説明

シリンジ

【課題】光量の少ない場所でも、所定量の液体を吸引または排出することのできるシリンジを提供すること。
【解決手段】シリンジ1は、先端側に液体が吸入・吐出される口部を有する外筒2と、外筒2内で摺動するガスケット3と、ガスケット3を移動操作する押し子4とを備えている。外筒2には、蓄光材を含む材料で形成された目盛り27が設けられている。また、目盛り27は、外筒2とガスケット3で画成された空間4内に露出しないように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
先端側に縮径した口部を有する外筒と、この外筒の基端開口から外筒内に挿入されたガスケットと、このガスケットに連結された押し子(プランジャロッド)とを備え、外筒とガスケットの先端面とで囲まれる空間に、例えば液状の薬剤を密封状態で収納するシリンジが知られている。
【0003】
このようなシリンジでは、押し子を基端方向へ引く操作を行ってガスケットを外筒内で基端方向に摺動させ、外筒の先端の口部から前記空間内に薬液や血液等の体液を吸引したり、押し子を押す操作を行ってガスケットを外筒内で先端方向に摺動させ、前記空間内に収納された薬液や血液等の体液を口部から排出したりする。ここで、外筒の外周には目盛りが付されており、当該目盛りによって所定量の薬液や血液等の体液の吸引および排出を簡単に行うことができる。
【0004】
しかしながら、このようなシリンジでは、光量の少ない暗室での使用時や、無影灯以外の照明を落とした状態での使用時や、光の届きにくい場所(例えば、ドレープの下等)での使用時には、外筒に付された目盛りを視認することが困難なため、誤った量の液体を排出するおそれがあるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、光量の少ない場所でも、所定量の液体を吸引または排出することのできるシリンジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)〜(11)の本発明により達成される。
(1) 先端側に液体が吸入・吐出される口部を有する外筒と、前記外筒内で摺動するガスケットと、前記ガスケットを移動操作する押し子とを備えるシリンジであって、
前記外筒には、蓄光材を含む材料で形成された目盛りが設けられていることを特徴とするシリンジ。
【0007】
(2) 前記目盛りは、前記外筒と前記ガスケットで画成された空間内に露出しないように設けられている上記(1)に記載のシリンジ。
【0008】
(3) 前記目盛りは、前記外筒の外周面に設けられている上記(2)に記載のシリンジ。
【0009】
(4) 前記ガスケットおよび前記押し子の少なくとも一方には、蓄光材を含む材料で形成された表示部位が設けられている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のシリンジ。
【0010】
(5) 前記表示部位は、前記外筒と前記ガスケットで画成された空間内に露出しないように設けられている上記(4)に記載のシリンジ。
【0011】
(6) 前記表示部位は、前記押し子の前記ガスケットの基端との境界部に設けられている上記(4)または(5)に記載のシリンジ。
【0012】
(7) 前記押し子は、前記ガスケットと係合し、係合した状態で前記ガスケットの内部に位置する係合部を有し、
前記表示部位は、前記係合部に設けられており、
前記ガスケットは、光透過性を有している上記(4)または(5)に記載のシリンジ。
【0013】
(8) 前記ガスケットは、蓄光材を含む材料で構成された部位を有し、前記部位が前記表示部位として機能する上記(4)または(5)に記載のシリンジ。
【0014】
(9) 前記ガスケットは、該ガスケットの摺動方向に間隔をおいて形成され、前記外筒の内周面に向かって突出する少なくとも2つのリング状の凸部を有し、
前記表示部位は、前記2つの凸部の間に設けられている上記(4)または(5)に記載のシリンジ。
【0015】
(10) 前記表示部位および前記目盛りは、互いに異なる色に発光する上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のシリンジ。
【0016】
(11) 前記外筒の前記目盛りと異なる位置に、蓄光性を有しない非発光目盛りが形成されている上記(1)ないし(10)のいずれかに記載のシリンジ。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、目盛りが、光を蓄え発光する性質を有する蓄光材を含む材料で形成されているため、暗室等の光量の少ない部屋、場所にて目盛りが発光する。そのため、光量の少ない部屋、場所でも、目盛りを容易に視認することができ、所定量の液体を吸引または排出することができる。
【0018】
また、ガスケットおよび押し子の少なくとも一方にも、蓄光材を含む材料で形成された表示部位が設けられている場合には、外筒に設けられた目盛りと表示部位との位置関係に基づいて、より正確に、所定量の液体を吸引または排出することができる。
【0019】
さらには、表示部位および目盛りが、互いに異なる色に発光する場合には、目盛りと表示部位とを的確に識別することができるため、さらに正確に、所定量の液体を吸引または排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のシリンジの第1実施形態を示す部分縦断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態にかかるシリンジの部分縦断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態にかかるシリンジの部分縦断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態にかかるシリンジの部分縦断面図である。
【図5】図4に示すシリンジの変形例を示す断面図である。
【図6】図4に示すシリンジの変形例を示す部分縦断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態にかかるシリンジの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のシリンジの好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明のシリンジの第1実施形態を示す部分縦断面図である。
【0022】
なお、以下の説明では、図1中の上側を「基端」、下側を「先端」という。
図1に示すように、本発明のシリンジ1は、外筒2と、この外筒2内で摺動し得るガスケット3と、このガスケット3に装着され、ガスケット3を移動操作するプランジャ(押し子)4とを備えている。以下、各部の構成について説明する。
【0023】
外筒2は、底部21を有する有底筒状の部材で構成されている。また、底部21の中央部には、外筒2の胴部より縮径した縮径部22が一体的に形成されている。シリンジ1は、この縮径部22に、例えば、薬液投与用、採血用等の針管のハブ、各種コネクタ、チューブ、カテーテル等(図示せず)を嵌合、装着した状態で使用される。
【0024】
この外筒2には、ガスケット3とで囲まれる部分に収納空間24が形成され、この収納空間24は、縮径部22の内腔23と連通している。
【0025】
ここで、シリンジ1は、未使用時において収納空間24内が空である通常のシリンジの他、収納空間24内に薬剤が予め収納されているプレフィルドシリンジにも適用することができる。シリンジ1がプレフィルドシリンジの場合、収納空間24内には、例えば、血液、ブドウ糖等の糖質注射液、塩化ナトリウムや乳酸カリウム等の電解質補正用注射液、ビタミン剤、ワクチン、抗生物質注射液、造影剤、ステロイド剤、蛋白質分解酵素阻害剤、脂肪乳剤、各種蛋白製剤、抗癌剤、麻酔薬、覚せい剤、麻薬等の日本薬局方に収載されている各種薬液、あるいは、蒸留水、流動食、アルコール等の液体が収納される。
【0026】
外筒2の基端(縮径部22と反対側の端)外周には、板状のフランジ25が一体的に形成されている。プランジャ4を外筒2に対し相対的に移動操作する際などには、このフランジ25に指を掛けて操作を行うことでシリンジ1の操作性が向上する。
【0027】
また、外筒2は、好ましくは透明(無色透明)、有色透明または半透明の樹脂で構成され、収納空間24の視認性が確保されている。
【0028】
外筒2の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、共重合ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタアクリレート、ポリメタアクリル酸等のアクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ナイロン等のポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート、環状ポリオレフィン(例えば、エチレンとテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]−3−ドデセン共重合体等)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、ポリスルホンのような熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂を用いると、外筒2の製造コストの低減、軽量化および形状選択の幅の拡大といった点において有利であるとともに、外筒2の耐破損性が向上する。
【0029】
このような外筒2の外周面には、目盛り27が形成されている。図示の構成では、目盛り27は、ガスケット3の先端面と外筒2の底部21とが接触する位置が基準となる(「0」となる)ように、順次、「1」〜「10」を示す目盛りが基端方向に向って設けられている。各目盛りの単位は、特に限定されないが、例えば、「mL」である。
【0030】
目盛り27を外筒2の外周面に形成することによって、目盛り27が収納空間24内の薬液に接触するのを防止することができる。これにより、目盛り27を形成する材料が薬液中に溶け出すことがなく、シリンジ1の安全性が確保される。なお、目盛り27を構成する材料(後述する蓄光材)の安全性が確保(担保)されている場合には、目盛り27を外筒2の内周面に形成してもよい。
【0031】
このような目盛り27は、蓄光材を含む材料で形成されている。ここで、「蓄光材」とは、光を蓄えて発光する性質を有する材料のことを言う。このような材料で目盛り27を形成することにより、暗闇で目盛り27が発光するため、例えば暗室等の光量の少ない部屋や、光が届き難い若しくは全く届かない場所(例えば、手術台の下やドレープの下等)でも、目盛り27を確実かつ明確に視認することができる。そのため、シリンジ1によれば、光量の少ない部屋、場所でも、シリンジ1内の液量を的確に把握することができ、所定量の液体(薬液)を吸引または排出することができる。
【0032】
このような蓄光材としては、光を蓄え暗闇で発光する性質を有していれば、特に限定されず、硫化亜鉛系、アルミン酸系ストロンチウムなどの蓄光顔料を用いることができる。これらの中でも、発光特性に優れる点および放射性物質を使用しない点で、アルミン酸系ストロンチウムを用いることが好ましい。なお、本願明細書の「蓄光材」には、光を蓄え暗闇で発光する性質を有していれば、蛍光材も含まれる。
【0033】
アルミン酸系ストロンチウムの蓄光顔料としては、例えば、主成分としてのアルミン酸ストロンチウムに、賦活剤としてのユウロピウム(Eu)および共賦活剤(賦活助剤)としてのジスプロシウム(Dy)を混合したものを用いることができる。また、上記化合物に、ケイ素(Si)、リン(P)、カルシウム(Ca)およびセリウム(Ce)を加えたものや、ケイ素(Si)、硫黄(S)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)および鉄(Fe)を加えたものや、さらにナトリウム(Na)、塩素(Cl)を加えたものを用いることができる。
【0034】
また、「蓄光材を含む材料」としては、特に限定されず、例えば、塗料、樹脂組成物、インキ組成物などが挙げられる。
【0035】
「蓄光材を含む材料」として、塗料を用いる場合には、母材樹脂に蓄光材を混合したものを用いることができる。母材樹脂としては、特に限定されず、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル−ウレタン硬化系樹脂、エポキシ−ポリエステル硬化系樹脂、アクリル−ポリエステル系樹脂、アクリル−ウレタン硬化系樹脂、アクリル−メラミン硬化系樹脂、ポリエステル−メラミン硬化系樹脂などの熱硬化性樹脂、あるいはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。また、硬化剤には、ポリイソシアネート、アミン、ポリアミド、多塩基酸、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化硼素酸、酸ジヒドラジド、イミダゾールなどを使用することが好ましい。
【0036】
「蓄光材を含む材料」として、樹脂組成物を用いる場合にも、母材樹脂に蓄光材を混合したものを用いることができる。母材樹脂としては、上記の各種熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0037】
「蓄光材を含む材料」として、インキ組成物を用いる場合は、インキ組成物に蓄光材を混合したものを用いることができる。インキ組成物としては、オフセットインキ、グラビアインキ等を使用することができる。
【0038】
外筒2への目盛り27の形成方法は、特に限定されず、例えば各種印刷法によって外筒2の外周面に直接形成することができる。また、例えば、外筒2を内層と、目盛り27が形成された中間層と、外層とで構成することにより(すなわち、二色成形法により)、外筒2に目盛り27を形成してもよい。
【0039】
このような目盛り27の発光色としては、特に限定されず、例えば、青色、緑色、黄色、橙色等に発光してもよいが、これらの中でも、視認性の観点から、青色、緑色が好ましい。また、図示構成では、大きい目盛りと小さい目盛りとが交互に形成されているが、これら大きい目盛りと小さい目盛りとで発光色を異ならせてもよい。
【0040】
このような目盛り27が形成された外筒2内には、ガスケット3が設置されている。ガスケット3には、その基端面に開放する中空孔で構成された螺入部31が形成されており、この螺入部31には、後述するプランジャ4のヘッド部43が螺合する。これにより、ガスケット3がプランジャ4に固定される。
【0041】
ガスケット3は、外形がほぼ円柱状の部材で構成され、その外周部には、外筒2の内周面26に向かって突出する一対のリング状のピーク部(凸部)33、34が長手方向に所定間隔おいて形成されている。これらのピーク部33、34が形成されていることで、外筒2の内周面26に対する密着性が向上し、液密性、気密性を確保することができる。ピーク部33、34の断面形状は、例えば、山型、半円形、砲弾形、台形、三角形(スカート状)、W形等、種々の形状が可能である。なお、このようなリング状のピーク部の形成数は、3以上であってもよい。
【0042】
ガスケット3を弾性材料で構成し、ガスケット3の最大外径(ピーク部33、34の部位)を外筒2の内径より若干大きく設定すると、ガスケット3は、自らの弾性力により、その外周が外筒2の内周面26と圧接して液密性が向上する。
【0043】
このような弾性材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等のうちの、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
このようなガスケット3には、ガスケット3を外筒2内で長手方向に移動操作するプランジャ4が連結されている。
【0045】
プランジャ4は、主に、横断面が十文字状をなす部材、または、筒状あるいは棒状の部材で構成され、その先端側には、板状(円盤状)の板部材41が一体的に形成されている。板部材41は、ガスケット3の摺動方向(すなわち、外筒2の軸方向)を厚さ方向とするよう配置されている。また、本実施形態では、板部材41は、2段形状となっており、その先端側が一部ガスケット3の螺入部31に挿入されている。
【0046】
また、プランジャ4の基端には、板状(円盤状)のフランジ42が一体的に形成されている。このフランジ42に指等を掛けてプランジャ4を操作する。
【0047】
また、プランジャ4の板部材41より先端側(先端部)には、ガスケット3の螺入部31に螺合されるヘッド部(係合部)43が形成されている。ヘッド部43には、雄ネジが形成されており、螺入部31の内周面に形成された雌ネジと螺合する。
【0048】
なお、プランジャ4のガスケット3に対する固定方法は、螺合に限らず、例えば、凹凸の嵌合(遊嵌状態でも可)、カシメ、融着、接着剤による接着等の方法であってもよい。
【0049】
プランジャ4の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種樹脂が挙げられるが、その中でも、成形が容易であるという点で、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)のような樹脂が好ましい。
【0050】
このようなプランジャ4の板部材41の側面には、その全周にわたって表示部位5が形成されている。この表示部位5は、蓄光材を含む材料で形成されている。このような材料で表示部位5を形成することにより、暗闇で表示部位5が目盛り27と共に発光するため、例えば暗室等の光量の少ない部屋や、光が届き難い若しくは全く届かない場所(例えば、手術台の下やドレープの下等)でも、目盛り27と表示部位5の位置関係、すなわち表示部位5が目盛り27のどの位置にあるかを視認でき、シリンジ1内の液量を的確に把握することができる。なお、表示部位5は、目盛り27と同様の材料によって形成することができるため、その説明を省略する。
【0051】
ここで、表示部位5は、如何なる色に発光してもよいが、目盛り27と異なる色に発光するのが好ましい。これにより、表示部位5が目盛り27に紛れるのを確実に防止でき、目盛り27のどの位置に表示部位5が位置しているかを明確に視認することができる。
【0052】
また、表示部位5を板部材41の側面に形成することによって、表示部位5が収納空間24内の薬液に接触するのを防止することができる。これにより、表示部位5を形成する材料が薬液中に溶け出すことがなく、シリンジ1の安全性が確保される。
【0053】
また、板部材41の側面は、プランジャ4の外筒2内に位置している部位の中で、最も外筒2の内周面26に近い部位である。このような部位に表示部位5を形成することにより、目盛り27を如何なる角度から視認しても、目盛り27と表示部位5の位置関係をほぼ等しく保つことができる。そのため、シリンジ1内の液量をより的確に把握することができる。
【0054】
また、板部材41は、ガスケット3の近傍に設けられており、本実施形態では、ガスケット3の基端に接触している。そのため、収納空間24を広げるべく、プランジャ4を外筒2から引き抜くように移動させることにより、ガスケット3を外筒2の基端側へ移動させても、板部材41は、外筒2内に留まることができる。すなわち、収納空間24を大きくしても、表示部位5を目盛り27の所定の位置に位置させることができる。その結果、シリンジ1(収納空間24内)により多くの薬液を収納することができるとともに、収容された薬液の量を的確に把握することができる。
【0055】
なお、表示部位5の先端側には、ガスケット3が位置しているため、外筒2に形成された目盛り27は、ガスケット3の体積を考慮して付さなければならない。
【0056】
<第2実施形態>
次に、本発明のシリンジの第2実施形態について説明する。
図2は、本発明の第2実施形態にかかるシリンジの部分縦断面図である。
【0057】
以下、本実施形態のシリンジについて説明するが、前記第1実施形態のシリンジとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0058】
本実施形態のシリンジでは、表示部位を形成する箇所が異なる以外は、前記第1実施形態のシリンジと同様である。
【0059】
図2に示すように、シリンジ1Aでは、プランジャ4のヘッド部43の外周面に形成されている。また、シリンジ1Aでは、ガスケット3を光透過性を有するもの、好ましくは実質的に無色透明なものとしている。これにより、ガスケット3を介して表示部位5が視認可能となっている。ガスケット3を光透過性を有するものとする場合、その構成材料は、例えば、シリコーンやオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0060】
表示部位5をこのような位置に形成することにより、表示部位5が収納空間24内に露出するのを防止できるとともに、表示部位5をガスケット3の近傍(内側)に設けることができる。そのため、第1実施形態で述べた効果と同様の効果を発揮することができる。
【0061】
なお、図示の構成では、表示部位5がヘッド部43の外周面の一部にリング状に形成されているが、これに限定されず、例えば、表示部位5がヘッド部43の外周面の全域に形成されていてもよい。また、リング状でなくてもよく、例えば、ヘッド部43の外周面の周方向の一部で欠損したC字状をなしていてもよい。
【0062】
<第3実施形態>
次に、本発明のシリンジの第3実施形態について説明する。
図3は、本発明の第3実施形態にかかるシリンジの部分縦断面図である。
【0063】
以下、本実施形態のシリンジについて説明するが、前記第1実施形態のシリンジとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0064】
本実施形態のシリンジでは、表示部位を形成する箇所が異なる以外は、前記第1実施形態のシリンジと同様である。
【0065】
図3に示すように、シリンジ1Bでは、表示部位5が、ガスケット3の外周面に形成されている。より具体的には、表示部位5は、2つのピーク部33、34の間に位置し、リング状をなしている。表示部位5を、ガスケット3の摺動方向に間隔をおいて形成され、外筒2の内周面に向かって突出する2つのリング状のピーク部33、34の間の位置に形成することにより、表示部位5が収納空間24内に露出するのを防止できるとともに、表示部位5をガスケット3の近傍(内側)に設けることができる。
そのため、第1実施形態で述べた効果と同様の効果を発揮することができる。
【0066】
<第4実施形態>
次に、本発明のシリンジの第4実施形態について説明する。
【0067】
図4は、本発明の第4実施形態にかかるシリンジの部分縦断面図、図5は、図4に示すシリンジの変形例を示す断面図、図6は、図4に示すシリンジの変形例を示す部分縦断面図である。
【0068】
以下、本実施形態のシリンジについて説明するが、前記第1実施形態のシリンジとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0069】
本実施形態のシリンジでは、表示部位を形成する箇所が異なる以外は、前記第1実施形態のシリンジと同様である。
【0070】
図4に示すように、シリンジ1Cでは、ガスケット3が表示部位5を兼ねている。具体的には、ガスケット3は、蓄光材を含む材料で構成されており、これにより、ガスケット3本来の機能を発揮するとともに、表示部位5としての機能を発揮している。表示部位5をこのような構成とすることにより、第1実施形態で述べた効果と同様の効果を発揮することができる。また、表示部位5を別途形成する必要がないため、シリンジ1Cの製造の簡易化を図ることができる。
【0071】
このようなガスケット3は、前記第1実施形態で述べたような材料、すなわち、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等に、蓄光材を混合した材料により構成することができる。
【0072】
なお、本実施形態では、図5のように、ガスケット3の外周面を覆うように、樹脂フィルム6を設けてもよい。これにより、表示部位5が収納空間24に露出するのを防止することができる。
【0073】
樹脂フィルム6は、ガスケット3の構成材料(弾性材料)より摩擦係数の低い材料(以下単に「低摩擦材料」と言う)で構成されているのが好ましい。樹脂フィルム6を低摩擦材料で構成することにより、ガスケット3の外周と外筒2の内周面26との摺動抵抗を小さくすることができ、ガスケット3の摺動性を向上することができる。
【0074】
また、ガスケット3が樹脂フィルム6で覆われていることにより、収納空間24内の薬液中の薬効成分がガスケット3と接触してそれに吸着され、薬液中の薬効成分の濃度低下や活性低下が生じ、十分な量の薬効成分を供給できなくなることがあるという弊害を防止することができる。
【0075】
樹脂フィルム6の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレンまたはその共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、四フッ化エチレン、四フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(例えば、四フッ化エチレンと、アルコキシル基の炭素数が1〜5のパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体)、PVdE(ポリビニリデンフロライド)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、TFE(テトラフルオロエチレン)、FEP(フッ化エチレンプロピレン)等のフッ素系樹脂が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。このようなフッ素系樹脂は、摩擦係数が低く、しかも耐薬品性(薬液に対し不活性であること)に優れ、また、耐熱性に優れているので、好ましい。
【0076】
なお、図4の構成では、ガスケット3の全体が表示部位5としても機能するが、これに限定されず、例えば図6のように、ガスケット3の一部が表示部位5として機能してもよい。図6の場合には、ガスケット3を、先端部、中央部、基端部の3つのパーツから形成し、中央部のみを蓄光材を含む材料で構成すればよい。
【0077】
<第5実施形態>
次に、本発明のシリンジの第5実施形態について説明する。
図7は、本発明の第5実施形態にかかるシリンジの平面図である。
【0078】
以下、本実施形態のシリンジについて説明するが、前記第1実施形態のシリンジとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0079】
本実施形態のシリンジでは、外筒に2種類の目盛りが形成されている以外は、前記第1実施形態のシリンジと同様である。
【0080】
図7に示すように、シリンジ1Dでは、外筒2の外周面に、2種類の目盛り27、28が形成されている。目盛り27については、前述した実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0081】
目盛り28は、蓄光性を有しておらず、すなわち目盛り27のように暗闇で発光せず、例えば黒色を呈している。このような目盛り28は、暗闇では視認することが困難であるが、明るい場所(十分に光量が確保された状態)での視認性は、例えば目盛り27と比較して優れている。
【0082】
このように、2種類の目盛り27、28を形成することにより、明るい場所では、目盛り27よりも見易い目盛り28で薬液の量の確認し、暗い場所では、目盛り27で薬液の量を確認することにより、シリンジ1Dの利便性がより向上する。なお、目盛り28の色は、明るい場所での視認性に優れていれば、黒色に限定されず、例えば、シリンジ1D内に収納される薬液等の色に応じて適宜設定することができる。
【0083】
目盛り27、28は、外筒の周方向に180°ずれた位置に形成されていることが好ましい。これにより、目盛り27、28の誤認を効果的に防止することができる。
【0084】
以上、本発明のシリンジを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を発揮し得る任意の構成と置換することができ、また、任意の構成が付加されているものでもよい。
【0085】
また、本発明のシリンジをプレフィルドシリンジに適用した場合、外筒の異なる位置に吸入量用目盛りと吐出量用目盛りとを形成することが好ましい。吸入量用目盛りは、縮径部から吸入された液体の吸入量を示す目盛りであり、吐出量用目盛りは、縮径部から吐出された液体の吐出量を示す目盛りである。
【符号の説明】
【0086】
1、1A、1B、1C、1D シリンジ
2 外筒
3 ガスケット
4 プランジャ(押し子)
21 底部
22 縮径部
24 収納空間
23 内腔
25 フランジ
27、28 目盛り
33、34 ピーク部
26 内周面
41 板部材
31 螺入部
42 フランジ
43 ヘッド部(係合部)
5 表示部位
6 樹脂フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に液体が吸入・吐出される口部を有する外筒と、前記外筒内で摺動するガスケットと、前記ガスケットを移動操作する押し子とを備えるシリンジであって、
前記外筒には、蓄光材を含む材料で形成された目盛りが設けられていることを特徴とするシリンジ。
【請求項2】
前記目盛りは、前記外筒と前記ガスケットで画成された空間内に露出しないように設けられている請求項1に記載のシリンジ。
【請求項3】
前記目盛りは、前記外筒の外周面に設けられている請求項2に記載のシリンジ。
【請求項4】
前記ガスケットおよび前記押し子の少なくとも一方には、蓄光材を含む材料で形成された表示部位が設けられている請求項1ないし3のいずれかに記載のシリンジ。
【請求項5】
前記表示部位は、前記外筒と前記ガスケットで画成された空間内に露出しないように設けられている請求項4に記載のシリンジ。
【請求項6】
前記表示部位は、前記押し子の前記ガスケットの基端との境界部に設けられている請求項4または5に記載のシリンジ。
【請求項7】
前記押し子は、前記ガスケットと係合し、係合した状態で前記ガスケットの内部に位置する係合部を有し、
前記表示部位は、前記係合部に設けられており、
前記ガスケットは、光透過性を有している請求項4または5に記載のシリンジ。
【請求項8】
前記ガスケットは、蓄光材を含む材料で構成された部位を有し、前記部位が前記表示部位として機能する請求項4または5に記載のシリンジ。
【請求項9】
前記ガスケットは、該ガスケットの摺動方向に間隔をおいて形成され、前記外筒の内周面に向かって突出する少なくとも2つのリング状の凸部を有し、
前記表示部位は、前記2つの凸部の間に設けられている請求項4または5に記載のシリンジ。
【請求項10】
前記表示部位および前記目盛りは、互いに異なる色に発光する請求項1ないし9のいずれかに記載のシリンジ。
【請求項11】
前記外筒の前記目盛りと異なる位置に、蓄光性を有しない非発光目盛りが形成されている請求項1ないし10のいずれかに記載のシリンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−146(P2012−146A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135303(P2010−135303)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】