説明

シリカコーティング剤

【課題】 酸・アルカリ、あるいは有機溶媒を用いることなく、容易且つ安全に目的物質の表面上へシリカ系被膜の形成を行なうことのできるシリカコーティング剤を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で示される水溶性シラン誘導体からなるシリカコーティング剤。
−Si−(OR(OR4−(m+n) (1)
(式中、Rは炭素数1〜16の炭化水素基、Rは多価アルコール残基、Rは1価アルコール残基、nは0〜2、mは1〜4、1≦m+n≦4である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカコーティング剤、特にその使用性の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコキシシラン化合物は、アルコキシ基の加水分解によりシラノール基を生成し、さらにその脱水縮合によってシリカを形成する。例えば、このようなシリカ形成反応を目的物質の表面上で行なうことにより、その表面上にシリカ被膜を形成することができる。このため、アルコキシシランは、シリカ系被膜のコーティング剤として汎用されており、例えば、金属やプラスチック表面あるいは粉末表面の表面処理剤として用いられている。さらには、コーティング機能の付与を目的として、塗料やワックスあるいは化粧料等の配合成分としても使用されている。
【0003】
このようなシリカコーティング用のアルコキシシランとしては、従来、テトラエトキシシランが広く用いられているが、これは水に不溶であり、水中に添加してもそのままでは加水分解反応が進行しないため、酸あるいはアルカリ水溶液中で用いられており、また、しばしば溶解補助剤として有機溶媒を添加して用いられている(例えば、特許文献1,2参照)。このため、酸・アルカリ、あるいは有機溶媒の添加及び除去が必要とされ、プロセス上及びコスト上、さらには環境への負荷の観点からも望ましくなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平7−252452号公報
【特許文献2】特開平10−316935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みて行なわれたものであり、その目的は、酸・アルカリ、あるいは有機溶媒を用いることなく、容易且つ安全に目的物質の表面上へシリカ系被膜の形成を行なうことのできるシリカコーティング剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来技術の課題に鑑み、本発明者らが鋭意検討を行なった結果、ハロゲン化シランあるいはアルコキシシランと多価アルコールとの置換反応により得られる水溶性のシラン誘導体を、シリカコーティング剤として用いることにより、酸・アルカリあるいは有機溶媒を用いることなく、容易且つ安全に目的物質上へのシリカ系被膜の形成を行なうことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明にかかるシリカコーティング剤は、下記一般式(1)で示される水溶性シラン誘導体からなるものである。
−Si−(OR(OR4−(m+n) (1)
(式中、Rは炭素数1〜16の炭化水素基、Rは多価アルコール残基、Rは1価アルコール残基、nは0〜2、mは1〜4、1≦m+n≦4である。)
【0008】
また、前記シリカコーティング剤において、前記Rが下記一般式(2)で示される官能基であることが好適である。
−(R(OH)−O)−H (2)
(式中、Rは炭素数1〜6の炭化水素基、xは0〜5、yは1〜30である。)
また、前記シリカコーティング剤において、前記Rがエチレングリコール残基、プロピレングリコール残基、1,3−ブチレングリコール残基、グリセリン残基のいずれかであることが好適である。
【0009】
また、本発明にかかるシリカコーティング用液状組成物は、上記一般式(1)に示される水溶性シラン誘導体と水とを含有し、酸・アルカリ及び有機溶媒を含有しないことを特徴とするものである。
また、前記シリカコーティング用液状組成物において、前記水溶性シラン誘導体のRがエチレングリコール残基、プロピレングリコール残基、1,3−ブチレングリコール残基、グリセリン残基のいずれかであることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかるシリカコーティング剤は、水に溶解するものであるため、酸・アルカリあるいは有機溶媒等を用いる必要性が無く、容易且つ安全に目的物質の表面上へのシリカ被膜形成を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明にかかるシリカコーティング剤は、下記一般式(1)で示される水溶性シラン誘導体からなるものである。
−Si−(OR(OR4−(m+n) (1)
(式中、Rは炭素数1〜16の炭化水素基、Rは多価アルコール残基、Rは1価アルコール残基、nは0〜2、mは1〜4、1≦m+n≦4である。)
【0012】
本発明にかかるシリカコーティング剤において、上記一般式(1)におけるRは、炭素数1〜16の炭化水素基であればよく、特に限定されるものではない。炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基等が挙げられ、これらは直鎖状、分岐状いずれのものでもよい。また、これらの炭化水素基の一部が塩素原子、フッ素原子、アミノ基、メルカプト基等により置換されていてもよく、さらにカルボニル基、エポキシ基等の官能基を有していてもよい。なお、本発明に用いられる水溶性シラン誘導体は、通常、ハロゲン化シランあるいはアルコキシシランと多価アルコールとの置換反応により調製することができ、Rは、使用するハロゲン化シラン又はアルコキシシランの種類によって異なる。本発明に用いられる水溶性シラン誘導体において、Rは、炭素数が1〜16である必要がある。炭素数が17以上であると、水への溶解性に劣る場合がある。本発明に用いられる水溶性シラン誘導体において、ケイ素原子上に結合するRの数を表すnは、0〜2である。nは0であってもよく、すなわち、水溶性シラン誘導体の構造中にRを有していなくてもよい。また、nが2である場合、Rは同一であっても異なっていてもよい。
【0013】
上記一般式(1)におけるRとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基、スチリル基、トリクロロプロピル基、トリフルオロプロピル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、メルカプトプロピル基、アクリロキシプロピル基、アセチル基、メタクリロキシプロピル基、グリシドキシプロピル基等が挙げられる。また、nが2である場合には、例えば、2つのヘキシル基、あるいはドデシル基とメチル基等の組み合わせであってもよい。
【0014】
本発明にかかるシリカコーティング剤において、上記一般式(1)におけるRは、多価アルコールの残基であり、多価アルコールにおける1つの水酸基が除かれた形として示される。なお、本発明に用いられる水溶性シラン誘導体は、通常、ハロゲン化シランあるいはアルコキシシランと多価アルコールとの置換反応により調製することができ、Rは、使用する多価アルコールの種類によって異なる。例えば、多価アルコールとしてエチレングリコールを用いた場合、Rは、−CH−CH−OHとなる。本発明に用いられる水溶性シラン誘導体において、ケイ素原子上に結合する−ORの数を表すmは1から4である。mが2以上である場合、Rは同一であっても異なっていてもよい。また、上記一般式(1)において、1≦m+n≦4である。
【0015】
なお、上記一般式(1)におけるRは、下記一般式(2)で示される官能基であることが好適である。
−(R(OH)−O)−H (2)
(式中、Rは炭素数1〜6の炭化水素基、xは0〜5、yは1〜30である。)
ここで、前記したように、上記一般式(1)におけるRは、使用する多価アルコールの種類によって異なるものである。すなわち、本発明に用いられる水溶性シラン誘導体を製造するに当たって、使用する多価アルコールの種類が、炭素数1〜6の炭化水素基及びOH基が1から6の多価アルコールであるか、あるいはその縮合体(縮合数は2から30)であることが好適である。
【0016】
上記一般式(1)におけるRとしては、例えば、エチレングリコール残基、ジエチレングリコール残基、トリエチレングリコール残基、テトラエチレングリコール残基、ポリエチレングリコール残基、プロピレングリコール残基、ジプロピレングリコール残基、ポリプロピレングリコール残基、ブチレングリコール残基、ヘキシレングリコール残基、グリセリン残基、ジグリセリン残基、ポリグリセリン残基、ネオペンチルグリコール残基、トリメチロールプロパン残基、ペンタエリスリトール残基、マルチトール残基等が挙げられる。これらのうち、Rがエチレングリコール残基、プロピレングリコール残基、1,3−ブタジエングリコール残基、グリセリン残基のいずれかであることが好ましい。
【0017】
本発明にかかるシリカコーティング剤において、上記一般式(1)におけるRは、1価アルコールの残基であり、1価アルコールにおける水酸基が除かれた形、すなわち一般的な炭化水素基として示される。なお、本発明に用いられる水溶性シラン誘導体は、通常、、ハロゲン化シランあるいはアルコキシシランと多価アルコールとの置換反応により調製するものであるが、部分的に多価アルコールが置換され、一部1価アルコール残基が残った化合物が生成する場合がある。すなわち、上記一般式(1)におけるRは、原料アルコキシシランにおけるアルコキシ基、あるいは原料ハロゲン化シランのハロゲン基が溶媒として用いられる1価アルコールにより置換され生成したアルコキシ基に由来するものである。本発明に用いられる水溶性シラン誘導体において、ケイ素原子上に結合する−ORの数は、4−(m+n)で表される。ここで、−ORで示される1価アルコール残基は、本発明において必須の官能基ではなく、例えば、上記一般式(1)において、m+nが4となる場合には、化合物中に−ORが存在していなくとも構わない。
【0018】
上記一般式(1)におけるRとしては、例えば、メタノール残基、エタノール残基、プロパノール残基、ブタノール残基等が挙げられる。
【0019】
本発明にかかるシリカコーティング剤としては、より具体的には、Si−(O−CH−CH−OH)、Si−(O−CH−CH−CH−OH)、Si−(O−CH−CH−CHOH−CH、Si−(O−CH−CHOH−CH−OH)、C17−Si−(O−CH−CH−OH)、C17−Si−(O−CH−CH−CH(OH)−CH、C1021−Si−(O−CH−CH−OH)、C1225−Si−(O−CH−CH−CH(OH)−CH、C1225−(CH−)Si−(O−CH−CH−OH)、C17−Si−(O−CH−CH−OH) (O−CH−CH)等が挙げられる。
【0020】
また、本発明に用いられる水溶性シラン誘導体は、例えば、ハロゲン化シランと、多価アルコールとを反応させることによって調製することができる。なお、通常、アルコキシシランと多価アルコールとの置換反応においては、触媒を用いない場合、常温では置換反応が進行せず、100℃以上の高温条件下で反応を行なう必要があり、実用性に乏しく、また高沸点溶媒の残存が懸念されるという問題がある。これに対して、ハロゲン化シランを用いる場合には、触媒を用いずとも、常温下で反応を行なうことができるため、実用性が高い。
【0021】
本発明に用いられるハロゲン化シシランは、ケイ素原子上に4つのハロゲン原子が結合したもの、あるいは1つ又は2つの炭化水素基(炭素数1〜16)及び3つ又は2つのハロゲン原子が結合したものであればよく、特に限定されるものではない。なお、炭素数1〜16の炭化水素基は、上記一般式(1)におけるRと同一である。本発明に用いられるハロゲン化シランとしては、例えば、テトラクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、ドデシルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ジオクチルジクロロシラン、ドデシルメチルジクロロシラン等が挙げられる。
【0022】
多価アルコールは、分子中に2つ以上の水酸基を有する化合物であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、マルチトール、等が挙げられる。これらのうち、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタジエングリコール、グリセリンのいずれかを用いるのが好ましい。
【0023】
また、反応の際の温度条件は特に限定されるものではないが、常温下あるいは冷却下で行なうことが好ましい。なお、常温下あるいは冷却下とは、加熱等の特別な温度調節操作を行なわない条件下であることを意味し、より具体的には、−5〜35℃の温度範囲である。
【0024】
反応時には溶媒を用いなくてもよいが、必要に応じて各種溶媒を用いても構わない。反応に用いる溶媒としては、特に限定されるものではなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、セロソルブ、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエステル、エーテル、ケトン系溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒、さらにはクロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒が挙げられる。ここで、原料として用いる炭化水素基含有ハロゲン化シランの加水分解縮合反応を抑制するため、溶媒は予め脱水しておくことが好ましい。また、これらのうちで、反応時に副生成するエタノール等のアルコールと共沸混合物を形成して系外へと除去することで反応を促進することのできるアセトニトリル、トルエン等を用いることが好ましい。
【0025】
また、反応時には、ハロゲン化シランから発生する塩酸をトラップするために塩基を加えてもよい。塩基の種類としては、例えば、ピリジン等が挙げられる
【0026】
本発明に用いられる水溶性シラン誘導体は、例えば、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、あるいはジアルキルジアルコキシシランといった各種アルコキシシランと、多価アルコールとを、固体触媒の共存下で反応させることによって調製することができる。なお、アルコキシシランと多価アルコールとの置換反応において、塩酸やp−トルエンスルホン酸等の均一系触媒(溶媒に溶解させて用いる触媒)を用いた場合には、生成物中に触媒が溶解して残存してしまい、生成物と触媒との分離が非常に困難となる。また、触媒を用いない場合、常温では置換反応が進行せず、100℃以上の高温条件下で反応を行なう必要があるが、実用性に乏しく、また高沸点溶媒の残存が懸念される。これに対して、固体触媒を用いた場合には、生成物からの触媒の分離が容易であり、さらに常温下で反応を行なうことができるため、実用性が高い。このため、本発明にかかるシリカコーティング剤は、固体触媒の共存下で反応を行なうことにより調製することが好適である。
【0027】
本発明に用いられるアルコキシシランは、ケイ素原子上に4つのアルコキシ基が結合したもの、あるいは1つ又は2つの炭化水素基(炭素数1〜16)及び3つ又は2つのアルコキシ基が結合したものであればよく、特に限定されるものではない。なお、炭素数1〜16の炭化水素基は、上記一般式(1)におけるRと同一である。本発明に用いられるアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ジオクチルジエトキシシラン、ドデシルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0028】
多価アルコールは、分子中に2つ以上の水酸基を有する化合物であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、マルチトール等が挙げられる。これらのうち、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタジエングリコール、グリセリンのいずれかを用いるのが好ましい。
【0029】
固体触媒は、用いられる原料成分、反応溶媒、及び反応生成物に対して不溶な固体状の触媒であり、ケイ素原子上の置換基交換反応に対して活性を有する酸点及び/又は塩基点を有する固体であればよい。本発明に用いられる固体触媒としては、例えば、イオン交換樹脂、及び各種無機固体酸/塩基触媒が挙げられる。
【0030】
固体触媒として用いられるイオン交換樹脂としては、例えば、酸性陽イオン交換樹脂及び塩基性陰イオン交換樹脂が挙げられる。これらのイオン交換樹脂の基体をなす樹脂としてはスチレン系、アクリル系、メタクリル系樹脂等が挙げられ、また、触媒活性を示す官能基としてはスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸、4級アンモニウム、3級アミン、1,2級ポリアミン等が挙げられる。また、イオン交換樹脂の基体構造としては、ゲル型、ポーラス型、バイポーラス型等から、目的に応じて選択することができる。
【0031】
酸性陽イオン交換樹脂としては、例えば、アンバーライト IRC76、FPC3500、IRC748、IRB120B Na、IR124 Na、200CT Na(以上、ロームアンドハース社製)、ダイヤイオン SK1B、PK208(以上、三菱化学社製)、Dow EX モノスフィア650C、マラソンC、HCR−S、マラソンMSC(以上、ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。また、塩基性陰イオン交換樹脂としては、例えば、アンバーライト IRA400J CL、IRA402BL CL、IRA410J CL、IRA411 CL、IRA458RF CL、IRA900J CL、IRA910CT CL、IRA67、IRA96SB(以上、ロームアンドハース社製)、ダイヤイオン SA10A、SAF11AL、SAF12A、PAF308L(以上、三菱化学社製)、Dow EX モノスフィア550A、マラソンA、マラソンA2、マラソンMSA(以上、ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
【0032】
固体触媒として用いられる無機固体酸/塩基触媒としては、特に限定されるものではない。無機固体酸触媒としては、Al、SiO、ZrO、TiO、ZnO、MgO、Cr等の単元系金属酸化物、SiO−Al、SiO−TiO、SiO−ZrO、TiO−ZrO、ZnO−Al、Cr−AlO3、SiO−MgO、ZnO−SiO等の複合系金属酸化物、NiSO、FeSO等の金属硫酸塩、FePO等の金属リン酸塩、HSO/SiO等の固定化硫酸、HPO/SiO等の固定化リン酸、HBO/SiO等の固定化ホウ酸、活性白土、ゼオライト、カオリン、モンモリロナイト等の天然鉱物又は層状化合物、AlPO−ゼオライト等の合成ゼオライト、HPW1240・5HO、HPW1240等のヘテロポリ酸等が挙げられる。また、無機固体塩基触媒としては、NaO、KO、RbO、CsO、MgO、CaO、SrO、BaO、La、ZrO、ThO等の単元系金属酸化物、NaCO、KCO、KHCO、KNaCO、CaCO、SrCO、BaCO、(NHCO、NaWO・2HO、KCN等の金属塩、Na−Al、K−SiO等のアルカリ金属担持金属酸化物、Na−モルデナイト等のアルカリ金属担持ゼオライト、SiO−MgO、SiO−CaO、SiO−SrO、SiO−ZnO、SiO−Al、SiO−ThO、SiO−TiO、SiO−ZrO、SiO−MoO、SiO−WO、Al−MgO、Al−ThO、Al−TiO、Al−ZrO、ZrO−ZnO、ZrO−TiO、TiO−MgO、ZrO−SnO等の複合系金属酸化物等が挙げられる。
【0033】
固体触媒は、反応終了後にろ過あるいはデカンテーション等の処理を行なうことによって、容易に生成物と分離することができる。
【0034】
また、反応の際の温度条件は特に限定されるものではないが、5〜90℃の温度条件下で行なうことが好ましい。90℃を超える温度条件下で反応を行なう場合、反応装置の耐久性等の実使用上の問題があり、さらに反応溶媒として高沸点溶媒を用いる必要があり、溶媒の完全な分離除去が困難となる。また、常温条件下、すなわち5〜35℃の温度条件下で反応を行なうことがより好適である。ここで、常温条件下で反応を行なう場合には、多価アルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールのいずれかを用いることが好ましい。その他の多価アルコール、例えば、グリセリンを用いた場合には、常温条件下では反応生成物を生じない場合がある。
【0035】
反応時には溶媒を用いなくてもよいが、必要に応じて各種溶媒を用いても構わない。反応に用いる溶媒としては、特に限定されるものではなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、セロソルブ、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエステル、エーテル、ケトン系溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒、さらにはクロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒が挙げられる。ここで、原料として用いるテトラアルコキシシランの加水分解縮合反応を抑制するため、溶媒は予め脱水しておくことが好ましい。また、これらのうちで、反応時に副生成するエタノール等のアルコールと共沸混合物を形成して系外へと除去することで反応を促進することのできるアセトニトリル、トルエン等を用いることが好ましい。
【0036】
本発明にかかるシリカコーティング剤は、上記一般式(1)に示される水溶性シラン誘導体からなり、水に溶解するものである。なお、テトラエトキシシランやアルキルトリエトキシシランに代表される従来のシリカコーティング剤は、水に不溶であるため、通常の場合、酸・アルカリ等の加水分解反応触媒、さらには可溶化のための有機溶媒とともに用いられている。これに対して、本発明にかかるシリカコーティング剤においては、酸・アルカリあるいは有機溶媒を用いる必要性が無く、容易且つ安全に目的物質の表面上へのシリカ被膜形成を行なうことができる。
【0037】
なお、通常、シリカコーティングを行なう場合には、コーティング剤成分を含む液状の組成物を目的物質の表面上に塗布又は撒布するか、あるいは当該液状組成物中に目的物質を浸漬することにより、当該表面上でシリカ被膜を形成する。ここで、本発明にかかるシリカコーティング剤は、水に溶解するものであるため、シリカコーティング剤を水中に溶解した液状組成物の状態で、シリカコーティングに用いることができる。さらに、酸・アルカリあるいは有機溶媒を用いる必要性が無いことから、本発明にかかるシリカコーティング用液状組成物は、上記シリカコーティング剤と水とを含有し、酸・アルカリ及び有機溶媒を含有しないことを特徴とする。
【0038】
本発明にかかるシリカコーティング剤は、例えば、金属やプラスチック表面の表面処理剤として使用することができる。金属やプラスチック表面に対して用いる場合、例えば、本発明にかかるシリカコーティング剤の水溶液を、金属あるいはプラスチックの表面上に塗布又は撒布し、自然乾燥あるいは熱処理することによって、当該表面上に良好なシリカ被膜を形成することができる。
【0039】
また、本発明にかかるシリカコーティング剤は、粉末表面の表面処理剤として使用することもできる。粉末に対して用いる場合、本発明にかかるシリカコーティング剤の水溶液を粉末表面上に塗布又は撒布するか、あるいは当該粉末をシリカコーティング剤水溶液中に浸漬した後、粉末を自然乾燥あるいは熱処理することによって、当該粉末の表面上良好なにシリカ被膜を形成することができる。
【0040】
また、本発明にかかるシリカコーティング剤は、塗料あるいはワックス中にコーティング成分として配合することができ、当該塗料あるいはワックスを塗布した場合、塗膜中で良好なシリカ被膜を形成することができる。ここで、本発明にかかるシリカコーティング剤を塗料又はワックス中に配合する場合、シリカ被膜の形成に際して、酸・アルカリあるいは有機溶媒を用いる必要性が無く、使用性に優れている。
【0041】
また、本発明にかかるシリカコーティング剤は、例えば、日焼け止め、毛髪コーティング剤、マニキュア、マスカラ等の化粧料中に配合することもでき、当該化粧料を塗布した場合に、皮膚あるいは毛髪表面上で良好なシリカ被膜を形成することができる。本発明にかかるシリカコーティング剤を化粧料中に配合する場合、酸・アルカリあるいは有機溶媒を用いる必要がなく、人体に対する刺激性の点で有用性が高い。また、エチレングリコール等の多価アルコールを副生成するため、従来用いられてきたエトキシシラン化合物(エタノールを副生成)と比較しても、人体への安全性の点での有用性が高く、加えて、多価アルコールによる保湿効果の付与も期待できる。
【実施例1】
【0042】
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0043】
ハロゲン化シランによる合成
本発明者らは、まず最初に、ドデシルトリクロロシランと4−(ベンジルオキシ)−1−ブタノールを用い、多価アルコール(4−(ベンジルオキシ)−1−ブタノール)を置換したシラン誘導体の調製を試みた。
4−(ベンジルオキシ)−1−ブタノール置換体の生成
4−(ベンジルオキシ)−1−ブタノール(和光純薬社製)1.08g(6.00mmol)、ピリジン(東京化成社製)490mg(6.20mmol)をクロロホルム15ml中に加え、0℃で撹拌溶解した。この溶液に、ドデシルトリクロロシラン(LS4550:信越化学工業社製)608mg(2.00mmol)を滴下混合した後、室温に昇温して5時間撹拌した。反応液にエタノールと水を加えて分液操作し、クロロホルム相を取り出した後、溶媒をエバポレータにて除去し、透明な液体を得た。この溶液中に含まれる化合物をカラムクロマトグラフィーにより分離精製し、次の三種類のシラン誘導体を得た。ドデシル{4−(ベンジルオキシ)−1−ブトキシ}ジエトキシシラン140mg(0.299mmol)、ドデシルジ{4−(ベンジルオキシ)−1−ブトキシ}エトキシシラン368mg(0.613mmol)、ドデシルトリ{4−(ベンジルオキシ)−1−ブトキシ}シラン216mg(0.294mmol)。化合物の同定はNMRスペクトル測定により行った。
【0044】
つづいて、本発明者らは、以上のようにして得られた4−(ベンジルオキシ)−1−ブタノール置換体のベンジル保護基について、水素化による脱離を試みた。
ベンジル保護基の脱離
実施例1
ドデシルジ{4−(ベンジルオキシ)−1−ブトキシ}エトキシシラン180mg(0.300mmol)とPd/C30gをエタノール5mlに加えて、室温で撹拌した。この懸濁液に水素ガス(1気圧)を導入して、室温で4時間撹拌した。反応液を濾別し、溶媒をエバポレータにて除去して、褐色で粘性のある液体を得た。NMRスペクトル測定によって、ドデシルジ(4−ヒドロキシ−1―ブトキシ)エトキシシラン120mg(0.285mmol)であると同定された。
1H NMR (395.0 MHz, DMSO-d6, 25℃) δ4.30 (2H, br), 3.73 (2H, q), 3.67 (4H, t), 3.39 (4H, br), 1.67 (8H, m), 1.23-1.6 (28H), 1.14 (3H, t), 0.85 (3H, t), 0.54 (2H, t); 13C{1H} NMR (99.0 MHz, CDCl3, 25℃) δ64.6, 62.7, 58.5, 29-34, 22.7, 18.3, 14.1, 10.1.
さらに生成物を5質量%となるようにイオン交換水にて希釈したところ、白濁し、分散していることが確認された。
【0045】
実施例2
ドデシルトリ{4−(ベンジルオキシ)−1−ブトキシ}シラン1.33g(2.22mmol)とPd/C0.8gをエタノール35mlに加えて、室温で撹拌した。この懸濁液に水素ガス(1気圧)を導入して、室温で6時間撹拌した。反応液を濾別し、溶媒をエバポレータにて除去して、薄い褐色で粘性のある液体を得た。NMRスペクトル測定によって、ドデシルトリ(4−ヒドロキシ−1―ブトキシ)シラン852mg(2.03mmol)であると同定された。
1H NMR (395.0 MHz, DMSO-d6, 25℃) δ4.33 (3H, br), 3.68 (6H, t), 3.65 (6H, br), 1.2-1.6 (32H),0.85 (3H, t), 0.54 (2H, t); 13C{1H} NMR (99.0 MHz, CDCl3, 25℃) δ62.0, 60.7, 28-33, 22.0, 13.8, 9.7.
さらに生成物を5質量%となるようにイオン交換水にて希釈したところ、白濁し、分散していることが確認された。
【0046】
実施例3
1,3−ブチレングリコール(和光純薬社製)445mg(4.94mmol)とピリジン(和光純薬社製)1.80g(19.8mmol)を混合して撹拌した。この溶液を−60℃に冷却し、ドデシルトリクロロシラン(信越化学工業社製)500mg(1.65mmol)を添加した。撹拌しながら徐々に室温まで昇温し、室温で1時間撹拌した。水とクロロホルムを加えて分液操作を行い、クロロホルム相を取り出して溶媒をエバポレータで除去して、透明な液体529mgを得た。これを5質量%となるようにイオン交換水にて希釈したところ、白濁し、分散していることが確認された。
【0047】
以上のように、上記実施例1〜3においては、ハロゲン化シランと、多価アルコールとを反応させることによって、水溶性の多価アルコール置換シラン誘導体が得られた。
【0048】
アルコキシシランによる合成
つづいて、本発明者らは、各種アルコキシシランと多価アルコールを用い、多価アルコールを置換したシラン誘導体の調製を試み、その物性についての評価を行った。
実施例4
テトラエトキシシラン20.8g(0.1モル)と、エチレングリコール24.9g(0.4モル)とをアセトニトリル150ml中に添加し、さらに固体触媒として強酸性イオン交換樹脂(DowEX 50W−X8:ダウ・ケミカル社製)1.8gを添加した後、室温で混合攪拌した。当初、二層に分離していた反応液は約一時間後に均一に溶解した。その後、5日間攪拌を続けた後、固体触媒をろ過分離し、アセトニトリルを減圧下留去して、透明の粘性液体39gを得た。NMR分析の結果、生成物が目的とするエチレングリコール置換体(テトラ(2−ヒドロキシエトキシ)シラン)であることを確認した(収率:72.5%)。
【0049】
実施例5
テトラエトキシシラン11.7g(0.085モル)とプロピレングリコール12.09g(0.16モル)とをアセトニトリル100ml中に添加し、透明一層の溶液を得た。これに固体触媒として強酸性イオン交換樹脂(DowEX 50W−X8:ダウ・ケミカル社製)0.8gを添加した後、室温で30時間混合攪拌した。固体触媒をろ過分離し、アセトニトリルを減圧下留去して、透明の粘性液体14.5gを得た。生成物は、同量の水と室温中で混合することにより、均一で透明なゲルを形成した(収率:95.2%)。
【0050】
実施例6
アセトニトリル55gに固体触媒として強酸性イオン交換樹脂(DowEX 50W−X8:ダウ・ケミカル社製)1.1gを添加し、テトラエトキシシラン20.8g(0.1モル)を溶解した。これに1,3−ブチレングリコール36.2g(0.4モル)を添加した後、室温で75時間攪拌混合した。約5時間経過した後、溶液がやや白濁し、若干の粘度上昇が認められた。75時間反応させた後、固体触媒をろ過分離し、次いでアセトニトリルを減圧留去して、透明流動性の液体37.7gを得た。生成物は、同量の水と室温中で混合することにより、均一で透明なゲルを形成した(収率:97%)。
【0051】
実施例7
テトラエトキシシラン60.1g(0.28モル)と、グリセリン106.33g(1.16モル)とを混合し、無溶媒下、固体触媒として強酸性イオン交換樹脂(DowEX 50W−X8:ダウ・ケミカル社製)1.1gを添加した後、85℃で混合攪拌した。約3時間の後、混合物は一層透明溶液となった。さらに5時間30分反応を続けた後、得られた溶液を終夜静置した。減圧下、固体触媒をろ過分離した後、少量のエタノールで洗浄した。さらにこの溶液からエタノールを留去して、透明の粘性液体112gを得た。生成物は、同量の水と室温中で混合することにより、やや発熱し、均一で透明なゲルを形成した(収率:97%)。
【0052】
実施例8
オクチルトリエトキシシラン(特級:東京化成社製)11.06g(0.04mmol)、エチレングリコール(特級:和光純薬社製)7.45mg(0.12mmol)、及び酸性イオン交換樹脂(DowEX 50W−X8:ダウ・ケミカル社製)1.0gをアセトニトリル80ml中に加え、室温にて24時間攪拌した。ろ過によりイオン交換樹脂を分離した後、溶媒をエバポレータにて除去し、透明な溶液を得た。これを5質量%となるようにイオン交換水にて希釈したところ、白濁し、分散していることが確認された。
【0053】
実施例9
オクチルトリエトキシシラン(特級:東京化成社製)11.06g(0.04モル)、1,3−ブチレングリコール(和光純薬社製)10.82mg(0.12モル)、及び酸性イオン交換樹脂(DowEX 50W−X8:ダウ・ケミカル社製)1.0gをアセトニトリル80ml中に加え、室温にて24時間攪拌した。ろ過によりイオン交換樹脂を分離した後、溶媒をエバポレータにて除去し、透明な溶液を得た。これを5質量%となるようにイオン交換水にて希釈したところ、白濁し、分散していることが確認された。
【0054】
実施例10
デシルトリエトキシシラン(LS5258:信越化学社製)10.50g(0.04モル)、1,3−ブチレングリコール(和光純薬社製)10.82mg(0.12モル)、及び酸性イオン交換樹脂(DowEX 50W−X8:ダウ・ケミカル社製)1.0gをアセトニトリル80ml中に加え、室温にて24時間攪拌した。ろ過によりイオン交換樹脂を分離した後、溶媒をエバポレータにて除去し、透明な溶液を得た。これを5質量%となるようにイオン交換水にて希釈したところ、白濁し、分散していることが確認された。
【0055】
実施例11
ドデシルトリエトキシシラン(LS6570:信越化学社製)13.30g(0.04モル)、1,3−ブチレングリコール(和光純薬社製)10.82mg(0.12モル)、及び酸性イオン交換樹脂(DowEX 50W−X8:ダウ・ケミカル社製)1.0gをアセトニトリル80ml中に加え、室温にて24時間攪拌した。ろ過によりイオン交換樹脂を分離した後、溶媒をエバポレータにて除去し、透明な溶液を得た。これを5質量%となるようにイオン交換水にて希釈したところ、白濁し、分散していることが確認された。
【0056】
実施例12
ドデシルメチルジエトキシシラン(LS6360:信越化学社製)12.10g(0.04モル)、1,3−ブチレングリコール(和光純薬社製)10.82mg(0.12モル)、及び酸性イオン交換樹脂(DowEX 50W−X8:ダウ・ケミカル社製)1.0gをアセトニトリル80ml中に加え、室温にて24時間攪拌した。ろ過によりイオン交換樹脂を分離した後、溶媒をエバポレータにて除去し、透明な溶液を得た。これを5質量%となるようにイオン交換水にて希釈したところ、白濁し、分散していることが確認された。
【0057】
実施例13
オクチルトリエトキシシラン(特級:東京化成社製)12.10g(0.04モル)、1,6−ヘキサンジオール(特級:和光純薬社製)14.18mg(0.12モル)、及び酸性イオン交換樹脂(DowEX 50W−X8:ダウ・ケミカル社製)1.0gをアセトニトリル80ml中に加え、室温にて24時間攪拌した。ろ過によりイオン交換樹脂を分離した後、溶媒をエバポレータにて除去し、透明な溶液を得た。これを5質量%となるようにイオン交換水にて希釈したところ、白濁し、分散していることが確認された。
【0058】
実施例14
オクチルトリエトキシシラン(特級:東京化成社製)12.10g(0.04モル)、1,3−ブチレングリコール(和光純薬社製)10.82mg(0.12モル)、及び酸性イオン交換樹脂(DowEX 50W−X8:ダウ・ケミカル社製)1.0gをアセトニトリル80ml中に加え、70℃にて24時間還流攪拌した。ろ過によりイオン交換樹脂を分離した後、溶媒をエバポレータにて除去し、透明な溶液を得た。これを5質量%となるようにイオン交換水にて希釈したところ、白濁し、分散していることが確認された。
【0059】
実施例15
1,3−ブチレングリコール(和光純薬社製)813mg(9.02mmol)、及び触媒用イオン交換樹脂(アンバーリスト:ロームアンドハース社)60mgをテトラヒドロフラン6mlに加えて撹拌した。ドデシルトリエトキシシラン(信越化学工業社製)1.00g(3.01mmol)を反応液に滴下して加えた。60℃で6時間撹拌して反応させた。ろ過によりイオン交換樹脂を分離した後、溶媒をエバポレータにて除去して、透明な液体を得た。これを5質量%となるようにイオン交換水にて希釈したところ、白濁し、分散していることが確認された。
【0060】
比較例1
オクタデシルトリエトキシシラン(LS6970:信越化学社製)16.67g(0.04モル)、1,3−ブチレングリコール(和光純薬社製)10.82mg(0.12モル)、及び酸性イオン交換樹脂(DowEX 50W−X8:ダウ・ケミカル社製)1.0gをアセトニトリル80ml中に加え、70℃にて24時間還流攪拌した。ろ過によりイオン交換樹脂を分離した後、溶媒をエバポレータにて除去し、透明な溶液を得た。これを5質量%となるようにイオン交換水にて希釈したところ、完全に分離し、水に不溶であることが確認された。
【0061】
上記実施例4〜15においては、アルコキシシランと、多価アルコールとを反応させることによって、水溶性の多価アルコール置換シラン誘導体が得られた。
一方で、炭素数が18であるオクタデシルトリエトキシシランを用いた比較例1では、多価アルコール置換体は得られたものの、生成物は水に不溶であった。このことから、本発明の水溶性シラン誘導体において、炭化水素基が炭素数16以下であることが必要である。
【0062】
上記実施例及び比較例についてまとめたものを下記表1に示す。
【表1】

【0063】
上記表1に示されるように、各種ハロゲン化シラン又はアルコキシシランと、多価アルコールとを反応させることによって、水溶性のシラン誘導体を調製できることが確認された。一方で、炭素数が18であるオクタデシルトリエトキシシランを用いた場合、多価アルコール置換体は生成したものの、得られたシラン誘導体は水に不溶であった。
【0064】
水溶性シラン誘導体によるシリカゲル粉末表面のアルキル化
つづいて、本発明者らは、以上のようにして得られた水溶性のシラン誘導体について、シリカコーティング剤としての使用を試みた。
実施例12
シリカゲル(粒子径5ミクロン,細孔径80Å)0.9685gに対して、上記実施例8の水溶性シラン誘導体(アルキル鎖長8、多価アルコール残基:エチレングリコール残基)0.6343g、及び0.3172gを用い、水50mlを溶媒として、室温にて24時間攪拌反応させた。攪拌後のサンプルを水にて洗浄し、ろ過乾燥させて水溶性シラン誘導体処理シリカゲルを得た。なお、反応中の溶液のpHは7であった。生成物について元素分析により付着した炭素量を測定したところ、使用した水溶性シラン誘導体0.6343g、及び0.3172gに対して、それぞれ18.15質量%、及び12.51質量%であった。このことからシリカゲルの表面が、水溶性シラン誘導体によりアルキル化されていることが明らかとなった。
【0065】
実施例13
絹雲母10gに対して水溶性シラン誘導体(アルキル鎖長8,多価アルコール残基:エチレングリコール残基)0.2gを混合し、130℃にて17時間加熱し,水溶性シラン誘導体処理絹雲母を得た。生成物を水面に適量散布したところ、生成物は沈下しなかった。一方、未処理の絹雲母及び絹雲母と水溶性シラン誘導体の混合物は容易に沈下した。このことから絹雲母の表面が、水溶性シラン誘導体によりアルキル化されていることが明らかとなった。
【0066】
実施例14
絹雲母10gに対して水溶性シラン誘導体(アルキル鎖長8,多価アルコール残基:1,3ブチレングリコール残基)0.2gを混合し、130℃にて17時間加熱し、水溶性シラン誘導体処理絹雲母を得た。生成物を水面に適量散布したところ,生成物は沈下しなかった。一方、未処理の絹雲母及び絹雲母と水溶性シラン誘導体の混合物は容易に沈下した。このことから絹雲母の表面が、水溶性シラン誘導体によりアルキル化されていることが明らかとなった。
【0067】
実施例15
絹雲母5.0g、水溶性シラン誘導体(アルキル鎖長8,多価アルコール残基:エチレングリコール残基)0.1g及び水15mlを室温にて1時間混合し、水を減圧乾燥にて除去して、水溶性シラン誘導体処理絹雲母を得た。生成物を水面に適量散布したところ、生成物は沈下しなかった。一方、未処理の絹雲母及び絹雲母と水溶性シラン誘導体の混合物は容易に沈下した。このことから絹雲母の表面が、水溶性シラン誘導体によりアルキル化されていることが明らかとなった。
【0068】
以上のことから、本発明にかかるシリカコーティング剤は、水に溶解するものであるため、酸・アルカリあるいは有機溶媒等を用いる必要性が無く、容易且つ安全に目的物質の表面上へのシリカ被膜形成を行なうことができることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される水溶性シラン誘導体からなるシリカコーティング剤。
−Si−(OR(OR4−(m+n) (1)
(式中、Rは炭素数1〜16の炭化水素基、Rは多価アルコール残基、Rは1価アルコール残基、nは0〜2、mは1〜4、1≦m+n≦4である。)
【請求項2】
請求項1に記載のシリカコーティング剤において、前記Rが下記一般式(2)で示される官能基であることを特徴とするシリカコーティング剤。
−(R(OH)−O)−H (2)
(式中、Rは炭素数1〜6の炭化水素基、xは0〜5、yは1〜30である。)
【請求項3】
請求項2に記載のシリカコーティング剤において、前記Rがエチレングリコール残基、プロピレングリコール残基、1,3−ブチレングリコール残基、グリセリン残基のいずれかであることを特徴とする水溶性シラン誘導体。
【請求項4】
上記一般式(1)に示される水溶性シラン誘導体と水とを含有し、酸・アルカリ及び有機溶媒を含有しないことを特徴とするシリカコーティング用液状組成物。
【請求項5】
請求項4に記載のシリカコーティング用液状組成物において、前記水溶性性シラン誘導体のRがエチレングリコール残基、プロピレングリコール残基、1,3−ブチレングリコール残基、グリセリン残基のいずれかであることを特徴とするシリカコーティング用液状組成物。

【公開番号】特開2007−46020(P2007−46020A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234776(P2005−234776)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】