説明

シーケンスプログラム作成方法、作成システム及びシーケンス制御システム

【課題】専門知識を持たない初心者でも、容易に作成、編集可能なシーケンスプログラム作成方法及び作成システム、並びに、このプログラムを用いて複数のシーケンス相互間での連繋動作を簡易に実現するシーケンス制御システムを提供する。
【解決手段】シーケンスプログラムの作成方法において、各ステップの設定内容として、少なくともステップの所要時間と前ステップ指示パラメータと被制御対象部品の状態とを含み、かつ、これらの情報が設定された各ステップを時系列的に配置して表形式タイムチャートを作成すると共に、前記表形式タイムチャートをCSV形式のファイルに変換してコントローラに提供可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば化学分析プロセスや製造プロセスにおけるシーケンス制御に使用されるシーケンスプログラムの作成方法、作成システム、及び、このプログラムを用いたシーケンス制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シーケンス制御の制御仕様を表現する方式として、従来より、ラダー図やファンクションブロックダイアグラム(FBD)、シーケンシャルファンクションチャート(SFC)のように図示言語を用いるもの、インストラクションリストやストラクチャードテキストのようにテキスト言語を用いるものが知られている。
ユーザが、プロセスのコントローラを動作させて所望のシーケンス制御を実現するに当たっては、動作フローを予め決定し、その順序に従って進行する各ステップの入出力状態を上述した図示言語やテキスト言語により記述して制御プログラムを作成し、これを機械語にコンパイルしてコントローラにダウンロードする必要がある。
【0003】
また、分析手順やプロセスの操作手順は、対象物や条件の変更に伴ってしばしば変更されるが、例えばラダー図に基づいて作成された制御プログラムは全体的な動作の流れを理解しにくいため修正に多大の労力と時間を必要とし、場合によっては修正ミスを生じたり、プログラムの部分的な修正が全体の動作に悪影響を与える結果、作業が停滞する等のおそれもあった。
【0004】
つまり、ユーザが自らシーケンスプログラムを作成し修正するには、図示言語やテキスト言語を熟知していなくてはならず、高度の専門知識が要求されるため、初心者にとっては通常困難であった。言うまでもなく、専門のプログラマを確保したり専用プログラムを外注する場合には、多くのコストが必要であり、また、プログラマや外注先により作成、修正されたプログラムの検証等に要する手間や時間も無視できないものとなっていた。
【0005】
一方、SFCシーケンスの出力仕様書、インタロック仕様書等を表形式により作成し、この表の中に多くの出力や移行条件、ジャンプ先等を可視化された形式で表現することにより、シーケンス仕様書の作成を容易にし、この仕様書を用いることでシーケンスプログラムの作成を簡略化してシーケンス実行時の異常監視指定等を可能にしたプログラム仕様書作成装置、作成方法及びシーケンス制御システムが、後述の特許文献1として公開されている。
この特許文献1に記載された従来技術では、SFCから表形式の出力定義シート、インタロック定義シート等を作成し、これらの定義シートが有する表形式データをCSV(カンマ・セパレーテッド・バリュー)形式のテキストデータに変換した後、プラント全体の制御や機器単位の制御を行う各種コントローラにより実行可能な形式のバイナリデータに変換してコントローラにダウンロードしている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−323912号公報(段落[0009],[0010],[0029]〜[0035]、図3、図11〜図13等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、各種の図形言語やテキスト言語を用いてシーケンスプログラムを作成することはユーザにとって大きな負担を伴う。
また、特許文献1の従来技術によれば、汎用の表計算プログラムを用いてSFCシーケンス制御を行うための各種仕様書を作成でき、ローダや専用の支援ツールを用いた作業が不要になる利点があるが、あくまでもSFCを作成することが前提であり、SFCに関する知識を持たないユーザにとってはラダー図等を用いる場合と同様に作成や修正が困難である。
加えて、特許文献1の従来技術では、作成されたシーケンスプログラムをユーザ側で簡単に修正することができず、修正を要する場合には各種の定義仕様書(定義シート)の作成段階から変更作業を行わなくてはならないため、煩雑な作業を強いるものであった。
【0008】
更に、化学分析装置においては、同一の試料を対象として複数項目を同時並行的に測定することが通常行われており(例えば、水質分析装置としての全窒素・全りん測定装置等)、試料水の希釈・サンプリング操作や各項目の測定操作をそれぞれ別個のシーケンスにより分担して実行している。
この場合、測定を効率よく行うには希釈・サンプリング等を適切なタイミングで行うことが望ましく、そのためには複数のシーケンス内の各ステップを適宜連繋させたり、複数のシーケンスが同一の部品またはユニットを被制御対象として共有しているような場合には、その共有されている被制御対象に対して、複数のシーケンスが同時にアクセスしないようにシーケンス間のタイミングを考慮する必要がある。
また、測定時に異常が発生した時には、実行中のステップやその異常内容に応じた異常処理用のシーケンスに迅速に移行できることが望ましい。
しかしながら、従来のシーケンス制御システムでは、これら複数のシーケンス相互間での連繋動作を簡易に実現する着想が提示されておらず、前述した特許文献1にも具体的な開示は存在しない。
【0009】
そこで本発明の解決課題は、シーケンスプログラムを作成するための専門知識を持たない初心者でも、プログラムを容易に作成、編集可能なシーケンスプログラム作成方法、及びこれに使用される作成システム、並びに、この作成システムにより作成されたシーケンスプログラムを用いて、複数のシーケンス相互間での連繋動作を簡易に実現可能としたシーケンス制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載したシーケンスプログラム作成方法は、複数のステップからなるシーケンスをコントローラにより実行するためのシーケンスプログラムの作成方法において、
各ステップの設定内容として、少なくともステップの所要時間と前ステップ指示パラメータと被制御対象部品の状態とを含み、かつ、これらの情報が設定された各ステップを時系列的に配置して表形式タイムチャートを作成すると共に、
前記表形式タイムチャートをCSV形式のファイルに変換して前記コントローラに提供可能としたものである。
【0011】
請求項2に記載したシーケンスプログラム作成方法は、請求項1において、前ステップ指示パラメータとして、当該シーケンスプログラムに連繋させるべき他のシーケンスプログラムのステップ番号を設定するものである。
【0012】
請求項3に記載したシーケンスプログラム作成方法は、請求項1または2において、当該ステップにおける設定内容として、前記所要時間に代えてまたは前記所要時間と共に、次のステップへ移行させるためのトリガーとなる条件を含むものである。
【0013】
請求項4に記載したシーケンスプログラム作成方法は、請求項1〜3の何れか1項において、当該ステップにおける設定内容として、当該ステップを実行中に監視すべき一または複数の監視項目を含むものである。
【0014】
請求項5に記載したシーケンスプログラム作成方法は、請求項4において、当該ステップにおける設定内容として、前記監視項目の検出結果に応じてジャンプさせるべき異常時シーケンスを含むものである。
【0015】
請求項6に記載したシーケンスプログラム作成方法は、請求項1〜5の何れか1項において、当該ステップにおける設定内容として、当該ステップの実行が中断されてその中断原因が解消した際にジャンプさせるべき復帰シーケンスを含むものである。
【0016】
請求項7に記載したシーケンスプログラム作成方法は、請求項1〜5の何れか1項において、当該ステップにおける設定内容として、当該ステップの実行が中断されてその中断原因が解消された際に中断直前のステップからシーケンスを継続させる情報を含むものである。
【0017】
請求項8に記載したシーケンスプログラム作成方法は、請求項1〜7の何れか1項において、当該ステップにおける設定内容として、他のシーケンスの実行ステップの被制御対象部品を当該ステップが共有する場合に、当該ステップまたは他のシーケンスの実行ステップの開始を待機させてシーケンス間の排他制御を可能にするための情報を含むものである。
【0018】
請求項9に記載したシーケンスプログラム作成方法は、請求項1〜8の何れか1項において、当該ステップにおける設定内容として、前記所要時間の経過前に、特定の被制御対象部品を制御させる情報を含むものである。
【0019】
請求項10に記載したシーケンスプログラム作成方法は、請求項1〜9の何れか1項において、表形式タイムチャートを、作表プログラムに基づいて作成するものである。
【0020】
請求項11に記載したシーケンスプログラム作成システムは、複数のステップからなるシーケンスをコントローラにより実行するためのシーケンスプログラムを作成するシーケンスプログラム作成システムにおいて、
各ステップの設定内容として、少なくともステップの所要時間と前ステップ指示パラメータと被制御対象部品の状態とをそれぞれ入力する入力手段と、
この入力手段による入力情報が設定された各ステップを時系列的に配置して表形式タイムチャートを作成する手段と、
前記表形式タイムチャートをCSV形式のファイルに変換する変換手段と、
この変換手段により変換されたファイルを前記コントローラに提供するための出力手段と、を備えたものである。
【0021】
請求項12に記載したシーケンスプログラム作成システムは、請求項11において、複数のシーケンスプログラムを作成する際に、一のシーケンスプログラムにおける前ステップ指示パラメータとして、当該シーケンスプログラムに連繋させるべき他のシーケンスプログラムのステップ番号を設定する手段を備えたものである。
【0022】
請求項13に記載したシーケンスプログラム作成システムは、請求項11または12において、当該ステップにおける設定内容として、前記所要時間に代えてまたは前記所要時間と共に、次のステップへ移行させるためのトリガーとなる条件を設定する手段を備えたものである。
【0023】
請求項14に記載したシーケンスプログラム作成システムは、請求項11〜13の何れか1項において、当該ステップを実行中に監視すべき一または複数の監視項目を設定する手段を備えたものである。
【0024】
請求項15に記載したシーケンスプログラム作成システムは、請求項14において、前記監視項目の検出結果に応じてジャンプさせるべき異常時シーケンスを設定する手段を備えたものである。
【0025】
請求項16に記載したシーケンスプログラム作成システムは、請求項11〜15の何れか1項において、当該ステップの実行が中断されてその中断原因が解消した際にジャンプさせるべき復帰シーケンスを設定する手段を備えたものである。
【0026】
請求項17に記載したシーケンスプログラム作成システムは、請求項11〜15の何れか1項において、当該ステップの実行が中断されてその中断原因が解消された際に中断直前のステップからシーケンスを継続させる情報を設定する手段を備えたものである。
【0027】
請求項18に記載したシーケンスプログラム作成システムは、請求項11〜17の何れか1項において、他のシーケンスの実行ステップの被制御対象部品を当該ステップが共有する場合に、当該ステップまたは他のシーケンスの実行ステップの開始を待機させてシーケンス間の排他制御を可能にするための情報を設定する手段を備えたものである。
【0028】
請求項19に記載したシーケンスプログラム作成システムは、請求項11〜18の何れか1項において、当該ステップに設定された前記所要時間の経過前に特定の被制御対象部品を制御させる情報を設定する手段を備えたものである。
【0029】
請求項20に記載したシーケンスプログラム作成システムは、請求項11〜19の何れか1項において、表形式タイムチャートを作成するための作表プログラムを備えたものである。
【0030】
請求項21に記載したシーケンスプログラム作成システムは、請求項11〜20の何れか1項において、出力手段が、CSV形式のファイルを可搬形記憶媒体に出力可能であることを特徴とする。
【0031】
請求項22に記載したシーケンス制御システムは、請求項11〜21の何れか1項のシーケンスプログラム作成システムから出力されたCSV形式のファイルを解読して時系列的なステップごとの設定内容を制御パラメータに変換し、これらの制御パラメータに基づく動作を被制御対象部品に逐次実行させるための演算処理を行うシーケンスプログラム実行手段と、
このシーケンスプログラム実行手段に接続され、かつ、複数のポートを介して被制御対象部品に接続される入出力インタフェース手段と、
を有するコントローラを用いて、
被制御対象部品の動作を制御するものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、固有の所要時間を持ち、かつ、必要に応じて他のシーケンスに連繋させるための前ステップ指示パラメータを有する個々のステップを、一つのシーケンスプログラムに対応する表形式タイムチャート上で任意に設計することができ、被制御対象部品である各機器の動作時間、動作順序、動作条件等が複雑に交錯する各種装置やプロセスに対して最適なシーケンスプログラムを提供することができる。
また、本発明では、各種のプログラム言語に関する専門的な知識を持たない初心者でもシーケンスプログラムを容易に作成可能であり、専門のプログラマ等に依存する場合の経済的負担や検証の労力を軽減することができる。
更に、シーケンスプログラムをCSVファイル形式で提供できるため、ユーザによるプログラムの閲覧、編集が容易であり、シーケンスの変更が必要になった場合にもユーザ側で簡単に修正することができ、柔軟かつ迅速に対応することができる。
総じて、上記シーケンスプログラムを用いて実現されるシーケンス制御システムによれば、複数のシーケンスを互いに連繋させながら並行して実行する各種装置やプロセスの効率的な制御が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態では、本発明を全窒素・全りん測定装置をシーケンス制御するためのシーケンスプログラム作成システム及びシーケンス制御システムに適用した場合について述べる。
【0034】
まず、図1は、実施形態にかかるシーケンスプログラム作成システムのシステム構成図である。この作成システムは、通常のコンピュータシステム(パーソナルコンピュータシステム)とほぼ同様に構成されており、10はキーボード、マウス等の入力装置、20はCPUや内部メモリ、制御プログラム、作表プログラム等を備えたシーケンスプログラム作成装置、30はハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク等の記憶装置、40は本システムにより作成されたシーケンスプログラムをコンパクトフラッシュ(登録商標)カード等の可搬形記憶媒体にファイル出力するための出力ポート、あるいは、測定装置側のコントローラに伝送するためのモデムや通信ポート等を含むファイル出力・通信インタフェース、50はシーケンスプログラム作成装置20により作成される表形式タイムチャートや各種設定画面等を表示する表示装置、60はプリンタである。
なお、上記作表プログラムとは、「Excel」(米マイクロソフト社の登録商標)等のいわゆる表計算プログラムと同一または類似の入力形式、表示形式を有するソフトウェアを意味しているが、これらの表計算プログラムが通常備えているグラフ作成機能や関数演算機能、マクロ機能等は必ずしも必要ではない。
【0035】
ここで、シーケンスプログラム作成装置20は、全窒素・全りん測定装置の一連の操作を実行するためのシーケンスプログラムを作成するものであり、表形式タイムチャート作成手段21及びコンパイル手段22を備えている。
表形式タイムチャート作成手段21は、全窒素測定、全りん測定、試料水の導入・希釈・洗浄等の予備的操作の各ステップを時系列的に設定したタイムチャートを表形式にて作成するもので、上述した作表プログラムとして構成されている。また、コンパイル手段22は、作成された上記表形式タイムチャートをCSV形式のテキストファイルに変換する機能を持つ。
【0036】
図2は、表形式タイムチャート作成手段21の有する機能の概略を示した機能ブロック図であり、この作成手段21は、使用部品設定機能211、ステップ内容設定機能212、ポート条件設定機能213、タイムチャート作成・編集機能214を有している。
使用部品設定機能211は、シーケンスプログラム作成装置20の立ち上げと同時に起動され、全窒素・全りん測定装置による一連の測定シーケンスにおいて使用する全ての被制御対象部品(バルブ、ポンプ、モータ、検出器等)をコントローラの入出力ポート、制御ポート等の各ポートごとに設定する機能であり、同時に、それらの部品を使用する当該シーケンスプログラムのファイル形式やバージョン等を設定する機能も有している。
【0037】
ここで、図3は使用部品設定機能211が有する使用部品設定画面2110の表示例を示しており、コントローラの各ポートごとに、被制御対象部品の部品名や部品番号をプルダウンメニュー方式で設定可能である。また、ファイル形式、ファイルID、シーケンスの種別(タイプ)、バージョン、全ステップ数、全ポート数等も設定可能になっている。なお、この使用部品設定機能211により設定された全データは図1の記憶装置30に記憶される。
そして、測定に必要な全ての部品を設定した後に「シーケンス作成」ボタンをクリックすることで、前記図2におけるタイムチャート作成・編集機能214が起動される。
【0038】
このタイムチャート作成・編集機能214は、図4に示すように各シーケンスの一連のステップを時系列的に配置した表形式タイムチャート2140を表示装置50に表示させ、ユーザが予め作成した動作フローに従って、ステップ内容設定機能212、ポート条件設定機能213等を実行することにより、各ステップごとに工程表示(工程の名称)、ステップ番号、所要時間等を入力させると共に、使用部品設定機能211により設定した部品の中で、当該ステップにおいて動作させる部品を設定するためのものである。
なお、図4では、列番号1〜列番号10について、各ステップで動作させる部品(SV20,SV21等)を予め設定した状態を示している。
【0039】
上記表形式タイムチャート2140は、図3の使用部品設定画面2110により設定されたシーケンスタイプ(例えば、全りん測定時の試料水の導入・希釈・洗浄等の予備的操作を実行する全りんサブシーケンス)に対応して、一つずつ作成される。この実施形態では、図4と同様に全窒素サブシーケンス、全りんメインシーケンス(測定シーケンス)、全窒素メインシーケンス(測定シーケンス),更には、必要に応じて後述する復帰シーケンスや異常時シーケンスが作成されることになる。
【0040】
図4の表形式タイムチャート2140において、例えば列番号1の工程表示の部分を右クリックすることにより、図2のステップ内容設定機能212が起動され、図5に示すようなステップ内容設定画面2120が表示される。
このステップ内容設定画面2120では、各ステップに対し、列番号、工程名、ステップ番号、前ステップ番号、所要時間等を設定可能となっている。
なお、複数ステップについて、所要時間を一括して設定することも可能である。また、後述するアラーム指定、復帰処理、次ステップ移行条件等の設定も可能となっている。更に、前述した使用部品設定機能211により設定した使用部品の一覧も表示されるようになっている。
【0041】
図5のステップ内容設定画面2120における前ステップ番号2121には、当該ステップが属するシーケンスの直前ステップのステップ番号、または、同時並行的に実行される別のシーケンスのステップ番号が設定される。上述した前ステップ番号2121は、請求項1,2,11,12における前ステップ指示パラメータに相当している。
【0042】
ここで、同時並行的に実行される別のシーケンスとは、当該シーケンスが全りんメインシーケンスである場合には、他の全りんサブシーケンス等を示している。例えば、本実施形態が適用される全窒素・全りん測定装置において、全窒素測定と全りん測定とでは各々異なる希釈率で試料水を希釈する必要がある。これを後述の図13に示すように一つの希釈槽のみで実現する場合、所定の希釈率を正確に得るためには、全窒素測定と全りん測定とのどちらか一方のための希釈を行って希釈済みの試料水を計量した後に、希釈槽を洗浄して他方を測定するための希釈に備える必要がある。
一方、全窒素測定及び全りん測定の測定工程は、希釈槽から希釈済みの試料水を計量し終わればそれぞれ直ちに開始することができるが、希釈槽の洗浄工程と全窒素または全りんの測定工程とを一つのシーケンスで制御しようとすると、希釈槽の洗浄中は全窒素または全りんの測定工程を進めることができない。そこで、本実施形態のシーケンスプログラムにおいては、メインシーケンスでは希釈済みの試料水の計量や測定等の工程が制御され、サブシーケンスでは試料水の導入、希釈、希釈槽の洗浄等の工程が制御される。
従って、図5のステップ内容設定画面2120が全りんメインシーケンスの計量工程の第一ステップの設定画面であると仮定した場合、前ステップ番号2121として、同時並行的に実行される別のシーケンスとしての全りんサブシーケンスにおける、希釈工程の最終ステップのステップ番号が入力される。
【0043】
つまり、図6に示す如く、同時に実行されている複数のシーケンスA(全りんメインシーケンス),B(全りんサブシーケンス)間において、各工程の各ステップ番号ごとに前ステップ番号を付与しておき、コントローラによるシーケンスの実行時に常に前ステップ番号を認識することにより、異なるシーケンスA,Bの工程間を連繋させて別シーケンスとのタイミング調整を可能にしている。このような構成が、請求項2,12の発明に相当するものである。
なお、図6では、シーケンスB(全りんサブシーケンス)における希釈工程の最終ステップ「B04」が、シーケンスA(全りんメインシーケンス)における計量工程の第一ステップ「A03」の前ステップ番号に設定され、このシーケンスAの計量工程の最終ステップ「A05」がシーケンスBの洗浄工程の第1ステップ「B07」の前ステップ番号に設定されている場合を例示してある。
【0044】
また、図5のステップ内容設定画面2120における次ステップ移行条件2122には、当該ステップにおいて次のステップへ移行するためのトリガーが必要に応じて設定される。この構成は、請求項3,13の発明に相当するものである。
例えば、図5のステップ内容設定画面2120が、前述の全りんメインシーケンスの計量工程中の希釈済み試料水導入ステップであると仮定し、当該ステップが、計量管下部から導入された試料水を計量管上部のフォトセンサが感知したことをトリガーとして次のステップ(例えば、試料水の導入停止)へ移行させるものであるとする。この場合には、前記の図3にて設定された使用部品であるフォトセンサ(PS21)が、図5におけるセンサ入力条件の部品指定2122Aでプルダウンメニュー方式によって選択され、更に、その動作がOFFからONに切り替わることの条件設定として、センサ入力条件の条件指定2122Bが「OFF→ON」にプルダウンメニュー方式によって選択されることにより、次ステップ移行条件2122に設定される。
このように次ステップ移行条件2122にトリガーが設定される場合には、図5における所要時間の設定が必要不可欠ではない場合も考えられるが、次に述べる異常監視機能(異常時シーケンスへのジャンプ)を持たせる場合には、上記トリガーと共に所要時間を設定することが有用である。
【0045】
図5のステップ内容設定画面2120におけるアラーム指定2123には、当該ステップにおいて異常発生時にジャンプさせるべき異常時シーケンスが必要に応じて設定される。この構成は、請求項4,5,14,15の発明に相当するものである。
例えば、前述の全りんメインシーケンスの計量工程中の希釈済み試料水導入ステップにおいては、次ステップ移行条件2122により、フォトセンサが試料水を感知する(ONとなる)ことをトリガーとして次のステップへ移行するように設定されているが、当該ステップに設定された所要時間が経過した後にもフォトセンサが試料水を感知しない場合には、異常時シーケンスとしてアラームを発生するように設定される。
すなわち、上記希釈済み試料水導入ステップにおいて、試料水の導入が正常に行われた場合は、フォトセンサが試料水を感知した時点で次のステップへ移行し、試料水の導入を停止したり、所定量の試料水を分取する動作に移行するが、希釈済み試料水導入ステップの予定された時間(設定された所要時間)を経過しても次ステップ移行条件2122に設定されたフォトセンサONの信号が得られない(フォトセンサが試料水を感知しない)場合には、試料水導入用のポンプやフォトセンサ等に異常が発生したと推定して、アラーム指定2123により設定された異常時シーケンスへジャンプ可能としている。
【0046】
なお、アラームの中には、異常時シーケンスへのジャンプを必要としない場合も考えられる。また、一つのステップ中に想定される異常は一つとは限らない。
そこで、図5に示すアラーム番号選択2123Aにおいて監視すべき異常項目(監視項目)が選択され、続いて、必要に応じてリストア番号選択2123Bにより前記監視項目に対応した異常時シーケンスが選択されてアラーム指定2123に設定されるようになっている。
すなわち、ある監視項目に対して、異常時シーケンスによる処理が必要なければ監視項目のみが設定され、異常時シーケンスによる処理が必要な監視項目に対しては、ジャンプさせるべき異常時シーケンスが設定され、また、監視項目は一つのステップに対し必要に応じて複数設定することが可能になっている。
【0047】
またこれとは別に、図5のステップ内容設定画面2120における復帰処理2124としては、例えば、コントローラや被制御対象である測定装置の電源が突然遮断されるような事故(停電や瞬停)が発生して当該ステップの実行が中断された場合、中断原因が解消(電源が復帰)した際に、所定のステップへ復帰できるように予め作成された復帰シーケンスを、必要に応じて設定可能である。これによって各ステップごとに復帰処理が設定可能になるため、工程の進行過程に応じて復帰処理の区分けが可能となり、速やかに運転状態へ戻ることができる。なお、このような構成が請求項6,16の発明に相当する。
【0048】
また、発生した電源断の時間がごく短く(例えば1分以内)、分析中のデータに対する影響が軽微と考えられる場合には、図5のステップ内容設定画面2120における再スタート設定ボタン2125をクリックすることにより、リスタートフラグが設定される。再スタート設定ボタン2125は、デフォルトでは「再スタート不可能(N)」であるが、クリックすることにより「再スタート可能(G)」に切り替わり、再度クリックすることにより再び「再スタート不可能(N)」に切り替わる。
「再スタート可能(G)」と設定することにより、前述の復帰シーケンスによって分析が中断されるのを回避し、電源復帰後に停止直前のステップから元のシーケンスを継続させることが可能となっている。これらの構成は請求項7,17の発明に相当する。
なお、再スタート設定ボタン2125をクリックして「再スタート可能(G)」に設定した場合には、図8の表形式タイムチャートの列番号9に示す如く、リスタートフラグ欄に「G」が表示されることになる。
【0049】
すなわち、前述した計量工程の希釈済み試料水導入ステップ実行中に電源断が発生して当該ステップが中断した場合には、例えば、電源が復帰してから、計量管内の試料水を排出した後に希釈済み試料水導入ステップを再び実行するような復帰シーケンスが復帰処理2124に設定される。この場合は、電源断による影響が大きいと考えられるので、リスタートフラグを設定せずに、電源断からの復帰後に、電源断の時間の長短に関わらず復帰シーケンスが実行される。
一方、全りんメインシーケンス中の加熱分解ステップ実行中に電源断が発生して当該ステップが比較的長期にわたって中断した場合には、分解器から試料水を排出した後、全りんメインシーケンスの第一ステップ(試料水の希釈待機)から再びシーケンスを実行するような復帰シーケンスが復帰処理2124に設定される。この加熱分解ステップの所要時間は約30分間であり、電源断の時間が比較的長い場合にはこのような復帰シーケンスを実行する必要がある。
これに対し、電源断の時間がごく短い場合は、電源断による測定データへの影響が軽微であるためその後のシーケンスを継続しても特に問題は発生しないと考えられるので、電源断により実行される復帰シーケンスによって全りんメインシーケンスが中断されてデータを消失する、いわゆる欠測状態を生じるよりも元のシーケンスを続行させる方が好ましい。そこで、このようなステップにおける短時間の電源断が回復した後には、前述したリスタートフラグを設定しておくことにより、電源断直前のステップから全りんメインシーケンスを継続させることができるようにした。
【0050】
ところで、あるシーケンスにおける被制御対象部品やユニット(以下では、ユニットも一つの部品と考えてこれらを被制御対象部品と総称する)が、当該シーケンスと連繋しない別のシーケンスにおいても被制御対象となり、複数のシーケンスで共有される場合がある。例えば、前述したように全りんサブシーケンスで制御する希釈ユニットは、全窒素サブシーケンスで制御する希釈ユニットと同一であり、この希釈ユニットは、受水槽、希釈槽及びこれらに接続される配管、ポンプ、バルブ類等から構成されている。
しかし、全りんサブシーケンスと全窒素サブシーケンスとは互いに連繋していない。このため、例えば、全りんサブシーケンスで受水槽から希釈槽へと試料水を導入するステップが終了した後の希釈槽へ純水を導入するステップの実行中に、全窒素サブシーケンスの実行が開始された場合、全りんサブシーケンスとしては、受水槽と希釈槽との間の配管に設けられたバルブが閉じられている必要があるが、全窒素サブシーケンスではこのバルブを開く指令が発せられてしまい、共通の被制御対象部品をめぐって複数のシーケンス間で干渉を生じてしまう。
【0051】
このような問題を前述した図5における前ステップ番号設定によるシーケンス間の連繋によって解決しようとすると、各シーケンス中の各ステップの所要時間やステップ実行のタイミング等を厳密に調整して前ステップ番号を設定する必要が生じ、分析手順やプロセスの操作手順の変更、所要時間の変更等に煩雑な作業となる場合がある。
そこで、本実施形態では、複数のシーケンスによって共有される被制御対象部品が複数のシーケンスから同時にアクセスされないように、先行する他のシーケンスが実行されている間は当該シーケンスにおける当該ステップの実行を待機させる設定が可能となっている。
すなわち、先行する他のシーケンスは、ある一連のステップが終了するまでは他のシーケンスの実行を禁止して被制御対象部品を独占的に支配し、禁止された側のシーケンスは現在実行中の一連のステップが終了するまでは前記被制御対象部品を使用するステップの実行を待機するようなシーケンス間の排他制御を設定可能としている。このような構成が、請求項8,18の発明に相当する。
【0052】
例えば、図5のステップ内容設定画面2120が全りんサブシーケンスの希釈工程(図6におけるステップ番号「B01」〜「B04」を広義の希釈工程とする)の第一ステップである試料水導入ステップ(図6におけるステップ番号「B01」)の設定画面であると仮定した場合、全りんサブシーケンスが希釈ユニットを使用しているとき(希釈工程から洗浄工程までの区間のシーケンス実行中)は、全窒素サブシーケンスによる希釈ユニットの使用を禁止して全窒素サブシーケンスの実行を待機させるための指令として、図5に示す排他制御スタートボタン2126をクリックすることにより、排他制御の情報が設定される。
また、全窒素サブシーケンスの希釈工程の第一ステップである試料水導入ステップにも、図5と同様に排他制御の情報を設定することにより、全窒素サブシーケンスが希釈ユニットを使用しているとき(希釈工程から洗浄工程までの区間のシーケンス実行中)に全りんサブシーケンスによる希釈ユニットの使用を禁止して全りんサブシーケンスの実行を待機させることができる。
このように本実施形態では、当該シーケンスが他のシーケンスの排他制御を開始するステップ(排他制御開始ステップ)と他のシーケンスが排他制御を行っている間待機すべき工程の先頭ステップ(待機開始ステップ)とを同一のステップとしているが、ステップ内容設定画面2120に別途設けた待機開始スタートボタン(図示せず)を用いて、待機開始ステップに排他制御による待機開始の情報を設定することにより、排他制御開始ステップと待機開始ステップとを別のステップとすることもできる。
更に、本実施形態の全窒素サブシーケンス及び全りんサブシーケンスにおいては、あるシーケンスが一旦実行された場合には、そのシーケンスが終了するまで排他制御を続け、そのシーケンス終了時に排他制御を解除するものとしているため、排他制御が終了するステップは特に設定せず、そのシーケンスの最終ステップが自動的に排他制御終了ステップとみなされるようにしている。
このため、上述したように排他制御を開始させるステップにのみ、前記排他制御スタートボタン2126によって排他制御開始の情報を設定すればよいが、当該シーケンスの排他制御終了ステップをシーケンスの途中に設けたいような場合には、排他制御を終了させるステップに排他制御終了の情報を設定するようにしても良い。
【0053】
更に、図4の表形式タイムチャート2140において、あるステップの被制御対象部品(使用部品)をクリックすることにより、図2のポート条件設定機能213が起動され、図7に示すポート条件設定画面2130が表示される。
このポート条件設定画面2130では、各ステップに対し、コントローラの出力ポートに接続された部品の動作条件(オン、オフ等)が設定される。
【0054】
各ステップには複数の被制御対象部品を設定可能であるが、被制御対象部品が同時に動作するタイミングを一つのステップの単位とすると、膨大なステップ数となってしまう場合がある。そこで、必要に応じて、当該ステップに設定された所要時間が経過する前であっても、センサ入力条件やセンサ入力回数等をトリガーとして、当該被制御対象部品を動作させるような設定も可能である。このような構成が、請求項9,19の発明に相当する。
例えば、センサI,II、バルブ1,2及びその他のバルブ、並びにポンプ(何れも図示せず)を想定し、センサIからの信号を1回検出した時点ではバルブ1を閉じ、センサIIからの信号を2回検出した時点ではバルブ2を閉じ、当該ステップに設定した所要時間が経過した時点ではその他のバルブを閉じ、かつ、ポンプを停止させるといった制御を実行したい場合等に設定される。この場合、表形式タイムチャート2140においてバルブ1をクリックしてポート条件設定画面2130を表示させ、センサ選択2131に「センサI」が、条件選択2132に「ON」が、回数選択2133に「1」がそれぞれ選択されて設定され、同様にバルブ2のポート条件設定画面2130では、「センサII」、「ON」、「2」がそれぞれ設定されることになる。
【0055】
図8は、上記操作を繰り返すことにより作成された表形式タイムチャート2140を部分的に示したものである。
同じ要領で、全窒素・全りん測定装置に必要な所望のシーケンス(全窒素サブシーケンス、全りんメインシーケンス、全窒素メインシーケンス)に対応する表形式タイムチャートが、表形式タイムチャート作成手段21により作成される。なお、作成されたそれぞれの表形式タイムチャートは、図5に示したステップ内容設定画面2120による各ステップごとの全ての設定情報を併せ持った個々のファイルとして構成されている。
これらの表形式タイムチャートは、シーケンスプログラム作成装置20の内部メモリまたは外部の記憶装置30に一時的に記憶される。
【0056】
その後、各シーケンスの表形式タイムチャートは、図1のコンパイル手段22により、CSVファイルにコンパイルされる。
周知のように、CSVは、表計算プログラムのスプレッドシートやデータベースソフト間でデータをやりとりする際に使用される最も一般的なフォーマットであり、CSV形式のデータはテキスト形式であるため、汎用のテキストエディタや他のテキスト加工ツールを用いてその編集、加工を容易に行うことができるものである。
【0057】
図9は、各シーケンスの表形式タイムチャート2140A〜2140DをCSVファイルに変換する処理の概念図であり、コンパイル手段22を動作させて各タイムチャート2140A〜2140DをCSVファイル2141A〜2141Dに変換し、記憶装置30(図示せず)に記憶する。なお、図10は、一例として全りんサブシーケンスのCSVファイル2141Cを一般的なテキストエディタ上で開いた例である。
その後、図9に示すごとく、ファイル出力・通信インタフェース40を介し、上記CSVファイル2141A〜2141Dをコンパクトフラッシュ(登録商標)カード等の可搬形記憶媒体71として出力させ、あるいは、通信回線72を介して全窒素・全りん測定装置側のコントローラに提供する。
【0058】
本発明にかかるシーケンスプログラム作成システムの実施形態は上述したようなものであり、こうして作成されたシーケンスプログラムをコントローラにダウンロードし、測定装置を所定のシーケンスに従って動作させる。
【0059】
次に、コントローラの実施形態を説明する。
図11は、コントローラのシステム構成図である。図11において、110はキーボード、マウス等の入力装置、120はCPUやDSP(ディジタルシグナルプロセッサ)、内部メモリ、制御プログラム等を備えたシーケンスプログラム実行装置、130はハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク等の記憶装置、140は前述した表形式タイムチャートのCSVファイルが入力されるファイル入力・通信インタフェース、150は現在実行されているシーケンスの工程内容や経過時間等を表示する表示装置、180は制御対象である全窒素・全りん測定装置に接続される入出力インタフェースである。
【0060】
前記シーケンスプログラム実行装置120は、図12に示すように、ファイル入力・通信インタフェース140を介して入力されたCSVファイル2141A〜2141Dをロードし、各シーケンスごとにステップと制御パラメータとを対応させたシーケンステーブル121A〜121Dに変換する。
ここで、上記制御パラメータは、各ステップごとの所要時間、被制御対象部品等を始めとした表形式フォーマットの設定内容をパラメータに置き換えたものである。
【0061】
上記シーケンステーブル121A〜121Dは、それぞれステップ・制御パラメータ指示手段122により一ステップずつ読み出され、デコードされてCPU(またはDSP)123に送られる。CPU123では、前記制御パラメータに従って全窒素・全りん測定装置の各構成部品を動作させて当該ステップを実行する。この際、全窒素・全りん測定装置から出力されたセンサ信号やカウンタ(タイマ)信号は、入出力インタフェース180を介してCPU123に取り込まれる。
ステップ・制御パラメータ指示手段122では、一ステップが終了する都度、シーケンステーブル121A〜121Dに対し次ステップを指示して読み出すと共にその制御パラメータをデコードし、制御パラメータに応じて上記センサ信号やカウンタ信号を考慮しながらCPU123と協働して前記と同様の処理を繰り返し実行することにより、各シーケンスプログラムのステップを逐次実行していく。
【0062】
なお、ステップ・制御パラメータ指示手段122及びCPU123は、複数のシーケンスプログラム、すなわちシーケンステーブル121A〜121Dの内容を並行して処理しており、あるシーケンステーブル(例えば121A)から読み出したステップ(仮にステップ番号を「A03」とする)の制御パラメータに、前ステップ番号として他のシーケンステーブル(例えば121B)内のステップ番号(仮に「B04」とする)に相当するものがあれば、実際のシーケンス制御としてはステップ番号「B04」の終了後にステップ番号「A03」が実行されることになる。
これにより、図6に示したような複数のシーケンスプログラムのステップ間の連繋、ジャンプ処理が可能になる。
【0063】
以上のように、本実施形態のシーケンスプログラム作成システムによって作成されたシーケンスプログラムをコントローラにロードして実行することにより、全窒素・全りん測定装置の一連の動作を所望の動作フローに従って制御可能なシーケンス制御システムが実現されるものである。
【0064】
ここで、本実施形態が適用される全窒素・全りん測定装置について説明する。
周知のように、全窒素測定装置は水中に存在する全ての窒素化合物(全窒素)の濃度を化学発光法などによって測定する装置であり、全りん測定装置は水中に存在する全てのりん化合物(全りん)の濃度を吸光光度法などによって測定する装置である。全窒素・全りん測定装置は、同一の試料水に対して全窒素・全りんを一台で同時に測定可能としたものである。
【0065】
図13は、全窒素・全りん測定装置の概略的な構成を示している。
まず、全窒素測定装置の動作フローの一例を説明する。受水槽aに導入された試料水は希釈槽bにより所定の倍率に希釈され、シリンジポンプ等の計量器cにより計量される。計量された試料水は酸化触媒の入った燃焼炉dに滴下され、加熱気化される。これにより、試料水中の窒素化合物は酸化触媒によって空気中の酸素と反応し、酸化して一酸化窒素ガスとなる。
【0066】
生成された一酸化窒素ガスは検出器eに導入され、外部から導入されたオゾンとセル内で反応する。この反応により励起状態の二酸化窒素が発生し、これが基底状態に戻る際に微量な化学発光を生じる。この光強度は一酸化窒素の濃度に比例しているので、発光強度から全窒素濃度を測定することができる。
なお、試料水の計量から発光強度測定までの操作を複数回繰り返し、発光強度の平均値から全窒素濃度を求めている。
【0067】
また、全りん測定装置の動作フローの一例は以下の通りである。前記希釈槽bにより、試料水が全窒素測定時とは異なる倍率で希釈され、計量器fにより計量される。計量された試料水は反応槽gに送られ、所定の分解液と混合してから分解器hに送られる。分解器hでは、試料水を加熱分解することにより試料水中のりん化合物がりん酸イオンに分解される。この分解された試料水を反応槽gに戻して冷却し、その後、計量器fにより一定量を計量して反応槽gに再び戻す。
【0068】
反応槽gでは、所定の発色液及び還元液を試料水に添加し、攪拌することにより、分解したりん酸イオンからモリブデン青を発色生成させる。この発色した試料水を検出器iに導入して所定波長で吸光度を測定すると共に、加水分解中に希釈槽bに残った試料水も反応槽gを介して検出器iに導入し、その吸光度を測定(ブランク測定)してこれらの結果に基づき全りん濃度を演算する。
【0069】
上述した全窒素測定、全りん測定においては、試料水や分解液、発色液、還元液等を各機器に供給するために多数のバルブやポンプ、モータ等を所定の順序で動作させ、また、各機器においても、加熱、冷却、攪拌、測定、排水、洗浄(配管の洗浄も含む)等を所定の順序で実行しなければならない。そして、これらの動作はそれぞれ固有の所要時間を有するステップを逐次実行することによって達成されるものである。
特に全窒素測定、全りん測定では試料水の希釈倍率が異なるため、図13に示すように希釈槽を共用する場合には、全窒素、全りんのそれぞれの測定動作ばかりでなく、サンプルラインや希釈槽等の洗浄動作、排水動作等をメインシーケンス、サブシーケンスの一部として適切なタイミングで行うことが重要になる。
【0070】
本発明のシーケンスプログラム作成システムによれば、それぞれ固有の所要時間を持ち、かつ、必要に応じて他のメイン・サブシーケンス、異常時シーケンスに連繋させるための前ステップ番号を有すると共に次ステップへの移行条件やアラーム検出条件、復帰処理等を設定可能とした個々のステップを、表形式タイムチャート上で任意に設計することができる。このため、複数項目を同時並行的に測定する全窒素・全りん測定装置のように、各機器の動作時間、動作順序、動作条件が複雑に交錯する各種分析装置、測定装置に対して最適なシーケンスプログラムを提供することができる。
【0071】
また、このシーケンスプログラムは、従来のように各種のテキスト言語や図示言語に関する専門的な知識を持たない初心者でも、表計算プログラムを使用できる能力があれば十分に作成可能であり、専門のプログラマや外注先に依存する場合の経済的負担や検証の労力を軽減することができる。
更に、シーケンスプログラムをCSVファイル形式にてコントローラに提供するため、ユーザ側では特別なアプリケーションソフトを用いなくても汎用のテキストエディタ等によりシーケンスプログラムの閲覧、編集が可能である。そして、プログラムに記述された各ステップの内容も比較的容易に理解することができるから、シーケンスの変更(各ステップの内容や順序の変更、追加、削除)が必要になった場合にもユーザ側で柔軟に対応することができる。
【0072】
本発明のシーケンス制御システムによれば、上記シーケンスプログラムが提供されるコントローラによって複数のシーケンスを互いに連繋させながら並行して実行することができ、既存のコントローラの大幅な改良を要することなく各種の装置、プロセス等を制御することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施形態に係るシーケンスプログラム作成システムの構成図である。
【図2】表形式タイムチャート作成手段の機能ブロック図である。
【図3】使用部品設定画面の表示例を示す図である。
【図4】表形式タイムチャートを示す図である。
【図5】ステップ内容設定画面の表示例を示す図である。
【図6】各シーケンス間のジャンプ処理の説明図である。
【図7】ポート条件設定画面の表示例を示す図である。
【図8】表形式タイムチャートを示す図である。
【図9】表形式タイムチャートのコンパイル処理を示す図である。
【図10】全りんサブシーケンスのCSVファイルを一般的なテキストエディタ上で開いた場合の説明図である。
【図11】本発明の実施形態に係るコントローラのシステム構成図である。
【図12】シーケンスプログラム実行装置における処理内容の説明図である。
【図13】全窒素・全りん測定装置の概略的な構成図である。
【符号の説明】
【0074】
10:入力装置
20:シーケンスプログラム作成装置
21:表形式タイムチャート作成手段
211:使用部品設定機能
2110:使用部品設定画面
212:ステップ内容設定機能
2120:ステップ内容設定画面
2121:前ステップ番号
2122:次ステップ移行条件
2122A:部品指定
2122B:条件指定
2123:アラーム指定
2123A:アラーム番号選択
2123B:リストア番号選択
2124:復帰処理
2125:再スタート設定ボタン
2126:排他制御スタートボタン
213:ポート条件設定機能
2130:ポート条件設定設定画面
2131:センサ選択
2132:条件選択
2133:回数選択
214:タイムチャート作成・編集機能
2140,2140A〜2140D:表形式タイムチャート
2141A〜2141D:CSVファイル
22:コンパイル手段
30:記憶装置
40:ファイル出力・通信インタフェース
50:表示装置
60:プリンタ
71:可搬形記憶媒体
72:通信回線
110:入力装置
120:シーケンスプログラム実行装置
121A〜121D:シーケンステーブル
122:ステップ・制御パラメータ指示手段
123:CPU(DSP)
130:記憶装置
140:ファイル入力・通信インタフェース
150:表示装置
180:入出力インタフェース
a:受水槽
b:希釈槽
c,f:計量器
d:燃焼炉
e,i:検出器
g:反応槽
h:分解器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のステップからなるシーケンスをコントローラにより実行するためのシーケンスプログラムの作成方法において、
各ステップの設定内容として、少なくともステップの所要時間と前ステップ指示パラメータと被制御対象部品の状態とを含み、かつ、これらの情報が設定された各ステップを時系列的に配置して表形式タイムチャートを作成すると共に、
前記表形式タイムチャートをCSV形式のファイルに変換して前記コントローラに提供可能としたことを特徴とするシーケンスプログラム作成方法。
【請求項2】
請求項1に記載したシーケンスプログラム作成方法において、
前ステップ指示パラメータとして、当該シーケンスプログラムに連繋させるべき他のシーケンスプログラムのステップ番号を設定することを特徴とするシーケンスプログラム作成方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載したシーケンスプログラム作成方法において、
当該ステップにおける設定内容として、前記所要時間に代えてまたは前記所要時間と共に、次のステップへ移行させるためのトリガーとなる条件を含むことを特徴とするシーケンスプログラム作成方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載したシーケンスプログラム作成方法において、
当該ステップにおける設定内容として、当該ステップを実行中に監視すべき一または複数の監視項目を含むことを特徴とするシーケンスプログラム作成方法。
【請求項5】
請求項4に記載したシーケンスプログラム作成方法において、
当該ステップにおける設定内容として、前記監視項目の検出結果に応じてジャンプさせるべき異常時シーケンスを含むことを特徴とするシーケンスプログラム作成方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載したシーケンスプログラム作成方法において、
当該ステップにおける設定内容として、当該ステップの実行が中断されてその中断原因が解消した際にジャンプさせるべき復帰シーケンスを含むことを特徴とするシーケンスプログラム作成方法。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか1項に記載したシーケンスプログラム作成方法において、
当該ステップにおける設定内容として、当該ステップの実行が中断されてその中断原因が解消された際に中断直前のステップからシーケンスを継続させる情報を含むことを特徴とするシーケンスプログラム作成方法。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載したシーケンスプログラム作成方法において、
当該ステップにおける設定内容として、他のシーケンスの実行ステップの被制御対象部品を当該ステップが共有する場合に、当該ステップまたは他のシーケンスの実行ステップの開始を待機させてシーケンス間の排他制御を可能にするための情報を含むことを特徴とするシーケンスプログラム作成方法。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載したシーケンスプログラム作成方法において、
当該ステップにおける設定内容として、前記所要時間の経過前に、特定の被制御対象部品を制御させる情報を含むことを特徴とするシーケンスプログラム作成方法。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載したシーケンスプログラム作成方法において、
表形式タイムチャートを、作表プログラムに基づいて作成することを特徴とするシーケンスプログラム作成方法。
【請求項11】
複数のステップからなるシーケンスをコントローラにより実行するためのシーケンスプログラムを作成するシーケンスプログラム作成システムにおいて、
各ステップの設定内容として、少なくともステップの所要時間と前ステップ指示パラメータと被制御対象部品の状態とをそれぞれ入力する入力手段と、
この入力手段による入力情報が設定された各ステップを時系列的に配置して表形式タイムチャートを作成する手段と、
前記表形式タイムチャートをCSV形式のファイルに変換する変換手段と、
この変換手段により変換されたファイルを前記コントローラに提供するための出力手段と、
を備えたことを特徴とするシーケンスプログラム作成システム。
【請求項12】
請求項11に記載したシーケンスプログラム作成システムにおいて、
複数のシーケンスプログラムを作成する際に、一のシーケンスプログラムにおける前ステップ指示パラメータとして、当該シーケンスプログラムに連繋させるべき他のシーケンスプログラムのステップ番号を設定する手段を備えたことを特徴とするシーケンスプログラム作成システム。
【請求項13】
請求項11または12に記載したシーケンスプログラム作成システムにおいて、
当該ステップにおける設定内容として、前記所要時間に代えてまたは前記所要時間と共に、次のステップへ移行させるためのトリガーとなる条件を設定する手段を備えたことを特徴とするシーケンスプログラム作成システム。
【請求項14】
請求項11〜13の何れか1項に記載したシーケンスプログラム作成システムにおいて、
当該ステップを実行中に監視すべき一または複数の監視項目を設定する手段を備えたことを特徴とするシーケンスプログラム作成システム。
【請求項15】
請求項14に記載したシーケンスプログラム作成システムにおいて、
前記監視項目の検出結果に応じてジャンプさせるべき異常時シーケンスを設定する手段を備えたことを特徴とするシーケンスプログラム作成システム。
【請求項16】
請求項11〜15の何れか1項に記載したシーケンスプログラム作成システムにおいて、
当該ステップの実行が中断されてその中断原因が解消した際にジャンプさせるべき復帰シーケンスを設定する手段を備えたことを特徴とするシーケンスプログラム作成システム。
【請求項17】
請求項11〜15の何れか1項に記載したシーケンスプログラム作成システムにおいて、
当該ステップの実行が中断されてその中断原因が解消された際に中断直前のステップからシーケンスを継続させる情報を設定する手段を備えたことを特徴とするシーケンスプログラム作成システム。
【請求項18】
請求項11〜17の何れか1項に記載したシーケンスプログラム作成システムにおいて、
他のシーケンスの実行ステップの被制御対象部品を当該ステップが共有する場合に、当該ステップまたは他のシーケンスの実行ステップの開始を待機させてシーケンス間の排他制御を可能にするための情報を設定する手段を備えたことを特徴とするシーケンスプログラム作成システム。
【請求項19】
請求項11〜18の何れか1項に記載したシーケンスプログラム作成システムにおいて、
当該ステップに設定された前記所要時間の経過前に特定の被制御対象部品を制御させる情報を設定する手段を備えたことを特徴とするシーケンスプログラム作成システム。
【請求項20】
請求項11〜19の何れか1項に記載したシーケンスプログラム作成システムにおいて、
表形式タイムチャートを作成するための作表プログラムを備えたことを特徴とするシーケンスプログラム作成システム。
【請求項21】
請求項11〜20の何れか1項に記載したシーケンスプログラム作成システムにおいて、
出力手段が、CSV形式のファイルを可搬形記憶媒体に出力可能であることを特徴とするシーケンスプログラム作成システム。
【請求項22】
請求項11〜21の何れか1項に記載のシーケンスプログラム作成システムから出力されたCSV形式のファイルを解読して、時系列的なステップごとの設定内容を制御パラメータに変換し、これらの制御パラメータに基づく動作を被制御対象部品に逐次実行させるための演算処理を行うシーケンスプログラム実行手段と、
このシーケンスプログラム実行手段に接続され、かつ、複数のポートを介して被制御対象部品に接続される入出力インタフェース手段と、
を有するコントローラを用いて、
被制御対象部品の動作を制御することを特徴とするシーケンス制御システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2006−99622(P2006−99622A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287281(P2004−287281)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】