説明

シリカ微粒子分散液の製造方法、シリカ微粒子分散液、及びインクジェット記録シート

【課題】 ゲル分や粗大粒子の混入が無いシリカ微粒子分散液を効率良く生産することができるシリカ微粒子分散液の製造方法を提供する。
【解決手段】 平均二次粒子径が1μm以下のシリカ微粒子を含有するシリカ微粒子分散液を、フィルター本体にろ過助剤をプレコートしたプレコートフィルターでろ過するろ過工程を有する製造方法としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ微粒子分散液の製造方法に関し、詳しくは、シリカ微粒子の平均二次粒子径が1μm(1000nm)以下のシリカ微粒子分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタによる記録方式は、騒音が少ないこと、多色印刷が容易であること、高速記録が可能であること、他の記録方式のプリンタに比べて小型で安価であること等の理由により、多方面で広く利用されている。また、近年、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ等の普及により、カラー像の印刷が一般化している。このようなフルカラー化や高解像度化技術の発達により、インクジェット記録シートにも高いインク吸収性と光沢度が求められるようになってきている。
【0003】
インク吸収性を高める方法としては、従来、顔料系のインク受容層を設けたインクジェット記録シートが提案されている。顔料にはシリカ等が用いられ、一次粒子が凝集した二次粒子を形成しているものが好ましく用いられている。この一次粒子どうし及び二次粒子どうしの空隙の作用により、インク吸収性は良好となる。
また、記録シート表面に高い光沢性を持たせるために、顔料の粒子径が小さいものを選択することが行われている。
すなわち、インク吸収性と光沢度を両立させる技術として、粒子径が小さく多孔質の二次粒子であるシリカ顔料を含む受容層を設けた記録シートが、これまでに数多く提案されている。
【0004】
本発明者は、このような受容層を形成するために、シリカの一次粒子が3次元的に凝集して形成された微細な二次粒子が水中にコロイド状に分散したものであって、乾燥によって多孔質でかつ透明度の高い塗膜を形成できるシリカ微粒子分散液及びその製造方法を提案した(特許文献1参照)。
この発明によるシリカ微粒子分散液を乾燥させて得られる塗膜は、多量のインクを吸収することができ、かつ透明度が高く高光沢であることから、前記インクジェット記録シートの製造において、インク受理層として好適に用いることができる。
【特許文献1】特開2001−354408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、時にゲル分やシリカの巨大粒子が発生することがあったが、その原因が明らかではなかった。
このような、このシリカ微粒子分散液を含有する塗布液をインクジェット記録シートのインク受理層に用いた場合には、表面の平滑性が低下し、ひいては光沢が低下することがあった。また、粗大となったシリカ微粒子が少量でも混入した分散液を含有するインクジェット記録シート用塗布液を支持体上に塗工してインクジェット記録シートとした場合には、塗工面に微細な斑点が発生してしまう(図5参照)。このようなインクジェット記録シートに印刷を行った場合、印刷品質が極めて低いものとなってしまうという問題があった。
優れた光沢性を有するインクジェット記録シートを得るには、シリカ微粒子分散液から少なくとも5μm以上の粒子を取り除くことが必要であることが明らかとなっている。
【0006】
シリカ微粒子分散液から、上述のようなゲル分や粗大粒子を取り除くため、フィルターを用いることが考えられる。
しかしながら、本発明者らが検討した結果、コロイド状のシリカの溶液を、通常のフィルターにかけると、フィルターの目詰まりによってろ材の寿命が著しく短くなり、生産性が悪くなることが判明した。また、フィルターにかけても粗大粒子が充分に除去できないことが明らかとなった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ゲル分や粗大粒子の混入が無いシリカ微粒子分散液を効率良く生産することができるシリカ微粒子分散液の製造方法、それによって得られるシリカ微粒子分散液、及び該分散液を用いて、平滑性や光沢性に優れ、斑点等の欠陥の無いインクジェット記録シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、シリカ微粒子分散液を、ろ過助剤をプレコートしたフィルターでろ過することにより、これらの問題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は下記態様を含む。
[1] 平均二次粒子径が1μm以下のシリカ微粒子を含有するシリカ微粒子分散液を、フィルター本体にろ過助剤をプレコートしたプレコートフィルターでろ過するろ過工程を有することを特徴とするシリカ微粒子分散液の製造方法。
[2] 前記シリカ微粒子分散液に前記ろ過助剤を添加した後、前記プレコートフィルターでろ過する[1]のシリカ微粒子分散液の製造方法。
[3] 前記シリカ微粒子分散液を前記プレコートフィルターでろ過する際の、該プレコートフィルターの入口圧と出口圧との最大差圧が0.05MPa以下である[1]または[2]のシリカ微粒子分散液の製造方法。
[4] 前記プレコートフィルターにプレコートされた前記ろ過助剤、及び前記シリカ微粒子分散液に添加する前記ろ過助剤が、共にセルロースファイバーである[1]〜[3]のシリカ微粒子分散液の製造方法。
[5] 前記シリカ微粒子の窒素ガス吸着法による細孔容積が0.4mL/g〜2.0mL/gである[1]〜[4]のシリカ微粒子分散液の製造方法。
[6] 前記シリカ微粒子の比表面積が50m/g〜400m/gである[1]〜[5]のシリカ微粒子分散液の製造方法。
[7] 活性珪酸の縮合により前記シリカ微粒子分散液を得るシリカ合成工程を有する[1]〜[6]のシリカ微粒子分散液の製造方法。
[8] 前記シリカ合成工程が、活性珪酸を供給して加熱することでシード液を生成するシード液生成工程と、前記シード液にアルカリを添加してシリカ微粒子の凝集を停止する凝集停止工程と、前記シード液に活性珪酸を添加してシリカ微粒子を成長させる成長工程とを有する[1]〜[7]のシリカ微粒子分散液の製造方法。
[9] [1]〜[8]の製造方法によって製造されたシリカ微粒子分散液。
[10] シリカ微粒子の、動的光散乱法による二次粒子径の限が5μm未満である[9]のシリカ微粒子分散液。
[11] [9]または[10]のシリカ微粒子分散液を含有するインクジェット記録シート用塗布液が塗布されてなるインクジェット記録シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシリカ微粒子分散液の製造方法によれば、上述の構成により、ゲル分や粗大な粒子を除去することができるとともに、フィルターの詰まり等が生じることが無い。
従って、粗大粒子を含まない均一なシリカ微粒子分散液を、効率良く製造することができる。
また、本発明のシリカ微粒子分散液を含有するインクジェット記録シート用塗布液を支持体に塗布したインクジェット記録シートによれば、塗膜の平滑性や光沢性に優れているため、塗工面が美麗となり、印刷品質を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<製造方法>
以下、本発明のシリカ微粒子分散液の製造方法について、活性珪酸水溶液を用いてシリカ合成工程で生成されたシリカ微粒子分散液を、プレコートフィルターでろ過して製造する方法を例に説明する。
各工程について、以下、順に説明する。
【0011】
[珪酸製造工程]
まず、シリカ微粒子分散液を生成するための活性珪酸水溶液を製造する。
活性珪酸水溶液は、例えばアルカリ金属珪酸塩水溶液を、水素型陽イオン交換樹脂を用いてイオン交換処理する方法により得ることができる。
活性珪酸水溶液の生成に用いるアルカリ金属珪酸塩としては、市販工業製品として入手できるものでよく、SiO/MO(但し、Mはアルカリ金属原子を表す。)モル比として2〜4程度のナトリウム水ガラスを用いるのが好ましい。
【0012】
イオン交換処理を行う際の、アルカリ金属珪酸塩水溶液のSiO濃度は1〜6質量%であることが好ましい。SiO濃度が6質量%を越えると、イオン交換樹脂カラム塔内での溶液の増粘が著しくなり、処理し難くなる。一方、SiO濃度が1質量%未満の場合には、反応液中の水分量が増大し、生産効率が低下する恐れがある。
活性珪酸水溶液は、SiO濃度として1〜6質量%であることが好ましく、2〜5質量%であることがより好ましい。また、pHは、2〜4であることが好ましい。
【0013】
[シリカ合成工程]
シリカ合成工程は、図4に示す例においては、シード液生成工程、凝集停止工程、成長工程の各小工程を備えている。
以下に、シリカ合成工程の各小工程について説明する。
【0014】
(シード液生成工程)
図4(a)のシード液生成工程では、シリカ合成を行う容器内に活性珪酸水溶液を供給して加熱することによりシード粒子を生成し、シード粒子凝集体の分散液としてシード液を得る。
シード液生成工程では、容器中の液体(活性珪酸水溶液)を、例えば、循環加熱等の方法により一定温度に加温した状態で一定時間反応させ、シード粒子の生成、凝集を行う。
【0015】
本発明のシード液生成工程によって得られるシード液は、シード粒子が凝集した多孔質なシード粒子凝集体がコロイド状に分散した分散液である。シード粒子凝集体は、窒素吸着法による比表面積が300m/g〜1000m/gで、細孔容積が0.4mL/g〜2.0mL/g、好ましくは0.5mL/g〜2.0mL/gであることが好ましい。
【0016】
シード粒子凝集体の平均二次粒子径は特に限定されないが、好ましくは5nm〜2000nmであり、さらに好ましくは10nm〜600nmである。シード粒子の平均二次粒子径が1000nmを超えても、成長工程で添加されるアルカリや撹拌による機械的力によって二次粒子径が小さくなることがあり、必ずしもシード粒子凝集体の平均二次粒子径を1000nm以下にする必要はない。
なお、本発明において、平均二次粒子径とは、動的光散乱法により測定され、キュムラント法を用いた解析から算出される値である。このとき、シリカ微粒子が分散した分散液を充分に水中で希釈した状態で測定される。
【0017】
また、シード粒子凝集体の濃度は、シリカ換算濃度で0.05〜10.0質量%であることが望ましい。シード粒子凝集体のシリカ換算濃度が0.05質量%未満であると、後のシード粒子凝集体を成長させる過程で新たなシード粒子が発生することがあり、得られる粒子の粒径分布がブロードになるため好ましくない。一方、シード粒子凝集体のシリカ換算濃度が10質量%を超えると粒子の過度の凝集が進むことがあり、場合によってはゲル化に至る虞がある。
【0018】
シード液生成工程は、第1の方法として、反応容器内に珪酸水溶液を供給し、これを、例えば循環加熱等の方法で加熱し、シード液を生成する方法がある。
また、シード液生成工程は、第2の方法として、まず、反応容器中に水を供給し、これを循環加熱等の方法で加熱して熱水を得た後、反応容器中の熱水に活性珪酸水溶液を添加することによってシード液を生成する方法がある。この方法は、シリカの平均二次粒子径を所望の大きさに制御することが容易であり、また粒度分布が狭いという特徴もある。
【0019】
上述の第1の方法のように、活性珪酸水溶液をそのまま反応容器中に供給して加熱する方法を用いてシード液を生成する場合には、一定温度に加熱しつつ一定時間反応させる。加熱温度は40℃以上とすることが好ましく、また、70〜95℃とすることがより好ましく、86〜93℃とすることが特に好ましい。
加熱温度が40℃未満だと、珪酸の縮合速度が遅く、シード液の製造効率を低下させ、また、加熱温度が95℃を超えると、突沸によって反応容器内の圧力が急上昇する虞がある。
加熱反応時間は、0.5〜4時間とすることが好ましく、1〜3時間とすることがより好ましく、1.1〜2時間とすることが特に好ましい。
加熱時間が0.5時間以下だと、珪酸の縮合が不充分となる虞があり、また、4時間を超えると生産性が低下する。
【0020】
第1の方法におけるシード粒子の凝集の進行は、活性珪酸水溶液中のSiO換算濃度、及び加熱時間に大きく依存する。つまり、活性珪酸水溶液の濃度を高くし、加熱時間を長くするほど、シード粒子の凝集を進行させることができる。
なお、シード粒子の凝集が進行するほど、シード液として使用した際に同一条件で成長させた場合、平均二次粒子径が大粒径となり、細孔容積が増大する。また、シード粒子の凝集が過度に進行した場合には溶液のゲル化を招き、後述の凝縮停止工程においてアルカリを添加してもコロイドとして安定化させることができず、シード液として不適となる。このため、これらの点を考慮しながら、SiO濃度及び加熱時間を最適値に設定することが好ましい。
活性珪酸水溶液中のSiO濃度は、1〜6質量%が好ましく、3〜5質量%がより好ましい。
【0021】
また、上述の第2の方法のように、熱水に対して活性珪酸水溶液を添加する方法を用いてシード液を生成する場合には、活性珪酸が添加される熱水の温度を50℃以上としておくことが好ましく、70℃以上とすることがより好ましい。熱水の温度が50℃未満だと、珪酸の縮合速度が遅く、シード液の生成効率が低下する。
また、反応容器内に供給して用いる水のpHは8以下であることが好ましく、3以上7以下の範囲であることがより好ましい。pHが8を越えると、珪酸の縮合によって生じるシード粒子の凝集が十分に進行せず、シード液として使用した場合に十分な細孔容積をもったシリカ微粒子が得られない。また、添加される活性珪酸が新たなシード粒子を生成することなく既存のシード粒子の成長に供される頻度が高まり、シード液の生成効率が低下する。pHが3未満だと、珪酸の縮合速度が遅くなり、シード粒子の生成効率が低下する。
また、活性珪酸の添加は1度に行わず、反応時間中、少量ずつ滴下することが好ましい。
加熱反応時間は、0.5時間以上が好ましく、1〜3時間とすることがより好ましく、1.1〜2時間とすることが、効率良く反応を行う点で特に好ましい。
【0022】
また、第2の方法におけるシード粒子の凝集の進行も、第1の方法と同様、溶液中のSiO固形分濃度、及び加熱時間に大きく依存する。つまり、熱水中に添加する活性珪酸量を増加させ、シリカの等電点(約pH2.2)に向けて溶液のpHを減少させてゆくのに従い、また、活性珪酸水溶液の添加開始時間からの加熱時間を長くするのに従い、シード粒子の凝集が進行するようになる。
また、シード粒子の凝集が進行するほど、後述の成長工程において成長させた場合に平均二次粒子径が大粒径となり、細孔容積が増大する。また、シード粒子の凝集が過度に進行した場合には、溶液のゲル化やシード粒子凝集体の沈殿を招き、後述の凝集停止工程においてアルカリを添加してもコロイドとして安定化させることができず、シード液として不適となる。従って、活性珪酸水溶液と水との仕込比や、活性珪酸水溶液の熱水への添加速度は、これらの傾向を踏まえた上で最適値に設定することが好ましい。
【0023】
シード液生成工程では、シード粒子の凝集の進行が反応時間に対して直線的ではなく、指数級数的に進行する傾向があり、短時間のうちにシード粒子の凝集が過度に進行し、溶液のゲル化又は沈殿を生じることがある。この現象は、ゲル化防止剤を添加しておくことによって軽減できる。ゲル化防止剤としては、水溶性有機溶媒が知られているが、アルコールが最も使いやすく好ましい。アルコールの種類としては、水溶性が高いものであれば使用することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどが使用可能であるが、低沸点であってシリカ微粒子分散液からの除去が容易であり、かつ低価格であるメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコールを用いることが好ましい。
【0024】
アルコールの添加方法としては、上述した2つのシード液生成方法の内、反応容器に供給された水を加熱して活性珪酸水溶液を少量ずつ滴下する第2の方法においては、熱水中に予め加えておいても良いし、後述するシード液の成長工程に移行する前に添加しても良いが、細孔容積の大きなシリカ微粒子分散液を製造するためには、シード粒子の凝集を進めることが必要であるので、成長工程に移行する直前に添加するのが好ましい。また、活性珪酸水溶液をそのまま反応容器に供給して加熱する第1の方法でも同様であり、活性珪酸中に予め加えておいても良いし、後述する成長工程に移行する前に添加しても良いが、細孔容積の大きなシリカ微粒子分散液を製造するためには、成長工程に移行する直前に添加するのが好ましい。
また、アルコールの添加率は、溶液中のシリカ固形分に対して10〜300質量部であることが望ましい。
【0025】
シード液生成工程においては、アルキルアンモニウム塩を添加しておくことが好ましい。これによってシード粒子の凝集が促進され、シード液の製造時間が短縮されるという利点があり、また、微粒子分散液の安定性が高くなる効果も得られる。
アルキルアンモニウム塩を添加しない場合には、最終的に得られるシリカ微粒子分散液の濃度が高くなるに従って粘度が急激に上昇し、短時間のうちにゲル化するという問題がある。しかしながら、アルキルアンモニウム塩を添加してシリカ微粒子分散液を作製することにより、上述のような現象を大幅に軽減することができる。
【0026】
添加するアルキルアンモニウム塩としては特に限定されないが、例えば、メチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、プロピルアンモニウム塩、ブチルアンモニウム塩、ラウリルアンモニウム塩、ステアリルアンモニウム塩等のモノアルキルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩等のジアルキルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩等のトリアルキルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、等のテトラアルキルアンモニウム塩が挙げられる。これらのアルキルアンモニウム塩の内、テトラアルキルアンモニウム塩は上述の効果が高いことから好ましく、特にテトラメチルアンモニウム塩が好ましい。テトラメチルアンモニウム塩を使用した場合には、微量の添加でシード粒子の凝集促進効果が得られる他、最終的に製造されるシリカ微粒子分散液の安定性を高める効果も得られる。
【0027】
アルキルアンモニウム塩の添加量としては、シード液の生成時に使用する活性珪酸水溶液中に含まれるSiO換算質量に対して、0.05〜1%の量を添加することが好ましい。
また、アルキルアンモニウム塩の添加方法としては、上述の第1の方法においては、熱水中にあらかじめ添加しておく方法、第2の方法においては、活性珪酸水溶液中にあらかじめ添加しておく方法が好ましい。
【0028】
(凝集停止工程)
図4(b)の凝集停止工程では、反応容器中のシード液にアルカリを必要量添加しながら、シード液を循環加熱させることにより、シード液中のシード粒子凝集体同士のさらなる凝集を停止させる。凝集停止工程で添加するアルカリは、シード液に対して添加する活性珪酸の縮合触媒としても作用する。
この凝集停止工程においては、シード液の温度を40℃以上、より好ましくは70〜95℃の範囲となるよう加温することが好ましい。シード液の温度を上述の範囲とすることにより、シード粒子の凝集停止を効率良く行うことができる。
【0029】
本発明において、シード液の凝集停止用に用いるアルカリとしては、例えば、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属元素の水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属珪酸塩、第4級アンモニウムハイドロオキサイド、アミン類などの窒素化合物を挙げることができ、これらのアルカリを単独、又は混合して用いることができる。
これらのアルカリ類の内、溶液のpHのコントロールが容易であり、また、乾燥塗膜を作製する際に容易に揮散させることが可能であるという点から、アンモニア水を用いることが最も好ましい。また、アンモニア水を凝集停止に用いることにより、シリカとバインダーによる乾燥塗膜を作製した場合に、塗膜の透明度が良好となる。
【0030】
アルカリの添加量については特に限定されないが、溶液のpHを6.5以上、より好ましくはpH8以上にするために必要なアルカリ量、より詳しくはシード粒子凝集体におけるシリカ成分(SiO)1モルに対して1×10−3〜1.0モル、より好ましくは、0.01〜0.1モルのアルカリ量とすることが好ましい。また、アルカリ量を増加させるのに従い、即ち溶液のpH値が増大するのに従い、シリカのシード粒子の表面帯電量が増加して粒子間の反発力が増大するため、シード粒子の凝集状態の分散が進み、同一条件で成長させた場合に、シリカ微粒子の平均二次粒子径が小さくなり、粗大なシリカの混入を防ぐことができる。
【0031】
アルカリの添加方法は、シード液生成工程終了後のシード液に対して一時に添加する方法、あるいは成長工程時においてシード液に対して添加してゆく活性珪酸と共に少量ずつ添加する方法、又は成長工程において活性珪酸に混合して少量ずつ添加する方法、あるいは、これらを併用した方法等を用いることができる。
活性珪酸にアルカリを混合してシード液に添加する場合には、活性珪酸水溶液のpHが7以上となる量のアルカリを混合することが望ましい。活性珪酸水溶液のpHが7未満となる場合、活性珪酸水溶液が短時間のうちにゲル化する虞がある。
【0032】
(成長工程)
図4(c)の成長工程では、反応容器中のシード液に活性珪酸水溶液を添加し、この液体を、シード液生成工程と同様に加熱して、シード粒子(一次粒子)を成長させる。
この成長工程においては、シード液を一定温度に加熱しつつ一定時間反応させる。加熱温度は60℃以上とすることが好ましく、80〜95℃とすることがより好ましく、86〜93℃とすることが特に好ましい。
加熱温度が60℃未満だと、シード粒子の成長が遅く、シード液の製造効率を低下させ、また、加熱温度が95℃を超えると、突沸によって反応容器内の圧力が急上昇する虞がある。
加熱反応時間は、1〜8時間とすることが好ましく、2〜6時間とすることがより好ましく、3〜5時間とすることが特に好ましい。
加熱時間が1時間以下だと、シード粒子の成長が不充分となる虞があり、また、8時間を超えると生産性が低下する。
【0033】
活性珪酸の添加方法は特に限定されないが、一定速度で連続添加を行うことが好ましい。
また、活性珪酸の添加中は、溶液のpH低下によるシリカ微粒子の凝集・沈殿を防止するため、必要量のアルカリを随時添加してもよい。
【0034】
活性珪酸水溶液の、加熱されたシード液への添加速度は、新たなシード粒子を生成させる余剰の活性珪酸がシード液中に存在しないよう、シード液中のシード粒子凝集体に含まれるSiO1モル当たりSiOに換算して、好ましくは0.001〜0.1モル/分、より好ましくは0.01〜0.05モル/分の速度で滴下する。この範囲を越える速度で活性珪酸を滴下すると、新たに単分散したシード粒子が生成し、粒径分布をブロードにする他、細孔容積を低下させる。
【0035】
また、活性珪酸の添加量は、シード粒子凝集体の比表面積(一次粒子径)を考慮し、所望の比表面積まで一次粒径を成長させるために必要なSiO相当分の活性珪酸水溶液を添加する。添加する活性珪酸水溶液は、シード液への添加前に縮合が進行しないように、60℃以下、好ましくは40℃以下の温度として添加することが望ましい。
【0036】
成長工程を行うことで、シード粒子のそれぞれが凝集した状態で互いに成長させて一次粒子間を化学的に結合することができ、乾式法では得ることのできない非常に強固な一次粒子の凝集状態を形成することができる。
【0037】
(後工程)
成長工程における活性珪酸水溶液の添加終了後の液体は、そのまま冷却しても十分に安定であるが、珪酸の縮合を完結させるため、1〜24時間の範囲内の時間で、70℃以上の温度で更に加熱処理することが、シリカ微粒子の粒径分布がより狭くなる点で好ましい。
【0038】
また、得られたシリカ微粒子の表面を、シランカップリング剤を用いて修飾しても良いし、ポリマー、金属酸化物、金属水酸化物、カチオン化剤、界面活性剤、アミンなどの各種化合物を用いてシリカ表面を修飾し、様々な機能性を与えることも可能である。
【0039】
上述のシリカ合成工程により、窒素吸着法による比表面積が50m/g〜400m/g、平均二次粒子径が20nm〜300nm、かつ細孔容積が0.4mL/g〜2.0mL/gのシリカ微粒子がコロイド状に分散したシリカ微粒子分散液が得られる。
【0040】
(シリカ微粒子分散液のその他の合成方法)
本発明に用いるシリカ微粒子分散液は、平均二次粒子径が1μm以下のシリカ微粒子を含有するシリカ微粒子分散液であれば、その製造方法は特に限定されず、例えば、特願昭54−22004号、特願平5−280703号、特願平8−102494号、特願平8−328983号、特願平2−317417号、特願平1−52270号、特願平2−177834号等の方法で得たものを使用しても良い。
【0041】
[ろ過工程]
本発明のシリカ微粒子分散液の製造方法では、ろ過工程においてシリカ微粒子分散液をろ過する。
シリカ合成工程で生成されたシリカ微粒子分散液にゲル分や粗大粒子が含まれている場合、上述したように、シリカ微粒子分散液を含有した塗布液を用いてインクジェット記録シートを製造した際に光沢感が得られなくなる等の不具合が生じる虞がある。このため、シリカ微粒子分散液をろ過することにより、これら粗大粒子やゲル分を取り除くことが効果的である。
【0042】
(ろ過装置)
本発明のシリカ微粒子分散液の製造方法では、例えば、図1に示すようなシリカ微粒子分散液ろ過装置(以下、ろ過装置と略称することがある)1を用いて、シリカ微粒子分散液を製造することができる。このろ過装置1は、シリカ微粒子分散液をろ過するろ過器2を備えており、該ろ過器2の内部には、後述の方法によってろ過助剤をプレコートした後にろ過処理を行う複数のフィルター本体3が配され、容器5に貯留されたシリカ微粒子分散液をろ過できるように構成されている。
また、ろ過装置1には、ろ過助剤またはろ過助剤が分散した液体を収容する助剤タンク4が備えられており、ろ過器2(フィルター本体3)にろ過助剤を供給するとともに、容器5のシリカ微粒子分散液にろ過助剤を供給、添加できるように構成されている。
【0043】
フィルター本体3は、図2に示すように、ステンレス等の金属からなるワイヤを一定間隔で螺旋巻きにした円筒状のエレメント31を備えている。このエレメント31の一端には接続管32が配され、他端に蓋36が配されている。フィルター本体3は、円筒状のエレメント31の外側から内部空間37に向けて溶液が入り込み、ろ過された溶液が接続管32の出口33から流出するように構成されている。
フィルター本体3としては、例えば、「MSフィルター(商品名:東京特殊電線株式会社製)」を用いることができる。
【0044】
図3に示すように、エレメント31には、ワイヤ間に均一で強固なスリット34が、スリット幅Aの幅寸で形成されている。
本発明者らが検討の結果、本発明の製造方法では、上述のスリット幅Aを5μm〜100μmの範囲とした際に、効率良くろ過処理を行うことが可能となることが見出された。
スリット幅Aが5μm未満だと、目詰まりが多発して効率良くろ過処理を行うことができない虞がある。スリット幅Aが100μmを超えると、ろ過助剤をスリット外側に保持(付着)することができず、ろ過後のシリカ微粒子分散液にろ過助剤が混入してしまう虞がある。
【0045】
なお、エレメント31として用いる透水性基材としては、本発明では、強度や耐久性等の点から上述のような金属製のワイヤからなるエレメントを用いているが、濾紙、メッシュ等が用いることもできる。
【0046】
(プレコート層形成)
本発明の製造方法では、フィルター本体3のエレメント31表面に、ろ過助剤をプレコートしたプレコート層35を予め形成することによってプレコートフィルター3aを構成し、このプレコートフィルター3aにシリカ微粒子分散液を通してろ過する。これにより、プレコートフィルター3aで捕捉する粒子G(図3参照)が、スリット34のスリット幅A(図3参照)の間隔よりも小径の粒子であっても、容易に捕捉、ろ過を行うことができる。
プレコート層35は、シリカ微粒子分散液のろ過を行う前に、予めろ過助剤を分散した液体をエレメント31に通過させて繰り返し流すことにより、エレメント31(スリット34)外側にろ過助剤を付着させて形成する。具体的には、図1に示すように、助剤タンク4内のろ過助剤が分散した液体を、矢印Bの方向に流通させてろ過器2に導入し、フィルター本体3のエレメント31に通過させた後、矢印Cの方向に流通させて再び助剤タンク4に戻すことにより、ろ過助剤分散液体をエレメント21に繰り返し通過させることにより行う。
【0047】
上述の操作により、ろ過助剤の平均繊維長、平均粒子径がスリット幅Aよりも小さい場合であっても、繊維長、粒子径の大きなろ過助剤から次第にエレメント31(スリット34)外側に捕捉されてゆくことにより、ろ過助剤がエレメント31(スリット34)内側に漏れないようなプレコート層35が形成される。
【0048】
プレコート層35は、エレメント31の表面にプレコートするろ過助剤の量を2kg/m以下として形成するのが好ましい。
ろ過助剤の量が2kg/mを超えると、シリカ微粒子分散液をろ過する際に、ろ過圧力を上げる必要があり、この結果、せん断力が粒子にかかるため、時として微粒子が凝集してしまう虞がある。
【0049】
(ろ過方法)
プレコート層35を形成した後、容器5内のシリカ微粒子分散液を矢印D(図1)の方向に流通させ、そのままろ過器2に導入し、プレコートフィルター3aによってろ過を行うことができる。
あるいは、助剤タンク4中のろ過助剤分散液体を矢印E(図1)の方向に流通させ、反応容器5内のシリカ微粒子分散液にろ過助剤を添加し、ろ過助剤を含むシリカ微粒子分散液を矢印Dの方向に流通させてろ過器2に供給し、ろ過を行う方法としても良い。
フィルター本体3のエレメント31にろ過助剤のプレコート層35を形成してプレコートフィルター3aとしたうえで、シリカ微粒子分散液にろ過助剤を添加(ボディフィード)してろ過することにより、ゲル分や粗大粒子を確実に除去しながら、効率良くろ過工程の処理を行うことができる。
図3に示すように、シリカ微粒子分散液に含まれるゲル分や粗大粒子(図3のG)がプレコート層35によって捕捉され、微細な微粒子のみを含むシリカ微粒子分散液のみが、プレコート層35内を浸透して通過し、また、エレメント31に形成されたスリット34を通過する。
【0050】
ろ過助剤のシリカ微粒子分散液への添加量は、シリカ微粒子分散液に対して質量%で0.5〜5%とすることが好ましい。
ろ過助剤の添加量が5%を超えると、ろ過が進むに従ってエレメントに積層されるろ過助剤の量が多くなり、ろ過に必要な圧力も上げる必要があるため、上述のような微粒子の凝集が生じる虞があり、好ましくない。また、多量のろ過助剤を用いることは、コストの面からも好ましくない。
また、ろ過助剤の添加量が0.5%未満だと、ろ過助剤をシリカ微粒子分散液に添加する効果が得られなくなる。
【0051】
(ろ過助剤)
上述のプレコート層形成、及びシリカ微粒子分散液添加に用いるろ過助剤としては、セルロースファイバー、珪藻土等を用いることが好ましく、セルロースファイバーを用いることが特に好ましい。セルロースファイバーとしては、平均繊維長50μm〜300μmのものを用いるのが好ましい。また、珪藻土としては、平均粒子径10μm〜40μmのものを用いるのが好ましく、珪藻土、セルロースファイバーを混合して用いることもできる。
【0052】
(ろ過処理時の差圧)
ろ過工程における、プレコートフィルター3aの入口側と出口側の圧力(MPa)の最大差圧は、0.05MPa以下であることが好ましい。最大差圧を上述の範囲内とすることにより、シリカ微粒子分散液中のゲル分や粗大粒子を確実に除去することができる。
最大差圧が0.05MPaを超えると、シリカ微粒子が凝縮され、ろ過後のシリカ微粒子分散液に粗大粒子が混入する虞がある。
本出願人の研究によれば、フィルターの入口側と出口側の最大差圧が増大した状態でろ過処理を行った場合、シリカ微粒子とフィルターとの間で発生するせん断力によってシリカ微粒子が凝集され、かえって新たな粗大粒子が生成されてしまうことが見出された。
最大差圧を上述の範囲内とすることにより、ろ過後のシリカ微粒子分散液中に、粗大粒子が混入するのを確実に防止できることが明らかとなった。
本発明では、プレコートフィルター3aを用いることにより、差圧が0.05MPa以下でのろ過を、長時間、安定して行うことができる。
【0053】
ろ過工程におけるろ過処理によってゲル分や粗大粒子が除去されたシリカ微粒子分散液は、矢印F(図1)に示すように、ろ過器2の外部に送液され、次工程へと搬送される。
【0054】
(ろ過後の処理)
本発明のろ過器2は、ろ過処理が終了した後、プレコートフィルター3aに対し、接続管32(入口33)側から水、又は圧縮エア等を逆流させてプレコートフィルター3a内に流入させる逆洗処理を行う構成とすることができる。これにより、ろ過使用の毎に、エレメント31表面からプレコート層35を簡単に除去して、ろ過器2の外部に流し出して廃棄することが可能となる。
この場合には、従来から用いられているような、固定ろ過層によってろ過を行うフィルターのように、目詰まりをおこす度にフィルター全体を交換しなければならないものと比べ、交換作業が簡便であり、また、コストメリットが大きくなる。
【0055】
<シリカ微粒子分散液>
上述した製造方法によって得られる本発明のシリカ微粒子分散液は、ろ過前と同様に、窒素吸着法による比表面積が50m/g〜400m/g、平均二次粒子径が20nm〜300nm、かつ細孔容積が0.4mL/g〜2.0mL/gのシリカ微粒子がコロイド状に分散したものであることが好ましい。
本発明のシリカ微粒子分散液の製造方法によれば、このように優れた特性を維持したまま、粗大粒子を除去して精製することが可能である。
【0056】
<インクジェット記録シート用塗布液>
本発明のインクジェット記録シート用塗布液には、本発明のシリカ微粒子分散液に加えて、接着剤、インク定着剤など、一般にインク受容層用として用いられている従来公知の添加剤等、他の成分を含有させることができる。
塗布液に含有されるその他の微粒子としては特に限定されるものではなく、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、ベーマイト、擬ベーマイト、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなどの無機顔料;アクリルあるいはメタクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン−イソプレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シリコーン系樹脂、尿素樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂等の樹脂からなる有機顔料が挙げられ、これらの微粒子は真球状でも不定形でもよく、無孔質でも多孔質でもよい。これらの微粒子は、1種を用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0057】
接着剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類;澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類;ポリビニルアルコール及びその誘導体;カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体;スチレン−ブタジエン樹脂、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系樹脂;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の重合体または共重合体であるアクリル系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂等が挙げられる。なかでも、特に、ポリビニルアルコール及びその誘導体が、シリカスラリー中で水溶性塩と軟凝集することにより、塗工工程における乾燥負荷が低減され、生産性が向上する耐ひび割れ性や高インク吸収性を発現するため、好ましく選ばれる。これらの接着剤は、1種を用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0058】
定着剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、カチオン性高分子、水溶性多価金属塩等が挙げられる。
カチオン性高分子としては、例えば、ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類またはその誘導体、第2級アミノ基、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体、ポリビニルアミン、ポリビニルアミジン、5員環アミジン類、ジメチルアミン−エピクロルヒドリン共重合物、ジアリルジメチルアンモニウム−SO共重合物、ジアリルアミン塩−SO共重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、アリルアミン塩の重合物、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合物、アクリルアミド−ジアリルアミン共重合物、三元共重合物体等が挙げられ、共重合物は、ブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であってもよい。
水溶性多価金属塩としては、例えば、アルミニウムの水溶性塩(硝酸塩、塩化物、酢酸塩、硫酸塩、乳酸塩など)、マグネシウムの水溶性塩(塩化物、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、乳酸塩など)、ジルコニウムの水溶性塩(塩化物、硫酸塩など)、亜鉛の水溶性塩(塩化物、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、乳酸塩など)等の一般市販されるものが挙げられる。
これらのインク定着剤は、1種を用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0059】
他の任意成分としては、一般の記録シート製造において使用される増粘剤、消泡剤、湿潤剤、界面活性剤、着色剤、帯電防止剤、耐光性助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤の各種助剤等が適宜添加される。
【0060】
<インクジェット記録シート>
本発明のインクジェット記録シートは、支持体上に、上述のインクジェット記録シート用塗布液が塗布されたものである。なお、支持体の両面に同様の塗布液が塗布されても構わない。この場合、インクジェット記録シートにおいて両面に鮮明な印字を施すことが可能となる。
また、前記塗布液からなるインク受容層は、複数の層から構成されていてもよい。支持体とインク受容層の間にアンダーコート層を設けてもよく、インク受容層上に、インク受容層の記録適性を損なわない範囲で、保存性を高めるためのオーバーコート層を形成してもよい。
【0061】
支持体としては、通常のインクジェット記録シートとして使用できる支持体であれば特に限定されるものではなく、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙、箔紙、クラフト紙、バライタ紙、含浸紙、蒸着紙などの紙類、樹脂フィルム、樹脂を一軸延伸処理または二軸延伸処理して紙状の層とし、紙等の基材層に対して一層以上積層させた一般に合成紙と呼ばれているもの、不織布等、あるいは樹脂フィルムをコート紙や上質紙等と接着剤を介して貼り合わせたもの、または紙に樹脂をラミネートしたもの等の樹脂被覆紙が使用される。
【0062】
本発明の製造方法によって得られるシリカ微粒子分散液を含有する塗布液の塗工量は、特に限定されるものではないが、乾燥後の質量として2〜30g/mとするのが好ましく、5〜20g/mとするのがより好ましい。
塗工量を2g/m以上とすることにより、インク吸収性、画像の鮮明性、印字保存性 が向上するようになる。塗工量を30g/m以下とすることにより、塗膜強度や画像の鮮明性が維持される。
なお、インク受容層は複数層積層してもよく、その場合、層間でインク受容層組成が異なっていてもよい。
【0063】
前記塗布液の塗工は、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、カーテンコーター、ダイコーター等の各種公知の塗工装置で形成することができる。塗工後に、マシンカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダーを用いて仕上げ処理を行ってもよい。
【0064】
本発明のインクジェット記録シートは、前記塗布液をインク受容層に用いることにより、インク受容層の透明度が高いインクジェット記録シートを提供することができ、光沢性が高く高画質な画像を印刷できる記録シートを得ることが可能となる。
【実施例】
【0065】
以下に、本発明の更に詳しい説明を実施例によって行うが、本発明は、これら実施例に限定されるものでは無い。また、特に断りの無い限り、「%」は質量%を意味する。
【0066】
<各物性の測定方法>
実験例における各物性の測定方法について、以下に説明する。
【0067】
[ゲル分及び粗大粒子の有無評価方法]
濃度が10質量%のシリカ微粒子分散液を、直径3.5cmのガラス管に30mL入れ、目視によって以下の3段階で判定した。
〔○〕:ゲル分や粗大粒子がない。
〔△〕:ゲル分や粗大粒子が少量ある。
〔×〕:ゲル分や粗大粒子が多量にある。
【0068】
[二次粒子径測定方法]
動的光散乱法によるレーザー粒度分布計(大塚電子株式会社製、商標LPA3000)を用いて、シリカ微粒子分散液を蒸留水で充分に希釈した状態として平均二次粒子径を測定した。
平均2次粒子径は、体積平均値を用いた。
【0069】
[比表面積、細孔容積測定方法]
シリカ微粒子分散液を105℃で乾燥して測定用粉体試料を得た。この粉体試料を、200℃の温度で2時間の真空脱気を行って前処理した後、窒素ガス吸着法比表面積・細孔分布測定装置(Coulter社製SA3100plus型)を用いて、比表面積及び細孔容積を測定した。比表面積は、BET多点法(5点法)を用いて測定し、細孔容積は、細孔径200nm以下の全細孔容積の値(窒素相対圧0.991)を用いた。
なお、比表面積が小さいことは一次粒子径が大きいことを意味し、比表面積が大きいことは一次粒子径が小さいことを意味する。本発明のシリカ微粒子は、一次粒子が化学結合して二次粒子を形成しているものであるため、一次粒子の直径を正確に求めることは困難な場合もある。このため本実施例では、一次粒子の平均粒子径の尺度として比表面積を用いた。
【0070】
[インクジェット記録シートのインク吸収性評価方法]
作製したインクジェット記録シートに、インクジェットプリンタ(セイコーエプソン(株)社製、PM−950C)を用い、PM写真用紙推奨設定印刷モードで、100%ブラックのベタ印字を30mm×30mmの大きさで行い、以下の基準で判定した。
〔○〕:インクを吸収した。
〔△〕:インクがわずかにあふれた。
〔×〕:インクがあふれ、実用に耐えない。
【0071】
[インクジェット記録シートの印字濃度測定方法]
作製したインクジェット記録シートに、インクジェットプリンタ(セイコーエプソン(株)製、PM−950C)を用い、PM写真用紙推奨設定印刷モードで、100%ブラックのベタ印字を30mm×30mmの大きさで行った。
印字濃度は、上記ブラックベタ印字の部分を、マクベス反射濃度計(Macbeth、RD−920)を用いて測定した。
【0072】
[インクジェット記録シートの光沢測定方法]
作製したインクジェット記録シート(塗工量20g/m)の光沢度を、20°及び75°の各々の角度で、光沢度計(村上色彩技術研究所製:GM−26 PRO/AUTO)を用い、ISO 8254−1に基づいて測定した。
【0073】
[インクジェット記録シートの目視光沢感評価方法]
製造したシリカ微粒子分散液の各サンプルを含有した塗布液が塗工されてなるインクジェット記録シートの光沢感を、目視で次の5段階に評価した。
〔5〕:粗大粒子による斑点が無い。
〔4〕:粗大粒子による斑点が僅かに認められる。
〔3〕:粗大粒子による斑点が〔4〕よりやや多く認められるが、実用可能である。
〔2〕:粗大粒子による斑点が〔3〕よりやや多く認められ、実用不可である。
〔1〕:粗大粒子による斑点が目立つ。
【0074】
[実験例1]
(珪酸製造工程)
SiO濃度30%、SiO/NaOモル比3.1の珪酸ソーダ溶液((株)トクヤマ製、三号珪酸ソーダ)に蒸留水を混合し、SiO濃度4.0%の希珪酸ソーダ水溶液を調製した。この水溶液を、強酸性水素型陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、ダイヤイオンSK−1BH)が充填されたカラムに通じて活性珪酸水溶液を調製した。
【0075】
(シリカ合成工程)
還流器、攪拌機、温度計を備えた5リットルのガラス製の反応容器中で、400gの蒸留水を95℃に加温した。この熱水に、塩酸を、3ppmとなるように添加した。この際の熱水のイオン導電率を測定したところ0.05μS/cmであった。この熱水を95℃の温度に保ちながら、上記活性珪酸水溶液を、熱水1molに対して0.2mol/分の速度で合計1000g添加した(シード液生成工程)。そして、水酸化カリウムを0.012モル添加して凝集停止し安定化させ、100℃に加温した(凝集停止工程)。
そして、上記シード液に対し、上記活性珪酸水溶液を、1mol/分の速度で合計584g添加した。活性珪酸水溶液の添加終了後、反応液の温度を95℃に保って1時間加熱放置し、pH8.6のシリカ微粒子分散液を得た(成長工程)。
【0076】
(ろ過工程)
フィルター本体として「MSフィルター」(商品名:東京特殊電線株式会社製:スリット幅30μm)を用い、セルロースファイバーろ過助剤(ARBOCEL BWW40:東亜化学製:繊維径20μm、繊維長200μm)が分散した溶液をフィルター本体(エレメント)に繰り返し通過させ、フィルター本体の外側にろ過助剤によるプレコート層を、1.0kg/mになるまで予め形成してプレコートフィルターとした。
そして、上記シリカ微粒子分散液中のシリカ固形分に対して1%の量で、上記セルロースファイバーろ過助剤を添加(ボディフィード)した。そして、ろ過助剤を含むシリカ微粒子分散液を前記プレコートフィルターに供給してろ過し、ゲル分や粗大粒子を除去したシリカ微粒子分散液を得た。
ろ過の際のシリカ微粒子分散液の流量は、2リットル/分とし、ろ過時間は40分であった。また、ろ過時のフィルター圧力を入口、出口側とも0MPa(終了時)としたため、差圧も0MPa(終了時)であった。
【0077】
[実験例2]
ゲル法によって製造された平均粒径13.1μmの合成無定型シリカ(グレースデビソン社製、商品名:サイロジェットP612、比表面積290m/g、一次粒子径9nm)を、濃度20%で水分散させ、アンモニア水を添加してpHを9.0に調整したスラリーを、横型ビーズミル(シンマルエンタープライゼス(株)製、ダイノーミルKDL−Pilot)によって繰り返し粉砕、分散し、シリカの20%水分散液を製造した。
【0078】
(ろ過工程)
ろ過助剤としてセルロースファイバーろ過助剤(ARBOCEL BWW40:東亜化学製:繊維径20μm、繊維長200μm)を用い、フィルター本体表面にプレコート層を0.5kg/mとなるように形成するとともに、シリカ微粒子分散液中のシリカ固形分に対して2%の量で添加し、ろ過流量を4リットル/分、入口圧及び差圧を0.015MPaとした点を除き、実験例1と同様にしてシリカ微粒子分散液をろ過した。
【0079】
[実験例3]
気相法によって製造された平均一次粒径7nmのシリカ(日本アエロジル(株)製、商品名:AEROSIL300)の11%水分散液を、油圧式超高圧ホモジナイザーによって3回分散した。この際、微細シリカの細孔容積は1.6mL/gであった。このシリカ微粒子分散液100部に、インク定着剤としてのカチオン樹脂であるジアリルジメチルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合体(日東紡績(株)製、商品名:PAS−J−81)の11%水溶液を10部添加し、ゲル化した混合物を、油圧式超高圧ホモジナイザーを用いて更に分散する処理を繰り返し、シリカ微粒子分散液を製造した。このシリカ微粒子分散液は固形分濃度が11%であり、シリカ濃度は10%、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合体濃度は1%であった。
【0080】
(ろ過工程)
ろ過助剤として繊維長が120μmのセルロースファイバーろ過助剤(ARBOCEL BE00:東亜化学製)を用い、フィルター本体表面にプレコート層を1.5kg/mとなるように形成するとともに、シリカ微粒子分散液中のシリカ固形分に対して2%の量で添加し、入口圧及び差圧を0.01MPaとした点を除き、実験例1と同様にしてシリカ微粒子分散液をろ過した。
【0081】
[実験例4]
実験例1と同様の条件でシリカ微粒子分散液を生成した。
そして、ろ過助剤として、繊維長が120μmのセルロースファイバーろ過助剤(ARBOCEL BE00:東亜化学製)を用い、フィルター本体表面にプレコート層を1.8kg/mとなるように形成するとともに、シリカ微粒子分散液中のシリカ固形分に対して2%の量で添加し、入口圧及び差圧を0.15MPaとした点を除き、実験例1と同様にしてシリカ微粒子分散液をろ過した。
【0082】
[実験例5]
実験例1と同様の条件でシリカ微粒子分散液を生成した。
そして、ろ過助剤として珪藻土ろ過助剤(ハイエース:林化成株式会社製:平均粒子径12.8μm)を用いた点を除き、実験例1と同様にしてフィルター本体表面にプレコート層を形成してプレコートフィルターとした。
そして、上記シリカ微粒子分散液に対し、上記珪藻土ろ過助剤を、シリカ微粒子分散液中の固形分に対して1%の量で添加し、ろ過助剤を含むシリカ微粒子分散液を、ろ過助剤を1.0kg/mでプレコートしたフィルターに供給してろ過した。
ろ過の際のシリカ微粒子分散液の流量は、2リットル/分とし、ろ過時間は3分であった。また、ろ過時のフィルターの入口圧を0.2MPa(終了時)とし、差圧は0.2MPa(終了時)であった。
【0083】
[実験例6]
シリカ微粒子分散液にはろ過助剤を添加せず、また、フィルター入口圧を0.015MPaとした点を除き、実験例1と同様にしてシリカ微粒子分散液を得た。
【0084】
[実験例7]
実験例1と同様の条件でシリカ微粒子分散液を生成した。
そして、ろ過工程において、フィルターとして「ワインドカートリッジフィルター」(商品名:アドバンテック東洋株式会社製、孔径5μm)を使用し、ろ過助剤によるプレコート形成及びシリカ微粒子分散液へのろ過助剤添加を行わず、ろ過時間を20分とし、フィルターの入口圧及び差圧を0.065MPaとしてシリカ微粒子分散液を得た。
シリカ微粒子分散液を30%ほどろ過したところで差圧が上昇したため、フィルターを交換し、分散液全てをろ過するのにフィルターを計3回交換した。
【0085】
<インクジェット記録シートの作製方法>
上記実験例におけるシリカ微粒子分散液の各サンプルに対し、完全けん化ポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:PVA−140H〕の10%水溶液を、各シリカ微粒子分散液に含まれるシリカ固形分100質量部に対して20固形分質量部の割合で混合することにより、インクジェット記録シート用塗布液を作製した。
この塗布液を、厚さ100μmの透明ポリエチレンテレフタラートフィルム〔東レ(株)製、商品名:ルミラー100−Q80D〕上に、塗工量が乾燥質量で20g/mになるようにバー塗工した後、120℃の温度で乾燥して、インクジェット記録シートを製造した。
【0086】
各実験例の各製造条件、及び評価結果の一覧を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
<評価結果>
表1に示すように、本発明の製造方法でシリカ微粒子分散液を製造した実験例1〜3、及び実験例6では、何れもフィルター本体表面にろ過助剤によるプレコート層を形成してプレコートフィルターとしており、また、フィルターの入口圧と出口圧との差圧が0.05Mpa以下となっている。
【0089】
実験例1〜3、及び実験例6のシリカ微粒子分散液は、何れも、窒素吸着法による比表面積が50m/g〜400m/g、平均二次粒子径が20nm〜1000nm、かつ細孔容積が0.4mL/g〜2.0mL/gの範囲内であり、また、上記評価基準に基く粗大粒子の有無の評価が何れも○であった。
また、実験例1〜3、及び実験例6のシリカ微粒子分散液を含有する塗布液が支持体上に塗工されたインクジェット記録シートは、何れも、20°光沢が5.0以上、75°光沢が45以上であり、印字濃度が2.3以上であった。また、上記評価基準に基く目視光沢感の評価が何れも3〜5の範囲であった。
【0090】
これに対し、実験例4のシリカ微粒子分散液の製造方法では、フィルターの入口圧及び差圧が0.15MPaとなっている。
実験例4の製造方法で得られたシリカ微粒子分散液は、窒素吸着法による比表面積が240m/g、平均二次粒子径が85nm、細孔容積が0.67mL/gであり、粗大粒子の有無の評価は△であった。
また、実験例4のシリカ微粒子分散液を含有する塗布液が支持体上に塗工されたインクジェット記録シートは、20°光沢が3.5、75°光沢が43.5であり、印字濃度が2.2であった。また、上記評価基準に基く目視光沢感の評価が2であった。
【0091】
また、実験例5のシリカ微粒子分散液の製造方法では、フィルターの入口圧及び差圧が0.2MPaとなっている。
実験例5の製造方法で得られたシリカ微粒子分散液は、窒素吸着法による比表面積が250m/g、平均二次粒子径が80nm、細孔容積が0.65mL/gであり、粗大粒子の有無の評価は×であった。
また、実験例5のシリカ微粒子分散液を含有する塗布液が支持体上に塗工されたインクジェット記録シートは、20°光沢が1.6、75°光沢が40.5であり、印字濃度が2.1であった。また、上記評価基準に基く目視光沢感の評価が1であった。
【0092】
また、実験例7のシリカ微粒子分散液の製造方法では、フィルター本体の表面にろ過助剤によるプレコート層を形成せず、また、シリカ微粒子分散液にろ過助剤を添加せずにろ過を行うとともに、フィルターの入口圧及び差圧が0.065MPaとなっている。
実験例7の製造方法で得られたシリカ微粒子分散液は、窒素吸着法による比表面積が262m/g、平均二次粒子径が200nm、細孔容積が0.6mL/gであり、粗大粒子の有無の評価は×であった。
また、実験例7のシリカ微粒子分散液を含有する塗布液が支持体上に塗工されたインクジェット記録シートは、20°光沢が3.2、75°光沢が43であり、印字濃度が2.25であった。また、上記評価基準に基く目視光沢感の評価が2であった。
【0093】
上記実験例4〜5、及び実験例7のシリカ微粒子分散液は、何れも、ろ過処理後の分散液に粗大粒子が多く混入したため、これらの分散液を含有した塗布液を塗布してなるインクジェット記録シートの評価が低いものとなった。
【0094】
上記結果により、本発明の製造方法で得られるシリカ微粒子分散液は、ゲル分や粗大粒子の混入が少ないため、この分散液を含有した塗布液が塗工されてなるインクジェット記録シートは、光沢感が高く美麗であり、高い印刷品質を有することが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明のシリカ微粒子分散液の製造方法の一例を説明する図であり、ろ過器を備えたろ過装置の概略図である。
【図2】本発明のシリカ微粒子分散液の製造方法の一例を説明する図であり、ろ過器内部のプレコートフィルターを示す断面図である。
【図3】本発明のシリカ微粒子分散液の製造方法の一例を説明する図であり、図2に示すプレコートフィルターの要部を拡大した断面図である。
【図4】本発明のシリカ微粒子分散液の製造方法の一例を説明する図であり、シリカ合成工程を示す工程図である。
【図5】従来のシリカ微粒子分散液の製造方法で得たシリカ微粒子分散液を塗布液に含有させ、支持体に塗工してなるインクジェット記録シートの表面を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0096】
1…シリカ微粒子分散液ろ過装置、2…ろ過器、3…フィルター本体、3a…プレコートフィルター、35…プレコート層、4…助剤タンク、5…容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均二次粒子径が1μm以下のシリカ微粒子を含有するシリカ微粒子分散液を、フィルター本体にろ過助剤をプレコートしたプレコートフィルターでろ過するろ過工程を有することを特徴とするシリカ微粒子分散液の製造方法。
【請求項2】
前記シリカ微粒子分散液に前記ろ過助剤を添加した後、前記プレコートフィルターでろ過する請求項1に記載のシリカ微粒子分散液の製造方法。
【請求項3】
前記シリカ微粒子分散液を前記プレコートフィルターでろ過する際の、該プレコートフィルターの入口圧と出口圧との最大差圧が0.05MPa以下である請求項1または2に記載のシリカ微粒子分散液の製造方法。
【請求項4】
前記プレコートフィルターにプレコートされた前記ろ過助剤、及び前記シリカ微粒子分散液に添加する前記ろ過助剤が、共にセルロースファイバーである請求項1〜3の何れかに記載のシリカ微粒子分散液の製造方法。
【請求項5】
前記シリカ微粒子の窒素ガス吸着法による細孔容積が0.4mL/g〜2.0mL/gである請求項1〜4の何れかに記載のシリカ微粒子分散液の製造方法。
【請求項6】
前記シリカ微粒子の比表面積が50m/g〜400m/gである請求項1〜5の何れかに記載のシリカ微粒子分散液の製造方法。
【請求項7】
活性珪酸の縮合により前記シリカ微粒子分散液を得るシリカ合成工程を有する請求項1〜6の何れかに記載のシリカ微粒子分散液の製造方法。
【請求項8】
前記シリカ合成工程が、活性珪酸を供給して加熱することでシード液を生成するシード液生成工程と、前記シード液にアルカリを添加してシリカ微粒子の凝集を停止する凝集停止工程と、前記シード液に活性珪酸を添加してシリカ微粒子を成長させる成長工程とを有する請求項1〜7のいずれかに記載のシリカ微粒子分散液の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8に記載の製造方法によって製造されたシリカ微粒子分散液。
【請求項10】
シリカ微粒子の、動的光散乱法による二次粒子径の上限が5μm未満である請求項9に記載のシリカ微粒子分散液。
【請求項11】
請求項9または請求項10記載のシリカ微粒子分散液を含有するインクジェット記録シート用塗布液が塗布されてなるインクジェット記録シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−99586(P2007−99586A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294522(P2005−294522)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】