説明

シューホールドダウン装置

【課題】シューウェブからの高さを低くすることができるシューホールドダウン装置を提供することにある。
【解決手段】シューホールドダウンスプリング52a、54aは、付勢方向において線材の中心線同士が重ならないようにその線材が渦巻状に巻回されていることから、シューホールドダウンスプリング52a、54aは、ブレーキシュー18、20をバッキングプレート16側に付勢させる際にその付勢方向におけるシューウェブ28、30からの高さHを低くすることができるので、シューホールドダウン装置52、54と回転ドラム12との空間を大きくすることができドラムブレーキ10の設計の自由度を広げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムブレーキ用のシューホールドダウン装置に係り、特にドラムブレーキの設計の自由度を広げる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ドラムブレーキに用いられるシューホールドダウン装置は、たとえば特許文献1に示すように、一対のブレーキシューをバッキングプレートに拡開可能に配設するためにそのバッキングプレートに向かって付勢するシューホールドダウンスプリングを備え、そのシューホールドダウンスプリングの付勢力を用いてその一対のブレーキシューをそのバッキングプレートに対して面方向に相対移動が可能に保持するものである。
【特許文献1】特開平9−14311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のようなシューホールドダウン装置は、バッキングプレートの一面を覆うように配設されている回転ドラムとブレーキシューのシューウェブとの間に配設されているためドラムブレーキを設計する際シューホールドダウン装置と回転ドラムとが接触しないようにすなわちシューホールドダウン装置と回転ドラムとの間に空間を持たせるように設計しなければならない。上記従来のシューホールドダウンスプリングは円筒状に巻回された線材によって構成されているため、それを使用するとブレーキシューをバッキングプレートに付勢する方向においてシューホールドダウンスプリングは円筒状に複数回巻回されている線材同士が当接するまでの圧縮しかできないので、シューウェブからの高さを充分に低くすることができず、ドラムブレーキの設計の自由度が広がらないという問題があった。
【0004】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、シューウェブからの高さを低くすることができるシューホールドダウン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、一対のブレーキシューをバッキングプレートに拡開可能に配設するためにそのバッキングプレートに向かって付勢するシューホールドダウンスプリングを有し、そのシューホールドダウンスプリングを用いてその一対のブレーキシューをそのバッキングプレートに対して面方向に相対移動が可能に保持するシューホールドダウン装置において、前記シューホールドダウンスプリングは、その付勢方向において線材の中心線同士が重ならないようにその線材が渦巻状に巻回されていることを特徴とすることにある。
【0006】
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、前記シューホールドダウンスプリングは、前記線材の一端部によって構成され、その巻回中心部から前記バッキングプレート側に伸びてそのバッキングプレートまたはそのバッキングプレートに固定された部材に掛止する掛止部を一体に有することを特徴とすることにある。
【0007】
また、請求項3に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、前記バッキングプレートまたは前記バッキングプレートに固定された部材に掛止される一端部と、前記バッキングプレートと反対側に位置する前記シューホールドダウンスプリングの巻回中心部に掛止される他端部とを備えるシューホールドダウンピンを有していることを特徴とすることにある。
【0008】
また、請求項4に係る発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれかに係る発明において、前記シューホールドダウンスプリングは、前記付勢方向において前記線材同士が重ならないことを特徴とすることにある。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明のシューホールドダウン装置によれば、前記シューホールドダウンスプリングは、その付勢方向において線材の中心線同士が重ならないようにその線材が渦巻状に巻回されていることから、前記シューホールドダウンスプリングは、ブレーキシューの付勢方向におけるシューウェブからの高さを低くすることができるので、シューホールドダウン装置と回転ドラムとの空間を大きくすることができドラムブレーキの設計の自由度を広げることができる。
【0010】
また、請求項2に係る発明のシューホールドダウン装置によれば、前記シューホールドダウンスプリングは、前記線材の一端部によって構成され、その巻回中心部から前記バッキングプレート側に伸びてそのバッキングプレートまたはそのバッキングプレートに固定された部材に掛止する掛止部を一体に有するので、シューホールドダウン装置の部品点数を減らし生産現場での部品管理を容易にすることができる。
【0011】
また、請求項3に係る発明のシューホールドダウン装置によれば、前記バッキングプレートまたは前記バッキングプレートに固定された部材に掛止される一端部と、前記バッキングプレートと反対側に位置する前記シューホールドダウンスプリングの巻回中心部に掛止される他端部とを備えるシューホールドダウンピンを有しているので、従来使用されているシューホールドダウン装置に本願のシューホールドダウンスプリングを適用することができるため、本願のシューホールドダウン装置を安価に製造することができる。
【0012】
また、請求項4に係る発明のシューホールドダウン装置によれば、前記シューホールドダウンスプリングは、前記渦巻状に巻回された線材同士が付勢方向において重ならないため、前記シューホールドダウンスプリングは、ブレーキシューをバッキングプレート側に付勢させる圧縮状態でシューウェブからの高さを好適に低くすることができるので、シューホールドダウン装置と回転ドラムとの空間を大きくすることができドラムブレーキの設計の自由度を広げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施例のパーキングロック機能を備えたシュー間隙自動調節機構付ドラムブレーキであるリーディング・トレーリング型の車両用ドラムブレーキ(以下、ドラムブレーキという)10であって、ブレーキドラム(回転ドラム)12を取り外して示す正面図である。このブレーキドラム12は、図1の1点鎖線で示す2つの同心円で表されており、その2つの円のうちのドラムブレーキ10の中心側の円はブレーキドラム12の内周面14を示している。このドラムブレーキ10は、略円板形状を成し、たとえば図示しない車軸管、アクスルハウジング、サスペンション装置等の非回転部材に一体的に固設されるバッキングプレート16と、そのバッキングプレート16の左右の外周部に円弧形状の凸側が外側になる姿勢で互いに接近離間可能に略対称的に配設される一対のブレーキシュー18、20と、その一対のブレーキシュー18、20の一端部間すなわち図1における下端部間に位置固定に設けられたアンカ22と、一対のブレーキシュー18、20の下端部間に張設されてそれら下端部をアンカ22に常時当接させるスプリング24と、一対のブレーキシュー18、20の他端部間すなわち図1における上端部間に配設されたホイールシリンダ26とを備えている。
【0014】
上記ブレーキシュー18、20は、何れもバッキングプレート16の板面と略平行な平板状を成し且つ図1に示す正面図において全体が円弧形状に湾曲したシューウェブ28,30と、それらの円弧形状を成す外周側端縁に沿って断面が図2のような略T字状を成すように一体的に固設された円弧形状のシューリム32,34と、それらシューリム32,34の外周面に接着剤などで一体的に固着された摩擦材から成るライニング36,38とを備えてそれぞれ構成されている。
【0015】
前記ブレーキシュー18、20の上端部間すなわちホイールシリンダ26側の端部間にはリターンスプリング40が張設されると共に、長手板状のストラット42が架け渡されている。ブレーキシュー18および20には、上記ストラット42を支持するためにそのストラット42に沿って突き出す支持突起18aおよび20aがそれぞれ形成されている。
【0016】
図2に示されるように、ストラット42は、両端に切欠44,46を備えたものであって、ブレーキシュー18側の切欠44にはブレーキシュー18のシューウェブ28が嵌め入れられ、ブレーキシュー20側の切欠46にはブレーキシュー20のシューウェブ30が嵌め入れられている。また、ストラット42の長手方向における中間部にはバッキングプレート16から離れる方向に突設された引掛突起48が設けられており、ストラット42は、その引掛突起48とブレーキシュー18との間に張設されたストラットリターンスプリング50によって、ブレーキシュー18側に常時付勢されている。
【0017】
また、前記ブレーキシュー18,20は、シューウェブ28、30の長手方向の中央付近にそれぞれ配設されたシューホールドダウン装置52,54によってバッキングプレート16側に向かって押圧されている。そのシューホールドダウン装置52、54は、図3、図4のようにばね材から成る断面円形の線材が渦巻状且つ円錐状に複数回巻回されることにより構成されたシューホールドダウンスプリング52a、54aを備えている。そのシューホールドダウンスプリング52a、54aは、その線材の一端部によって構成され、その巻回中心部から巻回中心線に沿ってシューウェブ28、30に貫通して形成された貫通穴56を通りバッキングプレート16側まで伸びる軸部52b、54bと、その軸部52b、54bの先端がバッキングプレート16上に固定された掛止部材58に掛止するように曲げられた掛止部52c、54cとを一体に有する。つまり、シューホールドダウンスプリング52a、54a、軸部52b、54b、掛止部52c、54cは一本の線材によって一体に曲成されたものである。
【0018】
シューホールドダウンスプリング52a、54aの掛止部52c、54cが掛止部材58に掛け止められることによってシューホールドダウン装置52、54が装着されると、シューウェブ28、30の厚み方向に圧縮された状態とされるので、その圧縮により生じる弾性復帰力によってバッキングプレート16方向に発生する付勢力を軸部52b、54bおよび掛止部52c、54cを介して掛止部材58すなわちバッキングプレート16に伝達することによってシューウェブ28、30をバッキングプレート16側に常時付勢する。そのため、シューホールドダウン装置52、54はブレーキシュー18、20をバッキングプレート16に対して面方向の相対移動可能すなわち拡開可能に保持する。
【0019】
図5は、図1のV-V視拡大断面図であり、シューホールドダウンスプリング52a、54aは、上記付勢力の方向すなわちシューウェブ28、30からバッキングプレート16へ向かう方向において、線材の中心線同士が重ならないすなわちその線材同士が重ならないような渦巻状になっている。そのため、上記付勢力を発生させるためにシューホールドダウンスプリング52a、54aが巻回中心線方向に圧縮した装着状態では上記線材同士が当接することがないためシューホールドダウンスプリング52a、54aすなわちシューホールドダウン装置52、54のシューウェブ28、30からバッキングプレート16とは反対の方向すなわちシューウェブ28、30からブレーキドラム12へ向かう方向の高さHを好適に低くすることができる。さらに、シューホールドダウンスプリング52a、54aは、その圧縮状態で上記線材同士が当接することがないためシューホールドダウンスプリング52a、54aの圧縮率(シューホールドダウンスプリング52a、54aの圧縮前の高さ/シューホールドダウンスプリング52a、54aの圧縮後の高さ)×100(%)を大きくすることができるので高い付勢力を発生させることができる。
【0020】
前記ブレーキシュー18の上端部には、平板状のパーキングブレーキレバー60の基端部がピン62により回動可能に連結されている。このパーキングブレーキレバー60の中間部であってピン62に近い部分は、ストラット42の切欠44内にシューウェブ28と共に嵌め入れられている。パーキングブレーキレバー60の先端部は、よく知られた図示しないパーキングブレーキケーブルに連結されており、図示しないパーキングレバーの操作によりパーキングブレーキケーブルを介してパーキングブレーキレバー60の先端部がバッキングプレート16の中心側へ回動させられると、ブレーキシュー20がストラット42に押されて外周側へ移動させられるとともにブレーキシュー18がピン62に押されて外周側へ移動させられるので、一対のブレーキシュー18および20が拡開されて制動力が発生させられるようになっている。
【0021】
前記ブレーキシュー20の上端部には、平板状のアジャストレバー64が、シューウェブ30の板面に略垂直を成すピン66の軸心回りの回動可能に配設されている。このアジャストレバー64は、その回転軸心とは反対側に位置する円弧状の外周端縁に係合歯64aを備えたものであり、その外周側縁部には、ストラット42の切欠46の開口部に内向きに突設された係合突起68が係合させられている。これにより、アジャストレバー64は、ストラット42がブレーキシュー20から離れる方向に移動するにともなって回動させられるようになっている。上記ブレーキシュー20の長手方向の中間部には、上記係合歯64aと噛み合う掛止歯70aを外周縁の所定位置に備えたアジャストラッチ70がピン72によって回動可能に設けられるとともに、係合歯64aと掛止歯70aとが常時噛み合うようにアジャストラッチ70を付勢するひげばね状のラッチスプリング74が設けられている。これにより、アジャストレバー64は、ストラット42から離れる方向すなわちバッキングプレート16の外周側への回動方向が阻止されるとともに、係合歯64a或いは掛止歯70aの1歯以上のストロークでストラット42に接近する方向へすなわちバッキングプレート16の内周側へ回動させられると、係合歯64aが掛止歯70aの1歯を乗り越えてその1歯分の回動が許容されるようになっている。すなわち、係合歯64aおよび掛止歯70aは例えばそれぞれ鋸歯状を成している。
【0022】
図示しないブレーキペダル操作に伴ってホイールシリンダ26のピストンが突き出されることによりブレーキシュー18および20の上端部が互いに離隔する方向に拡開されると、ストラット42はブレーキシュー18と共にバッキングプレート16の外周側へ移動するので、それに伴って、その係合突起68と係合するアジャストレバー64はブレーキシュー18側回りに回転させられる。このブレーキの作動毎において、アジャストレバー64の係合歯64aの回動量すなわち移動量が1歯分以内であればアジャストレバー64の回動位置の変化はしないが、1歯分以上となるとその掛止歯70aを乗り越えてアジャストレバー64が1歯分だけブレーキシュー18側回りに回転させられる。これにより、ブレーキシュー18および20の摩耗によってその拡開量が所定以上となると、アジャストレバー64が1歯分だけブレーキシュー18側回りに回転させられて、その拡開量すなわちブレーキシュー18および20と図示しないブレーキドラム12の内周面14との間隙すなわちギャップが自動的に調節される。
【0023】
ここで、本実施例のシューホールドダウン装置52、54によれば、そのシューホールドダウンスプリング52a、54aは、付勢方向において線材の中心線同士が重ならないようにその線材が渦巻状に巻回されていることから、シューホールドダウンスプリング52a、54aは、ブレーキシュー18、20をバッキングプレート16側に付勢させる際にその付勢方向におけるシューウェブ28、30からの高さHを低くすることができるので、シューホールドダウン装置52、54と回転ドラム12との空間を大きくすることができドラムブレーキ10の設計の自由度を広げることができる。
【0024】
また、本実施例のシューホールドダウン装置52、54において、シューホールドダウンスプリング52a、54aは、前記線材の一端部によって構成され、その巻回中心部からバッキングプレート16側に伸びてそのバッキングプレート16またはそのバッキングプレート16に固定された掛止部材58に掛止する掛止部52c、54cを一体に有するので、シューホールドダウン装置52、54の部品点数を減らし生産現場での部品管理を容易にすることができる。
【0025】
また、本実施例のシューホールドダウン装置52、54において、シューホールドダウンスプリング52a、54aは、前記渦巻状に巻回された線材同士が付勢方向において重ならないため、シューホールドダウンスプリング52a、54aは、ブレーキシュー18、20をバッキングプレート16側に付勢させる圧縮状態でシューウェブ28、30からの高さHを好適に低くすることができるので、シューホールドダウン装置52、54と回転ドラム12との空間を大きくすることができドラムブレーキ10の設計の自由度を広げることができる。
【0026】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において実施例間で共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0027】
図6は、前述の実施例とは異なるシューホールドダウン装置80を使用した場合の図1のV-V視断面図つまり図5に対応するものである。
【0028】
前記シューホールドダウン装置80は、シューウェブ28の長手方向の中央付近にそれぞれ配設され、円筒状の線材を前記実施例と同様な渦巻状に複数回巻回されたシューホールドダウンスプリング82と、バッキングプレート16に固定された掛止部材84に掛止する一端部86aとその一端部86aから貫通穴56を通りバッキングプレート16とは反対側に位置するシューホールドダウンスプリング82の巻回中心部に掛止する他端部86bとを有するシューホールドダウンピン86と、を備えて構成される。上記シューホールドダウンピン86の一端部86aと他端部86bは円筒状の棒状部材をたとえばヘディング加工することによって成形されたものである。上記掛止部材84は、上記一端部86aと略同様な形状に貫通させた掛止穴84aを備え、その掛止穴84aにその一端部86aを通し、その状態でシューホールドダウンピン86を軸心周りに所定角度たとえば90度回転させると、その一端部86aを掛止部材84から取り出すことができない状態すなわち掛止部材84に一端部86aを掛止する状態となる。シューホールドダウン装置80は、シューホールドダウンスプリング82がシューウェブ28からバッキングプレート16方向に圧縮することによって発生する付勢力をシューホールドダウンピン86を介して掛止部材84すなわちバッキングプレート16に伝達することによってシューウェブ28をバッキングプレート16側に常時付勢させる。そのため、シューホールドダウン装置80はシューウェブ28すなわちブレーキシュー28をバッキングプレート16に対して面方向の相対移動可能に保持する。
【0029】
前記シューホールドダウンスプリング82は、上記付勢力の方向すなわちシューウェブ28からバッキングプレート16方向において、図6に示すように線材の中心線同士が重ならないすなわちその線材同士が重ならないような渦巻状になっている。そのため、上記付勢力を発生させるためにシューホールドダウンスプリング82が圧縮した状態で上記線材同士が当接することがないためシューホールドダウンスプリング82すなわちシューホールドダウン装置80のシューウェブ28からバッキングプレート16反対方向すなわちシューウェブ28からブレーキドラム12方向の高さHを好適に低くすることができる。さらに、シューホールドダウンスプリング82は、圧縮状態で上記線材同士が当接することがないためシューホールドダウンスプリング82の圧縮率(シューホールドダウンスプリング82の圧縮前の高さ/シューホールドダウンスプリング82の圧縮後の高さ)×100(%)を大きくすることができるので高い付勢力を発生させることができる。
【0030】
ここで、本実施例のシューホールドダウン装置80は、バッキングプレート16またはバッキングプレート16に固定された掛止部材84に掛止される一端部86aと、バッキングプレート16と反対側に位置するシューホールドダウンスプリング82の巻回中心部に掛止される他端部86bとを備えるシューホールドダウンピン86と、を有しているので従来使用されているシューホールドダウン装置に本願のシューホールドダウンスプリング82を適用することができるため、本願のシューホールドダウン装置80を安価に製造することができる。
【0031】
図7は、前述の実施例とは異なるシューホールドダウン装置88を使用した場合の図1のV-V視断面図つまり図5に対応するものである。
【0032】
図7のシューホールドダウン装置88は、図1〜図5に示すシューホールドダウン装置52と同様に、シューウェブ28の長手方向の中央付近に配設され、ばね材から成る断面円形の線材が渦巻状且つ円錐状に複数回巻回されることにより構成されたシューホールドダウンスプリング88aを備えている。すなわち、シューホールドダウンスプリング88aは、軸部52b、掛止部52cと同様の軸部88bと、掛止部88cとを一体に有し、シューホールドダウンスプリング88a、軸部88b、掛止部88cは一本の線材によって一体に曲成されたものであるが、シューウェブ28厚み方向における軸部88bの長さが、軸部52bの長さより短い点のみが相違する。
【0033】
本実施例のシューホールドダウンスプリング88aは、前述の実施例と同様の効果が得られるのに加えて、軸部88bの長さは軸部52bの長さより短いため、圧縮後のシューホールドダウン装置88のシューウェブ28からブレーキドラム12方向の高さHは、圧縮後のシューホールドダウン装置52の高さHより低くすることができる。そのため、シューホールドダウン装置88は、ブレーキドラム12との空間をさらに大きくすることができ、ドラムブレーキの設計の自由度をさらに広げることができる。
【0034】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適応される。
【0035】
たとえば、前述の実施例のドラムブレーキ10は、リーディング・トレーリング型ドラムブレーキであったが、ツーリーディング型やデュオサーボ型などシューホールドダウン装置を用いる形式のドラムブレーキであれば種々の態様が可能である。このため、ホイールシリンダ26に換えて、カムレバーなどの他の操作装置が設けられた形式のドラムブレーキであってもよいし、前述のパーキングブレーキレバー60或いはアジャストレバー64が設けられていない形式のドラムブレーキであってもよい。
【0036】
また、前述の実施例では、掛止部52c、54cを掛止部材58に掛止したがバッキングプレート16に直接掛止しても何等差し支えない。また、前述の他の実施例では、一端部86aを掛止部材84に掛止したが、バッキングプレート16に直接掛止しても何等差し支えない。
【0037】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明が適用されたリーディング・トレーリング型ドラムブレーキを示す正面図である。
【図2】図1の実施例のドラムブレーキのストラットをホイールシリンダ側から示す図である。
【図3】図1のIII-III視断面図である。
【図4】図1のシューホールドダウン装置の斜視図である。
【図5】図1のV-V視断面図である。
【図6】他の実施例のシューホールドダウン装置を示す図であり、図1のV-V視断面図に対応するものである。
【図7】他の実施例のシューホールドダウン装置を示す図であり、図1のV-V視断面図に対応するものである。
【符号の説明】
【0039】
16:バッキングプレート
18,20:ブレーキシュー
52,54,80,88:シューホールドダウン装置
52a,54a,82,88a:シューホールドダウンスプリング
52c,54c,88c:掛止部
58,84:掛止部材(部材)
86:シューホールドダウンピン
86a:一端部
86b:他端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のブレーキシューをバッキングプレートに拡開可能に配設するために該バッキングプレートに向かって付勢するシューホールドダウンスプリングを有し、該シューホールドダウンスプリングを用いて該一対のブレーキシューを該バッキングプレートに対して面方向に相対移動が可能に保持するシューホールドダウン装置において、
前記シューホールドダウンスプリングは、その付勢方向において線材の中心線同士が重ならないように該線材が渦巻状に巻回されていることを特徴とするシューホールドダウン装置。
【請求項2】
前記シューホールドダウンスプリングは、前記線材の一端部によって構成され、その巻回中心部から前記バッキングプレート側に伸びて該バッキングプレートまたは該バッキングプレートに固定された部材に掛止する掛止部を一体に有することを特徴とする請求項1のシューホールドダウン装置。
【請求項3】
前記バッキングプレートまたは前記バッキングプレートに固定された部材に掛止される一端部と、前記バッキングプレートと反対側に位置する前記シューホールドダウンスプリングの巻回中心部に掛止される他端部とを備えるシューホールドダウンピンを有していることを特徴とする請求項1のシューホールドダウン装置。
【請求項4】
前記シューホールドダウンスプリングは、前記付勢方向において前記線材同士が重ならないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかのシューホールドダウン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−278331(P2007−278331A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102576(P2006−102576)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】