説明

シャボン玉組成物

【課題】泡の持続性に優れ、連続的に形状の揃ったより多くの泡を発生することができ、また、大きなリングを使用しても割れにくいシャボン玉液組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるアニオン界面活性剤(A)、下記一般式(2)で表される非イオン界面活性剤(B)、及び両性界面活性剤(C)を含有することを特徴とするシャボン玉組成物である。
−O−(EO)−X・・・・(1)
(式中、Rは分岐型の炭素数8〜15であるアルキル基を表し、EOはオキシエチレン基を表し、nは0〜10の整数であり、Xはアニオン性親水基を表す。)
−O−(AO)−H・・・・(2)
(式中、Rは分岐型の炭素数8〜15であるアルキル基を表し、AOは炭素数が2〜4のオキシアルキレン基を表し、nは1〜25の整数を表す。AOの付加形態はランダム付加、ブロック付加又はこれらの混合付加である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャボン玉組成物に関し、シャボン玉の泡の持続性に優れ、割れにくく大きなシャボン玉を作ることができるシャボン玉組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シャボン玉液は、下記非特許文献1、2に記載のように、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアニオン界面活性剤と、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子を水に溶解する方法や、市販の台所用洗剤等や洗濯糊等を水に溶解することで得られてきた。これらの方法で作られたシャボン玉液は、子供の遊び道具や舞台でのパフォーマンス用として用いられている。通常、先端を加工したストローや、針金などでリング状に加工した器具のリング部分をシャボン玉液に浸して取り出した後、息や手の動きでシャボン玉を作り出し、空中へ浮遊させて楽しむものである。
【0003】
シャボン玉液の従来技術において、ストロータイプでは、人が吹いてシャボン玉を発生させる場合に泡の持続性に不満があった。また、特に直径15cm以上のような大きなリングを使用する場合、水溶液膜を作製する際、及び/又は、シャボン玉を空中へ浮遊させる際に膜が割れやすく、満足する性能のものは得られていなかった。
【0004】
この問題を解決する方法として、下記特許文献1に記載の「シャボン玉用組成物」、や特許文献2に記載の「濾過性に優れる水溶性セルロースエーテル及びその選定方法」等の提案がなされているが、主に水溶性セルロースの使用方法に関する提案で、主に水溶液膜形成に関するものであり、ストロータイプで吹いた際の泡の持続性については記述されていない。また、主成分である界面活性剤については詳述されていない。
【非特許文献1】杉山弘之、杉山輝行著、「シャボン玉の夢」、東京図書株式会社、1976年4月23日発行
【非特許文献2】ボイズ著、「シャボン玉の世界」、東京図書株式会社、1975年6月10日発行
【特許文献1】特開2003−301200号公報
【特許文献2】特開2004−26861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特定の構造をもつアニオン界面活性剤と非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤を組み合わせることで、ストロータイプでシャボン玉を形成した際の泡の持続性に優れ、連続的に形状の揃ったより多くの泡を発生することができ、また、人が入れる程度の大きなリングを使用しても割れにくい安定性に優れたシャボン玉液組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、界面活性剤として、アニオン界面活性剤と非イオン界面活性剤、両性界面活性剤を組み合わせ、さらにアニオン界面活性剤と非イオン界面活性剤が特定の構造を有する場合、具体的には特定の炭素数を持ち、原料アルコールが分岐型のアルコールである場合に限り、シャボン玉液として優れた性能が発揮されることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるアニオン界面活性剤(A)、下記一般式(2)で表される非イオン界面活性剤(B)、及び両性界面活性剤(C)を含有することを特徴とするシャボン玉組成物である。
【0008】
−O−(EO)−X・・・・(1)
(式中、Rは分岐型の炭素数8〜15であるアルキル基を表し、EOはオキシエチレン基を表し、nは0〜10の整数であり、Xはアニオン性親水基を表す。)
−O−(AO)−H・・・・(2)
(式中、Rは分岐型の炭素数8〜15であるアルキル基を表し、AOは炭素数が2〜4のオキシアルキレン基を表し、nは1〜25の整数を表す。AOの付加形態はランダム付加、ブロック付加又はこれらの混合付加である。)
【0009】
上記一般式(1)において、Xは下記一般式(3)〜(6)のいずれかで表される基であることが好ましい。
X:−SOM・・・(3)
−PO及び/又は−P(R)OM・・・(4)
−CHCOOM・・・(5)
−CO−CH−CH(SOM)COOM・・・(6)
(式中、Mはそれぞれ独立に水素、アルカリ金属、NH又はアルカノールアミン残基であり、Rは上記一般式(1)のX以外の残基である。)
前記両性界面活性剤(C)はベタイン型両性界面活性剤、アミノ酸型両性界面活性剤、及びアミンオキシド型両性界面活性剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明のシャボン玉組成物は、水溶性高分子(D)を含有してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるシャボン玉組成物は、特定の構造をもつアニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤を組み合わせることで、ストロータイプの器具でシャボン玉を作製した際の泡の持続性に優れ、また直径15cm以上のような大きなリングを使用しても割れにくいシャボン玉組成物を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の金属洗浄剤組成物を実施の形態に基づきより詳細に説明する。
【0013】
上記一般式(1)において、Rは炭素数8〜15の分岐型アルキル基を表し、本発明では炭素数8〜15の分岐脂肪族アルコールを疎水基の原料アルコールとして用いることができる。
【0014】
ここで、Rは炭素数8〜15の分岐型アルキル基を表し、具体的にはイソオクチル基、2−エチル−1−ヘキシル基、2−プロピル−1−ヘプチル基、イソノニル基、イソデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラドデシル基、イソペンタデシル基が挙げられる。
【0015】
これらのうちシャボン玉液の性能の観点から特に好ましいのは、炭素数10〜15の分岐型アルキル基である。
【0016】
一般式(1)において、(EO)nは、上記した原料アルコールに、エチレンオキサイドを付加重合させることにより形成されるポリオキシエチレン部分である。
【0017】
上記アニオン性親水基Xとしては、下記一般式(3)〜(6)のいずれかで表される基が好ましい例として挙げられる。
【0018】
X:−SOM・・・(3)
−PO及び/又は−P(R)OM・・・(4)
−CHCOOM・・・(5)
−CO−CH−CH(SOM)COOM・・・(6)
【0019】
ここで、式中のMは、それぞれ独立に、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、NH、又はエタノールアミン、ジエタノールアミン、プロパノールアミン等のアルカノールアミンの残基を表す。またRは上記一般式(1)のX以外の残基である。
【0020】
上記一般式(2)において、Rは炭素数8〜15の分岐型アルキル基を表し、本発明では炭素数8〜15の分岐脂肪族アルコールを疎水基の原料アルコールとして用いる。ここで、Rは炭素数8〜15の分岐型アルキル基を表し、具体的にはイソオクチル基、2−エチル−1−ヘキシル基、2−プロピル−1−ヘプチル基、イソノニル基、イソデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラドデシル基、イソペンタデシル基が挙げられる。
【0021】
これらのうちシャボン玉液の性能の観点から特に好ましいのは、炭素数8〜13の分岐型アルキル基である。
【0022】
一般式(2)において、(AO)nは、上記した原料アルコールに、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを付加重合させることにより形成されるポリオキシアルキレン部分である。プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの付加形態は、ランダム重合鎖でも、ブロック重合鎖でも、又はこれらの組み合わせでもよい。
【0023】
本発明における両性界面活性剤(C)としては、ベタイン型両性界面活性剤(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等)、アミノ酸型両性界面活性剤(β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム等)、アミンオキシド型(デシルジメチルアミンオキシド、ラウリルジメチルアミンオキシド等)が挙げられる。
【0024】
これらのうちシャボン玉液の性能の観点から特に好ましいのは、ベタイン型両性界面活性剤、アミンオキシド型両性界面活性剤である。
【0025】
本発明のシャボン玉組成物においては、上記(A)〜(C)成分の合計含有量は、シャボン玉が出来る範囲であれば特に限定されるものではないが、通常、(A)〜(C)成分の合計含有量はシャボン玉組成物中の0.5〜10重量%、好ましくは1〜3重量%である。
【0026】
(A)〜(C)各成分の配合比率は特に限定されるものではないが、シャボン玉としての
性能を考慮し、(A)〜(C)成分の合計含有量に基づき、(A)を0.4〜4.0重量%さらに好ましくは0.4〜2.0重量%、(B)を0.4〜4.0重量%さらに好ましくは0.4〜2.0重量%、(C)を0.05〜4.0重量%、さらに好ましくは0.2〜1.5重量%含有する。
【0027】
本発明における水溶性高分子(D)としては、ポリビニルアルコール、水溶性セルロースエーテル(アルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、等)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド等が挙げられる。
【0028】
これら(D)の含有量は、シャボン玉が形成され、空中で浮遊、乾燥するのに適正な含有量であればよい。このような含有量は、選定した成分の分子量によって異なり、一義的に決定し難いが、0.1〜1.0重量%程度が好ましい。
【0029】
さらに、本発明はその他の添加剤として、食紅やメチルレッド、メチルオレンジのような着色剤、グリセリン等の多価アルコールやその他の界面活性剤を含有することができる。
【0030】
以下実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
表1、2に示すシャボン玉組成物を下記成分を表記載の配合量(重量%)に従い配合し調製した。そして、市販されているストロータイプと直径10cmの針金製リングでシャボン玉を作った際の性能を下記評価方法によって、パネラー10名の平均により評価し、表1に実施例を、表2に比較例の評価結果を示した。
【0032】
使用した界面活性剤と水溶性高分子は下記の通りである。尚、( )内の数値は、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加モル数を表す。
【0033】
[アニオン界面活性剤]
アニオン界面活性剤は、全て次の公知文献の記載に従って製造した。文献:小田良平、寺村一広共著、「界面活性剤 合成編I」、槇書店、1965年、第2章
a)ポリオキシエチレン(3)イソトリデシルエーテル硫酸ナトリウム
b)ポリオキシエチレン(3)イソトリデシルエーテル酢酸ナトリウム
c)ポリオキシエチレン(6)−2−プロプル−1−ヘプチルエーテル硫酸ナトリウム
d)ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム
e)アルキル(C12〜13)硫酸トリエタノールアミン
f)ポリオキシエチレン(3)スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム
g)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
【0034】
[非イオン界面活性剤]
非イオン界面活性剤は、全て次の公知文献の記載に従って製造した。文献:石井義朗著、「非イオン界面活性剤」、誠文堂新光社、第2章。h)〜k)は、所定のアルコールに所定量のプロピレンオキサイドを付加し、次いで所定量のエチレンオキサイドをブロック付加重合して得られる。
h)ポリオキシエチレン(6)ポリオキシプロピレン(2)イソトリデシルエーテル
i)ポリオキシエチレン(6)ポリオキシプロピレン(2)−2−エチル−1−ヘキシルエーテル
j)ポリオキシエチレン(6)ポリオキシプロピレン(2)−2−プロピルー1−ヘプチルエーテル
k)ポリオキシエチレン(6)ポリオキシプロピレン(2)イソデシルエーテル
l)ポリオキシエチレン(10)デシルエーテル
m)ポリオキシエチレン(14)オレイルセチルエーテル
n)ポリオキシエチレン(10)スチレン化フェニルエーテル
【0035】
[両性界面活性剤]
o)ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(第一工業製薬(株)「アモーゲンS−H」)
p)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン(第一工業製薬(株)「アモーゲンCB−H」)
q)ラウリルジメチルアミンオキシド(第一工業製薬(株)「アモーゲンAOL」)
r)β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム(三洋化成工業(株)「レボンAPL」)
【0036】
[水溶性高分子]
s)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(松本油脂製薬(株)「マーボローズ90MP−15000」)
t)ポリビニルアルコール((株)クラレ「PVA105」)
【0037】
[性能の評価方法]
〈ストロータイプでの性能評価〉
ストローの先端をシャボン玉水溶液に充分浸した後、なるべく一定の息量で吹き、泡が持続した時間を計測した。これを一人当たり3回行い、平均値を算出した。
【0038】
〈針金製リングでの性能評価〉
直径10cmの針金製リングをシャボン玉水溶液に充分浸した後、水溶液から取り出し、ゆっくりとリングを動かしてシャボン玉を作った。リングを水溶液から引き上げた際の水溶液膜安定性及び泡の安定性を以下の基準で評価した。
【0039】
・水溶液膜安定性
◎:10秒以上膜が形成される。
○:3〜10秒で割れる。
△:2秒以内に割れる。
×:リングに膜が形成されない。
【0040】
・泡の安定性
◎:泡が地面についても保たれている。
○:泡が地面につくと割れる。
△:泡が浮遊中に割れる。
×:リングを動かした際に膜が割れる。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
上記実施例及び比較例に示されるように、本発明のシャボン玉組成物は、特に限定した構造の組み合わせであるため、シャボン玉を作った際の泡安定性が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のシャボン玉組成物は、通常のストロータイプで使用した際の泡の持続性に優れ、また割れにくい大きなシャボン玉を作ることができるため、子供用玩具やイベントなどで大きなシャボン玉を作る際に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアニオン界面活性剤(A)、下記一般式(2)で表される非イオン界面活性剤(B)、及び両性界面活性剤(C)を含有することを特徴とするシャボン玉組成物。
−O−(EO)−X・・・・(1)
(式中、Rは分岐型の炭素数8〜15であるアルキル基を表し、EOはオキシエチレン基を表し、nは0〜10の整数であり、Xはアニオン性親水基を表す。)
−O−(AO)−H・・・・(2)
(式中、Rは分岐型の炭素数8〜15であるアルキル基を表し、AOは炭素数が2〜4のオキシアルキレン基を表し、nは1〜25の整数を表す。AOの付加形態はランダム付加、ブロック付加又はこれらの混合付加である。)
【請求項2】
一般式(1)において、Xが下記一般式(3)〜(6)のいずれかで表される基であることを特徴とする請求項1記載のシャボン玉組成物。
X:−SOM・・・(3)
−PO及び/又は−P(R)OM・・・(4)
−CHCOOM・・・(5)
−CO−CH−CH(SOM)COOM・・・(6)
(式中、Mはそれぞれ独立に水素、アルカリ金属、NH又はアルカノールアミン残基であり、Rは上記一般式(1)のX以外の残基である。)
【請求項3】
前記両性界面活性剤(C)がベタイン型両性界面活性剤、アミノ酸型両性界面活性剤、及びアミンオキシド型両性界面活性剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のシャボン玉組成物。
【請求項4】
さらに水溶性高分子(D)を含有してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシャボン玉組成物。

【公開番号】特開2009−91396(P2009−91396A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260620(P2007−260620)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】