説明

シュリンクラベルまたはストレッチラベル用防黴インキ

【課題】水周りで使用されるプラスチック容器等の汚染されやすい容器のラベルの周辺における黴の発生を抑制することを可能とするインキを提供すること。
【解決手段】皮膜形成成分と溶剤とを少なくとも含むインキであって、さらに防黴剤を含むことを特徴とするシュリンクラベルまたはストレッチラベル用インキ。上記皮膜形成成分としては、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、アクリルポリオール樹脂、ウレタン樹脂、スチレン−アクリル酸樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、ロジン−マレイン酸樹脂等が好ましく用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シュリンクラベルの内外面またはストレッチラベルの内外面に印刷するための防黴インキに関する。
【背景技術】
【0002】
水周りで使用されるプラスチック容器には、黴が発生しやすく、黴の発生防止には抗菌剤や防黴剤を添加した樹脂を容器の外周全面に配したり、容器用プラスチックに抗菌剤や防黴剤を加えて溶融混練して容器を成形して、容器が菌や黴によって汚染されることを防止している。
【0003】
しかしながら、従来、シュリンクラベルおよびストレッチラベルを貼着した容器の場合には、これらのラベルと容器の間に、容器内の内容物や油脂・蛋白質などの栄養分が入り込み、そこで黴が発生し、ラベル自体の機能性や装飾性などを損なうこととなる。また、このような黴の発生は消費者に不快感を与えることにもなる。また、衛生上問題があった。なお、防虫について効果のあるインキについて下記特許文献1がある。
【特許文献1】特開2004−287282公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述の従来の課題を解決し、汚染されやすい容器のラベルの周辺における黴の発生を抑制することを可能とするインキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、皮膜形成成分と溶剤とを少なくとも含むインキであって、さらに防黴剤を含むことを特徴とするシュリンクラベルまたはストレッチラベル用インキを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、水周りで使用されるプラスチック容器とシュリンクラベルまたはストレッチラベルの間に発生する黴を抑制し、ラベル自体の機能性や装飾性を維持するインキを提供することができる。
なお、本発明においてシュリンクラベルまたはストレッチラベルとは、原反フィルムの両端部を重ね合わせ、その重合部を接合して接合部を形成し、かつ容器胴部の外周表面に装着する筒状のシュリンクラベルまたはストレッチラベルを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明のインキは、皮膜形成樹脂とインキ溶剤と防黴剤とを必須成分とする。インキ溶剤としては、特に制限はなく、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエンなどを挙げることができる。
【0008】
本発明で使用する皮膜形成樹脂としては通常のインキに使用されている樹脂が使用できる。例えば、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、アクリルポリオール樹脂、ウレタン樹脂、スチレン−アクリル酸樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、ロジン−マレイン酸樹脂などが挙げられる。これらの中でセルロース系樹脂は特に制限はなく、例えば、硝化綿、酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどや、その混合物を挙げることができる。
【0009】
アクリル樹脂も特に制限はなく、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステルや、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸エステルの単独重合体、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの共重合体、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルとスチレン、ビニルトルエン、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸などとの共重合体などを任意に挙げることができる。
【0010】
アクリルポリオール樹脂としても特に制限はなく、例えば、上記のアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどと、アクリル酸ヒドロキシエチル、N−メチロールアクリルアミドなどとの共重合体などを挙げることができる。
【0011】
ウレタン樹脂にも特に制限はなく、例えば、ジイソシアネートとポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールなどから得られるポリウレタン樹脂、ポリウレタン尿素樹脂などを挙げることができる。
【0012】
スチレン−マレイン酸樹脂にも特に制限はなく、例えば、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体を部分エステル化して酸価を下げたエステル化レジンなどを挙げることができる。
【0013】
ロジン−マレイン酸樹脂にも特に制限はなく、例えば、ロジンに無水マレイン酸を付加して得られる樹脂、この樹脂をポリオールで部分エステル化した樹脂などを挙げることができる。
【0014】
本発明のインキは、皮膜形成樹脂としてさらに、その他の公知の樹脂を含有させることができる。このような樹脂としては、例えば、クマロン樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂などを任意に挙げることができる。
【0015】
上記皮膜形成樹脂は前記溶剤に溶解して使用するが、その濃度は通常10〜20質量%である。濃度が10質量%未満では塗膜物性などの点で不十分であり、一方、濃度が20質量%を超える濃度では印刷適性などの点で不十分である。
【0016】
本発明で使用する防黴剤としては、一般に使用されている有機窒素硫黄系、有機窒素硫黄ハロゲン系、環状炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン炭化水素系、有機ハロゲン系など、さらに、銀、銅、亜鉛などの無機物など、いずれも使用できる。
【0017】
好ましい防黴剤はインキ溶剤である有機溶剤(特にアルコール系溶剤)に可溶な防黴剤であり、塗布を容易にし、かつ透明性を有し、ラベルの意匠性を損なわないことを特徴とする。さらに好ましくは、ラベルの外側に塗布するインキの場合にはラベル原反フィルムの傷つきや破損防止効果、内側に塗布するインキの場合は、ラベル原反フィルムとボトル容器との良好な滑り特性を低下させることのない防黴剤である。そのような防黴剤として、以下のものが挙げられる。
【0018】
・α−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−α−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(一般名:テブコナゾール)(以下「防黴剤A」と称する)
・±1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(2−プロペニルオキシ)エチル]−1H−イミダゾール(一般名:イマザリル)(以下「防黴剤B」と称する)
・2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(以下「防黴剤C」と称する)
・N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−フェニルスルファミド(一般名:ジクロフルアニド)
・N−(フルオロジクロロメチルチオ)−フタルイミド(一般名:フルオロフォルペット)
・3−ヨード−2−プロペニル−N−ブチルカーバメイト
・ジヨードメチル−p−トリルスルホン
【0019】
上記防黴剤の好ましい使用量は、前記皮膜形成樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部である。使用量が0.1質量部未満では防黴効果などの点で不十分であり、一方、使用量が20質量%を超えると塗膜物性や印刷適性などの点で不十分である。
【0020】
本発明のインキは、さらに硬化剤を含むこともでき、硬化剤としては任意のものが使用でき、例えば、イソシアネート化合物を含有させることもできる。含有させるイソシアネート化合物に特に制限はなく、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0021】
本発明のインキには公知の染顔料を含有させることができる。特に顔料が好ましい。顔料としては、例えば、群青、紺青、コバルトブルー、ベンガラ、鉄黒、黄色酸化鉄、二酸化チタン、カーボンブラックなどの無機顔料、モノアゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アンスラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ピロロピロール系顔料などの有機顔料を挙げることができる。
【0022】
本発明のインキには添加剤として、例えば、体質顔料、ワックス、合成樹脂粉末、可塑剤などを配合することができる。体質顔料としては通常使用されるものなら何でもよく、例えば、アルミナホワイト、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどを挙げることができる。ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス、カルナウバワックス、オゾケライトなどを挙げることができる。
【0023】
合成樹脂粉末としては、例えば、アクリル樹脂粉末、ポリウレタン樹脂粉末、ポリイミド樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末などを挙げることができる。また、可塑剤を含むこともできる。可塑剤の例としては、例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、アジピン酸ジオクチル、クエン酸トリエチルなどを挙げることができる。その他の添加剤についても公知のものが使用でき、特に制限はない。
【0024】
本発明のインキの好ましい製造方法は、顔料と皮膜形成樹脂の一部を混合し、分散機にかけた後、防黴剤を含むその他の成分を加えて調製するなど、通常公知の手段を使用する。
【0025】
なお、本発明のインキは、任意のシュリンクラベルまたはストレッチラベルの原反フィルムの表ないし裏面に、通常の方法(グラビア印刷方式・フレキソ印刷方式など任意でよい。)で塗布できるが、特にそれらがポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂またはポリエチレン系樹脂で形成されたラベルフィルムである場合に適性が高い。シュリンクラベルおよびストレッチラベルの形態は、通常の公知な物である。
【実施例】
【0026】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
実施例1〜3
下記表1に記載の本発明のインキを調製した。各インキの粘度(ザーンカップ#3)は17〜18秒に調整した。
【0027】

【0028】
実施例4〜6
下記表2に記載の本発明のインキを調製した。各インキの粘度(ザーンカップ#3)は17〜18秒に調整した。
【0029】

【0030】
実施例7〜12
下記表3−1、3−2に記載の本発明のインキを調製した。各インキの粘度(ザーンカップ#3)は17〜18秒に調整した。
【0031】

【0032】

【0033】
上記の実施例1〜12のインキをそれぞれ用いて、シュリンクラベルの原反(商品名シュリンクPS DXL−219−45Y、厚さ60μm、三菱樹脂製)に、グラビア印刷機(網版28μm、175線)にて塗布量1g/m2(乾燥状態)で印刷した。
【0034】
上記で得られた防黴インキを印刷した原反について防黴性の試験を行った。使用した試験試料は次の通りである。
[試験試料]
試料Blank−1:防黴剤を含まない以外は実施例1と同じ組成のインキを塗布した印刷物
試料A−1:実施例1のインキを塗布した印刷物
試料A−2:実施例2のインキを塗布した印刷物
試料A−3:実施例3のインキを塗布した印刷物
試料B−1:実施例4のインキを塗布した印刷物
試料B−2:実施例5のインキを塗布した印刷物
試料B−3:実施例6のインキを塗布した印刷物
試料C−1:実施例7のインキを塗布した印刷物
試料C−2:実施例8のインキを塗布した印刷物
試料C−3:実施例9のインキを塗布した印刷物
試料C−4:実施例10のインキを塗布した印刷物
試料C−5:実施例11のインキを塗布した印刷物
試料C−6:実施例12のインキを塗布した印刷物
【0035】
[防黴性試験1(定性試験)]
JIS Z−2911:2000黴抵抗性試験方法に準ずる。
[供試黴]
(1)Aspergillus niger FERM S-1(黒麹黴)
(2)Penicillium citrinum FERM S-5(青黴)
(3)Cladosporium cladosporioides FERM S-8(黒スス黴)
【0036】

【0037】
[判定方法]
JIS Z−2911黴抵抗性試験表示方法による。
0:試料または試験片の接種した部分に菌糸の発育が認められない。右側の数値は発育阻止巾のmm数。
1:試料または試験片の接種した部分に菌糸の発育が認められる。菌糸の発育部分の面積は全面積の1/3を超えない。
2:試料または試験片の接種した部分に菌糸の発育が認められる。菌糸の発育部分の面積は全面積の1/3を超える。
【0038】
[防黴性試験2(滴下法)]
滅菌シャーレに素寒天培地(寒天粉末のみを溶かした培地でシャーレ中の水分保持に用いる)を約20ml分注し、固化後、試料を貼り付ける。
供試黴の胞子懸濁液を含む黴用寒天培地を前記試料上に1滴滴下し、28℃で7日間培養し、試料上の黴の発育の有無を観察する。
【0039】
[供試黴]
(1)Aspergillus niger FERM S-1(黒麹黴)
(2)Penicillium citrinum FERM S-5(青黴)
(3)Cladosporium cladosporioides FERM S-8(黒スス黴)
【0040】

【0041】
[判定方法]
(−−−)・・・滴下寒天の全面に黴の発育なし
(−−)・・・滴下寒天の上部にのみ黴の発育あり
(−)・・・滴下寒天の全面に黴の発育があるが試料上には黴の発育なし
(+)・・・試料上の接点1mm以内に黴の発育あり
(++)・・・試料上の接点から2mm程度まで黴の発育あり
(+++)・・・試料上の接点から2mm以上黴の発育あり
シュリンクPSにおいて、防黴剤A、B、Cにて上記供試黴3種類への防黴効果が確認できた。
【0042】
実施例13〜16
実施例1と同様にして下記表6の防黴性インキを調製した。各インキの粘度(ザーンカップ#3)は17〜18秒に調整した。

【0043】
シュリンクラベルの原反(商品名シュリンクPS DXL−219−45Y、厚さ60μm、三菱樹脂製)に白インキ(商品名OS−M 65シリ(A−1)、シュリンクPS用フィルム白インキ、大日精化工業(株)製)をグラビア印刷機(網版28μm、175線)にて塗布量2.6g/m2(乾燥状態)で印刷した後、白色インキ層の上に上記の実施例13〜16のインキをそれぞれ、グラビア印刷機(網版28μm、175線)にて塗布量1g/m2(乾燥状態)で印刷した。
【0044】
上記で得られた防黴インキを印刷した原反について防黴性の試験を行った。使用した試験試料は次の通りである。
[試験試料]
試料Blank−2:前記白インキを塗布したが防黴インキを塗布しなかった印刷物
試料D−1:実施例13のインキを塗布した印刷物
試料D−2:実施例14のインキを塗布した印刷物
試料D−3:実施例15のインキを塗布した印刷物
試料D−4:実施例16のインキを塗布した印刷物
【0045】
[防黴性試験1(定性試験)]
JIS Z−2911:2000黴抵抗性試験方法に準ずる。
[供試黴]
(1)Aspergillus niger FERM S-1(黒麹黴)
(2)Penicillium citrinum FERM S-5(青黴)
(3)Cladosporium cladosporioides FERM S-8(黒スス黴)
【0046】

【0047】
[判定方法]
JIS Z−2911黴抵抗性試験表示方法による。
0:試料または試験片の接種した部分に菌糸の発育が認められない。右側の数値は発育阻止巾のmm数。
1:試料または試験片の接種した部分に菌糸の発育が認められる。菌糸の発育部分の面積は全面積の1/3を超えない。
2:試料または試験片の接種した部分に菌糸の発育が認められる。菌糸の発育部分の面積は全面積の1/3を超える。
【0048】
[防黴性試験2(滴下法)]
滅菌シャーレに素寒天培地(寒天粉末のみを溶かした培地でシャーレ中の水分保持に用いる)を約20ml分注し、固化後、試料を貼り付ける。供試黴の胞子懸濁液を含む黴用寒天培地を試料上に1滴滴下し、28℃で7日間培養し、試料上の黴の発育の有無を観察する。
[供試黴]
(1)Aspergillus niger FERM S-1(黒麹黴)
(2)Penicillium citrinum FERM S-5(青黴)
(3)Cladosporium cladosporioides FERM S-8(黒スス黴)
【0049】

【0050】
[判定方法]
(−−−)・・・滴下寒天の全面に黴の発育なし
(−−)・・・滴下寒天の上部にのみ黴の発育あり
(−)・・・滴下寒天の全面に黴の発育があるが試料上には黴の発育なし
(+)・・・試料上の接点1mm以内に黴の発育あり
(++)・・・試料上の接点から2mm程度まで黴の発育あり
(+++)・・・試料上の接点から2mm以上黴の発育あり
シュリンクPSにおいて、防黴剤Cの添加量が5%以上であれば、白インキの上に印刷されても、防黴効果が確認できた。
【0051】
実施例17〜20
実施例1と同様にして下記表9の防黴性インキを調製した。各インキの粘度(ザーンカップ#3)は17〜18秒に調整した。

【0052】
ストレッチフィルムの原反(厚さ85μm)に白インキ(商品名TFG 701白、ストレッチフィルム用白インキ、大日精化工業(株)製)をグラビア印刷機(網版28μm、175線)にて、塗布量2.6g/m2(乾燥状態)で印刷した後、白色インキ層の上に上記の実施例17〜20のインキをそれぞれ、グラビア印刷機(網版28μm、175線)にて塗布量1g/m2(乾燥状態)で印刷した。また、上記フィルムに実施例17〜20のインキをそれぞれ、グラビア印刷機(網版28μm、175線)にて塗布量1g/m2(乾燥状態)で直接印刷した。つまり、印刷構成としては、構成a[ストレッチフィルム/白インキ/防黴性インキ]と、構成b[ストレッチフィルム/防黴性インキ]を作製した。
【0053】
上記で得られた防黴インキを印刷した原反について防黴性の試験を行った。使用した試験試料、試験方法および試験結果は次の通りである。
[試験試料]
試料Blank−3:前記白インキを塗布したが防黴インキを塗布しなかった印刷物
試料E−1:実施例17のインキを塗布した印刷物(印刷構成aおよび印刷構成b)
試料E−2:実施例18のインキを塗布した印刷物(印刷構成aおよび印刷構成b)
試料E−3:実施例19のインキを塗布した印刷物(印刷構成aおよび印刷構成b)
試料E−4:実施例20のインキを塗布した印刷物(印刷構成aおよび印刷構成b)
【0054】
[試験方法1(定性試験)]
JIS Z−2911:2000黴抵抗性試験方法に準ずる。
[供試黴]
(1)Aspergillus niger FERM S-1(黒麹黴)
(2)Penicillium citrinum FERM S-5(青黴)
(3)Cladosporium cladosporioides FERM S-8(黒スス黴)
【0055】

【0056】
[判定方法]
JIS Z−2911黴抵抗性試験表示方法による。
0:試料または試験片の接種した部分に菌糸の発育が認められない。右側の数値は発育阻止巾のmm数。
1:試料または試験片の接種した部分に菌糸の発育が認められる。菌糸の発育部分の面積は全面積の1/3を超えない。
2:試料または試験片の接種した部分に菌糸の発育が認められる。菌糸の発育部分の面積は全面積の1/3を超える。
【0057】
[試験方法2(滴下法)]
滅菌シャーレに素寒天培地(寒天粉末のみを溶かした培地でシャーレ中の水分保持に用いる)を約20ml分注し、固化後、試料を貼り付ける。
供試黴の胞子懸濁液を含む黴用寒天培地を試料上に1滴滴下し、28℃で7日間培養し、試料上の黴の発育の有無を観察する。
[供試黴]
(1)Aspergillus niger FERM S-1(黒麹黴)
(2)Penicillium citrinum FERM S-5(青黴)
(3)Cladosporium cladosporioides FERM S-8(黒スス黴)
【0058】

【0059】
[判定方法]
(−−−)・・・滴下寒天の全面に黴の発育なし
(−−)・・・滴下寒天の上部にのみ黴の発育あり
(−)・・・滴下寒天の全面に黴の発育があるが試料上には黴の発育なし
(+)・・・試料上の接点1mm以内に黴の発育あり
(++)・・・試料上の接点から2mm程度まで黴の発育あり
(+++)・・・試料上の接点から2mm以上黴の発育あり
ストレッチフィルムにおいて、防黴剤Cの添加量が5%以上であれば、白インキの上に印刷されても、防黴効果が確認できた。
【0060】
実施例10の防黴インキを塩化ビニル樹脂製シュリンクフィルム(商品名ヒシレックス502−S、厚み50μm、三菱樹脂製)およびポリエチレンテレフタレートシュリンクフィルム(商品名スペースクリーンS7042、厚み45μm、東洋紡績製)に、実施例10と同様に塗布して印刷物を製造し、上記印刷物の防黴性を調べたところ、実施例10と同様に優れた防黴効果を確認できた。
【0061】
上記2種の印刷物の塗膜物性の評価を下記の方法で行った。
(1)セロハンテープ剥離性
印刷物にセロハン粘着テープ[ニチバン(株)、セロテープ(登録商標)]を貼り、剥がした後の塗布層の状態を目視により観察する。
○:塗布層に変化なし
△:塗布層に僅かに剥離を生ずる
×:塗布層が粘着テープに付着して剥離する
【0062】
(2)スクラッチ性
爪で塗布層をひっかき、傷の発生状態を目視により観察する。
○:塗布層に傷を生じない
△:塗布層に僅かに傷がつく
×:塗布層に明瞭に爪痕がつく
【0063】
(3)モミ性
印刷物を10回手モミし、塗布層の傷の発生状態を目視により観察する。
○:塗布層に傷を生じない
△:塗布層に僅かに傷がつく
×:塗布層にはっきりとモミ痕が残る
【0064】
(4)折り曲げ性
印刷物を折り曲げ、折り目を指で2回絞り、塗布層の傷の発生状態を目視により観察する。
○:塗布層に折り目が残らない
△:塗布層に折り目が残る
×:塗布層が折り目で破断する
【0065】
(5)滑り性
塗布面とフィルム面を軽く重ねてこすり、滑り性を比較する。
○:すらすらと滑る
△:少しきしみ感がある
×:きしんで滑らかに滑らない
【0066】
(6)耐水性
印刷物を室温で水に24時間浸漬し、塗布層の白化の状態と、剥離の状態を目視により観察する。
○:塗布層に全く変化を生じない
△:塗布層が僅かに白化する
×:塗布層が著しく白化する、または、塗布層に剥離を生ずる
【0067】
(7)耐熱性
印刷面が内側になるように、フィルムの両端をシールして筒状にする。
これを中身の入った飲料用PETボトルに装着し、約90℃の熱水に約10秒間浸漬しフィルムをシュリンクさせる。常温放置、冷却後、ラベルを剥がし、PETボトルと塗膜のブロッキングの有無を確認する。
○:ラベルが抵抗なく剥がれ、塗布層に変化なし
△:塗布層に僅かに剥離を生じる
×:PETボトルと塗布層がブロッキングしている
【0068】

【産業上の利用可能性】
【0069】
原反フィルムの両端部を重ね合わせ、その重合部を接合して接合部を形成し、かつ容器胴部の外周表面に装着する筒状のシュリンクおよびストレッチラベルにおいて、防黴剤を含むインキによる塗膜を設けることにより、水周りで使用されるプラスチック容器とシュリンクおよびストレッチラベルの間に発生する黴を抑制し、ラベル自体の機能性や装飾性を維持することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膜形成成分と溶剤とを少なくとも含むインキであって、さらに防黴剤を含むことを特徴とするシュリンクラベルまたはストレッチラベル用インキ。
【請求項2】
防黴剤が、有機溶剤に可溶なものである請求項1に記載のインキ。
【請求項3】
シュリンクラベルまたはストレッチラベルの原反フィルムの材料が、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂またはポリエチレン系樹脂である請求項1に記載のインキ。
【請求項4】
防黴剤が、α−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−α−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(一般名:テブコナゾール)、±1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(2−プロペニルオキシ)エチル]−1H−イミダゾール(一般名:イマザリル)または2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンである請求項1に記載のインキ。

【公開番号】特開2006−257205(P2006−257205A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−74952(P2005−74952)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】