説明

シリコン再生利用システム及びシリコン再生利用方法

【課題】簡易な処理工程の下で、効率的に且つ経済的で然も安全性の高い状態で廃棄シリコンの再生利用を図る事が可能なシリコン再生利用システムを提供する。
【解決手段】シリコンインゴット加工装置17と、固液分離装置18と、加熱焼成処理装置19と加熱溶融手段20と一方向凝固手段21とから構成されているシリコン再生利用システム10であって、当該加熱焼成処理装置19は、不活性ガス或は酸素ガスの存在下、若しくは真空状態下で、加熱温度を室温から300℃の範囲、300℃から850℃の範囲、及び850℃から1200℃の範囲の温度条件でシリコン固形分を焼成するシリコン再生利用システム10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用或は半導体デバイス用シリコンウエーハを製造する時に、マルチワイヤーソーを使用してシリコンインゴットをスライスする際に大量に発生するシリコン紛体或はシリコン粒体を再生して、太陽電池用或は半導体デバイス用シリコンウエーハの原材料として再利用する為のシステム及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池用或は半導体デバイス用シリコンウエーハを製造する場合には、極めて高純度のシリコンインゴットを使用する必要があるが、シリコンの原料代が高価であるのに加えて、近年に於ける環境問題の対策として太陽光発電が脚光をあびており、更に日本政府の政策による後押しもあって、太陽電池の需要が急騰している。
その結果、高純度のシリコンの供給が逼迫すると共に当該シリコンの原料価格も更に上昇する傾向が見られる。
その為、高純度のシリコンの生産を増加させ、太陽電池の製造価格を安定化させる必要性が高まってきている。
【0003】
一方、従来から、シリコンインゴットを研削加工して太陽電池用或は半導体デバイス用シリコンウエーハを製造する場合に、シリコンの切削屑が大量に発生するが、係る切削屑には、切削時に使用される有機溶媒から発生する有機物や切削部材から発生する各種の金属や炭化珪素(SiC)などの不純物が含まれており、その分離操作は複雑でコストが掛かる関係から、殆どのシリコン切削屑(シリコンスラッジ、シリコンスラリー等)は廃棄処分されているのが実情である。
【0004】
係る状況下で、従来から当該シリコン切削屑を処理して高純度のシリコンを抽出し、それを再生して太陽電池用或は半導体デバイス用の原料として再利用しようとする技術開発が行われてきているが、種々の問題や制約から実生産に結びついているものは、少ない。
【0005】
例えば、太陽電池用或は半導体デバイス用シリコンウエーハを製造する為に、従来から高純度のシリコンで形成されたシリコンインゴットを、マルチワイヤーソーを使用してスライス加工を施し、複数枚のシリコンのウエーハを同時に形成する方法が、例えば特許文献1(特開平2003−159642号公報)或は後記する非特許文献1等に示されている様に、一般的に使用されている。
【0006】
係る従来のシリコンインゴットスライス技術は、一般的に図2に示す様な構成を有しており、具体的には、図2に示す様に、シリコンブロック1が下降し、ワイヤーソー4に接触しスライス加工が実行される構造となっている。
【0007】
上記構成をより詳細に説明するならば、ワイヤーソー4が、複数のガイドローラ5に設けた溝中を一方向或いは双方向に移動する。スライスされるシリコンインゴットであるシリコンブロック1は接着剤3により適宜の強度を持った炭素系材料で構成されたビーム2に固定される。
【0008】
係る構成に於いて、回転するガイドローラ5の位置を固定し、適宜の有機溶剤からなる潤滑及び冷却用クーラントを流しながらシリコンブロック1を下降させ、ワイヤーソー4に接触させスライス加工が開始される。スライス工程の最終段階では、ワイヤーソー4は接着材部3を通り、当該ビーム2の下部をスライスする。
【0009】
係る従来のシリコンインゴットのスライス技術に於いては、砥粒として炭化珪素SiC砥粒が使用されている。このマルチワイヤーソーでは、長尺のスチールワイヤーをシリコンブロック表面上で移動させて切削処理を行うが、その際、当該炭化珪素SiC砥粒を切削材として当該ワイヤーソー4の表面に適宜の接着剤で固着させて使用するか、上記した適宜の溶媒中に炭化珪素(SiC)砥粒粉を分散させたクーラントを当該切削部に連続的に供給しながら切削操作を行うものである。
【0010】
然しながら、当該シリコンインゴットを研削する工程で発生した粉粒体状のシリコンと当該クーラントとの混合スラリー或はスラッジに、当該マルチワイヤーソー4から脱落した当該炭化珪素(SiC)砥粒粉或は当該クーラント内に混在されている当該炭化珪素(SiC)砥粒粉が多量に含まれる事になる。
【0011】
処で、係る炭化珪素(SiC)砥粒粉をスラリー或はスラッジから分離する事は容易ではなく、例えば、特開平5−270814号公報(特許文献2)に示される様なフィルター手段と酸化処理を組み合わせる方法或は特開平9−165212号公報(特許文献3)に示される様な磁気分離手段等を利用して機械的に分離する方法、更には、特開2004−223321号公報(特許文献4)に示されている様に、捕収剤と起泡剤とを併用して分離する方法等が従来から提案されてはいるが、工程が複雑で処理時間がかかり、従ってコストが増加するという問題があり、シリコンスラッジ或はシリコンスラリーからシリコンを回収して、シリコンウエーハの製造原料として再利用する事は実生産工程として事業化されていないのが実情である。
【0012】
又、当該シリコンインゴットをマルチワイヤーソー4を使用してスライス加工する際に、当該シリコンインゴットを加工装置に固定する場合、当該シリコンインゴットが把持装置で変形しないように、適度の強度と硬度を持ったビーム材2が使用されるが、従来では、カーボン系の材料を主として使用するものであるため、当該ビーム材2が当該シリコンインゴットのスライス加工工程の最終段階で研削されて大量の炭素が当該スラリー或はスラッジ内に混入してしまい、その炭素の除去にも時間とコストが掛かっていた。
【0013】
同様に、当該ビーム材2を当該シリコンインゴット1と結合する為に有機系の接着剤を使用しているが、当該接着剤も当該シリコンインゴットのスライス加工工程の最終段階で研削されるので、有機系物質からなる粒状物が多量に該スラリー或はスラッジ内に混入してしまうので、該スラリー或はスラッジから除去すべき炭素或は酸素の量が増大する事から、上記したのと同様に処理時間及び処理コストが増大するという問題を有している。
【0014】
係る問題を解決する方法として、上記した特許文献1には、当該ビーム材としてシリコンインゴットと同じ特性を有するシリコン系材料で構成されたビーム材を使用する事が提案されているが、当該有機系接着剤を依然として使用することから、炭素或は酸素の発生量が増加する方向性は改善されていない。
【0015】
一方、当該シリコンインゴットのスライス加工工程で発生するシリコンスラリー或はシリコンスラッジには、主にワイヤーソーから分離される鉄、アルミニウム、チタン等の金属成分が不純物として混入されている場合が多く、又、一旦ドープされたシリコンから得られたシリコンインゴット或は不良品と成った半導体ウエーハから得られたシリコンインゴットには、ボロン、燐、砒素、アンチモン、金、銀、銅、ニッケル、カルシュウム等の金属不純物等が混入されている場合が多く、出発原料の如何に応じて、例えば、特開2008−115040号公報(特許文献5)等でも開示されている通り、更に係る金属不純物の除去方法を併用する必要があり、その為、更なる処理工程の増加、複雑化に加えて、処理効率が低下してコストのみ増大すると言う状況である為、従来では、廃棄されていた当該シリコンスラッジ或はシリコンスラリーの再生利用方法を実際に工業化した事実がないのが実情である。
【0016】
本願発明者等は、上記した多くの問題点を勘案して、従来、廃棄されていたシリコンスラッジ或はシリコンスラリー等から、高品質のシリコンインゴットを、簡易な処理工程で、効率よく、短時間で、安価に製造する方法に関して、鋭意検討を行って来た。
【0017】
その結果、従来、その除去に多くの問題を抱えている炭化珪素(SiC)の発生を防止する方策の1つとして、従来使用されてきている、当該炭化珪素(SiC)を砥粒として使用する替わりに、当該金属性のワイヤー上にダイヤモンド砥粒をニッケルを使用して接着固化させたダイヤモンドワイヤーソーを使用する方法を採用する事を前提として、技術開発を継続してきた。
【0018】
処で、当該ダイヤモンドワイヤーソーを使用する方法やダイヤモンド砥粒を含んだクーラントを当該ワイヤーソーに吹きかけて研削を行う方法は、例えば上記(特許文献1)の他に特許第3078020号公報(特許文献6)や特開2008−126341号公報(特許文献7)或は下記に示す非特許文献1に開示されているが、当該ダイヤモンドや炭素系ビーム材及び有機系接着剤及び有機系クーラントから出る炭素の量が極めて大きいので、炭素除去処理が問題となり、更にスライス時及びスライス後のシリコンスラッジの処理中にシリコンの酸化物SiOが形成され、酸素除去処理が必要となるため、上記したと同様に処理工程が複雑化と煩雑化になり、処理効率の低下や、処理時間、処理コストの増大を来たすという問題を含んでいた。
【0019】
その為、本願発明者等は、当該シリコンスラリー或いはシリコンスラッジ等に含まれる当該クーラントを構成していた有機溶剤から発生する炭素に加えて、当該ダイヤモンド及び有機系クーラントから発生する大量の炭素を如何に短時間で効率的に除去処理するかについて検討すると同時に、SiOの酸化物の発生も効率的に抑制でき、当該酸化物の酸素を効果的に除去できる処理方法について検討を行って来た。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献2】特開平5−270814号公報
【特許文献3】特開平9−165212号公報
【特許文献4】特開2004−223321号公報
【特許文献5】特開2008−115040号公報
【特許文献6】特許第3078020号公報
【特許文献7】特開2008−126341号公報
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】“Characterization of Multicrystalline Silicon Wafers for Solar Cell Applications sliced with a Fixed Abrasive Wire,”Y.Kondo et.al.,Presented at 23rd European Photovoltaic Solar Energy Conference 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、上記した従来の問題点を改善し、簡易な処理工程の下で、効率的に且つ経済的で然も安全性の高い状態で廃棄シリコンの再生利用を図る事が可能なシリコン再生利用システム及びその方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、上記目的を達成するために、基本的に以下に示す様な技術構成を採用するものである。即ち、本発明に係る第1の態様としては、太陽電池用若しくは半導体デバイス用シリコンウエーハを製造するに際し、シリコンインゴットを切断、研削加工時に発生するシリコン廃材からシリコンを抽出して当該太陽電池用若しくは半導体デバイス用シリコンウエーハの製造に再利用するシリコン再生利用システムであって、当該シリコン再生利用システムは、
【0024】
(1)シリコンインゴットをシリコン系物質で構成されたビーム材を介して固定するシリコンインゴット固定装置と、
当該固定手段に固定されたシリコンインゴットをダイヤモンドワイヤソーからなる切断、研削部材により切断、研削する切断、研削加工装置と、
水或は水を含む有機系物質から構成されているクーラントを当該切断、研削加工手段の切断、研削加工部に供給するクーラント供給装置と、
から構成されているシリコンインゴット加工手段と、
(2)当該シリコンインゴット加工手段により得られた脱離ダイヤモンド粒子を含むシリコンスラリー或はシリコンスラッジから、シリコン固形分を分離する固液分離手段と、
(3)当該固液分離手段から得られた残留有機物質及びダイヤモンド粒子を含むシリコン固形分を加熱焼成処理する加熱焼成処理手段と、
(4)当該加熱処理手段から得られた当該シリコン焼成物を、当該シリコンの融点以上の温度で溶融する加熱溶融手段と、
(5)当該溶融されたシリコンを一方向凝固させて、シリコンインゴットを形成する為の一方向凝固手段と、
を含む、シリコン再生利用システムであって、
【0025】
当該システムに於ける当該加熱焼成処理手段には、残留有機物質及びダイヤモンド粒子を含むシリコン固形分を焼成する領域に不活性ガス、又は水素ガス或は酸素ガスを供給する為のガス供給制御手段若しくは当該焼成領域を真空状態とする真空発生手段と、当該シリコン固形分を焼成する領域の温度を、室温から300℃の第1の温度領域範囲、300℃から850℃の第2の温度領域範囲、及び850℃から1200℃の第3の温度領域範囲で順次制御する為の第1の温度制御手段とが設けられており、
【0026】
且つ当該加熱溶融手段には、当該加熱焼成後のシリコン固形分を溶融する為に、不活性ガス又は酸素ガス、或いは水素ガスを供給するためのガス供給手段と最高温度が1500℃以上を示す予め定められた特定の温度プロファイルに従って、当該加加熱溶融手段内の加熱溶融領域内の温度を制御する為の第2の温度制御手段が設けられている事を特徴とするシリコン再生利用システムである。
【0027】
本願発明に於いては、特に、当該第1の温度制御手段は、少なくとも不活性ガスの存在下で、当該第1の温度領域範囲での焼成処理を実行し、少なくとも不活性ガス及び酸素の存在下で、当該第2の温度領域範囲での焼成処理を実行し、少なくとも不活性ガス及び水素の存在下で、当該第3の温度領域範囲での焼成処理を実行する様に制御されるものである事が望ましい。
又、本発明に係る第2の態様としては、太陽電池用若しくは半導体デバイス用シリコンウエーハを製造するに際し、シリコンインゴットを切断、研削加工時に発生するシリコン廃材からシリコンを抽出して当該太陽電池用若しくは半導体デバイス用シリコンウエーハの製造に再利用するシリコン再生利用方法であって、当該シリコン再生利用方法は、
【0028】
(1)シリコンインゴットをシリコン系物質で構成されたビーム材を介して固定するシリコンインゴット固定装置と、
当該固定手段に固定されたシリコンインゴットをダイヤモンドワイヤソーからなる切断、研削部材により切断、研削する切断、研削加工装置と、
水或は水を含む有機系物質から構成されているクーラントを当該切断、研削加工手段の切断、研削加工部に供給するクーラント供給装置と、
から構成されているシリコンインゴット加工手段と、
(2)当該シリコンインゴット加工手段により得られた脱離ダイヤモンド粒子を含むシリコンスラリー或はシリコンスラッジから、シリコン固形分を分離する固液分離手段と、
(3)当該固液分離手段から得られた残留有機物質及びダイヤモンド粒子を含むシリコン固形分を加熱焼成処理する加熱焼成処理手段と、
(4)当該加熱処理手段から得られた当該シリコン焼成物を、当該シリコンの融点以上の温度で溶融する加熱溶融手段と、
(5)当該溶融されたシリコンを一方向凝固させて、シリコンインゴットを形成する為の一方向凝固手段と、
を含む、シリコン再生利用システムに於いて、
【0029】
当該加熱焼成処理手段に於いて、残留有機物質及びダイヤモンド粒子を含むシリコン固形分を、不活性ガス又は水素ガス或は酸素ガスの存在下、若しくは真空状態下で、室温から300℃の第1の温度領域範囲、300℃から850℃の第2の温度領域範囲、及び850℃から1200℃の第3の温度領域範囲で順次制御された温度条件で焼成すると共に、当該加熱溶融手段に於いては、最高温度が1500℃以上を示す予め定められた特定の温度プロファイルに従って、当該焼成後の当該シリコン固形分を加熱溶融した後、一方向凝固処理する事を特徴とするシリコン再生利用方法である。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、上記した様な技術構成を採用した結果、従来の廃棄シリコンの再生利用方法に比較して、簡易な処理工程の下で、効率的に且つ経済的で然も安全性の高い状態で廃棄シリコンの再生利用を図る事が可能なシリコン再生利用システム及びシリコン再生利用方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1(A)は、本発明に係るシリコン再生利用システムの構成を説明するブロック図であり、図1(B)は、本発明に係る加熱焼成装置の一具体例の構成を説明する図である。
【図2】図2は、ワイヤーソーを用い、シリコンブロックをスライス加工する状態を説明する図である。
【図3】図3は、シリコンスラッジを固液分離した後のシリコン固形分を焼成する際の焼成温度とシリコン固形分の重量変化の関係を示すグラフである。
【図4】図4は、本発明に於ける各手段或は各装置の配置形状の例を示す図である。
【図5】図5は、本発明に於けるシリコン焼成体を加熱溶融処理する際に使用される加熱温度プロファイルの一例を示すものである。
【図6】図6は、シリコンスラッジを焼成する際に有機物が除去される程度を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係るシリコン再生利用システムの具体例を、図面を参照しながら以下にて説明する。
即ち、図1は、本発明に係るシリコン再生利用システムの一具体例の構成を示すブロック図であり、図中、太陽電池用若しくは半導体デバイス用シリコンウエーハを製造するに際し、シリコンインゴットを切断、研削加工時に発生するシリコン廃材からシリコンを抽出して当該太陽電池用及び/又は半導体デバイス用シリコンウエーハの製造に再利用するシリコン再生利用システム10であって、当該シリコン再生利用システム10は、シリコンインゴット11をシリコン系物質で構成されたビーム材12を介して固定保持する機能を有するシリコンインゴット固定装置14と、当該シリコンインゴット固定手段14に固定されたシリコンインゴット11をダイヤモンドワイヤソー4からなる切断、研削部材により切断、研削する切断、研削加工装置15と、水或は水を含む有機系物質から構成されているクーラントを当該切断、研削加工手段の切断、研削加工部に供給するクーラント供給装置16と、から構成されているシリコンインゴット加工手段17と、当該シリコンインゴット加工手段17により得られたダイヤモンド粒子を含むシリコンスラリー或はシリコンスラッジから、シリコン固形分を分離する固液分離手段18と、当該固液分離手段18から得られた残留有機物質及び残留ダイヤモンド粒子を含むシリコン固形分を加熱焼成処理する加熱焼成処理手段19と、当該加熱処理手段19から得られた当該シリコン焼成物を、当該シリコンの融点以上の温度で溶融する加熱溶融手段20と、当該溶融されたシリコンを一方向凝固させて、シリコンインゴットを形成する為の一方向凝固手段21と、を含む、シリコン再生利用システム10であって、当該システム10に於ける当該加熱焼成処理手段19には、残留有機物質及び残留ダイヤモンド粒子を含むシリコン固形分を焼成する領域に不活性ガス、又は、水素ガス或は酸素ガスを供給する為のガス供給制御手段22若しくは当該焼成領域を真空状態とする真空発生手段23と、当該シリコン固形分を焼成する領域の温度を、室温から300℃の第1の温度領域範囲、300℃から850℃の第2の温度領域範囲、及び850℃から1200℃の第3の温度領域範囲で順次制御する為の第1の温度制御手段24とが設けられており、且つ当該加熱溶融手段20には、当該加熱焼成後のシリコン固形分を溶融する為に、最高温度が1500℃以上を示す予め定められた特定の温度プロファイルに従って、当該加加熱溶融手段20内の加熱溶融領域内の温度を制御する為の第2の温度制御手段25が設けられているシリコン再生利用システム10が示されている。
【0033】
上記本発明に於ける具体例に於いては、更に、当該固液分離手段18と当該加熱焼成処理手段19との間に、当該クーラントの有機物成分を除去する為、或は所定の金属を除去する為の第1の洗浄手段28が配置されているものであっても良い。
【0034】
更に、上記本発明に於ける具体例に於いては、当該加熱焼成処理手段19と当該加熱溶融手段20との間に、当該シリコン固形分に含まれる金属成分を除去する為の酸処理を行う第2の洗浄装置29及び/又は、当該加熱焼成後のシリコン固形分を溶融処理するに先立って、適宜の大きさの複数の固形物に変形させるための成型手段50が配置されているものであっても良い。
【0035】
本発明の再生シリコン利用方法及び再生シリコン利用システムに於ける基本的技術思想は、上記した様に、SiCを実質的に発生させないようにする為に、従来のSiC系砥粒を使用したワイヤーソーに替えて、ダイヤモンドソーを使用するにあたり、大量の炭素が発生する事に対応して、如何に効率よくダイヤモンド等の炭素を低温で燃焼させると同時に、酸化物、例えばSiO等の発生を極力抑制する事を勘案して酸素の発生機会を極力回避する事にある。
【0036】
本発明に於いては、当該シリコンインゴット11をシリコン系物質で構成されたビーム材12に固定する際には、公知の有機系接着剤を使用する事ができるが、できる限り不純物が混入し難い接着剤を使用することが好ましい。
【0037】
又、本発明に於いて使用されるクーラントとしては、水を使用することも可能であるが、水溶性有機系のクーラントを使用する事が望ましく、例えば、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が使用される事が望ましい。
【0038】
一方、本発明に於ける当該固液分離手段18は、特にその構成が限定されるものではなく、従来公知の固液分離方法を採用する事が出来る。
次に、本発明に於いて、当該固液分離手段18と当該加熱焼成処理手段19との間に、必要に応じて設けられる当該第1の洗浄手段28も有機物成分を除去する為、或は所定の金属を除去する為に従来から使用されている公知の洗浄手段が使用可能である。
【0039】
更に、本発明に於ける当該加熱焼成処理手段19は、当該固液分離手段18から得られた当該ダイヤモンド粒子を含むシリコン固形分を加熱焼成処理する事によって、当該シリコン固形分に残留している有機物質を蒸発除去すると共に、残留有機物及びダイヤモンドから発生する大量の炭素を燃焼により除去するものである。
【0040】
そして、当該加熱焼成処理手段19には、図1(B)に示す様に、当該有機物質及びダイヤモンド粒子を含むシリコン固形分を焼成する焼成領域、例えば焼成炉30に、不活性ガス或は酸素ガス又は、水素ガスを供給する為のガス供給源31に接続されたガス供給管32と当該不活性ガス供給管32に設けられている適宜のスイッチ手段33及び当該スイッチ手段33を制御する制御手段34で構成されるガス供給制御手段22、及び/又は、当該焼成領域30を真空状態とする真空発生手段36(23)と、当該真空発生手段36に接続された減圧管37と当該減圧管37に設けられている適宜のスイッチ手段38及び当該スイッチ手段38を制御する制御手段34で構成されるものである。
【0041】
更に、当該加熱焼成処理手段19には、当該焼成領域30内の温度を加熱するための加熱手段40と当該加熱手段40に加熱エネルギーを供給するエネルギー供給源、例えば電源41及び当該焼成領域30内の温度を調整するための加熱温度調整手段42とが設けられており、当該加熱温度調整手段42は、前記した制御手段34の制御に応答して、当該焼成領域30内の温度を調整する。
【0042】
本発明に於ける当該制御手段34は、当該スイッチ手段33、38及び当該加熱温度調整手段42を所定のプログラムの指令に基づいて、制御・操作を実行する事が可能である。
本発明に於ける当該加熱焼成処理手段19の当該焼成領域の焼成温度に関し、本願発明者等は、種々の実験に基づいて検討した結果、残留有機物及びダイヤモンドの炭素系物質を燃焼させる際に発生する、COの発生量を当該燃焼温度との関係で検討した結果、特に、図6に示す様に、例えば、アルゴンガスの様な、不活性ガスの存在下で、有機物を燃焼させた場合、100℃から200℃の間では、炭素の燃焼が促進されていることが判明し、又、例えば、アルゴンガスの様な、不活性ガスと酸素ガスの存在下で、300℃から850℃の間で燃焼させた場合に、COの発生が認められ、従って、上記温度条件領域で、残留炭素系物質が十分燃焼(酸化反応)しているものと判断される。
【0043】
即ち、本願発明者等は、固液分離されたシリコン固形分を燃焼処理するに際し、上記温度条件と雰囲気条件の下で、当該燃焼温度とSiOの発生量との関係を調べた処、図3に示す様に、当該燃焼温度が850℃を超えると当該SiOの発生量が急激に増加する事が判明した。
その結果、本発明に於いては、当該加熱焼成処理手段19の当該焼成領域30内の温度が300℃から850℃の範囲で酸素ガスと不活性ガスを供給して残留炭素系物質の焼成処理を行う事が望ましいとの知見を得たものである。
【0044】
一方、上記焼成処理工程によって焼成されたシリコン固形分に不活性ガスの存在下に水素ガスを供給しながら、850℃から1200℃まで、温度を上昇させながら、酸化物の発生状況を分析したところ、水素ガスにより酸素が吸収されて、酸化物の発生が低減することが判明した。
具体的には、当該加熱焼成処理手段19の当該焼成領域内の温度は、常温から1200℃まで、雰囲気条件を変更しながら徐々に所定のプロファイルに沿って、上昇させるものであるが、当該温度常温から300℃の間では、主に残留有機物が除去され、それ以上の温度で、ダイヤモンドを含む残留炭素系物質が燃焼している状態となっている。
【0045】
上記から明らかな様に、本願発明に於ける当該加熱焼成処理行程では、少なくとも不活性ガスの存在下で、当該第1の温度領域範囲での焼成処理が実行され、少なくとも不活性ガス及び酸素の存在下で、当該第2の温度領域範囲での焼成処理が実行され、少なくとも不活性ガス及び水素の存在下で、当該第3の温度領域範囲での焼成処理が実行される事が望ましい。
【0046】
又、本発明に於いては、当該加熱焼成処理手段19と当該加熱溶融手段20との間に、当該シリコン固形分に含まれる金属成分を除去する為の酸処理を行う第2の洗浄装置29及び/又は、当該加熱焼成後のシリコン固形分を溶融処理するに先立って、適宜の大きさの複数の固形物に変形させるための成型手段50が配置されているものであって、係る手段は、何れも従来公知の装置、方法を使用する事が可能である。
【0047】
更に、当該加熱焼成処理手段19は、1000℃から1100℃の間で、アルゴンと水素の混合ガスによってシリコン固形分を処理することによって、シリコン固形分に含まれるシリコン酸化物SiOから酸素を除去することが可能である。
尚、本発明に於ける当該成型手段50は、当該焼成済みのシリコン固形分を当該加熱溶融手段20に設けられている、例えば石英のるつぼ内に装填する際に、出来るだけ多くのシリコン固形分を充填させるためには、適宜の大きさの固形物にする事が望ましい。
【0048】
本発明に於ける当該成型処理に於いては、加圧状態で処理する事が望ましい。
次いで、本発明に於いては、当該るつぼに充填された複数個のシリコン固形物を当該加熱溶融手段20で加熱溶融させる。この処理においてシリコンの酸化物SiOを蒸発させて、酸素を除去することができる。一方向凝固手段21に於いて、当該溶融されたシリコンを一方向凝固させて、シリコンインゴットを形成するものである。
【0049】
本発明に於ける、当該加熱溶融手段20及び当該一方向凝固手段21は、何れも従来公知の方法及び装置が使用出来るものであるが、当該加熱溶融手段20に於いては、当該加熱焼成後のシリコン固形分を溶融する為に、最高温度が1600℃以上を示す予め定められた特定の温度プロファイルに従って、当該加熱溶融手段20内の加熱溶融領域内の温度を制御する為の第2の温度制御手段25が設けられている事が望ましい。当該一方向凝固手段21に於いて、図5に示すような温度プロファイルによって金属不純物の偏析による除去が可能である。
【0050】
更に、当該加熱溶融手段20に於いて、アルゴン及び水素のガスを供給するためのガス供給制御手段が設けられている事が望ましい。これにより、加熱昇温時に水素還元反応により、シリコン酸化物SiOの酸素を除去することができる。
尚、本発明に於いては、当該加熱溶融手段20と当該一方向凝固手段21とは、同一の装置を利用する事が可能である。
【0051】
即ち、本発明に於ける当該加熱溶融手段20に於いて、当該シリコン固形分を溶融するに際して、本発明者等は、鋭意検討した結果、当該溶融加熱操作の初期の段階で、加熱温度を徐々に制御しながら上昇させ、そのピーク温度を少なくとも1600℃近傍に到達させ、その後、徐々に加熱温度を低下させるような温度プロファイルに従って溶融凝固処理する事が望ましいとの知見を得た。
【0052】
当該ピーク温度値としては、1500℃から1850℃の間の温度が使用可能である。
一方、本発明に於いては、出来るだけ酸素の発生を少なくする状態で廃棄シリコンを処理する事が望まれているので、上記した本願発明に於けるそれぞれの手段、それぞれの段階に於けるそれぞれの処理操作は、不活性ガスの雰囲気下、或は真空状態下で実行される事が望ましい。
当該不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等が望ましい。
【0053】
更に、本発明に於いては、上記処理操作を確実にする為に、図4に示す様に、上記した本発明の各手段、装置の少なくとも一つは、完全密閉された空間内に配置されている事が望ましく、当該完全密閉された空間は、例えば、非通気性を持つ適宜の材料で構成された床面と密接接合された閉鎖状側壁部と当該閉鎖状側壁部の天井部を密閉して覆う上部覆い部とからなる閉鎖体51で構成されるものである。
従って、当該それぞれの閉鎖体51には、不活性ガス供給手段或は真空状態発生手段等が併設されるものである。
【0054】
更に、本発明に於いては、上記した本発明に於ける全ての手段、装置等が一つの閉鎖体52内に配備されているものであっても良い。
本発明に係る別の態様としては、太陽電池用若しくは半導体デバイス用シリコンウエーハを製造するに際し、シリコンインゴットを切断、研削加工時に発生するシリコン廃材からシリコンを抽出して当該太陽電池用若しくは半導体デバイス用シリコンウエーハの製造に再利用するシリコン再生利用方法であって、当該シリコン再生利用方法は、シリコンインゴットをシリコン系物質で構成されたビーム材を介して固定するシリコンインゴット固定装置と、当該固定手段に固定されたシリコンインゴットをダイヤモンドワイヤソーからなる切断、研削部材により切断、研削する切断、研削加工装置と、水或は水を含む有機系物質から構成されているクーラントを当該切断、研削加工手段の切断、研削加工部に供給するクーラント供給装置と、から構成されているシリコンインゴット加工手段と、当該シリコンインゴット加工手段により得られた脱離ダイヤモンド粒子を含むシリコンスラリー或はシリコンスラッジから、シリコン固形分を分離する固液分離手段と、当該固液分離手段から得られた残留有機物質及びダイヤモンド粒子を含むシリコン固形分を加熱焼成処理する加熱焼成処理手段と、当該加熱処理手段から得られた当該シリコン焼成物を、当該シリコンの融点以上の温度で溶融する加熱溶融手段と、当該溶融されたシリコンを一方向凝固させて、シリコンインゴットを形成する為の一方向凝固手段と、を含むシリコン再生利用方法に於いて、当該加熱焼成処理手段に於いて、残留有機物質及びダイヤモンド粒子を含むシリコン固形分を、不活性ガス、水素ガス或は酸素ガスの存在下、若しくは真空状態下で、室温から300℃の範囲、300℃から850℃の範囲、及び850℃から1200℃の範囲で制御された温度条件で焼成すると共に、当該加熱溶融手段に於いては、最高温度が1500℃以上を示す予め定められた特定の温度プロファイルに従って、当該焼成後の当該シリコン固形分を加熱溶融した後、一方向凝固処理する事を特徴とするシリコン再生利用方法である。
以下に、本発明に於ける、加熱温度条件の好ましい具体的な条件を検討するために、以下に示す様な実験を行った。
【0055】
(実験例1)
太陽電池用多結晶シリコンインゴットを、シリコン系の接着剤を使用して、適宜の固定手段に固定させた後、当該シリコンインゴットをジエチレングリコール(DEG)を主成分とするクーラントを用いて、図2に示す様な、インゴット加工手段を使用して、ダイヤモンドワイヤーソー4(ジャパンファインスチール社製 EDSW EW−160)によりスライスすることにより得られた、ダイヤモンド粒子を含むシリコンスラッジを、遠心分離機による固液分離を行い、シリコン固形分を回収した。
【0056】
前記固形分から10kgの試料を取り出し、水系洗浄法により2回洗浄し、加熱乾燥機により50℃で24時間の乾燥処理を行い、乾燥粉末を作製した。
係る工程では、洗浄剤として有機系溶剤を使用することも可能であり、又取り出す試料も場合によっては、1kg程度であっても良く、更には、当該加熱乾燥機の温度を80℃に設定するものであっても良い。
【0057】
次に、前記乾燥粉末から50gを取り出して、角型石英製容器に充填し、この容器を石英管式加熱電気炉(いすゞ製作所製 KRB−23HH)に挿入し、アルゴンガスを流入させながら、加熱焼成処理を行った。加熱焼成処理は、室温から300℃まで15℃/分の昇温速度で昇温加熱し、300℃で30分間保持し、液体残留物(水、有機物)を除去した。
次に、15℃/分の昇温速度で1540℃まで昇温し、30分間の加熱溶融を行った。この加熱溶融の際に、加熱温度が1200℃以上になると、残留物からの反応生成物が析出し、石英管内面に付着することを確認した。
【0058】
その後、5℃/分の降温速度で冷却を行った。
以上の実験により、石英容器内にシリコン固体が形成され、シリコンの回収が可能であることを確認できた。
前記実施例において乾燥処理によって得られる乾燥粉末の一部には、10%程度の液体残留物が含まれることを熱重量分析法により確認した。
これは、洗浄工程で水を洗浄剤として使用した場合に見られる現象であった。
【0059】
(実験例2)
前記実験例1において、固液分離によって得られたシリコン固形分を用いて、ダイヤモンドを含む炭素系残留物を除去するための低温燃焼の実験を行った。この実験では、石英管式加熱電気炉を用いた。
上記により得られた、シリコン固形分20gを、石英製容器に充填し、この容器を石英管式加熱電気炉(いすゞ製作所製 EKRO−13K)に挿入し、空気雰囲気で加熱処理を行った。
【0060】
先ず、室温から10℃/分の昇温速度で800℃まで昇温加熱し、シリコン固形分の変化を観察した。
その結果、170℃〜300℃程度の温度範囲で、煙状の有機系析出物が観察され、550℃〜800℃程度の温度範囲では、赤色の燃焼現象が観察され、又COの発生が認められた。
【0061】
当該170℃〜300℃程度の温度範囲での析出物は、残留溶媒(主としてクーラント成分)と考えられ、550℃〜800℃程度の温度範囲での燃焼現象或は、COの発生は、炭素(ダイヤモンド砥粒片及び残留炭素)の燃焼よるものと考えられる。
【0062】
この結果は、550℃以上の温度で燃焼処理を行うと、ダイヤモンド砥粒片を含む炭素系残留物から発生する炭素が極めて効率的に燃焼(酸化反応)する事を示しており、この温度条件と前記したシリコンの酸化物が生じ易い温度である900℃以上の温度を避け、900℃以下の温度で燃焼処理することによって、シリコンの酸化物の発生を効率よく抑制しながら、炭素を効率的に燃焼させてことにより、その後の工程に於いて、炭素や酸素を除去する為の別途処理を行う必要がなくなり、短時間での、簡易な工程で効率よく、低コストで、ダイヤモンド砥粒片などからの炭素不純物を除去する事は可能であることを示している。
【0063】
(実験例3)
上記実験例1において個液分離によって得られたシリコン固形分を用いて、有機系残留物及びシリコン酸化物を低減除去し、シリコン個体を形成するための実験を行った。
有機系残留物の除去には、回転式管状炉(フルテック社、FT−1100−100)を用いて、800℃で、アルゴンガス雰囲気下で、1時間行った。この処理により、有機系クーラントの除去が確認された。得られたシリコン固形分を、高温電気炉(フルテック社、FVT−1600P)を使用して、アルゴンと水素の混合ガスを流しながら、1600℃まで10℃/分で昇温し、1600℃に1時間保持した後、自然冷却させた。この実験により、シリコン個体が形成できることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、シリコンインゴットを切削する工程で発生したシリコン屑から、不純物が少なく、高純度のシリコンを抽出し、それを太陽電池用若しくは半導体デバイス用のウエーハの製造原料として再利用することにより、シリコン原料の不足を補い、シリコン原料費の高騰を抑制する事に活用出来る。
【符号の説明】
【0065】
1:Siブロック
2:ビーム材
3:接着剤
4:ダイヤモンドワイヤー
5:ガイドローラ
10:シリコン再生利用システム
11:シリコンインゴット
12:ビーム材
14:シリコンインゴット固定装置
15:切断、研削加工装置
16:クーラント供給装置
17:シリコンインゴット加工手段
18:固液分離手段
19:加熱焼成処理手段
20:加熱溶融手段
21:一方向凝固手段
22:不活性ガス供給制御手段
23:真空発生手段
24:第1の温度制御手段
25:第2の温度制御手段
28:第1の洗浄手段
29:第2の洗浄装置
30:焼成領域
31:ガス供給源
32:ガス供給管
33:スイッチ手段
34:制御手段
36:真空発生手段
37:減圧管
38:スイッチ手段
40:加熱手段
41:エネルギー供給源
42:加熱温度調整手段
50:成型手段
51:閉鎖体
52:閉鎖体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池用若しくは半導体デバイス用シリコンウエーハを製造するに際し、シリコンインゴットを切断、研削加工時に発生するシリコン廃材からシリコンを抽出して当該太陽電池用若しくは半導体デバイス用シリコンウエーハの製造に再利用するシリコン再生利用システムであって、当該シリコン再生利用システムは、
(1)シリコンインゴットをシリコン系物質で構成されたビーム材を介して固定するシリコンインゴット固定装置と、
当該固定手段に固定されたシリコンインゴットをダイヤモンドワイヤソーからなる切断、研削部材により切断、研削する切断、研削加工装置と、
水或は水を含む有機系物質から構成されているクーラントを当該切断、研削加工手段の切断、研削加工部に供給するクーラント供給装置と、
から構成されているシリコンインゴット加工手段と、
(2)当該シリコンインゴット加工手段により得られたダイヤモンド粒子を含むシリコンスラリー或はシリコンスラッジから、シリコン固形分を分離する固液分離手段と、
(3)当該固液分離手段から得られた残留有機物質及びダイヤモンド粒子を含むシリコン固形分を加熱焼成処理する加熱焼成処理手段と、
(4)当該加熱処理手段から得られた当該シリコン焼成物を、当該シリコンの融点以上の温度で溶融する加熱溶融手段と、
(5)当該溶融されたシリコンを一方向凝固させて、シリコンインゴットを形成する為の一方向凝固手段と、
を含む、シリコン再生利用システムであって、
当該システムに於ける当該加熱焼成処理手段には、残留有機物質及びダイアヤモンド粒子を含むシリコン固形分を焼成する領域に不活性ガス又は、水素ガス、或は酸素ガスを供給する為のガス供給制御手段若しくは当該焼成領域を真空状態とする真空発生手段と、当該シリコン固形分を焼成する領域の温度を室温から300℃の第1の温度領域範囲、300℃から850℃の第2の温度領域範囲、及び850℃から1200℃の第3の温度領域範囲で順次制御する為の第1の温度制御手段とが設けられており、
且つ当該加熱溶融手段には、当該加熱焼成後のシリコン固形分を溶融する為に、最高温度が1500℃以上を示す予め定められた特定の温度プロファイルに従って、当該加加熱溶融手段内の加熱溶融領域内の温度を制御する為の第2の温度制御手段が設けられている事を特徴とするシリコン再生利用システム。
【請求項2】
当該第1の温度制御手段は、少なくとも不活性ガスの存在下で、当該第1の温度領域範囲での焼成処理を実行し、少なくとも不活性ガス及び酸素の存在下で、当該第2の温度領域範囲での焼成処理を実行し、少なくとも不活性ガス及び水素の存在下で、当該第3の温度領域範囲での焼成処理を実行するものである事を特徴とする請求項1に記載のシリコン再生利用システム。
【請求項3】
当該固液分離手段と当該加熱焼成処理手段との間に、当該クーラントの有機物成分若しくは当該シリコン固形分に含まれる金属を除去する為の洗浄装置が配置されている事を特徴とする請求項1に記載のシリコン再生利用システム。
【請求項4】
当該加熱焼成処理手段に於いて、設定される当該焼成温度は、当該ダイヤモンドが燃焼する温度領域であって、且つ当該シリコン固形分内のシリコンが酸化されない範囲の温度領域が重複する温度領域から選択されるものである事を特徴とする請求項1に記載のシリコン再生利用システム。
【請求項5】
当該加熱焼成処理手段と当該加熱溶融手段との間に、当該加熱焼成後のシリコン固形分を溶融処理するに先立って、適宜の大きさの複数の固形物に変形させるための成型手段が設けられている事を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のシリコン再生利用システム。
【請求項6】
当該成型手段に於いては、当該加熱焼成後のシリコン固形分に圧力を印加するための加圧手段が更に設けられている事を特徴とする請求項5に記載のシリコン再生利用システム。
【請求項7】
当該シリコン再生利用システムに於ける当該各手段は、当該シリコン固形分内に酸化物が発生しないか、当該シリコン固形分から酸化物が発生しない様な条件下でそれぞれの処理が実行されるものである事を特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のシリコン再生利用システム。
【請求項8】
当該シリコン再生利用システムに於ける当該各手段の少なくとも一つの手段に於いては、不活性ガス雰囲気下で、或は真空状態下で、所定の処理が実行されるものである事を特徴とする請求項7に記載のシリコン再生利用システム。
【請求項9】
当該シリコン再生利用システムに於ける当該各手段の少なくとも一つの手段は、密閉空間内に配置されている事を特徴とする請求項8に記載のシリコン再生利用システム。
【請求項10】
太陽電池用若しくは半導体デバイス用シリコンウエーハを製造するに際し、シリコンインゴットを切断、研削加工時に発生するシリコン廃材からシリコンを抽出して当該太陽電池用若しくは半導体デバイス用シリコンウエーハの製造に再利用するシリコン再生利用方法であって、当該シリコン再生利用方法は、
(1)シリコンインゴットをシリコン系物質で構成されたビーム材を介して固定するシリコンインゴット固定装置と、
当該固定手段に固定されたシリコンインゴットをダイヤモンドワイヤソーからなる切断、研削部材により切断、研削する切断、研削加工装置と、
有機系物質から構成されているクーラントを当該切断、研削加工手段の切断、研削加工部に供給するクーラント供給装置と、
から構成されているシリコンインゴット加工手段と、
(2)当該シリコンインゴット加工手段により得られたダイヤモンド粒子を含むシリコンスラリー或はシリコンスラッジから、ダイヤモンド粒子を含むシリコン固形分を分離する固液分離手段と、
(3)当該固液分離手段から得られた当該ダイヤモンド粒子を含むシリコン固形分を加熱焼成処理する加熱焼成処理手段と、
(4)当該加熱処理手段から得られた当該シリコン焼成物を、当該シリコンの融点以上の温度で溶融する加熱溶融手段と、
(5)当該溶融されたシリコンを一方向凝固させて、シリコンインゴットを形成する為の一方向凝固手段と、
を含む、シリコン再生利用方法に於いて、
当該加熱焼成処理手段に於いて、当該ダイヤモンド粒子を含むシリコン固形分を、不活性ガス又は、水素ガス、或は酸素ガスの存在下、若しくは真空状態下で、室温から300℃の第1の温度領域範囲、300℃から850℃の第2の温度領域範囲、及び850℃から1200℃の第3の温度領域範囲の温度条件で焼成すると共に、当該加熱溶融手段に於いては、最高温度が1500℃以上を示す予め定められた特定の温度プロファイルに従って、当該焼成後の当該シリコン固形分を加熱溶融した後、一方向凝固処理する事を特徴とするシリコン再生利用方法。
【請求項11】
当該加熱焼成処理手段と当該加熱溶融手段との間に、当該加熱焼成後のシリコン固形分を溶融処理するに先立って、適宜の大きさの複数の固形物に変形させる処理を行う事を特徴とする請求項10に記載のシリコン再生利用方法。
【請求項12】
当該成型処理に於いては、当該加熱焼成後のシリコン固形分に圧力を印加する事を特徴とする請求項11に記載のシリコン再生利用方法。
【請求項13】
当該シリコン再生利用方法に於ける当該各手段は、当該シリコン固形分内に酸化物が発生しないか、当該シリコン固形分から酸化物が発生しない様な条件下でそれぞれの処理が実行される事を特徴とする請求項10乃至12の何れかに記載のシリコン再生利用方法。
【請求項14】
請求項13に記載されている少なくとも一つの手段は、密閉された空間領域内に配置する事を特徴とするシリコン再生利用方法。
【請求項15】
当該シリコン再生利用方法に於ける当該各処理の少なくとも一つの処理に於いては、不活性ガス或は酸素ガスの雰囲気下で、或は真空状態下で、所定の処理が実行されるものである事を特徴とする請求項13に記載のシリコン再生利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−121049(P2011−121049A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252730(P2010−252730)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(801000072)農工大ティー・エル・オー株式会社 (83)
【Fターム(参考)】