シリンダーヘッド用メタルガスケット

【課題】厚さが薄くかつ安価で、しかも環状ビードを全圧縮し得るガスケットを提供することにある。
【解決手段】シリンダー孔2aの周囲に形成された環状ビード2bと、各環状ビードの外側周辺部に形成された冷却水孔2cと、それら環状ビードおよび冷却水孔を全体的に囲繞する外周ビード2dとを有する二枚の基板2を具え、少なくとも一方の基板2の環状ビードの外側周辺部にシリンダーヘッドの冷却水孔またはシリンダーブロックの冷却水ジャケットもしくは冷却水孔に対応させて複数の掛合孔2eを形成し、基板2の環状ビード2bの内側から冷却水ジャケットまたは冷却水孔の位置まで延在する段差調整板3に複数の突起3aを設け、突起3aの多角形孔3bの周辺部を筒状に立ち上げて形成した筒状部3cの、基板2の掛合孔2eを貫通した部分を外側に折り返して潰すことで各突起3aを基板2に掛合させ、その段差調整板3を二枚の基板2の間に介挿したシリンダーヘッド用メタルガスケット1である。
【解決手段】シリンダー孔2aの周囲に形成された環状ビード2bと、各環状ビードの外側周辺部に形成された冷却水孔2cと、それら環状ビードおよび冷却水孔を全体的に囲繞する外周ビード2dとを有する二枚の基板2を具え、少なくとも一方の基板2の環状ビードの外側周辺部にシリンダーヘッドの冷却水孔またはシリンダーブロックの冷却水ジャケットもしくは冷却水孔に対応させて複数の掛合孔2eを形成し、基板2の環状ビード2bの内側から冷却水ジャケットまたは冷却水孔の位置まで延在する段差調整板3に複数の突起3aを設け、突起3aの多角形孔3bの周辺部を筒状に立ち上げて形成した筒状部3cの、基板2の掛合孔2eを貫通した部分を外側に折り返して潰すことで各突起3aを基板2に掛合させ、その段差調整板3を二枚の基板2の間に介挿したシリンダーヘッド用メタルガスケット1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関のシリンダーブロックとシリンダーヘッドとの間に介挿されるシリンダーヘッド用メタルガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関では、シリンダーブロックとシリンダーヘッドとの接合面にメタルガスケットを介在させ、そのメタルガスケットをヘッドボルトで締付けることによって、燃焼ガス、冷却水および潤滑油のシールをしている。特に、シリンダー孔のシールは重要であり、この部分のシールが不充分であると、燃焼ガスが隣り合うシリンダー同士で流通して、エンジン出力が低下したり、洩れた燃焼ガスが、シリンダー孔を円周状に取り囲む冷却水孔に流入したりする結果、オーバーヒート等の不具合を発生させ、最悪の場合、エンジンの焼付き現象までに至る。
【0003】
上記現象を回避する為に、メタルガスケットを形成する弾性金属板にシリンダー孔を囲繞するように環状ビードを設けたメタルガスケットが、例えば特許文献1や特許文献2から知られており、このシリンダーヘッド用メタルガスケットは、各々金属板からなり、内燃機関のシリンダーブロックの各シリンダーボアに対応して形成されたシリンダー孔と、前記各シリンダー孔の周囲に形成された山形断面形状の環状ビードと、前記シリンダーブロックの冷却水ジャケットおよびシリンダーヘッドの冷却水孔に対応して前記各環状ビードの外側周辺部に形成された冷却水孔と、前記環状ビードおよび前記冷却水孔を全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状の外周ビードとを有する二枚の基板を具えている。そして、それらの基板の間には、環状ビードの面圧を外周ビードの面圧より高めて環状ビードを全圧縮することによりシリンダーボア内の燃焼ガスに対する環状ビードのシール性を高める段差構造を持つ、金属板からなる副板が介挿されている。
【0004】
しかして特許文献1では、図17に示すように、シリンダーヘッド用メタルガスケット1の、それぞれ鋼板(SUS 0.2t 等)からなる二枚の基板2間に介挿される副板3を、基板2の各シリンダー孔2aの周囲の環状ビード2bと重なる板厚Tのシリンダー孔周辺部3aと、それより外側に位置する板厚tの外方部3bとからなるものとし、それらシリンダー孔周辺部3aを薄鋼板(SUS 0.2t、0.25t、0.3t 等)で、また外方部3bを、鋼板(SUS 0.1t、0.15t、0.2t 等)で構成してT-tが所要の段差になるようにするとともにレーザー溶接で互いに結合することで、上記段差構造を構成している。
【0005】
また特許文献2では、図18に示すように、シリンダーヘッド用メタルガスケット1の、それぞれ鋼板からなる二枚の基板2間に介挿される、単一板厚tの薄鋼板(SUS 0.07t、0.1t、0.12t、0.15t 等)からなる副板3の、基板2の各シリンダー孔2aの周囲の環状ビード2bと重なるシリンダー孔周辺部3aに折り返し曲げ加工により厚さT(=2t)の折り重ね部3cを形成してT-t(=t)が所要の段差になるようにすることで、上記段差構造を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−243531号公報
【特許文献2】特開平8−121597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前者の従来の段差構造では、所定のガスケット形状とするためのシリンダー孔周辺部3aと外方部3bとの位置合せが難しいため、ガスケット形状に求められている高い精度を満たすには専用の位置合せ治具と高精度のレーザー溶接装置が不可欠となり、ガスケットが高価なものになってしまうという問題があった。
【0008】
また、後者の従来の段差構造では、単一板厚の薄鋼板を折り返し曲げ加工することから、ガスケットを安価にはできるものの、折り返し曲げ加工は絞り加工を用いて行うため、折り重ね部3cの形状の自由度が低く、割れの発生なしに充分広い半径方向幅の折り重ね部3cを形成するのは特に薄鋼板では困難であるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットは、各々弾性金属板からなり、内燃機関のシリンダーヘッドを組み付けられるシリンダーブロックの各シリンダーボアに対応して形成されたシリンダー孔と、前記各シリンダー孔の周囲に形成された山形断面形状の環状ビードと、前記シリンダーヘッドの冷却水孔および、前記シリンダーブロックの冷却水ジャケットまたは冷却水孔に対応して前記各環状ビードの外側周辺部に形成された冷却水孔と、前記環状ビードおよび前記冷却水孔を全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状の外周ビードとを有する二枚の基板を具え、前記二枚の基板の前記環状ビードが、互いに当該ガスケットの厚さ方向に整列して位置するシリンダーヘッド用メタルガスケットにおいて、前記二枚の基板の少なくとも一方の前記環状ビードの外側周辺部に、前記シリンダーヘッドの冷却水孔または、前記シリンダーブロックの冷却水ジャケットもしくは冷却水孔に対応させて複数の掛合孔を形成し、金属板からなり、前記基板の環状ビードの内側の位置から前記冷却水ジャケットまたは冷却水孔の位置まで延在する段差調整板に複数の突起を設け、前記突起の多角形孔の周辺部を筒状に立ち上げて形成した筒状部の、前記基板の前記掛合孔を貫通した部分を外側に折り返して潰すことで、前記各突起を前記基板に掛合させ、前記段差調整板を前記二枚の基板の間に介挿したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットによれば、二枚の基板の間に介挿する段差調整板に複数の突起を設け、それらの突起の筒状部を、二枚の基板の少なくとも一方の、環状ビードの外側周辺部にシリンダーヘッドの冷却水孔またはシリンダーブロックの冷却水ジャケットもしくは冷却水孔に対応させて設けた掛合孔に貫通させて、その貫通した部分を外側に折り返して潰すことで、各突起を基板に掛合させているので、段差調整板によって安価かつ容易に、基板の環状ビードと外周ビードとの段差ひいては環状ビードの面圧を高めることができる。
【0011】
また、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットによれば、段差調整板の突起の、多角形孔の周辺部を筒状に立ち上げて形成した筒状部を外側に折り返して潰していることから、筒状部の少なくとも先端部が元の多角形孔の多角形の各角部に対応する位置で谷状凹部となり、その筒状部を外側に折り返して潰すと、各谷状凹部の位置で応力集中により裂けて略均等な大きさの複数の花弁状に開いた状態で潰れ、各花弁状部分が充分な大きさとなって、基板への強固な掛合状態をもたらすと同時に段差調整板への強固な結合状態を維持するので、シリンダーヘッドとシリンダーブロックとの加熱および冷却の繰返しによってそれらのデッキ面間にフレッチング(デッキ面に平行な相対移動)が生じても、段差調整板が基板から外れるのを防止することができる。
【0012】
しかも、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットによれば、筒状部を貫通させて潰す掛合孔を、基板の環状ビードの外側周辺部に、シリンダーヘッドの冷却水孔またはシリンダーブロックの冷却水ジャケットもしくは冷却水孔に対応させて設けていることから、その筒状部を外側に折り返して潰した部分をシリンダーヘッドとシリンダーブロックとのデッキ面間に挟まれないように冷却水孔や冷却水ジャケットに逃がし得るので、その折り返して潰した部分が環状ビードの面圧上昇を妨げるのを防止することができる。
【0013】
なお、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットにおいては、前記突起の前記筒状部の断面形状は4角形、5角形または6角形であると好ましい。4角形、5角形または6角形であると、複数の花弁状に開いた状態で潰れた筒状部の各花弁状部分が、基板への強固な掛合状態をもたらすと同時に段差調整板への強固な結合状態を維持するのに充分な大きさに確実になるからである。
【0014】
また、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットにおいては、前記突起の前記多角形孔の形状は4角形、5角形または6角形であり、前記筒状部は円柱状のポンチで筒状に立ち上げて形成すると好ましい。突起の孔形状が4角形、5角形または6角形であれば、その周辺部を円柱状のポンチで筒状に立ち上げても筒状部の断面形状は段差調整板の板材の剛性により孔形状に相似する多角形となるので、安価な円柱状のポンチで断面多角形の筒状部を形成することができる。
【0015】
さらに、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットにおいては、前記基板に形成して前記突起を掛合させる前記掛合孔の数は、各シリンダーボアに対して2個〜5個とすると好ましい。掛合孔の数を各シリンダーボアに対して2個〜5個とすれば、基板への段差調整板の掛合力を充分に高めて、シリンダーヘッドとシリンダーブロックとのデッキ面間にフレッチングが生じても、段差調整板が基板から外れるのを確実に防止することができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの一実施例の全体を示す平面図である。
【図2】上記実施例のメタルガスケットの、図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】上記実施例のメタルガスケットの下側の基板を示す平面図である。
【図4】上記実施例のメタルガスケットの段差調整板を示す平面図である。
【図5】上記実施例のメタルガスケットの段差調整板の突起を、筒状部を立ち上げる前の状態で示す平面図である。
【図6】上記実施例のメタルガスケットの段差調整板の突起を、筒状部を立ち上げた状態で示す断面図である。
【図7】上記実施例のメタルガスケットの段差調整板の突起を、筒状部を下側の基板の掛合孔に貫通させて外側に折り返した状態で示す断面図である。
【図8】上記実施例のメタルガスケットの段差調整板の突起を、筒状部を下側の基板の掛合孔に貫通させ、外側に折り返して潰した状態で示す平面図である。
【図9】この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの他の一実施例の、図2と同様に位置での断面図である。
【図10】一比較例のメタルガスケットの段差調整板の突起を、先端部を立ち上げた状態で示す平面図である。
【図11】上記比較例のメタルガスケットの下側の基板の掛合孔を示す平面図である。
【図12】上記比較例のメタルガスケットの段差調整板の突起を、先端部を基板の掛合孔に貫通させた状態で示す断面図である。
【図13】上記比較例のメタルガスケットの段差調整板の突起を、先端部を基板の掛合孔に貫通させ、折り返して潰した状態で示す断面図である。
【図14】上記比較例のメタルガスケットの段差調整板を複数枚重ねた状態で示す断面図である。
【図15】上記実施例のメタルガスケットの段差調整板を複数枚重ねた状態で示す断面図である。
【図16】他の一比較例のメタルガスケットの段差調整板の突起を、その突起の円形孔の周辺部を立ち上げた筒状部を外側に折り返して潰した状態で示す平面図である。
【図17】従来のシリンダーヘッド用メタルガスケットの一例の、図2と同様の位置での断面図である。
【図18】従来のシリンダーヘッド用メタルガスケットの他の一例の、図2と同様の位置での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、この発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの一実施例の全体を示す平面図、図2は、その実施例のメタルガスケットの、図1のA−A線に沿う断面図、図3は、上記実施例のメタルガスケットの下側の基板を示す平面図、図4は、上記実施例のメタルガスケットの段差調整板を示す平面図、図5は、上記実施例のメタルガスケットの段差調整板の突起を、筒状部を立ち上げる前の状態で示す平面図であり、図中符号1はメタルガスケット、2は基板、3は段差調整板をそれぞれ示す。
【0018】
この実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1は、段差調製板を含めて金属板を三枚積層する積層型のもので、図2に示すように、各々弾性金属板としてのステンレス鋼板からなる二枚の基板2を具えており、これらの基板2は図1および図3に示すように各々、当該メタルガスケット1が組み込まれる内燃機関としてのエンジンの、シリンダーヘッドを組み付けられるシリンダーブロックの各シリンダーボアに対応して形成された複数(図では三つ)のシリンダー孔2aと、各シリンダー孔2aの周囲に形成された山形断面形状の環状ビード2bと、上記シリンダーブロックの冷却水ジャケット(オープンデッキ型の場合)または冷却水孔(クローズドデッキ型の場合)、および上記シリンダーヘッドの冷却水孔に対応して各環状ビード2bの外側周辺部に形成された多くの冷却水孔2cと、環状ビード2bおよび冷却水孔2cを全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状の外周ビード2dとを有している。
【0019】
二枚の基板2はさらに各々、その外周ビード2dの外側に、複数の潤滑油孔2eおよび、シリンダーヘッドをシリンダーブロックに締め付け固定するためのヘッドボルトを各々挿通される複数(図では八つ)のボルト孔2fと、グロメット孔2gとを有しており、それら二枚の基板2の環状ビード2bは、互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに、互いに逆向きになるように各々内向きに突出し、二枚の基板2の外周ビード2dも、互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに、互いに逆向きになるように各々内向きに突出している。
【0020】
加えて、前記シリンダーブロックのデッキ面に対向する図2では下側の基板2は、上記シリンダーブロックの冷却水ジャケット(オープンデッキ型の場合)または冷却水孔(クローズドデッキ型の場合)、および上記シリンダーヘッドの冷却水孔の位置に対応して、各シリンダー孔2aの周囲の環状ビード2bの外側周辺部に、互いに周方向に適宜離間して図示例では四つずつ形成された掛合孔2hを有している。
【0021】
この実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1はまた、図2に示すように、二枚の基板2の間に、例えば基板2よりも薄い厚さを持つ金属板としてのステンレス鋼板からなる段差調整板3を介挿されて具えており、この段差調整板3は、基板2の環状ビード2bの内側の位置である各シリンダー孔2aの内周縁位置から、少なくとも後述の突起の部分で、上記シリンダーブロックの冷却水ジャケットまたは冷却水孔の位置まで延在して、互いに結合した三つの輪状をなしている。
【0022】
そしてこの段差調整板3は、図4に示すように、外周縁から外方へ突出する複数(図では下側の基板2の各シリンダー孔2aに対しその周囲の四つの掛合孔2hに対応して四つずつ)の突起3aを有し、各突起3aの先端部には、図5に拡大して示すように、後述する筒状部の立ち上げ前の下孔として、平板状の状態では多角形孔(図示例では5角形孔)3bが、例えばプレス型による打ち抜き加工で形成されている。
【0023】
この実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1では、この段差調整板3の各突起3aの先端部に、例えば円柱状のポンチを持つ金型を用いてその多角形孔3bの周辺部を絞り加工することで、図6に示すように、筒状部3cを立ち上げる。この筒状部3cの高さは、図示のように例えば1mmとすることができる。このように円柱状のポンチを用いても、筒状部3cは断面形状が多角形孔3bに対応する多角形(図示例では5角形)となる。これは、段差調整板3の板材の剛性により筒状部3cが多角形孔3bの各辺から等距離の壁面を持つように形成されるので、断面形状がその多角形孔3bの孔形状に相似する多角形となるためと推定され、これにより、安価な円柱状のポンチで断面多角形の筒状部3cを形成することができる。
【0024】
このようにして各突起3aの筒状部3cを立ち上げた段差調整板3を、図3に示す下側の基板2に重ねて、段差調整板3の三つの輪を基板2の三つのシリンダー孔2aの周辺部に上下に整列させ、各突起3aの筒状部3cを基板2の各掛合孔2h内に貫通させる。次いで、図7に示すように、各突起3aの筒状部3cの、基板2の各掛合孔2hを貫通した部分を、例えば先端部が円錐状のポンチを持つ金型を用いて外側に折り返す。このとき、筒状部3cの先端部は拡径されてクラックを生ずるが、その先端部は元の多角形孔3bの角部であって筒状部3cの各辺を繋ぐ角部に対応する位置で谷状凹部となっているので、その筒状部を外側に折り返すと、各谷状凹部の位置で応力集中により裂けて略均等な大きさの複数の花弁状に開く。
【0025】
この花弁状に開いた筒状部3cをさらに、図2に示すように、例えば先端部が平坦なポンチを持つ金型を用いて平坦に潰す。これにより筒状部3cは、図8に示すように、略均等な大きさの複数の花弁状に開いた状態で潰れ、各花弁状部分が充分な大きさとなって基板2と掛合する。
【0026】
このようにし下側の基板2と各突起3aの筒状部3cを介して掛合した段差調整板3を、図2に示すように、上側の基板2と重ね合わせて、上下の基板2の三つのシリンダー孔2aを上下に整列させ、さらに上下の基板2の互いに整列するグロメット孔2gに挿通された図示しない通常のグロメットが加締められて、二枚の基板2とそれらの間に位置する段差調整板3とが互いに位置決めされている。なお、グロメット孔2gは、上記エンジンのシリンダーブロックとシリンダーヘッドとの間の位置から外方に外れており、それゆえ上記グロメットは、上記エンジンのシリンダーブロックとシリンダーヘッドとのデッキ面間に挟まれてビード2b,2dの面圧を低下させることはない。
【0027】
図9は、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの他の一実施例を示す断面図であり、この実施例は、環状ビード2bおよび外周ビード2dの突出方向を先の実施例と異ならせて互いに向き合わせている点のみ、先の実施例と異なっており、他の点では先の実施例と同一の構成を具えている。
【0028】
かかる二種類の実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1にあっては何れも、二枚の基板2の間に位置する段差調整板3の段差T-tによって基板2の環状ビード2bと外周ビード2dとの段差ひいては環状ビード2bと外周ビード2dとの面圧バランスを調整する。
【0029】
従って上記二種類の実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1によれば何れも、段差調整板3によって安価かつ容易に、基板2の環状ビード2bと外周ビード2dとの段差ひいては環状ビード2bの面圧を高め、環状ビード2bを全圧縮することができる。
【0030】
また、上記二種類の実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1によれば何れも、段差調整板3の突起3aの、多角形孔3bの周辺部を筒状に立ち上げて形成した筒状部3cを外側に折り返して潰していることから、筒状部3cの少なくとも先端部が略均等な大きさの複数の花弁状に開いた状態で潰れ、各花弁状部分が充分な大きさとなって、基板2への強固な掛合状態をもたらすと同時に段差調整板3への強固な結合状態を維持するので、シリンダーヘッドとシリンダーブロックとの加熱および冷却の繰返しによってそれらのデッキ面間にフレッチング(デッキ面に平行な相対移動)が生じても、段差調整板3が基板2から外れるのを防止することができる。
【0031】
しかも、上記二種類の実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1によれば何れも、筒状部3cを貫通させて潰す掛合孔2hを、基板2の環状ビード2bの外側周辺部に、シリンダーヘッドの冷却水孔またはシリンダーブロックの冷却水ジャケットもしくは冷却水孔に対応させて設けていることから、その筒状部3cを外側に折り返して潰した部分をシリンダーヘッドとシリンダーブロックとのデッキ面間に挟まれないように冷却水孔や冷却水ジャケットに逃がし得るので、その折り返して潰した部分が環状ビード2bの面圧上昇を妨げるのを防止することができる。
【0032】
さらに、上記二種類の実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1によれば何れも、突起3aの筒状部3cの断面形状が5角形であるので、複数の花弁状に開いた状態で潰れた筒状部3cの各花弁状部分が、基板2への強固な掛合状態をもたらすと同時に段差調整板3への強固な結合状態を維持するのに充分な大きさに確実になる。
【0033】
さらに、上記二種類の実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1によれば何れも、突起3aの多角形孔3bの形状を5角形としており、筒状部3cは円柱状のポンチで筒状に立ち上げて形成する処、その5角形孔の周辺部を円柱状のポンチで筒状に立ち上げても筒状部3cの断面形状は段差調整板3の板材の剛性により孔形状に相似する多角形となるので、安価な円柱状のポンチで断面多角形の筒状部3cを形成することができる。
【0034】
さらに、上記二種類の実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1によれば何れも、基板2に形成して突起3aを掛合させる掛合孔2hの数は、各シリンダーボアに対して4個としているので、基板2への段差調整板3の掛合力を充分に高めて、シリンダーヘッドとシリンダーブロックとのデッキ面間にフレッチングが生じても、段差調整板3が基板2から外れるのを確実に防止することができる。
【0035】
図10は、上記実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1と段差調整板3の各突起の形状のみ異なる一比較例の、その突起3dを拡大して示す平面図であり、この比較例では、各突起3dは舌状をなし、基板2には、図11に示すように長方形状の掛合孔2iが形成され、図12に示すように、その段差調整板3の、例えば2.0mm〜2.5mmの高さの突起3dの先端部が、基板2の掛合孔2iを貫通して反対側に突出する。この掛合孔2iを貫通した先端部を外側に折り返して潰すことで、図13に示すように、各突起3dを基板2に掛合させている。
【0036】
しかしながらこの比較例では、図14に示すように、段差調製板3を、例えば在庫として、あるいはシリンダーヘッド用メタルガスケット1の製造工程で積み重ねて置くと、直角に曲げて立ち上げた突起3dが斜めに曲ってしまい、基板2への組み付け時に手直しが必要で工数が嵩むという問題がある。
【0037】
一方、上記二種類の実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1によれば何れも、段差調製板3を、例えば在庫として、あるいはシリンダーヘッド用メタルガスケット1の製造工程で積み重ねて置いても、立ち上げたのが筒状部3cゆえ斜めに曲ってしまうことがないので、基板2への組み付け時に手直しが必要で工数が嵩むということがない。
【0038】
さらに図16は、上記実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1と段差調整板3の各突起3aの下孔の形状のみ異なる一比較例の、外側に折り返して潰した筒状部3eを拡大して示す平面図であり、この比較例では、段差調整板3の各突起3aの下孔の形状を円形とし、その下孔の周辺部を、円柱状のポンチを持つ金型で円筒状に立ち上げて円筒状の筒状部3eを形成し、その筒状部3eを、基板2の掛合孔2hに貫通させた後、その貫通した部分を外側に折り返して潰しているが、図示のように、クラック3fが何処で発生するかわからず、クラック3f同士の間隔が小さいと、基板2への折り返し部分の掛合力が低下する一方、折り返し部分が段差調整板3から欠落することがあり、欠落した部分は、段差調整板3と基板2の間に入り込んだり、金型に残ったままになって基板2のビード部を傷つけたりしてシールの不具合を発生させる恐れがある。
【0039】
一方、上記二種類の実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1によれば何れも、上述のように筒状部3cの少なくとも先端部が略均等な大きさの複数の花弁状に開いた状態で潰れ、各花弁状部分が充分な大きさとなるので、基板2への強固な掛合状態をもたらすと同時に段差調整板3への強固な結合状態を維持することができる。
【0040】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、例えば各突起3aの多角形孔3bの形状を4角形または6角形としても良く、また掛合孔2hを上側の基板2に形成してそこに段差調整板3の筒状部3cを掛合させるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
かくしてこの発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットによれば、二枚の基板の間に介挿する段差調整板に複数の突起を設け、それらの突起の多角形孔の周辺部を筒状に立ち上げて形成した筒状部を、二枚の基板の少なくとも一方の、環状ビードの外側周辺部にシリンダーヘッドの冷却水孔またはシリンダーブロックの冷却水ジャケットもしくは冷却水孔に対応させて設けた掛合孔に貫通させて、その貫通した部分を外側に折り返して潰すことで、各突起を基板に掛合させているので、段差調整板によって安価かつ容易に、基板の環状ビードと外周ビードとの段差ひいては環状ビードの面圧を高めることができる。
【0042】
また、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットによれば、段差調整板の突起の多角形孔の周辺部を筒状に立ち上げて形成した筒状部を外側に折り返して潰していることから、筒状部の少なくとも先端部が元の多角形孔の多角形の各角部に対応する位置で谷状凹部となり、その筒状部を外側に折り返して潰すと、各谷状凹部の位置で応力集中により裂けて略均等な大きさの複数の花弁状に開いた状態で潰れ、各花弁状部分が充分な大きさとなって、基板への強固な掛合状態をもたらすと同時に段差調整板への強固な結合状態を維持するので、シリンダーヘッドとシリンダーブロックとの加熱および冷却の繰返しによってそれらのデッキ面間にフレッチング(デッキ面に平行な相対移動)が生じても、段差調整板が基板から外れるのを防止することができる。
【0043】
しかも、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットによれば、筒状部を外側に折り返して潰す掛合孔を、基板の環状ビードの外側周辺部に、シリンダーヘッドの冷却水孔またはシリンダーブロックの冷却水ジャケットもしくは冷却水孔に対応させて設けていることから、その筒状部を外側に折り返して潰した部分をシリンダーヘッドとシリンダーブロックとのデッキ面間に挟まれないように冷却水孔や冷却水ジャケットに逃がし得るので、その折り返して潰した部分が環状ビードの面圧上昇を妨げるのを防止することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 シリンダーヘッド用メタルガスケット
2 基板
2a シリンダー孔
2b 環状ビード
2c 冷却水孔
2d 外周ビード
2e 潤滑油孔
2f ボルト孔
2g グロメット孔
2h 掛合孔
2i 掛合孔
3 段差調整板
3a 突起
3b 多角形孔
3c 筒状部
3d 爪状突起
3e 筒状部
3f クラック
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関のシリンダーブロックとシリンダーヘッドとの間に介挿されるシリンダーヘッド用メタルガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関では、シリンダーブロックとシリンダーヘッドとの接合面にメタルガスケットを介在させ、そのメタルガスケットをヘッドボルトで締付けることによって、燃焼ガス、冷却水および潤滑油のシールをしている。特に、シリンダー孔のシールは重要であり、この部分のシールが不充分であると、燃焼ガスが隣り合うシリンダー同士で流通して、エンジン出力が低下したり、洩れた燃焼ガスが、シリンダー孔を円周状に取り囲む冷却水孔に流入したりする結果、オーバーヒート等の不具合を発生させ、最悪の場合、エンジンの焼付き現象までに至る。
【0003】
上記現象を回避する為に、メタルガスケットを形成する弾性金属板にシリンダー孔を囲繞するように環状ビードを設けたメタルガスケットが、例えば特許文献1や特許文献2から知られており、このシリンダーヘッド用メタルガスケットは、各々金属板からなり、内燃機関のシリンダーブロックの各シリンダーボアに対応して形成されたシリンダー孔と、前記各シリンダー孔の周囲に形成された山形断面形状の環状ビードと、前記シリンダーブロックの冷却水ジャケットおよびシリンダーヘッドの冷却水孔に対応して前記各環状ビードの外側周辺部に形成された冷却水孔と、前記環状ビードおよび前記冷却水孔を全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状の外周ビードとを有する二枚の基板を具えている。そして、それらの基板の間には、環状ビードの面圧を外周ビードの面圧より高めて環状ビードを全圧縮することによりシリンダーボア内の燃焼ガスに対する環状ビードのシール性を高める段差構造を持つ、金属板からなる副板が介挿されている。
【0004】
しかして特許文献1では、図17に示すように、シリンダーヘッド用メタルガスケット1の、それぞれ鋼板(SUS 0.2t 等)からなる二枚の基板2間に介挿される副板3を、基板2の各シリンダー孔2aの周囲の環状ビード2bと重なる板厚Tのシリンダー孔周辺部3aと、それより外側に位置する板厚tの外方部3bとからなるものとし、それらシリンダー孔周辺部3aを薄鋼板(SUS 0.2t、0.25t、0.3t 等)で、また外方部3bを、鋼板(SUS 0.1t、0.15t、0.2t 等)で構成してT-tが所要の段差になるようにするとともにレーザー溶接で互いに結合することで、上記段差構造を構成している。
【0005】
また特許文献2では、図18に示すように、シリンダーヘッド用メタルガスケット1の、それぞれ鋼板からなる二枚の基板2間に介挿される、単一板厚tの薄鋼板(SUS 0.07t、0.1t、0.12t、0.15t 等)からなる副板3の、基板2の各シリンダー孔2aの周囲の環状ビード2bと重なるシリンダー孔周辺部3aに折り返し曲げ加工により厚さT(=2t)の折り重ね部3cを形成してT-t(=t)が所要の段差になるようにすることで、上記段差構造を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−243531号公報
【特許文献2】特開平8−121597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前者の従来の段差構造では、所定のガスケット形状とするためのシリンダー孔周辺部3aと外方部3bとの位置合せが難しいため、ガスケット形状に求められている高い精度を満たすには専用の位置合せ治具と高精度のレーザー溶接装置が不可欠となり、ガスケットが高価なものになってしまうという問題があった。
【0008】
また、後者の従来の段差構造では、単一板厚の薄鋼板を折り返し曲げ加工することから、ガスケットを安価にはできるものの、折り返し曲げ加工は絞り加工を用いて行うため、折り重ね部3cの形状の自由度が低く、割れの発生なしに充分広い半径方向幅の折り重ね部3cを形成するのは特に薄鋼板では困難であるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットは、各々弾性金属板からなり、内燃機関のシリンダーヘッドを組み付けられるシリンダーブロックの各シリンダーボアに対応して形成されたシリンダー孔と、前記各シリンダー孔の周囲に形成された山形断面形状の環状ビードと、前記シリンダーヘッドの冷却水孔および、前記シリンダーブロックの冷却水ジャケットまたは冷却水孔に対応して前記各環状ビードの外側周辺部に形成された冷却水孔と、前記環状ビードおよび前記冷却水孔を全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状の外周ビードとを有する二枚の基板を具え、前記二枚の基板の前記環状ビードが、互いに当該ガスケットの厚さ方向に整列して位置するシリンダーヘッド用メタルガスケットにおいて、前記二枚の基板の少なくとも一方の前記環状ビードの外側周辺部に、前記シリンダーヘッドの冷却水孔または、前記シリンダーブロックの冷却水ジャケットもしくは冷却水孔に対応させて複数の掛合孔を形成し、金属板からなり、前記基板の環状ビードの内側の位置から前記冷却水ジャケットまたは冷却水孔の位置まで延在する段差調整板に複数の突起を設け、前記突起の多角形孔の周辺部を筒状に立ち上げて形成した筒状部の、前記基板の前記掛合孔を貫通した部分を外側に折り返して潰すことで、前記各突起を前記基板に掛合させ、前記段差調整板を前記二枚の基板の間に介挿したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットによれば、二枚の基板の間に介挿する段差調整板に複数の突起を設け、それらの突起の筒状部を、二枚の基板の少なくとも一方の、環状ビードの外側周辺部にシリンダーヘッドの冷却水孔またはシリンダーブロックの冷却水ジャケットもしくは冷却水孔に対応させて設けた掛合孔に貫通させて、その貫通した部分を外側に折り返して潰すことで、各突起を基板に掛合させているので、段差調整板によって安価かつ容易に、基板の環状ビードと外周ビードとの段差ひいては環状ビードの面圧を高めることができる。
【0011】
また、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットによれば、段差調整板の突起の、多角形孔の周辺部を筒状に立ち上げて形成した筒状部を外側に折り返して潰していることから、筒状部の少なくとも先端部が元の多角形孔の多角形の各角部に対応する位置で谷状凹部となり、その筒状部を外側に折り返して潰すと、各谷状凹部の位置で応力集中により裂けて略均等な大きさの複数の花弁状に開いた状態で潰れ、各花弁状部分が充分な大きさとなって、基板への強固な掛合状態をもたらすと同時に段差調整板への強固な結合状態を維持するので、シリンダーヘッドとシリンダーブロックとの加熱および冷却の繰返しによってそれらのデッキ面間にフレッチング(デッキ面に平行な相対移動)が生じても、段差調整板が基板から外れるのを防止することができる。
【0012】
しかも、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットによれば、筒状部を貫通させて潰す掛合孔を、基板の環状ビードの外側周辺部に、シリンダーヘッドの冷却水孔またはシリンダーブロックの冷却水ジャケットもしくは冷却水孔に対応させて設けていることから、その筒状部を外側に折り返して潰した部分をシリンダーヘッドとシリンダーブロックとのデッキ面間に挟まれないように冷却水孔や冷却水ジャケットに逃がし得るので、その折り返して潰した部分が環状ビードの面圧上昇を妨げるのを防止することができる。
【0013】
なお、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットにおいては、前記突起の前記筒状部の断面形状は4角形、5角形または6角形であると好ましい。4角形、5角形または6角形であると、複数の花弁状に開いた状態で潰れた筒状部の各花弁状部分が、基板への強固な掛合状態をもたらすと同時に段差調整板への強固な結合状態を維持するのに充分な大きさに確実になるからである。
【0014】
また、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットにおいては、前記突起の前記多角形孔の形状は4角形、5角形または6角形であり、前記筒状部は円柱状のポンチで筒状に立ち上げて形成すると好ましい。突起の孔形状が4角形、5角形または6角形であれば、その周辺部を円柱状のポンチで筒状に立ち上げても筒状部の断面形状は段差調整板の板材の剛性により孔形状に相似する多角形となるので、安価な円柱状のポンチで断面多角形の筒状部を形成することができる。
【0015】
さらに、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットにおいては、前記基板に形成して前記突起を掛合させる前記掛合孔の数は、各シリンダーボアに対して2個〜5個とすると好ましい。掛合孔の数を各シリンダーボアに対して2個〜5個とすれば、基板への段差調整板の掛合力を充分に高めて、シリンダーヘッドとシリンダーブロックとのデッキ面間にフレッチングが生じても、段差調整板が基板から外れるのを確実に防止することができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの一実施例の全体を示す平面図である。
【図2】上記実施例のメタルガスケットの、図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】上記実施例のメタルガスケットの下側の基板を示す平面図である。
【図4】上記実施例のメタルガスケットの段差調整板を示す平面図である。
【図5】上記実施例のメタルガスケットの段差調整板の突起を、筒状部を立ち上げる前の状態で示す平面図である。
【図6】上記実施例のメタルガスケットの段差調整板の突起を、筒状部を立ち上げた状態で示す断面図である。
【図7】上記実施例のメタルガスケットの段差調整板の突起を、筒状部を下側の基板の掛合孔に貫通させて外側に折り返した状態で示す断面図である。
【図8】上記実施例のメタルガスケットの段差調整板の突起を、筒状部を下側の基板の掛合孔に貫通させ、外側に折り返して潰した状態で示す平面図である。
【図9】この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの他の一実施例の、図2と同様に位置での断面図である。
【図10】一比較例のメタルガスケットの段差調整板の突起を、先端部を立ち上げた状態で示す平面図である。
【図11】上記比較例のメタルガスケットの下側の基板の掛合孔を示す平面図である。
【図12】上記比較例のメタルガスケットの段差調整板の突起を、先端部を基板の掛合孔に貫通させた状態で示す断面図である。
【図13】上記比較例のメタルガスケットの段差調整板の突起を、先端部を基板の掛合孔に貫通させ、折り返して潰した状態で示す断面図である。
【図14】上記比較例のメタルガスケットの段差調整板を複数枚重ねた状態で示す断面図である。
【図15】上記実施例のメタルガスケットの段差調整板を複数枚重ねた状態で示す断面図である。
【図16】他の一比較例のメタルガスケットの段差調整板の突起を、その突起の円形孔の周辺部を立ち上げた筒状部を外側に折り返して潰した状態で示す平面図である。
【図17】従来のシリンダーヘッド用メタルガスケットの一例の、図2と同様の位置での断面図である。
【図18】従来のシリンダーヘッド用メタルガスケットの他の一例の、図2と同様の位置での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、この発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの一実施例の全体を示す平面図、図2は、その実施例のメタルガスケットの、図1のA−A線に沿う断面図、図3は、上記実施例のメタルガスケットの下側の基板を示す平面図、図4は、上記実施例のメタルガスケットの段差調整板を示す平面図、図5は、上記実施例のメタルガスケットの段差調整板の突起を、筒状部を立ち上げる前の状態で示す平面図であり、図中符号1はメタルガスケット、2は基板、3は段差調整板をそれぞれ示す。
【0018】
この実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1は、段差調製板を含めて金属板を三枚積層する積層型のもので、図2に示すように、各々弾性金属板としてのステンレス鋼板からなる二枚の基板2を具えており、これらの基板2は図1および図3に示すように各々、当該メタルガスケット1が組み込まれる内燃機関としてのエンジンの、シリンダーヘッドを組み付けられるシリンダーブロックの各シリンダーボアに対応して形成された複数(図では三つ)のシリンダー孔2aと、各シリンダー孔2aの周囲に形成された山形断面形状の環状ビード2bと、上記シリンダーブロックの冷却水ジャケット(オープンデッキ型の場合)または冷却水孔(クローズドデッキ型の場合)、および上記シリンダーヘッドの冷却水孔に対応して各環状ビード2bの外側周辺部に形成された多くの冷却水孔2cと、環状ビード2bおよび冷却水孔2cを全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状の外周ビード2dとを有している。
【0019】
二枚の基板2はさらに各々、その外周ビード2dの外側に、複数の潤滑油孔2eおよび、シリンダーヘッドをシリンダーブロックに締め付け固定するためのヘッドボルトを各々挿通される複数(図では八つ)のボルト孔2fと、グロメット孔2gとを有しており、それら二枚の基板2の環状ビード2bは、互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに、互いに逆向きになるように各々内向きに突出し、二枚の基板2の外周ビード2dも、互いに当該ガスケット1の厚さ方向に整列して位置するとともに、互いに逆向きになるように各々内向きに突出している。
【0020】
加えて、前記シリンダーブロックのデッキ面に対向する図2では下側の基板2は、上記シリンダーブロックの冷却水ジャケット(オープンデッキ型の場合)または冷却水孔(クローズドデッキ型の場合)、および上記シリンダーヘッドの冷却水孔の位置に対応して、各シリンダー孔2aの周囲の環状ビード2bの外側周辺部に、互いに周方向に適宜離間して図示例では四つずつ形成された掛合孔2hを有している。
【0021】
この実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1はまた、図2に示すように、二枚の基板2の間に、例えば基板2よりも薄い厚さを持つ金属板としてのステンレス鋼板からなる段差調整板3を介挿されて具えており、この段差調整板3は、基板2の環状ビード2bの内側の位置である各シリンダー孔2aの内周縁位置から、少なくとも後述の突起の部分で、上記シリンダーブロックの冷却水ジャケットまたは冷却水孔の位置まで延在して、互いに結合した三つの輪状をなしている。
【0022】
そしてこの段差調整板3は、図4に示すように、外周縁から外方へ突出する複数(図では下側の基板2の各シリンダー孔2aに対しその周囲の四つの掛合孔2hに対応して四つずつ)の突起3aを有し、各突起3aの先端部には、図5に拡大して示すように、後述する筒状部の立ち上げ前の下孔として、平板状の状態では多角形孔(図示例では5角形孔)3bが、例えばプレス型による打ち抜き加工で形成されている。
【0023】
この実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1では、この段差調整板3の各突起3aの先端部に、例えば円柱状のポンチを持つ金型を用いてその多角形孔3bの周辺部を絞り加工することで、図6に示すように、筒状部3cを立ち上げる。この筒状部3cの高さは、図示のように例えば1mmとすることができる。このように円柱状のポンチを用いても、筒状部3cは断面形状が多角形孔3bに対応する多角形(図示例では5角形)となる。これは、段差調整板3の板材の剛性により筒状部3cが多角形孔3bの各辺から等距離の壁面を持つように形成されるので、断面形状がその多角形孔3bの孔形状に相似する多角形となるためと推定され、これにより、安価な円柱状のポンチで断面多角形の筒状部3cを形成することができる。
【0024】
このようにして各突起3aの筒状部3cを立ち上げた段差調整板3を、図3に示す下側の基板2に重ねて、段差調整板3の三つの輪を基板2の三つのシリンダー孔2aの周辺部に上下に整列させ、各突起3aの筒状部3cを基板2の各掛合孔2h内に貫通させる。次いで、図7に示すように、各突起3aの筒状部3cの、基板2の各掛合孔2hを貫通した部分を、例えば先端部が円錐状のポンチを持つ金型を用いて外側に折り返す。このとき、筒状部3cの先端部は拡径されてクラックを生ずるが、その先端部は元の多角形孔3bの角部であって筒状部3cの各辺を繋ぐ角部に対応する位置で谷状凹部となっているので、その筒状部を外側に折り返すと、各谷状凹部の位置で応力集中により裂けて略均等な大きさの複数の花弁状に開く。
【0025】
この花弁状に開いた筒状部3cをさらに、図2に示すように、例えば先端部が平坦なポンチを持つ金型を用いて平坦に潰す。これにより筒状部3cは、図8に示すように、略均等な大きさの複数の花弁状に開いた状態で潰れ、各花弁状部分が充分な大きさとなって基板2と掛合する。
【0026】
このようにし下側の基板2と各突起3aの筒状部3cを介して掛合した段差調整板3を、図2に示すように、上側の基板2と重ね合わせて、上下の基板2の三つのシリンダー孔2aを上下に整列させ、さらに上下の基板2の互いに整列するグロメット孔2gに挿通された図示しない通常のグロメットが加締められて、二枚の基板2とそれらの間に位置する段差調整板3とが互いに位置決めされている。なお、グロメット孔2gは、上記エンジンのシリンダーブロックとシリンダーヘッドとの間の位置から外方に外れており、それゆえ上記グロメットは、上記エンジンのシリンダーブロックとシリンダーヘッドとのデッキ面間に挟まれてビード2b,2dの面圧を低下させることはない。
【0027】
図9は、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットの他の一実施例を示す断面図であり、この実施例は、環状ビード2bおよび外周ビード2dの突出方向を先の実施例と異ならせて互いに向き合わせている点のみ、先の実施例と異なっており、他の点では先の実施例と同一の構成を具えている。
【0028】
かかる二種類の実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1にあっては何れも、二枚の基板2の間に位置する段差調整板3の段差T-tによって基板2の環状ビード2bと外周ビード2dとの段差ひいては環状ビード2bと外周ビード2dとの面圧バランスを調整する。
【0029】
従って上記二種類の実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1によれば何れも、段差調整板3によって安価かつ容易に、基板2の環状ビード2bと外周ビード2dとの段差ひいては環状ビード2bの面圧を高め、環状ビード2bを全圧縮することができる。
【0030】
また、上記二種類の実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1によれば何れも、段差調整板3の突起3aの、多角形孔3bの周辺部を筒状に立ち上げて形成した筒状部3cを外側に折り返して潰していることから、筒状部3cの少なくとも先端部が略均等な大きさの複数の花弁状に開いた状態で潰れ、各花弁状部分が充分な大きさとなって、基板2への強固な掛合状態をもたらすと同時に段差調整板3への強固な結合状態を維持するので、シリンダーヘッドとシリンダーブロックとの加熱および冷却の繰返しによってそれらのデッキ面間にフレッチング(デッキ面に平行な相対移動)が生じても、段差調整板3が基板2から外れるのを防止することができる。
【0031】
しかも、上記二種類の実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1によれば何れも、筒状部3cを貫通させて潰す掛合孔2hを、基板2の環状ビード2bの外側周辺部に、シリンダーヘッドの冷却水孔またはシリンダーブロックの冷却水ジャケットもしくは冷却水孔に対応させて設けていることから、その筒状部3cを外側に折り返して潰した部分をシリンダーヘッドとシリンダーブロックとのデッキ面間に挟まれないように冷却水孔や冷却水ジャケットに逃がし得るので、その折り返して潰した部分が環状ビード2bの面圧上昇を妨げるのを防止することができる。
【0032】
さらに、上記二種類の実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1によれば何れも、突起3aの筒状部3cの断面形状が5角形であるので、複数の花弁状に開いた状態で潰れた筒状部3cの各花弁状部分が、基板2への強固な掛合状態をもたらすと同時に段差調整板3への強固な結合状態を維持するのに充分な大きさに確実になる。
【0033】
さらに、上記二種類の実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1によれば何れも、突起3aの多角形孔3bの形状を5角形としており、筒状部3cは円柱状のポンチで筒状に立ち上げて形成する処、その5角形孔の周辺部を円柱状のポンチで筒状に立ち上げても筒状部3cの断面形状は段差調整板3の板材の剛性により孔形状に相似する多角形となるので、安価な円柱状のポンチで断面多角形の筒状部3cを形成することができる。
【0034】
さらに、上記二種類の実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1によれば何れも、基板2に形成して突起3aを掛合させる掛合孔2hの数は、各シリンダーボアに対して4個としているので、基板2への段差調整板3の掛合力を充分に高めて、シリンダーヘッドとシリンダーブロックとのデッキ面間にフレッチングが生じても、段差調整板3が基板2から外れるのを確実に防止することができる。
【0035】
図10は、上記実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1と段差調整板3の各突起の形状のみ異なる一比較例の、その突起3dを拡大して示す平面図であり、この比較例では、各突起3dは舌状をなし、基板2には、図11に示すように長方形状の掛合孔2iが形成され、図12に示すように、その段差調整板3の、例えば2.0mm〜2.5mmの高さの突起3dの先端部が、基板2の掛合孔2iを貫通して反対側に突出する。この掛合孔2iを貫通した先端部を外側に折り返して潰すことで、図13に示すように、各突起3dを基板2に掛合させている。
【0036】
しかしながらこの比較例では、図14に示すように、段差調製板3を、例えば在庫として、あるいはシリンダーヘッド用メタルガスケット1の製造工程で積み重ねて置くと、直角に曲げて立ち上げた突起3dが斜めに曲ってしまい、基板2への組み付け時に手直しが必要で工数が嵩むという問題がある。
【0037】
一方、上記二種類の実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1によれば何れも、段差調製板3を、例えば在庫として、あるいはシリンダーヘッド用メタルガスケット1の製造工程で積み重ねて置いても、立ち上げたのが筒状部3cゆえ斜めに曲ってしまうことがないので、基板2への組み付け時に手直しが必要で工数が嵩むということがない。
【0038】
さらに図16は、上記実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1と段差調整板3の各突起3aの下孔の形状のみ異なる一比較例の、外側に折り返して潰した筒状部3eを拡大して示す平面図であり、この比較例では、段差調整板3の各突起3aの下孔の形状を円形とし、その下孔の周辺部を、円柱状のポンチを持つ金型で円筒状に立ち上げて円筒状の筒状部3eを形成し、その筒状部3eを、基板2の掛合孔2hに貫通させた後、その貫通した部分を外側に折り返して潰しているが、図示のように、クラック3fが何処で発生するかわからず、クラック3f同士の間隔が小さいと、基板2への折り返し部分の掛合力が低下する一方、折り返し部分が段差調整板3から欠落することがあり、欠落した部分は、段差調整板3と基板2の間に入り込んだり、金型に残ったままになって基板2のビード部を傷つけたりしてシールの不具合を発生させる恐れがある。
【0039】
一方、上記二種類の実施例のシリンダーヘッド用メタルガスケット1によれば何れも、上述のように筒状部3cの少なくとも先端部が略均等な大きさの複数の花弁状に開いた状態で潰れ、各花弁状部分が充分な大きさとなるので、基板2への強固な掛合状態をもたらすと同時に段差調整板3への強固な結合状態を維持することができる。
【0040】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、例えば各突起3aの多角形孔3bの形状を4角形または6角形としても良く、また掛合孔2hを上側の基板2に形成してそこに段差調整板3の筒状部3cを掛合させるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
かくしてこの発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットによれば、二枚の基板の間に介挿する段差調整板に複数の突起を設け、それらの突起の多角形孔の周辺部を筒状に立ち上げて形成した筒状部を、二枚の基板の少なくとも一方の、環状ビードの外側周辺部にシリンダーヘッドの冷却水孔またはシリンダーブロックの冷却水ジャケットもしくは冷却水孔に対応させて設けた掛合孔に貫通させて、その貫通した部分を外側に折り返して潰すことで、各突起を基板に掛合させているので、段差調整板によって安価かつ容易に、基板の環状ビードと外周ビードとの段差ひいては環状ビードの面圧を高めることができる。
【0042】
また、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットによれば、段差調整板の突起の多角形孔の周辺部を筒状に立ち上げて形成した筒状部を外側に折り返して潰していることから、筒状部の少なくとも先端部が元の多角形孔の多角形の各角部に対応する位置で谷状凹部となり、その筒状部を外側に折り返して潰すと、各谷状凹部の位置で応力集中により裂けて略均等な大きさの複数の花弁状に開いた状態で潰れ、各花弁状部分が充分な大きさとなって、基板への強固な掛合状態をもたらすと同時に段差調整板への強固な結合状態を維持するので、シリンダーヘッドとシリンダーブロックとの加熱および冷却の繰返しによってそれらのデッキ面間にフレッチング(デッキ面に平行な相対移動)が生じても、段差調整板が基板から外れるのを防止することができる。
【0043】
しかも、この発明のシリンダーヘッド用メタルガスケットによれば、筒状部を外側に折り返して潰す掛合孔を、基板の環状ビードの外側周辺部に、シリンダーヘッドの冷却水孔またはシリンダーブロックの冷却水ジャケットもしくは冷却水孔に対応させて設けていることから、その筒状部を外側に折り返して潰した部分をシリンダーヘッドとシリンダーブロックとのデッキ面間に挟まれないように冷却水孔や冷却水ジャケットに逃がし得るので、その折り返して潰した部分が環状ビードの面圧上昇を妨げるのを防止することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 シリンダーヘッド用メタルガスケット
2 基板
2a シリンダー孔
2b 環状ビード
2c 冷却水孔
2d 外周ビード
2e 潤滑油孔
2f ボルト孔
2g グロメット孔
2h 掛合孔
2i 掛合孔
3 段差調整板
3a 突起
3b 多角形孔
3c 筒状部
3d 爪状突起
3e 筒状部
3f クラック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々弾性金属板からなり、内燃機関のシリンダーヘッドを組み付けられるシリンダーブロックの各シリンダーボアに対応して形成されたシリンダー孔(2a)と、前記各シリンダー孔の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード(2b)と、前記シリンダーヘッドの冷却水孔および、前記シリンダーブロックの冷却水ジャケットまたは冷却水孔に対応して前記各環状ビードの外側周辺部に形成された冷却水孔(2c)と、前記環状ビードおよび前記冷却水孔を全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状の外周ビード(2d)とを有する二枚の基板(2)を具え、前記二枚の基板(2)の前記環状ビード(2b)が、互いに当該ガスケットの厚さ方向に整列して位置するシリンダーヘッド用メタルガスケット(1)において、
前記二枚の基板(2)の少なくとも一方の前記環状ビードの外側周辺部に、前記シリンダーヘッドの冷却水孔または、前記シリンダーブロックの冷却水ジャケットもしくは冷却水孔に対応させて複数の掛合孔(2e)を形成し、
金属板からなり、前記基板(2)の環状ビード(2b)の内側の位置から前記冷却水ジャケットまたは冷却水孔の位置まで延在する段差調整板(3)に複数の突起(3a)を設け、
前記突起(3a)の多角形孔(3b)の周辺部を筒状に立ち上げて形成した筒状部(3c)の、前記基板(2)の前記掛合孔(2e)を貫通した部分を外側に折り返して潰すことで、前記各突起(3a)を前記基板(2)に掛合させ、
前記段差調整板(3)を前記二枚の基板(2)の間に介挿したことを特徴とする、シリンダーヘッド用メタルガスケット。
【請求項2】
前記突起(3a)の前記筒状部(3c)の断面形状は4角形、5角形または6角形であることを特徴とする、請求項1記載のシリンダーヘッド用メタルガスケット。
【請求項3】
前記突起(3a)の前記多角形孔(3b)の断面形状は4角形、5角形または6角形であり、
前記筒状部(3c)は円柱状のポンチで筒状に立ち上げて形成することを特徴とする、請求項1記載のシリンダーヘッド用メタルガスケット。
【請求項4】
前記基板(2)に形成して前記突起(3a)を掛合させる前記掛合孔(2e)の数は、各シリンダーボアに対して2個〜5個とすることを特徴とする、請求項1から3までの何れか記載のシリンダーヘッド用メタルガスケット。
【請求項1】
各々弾性金属板からなり、内燃機関のシリンダーヘッドを組み付けられるシリンダーブロックの各シリンダーボアに対応して形成されたシリンダー孔(2a)と、前記各シリンダー孔の周囲に形成された山形断面形状の環状ビード(2b)と、前記シリンダーヘッドの冷却水孔および、前記シリンダーブロックの冷却水ジャケットまたは冷却水孔に対応して前記各環状ビードの外側周辺部に形成された冷却水孔(2c)と、前記環状ビードおよび前記冷却水孔を全体的に囲繞する位置に形成された片斜面形断面形状の外周ビード(2d)とを有する二枚の基板(2)を具え、前記二枚の基板(2)の前記環状ビード(2b)が、互いに当該ガスケットの厚さ方向に整列して位置するシリンダーヘッド用メタルガスケット(1)において、
前記二枚の基板(2)の少なくとも一方の前記環状ビードの外側周辺部に、前記シリンダーヘッドの冷却水孔または、前記シリンダーブロックの冷却水ジャケットもしくは冷却水孔に対応させて複数の掛合孔(2e)を形成し、
金属板からなり、前記基板(2)の環状ビード(2b)の内側の位置から前記冷却水ジャケットまたは冷却水孔の位置まで延在する段差調整板(3)に複数の突起(3a)を設け、
前記突起(3a)の多角形孔(3b)の周辺部を筒状に立ち上げて形成した筒状部(3c)の、前記基板(2)の前記掛合孔(2e)を貫通した部分を外側に折り返して潰すことで、前記各突起(3a)を前記基板(2)に掛合させ、
前記段差調整板(3)を前記二枚の基板(2)の間に介挿したことを特徴とする、シリンダーヘッド用メタルガスケット。
【請求項2】
前記突起(3a)の前記筒状部(3c)の断面形状は4角形、5角形または6角形であることを特徴とする、請求項1記載のシリンダーヘッド用メタルガスケット。
【請求項3】
前記突起(3a)の前記多角形孔(3b)の断面形状は4角形、5角形または6角形であり、
前記筒状部(3c)は円柱状のポンチで筒状に立ち上げて形成することを特徴とする、請求項1記載のシリンダーヘッド用メタルガスケット。
【請求項4】
前記基板(2)に形成して前記突起(3a)を掛合させる前記掛合孔(2e)の数は、各シリンダーボアに対して2個〜5個とすることを特徴とする、請求項1から3までの何れか記載のシリンダーヘッド用メタルガスケット。
【図1】


【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


【図11】


【図12】


【図13】


【図14】


【図15】


【図16】


【図17】


【図18】




【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


【図11】


【図12】


【図13】


【図14】


【図15】


【図16】


【図17】


【図18】


【公開番号】特開2010−203379(P2010−203379A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51490(P2009−51490)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000230423)日本リークレス工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000230423)日本リークレス工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
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