説明

シリンダヘッドガスケット

【課題】 シリンダヘッドのリフトに対する追従性を改善したシリンダヘッドガスケットを提供する。
【解決手段】 燃焼室穴2の周囲に、シールビード17aを有する金属板17を外層の金属板11の折返し部で挟み込むことにより形成した1次シール部3を有するシリンダヘッドガスケットにおいて、その1次シール部3の周囲に、該1次シール部に近接して、耐熱性ゴムからなるシールリング20により構成した2次シール部4を囲設する。該シールリング20は、少なくともシリンダヘッドの予想されるリフトに対応する高さよりも高いものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次シールを強化したシリンダヘッドガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンの高性能化に伴って最高爆発圧力が上昇する傾向にあり、特に、ディーゼルエンジンでは、最高爆発圧力の上昇傾向が著しい。一方、エンジンの軽量化に伴い、その機械的強度が低下する傾向にある。その結果、シリンダ内爆発時において、シリンダヘッドのリフトが大きくなり、そのリフトに対するシリンダヘッドガスケットの追従性が求められている。
しかるに、例えば、従来から知られている金属積層形のシリンダヘッドガスケットにおいて、燃焼室穴周囲にシールビードを有する1次シール部を形成したものでは、本来シールビードの圧縮量が上記リフトに比して大きくないので、近年の大きくなったリフトに対する追従性を確保することができず、そのため、より一層の追従性をもたせるように配慮する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の技術的課題は、上述したシリンダヘッドのリフトに対する追従性を改善したシリンダヘッドガスケットを提供することにある。
本発明の更に具体的な技術的課題は、既存の耐熱性が大きい1次シール部に加えて、比較的面圧が低く、耐熱性も該1次シール部に比して低いが、シリンダヘッドの大きいリフトに対する追従性においてすぐれた2次シール部を設け、シリンダヘッドが大きくリフトしたときの追従性を確保して良好なガスシールを行うことができるようにしたシリンダヘッドガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明のシリンダヘッドガスケットは、燃焼室穴の周囲に、シールビードを有する金属板を外層の金属板の折返し部またはグロメットで挟み込むことにより形成した1次シール部を有するシリンダヘッドガスケットにおいて、上記1次シール部の周囲に、該1次シール部に近接して、耐熱性ゴムからなるシールリングにより構成した2次シール部を囲設し、該シールリングを、少なくともシリンダヘッドの予想されるリフトに対応する高さよりも高いものとしたことを特徴とするものである。
【0005】
本発明の好ましい実施形態においては、上記シールリングを構成する耐熱性ゴムとして、NBR、シリコンゴムまたはフッ素ゴムが用いられる。
また、上記耐熱性ゴムからなるシールリングを、ガスケットを構成する金属板に焼付けまたは接着により固定し、それを、ガスケットを構成する金属板の表裏面の一方または双方に配することにより構成される。
【0006】
上記構成を有するシリンダヘッドガスケットは、シールビードを有する金属板を外層の金属板の折返し部またはグロメットで挟み込むことにより形成した燃焼室穴の周囲の1次シール部が、本来のすぐれた耐熱性を有していて、通常は該1次シール部において燃焼室穴の周囲がガスシールされる。
しかし、上記シリンダヘッドのリフトが大きくなって1次シール部におけるシールビードの追従性ではガスシールができなくなった場合には、該1次シール部の周囲に近接して囲設した耐熱性ゴムからなるシールリングにより構成した2次シール部が、ゴムの良好な弾性により上記リフトに対する追従性を示し、このシールリングは、上記1次シール部に比して比較的面圧が低く、耐熱性においても低いものではあるが、耐熱性ゴムのすぐれた弾性を利用して、すぐれた追従性を持たせることができる。
【発明の効果】
【0007】
以上に詳述した本発明のシリンダヘッドガスケットによれば、シリンダヘッドのリフトに対する追従性を改善したシリンダヘッドガスケットを得ることができ、さらに具体的には、既存の耐熱性が大きい1次シール部に加えて、比較的面圧が低く、耐熱性も該1次シール部に比して低いが、シリンダヘッドの大きいリフトに対する追従性においてすぐれた耐熱性ゴムからなる2次シール部を設けているので、シリンダヘッドが大きくリフトしたときの追従性を確保して良好なガスシールを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本発明に係るシリンダヘッドガスケットの第1実施例における燃焼室穴2の周囲の断面形状を示している。このシリンダヘッドガスケットは、全体的には、第1、第2及び第3の金属板11,12,13を積層することにより構成され、燃焼室穴2の周囲に、シールビード17aを有する金属板17を外層に位置する上記第1の金属板11の折返し部11aで挟み込むことにより形成した1次シール部3を有している。上記金属板17は、中層に位置する第2の金属板12と一体化することもできる。
【0009】
上記1次シール部3の周囲には、該1次シール部3に近接して耐熱性ゴムからなるシールリング20により構成した2次シール部4を囲設している。シールリング20を構成する耐熱性ゴムとしては、NBR、シリコンゴムまたはフッ素ゴムなどが一般的である。このシールリング20は、上記外層の金属板11の折返し部11aの先端11bと第3の金属板13の開口縁13aとの間に形成した円環状間隙19において、第2の金属板12に接合され、それにより2次シール部4を形成するものである。上記シールリング20の接合は、上記円環状間隙19において第2の金属板12に焼付けまたは接着することにより行われるが、それらの接合手段を用いなくてもシールリング20を所定の位置に保持できるのであれば、必ずしも上記接合手段で固定する必要はない。
なお、上記シールリング20は、必ずしも上記円環状間隙19に設ける必要はなく、例えば外層を形成する金属板に、必要に応じて円環状凹部を設けてそこに固定することもできる。
【0010】
上記2次シール部4を構成するシールリング20は、シリンダヘッドのリフトが大きくなって1次シール部3におけるシールビード17aの追従性ではガスシールができなくなった場合に機能するものであるから、少なくとも、シリンダヘッドの予想されるリフトに対応する高さよりも高いものとし、望ましくは、上記予想されるリフトに対応する高さよりも圧縮代だけ高く形成される。それにより、耐熱性ゴムの良好な弾性によって上記リフトに対する追従性を発揮させることが可能になる。これは、以下に説明する各実施例においても同様である。
【0011】
上記図1の第1実施例では、シールリング20として、断面が円形のものを示しているが、図2のように、一部を扁平化したシールリング21を非接合で用いることもできる。なお、図2におけるその他の構造は図1の第1実施例と変わるところがないので、その説明を省略する。
【0012】
図3に示す第2実施例のシリンダヘッドガスケットは、全体的には、第1〜第5の金属板11〜15を積層することにより構成されたもので、燃焼室穴2の周囲に、シールビード12aを有する第2の金属板12及び第4の金属板14を、外層に位置する第1の金属板11の折返し部11aで挟み込むことにより形成した1次シール部3を有している。
上記1次シール部3の周囲に近接配置した2次シール部4は、上記外層の金属板11の折返し部11aの先端11bと第5の金属板15の開口縁15aとの間に形成した円環状間隙19において、上記耐熱性ゴムからなるシールリング22を第4の金属板14に接合することにより構成している。このシールリング22は、断面が略半円状をなすもので、その平面部分を上記第4の金属板14に接着している。その他の構成は第1実施例と変わるところがない。
【0013】
上述した第1及び第2実施例においては、燃焼室穴2の周囲に、シールビードを有する金属板等を外層の金属板11の折返し部11aで挟み込むことにより1次シール部3を形成しているが、上記シールビードを有する金属板をグロメット30で挟み込むことにより1次シール部3を形成することもできる。
図4に示す第3実施例は、このグロメット30を用いたもので、この第3実施例のシリンダヘッドガスケットは、全体的には、第1〜第4の金属板11〜14を積層することにより構成され、燃焼室穴2の周囲に、シールビード12aを有する第2の金属板12をグロメット30で挟み込むことにより形成した1次シール部3を有している。
【0014】
上記1次シール部3の周囲に近接配置される2次シール部4は、上記グロメット30の先端30aと第1及び第4の金属板11,14の開口縁11a,14aとの間に形成された各円環状間隙19において、上記耐熱性ゴムからなる断面略半円状のシールリング23を第2及び第3の金属板12,13に接合することにより構成している。なお、前記第1及び第2実施例と同様に、該シールリング23を、ガスケットを構成する金属板の表裏面の一方のみに設けることもできる。
【0015】
また、図5に示す第4実施例は、第3実施例と同様にグロメット30を用いたもので、全体的には、第1〜第4の金属板11〜14を積層することにより構成され、燃焼室穴2の周囲に、シールビード12aを有する第2の金属板12をグロメット30で挟み込むことにより形成した1次シール部3を有している。
【0016】
上記1次シール部3の周囲に近接配置される2次シール部4は、第1及び第4の金属板11,14のグロメット30に対向する端縁の近辺において、それらの金属板11,14の外面に、上記耐熱性ゴムからなる断面略半円状のシールリング24を接合することにより構成している。なお、該シールリング24も、ガスケットを構成する金属板の表裏面の一方のみに設けることができる。
【0017】
上記構成を有するシリンダヘッドガスケットは、シールビード12a,17aを有する金属板12,17を外層の金属板11の折返し部11aまたはグロメット30で挟み込むことにより形成した燃焼室穴2の周囲の1次シール部3が、本来のすぐれた耐熱性を有していて、通常は該1次シール部3において燃焼室穴2の周囲がガスシールされる。
しかし、上記シリンダヘッドのリフトが大きくなって1次シール部3におけるシールビード12a,17aの追従性ではガスシールができなくなった場合には、該1次シール部3の周囲に近接して囲設した耐熱性ゴムからなるシールリング20〜24により構成した2次シール部4が、ゴムの良好な弾性により上記リフトに対する追従性を示し、このシールリング20〜24は、上記1次シール部3に比して比較的面圧が低く、耐熱性においても低いものではあるが、耐熱性ゴムのすぐれた弾性を利用して、すぐれた追従性を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るシリンダヘッドガスケットの第1実施例の要部断面図である。
【図2】上記第1実施例のシリンダヘッドガスケットにおいてシールリングの形状を異にする構成例を示す要部断面図である。
【図3】本発明に係るシリンダヘッドガスケットの第2実施例の要部断面図である。
【図4】本発明に係るシリンダヘッドガスケットの第3実施例の要部断面図である。
【図5】本発明に係るシリンダヘッドガスケットの第4実施例の要部断面図である。
【符号の説明】
【0019】
2 燃焼室穴
3 1次シール部
4 2次シール部
11〜15 第1乃至第5の金属板
11a 折返し部
12a,17a シールビード
17 金属板
20〜24 シールリング
30 グロメット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室穴の周囲に、シールビードを有する金属板を外層の金属板の折返し部またはグロメットで挟み込むことにより形成した1次シール部を有するシリンダヘッドガスケットにおいて、
上記1次シール部の周囲に、該1次シール部に近接して、耐熱性ゴムからなるシールリングにより構成した2次シール部を囲設し、該シールリングを、少なくともシリンダヘッドの予想されるリフトに対応する高さよりも高いものとした、
ことを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項2】
上記シールリングを構成する耐熱性ゴムが、NBR、シリコンゴムまたはフッ素ゴムである、
ことを特徴とする請求項1に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項3】
上記耐熱性ゴムからなるシールリングを、ガスケットを構成する金属板に焼付けまたは接着により固定した、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項4】
上記耐熱性ゴムからなるシールリングを、ガスケットを構成する金属板の表裏面の一方または双方に配した、
ことを特徴とする請求項1〜3に記載のシリンダヘッドガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−132714(P2006−132714A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324054(P2004−324054)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000198237)石川ガスケット株式会社 (57)
【Fターム(参考)】