説明

シュウ酸塩関連疾患を治療または予防するための医薬組成物および方法

本発明は、ヒト、動物および植物のシュウ酸塩を減少させる方法および組成物を包含する。例えば、本発明は1以上のシュウ酸塩低減医薬組成物を、ヒトおよび動物の腸管に送達する方法および組成物を提供する。本方法および組成物は、シュウ酸塩関連疾患を治療および予防するのに使用することができる。本発明の組成物は、シュウ酸塩分解細菌、1以上の凍結保護剤および1以上の賦形剤を含有する経口送達ベヒクルを含む。本発明の組成物は腸溶性コーティング剤であり、そして適当な有効期限、および経口的に投与される場合に胃液から受ける悪影響を回避するために許容可能な特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2005年12月14日出願のPCT/US05/45457の継続出願である。
【0002】
発明の分野
本発明は、シュウ酸塩関連疾患を治療および予防する組成物ならびに方法に関する。さらに詳細には、本発明はシュウ酸塩分解またはシュウ酸塩低減細菌および酵素を含む組成物ならびに方法に関する。
【0003】
本発明の背景
腎尿路結石疾患(尿石症)は、世界中で主要な健康問題のひとつである。尿石症に関連する結石の多くは、シュウ酸カルシウムのみ、またはシュウ酸カルシウムとリン酸カルシウムとから構成される。他の症状もまた、過剰なシュウ酸塩に関連付けられてきた。これらは、外陰部痛、末期の腎臓病に伴うシュウ酸症、心臓伝導障害、クローン病および他の腸疾患状態を含む。
【0004】
シュウ酸および/またはその塩であるシュウ酸塩は、多種多様な食物中に見られ、ゆえに、ヒトおよび動物の食品における多くの構成物質の成分である。シュウ酸塩の吸収の増加は、シュウ酸を多く含む食物を摂取した後に起こり得る。ホウレンソウおよびルバーブ等の食物は、多量のシュウ酸塩を含むことがよく知られているが、しかし、数多くの他の食物および飲料もまたシュウ酸塩を含む。シュウ酸塩は、そのような多種多様な食物に見られるため、シュウ酸塩が少なく、かつ美味でもある食事を作るのは困難である。さらに、低シュウ酸塩の食事を遵守することは困難であることが多い。
【0005】
内在性のシュウ酸塩もまた、正常な組織の酵素によって代謝的に生産される。吸収された食事のシュウ酸塩ならびに代謝的に生産されたシュウ酸塩を含むシュウ酸塩は、組織の酵素によってそれ以上代謝されないため、排出する必要がある。この排出は主に腎臓を経由して起こる。シュウ酸塩濃度の上昇は、シュウ酸カルシウム結晶の形成と、それに続く腎結石の形成の危険性を上昇させるため、腎液中のシュウ酸塩濃度は重要である。
【0006】
腎結石の形成に対する危険性は、未だ完全に理解されていない多くの因子による。腎臓または尿路結石疾患は、西欧諸国の12%もの人々に発症し、これらの結石の約70%がシュウ酸カルシウムまたはシュウ酸カルシウムとリン酸カルシウムから構成される。ある個体(例えば、クローン病、炎症性腸疾患または脂肪便症等の腸疾患を患う患者、および空腸回腸バイパス手術を受けた患者も)は、他人よりも多くのシュウ酸塩を食事から吸収する。これらの個体については、シュウ酸塩尿結石症の罹患率が顕著に増加する。疾患の罹患率増加は、腎臓および尿中シュウ酸塩レベルの増加によるもので、これは、ヒトにおいて最も一般的な高シュウ酸尿症候群であり、腸管高シュウ酸症として知られる。シュウ酸塩はまた、末期の腎臓病を患う患者においても問題であり、尿中のシュウ酸塩の増加はまた膣前庭炎(外陰部痛)にも関与するという最近の証拠がある(Solomons, C. C., M.H. Melmed, S. M. Heitler(1991)”Calcium citrate for vulvar vestibulitis” Journal of Reproductive Medicine 36:879-882)。
【0007】
シュウ酸塩を分解する細菌が、ヒトの便より単離されている(Allison, M. J., H. M. Cook, D. B. Milne, S. Gallagher, R. V. Clayman(1986)”Oxalate degradation by gastrointestinal bacteria from humans” J. Nutr. 116:455-460)。これらの細菌は多くの種の動物の腸内容物より単離されたシュウ酸塩低減細菌と類似していることが分かった(Dawson, K. A., M. J. Allison, P. A. Hartman(1980)”Isolation and some characteristics of anaerobic oxalate-degrading bacteria the rumen” Appl. Environ. Microbiol. 40:833-839;Allison, M. J., H. M. Cook(1981)”Oxalate degradation by microbes of the large bowel of herbivores:the effect of dietary oxalate” Science 212:675-676;Daniel, S. L., P. A. Hartman, M. J. Allison(1987)”Microbial degradation of oxalate in the gastrointestinal tracts of rats” Appl. Environ. Microbiol. 53:1793-1797)。これらの細菌は、これまでに記載されたいずれの生物とも異なり、新規の種と新規の属名とが与えられた(Allison, M. J., K. A. Dawson, W. R. Mayberry, J. G. Foss(1985)”Oxalabacter formigenes gen. nov., sp. nov.: oxalate-degrading anaerobes that inhabit the gastrointestinal tract” Arch. Microbiol. 141:1-7)。
【0008】
すべてのヒトが腸管にO.フォルミジェネスの個体群を有するわけではない(Allison, M. J.,S. L. Daniel, N. A. Comick(1995)”Oxalate-degrading bacteria” Khan, S. R.(監修), Calcium Oxalate in Biological Systems CRC Press;Doane, L. T., M. Liebman, D. R. Caldwell(1989)”Microbial oxalate degradation: effects on oxalate and calcium balance in humans” nutrition Research 9:957-964中)。空回腸バイパス手術を受けた個人の便のサンプル中のシュウ酸塩分解細菌は、低濃度であるかまたは完全に欠如している(Allisonら(1986)”Oxalate degradation by gastrointestinal bacteria from humans” J. Nutr. 116:455-460)。また、特定のヒトおよび動物は、O.フォルミジェネスのコロニーを維持し得るが、それにもかかわらず、シュウ酸塩が過剰なレベルになっており、その理由は不明である。
【0009】
必要であるのは、シュウ酸塩関連疾患を治療または予防するために、体内のシュウ酸塩レベルを減少させてヒトおよび動物を治療する方法である。望ましい方法は、シュウ酸塩低減組成物の投与を含む。シュウ酸塩分解細菌を含む腸溶性コーティング組成物が開示されている。しかしながら、本発明者らは、シュウ酸塩分解細菌を腸に送達するように設計された経口投与のための組成物(つまり、そのような組成物は胃を通過するときに活性を損なうことなく、胃を通って腸へとシュウ酸塩分解細菌を通過させることが可能である)を開発する必要性があることを認識していた。さらに、保存状態下において容認可能な有効期限も有するような組成物を開発する必要がある。
【0010】
発明の概要
本発明は、シュウ酸塩関連疾患を治療および予防する組成物および方法を包含する。本発明の組成物は、シュウ酸塩を減少させる微生物および/または酵素を含有する医薬組成物を含む。さらに詳細には、本発明はヒトまたは動物に経口投与するための組成物、経口投与に際してヒトまたは動物の腸内にシュウ酸塩分解細菌を送達するためにi)シュウ酸塩分解細菌;ii)1以上の凍結保護剤、iii)1以上の賦形剤を含むシュウ酸塩分解組成物を含有する経口送達ベヒクルを含む組成物を提供する。組成物は適当な保存有効期限を有するように設計され、さらにこれがシュウ酸塩分解細菌の腸への送達を可能にする。本発明は、その酵素が例えばpHが約6.8以上等の腸内環境で活性である限りは、1以上の適当なシュウ酸塩分解酵素を細菌に代用してもよく、あるいは、組成物中の細菌に加えて1以上の適当なシュウ酸塩分解酵素を添加し得ることを企図する。現在、発明者らの知る限りでは、天然のオキサリルCoAデカルボキシラーゼのみがそのようなpHにおいて活性であるが、しかしこの酵素はまた、シュウ酸塩をオキサリルCoAデカルボキシラーゼの基質であるオキサリルCoAに活性化するために、ホルミルCoAトランスフェラーゼも必要とする。将来、修飾酵素が開発されるかも知れない。精製酵素を使用することは、活性、純度等に関してさらなる利点を提供することになる。本発明によって提供される組成物は十分に安定しており、そして、胃において細菌のいかなる実質的な分解をも回避するために、胃を通過する間にいかなる内容物の流出をも回避するように製剤化される。
【0011】
本発明の方法は、シュウ酸塩関連疾患を治療または予防するための医薬組成物を投与すること、およびそのような医薬組成物を製造する方法を包含する。1つの実施形態は、胃腸管内のシュウ酸塩の量を減少させることによって、シュウ酸塩関連障害を発症する危険性を低下させる方法を包含する。この胃腸管における減少は、全身的なシュウ酸塩レベルの低下をもたらし、よって良好な健康状態を促進する。
【0012】
本発明の1つの実施形態において、シュウ酸塩吸収の減少は胃腸管へのシュウ酸塩分解細菌の供給によって達成される。ある実施形態において、これらの細菌はオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)である。これらの細菌はシュウ酸塩を基質として利用する。この利用が腸内の可溶性シュウ酸塩の濃度を低下させ、ゆえに吸収され得るシュウ酸塩の量を低下させる。胃腸管内のシュウ酸塩の減少はまた、循環器系からのシュウ酸塩の除去をももたらし得る。本発明の方法は、個体に取り込まれるシュウ酸塩の全体的な減少を企図する。
【0013】
特定の実施形態において、本発明は、シュウ酸塩関連疾患の危険性の高い個人の胃腸管へ、生きたO.フォルミジェネスを送達する方法および組成物を提供する。細菌は腸管からシュウ酸塩を除去するため、吸収され得るシュウ酸塩の量が減少し、血液から腸内へ排出されるシュウ酸塩の増加をもたらす。
【0014】
本発明の教示によれば、O.フォルミジェネス以外のシュウ酸塩分解微生物であって、シュウ酸塩を基質として利用するものもまた、治療的なシュウ酸塩分解を達成して、尿石症および他のシュウ酸塩関連疾患の危険性を低下させるのに使用することができる。そのような他の微生物は、例えば、クロストリジウム(Clostridia)またはシュードモナス(Pseudomonads)等の細菌であり得る。さらに、本発明は、天然ではシュウ酸塩低減酵素を産生しない微生物にシュウ酸塩低減能を付与することが可能な外因性のポリヌクレオチド配列を提供するための方法および組成物を包含する。そのようなポリヌクレオチド配列は、本来的にシュウ酸塩を減少させることのできないそのような未処理の微生物を、シュウ酸塩を減少させることのできる微生物に形質転換するのに使用することができる。これらの形質転換微生物は、本発明の方法および組成物に使用してもよく、これらは本明細書において企図される。
【0015】
本発明の1つの実施形態において、組成物は、シュウ酸塩を分解する微生物、およびこれらの微生物にシュウ酸塩を分解する能力を付与する酵素を産生する微生物を含む。別の実施形態において、組成物は形質転換微生物にシュウ酸塩を分解する能力を付与するポリヌクレオチド配列で形質転換された微生物を含み得る。シュウ酸塩低減遺伝子およびタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、本発明によって企図される。細菌もしくは菌類等のシュウ酸塩低減微生物に見られる酵素、または他のシュウ酸塩低減酵素をコードするポリヌクレオチド配列は、本発明の方法において使用することができる。ポリヌクレオチド配列は、微生物または細胞が天然のシュウ酸塩低減微生物よりも高いシュウ酸塩低減活性を有するように、同等のシュウ酸塩低減活性を有するように、または低いシュウ酸塩低減活性を有するように、微生物または細胞を形質転換するのに使用され得る。ポリヌクレオチド配列はまた、シュウ酸塩低減活性を有するタンパク質を提供するために、合成系またはex vivo系において使用され得る。そのような微生物または酵素は、本明細書で教示される医薬組成物および製剤として提供される組成物中に提供することができ、ここで、微生物または酵素は、当技術分野で知られる賦形剤および他の医薬担体を含む医薬製剤中に提供され得る。さらに、そのような医薬組成物は、ヒトまたは動物の胃腸管に送達するために、粉末、カプセル剤、丸剤、顆粒剤または錠剤等の送達ベヒクルを含む。
【0016】
シュウ酸塩分解に関与する酵素は、本発明の方法および組成物に使用してもよく、それらはホルミルCoAトランスフェラーゼ、オキサリルCoAデカルボキシラーゼ、シュウ酸オキシダーゼ、シュウ酸デカルボキシラーゼ、ならびに、シュウ酸塩分解経路の置換成分であるか、またはシュウ酸塩代謝経路、特にシュウ酸塩低減に関与する他の酵素、補因子および補酵素を含むが、これらに限定されない。
【0017】
本発明の1つの実施形態において、これらの酵素または酵素関連活性をコードする外因性のポリヌクレオチド配列により適切な宿主を形質転換することができ、形質転換宿主にシュウ酸塩分解を増強する能力を付与する。宿主は、例えば、特に経口投与に、および/または腸でコロニーを形成するのによく適した微生物であり得る。あるいはまた、宿主は、一度形質転換をすれば、所望の酵素活性を産生して、これにより植物材料が消化されるときにこれらの活性が腸内で利用されるようにする植物であってもよい。あるいはまた、形質転換植物は、形質転換によって提供されるタンパク質の作用によって任意に、より少量のシュウ酸塩を有してもよく、ゆえに消化されるときに、この植物は非形質転換植物の場合ほどシュウ酸塩を食事に提供しない。
【0018】
本発明はまた、シュウ酸塩分解酵素またはシュウ酸塩低減酵素で形質転換した植物についての方法および組成物を包含し、ここで、これらの植物は、植物の病因にシュウ酸塩を必要とする菌類、または植物の病因のメカニズムとしてシュウ酸を産生する菌類に対して、増強された耐性を有する。
【0019】
本発明はまた、シュウ酸塩関連疾患を治療または予防するために、シュウ酸塩レベルを低下させる酵素を含む方法および組成物を包含する。例えば、シュウ酸塩レベルの低下は、シュウ酸塩の分解に作用する酵素を投与することによって達成される。これらの酵素は単離および精製されていてもよく、また、細胞溶解物として投与してもよい。細胞溶解物は、シュウ酸塩低減能を有する任意の微生物(例えばO.フォルミジェネス)から作製され得る。特定の実施形態において、投与される酵素は、シュウ酸デカルボキシラーゼ、シュウ酸オキシダーゼ、ホルミルCoAトランスフェラーゼ、およびオキサリルCoAデカルボキシラーゼ等の本発明の1以上の酵素であるが、これらに限定されない。酵素活性を向上させる追加因子を任意に投与してもよい。これらの追加因子は、例えば、オキサリルCoA、MgCl2およびTPP(チアミン二リン酸、ビタミンB1の活性型)であり得る。酵素を含む医薬組成物は、1以上の酵素、ならびに、任意に、補因子、補酵素および酵素活性を増大させる他の物質を、別々にまたは組み合わせて含み、そして、医薬上許容され得る担体および賦形剤と共に提供される。
【0020】
本発明の1つの実施形態において、シュウ酸塩レベルの減少は、シュウ酸塩分解酵素を発現するように形質転換された大腸菌(Escherichia coli)等の組換え微生物によって産生されるシュウ酸塩分解酵素を投与することによって達成される。組換え宿主は、生存型または非生存型のどちらかで投与され得る。本発明のさらなる態様は、経口投与のための医薬組成物および/または栄養補助食品に関連する。これらの組成物は、ヒトまたは動物の腸において、シュウ酸塩分解微生物またはシュウ酸塩分解酵素を放出する。本発明の組成物は、医薬上許容され得る製剤を含む。例えば、本発明の方法および組成物は、受容者の胃腸管への組成物の送達等、組成物を所望の部位へ提供する用量送達システムを含む。本発明の組成物は、乳、肉およびヨーグルト等の食物の構成成分として投与され得る。
【0021】
本発明のさらなる実施形態において、シュウ酸塩吸収の減少は、シュウ酸塩分解微生物、植物および酵素を別々にまたは組み合わせて投与することによって、シュウ酸塩分解細菌を欠く家畜、農業動物または外来動物において達成される。
【0022】
本発明の方法は、1以上のシュウ酸塩低減微生物、1以上のシュウ酸塩低減酵素、またはそれらの組み合わせおよび混合物を含む有効量のシュウ酸塩低減組成物を投与することによって、ヒトおよび動物におけるシュウ酸塩関連疾患を治療または予防することを包含する。シュウ酸塩関連疾患は、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿石症)、腸管高シュウ酸症、外陰部痛、末期の腎臓病に伴うシュウ酸症、心臓伝導障害、炎症性腸疾患、クローン病および潰瘍性大腸炎を含むが、これらに限定されない。
【0023】
発明の詳細な説明
本発明は、シュウ酸塩低減のための方法および組成物を包含する。本発明の組成物は細菌を含むが、これはいくつかの実施形態において、シュウ酸塩を減少させることが可能な微生物、酵素、ポリヌクレオチド配列、ベクター、細胞、植物または動物を含み得る。組成物は、シュウ酸塩を減少させることが可能な微生物を含む。そのような微生物は、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)、シュードモナス(Pseudomonas)、クロストリジウム(Clostridia)、ラクトバチルス(Lactobacilli)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacteria)を含むが、これらに限定されず、これらのいくつかまたはすべてはシュウ酸塩を分解することができ、また、シュウ酸塩を減少させる能力が付与されるように外因性のポリヌクレオチド配列で形質転換された細菌または菌類等の微生物も含む。さらに、本発明の微生物は、シュウ酸塩低減酵素または微生物が「超低減剤(super reducers)」となるように、シュウ酸塩低減酵素または関連活性をコードする内因性または外因性のポリヌクレオチド配列を含む1以上のシュウ酸塩低減ベクターで形質転換された微生物を含む。超低減剤は、例えば、付加的なシュウ酸塩低減配列によるオキサロバクター・フォルミジェネスの形質転換において、もともと有するシュウ酸塩低減能が増強されたものであるか、あるいは、本来的にはシュウ酸塩低減活性を有さない微生物において、シュウ酸塩低減活性の増強をもたらすシュウ酸塩低減ペプチドをコードする1以上の配列を用いて形質転換することによりシュウ酸塩低減能が増強されたものである。シュウ酸塩低減活性をコードする配列は、微生物に見られるゲノムまたは他のベクター内に挿入(intercalate)してもよく、しなくてもよい。そのような形質転換は、シュウ酸塩低減タンパク質もしくはペプチドをコードする遺伝子配列の提供を含んでもよく、またはアンチセンスもしくはiRNA等のブロッキングヌクレオチドを提供してもよい。ポリヌクレオチド配列の導入および微生物の形質転換についての技術は、当技術分野において知られている。
【0024】
組成物はまた、シュウ酸塩低減経路の構成成分である酵素を含む。そのような組成物は、1以上の酵素、ならびに、任意に、補因子、補酵素、および酵素活性に必要とされるかまたは望まれる他の因子を含む。組成物は、シュウ酸塩低減酵素、および植物、動物またはヒトで見られるシュウ酸塩代謝に関与する他の酵素を含むが、これらに限定されない、1以上の酵素を含む。本組成物は、本明細書で教示する1以上のシュウ酸塩低減酵素を含む。本明細書で使用する、用語「1以上の酵素」は、1つのタイプの酵素が存在することを意味してもよく(例えば、ホルミルCoAトランスフェラーゼが意図される)、あるいは、2以上のタイプの酵素が組成物に存在することを意味してもよい(例えば、オキサリルCoAデカルボキシラーゼおよびホルミルCoAトランスフェラーゼ;シュウ酸デカルボキシラーゼおよびシュウ酸オキシダーゼ、または野生型酵素と変異型酵素との組み合わせを含む組成物など)。当技術分野において知られているように、本用語は1つの酵素分子ではなく、1以上の酵素タイプの複数の分子を意味する。
【0025】
本明細書で使用されるように、用語、シュウ酸塩分解酵素およびシュウ酸塩低減酵素は同義であり、どちらも任意の生物においてシュウ酸塩の減少または分解に関与する酵素、ならびに、シュウ酸塩を減少させるかもしくは分解することのできる活性フラグメントまたは活性フラグメントを含む組換えタンパク質を指す。
【0026】
本発明の組成物はまた、シュウ酸塩低減経路に関与するペプチドまたはタンパク質をコードするポリペプチド配列を含む。そのようなポリペプチド配列は、任意の供給源に由来するものであってよく、微生物、植物または動物由来の細胞、および全生物を含む細胞の形質転換等の当業者に知られる方法において使用することができる。
【0027】
本発明の組成物はまた、生きたシュウ酸塩低減細菌、および任意に、医薬賦形剤または担体を送達ベヒクル中に含有する医薬組成物を含む。組成物はまた、1以上の精製されたシュウ酸塩低減酵素(それら酵素の天然原料から精製された酵素、組換え技術によって産生された酵素、または合成によって産生された酵素を含むがこれらに限定されない)を含有する医薬組成物、および任意に医薬賦形剤または担体を送達ベヒクル中に含む。
【0028】
本発明の医薬組成物は、粉末、カプセル剤、丸剤、顆粒剤および錠剤を含むがこれらに限定されない経口送達ベヒクルを含み、これらは胃等の厳しい環境に耐えるようにコーティングされ得る。そのような経口送達ベヒクルは、本明細書で教示する用量および方法において、生きたシュウ酸塩低減細菌および酵素を送達するのに使用される。そのような医薬組成物は安定である。組成物は、生きた細菌、および適切(relevant)であれば、少なくとも12ヵ月に渡って活性を有する酵素を、cfu(コロニー形成単位)および酵素活性の減少を最小限に抑えて提供し得る。
【0029】
さらに具体的には、本発明の組成物は、経口送達ベヒクルがゲルカプセルを含むものであってもよい。特定の実施形態において、そのようなゲルカプセルは、それが胃を通過する間に胃液がカプセル内に侵入することを排除するためにさらに強化される。適切な強化とは、カプセルの2つの部分の縁を適切な材料で縫合することによってゲルカプセルを結束(banding)させることであることが見出されている。本発明者らは、ゲルカプセルをゼラチンで作製する場合、適切な縫合材はゼラチンであり、そしてゲルカプセルがヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)で作製される場合、適切な縫合材はHPMCであることを見出した。同じ特性を有する他の材料の組み合わせや使用もまた、適切であることが証明され得る。本発明の組成物に存在するシュウ酸塩分解細菌は、細胞のペースト、凍結乾燥粉末、マイクロ粒子またはナノ粒子、マイクロ粒子乳剤またはナノ粒子乳剤等の形態であってもよい。
【0030】
本発明の組成物の特徴は、酸性の胃の環境からの悪影響(胃に存在する酵素の悪影響も)に耐える能力である。1つの方法は、腸溶性コーティング剤を有する組成物を提供することである。これらの場合において、ゲルカプセルが結束して提供される場合、腸溶性コーティング剤は結束プロセスの後に施される。適切な腸溶性コーティング材は、通常、例えば腸溶性コーティング剤を産生するために製薬産業において通常使用される物質等のポリマー物質である。これらは、Remington's Pharmaceutical Scienceに挙げられる物質を含み、特に酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むセルロース誘導体;Roehm GmbH, Germanyから入手可能なEudragit(登録商標)LおよびS等のメタクリル酸コポリマーを含むメタクリル酸ポリマー;ならびに酢酸フタル酸ポリビニル等を含む。
【0031】
本発明の組成物において、シュウ酸塩分解活性が細胞ペーストによって提供される上で、シュウ酸塩分解組成物は、少なくとも約1×103〜約1×1013、約1×105〜約1×1012のcfu/gを有する。本発明の送達組成物中にない場合の細胞ペーストは、通常、より高いcfu/gを有しており、そして各々のプロセス段階は最終組成物のcfu/gが減少する一因となり、このことは調製中に考慮に入れるべきである。通常、本発明のシュウ酸塩分解組成物は、約5×105〜約1×1010または約5×105〜約5×107のcfu/単位剤形を有する。
【0032】
本発明の組成物は、例えばカプセル剤、サシェ剤(sachets)、錠剤等といった単位剤形で用いるのが都合がよい。興味深い実施形態において、本組成物はカプセルの形態である。錠剤もまた興味深いが、安定性および活性の低下の問題、つまり錠剤製造のプロセスの間に活性を損失する危険性を有し得る。さらに、錠剤の表面に施されるあらゆるコーティングは、細菌と直接的に接触することになる危険性を有し、そのために活性および安定性が減少する危険性が増大し得る。
【0033】
本明細書の実施例に示すように、本発明によって提供される組成物は、許容可能な保存安定性を有する。つまり、6ヵ月間4℃で保存する際の、本発明の組成物中のシュウ酸塩分解細菌のコロニー形成単位の減少は、最大3対数単位、例えば最大2対数単位、最大1対数単位、もしくは最大0.5対数単位等であり、ならびに/または12ヵ月間4℃で保存する際の、本発明の組成物中のシュウ酸塩分解細菌のコロニー形成単位の減少は、最大3対数単位、例えば最大2対数単位、最大1対数単位、もしくは最大0.5対数単位等である。
【0034】
さらに、またはあるいは、6ヵ月間-20℃で保存する際の、本発明の組成物中のシュウ酸塩分解細菌のコロニー形成単位の減少は、最大2対数単位、例えば最大1.5対数単位、最大1対数単位、もしくは最大0.5対数単位等であり、ならびに/または12ヵ月間-20℃で保存する際の、本発明の組成物中のシュウ酸塩分解細菌のコロニー形成単位の減少は、最大2対数単位、例えば最大1.5対数単位、最大1対数単位、もしくは最大0.5対数単位等である。
【0035】
許容される安定性はまた、酵素活性によっても表すことができる。つまり、本発明のシュウ酸塩分解組成物は、少なくとも約2mgシュウ酸塩分解/時〜約2500mgシュウ酸塩分解/時、例えば、約60〜約250mg/時または約20〜約100mg/時等のシュウ酸塩分解酵素活性/gを有する。
【0036】
いくつかの状況において、前記組成物の腸への送達が、腸でのシュウ酸塩分解細菌によるコロニー形成をもたらすことが企図される。細菌は、シュウ酸塩分解細菌での処理を停止した後の糞便物質の解析によって示されるように、通常の腸管内菌叢の一部となり得る。場合により、腸のコロニー形成は一過性である。ヒトの研究におけるこれまでの実験は、細菌はシュウ酸塩低減細菌での処理を停止後1週間の大便サンプルにおいて検出することができたが、しかし、処理後2週間で回収したサンプル中には存在しなかったことが示されている。
【0037】
本発明の組成物は、通常固体剤形として提供される。従って、シュウ酸塩低減組成物は凍結乾燥粉末を含むことが適当である。そのために、凍結保護剤が、特に組成物の調製中に存在することが適切である。適切な凍結保護剤は、糖質、アミノ酸、ポリマー、ポリオール、および有機酸の塩である。特定の実施形態において、凍結保護剤は例えばトレハロース等の二糖類である。
【0038】
他の特定の実施形態において、凍結保護剤は、トレハロース、グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、マルトース、スクロース、ジグルコース、ラフィノース、ならびに、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、タピオカデンプン、およびコムギデンプンを含むデンプンからなる群より選択される糖質であってもよく、または、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、イノシトール、およびマルチトール等の糖アルコールといった糖アルコールであってもよい。
【0039】
他の実施形態において、凍結保護剤は、例えばデキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、カゼインもしくはスキムミルク等のポリマーであり、またはグルタマート、システインおよび/もしくはグリセロールであってもよい。
【0040】
製薬産業においてよく知られている通り、医薬組成物の製剤化においては、組成物の技術的特性を調整するために、医薬上許容され得る賦形剤が使用され得る(例えば、カプセルまたは打錠機を充填するための粉末の流動性;個々の剤形の質量を増加させるための充填剤の添加;結合剤、増量剤、希釈剤等の添加)。本発明において、通常、各々の剤形の質量を増加させるために賦形剤を添加することが必要である。興味深い実施形態において、賦形剤はまた、例えば、例えばカプセル剤中に充填するための粉末の流動性を増加する特性、安定性を高める特性、または凍結保護剤もしくは除湿剤として機能し得る特性等の他の適切な特性も有する。従って、1つの実施形態において、本発明の組成物は医薬上許容され得る賦形剤である1以上の賦形剤を含む。特に、そのような賦形剤は充填剤であり得る。場合により、賦形剤はまた凍結保護特性を有する。
【0041】
本発明で使用されるそのような賦形剤の例示は、マルトデキストリン、ラフチロース/オリゴフルクトース、およびアルギン酸塩、または、ゼラチン、セルロース誘導体、ラクトースもしくはデンプン由来のものを含むが、これらに限定されない。特定の実施形態において、賦形剤は例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、またはアルギン酸カルシウムを含むアルギン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩等のアルギン酸塩である。
【0042】
本発明の組成物はまた、例えばセルロース、セルロース誘導体、シリカおよびシリカ誘導体等の1以上の除湿剤を含む。特定の例示は、セルロース、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはヒュームド二酸化ケイ素を含むシリカである。特に、微結晶性セルロースはAvicel(商標)であってもよく、および/またはヒュームド二酸化ケイ素はCabosil(商標)であってもよい。
【0043】
1以上の除湿剤の比表面積が、その機能に重要であることが企図される。従って、1つの実施形態において、1以上の除湿剤は、例えば少なくとも0.7m2/gまたは少なくとも1m2/g等の、少なくとも0.6m2/gの比表面積を有する。
【0044】
特定の実施形態において、送達ベヒクルはi)約0.5%〜約95%のシュウ酸塩分解細菌、ii)約0.1%〜約50%の1以上の凍結保護剤、iii)約3%〜約90%の1以上の賦形剤;ならびに/またはi)約3%〜約25%のシュウ酸塩分解細菌、ii)約1.5%〜約10%の1以上の凍結保護剤、iii)約45%〜約60%の1以上の賦形剤、および/もしくはiv)約1%w/w〜約5%w/wの除湿剤;ならびに/またはa)約0.5%〜約95%のシュウ酸塩分解細菌、b)約0.1%〜約50%の二糖類、c)約3%〜約85%のマルトデキストリン、d)約0.5%〜約25%のアルギン酸塩、およびe)約1.0%〜約60%のオリゴフルクトース;ならびに/またはa)約3%〜約25%のシュウ酸塩分解細菌、b)約1.5%〜約6%の二糖類、c)約45%〜約60%のマルトデキストリン、d)約4%〜約6%のアルギン酸塩、およびe)約20%〜約35%のオリゴフルクトースを含む。
【0045】
凍結乾燥粉末が使用されるこれらの場合において、粉末は通常、粒子サイズが約10ミクロン〜約2000ミクロンであり、例えば約500ミクロン〜約1500ミクロン、約800ミクロン等の約600ミクロン〜約1000ミクロンである。
【0046】
投与される組成物は通常、固形(例えば粒子の形態)または固体剤形(例えばサシェ剤、カプセル剤もしくは錠剤(例えば粒子が、当業者によく知られる方法によって適切な剤形にさらに加工される)の形態)である。そのために、例えば充填剤、結合剤、崩壊剤、着色剤、矯味剤、pH調整剤、安定化剤、緩衝化剤、可溶化剤、保存剤、酵素のための補因子等の、適切な医薬上許容され得る賦形剤が添加され得る。さらに、1以上のさらなる治療的物質および/もしくは予防的物質、ならびに/または他の酵素、補因子、物質、補酵素、無機物、およびシュウ酸塩を低減するのに有用な他の薬剤が添加され得る。
【0047】
適切な医薬上許容され得る賦形剤の例示は、:デキストリン、マルトデキストリン、デキストロース、フルクトース、グルコース、ラクトース、およびカルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、微結晶性セルロース(例えば種々の等級のAvicel(登録商標))を含むセルロース誘導体、デンプンまたは加工デンプン(例えばバレイショデンプン、トウモロコシデンプン、コメデンプン、アルファ化デンプン)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム(例えば塩基性リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム)、硫酸カルシウム、カルボキシアルキルセルロース、デキストラート、リン酸水素カルシウム(dibasic calcium phosphate)、ゼラチン、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、および滑沢剤として:タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、硬化植物油等を含む。
【0048】
本発明の組成物はまた、シュウ酸塩を減少させる機能を改変した植物および動物を含む。例えば、そのような植物は、非形質転換植物と比較した場合に、植物中のシュウ酸塩の量が低くなるように、または産生されるシュウ酸の量が増加するように、ポリヌクレオチド組成物によって形質転換された植物を含む。本発明の組成物はまた、シュウ酸塩を減少させる能力を増強した動物を含む。例えば、シュウ酸塩低減能が増強した動物は、シュウ酸塩関連疾患の研究のためのin vivoモデルとして使用することができる。
【0049】
本発明の方法は、本発明の組成物を製造および使用することを包含する。本発明の方法は、当業者に知られる外因性のポリヌクレオチド配列を導入するための方法によって、細胞、植物よび動物を形質転換することを包含する。そのようなポリヌクレオチド配列は、任意の供給源に由来するものであってよく、そして、微生物、植物または動物由来の細胞、および生物全体を含む細胞の形質転換等の当業者に知られる方法において使用することができる。本方法はまた、シュウ酸塩低減活性を有する細胞溶解物を含む組成物、シュウ酸塩低減活性を有する1以上の酵素を含む組成物、およびシュウ酸塩レベルを改変した植物または微生物から作製された食品成分を含む組成物を製造することを包含する。本方法はまた、生きたシュウ酸塩低減細菌を含む、安定な経口の医薬組成物の製造を包含する。
【0050】
本発明の方法は、本発明の組成物を使用することを包含する。そのような使用は、ポリヌクレオチド配列を細胞に供与して、シュウ酸塩を減少させる細胞の能力を増強または抑制することを含む。本発明は、植物または動物のシュウ酸塩レベルを改変するために、植物や動物に本発明の組成物を投与する方法を包含する。本方法はまた、食物の消化の間または植物によって取り込まれる間に、食物中のシュウ酸塩レベルを改変するために、本発明の組成物が食物もしくは肥料源中に、または食物もしくは肥料源と同時に、植物または動物に投与されるような食餌補給方法を包含する。
【0051】
本発明の方法は、シュウ酸塩関連疾患を治療または予防する方法を包含する。本方法は、生物におけるシュウ酸塩レベルを改変するのに有効な量の本発明の組成物を投与することを包含する。そのような方法は、ヒトおよび動物におけるシュウ酸塩疾患の治療に有効であり、これらは高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿石症)、腸管高シュウ酸症、外陰部痛、末期の腎臓病に伴うシュウ酸症、心臓伝導障害、炎症性腸疾患、クローン病、脂肪便症、空回腸バイパス手術等の胃腸手術受けた患者、抗生物質治療、および潰瘍性大腸炎を含むが、これらに限定されない。
【0052】
本発明は、組成物の活性が存在するシュウ酸塩の量および/または濃度を減少させ、その結果、シュウ酸塩による疾患の危険性を減少させる、ヒトもしくは動物の胃腸に1以上の分解細菌および/または酵素を含む組成物を導入することに関する。
【0053】
本発明は、ヒトおよび動物のシュウ酸塩関連疾患の治療および予防のための方法ならびに組成物を含む。シュウ酸塩疾患を治療する方法は、1以上のシュウ酸塩低減酵素を含む組成物の投与を包含する。そのような組成物は、シュウ酸塩関連疾患の重症度、またはヒトもしくは動物の消化管または体液中のシュウ酸塩の量に応じて、1日に1回以上、1日以上に渡って投与され得る。治療は、好ましくないレベルのシュウ酸塩がヒトまたは動物に存在する間継続され得る。例えば、酵素組成物は1日に1回以上、1日〜数年を含む一定の期間に渡って、投与され得る。慢性のシュウ酸塩関連疾患を患うヒトまたは動物に対して、本組成物はヒトまたは動物の生涯に渡って投与され得る。
【0054】
シュウ酸塩関連疾患を治療および予防する方法は、シュウ酸塩低減酵素またはシュウ酸塩を減少させる酵素活性を有効量で含む組成物を投与することを包含する。有効量は、本組成物の投与前に存在するシュウ酸塩の量と比較して、存在するシュウ酸塩の一部を減少させることになるシュウ酸塩低減酵素活性の活性単位の量を含むか、または個体におけるシュウ酸塩の量の減少を開始するか、もしくはシュウ酸塩の量を低く維持することになるシュウ酸塩低減酵素活性の活性単位のレベルを含む。単回用量組成物に使用され得るシュウ酸塩低減酵素活性単位の数値は、約0.0001単位(units)〜約5,000単位、約5単位〜100単位、0.05単位〜50単位、0.5〜500、約0.01単位〜約50単位、約0.01単位〜約5単位、約1単位〜約100単位、約25単位〜約50単位、約30単位〜約100単位、約40単位〜約120単位、約60単位〜約15単位、約50単位〜約100単位、約100単位〜約500単位、約100単位〜約300単位、約100単位〜約400単位、約100単位〜約5,000単位、約1,000単位〜約5,000単位、約2,500単位〜約5,000単位、約0.001単位〜約2,000単位の範囲、およびこれらに包含されるすべての範囲であり得る。組成物はさらに、他の酵素、補因子、基質、補酵素、無機物、およびシュウ酸塩の減少に有用な他の薬剤を含み得る。酵素の単位は、37℃で1分間に1マイクロモルのシュウ酸塩を分解する酵素の量である。
【0055】
特定の実施形態において、本発明は、オキサロバクター・フォルミジェネス種のシュウ酸塩分解細菌細胞を含む組成物を調製してヒトまたは動物の胃腸管に投与することにより、微生物の活性が腸内に存在するシュウ酸塩の量を減少させ、その結果、腎臓および他の細胞液内のシュウ酸塩の濃度の減少を引き起こすための方法に関する。別の実施形態において、本発明は、任意の供給源に由来する1以上のシュウ酸塩分解酵素を含む組成物を調製してヒトまたは動物の胃腸管に投与することにより、1以上の酵素が腸に存在するシュウ酸塩の量を減少させ、腎臓および他の細胞液内のシュウ酸塩の濃度の減少をもたらすための方法を包含する。導入された細胞または酵素はシュウ酸塩を分解し、そして細菌は、初めの細胞の子孫が腸でコロニーを形成してシュウ酸塩を除去し続けるように、腸内環境で複製されてもよいし複製されなくてもよい。シュウ酸塩低減細菌の存在は、腎結石の形成の危険性、ならびに過剰なシュウ酸によってもたらされる他の合併症に対する危険性を減少させる。ヒトへの使用についての実施形態において、使用されるO.フォルミジェネスの特定の株は、ヒトの腸サンプルから単離された株である。従って、この株は正常なヒトの腸内細菌叢の一部である。しかし、これらはすべての個人に存在するわけではなく、あるいは、不十分な数で存在するため、これらの生物を導入することは、一部のヒトに認められる欠乏を解消する。
【0056】
いかなる特定の理論に束縛されることをも望まないが、1以上の種のシュウ酸塩分解細菌またはシュウ酸塩低減酵素により腸の内容物を富化することは、腸内容物中のシュウ酸塩の減少をもたらすと考えられている。細菌または投与された酵素の一部は、吸収される部位またはその近くでシュウ酸塩の分解を行う。細菌または投与された酵素の活性は、食餌性シュウ酸塩の吸収レベルを低下させる。腸内のシュウ酸塩濃度の低下もまた、細胞および全身循環からのシュウ酸塩の除去をもたらし得る。さらに詳細には、腸内のシュウ酸塩濃度の低下はまた、血液から腸内へのシュウ酸塩の分泌を促進し、そして尿に排出される必要のあるシュウ酸塩の量の減少をもたらし得る。従って、シュウ酸塩低減細菌またはシュウ酸塩低減酵素を投与する本発明の方法は、食餌性高シュウ酸尿症の治療に加え、原発性高シュウ酸尿症等のシュウ酸塩関連疾患を治療または予防するのに使用することができる。本発明の組成物および方法は、ヒトおよび動物において健康的なシュウ酸塩レベルを促進するのに特に好都合である。
【0057】
シュウ酸塩分解細菌または1以上のシュウ酸塩分解酵素を、単独または組み合わせて、胃腸管に導入するための医薬組成物および栄養補助組成物は、液体形態もしくはペースト形態で、凍結乾燥もしくは凍結した細菌または酵素を含み、ゲルカプセルまたは他の腸溶性ベヒクルによる等の経口送達用ベヒクルによって送達され得る。ゲルキャップ材料は、好ましくは、胃液酸性度および胃の酵素による分解に耐性であるが、腸内の高いpHおよび胆汁酸含有量の上昇によるシュウ酸塩分解組成物の同時放出を伴って分解される、送達用丸剤またはカプセル剤を形成するポリマー材料である。次に、放出された組成物は腸内に存在するシュウ酸塩を無害な産物に転換する。医薬担体または栄養補給用担体もまた、細菌または酵素と組み合わせることができる。これらは、例えば、リン酸緩衝生理食塩水または重炭酸緩衝液を含み得る。本発明の方法は、シュウ酸塩低減組成物をヒトまたは動物の胃腸管に投与することを包含する。
【0058】
投与されるシュウ酸塩低減組成物は、1以上のシュウ酸塩低減細菌もしくは1以上のシュウ酸塩低減酵素、または細菌と酵素との組み合わせを含み、胃酸の悪影響から組成物を保護するように設計されたカプセル剤またはマイクロカプセル剤として送達され得る。1以上の様々な腸溶性保護コーティング法が用いられ得る。そのような腸溶性コーティング剤の記載は、酢酸フタル酸セルロース(CAP)の使用を含む(Yacobi, A., E. H. Walega, 1988, Oral sustained release formulations: Dosing and evaluation, Pergammon Press)。カプセル封入技術の他の記載は、米国特許第5,286,495号を含み、これは参照により本明細書に組み込まれる。本発明の組成物はまた、坐薬としても製剤化され得る。
【0059】
1以上の微生物、1以上のシュウ酸塩低減酵素、またはその組み合わせおよび混合物を含むこれらの組成物を腸に投与する他の方法は、組成物を直接食物源に添加することを包含する。1以上の細菌は、集菌したての細胞、凍結乾燥細胞、または保護処理した細胞として添加し得る。1以上の酵素は、凍結乾燥タンパク質、カプセルまたはマイクロカプセルに封入した酵素組成物、酵素の活性を維持するために他の物質と複合体を形成した酵素として、および、組成物に活性酵素を添加するための当業者に知られる他の方法で添加され得る。食品に、その味または見かけに影響を与えることなく、シュウ酸塩分解組成物を添加することができる。これらの食品は、例えば、ヨーグルト、乳、ピーナッツバター、またはチョコレートであり得る。経口摂取に際し、食品が腸によって消化および吸収されているときに、1以上の微生物、1以上の酵素、またはその組み合わせを含むシュウ酸塩分解組成物は、腸に存在するシュウ酸塩を分解し、その結果、シュウ酸塩の血流への吸収を減少させる。
【0060】
上記の通り、種々の食物にシュウ酸塩分解組成物が添加され得る。シュウ酸塩低減組成物を含有するそのような食物を作製する方法は、食物材料をシュウ酸塩低減組成物と混合することを包含する。例えば、シュウ酸塩低減微生物は、培地で増殖させることができ、例えば遠心分離によって培地から分離できる。市販の乳製品から入手可能な従来のヨーグルト培養物は、シュウ酸塩分解微生物培養物と混合することができる。次に、この培養物の混合物を、味または粘稠度に悪影響を及ぼすことなく、基本的な乳製品であるヨーグルトプレミックスに添加することができる。次に、従来の工業的手段を用いてヨーグルトを製造および包装することができる。別の例示において、シュウ酸塩分解細菌を、すでに製造されたヨーグルトに添加することができる。同様の方法において、1以上のシュウ酸低減酵素を含むシュウ酸塩低減組成物を、ヨーグルト細菌培養物またはヨーグルト食品に添加することができる。
【0061】
本発明の方法の別の例示は、シュウ酸塩低減組成物を、均質化および殺菌した後の乳に添加することである。そのような方法は、現在、乳製品産業において、ラクトバシルス・アシドフィリス(Lactobacillus acidophilis)菌を牛乳に添加するのに用いられている。細菌を含む任意の食物源を、シュウ酸塩分解細菌を添加することによって使用することができる。これらの食品は、加工する間に添加された望ましい微生物を有するチーズまたは肉製品を含む。シュウ酸塩低減酵素を含有するシュウ酸塩低減組成物を含む食品は、微生物を含有する食品を含むがこれに限定されず、活性酵素を添加し得る任意の食物源を含む。食物材料の生産または成長の任意の段階において、またはヒトもしくは動物によって消化される任意の段階において食材に存在するシュウ酸塩に対して酵素が活性であるように、あるいは、消化管に存在するシュウ酸に対して酵素が活性であるように、一般に食品材料として考えられる材料を酵素用の担体材料として用いることができる。
【0062】
さらに追加的な実施形態において、本発明は新規の酵素送達システムを提供する。このシステムは、シュウ酸塩分解酵素を発現するために、異種のポリヌクレオチドにより形質転換された植物を含む。酵素発現トランスジェニック植物は、例えばサラダの構成要素として患者に投与され得る。さらに、酵素発現植物を、例えば、食餌の構成要素として動物に投与することができ、または牧草地で生育させることができる。これらの産物を与えられ得る動物は、例えばウシ、ブタ、イヌおよびネコを含む。
【0063】
従って、腸への投与の別の方法として、植物はシュウ酸分解酵素を発現するように遺伝子操作される。これらのトランスジェニック植物は食餌に添加され、酵素の活性によってシュウ酸塩の存在の低下をもたらす。これらの酵素をコードするDNA配列は、当業者に知られており、例えばWO 98/16632に記載される。
【0064】
ヒトおよび動物において、健康的なシュウ酸塩レベルを促進するための食餌成分として使用され得る植物に加え、本発明は、微生物感染への耐性が強化された植物を提供する。具体的には、本発明の形質転換植物は、植物の病原性にシュウ酸塩の存在を必要とするか、または利用する微生物に対して防御される。シュウ酸塩分解酵素を発現するように形質転換された本発明の植物は、例えば、病原性にシュウ酸塩を必要とする特定の菌類に対して防御される。酵素をコードする遺伝子は、植物における発現および/または安定性が強化するように改良され得る。また、発現は、特定の組織において発現を指示するプロモーターの制御下にあってもよい。
【0065】
1つの実施形態において、本発明で使用される細菌株(例えばO.フォルミジェネス)は、正常なヒト由来の、または動物での使用のためには正常な動物由来の腸内容物の希釈物で植菌した嫌気性培養物から単離された純粋な培養物である。シュウ酸塩分解コロニーの検出が可能である特別なシュウ酸カルシウム含有培地を使用することができる。1つの実施形態において、その後少なくとも2回クローニングステップを繰り返すことによって、各株の純度を確認することができる。
【0066】
本発明に有用であるO.フォルミジェネスの株は、いくつかの試験に基いて特徴付けられており、これらは:細胞内脂肪酸のパターン、細胞内タンパク質のパターン、DNAおよびRNA(Jensen, N. S., M. J. Allison(1995) "Studies on the diversity among anaerobic oxalate degrading bacteria now in the species Oxalobacter formigenes" Abstr. to the General Meeting of the Amer. Soc. Microbiol., 1-29)、ならびにオリゴヌクレオチドプローブに対する反応(Sidhuら1996)を含む。これらの細菌の2つの群(I群およびII群、両方とも本明細書の種の中に存在する)が記載されている。使用する株は、シュウ酸塩分解能およびヒト腸管にコロニーを形成する能力の証拠に基いて選択されている。選択された株は、I群およびII群の双方の種の代表を含む。
【0067】
本発明の1つの実施形態は、適切なシュウ酸塩分解細菌を選択、調製し、様々な対象に投与する手順を包含する。特にそれらの対象は、腸内にこれらの細菌を持たない個人または動物であるが、これらに限定されない。これらのコロニーを有さないかまたは若干のコロニーを有する個人または動物は、腸内容物中に見られるような混在する細菌群中の生物が比較的低濃度である場合であっても、O.フォルミジェネスの迅速かつ明確な検出を可能とする試験を用いて同定される。本発明の方法はまた、例えば抗生物質治療または術後状態であるために、シュウ酸塩分解細菌が激減している個体または動物を治療するのにも使用することができる。本発明の方法はまた、シュウ酸塩分解細菌のコロニーを有するがそれにもかかわらず、例えばシュウ酸塩感受性および/または過剰な内因性シュウ酸塩の産生によって、有害なシュウ酸塩レベルを有する個体または動物を治療するのにも使用できる。
【0068】
本発明で使用可能な細菌は、少なくとも2つの方法によって同定され得る:
1)これらの細菌に特異的なオリゴヌクレオチドが使用可能である;および/または
2)10mMシュウ酸塩を含む嫌気性培地に植菌し、37℃で1〜7日間インキュベーションした後に、シュウ酸塩の減少を測定する培養物試験。
【0069】
医薬組成物を製造する方法は本明細書に教示され、そして、細菌を培養する方法は当業者に広く知られる。例えば、O.フォルミジェネス株の純粋培養物は、大きな発酵バッチ培養物中で培養することができ、そして、細胞は当業者に知られる方法を用いて回収することができる。単一株または既知の株の混合物から選択された細胞を、生存能力を保持するように必要に応じて処理(例えば、トレハロースまたはグリセロールと共に凍結乾燥)することができ、そして次に酸性の胃を通過する間、細胞を保護するように設計されたカプセル剤に入れられる(腸溶性コーティングカプセル剤)。発酵物由来の新鮮なものまたは凍結保存物由来のもののどちらかの細菌細胞を、担体または賦形剤と混合した後に凍結乾燥してもよい。次に、送達用ベヒクルを粉末組成物で充填する。例えば、シュウ酸塩を減少させる生きた細菌の組成物をヒトまたは動物の腸へ送達するために、安定な医薬組成物は腸溶コーティングカプセル剤の送達用ベヒクルを含んでもよく、そしてカプセル剤の中には、生きたシュウ酸塩低減細菌の粉末化した凍結乾燥組成物が封入される。
【0070】
本明細書に教示される医薬組成物は、個体の必要性によって決定される1回投与用量および全量ならびに間隔で摂取される。単回投与または周期的な投与で十分である場合もあれば、定期的な摂取(例えば食事と共に)が必要とされ得る場合もある。有効量の用量は、本明細書に教示される。医薬組成物は、生きたシュウ酸塩低減細菌および/もしくはシュウ酸塩低減酵素を、単独であるいは生理学的に許容され得る賦形剤もしくは担体または医薬担体もしくは医薬賦形剤と組み合わせて含む(本明細書においてこのような用語は同義に使用される)。本発明の医薬組成物の投与量は、特定の期間に渡ってシュウ酸塩低減用量が投与される有効量において、個体によって構成的に作られるシュウ酸塩、および/または摂取されるシュウ酸塩の量より少なくてよく、等量でよく、または多くてもよい。いくつかのシュウ酸塩関連疾患に対して、本方法によって投与されるシュウ酸塩低減活性の量および本発明の組成物は、摂取されるシュウ酸塩または構成的に作られるシュウ酸塩の量より少なくてもよく、そして患者の低レベルのシュウ酸塩低減能を補完または補充するだけでよいこともある。他の病状において、より高いシュウ酸塩低減活性を提供する必要があり得る。
【0071】
例えば、原発性高シュウ酸尿症(PH)は遺伝病であり、そして高シュウ酸尿症の最も重症型であり、患者は1日当たり約100〜300mgのシュウ酸塩を産生する。PHを治療する方法およびPHの後遺症を予防する方法は、1日に少なくとも100〜300mgのシュウ酸塩、または少なくとも1日に200mgもしくは1日に300mg、または1日に300mgもしくは1日に400mgを超える減少に有効なシュウ酸塩低減組成物の量を投与することを包含する。そのような投与計画は、経口投与経路であり得る。例えば、本明細書に開示される経口送達ベヒクルによって、凍結乾燥したシュウ酸塩低減細菌の組成物を含む腸溶性カプセル剤等が提供される場合、カプセル剤は、少なくとも1日当たり1回、少なくとも1日当たり2回、少なくとも1日当たり3回、少なくとも1日当たり4回、または有効量のシュウ酸塩低減活性を送達する必要に応じて提供される。患者の利便性のために、投与計画は、5×105〜5×107cfu/カプセルの凍結乾燥したシュウ酸塩低減細菌を含有する組成物を含む腸溶性カプセル剤の経口投与を包含してもよく、この投与量は、食事と共に1日に2〜3回与えられる。各々のカプセル剤は、少なくとも6.5〜10mgシュウ酸塩/時または120〜240mg/日のシュウ酸塩低減活性を有し、2個または3個のそのようなカプセル剤は、1日にPH患者によって産生されるシュウ酸塩の最大量を提供し得る。
【0072】
担体は、錠剤、カプセル剤または粉末形態の製剤の場合には固体を主成分とする乾燥材料であってもよく、そして、液体またはゲル形態の製剤の場合には液体またはゲル状の材料であってもよく、その形態はある程度投与の経路に依存する。
【0073】
乾燥製剤のための標準的な担体は、トレハロース、マルトデキストリン、米粉、微結晶性セルロース(MCC)、ステアリン酸マグネシウム、イノシトール、FOS(フルクトオリゴサッカライド)、グルコオリゴサッカライド(GOS)、デキストロース、スクロース、および同類の担体を含む。
【0074】
水および生理食塩水、尿素、アルコールおよびグリコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、およびプロピレングリコール等)などの適切な液体担体またはゲル状担体は、当技術分野においてよく知られている。好ましくは、水性担体はほぼ中性のpHである。
【0075】
適切な担体は、例えば、白色ワセリン、ミリスチン酸イソプロピル、ラノリンまたはラノリンアルコール、鉱油、モノオレイン酸ソルビタン、プロピレングリコール、セチルステアリルアルコール(共に、もしくは種々の組み合わせで)、ヒドロキシプロピルセルロース(MW=100,000〜1,000,000)、界面活性剤(例えば、ステアリン酸ポリオキシルもしくはラウリル硫酸ナトリウム)などの、水性ならびに油性の担体を含み、そしてこれらの適切な担体は、水と混合されてローション、ゲル、クリームまたは半固形組成物を形成する。他の適切な担体は、油中水型または水中油型の乳剤、ならびに、乳化剤および軟化剤と、ステアリン酸スクロース、スクロースココアート、ジステアリン酸スクロース、鉱油、プロピレングリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ポリオキシプロピレン-15-ステアリルエーテル、および水等の溶媒との混合物を含む。例えば、水、ステアリン酸グリセロール、グリセリン、鉱油、合成鯨ろう、セチルアルコール、ブチルパラベン、プロピルパラベン、およびメチルパラベンを含む乳剤が市販されている。メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール、およびエチレンジアミン四酢酸塩を含む保存剤もまた、担体中に含まれ得る。よく知られる矯味剤および/または着色剤もまた、担体中に含まれ得る。組成物はまた、グリセロールまたはポリエチレングリコール(MW=800〜20,000)等の可塑剤も含み得る。担体の組成物は、組成物中のシュウ酸塩低減細菌またはシュウ酸塩低減酵素の生存能力を著しく阻害しない限り、変更可能である。
【0076】
本発明の標準的な組成物は、さらに任意の以下の不活性成分を含み得る:アラビアゴム、アスパルテーム、クエン酸、D&C Yellow No.10、FD&C Yellow No.6、矯味剤(天然および/または人工)、ポリソルベート80、アルギン酸プロピレングリコール、コロイド状二酸化ケイ素、およびスクロース、およびキサンタンガム。
【0077】
組成物はまた、以下の不活性成分を含み得る:アスパルテーム、β-カロテン、クエン酸、矯味剤(天然および人工)、グリセリン、マルトール、マンニトール、およびメチルセルロース。
【0078】
本明細書に開示される、胃腸管への経口送達のためのO.フォルミジェネスの医薬組成物を製造する方法は、当業者に知られる発酵法を用いた細菌の培養すること、任意に細菌細胞を凍結すること、凍結細胞を解凍すること、および、任意に賦形剤溶液中に混合した細菌細胞を凍結乾燥させた後、凍結乾燥細胞をふるいにかけて粉末化し、医薬製剤のための送達用ベヒクル中に粉末を入れることを包含する。
【0079】
本発明はさらに、ヒトまたは動物の胃腸管に、O.フォルミジェネス細胞等のシュウ酸塩低減生物からもしくは他の供給源から、または組換え手段等の方法により調製されたシュウ酸塩分解産物あるいは酵素を投与することに関する。1つの実施形態において、シュウ酸塩分解酵素は、経口摂取のための医薬組成物または栄養補助組成物として精製および調製され得る。好ましい実施形態において、これらの酵素は組換え的に産生される。これらの酵素をコードするDNA配列は当業者に知られており、例えば、WO 98/16632に記載される。これらの配列またはシュウ酸塩分解タンパク質をコードする他の配列は、適切な宿主において発現し得る。宿主は例えば、大腸菌(E.coli)または乳酸菌(Lactobacillus)であり得る。形質転換された宿主は、適切な調節シグナルおよび輸送シグナルを含み得る。発現したタンパク質は、本明細書に記載するように単離、精製および投与され得る。あるいはまた、所望のシュウ酸塩分解タンパク質を発現する組換え宿主が投与され得る。組換え宿主は、生存型または非生存型のどちらかで投与され得る。別の好ましい実施形態において、酵素は、胃において不活性とならないように、そして小腸におけるこれらのシュウ酸塩分解活性が発揮されるようにコーティングされるか、またはそうでなければ酵素を保護するために製剤化または修飾される。そのような製剤の例示は、当業者に知られており、例えば、米国特許番号5,286,495号に記載される。
【0080】
本明細書で使用するシュウ酸塩分解酵素は、シュウ酸塩経路に関与するすべての酵素、そしてシュウ酸オキシダーゼ、シュウ酸デカルボキシラーゼ、ホルミルCoAトランスフェラーゼ、およびオキサリルCoAデカルボキシラーゼを含むがこれらに限定されない。シュウ酸オキシダーゼは、高等植物において発現し、シュウ酸塩からCO2への酸素依存的酸化を触媒し、これに伴ってH2O2が形成される。シュウ酸オキシダーゼは、多くの供給源(例えば、オオムギの苗木、根および葉;ビーツの茎および葉;コムギ胚芽;ソルガムの葉;およびバナナの皮)から精製されている。高速三段階精製法が、オオムギの根からシュウ酸オキシダーゼを得るために開発されている。オオムギの根のシュウ酸オキシダーゼをコードする遺伝子は、クローニングされ、塩基配列が決定され、そして発現されている。
【0081】
シュウ酸デカルボキシラーゼは主に菌類に存在する。細菌のシュウ酸デカルボキシラーゼは、最近枯草菌(B.subtilis)において報告されており、yvrk遺伝子によってコードされている。シュウ酸デカルボキシラーゼは、遊離のシュウ酸塩からCO2およびギ酸塩への分解を触媒する。この酵素は、ミロテシウム・ベルカリア(Myrothecium verrucaria)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)の特定の株、および白色腐朽菌であるコリオルス・ベルシカラー(Coriolus versicolor)を含むいくつかの菌類において報告されている。エノキタケ(Flammulina velutipes)のシュウ酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子は、クローニングおよび配列決定がされている;WO 98/42827を参照せよ。
【0082】
オキサリルCoAデカルボキシラーゼは、CoA活性化基質に対し活性であり、ホルミルCoAに転換する。次に、ホルミルCoAトランスフェラーゼは、CoAにおいてギ酸(formate)とシュウ酸(oxalate)とを交換するのに作用する。これらの酵素は、シュウ酸塩分解細菌である、土中に存在するシュードモナス・オキサラチカス(Pseudomonas oxalaticus)およびヒトを含む脊椎動物の胃腸管に存在するオキサロバクター・フォルミジェネスにおいて研究されている。O.フォルミジェネスは、腸におけるシュウ酸吸収の調節ならびに血漿におけるシュウ酸レベルの調節によって、その宿主と共生関係の状態にあることが示されている。結果として、この細菌の欠乏が、再発性の特発性シュウ酸カルシウム結石症および空回腸バイパス手術の後に起こる腸管高シュウ酸尿症、嚢胞性線維症、ならびに炎症性腸疾患等のシュウ酸塩関連疾患における危険因子となることが分かっている。
【0083】
種々のシュウ酸塩分解酵素およびこれらの酵素をコードする遺伝子を記載する特許は、米国特許第5,912,125号;第6,090,628号;および第6,214,980号を含む。これらの特許は、具体的に説明するように、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。用語「シュウ酸塩分解酵素」は、シュウ酸オキシダーゼ、シュウ酸デカルボキシラーゼ、オキサリルCoAデカルボキシラーゼ、およびホルミルCoAトランスフェラーゼを含むがこれらに限定されず、そして、シュウ酸塩またはシュウ酸との相互作用が可能な酵素を含む。これらの酵素は、天然の供給源由来であるか、または当技術分野において知られる組換え手段を用いて合成されたものであってもよく、結合部位、活性部位等のすべてのフラグメント、またはシュウ酸塩もしくはシュウ酸との相互作用が可能なフラグメントを含む。この用語はまた、すべての必要な補因子、補酵素、金属、あるいはシュウ酸塩もしくはシュウ酸と相互作用するのに酵素が必要とする結合物質または基質物質を含むが、これらに限定されない。本発明はまた、これらの酵素の任意の結合パートナーを企図し、そして酵素と結合または相互作用する抗体および抗体フラグメントを含む。
【0084】
O.フォルミジェネスを使用することが特に有利であるのは、好気性組織環境において増殖せず、ヒトまたは動物にとって毒性であるいかなる化合物も産生しない嫌気性生物であるためである。O.フォルミジェネスまたは組換え宿主のどちらかに代わるものとして、クロストリジウム、枯草菌(Bacillus subtilis)、シュードモナス、ラクトバチルス、ビフィドバクテリウム等の他のシュウ酸塩分解細菌が使用され得る。そのような代替細菌から調製されるシュウ酸塩分解酵素を投与してもよく、または微生物全体を投与してもよい。
【0085】
さらに、上記のすべての実施形態は、シュウ酸塩分解細菌の不足で苦しむ家畜、農業用動物、または動物園の動物、ならびにヒトに適用することができる。例えば、シュウ酸塩分解酵素および/または微生物は、イヌ、ネコ、ウサギ、フェレット、モルモット、ハムスターおよびスナネズミ等の家庭のペット、ならびにウマ、ヒツジ、ウシおよびブタ等の農業用動物、またはカワウソ等の繁殖目的のために飼育される野生動物に投与され得る。シュウ酸塩を減少させることが可能な多くの動物は、捕獲された場合にその能力を損失する。本発明は、損失または減少したシュウ酸塩低減活性を回復するための方法および組成物を包含する。本発明の1つの態様は、シュウ酸塩低減活性が損失または低下した、野生から回収(retrieved)した動物を、本明細書に教示される組成物で治療することを包含する。
【0086】
本発明は、1以上のシュウ酸塩分解細菌、1以上の酵素または細菌と酵素との組み合わせを含む組成物を、ヒトまたは動物の胃腸管に投与するための組成物および方法を包含する。そのような組成物および方法は、存在するシュウ酸塩の量および/または濃度を低下させるのに有効である。そのような方法および組成物は、シュウ酸塩関連疾患を治療および予防するのに有効である。本発明の態様は、シュウ酸塩分解酵素をヒトまたは動物の胃腸管に導入するための組成物および方法を包含する。本発明は、1以上のシュウ酸塩分解酵素を、ヒトまたは動物の胃腸管に、医薬担体組成物および/または栄養補助担体組成物として送達する方法を包含する。そのような酵素は、シュウ酸オキシダーゼ、シュウ酸デカルボキシラーゼ、オキサリルCoAデカルボキシラーゼ、およびホルミルCoAトランスフェラーゼを含むが、これらに限定されない。これらの酵素は、当業者に知られる供給源由来であり得る。例えば、植物酵素であるシュウ酸オキシダーゼ(OXO)は、オオムギの苗から精製することができ、そしてシュウ酸デカルボキシラーゼは細菌または菌類の供給源から精製することができる。
【0087】
あるいはまた、シュウ酸塩分解酵素は組換え手段に由来し得る。例えば、クローニング、発現および精製等の組換え手段は、シュウ酸塩低減酵素(例えば枯草菌シュウ酸デカルボキシラーゼ)を得るのに使用され得る。そのような組換え手段は、当業者に知られる。例えば、一般的に開示されるのは、枯草菌シュウ酸デカルボキシラーゼ(YvrK)遺伝子のクローニングおよび発現である。シュウ酸デカルボキシラーゼタンパク質(YvrK)に対応する遺伝子は、強力なバクテリオファージT7プロモーターの制御下において、可溶性細胞質タンパク質として過剰発現するために、pET-9aおよびpET-14bプラスミド(Novagen, WI)にクローニングされている。発現宿主は、プロテアーゼを欠損し、lacUV5制御下においてT7-RNAポリメラーゼ遺伝子の染色体コピーを含むλDE3溶原菌である大腸菌株BL 21(DE3)pLysSである。さらに、この株は、細胞壁のペプチドグリカン層における結合を切断し、T7 RNAポリメラーゼを阻害する二機能性酵素であるT7リゾチームをコードするpET和合性プラスミドを有する。これは、非誘導性の基礎的発現のより強い制御を可能にし、そして細胞を効果的に溶解するために、凍結融解または穏やかな界面活性剤等の、内膜を崩壊させる方法を用いることを可能にする。遺伝子産物の発現は、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加によって誘導される。従って、本発明の態様は、組換え微生物によって産生されたシュウ酸塩分解酵素の投与を含む方法を包含する。種々の発現ベクターおよび宿主を、組換えタンパク質としてシュウ酸塩分解酵素を産生するために使用でき、そしてそのような方法は当業者に知られる。
【0088】
本発明の別の態様は、シュウ酸塩分解細菌をヒトまたは動物の胃腸管に供給することによってシュウ酸塩の吸収を低下させるための方法を包含する。そのような細菌は、オキサロバクター・フォルミジェネス、クロストリジウム、ラクトバチルス、ビフィドバクテリウム、およびシュードモナスを含み得るが、これらに限定されない。O.フォルミジェネスは、ヒト糞便試料より単離され、個々のコロニーの選択によりクローニングされている。これは、もともと1996年にIxion BiotechnologyによってDr. Milton Allisonから得られた単離株HC-1を含む。例えば、ヒトHC-1株の凍結保存物が使用され得る。本発明の方法は、1種以上のシュウ酸分解細菌を腸において増殖させて、腸内容物中のシュウ酸塩を全体的に減少させ、腸におけるシュウ酸塩の吸収を低下させ、血液および腎液中のシュウ酸塩濃度を低下させ、そしてシュウ酸塩の存在による身体への有害作用を減少させることを包含する。
【0089】
従って、本発明の態様は、シュウ酸塩関連疾患および/またはシュウ酸塩関連病のリスクが増加した個人の腸管へ、シュウ酸塩を減少させ得るシュウ酸塩低減細菌およびシュウ酸塩分解酵素を供給する組成物および方法を包含する。そのような疾患および疾患は、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿石症)、腸管高シュウ酸尿症、外陰部痛、末期の腎臓病に伴うシュウ酸症、心臓伝導障害、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、脂肪便、空腸回腸バイパス手術を受けたことのある個人、シュウ酸塩分解細菌の濃度が不十分である個人、および他の腸疾患状態を含むが、これらに限定されない。抗生物質治療、化学療法治療、または腸内細菌叢を変化させる他の治療を受けたヒトおよび動物は、本発明の組成物および方法により治療される。本発明は、ヒトまたは動物に対するシュウ酸塩低減能を、腸内細菌叢の変化を伴って回復するのに使用される。尿中のシュウ酸塩排出レベルの上昇は、腎結石の形成を促進し、腎臓の瘢痕の一因となり、腎不全さえもたらし得る。従って、本発明の態様は、腎結石の形成を減少させる組成物および方法を包含する。
【0090】
腸におけるシュウ酸塩の総濃度の低下もまた、細胞および全身循環からのシュウ酸塩の除去をもたらし得る。さらに具体的には、腸におけるシュウ酸塩濃度の低下もまた、血液から腸へのシュウ酸塩の分泌の促進をもたらし得る。特定のいかなる理論に拘束されることを望まないが、最近では、腸のシュウ酸塩除去の経上皮勾配があると考えられている。従って、本発明の態様は、結腸のシュウ酸塩排出のためのシュウ酸塩の経上皮勾配を経由した血液からのシュウ酸塩の排出を促進することによって、シュウ酸塩の血中レベルを低下させるための、およびシュウ酸塩の排除を増加させるための組成物および方法を包含する。本発明の方法は、ヒトまたは動物の腸に、ヒトもしくは動物のシュウ酸塩濃度またはシュウ酸塩レベルを低下させるための組成物を提供することを包含する。そのような低下は、腸、血液、血清、組織液、および他の体液中に含まれるシュウ酸塩の量の減少を含み得る。
【0091】
本発明の1つの組成物は、経口投与のために調製されたO.フォルミジェネスのペーストを含む。O.フォルミジェネスのペーストの各々のロットには、HC-1の単一の保存バイアルが、大規模生産発酵槽において培養を開始するための接種培養物を作出するのに使用される。各々の発酵槽からの細菌を遠心分離によって回収し、そして凍結乾燥に対して保護する凍結保護賦形剤と混合する。細胞ペーストもまた凍結乾燥または噴霧乾燥または真空乾燥の対象とすることができ、107〜109CFU/グラムの範囲の力価を有する微粉末を得ることができる。生じた粉末は、細菌を小腸へ安全に送達するために腸溶性コーティングしたゼラチンカプセルまたはHPMCカプセル等の他のカプセル内に入れられる。
【0092】
本発明の組成物は、約103〜約1012cfu/グラム、約103〜約1010cfu/グラム、約105〜約1012cfu/グラム、約105〜約1010cfu/グラム、約107〜約109cfu/グラム、約107〜約108cfu/グラム、およびこれらの間にあるすべての範囲の1以上のシュウ酸塩低減細菌の抽出物から製造された組成物を含む。
【0093】
本発明の組成物はまた、シュウ酸塩を減少させる活性を有する1以上の酵素を含む組成物を含む。本発明の態様は、有効量の酵素組成物を、ヒトまたは動物の胃腸管に投与することを包含する。酵素組成物の有効量は、組成物の投与前に測定したレベルから腸におけるシュウ酸塩の一部を減少させるか、またはヒトもしくは動物におけるシュウ酸塩濃度を低下させることができる。そのような測定値は、消化管に存在する食物源由来のシュウ酸塩の測定値であってもよく、または血液もしくは尿等の体液における測定レベルであってもよい。
【0094】
本発明は、O.フォルミジェネスを含む組成物をヒトまたは動物の胃腸管に投与することによって、シュウ酸塩関連病を治療または予防する方法を包含する。対象は、103cfu/gm以上の生きたO.フォルミジェネス細胞を含む腸溶性カプセル剤を投与され得る。そのような投与は、食事と共に1日に少なくとも2回行うことができる。本発明はまた、1以上のシュウ酸塩低減微生物、1以上のシュウ酸塩低減酵素、またはこれらの組み合わせを含むシュウ酸塩低減組成物を投与する方法を包含する。本発明の方法は、1日に少なくとも1回、有効量のシュウ酸塩低減組成物を投与することを包含し、ここで、シュウ酸塩低減組成物は1以上のシュウ酸塩低減酵素を含む。本方法はまた、そのような組成物を1日に2回以上、1日に3回以上、1日に4回以上、および1日に1〜15回の範囲で投与することを包含する。そのような投与は、シュウ酸塩関連病を治療または予防するために、数日に渡って、数週間に渡って、数ヶ月に渡って、または数年間に渡って毎日というように、継続的であってもよく、あるいは、特定の回数行ってもよい。例えば、シュウ酸塩関連病を治療もしくは予防するために、個人または動物に、シュウ酸塩低減組成物を1日に少なくとも1回、数年間に渡って投与してもよく、あるいは、ヒトもしくは動物に、シュウ酸塩含有食物を摂取した時にだけシュウ酸塩低減組成物を1日に少なくとも1回投与してもよいし、または正常な細菌叢を阻害する処置または治療の後に数日間もしくは数週間などの限られた期間に渡り投与してもよい。そのような投与は、医薬品の投与用として知られる経路を介して行うことができる。経口もしくは腸経路を介した投与、または食物材料と組み合わせた投与は、本発明によって企図される。
【0095】
本発明はさらに、ラベルと本発明による治療組成物とを含有する容器を含むシュウ酸塩を減少させるための治療システムを企図し、ここで、前記ラベルは、シュウ酸塩を減少させる組成物を使用するための説明書を含む。
【0096】
通常、このシステムは本発明の治療組成物を含むパッケージの形態で存在するか、または包装材と組み合わせた形態で存在する。包装材は、パッケージ内の成分の使用についてのラベルまたは説明書を含む。説明書は、本発明の方法または組成物について本明細書に記載されるパッケージ内の成分の企図される使用を指示する。例えば、システムは本発明の1以上の単位用量の治療組成物を含み得る。あるいはまた、システムはバルク量の治療組成物を含み得る。ラベルは、必要に応じて単位用量またはバルク形態のどちらかで治療組成物を使用するための説明書を含み、そして組成物の保存、対象疾患、投与量、投与経路、およびこれに類する情報などの情報を含み得る。
【0097】
本発明は、ヒトおよび動物のシュウ酸塩を減少させる医薬組成物および方法を包含する。ヒトまたは動物のシュウ酸塩濃度を低下させる組成物は、a)約0.5%〜約95%のシュウ酸塩低減細菌;b)約0.1%〜約50%の二糖類;c)約3%〜約85%のマルトデキストリン;d)約0.5%〜約25%のアルギン酸塩;およびe)約1.0%〜約60%のオリゴフルクトースを含むシュウ酸塩低減組成物を含有する経口送達ベヒクルを含む。本組成物は、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、または錠剤を含有する経口送達ベヒクルを含み得る。本組成物はさらに、腸溶性コーティング剤を経口送達ベヒクル上に含み得る。腸溶性コーティング剤はポリマー材料であり得る。そのようなポリマー材料は、腸溶性コーティング剤として使用するのに当業者に知られる多くの異なるEudragit(商標)または他のポリマー材料の1つであり得る。
【0098】
本組成物は、オキサロバクター・フォルミジェネス、シュードモナス、クロストリジウム、ラクトバチルス、ビフィドバクテリウム、またはシュウ酸塩低減酵素をコードする外因性もしくは内因性のポリヌクレオチド配列を含む1以上のベクターで形質転換されたシュウ酸塩低減細菌を含んでよく、あるいはシュウ酸塩低減細菌がオキサロバクター・フォルミジェネスである組成物、またはシュウ酸塩低減細菌がオキサロバクター・フォルミジェネスHC1株である組成物であり得る。シュウ酸塩低減組成物は、凍結乾燥粉末を含み得る。粉末は、約10ミクロン〜約2000ミクロン、または約100ミクロン〜約1000ミクロン、または約500ミクロン〜約1500ミクロン、または約500ミクロン〜約1000ミクロン、500から約1500ミクロン、またはこれらの範囲内もしくはこれらの近辺の任意の範囲の粒径を有し得る。
【0099】
本組成物は、二糖類、トレハロースを含んでもよく、また、ここでアルギン酸塩はアルギン酸ナトリウムである。シュウ酸塩低減組成物は、少なくとも約1E+03〜約1E+13cfu/gmのシュウ酸塩低減細菌を有し得る。シュウ酸塩低減組成物は、少なくとも約2mgシュウ酸塩分解/時〜約2500mgシュウ酸塩分解/時のシュウ酸塩の酵素低減活性/グラムを有する。
【0100】
ヒトまたは動物のシュウ酸塩濃度を低下させる組成物は、a)約3%〜約25%のシュウ酸塩低減細菌;b)約1.5%〜約6%の二糖類;c)約45%〜約60%のマルトデキストリン;d)約4%〜約6%のアルギン酸塩;およびe)約20%〜約35%のオリゴフルクトースを含有する組成物を含む送達用ベヒクルを含有する組成物を含む、シュウ酸塩低減組成物を含有する経口送達用ベヒクルを含み得る。
【0101】
シュウ酸塩低減のための組成物は、存在するシュウ酸塩の一部を減少させる有効量のシュウ酸塩低減活性を含み、a)約0.5%〜約95%の、生きた凍結乾燥したシュウ酸塩低減細菌;およびb)約95%〜約0.5%の医薬上許容され得る賦形剤を含有し、そしてさらに医薬送達用ベヒクルを含む。医薬送達用ベヒクルは、粉末、丸剤、顆粒剤、坐薬または錠剤を含み得る。任意に、腸溶性コーティング剤が送達用ベヒクルに施され、腸溶性コーティング剤は一般的にポリマー材料である。有効量のシュウ酸塩低減活性は、シュウ酸塩低減細菌によって提供されてもよく、細菌は、オキサロバクター・フォルミジェネス、シュードモナス、クロストリジウム、ラクトバチルス、ビフィドバクテリウム、またはシュウ酸塩低減酵素をコードする外因性もしくは内因性のポリヌクレオチド配列を含む1以上のベクターで形質転換された細菌(オキサロバクター・フォルミジェネスであってもよく、またはオキサロバクター・フォルミジェネスHC1株であってもよい)であり得る。本組成物は、凍結乾燥粉末として提供され得る。粉末は、約10ミクロン〜約2000ミクロン、または約100ミクロン〜約1000ミクロン、または約500ミクロン〜約1500ミクロン、または約500ミクロン〜約1000ミクロン、500から約1500ミクロン、またはこれらの範囲内もしくはこれらの近辺の任意の範囲の粒径を有し得る。シュウ酸塩低減組成物は、少なくとも約1E+03〜約1E+13cfu/gmのシュウ酸塩低減細菌を有し得る。シュウ酸塩低減組成物は、少なくとも約2mgシュウ酸塩分解/時〜約2500mgシュウ酸塩分解/時のシュウ酸塩の酵素低減活性/グラムを有する。
【0102】
本発明の方法は、ヒトおよび動物のシュウ酸塩濃度を減少させる方法、ヒトおよび動物のシュウ酸塩症状を治療する方法、ヒトおよび動物のシュウ酸塩症状を予防する方法、ならびにシュウ酸塩低減組成物を製造する方法を包含する。本発明はまた、シュウ酸塩低減のためのシステムを包含する。ヒトまたは動物のシュウ酸塩濃度を減少させる方法は、a)約0.5%〜約95%のシュウ酸塩低減細菌;b)約0.1%〜約50%の二糖類;c)約3%〜約85%のマルトデキストリン;d)約0.5%〜約25%のアルギン酸塩;およびe)約1.0%〜約60%のオリゴフルクトースを含有するシュウ酸塩低減組成物を含む送達用ベヒクルを含有する有効量の組成物を、ヒトまたは動物に投与することを包含する。送達用ベヒクルは、坐薬、粉末、丸剤、顆粒剤、または錠剤を含んでもよく、これらはさらに腸溶性コーティング剤を送達ベヒクル上に含み得る。腸溶性コーティング剤は、ポリマー材料であり得る。シュウ酸塩低減細菌は、オキサロバクター・フォルミジェネス、シュードモナス、クロストリジウム、ラクトバチルス、ビフィドバクテリウム、またはシュウ酸塩低減酵素をコードする外因性もしくは内因性のポリヌクレオチド配列を含む1以上のベクターで形質転換された細菌であってもよく、あるいはオキサロバクター・フォルミジェネスであってもよく、あるいはオキサロバクター・フォルミジェネスHC1株であってもよい。本組成物は、凍結乾燥粉末として提供され得る。粉末は、約10ミクロン〜約2000ミクロン、または約100ミクロン〜約1000ミクロン、または約500ミクロン〜約1500ミクロン、または約500ミクロン〜約1000ミクロン、500から約1500ミクロン、またはこれらの範囲内もしくはこれらの近辺の任意の範囲の粒径を有し得る。本組成物は、二糖類、トレハロースを含んでもよく、また、ここでアルギン酸塩はアルギン酸ナトリウムである。シュウ酸塩低減組成物は、少なくとも約1E+03〜約1E+13cfu/gmのシュウ酸塩低減細菌を有し得る。シュウ酸塩低減組成物は、少なくとも約2mgシュウ酸塩分解/時〜約2500mgシュウ酸塩分解/時のシュウ酸塩の酵素低減活性/グラムを有する。本方法は、経口経路による投与により投与され得る。
【0103】
本方法はまた、本明細書に教示される組成物の投与を含む、シュウ酸塩関連症状の予防を包含する。このような方法はまた、本明細書に教示される組成物の投与を含む、シュウ酸関連症状の治療を包含する。シュウ酸塩関連症状は、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿石症)、腸管高シュウ酸症、外陰部痛、末期の腎臓病を伴うシュウ酸症、心臓伝導障害、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、脂肪便症、空回腸バイパス手術等の胃腸手術受けた患者、または抗生物質治療を受けた患者を含むが、これらに限定されない。本方法は、本明細書で教示される組成物を、十分なレベルのシュウ酸塩が減少するまでの期間、またはシュウ酸塩レベルを継続的に制御するために永久に、1日に2回以上投与することを含む。本方法は、、a)約0.5%〜約95%の、生きた凍結乾燥したシュウ酸塩低減細菌;およびb)約95%〜約0.5%の医薬上許容され得る賦形剤を含有し、そしてさらに医薬送達ベヒクルを含む、存在するシュウ酸塩の一部を減少させるのに有効な量のシュウ酸塩低減活性をヒトまたは動物に投与することを包含する、シュウ酸塩関連症状を予防する方法を包含する。医薬送達用ベヒクルは、粉末、丸剤、顆粒剤、坐薬、または錠剤を含み得る。医薬送達用ベヒクルは、カプセル剤を含み得る。これらの送達用ベヒクルはいずれも、腸溶性コーティング剤を含み得る。そのような腸溶性コーティング剤は、ポリマー材料であり得る。シュウ酸塩低減細菌は、オキサロバクター・フォルミジェネス、シュードモナス、クロストリジウム、ラクトバチルス、ビフィドバクテリウム、またはシュウ酸塩低減酵素をコードする外因性もしくは内因性のポリヌクレオチド配列を含む1以上のベクターで形質転換された細菌であってもよく、あるいはオキサロバクター・フォルミジェネスであってもよく、あるいはオキサロバクター・フォルミジェネスHC1株であってもよい。本組成物は、凍結乾燥粉末として提供され得る。粉末は、約10ミクロン〜約2000ミクロン、または約100ミクロン〜約1000ミクロン、または約500ミクロン〜約1500ミクロン、または約500ミクロン〜約1000ミクロン、500から約1500ミクロン、またはこれらの範囲内もしくはこれらの近辺の任意の範囲の粒径を有し得る。本組成物は、二糖類、トレハロースを含んでもよく、また、ここでアルギン酸塩はアルギン酸ナトリウムである。シュウ酸塩低減組成物は、少なくとも約1E+03〜約1E+13cfu/gmのシュウ酸塩低減細菌を有し得る。シュウ酸塩低減組成物は、少なくとも約2mgシュウ酸塩分解/時〜約2500mgシュウ酸塩分解/時のシュウ酸塩の酵素低減活性/グラムを有する。本方法は、経口経路による投与により投与され得る。治療または予防され得るシュウ酸塩関連症状は、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿石症)、腸管高シュウ酸症、外陰部痛、末期の腎臓病を伴うシュウ酸症、心臓伝導障害、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、脂肪便症、空腸回腸バイパス手術等の胃腸手術受けた患者、または抗生物質治療を受けた患者を含む。
【0104】
シュウ酸塩低減医薬組成物を製造する方法は、少なくとも約1E+03〜約1E+13の濃度のシュウ酸塩低減細菌を提供するステップ;任意にシュウ酸塩低減細菌を1以上の医薬上許容され得る賦形剤と混合するステップ;細菌を凍結乾燥させるステップ;および細菌を医薬送達用ベヒクル中への充填または提供するステップを含む。そのような賦形剤は、二糖類、マルトデキストリン、アルジサイド、またはオリゴフルクトースのうちの1以上を含み得る。シュウ酸塩低減細菌は、オキサロバクター・フォルミジェネス、シュードモナス、クロストリジウム、ラクトバチルス、ビフィドバクテリウム、またはシュウ酸塩低減酵素をコードする外因性もしくは内因性のポリヌクレオチド配列を含む1以上のベクターで形質転換された細菌であってもよく、あるいはオキサロバクター・フォルミジェネスであってもよく、あるいはオキサロバクター・フォルミジェネスHC1株であってもよい。医薬送達用ベヒクルは、粉末、丸剤、顆粒剤、坐薬、または錠剤であり得る。腸溶性コーティング剤が送達用ベヒクル上に施され得る。腸溶性コーティング剤は、Eudragit(商標)を含むコーティング剤等の、ポリマー性コーティング剤であり得る。
【0105】
この明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形の「a」「an」および「the」は、他に文脈が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むことに注意するべきである。
【0106】
本明細書に含まれるすべての特許、特許出願および参照は、参照によりそれらの全体が明確に組み込まれる。
【0107】
当然のことながら、上記は本発明の好ましい実施形態にのみに関するものであって、多数の改良または変更が、本開示に記載の発明の精神および範囲から逸脱することなく実施され得ることが理解されるべきである。
【0108】
以下は、本発明を実施するための手順を説明する実施例である。これらの実施例は、本発明の範囲に制限を与えるように解釈されることは決してない。むしろ、種々の他の実施形態、改良およびこれらの同等物につながる方策を有し得ることが明らかに理解され、このことは、本明細書の記載を読んだ後に、本発明の精神および/または添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、当業者に示唆され得る。
【実施例】
【0109】
実施例1
高リスク患者の治療
原発性高シュウ酸尿症患者に、O.フォルミジェネスの凍結乾燥粉末を含む腸溶性コーティングカプセル剤を、1日に2回、好ましくはその日の2回のご馳走と共に与えた。各々のサイズ2のカプセルは、少なくとも108コロニー形成単位(CFU)/グラムを含有する、約137mgの凍結乾燥バルク粉末を含む。
【0110】
高リスクの被験者には、これは生涯に渡る治療となり得る。臨床研究において、被験者は治療を停止した場合にコロニー形成の低下を示した。臨床研究において、治療は4週間に渡って実施され、そして2週間の追跡調査を行った。4週間の治療は、血中および尿中のシュウ酸塩レベルが、ベースラインレベルと比較して顕著に低下するという結果になった。しかし、追跡調査期間の間に、大便中のオキサロバクターの数は減少し、そして血漿中および尿中のシュウ酸塩の値は増加し始めた。従って、シュウ酸塩低減組成物の継続的な摂食は、シュウ酸塩が減少した状態を提供するのに必要とされるであろうと提案される。消化管においてコロニーを形成して連続的に定着することのできる細菌を含む組成物を用いることにより、必要なシュウ酸塩低減組成物の投与回数を減らすことができる。
【0111】
O.フォルミジェネス細胞の腸溶性カプセル剤は、シュウ酸塩関連疾患について高リスクである患者集団が摂取し得る。これらの患者は以下を含む:
1.例えば、原発性高シュウ酸尿症のような遺伝的欠損のために、過剰な内因性シュウ酸塩を産生する者
2.腸疾患(腸管高シュウ酸症)のために高い尿中シュウ酸塩を伴う尿石症に対するリスクがある者
3.特発性結石症の頻回の症状発現を伴う尿結石症の病歴を有する者
4.末期腎臓病のために、血清のシュウ酸塩レベルが高い者
5.外陰部前庭炎である者
6.インドおよびサウジアラビアにおける特定の地域ならびに特定の季節に見られるような、シュウ酸塩レベルが高い食事を摂る者。これはまた、シュウ酸塩が高いホウレンソウなどの食品を偶然好む人々を含む。
【0112】
上記の者または動物のいずれにも、本発明の組成物が提供される。例えば、内因性のシュウ酸塩レベルが正常値より高い者は、1日に2回、内容物が大腸に送達されるように設計されたカプセル剤により治療され、ここで、カプセル剤はおよそ106cfuのO.フォルミジェネスを含有する。カプセル剤は好ましくは食事と共に与えられる。
【0113】
実施例2
低リスク患者の治療
腸溶性コーティングカプセル剤で提供される等、腸溶保護したO.フォルミジェネス細胞もまた、シュウ酸塩関連疾患に対するリスクが低い集団内の個人によって摂取され得る。これらの患者において、シュウ酸塩低減細菌等のシュウ酸塩低減物質の組成物を含む1回または2回の治療で、コロニー形成がされることが望まれる。これらの患者はまた、日常的にシュウ酸塩低減物質の治療を、栄養補助食品として、または乳もしくはヨーグルト等の食品への添加物として摂取してもよい。これらの患者は以下を含む:
1.正常なシュウ酸塩分解細菌群を、経口抗生物質での治療または下痢性疾患の発作のために失った者
2.オキサロバクターの正常な保護個体群が、競争排除則が作用する人生のより後の時期よりも容易に定着するように、乳幼児に接種し得る。
【0114】
リスクの低い者または動物は、1日に2回、内容物が大腸に送達されるように設計されたカプセル剤により治療され、ここで、カプセル剤は少なくとも107cfuのO.フォルミジェネス等の1以上のシュウ酸塩低減微生物を含有する。カプセル剤は好ましくは食事と共に与えられる。
【0115】
実施例3
高シュウ酸尿症を制御するためのオキサロバクター・フォルミジェネス由来のシュウ酸塩分解酵素の使用
高シュウ酸尿症の制御に対するオキサロバクター・フォルミジェネス由来のシュウ酸塩分解酵素の効果を評価するための試験を実施した。
【0116】
使用動物:オスのSD(Sprague Dawley)ラット:体重250〜300g
使用食:普通食(N.D.):Harlan Teklad TD89222;0.5%Ca, 0.4%P
使用薬剤:オキサロバクター・フォルミジェネス溶解物(酵素の供給源)とオキサリルCoA、MgCl2およびTPPとの凍結乾燥混合物。
薬剤送達システム(カプセル剤):前臨床ラット試験用のサイズ9のカプセル剤(Capsu-Gel)。腸溶性コーティング剤Eudragit(商標) L-100-55(Hulls America, Inc.)。基本的な(basal)24時間尿採取。オキサロバクター・フォルミジェネスについての糞便解析−ラットはオキサロバクター・フォルミジェネスのコロニーが形成されなかった。
【0117】
実験プロトコール:
A.長期試験:
動物プロトコール:
群I(n=4):シュウ酸塩食を溶解物と共に摂食させた。ラットに、毎日、2カプセルを午後4時に、そしてシュウ酸塩食を一晩中与えた。食事は日中(午前8時〜午後4時まで)は与えなかった。
群II(n=4):群Iについて記載したように、シュウ酸塩食を摂取させた(高シュウ酸尿症対照)。
【0118】
24時間尿サンプルを、上記の処置の7日目および9日目に採取した。
【0119】
上記に示す2つの群のラットについての平均尿中シュウ酸塩濃度のデータは、オキサロバクター溶解物の摂食が、高シュウ酸尿症対照(群II)と比較して、群Iのラットの尿中のシュウ酸塩濃度を低下させることを示した。酵素は胃腸管において長期間に渡り活性を保つことはできず、従って、短期試験を以下に記載するように実施した。
【0120】
B.短期試験:
動物プロトコール:
群I(n=4):1カプセルを午前8時に摂食させた。2時間に渡りシュウ酸塩食(この時間の間によく食べるように、ラットを一晩中断食させた)、そして午前10時に1カプセルを与えた。
群II(n=4):群Iと同様に、2時間に渡りシュウ酸塩食を与えた。
【0121】
その後5時間に渡り、すべての動物から尿を採取し、シュウ酸塩濃度を解析した。
【0122】
これは、この試験の11日目、12日目および15日目に実施した。
【0123】
この試験の結果は、オキサロバクター溶解物の摂食が、高シュウ酸尿症対照群(群II)と比較して、群Iのラットにおけるシュウ酸塩および薬剤投与後5時間において、尿中のシュウ酸塩レベルの顕著な減少を促進することを示す。この点において、2つの群のラット間における交差試験を実施した。
【0124】
C.交差試験
動物プロトコール:
群I:シュウ酸塩食を1日に2回、午前8時〜午前10時および午後3時〜午後5時に摂食させた。
群II:群Iと同様にシュウ酸塩食を摂食する前に、1カプセルを1日に2回摂取させた。
【0125】
尿中のシュウ酸塩レベルにおける、オキサロバクター溶解物摂食の効果についての短期試験は、上記のセクションBに記載するように、交差試験の2日後および5日後に実施した。
【0126】
交差試験は、以前は高シュウ酸尿症であった群IIラットにオキサロバクター溶解物を摂食したところ、尿中のシュウ酸塩レベルが低下することを示した。一方、群Iラットは、薬剤を中止すると、高シュウ酸尿症に戻った。
【0127】
実施例4
オキサロバクター・フォルミジェネス細胞によるラットの治療
オキサロバクター・フォルミジェネス細胞が食事中に含まれる場合に、食餌性シュウ酸塩がどのようになるかを評価するための試験を実施した。
【0128】
方法:2つの別々の実験において、オスのウィスター系ラットに、通常のカルシウム(1%)、高シュウ酸塩(0.5%)食、または低カルシウム(0.02%)、高シュウ酸塩(0.5%)食を摂食させた。14Cシュウ酸塩(2.0μCi)を試験の1日目、および7日目に再び与えた。オキサロバクター・フォルミジェネス細胞(380mg/日)を、ラットの飲み水に5〜11日目に投与した。シュウ酸塩由来の14Cの行方を、糞便、尿および呼気中の14Cの解析に基づいて測定した。ラットは自己対照としての役割を果たし、(オキサロバクター細胞を摂食する前の)対照期間中の測定は、1〜4日目の間に実施され、実験期間中(細菌細胞を摂食した時)の間の7日〜11日目に測定が実施された。
【0129】
結果:
1.ラットに通常の(1%)カルシウム食を摂食させた場合、シュウ酸塩由来の14Cの投与量の1%未満が呼気中(腸において14Cシュウ酸塩から生じ、血液中に吸収され、その後呼気に排出された二酸化炭素として)に回収されたが、すべての場合において、ラットがオキサロバクター細胞を摂食した期間においては、より多くの14Cが回収された(図1a)。これは食餌が低カルシウム(0.02%)である場合に得られた結果とは反対であり、ラットにオキサロバクター細胞を摂食させた場合には、実験期間中に50%を超えるシュウ酸塩由来の14Cが呼気中の二酸化炭素として回収された(図1b)。これらの結果は、対照期間中(オキサロバクター細胞を摂食する前)に回収された非常に少量の14C(5%未満)とは全く異なる。従って、ラットにオキサロバクター・フォルミジェネス細胞を摂食させることは、腸管内で分解された食餌性のシュウ酸塩の量を顕著に増加させた。
【0130】
2.オキサロバクター細胞の摂食はまた、尿中に排出された14Cシュウ酸塩の量を減少させた。対照期間中および実験期間中の両方の4日間の回収物に関する値および各々の期間における1日間に関する値を、各々図2aおよび図2bに示す。ラットの糞便中に回収されたシュウ酸塩の量もまた、対照期間に見られた量より実験期間中(オキサロバクター細胞を摂食した時)において低かった(図2c)。
【0131】
多くの実験ラットは、それらの腸管内にオキサロバクターを有さない(コロニーを形成しない)。この結果は、これらのシュウ酸塩分解細菌のラットへの意図的な投与が、食餌性のシュウ酸塩の大部分の分解を引き起こしたこと、および最終的に食餌由来のシュウ酸塩がほとんど尿中に排出されなかったことを示した。
【0132】
シュウ酸塩分解における食餌性のカルシウムの影響は顕著である。カルシウムがシュウ酸塩と錯体を形成することにより、溶解度およびオキサロバクターによる分解の余地が制限され、そしてラットが高カルシウム食を摂食した場合に分解される量は、食餌中のカルシウムが少ない場合に分解される量より非常に少なくなる。
【0133】
実施例5
ブタの尿中シュウ酸塩排出におけるO.フォルミジェネスの摂食の効果
ブタにはオキサロバクターが自然にコロニー形成をする。実験用のブタにおいて、食餌に抗生物質を添加することによって、コロニーが形成されないようにした。ブタは、彼らが好んで食する培養ブロス中にオキサロバクターを添加して摂食させた。ブタは、1300mgシュウ酸塩/kgを添加したダイズ/トウモロコシを主成分とする飼料を摂食した。基本の食餌は、680mgシュウ酸塩/kgを含む。3頭の個々のブタについての結果は図3a〜cに示す。
【0134】
3頭のブタすべてにおいて、尿中のシュウ酸塩は、オキサロバクターを摂取している間に、劇的に減少した。これらのブタにおけるシュウ酸塩の排出のレベルは、これら3頭すべてのブタにおいて、最低およそ6mg/gクレアチニンまで減少した。これは、シュウ酸塩を含まない食餌を摂取したヒトで見られる8〜10mg/gクレアチニンのレベルに匹敵する。このレベルは、食事負荷を排除した際に、ヒトで内因的に合成される濃度と等しいレベルである。このレベルは、ブタの内因的な合成を反映し、そしてオキサロバクター処置によって腸内吸収が排除されたように見える。さらに、これらの結果は、摂取したオキサロバクターが、添加した結晶性シュウ酸塩および生物が利用可能な食物由来のシュウ酸塩の双方を除去することができたことを示す。
【0135】
この実験において、各々のブタには1.0gの細胞ペーストを朝の餌と共に摂食させた。OD600が0.6において、生きた細胞数は2.1×108細胞/mlであり、これは100L当たり2.1×1013細胞と推定される。100L発酵工程は、平均50〜60グラム湿重量の細胞で行う。従って、1グラム湿重量の細胞は、約3.5×1011の生きた細胞である。
【0136】
上記の通り、3.5×1011の生きた細胞の投与は、食餌1kg当たりに存在するシュウ酸塩約2.0グラム(1300mgの添加シュウ酸塩+食餌中に存在する680mgのシュウ酸塩)の腸内吸収を排除し得る。ブタは、1回の食餌当たり1kgの飼料を食べた。
【0137】
ブタの体重は約200ポンドであり、ブタの消化器系はヒトの消化器系と非常に近いと考えられている。ヒトにおいて、シュウ酸塩の平均的な1日の摂取量は、1日に3食に分けられる食餌の摂取量に応じて約100〜400mgであり、従って、平均して1日用量108〜1010の生きた細胞が、食餌性シュウ酸塩の吸収を回避するのに十分となるだろう。
【0138】
実施例6
高シュウ酸塩食を摂食したラットの尿中シュウ酸塩排出におけるO.フォルミジェネス補給の効果
高シュウ酸塩食を与えた後のコロニー形成状況および尿中のシュウ酸塩レベルにおけるIxOC-3製剤の効果を決定するための試験を実施した。IxOC-3製剤は、O.フォルミジェネス等のシュウ酸塩低減細菌の凍結乾燥した生きた細胞を含む。本製剤は、1用量当たりおよそ106〜107cfu/グラムを含む。本製剤はまた、トレハロースおよびマルトデキストリン等の凍結保護剤を含む。
【0139】
方法:
オスのHarlan Sprague Dawleyラットを無作為に3つの群(6動物/群)に振り分けた。群1の動物は、対照群としての役割を果たし、サイズ9の腸溶性コーティング偽薬製剤を毎日2回、強制経口投与によって、100コロニー形成単位(CFU)の用量レベルで投与した。群2および3のラットには、オキサロバクター・フォルミジェネスIxOC-3製剤を、サイズ9の腸溶性コーティングカプセル剤形態で毎日2回、強制経口投与によって、各々106および107CFUの用量レベルで投与した。カプセル剤強制投与に続き、オートクレーブ処理した水道水で3群すべてをきれいに洗った。初期の順化期間の後、すべての群に1グラム当たり1%のシュウ酸塩を添加した標準的な食餌を摂食させた。
【0140】
試験物質および偽薬対照物質は、以下の標準的なプロトコールによって調製した。使用前に、各々の試験物質の代表サンプルを解析して、試験カプセル剤の同一性、純度および力価を確認し、同時に投与期間中に偽薬対照物質中にはオキサロバクター・フォルミジェネスがないことを確認した。
【0141】
食餌は、朝および夜の強制投与の15分後から1時間で1日2回に制限し、カプセル剤が空腹時の胃に投与されることを確実にした。水は絶えず供給した。食物摂取は1日2回記録した。糞便および24時間の尿サンプルを1日目(シュウ酸塩添加飼料摂取の前)およびその後週に一度回収した。尿のデータは、投与群および時間ごとの平均尿パラメーターにおける差異について、反復測定解析によって解析した。時間相互作用項による投与群もまた、投与群と時間との間の考えられるあらゆる相互関係を評価するために含めた。
【0142】
解析の結果は、時間ごとの尿のパラメーター特性が投与群ごとに異なることから、すべてのパラメーターについて、投与群と時間との間に統計的に有意な相互関係(p<0.0001)があることが示された。この相互関係の解釈を助けるために、このデータの解析を、各々のパラメーターについての時点で、平均尿パラメーターに関して、投与群の間において違いがあるか否かを調べるために行った。この解析は、低用量群および高用量群について、尿中のシュウ酸塩が、7日間まではベースラインから増加した(両群ともp<0.0001)が、7日〜28日までは増加しなかったこと(低用量群でp=0.1094および高用量群でp=0.6910)を明らかにした。しかし偽薬群については、28日までベースラインより増加した(p=0.0010)。21日目および28日目においても、偽薬群Iの平均尿シュウ酸塩レベルは、低用量群(群II)および高用量群(群III)の平均尿シュウ酸塩レベルよりも顕著に高かったが、低用量群と高用量群との間の顕著な違いはなかった。従って、偽薬を摂取したラットと比較して、処置ラットでは、尿中シュウ酸塩排出における全体的な顕著な減少があった。
【0143】
実施例7
原発性高シュウ酸尿症(PH)を患う患者の、尿中シュウ酸塩レベルにおけるO.フォルミジェネスの経口投与の効果
方法:
生検済みの原発性高シュウ酸尿症(PH)を患う9名の患者が本研究に参加した。初期ベースライン評価を受けた後、すべての被験者にオキサロバクター・フォルミジェネス1gの細胞ペースト(1010cfu/グラム以上)を、主な食事と共に4週間に渡って投与した。この期間中、すべての患者は通常の薬剤を服用し続け、そして通常の食事を取った上で水分摂取量を通常と同じ多さに維持するように求められた。ホウレンソウおよびルバーブを除き、シュウ酸塩の高い食物を禁止しなかった。オキサロバクターのコロニー形成、ならびに尿および血漿のシュウ酸塩レベルにおけるその影響は、5週目および6週目に測定した。治療効果は、正常な腎機能を有する被験者では尿中シュウ酸塩排出の観点で、および末期の腎疾患(ESRD)を患う被験者では血漿シュウ酸塩の観点で追跡調査した。
【0144】
結果:
1.治療は、正常な腎機能を有する被験者の尿中シュウ酸塩の顕著な低下を示した。血漿中シュウ酸塩は、9名のうち7名の被験者において顕著に減少した。ESRDを患う2名の被験者の血漿中シュウ酸塩の劇的な低下があり、これは経上皮勾配に反した消化管への内因性シュウ酸塩の腸内排出の証拠をもたらした。
【0145】
O.フォルミジェネスHC-1株を、食事1回当たり0.25g〜2.0gの範囲の用量で摂取することは、平均的または高いシュウ酸塩レベルを含む食事を摂取する正常で健康なボランティアによっては十分耐えられた。1.0グラムの細胞ペーストを28日間に渡り1日に2回という用量は、PH患者によって十分耐えられた。
【0146】
実施例8
シュウ酸塩低減酵素組成物による高リスク患者の治療
原発性高シュウ酸尿症の患者に、シュウ酸デカルボキシラーゼおよび/またはシュウ酸オキシダーゼを含有する凍結乾燥したシュウ酸塩低減酵素組成物を含む1個以上の腸溶性コーティングカプセル剤を、1日に2回、好ましくは毎日2回の主な食事と共に摂取させる。有効量の酵素組成物を投与する。例えば、各々のサイズ2のカプセル剤は、各々の酵素を約5〜100単位含む。
【0147】
高リスクの被験者には、長期間に渡る、恐らく生涯に渡る継続的な投与である。コロニー形成は、治療を停止した場合に低下するだろう。
【0148】
シュウ酸塩低減酵素を含むシュウ酸塩低減組成物の腸溶性コーティングカプセル剤は、シュウ酸塩関連疾患について高リスクにある患者集団に投与することができる。これらは以下を含む:
1.例えば、原発性高シュウ酸尿症のような遺伝的欠損のために、過剰な内因性シュウ酸塩を産生する者
2.腸疾患(腸管高シュウ酸症)のために高い尿中シュウ酸塩を伴う尿石症に対するリスクがある者
3.特発性結石症の頻回の症状発現を伴う尿結石症の病歴を有する者
4.末期腎臓病のために、血清のシュウ酸塩レベルが高い者
5.外陰部前庭炎である者
6.インドおよびサウジアラビアにおける特定の地域ならびに特定の季節に見られるような、シュウ酸塩レベルが高い食事を摂る者。これはまた、シュウ酸塩が高いホウレンソウなどの食品を偶然好む人々を含む。
【0149】
上記の者または動物のいずれかに、本発明の組成物を提供する。例えば、内因性のシュウ酸塩レベルが正常値より高い者は、1日に2回、内容物が大腸に送達されるように設計されたカプセル剤により治療され、ここで、カプセル剤は、107cfuのO.フォルミジェネス等のシュウ酸塩低減細菌により得られる酵素活性と同様の酵素活性を有する、ほぼ同じ有効量の酵素組成物を含有する。カプセル剤は好ましくは食事と共に与えられる。
【0150】
実施例9
シュウ酸塩低減酵素組成物による低リスク患者の治療
腸溶性コーティングカプセル剤として提供されるような、シュウ酸塩低減酵素(シュウ酸デカルボキシラーゼおよび/またはシュウ酸オキシダーゼ)の混合物を含む、腸溶保護されたシュウ酸塩低減組成物もまた、シュウ酸塩関連疾患について低リスクであるか、またはシュウ酸塩関連症状のリスクにある集団の個人に投与することができる。有効量の酵素組成物が、所望の治療計画において投与される。
【0151】
これらの患者には、シュウ酸塩関連症状のリスクがある場合には短期間に渡って投与し、またはシュウ酸塩関連症状の一因となる物質と同時に、本組成物を投与することが望ましい。これらの患者はまた、栄養補助食品として、または乳もしくはヨーグルト等の食品への添加物としてのどちらかで、日常的にシュウ酸塩低減組成物での治療を受けてもよい。これらは、正常なシュウ酸塩分解細菌群を経口抗生物質での治療もしくは下痢性疾患の発作のために失った者、または乳幼児を含む。
【0152】
低リスクである人または動物は、1日に2回、その内容物が大腸へ送達されるように設計されたカプセル剤により治療され、ここで、カプセル剤は有効量の酵素組成物を含む。例えば、各々のサイズ2のカプセル剤は、各々の酵素を約5〜100単位含む。カプセル剤は好ましくは食物と共に与えられる。
【0153】
実施例10
凍結乾燥したオキサロバクター・フォルミジェネスを含む腸溶性コーティングカプセル剤を製造する方法
200グラムのオキサロバクター・フォルミジェネス細胞ペーストを使用した(シュウ酸塩分解酵素活性/gが約60〜約1600mg/gの範囲)。細胞ペーストは、発酵物由来の新鮮なものであってよく、また解凍された凍結保存物由来であってもよい。100mMトレハロース凍結保護溶液または抗凍結溶液を、細胞ペーストと混合した。溶液は継続的に攪拌した。次に、この混合物を賦形剤混合物と混合した。賦形剤混合物には、マルトデキストリンM500とアルギン酸ナトリウムとを共に混合し、79% RaftiloseP95溶液に加えたものを使用した。次に、細胞ペースト混合物を凍結乾燥トレイ上に注いだ。次に、充填されたトレイをEdwards Lyofast S24乾燥機で(あらゆる適切な型の乾燥機が使用され得る)、40〜65時間に渡り(この時間は、異なる生産工程によって変化し得る)凍結乾燥させた。凍結乾燥後、乾燥したケーキを砕き、そして米国サイズ20メッシュ篩に押し付けて通過させた。これにより、850μm未満の粒子サイズの粉末が得られた。
【0154】
乾燥粉末を一度篩にかけると、カプセル中に充填できる状態になった。カプセルを手動カプセル充填機を使用して充填したが、自動充填機等のあらゆるカプセル充填方法が使用され得る。ほとんどの場合、サイズ2のカプセル剤を使用した。カプセル剤は、Eudragit(商標)(Rhom Pharma Degussaより市販品を入手可能)等の腸溶性コーティングポリマーで、水性コーティングプロセスを用いてコーティングしたが、溶剤コーティングプロセスを利用することもできる。この会社は、異なるpHにおいて特異的に溶解する多くの異なるタイプのEudragit(商標)ポリマーを製造している。
【0155】
コーティングは標準的な技術を用いて実施した。Eudragit(商標)ポリマーは、メタクリル酸ポリマーおよびコポリマーである。例えば、Eudragit(商標) L100-55は、メタクリル酸コポリマータイプCであり、Eudragit(商標) L30は、メタクリル酸コポリマー分散剤であり、そしてEudragit(商標) S100は、メタクリル酸コポリマータイプBである。これらの腸溶性コーティング剤および他の腸溶性コーティング剤は当技術分野において知られている。
【0156】
水性コーティング剤
Eudragit(商標) FS30D(フィルム形成剤)およびEudragit(商標) L30D55(フィルム形成剤)を使用し、そして他の物質(可塑剤、脱粘着剤、ならびに水および医薬分野に知られるもの等の担体)も共に使用した。
【0157】
800グラムのカプセル剤を、コーティング懸濁液でコーティングして、USP崩壊特性を有する均一にコーティングされたカプセル剤を得た。崩壊特性:人工胃液(pH1.2)中で1時間以内に崩壊せず、そして人工腸液(pH6.8)中で1時間以内に完全に崩壊した。
【0158】
溶剤コーティングプロセス:
Eudragit(商標) L100-55(フィルム形成剤)、Eudragit(商標) S100(フィルム形成剤)は、他の物質(可塑剤、脱粘着剤、ならびに水および医薬分野に知られるもの等の担体)と共に使用した。
【0159】
800グラムのカプセル剤を、コーティング懸濁液でコーティングして、USP崩壊特性を有する均一にコーティングされたカプセル剤を得た。崩壊特性:人工胃液(pH1.2)中で1時間以内に崩壊せず、そして人工腸液(pH6.8)中で1時間以内に完全に崩壊した。
【0160】
実施例11
実施例10の方法で作製した経口送達カプセル剤に対する7つの異なる実験について、1年の試験の間に、以下のデータが得られた。カプセル剤の内容物を追加することはできるだろうか。そのように製造された医薬組成物を、細菌の生存率およびシュウ酸塩分解活性の観点から安定性について評価した。以下の表(表1)は、7つの製造工程、および生きたシュウ酸塩低減細菌(特にO.フォルミジェネス)を含有する腸溶性コーティングカプセル剤を含む医薬組成物の安定性を示す。
【表1】

【0161】
別の実施例は、以下の表2におけるデータに示す。
【表2】

【0162】
別の製造工程において、以下のデータが得られた。
【表3】

【0163】
実施例13
生きたオキサロバクター・フォルミジェネス医薬組成物の経口送達のための製剤
【表4】

【0164】
例えば、トレハロースはSigma Co.より入手可能である。トレハロースは二糖類であり、このように本発明の製剤は、マルトース、ラクトース、セロビオース、スクロース、ジグルコース、またはトレハロース等の二糖類を含む。マルトデキストリンQD M-500は、DE値が10であり、そして白色粉末または顆粒状の白色粉末である。これは甘くなく、主にα-1,4結合によって結合したD-グルコース単位から構成される栄養糖ポリマーである。DEは、デキストロース当量であり、デンプンポリマー加水分解の程度の定量的尺度である。DEが高いほど、デンプンの加水分解の程度が大きい。アルギン酸ナトリウム等の安定剤もまた本製剤の成分であり、これはまた、安定剤、増粘剤、ゲル化剤、または乳化剤としても使用される。アルギン酸ナトリウムは、藻類から蒸留された天然のアミロース炭水化物である。これは、食品、薬品、繊維、印刷および染色、製紙、ならびに日用化学品などにおいて、増粘剤、乳化剤、安定剤、および結合剤等として広く適用される。分子式は(C6H7O6Na)nであり、白色または淡黄色の、非晶質(vagiform)粉末であり、無臭、無味、水溶性で、エタノールおよびエーテルに不溶性である。Raftilose P95は、95%オリゴフルクトースDP2〜DP7、ならびに糖類(グルコース、フルクトースおよびスクロース)(5%)からなる粉末である。
【表5】

【0165】

【0166】
実施例14
本発明の組成物の安定性試験
13の異なるコーティング工程からの材料(7つの水性+6つの有機性;実施例10の製剤の8つの異なるバッチを利用)を、冷蔵(5±3℃)および-20℃保存条件下で保存した。13工程のうち6つが、36週時点までを含むデータを有し;13工程のうち3つが、24週までのデータを有し;13工程のうち2つが12週までのデータを有し、そして残りの2つが4週時点までのデータを有する。これらの試験において調べられた変数は以下のものだけである:
保存温度(冷蔵および-20℃)
カプセルタイプ(ゼラチン 対 HPMC)
コーティングタイプ(水性 対 有機性)
追加の安定剤の有無(±Avicelを1〜5%w/wの濃度で)
包装(ポリプロピレン(PP)チューブ 対 ブリスター)
結果は図5〜12に示す。
【0167】
図5は、腸溶性コーティングカプセル剤を4℃および-20℃で各々保存した安定性試験の結果を示す。結果は、-20℃での保存は、4℃での保存よりもcfu/カプセルの低下がより少なくなることを示す。データを以下の表に示す。図5は、コーティングカプセル剤の平均cfu/カプセルを示すグラフであり、ひし形が4℃で保存されたカプセルであり、四角が-20℃で保存されたカプセルである。
【0168】
以下の表からのデータは、図6に示され、保存時間の関数としての対数減少を示す。図6は、コーティングカプセル剤の平均対数減少を示すグラフであり、ひし形が4℃で保存されたカプセルであり、四角が-20℃で保存されたカプセルである。
【表6】

【0169】
図7は、腸溶性コーティングゼラチンカプセル剤およびHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)カプセル剤の平均減少における差異を示す。約36週までの保存では、腸溶性コーティングゼラチンカプセル剤に含まれる組成物が、腸溶性コーティングHPMCカプセル剤に含まれる組成物より安定であるようにみられた。図7は、時間に伴う対数減少を示すグラフであり、ここで、ひし形はコーティングゼラチンカプセル剤、四角はコーティングHPMCカプセル剤である。
【0170】
ゼラチンまたはHPMCのカプセル剤は、水性系または有機溶剤系のコーティング組成物のいずれかを使用してコーティングされ得る。図8において、コーティング組成物に依存した平均減少に対する影響を示し、図9においては、異なるタイプのカプセル剤に対する結果が示される。図8は、水性コーティングカプセル剤対有機性コーティングカプセル剤の平均対数減少を示すグラフである。ひし形は、5±3℃で保存した水性コーティングカプセル剤;四角は、5±3℃で保存した有機溶剤系コーティングカプセル剤;三角は、-20℃で保存した水性コーティングカプセル剤;および×印は、-20℃で保存した有機溶剤系コーティングカプセル剤である。図9は、異なるカプセルタイプにおける異なるコーティングについての対数減少を示すグラフである。ひし形は、水性コーティングゼラチンカプセル剤;四角は、水性コーティングHPMCカプセル剤;三角は、有機溶剤系コーティングゼラチンカプセル剤;および×印は、有機溶剤系HPMCカプセル剤であり、すべて5±3℃で保存した。
【0171】
Avicel(登録商標)は、除湿剤または安定剤として添加され得る。図10は、Avicel(登録商標)の平均減少への影響を示す。図10は、Avicel(登録商標)を含む場合および含まない場合のコーティングカプセル剤の平均対数減少を示すグラフである。ひし形は、5±3℃で保存したAvicel(登録商標)を含むコーティングカプセル剤;四角は、5±3℃で保存したAvicel(登録商標)を含まないコーティングカプセル剤;三角は、-20℃で保存したAvicel(登録商標)を含むコーティングカプセル剤;および×印は、-20℃で保存したAvicel(登録商標)を含まないコーティングカプセル剤である。
【0172】
図11および図12は、カプセル剤の包装に関する。カプセル剤は、ポリプロピレンのチューブ内か、またはブリスターパック内のいずれかに包装した。しかし、その結果は使用者の状況を正確にシミュレートしておらず、これは、サンプルを取り出す時だけにチューブが開封されるという事実のためであった。患者は通常、新規の用量を服用するときはいつでもチューブを開封するので、日常生活の状況は、このようなシミュレートされた状況とは異なる。つまり、残りのカプセル剤は、本明細書に記載する実験の間よりもずっと、周囲の環境により多く曝露される。図11は、ポリプロピレンチューブおよびブリスター包装内への包装に関し、コーティングカプセル剤の活性の平均対数減少を示すグラフである。ひし形は、5±3℃で保存したポリプロピレン中に包装したコーティングカプセル剤;四角は、5±3℃で保存したブリスターパック中に包装したコーティングカプセル剤;三角は、-20℃で保存したポリプロピレン中に包装したコーティングカプセル剤;および×印は、-20℃で保存したブリスターパック中に包装したコーティングカプセル剤である。図12は、ポリプロピレンチューブおよびブリスター包装内への包装に関し、コーティングカプセル剤の活性の平均対数減少を示すグラフであり、エラーバー(error bars)を除いて図11と同一である。ひし形は、5±3℃で保存したポリプロピレン中に包装したコーティングカプセル剤;四角は、5±3℃で保存したブリスターパック中に包装したコーティングカプセル剤;三角は、-20℃で保存したポリプロピレン中に包装したコーティングカプセル剤;および×印は、-20℃で保存したブリスターパック中に包装したコーティングカプセル剤である。
【0173】
実施例15
コーティングプロセスのバリエーション
実施例に記載の細菌および賦形剤を含有する凍結乾燥粉末を含むカプセル剤(サイズ2)に、以下の表に記載するコーティング組成物を施した。コーティングは以下の表4に記載するような水性コーティング組成物を使用して実施した。以下のものをコーティング製剤に使用した:Eudragit(登録商標)30 D-55(Roehm America, Piscataway NJ)、クエン酸トリエチル(Morflex Inc., Greensboro, NC)、グリセロールモノステアラート(Imwitor 900K, Sasol, Germany)、およびポリソルベート80(Merck KGaA, Germany)。
【0174】
各々の試験について、Eudragit(商標) L30 D-55ポリマーの最終的な理論上の重量増加は、14mg/cm2であった。これは、31.1%w/wの総カプセル剤重量増加に相当する。
【表7】

【0175】
総固形分は25.0%w/w
コーティング分散剤調製手順
1.水の45%を無菌的な容器に添加して70℃に加熱する。
2.ポリソルベート80、クエン酸トリエチル、およびグリセロールモノステアラートを、ステップ1で加熱した水に添加する。
3.ステップ2の分散液の加熱をやめ、高せん断ミキサーで10分間均質化する。
4.残りの水をステップ3のエマルションに添加して、室温まで冷却する。
5.2つ目の無菌的な容器にEudragit(登録商標)L30 D-55を添加し、低せん断ミキサーで穏やかに混合を開始する。
6.ステップ4のエマルションを、ステップ5のEudragit(登録商標)L30 D-55に徐々に添加し、30分間継続的に混合する。
7.ステップ6の分散液は、60メッシュ(250μm)スクリーンを用いて篩にかける。
8.ステップ7の分散液を、コーティングプロセスの間、低せん断ミキサーで継続的に混合する。
【0176】
フィルムコーティング分散剤を以下のものに塗布(フィルムコーティング)した:
a.Compu-Lab 15インチ有孔コーティングパン(Thomas engineering, IL)中の総バッチサイズ600gのカプセル剤
b.6インチWursterおよびタイプD空気分散板を装備したGPCG 1流動床システム(Glatt air Techniques, NJ)中の総バッチサイズ800gのカプセル剤。仕切りの高さは25mmであった。
【0177】
プロセスパラメーターは、以下の表に示す通りであった。
【表8】

【0178】
適宜、サンプルを包装およびラベル標識するための適切な容器に入れる。
【0179】
結果
腸溶性製剤は、いかなる加工上の問題もなく、パンおよび流動床コーティングシステムの双方においてカプセルに塗布された。
【0180】
実施例16
腸溶性カプセル剤の結束
経口投与後のカプセル剤の漏出およびあらゆる酸性溶剤(胃液)の侵入を防ぐために、以下の実験をカプセル剤の結束について実施した。結束は、2つのカプセル殻が重なっていて隙間がある状態の端の部分(カプセルの継ぎ目)におけるシーリングの適用を意味する。上記のように、一方のカプセル殻からもう一方へのこの継ぎ目は、状況次第でカプセル内への胃液の拡散、酸性環境の細菌の安定性のために非常に厄介なプロセスをもたらし得る。
【0181】
さらに、崩壊試験を実施した。
材料:
Pharmacoat 606(HPMC(Shin Etsu))
エタノール(Spectrum)
Red 40 Dye(Sensient)
ポリソルベート80(PS-80)(Qualicaps)
ゼラチン, NF(Qualicaps)
Eudragit L100(Degussa)
クエン酸トリエチル(TEC)(Morflex)
タルク(Whittaker)
イソプロピルアルコール(IPA)(Univar)
Eudragit L100-55(Degussa)
Eudragit S100(Degussa)
試験:
崩壊装置はアメリカ薬局方に従った。適当数の容器を、およそ900mlのバッファー(pH1.2)で満たし、37℃に保った。1つのカプセル剤を各々のロットについて、かごの各々のチューブ内に入れ、網で覆った。機械を1時間操作し、残ったカプセル剤の数を記録した。次に、およそ900mlのバッファー(pH6.8)で満たした新しい容器にかごを移して、37℃に保った。1時間後に、崩壊したカプセル剤の数を記録した。
【0182】
製剤開発
結束
HPMCカプセル剤およびゼラチンカプセル剤の両方を、Schaefer Technologies STI Laboratory Model Capsule Banderを用いて以下の表の配合に従って結束させた。
【表9】

【0183】
1)水と界面活性剤とを穏やかに混合する。
2)B-1dyeを添加する。手で穏やかに混合する。
3)ゼラチン, NF中に穏やかに混合する。1〜2時間膨潤させる。
4)しっかり密封する。55℃のオーブンまたは湯浴に置いて、ゼラチンを融解させる。
【表10】

【0184】
1)HPMCをエタノールに添加して攪拌する。
2)脱イオン水に染色液を添加して攪拌する。
3)(2)を(1)に添加して攪拌する。
【0185】
表A)は、ゼラチン結束のためのカプセル結束配合を示し、表B)は、HPMC結束のためのカプセル結束配合を示す。
【0186】
通常は、ゼラチンカプセルはゼラチン含有組成物で結束し、HPMCカプセルはHPMC含有組成物で結束した。結束はカプセルが腸溶性コーティングされる前に実施した。カプセルの継ぎ目の補強とは別に、結束はより優れ、かつより均一な腸溶性コーティングも可能にするようである。
【0187】
コーティング試験
種々のコーティング試験を、ゼラチンおよびHPMC結束カプセル剤において実施した。コーティングを流動床乾燥機内ならびに有孔パン塗布機の両方について調査した。2つの異なる有機性コーティング製剤を、パンコーティング試験において調べた。
【0188】
パンコーティング‐試験1
試験1を、新規の溶剤処方の実現可能性の評価ならびに加工パラメーターの決定のために実施した。使用したコーティング配合およびパラメーターは以下の通りである。
【表11】

【0189】
手順:
1)Eudragit(商標)を6000gのIPA中に分散させる。
2)(1)に水を添加する。
3)TEC、タルク、および残りのIPA(2654g)を混合する。
4)(2)と(3)とを合わせ、1時間混合する。
コーティングパラメーター:
生成物温度=23〜27℃ 噴霧空気=25〜27psiAir
流量=250cfm 噴霧速度=52〜56g/分
パン速度=15rpm
【0190】
15''コーティングパンにおよそ800gのカプセルを装填した。次に、パンを始動させ、そして加工条件を設定した。開始してほぼすぐに、生成物温度が望ましい範囲に達し、およそ52g/分の速度で噴霧を開始した。初めの噴霧発射は、製造ラインにおいて生じた圧力によるようであり、弱い付着を生じるように見えたが、残りの工程において付着または凝集は観察されなかった。サンプルを、8、12、15および20%の理論的な重量増加で回収した。
【0191】
試験2
試験2は以下に記載するとおり実施した。
【表12】

【0192】
手順:
1)タルクと200gのIPAとを混合する。
2)Eudragit(商標) L100-55とEudragit(商標) S100とを混合(bag blend)する。
3)残りのIPA(935.5g)と水とを混合する。
4)(2)を(3)に添加する。
5)TECおよび(1)を(4)に添加する。
プロセスパラメーター:
生成物温度=25〜28℃ 噴霧空気=38〜42psiAir
流量=250cfm 噴霧速度=17〜20g/分
パン速度=15〜16rpm
【0193】
試験2は試験1と同様に実施したが、始動に際して付着が観察された。噴霧速度を、さらなる付着を回避するために劇的に低下させ、コーティング試験は、さらなる支障はなく進行した。カプセルを20%重量増加となるまでコーティングした。
【0194】
結果
試験1および2のカプセルに対して、崩壊試験を実施した。結果は以下の通りである。
【表13】

【0195】
結果
試験1および2の両方とも、低温および低湿度条件下で腸溶性カプセルコーティング剤を作出することに成功した。しかし、試験1は多くの理由のためにより優れているようであったことが示唆される。この配合は固体含有量が少なかったため、コーティング期間をより長くしたことによりコーティングの均一性が理論的に改善された。さらに、固体含有量が低いことによって、カプセル同士が付着する可能性が減少する。またさらに、試験1の配合では、たった1つのタイプのEudragit(商標)を使用しており、これにより溶液の調製が簡素化される。最後に、試験1のために用いた配合およびプロセスは、腸内崩壊試験に合格する、重量増加がたった8%のカプセル剤を産生する。
【0196】
試験1は、多くの理由のために、最も成功した試験とみなされる。この配合は固体含有量が少なかったため、コーティング期間をより長くしたことによりコーティングの均一性が理論的に改善された。さらに、固体含有量が低いことによって、カプセル同士が付着する可能性が減少する。またさらに、試験1の配合では、1つのタイプのEudragit(商標)を使用しており、これにより溶液の調製が簡素化される。最後に、試験1のために用いた配合およびプロセスは、腸内崩壊試験に合格する、重量増加がたった8%のカプセル剤を産生する。
【0197】
本明細書に記載する実施例および実施形態は、説明する目的だけのためであり、それらを考慮した種々の改良または変更が、当業者に示唆され、そして本出願の精神および範囲内ならびに添付の特許請求の範囲に含まれることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1A】図1Aは、高カルシウム食から得られるデータのグラフである。
【図1B】図1Bは、低カルシウム食から得られるデータのグラフである。
【図2A】図2Aは、排泄されたシュウ酸塩のグラフである。
【図2B】図2Bは、排泄されたシュウ酸塩のグラフである。
【図2C】図2Cは、排泄されたシュウ酸塩のグラフである。
【図3】図3A〜Cは、排泄されたシュウ酸塩のグラフである。
【図4】図4は、排泄されたシュウ酸塩のグラフである。
【図5】図5は、4℃および-20℃におけるコーティングされたカプセル剤のCFU/カプセル 対 保存(週)のグラフである。
【図6】図6は、4℃および-20℃におけるコーティングされたカプセル剤の平均損失 対 保存(週)を示すグラフである。
【図7】図7は、ゼラチンカプセル剤とHPMCカプセル剤の平均損失 対 保存(週)のグラフである。
【図8】図8は、水性コーティングカプセル剤の平均損失 対 有機性コーティングカプセル剤の平均損失のグラフである。
【図9】図9は、コーティングおよびカプセルのタイプによって分類された平均損失のグラフである。
【図10】図10は、Avicel(登録商標)を含む場合または含まない場合の平均損失のグラフである。
【図11】図11は、ポリプロピレンチューブ内における平均損失 対 ブリスター包装内における平均損失のグラフである。
【図12】図12は、ポリプロピレンチューブ内における平均損失 対ブリスター包装内における平均損失の、エラーバーを除いたグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物への経口投与のための組成物であって、前記組成物は、
i)シュウ酸塩分解細菌、
ii)1以上の凍結保護剤、
iii)1以上の賦形剤、
を含有するシュウ酸塩分解組成物を含有する経口送達ベヒクルを含み、経口投与によりヒトまたは動物の腸内へシュウ酸塩分解細菌を送達するための前記組成物。
【請求項2】
除湿剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
経口送達ベヒクルが、粉末、カプセル剤、丸剤、顆粒剤または錠剤を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
経口送達ベヒクルがゲルカプセル剤を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
ゲルカプセル剤が結束材を用いることにより提供される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記結束材がゲルカプセル剤に含まれる材料と同じ材料を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ゲルカプセル剤が、例えばゼラチン、および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むセルロース誘導体などのポリマーを含む材料から作製される、請求項4〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
シュウ酸塩分解細菌が細胞ペーストの形態である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
経口送達ベヒクル上に腸溶性コーティング剤をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
腸溶性コーティング剤がポリマー材料である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ポリマー材料が、製薬産業において腸溶性コーティング剤を産生するために通常使用される材料から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
シュウ酸塩低減細菌が、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)、シュードモナス、クロストリジウム、ラクトバチルス、ビフィドバクテリウム、またはシュウ酸塩低減酵素をコードする外因性もしくは内因性のポリヌクレオチド配列を含む1以上のベクターにより形質転換された細菌である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
シュウ酸塩低減細菌が、オキサロバクター・フォルミジェネスである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
シュウ酸塩低減細菌が、オキサロバクター・フォルミジェネスHC1株である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
シュウ酸塩分解組成物が、少なくとも約1×103〜約1×1013cfu/g、例えば約1×105〜約1×1012cfu/g等を有する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
単位投与形態である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
シュウ酸塩分解組成物が、約5×105〜約1×1010cfu/単位投与形態または約5×105〜約5×107のcfu/単位投与形態を有する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
6ヵ月間4℃で保存する際の、前記シュウ酸塩分解細菌のコロニー形成単位の減少が、最大3対数単位、例えば最大2対数単位、最大1対数単位、または最大0.5対数単位等である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
12ヵ月間4℃で保存する際の、前記シュウ酸塩分解細菌のコロニー形成単位の減少が、最大3対数単位、例えば最大2対数単位、最大1対数単位、または最大0.5対数単位等である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
6ヵ月間-20℃で保存する際の、前記シュウ酸塩分解細菌のコロニー形成単位の減少が、最大2対数単位、例えば最大1.5対数単位、最大1対数単位、または最大0.5対数単位等である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
12ヵ月間-20℃で保存する際の、前記シュウ酸塩分解細菌のコロニー形成単位の減少が、最大2対数単位、例えば最大1.5対数単位、最大1対数単位、または最大0.5対数単位等である、請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
シュウ酸塩分解組成物が、少なくとも約2mgシュウ酸塩分解/時間〜約2500mgシュウ酸塩分解/時、例えば、約60〜約250mg/時、または約20〜約100mg/時等のシュウ酸分解酵素活性/gを有する、請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物の腸への送達が、腸のシュウ酸塩分解細菌によるコロニー形成をもたらす、請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
腸のコロニー形成が一過性である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記シュウ酸塩低減組成物が凍結乾燥粉末を含む、請求項1〜24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記凍結保護剤が、糖質、アミノ酸、ポリマー、ポリオール、または有機酸の塩である、請求項1〜25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
前記凍結保護剤が二糖類である、請求項1〜26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記二糖類がトレハロースである、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記凍結保護剤が、トレハロース、グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、マルトース、スクロース、ジグルコース、ラフィノース、および、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、タピオカデンプンまたはコムギデンプンを含むデンプンより選択される糖質である、請求項1〜28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
前記凍結保護剤が、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、イノシトール、およびマルチトールより選択される糖アルコール等の糖アルコールである、請求項1から28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
前記凍結保護剤が、例えばデキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、カゼイン、またはスキムミルク等のポリマーである、請求項1〜28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
前記凍結保護剤が、グルタマート、システイン、および/またはグリセロールである、請求項1〜28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
前記1以上の賦形剤が、医薬上許容され得る賦形剤である、請求項1〜32のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項34】
前記1以上の賦形剤が充填剤である、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記賦形剤が凍結保護特性も有する、請求項33または34に記載の組成物。
【請求項36】
前記1以上の賦形剤が、マルトデキストリン、ラフチロース/オリゴフルクトース、またはアルギン酸塩である、請求項1〜35のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項37】
前記1以上の賦形剤が、ゼラチン、セルロース誘導体、ラクトース、またはデンプンである、請求項1〜35のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項38】
前記アルギン酸塩が、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、またはアルギン酸カルシウムを含むアルギン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である、請求項36に記載の組成物。
【請求項39】
1以上の除湿剤が、セルロース、セルロース誘導体、シリカまたはシリカ誘導体である、請求項2〜38のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項40】
1以上の除湿剤が、セルロース、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
1以上の除湿剤がヒュームド二酸化ケイ素を含むシリカである、請求項39に記載の組成物。
【請求項42】
1以上の除湿剤が、例えば少なくとも0.7m2/gまたは少なくとも1m2/g等の、少なくとも0.6m2/gの比表面積を有する、請求項39〜41のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項43】
微結晶性セルロースがAvicel(商標)である、請求項40〜42のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項44】
ヒュームド二酸化ケイ素がCabosil(商標)である、請求項41または42に記載の組成物。
【請求項45】
前記送達ベヒクルが
i)約0.5%〜約95%のシュウ酸塩分解細菌、
ii)約0.1%〜約50%の1以上の凍結保護剤、
iii)約3%〜約90%の1以上の賦形剤
を含む、請求項1〜44のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項46】
前記送達ベヒクルが
i)約3%〜約25%のシュウ酸塩分解細菌、
ii)約1.5%〜約10%の1以上の凍結保護剤、
iii)約45%〜約60%の1以上の賦形剤
を含む、請求項1〜45のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項47】
約1%w/w〜約5%w/wの除湿剤をさらに含む、請求項45または46に記載の組成物。
【請求項48】
前記シュウ酸塩分解組成物が
a)約0.5%〜約95%のシュウ酸塩分解細菌、
b)約0.1%〜約50%の二糖類、
c)約3%〜約85%のマルトデキストリン、
d)約0.5%〜約25%のアルギン酸塩、および
e)約1.0%〜約60%のオリゴフルクトース
を含む、請求項1〜47のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項49】
前記シュウ酸塩分解組成物が
a)約3%〜約25%のシュウ酸塩分解細菌、
b)約1.5%〜約6%の二糖類、
c)約45%〜約60%のマルトデキストリン、
d)約4%〜約6%のアルギン酸塩、および
e)約20%〜約35%のオリゴフルクトース
を含む、請求項1〜48のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項50】
前記シュウ酸塩分解組成物が凍結乾燥粉末の形態である、請求項1〜49のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項51】
前記凍結乾燥粉末の粒子サイズが、約10ミクロン〜約2000ミクロン、例えば約500ミクロン〜約1500ミクロン、約800ミクロン等の約600ミクロン〜約1000ミクロン等である、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
前記腸溶性コーティング剤がEudragit(商標)を含む、請求項9〜51のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項53】
請求項1〜52のいずれか1項に記載の組成物およびこれらの使用説明書を含む包装。
【請求項54】
1以上の単位用量の前記組成物を含む、請求項53に記載の包装。
【請求項55】
バルク量の前記組成物を含む、請求項53に記載の包装。
【請求項56】
有効量の請求項1〜52のいずれか1項に記載の組成物をヒトまたは動物に投与することを含む、ヒトまたは動物のシュウ酸塩濃度を低下させる方法。
【請求項57】
有効量の請求項1〜52のいずれか1項に記載の組成物をヒトまたは動物に投与することを含む、シュウ酸塩関連疾患を予防する方法。
【請求項58】
シュウ酸塩関連疾患が、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿石症)、腸管高シュウ酸尿症、外陰部痛、末期の腎臓病に伴うシュウ酸症、心臓伝導障害、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、脂肪便、空回腸バイパス手術を受けたことのある患者、または抗生物質治療を受けた患者である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記組成物を1日に2回以上投与する、請求項57または58に記載の方法。
【請求項60】
有効量の請求項1〜52のいずれか1項に記載の組成物をヒトまたは動物に投与することを含む、シュウ酸塩関連疾患を治療する方法。
【請求項61】
前記シュウ酸塩関連疾患が、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿石症)、腸管高シュウ酸尿症、外陰部痛、末期の腎臓病に伴うシュウ酸症、心臓伝導障害、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、脂肪便、空腸回腸バイパス手術を受けたことのある患者、または抗生物質治療を受けた患者である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記組成物を1日に2回以上投与する、請求項60または61に記載の方法。
【請求項63】
a)約0.5%〜約95%の生きた凍結乾燥シュウ酸塩低減細菌;および
b)約95%〜約0.5%の医薬上許容され得る賦形剤
を含む、存在するシュウ酸塩の一部を減少させる有効量のシュウ酸塩低減活性を、ヒトまたは動物に投与することを含む、請求項56〜62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
請求項1〜52のいずれか1項に記載のシュウ酸塩低減医薬組成物を製造する方法であって、前記方法は
a)少なくとも約1E+03〜約1E+13の濃度のシュウ酸塩低減細菌を提供すること;
b)シュウ酸塩低減細菌を1以上の医薬上許容され得る賦形剤と任意に混合すること;
c)細菌を凍結乾燥すること;および
d)細菌を医薬送達ベヒクルに充填すること
を含む、前記方法。
【請求項65】
ステップb)が含まれる、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
シュウ酸塩低減細菌、および、存在するのであれば、1以上の医薬上許容され得る賦形剤を、1以上の凍結保護剤と混合するステップ b1)をさらに含む、請求項64または65のいずれか1項に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2009−531275(P2009−531275A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545843(P2008−545843)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/047909
【国際公開番号】WO2007/070677
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(508178191)オクセラ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】