説明

シューホールドダウン装置

【課題】シューホールドダウンピンを作業者の手によってバッキングプレートから直立状態に保持することなくシューホールドダウン装置をドラムブレーキに組み付けることのできるシューホールドダウン装置を提供することにある。
【解決手段】バッキングプレート18には、シューホールドダウンピン64の基端部64cをバッキングプレート18の所定位置に掛け止めるための掛止部材62が固設されており、掛止部材62は、シューホールドダウンピン64の基端部64cを掛け止めることによってそのシューホールドダウンピン64をバッキングプレート18から自立させるものであるため、シューホールドダウンピン64はバッキングプレート18から自立し、作業者の手によってシューホールドダウンピン64をバッキングプレート18から直立状態に保持することなくシューホールドダウン装置54をドラムブレーキ10に組み付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムブレーキ用のシューホールドダウン装置に係り、特にシューホールドダウン装置をドラムブレーキに容易に組み付ける技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ドラムブレーキに用いられるシューホールドダウン装置は、たとえば特許文献1に示すように、シューホールドダウンスプリングと、そのシューホールドダウンスプリングとブレーキシューとを通してバッキングプレートの所定位置に貫通して設けられた貫通穴に連結するためのシューホールドダウンピンとを有し、そのシューホールドダウンスプリングの弾性復帰力を用いてそのブレーキシューをバッキングプレート側に押圧することにより拡開可能に保持するものである。
【特許文献1】実開平7−23832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のようなシューホールドダウン装置は、ドラムブレーキに組み付けられる際、作業者の手によって前記シューホールドダウンピンを前記バッキングプレートから垂直方向に直立状態に保持しつつ前記シューホールドダウンスプリングをそのシューホールドダウンピンに組み付けるため、前記シューホールドダウン装置をドラムブレーキに組み付ける際に手間がかかるという問題があった。特に、ドラムブレーキが車両に組み付けられた状態で前記シューホールドダウン装置を組み付ける場合には、車両のサスペンションの形状などにより作業スペースが不十分な場合は組み付けがさらに困難になることや、車両内側から前記貫通穴を目視確認が困難な場合にはその貫通穴を作業者の手の感覚で探し当てなければならないことや、作業者の手によって前記シューホールドダウンピンを前記貫通穴に挿入した後作業者が手を離すと前記シューホールドダウンピンが前記貫通穴から抜け落ちるなどの問題があった。
【0004】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、シューホールドダウンピンを作業者の手によってバッキングプレートから直立状態に保持することなくシューホールドダウン装置をドラムブレーキに組み付けることのできるシューホールドダウン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、シューホールドダウンスプリングと、そのシューホールドダウンスプリングとブレーキシューとを通してバッキングプレートの所定位置に連結するためのシューホールドダウンピンとを有し、そのシューホールドダウンスプリングの弾性復帰力を用いてそのブレーキシューをそのバッキングプレート側に押圧することにより拡開可能に保持するシューホールドダウン装置であって、前記バッキングプレートには、前記シューホールドダウンピンの基端部を前記バッキングプレートの所定位置に掛け止めるための掛止部材が固設されており、前記掛止部材は、前記シューホールドダウンピンの基端部を掛け止めることによってそのシューホールドダウンピンを前記バッキングプレートから自立させるものである。
【0006】
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、前記シューホールドダウンピンは、軸部と、その軸部の径よりも小さい厚みとその軸部の径よりも大きい幅寸法を有する扁平な先端係合部と、その軸部の径よりも大きい基端部とを有するものであり、前記掛止部材は、前記バッキングプレートから所定距離離れた掛止壁と、その掛止壁に形成され前記シューホールドダウンピンの基端部よりも小さい幅寸法のU字状切欠とを有するものであり、前記シューホールドダウンピンの基端部は、前記バッキングプレートと掛止壁との間の隙間に嵌め入れられることによって前記シューホールドダウンピンが自立させられるものである。
【0007】
また、請求項3に係る発明の要旨とするところは、請求項2に係る発明において、前記掛止部材は、前記U字状切欠の開口から前記バッキングプレートに平行な方向に突き出す一対のかしめ突起を備え、その一対のかしめ突起を互いに接近する方向へ塑性変形されることにより、そのU字状切欠内に案内された前記シューホールドダウンピンの軸部を拘束離脱不能にするものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明のシューホールドダウン装置によれば、前記バッキングプレートには、前記シューホールドダウンピンの基端部を前記バッキングプレートの所定位置に掛け止めるための掛止部材が固設されており、前記掛止部材は、前記シューホールドダウンピンの基端部を掛け止めることによってそのシューホールドダウンピンを前記バッキングプレートから自立させるものであるので、前記バッキングプレートに固設された掛止部材に前記シューホールドダウンピンの基端部を掛け止めることによって、前記シューホールドダウンピンは前記バッキングプレートから自立するため、作業者の手によってシューホールドダウンピンを前記バッキングプレートから直立状態に保持することなく前記シューホールドダウン装置をドラムブレーキに組み付けることができる。
【0009】
また、請求項2に係る発明のシューホールドダウン装置によれば、前記シューホールドダウンピンは、軸部と、その軸部の径よりも小さい厚みとその軸部の径よりも大きい幅寸法を有する扁平な先端係合部と、その軸部の径よりも大きい基端部とを有するものであり、前記掛止部材は、前記バッキングプレートから所定距離離れた掛止壁と、その掛止壁に形成され前記シューホールドダウンピンの基端部よりも小さい幅寸法のU字状切欠とを有するものであるので、前記シューホールドダウンピンの基端部は、前記バッキングプレートと掛止壁との間の隙間に嵌め入れられることによって前記シューホールドダウンピンが自立させられる。
【0010】
また、請求項3に係る発明のシューホールドダウン装置によれば、前記掛止部材は、前記U字状切欠の開口から前記バッキングプレートに平行な方向に突き出す一対のかしめ突起を備え、その一対のかしめ突起を互いに接近する方向へ塑性変形されることにより、そのU字状切欠内に案内された前記シューホールドダウンピンの軸部を拘束離脱不能にするので、前記シューホールドダウンピンの基端部が前記バッキングプレートと前記掛止部材の掛止壁との間の隙間から抜け落ちることが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は簡略化されており、それら各部の寸法等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の一実施例のパーキングブレーキ用ドラムブレーキ(以下、ドラムブレーキという)10が中央部に備えられたデュオサーボ型のドラムインディスクブレーキ12のハット型ディスクおよびキャリパ等を取り外した正面図である。上記ハット型ディスクは、図に示されていない円板状外周部と有底円筒状中央部とによって構成され、その円板状外周部はディスクブレーキの摩擦板として機能し、有底円筒状中央部はブレーキドラム14として機能している。また、ブレーキドラム14は、図1の1点鎖線で示す2つの同心円で表されており、その2つの円のうちのドラムブレーキ10の中心側の円はブレーキドラム14の内周面16を示している。
【0013】
ドラムブレーキ10には、略円板形状を成し、たとえば図示しない車軸管、アクスルハウジング、サスペンション装置などの車体側部材すなわち非回転部材に一体的に固設されたバッキングプレート18が備えられている。このバッキングプレート18の外周部には、上記ハット型ディスクの円板状外周部を保護するためのディスクカバー20が固定されている。
【0014】
また、ドラムブレーキ10には、バッキングプレート18の左右の外周部に凸側が外側になる姿勢で互いに接近離間可能に略対称的に配設された円弧形状の一対のブレーキシュー22,24と、その一対のブレーキシュー22,24の一端部すなわち図1の上端部の間において位置固定に設けられたアンカー26と、そのアンカー26と一対のブレーキシュー22,24との間に張設され一対のブレーキシュー22,24の一端部を互いに接近する方向に常時付勢する一対のリターンスプリング28,30と、一対のブレーキシュー22、24の上端部間に架け渡された長手板状のストラット32と、一対のブレーキシュー22,24の他端部すなわち図1の下端部の間に介在させられてアジャストホイール34aの回転に伴って全長が変化させられることによりシュー間隙を調節する間隙調節装置34と、それら下端部間に張設されてそれら下端部を互いに接近する方向に常時付勢して間隙調節装置34を長手方向に挟圧するための中間部分がコイル状のスプリング36とが備えられている。また、リターンスプリング28の一端部28aはストラット32側に延長されており、その一端部28aはストラット32がブレーキシュー22側に常時付勢されるようにストラット32に掛止している。
【0015】
スプリング36の中間部分は間隙調節装置34のアジャストホイール34aに接触されており、アジャストホイール34aが振動等によって回転しないようになっている。それら間隙調節装置34およびスプリング36は、一対のブレーキシュー22,24の他端部間を相対回転可能に連結するものであるので、間隙調節機能を備えた連結部材38として機能している。
【0016】
一対のブレーキシュー22,24は、何れも、バッキングプレート18の板面と略平行な平板状を成し且つ図1に示す正面図において全体が円弧形状に湾曲したシューウェブ40,42と、それらの円弧形状を成す外周側端縁に沿って断面が略T字状を成すように一体的に固設された帯板状のシューリム44,46と、それらシューリム44,46の外周面に接着剤などで一体的に固着された摩擦材から成るライニング48,50とを備えてそれぞれ構成されている。バッキングプレート18、シューウェブ40,42、シューリム44,46は、いずれも鋼板から打ち抜かれかつ所定の曲げ成形が施されたプレス部品である。また、ブレーキシュー22および24には、ストラット32を支持するために相手に向かって支持突起22aおよび24aがそれぞれ形成されている。
【0017】
一対のブレーキシュー22,24は、シューウェブ40、42の長手方向の中央付近にそれぞれ配設されたシューホールドダウン装置52,54によって拡開可能にバッキングプレート18に設けられている。シューホールドダウン装置52および54は相互に同様に構成されているので、以下においては一方のシューホールドダウン装置であるシューホールドダウン装置54を用いて説明する。
【0018】
シューホールドダウン装置54は、図2に示すように、ばね材から成る断面円形の線材が複数回巻回されたシューホールドダウンスプリング56と、そのシューホールドダウンスプリング56の両端にそれぞれ当接する略円板状の一対の円板部材58,60と、バッキングプレート18の所定位置にスポット溶接により固設された掛止部材62と、シューウェブ42に切り欠かれた切欠42a、シューホールドダウンスプリング56、一対の円板部材58,60に貫通された貫通穴58a,60aを通り円板部材58に掛止する一端部と掛止部材62に掛止する他端部とを有するシューホールドダウンピン64とによって構成され、シューホールドダウンスプリング56がシューウェブ42からバッキングプレート18方向に圧縮されることによって発生する弾性復帰力を円板部材58およびシューホールドダウンピン64を介して掛止部材62すなわちバッキングプレート18に伝達することによってシューウェブ42をバッキングプレート18側に常時付勢する。そのため、シューホールドダウン装置54は、シューウェブ42すなわちブレーキシュー24をバッキングプレート18に対して面方向の相対移動可能に保持することができる。
【0019】
シューホールドダウンピン64は、図2、3に示すように、バッキングプレート18からシューウェブ42方向に伸びる略円柱状の軸部64aと、その軸部64aのバッキングプレート18側とは反対側の端部をヘディング加工することによって略円柱状の軸部64aの径よりも小さい厚みと略円柱状の軸部64aの径よりも大きい幅寸法を有した略半円板形状の先端係合部64b、軸部64aのバッキングプレート18側の端部に設けられた略円柱状の軸部64aの径よりも大きい略円板形状の基端部64cとによって構成されている。
【0020】
図4に示すように、一対の円板部材58,60の貫通穴58a,60aは、シューホールドダウンピン64の軸心方向において先端係合部64bと略同様な形状を成しているため、一対の円板部材58,60とシューホールドダウンピン64との位置がシューホールドダウンピン64の軸心方向において先端係合部64bの形状と貫通穴58a,60aの形状とが一致するような場合に、シューホールドダウンピン64の先端係合部64bは一対の円板部材58,60の貫通穴58a,60aを通ることができる。そして、シューホールドダウンピン64の先端係合部64bが一対の円板部材58,60の貫通穴58a,60aを通り、先端係合部64bが図2のように円板部材58の貫通穴58aから突出している状態で一対の円板部材58,60またはシューホールドダウンピン64をシューホールドダウンピン64の軸心周りに所定角度たとえば90度回転すると、図4に示すように先端係合部64bが円板部材58から取り出すことができない状態すなわち先端係合部64bが円板部材58に掛止した状態となる。
【0021】
掛止部材62は、図2、3に示すように、一枚の板状部材からシューホールドダウンピン64の基端部64cを囲むようにプレス成形したものであり、溶接されることによって掛止部材62をバッキングプレート18に固設するための一対の固定部62aと、バッキングプレート18から所定距離離れ一対の固定部62aの互いの端を連結する掛止壁62bと、その掛止壁62bの一部を塑性変形させてシューホールドダウンピン64の軸部64aを拘束離脱不能にするかしめ部62cとを有するものである。
【0022】
図5乃至8は、シューホールドダウン装置54の組付工程を説明するものであり、以下において、その組付工程を説明する。
【0023】
図5に示す掛止部材62は、図3に示す掛止部材62の塑性変形前を示すものであり、その図5の掛止部材62の掛止壁62bには、シューホールドダウンピン64の基端部64cよりも小さく略円柱状の軸部64aの直径より僅かに大きい幅寸法のU字状切欠62dと、そのU字状切欠62dの開口からバッキングプレート18に平行な方向に突き出す一対のかしめ突起62eとが備えられており、先ず作業者は、シューホールドダウンピン64の基端部64cを、図5に示す一点鎖線の位置から矢印F方向に移動させて掛止部材62の掛止壁62bとバッキングプレート18との間の隙間に嵌め入れる。図5の一点鎖線は、シューホールドダウンピン64の基端部64cが掛止部材62に嵌め入れられる前の状態を示すものであり、図5の実線は、シューホールドダウンピン64の基端部64cが掛止部材62に嵌め入れた状態を示すものである。
【0024】
シューホールドダウンピン64の基端部64cが掛止部材62に嵌め入れられると、シューホールドダウンピン64は、図6に示すようにバッキングプレート18からそれに垂直方向に直立した状態になる。この状態では、たとえば何らかの外力によってシューホールドダウンピン64が図6の位置から倒れようとするとシューホールドダウンピン64の基端部64cが掛止壁62bに当接してその倒れが防止されるため、作業者の手によってシューホールドダウンピン64をバッキングプレート18から直立するように保持しなくても、シューホールドダウンピン64はバッキングプレート18からそれに垂直方向に直立することができる。すなわち、シューホールドダウンピン64は、バッキングプレート18から自立することができる。
【0025】
その後、作業者は、図7に示すように掛止部材62の一対のかしめ突起62eをその一対のかしめ突起62eを互いに接近する方向である図7の矢印方向にたとえばプライヤーによって塑性変形させ図7の一点鎖線の状態にさせる。掛止部材62の一対のかしめ突起62eが塑性変形させられることによってU字状切欠62dの開口が塞がれるため、U字状切欠62d内に案内されたシューホールドダウンピン64aの軸部64aは拘束離脱不能になり、シューホールドダウンピン64の基端部64cがバッキングプレート18と掛止部材62の掛止壁62bとの間の隙間から抜け落ちることが防止される。前記かしめ部62cは、図7の一点鎖線の塑性変形された一対のかしめ突起62eに相当する。また、図6は、掛止部材62の一対のかしめ突起62eを塑性変形した後に、シューホールドダウンピン64の上からシューウェブ42の切欠42aを通してブレーキシュー24をバッキングプレート18上に配設したものである。
【0026】
次に、作業者は、一対の円板部材58,60およびシューホールドダウンスプリング56をシューホールドダウンピン64の軸心方向において一対の円板部材58,60の貫通穴58a,60aの形状とシューホールドダウンピン64の先端係合部64bの形状とが一致するように位置決めして、図8のようにシューホールドダウンピン64に通し、シューホールドダウンピン64の先端係合部64bが円板部材58の貫通穴58aから突出した状態で、シューホールドダウンピン64または一対の円板部材58,60をシューホールドダウンピン64の軸心回りに回転して、一対の円板部材58,60およびシューホールドダウンスプリング56をシューホールドダウンピン64に装着し、シューホールドダウン装置54をドラムブレーキ10に組み付ける。
【0027】
図1に戻り、図1おいて左側に位置するブレーキシュー22の一端部には、平板状のブレーキレバー66の基端部66aがピン68により回動可能に連結されており、ブレーキレバー66の中間部であってピン68に近い部分は、ストラット32のブレーキシュー22側の端部に切り欠かれた切欠面32aにシューウェブ40と共に係合させられている。また、ブレーキレバー66の先端部66bには、パーキングブレーキケーブル70が連結されている。
【0028】
以上のよう構成されたドラムブレーキ10は、パーキングブレーキペダル、パーキングブレーキレバー等の図示されていないブレーキ操作装置が操作されることによって発生するブレーキ操作力によって、パーキングブレーキケーブル70を介してブレーキレバー66の先端部66bが図1の矢印G方向に引っ張られブレーキレバー66が回動すると、ブレーキシュー24がストラット32に押されると共にブレーキシュー22がピン68に押されて一対のブレーキシュー22,24の一端部間が拡開し一対のブレーキシュー22,24のライニング48,50がブレーキドラム14の内周面16に当接する。
【0029】
上記ブレーキ操作装置の操作時に、車輪が回転すなわちブレーキドラム14が回転しようとするとブレーキドラム14の内周面16と当接しているブレーキシュー22および24は、ブレーキドラム14のその回転方向に連れ回されるので、一対のブレーキシュー22,24のどちらか一方がアンカー26に受け止められ、ブレーキシュー22および24のライニング48および50がブレーキドラム14の内周面16に強く押し付けられるので、ブレーキドラム14の回転すなわち車輪の回転が制動される。
【0030】
そして、ブレーキ操作力が解除されると一対のブレーキシュー22,24の一端部間はリターンスプリング28,30の付勢力によって接近し、ブレーキドラム14の内周面16と一対のブレーキシュー22,24のライニング48,50とが離間させられドラムブレーキ10の制動力は解除される。
【0031】
本実施例のシューホールドダウン装置54によれば、バッキングプレート18には、シューホールドダウンピン64の基端部64cをバッキングプレート18の所定位置に掛け止めるための掛止部材62が固設されており、掛止部材62は、シューホールドダウンピン64の基端部64cを掛け止めることによってそのシューホールドダウンピン64をバッキングプレート18から自立させるものであるので、バッキングプレート18に固設された掛止部材62にシューホールドダウンピン64の基端部64cを掛け止めることによって、シューホールドダウンピン64はバッキングプレート18から自立するため、作業者の手によってシューホールドダウンピン64をバッキングプレート18から直立状態に保持することなくシューホールドダウン装置54をドラムブレーキ10に組み付けることができる。
【0032】
また、本実施例のシューホールドダウン装置54によれば、シューホールドダウンピン64は、軸部64aと、その軸部64aの径よりも小さい厚みとその軸部64aの径よりも大きい幅寸法を有する扁平な先端係合部64bと、その軸部64aの径よりも大きい円板形状の基端部64cとを有するものであり、掛止部材62は、バッキングプレート18から所定距離離れた掛止壁62bと、その掛止壁62bに形成されシューホールドダウンピン64の基端部64cよりも小さい幅寸法のU字状切欠62dとを有するものであるので、シューホールドダウンピン64の基端部64cは、バッキングプレート18と掛止壁62bとの間の隙間に嵌め入れられることによってシューホールドダウンピン64が自立させられる。
【0033】
また、本実施例のシューホールドダウン装置54によれば、掛止部材62は、U字状切欠62dの開口からバッキングプレート18に平行な方向に突き出す一対のかしめ突起62eを備え、その一対のかしめ突起62eを互いに接近する方向へ塑性変形されることにより、そのU字状切欠62d内に案内されたシューホールドダウンピン64の軸部64aを拘束離脱不能にするので、シューホールドダウンピン64の基端部64cがバッキングプレート18と掛止部材62の掛止壁62bとの間の隙間から抜け落ちることが防止される。
【0034】
また、本実施例のシューホールドダウン装置54によれば、シューホールドダウン装置をドラムブレーキ10に組み付ける際、従来のようにバッキングプレート18に貫通する貫通穴を設ける必要がないためドラムブレーキ内部に水等の浸入を防止することができる。
【0035】
また、本実施例のシューホールドダウン装置54によれば、バッキングプレート18上でシューホールドダウン装置54を組み付けることができるので、従来のように車両のサスペンションの形状などによりシューホールドダウン装置の組み付け作業が困難になることがなくなる。さらに、設計段階においても上記のような外部要因に影響されることなく設計することができるため、設計の自由度が広がる。
【0036】
また、本実施例のシューホールドダウン装置54によれば、バッキングプレート18上でシューホールドダウン装置54を組み付けることができるので、見える範囲で組み付け作業ができ、シューホールドダウン装置組み付け作業が容易となり、時間短縮、誤組付の低減となる。
【実施例2】
【0037】
また、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の他の実施例において実施例相互間で共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
本実施例のシューホールドダウン装置は、シューホールドダウンスプリング56および一対の円板部材58,60の代わりに板ばね型のシューホールドダウンスプリング72を用いる以外は実施例1のシューホールドダウン装置54と同様であって、図9はその板ばね型のシューホールドダウンスプリング72を説明する図である。
【0039】
図9に示すように、板ばね型のシューホールドダウンスプリング72は、帯板状のばね材をU字状に曲成することにより相対向する一対の平板部72a,72bと、その一対の平板部72a,72bの一端を連結する湾曲した連結部72cとを有するものであり、その一対の平板部72a,72bには、シューホールドダウンピン64の先端係合部64bと略同形状に貫通された貫通穴72d,72eが備えられいる。
【0040】
板ばね型のシューホールドダウンスプリング72は、前述の実施例1の図6の状態から、貫通穴72d,72eとシューホールドダウンピン64の先端係合部64bとの形状が合うように位置決めしシューホールドダウンピン64に通してシューホールドダウンピン64の軸心回りにシューホールドダウンピン64を回転することによって、板ばね型のシューホールドダウンスプリング72はシューホールドダウンピン64の先端係合部64bに掛止され、板ばね式のシューホールドダウンスプリング72はシューホールドダウンピン64に装着される。
【0041】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適応される。
【0042】
たとえば、本発明のシューホールドダウン装置において、掛止部材62には、一対のかしめ突起62eが備えられていたが、シューホールドダウン装置の組付時にシューホールドダウンピン64の基端部64cがバッキングプレート18と掛止部材62の掛止壁62bとの間の隙間から抜け落ちなければ一対のかしめ突起62eが備えられていなくても良い。
【0043】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施例のシューホールドダウン装置が組み付けてあるデュオサーボ型ドラムブレーキを示す正面図である。
【図2】図1のII-II視断面図である。
【図3】図2のIII-III視断面図である。
【図4】図2の矢印H方向から見た図である。
【図5】図3の掛止部材が塑性変形される前の図である。
【図6】シューホールドダウンピンの基端部が掛止部材に挿入され、シューホールドダウンピンがバッキングプレートから直立(自立)した図である。
【図7】掛止部材の一対のかしめ突起が塑性変形される状態を示す図である。
【図8】バッキングプレートから直立したシューホールドダウンピンにシューホールドダウンスプリングおよび一対の円板部材を通した図である。
【図9】板ばね型のシューホールドダウンスプリングを用いた本発明の他の実施例のシューホールドダウン装置を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
18:バッキングプレート
22、24:ブレーキシュー
52、54:シューホールドダウン装置
56:シューホールドダウンスプリング
62:掛止部材
62b:掛止壁
62d:U字状切欠
62e:一対のかしめ突起
64:シューホールドダウンピン
64a:軸部
64b:先端係合部
64c:基端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シューホールドダウンスプリングと、該シューホールドダウンスプリングとブレーキシューとを通してバッキングプレートの所定位置に連結するためのシューホールドダウンピンとを有し、該シューホールドダウンスプリングの弾性復帰力を用いて該ブレーキシューを該バッキングプレート側に押圧することにより拡開可能に保持するシューホールドダウン装置であって、
前記バッキングプレートには、前記シューホールドダウンピンの基端部を前記バッキングプレートの所定位置に掛け止めるための掛止部材が固設されており、
前記掛止部材は、前記シューホールドダウンピンの基端部を掛け止めることによって該シューホールドダウンピンを前記バッキングプレートから自立させるものであることを特徴とするシューホールドダウン装置。
【請求項2】
前記シューホールドダウンピンは、軸部と、該軸部の径よりも小さい厚みと該軸部の径よりも大きい幅寸法を有する扁平な先端係合部と、該軸部の径よりも大きい基端部とを有するものであり、
前記掛止部材は、前記バッキングプレートから所定距離離れた掛止壁と、該掛止壁に形成され前記シューホールドダウンピンの基端部よりも小さい幅寸法のU字状切欠とを有するものであり、
前記シューホールドダウンピンの基端部は、前記バッキングプレートと掛止壁との間の隙間に嵌め入れられることによって前記シューホールドダウンピンが自立させられるものである請求項1のシューホールドダウン装置。
【請求項3】
前記掛止部材は、前記U字状切欠の開口から前記バッキングプレートに平行な方向に突き出す一対のかしめ突起を備え、該一対のかしめ突起を互いに接近する方向へ塑性変形されることにより、該U字状切欠内に案内された前記シューホールドダウンピンの軸部を拘束離脱不能にすることを特徴とする請求項2のシューホールドダウン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−202639(P2008−202639A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36961(P2007−36961)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】