説明

シュラウド付きタービンブレード上で中央に位置する切削刃

シュラウド(10)は、エーロフォイルの先端にて、そのシュラウドの前縁と後縁との間に連続して延在するシール(24)を具備する。そのシュラウドの実質的に中央に、エーロフォイル(12)の質量中心を通るラインと実質的に径方向に整合されて、切削刃(32)が設けられている。この構造により、シュラウドの動作により生じるあらゆるモーメントアームをなくす、または最小限に抑えて、シュラウドとエーロフォイルとの間のフィレット領域に誘起される応力を低下させ、これにより、動翼のクリープ寿命を延長する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エーロフォイルにチップシュラウドを有するタービン動翼に関し、特に、先端部シールを有するシュラウドと、動翼の回転方向においてシュラウドの対向する両端部の中間に配置された切削刃とに関する。
【背景技術】
【0002】
タービン動翼のエーロフォイルには、チップシュラウドが設けられることが多い。シュラウドを設けると、振動応力による高サイクル疲労でエーロフォイルが破損することを防止できる。このシュラウドには通常、シールが設けられ、このシールは、シュラウドの外面から径方向外向きに突出し、シュラウドの対向する両端部間でタービンロータの回転方向に延在したものである。チップシュラウドのシールは従来、回転側チップシュラウドに対向する静止側シュラウドに形成された溝内に延在する。静止側シュラウドには、ハニカム通路が備えられている。このチップシュラウドと静止側シュラウドとの間のシール公差をゼロにしてエーロフォイルの安定性を得るよりも、チップシュラウドシールに漏洩路を設けて、不安定性を取り除くほうが望ましいことがわかっている。通常、チップシュラウドの前縁に切削刃が具備されて、先端部のシールの幅より広い溝を静止側シュラウドのハニカムに切削するようになっている。これにより、溝内に延在するシールの両側の高圧領域と低圧領域との間に漏洩路が形成される。この構造では、不利なことにエーロフォイル前後の圧力損失量は低下して、シール性能も低下するが、それを補う形でエーロフォイルの安定性が増加する。
【特許文献1】特開2003−505634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、刃の質量が、エーロフォイルの質量中心と同じ半径ライン上にないため、エーロフォイルとチップシュラウドとの間のフィレット領域に沿って、高い応力が誘起されることがわかっている。高温で応力が増加すると、シュラウド上のクリープ速度が速くなり、最終的には、クラックや破断などによりシュラウドが破損しかねない。1枚の動翼シュラウドが破損すると、必然的にそのタービンをオフラインにしなくてはならないことを理解されたい。したがって、チップシュラウドとエーロフォイルとの間のフィレット領域で応力が増加してシュラウドが破損すると、修理を行うために必要な労働および交換時間に加え、タービンをオフラインにする時間すなわち休止時間を含む、長時間の費用のかかる修理が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による好適な一実施形態によれば、エーロフォイルのチップシュラウド上で、そのシュラウドの対向する両端部の中間に、好ましくは、エーロフォイルの質量中心と実質的に径方向に整合された位置に、切削刃が具備される。つまり、この切削刃は、シュラウドの周方向において実質的にシュラウドの長さの中央、かつブレードの質量中心を通る半径ラインに近接して配置される。したがって、シュラウドの中央に切削刃が設けられるため、切削刃の質量が、エーロフォイルの質量中心を通る半径ライン上に、より一層位置合わせされる。これにより、切削刃の質量を追加することによるモーメントを最小限に抑えて、フィレット応力を低下させる。応力が低下することで、この部品の寿命制限箇所となる場合の多いフィレットのクリープの寿命を延長することができる。
【0005】
本発明による好適な一実施形態において、チップシュラウドを有するエーロフォイルと、そのシュラウドから径方向外向きに突出し、タービン軸を中心とするエーロフォイルの回転方向においてシュラウドの端縁部間に連続して延在するシールと、反対側の固定シュラウドに溝を切削するために、シュラウドに支持され、少なくともシールの一方の側部に向けてタービン軸にほぼ垂直な方向に突出する切削刃であって、シール方向にシールの長さより短い別個の長さを有し、シュラウドの端部の中間に配置された切削刃とを含むタービン動翼が得られる。
【0006】
本発明による別の好適な一実施形態において、チップシュラウドを有するエーロフォイルと、そのシュラウドから径方向外向きに突出し、かつタービン軸を中心とするエーロフォイルの回転方向においてシュラウドの端縁部間に連続して延在するシールと、反対側の固定シュラウドに溝を切削するために、シュラウドに支持され、少なくともシールの一方の側部に向けてタービン軸にほぼ垂直な方向に突出する切削刃であって、シールの長さより短い別個のシール方向長さを有し、実質的にシールの長さの中央に配置された切削刃とを含むタービン動翼が得られる。
【0007】
本発明による別の好適な一実施形態において、チップシュラウドを有するエーロフォイルと、そのシュラウドから径方向外向きに突出し、かつタービン軸を中心とするエーロフォイルの回転方向においてシュラウドの端縁部間に連続して延在するシールと、反対側の固定シュラウドに溝を切削するために、シュラウドに支持され、少なくともシールの一方の側部に向けてタービン軸にほぼ垂直な方向に突出する切削刃であって、シールの長さより短い別個のシール方向長さを有し、エーロフォイルの質量中心を通る半径ラインと実質的に径方向に整合されて位置する切削刃とを含むタービン動翼が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ここで図1を参照すると、エーロフォイル12の先端に取り付けられたシュラウド10が例示されている。シュラウド10は、隣接するエーロフォイルの各先端に取り付けられた、隣接シュラウド14とシュラウド16との間に例示されている。エーロフォイル12およびこれが一部となっている動翼の回転方向が矢印18で示されており、その回転軸は矢印20で示されている。隣接するシュラウドは互いに接続されていないことを理解されたい。隣接するシュラウド同士は、位置合わせ端部構造22により、互いに支承し合っている。
【0009】
図1および図2を参照すると、シュラウド10は、隣接する静止側シュラウド28(図2)に形成されている溝26をシールするため、ほぼ径方向に向けられたシール24を具備している。通常、静止側シュラウドはハニカム構造30を具備している。これにより、シール24は、エーロフォイル12の両側にかかる差圧に対処することができる。
【0010】
シール24がハニカム30に係合することにより生じるエーロフォイルの不安定性を取り除き、シール24の両側の高圧領域と低圧領域との間に漏洩路を形成するため、切削刃32が、ロータの回転方向におけるシュラウド10の前縁に形成されている。切削刃32が形成されているため、回転方向におけるシールおよびシュラウドの前縁にて、シール24の両側は横方向に拡がっている。したがって、静止側シュラウドのハニカムに形成される溝26の軸方向範囲すなわち幅が、切削刃32により拡大されるため、図2に矢印で示す漏洩路が、シール24の両側に切削刃32以外の領域として形成される。この漏洩路により、圧力差はわずかに低減されて効率が落ちるが、これを補う形で、応力が低減されるために安定性が増し、クリープ寿命が改善される。
【0011】
ここで図3を参照すると、また本発明による好適な一実施形態によれば、エーロフォイル42の先端に同様に取り付けられたシュラウド40が例示されている。シュラウド40の前縁および後縁は、図1の従来技術での場合と同様に形成されている。しかし、この実施形態では、切削刃44がシュラウド40の対向する両端部の中間、好ましくは、シュラウド40の長さの中央に位置している。例示したように、切削刃44は、エーロフォイル42の中央部分上に、径方向に重なっている。この構造により、切削刃44は、エーロフォイルの質量中心を通る半径ラインと、実質的に径方向に整合される。これにより、切削刃の質量が追加されることにより生じるあらゆるモーメントを最小限に抑え、シュラウドとエーロフォイル先端との接合部にかかるフィレット応力を低下させる。こうしてフィレット応力を低下させることにより、この部品の寿命制限箇所となる場合の多いクリープの寿命を延長する。
【0012】
切削刃44の機能は、従来技術による切削刃と同じである。しかし、切削刃44の位置がシュラウドの実質的に中央、かつエーロフォイルの質量中心を通る半径ラインの上に実質的あるため、従来の切削刃の利点を備えるだけでなく、フィレット領域の応力を低減してクリープ寿命を延長している。
【0013】
以上、本発明を、現時点で最も実際的であり好適であると考えられる実施形態と併せて説明してきたが、本発明は、開示した実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に含まれるさまざまな変更および均等物を包括するものであることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来技術によるシールおよび切削刃を有するシュラウドを示す径方向内側の図である。
【図2】図1の線分2−2にほぼ沿って切り取って見た断面図である。
【図3】本発明の好適な一実施形態による切削刃の位置を例示する、図1と同様の図である。
【符号の説明】
【0015】
24 シール
26 溝
28 固定シュラウド
30 ハニカム
40 シュラウド
44 切削刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップシュラウド(10)を有するエーロフォイル(12)と、
前記シュラウドから径方向外向きに突出し、タービン軸を中心とする前記エーロフォイルの回転方向に前記シュラウドの端縁部間に連続して延在するシール(24)と、
反対側の固定シュラウド(28)に溝(26)を切削するために、前記シュラウドに支持され、少なくとも前記シールの一方の側部に向けて前記タービン軸にほぼ垂直な方向に突出する切削刃(32)であって、前記シールの方向に前記シールの長さより短い別個の長さを有し、前記シュラウドの端部の中間に位置する切削刃(32)と、
を含むタービン動翼。
【請求項2】
前記切削刃が、実質的に前記シールの長さの中央に配置される、請求項1記載のタービン動翼。
【請求項3】
前記切削刃が、前記エーロフォイルの一部と径方向に整合して配置される、請求項1記載のタービン動翼。
【請求項4】
前記切削刃が、前記シールの反対側に向けて突出する、請求項1記載のタービン動翼。
【請求項5】
前記切削刃が、前記エーロフォイルの一部と径方向に整合して配置され、かつ前記シールの反対側に向けて突出する、請求項1記載のタービン動翼。
【請求項6】
チップシュラウド(10)を有するエーロフォイル(12)と、
前記シュラウドから径方向外向きに突出し、タービン軸を中心とする前記エーロフォイルの回転方向に前記シュラウドの端縁部間に連続して延在するシール(24)と、
反対側の固定シュラウド(28)に溝(26)を切削するために、前記シュラウドに支持され、少なくとも前記シールの一方の側部に向けて前記タービン軸にほぼ垂直な方向に突出する切削刃(32)であって、前記シールの方向に前記シールの長さより短い別個の長さを有し、実質的に前記シールの長さの中央に配置される切削刃(32)と
を含むタービン動翼。
【請求項7】
前記切削刃が、前記エーロフォイルの一部と径方向に整合して配置される、請求項6記載のタービン動翼。
【請求項8】
前記切削刃が、前記エーロフォイルの一部と径方向に整合して配置され、かつ前記シールの反対側に向けて突出する、請求項6記載のタービン動翼。
【請求項9】
前記切削刃が、実質的に、エーロフォイルの質量中心を通る半径ラインと径方向に整合されて位置する、請求項6記載のタービン動翼。
【請求項10】
チップシュラウド(10)を有するエーロフォイル(12)と、
前記シュラウドから径方向外向きに突出し、前記シュラウドの端縁部間でタービン軸を中心とする前記エーロフォイルの回転方向に連続して延在するシール(24)と、
反対側の固定シュラウド(28)に溝(26)を切削するために、前記シュラウドに支持され、少なくとも前記シールの一方の側部に向けて前記タービン軸にほぼ垂直な方向に突出する切削刃(32)であって、前記シールの方向に前記シールの長さより短い別個の長さを有し、実質的に、エーロフォイルの質量中心を通る半径ラインと径方向に整合されて位置する切削刃(32)と
を含むタービン動翼。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−523803(P2006−523803A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510099(P2006−510099)
【出願日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/011708
【国際公開番号】WO2004/094789
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】