説明

シリケート系蛍光体の製造方法およびそれを用いて形成された蛍光体

【課題】相純度が90wt%以上である白色LED用ストロンチウムシリケート系蛍光体の製造方法を提供。
【解決手段】組成式1「(Sr1-x-yEuSiO(式中、0.001≦x≦0.1、0≦y≦0.2、Mは2価の金属)」の蛍光体の製造方法において、少なくとも下記の3つの工程を経る。工程1:蛍光体原料を溶媒により湿式混合した後、その溶媒を乾燥除去して得られた凝集混合物を解砕後、大気雰囲気下、1150〜1250℃の温度での第1段の熱処理、続けて大気雰囲気下での1450〜1550℃の温度での第2段の熱処理によって仮焼物を作製する工程、工程2:次いで、前記仮焼物を乾式粉砕した後、粒径32〜100μmの粒子のみを取り出す分級工程、工程3:取り出した粒子からなる粉末を、弱還元性雰囲気のHを2〜12vol%含む不活性ガスフロー中で温度1450〜1550℃、1〜10時間の熱処理工程である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外から可視域の光励起により高輝度の橙色発光を示す、Eu2+を賦活したストロンチウムシリケート系蛍光体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
白色LEDは、一般的に、青色LEDと黄色蛍光体から構成される。これまで小型機器のLCDバックライト光源として活発に開発がなされてきたが、次世代の応用として照明用途が挙げられている。既存の白色LED用蛍光体としては、青色励起により黄色の蛍光を示すYAG:Ce3+や、緑から黄色の蛍光を示す(Ba,Sr,Ca)SiO:Eu2+、SrSiO:Eu2+(組成式で表すと、(Sr1−xEuSiO)などが知られており、より高輝度な蛍光体が望まれている。
【0003】
賦活材として価数の不安定なCe3+、Eu2+、Tb3+を使用した蛍光体の製造には、Hを数%含んだ不活性ガスによる弱還元性雰囲気下で熱処理するのが一般的である。しかし、ストロンチウムシリケート系蛍光体を製造する際は、大気や酸化性雰囲気下での熱処理ではEu3+が還元されずEu2+とならないため、Sr2+サイトへの置換が起こらず、また、不活性雰囲気下における熱処理でもEu2+のSr2+サイトへの置換が十分ではなく、高輝度な蛍光体が得られないことが知られている。
【0004】
例えば特許文献1においては、原料を混合した後、1100〜1400℃、3〜5時間、5%Hを添加したNの還元性雰囲気下で熱処理することが記載されている。また、特許文献2においても、原料混合物を還元性雰囲気下で熱処理することが記載されている。特許文献3においては、原料を湿式反応させた前駆体とし、それを還元性雰囲気下で熱処理することが記載されている。
【0005】
しかし、上記特許文献に記載されたように還元性雰囲気下、1段階で熱処理を行うと、還元性雰囲気下熱処理時に、原料の分解、SrOとSiOの固相反応、Eu2+のSr2+サイトへの置換が同時に行われることになり、反応が不均一になるため、不純物相が生成しやすいという問題が生じていた。
【0006】
一方、得られた蛍光体は熱処理による粒子の粗大化や焼結が起こるため、所定の粒径の蛍光体を得るためには粉砕処理をすることが一般的に行われる。
しかし、蛍光体を粉砕処理すると、結晶中の欠陥が増加し、輝度が低下することが知られている(非特許文献1参照)。
【0007】
この蛍光体の粗大粒子化や反応不均一性を改善する方法として、熱処理回数を2回以上行う方法が提案されている(特許文献4参照)。
例えば、湿式合成により水和物前駆体を合成した後、大気中噴霧熱処理し、その後還元性雰囲気下で熱処理を行う方法が示されている。しかし、この方法では還元性雰囲気下の熱処理において固相反応が起こることで蛍光体結晶が形成されると思われ、粒子は少なからず大きくなると推測される。
【0008】
また、反応をより均一に行うために、湿式合成したゲルを大気中熱処理により有機物を除去した後、還元性雰囲気下で焼結させる方法が示されている(特許文献5参照)。
この方法でも、大気中熱処理温度は数100℃(例えば500℃)程度であるため、蛍光体結晶の形成は還元性雰囲気下熱処理時に起こると推測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−36943号公報
【特許文献2】特表2006−514152号公報
【特許文献3】特開2007−131843号公報
【特許文献4】特開 2003−206480号公報
【特許文献5】特許4185162号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】最新LED部材の開発 技術情報協会(2007)p.178
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、白色LED用蛍光体の製造方法において、熱処理条件を最適化し、高輝度なストロンチウムシリケート系蛍光体の製造方法を提供することを目的とする。また、ストロンチウムシリケート系蛍光体の相純度が、X線回折のリートベルト解析による定量値で90wt%以上である蛍光体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を解決するため、本発明者らは、鋭意研究を重ねたところ、原料混合物を予め大気中で所定の2段階の温度で熱処理することにより、SrSiOの相純度を高くすることができることを見出した。さらに得られた仮焼物を粉砕し、所定の粒径に分級後、弱還元性雰囲気下で熱処理することにより得られる蛍光体は、焼結していないので解砕の必要が無く結晶の欠陥が発生しない事、熱処理前に仮焼物が分級されているため所定の粒径を持つ蛍光体である事を見出した。
従って上記工程を経ることにより得られるストロンチウムシリケート系蛍光体は、SrSiOの相純度が高く、結晶の欠陥が少なく、かつ所定の粒径を有するため、従来よりも輝度が高くなることを見出し、本発明をするに至った。
【0013】
本発明の第一の発明は、組成式1「(Sr1-x-yEuSiO(式中、0.001≦x≦0.1、0≦y≦0.2、Mは2価の金属)」で示される蛍光体の製造方法において、少なくとも下記の3工程を経て製造することを特徴とするものである。
工程1:蛍光体原料を組成式1で示される組成になるように秤量し、溶媒を用いて湿式混合を行った後、溶媒を乾燥除去し、得られた凝集混合物を解砕し、大気中、1150〜1250℃で熱処理し、続けて大気中、1450〜1550℃で熱処理して仮焼物を得る工程。
工程2:工程1で得られた仮焼物を、乾式粉砕、分級して、粒径32〜100μmの粒子を取り出す工程。
工程3:取り出した粒子からなる粉末を、弱還元性雰囲気として、2〜12vol%のHガスを添加した不活性ガスフロー中で、1450〜1550℃の温度で、1〜10時間の熱処理する工程。
【0014】
本発明の第二の発明は、第一の発明における組成式1「(Sr1-x-yEuSiO」中のMで示される金属が、アルカリ土類金属から選らばれる1種類以上の金属であることを特徴とする蛍光体の製造方法である。
【0015】
本発明の第三の発明は、第一または第二の発明による蛍光体の相純度が、リートベルト解析法によるX線回析の定量値で90wt%以上であることを特徴とする蛍光体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、粒径が32〜100μmであり、「(Sr1-x-yEuSiO」の組成式1で表される相純度が90wt%以上と高く、高輝度な白色LED用蛍光体を製造して、得ることができ、工業上顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1で作製した蛍光体試料の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態における蛍光体製造工程を説明する。
[工程1]
工程1においては、各元素の原料には、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、水酸化物等の化合物を用いることができる。
Srについては、安価で有害性の比較的低い炭酸塩が望ましく、またEu、Siの原料としては安価で有害性の低い酸化物を用いることが望ましい。ここで、賦活剤であるEuの添加量xは、0.001≦x≦0.1の範囲にあることが好ましい。
【0019】
Euが添加されないと蛍光体は発光せず、また添加量が多くなると濃度消光により発光強度が低下する。蛍光体の発光色を変えるために、Srの一部を別の元素で置き換えてもかまわない。
置き換える元素は2価の金属であればよく、アルカリ土類金属であれば好ましく、Ba、Ca、Mgであることがより好ましい。また、置き換える元素も1種類だけでなく、2種類以上を組み合わせてもかまわない。
その元素量は、yが0.2以下であることが望ましい。これを超えて添加すると発光強度が低下するため、好ましくない。
【0020】
これらの原料を、組成式1で示される組成になるように化学量論比で秤量し、溶媒を用いて湿式混合を行う。
溶媒に用いるものとしては、各原料が溶解しないことと、比較的低温での加熱による蒸発除去が容易であることが求められ、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類や、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルやテトラヒドロフランなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などが使用できるが、これらに限定されるものではなく、また2種類以上を混合して用いてもかまわない。
その中でも、有害性の低い溶媒としてエタノールを用いることが好ましい。
【0021】
混合物からの溶媒除去には、オーブンなどを用い、80〜200℃で乾燥を行う。得られた乾燥物は凝集しているため、乳鉢を用いて解砕する。
解砕した乾燥物をアルミナ製容器に入れ、電気炉内に設置し、大気中、1150〜1250℃で熱処理し、続けて大気中、1450〜1550℃の温度で熱処理することにより、仮焼物が得られる。なお、1150〜1250℃で熱処理後、一度降温し、その後1450〜1550℃で再度熱処理しても良く、また、仮焼物の焼結や結晶化を促進するため、フラックス(例えば、Mg、Ca、Sr、Ba、Znのフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物)を添加しても良い。
ここで、得られた仮焼物には、原料としてSrCOを用いる場合の他に、有機官能基を含む化合物を用いた場合には、熱処理中に有機官能基が熱分解して発生するCOが原料のストロンチウム化合物と反応して生成したSrCOから得られるものも含まれる。
【0022】
この大気中熱処理の1段階目ではSrCOの分解が目的であり、2段階目ではSrSiO結晶相の形成が目的である。
したがって、1段階目の温度が1150℃より低いとSrCOの分解が促進されず、その後、1450〜1550℃で熱処理してもSrCOが残っているため、SrSiOの異相であるSrSiO相などが生成するため好ましくない。また、1250℃より高いとSrCOが分解されないうちにSrSiOの結晶化が始まるため、SrSiOの異相であるSrSiO相などが生成するために、やはり好ましくない。
【0023】
一方、2段階目熱処理の温度が、1450℃より低いと、SrSiOへの固相反応が促進されないためSrSiO結晶相の純度が低くなり、SrSiOやSrSiO、また未反応SrOによるSr(OH)などが異相として残留するため好ましくない。熱処理温度が1550℃より高くなると、SrSiO結晶が溶融してしまうため、容器等に付着し収率が下がってしまうため好ましくない。
【0024】
この2段階で行う大気中熱処理により得られるSrSiO結晶相の純度は、リートベルト解析法によるX線回折により定量される。
このリートベルト解析法では、近似構造モデルに基づいて計算した回折パターンを実測回折パターンに当てはめ、結晶構造パラメーターと格子定数を精密化し、複数の結晶相の質量比を半定量的に求めることができる。
【0025】
大気中熱処理後の仮焼物のSrSiO結晶相の純度は、90wt%以上であることが望ましく、95wt%以上であるとさらに望ましく、さらに98wt%以上であるとより一層好ましい。
なお、仮焼物を弱還元性雰囲気で熱処理することにより、Sr2+サイトにEu2+が固溶するため、仮焼物の相純度は、蛍光体の相純度と同様となる。また、Srの一部を別の元素で置き換えても、SrSiO結晶相を崩さない範囲であれば問題はない。
【0026】
[工程2]
次に、工程2では、工程1で作製した仮焼物を乾式粉砕する。
乾式粉砕においては、結晶粒子内での破断やダメージが加わりすぎることを避けるため、乳鉢粉砕のような粒子へのダメージの少ない方法で行うことが望ましい。
【0027】
次に、粉砕粉を振動ふるいで粒径32〜100μmに分級する。この分級方法としては、粒子にダメージを加えない方法であれば、その他気流式分級などで行っても良い。分級により得られる粒子の粒径は32〜100μmであることが好ましい。
粒径が32μm未満では、粉砕によるダメージが大きいことや、粒子に対して表面欠陥の割合が増えることにより輝度が低くなるため好ましくない。逆に、粒径が100μmより大きくなると、輝度に大きな違いはないが、LEDに塗布する際に樹脂に分散させるとすぐに沈降してしまうため好ましくない。
【0028】
[工程3]
工程3においては、工程2で分級して取り出した仮焼物の粉末粒子を、Mo製容器に入れて電気炉内に設置する。一般的なアルミナ製やPt製容器を用いると仮焼物の粉末試料との界面で反応し、高輝度な蛍光体が得られない。そこで、耐熱性が高く、弱還元性雰囲気に耐え、粉末試料との反応が起こらない容器に適した材質として、W、Moなどが挙げられるが、比較的加工性が良く安価なMo製容器を使用すると良い。
【0029】
用いる弱還元性雰囲気としては、2〜12vol%のHガスを弱還元性雰囲気に用いて、不活性ガスに添加し、その弱還元性雰囲気を含む不活性ガスをフローさせ、1450〜1550℃の温度で熱処理を行う。
そのHガス濃度は、高すぎても低すぎても高輝度な蛍光体は得られない。水素濃度が高すぎると、SrSiO結晶自体が還元されて着色してしまうため輝度が低くなってしまい、逆に、水素濃度が低すぎると、Eu3+の還元が不十分となり、Sr2+サイトへの置換が十分に起こらないため、高輝度な蛍光体は得られない。
【0030】
熱処理温度については、1450℃より低いと賦活剤であるEu3+の還元が不十分となり、Sr2+サイトへの置換が十分に起こらないため、高輝度な蛍光体は得られない。また、熱処理温度が1550℃より高いと試料が溶融して蛍光体粉末にならない。
【0031】
さらに、熱処理時間は、1〜10時間行われる。1時間より短いとEu2+のSr2+サイトへの置換が十分に起こらず、高輝度な蛍光体が得られない。逆に熱処理時間が10時間より長いと、焼結が進行して試料が容器に固着して回収率が悪くなる。また粒子同士が結合し、工程2で粉砕、分級を行った効果が消失する。したがって、熱処理時間は3時間程度が望ましい。さらに長時間熱処理を行いたい場合は、一旦炉冷し、再度熱処理を行うと良い。なお、工程1で固相反応は十分に終わっているため、熱処理を繰り返しても粒子の粗大化は起こらない。
【0032】
以上の3つの工程により、SrSiO結晶相の純度が高く、最終熱処理以降に粉砕を行わないため、粉砕によるダメージを加えられていない、32〜100μmの粒径を持つ高輝度の蛍光体を製造することができる。
【実施例】
【0033】
次に、上記実施形態の一例である実施例を用いて、本願発明の蛍光体製造方法について、より詳細に説明する。
【実施例1】
【0034】
SrCOを116.7g、Euを2.1g、SiOを16.1g(組成式1において、「(Sr0.985Eu0.015SiO)」となるように秤量し、エタノールを用いて2時間湿式混合を行い、オーブンで120℃2時間乾燥後、乳鉢で解砕した。
得られた乾燥粉を、アルミナるつぼに入れて電気炉内に設置し、大気中で、1段階目の熱処理を1200℃で3時間、続けて2段階目の熱処理を1500℃で3時間行い、仮焼物を作製した。
作製した仮焼物をアルミナ乳鉢で粉砕し、目開き32μm、100μmのふるいで分級し、32〜100μmの範囲に入った粉末を、Mo製容器に入れて電気炉内に設置し、1500℃で3時間、水素ガス(H)を4vol%含むArガスを流しながら弱還元性雰囲気下で熱処理し、蛍光体試料を形成した。
【0035】
その仮焼物の相純度は、X線回折装置(スペクトリス社製、X‘Pert−PRO/MPD)を用いて、仮焼物の回折パターンを測定し、リートベルト解析によりSrSiOの相純度を求めた。
その結果を表1に示す。
【0036】
得られた蛍光体試料については、蛍光分光光度計(日本分光製、FP−6500)を用い、励起波長455nmにおける発光スペクトルを測定し、そのピーク面積をYAG:Ce(Phosphor Technology Ltd.製、型番 QMK58)を基準としてPL相対強度として求めた。
その結果を表1に示す。なお、PL相対強度が、YAG:Ceの1.5倍以上であれば高輝度と判定した。
【0037】
また、図1に得られた蛍光体試料の励起スペクトル、発光スペクトルを合わせて示す。励起スペクトルは、励起波長455nmの値で規格化している。また、発光スペクトルは最大ピーク波長の値で規格化している。
図1より、紫外から青色領域まで幅広い励起吸収が認められ、発光波長584nmの橙色発光を示す、白色LEDに応用可能な蛍光体が製造できていることがわかる。
【0038】
なお、参考例として、実施例1で作製した試料の分級条件を100μmより大きい場合(参考例1)、32μm未満の場合(参考例2)の各特性を表1に合わせて示した。
【実施例2】
【0039】
Sr原料としてSrCOの代わりにシュウ酸ストロンチウム(SrC)を138.8g用いた以外は、実施例1と同様に蛍光体試料を作製した。得られた蛍光体試料の評価結果を表1に示す。
【実施例3】
【0040】
1段階目の焼成温度を1150℃にした以外は実施例1と同様に蛍光体試料を作製した。得られた蛍光体試料の評価結果を表1に示す。
【実施例4】
【0041】
1段階目の焼成温度を1250℃にした以外は、実施例1と同様に蛍光体試料を作製した。得られた蛍光体試料の評価結果を表1に示す。
【実施例5】
【0042】
2段階目の焼成温度を1450℃にした以外は実施例1と同様に蛍光体試料を作製した。得られた蛍光体試料の評価結果を表1に示す。
【実施例6】
【0043】
2段階目の焼成温度を1550℃にした以外は、実施例1と同様に蛍光体試料を作製した。得られた蛍光体試料の評価結果を表1に示す。
【実施例7】
【0044】
弱還元性雰囲気熱処理の温度を1450℃にした以外は実施例1と同様に蛍光体試料を作製した。得られた蛍光体試料の評価結果を表1に示す。
【実施例8】
【0045】
弱還元性雰囲気熱処理の温度を1550℃にした以外は、実施例1と同様に蛍光体試料を作製した。得られた蛍光体試料の評価結果を表1に示す。
【実施例9】
【0046】
弱還元性雰囲気熱処理中のArガス中の水素濃度を2vol%にした以外は実施例1と同様に蛍光体試料を作製した。得られた蛍光体試料の評価結果を表1に示す。
【実施例10】
【0047】
弱還元性雰囲気熱処理中のArガス中の水素濃度を12vol%にした以外は、実施例1と同様に蛍光体試料を作製した。得られた蛍光体試料の評価結果を表1に示す。
【実施例11】
【0048】
弱還元性雰囲気熱処理の時間を1時間にした以外は、実施例1と同様に蛍光体試料を作製した。得られた蛍光体試料の評価結果を表1に示す。
【実施例12】
【0049】
弱還元性雰囲気熱処理の時間を10時間にした以外は、実施例1と同様に蛍光体試料を作製した。得られた蛍光体試料の評価結果を表1に示す。
【実施例13】
【0050】
SrCOを97.3g、BaCOを19.4g、Euを1.3g、SiOを15.3g(組成式1において、「(Sr0.86Ba0.13Eu0.01SiO)」となるように秤量した。それ以降は実施例1と同様の工程を経て、蛍光体試料を作製した。Baを添加することにより、励起波長455nmにおける発光波長602nmの濃い橙色発光を示す蛍光体が得られた。得られた蛍光体試料の評価結果を表1に示す。
【0051】
(比較例1)
実施例1と同じ配合、条件で大気中、2段階の熱処理を行い、仮焼物を得た。得られた仮焼物を分級せずにそのまま実施例1と同じ条件の弱還元性雰囲気で熱処理し、得られた粉末を乳鉢で粉砕処理を行い、蛍光体試料を作製した。その蛍光体試料の評価結果を表1に示す。
【0052】
(比較例2)
1段階目の熱処理温度を1100℃にした以外は、実施例1と同様に蛍光体試料を作製した。得られた蛍光体試料の評価結果を表1に示す。
【0053】
(比較例3)
1段階目の熱処理温度を1300℃にした以外は、実施例1と同様に蛍光体試料を作製した。得られた蛍光体試料の評価結果を表1に示す。
【0054】
(比較例4)
2段階目の熱処理温度を1400℃にした以外は実施例1と同様に蛍光体試料を作製した。得られた蛍光体試料の評価結果を表1に示す。
【0055】
(比較例5)
2段階目の熱処理温度を1600℃にした以外は、実施例1と同様に蛍光体試料を作製した。比較例5では、大気中で1600℃熱処理後、試料が溶融して固着し、蛍光体試料は得られなかった。
【0056】
(比較例6)
弱還元性雰囲気熱処理の温度を1400℃にした以外は、実施例1と同様に蛍光体試料を作製した。得られた蛍光体試料の評価結果を表1に示す。
【0057】
(比較例7)
弱還元性雰囲気熱処理の温度を1580℃にした以外は、実施例1と同様に蛍光体試料を作製した。比較例7では、弱還元雰囲気で1580℃熱処理後、試料が溶融してしまい、蛍光体試料は得られなかった。
【0058】
(比較例8)
弱還元性雰囲気熱処理中のArガス中の水素濃度を1vol%にした以外は、実施例1と同様に蛍光体試料を作製した。得られた蛍光体試料の評価結果を表1に示す。
【0059】
(比較例9)
弱還元性雰囲気熱処理中のArガス中の水素濃度を16vol%にした以外は、実施例1と同様に蛍光体試料を作製した。得られた蛍光体試料の評価結果を表1に示す。
【0060】
(比較例10)
弱還元性雰囲気熱処理の熱処理時間を0.5時間にした以外は、実施例1と同様に蛍光体試料を作製した。得られた蛍光体試料の評価結果を表1に示す。
【0061】
(比較例11)
弱還元性雰囲気熱処理の熱処理時間を12時間にした以外は、実施例1と同様に蛍光体試料の作製を行ったが、12時間の弱還元性雰囲気熱処理後、試料が容器に固着してしまい、比較例11に係る蛍光体試料が得られなかった。
【0062】
(比較例12)
実施例1と同じ配合、条件で湿式混合と乾燥を行い、乾燥粉を得た。得られた乾燥粉を1500℃で3時間、Hを4vol%含むArガスを流しながら弱還元性雰囲気で熱処理し、蛍光体試料を得た。得られた蛍光体試料の評価結果を表1に示す。
【0063】
(比較例13)
実施例1と同じ配合、条件で湿式混合と乾燥を行い、乾燥粉を得た。得られた乾燥粉を大気中、1500℃で熱処理し、乾燥粉を得た。得られた乾燥粉を1500℃で3時間、Hを4vol%含むArガスを流しながら弱還元性雰囲気で熱処理し、蛍光体試料を得た。得られた蛍光体試料の評価結果を表1に示す。
【0064】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式1「(Sr1-x-yEuSiO(式中、0.001≦x≦0.1、0≦y≦0.2、Mは2価の金属)」で示す蛍光体の製造方法において、
少なくとも下記3工程を経て製造することを特徴とする。
工程1:組成式1で示される組成になるように秤量した蛍光体原料を、溶媒を用いて湿式混合した後、前記溶媒を乾燥除去し、得られた凝集混合物を解砕し、大気中、1150〜1250℃の温度による1段目の熱処理を施し、続けて大気中、1450〜1550℃の温度による2段目の熱処理を施して仮焼物を得る工程。
工程2:工程1で得られた前記仮焼物を乾式粉砕した後、分級し、粒径32〜100μmまでの粒子のみを取り出す工程。
工程3:工程2で取り出された前記粒子からなる粉末を、弱還元性雰囲気としてのHガスを2〜12vol%含む不活性ガスフロー中で、温度1450〜1550℃、1〜10時間の熱処理する工程。
【請求項2】
前記組成式1「(Sr1-x-yEuSiO」中のMで示す金属が、アルカリ土類金属から選ばれる1種類以上の金属であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項3】
蛍光体の相純度が、リートベルト解析法によるX線回折の定量値で90wt%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法を用いて形成された蛍光体。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−214592(P2012−214592A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80173(P2011−80173)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】