説明

シャント抵抗器の接続端子、及びバッテリー状態検知装置

【課題】シャント抵抗の本体と端子部材とを別体とした構成において、センシング精度を向上させた構成を提供する。
【解決手段】シャント抵抗器は、抵抗本体と、抵抗本体に対して電気的に接続する端子部材21と、を備える。端子部材21は、抵抗本体に接触する抵抗接続部23と、抵抗接続部23から延伸して設けられる回路接続部24と、を有する。回路接続部24は、スリット27が形成されることにより2分割されている。そして、前記スリット27は、抵抗接続部23の一部まで形成されている。このように、回路接続部24を2分割するスリット27を抵抗接続部23まで形成することにより、2本の回路接続端子22同士が根元部分で繋っていないので、当該回路接続端子22に流れる電流の経路がクロスしない。これにより、2本の回路接続端子22それぞれに流れる電流が安定するので、このシャント抵抗器を用いた電流検出のセンシング精度が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、バッテリー状態検知装置が備えるシャント抵抗器の接続端子の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等において、バッテリーの状態(電気残量など)を検知するバッテリー状態検知装置が設けられている。この種のバッテリー状態検知装置は、バッテリーの電流を検出するための回路を備えている。自動車用バッテリーのような大容量の電流を精度良く検出する回路として、シャント抵抗を利用する構成が公知である。特許文献1は、シャント抵抗器を利用した電流監視装置を開示している。
【0003】
シャント抵抗器を利用して電流を検出する構成として、4端子法が知られている。この4端子法に用いられるシャント抵抗には、測定対象電流の入口及び出口となる1対の端子と、前記測定対象電流によってシャント抵抗の両端に生じる電位差を測定するための電圧測定回路を接続する1対の端子と、の計4本の端子が設けられる。特許文献1の図2には、電流の通電方向に切り込まれたスリットによって2分割され、2対の脚部を有する形状に一体形成された4端子シャント抵抗器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−98079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、4端子シャント抵抗器においては、二股に分かれた形状の端子を形成する必要がある。このため、特許文献1に記載のようにシャント抵抗本体にスリットを形成するなどの加工が必要となり、材料のロスも発生する。また、自動車用バッテリーのように大容量の電流を検出する場合、シャント抵抗本体が大型化するので、複雑な形状の端子を形成することが困難になる。
【0006】
そこで、シャント抵抗の本体と、端子部材と、を別体として形成する構成が提案されている。図6のように、この端子部材100は、金属板をプレス加工及び折り曲げ加工することにより形成され、抵抗接続部101と、回路接続部102と、を有している。
【0007】
抵抗接続部101は、シャント抵抗の本体に接触する部分である。抵抗接続部101には、ネジ止め孔103が形成されている。このネジ止め孔103を介してシャント抵抗の本体にネジを螺入することで、端子部材100とシャント抵抗の本体とを締結し、両者を電気的に接続する構成である。
【0008】
回路接続部102は、抵抗接続部101から延伸して設けられている。この回路接続部102にはスリット104が形成されており、当該回路接続部102が二分割されて2本の回路接続端子105が形成されている。2本の回路接続端子105のうち、一方はシャント抵抗本体への電流の出入口となり、他方は前記電流によってシャント抵抗に発生する電位差を測定するための電圧測定回路に接続される。
【0009】
このように2本の回路接続端子105を有する端子部材100を、シャント抵抗の本体の適宜の2箇所にネジ止めする。これにより、計4本の回路接続端子105を有する4端子シャント抵抗器を構成する。
【0010】
以上の構成によれば、シャント抵抗の本体には端子を形成する必要がないので、加工も容易になり、シャント抵抗の材料ロスも最小限に抑えられる。また、端子部材100をシャント抵抗の本体とは別体とすることにより、当該端子部材100に複雑な形状を設定可能となるので、回路設計の自由度も向上する。
【0011】
ところが、上記のようにシャント抵抗の本体と端子部材100とを別体とした場合、十分なセンシング精度が得られない場合があったのである。
【0012】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、シャント抵抗の本体と端子部材とを別体とした構成において、センシング精度を向上させた構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0013】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0014】
本発明の観点によれば、以下の構成のシャント抵抗器が提供される。即ちこのシャント抵抗器は、抵抗本体と、前記抵抗本体に対して電気的に接続する端子部材と、を備える。前記端子部材は、前記抵抗本体に接触する抵抗接続部と、前記抵抗接続部から延伸して設けられる回路接続部と、を有する。前記回路接続部は、スリットが形成されることにより2分割されている。そして、前記スリットは、前記抵抗接続部の一部まで形成されている。
【0015】
このように、回路接続部を2分割するスリットを抵抗接続部まで形成することにより、2分割された回路接続部同士が根元部分で繋っていないので、当該2分割された回路接続部に流れる電流の経路がクロスしない。これにより、2分割された回路接続部のそれぞれに流れる電流が安定するので、このシャント抵抗器を用いた電流検出のセンシング精度が向上する。また、スリットは抵抗接続部の一部にのみ形成されているので、端子部材は完全に2分割されている訳ではなく、抵抗接続部で繋っている。従って、端子の部品点数が増えることも無く、抵抗本体への取り付け作業も1回で済むため、組み立てコストが増大することもない。
【0016】
上記のシャント抵抗器は、以下のように構成することが好ましい。即ち、前記抵抗接続部には、前記抵抗本体に対して物理的かつ電気的に結合する結合部が形成されている。そして前記スリットは、前記結合部の少なくとも一部まで形成されている。
【0017】
このように、抵抗本体に対して端子部材を結合させる部分までスリットが形成されることにより、2分割された回路接続部の独立性が向上し、電流経路がクロスしにくくなるので、このシャント抵抗器を用いた電流検出のセンシング精度が更に向上する。
【0018】
上記のシャント抵抗器は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記端子部材は、抵抗本体に対して締結体によって締め付けられることにより、当該抵抗本体に対して物理的かつ電気的に結合される。前記結合部は、前記締結体を挿通させるために前記抵抗接続部に形成された挿通孔である。そして、前記スリットは、前記挿通孔に連通して形成されている。
【0019】
このように、端子部材と抵抗本体を締結体によって結合することにより、両者を強固に連結することができる。そして、締結体を挿通させるための挿通孔までスリットを形成することにより、2分割された回路接続部の独立性が向上し、電流経路がクロスしにくくなるので、このシャント抵抗器を用いた電流検出のセンシング精度が更に向上する。
【0020】
上記のシャント抵抗器は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記抵抗接続部は、前記抵抗本体側に向けて突出する突出部を、当該抵抗接続部に形成された前記スリットを挟んで少なくとも1対設けている。
【0021】
このように突出部を設けることにより、抵抗本体と端子部材との接触を安定させ、両者の電気接続の確実性を向上させることができる。つまり、スリットを挟んで対で突出部を設けることにより、2分割された回路接続部のそれぞれに対応して突出部を設けることになるので、2分割された回路接続部に流れる電流の経路がクロスしにくくなり、センシング精度が更に向上する。
【0022】
また、上記のシャント抵抗器は、以下のように構成することもできる。即ち、前記結合部は、前記抵抗本体と前記抵抗接続部との間に形成された溶接部である。
【0023】
このように、端子部材と抵抗本体を溶接によって結合することにより、両者の電気的接続を確実なものにすることができる。そして、溶接部までスリットを形成することにより、2分割された回路接続部の独立性が向上し、電流経路がクロスしにくくなるので、このシャント抵抗器を用いた電流検出のセンシング精度が更に向上する。
【0024】
本発明の別の観点によれば、上記のシャント抵抗器と、当該シャント抵抗器の前記回路接続部が接続される回路基板と、を備えたバッテリー状態検知装置が提供される。
【0025】
このバッテリー状態検知装置によれば、回路基板に流れる電流を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係るバッテリー状態検知装置の正面断面図。
【図2】端子部材の斜視図。
【図3】(a)従来の端子部材の平面図。(b)第1実施形態の端子部材の平面図。
【図4】(a)第2実施形態に係る端子部材の斜視図。(b)当該端子部材の側面図。(c)当該端子部材の底面図。
【図5】(a)第2実施形態の変形例に係る端子部材の斜視図。(b)当該端子部材の側面図。(c)当該端子部材の底面図。
【図6】従来の端子部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、図面を参照して本発明の第1実施形態を説明する。
【0028】
図1に示すのは、本実施形態に係るバッテリー状態検知装置10の側面断面図である。図1に示すように、バッテリー状態検知装置10は、回路基板11、シャント抵抗器12、及びこれらを収容するケース13から構成されている。
【0029】
このバッテリー状態検知装置10は、車両などに設けられたバッテリーに接続され、当該バッテリーの電流収支、温度、インピーダンスなどを計測し、充電状態や劣化状態を判定して、計測結果や判定結果を出力するように構成されている。回路基板11上には、上記判定を行うためのマイクロプロセッサ(図略)等が配置されている。
【0030】
回路基板11上には電流検出対象回路が形成されており、当該電流検出対象回路に流れる電流を計測することにより、バッテリーの電流収支を計測するように構成されている。シャント抵抗器12は、上記電流検出対象回路に接続されている。また、基板上には、シャント抵抗器12に生じる電位差を検出するためのA/Dコンバータ(図略)が配置されている。前記マイクロプロセッサは、上記電位差に基づいて、電流検出対象回路に流れている電流値を取得することができる。
【0031】
シャント抵抗器12は、抵抗本体20と、端子部材21と、を備えている。本実施形態のシャント抵抗器12は、端子部材21が抵抗本体20とは別体として構成された構成である。当該端子部材21は、抵抗本体20に対してネジ止めにより固定されている。
【0032】
端子部材21は、抵抗本体20の適宜箇所に2つ設けられる。本実施形態のバッテリー状態検知装置10において、電流を検出する手法としては公知の4端子法を採用している。そこで、各端子部材21の先端は2股に分岐して形成されており、2本の回路接続端子22が形成されている。従って、本実施形態のシャント抵抗器12は、計4本の回路接続端子22を有する構成となっている。
【0033】
次に、端子部材21の構成について詳しく説明する。
【0034】
図2に示すように、端子部材21は、抵抗接続部23と、回路接続部24と、を有している。
【0035】
抵抗接続部23は、抵抗本体20に接触する部分である。この抵抗接続部23は、抵抗本体20に対して締結体によって締め付けられることにより、当該抵抗本体20に対して物理的かつ電気的に結合される。具体的には、図2に示すように、抵抗接続部23にはネジ止め孔(挿通孔)25が形成されている。当該ネジ止め孔25を介して、抵抗本体20にネジ(締結体)26(図1)を螺入することにより、端子部材21と抵抗本体20とが物理的に固定され、両者が電気的に接続される構成である。このように、ネジ止め孔25によって、端子部材21と抵抗本体20とが結合されるので、当該ネジ止め孔25は結合部であると言うことができる。
【0036】
回路接続部24は、抵抗接続部23から延伸して設けられるとともに、抵抗接続部23から略直角に折り曲げて設けられている。回路接続部24にはスリット27が形成されており、これにより回路接続部24は2分割されている。2分割された回路接続部24のそれぞれは、前記回路接続端子22とされている。各回路接続端子22は、図1に示すように回路基板11に突出し、ハンダ付け等の適宜の手段により、回路基板11上の電気回路に接続される。2本の回路接続端子22のうち、一方は前記電流検出対象回路を通して前記A/Dコンバータに接続される。
【0037】
なお、回路接続端子22の中途部分には、断面略U字状に屈曲された緩衝部28が形成されている。この緩衝部28により、線膨張による応力を逃がすことができるようになっている。
【0038】
次に、本発明の特徴的な構成について説明する。
【0039】
前述のように、抵抗本体と端子部材とを別体として設けた場合、十分なセンシング精度を実現できない場合があった。本願発明者らは、端子部材の形状を改良することにより、センシング精度を向上させることができることを見出し、本願発明を完成させた。
【0040】
即ち、従来の端子部材100においては、図6に示すように、スリット104は回路接続部102の一部にのみ形成されていた。言い換えれば、スリット104は、抵抗本体に接触する抵抗接続部101には形成されていなかった。このため、図3(a)に示すように、2本の回路接続端子105に流れる電流の経路(図中に太線の矢印で図示)が、抵抗接続部101においてクロスしていた。このように電流経路がクロスしていたので、それぞれの回路接続端子105に流れ込む電流が不安定になり、結果としてセンシング精度が低下していたと考えられる。
【0041】
また、端子部材と抵抗本体を別体として構成されたシャント抵抗器に生じる電位差を測定しようとした場合、シャント抵抗の抵抗値による電圧降下に加えて、端子部材と抵抗本体との接触抵抗による電圧降下が測定されることになる。従来の端子部材100においては、回路接続端子105の根元部分において、端子部材100と抵抗本体とが広い面積で接触するため、接触抵抗による電圧降下が大きくなり、この点でも測定精度が抵抗していた。
【0042】
そこで本実施形態の端子部材21においては、スリット27を、回路接続端子22の長手方向で回路接続部24の全長にわたって形成している。即ち、回路接続部24は、完全に2分割されている。更に、このスリット27の先端は、抵抗接続部23にまで達している。より具体的には、スリット27は、ネジ止め孔25に連通している。従って、回路接続端子22は、根元部分(抵抗本体20との接触部分)において、互いに接触していない。このように形成することにより、2本の回路接続端子22の独立性が高まる結果、図3(b)に示すように、回路接続端子22に流れる電流の経路(図中に太線の矢印で図示)が、抵抗接続部23においてクロスしなくなる。このように電流経路がクロスしなくなるので、それぞれの回路接続端子22に流れ込む電流が安定化し、センシング精度を向上させることができる。
【0043】
また本実施形態の端子部材21においては、上記のようにスリット27を形成しているので、回路接続端子22は、その根元部分において抵抗本体20と小さな面積で接触することになる。即ち、電流が流れる抵抗本体20と、当該抵抗本体20に発生する電位差を測定するA/Dコンバータと、を一点で接続することができる。これにより、端子部材21と抵抗本体20との接触抵抗による電圧降下が小さくなり、この点でもセンシング精度を向上させることができる。
【0044】
なお、図2等に示すように、本実施形態の端子部材21において、スリット27は抵抗接続部23の途中まで(ネジ止め孔25まで)形成されている。即ち、端子部材21は完全に2分割されている訳ではない。このように、本実施形態の端子部材21は、2本の回路接続端子22の独立性を高めつつ、1部品として取り扱うことができる。また、本実施形態の端子部材21は、一回のネジ止めで抵抗本体20に固定することができる。従って、本実施形態のシャント抵抗器12の組立にかかる手間は、従来の端子部材100を用いたシャント抵抗器と同程度であり、組立コストが増大することはなく、部品点数が増えることもない。
【0045】
以上で説明したように、本実施形態のシャント抵抗器12は、抵抗本体20と、抵抗本体20に対して電気的に接続する端子部材21と、を備える。端子部材21は、抵抗本体20に接触する抵抗接続部23と、抵抗接続部23から延伸して設けられる回路接続部24と、を有する。回路接続部24は、スリット27が形成されることにより2分割されている。そして、前記スリット27は、抵抗接続部23の一部まで形成されている。
【0046】
このように、回路接続部24を2分割するスリット27を抵抗接続部23まで形成することにより、2本の回路接続端子22同士が根元部分で繋っていないので、当該回路接続端子22に流れる電流の経路がクロスしない。これにより、2本の回路接続端子22それぞれに流れる電流が安定するので、このシャント抵抗器12を用いた電流検出のセンシング精度が向上する。また、スリット27は抵抗接続部23の一部にのみ形成されているので、端子部材21は完全に2分割されている訳ではなく、抵抗接続部23で繋っている。従って、端子の部品点数が増えることも無く、抵抗本体20への取り付け作業も1回で済むため、組み立てコストが増大することもない。
【0047】
また本実施形態のシャント抵抗器12は、以下のように構成されている。即ち、端子部材21は、抵抗本体20に対してネジ26によって締め付けられることにより、当該抵抗本体20に対して物理的かつ電気的に結合される。抵抗接続部23には、前記ネジ止めのためのネジ26を挿通させるネジ止め孔25が形成されている。そして、スリット27は、ネジ止め孔25に連通して形成されている。
【0048】
このように、端子部材21と抵抗本体20をネジ26によって結合することにより、両者を強固に連結することができる。そして、ネジ止め孔25までスリット27を形成することにより、2本の回路接続端子22の独立性が向上し、電流経路がクロスしにくくなるので、このシャント抵抗器12を用いた電流検出のセンシング精度が更に向上する。
【0049】
また本実施形態のバッテリー状態検知装置10は、上記のシャント抵抗器12と、当該シャント抵抗器12の回路接続端子22が接続される回路基板11と、を備えている。
【0050】
このバッテリー状態検知装置10によれば、回路基板11に流れる電流を精度良く検出することができる。
【0051】
次に、上記第1実施形態の変形例について説明する。
【0052】
上記第1実施形態では、抵抗接続部23を、抵抗本体20に対してネジ止めする構成とした。しかし、抵抗接続部23と抵抗本体20とを接続する方法は、ネジ止めに限らず、適宜の方法を採用することができる。例えば、以下に説明する変形例は、抵抗接続部23と抵抗本体20を、溶接によって物理的かつ電気的に結合する構成としたものである。そして、前記スリット27を、抵抗接続部23と抵抗本体20とが溶接されている部分まで形成する。このようにスリット27を形成することにより、2本の回路接続端子22の独立性を高めることができるので、センシング精度を向上させるという上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、この場合はネジ止め孔25は必要ないので、これを省略することができる。
【0053】
以上のように、この変形例においては、抵抗本体20と抵抗接続部23との間に形成された溶接部までスリット27が形成されている。
【0054】
このように、端子部材21と抵抗本体20を溶接によって結合することにより、両者の電気的接続を確実なものにすることができる。そして、溶接部までスリット27を形成することにより、2本の回路接続端子22の独立性が向上し、電流経路がクロスしにくくなるので、このシャント抵抗器を用いた電流検出のセンシング精度が更に向上する。
【0055】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。なお、上記第1実施形態と同一又は類似の構成については、図面及び要素名に同一の符号を付して、説明を省略する。
【0056】
図4に、第2実施形態に係る端子部材31を示す。図4(a)に示すように、この端子部材31の抵抗接続部23において、抵抗本体20に接触する面と反対側の面には、円形のディンプル32が形成されている。これにより、ディンプル32が形成された面とは反対側の面、即ち抵抗本体20に接触する面(図4(b)の下向きの面)には、抵抗本体20に向けて突出する突出部33が形成されている。
【0057】
このように抵抗接続部23に突出部を設けることにより、当該抵抗接続部23と、抵抗本体20と、をネジ止めした際に、両者の間の接触を安定させることができる。これにより、抵抗本体20と、端子部材31と、の電気的接続をより確実なものにすることができる。
【0058】
また、図4(c)に示すように、この突出部33は、抵抗接続部23に形成されたスリット27を挟んで、対になって形成されている。これにより、回路接続端子22の根元部分において、各回路接続端子22に対応して突出部33が設けられた構成となっている。この構成により、それぞれの回路接続端子22が抵抗本体20に対して確実に接続されるので、各回路接続端子22に流れる電流が安定する。しかも、それぞれの回路接続端子22に突出部33が設けられているので、回路接続端子22同士の独立性が更に向上し、電流経路がクロスしにくくなる。
【0059】
なお本実施形態の端子部材31においては、ネジ止め孔25を挟んで、2つの突出部33の反対側に、オーバル形状の突出部34を形成している。これにより、端子部材31を抵抗本体20にネジ止めする際には、2つの突出部33と、突出部34と、によって端子部材31が3点支持されるので、アライメントを確保することができる。
【0060】
以上で説明したように、第2実施形態のシャント抵抗器が備える端子部材31は、以下のように構成されている。即ち、抵抗接続部23は、抵抗本体20側に向けて突出する突出部33を、当該抵抗接続部23に形成されたスリット27を挟んで1対設けている。
【0061】
このように突出部33を設けることにより、抵抗本体20と端子部材21との接触を安定させ、両者の電気接続の確実性を向上させることができる。つまり、スリット27を挟んで対で突出部33を設けることにより、2本の回路接続端子22のそれぞれに対応して突出部33を設けることになるので、2本の回路接続端子22に流れる電流の経路がクロスしにくくなり、センシング精度が更に向上する。
【0062】
次に、上記第2実施形態の変形例について、図5を参照して説明する。
【0063】
図5に示すように、この変形例に係る端子部材41は、上記の突出部33に代えて、抵抗接続部23にウイング部43が形成されている。このウイング部43は、抵抗接続部23に2本の平行な切り込みを入れ、当該切り込みの間の部分を、抵抗本体20側に向けて若干折り曲げて形成したものである。このように折り曲げることにより、ウイング部43の先端は、抵抗本体20側に若干突出した状態となる(従って、このウイング部43も突出部として把握することができる)。またこの変形例の端子部材41において、ウイング部43は、上記第2実施形態における突出部33と同様に、抵抗接続部23に形成されたスリット27を挟んで対になって形成されている。
【0064】
この構成の端子部材41を抵抗本体20にネジ止めすると、ウイング部43が弾性変形することにより、抵抗接続部23は平坦な状態となる。しかし、ウイング部43の部分においては、抵抗接続部23と抵抗本体20との間の接圧が高い状態となるので、両者の電気的接続を確実なものとし、信頼性を向上させることができる。
【0065】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0066】
端子部材の形状は必ずしも図に示したものに限らない。例えば、図面では、抵抗接続部23から回路接続部24が略直角に折り曲げられて形成されているが、必ずしもこのように抵抗接続部23から回路接続部24が折り曲げられていなくても良い。また、緩衝部28は省略することもできる。
【0067】
また、抵抗本体20と端子部材21とを締め付ける締結体はネジに限らない。例えば、両者をカシメによって締め付ける構成であっても良い。
【0068】
本発明のシャント抵抗器は、バッテリーの電流を測定する用途に限らず、電流測定のために広く利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
10 バッテリー状態検知装置
11 回路基板
12 シャント抵抗器
20 抵抗本体
21 端子部材
25 ネジ止め孔(結合部)
27 スリット
33 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗本体と、
前記抵抗本体に対して電気的に接続する端子部材と、
を備えたシャント抵抗器であって、
前記端子部材は、
前記抵抗本体に接触する抵抗接続部と、
前記抵抗接続部から延伸して設けられる回路接続部と、
を有し、
前記回路接続部は、スリットが形成されることにより2分割されており、
前記スリットは、前記抵抗接続部の一部まで形成されていることを特徴とするシャント抵抗器。
【請求項2】
請求項1に記載のシャント抵抗器であって、
前記抵抗接続部には、前記抵抗本体に対して物理的かつ電気的に結合する結合部が形成されており、
前記スリットは、前記結合部の少なくとも一部まで形成されていることを特徴とするシャント抵抗器。
【請求項3】
請求項2に記載のシャント抵抗器であって、
前記端子部材は、前記抵抗本体に対して締結体によって締め付けられることにより、当該抵抗本体に対して物理的かつ電気的に結合されるように構成されており、
前記結合部は、前記締結体を挿通させるために前記抵抗接続部に形成された挿通孔であり、
前記スリットは、前記挿通孔に連通して形成されていることを特徴とするシャント抵抗器。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のシャント抵抗器であって、
前記抵抗接続部は、前記抵抗本体側に向けて突出する突出部を、当該抵抗接続部に形成された前記スリットを挟んで少なくとも1対設けていることを特徴とするシャント抵抗器。
【請求項5】
請求項2に記載のシャント抵抗器であって、
前記結合部は、前記抵抗本体と前記抵抗接続部との間に形成された溶接部であることを特徴とするシャント抵抗器。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載のシャント抵抗器と、
当該シャント抵抗器の前記回路接続部が接続される回路基板と、
を備えることを特徴とするバッテリー状態検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−215452(P2012−215452A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80402(P2011−80402)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】