説明

シリコーン系感圧接着剤組成物および感圧接着テープもしくはシート

【課題】金属等に貼着し高温暴露後引き剥がした時に、被着体上にシリコーン成分が認められない感圧接着層を形成可能なシリコーン系感圧接着剤組成物、粘着テープもしくはシートを提供する。
【解決手段】(A)分子式:(R3SiO1/2)4-p(R1R2SiO1/2)p(R2SiO)m(RR1SiO)n(SiO4/2)
Rは一価炭化水素基、R1はアルケニル基、pは平均2〜4、mは1500〜10000、nは0以上、m>n、m+nは1500〜10000)で示され、分子鎖末端に少なくとも平均2個のアルケニル基を有する分岐状オルガノポリシロキサン:100部、(B)R3R22SiO1/2単位(R2はアルキル基であり、R3はアルキル基、アルケニル基、アリール基またはヒドロキシル基)とSiO4/2単位とからなり、モル比が0.6〜1.7であるオルガノポリシロキサンレジン:10〜400部、(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン:HSiとアルケニル基のモル比が1.0〜60となる量、(D)白金系触媒:触媒量からなるシリコーン系感圧接着剤組成物。この組成物の硬化物層を有する粘着テープもしくはシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加反応硬化型のシリコーン系感圧接着剤組成物、該組成物の硬化物層を有する感圧接着テープもしくはシートに関する。特には、金属部材、セラミック部材、電子回路基板などの被着体上に貼着して高温暴露後に、引き剥がしたときに被着体上に目視でシリコーン成分が認められない感圧接着層を形成することができるシリコーン系感圧接着剤組成物、および該組成物の硬化物層を有する感圧接着テープもしくはシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコーン系感圧接着剤組成物は、アクリル系やゴム系の感圧接着剤組成物と比較して、電気絶縁性、耐熱性、耐寒性、各種被着体に対する粘着性に優れるので、耐熱性粘着テープ、電気絶縁性粘着テープ、ヒートシールテープ、メッキマスキングテープ等に使用されている。これらのシリコーン系感圧接着剤組成物は、その硬化機構により、付加反応硬化型、縮合反応硬化型、パーオキサイド硬化型などに分類される。室温放置もしくは加熱によって速やかに硬化し、副生物を発生しないので、付加反応硬化型の感圧接着剤組成物が汎用されている。
【0003】
付加反応硬化型のシリコーン系感圧接着剤組成物として、例えば、特許文献1に、(A1)分子鎖両末端にアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン(粘度50万cP以上)、(B1)RSiO1/2単位(式中、Rはアルキル基、アルケニル基、または水酸基である。)とSiO4/2単位とからなるオルガノポリシロキサンレジン、(C1)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン{(A1)成分中のアルケニル基1個当たり(C1)成分中のケイ素原子結合水素原子数が1〜20となる量}、(D1)白金系触媒および(E1)有機溶剤からなるシリコーン系感圧接着剤(1)が開示されている。
【0004】
しかし、シリコーン系感圧接着剤組成物(1)の硬化物層を有する粘着テープを、特に耐熱性が要求される電気・電子材料の分野で使用した場合には、高熱による粘着テープ剥がれや、粘着テープを貼りかえる際に被着体への糊残りが見られることがあった。そこで、高温に保持しても高い粘着力を保持し、糊残り性が少ないとされるシリコーン系感圧接着剤組成物が特許文献2〜特許文献4で提案されている。
【0005】
特許文献2には、(A2)シラノール末端ジオルガノポリシロキサン生ゴムまたは両末端と側鎖にビニル基を有するジオルガノポリシロキサン生ゴム、(B2)MQレジン、(C2)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、(D2)白金系触媒、(E2)両末端と側鎖にビニル基を多数有するジオルガノポリシロキサンからなるシリコーン系感圧接着剤組成物(2)が提案されている。
【0006】
特許文献3には、(A3)(a)一分子中に平均1個以上のアルケニル基を有する生ゴム状のオルガノポリシロキサンと(b)RSiO1/2単位とSiO4/2単位から本質的に成るオルガノポリシロキサンレジンとの混合物、またはこれらの部分縮合反応物、(B3)一分子中に平均2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、(C3)フェノール系酸化防止剤および/またはフェノール変性オルガノシロキサン、(D3)芳香族アミン系酸化防止剤および/または芳香族アミノ変性オルガノシロキサン、および(E3)白金系触媒から少なくともなるシリコーン系感圧接着剤(3)が提案されている。
【0007】
特許文献4には、シリコーンゴム及びシリコーンレジンを主成分とする配合物の架橋構造物を含有してなるシリコーン系感圧接着剤組成物であって、当該シリコーン系感圧接着剤組成物に200℃で24時間の加熱保持を行った場合に、当該シリコーン系感圧接着剤組成物のゲル分率が5〜55重量%の範囲で上昇することを特徴とするシリコーン系感圧接着剤組成物(4)が提案されている。
【0008】
上記のシリコーン系感圧接着剤組成物(2)〜(4)では、高温下で高い感圧接着力ないし粘着力と少ない糊残り性を両立させることが可能となっている。しかし、近年、電気・電子分野の一部においては、必ずしも高い粘着力は要求されないけれども、粘着テープを被着体に貼着して高熱処理し、該粘着テープを引き剥がした後に、該被着体を溶剤洗浄する工程が省略されることがある。こうした場合は、糊残りだけではなく、被着体上の微量のシリコーン残留物をも減らすことが要求される。すなわち、感圧接着テープないし粘着テープを、電気回路基板のハンダリフロー工程において熱処理用マスキングテープとして使用する場合には、シリコーン成分の残存が目視で確認できない程度に少なく、該被着体を溶剤洗浄する工程を省略することが可能な非移行タイプの感圧接着剤が求められる。
【0009】
上記特許文献2〜特許文献4記載のシリコーン系感圧接着剤組成物をテープ上で硬化させて得られたシリコーン系感圧接着層を有する感圧接着テープないし粘着テープを、被着体に粘着した状態で長時間高温暴露後に、該感圧接着テープないし粘着テープを引き剥がした場合に、糊残りの発生は抑制されている。しかし、各種被着体表面が着色するという問題や、各種被着体上にシリコーン成分の残存が視認されるという問題がある。
【0010】
特許文献5には、(A5)アルケニル基含有ジオルガノポリシロキサン、(B5)オルガノポリシロキサン樹脂、(C5)側鎖の一部のみにヒドロシリル基を有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、又は前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンと側鎖のみにヒドロシリル基を有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンの混合物、(D5)白金系化合物および(E6)有機溶剤(ただし、不含有でもよい)からなる、省溶剤型ないし無溶剤型シリコーン感圧接着剤組成物(5)が提案されている。
【0011】
特許文献6には、(A6)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基含有有機基を有し、かつ分岐を有するポリジオルガノシロキサン、(B6)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリオルガノヒドロシロキサン、(C6)RSiO0.5単位(Rは炭素数1から10の1価炭化水素基)及びSiO単位を含有し、両単位のモル比が0.6〜1.7であるポリオルガノシロキサンおよび(D6)白金系触媒を含有する無溶剤型シリコーン粘着剤組成物が提案されている。その請求項3には、(A6)成分として、平均組成式:
(RSiO1/2−(RSiO)−(RSiO3/2−(SiO
(但し、Rは同一または異なっていてもよい炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、Rのうち少なくとも2個はアルケニル基を含む。aは2以上の整数、bは3以上の整数、c及びdは0以上の整数で、1≦c+d、a+b+c+d≦400である。)で示され、25℃における粘度が5〜1000mPa・sであるポリジオルガノシロキサンが記載され、段落[0019]には(XRSiO1/2−(RSiO)−(RSiO3/2−(SiO
(XRSiO1/2−(RSiO)−(RSiO3/2
(Xはアルケニル基含有有機基、R,a,b,c,dは前記どおり)が記載されている。
【0012】
特許文献5のシリコーン感圧接着剤組成物(5)は粘着性が優れ、特許文献6の無溶剤型シリコーン粘着剤組成物(6)は再剥離性が良好であり、粘着力が調整されていることを特徴にしている。しかし、ともに、上記シリコーン系感圧接着剤組成物の硬化物であるシリコーン系感圧接着層を有する感圧接着テープないし粘着テープを、被着体に貼着した状態で長時間高温暴露後に、該感圧接着テープないし粘着テープを引き剥がした場合に、暴露温度が230℃以上、特には245℃以上の高温であると、各種被着体上に糊残りの発生やシリコーン成分の残存が視認されるという問題がある。
【0013】
【特許文献1】特開昭63−22886号公報
【特許文献2】特開平4−335083号公報
【特許文献3】特開2006−16555号公報
【特許文献4】特開2002−275450号公報
【特許文献5】特開2002−285129号公報
【特許文献6】特開2006−160923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものである。本発明の目的は、感圧接着テープもしくはシートの感圧接着剤層、粘着テープもしくはシートの粘着剤層(以下、「感圧接着テープもしくはシート」と「粘着テープもしくはシート」を併せて「感圧接着テープもしくはシート」という。「感圧接着剤層」と「粘着剤層」を併せて「感圧接着剤層」という)として使用した場合に、被着体への感圧接着力ないし粘着力(以下併せて「感圧接着力」という)が優れ、金属部材、セラミック部材、電子回路基板などの被着体上に貼って230℃以上、特には245℃以上の高温暴露後に引き剥がした場合にも、被着体上に糊残りがなく、目視でシリコーン成分が認められないシリコーン系感圧接着剤組成物を提供することにある。また、前記シリコーン系感圧接着剤組成物の硬化物である感圧接着剤層を有する感圧接着テープもしくはシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的は、
「[1] (A)分子式:
(R3SiO1/2)4-p(R1R2SiO1/2) p (R2SiO)m(RR1SiO)n (SiO4/2) (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基または一価ハロゲン化炭化水素基であり、R1は炭素原子数2〜10のアルケニル基であり、pは平均2〜4の範囲の数であり、mは平均1500〜10000の範囲の数であり、nは平均0以上の数であり、m>nであり、m+nは平均1500〜10000の範囲の数である。)で示され、分子鎖末端に少なくとも平均2個のアルケニル基を有する分岐状オルガノポリシロキサン:100重量部、
(B)R3R22SiO1/2単位(式中、R2は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R3は炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基またはヒドロキシル基である)とSiO4/2単位とからなり、R3R22SiO1/2単位とSiO4/2単位のモル比が0.6〜1.7であるオルガノポリシロキサンレジン:10〜400重量部、
(C)1分子中に2以上のケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:本成分中のケイ素原子結合水素原子と、(A)成分と(B)成分中のアルケニル基とのモル比が1.0〜60となるに十分な量、および
(D)白金系触媒:触媒量からなることを特徴とするシリコーン系感圧接着剤組成物。
[2] さらに(E)有機溶剤からなり、その含有量は、組成物中の成分(A)〜成分(D)の合計量を100重量%未満、30重量%以上とするのに充分な量であることを特徴とする[1]記載のシリコーン系感圧接着剤組成物。
[3] 成分(A)におけるn,mが0≦n/(m+n)≦0.03であることを特徴とする[1]または[2]記載のシリコーン系感圧接着剤組成物。
[3-1] 成分(A)におけるpが平均3〜4であることを特徴とする[1]、[2]または[3]記載のシリコーン系感圧接着剤組成物。
[3-2] 成分(A)におけるmが平均3000〜6000の範囲の数であることを特徴とする[1]、[2]、[3]または[3-1]記載のシリコーン系感圧接着剤組成物。
[4] 成分(A)を表す分子式(1)が、分子式:
(Me3SiO1/2)4-p(ViMe 2SiO1/2) p (Me 2SiO)m(MeViSiO)n (SiO4/2) (2)
(式中、Meはメチル基であり、Viはビニル基であり、pは平均2〜4の範囲の数であり、mは平均1500〜10000の範囲の数であり、nは平均0以上の数であり、m>nであり、m+nは平均1500〜10000の範囲の数である。) で示されるものであり、成分(B)中のR3R22SiO1/2単位がMe SiO1/2単位であり、成分(C)がメチルハイドロジェンポリシロキサンであることを特徴とするに[1]または[2]記載のシリコーン系感圧接着剤組成物。
[4-1] 成分(A)におけるpが平均3〜4の範囲の数であることを特徴とする[4]記載のシリコーン系感圧接着剤組成物。
[4-2] 成分(A)におけるmが平均3000〜6000の範囲の数であることを特徴とする[4]、または[4-1]記載のシリコーン系感圧接着剤組成物。
[5] 成分(A)を表す分子式(2)が、分子式:
(ViMe 2SiO1/2)4 (Me 2SiO)m(SiO4/2) (3)
(式中、Meはメチル基であり、Viはビニル基であり、mは平均1500〜10000の範囲の数である)で示されるものである[4]に記載のシリコーン系感圧接着剤組成物。
[5-1] mが平均3000〜6000の範囲の数である[4]に記載のシリコーン系感圧接着剤組成物。」により達成される。
【0016】
また、上記目的は、
「[6] テープ状もしくはシート状基材上に、[1]、[3]、[4]または[5]に記載のシリコーン系感圧接着剤組成物の硬化物である感圧接着剤層が形成されていることを特徴とする感圧接着テープもしくはシート。
[6-1] テープ状もしくはシート状基材上に、[3-1]、[3-2]、[4-1]、[4-2]または[5-1]に記載のシリコーン系感圧接着剤組成物の硬化層が形成されていることを特徴とする感圧接着テープもしくはシート。」により達成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明のシリコーン系感圧接着剤組成物は、感圧接着テープもしくはシートの感圧接着剤層として使用した場合に、被着体への感圧接着力が優れている。本発明のシリコーン系感圧接着剤組成物の硬化物を感圧接着剤層として有する感圧接着テープ若しくはシートを、金属部材、セラミック部材、電子回路基板などの被着体上に貼って230℃以上、特には245℃以上の高温暴露後に引き剥がした場合に、被着体上に目視でシリコーン成分が認められない。したがって、被着体を洗浄しなくても使用可能である。本発明のシリコーン系感圧接着剤組成物は、特には、電子回路基板のハンダリフロー工程に使用されるマスキングテープの感圧接着剤層を形成するのにきわめて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
はじめに、本発明のシリコーン系感圧接着剤組成物について詳細に説明する。
本発明のシリコーン系感圧接着剤組成物は、
(A)分子式:
(R3SiO1/2)4-p(R1R2SiO1/2) p (R2SiO)m(RR1SiO)n (SiO4/2) (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基または一価ハロゲン化炭化水素基であり、R1は炭素原子数2〜10のアルケニル基であり、pは平均2〜4の範囲の数であり、mは平均1500〜10000の範囲の数であり、nは平均0以上の数であり、m>nであり、m+nは平均1500〜10000の範囲の数である。)で示され、分子鎖末端に少なくとも平均2個のアルケニル基を有する分岐状オルガノポリシロキサン:100重量部、
(B)R3R22SiO1/2単位(式中、R2は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R3は炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基、またはヒドロキシル基である)とSiO4/2単位とからなり、R3R22SiO1/2単位とSiO4/2単位のモル比が0.6〜1.7であるオルガノポリシロキサンレジン:10〜400重量部、
(C)1分子中に2以上のケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:本成分中のケイ素原子結合水素原子と、(A)成分と(B)成分中のアルケニル基とのモル比が1.0〜60となるに十分な量、および、
(D)白金系触媒:触媒量からなることを特徴とする。
【0019】
分子式(1)で示される成分(A)は、本発明のシリコーン感圧接着剤組成物の特徴的成分であり、そのアルケニル基R1が成分(C)中のケイ素原子結合水素原子とヒドロシリル化反応する。
【0020】
成分(A)は、SiO4/2単位を分岐点として、平均1500〜10000の式R2SiOで示される単位からなる重合鎖、または、式R2SiOで示される単位と式RR1SiOで示される単位(両単位の合計数が平均1500〜10000である)からなる重合鎖が、4方向に延びており、それら重合鎖の末端に式R3SiO1/2で示される単位、式R1R2SiO1/2で示される単位、または、式R3SiO1/2で示される単位と式R1R2SiO1/2で示される単位が結合している。
式R2SiOで示される単位と式RR1SiOで示される単位からなる重合鎖では、m>nであり(すなわち、アルケニル基を有しないシロキサン単位の方がアルケニル基を有するシロキサン単位より多く)、m+n(式R2SiOで示される単位と式RR1SiOで示される単位の合計数)は平均1500〜10000である。
【0021】
かかる分岐構造を有するオルガノポリシロキサンは、
分子式:[(R3SiO1/2)(4-p)(R1R2SiO1/2) p(R2SiO)m/4]4 (SiO4/2) (4)、および、
分子式:[(R3SiO1/2)(4-p)(R1R2SiO1/2) p(R2SiO)m/4(R1RSiOn/4)]4 (SiO4/2) (5)
で表されるものが好ましい。
分子式:[ (R1R2SiO1/2)(R2SiO)m/4]4 (SiO4/2) (6)で表されるものがより好ましい。
もっとも、式R3SiO1/2で示される単位、式R1R2SiO1/2で示される単位、または、式R3SiO1/2で示される単位と式R1R2SiO1/2で示される単位が、SiO4/2で示される単位に直接結合しているため、式R2SiOで示される単位のみからなる重合鎖、または、式R2SiOで示される単位と式RR1SiOで示される単位とからなる重合鎖が3方向に延びている分子や、2方向に延びている分子が混在することがあり得る。
【0022】
式中、Rは炭素原子数1〜10の脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基または一価ハロゲン化炭化水素基であり、R1は炭素原子数2〜10のアルケニル基である。
ここで、炭素原子数1〜10の脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基が例示される。炭素原子数1〜10の脂肪族不飽和結合を有しない一価ハロゲン化炭化水素基として、クロロプロピル基、トリフルオロプロピル基、ペンタフルオロブチル基などのハロアルキル基が例示されるが、製造容易性の点で、メチル基が好ましい。
1である炭素原子数2〜10のアルケニル基として、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基が例示されるが、製造容易性の点で、ビニル基が好ましい。
【0023】
成分(A)は、そのケイ素原子結合アルケニル基が、成分(C)中のケイ素原子結合水素原子とヒドロシリル化反応して架橋する。本発明においては、被着体への良好な感圧接着力を発現させ、糊残りとシリコーン移行をなくするために、末端シロキサン単位に平均2以上のアルケニル基が存在することを特徴とする。すなわち、分子式(1)において、pは平均2〜4の範囲の数であり、好ましくは平均3〜4の範囲の数であり、最も好ましくはpが4である。
【0024】
分子式(1)において、式R3SiO1/2で示される単位として、(Me)3SiO1/2単位,(Me) 2PrSiO1/2単位,(Me) 2OcSiO1/2単位,(Me) 2PhSiO1/2単位が例示される。
式R1R2SiO1/2で示される単位として、Vi(Me)2SiO1/2単位, He(Me)2SiO1/2単位, ViMePhSiO1/2単位が例示される。
式R2SiO2/2で示される単位として、(Me)2SiO2/2単位,MePrSiO2/2単位, MeOcSiO2/2単位,MePhSiO2/2単位が例示される。
式R1RSiOで示される単位として、ViMeSiO2/2単位,HeMeSiO2/2単位が例示される。
ここで、Meはメチル基を、Prはプロピル基を、Ocはオクチル基を、Viはビニル基を、Heはヘキセニル基を、Phはフェニル基を意味する。
【0025】
かかる成分(A)は、式(R2SiO)で示されるシロキサン単位と式(RR1SiO) で示されるシロキサン単位の合計数であるm+nが平均1500〜10000の範囲の数であるので、常温で高粘度液体ないし生ゴム状(ガム状とも言われる)である。
m+nが1500未満の数の場合、かかる成分(A)を含有するシリコーン感圧接着剤組成物の硬化物を感圧接着剤層として有する感圧接着テープ若しくはシートは、金属部材、セラミック部材、電子回路基板などの被着体上に貼って230℃以上、特には245℃以上の高温暴露後に引き剥がした場合に、被着体上に目視で糊残りやシリコーン移行が認められることがある。m+nが平均10000を超えるオルガノポリシロキサンは、製造が容易でない。こうした点で、m+nは平均3000〜6000が好ましい。成分(A)は、m+nが平均3000〜6000であると、常温で生ゴム状(ガム状とも言われる)である。
式(RR1SiO) で示される単位数nが多いと、かかる成分(A)を含有するシリコーン感圧接着剤組成物の硬化時の弾性率が大きくなりすぎ、被着体への感圧接着力が低下するので、0≦n/(m+n)≦0.03を満たすことが好ましい。
【0026】
成分(A)は、製造容易性の点で、分子式:
(Me3SiO1/2)4-p(ViMe 2SiO1/2) p (Me 2SiO)m(MeViSiO)n (SiO4/2) (2)
(式中、Meはメチル基であり、Viはビニル基であり、pは平均2〜4の範囲の数であり、mは平均1500〜10000の範囲の数であり、nは平均0以上の数であり、m>nであり、m+nは平均1500〜10000の範囲の数である。) で示される分岐状メチルビニルポリシロキサンが好ましい。
なお、前記した理由により、pは平均3〜4が好ましく、4が最も好ましい。m+nは平均3000〜6000が好ましく、0≦n/(m+n)≦0.03を満たすことが好ましい。
特には、成分(A)は、分子式:
[(ViMe 2SiO1/2) 4(Me 2SiO)m (SiO4/2) (3)
(式中、Meはメチル基であり、Viはビニル基であり、mは平均1500〜10000である)で示される分岐状メチルビニルポリシロキサンが好ましく、そのうちでも、mが平均3000〜10000であるものが好ましい。なお、上記成分(A)は異なるもの2種以上を併用してもよい。
【0027】
かかる成分(A)は、例えば、「[Vi(Me) 2SiO1/2]4SiO4/2(21.6g)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(592.6g)を窒素ガス雰囲気下の反応容器に装填し、100℃に加熱し減圧下におくことにより、溶解している炭酸ガスを除去する。ついで150℃に加熱して触媒量(50ppm)の線状水酸化ポリアミノホスファゼニウム触媒を投入し、1分間位撹拌して中和後、揮発分を除去することにより、分子式:(ViMe2SiO1/2)4(Me2SiO2/2)160(SiO4/2) を有する分岐状メチルビニルポリシロキサン)を製造する。ついで、前記分岐状メチルビニルポリシロキサンとオクタメチルシクロテトラシロキサンを窒素ガス雰囲気下の反応容器に装填し、100℃に加熱し減圧下におくことにより、溶解している炭酸ガスを除去する。ついで150℃に加熱して触媒量の線状水酸化ポリアミノホスファゼニウム触媒を投入し1分間位撹拌する」ことにより容易に製造することができる。
【0028】
線状水酸化ポリアミノホスファゼニウム触媒[Py3-N-(P=NPy21.8-PPy3+ OH-(Pyはピロリジン)]は、特開2000-197823の合成例2に記載されている方法「Cl3PNPCl2O (0.092モル)と(Cl3PNPCl3)+(PCl6) (0.092モル)とを攪拌器、温度計及びコンデンサ−を備えた3口フラスコに装入し、これに1,2,4−トリクロルベンゼンを添加し、生成した混合物を195°Cに30時間加熱する。得られた粗製生成物をテトラクロルエタンに溶解し、四塩化炭素を繰り返し添加して沈殿させ、白色の生成物が得る。次いで、これを石油エ−テルで洗浄し、減圧下で乾燥する(収率65%)。得られた結晶質物質を蒸留水+メタノ−ル(1+1)に分散し、塩基性(OH)アニオン交換樹脂を通すことにより水酸化ポリホスファゼニウムへ転化させる。次いで、水及びメタノ−ルを減圧下で除く。」 により製造することができる。
【0029】
重合生成物である分岐状メチルビニルポリシロキサンのシロキサン単位のモル比は、原料シロキサンの仕込み比、NMR分析、ビニル基含有量の定量分析などにより算出することができ、ジメチルシロキサン単位数は、NMR分析により求めることができる。
【0030】
成分(B)であるR3R22SiO1/2単位(式中、R2は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R3は炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基またはヒドロキシル基である)とSiO4/2単位とからなり、R3R22SiO1/2単位とSiO4/2単位のモル比が0.6〜1.7であるオルガノポリシロキサンレジンは、成分(A)とかかる成分(B)を含有するシリコーン感圧接着剤組成物およびその硬化物に感圧接着性を付与する。
【0031】
このシロキサン単位中、R2は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R3は炭素原子数1〜10のアルキル基、アルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基またはヒドロキシル基である。アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基が例示され、アルケニル基としてビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基が例示される。アリール基としてフェニル基、トリル基が例示される。
R3R22SiO1/2単位としてMe3SiO1/2, Me2OcSiO1/2,Me2ViSiO1/2, Me2 PhSiO1/2, Me2(HO)SiO1/2 が例示される。ここで、Meはメチル基を、Ocはオクチル基を、Viはビニル基を、Phはフェニル基を意味する。
成分(B)は、好ましい成分(A)、すなわち、分子式(2)、分子式(3)で示される成分(A)との相溶性の点で、R2とR3の合計モル数の95%以上がメチル基であることが好ましい。また、R3R22SiO1/2単位とSiO4/2単位のモル比は0.6〜1.7であるが、0.6〜1.0であることが好ましい。
【0032】
成分(B)は、R3R22SiO1/2単位とSiO4/2単位の他に、少量(例えば、10モル%以下)であり、特性に悪影響を与えなければ、式R2SiO2/2で示される単位、式RR1SiO2/2で示される単位、式RSiO3/2で示される単位、式R1SiO3/2で示される単位、これら単位中のRまたはR1がヒドロキシル基に置換された単位のいずれか、または複数を含有しても良い。なお、R とR1は前記同様の基である。
なお、上記成分(B)は異なるもの2種以上を併用してもよい。
【0033】
成分(B)の配合量は、成分(A)100重量部に対し10〜400重量部であるが、25〜150重量部の範囲とすることが好ましい。配合量が10重量部未満では感圧接着力が不十分なため被着体に十分に粘着しない場合がある。400重量部を超えると、成分(A)と均一に混合しにくくなり、シリコーン系感圧接着剤組成物の硬化物を感圧接着剤層として有する感圧接着テープ若しくはシートを、被着体上に貼って230℃以上、特には245℃以上の高温暴露後に引き剥がした場合に、成分(B)の一部が被着体に残存することがある。
【0034】
成分(C)である、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、成分(A)および成分(B)の架橋剤として機能するものであり、ケイ素原子に結合している水素原子が成分(A)と成分(B)中のアルケニル基とヒドロシリル化反応する。
架橋剤として機能するために、1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有することが必要であり、1分子中に3個以上のケイ素原子結合水素原子を有することが好ましい。
成分(C)の分子構造は限定されず、直鎖状,分岐鎖状,分岐状,環状が例示される。
ケイ素原子結合水素原子の結合位置は特に限定されず、分子鎖末端,側鎖,これら両方が例示される。
ケイ素原子結合水素原子の含有量は0.1〜1.6重量%であることが好ましく、0.5〜1.6重量%であることがより好ましい。
【0035】
ケイ素原子に結合する有機基として、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,オクチル基等の炭素原子数1〜8のアルキル基;フェニル基,トリル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;クロロプロピル基,トリフルオロプロピル基などのハロアルキル基が例示されるが、それらの合計数の50モル%以上が炭素原子数1〜8のアルキル基であることが好ましい。かかるアルキル基のうちでは、製造容易性および前記した好ましい成分(A)、成分(B)との相溶性の点でメチル基が好ましい。
【0036】
成分(C)は、他成分との混合容易性の点で、常温で液状であることが好ましい。25℃における粘度は、好ましくは1〜1,000mPa・sであり、より好ましくは5〜500mPa・sである。これは、25℃における粘度が1mPa・s未満であると、成分(C)がシリコーン系感圧接着剤中から揮発し易く、1,000mPa・sを超えたものは製造が容易でないからである。
【0037】
このような成分(C)として、
具体的には、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン,両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体,両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体,環状メチルハイドロジェンオリゴシロキサン,環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体,トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン,テトラ(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シランが例示される。
【0038】
それらのうちでは、分子構造式:
DMe2SiO (Me 2SiO)q (H Me SiO)r Si Me2D (7)
(式中、Meはメチル基であり、Dはメチル基または水素原子であり、q,rは0.3≦r/(q+r)≦1、10≦ (q+r)≦200の関係を満たす数である。)で示されるメチルハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
なお、上記成分(C)は異なるもの2種以上を併用してもよい。
【0039】
成分(C)の配合量は、そのケイ素原子結合水素原子と、成分(A) と成分(B)中のアルケニル基のモル比が1:1〜60:1であるような量であり、好ましくは、該モル比が10:1〜40:1であるような量である。これは、1.0:1未満では硬化が不十分なために、シリコーン系感圧接着剤組成物の硬化物を感圧接着剤層として有する感圧接着テープ若しくはシートを被着体上に貼って230℃以上、特には245℃以上の高温暴露後に引き剥がした場合に、被着体上に糊残りが見られることがあるからである。一方60:1を超えるとシリコーン系感圧接着剤組成物の硬化時の弾性率が大きくなりすぎて感圧接着力が低下し、シリコーン系感圧接着剤組成物の硬化物を感圧接着剤層として有する感圧接着テープ若しくはシートを被着体上に貼って230℃以上、特には245℃以上の高温暴露後に引き剥がした場合に、成分(C)がシリコーン残留物として視認されやすくなるためである。
【0040】
(D)白金系触媒は、成分(A)と成分(B)中のアルケニル基と成分(C)中のケイ素原子結合水素原子とのヒドロシリル化反応を促進する触媒である。
好ましい白金系触媒として、具体的には塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸,塩化白金酸のオレフィン錯体,塩化白金酸とケトン類との錯体,塩化白金酸とビニルシロキサンとの錯体、四塩化白金、白金微粉末、アルミナまたはシリカの担体に固体状白金を担持させたもの、白金黒、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体、これらの白金系触媒を含むメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性有機樹脂粉末が例示される。これらのうちでは、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体,塩化白金酸とテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンとの錯体,白金・ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体,白金・テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン錯体等の白金アルケニルシロキサン錯体が特に好ましい。
【0041】
かかる白金系触媒の配合量は、いわゆる触媒量である。具体的には、白金族金属として成分(A)、成分(B)、成分(C)の合計重量の1〜1,000ppmであり、5〜200ppmであることが好ましい。白金族金属量で1ppm未満であると、得られたシリコーン系感圧接着剤組成物の硬化速度が著しく遅くなる。また、白金族金属量で1000ppmを超えると、得られたシリコーン系感圧接着剤組成物に着色等の問題を生じかねない。
【0042】
本発明のシリコーン系感圧接着剤組成物には上記の成分(A)〜成分(D)の他に、本発明の目的を損なわない限り、必要に応じてこれら以外の成分を添加配合することができる。他の成分としては、(E)有機溶剤、(F)ヒドロシリル化反応抑制剤、接着性向上剤、耐熱剤、顔料その他従来公知の各種添加剤が例示される。
【0043】
(E)有機溶剤は、成分(A)〜成分(D)からなるシリコーン系感圧接着剤組成物の粘度を低減して薄くコーテイングしやすくするためのものである。トルエン,キシレン,ヘキサン,ヘプタン,アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトンが例示される。シリコーン系感圧接着剤組成物中の成分(A)〜成分(D)の合計量を100重量%未満、30重量%以上とするのに充分な量であることが好ましい。成分(A)は、直鎖状ジオルガノポリシロキサン生ゴムに較べて溶液粘度が小さいので、シリコーン系感圧接着剤組成物が比較的高濃度でも粘度が小さいという利点がある。
【0044】
(F)ヒドロシリル化反応抑制剤は、成分(A)と成分(C)の架橋反応[成分(B)がアルケニル基を有する場合は成分(A)と成分(B)と成分(C)の架橋反応]を抑制して、常温での可使時間を延長し、保存安定性を向上するために配合するものである。したがって、本発明のシリコーン系感圧接着剤組成物にとって、必須に近い成分である。
【0045】
成分(F)として、アセチレン系化合物、エンイン化合物、有機窒素化合物、有機燐化合物、オキシム化合物が例示される。具体的には、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、フェニルブチノール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のメチルアルケニルシクロシロキサン;ベンゾトリアゾールが例示される。
【0046】
このヒドロシリル化反応抑制剤の配合量は、本発明のシリコーン系感圧接着剤組成物の常温での可使時間を延長し、保存安定性を向上するのに有効な量である。通常、成分(A)100重量部当り0.001〜5重量部の範囲内であり、好ましくは0.01〜2重量部の範囲内であるが、本成分の種類、白金系触媒の性能と含有量、成分(A)と成分(B)中のアルケニル基量、成分(C)中のケイ素原子結合水素原子量などに応じて適宜選定するとよい。
【0047】
接着性向上剤は、本発明のシリコーン系感圧接着剤組成物が硬化途上で接触している基材への接着性向上のためのものである。シリコーン系感圧接着剤組成物の硬化物である感圧接着剤層を有する感圧接着テープもしくはシートを再剥離しない場合に、有効な添加剤である。接着性向上剤として、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の有機官能性アルコキシシラン化合物、そのシロキサン誘導体が例示される。
【0048】
本発明のシリコーン系感圧接着剤組成物は、上記成分(A)〜成分(D)、上記成分(A)〜成分(E)、上記成分(A)〜成分(D)と成分(F)、または上記成分(A)〜成分(F)を均一に混合することにより、必要に応じてその他任意の成分を添加して、均一に混合することにより調製することができる。各種攪拌機あるいは混練機を用いて、常温で混合すればよいが、混合中に硬化しない成分の組合せであれば、加熱下で混合してもよい。
混合中に硬化しなければ、各成分の配合順序は特に制限されるものではない。混合後、直ちに使用しないときは、成分(C)と成分(D)が同一の容器内に存在しないように複数の容器に分けて保管しておき、使用直前に全容器内の成分を混合することが好ましい。
【0049】
本発明に係るシリコーン系感圧接着剤組成物は、テープ状基材またはシート状基材に塗工した後、室温もしくは50〜200℃で加熱することにより硬化させて、前記基材の表面に感圧接着剤層を形成することができる。かかる基材の種類として、板紙,ダンボール紙,クレーコート紙,ポリオレフィンラミネート紙,特にはポリエチレンラミネート紙,合成樹脂フィルム,天然繊維布,合成繊維布,人工皮革布,金属箔が例示される。特に、合成樹脂フィルムが好ましく、合成樹脂として、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンが例示される。特に耐熱性が要求される場合には、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリアリレート、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルスルフォン(PES)等の耐熱性合成樹脂のフィルムが好適である。
【0050】
本発明に係る感圧接着テープないしシートは、テープ状基材またはシート状基材と、その上に形成された、本発明に係るシリコーン系感圧接着剤組成物の硬化により形成されたシリコーン系感圧接着剤層とを有することを特徴とするものである。シリコーン系感圧接着剤層の厚さは特に限定されないが、通常10〜100μmである。シリコーン系感圧接着剤層は、剥離しやすいフィルムで被覆されていることが好ましい。
【0051】
本発明に係る感圧接着テープないしシートは、本発明に係るシリコーン系感圧接着剤組成物を、テープ状基材またはシート状基材に前記の方法で塗工した後、室温もしくは50〜200℃で加熱することにより硬化させて、テープ状基材またはシート状基材の表面に感圧接着層を形成することにより作製することができる。テープ状基材またはシート状基材への塗工方法としては、グラビアコート、オフセットコート、オフセットグラビア、ロールコート、リバースロールコート、エアナイフコート、カーテンコート、コンマコートが例示される。テープ状基材またはシート状基材上でシリコーン系感圧接着剤組成物を硬化させる場合、加熱することが好ましく、特に80〜200℃の温度条件で加熱することが好ましい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。下記の実施例および比較例におけるSiH/SiViは、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体中のケイ素原子結合水素原子と、分岐状メチルビニルポリシロキサン、生ゴム状の両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンまたは生ゴム状の両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体中のケイ素原子結合ビニル基とのモル比を意味する。
【0053】
下記の合成例、実施例および比較例において、Meはメチル基、Viはビニル基を意味する。分岐状メチルビニルポリシロキサンの分析、測定は以下の方法で行い、シリコーン系感圧接着剤組成物の粘着力及び高温に曝した後の糊残り性とシリコーン移行性は以下の方法で評価した。
【0054】
[NMR分析]
各合成例の分岐状メチルビニルポリシロキサンの平均分子式は、下記の29Si−NMR分析により同定した。
NMR装置:Fourier Transform Nuclear Magnetic Resonance Spectrometer JEOL JNM-EX400(日本電子製)
同定方法: 分岐状メチルビニルポリシロキサン中の以下に示す各シロキサン単位中の29Siに由来するシグナルについて、そのピークの積分値を算出した。各シロキサン単位(M単位,D単位,Q単位)について、これらの積分値の比を求めることにより、各シロキサン単位の構成比を求め、その平均分子式を同定した。
シロキサン単位: 29Siに由来するシグナルの位置
ViMe2SiO1/2単位: −3.71ppm付近
ViMeSiO2/2単位: −35.4ppm付近
Me2SiO2/2単位(D): −20.4〜22.2ppm
SiO4/2単位(Q): −107.5〜-109.1ppm
【0055】
[粘度]
分岐状メチルビニルポリシロキサンを20重量%含有するトルエン溶液の粘度、および、シリコーン系感圧接着剤組成物の粘度は、25℃においてデジタル表示粘度計(芝浦システム株式会社製のビスメトロンVDA2型)に下記表1に示すロータを装着し、下記表1に示すロータ回転数で測定した。
【0056】
【表1】

【0057】
[粘着力]
シリコーン系感圧接着剤組成物を、ポリイミド(PI)樹脂フィルム上に、硬化後の感圧接着剤層が15μm前後の厚さになるように塗工した後、これを180℃で2分間加熱して感圧接着シートを作製した。次に、この感圧接着シートを剥離性ポリエチレンテレフタレートフィルムに、ラミネーターを用いて貼り合わせ、50℃のオーブン内で1日エージングした。室温まで冷却した後、20mm幅に切断して感圧接着テープを作製した。この感圧接着テープを剥離性ポリエチレンテレフタレートフィルムから剥がして、鏡面ステンレススチール板(SUS304)からなる被着体上に、ゴムローラを用いて2Kgfの圧力で圧着させた。室温下に30分間静置した後、感圧接着テープを貼り付けたステンレススチール板について、引張試験機を用いて、定速(300mm/分)で該感圧接着テープを180°の角度で引きはがして、粘着力を測定した。
【0058】
[高温暴露後の糊残り性及びシリコーン移行性]
シリコーン系感圧接着剤組成物を、ポリイミド(PI)樹脂フィルム上に、硬化後の感圧接着剤層が15μm前後の厚さになるように塗工した後、180℃で2分間加熱して感圧接着シートを作製した。次に、この感圧接着シートを、ラミネーターを用いて剥離性ポリエチレンテレフタレートフィルムに貼り合わせ、50℃のオーブン内で1日間エージングした。オーブンから取り出して、室温まで冷却した後、20mm幅に切断して感圧接着テープを作製した。この感圧接着テープを剥離性ポリエチレンテレフタレートフィルムから剥がして、鏡面ステンレススチール板(SUS304)からなる被着体、あるいは、銅貼ガラスエポキシ樹脂上に金メッキ加工した基板からなる被着体に、ゴムローラを用いて圧力2Kgfで圧着させた。その後、感圧接着テープを貼り付けた各被着体を、250℃のオーブン内で10分間エージングし、オーブンから取り出し、室温下で30分間静置した。
【0059】
上記の感圧接着テープを貼り付けた各被着体について、引張試験機を用いて、定速(300mm/分)で該感圧接着テープを180°の角度で引きはがして、各被着体上の糊残り性と、各被着体上へのシリコーン移行性を肉眼観察した。糊残りは、硬化したシリコーン系感圧接着剤組成物の残留物であり、被着体表面上に多少盛り上って付着している。シリコーン移行は、被着体表面の白っぽい曇りまたは染みであり、被着体上に盛り上っていない点で糊残りと区別できる。
【0060】
[合成例1]
[Vi(Me) 2SiO1/2]4SiO4/2(21.6g)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(592.6g)を窒素ガス雰囲気下の反応容器に装填し、100℃に加熱し減圧下におくことにより、溶解している炭酸ガスを除去した。ついで150℃に加熱して触媒量(50ppm)の線状水酸化ポリアミノホスファゼニウム触媒 [Py3-N-(P=NPy21.8-PPy3+ OH-(Pyはピロリジン)]を投入し、1分間位撹拌して中和後、揮発分を除去し、室温まで冷却したところ、無色透明な液状物が得られた。その粘度は46mPa・sであり、ビニル基含有量は0.9重量%であった。
NMR分析の結果、この液状物は、平均分子式:(ViMe2SiO1/2)4(Me2SiO2/2)160(SiO4/2) (8)
で示される分岐状メチルビニルポリシロキサンであることがわかった。
【0061】
[合成例2]
撹拌機と温度計と注入口付きの5Lセパラブルフラスコに、合成例1で合成した平均分子式:
[ViMe2SiO1/2]4(Me2SiO)160(SiO4/2) (8)で示される液状メチルビニルポリシロキサン145g、オクタメチルシクロテトラシロキサン3354g、線状水酸化ポリアミノホスファゼニウム触媒[Py3-N-(P=NPy21.8-PPy3+ OH-(Pyはピロリジン)]0.175g(50ppm)を投入し、150℃で3時間攪拌した。その後、100℃まで冷却した。再び150℃まで昇温し、減圧下でストリッピングを行った後、室温まで冷却したところ、無色透明なねばねばした生ゴム状物が得られた。そのトルエン20重量%溶液の粘度は193mPa・sであり、ビニル基含有量は0.04重量%であった。
NMR分析の結果、この生ゴム状物は、平均分子式:
(ViMe2SiO1/2)4(Me2SiO2/2)4000(SiO4/2) (9)で示される分岐状メチルビニルポリシロキサンであることがわかった。
【0062】
[合成例3]
撹拌機と温度計と注入口付きの5Lセパラブルフラスコに、合成例1で合成した平均分子式:
[ViMe2SiO1/2]4(Me2SiO)160(SiO4/2) (8)で示される液状メチルビニルポリシロキサン145g、オクタメチルシクロテトラシロキサン3354g、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン4.3g、線状水酸化ポリアミノホスファゼニウム触媒[Py3-N-(P=NPy21.8-PPy3+ OH-(Pyはピロリジン)]0.175g(50ppm)を投入し、150℃で3時間攪拌した。その後、100℃まで冷却した。再び150℃まで昇温し、減圧下でストリッピングを行った後、室温まで冷却したところ、無色透明なねばねばした生ゴム状物が得られた。
そのトルエン20重量%溶液の粘度は169mPa・sであり、ビニル基含有量は0.08重量%であった。
NMR分析の結果、この生ゴム状物は、
平均分子式:(ViMe2SiO1/2)4(Me2SiO2/2) 4000(ViMeSiO2/2)(SiO4/2) (10)
で示される分岐状メチルビニルポリシロキサンであることがわかった。
【0063】
[合成例4]
撹拌機と温度計と注入口付きの5Lセパラブルフラスコに、合成例1で合成した平均分子式:
[ViMe2SiO1/2]4(Me2SiO)160(SiO4/2) (8)で示される液状メチルビニルポリシロキサン145g、オクタメチルシクロテトラシロキサン1677g、線状水酸化ポリアミノホスファゼニウム触媒[Py3-N-(P=NPy21.8-PPy3+ OH-(Pyはピロリジン)]0.09g(50ppm)を投入し、150℃で3時間攪拌した。その後、100℃まで冷却した。再び150℃まで昇温し、減圧下でストリッピングを行った後、室温まで冷却したところ、無色透明なねばねばした生ゴム状物が得られた。
そのトルエン20重量%溶液の粘度は34mPa・sであり、ビニル基含有量は0.08重量%であった。
NMR分析の結果、この生ゴム状物は、平均分子式:
(ViMe2SiO1/2)4(Me2SiO2/2) 2000 (SiO4/2) (11)
で示される分岐状メチルビニルポリシロキサンであることがわかった。
【0064】
[合成例5]
撹拌機と温度計と注入口付きの5Lセパラブルフラスコに、合成例1で合成した平均分子式:
[ViMe2SiO1/2]4(Me2SiO)160(SiO4/2) (8)で示される液状メチルビニルポリシロキサン120g、オクタメチルシクロテトラシロキサン480g、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)0.96gを投入し、85℃で5時間攪拌した。その後150℃まで昇温し、減圧下でストリッピングを行った後、室温まで冷却したところ、無色透明なねばねばした液状物が得られた。
そのトルエン20重量%溶液の粘度は9.4mPa・sであり、ビニル基含有量は0.2重量%であった。
NMR分析の結果、この液状物は、平均分子式:
(ViMe2SiO1/2)4(Me2SiO2/2) 800 (SiO4/2) (12)
で示される分岐状メチルビニルポリシロキサンであることがわかった。
【0065】
[合成例6]
[Vi(Me) 2SiO1/2]4SiO4/2(21.6g)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(740g)を窒素ガス雰囲気下の反応容器に装填し、100℃に加熱し減圧下におくことにより、溶解している炭酸ガスを除去した。ついで150℃に加熱して触媒量(50ppm)の線状水酸化ポリアミノホスファゼニウム触媒 [Py3-N-(P=NPy21.8-PPy3+ OH-(Pyはピロリジン)]を投入し、1分間位撹拌して中和後、揮発分を除去し、室温まで冷却したところ、無色透明な液状物が得られた。そのトルエン20重量%溶液の粘度は4.5mPa・sであり、ビニル基含有量は0.8重量%であった。
NMR分析の結果、この液状物は、平均分子式:(ViMe2SiO1/2)4(Me2SiO2/2)200(SiO4/2) (13)
で示される分岐状メチルビニルポリシロキサンであることがわかった。
【0066】
[実施例1]
合成例2で合成した平均分子式: (ViMe2SiO1/2)4(Me2SiO)4000(SiO4/2) (9)で示され、ビニル基含有量0.04重量%の分岐状メチルビニルポリシロキサン(成分(A))49.0重量部、
Me3SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなり、そのモル比が0.8:1であるメチルポリシロキサンレジン(成分(B))を固形分換算で70.0重量%含むキシレン溶液30.0重量部、1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.22重量部、キシレン2.31重量部、トルエン18.5重量部をミキサーに投入して混合することにより、オルガノポリシロキサン成分含有量が70重量%である溶液を調製した。
【0067】
それに、粘度100cSt(約100mPa・s)の分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量1.0重量%)(成分(C))1.7重量部、塩化白金酸の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(成分(D));本錯体中の白金金属が上記の成分(A)〜成分(C)の合計重量の100ppmとなるような量、および、トルエン40重量部を投入して混合することにより、オルガノポリシロキサン成分含有量が50重量%であるシリコーン系感圧接着剤組成物(SiH/SiVi=33.5)を調製した。このシリコーン系感圧接着剤組成物の粘度を測定した。このシリコーン系感圧接着剤組成物を用いて粘着テープを作製し、粘着力、糊残り性およびシリコーン移行性を評価した。それらの結果を表2に示した。
【0068】
[実施例2]
合成例3で合成した平均分子式:(ViMe2SiO1/2)4(Me2SiO2/2) 4000(ViMeSiO2/2)6(SiO4/2) (10)で示され、ビニル基含有量0.08重量%の分岐状メチルビニルポリシロキサン(成分(A))42.0重量部、Me3SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなり、そのモル比が0.8:1であるメチルポリシロキサンレジン(成分(B))を固形分換算で70.0重量%含むキシレン溶液25.7重量部、1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.20重量部、キシレン2.0重量部、トルエン30.2重量部をミキサーに投入して混合することにより、オルガノポリシロキサン成分含有量が60重量%である溶液を調製した。
【0069】
それに、粘度100cSt(約100mPa・s)の分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量1.0重量%)(成分(C))1.7重量部、塩化白金酸の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(成分(D));本錯体中の白金金属が上記の成分(A)〜成分(C)の合計重量の100ppmとなるような量、および、トルエン20重量部を投入して混合することにより、オルガノポリシロキサン成分含有量が50重量%であるシリコーン系感圧接着剤組成物(SiH/SiVi=22.8)を調製した。このシリコーン系感圧接着剤組成物の粘度を測定した。このシリコーン系感圧接着剤を用いて粘着テープを作製し、粘着力、糊残り性およびシリコーン移行性を評価し、それらの結果を表2に示した。
【0070】
[実施例3]
合成例4で合成した平均分子式:(ViMe2SiO1/2)4(Me2SiO)2000(SiO4/2) (11)
で示される分岐状メチルビニルポリシロキサン(成分(A))29.0重量部、
Me3SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなり、そのモル比が0.8:1であるメチルポリシロキサンレジン(成分(B))を固形分換算で70.0重量%含むキシレン溶液30.0重量部、1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.22重量部、および、トルエン40.8部をミキサーに投入して混合することにより、オルガノポリシロキサン成分含有量が70重量%である溶液を調製した。
【0071】
それに、粘度100cSt(約100mPa・s)の分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量1.0重量%)(成分(C))1.7重量部、塩化白金酸の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(成分(D))本錯体中の白金金属が上記の成分(A)〜成分(C)の合計重量の100ppmとなるような量、トルエン40重量部を投入して混合することにより、オルガノポリシロキサン成分含有量が50重量%であるシリコーン系感圧接着剤組成物(SiH/SiVi=32.3)を調製した。このシリコーン系感圧接着剤組成物の粘度を測定した。このシリコーン系感圧接着剤を用いて粘着テープを作製し、粘着力、糊残り性およびシリコーン移行性を評価し、それらの結果を表2に示した。
【0072】
[比較例1]
生ゴム状の両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量:0.02重量%、平均重合度4000)35.0重量部、(B)Me3SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなり、そのモル比が0.8:1であるメチルポリシロキサンレジン(成分(B))を固形分換算で70.0重量%含むキシレン溶液21.4重量部、1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.20重量部、キシレン1.65重量部、トルエン66.7部をミキサーに投入して混合することにより、オルガノポリシロキサン成分含有量が40重量%である溶液を調製した。
【0073】
それに、粘度100cSt(約100mPa・s)の分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量1.0重量%)(成分(C))1.2重量部、塩化白金酸の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(成分(D));本錯体中の白金金属が上記の成分(A)〜成分(C)の合計重量の100ppmとなるような量、および、トルエン25重量部を投入して混合することにより、オルガノポリシロキサン成分含有量が33重量%であるシリコーン系感圧接着剤組成物(SiH/SiVi=115.7)調製した。このシリコーン系感圧接着剤組成物の粘度を測定した。このシリコーン系感圧接着剤を用いて粘着テープを作製し、粘着力、糊残り性およびシリコーン移行性を評価し、それらの結果を表2に示した。
【0074】
[比較例2]
比較例1において、生ゴム状の両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンの代わりに、生ゴム状の両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量0.19重量%、平均重合度4000)35.0重量部を使用した以外は全く同様の条件で、シリコーン系感圧接着剤組成物(SiH/SiVi=12.2)を調製した。このシリコーン系感圧接着剤組成物の粘度を測定した。このシリコーン系感圧接着剤を用いて粘着テープを作製し、粘着力、糊残り性およびシリコーン移行性を評価し、それらの結果を表2に示した。
【0075】
[比較例3]
生ゴム状の両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量:0.37重量%、平均重合度4000)31.0重量部、Me3SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなり、そのモル比が0.8:1であるメチルポリシロキサンレジン(成分(B))を固形分換算で70.0重量%含むキシレン溶液27.1重量部、1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.20重量部、キシレン2.08重量部、トルエン38.8重量部をミキサーに投入して混合することにより、オルガノポリシロキサン成分含有量が40重量%である溶液を調製した。
【0076】
それに、粘度100cSt(約100mPa・s)の分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量1.0重量%)(成分(C))1.2重量部、塩化白金酸の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(成分(D));本錯体中の白金金属が上記の成分(A)〜成分(C)の合計重量の100ppmとなるような量、および、トルエン50重量部を投入して混合することにより、オルガノポリシロキサン成分含有量が33重量%であるシリコーン系感圧接着剤組成物(SiH/SiVi=7.0)を調製した。このシリコーン系感圧接着剤組成物の粘度を測定した。このシリコーン系感圧接着剤を用いて粘着テープを作製し、粘着力、糊残り性およびシリコーン移行性を評価し、それらの結果を表2に示した。
【0077】
[比較例4]
合成例6で合成した平均分子式:(ViMe2SiO1/2)4(Me2SiO)200(SiO4/2) (13)
で示され、ビニル基含有量0.70重量%の分岐状メチルビニルポリシロキサン42.0重量部と、Me3SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなり、そのモル比が0.8:1であるメチルポリシロキサンレジン(成分(B))を固形分換算で70.0重量%含むキシレン溶液25.7重量部をミキサーに投入して、室温にて十分攪拌した後、150℃で2時間ストリッピングを行うことにより、キシレンを除いた。
【0078】
室温まで冷却後、この無溶剤混合物50重量部に、粘度100cSt(約100mPa・s)の分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量1.0重量%)(成分(C))0.6重量部、塩化白金酸の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(成分(D));本錯体中の白金金属が上記の成分(A)〜成分(C)の合計重量の100ppmとなるような量、1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.2重量部を投入して混合することにより、有機溶剤を含まないシリコーン系感圧接着剤組成物(SiH/SiVi=1.1)を調製した。このシリコーン系感圧接着剤組成物の粘度を測定した。このシリコーン系感圧接着剤を用いて粘着テープを作製し、粘着力、糊残り性およびシリコーン移行性を評価し、それらの結果を表3に示した。分子式(3)においてm=200、すなわち、(Me2SiO)単位数が200では、感圧接着剤特性が不良なことがわかる。
【0079】
[比較例5]
比較例4において、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体の配合量を1.2重量部とした以外は全く同一条件でシリコーン系感圧接着剤組成物(SiH/SiVi=2.2)を調製した。このシリコーン系感圧接着剤組成物の粘度を測定した。このシリコーン系感圧接着剤を用いて粘着テープを作製し、粘着力、糊残り性およびシリコーン移行性を評価し、それらの結果を表3に示した。分子式(3)においてm=200、すなわち、(Me2SiO)単位数が200では、感圧接着剤特性が不良なことがわかる。
【0080】
[比較例6]
比較例4において、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体の配合量を2.4重量部とした以外は全く同一条件でシリコーン系感圧接着剤組成物(SiH/SiVi=4.4)を調製した。このシリコーン系感圧接着剤組成物の粘度を測定した。このシリコーン系感圧接着剤を用いて粘着テープを作製し、前記の方法で粘着力、シリコーン移行性を評価し、それらの結果を表3に示した。分子式(3)においてm=200、すなわち、(Me2SiO)単位数が200では、感圧接着剤特性が不良なことがわかる。
【0081】
[比較例7]
合成例6で合成した平均分子式:(ViMe2SiO1/2)4(Me2SiO)200(SiO4/2) (13)
で示され、ビニル基含有量0.70重量%の分岐状メチルビニルポリシロキサン24.0重量部と、Me3SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなり、そのモル比が0.8:1であるメチルポリシロキサンレジン(成分(B))を固形分換算で70.0重量%含むキシレン溶液51.4重量部をミキサーに投入して、室温にて十分攪拌した後、150℃で2時間ストリッピングを行うことにより、成分(B)中に含まれていた溶剤を除いた。
【0082】
溶剤を除去した混合物は、固形状のため、粘度測定ができず、無溶剤型シリコーン系感圧接着剤組成物の調製は不可能であった。
この溶剤を除去した混合物は、平均分子式(13)で示される分岐状メチルビニルポリシロキサンとメチルポリシロキサンレジンの配合比が、特許文献6の実施例6の無溶剤型シリコーン粘着剤中の平均組成式:(ViMeSiO1/2−(MeSiO)200−(MeSiO4/2で示される分岐を有するビニル基含有ポリジメチルシロキサン(アルケニル基含有量0.026モル/100g,粘度360mPa・s)(A−3)とポリオルガノシロキサン(C)の配合比と同様である。
なお、この平均組成式中の(MeSiO4/2)単位は理論上ありえないので、誤記であって、正しくはMeSiO3/2としか考えられない。
しかるに、上記の溶剤を除去した混合物が固形状であるのは、平均分子式(13)で示される分岐状メチルビニルポリシロキサンが、(MeSiO3/2)単位ではなく、(SiO4/2)単位を必須とするためと思われる。
【0083】
[比較例8]
合成例5で合成した平均分子式:(ViMe2SiO1/2)4(Me2SiO)800(SiO4/2) (12)
で示され、ビニル基含有量0.31重量%の分岐状メチルビニルポリシロキサン62.0重量部と、Me3SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなり、そのモル比が0.8:1であるメチルポリシロキサンレジン(成分(B))を固形分換算で70.0重量%含むキシレン溶液38.0重量部をミキサーに投入して、室温にて十分攪拌した。
【0084】
粘度100cSt(約100mPa・s)の分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量1.0重量%)(成分(C))1.06重量部、塩化白金酸の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(成分(D));本錯体中の白金金属が上記の成分(A)〜成分(C)の合計重量の180ppmとなるような量、1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.36重量部を投入して混合することにより、オルガノポリシロキサン成分含有量が89重量%であるシリコーン系感圧接着剤組成物(SiH/SiVi=1.7)を調製した。このシリコーン系感圧接着剤組成物の粘度を測定した。このシリコーン系感圧接着剤を用いて粘着テープを作製し、粘着力、糊残り性およびシリコーン移行性を評価し、それらの結果を表3に示した。分子式(3)においてm=800、すなわち、(Me2SiO)単位数が800では、感圧接着剤特性が不良なことがわかる。
【0085】
[比較例9]
合成例5で合成した平均分子式:(ViMe2SiO1/2)4(Me2SiO)800(SiO4/2) (12)
で示され、ビニル基含有量0.31重量%の分岐状メチルビニルポリシロキサン40.0重量部と、Me3SiO1/2位とSiO4/2単位とからなり、そのモル比が0.8:1であるメチルポリシロキサンレジン(成分(B))を固形分換算で70.0重量%含むキシレン溶液85.7重量部をミキサーに投入して、室温にて十分攪拌した。
【0086】
粘度100cSt(約100mPa・s)の分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量1.0重量%)(成分(C))1.06重量部、塩化白金酸の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(成分(D));本錯体中の白金金属が上記の成分(A)〜成分(C)の合計重量の180ppmとなるような量、1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.36重量部を投入して混合することにより、オルガノポリシロキサン成分含有量が89重量%であるシリコーン系感圧接着剤組成物(SiH/SiVi=2.6)を調製した。このシリコーン系感圧接着剤組成物の粘度を測定した。このシリコーン系感圧接着剤を用いて粘着テープを作製し、粘着力、糊残り性およびシリコーン移行性を評価し、それらの結果を表3に示した。分子式(3)においてm=800、すなわち、(Me2SiO)単位数が800では、感圧接着剤特性が不良なことがわかる。











【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【0089】
[糊残り性]
(表中の記号の意味)
:糊残りが全くない
△ :わずかに糊残りがある
× :明瞭な糊残りがある
AF :PIフィルムへの密着性不良。硬化皮膜全体が被着体上に認められる。
V:粘着力が低いため、感圧接着剤層と基材との間に空隙(Void)が見られる
−:無溶剤型感圧接着剤の調製不可能
[シリコーン移行性]
:シリコーン移行が認められない
△ :わずかにシリコーン移行が認められる
× :明瞭なシリコーン移行が認められる
AF :PIフィルムへの密着性不良。硬化皮膜全体が被着体上に認められる。
V:粘着力が低いため、感圧接着剤層と基材との間に空隙(Void)が見られる
N/A:無溶剤型感圧接着剤の調製不可能
【0090】
実施例1と実施例2の感圧接着剤組成物は、粘着力が適度であり、糊残りとシリコーン移行が実質的にないので、高温下で使用されるマスキングテープ用に適している。実施例3の組成物は、糊残りとシリコーン移行が実用的に許容されるレベルであり、しっかりした粘着力が求められる部位に使用するマスキングテープ用に適している。
比較例の感圧接着剤組成物は、「粘着力が小さすぎる」、「糊残りがある」、「シリコーン移行がある」、「無溶剤型感圧接着剤の調製不可能」のいずれか、または組み合わせであり、実用的でないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のシリコーン系感圧接着剤組成物は、感圧接着テープもしくはシートの硬化した感圧接着剤層を形成するのに有用である。
本発明の感圧接着テープ若しくはシートは、高温になる金属部材、セラミック部材、電子回路基板などのマスキングテープ若しくはシートとして有用である。特には、電子回路基板のハンダリフロー工程に使用されるマスキングテープとしてきわめて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子式:
(R3SiO1/2)4-p(R1R2SiO1/2) p (R2SiO)m(RR1SiO)n (SiO4/2) (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基または一価ハロゲン化炭化水素基であり、R1は炭素原子数2〜10のアルケニル基であり、pは平均2〜4の範囲の数であり、mは平均1500〜10000の範囲の数であり、nは平均0以上の数であり、m>nであり、m+nは平均1500〜10000の範囲の数である。)で示され、分子鎖末端に少なくとも平均2個のアルケニル基を有する分岐状オルガノポリシロキサン:100重量部、
(B)R3R22SiO1/2単位(式中、R2は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R3は炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜10のアリール基またはヒドロキシル基である)とSiO4/2単位とからなり、R3R22SiO1/2単位とSiO4/2単位のモル比が0.6〜1.7であるオルガノポリシロキサンレジン:10〜400重量部、
(C)1分子中に2以上のケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:本成分中のケイ素原子結合水素原子と、(A)成分と(B)成分中のアルケニル基とのモル比が1.0〜60となるに十分な量、および
(D)白金系触媒:触媒量からなることを特徴とするシリコーン系感圧接着剤組成物。
【請求項2】
さらに(E)有機溶剤からなり、その含有量は、組成物中の成分(A)〜成分(D)の合計量を100重量%未満、30重量%以上とするのに充分な量であることを特徴とする請求項1記載のシリコーン系感圧接着剤組成物。
【請求項3】
成分(A)におけるn,mが0≦n/(m+n)≦0.03である請求項1または請求項2記載のシリコーン系感圧接着剤組成物。
【請求項4】
成分(A)を表す分子式(1)が、分子式:
(Me3SiO1/2)4-p(ViMe 2SiO1/2) p (Me 2SiO)m(MeViSiO)n (SiO4/2) (2)
(式中、Meはメチル基であり、Viはビニル基であり、pは平均2〜4の範囲の数であり、mは平均1500〜10000の範囲の数であり、nは平均0以上の数であり、m>nであり、m+nは平均1500〜10000の範囲の数である。) で示されるものであり、成分(B)中のR3R22SiO1/2単位がMe SiO1/2単位であり、成分(C)がメチルハイドロジェンポリシロキサンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリコーン系感圧接着剤組成物。
【請求項5】
成分(A)を表す分子式(2)が、分子式:
(ViMe 2SiO1/2)4 (Me 2SiO)m(SiO4/2) (3)
(式中、Meはメチル基であり、Viはビニル基であり、mは平均1500〜10000の範囲の数である)で示されるものである請求項4に記載のシリコーン系感圧接着剤組成物。
【請求項6】
テープ状もしくはシート状基材上に、請求項1、請求項3、請求項4または請求項5に記載のシリコーン系感圧接着剤組成物の硬化物である感圧接着剤層が形成されていることを特徴とする感圧接着テープもしくはシート。

【公開番号】特開2009−51916(P2009−51916A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219032(P2007−219032)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【出願人】(500295461)ダウ コーニング コーポレーション (15)
【Fターム(参考)】