大外径部(つまり、第1コーナ部21と第2コーナ部22)は、ボス部3の挿入孔3aの入口端縁26の内径よりも内径側に位置する。この際、第1の円弧部18の内径面18aとシャフト12の周方向凹溝15の底15aとの間に僅かな隙間が設けられ、第2の円弧部19の内径面19aとシャフト12の周方向凹溝15の底15aとの間に僅かな隙間が設けられ、中間円弧部20の内径面20aとシャフト12の周方向凹溝15の底15aとの間に僅かな隙間が設けられることになる。前記入口端縁26は、挿入孔3aのテーパ面25の開口端縁である。
【0046】
また、図4(b)に示すように、環状形状体16がシャフト12の軸心に対して偏心した状態となった場合、すなわち、図4(a)に示す状態から環状形状体16がシャフト12に対して図4(b)に示す矢印方向に移動した場合、第1の円弧部18の内径面18aがシャフト12の周方向凹溝15の底15aに接触するとともに、第2の円弧部19の内径面19aがシャフト12の周方向凹溝15の底15aに接触する。しかしながら、この移動量は僅かであって、このように移動(偏心)したとしても、最大外径部を構成する第1コーナ部21と第2コーナ部22は、ボス部3の挿入孔3aの入口端縁26の内径よりも内径側に位置する。
【0047】
図4(a)に示す状態から、前記矢印と反対方向に環状形状体16がシャフト12の軸心に対して移動した場合、中間円弧部20の内径面20aがシャフト12の周方向凹溝15の底15aに接触して、その移動が規制される。このため、最大外径部を構成する第1コーナ部21と第2コーナ部22は、ボス部3の挿入孔3aの入口端縁26の内径よりも内径側に位置するままである。
【0048】
すなわち、図4(a)に示す中立状態において、周方向に沿って120°ピッチで微小隙間が設けられ、この状態から、環状形状体16が種々の方向に移動しても、その移動量は僅かである。このため、環状形状体16がシャフト12に対して偏心する状態となっても、最大外径部を構成する第1コーナ部21と第2コーナ部22は、軸心方向から見て、ボス部3の挿入孔3aの入口端縁26の内径よりも内径側に位置する。
【0049】
次に本発明にかかるシャフト抜け防止構造を用いた等速自在継手(トリポード型等速自在継手)の組立方法を説明する。まず、トラニオン5の脚軸4に針状ころ6を介してローラ7を外嵌してなるトリポードキッドを組み立てる。その後、図6に示すように、このトリポードキッドを外側継手部材1のマウス部1aに収容する。この場合、外側継手部材1の底壁8の内面に配置する。
【0050】
このように、トリポードキッドを外側継手部材1内に収容した状態で、トラニオン5のボス部3の挿入孔3aにシャフト12を挿入する。この際、シャフト12の周方向凹溝15に環状形状体16を装着(嵌合)させた状態として、ボス部3の挿入孔3aと、シャフト12との芯合わせを行う。環状形状体16がシャフト12に対して偏心した状態であっても、前記したように、最大外径部を構成する第1コーナ部21と第2コーナ部22は、ボス部3の挿入孔3aの入口端縁26の内径よりも内径側に位置している。
【0051】
このため、トラニオン5のボス部3の挿入孔3aにシャフト12を挿入していった場合、環状形状体16の最外径部位がボス部3の開口側の端面27に当接することなく、環状形状体16はボス部3の挿入孔3aのテーパ面25に案内されて、挿入孔3aに挿入されていく。このように、環状形状体16が挿入孔3aに挿入されていけば、環状形状体16は挿入孔3aの内径面の雌スプライン13によって内径側へ押圧されて縮径する。これによって、シャフト12の挿入に伴って、周方向凹溝15に嵌合している環状形状体16の挿入孔3aに挿入されていく。
【0052】
そして、環状形状体16が、トラニオン5のボス部3の嵌合部23に対応すれば、縮径力が解除されて拡径し、嵌合部23に嵌合する。そして、嵌合部23に環状形状体16が嵌合した状態(周方向凹溝15にも嵌合している状態)では、シャフト12側のテーパ面24がボス部3側のテーパ面25に当接する。この際、ボス部3の雌スプライン13とシャフト12の雄スプライン14とが嵌合している。
【0053】
このように、嵌合した状態となれば、前記したように、シャフト抜け止め構造Mによって、矢印A方向のシャフト12の抜けを規制することができる。しかしながら、所定設定引き抜き力以上の引き抜き力がシャフト12に付与されれば、シャフト12が引き抜かれる。ここで、所定設定引き抜き力とは、この抜け防止構造Mが用いられる等速自在継手において、通常の使用状態において作用しない大きな引き抜き力である。
【0054】
すなわち、嵌合部23の継手開口側の端部にはガイド用テーパ部23aが設けられているので、所定設定引き抜き力以上の引き抜き力が作用した場合、環状形状体16がテーパ部23aに押し付けられる。このため、環状形状体16がテーパ部23aに摺動しつつ順次縮径していく。そして、環状形状体16の外径が挿入孔3aの孔径よりも小さくなって、環状形状体16の引き抜きを許容する。
【0055】
本発明によれば、環状形状体16は一部が分断されてなる開口部17を有し、シャフト12のトラニオン5の挿入孔3aへの挿入時における縮径が可能であるので、シャフト12のトラニオン5の挿入孔3aへの挿入を安定して行うことができる。このため、組立性の向上を図ることができる。しかも、シャフト12の周方向凹溝15に嵌合したシャフト挿入前においては、環状形状体16がシャフト12に対して偏心した状態であっても、環状形状体16の最外径部位が挿入孔の入口端縁26の内径よりも内径側に位置する。このため、シャフト12のトラニオン5の挿入孔3aに挿入するときに、環状形状体16がトラニオン5の挿入孔3aの入口端縁26において噛み込むことなく、挿入していくことができ、挿入(嵌入)開始が安定して環状形状体の損傷や破損を回避することができる。
【0056】
すなわち、シャフト12の嵌入方向(挿入方向)は、垂直方向(上下方向)に限るものではなく、水平方向等であっても、シャフト12をトラニオン5に挿入していくことができ、組立方法の自由度が広く、組立性に優れる。
【0057】
また、環状形状体16は、開口部側の一対の端部円弧部18,19と、この端部円弧部18,19を連結する中間円弧部20とを備えたものでもって構成することができ、形状の複雑化を招くことがなく、低コストで安定して生産することができる。
【0058】
ガイド用テーパ部23aを設けることによって、所定設定引き抜き力以上の引き抜き力をシャフト12に付与すれば、シャフト12のトラニオン12からの引き抜きが許容され、分解作業の簡略化を図ることができる。所定設定引き抜き力以上の引き抜き力が付与されなければ、この引き抜きを行うことができない。このため、組立後の使用時においては、不意に分解されることがなく、安定した機能(シャフト抜け防止機能)を発揮することができる。
【0059】
ところで、環状形状体16が装着されたシャフト12をトラニオン12に挿入すれば、環状形状体16は、シャフト12の周方向凹溝15とトラニオン12の嵌合部23とで構成される空間内で保持される。このため、ガイド用テーパ部23aのテーパ角度によってシャフト12の引き抜き可否仕様を自在に設定できる。シャフト12の引き抜き不能の仕様にするには、ガイド用テーパ部23aのテーパ角度を、シャフト軸線に対して垂直に近づければよい。すなわち、テーパ角度をαとした場合、このαを0°に近づければよい。しかしながら、一般的に市場において、等速自在継手が用いられたドライブシャフトにおいて、補修・部品交換等の際にシャフトを等速自在継手のトラニオン(又は内輪)から引き抜く作業を必要とする。このため、このシャフト抜け防止構造では、ガイド用テーパ部23aのテーパ角度をαとした場合、α≧15°として、所定設定引き抜き力以上の引き抜き力を付与することによって、シャフト12を引き抜けるようにしている。
【0060】
図7は、トランスミッション内のサイドギア30に前記図1に示す等速自在継手が連結されている状態を示している。すなわち、等速自在継手の外側継手部材1のステム部1bの端部に雄スプライン31が設けられ、この雄スプライン31が、サイドギア30の雌スプライン32に嵌合している。
【0061】
ステム部1bのサイドギア30に対する抜けを規制するために、本発明にかかるシャフト抜け止め構造Mが用いられる。この場合、雄スプライン31の端部に周方向凹溝33を設けるとともに、サイドギア30の挿入孔30aの反マウス部側の開口部に嵌合部(周方向切欠部)34を設ける。
【0062】
そして、図1に示す環状形状体16が周方向凹溝33及び嵌合部(周方向切欠部)34に嵌合して、ステム部1bの抜けが規制される。この場合も、シャフトであるステム部1bの周方向凹溝33に嵌合したシャフト挿入前においては、環状形状体16がシャフト1bに対して偏心した状態であっても、環状形状体16の最外径部位が挿入孔30aの入口端縁37の内径よりも内径側に位置するよるに構成する。このため、シャフト1bの被挿入体(サイドギア30)の挿入孔30aに挿入するときに、環状形状体16がサイドギア30の入口端縁37において噛み込むことなく、挿入していくことができ、挿入(嵌入)開始が安定して環状形状体の損傷や破損を回避することができる。なお、入口端縁37は、このサイドギア30の挿入孔30aの入口部に設けられるテーパ面36の開口端縁である。
【0063】
前記各実施形態では、シャフト12の被挿入体が、トリポード型等速自在継手のトラニオンであったが、図8に示すように、転動体がボールとされたボールタイプの摺動型等速自在継手の内側継手部材であっても、図9に示すように、転動体がボールとされたボールタイプの固定型等速自在継手の内側継手部材であってもよい。
【0064】
図8に示す摺動型等速自在継手は、円筒状内周面40に軸方向に延びる複数の直線状案内溝41を設けた外側継手部材としての外輪42と、球面状外周面43に軸方向に延びる複数の直線状案内溝44を設けた前記内側継手部材としての内輪45と、外輪42の案内溝41と内輪45の案内溝44が協働して形成するボールトラックに一個ずつ配されたトルク伝達ボール46と、トルク伝達ボール46を保持するケージ47とを備える。ケージ47の球面状外周面47aの曲率中心O1と球面状内周面47bの曲率中心O2を、継手中心Oを挟んで軸方向に互いに逆方向に等距離だけオフセットさせたものである。
【0065】
すなわち、この内輪45の挿入孔45aに、シャフトとしての中間シャフトが挿入(嵌入)され、内輪45の挿入孔45aに設けられた雌スプライン46と、シャフトの雄スプライン14とを嵌合させる。この際、本発明にかかるシャフト抜け止め構造Mを用いて、シャフトの抜けが規制される。
【0066】
図9に示す固定型等速自在継手は、球状の内周面50に複数の曲線状のトラック溝51が形成された外側継手部材としての外輪52と、球状の外周面53に外輪52のトラック溝51と対をなす複数の曲線状のトラック溝54が形成された内側継手部材としての内輪55と、外輪52のトラック溝51と内輪55のトラック溝54との間に介在された複数のボール56と、外輪52と内輪55との間に配置され、ボール56を保持するケージ57とを備える。
【0067】
すなわち、この内輪55の挿入孔55aに、シャフトとしての中間シャフトが挿入(嵌入)され、内輪55の挿入孔55aに設けられた雌スプライン58と、シャフトの雄スプライン14とを嵌合させる。この際、本発明にかかるシャフト抜け止め構造Mを用いて、シャフトの抜けが規制される。
【0068】
このように、このシャフト抜け防止構造は、固定型等速自在継手であっても、摺動型等速自在継手であってもよく、種々のタイプの等速自在継手に対応することができ、汎用性に優れる。さらには、図7に示すように、トランスミッションのサイドギアと、等速自在継手の外側継手部材のステム部との嵌合構造において、シャフト抜け防止構造を用いることができ、その組立性の向上を図ることができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、環状形状体16の断面形状は前記実施形態では、円形であったが、円形以外の楕円乃至長円形、三角形、矩形、正方形、5角形以上の多角形等の種々の形状であってもよい。このため、この環状形状体16が嵌合する周方向凹溝15の断面形状も種々変更できる。また、環状形状体16の材質としても、合成樹脂や金属であってもよい。すなわち、従来からこの種のサークリップに用いられる種々の材質を用いることができる。
【0070】
円弧部18,19、20の曲率半径も、装着されるシャフトの周方向凹溝の大きさ等に応じて、環状形状体16の最外径部位が挿入孔3aの入口端縁26の内径よりも内径側に位置する範囲で種々変更することができる。また、前記実施形態では、円弧部18,19、20の曲率半径を同一に設定していたが、それぞれ相違するものであっても、いずれかの2つの円弧部の曲率半径を同一に設定し、他の円弧部の曲率半径が相違するようにしてもよい。
【0071】
シャフト12の嵌合部23のガイド用テーパ部23aのテーパ角度αとしては、所定設定引き抜き力が作用したときに、環状形状体16が摺動して縮径するものであればよいので、所定設定引き抜き力等に応じて種々変更できる。しかしながら、α<15°であれば、引き抜き方向に対して直交する方向に近づき、縮径させることができないおそれがある。
【0072】
等速自在継手がトリポード型等速自在継手である場合、図2等に示すようなタイプに限るものではなく、リングとローラとが複数の針状のころを介してユニット化されたローラアセンブリを構成したタイプ等であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 外側継手部材
1b ステム部
2 トラック溝
2a ローラ案内面
3a 挿入孔
4 脚軸
5 トラニオン
7 ローラ
11 溝部
12 シャフト
15 周方向凹溝
16 環状形状体
17 開口部
18,19 端部円弧部
20 中間円弧部
23 嵌合部
23a ガイド用テーパ部
30 サイドギア
30a 挿入孔
33 周方向凹溝
40 円筒状内周面
41 直線状案内溝
42 外輪
43 球面状外周面
44 直線状案内溝
45 内輪
45a 挿入孔
46 トルク伝達ボール
47 ケージ
47a 球面状外周面
47b 球面状内周面
50 内周面
51 トラック溝
52 外輪
53 外周面
54 トラック溝
55 内輪
55a 挿入孔
56 ボール
57 ケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの周方向凹溝に嵌合される環状形状体を備え、このシャフトが被挿入体の挿入孔に挿入された状態で、この被挿入体に設けられた嵌合部に前記環状形状体が嵌合してシャフトの抜けを規制するシャフト抜け防止構造であって、
前記環状形状体は、一部が分断されてなる開口部を有し、シャフトの被挿入体の挿入孔への挿入時における縮径が可能とされるとともに、シャフトの周方向凹溝に嵌合したシャフト挿入前での自由状態における最大偏心状態において、シャフト軸心と挿入孔軸心とを一致させた状態で、軸心方向から見て、環状形状体の最外径部位が挿入孔の入口端縁の内径よりも内径側に位置する略三角形状であることを特徴とするシャフト抜け防止構造。
【請求項2】
環状形状体は、開口部側の一対の端部円弧部と、この端部円弧部を連結する中間円弧部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載のシャフト抜け防止構造。
【請求項3】
環状形状体は、全円弧部の曲率半径を同一としたことを特徴とする請求項2に記載のシャフト抜け防止構造。
【請求項4】
所定設定引き抜き力以上の引き抜き力がシャフトに付与された状態で、環状形状体を縮径させるガイド用テーパ部を前記嵌合部に設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のシャフト抜け防止構造。
【請求項5】
被挿入体はトリポード型等速自在継手のトラニオンであって、前記トリポード型等速自在継手は、内周に軸方向に延びる3本のトラック溝を有し、各トラック溝の向かい合った側壁にローラ案内面を形成した外側継手部材と、半径方向に突出した3本の脚軸を有する前記トラニオンと、各脚軸に回転自在に担持され外側継手部材のトラック溝内に収容されるローラと、脚軸の外周面とローラの内周面との間に配設される複数の針状のころとを備え、前記シャフトが前記トラニオンに嵌合する中間シャフトであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のシャフト抜け防止構造。
【請求項6】
脚軸の外周面に、前記針状のころが収容されてころの摺動面を構成する溝部を設けたことを特徴とする請求項5に記載のシャフト抜け防止構造。
【請求項7】
前記トリポード型等速自在継手は、トラニオンの各脚軸の外周に複数の針状のころを介してローラを外嵌してなるトラニオンキットを形成した後、このトラニオンキットを外側継手部材にカップ底内面に配置した状態とし、この状態において、周方向凹溝に前記環状形状体を嵌合させたシャフトをこの環状形状体とともにトラニオンキットのトラニオンに挿入したことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のシャフト抜け防止構造。
【請求項8】
被挿入体は摺動型等速自在継手の内側継手部材であって、摺動型等速自在継手は、円筒状内周面に軸方向に延びる複数の直線状案内溝を設けた外側継手部材と、球面状外周面に軸方向に延びる複数の直線状案内溝を設けた前記内側継手部材と、前記外側継手部材の案内溝と内側継手部材の案内溝が協働して形成するボールトラックに一個ずつ配されたトルク伝達ボールと、前記トルク伝達ボールを保持するケージとを備え、前記ケージの球面状外周面の曲率中心と球面状内周面の曲率中心を、継手中心を挟んで軸方向に互いに逆方向に等距離だけオフセットさせ、前記シャフトが前記内側継手部材に嵌合する中間シャフトであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のシャフト抜け防止構造。
【請求項9】
被挿入体は固定型等速自在継手の内側継手部材であって、固定型等速自在継手は、球状の内周面に複数の曲線状のトラック溝が形成された外側継手部材と、球状の外周面に前記外側継手部材のトラック溝と対をなす複数の曲線状のトラック溝が形成された内側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と前記内側継手部材のトラック溝との間に介在された複数のボールと、前記外側継手部材と前記内側継手部材との間に配置され、前記ボールを保持するケージとを備え、前記シャフトが前記内側継手部材に嵌合する中間シャフトであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のシャフト抜け防止構造。
【請求項10】
被挿入体はトランスミッション内のサイドギアであり、前記シャフトが等速自在継手の外側継手部材のステム部であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のシャフト抜け防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−276050(P2010−276050A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126632(P2009−126632)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】