説明

シューホールドダウン装置

【課題】シューホールドダウンピンを作業者の手によってバッキングプレートから直立状態に保持することなくシューホールドダウン装置をドラムブレーキに組み付けることのできるシューホールドダウン装置を提供することにある。
【解決手段】シューホールドダウンピン62の基端部62bは、バッキングプレート18の所定位置に固定されることによってバッキングプレート18からシューホールドダウンピン62を自立させるものであるので、シューホールドダウンピン62の基端部62bがバッキングプレート18の所定位置に固定されることによって、シューホールドダウンピン62はバッキングプレート18から自立するため、作業者の手によってシューホールドダウンピン62をバッキングプレート18から直立状態に保持することなくシューホールドダウン装置54をドラムブレーキ10に組み付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムブレーキ用のシューホールドダウン装置に係り、特にシューホールドダウン装置をドラムブレーキに容易に組み付ける技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ドラムブレーキに用いられるシューホールドダウン装置は、たとえば特許文献1に示すように、シューホールドダウンスプリングと、そのシューホールドダウンスプリングとブレーキシューとを通してバッキングプレートの所定位置に貫通して設けられた貫通穴に連結するためのシューホールドダウンピンとを有し、そのシューホールドダウンスプリングの弾性復帰力を用いてそのブレーキシューをバッキングプレート側に押圧することにより拡開可能に保持するものである。
【特許文献1】実開平7−23832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のようなシューホールドダウン装置は、ドラムブレーキに組み付けられる際、作業者の手によって前記シューホールドダウンピンを前記バッキングプレートから垂直方向に直立状態に保持しつつ前記シューホールドダウンスプリングをそのシューホールドダウンピンに組み付けるため、前記シューホールドダウン装置をドラムブレーキに組み付ける際に手間がかかるという問題があった。特に、ドラムブレーキが車両に組み付けられた状態で前記シューホールドダウン装置を組み付ける場合には、車両のサスペンションの形状などにより作業スペースが不十分な場合は組み付けがさらに困難になることや、車両内側から前記貫通穴を目視確認が困難な場合にはその貫通穴を作業者の手の感覚で探し当てなければならないことや、作業者の手によって前記シューホールドダウンピンを前記貫通穴に挿入した後作業者が手を離すと前記シューホールドダウンピンが前記貫通穴から抜け落ちるなどの問題があった。
【0004】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、シューホールドダウンピンを作業者の手によってバッキングプレートから直立状態に保持することなくシューホールドダウン装置をドラムブレーキに組み付けることのできるシューホールドダウン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、シューホールドダウンスプリングと、そのシューホールドダウンスプリングとブレーキシューとを通してバッキングプレートの所定位置に連結するためのシューホールドダウンピンとを有し、そのシューホールドダウンスプリングの弾性復帰力を用いてそのブレーキシューをそのバッキングプレート側に押圧することにより拡開可能に保持するシューホールドダウン装置であって、前記シューホールドダウンピンの基端部は、前記バッキングプレートの所定位置に固定されることによって前記バッキングプレートから前記シューホールドダウンピンを自立させるものである。
【0006】
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、(a) 前記シューホールドダウンピンは、基端部と、軸部と、その軸部の径よりも小さい厚みとその軸部の径よりも大きい幅寸法を有する扁平な先端係合部とを有するものであり、(b) 前記バッキングプレートの所定位置には、前記シューホールドダウンピンの基端部が嵌合する嵌合穴を有するものであり、(c) 前記シューホールドダウンピンの基端部は、前記嵌合穴に嵌合された状態でその嵌合穴から離脱不能且つ前記軸部回りの回転不能に塑性変形されるものである。
【0007】
また、請求項3に係る発明の要旨とするところは、請求項2に係る発明において、(a) 前記シューホールドダウンピンの基端部は、前記嵌合穴よりも大径の大径部と、その大径部から前記嵌合穴を貫通して前記バッキングプレートの裏面に突き出す円筒状の固定部とを備え、(b) その円筒状の固定部の先端がカシメ加工により拡径されることによって前記シューホールドダウンピンが前記バッキングプレートに固定されるものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明のシューホールドダウン装置によれば、前記シューホールドダウンピンの基端部は、前記バッキングプレートの所定位置に固定されることによって前記バッキングプレートから前記シューホールドダウンピンを自立させるものであるので、前記シューホールドダウンピンの基端部が前記バッキングプレートの所定位置に固定されることによって、前記シューホールドダウンピンは前記バッキングプレートから自立するため、作業者の手によってシューホールドダウンピンを前記バッキングプレートから直立状態に保持することなく前記シューホールドダウン装置をドラムブレーキに組み付けることができる。
【0009】
また、請求項2に係る発明のシューホールドダウン装置によれば、(a) 前記シューホールドダウンピンは、基端部と、軸部と、その軸部の径よりも小さい厚みとその軸部の径よりも大きい幅寸法を有する扁平な先端係合部とを有するものであり、(b) 前記バッキングプレートの所定位置には、前記シューホールドダウンピンの基端部が嵌合する嵌合穴を有するものであり、(c) 前記シューホールドダウンピンの基端部は、前記嵌合穴に嵌合された状態でその嵌合穴から離脱不能且つ前記軸部回りの回転不能に塑性変形されるものであるので、前記シューホールドダウンピンは、前記バッキングプレートから離脱不能且つ前記軸部回りの回転不能に前記バッキングプレートから自立させられる。
【0010】
また、請求項3に係る発明のシューホールドダウン装置によれば、(a) 前記シューホールドダウンピンの基端部は、前記嵌合穴よりも大径の大径部と、その大径部から前記嵌合穴を貫通して前記バッキングプレートの裏面に突き出す円筒状の固定部とを備え、(b) その円筒状の固定部の先端がカシメ加工により拡径されることによって前記シューホールドダウンピンが前記バッキングプレートに固定されるものであるので、従来使用されていたハッキングプレートの所定位置に貫通して設けられた貫通穴を備えるドラムブレーキに前記シューホールドダウンピンを使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は簡略化されており、それら各部の寸法等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の一実施例のパーキングブレーキ用ドラムブレーキ(以下、ドラムブレーキという)10が中央部に備えられたデュオサーボ型のドラムインディスクブレーキ12のハット型ディスクおよびキャリパ等を取り外した正面図である。上記ハット型ディスクは、図に示されていない円板状外周部と有底円筒状中央部とによって構成され、その円板状外周部はディスクブレーキの摩擦板として機能し、有底円筒状中央部はブレーキドラム14として機能している。また、ブレーキドラム14は、図1の2点鎖線で示す2つの同心円で表されており、その2つの円のうちのドラムブレーキ10の中心側の円はブレーキドラム14の内周面16を示している。
【0013】
ドラムブレーキ10には、略円板形状を成し、たとえば図示しない車軸管、アクスルハウジング、サスペンション装置などの車体側部材すなわち非回転部材に一体的に固設されたバッキングプレート18が備えられている。このバッキングプレート18の外周部には、上記ハット型ディスクの円板状外周部を保護するためのディスクカバー20が固定されている。
【0014】
また、ドラムブレーキ10には、バッキングプレート18の左右の外周部に凸側が外側になる姿勢で互いに接近離間可能に略対称的に配設された円弧形状の一対のブレーキシュー22,24と、その一対のブレーキシュー22,24の一端部すなわち図1の上端部の間において位置固定に設けられたアンカー26と、そのアンカー26と一対のブレーキシュー22,24との間に張設され一対のブレーキシュー22,24の一端部を互いに接近する方向に常時付勢する一対のリターンスプリング28,30と、一対のブレーキシュー22、24の上端部間に架け渡された長手板状のストラット32と、一対のブレーキシュー22,24の他端部すなわち図1の下端部の間に介在させられてアジャストホイール34aの回転に伴って全長が変化させられることによりシュー間隙を調節する間隙調節装置34と、それら下端部間に張設されてそれら下端部を互いに接近する方向に常時付勢して間隙調節装置34を長手方向に挟圧するための中間部分がコイル状のスプリング36とが備えられている。また、リターンスプリング28の一端部28aはストラット32側に延長されており、その一端部28aはストラット32がブレーキシュー22側に常時付勢されるようにストラット32に掛止している。
【0015】
スプリング36の中間部分は間隙調節装置34のアジャストホイール34aに接触されており、アジャストホイール34aが振動等によって回転しないようになっている。それら間隙調節装置34およびスプリング36は、一対のブレーキシュー22,24の他端部間を相対回転可能に連結するものであるので、間隙調節機能を備えた連結部材38として機能している。
【0016】
一対のブレーキシュー22,24は、何れも、バッキングプレート18の板面と略平行な平板状を成し且つ図1に示す正面図において全体が円弧形状に湾曲したシューウェブ40,42と、それらの円弧形状を成す外周側端縁に沿って断面が略T字状を成すように一体的に固設された帯板状のシューリム44,46と、それらシューリム44,46の外周面に接着剤などで一体的に固着された摩擦材から成るライニング48,50とを備えてそれぞれ構成されている。バッキングプレート18、シューウェブ40,42、シューリム44,46は、いずれも鋼板から打ち抜かれかつ所定の曲げ成形が施されたプレス部品である。また、ブレーキシュー22および24には、ストラット32を支持するために相手に向かって支持突起22aおよび24aがそれぞれ形成されている。
【0017】
一対のブレーキシュー22,24は、シューウェブ40、42の長手方向の中央付近にそれぞれ配設されたシューホールドダウン装置52,54によって拡開可能にバッキングプレート18に設けられている。シューホールドダウン装置52および54は相互に同様に構成されているので、以下においては一方のシューホールドダウン装置であるシューホールドダウン装置54を用いて説明する。
【0018】
シューホールドダウン装置54は、図2に示すように、ばね材から成る断面円形の線材が複数回巻回されたシューホールドダウンスプリング56と、そのシューホールドダウンスプリング56の両端にそれぞれ当接する略円板状の一対の円板部材58,60と、シューホールドダウンスプリング56、一対の円板部材58,60に貫通された貫通穴58a,60aを通り円板部材58に掛止する先端部62aとバッキングプレート18の所定位置に固定する基端部62bとを有するシューホールドダウンピン62とによって構成され、シューホールドダウンスプリング56がシューウェブ42からバッキングプレート18方向に圧縮されることによって発生する弾性復帰力を円板部材58およびシューホールドダウンピン62を介してバッキングプレート18に伝達することによってシューウェブ42をバッキングプレート18側に常時付勢する。そのため、シューホールドダウン装置54は、シューウェブ42すなわちブレーキシュー24をバッキングプレート18に対して面方向の相対移動可能に保持することができる。
【0019】
シューホールドダウンピン62は、図2に示すように、バッキングプレート18からシューウェブ42方向に伸びる略円柱状の軸部62cと、その軸部62cのバッキングプレート18側とは反対側の端部をヘディング加工することによって略円柱状の軸部62cの径よりも小さい厚みと略円柱状の軸部62cの径よりも大きい幅寸法とを有した略半円板形状の先端係合部62dと、軸部62cのバッキングプレート18側の端部がバッキングプレート18の所定位置に穿設された嵌合穴18aに嵌合された状態でその軸部62cのバッキングプレート18側の端部が嵌合穴18aから離脱不能且つ嵌合穴18a内で軸部62c回りの回転が不能に塑性変形された基端部62bとによって構成されている。
【0020】
図3は、シューホールドダウンピン62の基端部62bがバッキングプレート18に固定される前の状態を示す図である。その図3によれば、シューホールドダウンピン62の基端部62bには、嵌合穴18aの径よりも大径である円板状の大径部62eと、その大径部62eの中央部から嵌合穴18aを貫通してバッキングプレート18の裏面18bに突き出す略円筒形状の固定部62fとが備えられており、基端部62bの大径部62eには、固定部62fが嵌合穴18aを挿通することによってバッキングプレート18の表面18cと接触するバッキングプレート18と略平行な接触面62gが備えられている。また、図3に示すように、大径部62eの接触面62gがバッキングプレート18の表面18cと接触した状態でシューホールドダウンピン62がバッキングプレート18に載置されると、シューホールドダウンピン62がバッキングプレート18に対して略垂直に自立する。
【0021】
そして、シューホールドダウンピン62が図3に示すようにバッキングプレート18に対して略垂直に自立した状態において、円筒形状の固定部62fの先端がたとえばプレス機械によるカシメ加工によって拡径されて図2および図4に示すように塑性変形されると、シューホールドダウンピン62はパッキングプレート18からそれに略垂直方向に直立した状態でバッキングプレート18の嵌合穴から離脱不能且つ軸部62c回りの回転が不能となる。この状態では、たとえば何らかの外力がシューホールドダウンピン62に作用しても図2および図4の位置から倒れることがないため、作業者の手によってシューホールドダウンピン62をバッキングプレート18から直立するように保持しなくても、シューホールドダウンピン62はバッキングプレート18からそれに略垂直方向に直立することができる。すなわち、シューホールドダウンピン62は、バッキングプレート18から自立することができる。また、シューホールドダウンピン62の基端部62bは、固定部62fをバッキングプレート18の所定位置に穿設された嵌合穴18aに挿通し円筒形状の固定部62fの先端をカシメ加工により拡径してバッキングプレート18の所定位置に固定されるものであるので、従来使用されていたバッキングプレートの所定位置に貫通して設けられた貫通穴を備えるドラムブレーキにシューホールドダウンピン62を使用することができる。
【0022】
図5に示すように、一対の円板部材58,60の貫通穴58a,60aは、シューホールドダウンピン62の軸心C方向において先端係合部62dと略同様な形状を成しており、作業者が一対の円板部材58,60およびシューホールドダウンスプリング56をシューホールドダウンピン62の軸心C方向において一対の円板部材58,60の貫通穴58a,60aの形状とシューホールドダウンピン62の先端係合部62dの形状とが一致するように位置決めして、図4のようにシューホールドダウンピン62に通し、シューホールドダウンピン62の先端係合部62dが円板部材58の貫通穴58aから突出した状態で、一対の円板部材58,60をシューホールドダウンピン62の軸心C回りに所定角度たとえば90度回転すると、図2のように一対の円板部材58,60およびシューホールドダウンスプリング56がシューホールドダウンピン62に装着され、シューホールドダウン装置54がドラムブレーキ10に組み付けられる。
【0023】
図1に戻り、図1おいて左側に位置するブレーキシュー22の一端部には、平板状のブレーキレバー64の基端部64aがピン66により回動可能に連結されており、ブレーキレバー64の中間部であってピン66に近い部分は、ストラット32のブレーキシュー22側の端部に切り欠かれた切欠面32aにシューウェブ40と共に係合させられている。また、ブレーキレバー64の先端部64bには、パーキングブレーキケーブル68が連結されている。
【0024】
以上のよう構成されたドラムブレーキ10は、パーキングブレーキペダル、パーキングブレーキレバー等の図示されていないブレーキ操作装置が操作されることによって発生するブレーキ操作力によって、パーキングブレーキケーブル68を介してブレーキレバー64の先端部64bが図1の矢印A方向に引っ張られブレーキレバー64が回動すると、ブレーキシュー24がストラット32に押されると共にブレーキシュー22がピン66に押されて一対のブレーキシュー22,24の一端部間が拡開し一対のブレーキシュー22,24のライニング48,50がブレーキドラム14の内周面16に当接する。
【0025】
上記ブレーキ操作装置の操作時に、車輪が回転すなわちブレーキドラム14が回転しようとするとブレーキドラム14の内周面16と当接しているブレーキシュー22および24は、ブレーキドラム14のその回転方向に連れ回されるので、一対のブレーキシュー22,24のどちらか一方がアンカー26に受け止められ、ブレーキシュー22および24のライニング48および50がブレーキドラム14の内周面16に強く押し付けられるので、ブレーキドラム14の回転すなわち車輪の回転が制動される。
【0026】
そして、ブレーキ操作力が解除されると一対のブレーキシュー22,24の一端部間はリターンスプリング28,30の付勢力によって接近し、ブレーキドラム14の内周面16と一対のブレーキシュー22,24のライニング48,50とが離間させられドラムブレーキ10の制動力は解除される。
【0027】
本実施例のシューホールドダウン装置54によれば、シューホールドダウンピン62の基端部62bは、バッキングプレート18の所定位置に固定されることによってバッキングプレート18からシューホールドダウンピン62を自立させるものであるので、シューホールドダウンピン62の基端部62bがバッキングプレート18の所定位置に固定されることによって、シューホールドダウンピン62はバッキングプレート18から自立するため、作業者の手によってシューホールドダウンピン62をバッキングプレート18から直立状態に保持することなくシューホールドダウン装置54をドラムブレーキ10に組み付けることができる。
【0028】
また、本実施例のシューホールドダウン装置54によれば、(a) シューホールドダウンピン62は、基端部62bと、軸部62cと、その軸部62cの径よりも小さい厚みとその軸部の径よりも大きい幅寸法を有する扁平な先端係合部62dとを有するものであり、(b) バッキングプレート18の所定位置には、シューホールドダウンピン62の基端部62bが嵌合する嵌合穴18aを有するものであり、(c) シューホールドダウンピン62の基端部62bは、嵌合穴18aに嵌合された状態でその嵌合穴18aから離脱不能且つ軸部62c回りの回転不能に塑性変形されるものであるので、シューホールドダウンピン62は、バッキングプレート18から離脱不能且つ軸部62c回りの回転不能にバッキングプレート18から自立させられる。
【0029】
また、本実施例のシューホールドダウン装置54によれば、(a) シューホールドダウンピン62の基端部62bは、嵌合穴18aよりも大径の大径部62eと、その大径部62eから嵌合穴18aを貫通してバッキングプレート18の裏面18bに突き出す円筒状の固定部62fとを備え、(b) その円筒状の固定部62fの先端がカシメ加工により拡径されることによってシューホールドダウンピン62がバッキングプレート18に固定されるものであるので、従来使用されていたハッキングプレートの所定位置に貫通して設けられた貫通穴を備えるドラムブレーキにシューホールドダウンピン62を使用することができる。
【実施例2】
【0030】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の他の実施例において実施例相互間で共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0031】
本実施例のシューホールドダウン装置は、異なるシューホールドダウンピン70を備える以外は実施例1のシューホールドダウン装置54と略同様であって、図6および図7はそのシューホールドダウンピン70を説明する図であり、前述の実施例1の図2および図3に略対応するものである。
【0032】
図6に示すように、シューホールドダウンピン70は、バッキングプレート18からシューウェブ42方向に伸びる前述の実施例1と略同様の略円柱状の軸部70cと、その軸部70cのバッキングプレート18側とは反対側の端部をヘディング加工することによって略円柱状の軸部70cの径よりも小さい厚みと略円柱状の軸部70cの径よりも大きい幅寸法とを有した前述の実施例1と略同様の略半円板形状の先端係合部70dと、軸部70cのバッキングプレート18側の端部がバッキングプレート18の所定位置に穿設された嵌合穴18aに嵌合された状態でその軸部70cのバッキングプレート18側の端部が嵌合穴18aから離脱不能且つ嵌合穴18a内で軸部70c回りの回転が不能に塑性変形される前述の実施例1と略同様の基端部70bとによって構成されている。
【0033】
図7に示すように、シューホールドダウンピン70の基端部70bには、嵌合穴18aの径よりも大径である前述の実施例1と略同様の円板状の大径部70eと、その大径部70eの中央部から嵌合穴18aを貫通してバッキングプレート18の裏面18bに突き出す前述の実施例1と略同様の略円筒形状の固定部62fとが備えられており、基端部70bの大径部70eには、固定部70fが嵌合穴18aを挿通することによってバッキングプレート18の表面18cと接触するバッキングプレート18と略平行な前述の実施例1と略同様の接触面70gが備えられている。また、図7に示すように、大径部70eの接触面70gがバッキングプレート18の表面18cと接触した状態でシューホールドダウンピン70がバッキングプレート18に載置されると、シューホールドダウンピン70がバッキングプレート18に対して略垂直に自立する。
【0034】
そして、図7に示すように、シューホールドダウンピン70がバッキングプレート18に対して略垂直に自立した状態で、たとえば断面が楕円形状の加工金型72がシューホールドダウンピン70の軸心D方向に振動させられ且つシューホールドダウンピン70の軸心D回りに公転させられて円筒形状の固定部70fの先端の一部に回転しつつ繰り返し打撃を与える回転カシメ加工により円筒形状の固定部70fの先端が拡径されて図6に示すように塑性変形されるとシューホールドダウンピン70はバッキングプレート18からそれに略垂直方向に直立した状態でバッキングプレート18の嵌合穴18aから離脱不能且つ軸部70c回りの回転が不能となる。
【0035】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適応される。
【0036】
たとえば、本発明のシューホールドダウン装置において、シューホールドダウンスプリング56には、ばね材から成る断面円形の線材が複数回巻回されたコイル状ばねが使用されたが本発明のシューホールドダウン装置に使用されるシューホールドダウンスプリングはどのようなばねが使用されてもよく例えば板ばねが使用されてもよい。
【0037】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例のシューホールドダウン装置が組み付けてあるデュオサーボ型ドラムブレーキを示す正面図である。
【図2】図1のII-II視断面図である。
【図3】図2のシューホールドダウンピンの基端部がバッキングプレートに固定される前の状態を示す図である。
【図4】図3のシューホールドダウンピンの基端部がバッキングプレートに固定され、作業者が一対の円板部材およびシューホールドダウンスプリングをシューホールドダウンピンに通した状態を示す図である。
【図5】図2のV-V視面図である。
【図6】本発明の他の実施例のシューホールドダウンピンを説明する図であって、図2に相当する図である。
【図7】図6の実施例のシューホールドダウンピンを説明する図であって、図3に相当する図である。
【符号の説明】
【0039】
18:バッキングプレート
18a:嵌合穴
22、24:ブレーキシュー
52、54:シューホールドダウン装置
56:シューホールドダウンスプリング
62,70:シューホールドダウンピン
62b,70b:基端部
62c,70c:軸部
62d,70d:先端係合部
62e,70e:大径部
62f,70f:固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シューホールドダウンスプリングと、該シューホールドダウンスプリングとブレーキシューとを通してバッキングプレートの所定位置に連結するためのシューホールドダウンピンとを有し、該シューホールドダウンスプリングの弾性復帰力を用いて該ブレーキシューを該バッキングプレート側に押圧することにより拡開可能に保持するシューホールドダウン装置であって、
前記シューホールドダウンピンの基端部は、前記バッキングプレートの所定位置に固定されることによって前記バッキングプレートから前記シューホールドダウンピンを自立させるものであることを特徴とするシューホールドダウン装置。
【請求項2】
前記シューホールドダウンピンは、基端部と、軸部と、該軸部の径よりも小さい厚みと該軸部の径よりも大きい幅寸法を有する扁平な先端係合部とを有するものであり、
前記バッキングプレートの所定位置には、前記シューホールドダウンピンの基端部が嵌合する嵌合穴を有するものであり、
前記シューホールドダウンピンの基端部は、前記嵌合穴に嵌合された状態で該嵌合穴から離脱不能且つ前記軸部回りの回転不能に塑性変形されるものである請求項1のシューホールドダウン装置。
【請求項3】
前記シューホールドダウンピンの基端部は、前記嵌合穴よりも大径の大径部と、該大径部から前記嵌合穴を貫通して前記バッキングプレートの裏面に突き出す円筒状の固定部とを備え、
該円筒状の固定部の先端がカシメ加工により拡径されることによって前記シューホールドダウンピンが前記バッキングプレートに固定されるものである請求項2のシューホールドダウン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−287655(P2009−287655A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140199(P2008−140199)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】