ショウジョウバエタンパク質「FUSED」のヒト相同体
【課題】ヒトfused(hfused)ポリペプチドをコードするcDNAwp同定し、脊椎動物fused分子を提供する。
【解決手段】fusedの生物学的活性を有するポリペプチドをコードするDNAを含んでなる配列タグ(EST)を含む核酸配列、オリゴヌクレオチドプローブ、ポリペプチド、ベクター及びヒト及び脊椎動物fusedに対するイムノアドヘシン、アゴニスト及びアンタゴニストを発現する宿主細胞。
【解決手段】fusedの生物学的活性を有するポリペプチドをコードするDNAを含んでなる配列タグ(EST)を含む核酸配列、オリゴヌクレオチドプローブ、ポリペプチド、ベクター及びヒト及び脊椎動物fusedに対するイムノアドヘシン、アゴニスト及びアンタゴニストを発現する宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的にシグナル伝達分子、特に、細胞増殖及び分化に含まれるヘッジホッグ(Hh)カスケードにおけるシグナル伝達及びメディエータ分子に関する。
【0002】
(発明の背景)
多細胞生物の発育は少なくとも部分的に、細胞、組織、又は器官のパターンの位置的上方を特定、指揮又は維持するメカニズムに依存している。種々の分泌されたシグナル伝達分子、例えばトランスフォーミング成長因子-ベータ(TGF-β)、Wnt、繊維芽成長因子及びヘッジホッグファミリーのメンバー等は、ショウジョウバエ及び脊椎動物における様々な細胞及び構造のパターン形成に関連している。Perrimon, Cell: 80: 517-520 (1995)。
ヘッジホッグ(Hh)は、キイロショウジョウバエにおける遺伝子スクリーニングによりセグメントポラリティ遺伝子として最初に同定され、Nusslein-Volhard等, Roux. Arch. Dev. Biol. 193: 267-282 (1984)、広範な発達機能を果たす。Perrimon, 上掲。1つのショウジョウバエHh遺伝子しか同定されていないが、3つのヒトHh相同体:ソニックHh(SHh)、デザートHh(DHh)及びインディアンHh(IHh)が単離されている、Echelard等, 上掲;Krauss等, Cell 75, 1431-44 (1993);Riddle等, Cell 75: 1401-16 (1993)。SHhは発育中の脊椎動物胚の脊索及び底板で高レベルで発現される。インビトロ外植片アッセイ並びにトランスジェニック動物におけるSHhの異所性発現は、SHhが神経管パターン形成において鍵となる役割を果たすことを示している、Echelard等, 上掲, Krauss等, Cell 75, 1431-44 (1993), Riddle等, Cell 75: 1401-16 (1993), Roelink等, Cell 81: 445-5 (1995)。インビトロ外植片アッセイ並びにトランスジェニック動物におけるSHhの異所性発現は、SHhが神経管パターン形成において鍵となる役割を果たすことを示している、Echelard等 (1993), 上掲, Ericson等, Cell 81: 747-56 (1995); Marti等, Nature 375: 322-5 (1995); Roelink等 (1995), 上掲; Hynes等, Neuron 19: 15-26 (1997)。また、Hhは、肢(Krauss等, Cel 75: 1431-44 (1993); Laufer等, Cell 79, 993-1003 (1994))、体節(Fan 及びTessier-Lavigne, Cell 79, 1175-86 (1994); Johnson等, Cell 79: 1165-73 (1994))、肺(Bellusci等, Develop. 124: 53-63 (1997))及び皮膚(Oro等, Science 276: 817-21 (1997))の発達においても役割を果たす。同様に、IHh及びDHhは骨、腸及び胚細胞発育に関連する、Apeqvist等, Curr. Biol. 7: 801-4 (1997); Bellusci等, Development 124: 55-63 (1997); Bitgood等, Curr. Biol. 6: 298-304 (1996); Roberts等, Development 121: 3163-74 (1995)。SHhノックアウトマウスは、SHhが脊椎動物発生の多くの面に重要であるという考えを更に強めた、Chiang等, Nature 383: 407-13 (1996)。 これらのマウスは、脊索及び底板といった中間構造における異常、神経管の腹側細胞細胞型の不存在、末端肢構造における不存在、単眼症、及び脊柱及び殆どの肋骨における不存在を示す。
【0003】
細胞表面において、Hhシグナルは、12膜貫通ドメインタンパク質Patched(Ptch)[Hooper及びScott, Cell 59: 751-65 (1989); Nakano等, Nature 341: 508-13 (1989)]及びG-タンパク質結合様レセプターSmoothened(Smo)[Alcedo等, Cell 86: 221-232 (1996); van den Heuval及びIngham, Nature 382: 547-551 (1996)]にリレーされると考えられている。遺伝子的及び生化学的証拠が、Ptch及びSmoが多成分レセプター複合体の一部であるレセプターモデルを支持している、Chen及びStruhl, Cell 87: 553-63 (1996); Marigo等, Nature 384: 176-9 (1996); Stone等, Nature 384: 129-34 (1996)。HhのPtchへの結合に際し、PtchのSmoに対する平常の阻害効果が解除され、Smoが細胞質膜を通したHhシグナルの伝達を可能にする。Ptch遺伝子における機能変異の喪失が、基底細胞母斑症候群(BCNS)、多発性基底細胞癌(BCC)を特徴とする遺伝病の患者で同定された。また、機能障害Ptch遺伝子変異は、多くの割合で散在性基底細胞癌腫を伴っていた、Chidambaram等, Cancer Research 56: 459-601 (1996); Gailani等, Nature Genet. 14: 78-81 (1996); Hahn等, Cell 85: 841-51 (1996); Johnson等, Science 272: 1668-71 (1996); Unden等, Cancer Res. 56: 4561-5 (1996); Wicking等, Am. J. Hum. Genet. 60: 21-6 (1997)。Ptch機能の喪失は、基底細胞癌における制御不能なSmoシグナル伝達を起こすと考えられる。同様に、Smo変異の活性化が散在性BCC腫瘍で同定され(Xie等, Nature 391: 90-2 (1998))、SHhのレセプター複合体におけるシグナル伝達サブユニットとしてのSmoの役割を強調している。しかしながら、PtchがSmoを制御することによる正確な機構は未だ明らかになっておらず、Hhシグナルがレセプターから下流の標的に伝達されることによるシグナル伝達機構も明確にされねばならない。ショウジョウバエにおける遺伝子上位分析は、幾つかのセグメントポラリティ遺伝子を同定し、それらはHhシグナル伝達経路の成分として機能することがわかった、Ingham, Curr. Opin. Genet. Dev. 5: 492-8 (1995); Perrimon, 上掲。これらは、キネシン様分子、Costal-2(Cos-2)[Robbins等, Cell 90: 225-34 (1997); Sisson等, Cell 90: 235-45 (1997)]、タンパク質指向性fused[Preat等, Genetics 135: 1047-62 (1993); Therond等, Proc. Natl. acad. Sci. USA 93: 4224-8 (1996)]、不明な機能指向性のfusedのサプレッサを持つ新規な分子[Pham等, Genetics 140: 587-98 (1995); Preat, Genetics 132: 725-36 (1992)]及びZnフィンガータンパク質Ci.[Alexandle等, Genes De. 10: 2003-12 (1996); Dominguez等, Science 272: 1621-5 (1996); Orenic等, Genes Dev. 4: 1053-67 (1990)]を含む。Hhシグナル伝達に関係する更なる成分は、転写因子CBP[Akimaru等, Nature 386: 735-738 (1997)]、ネガティブレギュレータslimb[Jiang及びStruhl, Nature 391: 493-496 (1998)]及びSHh応答成分COUP-TFII[Krishnan等, Science 278: 1947-1950 (1997)]を含む。
【0004】
Cos-2における変異は胚致死性であり、各セグメントの中心成分及びHh応答性遺伝子の拡張ドメインの複製を含むHh過剰発現に類似のフェノタイプを提示する。これに対して、fused及びCiについての変異胚は、各セグメント後部の欠失及び前部の鏡像様複製の置換及び前部の鏡像様複製の置換を含むHh機能の喪失に類似のフェノタイプを示す、Busson等, Roux. Arch. Dev. Biol. 197: 221-230 (1988)。Ciの分子キャラクタリゼーションは、それがWingless及びDppなどのHh応答性遺伝子を直接活性化する転写因子であることを示唆した、Alexandre等, (1996), 上掲; Therond等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 4224-8 (1996)。Cos-2及びfusedの推定反対機能に一致して、fused変異はCos-2変異体によって、及びfused変異体のサプレッサによって抑制される、Preat等, Genetics 135: 1047-62 (1993)。しかしながら、fused無しの変異及びN-末端キナーゼドメイン変異は、fused変異のサプレッサによって完全に抑制されるが、fusedのC-末端変異はfusedのサプレッサのバックグラウンドにおいて強いCos-2フェノタイプを表示する。このことは、fusedキナーゼドメインが、fusedのサプレッサが存在しない場合にSHhシグナル伝達の構成アクチベータとして作用することを示唆している。最近の研究は、92kDaショウジョウバエfused、Cos-2及びCiが多タンパク質複合体を伴う微小管に存在し、Hhシグナル伝達が微小管からのこの複合体の解離を導くことを示した、Robbins等, Cell 90: 225-34 (1997); Sisson等, Cell 90: 235-45 (1997)。fused及びCos-2の両方ともがHh処理に応答してリン酸化されるが、Robbins等, 上掲; Therond等, Genetics 142: 1181-98 (1996)、この活性の原因となるキナーゼは残って特徴付けられる。今日までに、これらの成分について知られている脊椎動物相同体は、Gliタンパク質ファミリー(例えば、Gli-1、Gli-2及びGli-3)のみである。これらは、Ciに構造的に関連するZnフィンガー推定転写因子である。これらの中で、Gli-1はSHhシグナルのメディエータ候補であることが示され[Hynes等, Neuron 15: 35-44 (1995), Lee等, Development 124: 2537-52 (1997); Alexandre等, Genes Dev. 10: 2003-13 (1996)]、Hhに応答する遺伝子活性化の機構がハエと脊椎動物の間で保存されることを示唆している。Hhカスケードにおける他のシグナル伝達成分が進化的に保存されるか否かを決定し、生化学レベルでのHhシグナル伝達におけるfusedの機能を試験するために、出願人はヒトfusedcDNAを単離して特性決定した。マウスでの組織分布は、fusedがSHh応答性組織で発現されることを示した。生化学的研究は、fusedが機能性キナーゼであることを示した。機能的研究は、fusedがGliのアクチベータであり、fusedのドミナントネガティブ形態がアフリカツメガエル胚におけるSHhシグナル伝達を阻止できるという証拠を提供する。これらのデータをまとめて、fusedがHhシグナル伝達に直接的に関連していることが示された。
本出願人は、ヒトfused(hfused)ポリペプチドをコードするcDNAwp同定し、よって、脊椎動物fused分子を初めて提供するものである。
【0005】
(発明の概要)
一実施態様では、本発明は、(a)図1のアミノ酸1〜260の配列(配列番号:24)を含むfusedポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)の補体に対して少なくとも約80%の配列同一性を有し;fusedの生物学的活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸を提供する。配列同一性は、好ましくは約85%、より好ましくは約90%、最も好ましくは約95%である。一態様において、単離された核酸は、図1のアミノ酸1〜1315の配列(配列番号:2)を有するポリペプチドに対して少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%の配列同一性を有する。好ましくは、最も高い配列同一性は、キナーゼドメイン(アミノ酸1〜約260(図1の配列番号:24))内で生じる。特に好ましいのは、アミノ酸位置33におけるリシンのコード化配列を含む核酸分子である。さらなる態様において、単離された核酸分子は、アミノ酸残基1〜約260(図1に示した配列番号:24)を有するヒトfusedポリペプチドをコードするDNAを含んでなる。さらに他の態様では、本発明は、(a)ATCC寄託番号209637のcDNA(命名:pRK5tkneo.hfused-1272)にコードされるのと同じ成熟ポリペプチドをコードするDNA分子、あるいは、ATCC209637の登録番号で寄託されたクローンpRK5tkneo.hfused-1272のコード化配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するDNAを含んでなる単離された核酸を提供する。またさらなる態様では、本発明はATCC寄託番号209637のcDNA(命名:pRK5tkneo.hfused-1272)の配列、又はそれに緊縮条件下でハイブリッド形成する配列をコードするヒトfusedを含んでなる核酸を提供する。
【0006】
他の実施態様では、本発明は、脊椎動物fusedポリペプチドをコードするDNAを含むベクターを提供する。そのようなベクターを含む宿主細胞も提供される。例えば、宿主細胞は哺乳動物細胞(例えばCHO細胞)、原核生物細胞(例えば大腸菌)又は酵母細胞(例えばサッカロミセスセレヴィシアエ(Saccaromyces cerevisiae))でよい。さらに、宿主細胞を、脊椎動物fusedの発現に適した条件下で培養し、細胞培地からそれを回収することを含んでなる脊椎動物fusedポリペプチドの製造方法も提供される。
【0007】
さらに他の実施態様では、本発明は単離されたfusedポリペプチドを提供する。特に、本発明は単離された天然配列fusedポリペプチドを提供し、それは一実施態様において図1の残基1〜1315(配列番号:2)を含んでなるアミノ酸配列を含むヒトfusedである。メチオニンから開始されてもされなくてもよいヒト及び他の天然脊椎動物fusedポリペプチドが特に含まれる。また、本発明は登録番号ATCC209637の下で寄託された核酸にコードされる脊椎動物fusedポリペプチドを提供する。
さらに他の実施態様では、本発明は、異種アミノ酸配列に融合した脊椎動物fusedポリペプチドを含んでなるキメラ分子を提供する。そのようなキメラ分子の例は、エピトープタグ配列又は免疫グロブリンの定常領域の融合した脊椎動物fusedポリペプチドを含むキメラ分子である。
さらに他の実施態様では、本発明は、図2で2515662(配列番号:2)として同定される核酸配列を含む発現された配列タグ(EST)を提供する。
さらに他の実施態様では、本発明は、ヘッジホッグシグナル伝達のfused変調に抗するアンタゴニスト及び促進するアゴニストを生じさせる化合物及び方法を提供する。特に、生物有機化学的小分子及びアンチセンスヌクレオチドを含む、SHシグナル伝達経路においてfusedの正常な機能発現を阻止、防止、阻害、及び/又は、中和する脊椎動物fusedのアンタゴニストである。
【0008】
さらに他の実施態様において、本発明は、ヒトfusedの選択的スプライシングされた変異体を提供する。またさらに他の実施態様では、本発明は、ヘッジホッグシグナル伝達のfused活性化を転調させる分子を同定するためのスクリーニング又はアッセイ方法を提供する。好ましくは、その分子は、fusedのその結合性複合体形成タンパク質との相互作用を阻止するか、複合体の分解を阻止又は阻害するかのいずれかである。このアッセイは、fused及び基質(例えば、Gli、COUP-TFII、slimb、CBP、MBP)を含む混合物の候補分子とのインキュベーション、及び候補化合物がその基質のfusedリン酸化を変調させる能力の検出を含む。スクリーニングされた分子は、好ましくは小分子薬候補である。特に、この方法はfused生物学的活性のアンタゴニスト又はアゴニストのためのスクリーニング技術に関係し、
(a)培地中でfused発現標的細胞を候補化合物に暴露し;そして
(b)細胞溶解液を分析してリン酸化のレベルの評価及び/又は同定をするか;又は
(c)処理した細胞のフェノタイプ又は機能変化を評点化し;
そして、当該結果を候補化合物に暴露していない対照細胞と比較することを含む。
さらに他の実施態様では、この方法は、特定の疾患がヘッジホッグシグナル伝達によって変調されるか否かを決定する診断方法に関係し、
(a)試験細胞又は組織を培養し;
(b)fused変調ヘッジホッグシグナル伝達を阻害できる化合物を投与し;そして
(c)細胞溶解液におけるfused基質に対するキナーゼ減弱の程度又は試験細胞におけるヘッジホッグ媒介フェノタイプ効果を測定することを含む。
【0009】
(好適な実施態様の詳細な説明)
I.定義
ここで使用される際の「脊椎動物fused」及び「脊椎動物fusedポリペプチド」という用語は、天然配列脊椎動物fused及びfusedの生物学的活性を有する脊椎動物fused変異体(ここで更に詳細に定義する)を含む。fusedは、ヒト組織型又は他の供給源といった種々の供給源から単離してもよく、あるいは組換え又は合成方法によって調製してもよい。
「天然配列脊椎動物fused」は、天然由来の脊椎動物fusedポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでいる。このような天然配列脊椎動物fusedは、自然から単離することもできるし、組換え又は合成手段により生産することもできる。「天然配列脊椎動物fused」という用語には、特に、脊椎動物fusedの自然に生じる切断形態、自然に生じる変異形態(例えば、選択的にスプライシングされた形態)及び脊椎動物fusedポリペプチドの自然に生じる対立遺伝子変異体が含まれる。天然脊椎動物fusedは、例えば、ヒト、マウス、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌなどの哺乳動物におけるfusedを含み、好ましくはヒトを意味する。よって、本発明の一実施態様において、天然配列ヒト脊椎動物fusedは、図1に示す配列番号:2のアミノ酸1〜1315を含有する成熟又は全長天然ヒト脊椎動物fusedであり、位置1に開始メチオニンを有しても有さなくてもよい。
【0010】
「脊椎動物fused変異体」とは、以下に定義されるように、(a)脊椎動物fusedポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の補体と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する活性な脊椎動物fusedを意味する。特別な実施態様において、脊椎動物fused変異体は、全長天然配列脊椎動物fusedについて図1に示した推定アミノ酸配列(配列番号:2)を有する脊椎動物fusedと少なくとも約80%のアミノ酸配列相同性を有する。このような脊椎動物fused変異体は、これらに限られないが、図1(配列番号:2)の配列のN-又はC-末端において一又は複数のアミノ酸残基が付加、もしくは欠失された脊椎動物fusedポリペプチドを含む。好ましくは、核酸又はアミノ酸配列同一性は、少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、さらにより好ましくは少なくとも約95%である。
【0011】
脊椎動物fused配列に対してここで同定されている「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、脊椎動物fused配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
ここで同定される脊椎動物fused配列に対する「パーセント(%)核酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、脊椎動物fused配列のヌクレオチドと同一である候補配列中のヌクレオチドのパーセントとして定義される。パーセント核酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の知る範囲にある種々の方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0012】
「エピトープタグ」なる用語は、ここで用いられるときは、「タグポリペプチド」に融合した脊椎動物fusedポリペプチド、又はその一部を含んでなるキメラポリペプチドを意味する。タグポリペプチドは、その抗体が産生され得るエピトープを提供するに十分な残基を有しているが、脊椎動物fusedポリペプチドの活性を阻害しないよう充分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは、抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8〜約50のアミノ酸残基(好ましくは約10〜約20の残基)を有する。
【0013】
ここで用いられる「イムノアドヘシン」なる用語は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性と免疫グロブリン定常ドメインとを結合した抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは、所望の結合特異性を持ち、抗体の抗原認識及び結合部位以外である(即ち「異種の」)アミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。イムノアドヘシン分子のアドへシン部分は、典型的には少なくともレセプター又はリガンドの結合部位を含む隣接アミノ酸配列である。イムノアドヘシンの免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2、IgG-3又はIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD又はIgMなどの任意の免疫グロブリンから得ることができる。イムノアドヘシンは文献に報告されており、T細胞レセプター*[Gascoigne等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 2936-2940 (1987)];CD4*[Capron等, Nature 337: 525-531 (1989); Traunecker等, Nature 339: 68-70 (1989); Zettmeissl等, DNA Cell Biol. USA 9: 347-353 (1990); Byrn等, Nature 344, 667-670 (1990)];L-セレクチン(ホーミングレセプター)[Watson等, J. Cell. Biol. 110, 2221-2229 (1990); Watson等, Nature 349, 164-167 (1991)];CD44*[Aruffo等, Cell 61, 1303-1313 (1990)];CD28*及びB7*[Linsley等, J. Exp. Med. 173, 721-730 (1991)];CTLA-4*[Lisley等, J. Exp. Med. 174, 561-569 (1991)];CD22*[Stamenkovic等, Cell 66. 1133-1144 (1991)];TNFレセプター[Ashkenazi等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 10535-10539 (1991)];NPレセプター[Bennett等, J. Biol. Chem. 266, 23060-23067 (1991)];IgEレセプターα鎖*[Ridgway及びGorman, J. Ce;;. Biol. 115, 要約, 1448 (1991)];HGFレセプター[Mark, M.R.等, 1992, 審査中]の融合物を含み、ここで星印(*)は、レセプターが免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであることを示す。
【0014】
ハイブリッド形成反応の「緊縮性」は、当業者によって容易に決定され、一般的に
プローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、プローブが長くなると適切なアニーリングのための温度が高くなり、プローブが短くなると温度は低くなる。ハイブリッド形成は、一般的に、相補的鎖がその融点(Tm)に近いがそれより低い環境に存在する場合における変性DNAの再アニールする能力に依存する。プローブとハイブリッド形成可能な配列との間の所望の相同性の程度が高くなると、使用できる相対温度が高くなる。その結果、より高い相対温度は、反応条件をより緊縮性にするが、低い温度は緊縮性を低下させる。さらに、緊縮性は塩濃度に逆比例する。ハイブリッド形成反応の緊縮性の更なる詳細及び説明は、Ausubel等, Current Protocols in Molecular Biology (1995)を参照のこと。
ここで定義される「緊縮性条件」は、(1)洗浄のために低イオン強度及び高温度、例えば、50℃において0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを用いるもの;(2)ハイブリッド形成中にホルムアミド等の変性剤、例えば、42℃において50%(vol/vol)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、及び750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを用いるもの;(3)42℃における50%ホルムアミド、5xSSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5xデンハード液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%のデキストラン硫酸と、42℃における0.2xSSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中の洗浄及び55℃でのホルムアミド、次いで55℃におけるEDTAを含む0.1xSSCからなる高緊縮性洗浄を用いるものによって同定される。
「中程度の緊縮性条件」は、Sambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されているように同定され、上記の緊縮性より低い洗浄溶液及びハイブリッド形成条件(例えば、温度、イオン強度及び%SDS)の使用を含む。中程度の緊縮性条件は、20%ホルムアミド、5xSSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5xデンハード液、10%デキストラン硫酸、及び20mg/mLの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中の37℃での終夜インキュベーション、次いで1xSSC中37−50℃でのいフィルターの洗浄といった条件である。当業者であれば、プローブ長などの因子に適合させる必要に応じて、どのようにして温度、イオン強度等を調節するかを認識するであろう。
【0015】
「単離された」とは、ここで開示された種々のポリペプチドを記述するために使用するときは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたポリペプチドを意味する。その自然環境の汚染成分とは、そのポリペプチドの診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、ポリペプチドは、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端あるいは内部アミノ酸配列を得るのに充分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離されたポリペプチドには、脊椎動物fusedの自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツのタンパク質が含まれる。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドは少なくとも1つの精製工程により調製される。
「単離された」脊椎動物fused核酸分子は、同定され、脊椎動物fused核酸の天然源に通常付随している少なくとも1つの汚染核酸分子から分離された核酸分子である。単離された脊椎動物fused核酸分子は、天然に見出される形態あるいは設定以外のものである。ゆえに、単離された脊椎動物fused核酸分子は、天然の細胞中に存在する脊椎動物fused核酸分子から区別される。
【0016】
「コントロール配列」という表現は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に好適なコントロール配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に参画するプレタンパク質として発現されているなら、そのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合したDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにあることを意味する。しかし、エンハンサーは必ずしも近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
【0017】
「抗体」という用語は最も広い意味において使用され、特に単一のモノクローナル抗体(アゴニスト及びアンタゴニスト抗体を含む)、及び多エピトープ特異性を持つ抗体組成物、並びに、これらが所望の生物学的活性を示す限りにおいて抗体断片(例えばFab、F(ab')2及びFv)を包含している。
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団、すなわち、構成する個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能性のある突然変異を除いて同一である集団から得られる抗体を指す。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対応する。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対応する異なる抗体を典型的に含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対応する。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが他の免疫グロブリンで汚染されていないハイブリドーマ培地で合成されるという点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均一な集団から得られるという抗体の特徴を示すものであり、或る特定の方法による抗体生産を必要とすると解釈すべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler及びMilsteinによって、Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる[例えば米国特許第4,816,567号(Cabilly等)参照]。
ここで、モノクローナル抗体は特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種から誘導された又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であるが、鎖の残りの部分は他の種から誘導された又は他の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、並びに、それらが所望の生物学的活性を示す限りそれらの抗体の断片を含む[米国特許第4,816,567号、Cabilly等;Morrison 等, Proc. Natl. acad. Sci. U.S.A. 81: 6851-6855 (1984)]。
【0018】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンから誘導された最小配列を含有する特定のキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はそれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab'、F(ab')2あるいは抗体の他の抗原結合性配列)である。大部分において、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、そのレシピエントの相補性決定領域(CDR)が、マウス、ラット、ヤギなどのヒト以外の種のCDR(ドナー抗体)に由来する所望の特異性、親和性及び容量を持つ残基で置換されている。ある場合は、ヒト免疫グロブリンのFv枠残基が対応する非ヒト残基で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、輸入されるCDR又は枠配列にも見られない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体の性能をさらに精密かつ最適化するために施される。一般にヒト化抗体は、CDR領域の全て又は実質上全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質上全てがヒト免疫グロブリン共通配列のものである少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含有するであろう。また、最適なヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含有するであろう。さらなる詳細については、Jones等, Nature 321: 522 -525 (1986);Reichmann等, Nature 332: 323-329 (1988);Presta, Curr. Op. struct. Biol. 2: 593 -596 (1992)及び1993年7月6日発行の米国特許第5,225,539号(Winter)を参照のこと。
【0019】
ここで意図している「活性な」及び「活性」とは、天然又は天然発生脊椎動物fusedの生物学的及び/又は免疫学的活性を保持する脊椎動物fusedの形態を意味する。好ましい活性は、ヘッジホッグシグナル伝達に結合及び影響し、例えば阻止又はその他の変調をさせる能力である。活性は、好ましくは基底細胞癌の病原を調節することを含む。他の好ましい生物化学的活性は、Gliのリン酸化又はリン酸化の変調をする能力である。
【0020】
ここで用いられる「アンタゴニスト」なる用語は、最も広い意味において、Hhシグナル伝達におけるfusedの正常な機能を阻止、防止、阻害、中和する任意の分子を含む。アンタゴニストの1つの特別な形態は、fusedとその結合又は複合体形成タンパク質との間の相互作用を阻害する分子を含む。同様に、ここで用いられる「アゴニスト」なる用語は、Hhシグナル伝達経路におけるfusedの正常な機能発現を促進、向上又は刺激する任意の分子を含む。fused及びその結合タンパク質のタンパク質−タンパク質相互作用に影響する好ましい分子は、後者の断片又は小さな生物有機分子、例えばペプチド類似物を含み、それらは正しい複合体形成の相互作用を防止又は促進するであろう。非限定的な例は、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、グリコペプチド、糖脂質、多糖類、オリゴ糖、核酸、生物有機分子、ペプチド類似物、製薬製剤又はその代謝物、転写及び翻訳制御配列などを含む。アンタゴニストの他の好ましい形態は、野生型fusedの正しい転写を阻害するアンチセンスヌクレオチドを含む。アンタゴニストの好ましい形態は、fusedのATP結合部位に特異的に結合するか結合を阻止する小分子である。
【0021】
「変調」又は「変調する」という語句は、シグナル伝達経路のアップレギュレーション又はダウンレギュレーションを意味する。私儀なる伝達の制御下での細胞プロセスは、これらに限られないが、特定遺伝子の転写;代謝、増殖、分化、接着、アポトーシス及び生存などの正常な細胞機能、並びに、形質転換、分化及び転移の阻止といった異常なプロセスを含みうる。
「ポリメラーゼ連鎖反応」又は「PCR」の技術は、ここで用いられる場合、一般に核酸、RNA及び/又はDNAの特定の切片の少量が1987年7月28日発行の米国特許第4,683,195号に記載されたように増幅される方法を意味する。一般的に、対象とする領域の末端から又は利用可能の必要性を越える配列情報は、オリゴヌクレオチドプライマーの設計を可能にし;これらのプライマーは増幅されるテンプレートの反対鎖の配列と同一又は類似している。2つのプライマーの5’末端ヌクレオチドは増幅された物質の末端と一致する。PCR配列は、全ゲノムDNA、及び全細胞性RNA、バクテリオファージ、又はプラスミド配列等から転写されたcDNAを形成する。一般的に、Mullis等, Cold Spring Harbor Symp. Quant Biol. 51: 263 (1987); Erlich, Ed., PCR Technology, (Stockton Press, NY, 1989)を参照のこと。ここで用いられるように、PCRは、プライマーとして公知の核酸を、そして核酸の特定の切片を増幅又は生成するために核酸ポリメラーゼを使用することを含む核酸試験試料の唯一ではない一例であると考えられる。
【0022】
II. 本発明の組成物と方法
A.全長脊椎動物fused
本発明は、本出願においてヒト及び脊椎動物fusedと称されるポリペプチドをコードする、新規に同定され単離された核酸配列を提供する。特に本出願人は、以下の実施例で更に詳細に開示するような、脊椎動物fusedポリペプチドをコードするcDNAを同定し単離した。(初期パラメータに設定された)BLAST、BLAST-2及びFastA配列アラインメントコンピュータプログラムを用いて、本出願人は、ヒトfusedの全長配列(図3に示す(配列番号:2))がショウジョウバエfused(配列番号:23)と28%のアミノ酸配列同一性を有することを見出した。従って、現在では、本出願で開示されるヒトfusedがヘッジホッグシグナル伝達カスケードの新たに同定されたメンバーであると考えられている。
【0023】
ヒト脊椎動物fused遺伝子の全長天然配列、又はその一部は、全長遺伝子を単離するための、又は図1(配列番号:1)に開示した脊椎動物fused配列と所定の配列同一性を有する更に他の脊椎動物相同遺伝子(例えば、脊椎動物fused又は他の種からの脊椎動物fusedの天然発生変異体をコードするもの)を単離するためのcDNAライブラリ用のハイブリッド形成プローブとして使用できる。場合によっては、プローブの長さは約20から約50塩基であろう。ハイブリッド形成プローブは、図1(配列番号:1)の核酸配列から、又は天然配列脊椎動物fusedのプロモーター、エンハンサーエレメント、及びイントロンを含むゲノム配列から誘導されうる。例えば、スクリーニング方法は、脊椎動物fused遺伝子のコード化領域を周知のDNA配列を用いて単離して、約40塩基の選択されたプローブを合成することを含む。ハイブリッド形成プローブは、32P又は35Sなどの放射性ヌクレオチド、アビジン/ビオチン結合系を解してプローブに結合したアルカリホスファターゼ等の酵素標識を含む種々の標識によって標識してよい。本発明の脊椎動物fused遺伝子に相補的な配列を有する標識したプローブは、ヒトcDNA、ゲノムDNA、又はmRNAのライブラリのスクリーニングに使用でき、それらのライブラリの何れのメンバーにプローブがハイブリッド形成するかを決定できる。
【0024】
B.脊椎動物fused変異体
ここに記載した全長天然配列脊椎動物fusedに加えて、脊椎動物fused変異体も調製できると考えられる。脊椎動物fused変異体は、公知の脊椎動物fusedDNAに適当なヌクレオチド変化を導入することにより、あるいは所望の脊椎動物fusedポリペプチドを合成することにより調製できる。当業者は、適切なアミノ酸変化が脊椎動物fusedポリペプチドの翻訳後プロセスを変えうることを理解するであろう。
天然全長配列脊椎動物fused又はここに記載した脊椎動物fusedの種々のドメインにおける変異は、例えば、米国特許第5,364,934号に記載されている保存的及び非保存的変異についての任意の技術及び指針を用いてなすことができる。変異は、結果として天然配列脊椎動物fusedと比較して脊椎動物fusedのアミノ酸配列が変化する脊椎動物fusedをコードする一又は複数のコドンの置換、欠失又は挿入であってよい。場合によっては、変異は少なくとも1つのアミノ酸の脊椎動物fused一又は複数のドメインの任意の他のアミノ酸による置換である。いずれのアミノ酸残基が所望の活性に悪影響を与えることなく挿入、置換又は欠失されるかの指針は、脊椎動物fusedの配列を相同性の知られたタンパク質分子の配列と比較し、相同性の高い領域内でなされるアミノ酸配列変化を最小にすることによって見出される。アミノ酸置換は、一のアミノ酸を類似した構造及び/又は化学特性を持つ他のアミノ酸で置換した結果、例えばロイシンのセリンでの置換、即ち保存的アミノ酸置換とすることができる。挿入及び欠失は、場合によっては1から5のアミノ酸の範囲内とすることができる。許容される変異は、配列においてアミノ酸の挿入、欠失又は置換を系統的に作成し、得られた変異体を下記の実施例に記載するインビトロアッセイの任意のもので活性について試験することにより決定される。
【0025】
変異は、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャンニング、及びPCR突然変異誘発等のこの分野で周知の技術を用いてなすことができる。部位特異的突然変異誘発[Carter等, Nucl. Acids Res., 13: 4331 (1986); Zoller等, Nucl. Acids Res., 10: 6487 (1987)]、カセット突然変異誘発[Wells等, Gene, 34: 315 (1985)]、制限的選択突然変異誘発[Wells等, Philos. Trans. R. Soc. London SerA, 317: 415 (1986)]又は他のこの分野で知られた技術をクローニングしたDNAに実施して、脊椎動物fused変異体DNAを作成することもできる。
また、隣接配列に沿って一又は複数のアミノ酸を同定するのにスキャンニングアミノ酸分析を用いることができる。中でも好ましいスキャンニングアミノ酸は、比較的小さく、中性のアミノ酸である。そのようなアミノ酸は、アラニン、グリシン、セリン、及びシステインを含む。アラニンは、ベータ炭素を越える側鎖を排除し変異体の主鎖構造を変化させにくいので、この群の中で典型的に好ましいスキャンニングアミノ酸である。また、アラニンは最もありふれたアミノ酸であるため典型的には好ましい。さらに、それは埋もれた及び露出した位置の両方に見られることが多い[Creighton, The Proteins, (W.H. Freeman & Co., N.Y.); Chothia, J. Mol. Biol., 150: 1 (1976)]。アラニン置換が十分な量の変異体を生じない場合は、アイソテリック(isoteric)アミノ酸を用いることができる。
図1に示したヒトfused配列では、キナーゼドメインがアミノ酸残基1−260(配列番号:24)で表され、その位置のリシン33はATP結合、即ち酵素活性に必要であることがわかった。
【0026】
C.脊椎動物fusedの修飾
脊椎動物fusedの共有結合的修飾は本発明の範囲内に含まれる。共有結合的修飾の一型は、脊椎動物fusedの標的とするアミノ酸残基を、脊椎動物fusedの選択された側鎖又はN又はC末端残基と反応できる有機誘導体化試薬と反応させることである。二官能性試薬での誘導体化が、例えば脊椎動物fusedを水不溶性支持体マトリクスあるいは抗-脊椎動物fused抗体の精製方法又はその逆で用いるための表面に架橋させるのに有用である。通常用いられる架橋剤は、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば4-アジドサリチル酸、3,3’-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)等のジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、ビス-N-マレイミド-1,8-オクタン等の二官能性マレイミド、及びメチル-3-[(p-アジドフェニル)-ジチオ]プロピオイミダート等の試薬を含む。
他の修飾は、グルタミニル及びアスパラギニル残基の各々対応するグルタミル及びアスパルチルへの脱アミノ化、プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリル又はトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化[T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp.79-86 (1983)]、N末端アミンのアセチル化、及び任意のC末端カルボキシル基のアミド化を含む。
【0027】
脊椎動物fusedの共有結合的修飾の他の型は、脊椎動物fusedポリぺプチドの、種々の非タンパク質様ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンの一つへの、米国特許第4,640,835号;第4,496,689号;第4,301,144号;第4,670,417号;第4,791,192号又は第4,179,337号に記載された方法での結合を含む。このような修飾は、哺乳動物系での循環における分子の半減期の増大が予想され;fused分子の半減期の延長は、fused変異体が治療薬として投与される場合などの或る種の状況下で有用であり得る。
また、本発明の脊椎動物fusedは、他の異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合した脊椎動物fusedを含むキメラ分子を形成する方法で修飾してもよい。一実施態様では、このようなキメラ分子は、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチドと脊椎動物fusedとの融合を含む。エピトープタグは、一般的には脊椎動物fusedのアミノ又はカルボキシル末端に位置する。このような脊椎動物fusedのエピトープタグ形態の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。また、エピトープタグの提供は、抗タグ抗体又はエピトープタグに結合する他の型の親和性マトリクスを用いたアフィニティ精製によって脊椎動物fusedを容易に精製できるようにする。もう一つの実施態様において、キメラ分子は脊椎動物fusedの免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定領域との融合体を含む。キメラ分子の二価形態では、このような融合はIgG分子のFc領域であり得る。
通常は、INF-γレセプターのリガンド-(IFN-γ)結合ドメインの隣接アミノ酸配列のC-末端が、可変領域に換えて免疫グロブリン定常領域の隣接アミノ酸配列のN-末端に融合するが、N-末端融合も可能である。
【0028】
典型的には、このような融合は、少なくとも免疫グロブリン重鎖の定常領域の機能的活性ヒンジ、CH2及びCH3ドメインを保持する。また、融合は、定常ドメインのFc部分のC-末端、又は重鎖のCH1の直近N-末端又は軽鎖の対応する領域にもなされる。これは、通常は、適当なDNA配列を作成し、それを組換え細胞培地に暴露することにより達成される。あるいは、イムノアドヘシンが周知の方法に従って合成される。
融合がなされる正確な位置は重要ではなく;特定の位置は公知であり、免疫グロブリンの生物学的活性、分泌又は結合特性を最適化するために選択されうる。
【0029】
好ましい実施態様では、IFN-γに対する結合部位を含む隣接アミノ酸配列のC-末端が、N-末端において、抗体のC-末端部分(特にFcドメイン)に融合し、免疫グロブリン、例えば免疫グロブリンGl(IgG-l)のエフェクター機能を含有する。上述したように、全重鎖定常領域を結合部位を含む配列に融合させることができる。しかしながら、より好ましくは、パパイン切断部位(IgGFcを化学的に定義する;残基216、重鎖定常領域の第1残基を114とする[Kobet等, 上掲]、又は他の免疫グロブリンの類似部位)の直上流のヒンジ領域で開始する配列が融合に用いられる。イムノアドヘシンにおいて異種タンパク質重鎖融合タンパク質が効率的に分泌されるには免疫グロブリン軽鎖が必要であるというのが以前の考えであったが、全IgGl重鎖を含むイムノアドヘシンでさえも軽鎖無しで効率的に分泌されることが見出された。軽鎖が不要であるので、本発明のイムノアドヘシンの作成に用いられる免疫グロブリン重鎖定常ドメインは、軽鎖架橋部位を持たなくてもよい。これは、十分に変化する免疫グロブリンの通常は軽鎖が結合する重鎖配列成分を除去し、そのような結合がもはや不可能とすることにより達成される。よって、IFN-γレセプター-免疫グロブリンキメラの或る実施態様では、CH1ドメインが完全に除去され得る。
【0030】
特に好ましい実施態様では、IFN-γレセプターの細胞外ドメインを含むアミノ酸配列がヒンジ領域及びCH2、CH3;又はIgG-1、IgG-2、IgG-3、又はIgG-4の重鎖のCH1、ヒンジ、CH2及びCH3ドメインに融合する。典型的な作成物の作成は実施例1に記載する。
幾つかの実施態様において、IFN-γレセプター-免疫グロブリン分子(イムノアドヘシン)は、単量体、二量体、又は多量体、特に二量体又は三量体として組み立てられる。一般的に、これらの組み立てられたイムノアドヘシンは、対応する免疫グロブリンのものに似た周知の単位構造を有する。基本的な4つの鎖構造単位(2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の二量体)は、IgG、IgA及びIgEが存在する形態である。4つの鎖単位は高分子量免疫グロブリンで繰り返され;IgMは一般にジスルフィド結合で保持された基本的な4つの鎖単位の五量体として存在する。IgAグロブリン、場合によってはIgGグロブリンは、血清中で多量体形態でも存在する。多量体の場合、4つの各鎖単位は同じでも異なっていてもよい。
【0031】
IFN-γレセプター-免疫グロブリンキメラの全免疫グロブリン部分が同じ免疫グロブリンからである必要はない。イムノアドヘシンの特性を最適化するために、異なる免疫グロブリンの種々の部分が結合され、天然免疫グロブリンの変異体及び誘導体がIFN-γについて上述した用に作成されうる。例えば、IgG-1のヒンジがIgG-3のものに弛緩されたイムノアドヘシン作成物が機能的であり、全IgG-1重鎖を含むイムノアドヘシンに匹敵する薬物動態を示すことがわかった。
種々のタグポリペプチド及びそれら各々の抗体はこの分野で良く知られている。例としては、ポリ−ヒスチジン(poly-his)又はポリ−ヒスチジン−グリシン(poly-his-gly)タグ;flu HAタグポリペプチド及びその抗体12CA5[Field等, Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165 (1988)];c-mycタグ及びそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10抗体[Evan等, Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985)];及び単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ及びその抗体[Paborsky等, Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990)]を含む。他のタグポリペプチドは、フラッグペプチド[Hopp等, BioTechnology, 6:1204-1210 (1988)];KT3エピトープペプチド[Martin等, Science, 255:192-194 (1992)];α-チューブリンエピトープペプチド[Skinner等, J. Biol. Chem., 266:15163-15166 (1991)];及びT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz-Freyermuth等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397 (1990)]を含む。好ましいタグはインフルエンザHAタグである。
【0032】
D.脊椎動物fusedの調製
以下の説明は、主として、脊椎動物fused核酸を含むベクターで形質転換又は形質移入された細胞を培養することにより特定の脊椎動物fusedを生産する方法に関する。もちろん、当該分野においてよく知られている他の方法を用いて脊椎動物fusedを調製することはできると考えられる。例えば、脊椎動物fused配列、又はその一部は、固相技術を用いた直接ペプチド合成によって生産してもよい[例えば、Stewart等, Solid-Phase Peptide Synthesis, W.H. Freeman Co., San Francisco, CA (1969);Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2154 (1963)参照]。手動技術又は自動によるインビトロタンパク質合成を行ってもよい。自動合成は、例えば、アプライド・バイオシステムズ・ペプチド合成機(Foster City, CA)を用いて、製造者の指示により実施してもよい。脊椎動物fusedの種々の部分を、別々に化学的に合成し、化学的又は酵素的方法を用いて結合させて全長脊椎動物fusedを生産してもよい。
【0033】
1.脊椎動物fusedをコードするDNAの単離
脊椎動物fusedをコードするDNAは、脊椎動物fusedmRNAを保有していてそれを検出可能なレベルで発現すると考えられる組織から調製されたcDNAライブラリから得ることができる。従って、ヒト脊椎動物fusedDNAは、実施例に記載されるように、ヒトの組織から調製されたcDNAライブラリから簡便に得ることができる。また脊椎動物fusedコード化遺伝子は、ゲノムライブラリから又はオリゴヌクレオチド合成により得ることもできる。
ライブラリは、対象となる遺伝子あるいはその遺伝子によりコードされるタンパク質を同定するために設計された(脊椎動物fusedに対する抗体又は少なくとも約20−80塩基のオリゴヌクレオチド等の)プローブによってスクリーニングできる。選択されたプローブによるcDNA又はゲノムライブラリのスクリーニングは、例えばSambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されている標準的な手順を使用して実施することができる。脊椎動物fusedをコードする遺伝子を単離する他の方法はPCR法を使用するものである[Sambrook等,上掲;Dieffenbach等, PCR Primer:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995)]。
【0034】
下記の実施例は、cDNAライブラリのスクリーニング技術を記載している。プローブとして選択されたオリゴヌクレオチド配列は、充分な長さで、疑陽性が最小化されるよう充分に明瞭でなければならない。オリゴヌクレオチドは、スクリーニングされるライブラリ内のDNAとのハイブリッド形成時に検出可能であるように標識されていることが好ましい。標識化の方法は当該分野において良く知られており、32P標識されたATPのような放射線標識、ビオチン化あるいは酵素標識の使用が含まれる。中程度の緊縮性及び高度の緊縮性を含むハイブリッド形成条件は、上掲のSambrook等に与えられている。
このようなライブラリースクリーニング法において同定された配列は、Genbank等の公共データベース又は個人の配列データベースに寄託され公衆に利用可能とされている周知の配列と比較及びアラインメントすることができる。分子の一定の領域内又は全長に渡っての(アミノ酸又は核酸レベルのいずれかでの)配列同一性は、相同性測定のための種々のアルゴリズムを用いるBLAST、BLAST-2、ALIGN、DNAstar、及びINHERIT等のコンピュータソフトウェアプログラムを用いた配列アラインメントを通して決定することができる。
タンパク質コード化配列を有する核酸は、初めてここで開示された推定アミノ酸配列を使用し、また必要ならば、cDNAに逆転写されなかったmRNAの生成中間体及び先駆物質を検出する上掲のSambrook等に記述されているような従来のプライマー伸展法を使用することにより得られる。
【0035】
2.宿主細胞の選択及び形質転換
宿主細胞を、ここに記載した脊椎動物fused生成のための発現又はクローニングベクターで形質移入又は形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適当に変性された常套的栄養培地で培養する。培養条件、例えば培地、温度、pH等々は、過度の実験をすることなく当業者が選ぶことができる。一般に、細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコール、及び実用技術は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach, M.Butler編 (IRL Press, 1991)及びSambrook等, 上掲に見出すことができる。
形質移入の方法、例えば、CaPO4及びエレクトロポレーションは当業者に知られている。用いられる宿主細胞に応じて、その細胞に対して適した標準的な方法を用いて形質転換はなされる。前掲のSambrook等に記載された塩化カルシウムを用いるカルシウム処理又はエレクトロポレーションが、原核生物又は実質的な細胞壁障壁を含む他の細胞に対して用いられる。アグロバクテリウム・トゥメファシエンスによる感染が、Shaw等, Gene, 23:315 (1983)及び1989年6月29日公開のWO 89/05859に記載されているように、或る種の植物細胞の形質転換に用いられる。このような細胞壁のない哺乳動物の細胞に対しては、Graham及びvan der Eb, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈降法が好ましい。哺乳動物細胞の宿主系形質転換の一般的な態様は米国特許第4,399,216号に記載されている。酵母菌中への形質転換は、典型的には、Van solingen等, J. Bact., 130:946 (1977)及びHsiao等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:3829 (1979)の方法に従って実施される。しかしながら、DNAを細胞中に導入する他の方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、無傷の細胞、又はポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチン等を用いる細菌プロトプラスト融合もまた用いることもできる。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keown等, Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)及び Mansour等, Nature, 336:348-352 (1988)を参照のこと。
【0036】
ここに記載のベクターにおいてDNAをクローン化あるいは発現するために適切な宿主細胞は、原核生物、酵母菌、又は高等真核生物細胞である。適切な原核生物は、限定するものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えば大腸菌のような腸内細菌科を含む。種々の大腸菌株が公衆に利用可能であり、例えば、大腸菌K12株MM294(ATCC31,446);大腸菌X1776(ATCC31,537);大腸菌株W3110(ATCC27,325)及びK5772(ATCC53,635)である。
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、脊椎動物fusedをコードするベクターのための適切なクローン化又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシアは、通常用いられる下等真核生物宿主微生物である。
脊椎動物fusedの発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては、ショウジョウバエS2及びスポドスペラSf9等の昆虫細胞並びに植物細胞が含まれる。有用な哺乳動物宿主株化細胞の例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)及びCOS細胞を含む。より詳細な例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub及びChasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));ヒト肺細胞 (W138, ATCC CCL 75);ヒト肝細胞 (Hep G2, HB 8065);及びマウス乳房腫瘍細胞 (MMT 060562, ATTC CCL51)を含む。適切な宿主細胞の選択は、この分野の技術常識内にある。
【0037】
3.複製可能なベクターの選択及び使用
脊椎動物fusedをコードする核酸(例えば、cDNA又はゲノムDNA)は、クローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクター内に挿入される。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、又はファージの形態とすることができる。適切な核酸配列が、種々の手法によってベクターに挿入される。一般に、DNAはこの分野で周知の技術を用いて適当な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。ベクター成分としては、一般に、これらに制限されるものではないが、一又は複数のシグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列を含む。これらの成分の一又は複数を含む適当なベクターの作成には、当業者に知られた標準的なライゲーション技術を用いる。
発現及びクローニングベクターは共に一又は複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。そのような配列は多くの細菌、酵母菌及びウイルスに対してよく知られている。プラスミドpBR322に由来する複製開始点は大部分のグラム陰性細菌に好適であり、2:プラスミド開始点は酵母菌に適しており、様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。好ましい複製可能なベクターは、プラスミドpRK5である。Holmes等, Science, 253: 1278-1280 (1991)。
【0038】
発現及びクローニングベクターは、典型的には、選べるマーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)例えばバシリに対する遺伝子コードD-アラニンラセマーゼのような、複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
哺乳動物細胞に適切な選べるマーカーの他の例は、DHFRあるいはチミジンキナーゼのように、脊椎動物fused核酸を取り込むことのできる細胞成分を同定することのできるものである。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、Urlaub 等により, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980)に記載されているようにして調製され増殖されたDHFR活性に欠陥のあるCHO株化細胞である。酵母菌中での使用に好適な選択遺伝子は酵母菌プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である[Stinchcomb等, Nature, 282:39(1979);Kingman等, Gene, 7:141(1979);Tschemper等, Gene, 10:157(1980)]。trp1遺伝子は、例えば、ATCC第44076号あるいはPEP4-1のようなトリプトファン内で成長する能力を欠く酵母菌の突然変異株に対する選択マーカーを提供する[Jones, Genetics, 85:12 (1977)]。
【0039】
発現及びクローニングベクターは、通常、脊椎動物fused核酸配列に作用可能に結合し、mRNA合成を制御するプロモーターを含む。種々の可能な宿主細胞により認識される好適なプロモーターが知られている。原核生物宿主での使用に好適なプロモーターはβ-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系[Cahng等, Nature, 275:615 (1978); Goeddel等, Nature, 281:544 (1979)]、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系[Goeddel, Nucleic Acids Res., 8:4057 (1980); EP 36,776]、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーター[deBoer 等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:21-25 (1983)]を含む。細菌系で使用するプロモータもまた脊椎動物fusedをコードするDNAと作用可能に結合したシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列を有する。
酵母菌宿主と共に用いて好適なプロモーター配列の例としては、3-ホスホグリセラートキナーゼ[Hitzeman 等, J. Biol. Chem., 255:2073 (1980)]又は他の糖分解酵素[Hess 等, J. Adv. Enzyme Reg., 7:149 (1968);Holland, Biochemistry, 17:4900(1978)]、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
【0040】
他の酵母菌プロモーターとしては、成長条件によって転写が制御される付加的効果を有する誘発的プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの利用を支配する酵素のプロモーター領域がある。酵母菌での発現に好適に用いられるベクターとプロモータはEP 73,657に更に記載されている。
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからの脊椎動物fused転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス(1989年7月5日公開のUK 2,211,504)、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及びサルウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノムから得られるプロモーター、異種性哺乳動物から得られるプロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、及び熱衝撃プロモーターから得られるプロモーターによって、このようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り制御される。
【0041】
より高等の真核生物による脊椎動物fusedをコードしているDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増強され得る。エンハンサーは、通常は約10から300塩基対で、プロモーターに作用してその転写を増強するDNAのシス作動要素である。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100−270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。エンハンサーは、脊椎動物fusedコード化配列の5’又は3’位でベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5’位に位置している。
また真核生物宿主細胞(酵母菌、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの通常は5’、時には3’の非翻訳領域から取得できる。これらの領域は、脊椎動物fusedをコードしているmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。
組換え脊椎動物細胞培養での脊椎動物fusedの合成に適応化するのに適切なさらに他の方法、ベクター及び宿主細胞は、Gething等, Nature, 293:620-625 (1981); Mantei等, Nature, 281:40-46 (1979); EP 117,060; 及びEP 117,058に記載されている。
【0042】
4.遺伝子増幅/発現の検出
遺伝子の増幅及び/又は発現は、ここで提供された配列に基づき、適切に標識されたプローブを用い、例えば、従来よりのサザンブロット法、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット法[Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77:5201-5205 (1980)]、ドットブロット法(DNA分析)、又はインサイツハイブリッド形成法によって、直接的に試料中で測定することができる。あるいは、DNA二本鎖、RNA二本鎖及びDNA−RNAハイブリッド二本鎖又はDNA-タンパク二本鎖を含む、特異的二本鎖を認識することができる抗体を用いることもできる。次いで、抗体を標識し、アッセイを実施することができ、ここで二本鎖は表面に結合しており、その結果二本鎖の表面での形成の時点でその二本鎖に結合した抗体の存在を検出することができる。
あるいは、遺伝子の発現は、遺伝子産物の発現を直接的に定量する免疫学的な方法、例えば細胞又は組織切片の免疫組織化学的染色及び細胞培養又は体液のアッセイによって、測定することもできる。試料液の免疫組織化学的染色及び/又はアッセイに有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、任意の哺乳動物で調製することができる。簡便には、抗体は、天然配列脊椎動物fusedポリペプチドに対して、又はここで提供されるDNA配列をベースとした合成ペプチドに対して、又は脊椎動物fusedDNAに融合し特異的抗体エピトープをコードする外因性配列に対して調製され得る。
【0043】
5.ポリペプチドの精製
脊椎動物fusedの形態は、培地又は宿主細胞の溶解液から回収することができる。膜結合性であるならば、適切な洗浄液(例えばトリトン-X100)又は酵素的切断を用いて膜から引き離すことができる。脊椎動物fusedの発現に用いられる細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊、又は細胞溶解剤などの種々の化学的又は物理的手段によって破壊することができる。
脊椎動物fusedを、組換え細胞タンパク又はポリペプチドから精製することが望ましい。適切な精製手順の例である次の手順により精製される:すなわち、イオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はカチオン交換樹脂、例えばDEAEによるクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG-75を用いるゲル濾過;IgGのような汚染物を除くプロテインAセファロースカラム;及び脊椎動物fusedのエピトープタグ形態を結合させる金属キレート化カラムである。この分野で知られ、例えば、Deutcher, Methodes in Enzymology, 182 (1990);Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer-Verlag, New York (1982)に記載された多くのタンパク質精製方法を用いることができる。選ばれる精製過程は、例えば、用いられる生産方法及び特に生産される脊椎動物fusedの性質に依存する。
【0044】
E.脊椎動物fusedの用途
(1)fusedは、Hhシグナル伝達の汎用メディエータである
図1(配列番号:1)のヒトfused全長分子は、ショウジョウバエfused(100kDa、dfused(配列番号:23))よりかなり大きな150kDaの予測分子量を持つタンパク質をコードする。ヒトfused(hfused)は、ショウジョウバエ相同体とキナーゼドメインにおいて顕著な相同性を示すが、残りの約1000アミノ酸においては、dfused又は他の公知のタンパク質と殆ど相同ではない。キナーゼドメインは、図1(配列番号:24及び2)に示すように、残基1からおよそ残基260まで伸びている。分子のC-末端におけるこの相違は、ショウジョウバエ分子のC-末端がその活性に必要であることから予想外のことである、Preat等, Nature 347: 87-9 (1990)。ATP結合部位はおよそアミノ酸位置33であり、キナーゼ活性に必要である。
ショウジョウバエにおける以前の研究は、Hhシグナルの発生にdfusedが必要であることを示したが、fusedがこのシグナル伝達を十分に活性化するかという問題は扱っていない。実施例に示すように、本出願人はここに、Hhカスケードのルシフェラーゼメディエータの前で、NHF3βプロモーターに存在するGliDNA結合成分を用い、それはfused単独でこの系のGli媒介転写を活性化できることを明らかに示した。さらに、この活性化には無傷のキナーゼドメイン及び無傷のC-末端非触媒ドメインの両方が必要であることがわかり、このことは、fusedがキナーゼとして機能すること及びC-末端が基質認識又はキナーゼ活性の調節において役割を果たすことという考えを支持している。
【0045】
本出願人は、本出願において、hfusedがキナーゼであり、MBPなどの人工的基質をリン酸化できることを示した。しかしながら、hfusedの生理的基質の同定は決定されずに残っている。1つの明確な候補はGli-1自身であり、hfusedによるGli-1のリン酸化がインビトロで検出できる。
ヒトfusedが脊椎動物におけるHhシグナル伝達に必須であるか否かを決定するために、ATP結合部位(およそアミノ酸残基33)に保持されたリシンを変えることにより変異体を作成した。典型的には、このような変異体は、基質及び/又は調節因子への接近を阻止することにより対応する野生型キナーゼの阻害剤として作用する、He等, Nature 374, 617-22 (1995)。2-細胞段階アフリカツメガエル胚において過剰発現された場合、最も顕著なフェノタイプは、注入した胚の約30%における融合眼の存在である。幾つかの系の証拠は、このフェノタイプがHhシグナル伝達の阻害によると考えられることを示している。第1に、SHhノックアウトは、最近SHh遺伝子の変異が原因とされた単眼症フェノタイプを表現する、Chiang等, Nature 383: 407-13 (1996)。第2に、SHh発現の低下した又はPKAの構成的活性形態を注入したゼブラフィッシュ胚(シクロップ(cyclop))では、Hh経路のネガティブレギュレータはシクロップである。第3に、前索板から発したSHhが、連続的眼分野の中心において眼の発達に必要な鍵となる転写因子のPax-6の発現を阻害することを示した。、Ekker等, Curr. Biol. 5: 944-55 (1995); Li等, Development 124: 603-15 (1997); Macdonald等, Development 121: 3267-78 (1995)。最後に、fused-DN注入したPax-6胚の染色は発現の単一分野を明らかにし、前索板から発するSHhの欠如が眼分野の中心におけるPax-6発現をダウンレギュレートすることを示唆している。
【0046】
Hhシグナル伝達経路におけるfusedの位置を確認するために、hfused-DNを注入したアフリカツメガエル胚の底板におけるSHhの発現がGli-1の同時注入によって低下しうる。このことは、SHhシグナル伝達経路においてfusedがGliと関連して作用することを示唆している。
fusedの組織分布は、それがSHh応答細胞において発現されることを示す。特に、その発現パターンは、それ自身がSHhシグナル伝達経路の標的遺伝子であるHhレセプターの結合成分であるPtchと良く重複する。これらのデータは、fusedが異なる組織に対してSHhが有する広範な効果の媒介に含まれることを示唆している。機能的には、これはカエル胚において再び観察され、そこではfused-DNが眼の発達及び底板におけるSHh発現を阻害した。
また、hfused-DNは、インディアンHhによって調節されるカエル腸などの組織の正常な発達に影響することも明らかとなった。これは、fusedが各々IHh及びDHh作用部位である腸及び精巣で発現されるという事実と組み合わせて、fusedが、Hhタンパク質ファミリーの全メンバーについてのシグナル伝達の汎用メディエータであることを示唆している。
【0047】
非常に高いレベルのfusedmRNAが胚細胞に見出され、その発達はDHhによって調節されることがわかった。DHhについてのホモ接合性変異マウスは胚細胞の発達が無く、生育可能だが繁殖不能である(Bitgood等, Curr. Biol. 6: 298-304 (1996))。しかしながら、ヘッジホッグレセプターのPatchedは、間質ライディヒ細胞で発現され、fusedが発現される胚細胞では発現されない、Bitgood等, 上掲。この不一致は、さらなるヘッジホッグレセプターの存在を示唆している。
本出願人は、実施例において、野生型hfusedがリポーターアッセイにおけるGliを活性化できることを示す。さらに、fused-DNを注入したカエル胚の底板におけるSHhの発現は、Gli-1の同時注入によって救済される。これらを考え合わせると、これらの観察は、このシグナル伝達経路においてfusedがSmoの下流かつGliの上流にあるという主張に合致し、今日までのショウジョウバエにおける遺伝子証拠と一致する。
【0048】
(2)脊椎動物fusedの一般的用途
脊椎動物fusedをコードする核酸配列(又はそれらの補体)は、ハイブリッド形成プローブとしての使用を含む分子生物学の分野において、染色体及び遺伝子マッピングにおいて、及びアンチセンスRNA及びDNAの生成において種々の用途を有している。また、脊椎動物fused核酸は、ここに記載される組み換え技術による脊椎動物fusedポリペプチドの調製にも有用であろう。
全長天然配列脊椎動物fused遺伝子、又はその一部は、全長遺伝子の単離又は図1(配列番号:1)に開示された脊椎動物fused配列に対して所望の配列同一性を持つ更に他の遺伝子(例えば、脊椎動物fusedの天然発生変異体又は他の種からの脊椎動物fusedをコードするもの)の単離のためのcDNAライブラリ用のハイブリッド形成プローブとして使用できる。場合によっては、プローブの長さは約20〜約50塩基である。ハイブリッド形成プローブは、図1(配列番号:1)の核酸配列から、又は天然配列脊椎動物fusedのプロモーター、エンハンサー成分及びイントロンを含むゲノム配列から誘導され得る。例えば、スクリーニング法は、脊椎動物fused遺伝子のコード化領域を周知のDNA配列を用いて単離して約40塩基の選択されたプローブを合成することを含む。ハイブリッド形成プローブは、32P又は35S等の放射性ヌクレオチド、又はアビジン/ビオチン結合系を介してプローブに結合したアルカリホスファターゼ等の酵素標識を含む種々の標識で標識されうる。本発明の脊椎動物fused遺伝子に相補的な配列を有する標識されたプローブは、ヒトcDNA、ゲノムDNA又はmRNAのライブラリーをスクリーニングし、それらのライブラリーの何れのメンバーがプローブにハイブッド形成するかを決定するのに使用できる。ハイブリッド形成技術は、以下の実施例において更に詳細に記載する。
また、プローブは、PCR技術に用いて、密接に関連した脊椎動物fused配列の同定のための配列のプールを作成することができる。
【0049】
また、脊椎動物fusedをコードする核酸配列は、その脊椎動物fusedをコードする遺伝子のマッピングのため、及び遺伝子疾患を持つ個体の遺伝子分析のためのハイブリッド形成プローブの作成にも用いることができる。ここに提供される核酸配列は、インサイツハイブリッド形成、既知の染色体マーカーに対する結合分析、及びライブラリーでのハイブリッド形成スクリーニング等の周知の技術を用いて、染色体及び染色体の特定領域にマッピングすることができる。
脊椎動物fusedポリペプチドは、究極的にヘッジホッグシグナル伝達の変調をもたらすfusedとの複合体形成に含まれる他のタンパク質又は分子を同定するアッセイに用いることができる。あるいは、これらの分子は、その基質のfusedキナーゼリン酸化を変調させることもできる。このような方法によって、結合性相互作用の阻害剤を同定することができる。このような結合性相互作用に含まれるタンパク質も、ペプチド又は小分子阻害剤又は結合性相互作用のアゴニストのスクリーニングに用いることができる。また、脊椎動物fusedは、関連する複合体形成タンパク質の単離に使用することもできる。スクリーニングアッセイは、天然脊椎動物fusedの生物学的活性に似たリード化合物の発見のために、又は脊椎動物fusedに対して基質として作用するものの発見のために設計される。このようなスクリーニングアッセイは、化学的ライブラリーの高スループットスクリーニングにも用いられ、小分子候補薬剤の同定に特に適したものとする。考慮される小分子は、合成有機又は無機化合物を含む。アッセイは、この分野で良く知られ特徴付けられているタンパク質−タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、免疫検定及び細胞ベースのアッセイを含む種々の型式で実施される。
【0050】
脊椎動物fused又はその修飾形態をコードする核酸は、トランスジェニック動物又は「ノックアウト」動物を作成するのに用いることができ、言い換えると、治療的に有用な薬剤の開発及びスクリーニングに有用である。トランスジェニック動物(マウス又はラット等)は、出生前、例えば胚段階で、その動物又はその動物の祖先に導入された導入遺伝子を含む細胞を有する動物である。導入遺伝子とは、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノムに組み込まれたDNAである。一実施形態では、脊椎動物fusedをコードするcDNAを、確立された技術により脊椎動物fusedをコードするゲノムDNAをクローン化するために使用することができ、ゲノム配列を、脊椎動物fusedをコードするDNAを発現する細胞を有するトランスジェニック動物を産生するために使用することができる。特にマウス又はラット等のトランスジェニック動物を産生する方法は当該分野において常套的になっており、例えば米国特許第4,736,866号や第4,870,009号に記述されている。典型的には、特定の細胞を組織特異的エンハンサーでの脊椎動物fused導入遺伝子の導入の標的にする。胚段階で動物の生殖系列に導入された脊椎動物fusedをコードする導入遺伝子のコピーを含むトランスジェニック動物は、脊椎動物fusedをコードするDNAの増大した発現の影響を調べるために使用できる。このような動物は、例えばその過剰発現を伴う病理的状態に対して保護をもたらすと思われる試薬のテスター動物として使用できる。例えば、基底細胞癌では、ケラチン5又は14を用いて皮膚の基底細胞においてfusedが過剰発現される可能性がある。発明のこの側面においては、動物を試薬で処理し、導入遺伝子を有する未処理の動物に比べ病状の発病率が低ければ、疾患に対する治療的処置の可能性が示される。
【0051】
脊椎動物fusedの非ヒト相同体は、動物の胚性細胞に導入された脊椎動物fusedをコードする変更ゲノムDNAと、脊椎動物fusedをコードする内在性遺伝子との間の相同的組換えによって、脊椎動物fusedをコードする欠陥又は変更遺伝子を有する脊椎動物fused「ノックアウト」動物を作成するために使用できる。例えば、脊椎動物fusedをコードするcDNAは、確立された技術に従い、脊椎動物fusedをコードするゲノムDNAのクローニングに使用できる。脊椎動物fusedをコードするゲノムDNAの一部を欠失したり、組み込みを監視するために使用する選択可能なマーカーをコードする遺伝子等の他の遺伝子で置換することができる。典型的には、ベクターは無変化のフランキングDNA(5'と3'末端の両方)を数キロベース含む[例えば、相同的組換えベクターについてはThomas and Capecchi, Cell, 51:503 (1987)を参照のこと]。ベクターは胚性幹細胞に(例えば電気穿孔法等によって)導入し、導入されたDNAが内在性DNAと相同的に組換えられた細胞を選択する[例えば、Li等, Cell, 69:915 (1992)参照]。選択された細胞は次に動物(例えばマウス又はラット)の胚盤胞内に注入され、集合キメラを形成する[例えば、Bradley, Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E. J. Robertson, ed. (IRL, Oxford, 1987), pp. 113-152参照]。その後、キメラ性胚を適切な偽妊娠の雌性乳母に移植し、「ノックアウト」動物を作ると言われる。胚細胞に相同的に組換えられたDNAを有する子孫は標準的な技術により同定され、それらを利用して動物の全細胞が相同的に組換えられたDNAを含む動物を繁殖させることができる。ノックアウト動物は、脊椎動物fusedポリペプチドが不在であることによるある種の病理的状態及び病理的状態の進行に対して防御する能力によって特徴付けられる。
【0052】
fusedは、Hhファミリー(SHh、IHh、DHh)の全メンバーに対する汎用メディエータとして関連しているので、一般的なHhシグナル伝達に関係する疾患状態及び疾病もfused及びそのアンタゴニスト及びアゴニストで治療可能であろう。例えば、SHh活性化(例えば、fusedアゴニスト)は、最近神経系の種々の変性疾患、例えば、パーキンソン病、記憶障害、アルツハイマー病、ルー・ゲーリグ病、ハンティングトン病、精神分裂病、発作及び薬物嗜癖の治療薬として推奨されている。最近の研究は、Dhh変異性の雄が、成熟精子への分化を完全にする精母細胞の欠失による不妊であることを示唆している、Bitgood等, Curr. Biol. 6: 298-304 (1996); Bitgood等, Dev. Biol. 172: 126-138 (1995)。さらに、fusedアゴニストは、腸疾患、骨疾患、皮膚疾患、精巣の疾患、潰瘍、肺疾患、膵臓の疾患、糖尿病、骨粗鬆症の治療にも使用できる。
タンパク質キナーゼドメインの存在は、fusedが、Hhシグナル伝達においてタンパク質キナーゼファミリーのメンバーと同様に作用することを示唆している。タンパク質キナーゼは、分化して成長している細胞における調節回路の必須成分である;Preat等, Nature 347: 87-89 (1990)。これらの酵素の多くは細胞外シグナルの伝達に含まれ、一次シグナルの効果を増幅し汎発するリン酸化事象のカスケードを介して作用する。前に述べたように、ショウジョウバエfusedは他の細胞内セリン/トレオニンキナーゼに対してかなりの相同性を有する。多くのセリン/トレオニンキナーゼは、酵母菌及び哺乳動物の細胞周期制御に関連する、hUNTER, cELL 5: 823-829 (1987); Dunphy & Newport, Cell 55: 925-928 (1988); Lee & Nurse, Trend. Genet. 4: 287-290 (1988)。
【0053】
また、Hhシグナル伝達の抑制又は阻害も治療方法の対象である。不活性fusedがHhシグナル伝達を阻害することが示されたので、fusedアンタゴニストもHhシグナル伝達に対してアンタゴニスト的であると予測される。Hhシグナル伝達の抑制は、Hhシグナル伝達を特徴付けられる疾患状態又は疾病において有用である。例えば、SHhは基底細胞癌において活性であり、DHhは精母細胞において活性である。Hhシグナル伝達の阻害剤又はアンタゴニストは、各々基底細胞の治療又は雄の避妊において有効な治療薬である。
Hhシグナル伝達の刺激も治療方法の対象である。Hhシグナル伝達の活性化は、不活性又は不十分なHhシグナル伝達に特徴付けられる疾患状態又は疾病において有用である。例えば、神経系の変性疾患、例えば、パーキンソン病、記憶障害、アルツハイマー病、ルー・ゲーリグ病、ハンティングトン病、精神分裂病、発作及び薬物嗜癖である。さらに、fusedアゴニストは、腸疾患、骨疾患、皮膚疾患、精巣の疾患(不妊症を含む)、潰瘍、肺疾患、膵臓の疾患、糖尿病、骨粗鬆症の治療に使用できる。
【0054】
F.抗脊椎動物fused抗体
本発明は、さらに抗-脊椎動物fused抗体を提供するものである。抗体の例としては、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性及びヘテロ抱合体抗体が含まれる。
1.ポリクローナル抗体
本発明の抗-脊椎動物fused抗体はポリクローナル抗体を含む。ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に知られている。哺乳動物においてポリクローナル抗体は、例えば免疫化剤、及び所望するのであればアジュバントを、一又は複数回注射することで発生させることができる。典型的には、免疫化剤及び/又はアジュバントを複数回皮下又は腹腔内注射により、哺乳動物に注射する。免疫化剤は、脊椎動物fusedポリペプチド又はその融合タンパク質を含みうる。免疫化剤を免疫化された哺乳動物において免疫原性が知られているタンパク質に抱合させるのが有用である。このような免疫原タンパク質の例は、これらに限られないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン及び大豆トリプシンインヒビターが含まれる。使用され得るアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコラート)が含まれる。免疫化プロトコールは、過度の実験なく当業者により選択されるであろう。
【0055】
2.モノクローナル抗体
あるいは、抗脊椎動物fused抗体はモノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein, Nature, 256:495 (1975)に記載されているようなハイブリドーマ法を使用することで調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物を典型的には免疫化剤により免疫化することで、免疫化剤に特異的に結合する抗体を生成するかあるいは生成可能なリンパ球を誘発する。また、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。
免疫化剤は、典型的には脊椎動物fusedポリペプチド又はその融合タンパク質を含む。一般にヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、あるいは非ヒト哺乳動物源が望まれている場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を不死化株化細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する[Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103]。不死化株化細胞は、通常は、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯動物、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウスの骨髄腫株化細胞が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の生存又は成長を阻害する一又は複数の物質を含有する適切な培地で培養される。例えば、親細胞が、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培地は、典型的には、ヒポキサチン、アミノプチリン及びチミジンを含み(「HAT培地」)、この物質がHGPRT欠乏性細胞の増殖を阻止する。
【0056】
好ましい不死化株化細胞は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体発現を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性のものである。より好ましい不死化株化細胞はマウス骨髄腫株であり、これは例えばカリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerやメリーランド州ロックビルのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより入手可能である。ヒトモノクローナル抗体を生成するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫株化細胞も開示されている[Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984)、Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63]。
次いでハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、脊椎動物fusedに対するモノクローナル抗体の存在について検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫測定法(ELISA)等のインビトロ結合検定法によって測定する。このような技術及びアッセイは、当該分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson及びPollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)によるスキャッチャード分析法によって測定することができる。
【0057】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを制限希釈工程によりサブクローニングし、標準的な方法で成長させることができる[Goding, 上掲]。この目的のための適当な培地には、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地及びRPMI-1640倍地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物においてインビボで腹水として成長させることもできる。
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA−セファロース法、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー法、ゲル電気泳動法、透析法又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製方法によって培養培地又は腹水液から単離又は精製される。
【0058】
また、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4,816,567号に記載された方法により作成することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、常套的な方法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたら、DNAは発現ベクター内に配することができ、これが宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは免疫グロブリンタンパク質を生成などしない骨髄腫細胞内に形質移入され、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成をすることができる。また、DNAは、例えば相同マウス配列に換えてヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより[US. Patent No.4,816,567;Morrison等, 上掲]、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部又は全部を共有結合することにより修飾することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインの代わりに置換するか、本発明の抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに置換し、キメラ性二価抗体を産生することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインに置換でき、あるいは本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換でき、キメラ性二価抗体を生成する。
抗体は一価抗体であってもよい。一価抗体の調製方法は当該分野においてよく知られてる。例えば、一つの方法は免疫グロブリン軽鎖と修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は一般的に、重鎖の架橋を防止するようにFc領域の任意のポイントで切断される。あるいは、関連するシステイン残基を他のアミノ酸残基で置換するか欠失させて架橋を防止する。
一価抗体の調製にはインビトロ法がまた適している。抗体の消化による、その断片、特にFab断片の生成は、当該分野において知られている慣用的技術を使用して達成できる。
【0059】
3.ヒト化抗体
本発明の抗-脊椎動物fused抗体は、さらにヒト化抗体又はヒト抗体を含む。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖あるいはその断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986); Riechmann等, Nature, 332:323-329 (1988); 及びPresta, Curr. Op Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]。
【0060】
非ヒト抗体をヒト化する方法はこの分野でよく知られている。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は基本的に齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することによりウィンター(winter)及び共同研究者[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536 (1988)]の方法に従って、齧歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することにより実施される。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
また、ヒト抗体は、ファージ表示ライブラリ[Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381 (1992);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581 (1991)]を含むこの分野で知られた種々の方法を用いて作成することもできる。また、Cole等及びBoerner等の技術も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用することができる[Cole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss. p.77(1985)及びBoerner等, J. Immunol., 147(1):86-95(1991) ]。
【0061】
4.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒトもしくはヒト化抗体である。本発明の場合において、結合特異性の一方は脊椎動物fusedに対してであり、他方は任意の他の抗原、好ましくは細胞表面タンパク質又はレセプター又はレセプターサブユニットに対してである。
二重特異性抗体を作成する方法は当該技術分野において周知である。伝統的には、二重特異性抗体の組換え生産は、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づく[Milstein及びCuello, Nature, 305:537-539 (1983)]。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖を無作為に取り揃えるため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その内一種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常達成される。同様の手順が1993年5月13日公開のWO 93/08829、及びTraunecker等, EMBO J.,10:3655-3656 (1991)に開示されている。
所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合できる。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2及びCH3領域の一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。少なくとも一つの融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が存在することが望ましい。免疫グロブリン重鎖融合をコードするDNA、及び望むのであれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。二重特異性抗体を作成するための更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210(1986)を参照されたい。
【0062】
5.ヘテロ抱合体抗体
ヘテロ抱合抗体もまた本発明の範囲に入る。ヘテロ抱合抗体は、2つの共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため[米国特許第4,676,980号]及びHIV感染の治療のために[WO 91/00360; WO 92/200373; EP 03089]提案されている。この抗体は、架橋剤に関連したものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することにより、免疫毒素を作成することができる。この目的に対して好適な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチリミデート、及び例えば米国特許第4,6767,980号に開示されているものが含まれる。
【0063】
G.抗-脊椎動物fused抗体の用途
本発明の抗-脊椎動物fused抗体は様々な有用性を有している。例えば、抗-脊椎動物fused抗体は、脊椎動物fusedの診断アッセイ、例えばその特定細胞、組織、又は血清での発現の検出に用いられる。競合的結合アッセイ、直接又は間接サンドウィッチアッセイ及び不均一又は均一相で行われる免疫沈降アッセイ[Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, CRC Press, Inc. (1987) pp. 147-158]等のこの分野で知られた種々の診断アッセイ技術が使用される。診断アッセイで用いられる抗体は、検出可能な部位で標識される。検出可能な部位は、直接又は間接に検出可能なシグナルを発生しなければならない。例えば、検出可能な部位は、3H、14C、32P、35S又は125I等の放射性同位体、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン又はルシフェリン等の蛍光又は化学発光化合物、あるいはアルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ又はセイヨウワサビペルオキシダーゼ等の酵素であってよい。Hunter等 Nature, 144:945 (1962);David等, Biochemistry, 13: 1014 (1974);Pain等, J. Immunol. Meth., 40:219 (1981) ;及びNygren, J. Histochem. and Cytochem., 30:407 (1982)に記載された方法を含む、抗体を検出可能な部位に抱合するためにこの分野で知られた任意の方法が用いられる。
また、抗-脊椎動物fused抗体は、組換え細胞培養又は天然供給源からの脊椎動物fusedのアフィニティー精製にも有用である。この方法においては、脊椎動物fusedに対する抗体を、当該分野でよく知られている方法を使用して、セファデックス樹脂や濾過紙のような適当な支持体に固定化する。次に、固定化された抗体を、精製する脊椎動物fusedを含む試料と接触させた後、固定された抗体に結合した脊椎動物fused以外の試料中の物質を実質的に全て除去する適当な溶媒で支持体を洗浄する。最後に、脊椎動物fusedを抗体から離脱させる他の適当な溶媒で支持体を洗浄する。
【0064】
H.融合アンタゴニスト
本発明の融合アンタゴニスト及びアゴニスト化合物を生成させるのに幾つかの方法を好適に用いることができる。アンタゴニスト分子が細胞内部に標的化でき、野生型fusedを正常な作用から阻害又は防止する任意の方法が好ましい。例えば、実施例で同定されるドミナントネガティブ変異体等の変異体fusedを含む競合的阻害剤は、fusedのHhシグナル伝達に必要な他のタンパク質との正しい結合を阻止する。膜貫通輸送に適した電荷、サイズ及び疎水性等の、そのようなアンタゴニスト又はアゴニスト分子のさらなる特性は、当業者によって容易に決定される。
fusedの模倣物又は他の相同体が同定され評価される場合、細胞を試験化合物に暴露し、ヒトfusedのみに暴露したポジティブ対照、化合物にも天然リガンドにも暴露していないネガティブ対照と比較する。fusedシグナル変調のアンタゴニスト又はアゴニストを同定死評価する場合は、細胞を天然リガンドの存在下で本発明の化合物に暴露し、試験化合物に暴露していない対照と比較する。
【0065】
本発明のアンタゴニスト/アゴニスト化合物のホスファターゼ阻害/促進活性の一次スクリーニングとして検出アッセイが用いられる。このアッセイは、試験範囲の濃度、例えば100mMから1pMの範囲で試験し、リン酸化又はシグナル伝達が対照に比較して50%減少又は増加する量の濃度を計算することにより、化合物の相対的能力を評価するのみ使用することもできる。
アッセイは、fused基質のリン酸化に影響する化合物の同定のために実施してもよい。特に、アッセイはfusedのリン酸化活性を増大させる化合物の同定のために実施でき、アッセイは、fused基質のリン酸化を低下させる化合物を同定するために実施できる。アッセイは、タンパク質−タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、免疫アッセイ、細胞ベースのアッセイ等を含むが種々の様式で実施できる。このようなアッセイの様式は、この分野で公知である。
本発明のスクリーニングアッセイは、化学的ライブラリの高スループットスクリーニングに適用でき、特に、小分子薬剤候補の同定に適している。
【0066】
(1)アンタゴニスト及びアゴニスト分子
fusedシグナル伝達のアンタゴニスト及び/又はアゴニストをスクリーニングするために、アッセイ混合物を、候補となる製薬剤の存在下であるが、fusedが参照活性でヘッジホッグシグナル伝達を誘発する条件下でインキュベートした。混合物成分は、必要なヘッジホッグ活性を与えるために任意の順序で添加できる。インキュベーションは、最適な結合を促進する任意の温度、典型的には4℃から40℃、より通常は15℃から40℃で実施する。インキュベーション時間も同様に最適結合のために選択されるが、迅速で高スループットのスクリーニングを促進するために最小化され、典型的には約0.1から10時間、好ましくは5時間未満、より好ましくは2時間未満である。インキュベーションの後、候補製薬剤のfusedシグナル伝達に対する効果を任意の便利な方法で決定する。細胞無しの結合型アッセイでは、結合及び非結合成分を分離するための分離工程がしばしば用いられる。分離は、例えば、沈殿(例えばTCA沈殿、免疫沈降など)、固定化(例えば、固体基体上)によってなされ、次いで洗浄される。結合したタンパク質は、それに結合した検出可能な標識により、例えば放射活性放出、光学又は電子密度を測定することにより、あるいは、例えば抗体抱合を用いて間接的な検出により検出される。
【0067】
例えば、fusedアンタゴニスト及び/又はアゴニストに適したスクリーニング方法は、実施例に記載するfused活性化Gliリポーターアッセイに存在する薬剤の適用を含みうる。このようなスクリーニングアッセイは、fused発現組織における候補アンタゴニスト及び/又はアゴニストの存在下又は不存在下でのインサイツハイブリッド形成を比較し、fused変調細胞成長の不存在を確認することができる。典型的には、これらの方法は、固定化fusedをそれに結合すると予測される分子に暴露し、分子の固定化fusedへの結合又はリン酸化を測定すること及び/又は分子がfusedを活性化(又は活性化を阻止)するか否かを評価することを含む。このようなfused結合リガンドを同定するために、fusedを細胞表面で発現させ、合成候補化合物又は(例えば、血清又は細胞などの内因性供給源からの)天然発生化合物のライブラリのスクリーニングに用いることができる。
【0068】
fusedのタンパク質−タンパク質相互作用に影響する好適な分子及びその結合タンパク質は、後者の断片又は相互作用及び正しい複合体形成を阻害する小分子、例えばペプチド模倣物を含む。そのような小分子は、通常10K分子量未満であり、細胞に等価しやすいので治療薬として好適であり、種々の細胞機構による分解を受けにくく、タンパク質のように免疫を生じやすくない。小分子は、これらに限られないが、合成有機又は無機化合物を含む。多くの製薬会社が、そのような分子のライブラリを有しており、それは本発明のアッセイを用いて便利にスクリーニングできる。非限定的な例は、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、グリコペプチド、糖脂質、多糖類、オリゴ糖、核酸、生物有機分子、ペプチド模倣物、薬理学的試薬、及びそれらの代謝物、転写及び翻訳制御配列等を含む。
fusedに結合する分子の同定に好ましい技術は、アッセイ用プレートのウェルなどの固相に結合したキメラ基質(例えば、エピトープタグfused又はfusedイムノアドヘシン)を利用する。場合によっては標識された(例えば放射性標識された)候補分子の、固定化レセプターへの結合が測定できる。あるいは、Gliの活性化についての競合が測定できる。アンタゴニスト及び/又はアゴニストのスクリーニングにおいて、fusedはfused基質に暴露され、次いで推定アンタゴニスト及び/又はアゴニスト、又はfused結合タンパク質及びアンタゴニスト及び/又はアゴニストが同時に添加され、アンタゴニスト及び/又はアゴニストのfused活性化を阻止する能力が評価される。
【0069】
(2)検出アッセイ
fusedポリペプチドは、fusedヘッジホッグシグナル伝達を変調させる治療的活性薬のためのリード化合物を同定するアッセイにおいて有用である。特に、fusedシグナル伝達複合体を防止又は形成する、あるいはfused変調ヘッジホッグシグナル伝達を防止又は減弱する(例えば、fused自身又は基質に結合する)リード化合物は、便利に同定できる。
この分野で知られた種々の方法が、本発明のfusedタンパク質の活性阻害の同定、評価又は検定に使用できる。fusedは他のキナーゼと同様の方式で作用すると考えられるので、キナーゼ/ホスファターゼモジュレータの同定で用いる公知の技術を本発明に用いてもよい。一般的に、そのようなアッセイは、培地中の標的細胞を化合物に暴露し、(a)細胞溶解物を生化学的に分析してリン酸化のレベル及び/又は同一性を評価する;又は(b)試験基質に暴露していない対照細胞に比較して処理した細胞におけるフェノタイプ又は機能変化を評点化することを含む。このようなスクリーニングアッセイは、米国特許第5,602,171号、米国特許第5,710,173号、WO 96/35124及びWO 96/40276に記載されている。
【0070】
(a)生化学的検出技術
生化学的分析技術は種々の技術によって評価できる。本発明で使用できる1つの典型的なアッセイ混合物は、fused及び通常はfusedに付随するタンパク質(例えばGli)を、通常は単離された、部分的に純粋又は純粋な形態で含有する。これらの成分の一方又は両方は、例えばアッセイ条件下でタンパク質−タンパク質結合を提供又は促進し、安定性を向上させる他のペプチド又はポリペプチドに融合してよい。さらに、成分の一方は、通常検出可能な標識を含むかそれに結合している。標識は、放射活性、蛍光、光学又は電子密度等の測定による直接検出、あるいはエピトープタグ、酵素等の間接的検出を提供する。アッセイ混合物は候補製薬剤をさらに含み、場合によっては、結合を促進し、安定性を向上させ、非特異的又はバックグラウンド相互作用を減少させ、又はアッセイの効率又は感度を向上させる種々の他の成分、例えば塩、バッファー、担体タンパク質、例えばアルブミン、洗浄剤、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗微生物剤等を含む。
【0071】
以下の検出方法は、シグナル伝達基質分子及びfusedを含む細胞溶解物が本発明の化合物と混合された細胞無しの系で使用できる。基質は、アデノシン三リン酸(ATP)の添加によるキナーゼ反応の開始によりリン酸化される。化合物の活性を評価するために、反応混合物をSDS-PAGEによって分析してもよく、あるいは、それを固体支持体に結合した基質特異的固着抗体に添加し、分離又は捕捉した基質に上記の検出方法を実施してpSer/Thrの存在又は不存在を評価してもよい。結果は、化合物を添加しない反応混合物で得られた結果と比較する。細胞無しの系は、天然リガンド又はその同定の知識を必要としない。細胞無しの系は、化合物を添加しない混合物を必要としない。細胞無しの系は、天然リガンド又はその同定の知識を必要としない。例えば、Posner等(米国特許第5,155,031号)は、パーバナデート(pervanadate)のPTP活性を阻害する能力を示すのに、基質としてのインシュリンレセプター及び標的細胞としてのラット脂肪細胞の使用を記載している。他の例、Burke等, Biochem. Biophys. Res. Comm. 204: 129-134 (1994)は、ホスホチロシル模倣物の阻害活性の評価における自己リン酸化インシュリンレセプター及び組換えPTP1Bの使用を記載している。
【0072】
(i)全細胞検出
共通の技術は、細胞を脊椎動物fused及び放射性標識リン酸塩とともにインキュベートし、溶解物からSDS-ポリアクリルアミドゲル(SDS-PAGE)技術を用いて、一次又は二次元のいすれかで細胞性タンパク質成分を分離し、X-線フィルムに暴露してリン酸化タンパク質の存在を検出することを含む。検出は、放射性標識を用いることなくなすこともできる。そのような技術において、タンパク質成分(例えば、分離されたSDS-PAGE)はニトロセルロース膜に移され、そこでリン酸化セリン/トレオニンの存在が抗ホスホセリン/トレオニン抗体(抗-pS/T)を用いて検出される。
あるいは、抗-pS/Tは、セイヨウワサビペルオキシダーゼ等の酵素に抱合させ、次いで酵素用の比色基質を添加することにより検出される。さらなる代替法は、抗-pS/Tを認識する二次抗体と反応させることによる抗-pS/Tの検出を含み、この二次抗体は、既に述べたように放射活性又は酵素で標識されている。これらの例及び類似の技術は、Hansen等, Electrophoresis 14: 112-126 (1993); Campbell等, J. Biol. Chem. 268: 7427-7434 (1993); Donato等, Cell Growth Diff. 3: 258-268 (1992); Katagiri等, J. Immunol. 150: 585-593 (1993)に記載されている。さらに、抗-pS/Tは、それを放射活性物質で標識し、次いで標識ニトロセルロースをスキャンニングして放射活性又は検出するか、X-線フィルムに暴露することにより検出できる。
【0073】
(ii)キナーゼアッセイ
fusedアンタゴニスト/アゴニストについての本発明のスクリーニング方法がエキソビボアッセイとして行われる場合、標的キナーゼ(例えばfused)は実質的に精製されたポリペプチドでありうる。キナーゼ基質(例えば、MBP、Gli)は実質的に精製された基質であり、アッセイにおいて、キナーゼに触媒される実質的に精製されたリン酸塩供給源との反応でリン酸化される。リン酸化の程度は、反応でリン酸化された基質の量を測定することにより決定される。種々の可能な基質を使用してよく、キナーゼ自身も含まれるが、その場合はアッセイで測定されるリン酸化反応は自己リン酸化である。外因性基質を用いることもでき、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)等の標準的なタンパク質基質;酵母菌タンパク質基質;合成タンパク質基質、及びポリマー基質が含まれる。これらの中で、MBP及び他の標準的タンパク質基質が好ましいとされる(実施例10参照)。他の基質も同定されるが、それらは、キナーゼに対する親和性、反応速度の最小の摂動、単一又は相同反応部位の保持、取扱及び反応後回収の容易さ、強いシグナル生成能力、及び試験化合物に対する耐性及び不活性によって優れている。
本発明のエキソビボアッセイでリン酸化された基質量の測定は、イムノアッセイ、ラジオアッセイ又は他の周知の方法で行うことができる。イムノアッセイ測定において、反応中に形成されるリン酸化部位に特異的な抗体(ヤギ又はマウス抗-ホスホセリン/トレオニン抗体)を使用してよい。周知のELISA技術を用いて、ホスホセリン/トレオニン抗体複合体は、測定可能なシグナル(例えば、蛍光又は放射活性標識)を発生することのできる標識に結合した更なる抗体により、それ自身検出される。さらに、ミクロタイタープレートにおけるELISA型アッセイはを精製された基質の試験に用いてもよい。Peraldi等, J. Biochem. 285: 71-78 (1992); Schaag等, Anal. Biochem. 211: 233-239 (1993); Cleavland, Anal. Biochem. 190: 259-253 (1990); Farley, Anal. Biochem. 203: 151-157 (1992)及びLozaro, Anal. Biochem. 192: 257-261 (1991)。
【0074】
例えば、検出計画は、キナーゼ反応中の基質消費を測定することができる。最初に、リン酸塩供給源を32P又は33P等の同位体で放射性標識し、反応中に基質に取り込まれた放射性標識の量を決定することによりリン酸化された基質の量を測定してもよい。検出は、(a)フィルター又はミクロタイターウェル表面に吸着させた後、ベータカウンターを用いる市販の閃光体含有プレート及びビーズ、又は(b)シンチレーション近接アッセイビーズ又は閃光体プレートに結合させた後の光度測定手段により達成される。Weernink及びKijken, J. Biochem. Biophs. Methods 31: 49, 1996; Brauwalder等, Anal. Biochem. 234: 23 (1996); Kentrup等, J. Biol. Chem. 271: 3488 (1996)及びRusken等, Meth. Enzymol. 200: 98 (1991)。
好ましくは、基質は、固体支持体表面に非特異的又は好ましくは特異的に結合させる。このような結合は、シグナル検出に先立ってリン酸化基質を非リン酸化標識リン酸塩供給源(アデノシン三リン酸など)から分離するのを可能にする。一実施態様では、基質は反応の前に、NuncTM高タンパク質結合プレート(Hanke等, J. Biol. Chem. 271: 695 (1996))又はWallac ScintiStripTMプレート(Brauwalder等, Anal. Biochem. 234: 23 (1996))の使用を介して物理的に固定化される。また、基質は、例えばP81ホスホセルロース(塩基性ペプチド用)、PEI/酸性モリブデン塩樹脂又はDEAE上への捕捉、又はWhatmanTM3MMペーパーへのTCA析出により反応後に固定化してもよい、Tiganis等, Arch. Biochem. biophys. 325: 289 (1996); Morawetz等, Mol. Gen. Genet. 250: 17 (1996); Budde等, Int. J. Pharmacognosy 33: 27 (1995)及びCasnellie, meth. Enz. 200: 115 (1991)。さらに他の可能性は、予め支持体に結合させたグルタチオン及びストレプトアビジン(各々GST及びビオチンの場合)等の結合パートナーで抱合することにより、あるいは同様に支持体に結合させたタグに特異的な抗体を介して支持体表面に基質を結合させる事である。
【0075】
上記のものに適したさらなる検出方法を開発してもよい。特に、高スループットスクリーニングに関連した用途では、そのような方法は、良好な選択性及び特異性、延長された直線範囲、低いバックグラウンドシグナル、最小の変動、他の試薬との相容性、及び自動取扱システムとの相容性を示すことが予測される。
本発明の治療のインビボ有効性は、種々の齧歯類モデルにおいて化学的に誘発された腫瘍に対して実験できる。腫瘍細胞系はインビトロ細胞培地で成長させ、実験用齧歯類、例えばマウスに、例えば皮下経路での注射によって導入される。実験動物における腫瘍の化学的誘発の技術は、この分野で良く知られている。
【0076】
(b)生物学的検出技術
本発明のアンタゴニスト/アゴニスト化合物の、それ自身がヘッジホッグシグナル伝達を変調するfusedの活性を変調させる能力は、リガンド結合に伴う形態又は機能変化についての評点化によって測定される。この分野で知られている定性的及び定量的技術は、fusedの制御下で起こる細胞プロセスの観察及び測定のために適用できる。また、本発明の化合物の活性は、ヘッジホッグシグナル伝達の機能不全によって生ずる又はそれに関連する疾患の実験的モデルを用いて動物で評価することもできる。例えば、マウスにおける無効なDHhヘッジホッグシグナル伝達は、生存できるが繁殖できないマウスを導く。また、変異体fused(hfused-DN)の効果も、IHh発現によって調節される腸の発達に影響する。さらに、正しいSHhシグナル伝達は、脊索及び底板、神経管、末端肢構造、脊柱及び肋骨におけるマウス胚成長に重要である。また、不正なSHhシグナル伝達は単眼症に関連している。これらのフェノタイプ特性は、fusedアンタゴニスト及び/又はアゴニストについてのスクリーニングアッセイにおいて評価され定量化される。ヘッジホッグの過剰発現に伴う疾患状態は、基底細胞癌に関連するが、不活性なソニックヘッジホッグシグナル伝達は、異常な神経発達を導く。
これらの細胞培養アッセイ及び動物実験で得られたデータは、ヒトで使用するための用量範囲の処方に用いられる。本発明の化合物の用量は、毒性を殆ど又は全く持たない循環濃度の範囲内にある。用量は、採用する投与形態及び投与経路に応じてこの範囲内で変化する。
【0077】
(2)アンチセンスヌクレオチド
アンタゴニストの他の好ましい部類は遺伝子治療技術の使用を含み、アンチセンスヌクレオチドの投与を含む。適用可能な遺伝子治療技術は、治療的に有効なDNA又はmRNAの一回又は複数回投与を含む。アンチセンスRNA及びDNAは、インビボでの或る種の遺伝子の発現を阻止するための治療薬として使用できる。短いアンチセンスオリゴヌクレオチドを細胞に移入でき、それらは、細胞膜による制限された取り込みによって生ずる低い細胞内濃度にも関わらず阻害剤として作用する、Zamecnik等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 4143-4146 (1986)。オリゴヌクレオチドは、例えば負に荷電したホスホジエステル基を不荷電基で置換することにより、それらの取り込みを促進させるように修飾することができる。
【0078】
生存細胞に核酸を導入するために知られた種々の技術がある。これらの技術は、インビボ、インビトロで培養された細胞に、又はインビボで対照とする宿主の細胞に移行されるかによって変化する。インビトロで哺乳動物細胞に核酸を移行するのに適した技術は、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法などの使用を含む。現在好ましいインビボ遺伝子移行技術は、ウイルス(典型的にはレトロウイルス)ベクターでの形質移入及びウイルスコートタンパク質−リポソーム媒介形質移入を含む、Dzau等, Trends Biotech. 11: 205-210 (1993)。幾つかの状況では、核酸供給源を標的細胞をターゲティングする試薬と共に提供するのが好ましく、例えば、エンドサイトーシスを伴う細胞表面膜タンパク質に特異的な抗体をターゲティング及び/又は取り込みの促進のために用いてもよく、例えば、特定の細胞型向性のカプシドタンパク質又はその断片、サイクリングで内部移行を受けるタンパク質の抗体、及び細胞内局在化をターゲティングし細胞内半減期を向上させるタンパク質である。レセプター媒介エンドサイトーシスの技術は、例えば、Wu等, J. Biol. Chem. 262: 4429-2232 (1987); Wagner等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 3410-3414 (1990)に記載されている。周知の遺伝子作成及び遺伝子治療プロトコールの概説については、Anderson等, Science 256: 808-813 (1992)を参照のこと。
一実施態様では、fusedアンタゴニスト及び/又はアゴニスト分子は細胞の内因性リガンドに結合するのに用いられ、それにより、特に細胞内のfusedのレベルが正常な生理的レベルを越える場合、細胞をfused野生型に非応答性とする。また、内因性fused基質、又は望ましくない細胞反応(腫瘍細胞の増殖など)を活性化する複合体形成剤に結合するのが有利であろう。
本発明のさらなる実施態様では、fused発現は、fusedタンパク質の発現を低下させるのに有効な量のfusedアンチセンスRNA又はDNAとともにfused発現細胞を提供することにより低下させうる。
【0079】
I.診断的用途
ここに記載した本発明の化合物(例えば、ヒト及び脊椎動物fused、脊椎動物fused変異体及び抗-脊椎動物fused抗体)の他の用途は、fused又はヘッジホッグシグナル伝達により疾患が幾分進行したか否かの診断を助けることである。例えば、基底細胞癌細胞は活性なヘッジホッグシグナル伝達に関連する。
ヘッジホッグシグナル伝達によって特定の疾患が導かれるか否かを決定する診断アッセイは以下の工程を用いて実施される:(1)細胞又は組織の培養;(2)fused変調ヘッジホッグシグナル伝達を阻害できる化合物の投与;及び(3)細胞溶解物中のfused基質又は試験細胞におけるヘッジホッグ媒介フェノタイプ効果に対するキナーゼ減弱の程度の測定。工程は、この開示に照らして標準的な技術を用いて実施できる。例えば、細胞又は組織の単離及び培養又はインビボに標準的な技術を使用できる。
【0080】
選択性の程度が変化した化合物類は、fusedの役割を診断するのに有用である。例えば、他の形態のキナーゼに加えてfusedを阻害する化合物は、幾つかのセリン/トレオニンキナーゼが疾患を導くか否かを決定する最初の試験化合物として使用できる。選択的化合物は、次いで、疾患の誘導における他のセリン/トレオニンキナーゼの可能な役割をさらに評価するのに使用できる。試験化合物は、細胞毒性効果の発揮よりも、セリン/トレオニンキナーゼ活性の阻害において有力であるべきである(例えば、IC50/ID50が1より大きい)。IC50及びID50は、MTTアッセイ等の標準的技術、又はLDH放出量の測定により測定できる。化合物のIC50/ID50の程度は、診断アッセイの評価を考慮すべきである。一般的に、比率が大きくなると情報がより相対的になる。適切な対照は、化合物の起こりうる毒性効果を考慮し、例えば、増殖疾患を伴わない細胞(例えば対照細胞)の試験化合物での処理は、診断アッセイの一部として用いることができる。本発明の診断方法は、fusedのヘッジホッグシグナル伝達に対する効果を変調させる試薬についてのスクリーニングを含む。例示的な検出技術は、放射性標識及び免疫沈降を含む(米国特許第5,385,915号)。
【0081】
以下の実施例は例示するためにのみ提供されるものであって、本発明の範囲を決して限定することを意図するものではない。
本明細書で引用した全ての特許及び文献の全体を、出典明示によりここに取り込む。
(実施例)
実施例で言及されている全ての他の市販試薬は、特に示さない限りは製造者の使用説明に従い使用した。ATCC登録番号により以下の実施例及び明細書全体を通して特定されている細胞の供給源はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックビル、メリーランドである。
【0082】
実施例1
ヒトfusedcDNAクローンの単離
発現された配列タグ(EST)データベース(LIFESEQTM、Incyte Pharmaceuticals、Palo Alto, CA)を、ショウジョウバエのセグメントポラリティ遺伝子fused(配列番号:26)(Preat等, Nature 347: 87-9 (1990))のヒト相同体について検索した。ESTIncyte #2525662(図2)(配列番号:3)を潜在的な候補として同定した。ヒトfusedクローンを含むヒトcDNAライブラリを同定するために、pRK5におけるヒトcDNAライブラリを以下のプライマーを用いたPCRによって最初にスクリーニングした:
h-FUSED.f(配列番号:8)5'-CAATACAATGGTGCTGACATCCATCAAAGGCA-3'
h-FUSED.r(配列番号:9)5'-GAAGGGAGGGGTGCCTACTGCCA-3'。
胎児肺ライブラリを選択し、加熱開始した後に添加した10μlの10xPCRバッファ(Perkin Elmer)、1μlのdNTP(20mM)、1μlのライブラリDNA(200ng)、0.5mlのプライマー、86.5μlのH2O及び1μlのAmplitaq(登録商標)(Perkin Elmer)を含む反応においてh-FUSED.fプライマー(配列番号:8)を用いてdug/bung宿主で成長させたプラスミドライブラリから一本鎖DNAを発現させることによりfusedcDNAクローンを富化した。反応は95℃で1分間変性させ、60℃で1分間アニールし、次いで72℃で20分間伸展させた。DNAをフェノール/CHCl3で抽出し、エタノール沈殿させ、次いでエレクトロポレーションによりDH10B宿主細菌に移行させた。各形質転換体からのクローンをプレートしてナイロン膜上に載せ、以下の配列のEST配列から誘導されたオリゴプローブでスクリーニングした:
h-FUSED.p(配列番号:10)5'-CTCCAGCTCTGGAGACATATAGAGTGGTGTGCCTTTGA-3'。
オリゴプローブを、[γ-32P]-ATP及びT4ポリヌクレオチドキナーゼで標識した。フィルターは、42℃において、50%のホルミアミド、5xSSC、10xデンハード、0.05Mのリン酸ナトリウム(pH6.5)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、50μg/mlの超音波処理サケ精子DNA中でハイブリッド形成した。次いでフィルターを2xSSCでリンスし、0.1xSSC、0.1%SDSで洗浄し、次にKodak(登録商標)X線フィルムに暴露した。約5kbの挿入物を含む2つの陽性クローン(DNA28494(配列番号:6)及びDNA28495(配列番号:4)−図4及び5)を単離して配列決定した。クローンDNA28495(配列番号:4)は位置116に潜在的な開始メチオニン、次いで1944bpのオープンリーディングフレームを含む(図4)。しかしながら、このオープンリーディングフレーム(ORF)は、ショウジョウバエfusedの795アミノ酸配列より若干短い648アミノ酸長のタンパク質をコードする。興味深いことに、第2のオープンリーディングフレームは、cDNAの3’領域、ヌクレオチド2295から4349に存在し(図4)、cDNAが不正にスプライシングされ、イントロンが2つのORF間に残り、fusedの選択的にスプライシングされた変異体に対応することを示唆している。クローンDNA28494(配列番号:6)の配列は極めて類似している。クローンDNA28495(配列番号:4)とクローンDNA28494(配列番号:6)との間には1ヌクレオチドの相違があり、それはクローンDNA28495(配列番号:4)の位置1863の第1のORFに位置し(A対G)、コード化配列を位置583においてGlnからArgに変化させる(図4)。この変化は、対立遺伝子変異によると思われる。クローンDNA28494(配列番号:6)の第1のオープンリーディングフレームは、残基115で開始し、647アミノ酸長のオープンリーディングフレームが続く。配列は、上記の位置583における1つの変化及び第1のオープンリーディングフレームにおける少なくとも9残基を除いて一致している。
【0083】
実施例2
fusedクローンの発現
クローンDNA28495(配列番号:4)及びクローンDNA28494(配列番号:6)に対応するcDNAから発現されるタンパク質のサイズを決定するために、HAエピトープタグをタンパク質のN-末端に以下のプライマーを用いたPCRによって挿入した:
Hfus.Cla-Ha.F:(配列番号:11)
5'-CCATCGATGTACCCATACGACGTCCCAGACTACGCTGAAAAGTACCACGTGTTGGAGATG-3'
及びhFus.Xba.R:(配列番号:12)
5'-GCTCTAGACTAAGGGGCAGGTCCTGTGTTCTG-3'。
PCR産物を精製し、ClaI-SmaIで消化し、クローンDNA28495(配列番号:4)及びクローンDNA28494(配列番号:6)を含むpRK5プラスミドにサブクローニングした。各作成物からのDNAを、CaPO4法(Sambrook等, 上掲; Ausuble等, 上掲)を用いて293細胞に終夜形質移入した。形質移入の約24時間から48時間後、細胞を回収し、細胞ペレットを1mlのリシンバッファー(50mMのトリスpH8.0、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1%のNP40、アプロチニン、ロイペプチン、-PMSF、1mMのNaF及び1mMのバナジン酸ナトリウム)に40℃で20分間溶解させた。抽出物を10分間10Kでスピンし、次いで上清を新たな管に移して20μlのプロテインAセファロースがで1時間プレクリアした。プロテインAセファロースをスピンダウンし、1μlの抗-HA抗体(5μg、Boehringer)を各管に添加した。4℃で終夜インキュベートした後、30μlのプロテインGセファロースTMがを添加し、管を4℃で1時間インキュベートした。次いでプロテインGセファロースビーズを1分間スピンダウンし、溶解バッファーで3回洗浄し、20μlのlaemliバッファーにベータ-メルカプトエタノールの存在下で再懸濁した。試料を100℃で5分間変性させ、次いで6%ポリアクリルアミドゲルに負荷した。次いでタンパク質をニトロセルロースに移し、終夜1μg/ml阻止バッファー(PBS、0.5%のTween(登録商標)、5%の脱脂粉乳、3%のヤギ抗体)中で同じ抗-HA抗体を用いたウェスタンブロットにより、次いで抗-マウスHRPにより分析した。検出にECLを用い、膜をX-線フィルムに90秒間暴露した。クローンDNA28494(配列番号:6)に対応する作成物で形質移入した細胞の細胞ペレットにおいて150kDaの特異的バンドを検出し、クローンDNA28495(配列番号:4)については約100kDaの特異的バンドを検出した(図6)。これらのバンドは、偽形質移入の対照物では存在しなかった。150kDaのバンドが存在することは、DNA28494(配列番号:6)の2つのオープンリーディングフレームが共にスプライシングされ、150kDaの大きなタンパク質の合成を指向していることを示唆している。DNA28495(配列番号:4)にこのバンドが無いことは、こnクローンが明らかに正しくスプライシングされ得ないことを示唆している。fused遺伝子の選択的なスプライシングは、幾つかの異なる生成物の生成を導くと思われ、それがfused活性の機構又は調節となりうる。ショウジョウバエfusedタンパク質のC-末端の特定領域は分子の活性に必要であることが知られている、Therond等, Genetics 142: 1181-1198 (1996); Robbins等, Cell 90: 225-234 (1997)。従って、C-末端において切断される短いfused分子は、分子の不活性又はドミナントネガティブ形態に相当するかもしれない。
【0084】
実施例3
ノーザンブロット
より大きなfusedcDNAを単離し、全長150kDaのfused分子をコードする転写物を同定するのに最良の組織を決定するために、Clontechからのヒトの複数組織のノーザンブロットI、II及び胎児ブロットを、ランダムプライミングによって標識したクローンDNA28494(配列番号:6)から誘導された1.6kb、ClaI-AccI断片でプローブした。ブロットは、50%のホルムアミド、5xSSC、10xデンハード、0.05Mリン酸ナトリウム(pH6.5)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、50mg/ml超音波処理サケ精子DNA中、全てを1x106cpm/mlの32P標識プローブの存在下、42℃で終夜ハイブリッド形成した。ブロットを2xSSCで室温において10分間洗浄し、0.2xSSC/0.1%SDS中、42℃で30分間洗浄し、次いでX-線フィルムに終夜暴露した。図7は、fusedメッセージが精巣では高レベルで、胎児組織を含む他の殆どの組織では低レベルで発現されたことを示している(図7)。
【0085】
実施例4
正しくスプライシングされた形態を同定するための異なる組織に対するPCR
2つの潜在的なORFが共に正しくスプライシングされたcDNAを単離するために、
我々は以下の潜在的なイントロンに隣接するプライマーを設計し、ヒト胎児脳、脳、ケラチノサイト、精巣、卵巣、胎児肝臓、及び肺テンプレートを含む種々の組織を増幅した。
F1(配列番号:13) 5'-CTGACGACACAGCAGGTTGTC-3'
R4(配列番号:14) 5'-CAGATGCTTCAGGATGGACAT-3'
各cDNAライブラリ2マイクロリットルをテンプレートとして用い、Klentaq(登録商標)ポリメラーゼでPCRを行った。PCRは、94℃での1分間の変性、55℃での1分間のアニーリング、及び68℃での2分間の伸展を具備する45サイクルの増幅で実施した。反応の五分の一を1%アガロースゲルに負荷してサザンブロットをした。ブロットを、ノーザンブロットについて記載したようなランダムプライミングにより標識した全長fusedプローブで終夜ハイブリッド形成した。
1kbのPCR断片を、胎児脳、精巣及び卵巣で同定した。この断片をゲル精製し、上記で同定したF1及びR4プライマー(配列番号:13及び14)の両方及び以下のプライマーを用いた直接PCR配列決定法を施した:
hf16(配列番号:15) 5'-AGAGTAGCAACGTCACTGC-3'
hf8(配列番号:16) 5'-CCTCACTGACAAGGCAGCAGG-3'
hf19(配列番号:17) 5'-CCCGAGGAGGCATCTGCACAG-3'。
【0086】
この1kbの断片の配列決定は、イントロン配列が存在せず、2つのORFが同じ読み枠において互いに結合されているをとを明らかにした。正しくスプライシングされた配列の配列は図1(配列番号:1)に示す。開始剤ATPは位置161に存在し、3945ヌクレオチドのORFが続き、それは1315アミノ酸長の144kDaの推定分子量を持つタンパク質をコードする。
ショウジョウバエfused(配列番号:23)との全体的類似性は28%である(図2)。キナーゼドメインを含むタンパク質のN-末端263アミノ酸ドメインは、ショウジョウバエfusedキナーゼドメインに55%相同性である。タンパク質の残りの1052アミノ酸部分は、他の知られたタンパク質と感知できる程の相同性はなく、興味深いことに、ショウジョウバエfusedの対応領域とも相同ではない。興味深いことに、非相同性のこの領域は、活性に必要とされることがわかったハエタンパク質のC-末端近傍を含む、Robbins等, Cel 90: 225-34 (1997); Therond等, Genetics 142: 1181-98 (1996)。上記の不正にスプライシングされたcDNAは、切断されたC-末端を持つ分子の精製を導き、fused活性の調節機構となりうるfused遺伝子の選択的スプライシングを反映している。
【0087】
実施例5
正しくスプライシングされた全長ヒトfusedの再構成
fusedクローンDNA28495(配列番号:4)をpRK5BプラスミドからpRK5.tkneoにClaI-HindIIIを用いてサブクローニングした。PCRは、テンプレートとしてのヒト精巣cDNA及びプライマーhf3(配列番号:18)(CAGAACTTCAGGTCCTAAAGG)及びR4(上記の配列、実施例4)を用いて実施した。PCR条件は、(94℃、1分間、46℃〜68℃の温度勾配アニーリング1分間、及び68℃、4分間)の45サイクルであった。PCR断片をAccIで消化し、pRK5.tkneo.fusedプラスミドに結合し、イントロンを含む領域を正しくスプライシングした形態に置換するためにAccIで切断した。2つのサブクローンは、2つのAccI部位の間に配列し、同じ正しい配列を有していた。
【0088】
実施例6
インサイツハイブリッド形成
E11.3及びE13.5マウス胚を、4%パラホルムアルデヒド中、4℃で終夜浸漬固定し、15%スクロース中で終夜凍結保存し、O.T.C.に包埋し、そして液体窒素で凍結させた。成熟マウス脳を新たに粉末ドライアイスで凍結させた。P1マウス脳、成熟マウス精巣及び成熟ラット脊髄をO.T.C.に包埋し、液体窒素で凍結させた。断面は16mmで切断し、Phillips等, Science 250: 290-294 (1990)の方法によりfusedについてインサイツハイブリッド形成のために加工した。RNAプローブは、Melton等, Nucleic Acids Res. 12: 7035-7052 (1984)に記載されたように33P-UTPで標識した。センス及びアンチセンスプローブを、ヒト配列のアミノ酸残基317−486のコード化領域に対応する、各々T3及びT7を用いてマウスfusedDNA断片から合成した。
図8は、マウスfusedmRNAが、神経管、前体節中胚葉、体節、発達中の肢芽及び皮膚を含むSHh応答性組織に広範に分布していることを示す。fusedの転写物は、胚性長、精巣、軟骨及び筋肉−Hhタンパク質ファミリーの他のメンバー:デザート及びインディアンに暴露される組織において見出された。E11.5マウス神経系において、高レベルのfused転写物が、前脳、中脳、後脳及び脊髄に渡って検出された。これらの高レベルの発現は、13.5の胚日数でも残っていた。胚日数11.5及び13.5の両方において、fusedmRNAは主に神経管の腹側側面、腹側正中線誘導SHhに暴露されると思われる領域で検出された。出生後1日まで、fusedの脳に渡って広く拡散した発現が維持され、高レベルの転写物が皮質、海馬、上衣及び脈絡叢で検出された。成熟体において、脳全体にfusedの低レベル発現が検出され、より高いレベルは上衣で確認された。
【0089】
fused及びHhレセプター成分、Smo及びPtchの組織分布はかなりの重複を示した。これらは全て最初神経管並びに他のHh応答性組織に渡って発現された。しかしながら、SmomRNAが背側−腹側軸に沿って均一に分布しているのに対し、Ptch及びfusedmRNAは腹側で高レベルに見出され、それらがHhによってアップレギュレートされることを示唆している。さらにE12日まで、Smo及びPtchの発現が主に腹側ゾーンの極めて近傍の細胞で見出されるが、fusedmRNAは未だに広く発現され、そのレベルは後になってのみ減少する。Smo及びfusedの成熟体発現は、神経形成が続いている上衣で確認された。
成熟精巣でのfused発現の詳細な分析は、インサイツハイブリド形成によって実施された(図9)。fusedは、精細管におけるI及びII期胚細胞において極めて高レベルで発現されることが見出された。fusedのレベルは、異なる精細管において変化し、その発現が分化の胚性細胞期に従って調節されることを示唆している。
【0090】
実施例7
Gliルシフェラーゼアッセイ
dfusedとhfusedとの低い相同性が与えられたので、実際に単離されたhfusedが確かにHhシグナル伝達のメディエータであるか否かを決定するのが賢明である。以下のアッセイは、ショウジョウバエキュービタツインターラプタス(Ci)の哺乳類相同体である転写因子GLIの活性化を測定するために開発された。GLIは、細胞のSHh刺激時に活性化される転写因子であることが示された。
NHF3βエンハンサーに存在するGLI結合部位の9つのコピー(Sasaki等, Development 124: 1313-1322 (1997))を、pGL3プラスミド(Promega)のルシフェラーゼリポーター遺伝子を制御するチミジンキナーゼ最小プロモーターの前に導入した。GLI結合配列は:TCGACAAGCAGGGAACACCCAAGTAGAAGCTC(p9XGliLuc)(配列番号:19)であり、ネガティブ対照配列は:TCGACAAGCAGGGAAGTGGGAAGTAGAAGCTC(p9XmGliLuc)(配列番号:20)であった。これらの作成物を全長fused作成物、又はF12、DMEM(50:50)、10%のFCS熱不活性化中で成長させたC3H10T1/2細胞中のソニックヘッジホッグと同時形質移入した。形質移入の前日に、ウェル当たり1x105細胞を6ウェルプレートに2ml培地中で播種した。次の日に、1μgの各作成物を、0.025mgのptkRenillaルシフェラーゼプラスミドで、100μlのOptiMem(GlutaMaxを含む)中のリポフェクタミン(Gibco-BRL)を用い、製造者の指示に従って37℃で3時間再度同時形質移入した。次いで血清(20%、1ml)を各ウェルに添加し、細胞を37℃でさらに3時間インキュベートした。次いで細胞をPBSで2回洗浄し、次に37℃で48時間2mlの培地中でインキュベートした。次いで各ウェルをPBSで洗浄し、細胞を0.5mlの受動的溶解バッファー(Promega)で15分間室温で振盪装置上で溶解させた。溶解物を氷上のエッペンドルフ管に移し、冷却遠心機で30秒間スピンし、上清を氷上で保存した。各測定について、20μlの細胞溶解物をポリプロピレン管内のLARII(ルシフェラーゼアッセイ試薬、Promega)の100μlに添加し、利子Feラーゼ光活性を測定した。停止及びグローバッファーの添加により反応を停止し、3から5回ピペット上下することにより混合し、Renillaルシフェラーゼ光活性を照度計で測定した。
【0091】
図6に示すように、fusedは、SHh(5.5倍)と同様にしてGLI活性を誘発できる(9.5倍)。この結果は、単離されたfused遺伝子がSHhシグナル伝達のメディエータであることを示唆している。無関係なセリン-トレオニンキナーゼであるAktは、このアッセイで不活性であった(データは示さず)。fused活性は無傷のキナーゼドメインに依存し、この領域を欠く分子(fusedC-末端)(配列番号:27)又はATP結合部位のおよそアミノ酸位置33に保存されたリシンの変異体(fused-DN(配列番号:25))はGLIを活性化できなかった。同様に、キナーゼドメインのみはこのアッセイで活性でなかったので(fusedKD)(配列番号:24)、タンパク質のC-末端尾部がこの活性に必要である。各タンパク質の発現は、分子のN-末端に挿入されたHAタグを用いたウェスタンブロットによって確認された(データは示さず)。これらの結果は、本出願人によって単離されたdfusedの相同体が確かにhfusedであるという結論を立証する。さらに、これらの結果は、fusedがSHhシグナル伝達の主要な標的であるGliの活性化が可能及び十分であり、よって脊椎動物におけるSHhシグナル伝達の直接的メディエータであると思われる。
【0092】
実施例8
カエル胚における誘発単眼症
序論:
ヒトfused遺伝子が脊椎動物におけるSHhシグナル伝達が可能であるばかりでなくそれに必要であることを示すために、ATP結合部位の位置33にあるリシンの変異を有するfused-DN(ドミナントネガティブ)として知られるfusedの変異体を生成した(配列番号:25)。この残基は全てのキナーゼで保存され、キナーゼ活性に必須であり(Hanks等, Methods Enzymol. 200: 38-62 (1991))、その他の残基への変換は殆どの場合ドミナントネガティブ変異体をもたらす。
【0093】
方法:
プラスミド作成:
カルボキシ末端に挿入されたHAタグを持つ野生型fusedcDNA(配列番号:1)をpRK5にサブクローニングし、位置33のリシンをアルギニンに変換してドミナントネガティブ形態を生成させた。高次コイルプラスミドDNAをQiagenにより調製し、アフリカツメガエル胚への注入に使用した。
アフリカツメガエル胚の操作:
成熟雌カエルを200I.U.の妊娠雌血清で使用の3日前に、そして800I.U.のヒト絨毛性ゴナドトロピンで注入の前夜にブースとした。次の朝に新鮮な卵母細胞を雌カエルから搾り出し、卵母細胞を犠牲にした雄カエルからの細かくした精子と混合することにより卵母細胞のインビトロ受精を実施した。発生胚を維持し、Nieuwkoop及びFaber, Normal Table of Xenopus laevis, N.-H.P.Co.,編集(Amsterdam. 1967)に従って段階分けした。
受精卵を2%のシステイン(pH7.8)で10分間脱ジェリーし、蒸留水で1回洗浄し、5%フィコールを含む0.1xMBSに移した。受精卵を5%フィコールを含む0.1xMBS中で注入トレーに並べた。2細胞期の発育中のアフリカツメガエル胚に、野生型fused(WT(配列番号:1))又はドミナントネガティブfused(DN(配列バッb号:25))を含むpRK5のいずれか200pgを注入した。注入した胚をトレー上にさらに6時間維持し、その後それらを50mg/mlのゲンタマイシンを含む0.1xMBSに移し、眼の発育が完了するNieukwloop段階35に到達するまで3日間であった。
【0094】
結果:
ヒトfused遺伝子がヘッジホッグシグナル伝達のシグナルトランスデューサとして作用するか否かを試験するために、我々は野生型又はドミナントネガティブ形態のヒトfusedを発育中のカエル胚に注入した。120pgのDNAを注入した胚は胞胚段階に正常に分割して正常に原腸胚形成した。野生型fused(配列番号2)注入及び偽注入した胚では眼の発育は正常であったが、fused-DN注入した胚の約30%(表1)は、融合した眼構造又は幾分着色された網膜組織でつながった2つの眼を示した(図11A)。表1において、200pgのプラスミドDNAは、2細胞段階胚の動物極に運ばれた。各試料は、少なくとも3つの独立した実験の結果を示す。胚は単眼症欠陥について目視で評点化した。
【0095】
観察された単眼症フェノタイプは、SHhに欠陥のあるマウス胚(Chiang等, Nature 383: 407-13 (1996))及びSHhシグナル伝達が構造的活性PKAの過剰発現で阻止されたゼブラフィッシュ胚の一つに極めて類似している、Hammerschmidt等, Genes Dev. 10: 647-58 (1996); Unger及びMoon, Dev. Biol. 178: 186-91 (1996)。さらに、脳(前脳)及び腸発達の両方が、fused-DN(配列番号:25)注入胚で、後のオタマジャクシ発達段階において正常であることがわかった(図11B)。これに対して、野生型fused(配列番号:2)又はN末端又はC-末端切断変異体(各々配列番号:27及び24)を過剰発現している胚は如何なる以上も示さなかった。
アフリカツメガエルの眼の正常な発達の間に、ショウジョウバエ無眼の脊椎動物相同体である転写因子Pax-6の単一分野発現として眼原基が開始される、Li等, Development, 124: 603-15 (1997)。神経胚段階で、この眼分野は脊索前方の中胚葉からのシグナル阻害により2つの眼原基に別れる。SHhが脊索前方の中胚葉に誘導されるシグナルであり、それは眼分野の正中線にpけるPax-6発現の阻害の原因となることが更に示された。
fused-DN(配列番号:25)の過剰発現がどのようにしてアフリカツメガエル胚における融合眼を誘発するかをさらに理解するために、注入胚におけるPax-6の発現パターンを決定するための全量インサイツハイブリッド形成を実施した。図11Cに示すように、fused-DN(配列番号:25)を注入した胚におけるPax-6発現は単一の分野を保持している。よって、fused-DN(配列番号:25)は、眼分野の正中線におけるPax-6発現の阻害からSHhを妨げることにより単眼症フェノタイプを誘発すると考えるのが最も妥当である。
【0096】
実施例9
fused-DN(配列番号:25)注入アフリカツメガエル胚のGliによる救済
初期底板細胞におけるSHh発現は、脊索によって生成されるSHhにより誘発される。底板におけるSHh発現もSHhシグナル伝達が阻止された場合に阻害されるか否かを試験するために、fused-DN又は野生型作成物を注入した初期神経胚段階胚をSHh発現について染色した(方法については実施例8参照)。底板細胞又は初期神経胚段階胚におけるSHh発現は、変異fusedが過剰発現した場合には28注入胚のうち26で完全に抑制されたが(表2、図11C左側の胚)、対照胚ではSHhの発現に影響は無かった(図6E、右側の胚)。表2は、3つの独立した実験からの評点化したデータを示す。100pgのfused-DN、100pgのfused-wt又は50pgのGli-1プラスミドを2細胞段階の胚に注入した。胚は初期神経胚段階でSHh染色のために回収した。
【0097】
このフェノタイプが底板におけるSHhシグナル伝達経路の特異的阻害によることを確認するために、我々は、wtfuseRNAとfused-DNRNAとを1:1比率で同時注入することによりフェノタイプを救済することを試みた。表2は、wtfused及びfused-DNRNAを同時注入した胚の80%以上が底板において正常なSHhシグナル伝達を示すことを示している。このことは、fused-DN注入胚におけるSHh発現が内因性fused活性の阻害により特異的に阻止されることを示している。
さらに、観察されたfused-DNのフェノタイプがSHhシグナルカスケードによることを示し、hfusedがこの経路でGliの上流で作用することを確認するために、我々は、Gliの過剰発現もfused-DN注入アフリカツメガエル胚のフェノタイプを救済できるのではないかと考えた。表2に示すように、fused-DN注入胚の底板におけるSHh発現は、Gliが過剰発現されたときに完全に救済された。以上より、これらの発見は、脊椎動物fusedがSHh経路で機能し、SHhシグナル伝達経路においてGliの上流で作用する必須のメディエータであるという本出願人の仮説と一致する。
【0098】
実施例10
免疫沈降及びインビトロキナーゼアッセイ
hfusedがキナーゼ活性を有することを直接決定するために、fused(配列番号:2)、fused-DN(配列番号:25)およびfused-kd(配列番号:24)cDNAをインフルエンザHAエピトープタグでタグ付けし、293細胞に一過性形質移入した。キナーゼ活性について、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)及び[γ32P]-ATPの存在下で免疫沈降を試験した。MBPへの32P取り込み量はSDS-PAGEの後に測定し、対照に比較して、fused-KD(配列番号:24)では3倍高く、wtfused(配列番号:2)含有抽出物では2倍高いが、Lys33のArgへの変異体(fused-DN(配列番号:25))では活性が中和されることがわかった(図12)。
免疫沈降実験のために、ヒト胚腎臓293細胞を種々の発現プラスミドで一過性形質移入した。24時間後、形質移入した細胞を回収し、1mlの溶解バッファー(50mMのトリス、pH8.0)、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1mMのフッ化ナトリウム、1mMのオルトバナジウム酸ナトリウム、1mMのPMSF及び1%のNP-40、0.5%のデオキシコール酸を含むプロテアーゼ阻害剤(Complete、Boehringer Mannhein)中、4℃で20分間溶解させた。10,000rpmでの10分間の遠心分離で細胞断片を除去し、細胞溶解物の塩化ナトリウム濃度を250mMまで上昇させた。上清を20μlのプロテインAセファロース(Pharmacia)で1時間プレクリアした。溶解物を抗-HA抗体、次いでプロテインAセファロースを用いて免疫沈降させた。ビーズを250mMの塩化ナトリウムを含む溶解バッファーで2回、1Mの塩化ナトリウムを含む溶解バッファーで2回、次いでキナーゼアッセイバッファー(20mMのHEPES、pH7.6、1mMのDTT、1mMのNaF及び1mMのオルトバナジウム酸ナトリウム)で2回洗浄した。最後の洗浄の後、ビーズを、10mCi[γ32P]-ATP、20mMのβ-グリセロホスフェート、20mMのPNPP、20mMのMgCl2,1mMのEGTA、100μMの冷ATP及び0.5mg/mlのミエリン塩基性タンパク質(Sigma)を添加した20μlのキナーゼアッセイバッファーに再懸濁し、37℃で20分間インキュベートした。20μlのSDS-試料バッファーで反応を停止し、4−20%SDSポリアクリルアミドゲル上を走らせ、ホスホイメージャー(phosphoimager)で分析した。
【0099】
実施例11:大腸菌におけるfusedの発現
ヒトfusedをコードするDNA配列を、選択したPCRプライマーを用いて最初に増幅した。プライマーは、選択された発現ベクターの制限酵素部位に対応する制限酵素部位を持たなければならない。種々の発現ベクターが用いられる。好適なベクターの例は、pBR322(大腸菌から誘導されたもの;Bolivar等, Gene, 2:95 (1977)参照)であり、アンピシリン及びテトラサイクリン耐性についての遺伝子を含む。ベクターは、制限酵素で消化され脱リン酸される。PCR増幅した配列は、次いでベクターに結合させる。ベクターは、好ましくは抗生物質耐性遺伝子、trpプロモーター、polyhisリーダー(最初の6つのSTIIコドン、polyhis配列、及びエンテロキナーゼ切断部位を含む)、脊椎動物fusedコード化領域、ラムダ転写終結区、及びargU遺伝子を含む。
ライゲーション混合物は、次いで、Sambrook等, 上掲に記載された方法を用いた選択した大腸菌の形質転換に使用される。形質転換体は、それらのLBプレートで成長する能力により同定され、次いで抗生物質耐性クローンが選択される。プラスミドDNAが単離され、制限分析及びDNA配列決定で確認される。
選択されたクローンは、抗生物質を添加したLBブロスなどの液体培地で終夜成長させることができる。終夜培地は、続いて大規模培地の播種に用いられる。次に細胞を最適密度で成長させ、その間に発現プロモーターが作動する。
更に数時間の培養の後、細胞を採集して遠心分離できる。遠心分離で得られた細胞ペレットは、この分野で知られた種々の試薬を用いて可溶化され、可溶化脊椎動物fusedタンパク質を金属キレート化カラムを用いてタンパク質を緊密に結合させる条件下で精製した。
【0100】
実施例12:哺乳動物細胞におけるfusedの発現
発現ベクターとしてベクターpRK5(1989年3月15日発行のEP 307,247参照)を用いた。場合によっては、脊椎動物fusedDNAを選択した制限酵素でpRK5に結合させ、Sambrook等,上掲に記載されたような結合方法を用いて脊椎動物fusedDNAの挿入を行う。得られたベクターは、pRK5−fusedと呼ばれる。
一実施態様では、選択された宿主細胞は293細胞とすることができる。ヒト293細胞(ATCC CCL 1573)は、ウシ胎児血清及び場合によっては滋養成分及び/又は抗生物質を添加したDMEMなどの媒質中で組織培養プレートにおいて成長させて集密化した。約10μgのpRK5−fusedDNAを約1μgのVA RNA遺伝子をコードするDNA[Thimmappaya等, Cell, 31:543 (1982))]と混合し、500μlの1mMトリス-HCl、0.1mMのEDTA、0.227MのCaCl2に溶解させた。この混合物に、滴状の、500μlの50mMのHEPES(pH7.35)、280mMのNaCl、1.5mMのNaPO4を添加し、25℃で10分間析出物を形成させた。析出物を懸濁し、293細胞に加えて37℃で約4時間定着させた。培養培地を吸引し、2mlのPBS中20%グリセロールを30秒間添加した。293細胞は、次いで無血清培地で洗浄し、新鮮な培地を添加し、細胞を約5日間インキュベートした。
【0101】
形質移入の約24時間後、培養培地を除去し、培養培地(のみ)又は200μCi/mlの35S−システイン及び200μCi/mlの35S−メチオニンを含む培養培地で置換した。12時間のインキュベーションの後、条件培地を回収し、スピンフィルターで濃縮し、15%SDSゲルに添加した。処理したゲルを乾燥させ、脊椎動物fusedポリペプチドの存在を現す選択された時間にわたってフィルムに暴露した。形質転換した細胞を含む培地は、更なるインキュベーションを施し(無血清培地で)、培地を選択されたバイオアッセイで試験した。
これに換わる技術において、脊椎動物fusedは、Somparyac等, Proc. Natl. Acad. Sci., 12:7575 (1981)に記載されたデキストラン硫酸法を用いて293細胞に一過的に導入される。293細胞は、スピナーフラスコ内で最大密度まで成長させ、700μgのpRK5−fusedDNAを添加する。細胞は、まずスピナーフラスコから遠心分離によって濃縮し、PBSで洗浄した。DNA−デキストラン沈殿物を細胞ペレット上で4時間インキュベートした。細胞を20%グリセロールで90秒間処理し、組織培養培地で洗浄し、組織培養培地、5μg/mlウシインシュリン及び0.1μg/mlウシトランスフェリンを含むスピナーフラスコに再度導入した。約4日後に、条件培地を遠心分離して濾過し、細胞及び細胞片を除去した。次いで発現された脊椎動物fusedを含む試料を濃縮し、透析及び/又はカラムクロマトグラフィー等の選択した方法によって精製した。
【0102】
他の実施態様では、脊椎動物fusedをCHO細胞で発現させることができる。pSUi-fusedは、CaPO4又はDEAE−デキストランなどの公知の試薬を用いてCHO細胞に形質移入することができる。上記したように、細胞培地をインキュベートし、培地を培養培地(のみ)又は35S-メチオニン等の放射性標識を含む培地に置換することができる。脊椎動物fusedポリペプチドの存在を同定した後、培養培地を無血清培地に置換してもよい。好ましくは、培地を約6日間インキュベートし、次いで条件培地を収集する。次いで、発現された脊椎動物fusedを含む培地を濃縮して、選択した方法にとって精製することができる。
また、エピトープタグ脊椎動物fusedは、宿主CHO細胞において発現させてもよい。脊椎動物fusedはpRK5ベクターからサブクローニングした。サブクローン挿入物は、次いで、PCRを施してバキュロウイルス発現ベクター中のpoly-hisタグ等の選択されたエピトープタグを持つ枠に融合できる。poly-hisタグ脊椎動物fused挿入物は、次いで、安定なクローンの選択のためのDHFR等の選択マーカーを含むSV40誘導ベクターにサブクローニングできる。最後に、CHO細胞をSV40誘導ベクターで(上記のように)形質移入した。発現を確認するために、上記のように標識化を行ってもよい。発現されたpoly-hisタグ脊椎動物fusedを含む培養培地は、次いで濃縮し、Ni2+−キレートアフィニティクロマトグラフィー等の選択された方法により精製できる。
【0103】
実施例13:酵母菌での脊椎動物fusedの発現
以下の方法は、酵母菌中での脊椎動物fusedの組換え発現を記載する。
第1に、ADH2/GAPDHプロモーターからの脊椎動物fusedの細胞内生産又は分泌のための酵母菌発現ベクターを作成する。脊椎動物fusedをコードするDNA、選択されたシグナルペプチド及びプロモーターを選択したプラスミドの適当な制限酵素部位に挿入して脊椎動物fusedの細胞内発現を指示する。分泌のために、脊椎動物fusedをコードするDNAを選択したプラスミドに、ADH2/GAPDHプロモーターをコードするDNA、酵母菌アルファ因子分泌シグナル/リーダー配列、及び(必要ならば)脊椎動物fusedの発現のためのリンカー配列とともにクローニングすることができる。
酵母菌株AB110等の酵母菌は、次いで上記の発現プラスミドで形質転換し、選択された発酵培地中で培養できる。形質転換した酵母菌上清は、10%トリクロロ酢酸での沈降及びSDS−PAGEによる分離で分析し、次いでクマシーブルー染色でゲルの染色をすることができる。
続いて組換え脊椎動物fusedは、発酵培地から遠心分離により酵母菌細胞を除去し、次いで選択されたカートリッジフィルターを用いて培地を濃縮することによって単離及び精製できる。脊椎動物fusedを含む濃縮物は、選択されたカラムクロマトグラフィー樹脂を用いてさらに精製してもよい。
【0104】
実施例14:バキュロウイルス感染昆虫細胞での脊椎動物fusedの発現
以下の方法は、バキュロウイルス感染昆虫細胞中における脊椎動物fusedの組換え発現を記載する。
脊椎動物fusedは、バキュロウイルス発現ベクターに含まれるエピトープタグの上流に融合させた。このようなエピトープタグは、poly-hisタグ及び免疫グロブリンタグ(IgGのFc領域など)を含む。pVL1393(Navogen)などの市販されているプラスミドから誘導されるプラスミドを含む種々のプラスミドを用いることができる。簡単には、脊椎動物fused又は脊椎動物fusedの所定部分(膜貫通タンパク質の細胞外ドメインをコードする配列など)が、5’及び3’領域に相補的なプライマーでのPCRにより増幅される。5’プライマーは、隣接する(選択された)制限酵素部位を包含していてもよい。生成物は、次いで、選択された制限酵素で消化され、発現ベクターにサブクローニングされる。
組換えバキュロウイルスは、上記のプラスミド及びBaculoGoldTMウイルスDNA(Pharmingen)を、Spodoptera frugiperda(「Sf9」)細胞(ATCC CRL 1711)中にリポフェクチン(GIBCO-BRLから市販)を用いて同時形質移入することにより作成される。28℃で4−5日インキュベートした後、放出されたウイルスを回収し、更なる増幅に用いた。ウイルス感染及びタンパク質発現は、O'Reilley等, Baculovirus expression vectors: A laboratory Manual, Oxford: Oxford University Press (1994)に記載されているように実施した。
【0105】
次いで、発現されたpoly-hisタグ脊椎動物fusedは、例えば、Ni2+−キレートアフィニティクロマトグラフィーにより以下のように精製される。抽出物は、Rupert等, Nature, 362:175-179 (1993)に記載されているように、ウイルス感染した組み換えSf9細胞から調製した。簡単には、Sf9細胞を洗浄し、超音波処理用バッファー(25mLのHepes、pH7.9;12.5mMのMgCl2;0.1mMのEDTA;10%のグリセロール;0.1%のNP-40;0.4MのKCl)中に再懸濁し、氷上で2回20秒間超音波処理した。超音波処理物を遠心分離で透明化し、上清を負荷バッファー(50mMのリン酸塩、300mMのNaCl、10%のグリセロール、pH7.8)で50倍希釈し、0.45μmフィルターで濾過した。Ni2+-NTAアガロースカラム(Qiagenから市販)を5mLの総容積で調製し、25mLの水で洗浄し、25mLの負荷バッファーで平衡させた。濾過した細胞抽出物は、毎分0.5mLでカラムに負荷した。カラムを、分画回収が始まる点であるA280のベースラインまで負荷バッファーで洗浄した。次に、カラムを、結合タンパク質を非特異的に溶離する二次洗浄バッファー(50mMのリン酸塩;300mMのNaCl、10%のグリセロール、pH6.0)で洗浄した。A280のベースラインに再度到達した後、カラムを二次洗浄バッファー中で0から500mMのイミダゾール勾配で展開した。1mLの分画を回収し、SDS−PAGE及び銀染色又はアルカリホスファターゼ(Qiagen)に複合したNi2+-NTAでのウェスタンブロットで分析した。溶離したHis10−タグ脊椎動物fusedを含む分画をプールし、負荷バッファーで透析した。あるいは、IgGタグ(又はFcタグ)脊椎動物fusedの精製は、例えば、プロテインA又はプロテインGカラムクロマトグラフィーを含む公知のクロマトグラフィー技術を用いて実施できる。
【0106】
実施例15:脊椎動物fusedに結合する抗体の調製
この実施例は、脊椎動物fusedに特異的に結合できるモノクローナル抗体の調製を例示する。
モノクローナル抗体の生産のための技術は、この分野で知られており、例えば、Goding,上掲に記載されている。用いられ得る免疫原は、精製脊椎動物fused、脊椎動物fusedを含む融合タンパク質、細胞表面に組換え脊椎動物fusedを発現する細胞を含む。免疫原の選択は、当業者が過度の実験をすることなくなすことができる。
Balb/c等のマウスを、完全フロイントアジュバントに乳化して皮下又は腹腔内に1−100マイクログラムで注入した脊椎動物fused免疫原で免疫化する。あるいは、免疫原をMPL−TDMアジュバント(Ribi Immunochemical Researh, Hamilton, MT)に乳化し、動物の後足蹠に注入してもよい。免疫化したマウスは、次いで10から12日後に、選択したアジュバント中に乳化した付加的免疫源で追加免疫する。その後、数週間、マウスをさらなる免疫化注射で追加免疫する。脊椎動物fused抗体の検出のためのELISAアッセイで試験するために、レトロオービタル出血からの血清試料をマウスから周期的に採取してもよい。
【0107】
適当な抗体力価が検出された後、抗体に「陽性」な動物に、脊椎動物fused静脈内注射の最後の注入をすることができる。3から4日後、マウスを屠殺し、脾臓を取り出した。次いで脾臓細胞を(35%ポリエチレングリコールを用いて)、ACTTから番号CRL1597で入手可能なP3X63AgU.1等の選択されたマウス骨髄腫株化細胞に融合させた。融合によりハイブリドーマ細胞が生成され、次いで、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン)培地を含む96ウェル組織培養プレートに蒔き、非融合細胞、骨髄腫ハイブリッド、及び脾臓細胞ハイブリッドの増殖を阻害した。
ハイブリドーマ細胞は、脊椎動物fusedに対する反応性についてのELISAでスクリーニングされる。所望の脊椎動物fusedに対するモノクローナル抗体を分泌する「陽性」ハイブリドーマ細胞の決定は、技術常識の範囲内である。
陽性ハイブリドーマ細胞を同系のBalb/cマウスに腹腔内注入し、抗-脊椎動物fusedモノクローナル抗体を含む腹水を生成させる。あるいは、ハイブリドーマ細胞を、組織培養フラスコ又はローラーボトルで成長させることもできる。腹水中に生成されたモノクローナル抗体の精製は、硫酸アンモニウム沈降、それに続くゲル排除クロマトグラフィ−を用いて行うことができる。あるいは、抗体のプロテインA又はプロテインGへの親和性に基づくアフィニティクロマトグラフィーを用いることもできる。
【0108】
材料の寄託
次の細胞系をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション, 12301 パークローンドライブ、ロックビル、メリーランド、米国(12301 Parklawn Drive, Rockville, MD, USA)(ATCC)に寄託した:
材料 ATCC寄託番号 寄託日
pRK5tkneo.hFused-1272 209637 1998年2月19日
この寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約及びその規則(ブダペスト条約)の規定に従って行われた。これは、寄託の日付から30年間、寄託の生存可能な培養が維持されることを保証するものである。寄託物はブダペスト条約の条項に従い、またジェネンテク社とATCCとの間の合意に従い、ATCCから入手することができ、これは、どれが最初であろうとも、関連した米国特許の発行時又は任意の米国又は外国特許出願の公開時に、寄託培養物の後代を永久かつ非制限的に入手可能とすることを保証し、米国特許法第122条及びそれに従う特許庁長官規則(特に参照番号886OG638の37CFR第1.14条を含む)に従って権利を有すると米国特許庁長官が決定した者に子孫を入手可能とすることを保証するものである。
【0109】
本出願の譲受人は、寄託した培養物が、適切な条件下で培養されていた場合に死亡もしくは損失又は破壊されたならば、材料は通知時に同一の他のものと即座に取り替えることに同意する。寄託物質の入手可能性は、特許法に従いあらゆる政府の権限下で認められた権利に違反して、本発明を実施するライセンスであるとみなされるものではない。
上記の文書による明細書は、当業者に本発明を実施できるようにするために十分であると考えられる。寄託した態様は、本発明のある側面の一つの説明として意図されており、機能的に等価なあらゆる作成物がこの発明の範囲内にあるため、寄託された作成物により、本発明の範囲が限定されるものではない。ここでの物質の寄託は、ここに含まれる文書による説明が、そのベストモードを含む、本発明の任意の側面の実施を可能にするために不十分であることを認めるものではないし、それが表す特定の例証に対して請求の範囲を制限するものと解釈されるものでもない。実際、ここに示し記載したものに加えて、本発明を様々に改変することは、前記の記載から当業者にとっては明らかなものであり、添付の請求の範囲内に入るものである。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1A−1E】ヒトfusedポリペプチドの天然配列の核酸配列(配列番号:1)及び誘導アミノ酸配列(配列番号:2)を示す図である。キナーゼドメイン(残基1〜約260)(配列番号:24)及びおよそアミノ酸位置33のATP結合部位を含む。
【図2】ヒト全長配列のクローン化に用いられたEST2515662(配列番号:3)を示す図である。
【図3A−3B】ヒト及びショウジョウバエfused(配列番号:2及び23)の間の比較を示す図である。最適なアラインメントのために導入されたギャップはダッシュで示した。同一のアミノ酸はボックスで囲んだ。fused-DNで変異されたリシン(ドミナントネガティブ、アミノ酸位置33のリシン)は星印で示す。
【図4A−4E】胎児肺ライブラリから単離されたヒトfusedの不正にスプライシングされた変異体であるDNA28494の配列(配列番号:6)を示す図である。このクローンは、位置116に潜在的開始メチオニンを含み、1944bpのオープンリーディングフレームが続く。第2のオープンリーディングフレームは、およそ2295〜4349の位置に存在する。クローンDNA28495(配列番号:4)とクローンDNA28494(配列番号:6)との間には、クローンDNA28495(配列番号:4)の位置1863にある第1のORF内に位置する1つのヌクレオチドの相違(A対G)があり、位置583におけるコード化配列をGlnからArgに変える。DNA28494(配列番号:6)の第1のオープンリーディングフレームは、残基115で開始されて630アミノ酸長のオープンリーディングフレームが続く。
【図5A−5E】胎児肺ライブラリから単離されたヒトfusedの不正にスプライシングされた他の変異体であるDNA28494の配列(配列番号:6)を示す図である。
【図6】DNA28495(配列番号:5及び21)及びDNA28494(配列番号:7及び22)のエピトープタグのPCR産物のウェスタンブロットを示す図である。クローンDNA28494(配列番号:6)に対応する作成物で形質移入した細胞の細胞ペレットにおいて150kDaの特異的バンドが検出され、クローンDNA28495(配列番号:4)については約100kDaの特異的バンドが検出された(図6)。これらのバンドは偽形質移入の対照物には存在しなかった。100kDaバンドの存在は、DNA28494(配列番号:6)の2つのオープンリーディングフレームが、ともにスプライシングして150kDaの大きなタンパク質の合成を指示できることを示唆している。このバンドがDNA28495(配列番号:4)に無いことは、このクローンが明らかに正しくスプライシングされ得ないことを示唆している。
【図7】ヒトfused(配列番号:1)のノーザンブロット分析を示す図である。複数のヒト胎児及び成人組織ノーザンブロットはヒトfusedcDNAプローブでプローブされた。
【図8A−8F】胚及び成人組織のfused(配列番号:1)でのインサイツハイブリッド形成を示す写真である。E11.5(図8A)及びE13.5(図8B)マウス胚の矢状切片。P1(図8E)から成人(図8F)マウスの矢状切片。Cp、脈絡叢 ;hb、後脳;hip、海馬体;ht、心臓;hy、視床下部;kd、腎臓;lg、肺;mb、中脳;md、中腸;mnd、第1の鰓弓の下顎成分;sc、脊髄;st、胃;tec、中脳蓋;vh、脊髄の前角;vm、腹側中脳。スケールバー:図8A、1.0mm;図8B、1.62m;図8C、0.14mm;図8D、0.17mm;図8E、2.0mm;図8F、3.1mm。
【図9A−9C】fusedmRNAの成人マウス精巣における高レベルでの存在を示すインサイツハイブリッド形成を示す写真である(図9A)。高倍率では精細管内での発現レベルの違いがわかる(図9C)。fusedに対するセンス鎖対照プローブでの精巣のハイブリッド形成では、ハイブリッド形成を与えなかった(図9B)。
【図10A−10B】fusedによるGliの活性化を示す棒グラフである。(図10A):C3H10T1/2細胞は、p9XGliLus、ptkRenillaルシフェラーゼ及びfused又は種々のfused変異体で同時形質移入した。細胞を形質移入後48時間に回収し、ルシフェラーゼ活性を実施例7に記載したようにアッセイした。(図10B):Gliリポーター作成物のfusedトランス活性化。C3H10T1/2細胞は、p9XGliLucリポーター作成物、ptkRenillaルシフェラーゼ及びfused又は種々のfused変異体のためのCMV制御発現ベクターで同時形質移入した。細胞を形質移入後48時間に回収し、ルシフェラーゼ活性を実施例に記載したようにアッセイした。データは2回の測定の平均を示す。
【図11A−11E】アフリカツメガエル発生初期においてfuse-DN(配列番号:25)がSHhシグナル伝達を阻害することを示す写真である。(図11A)オタマジャクシ段階胚の背側図である。表示したのは、上側の胚はfused-DN(配列番号:25)注入であり、下側の胚は対照である;(図11B)オタマジャクシ段階胚の側面図である。上側の胚はfused-DN(配列番号:25)注入であり、下側の胚は対照である;(図11C及び11D)各々対照DNA及びfused-DN(配列番号:25)を注入した16神経胚段階のPax-6染色;(図11E)対照胚(左側)及びfused-DN(配列番号:25)注入胚(右側)の神経胚の底板のおけるSHh発現である。
【図12】fused(配列番号:2)のキナーゼ活性及びそのGli活性化を確認する写真である。表示したのは、実施例10に示したようにHAタグfused作成物で形質移入し、抗-HA抗体及びプロテインAセファロースで免疫沈降させた293細胞である。プロテインAビーズは、MBP存在下で実施例10に記載したようにキナーゼアッセイを施した。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的にシグナル伝達分子、特に、細胞増殖及び分化に含まれるヘッジホッグ(Hh)カスケードにおけるシグナル伝達及びメディエータ分子に関する。
【0002】
(発明の背景)
多細胞生物の発育は少なくとも部分的に、細胞、組織、又は器官のパターンの位置的上方を特定、指揮又は維持するメカニズムに依存している。種々の分泌されたシグナル伝達分子、例えばトランスフォーミング成長因子-ベータ(TGF-β)、Wnt、繊維芽成長因子及びヘッジホッグファミリーのメンバー等は、ショウジョウバエ及び脊椎動物における様々な細胞及び構造のパターン形成に関連している。Perrimon, Cell: 80: 517-520 (1995)。
ヘッジホッグ(Hh)は、キイロショウジョウバエにおける遺伝子スクリーニングによりセグメントポラリティ遺伝子として最初に同定され、Nusslein-Volhard等, Roux. Arch. Dev. Biol. 193: 267-282 (1984)、広範な発達機能を果たす。Perrimon, 上掲。1つのショウジョウバエHh遺伝子しか同定されていないが、3つのヒトHh相同体:ソニックHh(SHh)、デザートHh(DHh)及びインディアンHh(IHh)が単離されている、Echelard等, 上掲;Krauss等, Cell 75, 1431-44 (1993);Riddle等, Cell 75: 1401-16 (1993)。SHhは発育中の脊椎動物胚の脊索及び底板で高レベルで発現される。インビトロ外植片アッセイ並びにトランスジェニック動物におけるSHhの異所性発現は、SHhが神経管パターン形成において鍵となる役割を果たすことを示している、Echelard等, 上掲, Krauss等, Cell 75, 1431-44 (1993), Riddle等, Cell 75: 1401-16 (1993), Roelink等, Cell 81: 445-5 (1995)。インビトロ外植片アッセイ並びにトランスジェニック動物におけるSHhの異所性発現は、SHhが神経管パターン形成において鍵となる役割を果たすことを示している、Echelard等 (1993), 上掲, Ericson等, Cell 81: 747-56 (1995); Marti等, Nature 375: 322-5 (1995); Roelink等 (1995), 上掲; Hynes等, Neuron 19: 15-26 (1997)。また、Hhは、肢(Krauss等, Cel 75: 1431-44 (1993); Laufer等, Cell 79, 993-1003 (1994))、体節(Fan 及びTessier-Lavigne, Cell 79, 1175-86 (1994); Johnson等, Cell 79: 1165-73 (1994))、肺(Bellusci等, Develop. 124: 53-63 (1997))及び皮膚(Oro等, Science 276: 817-21 (1997))の発達においても役割を果たす。同様に、IHh及びDHhは骨、腸及び胚細胞発育に関連する、Apeqvist等, Curr. Biol. 7: 801-4 (1997); Bellusci等, Development 124: 55-63 (1997); Bitgood等, Curr. Biol. 6: 298-304 (1996); Roberts等, Development 121: 3163-74 (1995)。SHhノックアウトマウスは、SHhが脊椎動物発生の多くの面に重要であるという考えを更に強めた、Chiang等, Nature 383: 407-13 (1996)。 これらのマウスは、脊索及び底板といった中間構造における異常、神経管の腹側細胞細胞型の不存在、末端肢構造における不存在、単眼症、及び脊柱及び殆どの肋骨における不存在を示す。
【0003】
細胞表面において、Hhシグナルは、12膜貫通ドメインタンパク質Patched(Ptch)[Hooper及びScott, Cell 59: 751-65 (1989); Nakano等, Nature 341: 508-13 (1989)]及びG-タンパク質結合様レセプターSmoothened(Smo)[Alcedo等, Cell 86: 221-232 (1996); van den Heuval及びIngham, Nature 382: 547-551 (1996)]にリレーされると考えられている。遺伝子的及び生化学的証拠が、Ptch及びSmoが多成分レセプター複合体の一部であるレセプターモデルを支持している、Chen及びStruhl, Cell 87: 553-63 (1996); Marigo等, Nature 384: 176-9 (1996); Stone等, Nature 384: 129-34 (1996)。HhのPtchへの結合に際し、PtchのSmoに対する平常の阻害効果が解除され、Smoが細胞質膜を通したHhシグナルの伝達を可能にする。Ptch遺伝子における機能変異の喪失が、基底細胞母斑症候群(BCNS)、多発性基底細胞癌(BCC)を特徴とする遺伝病の患者で同定された。また、機能障害Ptch遺伝子変異は、多くの割合で散在性基底細胞癌腫を伴っていた、Chidambaram等, Cancer Research 56: 459-601 (1996); Gailani等, Nature Genet. 14: 78-81 (1996); Hahn等, Cell 85: 841-51 (1996); Johnson等, Science 272: 1668-71 (1996); Unden等, Cancer Res. 56: 4561-5 (1996); Wicking等, Am. J. Hum. Genet. 60: 21-6 (1997)。Ptch機能の喪失は、基底細胞癌における制御不能なSmoシグナル伝達を起こすと考えられる。同様に、Smo変異の活性化が散在性BCC腫瘍で同定され(Xie等, Nature 391: 90-2 (1998))、SHhのレセプター複合体におけるシグナル伝達サブユニットとしてのSmoの役割を強調している。しかしながら、PtchがSmoを制御することによる正確な機構は未だ明らかになっておらず、Hhシグナルがレセプターから下流の標的に伝達されることによるシグナル伝達機構も明確にされねばならない。ショウジョウバエにおける遺伝子上位分析は、幾つかのセグメントポラリティ遺伝子を同定し、それらはHhシグナル伝達経路の成分として機能することがわかった、Ingham, Curr. Opin. Genet. Dev. 5: 492-8 (1995); Perrimon, 上掲。これらは、キネシン様分子、Costal-2(Cos-2)[Robbins等, Cell 90: 225-34 (1997); Sisson等, Cell 90: 235-45 (1997)]、タンパク質指向性fused[Preat等, Genetics 135: 1047-62 (1993); Therond等, Proc. Natl. acad. Sci. USA 93: 4224-8 (1996)]、不明な機能指向性のfusedのサプレッサを持つ新規な分子[Pham等, Genetics 140: 587-98 (1995); Preat, Genetics 132: 725-36 (1992)]及びZnフィンガータンパク質Ci.[Alexandle等, Genes De. 10: 2003-12 (1996); Dominguez等, Science 272: 1621-5 (1996); Orenic等, Genes Dev. 4: 1053-67 (1990)]を含む。Hhシグナル伝達に関係する更なる成分は、転写因子CBP[Akimaru等, Nature 386: 735-738 (1997)]、ネガティブレギュレータslimb[Jiang及びStruhl, Nature 391: 493-496 (1998)]及びSHh応答成分COUP-TFII[Krishnan等, Science 278: 1947-1950 (1997)]を含む。
【0004】
Cos-2における変異は胚致死性であり、各セグメントの中心成分及びHh応答性遺伝子の拡張ドメインの複製を含むHh過剰発現に類似のフェノタイプを提示する。これに対して、fused及びCiについての変異胚は、各セグメント後部の欠失及び前部の鏡像様複製の置換及び前部の鏡像様複製の置換を含むHh機能の喪失に類似のフェノタイプを示す、Busson等, Roux. Arch. Dev. Biol. 197: 221-230 (1988)。Ciの分子キャラクタリゼーションは、それがWingless及びDppなどのHh応答性遺伝子を直接活性化する転写因子であることを示唆した、Alexandre等, (1996), 上掲; Therond等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 4224-8 (1996)。Cos-2及びfusedの推定反対機能に一致して、fused変異はCos-2変異体によって、及びfused変異体のサプレッサによって抑制される、Preat等, Genetics 135: 1047-62 (1993)。しかしながら、fused無しの変異及びN-末端キナーゼドメイン変異は、fused変異のサプレッサによって完全に抑制されるが、fusedのC-末端変異はfusedのサプレッサのバックグラウンドにおいて強いCos-2フェノタイプを表示する。このことは、fusedキナーゼドメインが、fusedのサプレッサが存在しない場合にSHhシグナル伝達の構成アクチベータとして作用することを示唆している。最近の研究は、92kDaショウジョウバエfused、Cos-2及びCiが多タンパク質複合体を伴う微小管に存在し、Hhシグナル伝達が微小管からのこの複合体の解離を導くことを示した、Robbins等, Cell 90: 225-34 (1997); Sisson等, Cell 90: 235-45 (1997)。fused及びCos-2の両方ともがHh処理に応答してリン酸化されるが、Robbins等, 上掲; Therond等, Genetics 142: 1181-98 (1996)、この活性の原因となるキナーゼは残って特徴付けられる。今日までに、これらの成分について知られている脊椎動物相同体は、Gliタンパク質ファミリー(例えば、Gli-1、Gli-2及びGli-3)のみである。これらは、Ciに構造的に関連するZnフィンガー推定転写因子である。これらの中で、Gli-1はSHhシグナルのメディエータ候補であることが示され[Hynes等, Neuron 15: 35-44 (1995), Lee等, Development 124: 2537-52 (1997); Alexandre等, Genes Dev. 10: 2003-13 (1996)]、Hhに応答する遺伝子活性化の機構がハエと脊椎動物の間で保存されることを示唆している。Hhカスケードにおける他のシグナル伝達成分が進化的に保存されるか否かを決定し、生化学レベルでのHhシグナル伝達におけるfusedの機能を試験するために、出願人はヒトfusedcDNAを単離して特性決定した。マウスでの組織分布は、fusedがSHh応答性組織で発現されることを示した。生化学的研究は、fusedが機能性キナーゼであることを示した。機能的研究は、fusedがGliのアクチベータであり、fusedのドミナントネガティブ形態がアフリカツメガエル胚におけるSHhシグナル伝達を阻止できるという証拠を提供する。これらのデータをまとめて、fusedがHhシグナル伝達に直接的に関連していることが示された。
本出願人は、ヒトfused(hfused)ポリペプチドをコードするcDNAwp同定し、よって、脊椎動物fused分子を初めて提供するものである。
【0005】
(発明の概要)
一実施態様では、本発明は、(a)図1のアミノ酸1〜260の配列(配列番号:24)を含むfusedポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)の補体に対して少なくとも約80%の配列同一性を有し;fusedの生物学的活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸を提供する。配列同一性は、好ましくは約85%、より好ましくは約90%、最も好ましくは約95%である。一態様において、単離された核酸は、図1のアミノ酸1〜1315の配列(配列番号:2)を有するポリペプチドに対して少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%の配列同一性を有する。好ましくは、最も高い配列同一性は、キナーゼドメイン(アミノ酸1〜約260(図1の配列番号:24))内で生じる。特に好ましいのは、アミノ酸位置33におけるリシンのコード化配列を含む核酸分子である。さらなる態様において、単離された核酸分子は、アミノ酸残基1〜約260(図1に示した配列番号:24)を有するヒトfusedポリペプチドをコードするDNAを含んでなる。さらに他の態様では、本発明は、(a)ATCC寄託番号209637のcDNA(命名:pRK5tkneo.hfused-1272)にコードされるのと同じ成熟ポリペプチドをコードするDNA分子、あるいは、ATCC209637の登録番号で寄託されたクローンpRK5tkneo.hfused-1272のコード化配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するDNAを含んでなる単離された核酸を提供する。またさらなる態様では、本発明はATCC寄託番号209637のcDNA(命名:pRK5tkneo.hfused-1272)の配列、又はそれに緊縮条件下でハイブリッド形成する配列をコードするヒトfusedを含んでなる核酸を提供する。
【0006】
他の実施態様では、本発明は、脊椎動物fusedポリペプチドをコードするDNAを含むベクターを提供する。そのようなベクターを含む宿主細胞も提供される。例えば、宿主細胞は哺乳動物細胞(例えばCHO細胞)、原核生物細胞(例えば大腸菌)又は酵母細胞(例えばサッカロミセスセレヴィシアエ(Saccaromyces cerevisiae))でよい。さらに、宿主細胞を、脊椎動物fusedの発現に適した条件下で培養し、細胞培地からそれを回収することを含んでなる脊椎動物fusedポリペプチドの製造方法も提供される。
【0007】
さらに他の実施態様では、本発明は単離されたfusedポリペプチドを提供する。特に、本発明は単離された天然配列fusedポリペプチドを提供し、それは一実施態様において図1の残基1〜1315(配列番号:2)を含んでなるアミノ酸配列を含むヒトfusedである。メチオニンから開始されてもされなくてもよいヒト及び他の天然脊椎動物fusedポリペプチドが特に含まれる。また、本発明は登録番号ATCC209637の下で寄託された核酸にコードされる脊椎動物fusedポリペプチドを提供する。
さらに他の実施態様では、本発明は、異種アミノ酸配列に融合した脊椎動物fusedポリペプチドを含んでなるキメラ分子を提供する。そのようなキメラ分子の例は、エピトープタグ配列又は免疫グロブリンの定常領域の融合した脊椎動物fusedポリペプチドを含むキメラ分子である。
さらに他の実施態様では、本発明は、図2で2515662(配列番号:2)として同定される核酸配列を含む発現された配列タグ(EST)を提供する。
さらに他の実施態様では、本発明は、ヘッジホッグシグナル伝達のfused変調に抗するアンタゴニスト及び促進するアゴニストを生じさせる化合物及び方法を提供する。特に、生物有機化学的小分子及びアンチセンスヌクレオチドを含む、SHシグナル伝達経路においてfusedの正常な機能発現を阻止、防止、阻害、及び/又は、中和する脊椎動物fusedのアンタゴニストである。
【0008】
さらに他の実施態様において、本発明は、ヒトfusedの選択的スプライシングされた変異体を提供する。またさらに他の実施態様では、本発明は、ヘッジホッグシグナル伝達のfused活性化を転調させる分子を同定するためのスクリーニング又はアッセイ方法を提供する。好ましくは、その分子は、fusedのその結合性複合体形成タンパク質との相互作用を阻止するか、複合体の分解を阻止又は阻害するかのいずれかである。このアッセイは、fused及び基質(例えば、Gli、COUP-TFII、slimb、CBP、MBP)を含む混合物の候補分子とのインキュベーション、及び候補化合物がその基質のfusedリン酸化を変調させる能力の検出を含む。スクリーニングされた分子は、好ましくは小分子薬候補である。特に、この方法はfused生物学的活性のアンタゴニスト又はアゴニストのためのスクリーニング技術に関係し、
(a)培地中でfused発現標的細胞を候補化合物に暴露し;そして
(b)細胞溶解液を分析してリン酸化のレベルの評価及び/又は同定をするか;又は
(c)処理した細胞のフェノタイプ又は機能変化を評点化し;
そして、当該結果を候補化合物に暴露していない対照細胞と比較することを含む。
さらに他の実施態様では、この方法は、特定の疾患がヘッジホッグシグナル伝達によって変調されるか否かを決定する診断方法に関係し、
(a)試験細胞又は組織を培養し;
(b)fused変調ヘッジホッグシグナル伝達を阻害できる化合物を投与し;そして
(c)細胞溶解液におけるfused基質に対するキナーゼ減弱の程度又は試験細胞におけるヘッジホッグ媒介フェノタイプ効果を測定することを含む。
【0009】
(好適な実施態様の詳細な説明)
I.定義
ここで使用される際の「脊椎動物fused」及び「脊椎動物fusedポリペプチド」という用語は、天然配列脊椎動物fused及びfusedの生物学的活性を有する脊椎動物fused変異体(ここで更に詳細に定義する)を含む。fusedは、ヒト組織型又は他の供給源といった種々の供給源から単離してもよく、あるいは組換え又は合成方法によって調製してもよい。
「天然配列脊椎動物fused」は、天然由来の脊椎動物fusedポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでいる。このような天然配列脊椎動物fusedは、自然から単離することもできるし、組換え又は合成手段により生産することもできる。「天然配列脊椎動物fused」という用語には、特に、脊椎動物fusedの自然に生じる切断形態、自然に生じる変異形態(例えば、選択的にスプライシングされた形態)及び脊椎動物fusedポリペプチドの自然に生じる対立遺伝子変異体が含まれる。天然脊椎動物fusedは、例えば、ヒト、マウス、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌなどの哺乳動物におけるfusedを含み、好ましくはヒトを意味する。よって、本発明の一実施態様において、天然配列ヒト脊椎動物fusedは、図1に示す配列番号:2のアミノ酸1〜1315を含有する成熟又は全長天然ヒト脊椎動物fusedであり、位置1に開始メチオニンを有しても有さなくてもよい。
【0010】
「脊椎動物fused変異体」とは、以下に定義されるように、(a)脊椎動物fusedポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の補体と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する活性な脊椎動物fusedを意味する。特別な実施態様において、脊椎動物fused変異体は、全長天然配列脊椎動物fusedについて図1に示した推定アミノ酸配列(配列番号:2)を有する脊椎動物fusedと少なくとも約80%のアミノ酸配列相同性を有する。このような脊椎動物fused変異体は、これらに限られないが、図1(配列番号:2)の配列のN-又はC-末端において一又は複数のアミノ酸残基が付加、もしくは欠失された脊椎動物fusedポリペプチドを含む。好ましくは、核酸又はアミノ酸配列同一性は、少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、さらにより好ましくは少なくとも約95%である。
【0011】
脊椎動物fused配列に対してここで同定されている「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、脊椎動物fused配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
ここで同定される脊椎動物fused配列に対する「パーセント(%)核酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、脊椎動物fused配列のヌクレオチドと同一である候補配列中のヌクレオチドのパーセントとして定義される。パーセント核酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の知る範囲にある種々の方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0012】
「エピトープタグ」なる用語は、ここで用いられるときは、「タグポリペプチド」に融合した脊椎動物fusedポリペプチド、又はその一部を含んでなるキメラポリペプチドを意味する。タグポリペプチドは、その抗体が産生され得るエピトープを提供するに十分な残基を有しているが、脊椎動物fusedポリペプチドの活性を阻害しないよう充分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは、抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8〜約50のアミノ酸残基(好ましくは約10〜約20の残基)を有する。
【0013】
ここで用いられる「イムノアドヘシン」なる用語は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性と免疫グロブリン定常ドメインとを結合した抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは、所望の結合特異性を持ち、抗体の抗原認識及び結合部位以外である(即ち「異種の」)アミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。イムノアドヘシン分子のアドへシン部分は、典型的には少なくともレセプター又はリガンドの結合部位を含む隣接アミノ酸配列である。イムノアドヘシンの免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2、IgG-3又はIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD又はIgMなどの任意の免疫グロブリンから得ることができる。イムノアドヘシンは文献に報告されており、T細胞レセプター*[Gascoigne等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 2936-2940 (1987)];CD4*[Capron等, Nature 337: 525-531 (1989); Traunecker等, Nature 339: 68-70 (1989); Zettmeissl等, DNA Cell Biol. USA 9: 347-353 (1990); Byrn等, Nature 344, 667-670 (1990)];L-セレクチン(ホーミングレセプター)[Watson等, J. Cell. Biol. 110, 2221-2229 (1990); Watson等, Nature 349, 164-167 (1991)];CD44*[Aruffo等, Cell 61, 1303-1313 (1990)];CD28*及びB7*[Linsley等, J. Exp. Med. 173, 721-730 (1991)];CTLA-4*[Lisley等, J. Exp. Med. 174, 561-569 (1991)];CD22*[Stamenkovic等, Cell 66. 1133-1144 (1991)];TNFレセプター[Ashkenazi等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 10535-10539 (1991)];NPレセプター[Bennett等, J. Biol. Chem. 266, 23060-23067 (1991)];IgEレセプターα鎖*[Ridgway及びGorman, J. Ce;;. Biol. 115, 要約, 1448 (1991)];HGFレセプター[Mark, M.R.等, 1992, 審査中]の融合物を含み、ここで星印(*)は、レセプターが免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであることを示す。
【0014】
ハイブリッド形成反応の「緊縮性」は、当業者によって容易に決定され、一般的に
プローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、プローブが長くなると適切なアニーリングのための温度が高くなり、プローブが短くなると温度は低くなる。ハイブリッド形成は、一般的に、相補的鎖がその融点(Tm)に近いがそれより低い環境に存在する場合における変性DNAの再アニールする能力に依存する。プローブとハイブリッド形成可能な配列との間の所望の相同性の程度が高くなると、使用できる相対温度が高くなる。その結果、より高い相対温度は、反応条件をより緊縮性にするが、低い温度は緊縮性を低下させる。さらに、緊縮性は塩濃度に逆比例する。ハイブリッド形成反応の緊縮性の更なる詳細及び説明は、Ausubel等, Current Protocols in Molecular Biology (1995)を参照のこと。
ここで定義される「緊縮性条件」は、(1)洗浄のために低イオン強度及び高温度、例えば、50℃において0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを用いるもの;(2)ハイブリッド形成中にホルムアミド等の変性剤、例えば、42℃において50%(vol/vol)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、及び750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを用いるもの;(3)42℃における50%ホルムアミド、5xSSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5xデンハード液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%のデキストラン硫酸と、42℃における0.2xSSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中の洗浄及び55℃でのホルムアミド、次いで55℃におけるEDTAを含む0.1xSSCからなる高緊縮性洗浄を用いるものによって同定される。
「中程度の緊縮性条件」は、Sambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されているように同定され、上記の緊縮性より低い洗浄溶液及びハイブリッド形成条件(例えば、温度、イオン強度及び%SDS)の使用を含む。中程度の緊縮性条件は、20%ホルムアミド、5xSSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5xデンハード液、10%デキストラン硫酸、及び20mg/mLの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中の37℃での終夜インキュベーション、次いで1xSSC中37−50℃でのいフィルターの洗浄といった条件である。当業者であれば、プローブ長などの因子に適合させる必要に応じて、どのようにして温度、イオン強度等を調節するかを認識するであろう。
【0015】
「単離された」とは、ここで開示された種々のポリペプチドを記述するために使用するときは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたポリペプチドを意味する。その自然環境の汚染成分とは、そのポリペプチドの診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、ポリペプチドは、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端あるいは内部アミノ酸配列を得るのに充分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離されたポリペプチドには、脊椎動物fusedの自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツのタンパク質が含まれる。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドは少なくとも1つの精製工程により調製される。
「単離された」脊椎動物fused核酸分子は、同定され、脊椎動物fused核酸の天然源に通常付随している少なくとも1つの汚染核酸分子から分離された核酸分子である。単離された脊椎動物fused核酸分子は、天然に見出される形態あるいは設定以外のものである。ゆえに、単離された脊椎動物fused核酸分子は、天然の細胞中に存在する脊椎動物fused核酸分子から区別される。
【0016】
「コントロール配列」という表現は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に好適なコントロール配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に参画するプレタンパク質として発現されているなら、そのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合したDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにあることを意味する。しかし、エンハンサーは必ずしも近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
【0017】
「抗体」という用語は最も広い意味において使用され、特に単一のモノクローナル抗体(アゴニスト及びアンタゴニスト抗体を含む)、及び多エピトープ特異性を持つ抗体組成物、並びに、これらが所望の生物学的活性を示す限りにおいて抗体断片(例えばFab、F(ab')2及びFv)を包含している。
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団、すなわち、構成する個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能性のある突然変異を除いて同一である集団から得られる抗体を指す。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対応する。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対応する異なる抗体を典型的に含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対応する。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが他の免疫グロブリンで汚染されていないハイブリドーマ培地で合成されるという点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均一な集団から得られるという抗体の特徴を示すものであり、或る特定の方法による抗体生産を必要とすると解釈すべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler及びMilsteinによって、Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる[例えば米国特許第4,816,567号(Cabilly等)参照]。
ここで、モノクローナル抗体は特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種から誘導された又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であるが、鎖の残りの部分は他の種から誘導された又は他の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、並びに、それらが所望の生物学的活性を示す限りそれらの抗体の断片を含む[米国特許第4,816,567号、Cabilly等;Morrison 等, Proc. Natl. acad. Sci. U.S.A. 81: 6851-6855 (1984)]。
【0018】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンから誘導された最小配列を含有する特定のキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はそれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab'、F(ab')2あるいは抗体の他の抗原結合性配列)である。大部分において、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、そのレシピエントの相補性決定領域(CDR)が、マウス、ラット、ヤギなどのヒト以外の種のCDR(ドナー抗体)に由来する所望の特異性、親和性及び容量を持つ残基で置換されている。ある場合は、ヒト免疫グロブリンのFv枠残基が対応する非ヒト残基で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、輸入されるCDR又は枠配列にも見られない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体の性能をさらに精密かつ最適化するために施される。一般にヒト化抗体は、CDR領域の全て又は実質上全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質上全てがヒト免疫グロブリン共通配列のものである少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含有するであろう。また、最適なヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含有するであろう。さらなる詳細については、Jones等, Nature 321: 522 -525 (1986);Reichmann等, Nature 332: 323-329 (1988);Presta, Curr. Op. struct. Biol. 2: 593 -596 (1992)及び1993年7月6日発行の米国特許第5,225,539号(Winter)を参照のこと。
【0019】
ここで意図している「活性な」及び「活性」とは、天然又は天然発生脊椎動物fusedの生物学的及び/又は免疫学的活性を保持する脊椎動物fusedの形態を意味する。好ましい活性は、ヘッジホッグシグナル伝達に結合及び影響し、例えば阻止又はその他の変調をさせる能力である。活性は、好ましくは基底細胞癌の病原を調節することを含む。他の好ましい生物化学的活性は、Gliのリン酸化又はリン酸化の変調をする能力である。
【0020】
ここで用いられる「アンタゴニスト」なる用語は、最も広い意味において、Hhシグナル伝達におけるfusedの正常な機能を阻止、防止、阻害、中和する任意の分子を含む。アンタゴニストの1つの特別な形態は、fusedとその結合又は複合体形成タンパク質との間の相互作用を阻害する分子を含む。同様に、ここで用いられる「アゴニスト」なる用語は、Hhシグナル伝達経路におけるfusedの正常な機能発現を促進、向上又は刺激する任意の分子を含む。fused及びその結合タンパク質のタンパク質−タンパク質相互作用に影響する好ましい分子は、後者の断片又は小さな生物有機分子、例えばペプチド類似物を含み、それらは正しい複合体形成の相互作用を防止又は促進するであろう。非限定的な例は、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、グリコペプチド、糖脂質、多糖類、オリゴ糖、核酸、生物有機分子、ペプチド類似物、製薬製剤又はその代謝物、転写及び翻訳制御配列などを含む。アンタゴニストの他の好ましい形態は、野生型fusedの正しい転写を阻害するアンチセンスヌクレオチドを含む。アンタゴニストの好ましい形態は、fusedのATP結合部位に特異的に結合するか結合を阻止する小分子である。
【0021】
「変調」又は「変調する」という語句は、シグナル伝達経路のアップレギュレーション又はダウンレギュレーションを意味する。私儀なる伝達の制御下での細胞プロセスは、これらに限られないが、特定遺伝子の転写;代謝、増殖、分化、接着、アポトーシス及び生存などの正常な細胞機能、並びに、形質転換、分化及び転移の阻止といった異常なプロセスを含みうる。
「ポリメラーゼ連鎖反応」又は「PCR」の技術は、ここで用いられる場合、一般に核酸、RNA及び/又はDNAの特定の切片の少量が1987年7月28日発行の米国特許第4,683,195号に記載されたように増幅される方法を意味する。一般的に、対象とする領域の末端から又は利用可能の必要性を越える配列情報は、オリゴヌクレオチドプライマーの設計を可能にし;これらのプライマーは増幅されるテンプレートの反対鎖の配列と同一又は類似している。2つのプライマーの5’末端ヌクレオチドは増幅された物質の末端と一致する。PCR配列は、全ゲノムDNA、及び全細胞性RNA、バクテリオファージ、又はプラスミド配列等から転写されたcDNAを形成する。一般的に、Mullis等, Cold Spring Harbor Symp. Quant Biol. 51: 263 (1987); Erlich, Ed., PCR Technology, (Stockton Press, NY, 1989)を参照のこと。ここで用いられるように、PCRは、プライマーとして公知の核酸を、そして核酸の特定の切片を増幅又は生成するために核酸ポリメラーゼを使用することを含む核酸試験試料の唯一ではない一例であると考えられる。
【0022】
II. 本発明の組成物と方法
A.全長脊椎動物fused
本発明は、本出願においてヒト及び脊椎動物fusedと称されるポリペプチドをコードする、新規に同定され単離された核酸配列を提供する。特に本出願人は、以下の実施例で更に詳細に開示するような、脊椎動物fusedポリペプチドをコードするcDNAを同定し単離した。(初期パラメータに設定された)BLAST、BLAST-2及びFastA配列アラインメントコンピュータプログラムを用いて、本出願人は、ヒトfusedの全長配列(図3に示す(配列番号:2))がショウジョウバエfused(配列番号:23)と28%のアミノ酸配列同一性を有することを見出した。従って、現在では、本出願で開示されるヒトfusedがヘッジホッグシグナル伝達カスケードの新たに同定されたメンバーであると考えられている。
【0023】
ヒト脊椎動物fused遺伝子の全長天然配列、又はその一部は、全長遺伝子を単離するための、又は図1(配列番号:1)に開示した脊椎動物fused配列と所定の配列同一性を有する更に他の脊椎動物相同遺伝子(例えば、脊椎動物fused又は他の種からの脊椎動物fusedの天然発生変異体をコードするもの)を単離するためのcDNAライブラリ用のハイブリッド形成プローブとして使用できる。場合によっては、プローブの長さは約20から約50塩基であろう。ハイブリッド形成プローブは、図1(配列番号:1)の核酸配列から、又は天然配列脊椎動物fusedのプロモーター、エンハンサーエレメント、及びイントロンを含むゲノム配列から誘導されうる。例えば、スクリーニング方法は、脊椎動物fused遺伝子のコード化領域を周知のDNA配列を用いて単離して、約40塩基の選択されたプローブを合成することを含む。ハイブリッド形成プローブは、32P又は35Sなどの放射性ヌクレオチド、アビジン/ビオチン結合系を解してプローブに結合したアルカリホスファターゼ等の酵素標識を含む種々の標識によって標識してよい。本発明の脊椎動物fused遺伝子に相補的な配列を有する標識したプローブは、ヒトcDNA、ゲノムDNA、又はmRNAのライブラリのスクリーニングに使用でき、それらのライブラリの何れのメンバーにプローブがハイブリッド形成するかを決定できる。
【0024】
B.脊椎動物fused変異体
ここに記載した全長天然配列脊椎動物fusedに加えて、脊椎動物fused変異体も調製できると考えられる。脊椎動物fused変異体は、公知の脊椎動物fusedDNAに適当なヌクレオチド変化を導入することにより、あるいは所望の脊椎動物fusedポリペプチドを合成することにより調製できる。当業者は、適切なアミノ酸変化が脊椎動物fusedポリペプチドの翻訳後プロセスを変えうることを理解するであろう。
天然全長配列脊椎動物fused又はここに記載した脊椎動物fusedの種々のドメインにおける変異は、例えば、米国特許第5,364,934号に記載されている保存的及び非保存的変異についての任意の技術及び指針を用いてなすことができる。変異は、結果として天然配列脊椎動物fusedと比較して脊椎動物fusedのアミノ酸配列が変化する脊椎動物fusedをコードする一又は複数のコドンの置換、欠失又は挿入であってよい。場合によっては、変異は少なくとも1つのアミノ酸の脊椎動物fused一又は複数のドメインの任意の他のアミノ酸による置換である。いずれのアミノ酸残基が所望の活性に悪影響を与えることなく挿入、置換又は欠失されるかの指針は、脊椎動物fusedの配列を相同性の知られたタンパク質分子の配列と比較し、相同性の高い領域内でなされるアミノ酸配列変化を最小にすることによって見出される。アミノ酸置換は、一のアミノ酸を類似した構造及び/又は化学特性を持つ他のアミノ酸で置換した結果、例えばロイシンのセリンでの置換、即ち保存的アミノ酸置換とすることができる。挿入及び欠失は、場合によっては1から5のアミノ酸の範囲内とすることができる。許容される変異は、配列においてアミノ酸の挿入、欠失又は置換を系統的に作成し、得られた変異体を下記の実施例に記載するインビトロアッセイの任意のもので活性について試験することにより決定される。
【0025】
変異は、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャンニング、及びPCR突然変異誘発等のこの分野で周知の技術を用いてなすことができる。部位特異的突然変異誘発[Carter等, Nucl. Acids Res., 13: 4331 (1986); Zoller等, Nucl. Acids Res., 10: 6487 (1987)]、カセット突然変異誘発[Wells等, Gene, 34: 315 (1985)]、制限的選択突然変異誘発[Wells等, Philos. Trans. R. Soc. London SerA, 317: 415 (1986)]又は他のこの分野で知られた技術をクローニングしたDNAに実施して、脊椎動物fused変異体DNAを作成することもできる。
また、隣接配列に沿って一又は複数のアミノ酸を同定するのにスキャンニングアミノ酸分析を用いることができる。中でも好ましいスキャンニングアミノ酸は、比較的小さく、中性のアミノ酸である。そのようなアミノ酸は、アラニン、グリシン、セリン、及びシステインを含む。アラニンは、ベータ炭素を越える側鎖を排除し変異体の主鎖構造を変化させにくいので、この群の中で典型的に好ましいスキャンニングアミノ酸である。また、アラニンは最もありふれたアミノ酸であるため典型的には好ましい。さらに、それは埋もれた及び露出した位置の両方に見られることが多い[Creighton, The Proteins, (W.H. Freeman & Co., N.Y.); Chothia, J. Mol. Biol., 150: 1 (1976)]。アラニン置換が十分な量の変異体を生じない場合は、アイソテリック(isoteric)アミノ酸を用いることができる。
図1に示したヒトfused配列では、キナーゼドメインがアミノ酸残基1−260(配列番号:24)で表され、その位置のリシン33はATP結合、即ち酵素活性に必要であることがわかった。
【0026】
C.脊椎動物fusedの修飾
脊椎動物fusedの共有結合的修飾は本発明の範囲内に含まれる。共有結合的修飾の一型は、脊椎動物fusedの標的とするアミノ酸残基を、脊椎動物fusedの選択された側鎖又はN又はC末端残基と反応できる有機誘導体化試薬と反応させることである。二官能性試薬での誘導体化が、例えば脊椎動物fusedを水不溶性支持体マトリクスあるいは抗-脊椎動物fused抗体の精製方法又はその逆で用いるための表面に架橋させるのに有用である。通常用いられる架橋剤は、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば4-アジドサリチル酸、3,3’-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)等のジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、ビス-N-マレイミド-1,8-オクタン等の二官能性マレイミド、及びメチル-3-[(p-アジドフェニル)-ジチオ]プロピオイミダート等の試薬を含む。
他の修飾は、グルタミニル及びアスパラギニル残基の各々対応するグルタミル及びアスパルチルへの脱アミノ化、プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリル又はトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化[T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp.79-86 (1983)]、N末端アミンのアセチル化、及び任意のC末端カルボキシル基のアミド化を含む。
【0027】
脊椎動物fusedの共有結合的修飾の他の型は、脊椎動物fusedポリぺプチドの、種々の非タンパク質様ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンの一つへの、米国特許第4,640,835号;第4,496,689号;第4,301,144号;第4,670,417号;第4,791,192号又は第4,179,337号に記載された方法での結合を含む。このような修飾は、哺乳動物系での循環における分子の半減期の増大が予想され;fused分子の半減期の延長は、fused変異体が治療薬として投与される場合などの或る種の状況下で有用であり得る。
また、本発明の脊椎動物fusedは、他の異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合した脊椎動物fusedを含むキメラ分子を形成する方法で修飾してもよい。一実施態様では、このようなキメラ分子は、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチドと脊椎動物fusedとの融合を含む。エピトープタグは、一般的には脊椎動物fusedのアミノ又はカルボキシル末端に位置する。このような脊椎動物fusedのエピトープタグ形態の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。また、エピトープタグの提供は、抗タグ抗体又はエピトープタグに結合する他の型の親和性マトリクスを用いたアフィニティ精製によって脊椎動物fusedを容易に精製できるようにする。もう一つの実施態様において、キメラ分子は脊椎動物fusedの免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定領域との融合体を含む。キメラ分子の二価形態では、このような融合はIgG分子のFc領域であり得る。
通常は、INF-γレセプターのリガンド-(IFN-γ)結合ドメインの隣接アミノ酸配列のC-末端が、可変領域に換えて免疫グロブリン定常領域の隣接アミノ酸配列のN-末端に融合するが、N-末端融合も可能である。
【0028】
典型的には、このような融合は、少なくとも免疫グロブリン重鎖の定常領域の機能的活性ヒンジ、CH2及びCH3ドメインを保持する。また、融合は、定常ドメインのFc部分のC-末端、又は重鎖のCH1の直近N-末端又は軽鎖の対応する領域にもなされる。これは、通常は、適当なDNA配列を作成し、それを組換え細胞培地に暴露することにより達成される。あるいは、イムノアドヘシンが周知の方法に従って合成される。
融合がなされる正確な位置は重要ではなく;特定の位置は公知であり、免疫グロブリンの生物学的活性、分泌又は結合特性を最適化するために選択されうる。
【0029】
好ましい実施態様では、IFN-γに対する結合部位を含む隣接アミノ酸配列のC-末端が、N-末端において、抗体のC-末端部分(特にFcドメイン)に融合し、免疫グロブリン、例えば免疫グロブリンGl(IgG-l)のエフェクター機能を含有する。上述したように、全重鎖定常領域を結合部位を含む配列に融合させることができる。しかしながら、より好ましくは、パパイン切断部位(IgGFcを化学的に定義する;残基216、重鎖定常領域の第1残基を114とする[Kobet等, 上掲]、又は他の免疫グロブリンの類似部位)の直上流のヒンジ領域で開始する配列が融合に用いられる。イムノアドヘシンにおいて異種タンパク質重鎖融合タンパク質が効率的に分泌されるには免疫グロブリン軽鎖が必要であるというのが以前の考えであったが、全IgGl重鎖を含むイムノアドヘシンでさえも軽鎖無しで効率的に分泌されることが見出された。軽鎖が不要であるので、本発明のイムノアドヘシンの作成に用いられる免疫グロブリン重鎖定常ドメインは、軽鎖架橋部位を持たなくてもよい。これは、十分に変化する免疫グロブリンの通常は軽鎖が結合する重鎖配列成分を除去し、そのような結合がもはや不可能とすることにより達成される。よって、IFN-γレセプター-免疫グロブリンキメラの或る実施態様では、CH1ドメインが完全に除去され得る。
【0030】
特に好ましい実施態様では、IFN-γレセプターの細胞外ドメインを含むアミノ酸配列がヒンジ領域及びCH2、CH3;又はIgG-1、IgG-2、IgG-3、又はIgG-4の重鎖のCH1、ヒンジ、CH2及びCH3ドメインに融合する。典型的な作成物の作成は実施例1に記載する。
幾つかの実施態様において、IFN-γレセプター-免疫グロブリン分子(イムノアドヘシン)は、単量体、二量体、又は多量体、特に二量体又は三量体として組み立てられる。一般的に、これらの組み立てられたイムノアドヘシンは、対応する免疫グロブリンのものに似た周知の単位構造を有する。基本的な4つの鎖構造単位(2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の二量体)は、IgG、IgA及びIgEが存在する形態である。4つの鎖単位は高分子量免疫グロブリンで繰り返され;IgMは一般にジスルフィド結合で保持された基本的な4つの鎖単位の五量体として存在する。IgAグロブリン、場合によってはIgGグロブリンは、血清中で多量体形態でも存在する。多量体の場合、4つの各鎖単位は同じでも異なっていてもよい。
【0031】
IFN-γレセプター-免疫グロブリンキメラの全免疫グロブリン部分が同じ免疫グロブリンからである必要はない。イムノアドヘシンの特性を最適化するために、異なる免疫グロブリンの種々の部分が結合され、天然免疫グロブリンの変異体及び誘導体がIFN-γについて上述した用に作成されうる。例えば、IgG-1のヒンジがIgG-3のものに弛緩されたイムノアドヘシン作成物が機能的であり、全IgG-1重鎖を含むイムノアドヘシンに匹敵する薬物動態を示すことがわかった。
種々のタグポリペプチド及びそれら各々の抗体はこの分野で良く知られている。例としては、ポリ−ヒスチジン(poly-his)又はポリ−ヒスチジン−グリシン(poly-his-gly)タグ;flu HAタグポリペプチド及びその抗体12CA5[Field等, Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165 (1988)];c-mycタグ及びそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10抗体[Evan等, Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985)];及び単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ及びその抗体[Paborsky等, Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990)]を含む。他のタグポリペプチドは、フラッグペプチド[Hopp等, BioTechnology, 6:1204-1210 (1988)];KT3エピトープペプチド[Martin等, Science, 255:192-194 (1992)];α-チューブリンエピトープペプチド[Skinner等, J. Biol. Chem., 266:15163-15166 (1991)];及びT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz-Freyermuth等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397 (1990)]を含む。好ましいタグはインフルエンザHAタグである。
【0032】
D.脊椎動物fusedの調製
以下の説明は、主として、脊椎動物fused核酸を含むベクターで形質転換又は形質移入された細胞を培養することにより特定の脊椎動物fusedを生産する方法に関する。もちろん、当該分野においてよく知られている他の方法を用いて脊椎動物fusedを調製することはできると考えられる。例えば、脊椎動物fused配列、又はその一部は、固相技術を用いた直接ペプチド合成によって生産してもよい[例えば、Stewart等, Solid-Phase Peptide Synthesis, W.H. Freeman Co., San Francisco, CA (1969);Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2154 (1963)参照]。手動技術又は自動によるインビトロタンパク質合成を行ってもよい。自動合成は、例えば、アプライド・バイオシステムズ・ペプチド合成機(Foster City, CA)を用いて、製造者の指示により実施してもよい。脊椎動物fusedの種々の部分を、別々に化学的に合成し、化学的又は酵素的方法を用いて結合させて全長脊椎動物fusedを生産してもよい。
【0033】
1.脊椎動物fusedをコードするDNAの単離
脊椎動物fusedをコードするDNAは、脊椎動物fusedmRNAを保有していてそれを検出可能なレベルで発現すると考えられる組織から調製されたcDNAライブラリから得ることができる。従って、ヒト脊椎動物fusedDNAは、実施例に記載されるように、ヒトの組織から調製されたcDNAライブラリから簡便に得ることができる。また脊椎動物fusedコード化遺伝子は、ゲノムライブラリから又はオリゴヌクレオチド合成により得ることもできる。
ライブラリは、対象となる遺伝子あるいはその遺伝子によりコードされるタンパク質を同定するために設計された(脊椎動物fusedに対する抗体又は少なくとも約20−80塩基のオリゴヌクレオチド等の)プローブによってスクリーニングできる。選択されたプローブによるcDNA又はゲノムライブラリのスクリーニングは、例えばSambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されている標準的な手順を使用して実施することができる。脊椎動物fusedをコードする遺伝子を単離する他の方法はPCR法を使用するものである[Sambrook等,上掲;Dieffenbach等, PCR Primer:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995)]。
【0034】
下記の実施例は、cDNAライブラリのスクリーニング技術を記載している。プローブとして選択されたオリゴヌクレオチド配列は、充分な長さで、疑陽性が最小化されるよう充分に明瞭でなければならない。オリゴヌクレオチドは、スクリーニングされるライブラリ内のDNAとのハイブリッド形成時に検出可能であるように標識されていることが好ましい。標識化の方法は当該分野において良く知られており、32P標識されたATPのような放射線標識、ビオチン化あるいは酵素標識の使用が含まれる。中程度の緊縮性及び高度の緊縮性を含むハイブリッド形成条件は、上掲のSambrook等に与えられている。
このようなライブラリースクリーニング法において同定された配列は、Genbank等の公共データベース又は個人の配列データベースに寄託され公衆に利用可能とされている周知の配列と比較及びアラインメントすることができる。分子の一定の領域内又は全長に渡っての(アミノ酸又は核酸レベルのいずれかでの)配列同一性は、相同性測定のための種々のアルゴリズムを用いるBLAST、BLAST-2、ALIGN、DNAstar、及びINHERIT等のコンピュータソフトウェアプログラムを用いた配列アラインメントを通して決定することができる。
タンパク質コード化配列を有する核酸は、初めてここで開示された推定アミノ酸配列を使用し、また必要ならば、cDNAに逆転写されなかったmRNAの生成中間体及び先駆物質を検出する上掲のSambrook等に記述されているような従来のプライマー伸展法を使用することにより得られる。
【0035】
2.宿主細胞の選択及び形質転換
宿主細胞を、ここに記載した脊椎動物fused生成のための発現又はクローニングベクターで形質移入又は形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適当に変性された常套的栄養培地で培養する。培養条件、例えば培地、温度、pH等々は、過度の実験をすることなく当業者が選ぶことができる。一般に、細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコール、及び実用技術は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach, M.Butler編 (IRL Press, 1991)及びSambrook等, 上掲に見出すことができる。
形質移入の方法、例えば、CaPO4及びエレクトロポレーションは当業者に知られている。用いられる宿主細胞に応じて、その細胞に対して適した標準的な方法を用いて形質転換はなされる。前掲のSambrook等に記載された塩化カルシウムを用いるカルシウム処理又はエレクトロポレーションが、原核生物又は実質的な細胞壁障壁を含む他の細胞に対して用いられる。アグロバクテリウム・トゥメファシエンスによる感染が、Shaw等, Gene, 23:315 (1983)及び1989年6月29日公開のWO 89/05859に記載されているように、或る種の植物細胞の形質転換に用いられる。このような細胞壁のない哺乳動物の細胞に対しては、Graham及びvan der Eb, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈降法が好ましい。哺乳動物細胞の宿主系形質転換の一般的な態様は米国特許第4,399,216号に記載されている。酵母菌中への形質転換は、典型的には、Van solingen等, J. Bact., 130:946 (1977)及びHsiao等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:3829 (1979)の方法に従って実施される。しかしながら、DNAを細胞中に導入する他の方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、無傷の細胞、又はポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチン等を用いる細菌プロトプラスト融合もまた用いることもできる。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keown等, Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)及び Mansour等, Nature, 336:348-352 (1988)を参照のこと。
【0036】
ここに記載のベクターにおいてDNAをクローン化あるいは発現するために適切な宿主細胞は、原核生物、酵母菌、又は高等真核生物細胞である。適切な原核生物は、限定するものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えば大腸菌のような腸内細菌科を含む。種々の大腸菌株が公衆に利用可能であり、例えば、大腸菌K12株MM294(ATCC31,446);大腸菌X1776(ATCC31,537);大腸菌株W3110(ATCC27,325)及びK5772(ATCC53,635)である。
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、脊椎動物fusedをコードするベクターのための適切なクローン化又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシアは、通常用いられる下等真核生物宿主微生物である。
脊椎動物fusedの発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては、ショウジョウバエS2及びスポドスペラSf9等の昆虫細胞並びに植物細胞が含まれる。有用な哺乳動物宿主株化細胞の例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)及びCOS細胞を含む。より詳細な例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub及びChasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));ヒト肺細胞 (W138, ATCC CCL 75);ヒト肝細胞 (Hep G2, HB 8065);及びマウス乳房腫瘍細胞 (MMT 060562, ATTC CCL51)を含む。適切な宿主細胞の選択は、この分野の技術常識内にある。
【0037】
3.複製可能なベクターの選択及び使用
脊椎動物fusedをコードする核酸(例えば、cDNA又はゲノムDNA)は、クローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクター内に挿入される。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、又はファージの形態とすることができる。適切な核酸配列が、種々の手法によってベクターに挿入される。一般に、DNAはこの分野で周知の技術を用いて適当な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。ベクター成分としては、一般に、これらに制限されるものではないが、一又は複数のシグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列を含む。これらの成分の一又は複数を含む適当なベクターの作成には、当業者に知られた標準的なライゲーション技術を用いる。
発現及びクローニングベクターは共に一又は複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。そのような配列は多くの細菌、酵母菌及びウイルスに対してよく知られている。プラスミドpBR322に由来する複製開始点は大部分のグラム陰性細菌に好適であり、2:プラスミド開始点は酵母菌に適しており、様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。好ましい複製可能なベクターは、プラスミドpRK5である。Holmes等, Science, 253: 1278-1280 (1991)。
【0038】
発現及びクローニングベクターは、典型的には、選べるマーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)例えばバシリに対する遺伝子コードD-アラニンラセマーゼのような、複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
哺乳動物細胞に適切な選べるマーカーの他の例は、DHFRあるいはチミジンキナーゼのように、脊椎動物fused核酸を取り込むことのできる細胞成分を同定することのできるものである。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、Urlaub 等により, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980)に記載されているようにして調製され増殖されたDHFR活性に欠陥のあるCHO株化細胞である。酵母菌中での使用に好適な選択遺伝子は酵母菌プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である[Stinchcomb等, Nature, 282:39(1979);Kingman等, Gene, 7:141(1979);Tschemper等, Gene, 10:157(1980)]。trp1遺伝子は、例えば、ATCC第44076号あるいはPEP4-1のようなトリプトファン内で成長する能力を欠く酵母菌の突然変異株に対する選択マーカーを提供する[Jones, Genetics, 85:12 (1977)]。
【0039】
発現及びクローニングベクターは、通常、脊椎動物fused核酸配列に作用可能に結合し、mRNA合成を制御するプロモーターを含む。種々の可能な宿主細胞により認識される好適なプロモーターが知られている。原核生物宿主での使用に好適なプロモーターはβ-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系[Cahng等, Nature, 275:615 (1978); Goeddel等, Nature, 281:544 (1979)]、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系[Goeddel, Nucleic Acids Res., 8:4057 (1980); EP 36,776]、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーター[deBoer 等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:21-25 (1983)]を含む。細菌系で使用するプロモータもまた脊椎動物fusedをコードするDNAと作用可能に結合したシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列を有する。
酵母菌宿主と共に用いて好適なプロモーター配列の例としては、3-ホスホグリセラートキナーゼ[Hitzeman 等, J. Biol. Chem., 255:2073 (1980)]又は他の糖分解酵素[Hess 等, J. Adv. Enzyme Reg., 7:149 (1968);Holland, Biochemistry, 17:4900(1978)]、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
【0040】
他の酵母菌プロモーターとしては、成長条件によって転写が制御される付加的効果を有する誘発的プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの利用を支配する酵素のプロモーター領域がある。酵母菌での発現に好適に用いられるベクターとプロモータはEP 73,657に更に記載されている。
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからの脊椎動物fused転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス(1989年7月5日公開のUK 2,211,504)、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及びサルウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノムから得られるプロモーター、異種性哺乳動物から得られるプロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、及び熱衝撃プロモーターから得られるプロモーターによって、このようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り制御される。
【0041】
より高等の真核生物による脊椎動物fusedをコードしているDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増強され得る。エンハンサーは、通常は約10から300塩基対で、プロモーターに作用してその転写を増強するDNAのシス作動要素である。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100−270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。エンハンサーは、脊椎動物fusedコード化配列の5’又は3’位でベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5’位に位置している。
また真核生物宿主細胞(酵母菌、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの通常は5’、時には3’の非翻訳領域から取得できる。これらの領域は、脊椎動物fusedをコードしているmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。
組換え脊椎動物細胞培養での脊椎動物fusedの合成に適応化するのに適切なさらに他の方法、ベクター及び宿主細胞は、Gething等, Nature, 293:620-625 (1981); Mantei等, Nature, 281:40-46 (1979); EP 117,060; 及びEP 117,058に記載されている。
【0042】
4.遺伝子増幅/発現の検出
遺伝子の増幅及び/又は発現は、ここで提供された配列に基づき、適切に標識されたプローブを用い、例えば、従来よりのサザンブロット法、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット法[Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77:5201-5205 (1980)]、ドットブロット法(DNA分析)、又はインサイツハイブリッド形成法によって、直接的に試料中で測定することができる。あるいは、DNA二本鎖、RNA二本鎖及びDNA−RNAハイブリッド二本鎖又はDNA-タンパク二本鎖を含む、特異的二本鎖を認識することができる抗体を用いることもできる。次いで、抗体を標識し、アッセイを実施することができ、ここで二本鎖は表面に結合しており、その結果二本鎖の表面での形成の時点でその二本鎖に結合した抗体の存在を検出することができる。
あるいは、遺伝子の発現は、遺伝子産物の発現を直接的に定量する免疫学的な方法、例えば細胞又は組織切片の免疫組織化学的染色及び細胞培養又は体液のアッセイによって、測定することもできる。試料液の免疫組織化学的染色及び/又はアッセイに有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、任意の哺乳動物で調製することができる。簡便には、抗体は、天然配列脊椎動物fusedポリペプチドに対して、又はここで提供されるDNA配列をベースとした合成ペプチドに対して、又は脊椎動物fusedDNAに融合し特異的抗体エピトープをコードする外因性配列に対して調製され得る。
【0043】
5.ポリペプチドの精製
脊椎動物fusedの形態は、培地又は宿主細胞の溶解液から回収することができる。膜結合性であるならば、適切な洗浄液(例えばトリトン-X100)又は酵素的切断を用いて膜から引き離すことができる。脊椎動物fusedの発現に用いられる細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊、又は細胞溶解剤などの種々の化学的又は物理的手段によって破壊することができる。
脊椎動物fusedを、組換え細胞タンパク又はポリペプチドから精製することが望ましい。適切な精製手順の例である次の手順により精製される:すなわち、イオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はカチオン交換樹脂、例えばDEAEによるクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG-75を用いるゲル濾過;IgGのような汚染物を除くプロテインAセファロースカラム;及び脊椎動物fusedのエピトープタグ形態を結合させる金属キレート化カラムである。この分野で知られ、例えば、Deutcher, Methodes in Enzymology, 182 (1990);Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer-Verlag, New York (1982)に記載された多くのタンパク質精製方法を用いることができる。選ばれる精製過程は、例えば、用いられる生産方法及び特に生産される脊椎動物fusedの性質に依存する。
【0044】
E.脊椎動物fusedの用途
(1)fusedは、Hhシグナル伝達の汎用メディエータである
図1(配列番号:1)のヒトfused全長分子は、ショウジョウバエfused(100kDa、dfused(配列番号:23))よりかなり大きな150kDaの予測分子量を持つタンパク質をコードする。ヒトfused(hfused)は、ショウジョウバエ相同体とキナーゼドメインにおいて顕著な相同性を示すが、残りの約1000アミノ酸においては、dfused又は他の公知のタンパク質と殆ど相同ではない。キナーゼドメインは、図1(配列番号:24及び2)に示すように、残基1からおよそ残基260まで伸びている。分子のC-末端におけるこの相違は、ショウジョウバエ分子のC-末端がその活性に必要であることから予想外のことである、Preat等, Nature 347: 87-9 (1990)。ATP結合部位はおよそアミノ酸位置33であり、キナーゼ活性に必要である。
ショウジョウバエにおける以前の研究は、Hhシグナルの発生にdfusedが必要であることを示したが、fusedがこのシグナル伝達を十分に活性化するかという問題は扱っていない。実施例に示すように、本出願人はここに、Hhカスケードのルシフェラーゼメディエータの前で、NHF3βプロモーターに存在するGliDNA結合成分を用い、それはfused単独でこの系のGli媒介転写を活性化できることを明らかに示した。さらに、この活性化には無傷のキナーゼドメイン及び無傷のC-末端非触媒ドメインの両方が必要であることがわかり、このことは、fusedがキナーゼとして機能すること及びC-末端が基質認識又はキナーゼ活性の調節において役割を果たすことという考えを支持している。
【0045】
本出願人は、本出願において、hfusedがキナーゼであり、MBPなどの人工的基質をリン酸化できることを示した。しかしながら、hfusedの生理的基質の同定は決定されずに残っている。1つの明確な候補はGli-1自身であり、hfusedによるGli-1のリン酸化がインビトロで検出できる。
ヒトfusedが脊椎動物におけるHhシグナル伝達に必須であるか否かを決定するために、ATP結合部位(およそアミノ酸残基33)に保持されたリシンを変えることにより変異体を作成した。典型的には、このような変異体は、基質及び/又は調節因子への接近を阻止することにより対応する野生型キナーゼの阻害剤として作用する、He等, Nature 374, 617-22 (1995)。2-細胞段階アフリカツメガエル胚において過剰発現された場合、最も顕著なフェノタイプは、注入した胚の約30%における融合眼の存在である。幾つかの系の証拠は、このフェノタイプがHhシグナル伝達の阻害によると考えられることを示している。第1に、SHhノックアウトは、最近SHh遺伝子の変異が原因とされた単眼症フェノタイプを表現する、Chiang等, Nature 383: 407-13 (1996)。第2に、SHh発現の低下した又はPKAの構成的活性形態を注入したゼブラフィッシュ胚(シクロップ(cyclop))では、Hh経路のネガティブレギュレータはシクロップである。第3に、前索板から発したSHhが、連続的眼分野の中心において眼の発達に必要な鍵となる転写因子のPax-6の発現を阻害することを示した。、Ekker等, Curr. Biol. 5: 944-55 (1995); Li等, Development 124: 603-15 (1997); Macdonald等, Development 121: 3267-78 (1995)。最後に、fused-DN注入したPax-6胚の染色は発現の単一分野を明らかにし、前索板から発するSHhの欠如が眼分野の中心におけるPax-6発現をダウンレギュレートすることを示唆している。
【0046】
Hhシグナル伝達経路におけるfusedの位置を確認するために、hfused-DNを注入したアフリカツメガエル胚の底板におけるSHhの発現がGli-1の同時注入によって低下しうる。このことは、SHhシグナル伝達経路においてfusedがGliと関連して作用することを示唆している。
fusedの組織分布は、それがSHh応答細胞において発現されることを示す。特に、その発現パターンは、それ自身がSHhシグナル伝達経路の標的遺伝子であるHhレセプターの結合成分であるPtchと良く重複する。これらのデータは、fusedが異なる組織に対してSHhが有する広範な効果の媒介に含まれることを示唆している。機能的には、これはカエル胚において再び観察され、そこではfused-DNが眼の発達及び底板におけるSHh発現を阻害した。
また、hfused-DNは、インディアンHhによって調節されるカエル腸などの組織の正常な発達に影響することも明らかとなった。これは、fusedが各々IHh及びDHh作用部位である腸及び精巣で発現されるという事実と組み合わせて、fusedが、Hhタンパク質ファミリーの全メンバーについてのシグナル伝達の汎用メディエータであることを示唆している。
【0047】
非常に高いレベルのfusedmRNAが胚細胞に見出され、その発達はDHhによって調節されることがわかった。DHhについてのホモ接合性変異マウスは胚細胞の発達が無く、生育可能だが繁殖不能である(Bitgood等, Curr. Biol. 6: 298-304 (1996))。しかしながら、ヘッジホッグレセプターのPatchedは、間質ライディヒ細胞で発現され、fusedが発現される胚細胞では発現されない、Bitgood等, 上掲。この不一致は、さらなるヘッジホッグレセプターの存在を示唆している。
本出願人は、実施例において、野生型hfusedがリポーターアッセイにおけるGliを活性化できることを示す。さらに、fused-DNを注入したカエル胚の底板におけるSHhの発現は、Gli-1の同時注入によって救済される。これらを考え合わせると、これらの観察は、このシグナル伝達経路においてfusedがSmoの下流かつGliの上流にあるという主張に合致し、今日までのショウジョウバエにおける遺伝子証拠と一致する。
【0048】
(2)脊椎動物fusedの一般的用途
脊椎動物fusedをコードする核酸配列(又はそれらの補体)は、ハイブリッド形成プローブとしての使用を含む分子生物学の分野において、染色体及び遺伝子マッピングにおいて、及びアンチセンスRNA及びDNAの生成において種々の用途を有している。また、脊椎動物fused核酸は、ここに記載される組み換え技術による脊椎動物fusedポリペプチドの調製にも有用であろう。
全長天然配列脊椎動物fused遺伝子、又はその一部は、全長遺伝子の単離又は図1(配列番号:1)に開示された脊椎動物fused配列に対して所望の配列同一性を持つ更に他の遺伝子(例えば、脊椎動物fusedの天然発生変異体又は他の種からの脊椎動物fusedをコードするもの)の単離のためのcDNAライブラリ用のハイブリッド形成プローブとして使用できる。場合によっては、プローブの長さは約20〜約50塩基である。ハイブリッド形成プローブは、図1(配列番号:1)の核酸配列から、又は天然配列脊椎動物fusedのプロモーター、エンハンサー成分及びイントロンを含むゲノム配列から誘導され得る。例えば、スクリーニング法は、脊椎動物fused遺伝子のコード化領域を周知のDNA配列を用いて単離して約40塩基の選択されたプローブを合成することを含む。ハイブリッド形成プローブは、32P又は35S等の放射性ヌクレオチド、又はアビジン/ビオチン結合系を介してプローブに結合したアルカリホスファターゼ等の酵素標識を含む種々の標識で標識されうる。本発明の脊椎動物fused遺伝子に相補的な配列を有する標識されたプローブは、ヒトcDNA、ゲノムDNA又はmRNAのライブラリーをスクリーニングし、それらのライブラリーの何れのメンバーがプローブにハイブッド形成するかを決定するのに使用できる。ハイブリッド形成技術は、以下の実施例において更に詳細に記載する。
また、プローブは、PCR技術に用いて、密接に関連した脊椎動物fused配列の同定のための配列のプールを作成することができる。
【0049】
また、脊椎動物fusedをコードする核酸配列は、その脊椎動物fusedをコードする遺伝子のマッピングのため、及び遺伝子疾患を持つ個体の遺伝子分析のためのハイブリッド形成プローブの作成にも用いることができる。ここに提供される核酸配列は、インサイツハイブリッド形成、既知の染色体マーカーに対する結合分析、及びライブラリーでのハイブリッド形成スクリーニング等の周知の技術を用いて、染色体及び染色体の特定領域にマッピングすることができる。
脊椎動物fusedポリペプチドは、究極的にヘッジホッグシグナル伝達の変調をもたらすfusedとの複合体形成に含まれる他のタンパク質又は分子を同定するアッセイに用いることができる。あるいは、これらの分子は、その基質のfusedキナーゼリン酸化を変調させることもできる。このような方法によって、結合性相互作用の阻害剤を同定することができる。このような結合性相互作用に含まれるタンパク質も、ペプチド又は小分子阻害剤又は結合性相互作用のアゴニストのスクリーニングに用いることができる。また、脊椎動物fusedは、関連する複合体形成タンパク質の単離に使用することもできる。スクリーニングアッセイは、天然脊椎動物fusedの生物学的活性に似たリード化合物の発見のために、又は脊椎動物fusedに対して基質として作用するものの発見のために設計される。このようなスクリーニングアッセイは、化学的ライブラリーの高スループットスクリーニングにも用いられ、小分子候補薬剤の同定に特に適したものとする。考慮される小分子は、合成有機又は無機化合物を含む。アッセイは、この分野で良く知られ特徴付けられているタンパク質−タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、免疫検定及び細胞ベースのアッセイを含む種々の型式で実施される。
【0050】
脊椎動物fused又はその修飾形態をコードする核酸は、トランスジェニック動物又は「ノックアウト」動物を作成するのに用いることができ、言い換えると、治療的に有用な薬剤の開発及びスクリーニングに有用である。トランスジェニック動物(マウス又はラット等)は、出生前、例えば胚段階で、その動物又はその動物の祖先に導入された導入遺伝子を含む細胞を有する動物である。導入遺伝子とは、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノムに組み込まれたDNAである。一実施形態では、脊椎動物fusedをコードするcDNAを、確立された技術により脊椎動物fusedをコードするゲノムDNAをクローン化するために使用することができ、ゲノム配列を、脊椎動物fusedをコードするDNAを発現する細胞を有するトランスジェニック動物を産生するために使用することができる。特にマウス又はラット等のトランスジェニック動物を産生する方法は当該分野において常套的になっており、例えば米国特許第4,736,866号や第4,870,009号に記述されている。典型的には、特定の細胞を組織特異的エンハンサーでの脊椎動物fused導入遺伝子の導入の標的にする。胚段階で動物の生殖系列に導入された脊椎動物fusedをコードする導入遺伝子のコピーを含むトランスジェニック動物は、脊椎動物fusedをコードするDNAの増大した発現の影響を調べるために使用できる。このような動物は、例えばその過剰発現を伴う病理的状態に対して保護をもたらすと思われる試薬のテスター動物として使用できる。例えば、基底細胞癌では、ケラチン5又は14を用いて皮膚の基底細胞においてfusedが過剰発現される可能性がある。発明のこの側面においては、動物を試薬で処理し、導入遺伝子を有する未処理の動物に比べ病状の発病率が低ければ、疾患に対する治療的処置の可能性が示される。
【0051】
脊椎動物fusedの非ヒト相同体は、動物の胚性細胞に導入された脊椎動物fusedをコードする変更ゲノムDNAと、脊椎動物fusedをコードする内在性遺伝子との間の相同的組換えによって、脊椎動物fusedをコードする欠陥又は変更遺伝子を有する脊椎動物fused「ノックアウト」動物を作成するために使用できる。例えば、脊椎動物fusedをコードするcDNAは、確立された技術に従い、脊椎動物fusedをコードするゲノムDNAのクローニングに使用できる。脊椎動物fusedをコードするゲノムDNAの一部を欠失したり、組み込みを監視するために使用する選択可能なマーカーをコードする遺伝子等の他の遺伝子で置換することができる。典型的には、ベクターは無変化のフランキングDNA(5'と3'末端の両方)を数キロベース含む[例えば、相同的組換えベクターについてはThomas and Capecchi, Cell, 51:503 (1987)を参照のこと]。ベクターは胚性幹細胞に(例えば電気穿孔法等によって)導入し、導入されたDNAが内在性DNAと相同的に組換えられた細胞を選択する[例えば、Li等, Cell, 69:915 (1992)参照]。選択された細胞は次に動物(例えばマウス又はラット)の胚盤胞内に注入され、集合キメラを形成する[例えば、Bradley, Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E. J. Robertson, ed. (IRL, Oxford, 1987), pp. 113-152参照]。その後、キメラ性胚を適切な偽妊娠の雌性乳母に移植し、「ノックアウト」動物を作ると言われる。胚細胞に相同的に組換えられたDNAを有する子孫は標準的な技術により同定され、それらを利用して動物の全細胞が相同的に組換えられたDNAを含む動物を繁殖させることができる。ノックアウト動物は、脊椎動物fusedポリペプチドが不在であることによるある種の病理的状態及び病理的状態の進行に対して防御する能力によって特徴付けられる。
【0052】
fusedは、Hhファミリー(SHh、IHh、DHh)の全メンバーに対する汎用メディエータとして関連しているので、一般的なHhシグナル伝達に関係する疾患状態及び疾病もfused及びそのアンタゴニスト及びアゴニストで治療可能であろう。例えば、SHh活性化(例えば、fusedアゴニスト)は、最近神経系の種々の変性疾患、例えば、パーキンソン病、記憶障害、アルツハイマー病、ルー・ゲーリグ病、ハンティングトン病、精神分裂病、発作及び薬物嗜癖の治療薬として推奨されている。最近の研究は、Dhh変異性の雄が、成熟精子への分化を完全にする精母細胞の欠失による不妊であることを示唆している、Bitgood等, Curr. Biol. 6: 298-304 (1996); Bitgood等, Dev. Biol. 172: 126-138 (1995)。さらに、fusedアゴニストは、腸疾患、骨疾患、皮膚疾患、精巣の疾患、潰瘍、肺疾患、膵臓の疾患、糖尿病、骨粗鬆症の治療にも使用できる。
タンパク質キナーゼドメインの存在は、fusedが、Hhシグナル伝達においてタンパク質キナーゼファミリーのメンバーと同様に作用することを示唆している。タンパク質キナーゼは、分化して成長している細胞における調節回路の必須成分である;Preat等, Nature 347: 87-89 (1990)。これらの酵素の多くは細胞外シグナルの伝達に含まれ、一次シグナルの効果を増幅し汎発するリン酸化事象のカスケードを介して作用する。前に述べたように、ショウジョウバエfusedは他の細胞内セリン/トレオニンキナーゼに対してかなりの相同性を有する。多くのセリン/トレオニンキナーゼは、酵母菌及び哺乳動物の細胞周期制御に関連する、hUNTER, cELL 5: 823-829 (1987); Dunphy & Newport, Cell 55: 925-928 (1988); Lee & Nurse, Trend. Genet. 4: 287-290 (1988)。
【0053】
また、Hhシグナル伝達の抑制又は阻害も治療方法の対象である。不活性fusedがHhシグナル伝達を阻害することが示されたので、fusedアンタゴニストもHhシグナル伝達に対してアンタゴニスト的であると予測される。Hhシグナル伝達の抑制は、Hhシグナル伝達を特徴付けられる疾患状態又は疾病において有用である。例えば、SHhは基底細胞癌において活性であり、DHhは精母細胞において活性である。Hhシグナル伝達の阻害剤又はアンタゴニストは、各々基底細胞の治療又は雄の避妊において有効な治療薬である。
Hhシグナル伝達の刺激も治療方法の対象である。Hhシグナル伝達の活性化は、不活性又は不十分なHhシグナル伝達に特徴付けられる疾患状態又は疾病において有用である。例えば、神経系の変性疾患、例えば、パーキンソン病、記憶障害、アルツハイマー病、ルー・ゲーリグ病、ハンティングトン病、精神分裂病、発作及び薬物嗜癖である。さらに、fusedアゴニストは、腸疾患、骨疾患、皮膚疾患、精巣の疾患(不妊症を含む)、潰瘍、肺疾患、膵臓の疾患、糖尿病、骨粗鬆症の治療に使用できる。
【0054】
F.抗脊椎動物fused抗体
本発明は、さらに抗-脊椎動物fused抗体を提供するものである。抗体の例としては、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性及びヘテロ抱合体抗体が含まれる。
1.ポリクローナル抗体
本発明の抗-脊椎動物fused抗体はポリクローナル抗体を含む。ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に知られている。哺乳動物においてポリクローナル抗体は、例えば免疫化剤、及び所望するのであればアジュバントを、一又は複数回注射することで発生させることができる。典型的には、免疫化剤及び/又はアジュバントを複数回皮下又は腹腔内注射により、哺乳動物に注射する。免疫化剤は、脊椎動物fusedポリペプチド又はその融合タンパク質を含みうる。免疫化剤を免疫化された哺乳動物において免疫原性が知られているタンパク質に抱合させるのが有用である。このような免疫原タンパク質の例は、これらに限られないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン及び大豆トリプシンインヒビターが含まれる。使用され得るアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコラート)が含まれる。免疫化プロトコールは、過度の実験なく当業者により選択されるであろう。
【0055】
2.モノクローナル抗体
あるいは、抗脊椎動物fused抗体はモノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein, Nature, 256:495 (1975)に記載されているようなハイブリドーマ法を使用することで調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物を典型的には免疫化剤により免疫化することで、免疫化剤に特異的に結合する抗体を生成するかあるいは生成可能なリンパ球を誘発する。また、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。
免疫化剤は、典型的には脊椎動物fusedポリペプチド又はその融合タンパク質を含む。一般にヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、あるいは非ヒト哺乳動物源が望まれている場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を不死化株化細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する[Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103]。不死化株化細胞は、通常は、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯動物、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウスの骨髄腫株化細胞が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の生存又は成長を阻害する一又は複数の物質を含有する適切な培地で培養される。例えば、親細胞が、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培地は、典型的には、ヒポキサチン、アミノプチリン及びチミジンを含み(「HAT培地」)、この物質がHGPRT欠乏性細胞の増殖を阻止する。
【0056】
好ましい不死化株化細胞は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体発現を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性のものである。より好ましい不死化株化細胞はマウス骨髄腫株であり、これは例えばカリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerやメリーランド州ロックビルのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより入手可能である。ヒトモノクローナル抗体を生成するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫株化細胞も開示されている[Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984)、Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63]。
次いでハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、脊椎動物fusedに対するモノクローナル抗体の存在について検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫測定法(ELISA)等のインビトロ結合検定法によって測定する。このような技術及びアッセイは、当該分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson及びPollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)によるスキャッチャード分析法によって測定することができる。
【0057】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを制限希釈工程によりサブクローニングし、標準的な方法で成長させることができる[Goding, 上掲]。この目的のための適当な培地には、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地及びRPMI-1640倍地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物においてインビボで腹水として成長させることもできる。
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA−セファロース法、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー法、ゲル電気泳動法、透析法又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製方法によって培養培地又は腹水液から単離又は精製される。
【0058】
また、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4,816,567号に記載された方法により作成することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、常套的な方法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたら、DNAは発現ベクター内に配することができ、これが宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは免疫グロブリンタンパク質を生成などしない骨髄腫細胞内に形質移入され、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成をすることができる。また、DNAは、例えば相同マウス配列に換えてヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより[US. Patent No.4,816,567;Morrison等, 上掲]、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部又は全部を共有結合することにより修飾することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインの代わりに置換するか、本発明の抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに置換し、キメラ性二価抗体を産生することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインに置換でき、あるいは本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに置換でき、キメラ性二価抗体を生成する。
抗体は一価抗体であってもよい。一価抗体の調製方法は当該分野においてよく知られてる。例えば、一つの方法は免疫グロブリン軽鎖と修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は一般的に、重鎖の架橋を防止するようにFc領域の任意のポイントで切断される。あるいは、関連するシステイン残基を他のアミノ酸残基で置換するか欠失させて架橋を防止する。
一価抗体の調製にはインビトロ法がまた適している。抗体の消化による、その断片、特にFab断片の生成は、当該分野において知られている慣用的技術を使用して達成できる。
【0059】
3.ヒト化抗体
本発明の抗-脊椎動物fused抗体は、さらにヒト化抗体又はヒト抗体を含む。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖あるいはその断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986); Riechmann等, Nature, 332:323-329 (1988); 及びPresta, Curr. Op Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]。
【0060】
非ヒト抗体をヒト化する方法はこの分野でよく知られている。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は基本的に齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することによりウィンター(winter)及び共同研究者[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536 (1988)]の方法に従って、齧歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することにより実施される。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
また、ヒト抗体は、ファージ表示ライブラリ[Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381 (1992);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581 (1991)]を含むこの分野で知られた種々の方法を用いて作成することもできる。また、Cole等及びBoerner等の技術も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用することができる[Cole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss. p.77(1985)及びBoerner等, J. Immunol., 147(1):86-95(1991) ]。
【0061】
4.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒトもしくはヒト化抗体である。本発明の場合において、結合特異性の一方は脊椎動物fusedに対してであり、他方は任意の他の抗原、好ましくは細胞表面タンパク質又はレセプター又はレセプターサブユニットに対してである。
二重特異性抗体を作成する方法は当該技術分野において周知である。伝統的には、二重特異性抗体の組換え生産は、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づく[Milstein及びCuello, Nature, 305:537-539 (1983)]。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖を無作為に取り揃えるため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その内一種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常達成される。同様の手順が1993年5月13日公開のWO 93/08829、及びTraunecker等, EMBO J.,10:3655-3656 (1991)に開示されている。
所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合できる。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2及びCH3領域の一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。少なくとも一つの融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が存在することが望ましい。免疫グロブリン重鎖融合をコードするDNA、及び望むのであれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。二重特異性抗体を作成するための更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210(1986)を参照されたい。
【0062】
5.ヘテロ抱合体抗体
ヘテロ抱合抗体もまた本発明の範囲に入る。ヘテロ抱合抗体は、2つの共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため[米国特許第4,676,980号]及びHIV感染の治療のために[WO 91/00360; WO 92/200373; EP 03089]提案されている。この抗体は、架橋剤に関連したものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することにより、免疫毒素を作成することができる。この目的に対して好適な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチリミデート、及び例えば米国特許第4,6767,980号に開示されているものが含まれる。
【0063】
G.抗-脊椎動物fused抗体の用途
本発明の抗-脊椎動物fused抗体は様々な有用性を有している。例えば、抗-脊椎動物fused抗体は、脊椎動物fusedの診断アッセイ、例えばその特定細胞、組織、又は血清での発現の検出に用いられる。競合的結合アッセイ、直接又は間接サンドウィッチアッセイ及び不均一又は均一相で行われる免疫沈降アッセイ[Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, CRC Press, Inc. (1987) pp. 147-158]等のこの分野で知られた種々の診断アッセイ技術が使用される。診断アッセイで用いられる抗体は、検出可能な部位で標識される。検出可能な部位は、直接又は間接に検出可能なシグナルを発生しなければならない。例えば、検出可能な部位は、3H、14C、32P、35S又は125I等の放射性同位体、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン又はルシフェリン等の蛍光又は化学発光化合物、あるいはアルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ又はセイヨウワサビペルオキシダーゼ等の酵素であってよい。Hunter等 Nature, 144:945 (1962);David等, Biochemistry, 13: 1014 (1974);Pain等, J. Immunol. Meth., 40:219 (1981) ;及びNygren, J. Histochem. and Cytochem., 30:407 (1982)に記載された方法を含む、抗体を検出可能な部位に抱合するためにこの分野で知られた任意の方法が用いられる。
また、抗-脊椎動物fused抗体は、組換え細胞培養又は天然供給源からの脊椎動物fusedのアフィニティー精製にも有用である。この方法においては、脊椎動物fusedに対する抗体を、当該分野でよく知られている方法を使用して、セファデックス樹脂や濾過紙のような適当な支持体に固定化する。次に、固定化された抗体を、精製する脊椎動物fusedを含む試料と接触させた後、固定された抗体に結合した脊椎動物fused以外の試料中の物質を実質的に全て除去する適当な溶媒で支持体を洗浄する。最後に、脊椎動物fusedを抗体から離脱させる他の適当な溶媒で支持体を洗浄する。
【0064】
H.融合アンタゴニスト
本発明の融合アンタゴニスト及びアゴニスト化合物を生成させるのに幾つかの方法を好適に用いることができる。アンタゴニスト分子が細胞内部に標的化でき、野生型fusedを正常な作用から阻害又は防止する任意の方法が好ましい。例えば、実施例で同定されるドミナントネガティブ変異体等の変異体fusedを含む競合的阻害剤は、fusedのHhシグナル伝達に必要な他のタンパク質との正しい結合を阻止する。膜貫通輸送に適した電荷、サイズ及び疎水性等の、そのようなアンタゴニスト又はアゴニスト分子のさらなる特性は、当業者によって容易に決定される。
fusedの模倣物又は他の相同体が同定され評価される場合、細胞を試験化合物に暴露し、ヒトfusedのみに暴露したポジティブ対照、化合物にも天然リガンドにも暴露していないネガティブ対照と比較する。fusedシグナル変調のアンタゴニスト又はアゴニストを同定死評価する場合は、細胞を天然リガンドの存在下で本発明の化合物に暴露し、試験化合物に暴露していない対照と比較する。
【0065】
本発明のアンタゴニスト/アゴニスト化合物のホスファターゼ阻害/促進活性の一次スクリーニングとして検出アッセイが用いられる。このアッセイは、試験範囲の濃度、例えば100mMから1pMの範囲で試験し、リン酸化又はシグナル伝達が対照に比較して50%減少又は増加する量の濃度を計算することにより、化合物の相対的能力を評価するのみ使用することもできる。
アッセイは、fused基質のリン酸化に影響する化合物の同定のために実施してもよい。特に、アッセイはfusedのリン酸化活性を増大させる化合物の同定のために実施でき、アッセイは、fused基質のリン酸化を低下させる化合物を同定するために実施できる。アッセイは、タンパク質−タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、免疫アッセイ、細胞ベースのアッセイ等を含むが種々の様式で実施できる。このようなアッセイの様式は、この分野で公知である。
本発明のスクリーニングアッセイは、化学的ライブラリの高スループットスクリーニングに適用でき、特に、小分子薬剤候補の同定に適している。
【0066】
(1)アンタゴニスト及びアゴニスト分子
fusedシグナル伝達のアンタゴニスト及び/又はアゴニストをスクリーニングするために、アッセイ混合物を、候補となる製薬剤の存在下であるが、fusedが参照活性でヘッジホッグシグナル伝達を誘発する条件下でインキュベートした。混合物成分は、必要なヘッジホッグ活性を与えるために任意の順序で添加できる。インキュベーションは、最適な結合を促進する任意の温度、典型的には4℃から40℃、より通常は15℃から40℃で実施する。インキュベーション時間も同様に最適結合のために選択されるが、迅速で高スループットのスクリーニングを促進するために最小化され、典型的には約0.1から10時間、好ましくは5時間未満、より好ましくは2時間未満である。インキュベーションの後、候補製薬剤のfusedシグナル伝達に対する効果を任意の便利な方法で決定する。細胞無しの結合型アッセイでは、結合及び非結合成分を分離するための分離工程がしばしば用いられる。分離は、例えば、沈殿(例えばTCA沈殿、免疫沈降など)、固定化(例えば、固体基体上)によってなされ、次いで洗浄される。結合したタンパク質は、それに結合した検出可能な標識により、例えば放射活性放出、光学又は電子密度を測定することにより、あるいは、例えば抗体抱合を用いて間接的な検出により検出される。
【0067】
例えば、fusedアンタゴニスト及び/又はアゴニストに適したスクリーニング方法は、実施例に記載するfused活性化Gliリポーターアッセイに存在する薬剤の適用を含みうる。このようなスクリーニングアッセイは、fused発現組織における候補アンタゴニスト及び/又はアゴニストの存在下又は不存在下でのインサイツハイブリッド形成を比較し、fused変調細胞成長の不存在を確認することができる。典型的には、これらの方法は、固定化fusedをそれに結合すると予測される分子に暴露し、分子の固定化fusedへの結合又はリン酸化を測定すること及び/又は分子がfusedを活性化(又は活性化を阻止)するか否かを評価することを含む。このようなfused結合リガンドを同定するために、fusedを細胞表面で発現させ、合成候補化合物又は(例えば、血清又は細胞などの内因性供給源からの)天然発生化合物のライブラリのスクリーニングに用いることができる。
【0068】
fusedのタンパク質−タンパク質相互作用に影響する好適な分子及びその結合タンパク質は、後者の断片又は相互作用及び正しい複合体形成を阻害する小分子、例えばペプチド模倣物を含む。そのような小分子は、通常10K分子量未満であり、細胞に等価しやすいので治療薬として好適であり、種々の細胞機構による分解を受けにくく、タンパク質のように免疫を生じやすくない。小分子は、これらに限られないが、合成有機又は無機化合物を含む。多くの製薬会社が、そのような分子のライブラリを有しており、それは本発明のアッセイを用いて便利にスクリーニングできる。非限定的な例は、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、グリコペプチド、糖脂質、多糖類、オリゴ糖、核酸、生物有機分子、ペプチド模倣物、薬理学的試薬、及びそれらの代謝物、転写及び翻訳制御配列等を含む。
fusedに結合する分子の同定に好ましい技術は、アッセイ用プレートのウェルなどの固相に結合したキメラ基質(例えば、エピトープタグfused又はfusedイムノアドヘシン)を利用する。場合によっては標識された(例えば放射性標識された)候補分子の、固定化レセプターへの結合が測定できる。あるいは、Gliの活性化についての競合が測定できる。アンタゴニスト及び/又はアゴニストのスクリーニングにおいて、fusedはfused基質に暴露され、次いで推定アンタゴニスト及び/又はアゴニスト、又はfused結合タンパク質及びアンタゴニスト及び/又はアゴニストが同時に添加され、アンタゴニスト及び/又はアゴニストのfused活性化を阻止する能力が評価される。
【0069】
(2)検出アッセイ
fusedポリペプチドは、fusedヘッジホッグシグナル伝達を変調させる治療的活性薬のためのリード化合物を同定するアッセイにおいて有用である。特に、fusedシグナル伝達複合体を防止又は形成する、あるいはfused変調ヘッジホッグシグナル伝達を防止又は減弱する(例えば、fused自身又は基質に結合する)リード化合物は、便利に同定できる。
この分野で知られた種々の方法が、本発明のfusedタンパク質の活性阻害の同定、評価又は検定に使用できる。fusedは他のキナーゼと同様の方式で作用すると考えられるので、キナーゼ/ホスファターゼモジュレータの同定で用いる公知の技術を本発明に用いてもよい。一般的に、そのようなアッセイは、培地中の標的細胞を化合物に暴露し、(a)細胞溶解物を生化学的に分析してリン酸化のレベル及び/又は同一性を評価する;又は(b)試験基質に暴露していない対照細胞に比較して処理した細胞におけるフェノタイプ又は機能変化を評点化することを含む。このようなスクリーニングアッセイは、米国特許第5,602,171号、米国特許第5,710,173号、WO 96/35124及びWO 96/40276に記載されている。
【0070】
(a)生化学的検出技術
生化学的分析技術は種々の技術によって評価できる。本発明で使用できる1つの典型的なアッセイ混合物は、fused及び通常はfusedに付随するタンパク質(例えばGli)を、通常は単離された、部分的に純粋又は純粋な形態で含有する。これらの成分の一方又は両方は、例えばアッセイ条件下でタンパク質−タンパク質結合を提供又は促進し、安定性を向上させる他のペプチド又はポリペプチドに融合してよい。さらに、成分の一方は、通常検出可能な標識を含むかそれに結合している。標識は、放射活性、蛍光、光学又は電子密度等の測定による直接検出、あるいはエピトープタグ、酵素等の間接的検出を提供する。アッセイ混合物は候補製薬剤をさらに含み、場合によっては、結合を促進し、安定性を向上させ、非特異的又はバックグラウンド相互作用を減少させ、又はアッセイの効率又は感度を向上させる種々の他の成分、例えば塩、バッファー、担体タンパク質、例えばアルブミン、洗浄剤、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗微生物剤等を含む。
【0071】
以下の検出方法は、シグナル伝達基質分子及びfusedを含む細胞溶解物が本発明の化合物と混合された細胞無しの系で使用できる。基質は、アデノシン三リン酸(ATP)の添加によるキナーゼ反応の開始によりリン酸化される。化合物の活性を評価するために、反応混合物をSDS-PAGEによって分析してもよく、あるいは、それを固体支持体に結合した基質特異的固着抗体に添加し、分離又は捕捉した基質に上記の検出方法を実施してpSer/Thrの存在又は不存在を評価してもよい。結果は、化合物を添加しない反応混合物で得られた結果と比較する。細胞無しの系は、天然リガンド又はその同定の知識を必要としない。細胞無しの系は、化合物を添加しない混合物を必要としない。細胞無しの系は、天然リガンド又はその同定の知識を必要としない。例えば、Posner等(米国特許第5,155,031号)は、パーバナデート(pervanadate)のPTP活性を阻害する能力を示すのに、基質としてのインシュリンレセプター及び標的細胞としてのラット脂肪細胞の使用を記載している。他の例、Burke等, Biochem. Biophys. Res. Comm. 204: 129-134 (1994)は、ホスホチロシル模倣物の阻害活性の評価における自己リン酸化インシュリンレセプター及び組換えPTP1Bの使用を記載している。
【0072】
(i)全細胞検出
共通の技術は、細胞を脊椎動物fused及び放射性標識リン酸塩とともにインキュベートし、溶解物からSDS-ポリアクリルアミドゲル(SDS-PAGE)技術を用いて、一次又は二次元のいすれかで細胞性タンパク質成分を分離し、X-線フィルムに暴露してリン酸化タンパク質の存在を検出することを含む。検出は、放射性標識を用いることなくなすこともできる。そのような技術において、タンパク質成分(例えば、分離されたSDS-PAGE)はニトロセルロース膜に移され、そこでリン酸化セリン/トレオニンの存在が抗ホスホセリン/トレオニン抗体(抗-pS/T)を用いて検出される。
あるいは、抗-pS/Tは、セイヨウワサビペルオキシダーゼ等の酵素に抱合させ、次いで酵素用の比色基質を添加することにより検出される。さらなる代替法は、抗-pS/Tを認識する二次抗体と反応させることによる抗-pS/Tの検出を含み、この二次抗体は、既に述べたように放射活性又は酵素で標識されている。これらの例及び類似の技術は、Hansen等, Electrophoresis 14: 112-126 (1993); Campbell等, J. Biol. Chem. 268: 7427-7434 (1993); Donato等, Cell Growth Diff. 3: 258-268 (1992); Katagiri等, J. Immunol. 150: 585-593 (1993)に記載されている。さらに、抗-pS/Tは、それを放射活性物質で標識し、次いで標識ニトロセルロースをスキャンニングして放射活性又は検出するか、X-線フィルムに暴露することにより検出できる。
【0073】
(ii)キナーゼアッセイ
fusedアンタゴニスト/アゴニストについての本発明のスクリーニング方法がエキソビボアッセイとして行われる場合、標的キナーゼ(例えばfused)は実質的に精製されたポリペプチドでありうる。キナーゼ基質(例えば、MBP、Gli)は実質的に精製された基質であり、アッセイにおいて、キナーゼに触媒される実質的に精製されたリン酸塩供給源との反応でリン酸化される。リン酸化の程度は、反応でリン酸化された基質の量を測定することにより決定される。種々の可能な基質を使用してよく、キナーゼ自身も含まれるが、その場合はアッセイで測定されるリン酸化反応は自己リン酸化である。外因性基質を用いることもでき、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)等の標準的なタンパク質基質;酵母菌タンパク質基質;合成タンパク質基質、及びポリマー基質が含まれる。これらの中で、MBP及び他の標準的タンパク質基質が好ましいとされる(実施例10参照)。他の基質も同定されるが、それらは、キナーゼに対する親和性、反応速度の最小の摂動、単一又は相同反応部位の保持、取扱及び反応後回収の容易さ、強いシグナル生成能力、及び試験化合物に対する耐性及び不活性によって優れている。
本発明のエキソビボアッセイでリン酸化された基質量の測定は、イムノアッセイ、ラジオアッセイ又は他の周知の方法で行うことができる。イムノアッセイ測定において、反応中に形成されるリン酸化部位に特異的な抗体(ヤギ又はマウス抗-ホスホセリン/トレオニン抗体)を使用してよい。周知のELISA技術を用いて、ホスホセリン/トレオニン抗体複合体は、測定可能なシグナル(例えば、蛍光又は放射活性標識)を発生することのできる標識に結合した更なる抗体により、それ自身検出される。さらに、ミクロタイタープレートにおけるELISA型アッセイはを精製された基質の試験に用いてもよい。Peraldi等, J. Biochem. 285: 71-78 (1992); Schaag等, Anal. Biochem. 211: 233-239 (1993); Cleavland, Anal. Biochem. 190: 259-253 (1990); Farley, Anal. Biochem. 203: 151-157 (1992)及びLozaro, Anal. Biochem. 192: 257-261 (1991)。
【0074】
例えば、検出計画は、キナーゼ反応中の基質消費を測定することができる。最初に、リン酸塩供給源を32P又は33P等の同位体で放射性標識し、反応中に基質に取り込まれた放射性標識の量を決定することによりリン酸化された基質の量を測定してもよい。検出は、(a)フィルター又はミクロタイターウェル表面に吸着させた後、ベータカウンターを用いる市販の閃光体含有プレート及びビーズ、又は(b)シンチレーション近接アッセイビーズ又は閃光体プレートに結合させた後の光度測定手段により達成される。Weernink及びKijken, J. Biochem. Biophs. Methods 31: 49, 1996; Brauwalder等, Anal. Biochem. 234: 23 (1996); Kentrup等, J. Biol. Chem. 271: 3488 (1996)及びRusken等, Meth. Enzymol. 200: 98 (1991)。
好ましくは、基質は、固体支持体表面に非特異的又は好ましくは特異的に結合させる。このような結合は、シグナル検出に先立ってリン酸化基質を非リン酸化標識リン酸塩供給源(アデノシン三リン酸など)から分離するのを可能にする。一実施態様では、基質は反応の前に、NuncTM高タンパク質結合プレート(Hanke等, J. Biol. Chem. 271: 695 (1996))又はWallac ScintiStripTMプレート(Brauwalder等, Anal. Biochem. 234: 23 (1996))の使用を介して物理的に固定化される。また、基質は、例えばP81ホスホセルロース(塩基性ペプチド用)、PEI/酸性モリブデン塩樹脂又はDEAE上への捕捉、又はWhatmanTM3MMペーパーへのTCA析出により反応後に固定化してもよい、Tiganis等, Arch. Biochem. biophys. 325: 289 (1996); Morawetz等, Mol. Gen. Genet. 250: 17 (1996); Budde等, Int. J. Pharmacognosy 33: 27 (1995)及びCasnellie, meth. Enz. 200: 115 (1991)。さらに他の可能性は、予め支持体に結合させたグルタチオン及びストレプトアビジン(各々GST及びビオチンの場合)等の結合パートナーで抱合することにより、あるいは同様に支持体に結合させたタグに特異的な抗体を介して支持体表面に基質を結合させる事である。
【0075】
上記のものに適したさらなる検出方法を開発してもよい。特に、高スループットスクリーニングに関連した用途では、そのような方法は、良好な選択性及び特異性、延長された直線範囲、低いバックグラウンドシグナル、最小の変動、他の試薬との相容性、及び自動取扱システムとの相容性を示すことが予測される。
本発明の治療のインビボ有効性は、種々の齧歯類モデルにおいて化学的に誘発された腫瘍に対して実験できる。腫瘍細胞系はインビトロ細胞培地で成長させ、実験用齧歯類、例えばマウスに、例えば皮下経路での注射によって導入される。実験動物における腫瘍の化学的誘発の技術は、この分野で良く知られている。
【0076】
(b)生物学的検出技術
本発明のアンタゴニスト/アゴニスト化合物の、それ自身がヘッジホッグシグナル伝達を変調するfusedの活性を変調させる能力は、リガンド結合に伴う形態又は機能変化についての評点化によって測定される。この分野で知られている定性的及び定量的技術は、fusedの制御下で起こる細胞プロセスの観察及び測定のために適用できる。また、本発明の化合物の活性は、ヘッジホッグシグナル伝達の機能不全によって生ずる又はそれに関連する疾患の実験的モデルを用いて動物で評価することもできる。例えば、マウスにおける無効なDHhヘッジホッグシグナル伝達は、生存できるが繁殖できないマウスを導く。また、変異体fused(hfused-DN)の効果も、IHh発現によって調節される腸の発達に影響する。さらに、正しいSHhシグナル伝達は、脊索及び底板、神経管、末端肢構造、脊柱及び肋骨におけるマウス胚成長に重要である。また、不正なSHhシグナル伝達は単眼症に関連している。これらのフェノタイプ特性は、fusedアンタゴニスト及び/又はアゴニストについてのスクリーニングアッセイにおいて評価され定量化される。ヘッジホッグの過剰発現に伴う疾患状態は、基底細胞癌に関連するが、不活性なソニックヘッジホッグシグナル伝達は、異常な神経発達を導く。
これらの細胞培養アッセイ及び動物実験で得られたデータは、ヒトで使用するための用量範囲の処方に用いられる。本発明の化合物の用量は、毒性を殆ど又は全く持たない循環濃度の範囲内にある。用量は、採用する投与形態及び投与経路に応じてこの範囲内で変化する。
【0077】
(2)アンチセンスヌクレオチド
アンタゴニストの他の好ましい部類は遺伝子治療技術の使用を含み、アンチセンスヌクレオチドの投与を含む。適用可能な遺伝子治療技術は、治療的に有効なDNA又はmRNAの一回又は複数回投与を含む。アンチセンスRNA及びDNAは、インビボでの或る種の遺伝子の発現を阻止するための治療薬として使用できる。短いアンチセンスオリゴヌクレオチドを細胞に移入でき、それらは、細胞膜による制限された取り込みによって生ずる低い細胞内濃度にも関わらず阻害剤として作用する、Zamecnik等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 4143-4146 (1986)。オリゴヌクレオチドは、例えば負に荷電したホスホジエステル基を不荷電基で置換することにより、それらの取り込みを促進させるように修飾することができる。
【0078】
生存細胞に核酸を導入するために知られた種々の技術がある。これらの技術は、インビボ、インビトロで培養された細胞に、又はインビボで対照とする宿主の細胞に移行されるかによって変化する。インビトロで哺乳動物細胞に核酸を移行するのに適した技術は、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法などの使用を含む。現在好ましいインビボ遺伝子移行技術は、ウイルス(典型的にはレトロウイルス)ベクターでの形質移入及びウイルスコートタンパク質−リポソーム媒介形質移入を含む、Dzau等, Trends Biotech. 11: 205-210 (1993)。幾つかの状況では、核酸供給源を標的細胞をターゲティングする試薬と共に提供するのが好ましく、例えば、エンドサイトーシスを伴う細胞表面膜タンパク質に特異的な抗体をターゲティング及び/又は取り込みの促進のために用いてもよく、例えば、特定の細胞型向性のカプシドタンパク質又はその断片、サイクリングで内部移行を受けるタンパク質の抗体、及び細胞内局在化をターゲティングし細胞内半減期を向上させるタンパク質である。レセプター媒介エンドサイトーシスの技術は、例えば、Wu等, J. Biol. Chem. 262: 4429-2232 (1987); Wagner等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 3410-3414 (1990)に記載されている。周知の遺伝子作成及び遺伝子治療プロトコールの概説については、Anderson等, Science 256: 808-813 (1992)を参照のこと。
一実施態様では、fusedアンタゴニスト及び/又はアゴニスト分子は細胞の内因性リガンドに結合するのに用いられ、それにより、特に細胞内のfusedのレベルが正常な生理的レベルを越える場合、細胞をfused野生型に非応答性とする。また、内因性fused基質、又は望ましくない細胞反応(腫瘍細胞の増殖など)を活性化する複合体形成剤に結合するのが有利であろう。
本発明のさらなる実施態様では、fused発現は、fusedタンパク質の発現を低下させるのに有効な量のfusedアンチセンスRNA又はDNAとともにfused発現細胞を提供することにより低下させうる。
【0079】
I.診断的用途
ここに記載した本発明の化合物(例えば、ヒト及び脊椎動物fused、脊椎動物fused変異体及び抗-脊椎動物fused抗体)の他の用途は、fused又はヘッジホッグシグナル伝達により疾患が幾分進行したか否かの診断を助けることである。例えば、基底細胞癌細胞は活性なヘッジホッグシグナル伝達に関連する。
ヘッジホッグシグナル伝達によって特定の疾患が導かれるか否かを決定する診断アッセイは以下の工程を用いて実施される:(1)細胞又は組織の培養;(2)fused変調ヘッジホッグシグナル伝達を阻害できる化合物の投与;及び(3)細胞溶解物中のfused基質又は試験細胞におけるヘッジホッグ媒介フェノタイプ効果に対するキナーゼ減弱の程度の測定。工程は、この開示に照らして標準的な技術を用いて実施できる。例えば、細胞又は組織の単離及び培養又はインビボに標準的な技術を使用できる。
【0080】
選択性の程度が変化した化合物類は、fusedの役割を診断するのに有用である。例えば、他の形態のキナーゼに加えてfusedを阻害する化合物は、幾つかのセリン/トレオニンキナーゼが疾患を導くか否かを決定する最初の試験化合物として使用できる。選択的化合物は、次いで、疾患の誘導における他のセリン/トレオニンキナーゼの可能な役割をさらに評価するのに使用できる。試験化合物は、細胞毒性効果の発揮よりも、セリン/トレオニンキナーゼ活性の阻害において有力であるべきである(例えば、IC50/ID50が1より大きい)。IC50及びID50は、MTTアッセイ等の標準的技術、又はLDH放出量の測定により測定できる。化合物のIC50/ID50の程度は、診断アッセイの評価を考慮すべきである。一般的に、比率が大きくなると情報がより相対的になる。適切な対照は、化合物の起こりうる毒性効果を考慮し、例えば、増殖疾患を伴わない細胞(例えば対照細胞)の試験化合物での処理は、診断アッセイの一部として用いることができる。本発明の診断方法は、fusedのヘッジホッグシグナル伝達に対する効果を変調させる試薬についてのスクリーニングを含む。例示的な検出技術は、放射性標識及び免疫沈降を含む(米国特許第5,385,915号)。
【0081】
以下の実施例は例示するためにのみ提供されるものであって、本発明の範囲を決して限定することを意図するものではない。
本明細書で引用した全ての特許及び文献の全体を、出典明示によりここに取り込む。
(実施例)
実施例で言及されている全ての他の市販試薬は、特に示さない限りは製造者の使用説明に従い使用した。ATCC登録番号により以下の実施例及び明細書全体を通して特定されている細胞の供給源はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックビル、メリーランドである。
【0082】
実施例1
ヒトfusedcDNAクローンの単離
発現された配列タグ(EST)データベース(LIFESEQTM、Incyte Pharmaceuticals、Palo Alto, CA)を、ショウジョウバエのセグメントポラリティ遺伝子fused(配列番号:26)(Preat等, Nature 347: 87-9 (1990))のヒト相同体について検索した。ESTIncyte #2525662(図2)(配列番号:3)を潜在的な候補として同定した。ヒトfusedクローンを含むヒトcDNAライブラリを同定するために、pRK5におけるヒトcDNAライブラリを以下のプライマーを用いたPCRによって最初にスクリーニングした:
h-FUSED.f(配列番号:8)5'-CAATACAATGGTGCTGACATCCATCAAAGGCA-3'
h-FUSED.r(配列番号:9)5'-GAAGGGAGGGGTGCCTACTGCCA-3'。
胎児肺ライブラリを選択し、加熱開始した後に添加した10μlの10xPCRバッファ(Perkin Elmer)、1μlのdNTP(20mM)、1μlのライブラリDNA(200ng)、0.5mlのプライマー、86.5μlのH2O及び1μlのAmplitaq(登録商標)(Perkin Elmer)を含む反応においてh-FUSED.fプライマー(配列番号:8)を用いてdug/bung宿主で成長させたプラスミドライブラリから一本鎖DNAを発現させることによりfusedcDNAクローンを富化した。反応は95℃で1分間変性させ、60℃で1分間アニールし、次いで72℃で20分間伸展させた。DNAをフェノール/CHCl3で抽出し、エタノール沈殿させ、次いでエレクトロポレーションによりDH10B宿主細菌に移行させた。各形質転換体からのクローンをプレートしてナイロン膜上に載せ、以下の配列のEST配列から誘導されたオリゴプローブでスクリーニングした:
h-FUSED.p(配列番号:10)5'-CTCCAGCTCTGGAGACATATAGAGTGGTGTGCCTTTGA-3'。
オリゴプローブを、[γ-32P]-ATP及びT4ポリヌクレオチドキナーゼで標識した。フィルターは、42℃において、50%のホルミアミド、5xSSC、10xデンハード、0.05Mのリン酸ナトリウム(pH6.5)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、50μg/mlの超音波処理サケ精子DNA中でハイブリッド形成した。次いでフィルターを2xSSCでリンスし、0.1xSSC、0.1%SDSで洗浄し、次にKodak(登録商標)X線フィルムに暴露した。約5kbの挿入物を含む2つの陽性クローン(DNA28494(配列番号:6)及びDNA28495(配列番号:4)−図4及び5)を単離して配列決定した。クローンDNA28495(配列番号:4)は位置116に潜在的な開始メチオニン、次いで1944bpのオープンリーディングフレームを含む(図4)。しかしながら、このオープンリーディングフレーム(ORF)は、ショウジョウバエfusedの795アミノ酸配列より若干短い648アミノ酸長のタンパク質をコードする。興味深いことに、第2のオープンリーディングフレームは、cDNAの3’領域、ヌクレオチド2295から4349に存在し(図4)、cDNAが不正にスプライシングされ、イントロンが2つのORF間に残り、fusedの選択的にスプライシングされた変異体に対応することを示唆している。クローンDNA28494(配列番号:6)の配列は極めて類似している。クローンDNA28495(配列番号:4)とクローンDNA28494(配列番号:6)との間には1ヌクレオチドの相違があり、それはクローンDNA28495(配列番号:4)の位置1863の第1のORFに位置し(A対G)、コード化配列を位置583においてGlnからArgに変化させる(図4)。この変化は、対立遺伝子変異によると思われる。クローンDNA28494(配列番号:6)の第1のオープンリーディングフレームは、残基115で開始し、647アミノ酸長のオープンリーディングフレームが続く。配列は、上記の位置583における1つの変化及び第1のオープンリーディングフレームにおける少なくとも9残基を除いて一致している。
【0083】
実施例2
fusedクローンの発現
クローンDNA28495(配列番号:4)及びクローンDNA28494(配列番号:6)に対応するcDNAから発現されるタンパク質のサイズを決定するために、HAエピトープタグをタンパク質のN-末端に以下のプライマーを用いたPCRによって挿入した:
Hfus.Cla-Ha.F:(配列番号:11)
5'-CCATCGATGTACCCATACGACGTCCCAGACTACGCTGAAAAGTACCACGTGTTGGAGATG-3'
及びhFus.Xba.R:(配列番号:12)
5'-GCTCTAGACTAAGGGGCAGGTCCTGTGTTCTG-3'。
PCR産物を精製し、ClaI-SmaIで消化し、クローンDNA28495(配列番号:4)及びクローンDNA28494(配列番号:6)を含むpRK5プラスミドにサブクローニングした。各作成物からのDNAを、CaPO4法(Sambrook等, 上掲; Ausuble等, 上掲)を用いて293細胞に終夜形質移入した。形質移入の約24時間から48時間後、細胞を回収し、細胞ペレットを1mlのリシンバッファー(50mMのトリスpH8.0、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1%のNP40、アプロチニン、ロイペプチン、-PMSF、1mMのNaF及び1mMのバナジン酸ナトリウム)に40℃で20分間溶解させた。抽出物を10分間10Kでスピンし、次いで上清を新たな管に移して20μlのプロテインAセファロースがで1時間プレクリアした。プロテインAセファロースをスピンダウンし、1μlの抗-HA抗体(5μg、Boehringer)を各管に添加した。4℃で終夜インキュベートした後、30μlのプロテインGセファロースTMがを添加し、管を4℃で1時間インキュベートした。次いでプロテインGセファロースビーズを1分間スピンダウンし、溶解バッファーで3回洗浄し、20μlのlaemliバッファーにベータ-メルカプトエタノールの存在下で再懸濁した。試料を100℃で5分間変性させ、次いで6%ポリアクリルアミドゲルに負荷した。次いでタンパク質をニトロセルロースに移し、終夜1μg/ml阻止バッファー(PBS、0.5%のTween(登録商標)、5%の脱脂粉乳、3%のヤギ抗体)中で同じ抗-HA抗体を用いたウェスタンブロットにより、次いで抗-マウスHRPにより分析した。検出にECLを用い、膜をX-線フィルムに90秒間暴露した。クローンDNA28494(配列番号:6)に対応する作成物で形質移入した細胞の細胞ペレットにおいて150kDaの特異的バンドを検出し、クローンDNA28495(配列番号:4)については約100kDaの特異的バンドを検出した(図6)。これらのバンドは、偽形質移入の対照物では存在しなかった。150kDaのバンドが存在することは、DNA28494(配列番号:6)の2つのオープンリーディングフレームが共にスプライシングされ、150kDaの大きなタンパク質の合成を指向していることを示唆している。DNA28495(配列番号:4)にこのバンドが無いことは、こnクローンが明らかに正しくスプライシングされ得ないことを示唆している。fused遺伝子の選択的なスプライシングは、幾つかの異なる生成物の生成を導くと思われ、それがfused活性の機構又は調節となりうる。ショウジョウバエfusedタンパク質のC-末端の特定領域は分子の活性に必要であることが知られている、Therond等, Genetics 142: 1181-1198 (1996); Robbins等, Cell 90: 225-234 (1997)。従って、C-末端において切断される短いfused分子は、分子の不活性又はドミナントネガティブ形態に相当するかもしれない。
【0084】
実施例3
ノーザンブロット
より大きなfusedcDNAを単離し、全長150kDaのfused分子をコードする転写物を同定するのに最良の組織を決定するために、Clontechからのヒトの複数組織のノーザンブロットI、II及び胎児ブロットを、ランダムプライミングによって標識したクローンDNA28494(配列番号:6)から誘導された1.6kb、ClaI-AccI断片でプローブした。ブロットは、50%のホルムアミド、5xSSC、10xデンハード、0.05Mリン酸ナトリウム(pH6.5)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、50mg/ml超音波処理サケ精子DNA中、全てを1x106cpm/mlの32P標識プローブの存在下、42℃で終夜ハイブリッド形成した。ブロットを2xSSCで室温において10分間洗浄し、0.2xSSC/0.1%SDS中、42℃で30分間洗浄し、次いでX-線フィルムに終夜暴露した。図7は、fusedメッセージが精巣では高レベルで、胎児組織を含む他の殆どの組織では低レベルで発現されたことを示している(図7)。
【0085】
実施例4
正しくスプライシングされた形態を同定するための異なる組織に対するPCR
2つの潜在的なORFが共に正しくスプライシングされたcDNAを単離するために、
我々は以下の潜在的なイントロンに隣接するプライマーを設計し、ヒト胎児脳、脳、ケラチノサイト、精巣、卵巣、胎児肝臓、及び肺テンプレートを含む種々の組織を増幅した。
F1(配列番号:13) 5'-CTGACGACACAGCAGGTTGTC-3'
R4(配列番号:14) 5'-CAGATGCTTCAGGATGGACAT-3'
各cDNAライブラリ2マイクロリットルをテンプレートとして用い、Klentaq(登録商標)ポリメラーゼでPCRを行った。PCRは、94℃での1分間の変性、55℃での1分間のアニーリング、及び68℃での2分間の伸展を具備する45サイクルの増幅で実施した。反応の五分の一を1%アガロースゲルに負荷してサザンブロットをした。ブロットを、ノーザンブロットについて記載したようなランダムプライミングにより標識した全長fusedプローブで終夜ハイブリッド形成した。
1kbのPCR断片を、胎児脳、精巣及び卵巣で同定した。この断片をゲル精製し、上記で同定したF1及びR4プライマー(配列番号:13及び14)の両方及び以下のプライマーを用いた直接PCR配列決定法を施した:
hf16(配列番号:15) 5'-AGAGTAGCAACGTCACTGC-3'
hf8(配列番号:16) 5'-CCTCACTGACAAGGCAGCAGG-3'
hf19(配列番号:17) 5'-CCCGAGGAGGCATCTGCACAG-3'。
【0086】
この1kbの断片の配列決定は、イントロン配列が存在せず、2つのORFが同じ読み枠において互いに結合されているをとを明らかにした。正しくスプライシングされた配列の配列は図1(配列番号:1)に示す。開始剤ATPは位置161に存在し、3945ヌクレオチドのORFが続き、それは1315アミノ酸長の144kDaの推定分子量を持つタンパク質をコードする。
ショウジョウバエfused(配列番号:23)との全体的類似性は28%である(図2)。キナーゼドメインを含むタンパク質のN-末端263アミノ酸ドメインは、ショウジョウバエfusedキナーゼドメインに55%相同性である。タンパク質の残りの1052アミノ酸部分は、他の知られたタンパク質と感知できる程の相同性はなく、興味深いことに、ショウジョウバエfusedの対応領域とも相同ではない。興味深いことに、非相同性のこの領域は、活性に必要とされることがわかったハエタンパク質のC-末端近傍を含む、Robbins等, Cel 90: 225-34 (1997); Therond等, Genetics 142: 1181-98 (1996)。上記の不正にスプライシングされたcDNAは、切断されたC-末端を持つ分子の精製を導き、fused活性の調節機構となりうるfused遺伝子の選択的スプライシングを反映している。
【0087】
実施例5
正しくスプライシングされた全長ヒトfusedの再構成
fusedクローンDNA28495(配列番号:4)をpRK5BプラスミドからpRK5.tkneoにClaI-HindIIIを用いてサブクローニングした。PCRは、テンプレートとしてのヒト精巣cDNA及びプライマーhf3(配列番号:18)(CAGAACTTCAGGTCCTAAAGG)及びR4(上記の配列、実施例4)を用いて実施した。PCR条件は、(94℃、1分間、46℃〜68℃の温度勾配アニーリング1分間、及び68℃、4分間)の45サイクルであった。PCR断片をAccIで消化し、pRK5.tkneo.fusedプラスミドに結合し、イントロンを含む領域を正しくスプライシングした形態に置換するためにAccIで切断した。2つのサブクローンは、2つのAccI部位の間に配列し、同じ正しい配列を有していた。
【0088】
実施例6
インサイツハイブリッド形成
E11.3及びE13.5マウス胚を、4%パラホルムアルデヒド中、4℃で終夜浸漬固定し、15%スクロース中で終夜凍結保存し、O.T.C.に包埋し、そして液体窒素で凍結させた。成熟マウス脳を新たに粉末ドライアイスで凍結させた。P1マウス脳、成熟マウス精巣及び成熟ラット脊髄をO.T.C.に包埋し、液体窒素で凍結させた。断面は16mmで切断し、Phillips等, Science 250: 290-294 (1990)の方法によりfusedについてインサイツハイブリッド形成のために加工した。RNAプローブは、Melton等, Nucleic Acids Res. 12: 7035-7052 (1984)に記載されたように33P-UTPで標識した。センス及びアンチセンスプローブを、ヒト配列のアミノ酸残基317−486のコード化領域に対応する、各々T3及びT7を用いてマウスfusedDNA断片から合成した。
図8は、マウスfusedmRNAが、神経管、前体節中胚葉、体節、発達中の肢芽及び皮膚を含むSHh応答性組織に広範に分布していることを示す。fusedの転写物は、胚性長、精巣、軟骨及び筋肉−Hhタンパク質ファミリーの他のメンバー:デザート及びインディアンに暴露される組織において見出された。E11.5マウス神経系において、高レベルのfused転写物が、前脳、中脳、後脳及び脊髄に渡って検出された。これらの高レベルの発現は、13.5の胚日数でも残っていた。胚日数11.5及び13.5の両方において、fusedmRNAは主に神経管の腹側側面、腹側正中線誘導SHhに暴露されると思われる領域で検出された。出生後1日まで、fusedの脳に渡って広く拡散した発現が維持され、高レベルの転写物が皮質、海馬、上衣及び脈絡叢で検出された。成熟体において、脳全体にfusedの低レベル発現が検出され、より高いレベルは上衣で確認された。
【0089】
fused及びHhレセプター成分、Smo及びPtchの組織分布はかなりの重複を示した。これらは全て最初神経管並びに他のHh応答性組織に渡って発現された。しかしながら、SmomRNAが背側−腹側軸に沿って均一に分布しているのに対し、Ptch及びfusedmRNAは腹側で高レベルに見出され、それらがHhによってアップレギュレートされることを示唆している。さらにE12日まで、Smo及びPtchの発現が主に腹側ゾーンの極めて近傍の細胞で見出されるが、fusedmRNAは未だに広く発現され、そのレベルは後になってのみ減少する。Smo及びfusedの成熟体発現は、神経形成が続いている上衣で確認された。
成熟精巣でのfused発現の詳細な分析は、インサイツハイブリド形成によって実施された(図9)。fusedは、精細管におけるI及びII期胚細胞において極めて高レベルで発現されることが見出された。fusedのレベルは、異なる精細管において変化し、その発現が分化の胚性細胞期に従って調節されることを示唆している。
【0090】
実施例7
Gliルシフェラーゼアッセイ
dfusedとhfusedとの低い相同性が与えられたので、実際に単離されたhfusedが確かにHhシグナル伝達のメディエータであるか否かを決定するのが賢明である。以下のアッセイは、ショウジョウバエキュービタツインターラプタス(Ci)の哺乳類相同体である転写因子GLIの活性化を測定するために開発された。GLIは、細胞のSHh刺激時に活性化される転写因子であることが示された。
NHF3βエンハンサーに存在するGLI結合部位の9つのコピー(Sasaki等, Development 124: 1313-1322 (1997))を、pGL3プラスミド(Promega)のルシフェラーゼリポーター遺伝子を制御するチミジンキナーゼ最小プロモーターの前に導入した。GLI結合配列は:TCGACAAGCAGGGAACACCCAAGTAGAAGCTC(p9XGliLuc)(配列番号:19)であり、ネガティブ対照配列は:TCGACAAGCAGGGAAGTGGGAAGTAGAAGCTC(p9XmGliLuc)(配列番号:20)であった。これらの作成物を全長fused作成物、又はF12、DMEM(50:50)、10%のFCS熱不活性化中で成長させたC3H10T1/2細胞中のソニックヘッジホッグと同時形質移入した。形質移入の前日に、ウェル当たり1x105細胞を6ウェルプレートに2ml培地中で播種した。次の日に、1μgの各作成物を、0.025mgのptkRenillaルシフェラーゼプラスミドで、100μlのOptiMem(GlutaMaxを含む)中のリポフェクタミン(Gibco-BRL)を用い、製造者の指示に従って37℃で3時間再度同時形質移入した。次いで血清(20%、1ml)を各ウェルに添加し、細胞を37℃でさらに3時間インキュベートした。次いで細胞をPBSで2回洗浄し、次に37℃で48時間2mlの培地中でインキュベートした。次いで各ウェルをPBSで洗浄し、細胞を0.5mlの受動的溶解バッファー(Promega)で15分間室温で振盪装置上で溶解させた。溶解物を氷上のエッペンドルフ管に移し、冷却遠心機で30秒間スピンし、上清を氷上で保存した。各測定について、20μlの細胞溶解物をポリプロピレン管内のLARII(ルシフェラーゼアッセイ試薬、Promega)の100μlに添加し、利子Feラーゼ光活性を測定した。停止及びグローバッファーの添加により反応を停止し、3から5回ピペット上下することにより混合し、Renillaルシフェラーゼ光活性を照度計で測定した。
【0091】
図6に示すように、fusedは、SHh(5.5倍)と同様にしてGLI活性を誘発できる(9.5倍)。この結果は、単離されたfused遺伝子がSHhシグナル伝達のメディエータであることを示唆している。無関係なセリン-トレオニンキナーゼであるAktは、このアッセイで不活性であった(データは示さず)。fused活性は無傷のキナーゼドメインに依存し、この領域を欠く分子(fusedC-末端)(配列番号:27)又はATP結合部位のおよそアミノ酸位置33に保存されたリシンの変異体(fused-DN(配列番号:25))はGLIを活性化できなかった。同様に、キナーゼドメインのみはこのアッセイで活性でなかったので(fusedKD)(配列番号:24)、タンパク質のC-末端尾部がこの活性に必要である。各タンパク質の発現は、分子のN-末端に挿入されたHAタグを用いたウェスタンブロットによって確認された(データは示さず)。これらの結果は、本出願人によって単離されたdfusedの相同体が確かにhfusedであるという結論を立証する。さらに、これらの結果は、fusedがSHhシグナル伝達の主要な標的であるGliの活性化が可能及び十分であり、よって脊椎動物におけるSHhシグナル伝達の直接的メディエータであると思われる。
【0092】
実施例8
カエル胚における誘発単眼症
序論:
ヒトfused遺伝子が脊椎動物におけるSHhシグナル伝達が可能であるばかりでなくそれに必要であることを示すために、ATP結合部位の位置33にあるリシンの変異を有するfused-DN(ドミナントネガティブ)として知られるfusedの変異体を生成した(配列番号:25)。この残基は全てのキナーゼで保存され、キナーゼ活性に必須であり(Hanks等, Methods Enzymol. 200: 38-62 (1991))、その他の残基への変換は殆どの場合ドミナントネガティブ変異体をもたらす。
【0093】
方法:
プラスミド作成:
カルボキシ末端に挿入されたHAタグを持つ野生型fusedcDNA(配列番号:1)をpRK5にサブクローニングし、位置33のリシンをアルギニンに変換してドミナントネガティブ形態を生成させた。高次コイルプラスミドDNAをQiagenにより調製し、アフリカツメガエル胚への注入に使用した。
アフリカツメガエル胚の操作:
成熟雌カエルを200I.U.の妊娠雌血清で使用の3日前に、そして800I.U.のヒト絨毛性ゴナドトロピンで注入の前夜にブースとした。次の朝に新鮮な卵母細胞を雌カエルから搾り出し、卵母細胞を犠牲にした雄カエルからの細かくした精子と混合することにより卵母細胞のインビトロ受精を実施した。発生胚を維持し、Nieuwkoop及びFaber, Normal Table of Xenopus laevis, N.-H.P.Co.,編集(Amsterdam. 1967)に従って段階分けした。
受精卵を2%のシステイン(pH7.8)で10分間脱ジェリーし、蒸留水で1回洗浄し、5%フィコールを含む0.1xMBSに移した。受精卵を5%フィコールを含む0.1xMBS中で注入トレーに並べた。2細胞期の発育中のアフリカツメガエル胚に、野生型fused(WT(配列番号:1))又はドミナントネガティブfused(DN(配列バッb号:25))を含むpRK5のいずれか200pgを注入した。注入した胚をトレー上にさらに6時間維持し、その後それらを50mg/mlのゲンタマイシンを含む0.1xMBSに移し、眼の発育が完了するNieukwloop段階35に到達するまで3日間であった。
【0094】
結果:
ヒトfused遺伝子がヘッジホッグシグナル伝達のシグナルトランスデューサとして作用するか否かを試験するために、我々は野生型又はドミナントネガティブ形態のヒトfusedを発育中のカエル胚に注入した。120pgのDNAを注入した胚は胞胚段階に正常に分割して正常に原腸胚形成した。野生型fused(配列番号2)注入及び偽注入した胚では眼の発育は正常であったが、fused-DN注入した胚の約30%(表1)は、融合した眼構造又は幾分着色された網膜組織でつながった2つの眼を示した(図11A)。表1において、200pgのプラスミドDNAは、2細胞段階胚の動物極に運ばれた。各試料は、少なくとも3つの独立した実験の結果を示す。胚は単眼症欠陥について目視で評点化した。
【0095】
観察された単眼症フェノタイプは、SHhに欠陥のあるマウス胚(Chiang等, Nature 383: 407-13 (1996))及びSHhシグナル伝達が構造的活性PKAの過剰発現で阻止されたゼブラフィッシュ胚の一つに極めて類似している、Hammerschmidt等, Genes Dev. 10: 647-58 (1996); Unger及びMoon, Dev. Biol. 178: 186-91 (1996)。さらに、脳(前脳)及び腸発達の両方が、fused-DN(配列番号:25)注入胚で、後のオタマジャクシ発達段階において正常であることがわかった(図11B)。これに対して、野生型fused(配列番号:2)又はN末端又はC-末端切断変異体(各々配列番号:27及び24)を過剰発現している胚は如何なる以上も示さなかった。
アフリカツメガエルの眼の正常な発達の間に、ショウジョウバエ無眼の脊椎動物相同体である転写因子Pax-6の単一分野発現として眼原基が開始される、Li等, Development, 124: 603-15 (1997)。神経胚段階で、この眼分野は脊索前方の中胚葉からのシグナル阻害により2つの眼原基に別れる。SHhが脊索前方の中胚葉に誘導されるシグナルであり、それは眼分野の正中線にpけるPax-6発現の阻害の原因となることが更に示された。
fused-DN(配列番号:25)の過剰発現がどのようにしてアフリカツメガエル胚における融合眼を誘発するかをさらに理解するために、注入胚におけるPax-6の発現パターンを決定するための全量インサイツハイブリッド形成を実施した。図11Cに示すように、fused-DN(配列番号:25)を注入した胚におけるPax-6発現は単一の分野を保持している。よって、fused-DN(配列番号:25)は、眼分野の正中線におけるPax-6発現の阻害からSHhを妨げることにより単眼症フェノタイプを誘発すると考えるのが最も妥当である。
【0096】
実施例9
fused-DN(配列番号:25)注入アフリカツメガエル胚のGliによる救済
初期底板細胞におけるSHh発現は、脊索によって生成されるSHhにより誘発される。底板におけるSHh発現もSHhシグナル伝達が阻止された場合に阻害されるか否かを試験するために、fused-DN又は野生型作成物を注入した初期神経胚段階胚をSHh発現について染色した(方法については実施例8参照)。底板細胞又は初期神経胚段階胚におけるSHh発現は、変異fusedが過剰発現した場合には28注入胚のうち26で完全に抑制されたが(表2、図11C左側の胚)、対照胚ではSHhの発現に影響は無かった(図6E、右側の胚)。表2は、3つの独立した実験からの評点化したデータを示す。100pgのfused-DN、100pgのfused-wt又は50pgのGli-1プラスミドを2細胞段階の胚に注入した。胚は初期神経胚段階でSHh染色のために回収した。
【0097】
このフェノタイプが底板におけるSHhシグナル伝達経路の特異的阻害によることを確認するために、我々は、wtfuseRNAとfused-DNRNAとを1:1比率で同時注入することによりフェノタイプを救済することを試みた。表2は、wtfused及びfused-DNRNAを同時注入した胚の80%以上が底板において正常なSHhシグナル伝達を示すことを示している。このことは、fused-DN注入胚におけるSHh発現が内因性fused活性の阻害により特異的に阻止されることを示している。
さらに、観察されたfused-DNのフェノタイプがSHhシグナルカスケードによることを示し、hfusedがこの経路でGliの上流で作用することを確認するために、我々は、Gliの過剰発現もfused-DN注入アフリカツメガエル胚のフェノタイプを救済できるのではないかと考えた。表2に示すように、fused-DN注入胚の底板におけるSHh発現は、Gliが過剰発現されたときに完全に救済された。以上より、これらの発見は、脊椎動物fusedがSHh経路で機能し、SHhシグナル伝達経路においてGliの上流で作用する必須のメディエータであるという本出願人の仮説と一致する。
【0098】
実施例10
免疫沈降及びインビトロキナーゼアッセイ
hfusedがキナーゼ活性を有することを直接決定するために、fused(配列番号:2)、fused-DN(配列番号:25)およびfused-kd(配列番号:24)cDNAをインフルエンザHAエピトープタグでタグ付けし、293細胞に一過性形質移入した。キナーゼ活性について、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)及び[γ32P]-ATPの存在下で免疫沈降を試験した。MBPへの32P取り込み量はSDS-PAGEの後に測定し、対照に比較して、fused-KD(配列番号:24)では3倍高く、wtfused(配列番号:2)含有抽出物では2倍高いが、Lys33のArgへの変異体(fused-DN(配列番号:25))では活性が中和されることがわかった(図12)。
免疫沈降実験のために、ヒト胚腎臓293細胞を種々の発現プラスミドで一過性形質移入した。24時間後、形質移入した細胞を回収し、1mlの溶解バッファー(50mMのトリス、pH8.0)、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1mMのフッ化ナトリウム、1mMのオルトバナジウム酸ナトリウム、1mMのPMSF及び1%のNP-40、0.5%のデオキシコール酸を含むプロテアーゼ阻害剤(Complete、Boehringer Mannhein)中、4℃で20分間溶解させた。10,000rpmでの10分間の遠心分離で細胞断片を除去し、細胞溶解物の塩化ナトリウム濃度を250mMまで上昇させた。上清を20μlのプロテインAセファロース(Pharmacia)で1時間プレクリアした。溶解物を抗-HA抗体、次いでプロテインAセファロースを用いて免疫沈降させた。ビーズを250mMの塩化ナトリウムを含む溶解バッファーで2回、1Mの塩化ナトリウムを含む溶解バッファーで2回、次いでキナーゼアッセイバッファー(20mMのHEPES、pH7.6、1mMのDTT、1mMのNaF及び1mMのオルトバナジウム酸ナトリウム)で2回洗浄した。最後の洗浄の後、ビーズを、10mCi[γ32P]-ATP、20mMのβ-グリセロホスフェート、20mMのPNPP、20mMのMgCl2,1mMのEGTA、100μMの冷ATP及び0.5mg/mlのミエリン塩基性タンパク質(Sigma)を添加した20μlのキナーゼアッセイバッファーに再懸濁し、37℃で20分間インキュベートした。20μlのSDS-試料バッファーで反応を停止し、4−20%SDSポリアクリルアミドゲル上を走らせ、ホスホイメージャー(phosphoimager)で分析した。
【0099】
実施例11:大腸菌におけるfusedの発現
ヒトfusedをコードするDNA配列を、選択したPCRプライマーを用いて最初に増幅した。プライマーは、選択された発現ベクターの制限酵素部位に対応する制限酵素部位を持たなければならない。種々の発現ベクターが用いられる。好適なベクターの例は、pBR322(大腸菌から誘導されたもの;Bolivar等, Gene, 2:95 (1977)参照)であり、アンピシリン及びテトラサイクリン耐性についての遺伝子を含む。ベクターは、制限酵素で消化され脱リン酸される。PCR増幅した配列は、次いでベクターに結合させる。ベクターは、好ましくは抗生物質耐性遺伝子、trpプロモーター、polyhisリーダー(最初の6つのSTIIコドン、polyhis配列、及びエンテロキナーゼ切断部位を含む)、脊椎動物fusedコード化領域、ラムダ転写終結区、及びargU遺伝子を含む。
ライゲーション混合物は、次いで、Sambrook等, 上掲に記載された方法を用いた選択した大腸菌の形質転換に使用される。形質転換体は、それらのLBプレートで成長する能力により同定され、次いで抗生物質耐性クローンが選択される。プラスミドDNAが単離され、制限分析及びDNA配列決定で確認される。
選択されたクローンは、抗生物質を添加したLBブロスなどの液体培地で終夜成長させることができる。終夜培地は、続いて大規模培地の播種に用いられる。次に細胞を最適密度で成長させ、その間に発現プロモーターが作動する。
更に数時間の培養の後、細胞を採集して遠心分離できる。遠心分離で得られた細胞ペレットは、この分野で知られた種々の試薬を用いて可溶化され、可溶化脊椎動物fusedタンパク質を金属キレート化カラムを用いてタンパク質を緊密に結合させる条件下で精製した。
【0100】
実施例12:哺乳動物細胞におけるfusedの発現
発現ベクターとしてベクターpRK5(1989年3月15日発行のEP 307,247参照)を用いた。場合によっては、脊椎動物fusedDNAを選択した制限酵素でpRK5に結合させ、Sambrook等,上掲に記載されたような結合方法を用いて脊椎動物fusedDNAの挿入を行う。得られたベクターは、pRK5−fusedと呼ばれる。
一実施態様では、選択された宿主細胞は293細胞とすることができる。ヒト293細胞(ATCC CCL 1573)は、ウシ胎児血清及び場合によっては滋養成分及び/又は抗生物質を添加したDMEMなどの媒質中で組織培養プレートにおいて成長させて集密化した。約10μgのpRK5−fusedDNAを約1μgのVA RNA遺伝子をコードするDNA[Thimmappaya等, Cell, 31:543 (1982))]と混合し、500μlの1mMトリス-HCl、0.1mMのEDTA、0.227MのCaCl2に溶解させた。この混合物に、滴状の、500μlの50mMのHEPES(pH7.35)、280mMのNaCl、1.5mMのNaPO4を添加し、25℃で10分間析出物を形成させた。析出物を懸濁し、293細胞に加えて37℃で約4時間定着させた。培養培地を吸引し、2mlのPBS中20%グリセロールを30秒間添加した。293細胞は、次いで無血清培地で洗浄し、新鮮な培地を添加し、細胞を約5日間インキュベートした。
【0101】
形質移入の約24時間後、培養培地を除去し、培養培地(のみ)又は200μCi/mlの35S−システイン及び200μCi/mlの35S−メチオニンを含む培養培地で置換した。12時間のインキュベーションの後、条件培地を回収し、スピンフィルターで濃縮し、15%SDSゲルに添加した。処理したゲルを乾燥させ、脊椎動物fusedポリペプチドの存在を現す選択された時間にわたってフィルムに暴露した。形質転換した細胞を含む培地は、更なるインキュベーションを施し(無血清培地で)、培地を選択されたバイオアッセイで試験した。
これに換わる技術において、脊椎動物fusedは、Somparyac等, Proc. Natl. Acad. Sci., 12:7575 (1981)に記載されたデキストラン硫酸法を用いて293細胞に一過的に導入される。293細胞は、スピナーフラスコ内で最大密度まで成長させ、700μgのpRK5−fusedDNAを添加する。細胞は、まずスピナーフラスコから遠心分離によって濃縮し、PBSで洗浄した。DNA−デキストラン沈殿物を細胞ペレット上で4時間インキュベートした。細胞を20%グリセロールで90秒間処理し、組織培養培地で洗浄し、組織培養培地、5μg/mlウシインシュリン及び0.1μg/mlウシトランスフェリンを含むスピナーフラスコに再度導入した。約4日後に、条件培地を遠心分離して濾過し、細胞及び細胞片を除去した。次いで発現された脊椎動物fusedを含む試料を濃縮し、透析及び/又はカラムクロマトグラフィー等の選択した方法によって精製した。
【0102】
他の実施態様では、脊椎動物fusedをCHO細胞で発現させることができる。pSUi-fusedは、CaPO4又はDEAE−デキストランなどの公知の試薬を用いてCHO細胞に形質移入することができる。上記したように、細胞培地をインキュベートし、培地を培養培地(のみ)又は35S-メチオニン等の放射性標識を含む培地に置換することができる。脊椎動物fusedポリペプチドの存在を同定した後、培養培地を無血清培地に置換してもよい。好ましくは、培地を約6日間インキュベートし、次いで条件培地を収集する。次いで、発現された脊椎動物fusedを含む培地を濃縮して、選択した方法にとって精製することができる。
また、エピトープタグ脊椎動物fusedは、宿主CHO細胞において発現させてもよい。脊椎動物fusedはpRK5ベクターからサブクローニングした。サブクローン挿入物は、次いで、PCRを施してバキュロウイルス発現ベクター中のpoly-hisタグ等の選択されたエピトープタグを持つ枠に融合できる。poly-hisタグ脊椎動物fused挿入物は、次いで、安定なクローンの選択のためのDHFR等の選択マーカーを含むSV40誘導ベクターにサブクローニングできる。最後に、CHO細胞をSV40誘導ベクターで(上記のように)形質移入した。発現を確認するために、上記のように標識化を行ってもよい。発現されたpoly-hisタグ脊椎動物fusedを含む培養培地は、次いで濃縮し、Ni2+−キレートアフィニティクロマトグラフィー等の選択された方法により精製できる。
【0103】
実施例13:酵母菌での脊椎動物fusedの発現
以下の方法は、酵母菌中での脊椎動物fusedの組換え発現を記載する。
第1に、ADH2/GAPDHプロモーターからの脊椎動物fusedの細胞内生産又は分泌のための酵母菌発現ベクターを作成する。脊椎動物fusedをコードするDNA、選択されたシグナルペプチド及びプロモーターを選択したプラスミドの適当な制限酵素部位に挿入して脊椎動物fusedの細胞内発現を指示する。分泌のために、脊椎動物fusedをコードするDNAを選択したプラスミドに、ADH2/GAPDHプロモーターをコードするDNA、酵母菌アルファ因子分泌シグナル/リーダー配列、及び(必要ならば)脊椎動物fusedの発現のためのリンカー配列とともにクローニングすることができる。
酵母菌株AB110等の酵母菌は、次いで上記の発現プラスミドで形質転換し、選択された発酵培地中で培養できる。形質転換した酵母菌上清は、10%トリクロロ酢酸での沈降及びSDS−PAGEによる分離で分析し、次いでクマシーブルー染色でゲルの染色をすることができる。
続いて組換え脊椎動物fusedは、発酵培地から遠心分離により酵母菌細胞を除去し、次いで選択されたカートリッジフィルターを用いて培地を濃縮することによって単離及び精製できる。脊椎動物fusedを含む濃縮物は、選択されたカラムクロマトグラフィー樹脂を用いてさらに精製してもよい。
【0104】
実施例14:バキュロウイルス感染昆虫細胞での脊椎動物fusedの発現
以下の方法は、バキュロウイルス感染昆虫細胞中における脊椎動物fusedの組換え発現を記載する。
脊椎動物fusedは、バキュロウイルス発現ベクターに含まれるエピトープタグの上流に融合させた。このようなエピトープタグは、poly-hisタグ及び免疫グロブリンタグ(IgGのFc領域など)を含む。pVL1393(Navogen)などの市販されているプラスミドから誘導されるプラスミドを含む種々のプラスミドを用いることができる。簡単には、脊椎動物fused又は脊椎動物fusedの所定部分(膜貫通タンパク質の細胞外ドメインをコードする配列など)が、5’及び3’領域に相補的なプライマーでのPCRにより増幅される。5’プライマーは、隣接する(選択された)制限酵素部位を包含していてもよい。生成物は、次いで、選択された制限酵素で消化され、発現ベクターにサブクローニングされる。
組換えバキュロウイルスは、上記のプラスミド及びBaculoGoldTMウイルスDNA(Pharmingen)を、Spodoptera frugiperda(「Sf9」)細胞(ATCC CRL 1711)中にリポフェクチン(GIBCO-BRLから市販)を用いて同時形質移入することにより作成される。28℃で4−5日インキュベートした後、放出されたウイルスを回収し、更なる増幅に用いた。ウイルス感染及びタンパク質発現は、O'Reilley等, Baculovirus expression vectors: A laboratory Manual, Oxford: Oxford University Press (1994)に記載されているように実施した。
【0105】
次いで、発現されたpoly-hisタグ脊椎動物fusedは、例えば、Ni2+−キレートアフィニティクロマトグラフィーにより以下のように精製される。抽出物は、Rupert等, Nature, 362:175-179 (1993)に記載されているように、ウイルス感染した組み換えSf9細胞から調製した。簡単には、Sf9細胞を洗浄し、超音波処理用バッファー(25mLのHepes、pH7.9;12.5mMのMgCl2;0.1mMのEDTA;10%のグリセロール;0.1%のNP-40;0.4MのKCl)中に再懸濁し、氷上で2回20秒間超音波処理した。超音波処理物を遠心分離で透明化し、上清を負荷バッファー(50mMのリン酸塩、300mMのNaCl、10%のグリセロール、pH7.8)で50倍希釈し、0.45μmフィルターで濾過した。Ni2+-NTAアガロースカラム(Qiagenから市販)を5mLの総容積で調製し、25mLの水で洗浄し、25mLの負荷バッファーで平衡させた。濾過した細胞抽出物は、毎分0.5mLでカラムに負荷した。カラムを、分画回収が始まる点であるA280のベースラインまで負荷バッファーで洗浄した。次に、カラムを、結合タンパク質を非特異的に溶離する二次洗浄バッファー(50mMのリン酸塩;300mMのNaCl、10%のグリセロール、pH6.0)で洗浄した。A280のベースラインに再度到達した後、カラムを二次洗浄バッファー中で0から500mMのイミダゾール勾配で展開した。1mLの分画を回収し、SDS−PAGE及び銀染色又はアルカリホスファターゼ(Qiagen)に複合したNi2+-NTAでのウェスタンブロットで分析した。溶離したHis10−タグ脊椎動物fusedを含む分画をプールし、負荷バッファーで透析した。あるいは、IgGタグ(又はFcタグ)脊椎動物fusedの精製は、例えば、プロテインA又はプロテインGカラムクロマトグラフィーを含む公知のクロマトグラフィー技術を用いて実施できる。
【0106】
実施例15:脊椎動物fusedに結合する抗体の調製
この実施例は、脊椎動物fusedに特異的に結合できるモノクローナル抗体の調製を例示する。
モノクローナル抗体の生産のための技術は、この分野で知られており、例えば、Goding,上掲に記載されている。用いられ得る免疫原は、精製脊椎動物fused、脊椎動物fusedを含む融合タンパク質、細胞表面に組換え脊椎動物fusedを発現する細胞を含む。免疫原の選択は、当業者が過度の実験をすることなくなすことができる。
Balb/c等のマウスを、完全フロイントアジュバントに乳化して皮下又は腹腔内に1−100マイクログラムで注入した脊椎動物fused免疫原で免疫化する。あるいは、免疫原をMPL−TDMアジュバント(Ribi Immunochemical Researh, Hamilton, MT)に乳化し、動物の後足蹠に注入してもよい。免疫化したマウスは、次いで10から12日後に、選択したアジュバント中に乳化した付加的免疫源で追加免疫する。その後、数週間、マウスをさらなる免疫化注射で追加免疫する。脊椎動物fused抗体の検出のためのELISAアッセイで試験するために、レトロオービタル出血からの血清試料をマウスから周期的に採取してもよい。
【0107】
適当な抗体力価が検出された後、抗体に「陽性」な動物に、脊椎動物fused静脈内注射の最後の注入をすることができる。3から4日後、マウスを屠殺し、脾臓を取り出した。次いで脾臓細胞を(35%ポリエチレングリコールを用いて)、ACTTから番号CRL1597で入手可能なP3X63AgU.1等の選択されたマウス骨髄腫株化細胞に融合させた。融合によりハイブリドーマ細胞が生成され、次いで、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン)培地を含む96ウェル組織培養プレートに蒔き、非融合細胞、骨髄腫ハイブリッド、及び脾臓細胞ハイブリッドの増殖を阻害した。
ハイブリドーマ細胞は、脊椎動物fusedに対する反応性についてのELISAでスクリーニングされる。所望の脊椎動物fusedに対するモノクローナル抗体を分泌する「陽性」ハイブリドーマ細胞の決定は、技術常識の範囲内である。
陽性ハイブリドーマ細胞を同系のBalb/cマウスに腹腔内注入し、抗-脊椎動物fusedモノクローナル抗体を含む腹水を生成させる。あるいは、ハイブリドーマ細胞を、組織培養フラスコ又はローラーボトルで成長させることもできる。腹水中に生成されたモノクローナル抗体の精製は、硫酸アンモニウム沈降、それに続くゲル排除クロマトグラフィ−を用いて行うことができる。あるいは、抗体のプロテインA又はプロテインGへの親和性に基づくアフィニティクロマトグラフィーを用いることもできる。
【0108】
材料の寄託
次の細胞系をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション, 12301 パークローンドライブ、ロックビル、メリーランド、米国(12301 Parklawn Drive, Rockville, MD, USA)(ATCC)に寄託した:
材料 ATCC寄託番号 寄託日
pRK5tkneo.hFused-1272 209637 1998年2月19日
この寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約及びその規則(ブダペスト条約)の規定に従って行われた。これは、寄託の日付から30年間、寄託の生存可能な培養が維持されることを保証するものである。寄託物はブダペスト条約の条項に従い、またジェネンテク社とATCCとの間の合意に従い、ATCCから入手することができ、これは、どれが最初であろうとも、関連した米国特許の発行時又は任意の米国又は外国特許出願の公開時に、寄託培養物の後代を永久かつ非制限的に入手可能とすることを保証し、米国特許法第122条及びそれに従う特許庁長官規則(特に参照番号886OG638の37CFR第1.14条を含む)に従って権利を有すると米国特許庁長官が決定した者に子孫を入手可能とすることを保証するものである。
【0109】
本出願の譲受人は、寄託した培養物が、適切な条件下で培養されていた場合に死亡もしくは損失又は破壊されたならば、材料は通知時に同一の他のものと即座に取り替えることに同意する。寄託物質の入手可能性は、特許法に従いあらゆる政府の権限下で認められた権利に違反して、本発明を実施するライセンスであるとみなされるものではない。
上記の文書による明細書は、当業者に本発明を実施できるようにするために十分であると考えられる。寄託した態様は、本発明のある側面の一つの説明として意図されており、機能的に等価なあらゆる作成物がこの発明の範囲内にあるため、寄託された作成物により、本発明の範囲が限定されるものではない。ここでの物質の寄託は、ここに含まれる文書による説明が、そのベストモードを含む、本発明の任意の側面の実施を可能にするために不十分であることを認めるものではないし、それが表す特定の例証に対して請求の範囲を制限するものと解釈されるものでもない。実際、ここに示し記載したものに加えて、本発明を様々に改変することは、前記の記載から当業者にとっては明らかなものであり、添付の請求の範囲内に入るものである。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1A−1E】ヒトfusedポリペプチドの天然配列の核酸配列(配列番号:1)及び誘導アミノ酸配列(配列番号:2)を示す図である。キナーゼドメイン(残基1〜約260)(配列番号:24)及びおよそアミノ酸位置33のATP結合部位を含む。
【図2】ヒト全長配列のクローン化に用いられたEST2515662(配列番号:3)を示す図である。
【図3A−3B】ヒト及びショウジョウバエfused(配列番号:2及び23)の間の比較を示す図である。最適なアラインメントのために導入されたギャップはダッシュで示した。同一のアミノ酸はボックスで囲んだ。fused-DNで変異されたリシン(ドミナントネガティブ、アミノ酸位置33のリシン)は星印で示す。
【図4A−4E】胎児肺ライブラリから単離されたヒトfusedの不正にスプライシングされた変異体であるDNA28494の配列(配列番号:6)を示す図である。このクローンは、位置116に潜在的開始メチオニンを含み、1944bpのオープンリーディングフレームが続く。第2のオープンリーディングフレームは、およそ2295〜4349の位置に存在する。クローンDNA28495(配列番号:4)とクローンDNA28494(配列番号:6)との間には、クローンDNA28495(配列番号:4)の位置1863にある第1のORF内に位置する1つのヌクレオチドの相違(A対G)があり、位置583におけるコード化配列をGlnからArgに変える。DNA28494(配列番号:6)の第1のオープンリーディングフレームは、残基115で開始されて630アミノ酸長のオープンリーディングフレームが続く。
【図5A−5E】胎児肺ライブラリから単離されたヒトfusedの不正にスプライシングされた他の変異体であるDNA28494の配列(配列番号:6)を示す図である。
【図6】DNA28495(配列番号:5及び21)及びDNA28494(配列番号:7及び22)のエピトープタグのPCR産物のウェスタンブロットを示す図である。クローンDNA28494(配列番号:6)に対応する作成物で形質移入した細胞の細胞ペレットにおいて150kDaの特異的バンドが検出され、クローンDNA28495(配列番号:4)については約100kDaの特異的バンドが検出された(図6)。これらのバンドは偽形質移入の対照物には存在しなかった。100kDaバンドの存在は、DNA28494(配列番号:6)の2つのオープンリーディングフレームが、ともにスプライシングして150kDaの大きなタンパク質の合成を指示できることを示唆している。このバンドがDNA28495(配列番号:4)に無いことは、このクローンが明らかに正しくスプライシングされ得ないことを示唆している。
【図7】ヒトfused(配列番号:1)のノーザンブロット分析を示す図である。複数のヒト胎児及び成人組織ノーザンブロットはヒトfusedcDNAプローブでプローブされた。
【図8A−8F】胚及び成人組織のfused(配列番号:1)でのインサイツハイブリッド形成を示す写真である。E11.5(図8A)及びE13.5(図8B)マウス胚の矢状切片。P1(図8E)から成人(図8F)マウスの矢状切片。Cp、脈絡叢 ;hb、後脳;hip、海馬体;ht、心臓;hy、視床下部;kd、腎臓;lg、肺;mb、中脳;md、中腸;mnd、第1の鰓弓の下顎成分;sc、脊髄;st、胃;tec、中脳蓋;vh、脊髄の前角;vm、腹側中脳。スケールバー:図8A、1.0mm;図8B、1.62m;図8C、0.14mm;図8D、0.17mm;図8E、2.0mm;図8F、3.1mm。
【図9A−9C】fusedmRNAの成人マウス精巣における高レベルでの存在を示すインサイツハイブリッド形成を示す写真である(図9A)。高倍率では精細管内での発現レベルの違いがわかる(図9C)。fusedに対するセンス鎖対照プローブでの精巣のハイブリッド形成では、ハイブリッド形成を与えなかった(図9B)。
【図10A−10B】fusedによるGliの活性化を示す棒グラフである。(図10A):C3H10T1/2細胞は、p9XGliLus、ptkRenillaルシフェラーゼ及びfused又は種々のfused変異体で同時形質移入した。細胞を形質移入後48時間に回収し、ルシフェラーゼ活性を実施例7に記載したようにアッセイした。(図10B):Gliリポーター作成物のfusedトランス活性化。C3H10T1/2細胞は、p9XGliLucリポーター作成物、ptkRenillaルシフェラーゼ及びfused又は種々のfused変異体のためのCMV制御発現ベクターで同時形質移入した。細胞を形質移入後48時間に回収し、ルシフェラーゼ活性を実施例に記載したようにアッセイした。データは2回の測定の平均を示す。
【図11A−11E】アフリカツメガエル発生初期においてfuse-DN(配列番号:25)がSHhシグナル伝達を阻害することを示す写真である。(図11A)オタマジャクシ段階胚の背側図である。表示したのは、上側の胚はfused-DN(配列番号:25)注入であり、下側の胚は対照である;(図11B)オタマジャクシ段階胚の側面図である。上側の胚はfused-DN(配列番号:25)注入であり、下側の胚は対照である;(図11C及び11D)各々対照DNA及びfused-DN(配列番号:25)を注入した16神経胚段階のPax-6染色;(図11E)対照胚(左側)及びfused-DN(配列番号:25)注入胚(右側)の神経胚の底板のおけるSHh発現である。
【図12】fused(配列番号:2)のキナーゼ活性及びそのGli活性化を確認する写真である。表示したのは、実施例10に示したようにHAタグfused作成物で形質移入し、抗-HA抗体及びプロテインAセファロースで免疫沈降させた293細胞である。プロテインAビーズは、MBP存在下で実施例10に記載したようにキナーゼアッセイを施した。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)図1(配列番号:24)のアミノ酸1〜約260の配列を含む脊髄動物fusedポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)の補体に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、fusedの生物学的活性を有するポリペプチドをコードするDNAを含んでなる単離された核酸。
【請求項2】
(a)図1のアミノ酸1〜1315の配列(配列番号:2)を含むヒトfusedポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の補体に対して少なくとも95%の配列同一性を有するDNAを含んでなる請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項3】
図1のアミノ酸残基1〜260(配列番号:24)を有する脊椎動物fusedポリペプチドをコードするDNAを含んでなる請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項4】
アミノ酸位置33にリシンを有する脊椎動物fusedポリペプチドをコードするDNAを含んでなる請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項5】
(a)ATCC寄託番号209637のcDNAにコードされるのと同じ成熟ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の補体に対して少なくとも95%の配列同一性を有するDNAを含んでなる単離された核酸。
【請求項6】
ATCC寄託番号209637のcDNAの配列、又はそれに緊縮条件下でハイブリッド形成する配列をコードするヒトfusedを含んでなる請求項5に記載の単離された核酸。
【請求項7】
請求項1に記載の核酸を含むベクター。
【請求項8】
当該ベクターで形質転換された宿主細胞に認識されるコントロール配列に作用可能に結合した請求項7に記載のベクター。
【請求項9】
請求項8に記載のベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項10】
哺乳動物である請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項11】
前記細胞がCHO細胞である請求項10に記載の宿主細胞。
【請求項12】
原核生物である請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項13】
前記細胞が大腸菌細胞である請求項12に記載の宿主細胞。
【請求項14】
前記細胞が酵母菌細胞である請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項15】
サッカロミセスセレヴィシアエである請求項14に記載の宿主細胞。
【請求項16】
請求項9に記載の宿主細胞を、脊椎動物fusedの発現に適した条件下で培養し、細胞培地から脊椎動物fusedを回収することを含んでなる脊椎動物fusedポリペプチドの製造方法。
【請求項17】
図1のアミノ酸残基1〜1315を含んでなる単離された天然配列ヒトfusedポリペプチド。
【請求項18】
ATCC登録番号209637の下で寄託されたfused生物学的活性を有するヌクレオチドにコードされる単離された天然配列ヒトfusedポリペプチド。
【請求項19】
異種アミノ酸配列に融合した脊椎動物fusedポリペプチドを含んでなるキメラ分子。
【請求項20】
前記異種アミノ酸配列がエピトープタグ配列である請求項19に記載のキメラ分子。
【請求項21】
前記異種アミノ酸配列が免疫グロブリンの定常領域である請求項22に記載のキメラ分子。
【請求項22】
Hhシグナル伝達経路においてfusedの正常な機能発現を阻止、防止、阻害、及び/又は、中和する脊椎動物fusedのアンタゴニスト。
【請求項23】
生物有機化学的小分子である請求項22に記載のアンタゴニスト。
【請求項24】
アンチセンスヌクレオチドである請求項22に記載のアンタゴニスト。
【請求項25】
Hhシグナル伝達経路においてfusedの正常な機能発現を刺激又は促進する脊椎動物fusedのアゴニスト。
【請求項26】
生物有機化学的小分子である請求項25に記載のアゴニスト。
【請求項27】
fused生物学的活性のアンタゴニスト又はアゴニストのためのスクリーニング方法において、
(a)培地中でfused発現標的細胞を候補化合物に暴露し、そして
(b)細胞溶解液を分析してリン酸化のレベルの評価及び/又は同定をするか、又は
(c)処理した細胞のフェノタイプ又は機能変化を評点化し、
そして、当該結果を候補化合物に暴露していない対照細胞と比較することを含んでなる方法。
【請求項28】
fused生物学的活性のアンタゴニスト又はアゴニスト分子のためのスクリーニング方法において、
(a)fused基質及びfused生物学的活性を有する化合物を候補アンタゴニスト又はアゴニストに暴露し、そして
(b)基質を分析してリン酸化のレベルの評価及び/又は同定をし、
そして、当該結果を候補分子に暴露していない対照反応と比較することを含んでなる方法。
【請求項29】
特定の疾患がヘッジホッグシグナル伝達によって変調されるか否かを決定する診断方法において、
(a)試験細胞又は組織を培養し、
(b)fused変調ヘッジホッグシグナル伝達を阻害できる化合物を投与し、そして
(c)細胞溶解液におけるfused基質に対するキナーゼ減弱の程度又は試験細胞におけるヘッジホッグ媒介フェノタイプ効果を測定することを含んでなる方法。
【請求項1】
(a)図1(配列番号:24)のアミノ酸1〜約260の配列を含む脊髄動物fusedポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)の補体に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、fusedの生物学的活性を有するポリペプチドをコードするDNAを含んでなる単離された核酸。
【請求項2】
(a)図1のアミノ酸1〜1315の配列(配列番号:2)を含むヒトfusedポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の補体に対して少なくとも95%の配列同一性を有するDNAを含んでなる請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項3】
図1のアミノ酸残基1〜260(配列番号:24)を有する脊椎動物fusedポリペプチドをコードするDNAを含んでなる請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項4】
アミノ酸位置33にリシンを有する脊椎動物fusedポリペプチドをコードするDNAを含んでなる請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項5】
(a)ATCC寄託番号209637のcDNAにコードされるのと同じ成熟ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の補体に対して少なくとも95%の配列同一性を有するDNAを含んでなる単離された核酸。
【請求項6】
ATCC寄託番号209637のcDNAの配列、又はそれに緊縮条件下でハイブリッド形成する配列をコードするヒトfusedを含んでなる請求項5に記載の単離された核酸。
【請求項7】
請求項1に記載の核酸を含むベクター。
【請求項8】
当該ベクターで形質転換された宿主細胞に認識されるコントロール配列に作用可能に結合した請求項7に記載のベクター。
【請求項9】
請求項8に記載のベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項10】
哺乳動物である請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項11】
前記細胞がCHO細胞である請求項10に記載の宿主細胞。
【請求項12】
原核生物である請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項13】
前記細胞が大腸菌細胞である請求項12に記載の宿主細胞。
【請求項14】
前記細胞が酵母菌細胞である請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項15】
サッカロミセスセレヴィシアエである請求項14に記載の宿主細胞。
【請求項16】
請求項9に記載の宿主細胞を、脊椎動物fusedの発現に適した条件下で培養し、細胞培地から脊椎動物fusedを回収することを含んでなる脊椎動物fusedポリペプチドの製造方法。
【請求項17】
図1のアミノ酸残基1〜1315を含んでなる単離された天然配列ヒトfusedポリペプチド。
【請求項18】
ATCC登録番号209637の下で寄託されたfused生物学的活性を有するヌクレオチドにコードされる単離された天然配列ヒトfusedポリペプチド。
【請求項19】
異種アミノ酸配列に融合した脊椎動物fusedポリペプチドを含んでなるキメラ分子。
【請求項20】
前記異種アミノ酸配列がエピトープタグ配列である請求項19に記載のキメラ分子。
【請求項21】
前記異種アミノ酸配列が免疫グロブリンの定常領域である請求項22に記載のキメラ分子。
【請求項22】
Hhシグナル伝達経路においてfusedの正常な機能発現を阻止、防止、阻害、及び/又は、中和する脊椎動物fusedのアンタゴニスト。
【請求項23】
生物有機化学的小分子である請求項22に記載のアンタゴニスト。
【請求項24】
アンチセンスヌクレオチドである請求項22に記載のアンタゴニスト。
【請求項25】
Hhシグナル伝達経路においてfusedの正常な機能発現を刺激又は促進する脊椎動物fusedのアゴニスト。
【請求項26】
生物有機化学的小分子である請求項25に記載のアゴニスト。
【請求項27】
fused生物学的活性のアンタゴニスト又はアゴニストのためのスクリーニング方法において、
(a)培地中でfused発現標的細胞を候補化合物に暴露し、そして
(b)細胞溶解液を分析してリン酸化のレベルの評価及び/又は同定をするか、又は
(c)処理した細胞のフェノタイプ又は機能変化を評点化し、
そして、当該結果を候補化合物に暴露していない対照細胞と比較することを含んでなる方法。
【請求項28】
fused生物学的活性のアンタゴニスト又はアゴニスト分子のためのスクリーニング方法において、
(a)fused基質及びfused生物学的活性を有する化合物を候補アンタゴニスト又はアゴニストに暴露し、そして
(b)基質を分析してリン酸化のレベルの評価及び/又は同定をし、
そして、当該結果を候補分子に暴露していない対照反応と比較することを含んでなる方法。
【請求項29】
特定の疾患がヘッジホッグシグナル伝達によって変調されるか否かを決定する診断方法において、
(a)試験細胞又は組織を培養し、
(b)fused変調ヘッジホッグシグナル伝達を阻害できる化合物を投与し、そして
(c)細胞溶解液におけるfused基質に対するキナーゼ減弱の程度又は試験細胞におけるヘッジホッグ媒介フェノタイプ効果を測定することを含んでなる方法。
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−183906(P2010−183906A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−30098(P2010−30098)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【分割の表示】特願2000−533567(P2000−533567)の分割
【原出願日】平成11年2月25日(1999.2.25)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30098(P2010−30098)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【分割の表示】特願2000−533567(P2000−533567)の分割
【原出願日】平成11年2月25日(1999.2.25)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】
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