説明

シリンダ錠の保護装置

【課題】防犯効果をある程度維持しつつ製造コストを低減させることができるシリンダ錠の保護装置を提供する。
【解決手段】シリンダ錠のキー孔Raの上方に設けられるハウジング1と、ハウジング1内で回動することにより閉塞位置と開放位置との間で移動可能とされ、キー孔Raを開閉するシャッター2と、シャッター2が開放位置にあるとき及び閉塞位置にあるとき、当該シャッター2に対して節度を付与する節度手段3と、シャッター2の所定部位に形成された嵌合凹部2aに嵌合しつつ回動させることで、節度手段3による節度が付与された後に当該シャッター2を連れ回し操作可能とされ、開放位置と閉塞位置との間で移動させ得る操作手段6とを具備したシリンダ錠の保護装置において、シャッター2に対する回動の規制が専ら節度手段3によるものとされたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車等に装備されるシリンダ錠の破壊等を防止し得るシリンダ錠の保護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、第三者によるはさみやドライバ等のキー孔への差し込みで二輪車等のシリンダ錠がいたずらされて破壊されるのを防止するために、例えば特許文献1で開示されたシリンダ錠の保護装置が提案されている。かかる保護装置は、キー孔を閉状態とする閉塞位置から当該キー孔を開状態とする開放位置まで回動可能なシャッターと、シャッターを閉塞位置に保持することによりキー孔を閉塞して施錠するマグネット錠と、磁石の磁気によってマグネット錠を解錠するマグネットキーとを具備していた。
【0003】
上記保護装置によれば、車両を駐車させる際、シャッターを閉塞位置にしてキー孔に対する第三者によるいたずら等を防止するとともに、車両のエンジンを始動させる際には、マグネットキーをマグネット錠に嵌合させつつ所定方向に回転操作することにより、当該マグネット錠を解錠させてシャッターを開放位置まで回動させることができ、キー孔にイグニッションキーを挿通可能な状態とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−104426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のシリンダ錠の保護装置においては、シャッターを閉塞位置に保持することによりキー孔を閉塞して施錠するマグネット錠と、磁石の磁気によってマグネット錠を解錠するマグネットキーとを具備していたので、防犯効果を高めることができるものの、製造コストが嵩んでしまうという問題があった。また、使用する地域の実情或いは使用者の意識等によっては、車両の駐車時にシャッターを閉塞位置として当該シャッターにてキー孔を塞ぐものとすれば、ある程度の防犯効果が期待できると考える場合がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、防犯効果をある程度維持しつつ製造コストを低減させることができるシリンダ錠の保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、シリンダ錠のキー孔の上方に設けられるハウジングと、該ハウジング内で回動することにより閉塞位置と開放位置との間で移動可能とされ、前記キー孔を開閉するシャッターと、前記シャッターが開放位置にあるとき及び閉塞位置にあるとき、当該シャッターに対して節度を付与する節度手段と、前記シャッターの所定部位に形成された嵌合凹部に嵌合しつつ回動させることで、前記節度手段による節度が付与された後に当該シャッターを連れ回し操作可能とされ、開放位置と閉塞位置との間で移動させ得る操作手段とを具備したシリンダ錠の保護装置において、前記シャッターに対する回動の規制が専ら前記節度手段によるものとされたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のシリンダ錠の保護装置において、前記嵌合凹部は、多角形又は異形状に形成され、前記操作手段と形状が合致して嵌合可能とされたことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のシリンダ錠の保護装置において、前記節度手段は、前記シャッターが開放位置にあるときよりも閉塞位置にあるときの方が節度が大きく設定されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載のシリンダ錠の保護装置において、前記シャッターは、所定の樹脂材を成形させた樹脂成形品から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、シャッターに対する回動の規制が専ら節度手段によるものとされたので、従来のマグネット錠の如き手段を必要とせず、防犯効果をある程度維持しつつシリンダ錠の保護装置の製造コストを低減させることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、嵌合凹部は、多角形又は異形状に形成され、操作手段と形状が合致して嵌合可能とされたので、汎用の工具等を嵌合凹部に嵌合させるのを困難として第三者がシャッターを容易に開放位置に回動させてしまうのを防止することができ、防犯効果を高めることができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、節度手段は、シャッターが開放位置にあるときよりも閉塞位置にあるときの方が節度が大きく設定されたので、シャッターを閉塞位置に操作する際に必要な操作力を小さくして操作性を向上させることができるとともにシャッターを開放位置に操作する際に必要な操作力を大きくして防犯効果を高めることができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、シャッターは、所定の樹脂材を成形させた樹脂成形品から成るので、製造コストを更に低減させることができるとともに、シャッターをより軽量化させることができ、当該シャッターの回動操作をよりスムーズに行わせて操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るシリンダ錠の保護装置を示す正面図
【図2】(a)図1におけるA−A線断面図(b)同図におけるB−B線断面図
【図3】同シリンダ錠の保護装置におけるシャッターを示す平面図及び裏面図
【図4】同シリンダ錠の保護装置における節度手段を示すための断面図
【図5】同シリンダ錠の保護装置におけるイグニッションキー及び操作手段を示すための模式図
【図6】同シリンダ錠の保護装置における開放位置にあるシャッターを示す模式図
【図7】同シリンダ錠の保護装置における閉塞位置にあるシャッターを示す模式図
【図8】本発明の他の実施形態に係るシリンダ錠の保護装置におけるシャッターの嵌合凹部(八角形)を示す模式図
【図9】本発明の他の実施形態に係るシリンダ錠の保護装置におけるシャッターの嵌合凹部(異形)を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るシリンダ錠の保護装置は、二輪車が具備するシリンダ錠のキー孔上方に設けられ、該キー孔を外側から開閉可能とすることによりシリンダ錠を保護し得るもので、図1〜5に示すように、ケース1a及びカバー1bで構成されるハウジング1と、シャッター2と、コイルスプリング4及びアクションボール5で構成された節度手段3と、操作手段6(図5参照)とから主に構成されている。
【0017】
ケース1aは、ダイカスト成形品から成るものであり、図2に示すように、車両のシリンダ錠Sを挿通し、その内部のロータRに形成されたキー孔Raを上方に臨ませ得る挿通孔1aaが略中央に形成されるとともに、その近傍に平面視で円形状とされた凸部1abが形成されている。凸部1abは、その外周面でシャッター2の凹部2bを回動自在に嵌合し得るよう構成されている。尚、凸部1abと凹部2bとの間にOリング等のシール部材を介装させるのが好ましい。
【0018】
カバー1bは、所定のダイカスト成形品から成り、ケース1aの上面側を覆って該ケース1aとの間に形成される内部空間にシャッター2等シリンダ錠の保護装置の構成部品を収容するためのもので、挿通孔1aaと対応した位置に形成されてイグニッションキーIKのキー部IKa(図5参照)をキー孔Raに挿通させ得る孔1baと、シャッター2の嵌合凹部2aを外部に臨ませ得る孔1bbとが形成されている。
【0019】
シャッター2は、凸部1abを中心としてハウジング1内(ケース1a及びカバー1bの間の空間内)で回動することにより閉塞位置(図7参照)と開放位置(図6参照)との間で移動可能とされ、キー孔Raを開閉するものである。このシャッター2には、上述したように嵌合凹部2aと、凹部2bとが形成されるとともに、節度手段3のアクションボール5が嵌合し得る節度用凹部a、b(図3参照)がそれぞれ形成されている。尚、シャッター2全体の形状は、ハウジング1全体の形状及び大きさや、他の構成要素のレイアウト等により任意に変更することができる。
【0020】
尚、シャッター2は、金属製のものが好ましいが、所定の樹脂材を成形させた樹脂成形品から成るものとしてもよい。この場合、シャッター2の製造コストを更に低減させることができるとともに、シャッター2をより軽量化させることができ、当該シャッター2の回動操作をよりスムーズに行わせて操作性を向上させることができる。また、樹脂成形品から成るシャッター2とした場合、色や質感を金属製のものと類似させるのが防犯上好ましい。
【0021】
節度手段3は、コイルスプリング4で常時シャッター2側に付勢されたアクションボール5で構成されており、シャッター2が開放位置にあるとき及び閉塞位置にあるとき、アクションボール5が節度用凹部a又はbに嵌合することにより当該シャッター2に対して節度を付与するためのものである。即ち、シャッター2が開放位置にあるとき、図6に示すように、アクションボール5の位置に節度用凹部aが位置するよう設定されており、節度用凹部aにアクションボール5が嵌合(図4(a)参照)した状態とされるとともに、シャッター2が閉塞位置にあるとき、図7に示すように、アクションボール5の位置に節度用凹部bが位置するよう設定されており、節度用凹部bにアクションボール5が嵌合(図4(b)参照)した状態とされるのである。
【0022】
ここで、本実施形態に係る節度手段3は、シャッター2が開放位置にあるときよりも閉塞位置にあるときの方が節度が大きく設定されている。具体的には、節度用凹部aの深さt1が節度用凹部bの深さt2より浅く形成(節度用凹部bの深さt2が節度用凹部aの深さt1より深く形成)されており、アクションボール5の嵌合力(節度)がシャッター2の開放位置よりも閉塞位置の方が大きくなるよう設定されているのである。
【0023】
而して、シャッター2を開放位置から閉塞位置に回動操作する際に必要とされる操作力が当該シャッター2を閉塞位置から開放位置に回動操作する際に必要とされる操作力より小さくすることができるので、開放位置から閉塞位置への動作をスムーズに行わせることができる。その一方、シャッター2を閉塞位置から開放位置に回動操作する際に必要とされる操作力が当該シャッター2を開放位置から閉塞位置に回動操作する際に必要とされる操作力より大きくすることができるので、閉塞位置から開放位置への動作に所定の規制を図ることができる。
【0024】
一方、イグニッションキーIKは、キー山が形成されるとともにロータRのキー孔Raに挿通可能とされたキー部IKaと、該キー部IKaの基端側に形成された樹脂製部品から成り操作者が把持可能な把持部IKb(所謂マスコット部)とから主に構成されており、本実施形態においては、当該把持部IKbに一体成形にて操作手段6が形成されている。尚、本実施形態においては、操作手段6がイグニッションキーIKの把持部IKbに一体成形された部位とされているが、当該イグニッションキーIKとは別個のものとしてもよい。
【0025】
かかる操作手段6は、その外輪郭形状がシャッター2の嵌合凹部2aの形状と略等しく形成されており、当該嵌合凹部2aと合致し得るようになっている。即ち、嵌合凹部2aは、多角形(本実施形態においては六角形)に形成され、操作手段6と形状が合致して嵌合可能とされている。そして、シャッター2に形成された嵌合凹部2aに操作手段6を嵌合しつつ回動させることで、節度手段3による節度が付与された後に当該シャッター2を連れ回し操作可能とされ、開放位置と閉塞位置との間で移動させ得るよう構成されている。
【0026】
然るに、シャッター2を開放位置から閉塞位置に回動する場合、操作手段6を嵌合凹部2aに合致させて嵌合し、所定方向(本実施形態においては半時計周り)に回転操作する。これにより、アクションボール5が節度用凹部aから外れてコイルスプリング4の付勢力に抗して下方に移動されるので、これに伴って節度が付与されることとなる。その後、シャッター2が閉塞位置に達すると、図4(b)及び図7に示すように、節度用凹部bにアクションボール5が嵌り込むこととなり、シャッター2を閉塞位置にて比較的強固に維持させ得るものとされる。
【0027】
反対に、シャッター2を閉塞位置から開放位置に回動する場合、操作手段6を嵌合凹部2aに合致させて嵌合し、所定方向と逆方向(本実施形態においては時計周り)に回転操作する。これにより、アクションボール5が節度用凹部bから外れてコイルスプリング4の付勢力に抗して下方に移動されるので、これに伴って節度が付与されることとなる。その後、シャッター2が開放位置に達すると、図4(a)及び図6に示すように、節度用凹部aにアクションボール5が嵌り込むこととなり、シャッター2を開放位置にて比較的弱い力にて維持させ得るものとされる。
【0028】
即ち、シャッター2に対する回動の規制が専ら節度手段3によるものとされており、マグネット錠の如き別個の施錠手段が配設されていないものとされている。マグネット錠の如き別個の施錠手段がなくても、キー孔Raをシャッター2で覆って第三者からのいたずらを回避することができるとともに、あたかも施錠してある如き状態とすることができ、防犯効果をある程度維持することができる。
【0029】
本実施形態によれば、シャッター2に対する回動の規制が専ら節度手段3によるものとされたので、従来のマグネット錠の如き手段を必要とせず、防犯効果をある程度維持しつつシリンダ錠の保護装置の製造コストを低減させることができる。更に、節度手段3は、シャッター2が開放位置にあるときよりも閉塞位置にあるときの方が節度が大きく設定されたので、シャッター2を閉塞位置に操作する際に必要な操作力を小さくして操作性を向上させることができるとともにシャッター2を開放位置に操作する際に必要な操作力を大きくして防犯効果を高めることができる。
【0030】
また、嵌合凹部2aは、多角形(六角形)に形成され、操作手段6と形状が合致して嵌合可能とされたので、汎用の工具等を嵌合凹部2aに嵌合させるのを困難として第三者がシャッター2を容易に開放位置に回動させてしまうのを防止することができ、防犯効果を高めることができる。尚、嵌合凹部2aに代え、図8に示すように、八角形の嵌合凹部2a’としたり或いは他の多角形の嵌合凹部とすることができるとともに、図9に示すように、異形状の嵌合凹部2a”とすることができる。
【0031】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、節度手段を他の形態のものとしてもよい。例えばコイルスプリング4に代えて他の付勢手段(板バネやゴムなどの弾性部材等)としたり或いはアクションボール5に代えてピン状部材としてもよい。更には、本実施形態においては、シャッター2に形成された節度用凹部a、bにアクションボール5が嵌合して節度が付与される構成とされているが、シャッター2が開放位置にあるとき及び閉塞位置にあるとき、当該シャッター2に対して節度を付与し得るものであれば、他の形態のものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
シャッターに対する回動の規制が専ら節度手段によるものとされたシリンダ錠の保護装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 ハウジング
2 シャッター
2a 嵌合凹部
3 節度手段
4 コイルスプリング
5 アクションボール
6 操作手段
Ra キー孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ錠のキー孔の上方に設けられるハウジングと、
該ハウジング内で回動することにより閉塞位置と開放位置との間で移動可能とされ、前記キー孔を開閉するシャッターと、
前記シャッターが開放位置にあるとき及び閉塞位置にあるとき、当該シャッターに対して節度を付与する節度手段と、
前記シャッターの所定部位に形成された嵌合凹部に嵌合しつつ回動させることで、前記節度手段による節度が付与された後に当該シャッターを連れ回し操作可能とされ、開放位置と閉塞位置との間で移動させ得る操作手段と、
を具備したシリンダ錠の保護装置において、
前記シャッターに対する回動の規制が専ら前記節度手段によるものとされたことを特徴とするシリンダ錠の保護装置。
【請求項2】
前記嵌合凹部は、多角形又は異形状に形成され、前記操作手段と形状が合致して嵌合可能とされたことを特徴とする請求項1記載のシリンダ錠の保護装置。
【請求項3】
前記節度手段は、前記シャッターが開放位置にあるときよりも閉塞位置にあるときの方が節度が大きく設定されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のシリンダ錠の保護装置。
【請求項4】
前記シャッターは、所定の樹脂材を成形させた樹脂成形品から成ることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載のシリンダ錠の保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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