説明

シラン変性ポリアミド酸樹脂組成物

【課題】接着性、絶縁性に優れた物性を具備する透明なポリイミド−シリカハイブリッド硬化物や多層体を提供する。
【解決手段】ベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン残基を有するポリアミド酸(1)と、1分子中に1つの水酸基を持つエポキシ化合物(A)とアルコキシシラン部分縮合物(B)との脱アルコール反応によって得られるエポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物(2)とを反応させてなるアルコキシ基含有シラン変性ポリアミド酸、および極性溶剤を含有することを特徴とするシラン変性ポリアミド酸樹脂組成物およびこのシラン変性ポリアミド酸樹脂組成物を線膨張係数が特定のフィルムや基板に塗布などして多層化する表面塗布剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定ポリアミド酸のアルコキシ基含有シラン変性ポリアミド酸組成物および溶剤を含有するシラン変性ポリアミド酸樹脂組成物、その半硬化物、ならびにポリイミド−シリカハイブリッド硬化物に関する。特に、アルコキシ基含有シラン変性ポリアミド酸を含有するシラン変性ポリアミド酸樹脂組成物、コーティング、含浸、フィルム成形などの手法を用いての、電気絶縁用樹脂組成物および電気絶縁材料、また耐熱接着剤や耐熱コーティング剤に利用できるシラン変性ポリアミド酸樹脂組成物に関する。
【0002】
本発明のアルコキシ基含有シラン変性ポリアミド酸樹脂組成物や当該樹脂組成物をコーティング、含浸、フィルム成形等を行って得られるポリイミド−シリカハイブリッド硬化物は、プリント基板用銅張り板やビルドアッププリント基板用層間絶縁材料、半導体の層間絶縁膜、ソルダーレジストなどのレジストインキ、導電ペースト、TABテープ等の電子材料の他、液晶配向膜など液晶部品、電線被覆剤として電気絶縁用途に有用である。また本発明のアルコキシ基含有シラン変性ポリアミド酸樹脂組成物はプリント基板用接着剤などの耐熱接着剤や、金属塗料等や耐熱コーティング剤としても有用である。
特にベンゾオキサゾール環を主鎖に有するポリイミドフィルム(ポリイミドベンゾオキサゾールフィルム)の引張破断強度、引張弾性率における優れた機械的特性と好適な線膨張係数を持ち、かつ接着性などの表面特性が改良されたフィルムに使用される当該組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリイミドフィルムは、−269〜300℃までの広い温度範囲での物性変化が極めて少ないために、電気及び電子分野での応用、用途が拡大している。電気分野では、例えば車両用モーターや産業用モーター等のコイル絶縁、航空機電線及び超導電線の絶縁等に使用されている。一方、電子分野では、例えばフレキシブルプリント基板や、半導体実装用フィルムキャリヤーのベースフィルム等に利用されている。このようにポリイミドフィルムは、種々の機能性ポリマーフィルムの中でも極めて信頼性の高いものとして、電気及び電子分野で広く利用されている。しかしながら、最近では電気及び電子分野等のファイン化にともなって大きな問題が顕在化してきている。例えば、銅を蒸着又はメッキ等によって銅張したポリイミドフィルム基材からなるプリント基板は、経時変化、環境変化によって銅層の密着力が低下し、更には剥離が発生する傾向にあった。
また、情報通信機器(放送機器、移動体無線、携帯通信機器等)、レーダーや高速情報処理装置などといった電子部品の基材の材料として、従来、セラミックが用いられていた。セラミックからなる基材は耐熱性を有し、近年の情報通信機器の信号帯域の高周波数化(GHz帯に達する)にも対応し得る。しかし、セラミックはフレキシブルでなく、薄くできないので使用できる分野が限定される。
【0004】
そのため、有機材料からなるフィルムを電子部品の基材として用いる検討がなされ、ポリイミドからなるフィルム、ポリテトラフルオロエチレンからなるフィルムが提案されている。ポリイミドからなるフィルムは耐熱性に優れ、また、強靭であるのでフィルムを薄くできるという長所を備えているが、高周波の信号への適用において、信号強度の低下や信号伝達の遅れなどといった問題が懸念され、引張破断強度、引張弾性率でまだ不十分であり、線膨張係数においても大きすぎるなどの課題を有している。ポリテトラフルオロエチレンからなるフィルムは、高周波にも対応し得るが、引張弾性率が低いのでフィルムを薄くできない点、表面への金属導体や抵抗体などとの接着性が悪いという点、線膨張係数が大きく温度変化による寸法変化が著しくて微細な配線をもつ回路の製造に適さない点等が問題となり、使用できる分野が限定される。このように、耐熱性、高機械的物性、フレキシブル性を具備した基材用として十分な物性のフィルムは未だ得られていない。
弾性率を高くしたポリイミドフィルムとして、ベンゾオキサゾール環を主鎖に有するポリイミドからなるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムが提案されている(特許文献1参照)。このポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを誘電層とするプリント配線板も提案されている(特許文献2、3参照)。
【0005】
これらのベンゾオキサゾール環を主鎖に有するポリイミドからなるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムは、引張破断強度、引張弾性率で改良され、線膨張係数において満足し得る範囲のものとなっているが、その優れた機械的物性の反面でその表面特性が接着性において不十分であるなどの課題を有していた。
優れた物性のポリイミドの接着性を改良するために種々の提案がなされている、例えば接着性を有しないポリイミドフィルムの少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を形成するもの(特許文献4参照)、ポリイミドフィルムとポリアミド系樹脂からなるフィルムとが積層される少なくとも2層フイルム(特許文献5参照)などである。
これらのポリイミドフィルム上に熱可塑性樹脂層を設けたものは、接着性の改良においては満足し得ても、これら熱可塑性樹脂の耐熱性の低さは折角のポリイミドフィルムの耐熱性を台無しにする傾向を有していた。
【特許文献1】特開平06−56992号公報
【特許文献2】特表平11−504369号公報
【特許文献3】特表平11−505184号公報
【特許文献4】特開平09−169088号公報
【特許文献5】特開平07−186350号公報
【0006】
またポリイミド樹脂は、一般に芳香族テトラカルボン酸無水物と芳香族ジアミンを原料とし、これらを縮合反応して合成されるポリアミド酸を閉環反応して得られる。このようなポリイミド樹脂は、耐熱性や電気的性質が優れ、しかも柔軟性があるため、耐熱性材料や絶縁性材料として、フィルム、コーティング剤等の各種形態で、電子材料、液晶、接着剤、塗料などの分野で幅広く用いられている。
しかしながら、電子材料分野など各分野における近年の発展に伴い、当該分野で用いるポリイミドに対して、より高水準の機械的強度、低熱膨張性、絶縁性、高密着性などが要求されるようになっている。
ポリイミド系重合体に一層優れた機械的強度、低熱膨張性を付与する目的で、一般的には充填材などが適宜に添加されるが、これら組成物では弾性率など機械的強度が若干向上するものの十分ではなく、却って得られる皮膜は脆くなって柔軟性や密着性が低下する傾向にある。
アルコキシシランをポリアミド酸溶液に混合して得られるシリカハイブリッド材料が提案されている(特許文献6〜8参照)。しかしながら、これらの材料から得られる皮膜では、シリカが当該皮膜中に十分には分散しておらず、そのため皮膜が白化したり、そりを生じたり、また弾性率など機械的強度や耐熱性の向上も不十分である。
【特許文献6】特開昭63−099234号公報、
【特許文献7】特開昭63−099235号公報、
【特許文献8】特開昭63−099236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、機械的強度、耐熱性に優れた硬化物を収得しうるアルコキシ基含有シラン変性ポリアミド酸樹脂組成物を提供することを目的とする。またこのアルコキシ基含有シラン変性ポリアミド酸を使用することにより、耐熱性、機械的強度、絶縁性に優れ、しかもそり、割れ等を生じず、透明なポリイミド−シリカハイブリッド硬化物を得ることが出来る。上記に加えて、本発明はベンゾオキサゾール環を主鎖に有するポリイミドからなるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの、引張破断強度、引張弾性率における優れた物性、線膨張係数において満足し得る範囲のものを保持し、その優れた機械的物性を損なわないようにその表面特性が接着性や絶縁性などにおいて改良されたものとするためのシラン変性ポリアミド酸樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸無水物類とを反応させて得られるポリアミド酸とエポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物とを反応させてなるアルコキシ基含有シラン変性ポリアミド酸が上記課題を解決することを見出し、その目的を達成したものである。
すなわち本発明は、下記の構成からなる。
1.ベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン残基を有するポリアミド酸(1)と、1分子中に1つの水酸基を持つエポキシ化合物(A)とアルコキシシラン部分縮合物(B)との脱アルコール反応によって得られるエポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物(2)とを反応させてなるアルコキシ基含有シラン変性ポリアミド酸、および極性溶剤を含有することを特徴とするシラン変性ポリアミド酸樹脂組成物。
2.線熱膨張係数(CTE)が0ppm/℃以上20ppm/℃以下の値を有する有機基材もしくは無機基材の表面に塗布して使用される前記1に記載のシラン変性ポリアミド酸樹脂組成物。
3.シリコンウェハの表面に塗布して使用される前記1に記載のシラン変性ポリアミド酸樹脂組成物。
4.ベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン残基を有するポリイミドフィルムの表面に塗布して使用される前記1に記載のシラン変性ポリアミド酸樹脂組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明のベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン残基を有するポリアミド酸(1)と、1分子中に1つの水酸基を持つエポキシ化合物(A)とアルコキシシラン部分縮合物(B)との脱アルコール反応によって得られるエポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物(2)とを反応させてなるアルコキシ基含有シラン変性ポリアミド酸、および極性溶剤を含有するシラン変性ポリアミド酸樹脂組成物は、耐熱性、機械的強度、絶縁性に優れ、透明なポリイミド−シリカハイブリッド硬化物を提供することができる。この樹脂組成物を乾燥、硬化して得られるシラン変性ポリイミドの層と特定範囲の低い線膨張係数を持つ基材とを積層した積層体は、両者の接合性が優れ、そり、割れ、剥がれ等を生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のシラン変性ポリアミド酸樹脂組成物は、ベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン残基を有するポリアミド酸(1)と、1分子中に1つの水酸基を持つエポキシ化合物(A)とアルコキシシラン部分縮合物(B)との脱アルコール反応によって得られるエポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物(2)とを反応させてなるアルコキシ基含有シラン変性ポリアミド酸、および極性溶剤を含有することを特徴とするシラン変性ポリアミド酸樹脂組成物である。
本発明におけるベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン残基を有するポリアミド酸(1)は、例えば、ピロメリット酸(無水物、誘導体も含む)などの芳香族テトラカルボン酸とベンゾオキサゾール骨格を有する芳香族ジアミンとを溶媒中で反応せしめ得られるポリイミドの前駆体であるポリアミド酸である。
【0011】
本発明に用いられるベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンとしては、具体的には以下のものが挙げられる。
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

【0015】
【化5】

【0016】
【化6】

【0017】
【化7】

【0018】
【化8】

【0019】
【化9】

【0020】
【化10】

【0021】
【化11】

【0022】
【化12】

【0023】
【化13】

【0024】
これらの中でも、アルコキシ基含有シラン変性ポリアミド酸作製時の合成のし易さや、得られるポリイミドの物性などから、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体がより好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明においては、前記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンを70モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上使用する。
【0025】
本発明においては、下記の芳香族ジアミンを使用してもよいが、好ましくは全ジアミンの30モル%未満であり、下記に例示されるベンゾオキサゾール構造を有しないジアミン類を一種又は二種以上、併用してもよい。
そのようなジアミン類としては、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、
【0026】
3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
【0027】
1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
【0028】
1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド。
【0029】
2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、
【0030】
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシル基、シアノ基、又はアルキル基又はアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基又はアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0031】
本発明で用いられるテトラカルボン酸無水物は芳香族テトラカルボン酸無水物類の中でピロメリット酸無水物(化14に示す)が好ましく使用されるがこれに限定されるものではない。
ピロメリット酸は、全テトラカルボン酸に対して70モル%以上、好ましくは80モル%、さらに好ましくは90モル%以上使用し、ピロメリット酸以外に使用することができる芳香族テトラカルボン酸無水物類としては、具体的に、化15以下のものが挙げられる。
【0032】
【化14】

【0033】
【化15】

【0034】
【化16】

【0035】
【化17】

【0036】
【化18】

【0037】
【化19】

これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0038】
本発明におけるポリアミド酸(1)と、1分子中に1つの水酸基を持つエポキシ化合物(A)とアルコキシシラン部分縮合物(B)との脱アルコール反応によって得られるエポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物(2)とを反応させてなるアルコキシ基含有シラン変性ポリアミド酸、および極性溶剤を含有することを特徴とするシラン変性ポリアミド酸樹脂組成物において、ポリアミド酸(1)は前記した様に、テトラカルボン酸(無水物、誘導体も含む)とベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン(その誘導体をも含む)とを溶媒中で反応せしめ、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液として得ることができ、そのテトラカルボン酸(無水物、誘導体も含む)とジアミンとは前記例示したものが使用できる。また、本発明の効果を失わない範囲で、トリメリット酸無水物、ブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸などのトリカルボン酸類、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ビメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸など脂肪族ジカルボン酸類やそれらの酸無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸など芳香族ジカルボン酸類やそれらの酸無水物を併用することが出来る。但し、テトラカルボン酸類に対するこれらの割合が多すぎると、得られる硬化物の絶縁性や耐熱性が落ちる傾向があるため、通常、その使用量はテトラカルボン酸に対し、30モル%以下であることが好ましい。
【0039】
例えばテトラカルボン酸類とジアミン類を、極性溶剤中、通常−20℃〜60℃で反応
させて得られるポリアミド酸溶液が使用できる。ポリアミド酸(1)の分子量は特に限定されないが、数平均分子量3000〜50000程度のものが好ましい。
ポリアミド酸(1)は、上記テトラカルボン酸類とジアミン類を、(テトラカルボン酸類のモル数/ジアミン類をモル数)=0.9〜1.1の範囲で極性溶剤中反応させて得られる。当該極性溶剤としては、生成するポリアミド酸(1)を溶解するものであれば、種類および使用量は特に限定されないが、N−メチル−2−ピロリドンやジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、クレゾールなど非プロトン性極性溶剤をポリイミド換算固形残分5〜40%で製造するのが好ましい。
本発明で使用されるエポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物(2)は、1分子中に1つの水酸基を持つエポキシ化合物(A)(以下、単にエポキシ化合物(A)ともいう)とアルコキシシラン部分縮合物(B)との脱アルコール反応によって得られるものである。
かかるエポキシ化合物(A)としては、1分子中に水酸基を1つもつエポキシ化合物であれば、エポキシ基の数は特に限定されない。また、エポキシ化合物(A)としては、分子量が小さいもの程、アルコキシシラン部分縮合物(3)に対する相溶性がよく、耐熱性や密着性付与効果が高いことから、炭素数が15以下のものが好適である。これらのエポキシ化合物の中でも、グリシドールが耐熱性付与効果の点で最も優れており、またアルコキシシラン部分縮合物(B)との反応性も高いため、最適である。
【0040】
アルコキシシラン部分縮合物(B)としては、
一般式(1):R1mSi(OR2(4-m)
(式中、mは0又は1の整数示し、R1は炭素数8以下のアルキル基又はアリール基、R2は炭素数4以下の低級アルキル基を示す。)
で表される加水分解性アルコキシシランモノマーを、酸又は塩基触媒、および水の存在下で加水分解し、部分的に縮合させて得られるものが用いられる。
アルコキシシラン部分縮合物(B)の原料である加水分解性アルコキシシランモノマーの具体的としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等のテトラアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類などが挙げられる。通常、これらのなかでも特に、グリシドールとの反応性が高いことから、アルコキシシラン部分縮合物(B)としてはテトラメトキシシラン又はメチルトリメトキシシランを70モル%以上用いて合成されたものが好ましい。
アルコキシシラン部分縮合物(B)の数平均分子量は230〜2000程度、1分子中のSiの平均個数は2〜11程度であることが好ましい。
【0041】
エポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物(2)は、エポキシ化合物(A)とアルコキシシラン部分縮合物(B)を脱アルコール反応させることにより得られる。エポキシ化合物(A)とアルコキシシラン部分縮合物(B)との使用割合は、アルコキシ基が実質的に残存するような割合であれば特に制限されないが、得られるエポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物(2)中のエポキシ基の割合が、通常は、エポキシ化合物(A)の水酸基の当量/アルコキシシラン縮合物(B)のアルコキシル基の当量=0.01/1〜0.5/1となる仕込み比率で、アルコキシシラン縮合物(B)とエポキシ化合物(A)を脱アルコール反応させることが好ましい。アルコキシシラン部分縮合物(B)とエポキシ化合物(A)の反応は、たとえば、前記各成分を仕込み、加熱して生成するアルコールを留去しながら、脱アルコール反応を行う。反応温度は50〜150℃程度、好ましくは70〜110℃であり、全反応時間は1〜15時間程度である。
アルコキシシラン部分縮合物(B)とエポキシ化合物(A)の脱アルコール反応に際しては、反応促進のために従来公知のエステルと水酸基のエステル交換触媒の内、エポキシ環を開環しないものを使用することができる。たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、錫、硼素、カドミウム、マンガンのような金属や、これら酸化物、有機酸塩、ハロゲン化物、アルコキシド等があげられる。これらのなかでも、特に有機錫、有機酸錫が好ましく、具体的には、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫などが有効である。反応は溶剤中で行うこともできる。溶剤としては、アルコキシシラン縮合物とグリシドールを溶解し、且つエポキシ化合物(A)のエポキシ基に対して不活性なものであれば、特に限定されない。このような有機溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、キシレンなどの溶媒を用いるのが好ましい。
【0042】
アルコキシ基含有シラン変性ポリアミド酸は、前記ポリアミド酸(1)と前記エポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物(2)とを反応させて得られる。ポリアミド酸(1)とエポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物(2)の使用割合は、特に制限されないが、(エポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物(2)のエポキシ基の当量)/(ポリアミド酸(1)に使用したテトラカルボン酸類のカルボン酸基の当量)が0.01〜0.4の範囲とするのが好ましい。
上記の反応に際しては、反応促進のために従来公知のエポキシ基とカルボン酸とを反応させる際に使用する触媒を使用することができる。1,8−ジアザ−ビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの三級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、ベンズイミダゾールなどのイミダゾール類;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボーレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボーレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボーレートなどのテトラフェニルボロン塩などをあげることができる。反応触媒はポリアミド酸のポリイミド換算固形残分100質量部に対し、0.01〜5質量部の割合で使用するのが好ましい。
【0043】
反応は、溶剤中で行うことが好ましい。溶剤としては、ポリアミド酸(1)およびエポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物(2)を溶解する溶剤であれば特に制限はない。このような溶剤としては、例えば、ポリアミド酸製造時にN−メチル−2−ピロリドンやジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、クレゾールなど非プロトン性極性溶剤使用したものが例示できる。
上記に述べたようにして得られたアルコキシ基含有シラン変性ポリアミド酸樹脂組成物は、その分子中にアルコキシシラン部分縮合物(B)に由来するアルコキシ基を有している。当該アルコキシ基の含有量は、特に限定はされないが、このアルコキシ基は溶剤の蒸発や加熱処理により、又は水分(湿気)との反応によりゾル−ゲル反応や脱アルコール縮合して、相互に結合した硬化物を形成するために必要となるため、アルコキシ基含有シラン変性ポリアミド酸は通常、アルコキシシラン部分縮合物(B)のアルコキシ基の50〜95モル%、好ましくは60〜90モル%を未反応のままで保持しておくのが良い。
アルコキシ基含有シラン変性ポリアミド酸樹脂組成物を使用する場合、アルコキシ基含有シラン変性ポリアミド酸樹脂を含有していれば、その他の成分は特に限定されるものではなく、充填剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤、粘度調節剤、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、レベリング剤、消泡剤、着色剤、安定剤、カップリング剤等を配合してもよい。
本発明において前記シラン変性ポリアミド酸樹脂組成物からシラン変性ポリイミドが得られるものである。すなわち、シラン変性ポリアミド酸樹脂組成物から、当該組成物を基材にコーティングなどの加工を施した後、150〜500℃程度で硬化させることでシラン変性ポリイミドが得られる。得られるシラン変性ポリイミド(硬化物ともいう)の特性や効果を発揮させるために、本発明の樹脂組成物は特定範囲の低い線膨張係数を有する基材の表面に塗布などして乾燥・硬化し、積層化することが好ましい。
【0044】
本発明における特定範囲の低い線膨張係数を有する基材としては、線熱膨張係数(CTE)が0ppm/℃以上20ppm/℃以下の値を有する有機基材もしくは無機基材、例えばシリコンウェハやベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン残基を有するポリイミドフィルム(以下(b)層ともいう)が挙げられ、これらの表面に本発明のシラン変性ポリアミド酸樹脂組成物を塗布などして、反りや割れ、剥がれなどが少ない積層体を得ることができる。
本発明のシラン変性ポリアミド酸樹脂組成物の効果がより有効に発揮するのは、有機基材もしくは無機基材が、線熱膨張係数(CTE)が0ppm/℃以上10ppm/℃以下であり、反りや割れ、剥がれなどをより低減した積層体を得ることができる。
上記積層のための方法は、両層の密着に問題が生じなければ、特に限定されるものではなくて、かつ他の層例えば接着剤層などを介することなく密着するものであればよく、例えば、共押し出しによる方法、シリコンウェハやポリイミドフィルム表面上に本発明のシラン変性ポリアミド酸樹脂組成物を流延、乾燥、硬化してシラン変性ポリイミドとする方法、シリコンウェハやポリイミドフィルム表面上にシラン変性ポリアミド酸樹脂組成物をスプレーコートなどの塗布を行い、乾燥、硬化してシラン変性ポリイミドとする方法などが挙げられる。
【0045】
本発明の多層体の構成は、少なくとも(a)層、(b)層が積層されておれば良いが、(b)層上に(a)層が積層されたもの、(a)/(b)/(a)の構成である(b)層の両面に(a)層が積層されたものが好ましい。
本発明の前記多層体における(a)/(b)の厚さの比は特に限定されないが、本発明の主旨からして(a)/(b)の厚さの比(三層構成の場合においても(a)は単層での計算である)は0.001〜0.5であり、より好ましくは0.3以下である。(a)/(b)の厚さの比が0.5を超えると機械的強度が不足したり線膨張係数が大きくなりすぎる場合がある。一方0.001未満の場合、表面特性の改良効果が不足する場合がある。
【0046】
本発明の多層体の厚さは特に限定されないが、フレキシブルプリント回路板の基材として用いる場合は、機械的強度を主に担う(b)層の厚さが3〜50μmであると好適である。
また、本発明における(b)層の一例である、少なくとも芳香族ジアミン類の残基としてベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン残基を有するポリイミドフィルムは、優れた引張破断強度と引張弾性率とを有し、線膨張係数も比較的低い値を有するものであるが、より好ましくはこれらの少なくとも芳香族テトラカルボン酸類の残基としてピロメリット酸残基、芳香族ジアミン類の残基としてベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン残基を有するポリイミドフィルムが、引張破断強度が300MPa以上、引張弾性率が5GPa以上、線膨張係数が1〜5ppm/℃であるフィルムである。
【0047】
引張破断強度、引張弾性率、線膨張係数の測定は下記による。
<ポリイミドフィルムの引張破断強度、引張弾性率の測定>
測定対象のポリイミドフィルムを、MD方向およびTD方向にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(島津製作所製、オートグラフ(登録商標)機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度を測定した。
<線膨張係数の測定>
測定対象のポリイミドフィルムなどについて、30℃〜40℃、40℃〜50℃、…と10℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を400℃まで行い、100℃から350℃までの全測定値の平均値をCTE(平均値)として算出した。
装置名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 10mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0048】
本発明の多層ポリイミドフィルムにおける(a)層、(b)層には、滑剤をポリイミド中に添加含有せしめるなどして層(フィルム)表面に微細な凹凸を付与しフィルムの滑り性などを改善することが好ましい。
滑剤としては、無機や有機の0.03μm〜3μm程度の平均粒子径を有する微粒子が使用でき、具体例として、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、ピロ燐酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、粘土鉱物などが挙げられる。
本発明においては得られた多層ポリイミドフィルムの表面(特に(a)の表面)を、コロナ処理、大気圧プラズマ処理、真空プラズマ放電処理することは、更なる接着力を高めるために好ましい実施態様である。
大気圧プラズマ処理は好ましくは不活性ガスプラズマであり、不活性ガスとしては窒素ガス、Ne、Ar、Kr、Xeが用いられる。プラズマを発生させる方法に格別な制限はなく、不活性気体をプラズマ発生装置内に導入し、プラズマを発生させればよい。プラズマ処理に要する時間は特に限定されず、通常1秒〜30分、好ましくは10秒〜10分である。プラズマ処理時のプラズマの周波数と出力、プラズマ発生のためのガス圧、処理温度に関しても格別な制限はなく、プラズマ処理装置で扱える範囲であれば良い。周波数は通常13.56MHz、出力は通常50W〜1000W、ガス圧は通常0.01Pa〜10Pa、温度は、通常20℃〜250℃、好ましくは20℃〜180℃である。出力が高すぎるとフィルム表面に亀裂の入るおそれがある。また、ガス圧が高すぎるとフィルム表面の平滑性が低下するおそれがある。
【実施例】
【0049】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例などでの評価、測定は前記したもの以外は下記による。また適宜実施例などの記述において記載する。
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。
2.フィルムの厚さ
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン(登録商標)1254D)を用いて測定した。
3.剥離強度
(多層フィルムの剥離強度)
測定対象の多層フィルムを、90度方向に引き剥がしたときに要する強度を以って剥離強度とした。測定は、JIS C6418に準じて引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフ(登録商標)機種名AG−5000A)を用いて行った。
(金属化フィルムの剥離強度)
測定対象の金属化フィルムを90μm配線幅のTABテープパターンに加工した後、90度方向に引き剥がしたときに要する強度を以って剥離強度とした。測定は、JIS C6418に準じて引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフ(登録商標)機種名AG−5000A)を用いて行った。
4.塗膜の付着性
測定対象の塗膜の付着性を碁盤目試験による残膜率で評価した。碁盤目試験は、総数100マス(1マス;1mm幅)の碁盤目に対してJIS K5600の試験方法に準じて実施した。
【0050】
〔ポリアミド酸(イ)の重合〕
<ベンゾオキサゾール構造を有するジアミンからなるポリアミド酸の重合>
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール500質量部を仕込んだ。次いで、N−メチル−2−ピロリドン9000質量部を加えて完全に溶解させた後,ピロメリット酸二無水物485質量部を加え,25℃の反応温度で48時間攪拌すると、淡黄色で粘調なポリアミド酸溶液(イ)が得られた。得られた溶液のηsp/Cは4.2dl/gであった。
【0051】
〔シラン変性ポリアミド酸(ロ)の重合〕
攪拌機、分水器、温度計および窒素ガス導入管を備えた反応装置に、グリシドール(日本油脂(株)製、商品名「エピオールOH」)1400質量部およびテトラメトキシシラン部分縮合物(多摩化学(株)製、商品名「メチルシリケート51」、Siの平均個数が4)4478.9質量部を仕込み、窒素気流下、ジブチル錫ジラウレートを1.1質量部加え反応させた。反応中、分水器を使って生成したメタノールを留去し、その量が約580質量部に達した時点で冷却した。昇温後冷却までに要した時間は6時間であった。ついで、13kPaで約10分間、系内に残存するメタノール約30質量部を減圧除去した。このようにして、エポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物を得た。
なお、仕込み時のエポキシ化合物の水酸基の当量/アルコキシシラン部分縮合物のアルコキシ基(当量比)=0.20、エポキシ当量は279g/eqである。
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール500質量部を仕込んだ。次いで、N−メチル−2−ピロリドン9000質量部を加えて完全に溶解させた後,ピロメリット酸二無水物485質量部を加え,25℃の反応温度で48時間攪拌すると、淡黄色で粘調なポリアミド酸溶液が得られた。得られた溶液のηsp/Cは4.2dl/gであった。
次に、80℃まで昇温し、上記エポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物324質量部を加え、80℃で9時間攪拌し、シラン変性ポリアミド酸(ロ)を得た。(エポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物のエポキシ基の当量/ポリアミド酸に使用したテトラカルボン酸二無水物(A)のモル数)=0.52であった。
【0052】
〔シラン変性ポリアミド酸(ハ)の重合〕
攪拌機、分水器、温度計および窒素ガス導入管を備えた反応装置に、グリシドール(日本油脂(株)製、商品名「エピオールOH」)1400質量部およびテトラメトキシシラン部分縮合物(多摩化学(株)製、商品名「メチルシリケート51」、Siの平均個数が4)4478.9質量部を仕込み、窒素気流下、ジブチル錫ジラウレートを1.1質量部加え反応させた。反応中、分水器を使って生成したメタノールを留去し、その量が約580質量部に達した時点で冷却した。昇温後冷却までに要した時間は6時間であった。ついで、13kPaで約10分間、系内に残存するメタノール約30質量部を減圧除去した。このようにして、エポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物を得た。
なお、仕込み時のエポキシ化合物の水酸基の当量/アルコキシシラン部分縮合物のアルコキシ基(当量比)=0.20、エポキシ当量は279g/eqであった。
別途、窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、ピロメリット酸無水物545質量部、4,4’ジアミノジフェニルエーテル500質量部を9000質量部のジメチルアセトアミドとを仕込んだ。20℃の反応温度で48時間攪拌すると、淡黄色で粘調なポリアミド酸溶液が得られた。得られた溶液のηsp/Cは2.5dl/gであった。
次に、80℃まで昇温し、上記エポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物324質量部を加え、80℃で9時間攪拌し、シラン変性ポリアミド酸(ハ)を得た。(エポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物のエポキシ基の当量/ポリアミド酸に使用したテトラカルボン酸二無水物(A)のモル数)=0.54であった。
【0053】
(実施例1)
(b)層として上記のポリアミド酸溶液(イ)、(a)層としてシラン変性ポリアミド酸(ロ)を共押出しT型ダイを用いてステンレスベルト上にコーティングした。ダイのリップギャップは(a)層150μm、(b)層500μmであった。次いで、90℃にて60分間乾燥することにより得られた自己支持性をもつポリアミド酸フィルムをステンレスベルトから剥離して、厚さ40μmのポリイミド前駆体フィルム(グリーンフィルムともいう)を得た。
得られたグリーンフィルムを、連続式の乾燥炉にて、170℃で3分間、次いで、約20秒間で450℃にまで昇温して450℃にて7分間加熱して、その後、5分間で室温にまで冷却して、厚さ25μmの褐色のポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムを500mm幅にスリットして多層ポリイミドフィルムを得た。この多層ポリイミドフィルムにおける(a)/(b)の厚さの比は、0.1/1である。得られた多層フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム断面が観察できるようにミクロトームで切断し走査型電子顕微鏡にて断面を観察した。断面の電子顕微鏡画像においては組成の異なる層の境目が縞状に観察でき、その厚さの比率は塗布厚から求めた厚さの比率と一致していた。
得られたグリーンフィルムを、連続式の乾燥炉にて、170℃で3分間、次いで、約20秒間で450℃にまで昇温して450℃にて7分間加熱して、その後、5分間で室温にまで冷却して、厚さ25μmの褐色のポリイミドフィルムを500mm幅にスリットした。
測定対象の多層ポリイミドフィルムを90度方向に引き剥がしたときに要する強度を以って剥離強度とした。測定は、JIS C6418に準じて引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフ(登録商標)機種名AG−5000A)を用いて行った。
上記フィルムを連続式スパッタ装置に装着し、周波数13.56MHz、出力400W、ガス圧0.8Paの条件、ニッケル−クロム(クロム含有量10%)合金のターゲットを用い、キセノン雰囲気下にてRFスパッタ法により、10Å/秒のレートで厚さ50Åのニッケル−クロム合金被膜を形成した。次いで、100Å/秒のレートで銅を蒸着し、厚さ0.3μmの銅薄膜を形成させた。その後、このフィルムを250mm×400mmに切り出し、プラスチック製の枠に固定し直し、硫酸銅めっき浴を用いて、厚さ5μmの厚付け銅メッキ層を上記銅薄膜上に形成して、金属化ポリイミドフィルムを得た。
測定対象の金属化ポリイミドフィルムを90μm配線幅のTABテープパターンに加工した後、90度方向に引き剥がしたときに要する強度を以って剥離強度とした。測定は、JIS C6418に準じて引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフ(登録商標)機種名AG−5000A)を用いて行った。
多層フィルムの物性、金属化ポリイミドフィルムの評価を表1、表2に示す。
なお、ポリアミド酸溶液(イ)だけを使用して単層フィルムを同様にしてポリイミドフィルムを製造した、その線膨張係数は、1.5ppm/℃であり、引張破断強度が390MPa、引張弾性率が6.8GPaであった。
【0054】
(比較例1)
上記のポリアミド酸溶液(イ)とシラン変性ポリアミド酸(ハ)をそれぞれ実施例2と同様にして、ステンレスベルトに共押出しT型ダイを用いてコーティングした。ダイのリップギャップはスキン層150μm、コア層500μmであった。次いで、90℃にて60分間乾燥することにより得られた自己支持性をもつポリアミド酸フィルムをステンレスベルトから剥離して、厚さ40μmのグリーンフィルムを得た。
得られたグリーンフィルムを、連続式の乾燥炉にて、170℃で3分間、次いで、約20秒間で450℃にまで昇温して450℃にて7分間加熱して、その後、5分間で室温にまで冷却して、厚さ25μmの褐色のポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを得た。このポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを500mm幅にスリットして多層ポリイミドフィルムを得た。この多層ポリイミドフィルムにおける(a)/(b)の厚さの比は、0.1/1である。得られた多層フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム断面が観察できるようにミクロトームで切断し走査型電子顕微鏡にて断面を観察した。断面の電子顕微鏡画像においては組成の異なる層の境目が縞状に観察でき、その厚さの比率は塗布厚から求めた厚さの比率とほぼ一致していた。
上記フィルムを連続式スパッタ装置に装着し、周波数13.56MHz、出力400W、ガス圧0.8Paの条件、ニッケル−クロム(クロム含有量10%)合金のターゲットを用い、キセノン雰囲気下にてRFスパッタ法により、10Å/秒のレートで厚さ50Åのニッケル−クロム合金被膜を形成した。次いで、100Å/秒のレートで銅を蒸着し、厚さ0.3μmの銅薄膜を形成させた。その後、このフィルムを250mm×400mmに切り出し、プラスチック製の枠に固定し直し、硫酸銅めっき浴を用いて、厚さ5μmの厚付け銅メッキ層を上記銅薄膜上に形成して、金属化ポリイミドフィルムを得た。
多層フィルムの物性、金属化ポリイミドフィルムの評価を表1、表2に示す。
【0055】
(実施例2)
上記のポリアミド酸溶液(ロ)をスピンコーターでシリコンウェハ上に回転塗布し、ホットプレートを用いて120℃で5分間乾燥を行い、さらに、200℃で30分間、400℃で60分間の熱処理を行い、ポリイミドの膜を得た。
この膜に対して碁盤目試験を実施した結果を表3に示す。
(比較例2)
上記のポリアミド酸溶液(ハ)をスピンコーターでシリコンウェハ上に回転塗布し、ホットプレートを用いて120℃で5分間乾燥を行い、さらに、200℃で30分間、400℃で60分間の熱処理を行い、ポリイミドの膜を得た。
この膜に対して碁盤目試験を実施した結果を表3に示す。
【0056】
(多層フィルムの物性)
【表1】

【0057】
(金属化ポリイミドフィルムの評価)
【表2】

【0058】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0059】
以上述べてきたように、本発明のベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン残基を有するポリアミド酸(1)と、1分子中に1つの水酸基を持つエポキシ化合物(A)とアルコキシシラン部分縮合物(B)との脱アルコール反応によって得られるエポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物(2)とを反応させてなるアルコキシ基含有シラン変性ポリアミド酸、および極性溶剤を含有するシラン変性ポリアミド酸樹脂組成物は、耐熱性、機械的強度、絶縁性に優れ、透明なポリイミド−シリカハイブリッド硬化物を提供することができる。この樹脂組成物を乾燥、硬化して得られるシラン変性ポリイミドの層と特定範囲の低い線膨張係数を持つ基板やフィルム基材とを積層した積層体は、両者の接合性が優れ、そり、割れ、剥がれ等を生じず、例えば、フレキシブルプリント基板などにおける積層材として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン残基を有するポリアミド酸(1)と、1分子中に1つの水酸基を持つエポキシ化合物(A)とアルコキシシラン部分縮合物(B)との脱アルコール反応によって得られるエポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物(2)とを反応させてなるアルコキシ基含有シラン変性ポリアミド酸、および極性溶剤を含有することを特徴とするシラン変性ポリアミド酸樹脂組成物。
【請求項2】
線熱膨張係数(CTE)が0ppm/℃以上20ppm/℃以下の値を有する有機基材もしくは無機基材の表面に塗布して使用される請求項1に記載のシラン変性ポリアミド酸樹脂組成物。
【請求項3】
シリコンウェハの表面に塗布して使用される請求項1に記載のシラン変性ポリアミド酸樹脂組成物。
【請求項4】
ベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン残基を有するポリイミドフィルムの表面に塗布して使用される請求項1に記載のシラン変性ポリアミド酸樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−106836(P2007−106836A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297851(P2005−297851)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】