説明

シークイン供給装置

【課題】ガイド部材を簡単に交換できるようにする。
【解決手段】シークイン供給装置9は、シークインテープをミシンヘッド7の前方から縫製位置Pに向けて送る送り機構11を備えたテープ送り部10と、シークインテープTを縫製位置Pに案内する一対のガイド面42,42を備えたガイド部材40とを含み構成されている。テープ送り部10は、シークイン供給時に縫製位置Pの真前方に対する左右一方の側方に配置される支持部33を備え、該支持部33の左右他方の側面には、左右一方に凹んで左右他方及び前方に開口した前後方向に延びる溝状の被差込部34が設けられている。そして、ガイド部材40の左右一方の側部には、被差込部34に前方から差し込まれる差込部44が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シークインを縫製位置に供給するシークイン供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シークイン供給装置の中には、図6に示す従来例(引用文献1)のシークイン供給装置90のように、シークインテープTを縫製位置Pに向けて送る送り機構92を備えたテープ送り部91と、シークインテープTを縫製位置Pに案内する一対のガイド面94,94を備えたガイド部材93とを含み構成され、テープ送り部91にガイド部材93がネジX1,X2,X3で取り付けられたものがある。
【特許文献1】特開2005−334243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
シークインテープTをサイズの異なるものに交換する際には、ガイド部材93も、そのガイド面94,94の幅を交換後のシークインテープTの幅に合せて交換する必要がある。ところが、その際にはネジX1,X2,X3を外す必要があり、交換に手間がかかってしまう。
【0004】
そこで、ガイド部材を簡単に交換できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明のシークイン供給装置は、シークインが直列に連結されたシークインテープを、ミシンヘッドの前方から該ミシンヘッドの縫製位置に向けて送る送り機構を備えたテープ送り部と、前記シークインテープを前記縫製位置に案内する一対の左右方向に向かい合って前後方向に延びるガイド面を備えたガイド部材とを含み構成されたシークイン供給装置において、前記テープ送り部は、前記シークインテープを前記縫製位置に送るシークイン供給時に前記縫製位置の真前方に対する左右一方の側方に配置される支持部を備え、該支持部の左右他方の側面に、左右一方に凹んで左右他方及び前方に開口した前後方向に延びる溝状の被差込部が設けられ、前記ガイド部材の左右一方の側部に、前記被差込部に前方から差し込まれる差込部が設けられたことを特徴とする。
【0006】
ここで、前記シークイン供給装置は、特に限定されないが、前記差込部が前記被差込部から左右他方に抜け落ちるのを防止するため、前記被差込部の天井面には、下方に突出した天面凸部、又は上方に凹んで下方及び前方に開口した前後方向に延びる溝状の天面凹部が設けられ、前記差込部の上面には、前記天面凸部に係合する、下方に凹んで上方及び後方に開口した前後方向に延びる溝状の上面凹部、又は前記天面凹部に係合する、上方に突出した上面凸部が設けられていることが好ましい。
【0007】
また、前記シークイン供給装置は、特に限定されないが、本発明の特徴を最も効果的に活用するため、前記テープ送り部は、左右方向に並べて複数並設されていることが好ましい。このように左右方向に並設された場合にも、被差込部に差込部が前方から差し込まれるため、ガイド部材が左右のテープ送り部に干渉して差し込み不能になったり、引き抜き不能になったりすることはないからである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、テープ送り部の被差込部に、ガイド部材の差込部が前方から差し込まれるため、該テープ送り部に対する該ガイド部材の取り付け及び取り外しが簡単であり、よって、該ガイド部材の交換が簡単である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のシークイン供給装置9は、シークインSが直列に連結されたシークインテープTを、ミシンヘッド7の前方から該ミシンヘッド7の縫製位置Pに向けて送る送り機構11を備えたテープ送り部10と、シークインテープTを縫製位置Pに案内する一対の左右方向に向かい合って前後方向に延びるガイド面42,42を備えたガイド部材40とを含み構成されている。
【0010】
テープ送り部10は、左右方向に並べて複数並設され、各テープ送り部10は、シークインテープTを縫製位置Pに送るシークイン供給時に縫製位置Pの真前方に対する左右一方の側方に配置される支持部33を備え、該支持部33の左右他方の側面には、左右一方に凹んで左右他方及び前方に開口した前後方向に延びる溝状の被差込部34が設けられている。そして、ガイド部材40の左右一方の側部には、被差込部34に前方から差し込まれる差込部44が設けられている。
【0011】
被差込部34の天井面には、下方に突出した天面凸部35、又は上方に凹んで下方及び前方に開口した前後方向に延びる溝状の天面凹部36が設けられている。そして、差込部44の上面には、天面凸部35に係合する、下方に凹んで上方及び後方に開口した前後方向に延びる溝状の上面凹部45、又は天面凹部36に係合する、上方に突出した上面凸部46が設けられている。
【実施例】
【0012】
図1〜図5に示す本実施例のシークイン供給装置9は、ミシン針8が左右方向に並設されたミシンヘッド7の前方に設けられており、シークインSが直列に連結されたシークインテープTを、ミシンヘッド7の前方から該ミシンヘッド7の縫製位置Pに送ることによって、該縫製位置PにシークインSを供給する。このシークイン供給装置9は、シークインテープTが巻かれたリール(図示略)と、該リールから解かれたシークインテープTを縫製位置Pに向けて送る左右2つのテープ送り部10,10と、該2つのテープ送り部10,10に対してそれぞれ取り付けられた、シークインテープTを縫製位置Pに案内するガイド部材40,40と、該2つのテープ送り部10,10のいずれか一方を択一的に駆動する駆動機構50と、該駆動機構50が駆動するテープ送り部10,10を一方から他方に切り換える切換機構60と、シークイン非使用時にこれらテープ送り部10,10、駆動機構50及び切換機構60をシークイン供給位置から退避位置に退避させる退避機構70とを含み構成されている。
【0013】
[テープ送り部10]
左右2つのテープ送り部10,10は、一方が他方に対して左右反対に設けられており、各テープ送り部10は、駆動機構50から駆動力が入力されると該駆動力をシークインテープTに伝えて該シークインテープTを縫製位置Pに向けて送る送り機構11と、該シークインテープTの位置を前後方向に調節する位置調節機構21と、駆動機構50が切り離された際に送り機構11を変位不能に保持する保持機構28と、ガイド部材40を取り付けるガイド取付部31と、縫製位置Pに送られたシークインテープTの先端のシークインSを該シークインテープTから切り離すカッター29とを含み構成されている。
【0014】
送り機構11は、シークインテープTに当接して該シークインテープTを縫製位置Pに送り出す送出ピン17を備えた送出部材16と、該送出部材16に駆動力を伝える動力伝達部材12,13,14,15とを含み構成されている。そして、最も入力側(駆動機構50側)に位置する動力伝達部材12には、駆動機構50の出力部55aに切り離し可能に連結される入力部12aが設けられている。詳しくは、該最も入力側に位置する動力伝達部材12は、テープ送り部10が備えるベースフレーム19に対して取り付けられており、最も出力側(縫製位置P側)に位置する動力伝達部材15及び送出部材16は、該ベースフレーム19に対して前後方向に位置調節可能に取り付けられた位置調節用フレーム22に対して取り付けられている。
【0015】
位置調節機構21は、前述の位置調節用フレーム22と、該位置調節用フレーム22をベースフレーム19に対して前後方向に位置調節するネジ機構23と、該位置調節に合せて動力伝達部材12の前後方向への長さを調節するための経路長調節機構24と、送出ピン17のストロークの先端の位置を微調節するためのストッパ25とを含み構成されている。
【0016】
ガイド取付部31は、位置調節用フレーム22の下端部に設けられた、ガイド部材40の左右一方の端部を支持する支持部33と、該支持部33の下端に取り付けられて左右他方に突出した、ガイド部材40を載せる載置台37とを含み構成されている。そして、該テープ送り部10がシークインテープTを縫製位置Pに送るシークイン供給時には、支持部33が、縫製位置Pの真前方に対する左右一方の側方に配置され、載置台37が、該支持部33の下端から縫製位置Pの真前方に対する下方に延出するように構成されている。その支持部33の左右他方の側面には、左右一方に凹んで左右他方並びに前方及び後方に開口した前後方向に延びる溝状の被差込部34が設けられている。そして、その被差込部34の天井面には、該天井面の左右一方側(奥側)を基準に見れば、該天井面の左右他方側(開口側)に、下方に突出した前後方向に延びる天面凸部35が設けられており、また、該天井面の左右他方側(開口側)を基準にみれば、該天井面の左右一方側(奥側)に、上方に凹んで下方並びに前方及び後方に開口した前後方向に延びる溝状の天面凹部36が設けられている。また、載置台37には、送出ピン17の下端部との干渉を避けるための前後方向に延びる干渉防止孔38が貫設されている。また、該載置台37の後端部には、ガイド部材40がガイド取付部31の後方に抜け落ちるのを防止するためのストッパ39が設けられている。
【0017】
[ガイド部材40]
ガイド部材40,40は、左右2つのテープ送り部10,10の下端にそれぞれ取り付けられており、これら2つのガイド部材40,40は、テープ送り部10,10と同じく一方が他方に対して左右反対に構成されている。詳しくは、該2つのガイド部材40,40は、双方とも同一の形状であるが、各ガイド部材40は前後対象に設けられており、該2つのガイド部材40,40のうちの一方を上下方向を軸に180度回転させて設置することによって、該一方を他方に対して左右反対に構成している。各ガイド部材40は、該ガイド部材40の下面に凹設された、シークインテープTを縫製位置Pに案内するガイド溝41と、ガイド部材40の上面からガイド溝41の天井面に貫通した、送出ピン17を挿通させるための前後方向に延びる挿通孔43と、ガイド部材40の左右一方側の端部に設けられた、被差込部34に差し込まれる前後方向に延びる差込部44と、該ガイド部材40の上面の前端部に凹設された、該ガイド部材40を被差込部34から引き抜く際に指や治具等を引っ掛けるための引掛溝47とを含み構成されている。
【0018】
ガイド溝41は、上方に凹んでガイド部材40の下方並びに前方及び後方に開口した前後方向に延びる溝であって、このガイド溝41の左右方向両側の側面が、シークインテープTを縫製位置Pに案内する一対の左右方向に向かい合って前後方向に延びるガイド面42,42を構成している。
【0019】
差込部44は、該差込部44の上面の左右一方側(先端側)を基準にみれば、該差込部44の上面の左右他方側(基端側)又は左右中央部に、被差込部34の天面凸部35に係合する、下方に凹んで上方並びに前方及び後方に開口した前後方向に延びる溝状の上面凹部45が設けられており、また、該上面凹部45の底面を基準にみれば、該差込部44の上面の左右一方側(先端側)に、被差込部34の天面凹部36に係合する、上方に突出した前後方向に延びる上面凸部46が設けられている。そして、上面凹部45の後端部には、差込部44を被差込部34に差し込む際に、該上面凹部45を天面凸部35に係合させ易くするための後方に進むに従い幅の広がった拡張部45aが設けられている。詳しくは、該拡張部45aは、後方に向かうに従い前後方向に対して10〜20度の角度θで開いており、該拡張部45aの後端での左右方向の幅W2は、該拡張部45aの前端での幅(すなわち、上面凹部45の幅)W1の1.5〜3倍になっている。なお、このガイド部材40は、前述の通り前後対象であるため、該上面凹部45の前端部にも、前後に反転させて同様に拡張部45a’が設けられている。
【0020】
引掛溝47は、下方に凹んで上方並びに左方及び右方に開口した左右方向に延びる溝である。なお、ここでも、ガイド部材40は、前述の通り前後対象であるため、該ガイド部材40の後端部にも、前後に反転させて同様に引掛溝47’が設けられている。
【0021】
[駆動機構50]
駆動機構50は、駆動力を供給する駆動用モータ52と、該駆動力をテープ送り部10に伝える動力伝達部材53,54,55とを含み構成され、最も出力側(テープ送り部10側)に位置する動力伝達部材55には、左右2つのテープ送り部10,10のいずれか一方の入力部12aに択一的に連結される出力部55aが設けられている。
【0022】
[切換機構60]
切換機構60は、左右2つのテープ送り部10,10を支持した支持フレーム61と、該支持フレーム61を、動力伝達部材63,64を介して左右方向に駆動する切換用モータ62とを含み構成されている。そして、該支持フレーム61を右側に駆動した際には、駆動機構50の出力部55aに左側のテープ送り部10の入力部12aが連結され、左側に駆動した際には、該出力部55aに右側のテープ送り部10の入力部12aが連結される仕組みとなっている。
【0023】
[退避機構70]
退避機構70は、テープ送り部10,10と駆動機構50と切換機構60とを支持した支持フレーム71と、該支持フレーム71をシークイン供給位置とその斜め前上方の退避位置との間で昇降させる昇降機構72とを含み構成されている。
【0024】
本実施例によれば、次の[ア]〜[キ]に示す効果を得ることができる。
【0025】
[ア]テープ送り部10の被差込部34に、ガイド部材40の差込部44が前方から差し込まれるため、該テープ送り部10に対する該ガイド部材40の取り付け及び取り外しが簡単であり、よって、該ガイド部材40の交換が簡単である。
【0026】
[イ]同じく、被差込部34に差込部44が前方から差し込まれるため、本実施例のように2つのテープ送り部10,10が左右方向に並設されている場合にも、一方のテープ送り部10に干渉してガイド部材40が他方のテープ送り部10に対して取り付け不能又は取り外し不能になくなることはない。
【0027】
[ウ]同一形状に形成されたそれぞれが前後対象の2つのガイド部材40,40のうちの一方を上下方向を軸に180度回転させて設置することによって、該一方を他方に対して左右反対に構成しているため、これら2つのガイド部材40,40は、該左右反対に構成されているにもかかわらず、同一の型で成形することができる。
【0028】
[エ]被差込部34の天面凸部35に差込部44の上面凹部45が係合するため、又は、見方を変えれば、被差込部34の天面凹部36に差込部44の上面凸部46が係合するため、ガイド部材40が左右他方に抜け落ちることはない。
【0029】
[オ]差込部44の上面凹部45の後端部には拡張部45aがあるため、簡単に該差込部44を被差込部34に差し込むことができる。
【0030】
[カ]ガイド部材40の前端部には引掛溝47があるため、該ガイド部材40の取り外しが簡単である。
【0031】
[キ]位置調節機構21があるため、シークインテープTをサイズの異なるものに交換した際には、簡単に該シークインテープTを前後方向に位置調節し直すことができる。
【0032】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の構成や形状を任意に変更して実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例のシークイン供給装置を示す側面断面図である。
【図2】同実施例のシークイン供給装置を示す正面断面図である。
【図3】同実施例のテープ送り部のガイド取付部及びガイド部材を示す斜視図である。
【図4】同実施例のテープ送り部のガイド取付部にガイド部材を取り付けた際の様子を示す斜視図である。
【図5】同実施例の、(a)はテープ送り部のガイド取付部を示す正面図、(b)はガイド部材を示す平面図、(c)は同ガイド部材を示す正面図、
【図6】従来例のシークイン供給装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
7 ミシンヘッド
9 シークイン供給装置
10 テープ送り部
11 送り機構
33 支持部
34 被差込部
35 天面凸部
36 天面凹部
40 ガイド部材
42 ガイド面
44 差込部
45 上面凹部
46 上面凸部
P 縫製位置
T シークインテープ
S シークイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シークイン(S)が直列に連結されたシークインテープ(T)を、ミシンヘッド(7)の前方から該ミシンヘッドの縫製位置(P)に向けて送る送り機構(11)を備えたテープ送り部(10)と、前記シークインテープ(T)を前記縫製位置(P)に案内する一対の左右方向に向かい合って前後方向に延びるガイド面(42,42)を備えたガイド部材(40)とを含み構成されたシークイン供給装置において、
前記テープ送り部(10)は、前記シークインテープ(T)を前記縫製位置(P)に送るシークイン供給時に前記縫製位置(P)の真前方に対する左右一方の側方に配置される支持部(33)を備え、該支持部(33)の左右他方の側面に、左右一方に凹んで左右他方及び前方に開口した前後方向に延びる溝状の被差込部(34)が設けられ、
前記ガイド部材(40)の左右一方の側部に、前記被差込部(34)に前方から差し込まれる差込部(44)が設けられたことを特徴とするシークイン供給装置。
【請求項2】
前記被差込部(34)の天井面には、下方に突出した天面凸部(35)、又は上方に凹んで下方及び前方に開口した前後方向に延びる溝状の天面凹部(36)が設けられ、
前記差込部(44)の上面には、前記天面凸部(35)に係合する、下方に凹んで上方及び後方に開口した前後方向に延びる溝状の上面凹部(45)、又は前記天面凹部(36)に係合する、上方に突出した上面凸部(46)が設けられた請求項1記載のシークイン供給装置。
【請求項3】
前記テープ送り部(10)は、左右方向に並べて複数並設された請求項1又は2記載のシークイン供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−254638(P2009−254638A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108278(P2008−108278)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000135690)株式会社バルダン (125)
【Fターム(参考)】