説明

シリケートポリマー及びその製造方法、並びに該シリケートポリマーを含有するコーティング剤

【課題】標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が500〜100,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜5.0の範囲にある、特定の分子構造単位を持ったシリケートポリマーを提供する。
【解決手段】次式等で示される繰返し単位を含有するシリケートポリマー。高分子量でかつ溶液状態での保存安定性に優れ、このシリケートポリマーから得られる膜は、半導体用絶縁膜やガスバリア膜として好適に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリケートポリマー及びその製造方法、並びに該シリケートポリマーを含有するコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
四官能性シロキサン単位(Q単位)からなるシリケートポリマーは以下のような用途に好適に使用できる。
・高純度合成石英原料
・高純度シリカ/コロイダルシリカ
・表面コート薄膜材料(汚染防止、脱臭、光触媒保持、耐熱性、耐候性、耐酸性、耐摩耗性、絶縁性、撥水性、親水性、導電性、着色剤含有、反射防止、熱線防止)
・有機/無機ハイブリッド材料
・シリコーンゴム架橋材、接着剤
・接着剤の脱水剤
・化粧品(撥水性、粉体表面処理、顔料処理)
・Na溶出防止パッシベーション膜
・半導体用絶縁膜、低誘電率材料
・補強材/結合材(ガラス、セラミック、岩石、レンガ、紙、遺跡保存用)
・粘結剤(ジンクリッチペイント、精密鋳造)
・セラミック系塗料材料、親水性塗料材料
・プラスチック合成触媒、触媒担体
・分離精製(カラム材料、蛋白、酵素、食品、化学物質)
【0003】
ところで、このシリケートポリマーを被膜形成材料として使用する場合には、その分子量に依存して優れた被膜形成性を示すことから高分子量のシリケートポリマーを製造することが必要であった。
しかし、Q単位単独のシリケートポリマーの高分子量体を通常のアルコール系溶媒下で加水分解・縮合により作製すると、それ自体ゲル化を生じたり、またそれ自体ゲル化を生じなくても、その溶液状態で保存した場合に保存安定性が著しく悪化するという問題があった。
【0004】
なお、本発明に関連する先行文献としては、以下のものが挙げられる。
【特許文献1】特開平07−278495号公報
【特許文献2】特開平07−286135号公報
【特許文献3】特開平07−286136号公報
【特許文献4】特開平09−165451号公報
【特許文献5】特開平10−226726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、高分子量体でありかつ保存安定性に優れたシリケートポリマー及びその製造方法、並びに該シリケートポリマーを含有するコーティング剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、下記方法により下記式[1]〜[3]で示される繰り返し単位を特定量で含有するゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が500〜100,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜5.0の範囲であるシリコーンポリマーが得られ、このポリマーが保存安定性に優れていることを知見し、本発明をなすに至った。
【0007】
従って、本発明は、下記シリケートポリマー及びその製造方法、並びに該シリケートポリマーを含有するコーティング剤を提供する。
請求項1:
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が500〜100,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜5.0の範囲であり、下記式[1]及び式[2]
【化1】

並びに下記式[3]
【化2】

(式中、R1は水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基である。)
で表される繰り返し単位を有し、上記式[1]で示される繰り返し単位が20mol%以上、上記式[2]で示される繰り返し単位が40mol%以上、上記式[3]で示される繰り返し単位が10mol%以上で構成されてなることを特徴とするシリケートポリマー。
請求項2:
シリケートポリマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が2,000〜20,000であることを特徴とする請求項1記載のシリケートポリマー。
請求項3:
請求項1又は2記載のシリケートポリマーと有機溶剤を含有することを特徴とするコーティング剤。
請求項4:
有機溶剤が比誘電率の値が4以上25以下である有機溶剤である請求項3記載のコーティング剤。
請求項5:
半導体用絶縁膜用である請求項3又は4記載のコーティング剤。
請求項6:
請求項5記載のコーティング剤から形成された、400℃/10分での熱質量減少率が1%以下であることを特徴とする半導体用絶縁膜。
請求項7:
ガスバリア膜用である請求項3又は4記載のコーティング剤。
請求項8:
請求項7記載のコーティング剤から形成された、水蒸気透過速度が0.01g/m2/day以下であることを特徴とするガスバリア膜。
請求項9:
(A)一般式:Si(OR14(式中、R1は水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基である。)で示されるアルキルシリケートを、(1)0.01規定以上の無機酸水溶液を前記(A)成分1molに対して無機酸水溶液中の水が1mol以上となるような量で含む炭素数が1〜3個の低級アルコール水溶液中において、前記(A)成分の濃度を該低級アルコール水溶液中40質量%以下の濃度で加水分解反応させ、(2)次いで、得られたシリケート加水分解物の低級アルコール溶液を、(B)比誘電率の値が4以上25以下である有機溶剤の1種又は2種以上により、上記低級アルコールの含有量が10質量%以下になるように置換することを特徴とする請求項1又は2記載のシリケートポリマーの製造方法。
請求項10:
比誘電率の値が4以上25以下である有機溶剤が、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ターシャリーブチルアルコール、ジアセトンアルコール、酢酸エチル、又は酢酸ブチルであることを特徴とする請求項1又は2記載のシリケートポリマーの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシリケートポリマーによれば、高分子量でかつ溶液状態での保存安定性に優れたシリケートポリマーを製造することができ、このシリケートポリマーから得られる膜は、半導体用絶縁膜やガスバリア膜として好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のシリケートポリマーは、GPCによる標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が500〜100,000、特に2,000〜20,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜5.0の範囲であり、下記式[1]〜[3]の繰り返し単位を有するものである。
【化3】

【0010】
ここで、本発明の上記式[1]、[2]及び[3]において定義されるR1は水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基であり、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、水素原子、メチル基、エチル基が好ましい。
【0011】
本発明のシリケートポリマーは、上記式[1]で示される繰り返し単位(Q4単位)が20〜50mol%、好ましくは20〜40mol%、上記式[2]で示される繰り返し単位(Q3単位)が40〜70mol%、好ましくは40〜60mol%、上記式[3]で示される繰り返し単位(Q2単位)が10〜40mol%、好ましくは15〜30mol%で構成されてなるものである。
なお、上記Q4単位、Q3単位、Q2単位の合計は100mol%である。
【0012】
本発明のシリケートポリマーの製造方法は、(A)一般式:Si(OR14(式中、R1は水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基である。)で示されるアルキルシリケートを、(1)0.01規定以上の無機酸水溶液を前記(A)成分1molに対して無機酸水溶液中の水が1mol以上となるような量で含む炭素数が1〜3個の低級アルコール水溶液中において、前記(A)成分の濃度を該低級アルコール水溶液中40質量%以下の濃度で加水分解反応させ、(2)次いで、得られたシリケート加水分解物の低級アルコール溶液を、(B)比誘電率の値が4以上25以下である有機溶剤の1種又は2種以上により、上記低級アルコールの含有量が10質量%以下になるように置換するものである。
【0013】
本発明の製造方法において、(A)成分のアルキルシリケートは、一般式:Si(OR14で示される。上記式中、R1は水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基であり、具体的には水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基が例示され、入手の容易さ及び炭素数が小さいアルキル基ほど(A)成分の加水分解速度が大きくなる傾向にあることから、好ましくはメチル基、エチル基である。このような(A)成分のアルキルシリケートは、一般にオルソシリケートとして市販されており、(A)成分として具体的には、メチルオルソシリケート、エチルオルソシリケート、イソプロピルオルソシリケートが例示され、これら2種以上を組み合わせて使用することができるが、入手の容易さ及び炭素数が小さいアルキル基を有するアルキルシリケートほど加水分解速度が大きくなる傾向にあることから、メチルオルソシリケート又はエチルオルソシリケートであることが好ましい。
【0014】
本発明の製造方法では、はじめに0.01規定以上の無機酸水溶液を前記(A)成分1molに対して無機酸水溶液中の水が1mol以上となるような量で含む炭素数が1〜3個の低級アルコール水溶液中において、前記(A)成分の濃度を該低級アルコール水溶液中40質量%以下の濃度で加水分解縮合反応させる。
【0015】
この場合、低級アルコールとしては特に限定されず、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、i−プロピルアルコール、n−プロピルアルコールが挙げられ、シリケートポリマーを調製後、シリケートポリマーを(B)成分で溶媒置換する際に、より低沸点であることが望ましいことから、好ましくはメチルアルコール又はエチルアルコールである。
【0016】
本発明の製造方法において、低級アルコール水溶液中の(A)成分の含有量は40質量%以下、好ましくは5〜30質量%、更に好ましくは5〜20質量%であることが必要である。これは、(A)成分の含有量が40質量%を超えると、(A)成分の加水分解縮合速度を緩和し、得られるシリケートポリマーのゲル化に至るまでの高分子量化を妨げることができなくなるためである。またこの低級アルコール水溶液中には、上記アルコール以外の水可溶性の有機溶剤を併用することは、本発明の目的を損なわない限り可能である。
【0017】
また、この低級アルコール水溶液中、使用できる無機酸としては特に限定されず、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸が例示され、この中でも特に塩酸が好適に使用される。更に、その無機酸の水溶液濃度は0.01規定以上である。この濃度が0.01規定未満であると加水分解速度が遅くなり、高分子量化がしにくくなるため好ましくない。なお、この濃度の上限は適宜選定されるが、通常1規定以下である。またその水溶液の添加量は、(A)成分1molに対して無機酸水溶液中の水が1mol以上となる量で添加することが好ましい。この量が1mol未満だと加水分解によるシラノールの量が少なくなるため、当然分子量も高分子にならないため好ましくない。更に好適には、この量は(A)成分1molに対し、2.0〜4.0molである。この量が4.0molを超えるとゲル化し易く、またゲル化しなくても保存安定性が悪くなる傾向にあるため好ましくない。
【0018】
本発明の製造方法において、加水分解時の反応温度は特に限定するものではないが、例えば、反応温度が10〜40℃であることが好ましい。反応時間も特に限定するものではないが、1〜6時間程度であることが好ましい。
【0019】
続いて、本発明の製造方法では、上記加水分解縮合反応により得られたシリケートポリマーを、(B)比誘電率の値が4以上25以下である有機溶剤の1種又は2種以上により、上記低級アルコールの含有量が10質量%以下になるように置換することを特徴とする。これは得られたシリケートポリマー中にあるシラノール基が低級アルコール溶液中では経時で縮合反応を起こし、保存安定性を低下(増粘度化、ゲル化)させるため、低級アルコールを(B)成分で溶媒置換することにより、シラノール基を安定に存在させることができることを見出したからである。
【0020】
(B)成分の有機溶剤としては、比誘電率の値が4以上25以下であれば特に限定されず、(B)成分の有機溶剤として具体的には、ジエチルエーテル(比誘電率:4.197)、ジイソプロピルエーテル(比誘電率:4.49)、アニソール(比誘電率:4.33)、フェネトール(比誘電率:4.22)、1,2−ジメトキシエタン(比誘電率:5.50)、1,2−ジエトキシエタン(比誘電率:5.10)等のエーテル系溶剤;メチルエチルケトン(比誘電率:18.51)、メチルイソブチルケトン(比誘電率:13.11)、2−ヘプタノン(比誘電率:9.77)、シクロペンタノン(比誘電率:16.3)、シクロヘキサノン(比誘電率:18.10)等のケトン系溶剤;酢酸エチル(比誘電率:6.02)、酢酸ブチル(比誘電率:5.01)、酢酸イソブチル(比誘電率:5.29)、セバシン酸ジエチル(比誘電率:5.00)等のエステル系溶剤;ターシャリーブチルアルコール(比誘電率:11.4)、ジアセトンアルコール(比誘電率:18.2);その他の有機溶剤として、クロロホルム(比誘電率:4.335)が例示される。特に好ましくはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ターシャリーブチルアルコール、ジアセトンアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
【0021】
更に、本発明の製造方法において、(B)成分による溶媒置換の方法は、常圧下あるいは減圧下でアルコールを除去したあとに(B)成分を添加する方法、またアルコール水溶液中に(B)成分を添加してから、常圧下あるいは減圧下で加熱しながら低沸点のアルコールを溜去させる方法などが挙げられる。(B)成分の添加量は、(A)成分のSiO2換算量を1質量部とした場合、5〜50質量部が好ましい。この量が5質量部未満だと保存安定性が悪化する場合がある。また、50質量部を超えるとコスト的な観点から好ましくない。またこのとき、系内の低級アルコール含有量を10質量%以下、好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下まで(B)成分で置換する。この含有量が10質量%を超えると経時で縮合反応を起こし、保存安定性を低下(増粘度化、ゲル化)させる場合があるため好ましくない。
【0022】
また、本発明のシリケートポリマーは、使用形態は特に制限されないが、代表的には有機溶媒とともにコーティング剤として使用することができる。有機溶媒としては、上述した比誘電率の値が4以上25以下の有機溶媒を好適に使用することができる。このコーティング剤のシリコーンポリマーの濃度は使用する用途により選択すればよいが、0.5〜30質量%、特に1〜20質量%、とりわけ2〜10質量%とすることが好ましい。
【0023】
このコーティング剤には、保存安定性を阻害しない範囲で、硬化触媒を加えてもよい。具体的にはアルミ、チタン、ジルコニウム系キレート触媒などが挙げられる。保存安定性を阻害しない範囲であれば、加水分解時に添加しても、(B)成分に置換後に後添加で加えてもよい。
【0024】
本発明で得られるシリケートポリマーは、背景技術に記載したような各種用途に使用することができるが、非常に高分子化されており、得られる膜は、高温での熱質量減少率が少ないため、これを含有するコーティング剤は、SOG(スピンオングラス)や層間絶縁膜のような半導体用絶縁膜に好適に使用することができる。高温での熱質量減少率は、400℃/10分で1%以下、特に0.5%以下とすることができる。
【0025】
また、本発明で得られるシリケートポリマーを含有するコーティング剤から得られる膜は、ガスバリア性に優れているため酸素や水蒸気をバリアする必要のある有機EL素子等のガスバリア膜としても好適に使用することができる。この場合、例えばプラスチック基材等を本発明で得られるシリケートポリマーから得られる膜で被覆すればよい。当該膜の水蒸気透過率は、0.01g/m2/day以下とすることができる。
【0026】
本発明によるシリケートポリマーから得られる膜の膜厚は特に限定されるものではないが、50〜1,000nmの範囲が好ましい。特に好ましくは100〜500nmである。また成膜方法は湿式法ならば特に限定しないが、一般的なディップ法、ロールコート法、スプレー法、カーテンフローコート法、スピンコート法などが好ましい。またそのキュアは室温〜150℃で30秒間〜8時間の範囲で行う。特に基材が有機樹脂である場合は50〜110℃の範囲で30秒間〜3時間の範囲で行うのが好ましい。
【実施例】
【0027】
以下、合成例及び実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0028】
[実施例1]
直管付滴下管、蛇管コンデンサ及び温度計を設けた2リットル−四つ口フラスコに、メタノール300g、正珪酸メチル152g(1.0モル)を添加し、撹拌しながら系内にごく少量の流速で窒素を通じた。この状態で溶液を撹拌させながら、直管付滴下管より0.05N塩酸水溶液45g(2.5モル)を投入した。発熱により液温は41℃まで上昇した。投入後室温で2時間撹拌した。反応液は無色透明であった。この反応液にメチルイソブチルケトン500gを加え、エステルアダプターを取り付け、常圧下で加熱しながらメタノールを溜去させた。最終的には110℃まで液温を上げてガスクロマトグラフィーを6%になるようにメチルイソブチルケトンを加え希釈しシリケートポリマー溶液を作製した。このシリケートポリマー溶液をそのままテトラヒドロフランに希釈して固形分質量濃度0.2%の溶液を調製し、この溶液を、テトラヒドロフランをキャリア溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーに注入したところ、溶解成分の数平均分子量は2,096、重量平均分子量は6,766、分散度は3.229であった。また、この溶解成分を29Si−核磁気共鳴スペクトル分析から、Q1単位は観測されなかった。それぞれの積分値から、得られたシリケートポリマーは、Q4:Q3:Q2=30mol%:51mol%:19mol%で構成されたシリケートポリマーであった。また、このシリケートポリマー溶液を高密度ポリエチレン製広口瓶中で室温にて密閉保管したところ、1ヶ月経過した時点で、溶液の粘度変化、溶解成分の分子量変化は起きなかった。
【0029】
実施例1で得られたシリケートポリマー溶液をガラス基材にディップ法でコーティングし、室温で1時間、110℃で10分間、更に250℃で1時間キュアし、厚さ1μmの膜を得た。得られた膜を剥がし、400℃で10分間保持した時の熱質量減少率を熱分析測定装置(リガク社製THERMO PLUS TG8120)を使用して測定したところ、熱質量減少率は0.3%であった。
【0030】
実施例1で得られたシリケートポリマー溶液をメチルイソブチルケトンで固形分質量濃度を2%に調整し、PET基材にこの溶液をディップ法でコーティングし、室温で1時間、80℃で1時間キュアし、膜を形成した。膜厚は250nmであった。この基材を水蒸気透過測定装置(MOCON社製PERMATRAN−3/33)を用いて相対湿度90%条件下で水蒸気透過速度を測定したところ、水蒸気透過速度は0.01g/m2/day以下であった(PET基材の水蒸気透過速度は、5.0g/m2/dayであった。)。
【0031】
[実施例2]
直管付滴下管、蛇管コンデンサ及び温度計を設けた2リットル−四つ口フラスコに、メタノール300g、正珪酸エチル208g(1.0モル)を添加し、撹拌しながら系内にごく少量の流速で窒素を通じた。この状態で溶液を撹拌させながら、直管付滴下管より0.05N塩酸水溶液54g(3.0モル)を投入した。発熱により液温は31℃まで上昇した。投入後室温で2時間撹拌した。反応液は無色透明であった。この反応液にメチルイソブチルケトン500gを加え、エステルアダプターを取り付け、常圧下で加熱しながらメタノールを溜去させた。最終的には110℃まで液温を上げてガスクロマトグラフィー分析により、面積%で1.8%までメタノールを溜去させた。その後更に固形分質量濃度を6%になるようにメチルイソブチルケトンを加え希釈しシリケートポリマー溶液を作製した。このシリケートポリマー溶液をそのままテトラヒドロフランに希釈して固形分質量濃度0.2%の溶液を調製し、この溶液を、テトラヒドロフランをキャリア溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーに注入したところ、溶解成分の数平均分子量は2,103、重量平均分子量は5,190、分散度は1.889であった。また、この溶解成分を29Si−核磁気共鳴スペクトル分析から、Q1単位は観測されなかった。それぞれの積分値から、得られたシリケートポリマーは、Q4:Q3:Q2=22mol%:52mol%:26mol%で構成されたシリケートポリマーであった。また、このシリケートポリマー溶液を高密度ポリエチレン製広口瓶中で室温にて密閉保管したところ、1ヶ月経過した時点で、溶液の粘度変化、溶解成分の分子量変化は起きなかった。
【0032】
[実施例3]
直管付滴下管、蛇管コンデンサ及び温度計を設けた2リットル−四つ口フラスコに、メタノール300g、正珪酸メチル152g(1.0モル)及びジイソプロピルジエチルアセトアセテートチタン1.2g(0.0028モル)を添加し、撹拌しながら系内にごく少量の流速で窒素を通じた。この状態で溶液を撹拌させながら、直管付滴下管より0.05N塩酸水溶液36g(2.0モル)を投入した。発熱により液温は23℃まで上昇した。投入後室温で2時間撹拌した。反応液は無色透明であった。この反応液にメチルイソブチルケトン500gを加え、エステルアダプターを取り付け、常圧下で加熱しながらメタノールを溜去させた。最終的には86℃まで液温を上げてガスクロマトグラフィー分析により、面積%で4.8%までメタノールを溜去させた。その後更に固形分質量濃度を6%になるようにメチルイソブチルケトンを加え希釈しシリケートポリマー溶液を作製した。このシリケートポリマー溶液をそのままテトラヒドロフランに希釈して固形分質量濃度0.2%の溶液を調製し、この溶液を、テトラヒドロフランをキャリア溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーに注入したところ、溶解成分の数平均分子量は2,623、重量平均分子量は6,371、分散度は2.815であった。また、この溶解成分を29Si−核磁気共鳴スペクトル分析から、Q1単位は観測されなかった。それぞれの積分値から、得られたシリケートポリマーは、Q4:Q3:Q2=36mol%:43mol%:21mol%で構成されたシリケートポリマーであった。また、このシリケートポリマー溶液を高密度ポリエチレン製広口瓶中で室温にて密閉保管したところ、1ヶ月経過した時点で、溶液の粘度変化、溶解成分の分子量変化は起きなかった。
【0033】
[比較例1]
直管付滴下管、蛇管コンデンサ及び温度計を設けた2リットル−四つ口フラスコに、メタノール300g、正珪酸メチル152g(1.0モル)を添加し、撹拌しながら系内にごく少量の流速で窒素を通じた。この状態で溶液を撹拌させながら、直管付滴下管より0.05N塩酸水溶液45g(2.5モル)を投入した。発熱により液温は40℃まで上昇した。投入後室温で2時間撹拌した。反応液は無色透明であった。この反応液を減圧下室温でメタノールを除去し、エタノールを加え、固形分質量濃度を6%になるよう調製した。このシリケートポリマー溶液を高密度ポリエチレン製広口瓶中で室温にて密閉保管したところ、2週間経過した時点でゲル化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が500〜100,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜5.0の範囲であり、下記式[1]及び式[2]
【化1】

並びに下記式[3]
【化2】

(式中、R1は水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基である。)
で表される繰り返し単位を有し、上記式[1]で示される繰り返し単位が20mol%以上、上記式[2]で示される繰り返し単位が40mol%以上、上記式[3]で示される繰り返し単位が10mol%以上で構成されてなることを特徴とするシリケートポリマー。
【請求項2】
シリケートポリマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が2,000〜20,000であることを特徴とする請求項1記載のシリケートポリマー。
【請求項3】
請求項1又は2記載のシリケートポリマーと有機溶剤を含有することを特徴とするコーティング剤。
【請求項4】
有機溶剤が比誘電率の値が4以上25以下である有機溶剤である請求項3記載のコーティング剤。
【請求項5】
半導体用絶縁膜用である請求項3又は4記載のコーティング剤。
【請求項6】
請求項5記載のコーティング剤から形成された、400℃/10分での熱質量減少率が1%以下であることを特徴とする半導体用絶縁膜。
【請求項7】
ガスバリア膜用である請求項3又は4記載のコーティング剤。
【請求項8】
請求項7記載のコーティング剤から形成された、水蒸気透過速度が0.01g/m2/day以下であることを特徴とするガスバリア膜。
【請求項9】
(A)一般式:Si(OR14(式中、R1は水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基である。)で示されるアルキルシリケートを、(1)0.01規定以上の無機酸水溶液を前記(A)成分1molに対して無機酸水溶液中の水が1mol以上となるような量で含む炭素数が1〜3個の低級アルコール水溶液中において、前記(A)成分の濃度を該低級アルコール水溶液中40質量%以下の濃度で加水分解反応させ、(2)次いで、得られたシリケート加水分解物の低級アルコール溶液を、(B)比誘電率の値が4以上25以下である有機溶剤の1種又は2種以上により、上記低級アルコールの含有量が10質量%以下になるように置換することを特徴とする請求項1又は2記載のシリケートポリマーの製造方法。
【請求項10】
比誘電率の値が4以上25以下である有機溶剤が、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ターシャリーブチルアルコール、ジアセトンアルコール、酢酸エチル、又は酢酸ブチルであることを特徴とする請求項1又は2記載のシリケートポリマーの製造方法。

【公開番号】特開2009−149833(P2009−149833A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42450(P2008−42450)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】