説明

シーズヒータ及びこれを使用した加熱機器

【課題】環境に優しいシーズヒータを提供する。
【解決手段】金属パイプ1の中央にコイル状の電熱線2を配置し、前記電熱線2と前記金属パイプ1との間に酸化マグネシウムを主成分とする電気絶縁粉末3を充填し、前記金属パイプ1の両端を、鉛の含有量が1000ppm以下の低融点ガラスからなる封口剤5で封止したもので、昨今、有害物質として問題視されている鉛を使用しない安全な加熱源を提供することができる。特に鉛の含有量を1000ppm以下に抑えることにより、ヨーロッパのRoHS指令などの法規制に準拠することも可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源として使用されるシーズヒータ及びこのシーズヒータを加熱源として使用する加熱機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のシーズヒータは、金属パイプの中央にコイル状の電熱線が配置され、この電熱線と金属パイプの間に酸化マグネシウムを主成分とする電気絶縁粉末が充填され、金属パイプの両端は、酸化鉛を主成分とする低融点ガラスからなる封口剤で封着されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような構成のシーズヒータにおいて、封口剤に割れや空隙などの不備があると使用中に大気中の湿気が封口剤の割れ目や隙間から侵入し、金属パイプと電熱線との電気絶縁性を著しく低下させるため、シーズヒータに直接触れたり、金属部材を介して間接的に触れたりすると感電を起こしたり、ブレーカが落ち、シーズヒータを加熱源として用いている加熱機器を使用できなくなるなどの問題が発生する。このような理由から、金属パイプの両端には、湿気が侵入しないように気密性や作業性に優れた酸化鉛を主成分とする低融点ガラスが使用されて来た。
【0004】
そして、上記構成のシーズヒータが、ロースター付きの誘導加熱調理、ホームベーカリー、ホットプレート、魚焼き器などの各種加熱機器に加熱源として使用されて来た。
【特許文献1】特公昭57−18308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のシーズヒータの封口剤に使用されている鉛ガラスが昨今、有害物質として問題とされている鉛を多く含有し、環境に悪い影響を与えるという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、環境に優しいシーズヒータ及び加熱機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明のシーズヒータは、金属パイプの中央にコイル状の電熱線を配置し、前記電熱線と前記金属パイプとの間に酸化マグネシウムを主成分とする電気絶縁粉末を充填し、前記金属パイプの両端を、鉛の含有量が1000ppm以下の低融点ガラスからなる封口剤で封止したもので、昨今、有害物質として問題視されている鉛を使用することなく、電気絶縁性や耐久性に優れたシーズヒータを提供することができる。特に鉛の含有量を1000ppm以下に抑えることにより、ヨーロッパのRoHS指令などの法規制に準拠することも可能となる。
【0008】
また、本発明の加熱機器は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシーズヒータを加熱源として使用したもので、従来の鉛ガラスを使用したシーズヒータと同等の特性を確保しながら、有害物質を含有しない環境に優しい加熱機器を提供することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシーズヒータ及びこれを使用した加熱機器は、有害物質を含有しないので環境に優しい加熱源及び加熱機器となるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、金属パイプの中央にコイル状の電熱線を配置し、前記電熱線と前記金属パイプとの間に酸化マグネシウムを主成分とする電気絶縁粉末を充填し、前記金属パイプの両端を、鉛の含有量が1000ppm以下の低融点ガラスからなる封口剤で封止したもので、昨今、有害物質として問題視されている鉛を使用することなく、電気絶縁性や耐久性に優れたシーズヒータを提供することができる。特に鉛の含有量を1000ppm以下に抑えることにより、ヨーロッパのRoHS指令などの法規制に準拠することも可能となる。
【0011】
第2の発明は、特に、第1の発明の封口剤として、酸化ビスマスを主成分とする低融点ガラスを用いたもので、封着時のガラスに残存する歪を少なく抑えることができると共に、耐水性も高まるため、機械的強度や耐湿性に優れた封口特性を確保すると共に、電気絶縁性や耐久性に優れたシーズヒータを提供することができる。
【0012】
第3の発明は、特に、第1の発明の封口剤として、酸化亜鉛及び酸化硼素を主成分とする低融点ガラスを用いたもので、従来と同様の電気絶縁性や耐久性を確保しながら鉛フリー化が図れ、さらに全く重金属を含まないためさらに環境に優しいシーズヒータを提供することができる。
【0013】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の封口剤の線膨張係数を100×10−7〜130×10−7/℃としたもので、金属パイプ及び電熱線に溶接された電気取り出し端子との密着性を確保することができ、機械的強度や耐湿性に優れたシーズヒータを確保することができる。
【0014】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明の封口剤の外側を、少なくともシリコン樹脂もしくは絶縁碍子で封着したもので、封口剤の機械的強度の向上及び電気絶縁性や耐久性に関する信頼性を著しく向上させることができる。
【0015】
第6の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシーズヒータを加熱源として使用したもので、従来の鉛ガラスを使用したシーズヒータと同等の特性を確保しながら、有害物質を含有しない環境に優しい加熱機器を提供することができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるシーズヒータの断面図である。
【0018】
図1において、1は、金属パイプであり、2は、コイル状の電熱線、3は、金属パイプ1と電熱線2との隙間に充填された酸化マグネシウムからなる電気絶縁粉末である。4は前記電熱線2の両端にスポット溶接にて一体化された電気取り出し端子である。5は、鉛の含有量が1000PPM以下の、所謂鉛フリーの酸化ビスマスを主成分とし、線膨張係数が110×10−7/℃の低融点ガラスからなる封口剤である。
【0019】
なお、鉛フリーの低融点ガラスからなる封口剤として酸化ビスマスを主成分とするもの、酸化亜鉛及び酸化硼素を主成分とするもの、さらに従来の酸化鉛を主成分とするものそれぞれについてシーズヒータを試作し、40℃相対湿度95%の多湿中に放置した時の金属パイプ1と電気取り出し端子4との間の絶縁抵抗値の経時変化を測定した結果を示したのが表1である。
【0020】
【表1】

【0021】
表1の結果から明らかなように、本発明の酸化ビスマスを主成分とするもの、さらに酸化亜鉛及び酸化硼素を主成分とするもののいずれも従来と同等の優れた絶縁特性を示した。
【0022】
また、電気取り出し端子4に水平方向に一定荷重を負荷した後、上述と同様の方法にて1カ月間放置し、絶縁抵抗値の変化を測定した結果を示したのが表2である。
【0023】
【表2】

【0024】
表2に示すように、電気取り出し端子4に機械的な負荷を与えた後の絶縁抵抗値は酸化亜鉛及び酸化硼素を主成分としたものは従来と同様の特性を示したが、酸化ビスマスを主成分とするものは従来のシーズヒータより優れた特性を示した。
【0025】
このように、酸化ビスマスもしくは酸化亜鉛及び酸化硼素を主成分とする鉛フリーの低融点ガラスを封口剤5に使用することにより、従来の酸化鉛を主成分とする低融点ガラスを用いたシーズヒータと同様に優れた電気絶縁特性を確保することができると共に環境に優しいシーズヒータを提供することができる。
【0026】
特に、酸化ビスマスを封口剤5に使用したものは、機械的特性に優れ、信頼性の高いシーズヒータを提供することができる。さらに酸化亜鉛及び酸化硼素は、重金属を全く含まないためにさらに環境に優しいシーズヒータを提供することができる。
【0027】
なお、酸化ビスマスを主成分とする低融点ガラスとしては、酸化ビスマスを70%前後含有し、他の成分として酸化硼素や酸化珪素、さらに酸化亜鉛などの成分を含み、作業温度が500℃〜900℃の範囲のものが良い。また、酸化亜鉛及び酸化硼素を主成分とする低融点ガラスとしては酸化亜鉛が30〜70%、酸化硼素が10〜40%含有し、酸化ビスマスを主成分とするものと同様に作業温度が同様に500℃〜900℃の範囲のものが良い。
【0028】
また、酸化ビスマスを主成分とする低融点ガラスにおいて、線膨張係数を80×10−7〜140×10−7/℃の範囲で変化させたシーズヒータを試作し、上述と同様の方法で多湿雰囲気中に1カ月間後放置した後の絶縁抵抗値を測定し、その結果を示したものが表3である。
【0029】
【表3】

【0030】
表3から明らかなように、線膨張係数が100×10−7〜130×10−7/℃のものが安定した電気絶縁特性を示すことから、低融点ガラスの線膨張係数は上記の範囲のものを用いるのが良い。
【0031】
さらに低融点ガラスからなる封口剤5に加えて絶縁碍子やシリコン樹脂で封止することにより電気絶縁性や機械的強度を高めたより信頼性の高いシーズヒータを提供することができる。
【0032】
図2は、上記実施の形態におけるシーズヒータを使用した加熱機器の1つである誘導加熱調理器の概略構成を示す透視図、図3は、同誘導加熱調理器の縦正面断面図である。
【0033】
11は調理器本体で、12は調理器本体11の上部に位置する天板、13及び14は天板12の下側に位置し、誘導加熱を発生させる加熱コイル、15は魚などの調理を行うロースター加熱室で、16はロースター扉である。17は加熱コイル13やロースター加熱室15などをコントロールする操作部である。また、15aはロースター加熱室15の内部に設置された受け皿、15bは焼き網、15c及び15dは、上記実施の形態で述べたシーズヒータからなる上ヒータ及び下ヒータである。
【0034】
以上のように、封口剤5として酸化ビスマスを主成分とした低融点ガラスを用いたシーズヒータからなる上ヒータ15c、下ヒータ15dを使用することにより環境に優しい誘導加熱調理器を提供する事ができる。
【0035】
なお、上記実施の形態では、シーズヒータを使用する加熱機器として、誘導加熱調理器を例に述べたが、ホームベーカリー、ホットプレート、魚焼き器などにおいても同様に本発明のシーズヒータを使用することにより環境に優しい製品を提供することができる。
【0036】
また、酸化ビスマスにかえて酸化亜鉛及び酸化硼素を主成分とする低融点ガラスからなる封口剤を使用することで、重金属を全く含まないさらに環境に優しい製品を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明にかかるシーズヒータ及びこれを使用した加熱機器は、環境に優しい加熱源及び加熱機器となるもので、一般家庭で使用する加熱機器は勿論加熱源を有する業務用及び産業用加熱機器、装置の用途にも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態1におけるシーズヒータの断面図
【図2】同シーズヒータを使用した誘導加熱調理器の概略構成を示す透視図
【図3】同誘導加熱調理器の縦正面断面図
【符号の説明】
【0039】
1 金属パイプ
2 電熱線
3 電気絶縁粉末
4 電気取り出し端子
5 封口剤
11 調理器本体
12 天板
13、14 加熱コイル
15c 上ヒータ
15d 下ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属パイプの中央にコイル状の電熱線を配置し、前記電熱線と前記金属パイプとの間に酸化マグネシウムを主成分とする電気絶縁粉末を充填し、前記金属パイプの両端を、鉛の含有量が1000ppm以下の低融点ガラスからなる封口剤で封止したシーズヒータ。
【請求項2】
封口剤として、酸化ビスマスを主成分とする低融点ガラスを用いた請求項1に記載のシーズヒータ。
【請求項3】
封口剤として、酸化亜鉛及び酸化硼素を主成分とする低融点ガラスを用いた請求項1に記載のシーズヒータ。
【請求項4】
封口剤の線膨張係数を100×10−7〜130×10−7/℃とした請求項1〜3のいずれか1項に記載のシーズヒータ。
【請求項5】
封口剤の外側を、少なくともシリコン樹脂もしくは絶縁碍子で封着した請求項1〜4のいずれか1項に記載のシーズヒータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のシーズヒータを加熱源として使用した加熱機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−79969(P2006−79969A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263604(P2004−263604)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】