説明

シートバックの中折れ・リクライニング式自動車用シート

【課題】座者が上体をシートバックに凭れ掛けたままの着座姿勢で、バック上部による背中への押圧具合を確認しながら中折れ機構を操作レバーで作動でき、また、また、リクライニング機構を含む両機構を各操作レバーで同時に作動でき、バック上部を含むシートバック全体を最適な姿勢に位置調整し易い自動車用シートを構成する。
【解決手段】シートバック2を角度調整乃至は前後に傾倒可能なリクライニング機構4と、シートバック2のバック上部2aをバック下部2bより前方に立付け出し可能な中折れ機構7とを個別の操作レバー6,9により夫々作動可能に装備するもので、シートバック2の角度に拘らず、座者が着座姿勢のままでリクライニング機構4,中折れ機構7の操作レバー6,9を個別にまたは同時に操作可能なシートクッション3の領域内で左右の側部に分けて各々配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックのリクライニング機構と、シートバックの中折れ機構とを個別の操作レバーにより夫々作動可能に装備する自動車用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用シートにおいては、シートバックを角度調整乃至は前後に傾倒可能なリクライニング機構が備えられている。そのリクライニング機構は、シートバックの枢軸を作動軸としてシートバックの下部側とシートクッションの後部側との間に備え、シートクッションの左右いずれか側部に配設する操作レバーで作動可能に装備されている。
【0003】
そのリクライニング機構と併設し、シートバックのバック上部をバック下部より前方に立付け出し可能な中折れ機構を備えるものがある。この中折れ機構は、バック上部の枢軸を作動軸としてバック上部の下部側とバック下部の上部側との間に備え、シートバックの左右いずれか側部に配設する操作レバーとワイヤケーブルで連結することから作動可能に装備されている(特許文献1)。
【0004】
このように操作レバーを備える自動車用シートでは、座者が中折れ機構を操作レバーで作動するに、操作レバーがシートバックのいずれか片側部に配設されているため、上体を後向きに起こし、手をシートバックの片側部まで伸ばすことから、レバー操作を行う必要がある。
【0005】
そのレバー操作では、座者が上体をシートバックに凭れ掛けたままの着座姿勢で、バック上部による背中への押圧具合や中折れ傾度を確認しながら、中折れ機構を操作レバーで作動するようなことはできない。また、リクライニング機構を含む両機構を各操作レバーで同時に作動できず、バック上部を含むシートバック全体による背中への押圧具合を個別のレバー操作で調整しなければならないため、操作性が悪く、シートバックを最適な姿勢に位置調整しづらい。
【特許文献1】特開2001−277917
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、座者が上体をシートバックに凭れ掛けたままの着座姿勢で、バック上部による背中への押圧具合を確認しながら中折れ機構を操作レバーで作動可能であり、また、リクライニング機構を含む両機構を各操作レバーで同時に作動でき、操作性が良好で、バック上部を含むシートバック全体を最適な姿勢に位置調整し易い自動車用シートを構成するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シートバックをレバー操作で角度調整し乃至は前後に傾倒可能なリクライニング機構と共に、シートバックのバック上部をレバー操作でバック下部より前方に立付け出し可能な中折れ機構を備える自動車用シートにおいて、リクライニング機構,中折れ機構の各操作レバーをシートクッションの左右側部に分けて配設すると共に、シートバックの角度に拘らず、座者が着座姿勢のままで各操作レバーを個別または同時に操作可能なシートクッションの領域内に配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るシートバックの中折れ・リクライニング式自動車用シートに依れば、中折れ機構の操作レバーをリクライニング機構の操作レバーと同じくシートクッションの側部に配設したことから、座者が上体をシートバックに凭れ掛けたままの着座姿勢で操作レバーを掴めるため、バック上部による背中への押圧具合を確認しながら、座者の着座姿勢に応じて中折れ機構を作動できる。
【0009】
それと共に、両機構の操作レバーをシートクッションの左右側部に分けて各々配設したことから、シートバックの角度に拘らず、座者が着座姿勢のままで両操作レバーを掴めるため、各機構を操作レバーで同時に作動でき、バック上部を含むシートバック全体を簡単な操作で最適な姿勢に位置調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図示の自動車用シートは、右ハンドル車のセカンドシートで左側に装備するものとして示されている。以下の説明中で、「右」「左」は乗員が正面を向いて着座した状態を基準に表す。図1は、同じ自動車用シートを左,右の両側面から見て示す。
【0011】
その自動車用シートは、ヘッドレスト1,シートバック2,シートクッション3からなり、シートバック2が通常の着座状態からリクライニング機構4で角度調整乃至は前後に傾倒可能にシートクッション3の後部側に立付け支持されている。
【0012】
リクライニング機構4は、シートバック2をシートクッション3の後部側に立付け支持する枢軸10を作動軸として後述するバックサイドフレームの下側寄りとクッションサイドフレーム11の後側寄りとの間に組付け装備されている。そのリクライニング機構4は、枢軸10とレバー支軸との間に掛け渡すリンクバー5で連結した操作レバー6により作動可能に装備されている。
【0013】
シートバック2は、バック上部2aとバック下部2bとから分割形成されている。このシートバック2では、バック上部2aが中折れ機構7でバック下部2bより前方に立付け出し可能に組み付けられている。
【0014】
中折れ機構7は、バック上部2aをバック下部2bの上側に立付け支持する枢軸12を作動軸として上部サイドフレーム13aの下部側と下部サイドフレーム13bの上部側との間でシートバック2に組付け装備されている。その中折れ機構7は、枢軸12とレバー支軸との間に配線するワイヤケーブル8で連結した操作レバー9により作動可能に装備されている。
【0015】
各操作レバー6,9は、いずれも、シートバックの角度に拘らず、座者が着座姿勢を保って個別にまたは同時に操作可能なシートクッション3の領域内で左右の側部に分けて各々配設されている。後部左シートとしては、リクライニング機構4の操作レバー6をシートクッション3の左側部に、中折れ機構7の操作レバー9をシートクッション3の右側部に配設すればよい。
【0016】
座者が着座姿勢を保って操作可能とは、座者が通常の着座姿勢で乃至はシートバックの後倒し状態における着座姿勢で、座者の手が各操作レバー6,9に届く領域内に配設することを意味する。その領域内であれば、操作レバー6,9の双方間で多少前後の位置にずれていてもよく、また、略相対する同位置でもよい。操作レバー6,9としては、引上げ回転型で同形態のものを備え付けられる。
【0017】
リクライニング機構4のロック装置としては、公知のもの(例えば、特開平8−253063号)を備え付けられる。また、中折れ機構7のロック装置としてもリクライニング機構と同様なものを備え付けられる。リクライニング機構4,中折れ機構7の各ロック装置は枢軸10,13を介して左右に備えられ、操作レバー6,9で作動する片側と同期させて他側も作動可能に組み付けられている。シートバック2,バック上部2aは、スパイラルスプリング(図示せず)で前傾方向に付勢されている。
【0018】
このように構成する自動車用シートでは、リクライニング機構4,中折れ機構7の各操作レバー6,9がいずれもシートクッション3の左右側部に分けて配設されているため、座者がシートバック2に凭れ掛かった着座状態のままで、操作レバー6,9を手で掴んで引くことにより、リクライニング機構4,中折れ機構7を個別にまたは同時に作動するようにできる。
【0019】
シートバック2を通常の着座状態から後倒しに角度調整するときには、図2で示すように座者がシートバック2に凭れ掛かった着座姿勢のままで、通常通り、左手をシートクッション3の左側部に配設された操作レバー6に掛けられる。その操作レバー6を手で掴んで引上げ操作すれば、リクライニング機構4のロック装置を開錠作動できるため、シートバック2を後倒しに角度調整できる。勿論、座者の不在時にはシートバック2をリクライニング機構4のロック開錠で前倒しするようにもできる。
【0020】
バック上部2aを通常の着座状態から前方に立付け出しするときにも、図3で示すように座者がシートバック2に凭れ掛かった着座姿勢のままで、右手をシートクッション3の右側部に配設された操作レバー9に掛けられる。その操作レバー9を手で掴んで引上げ操作すれば、中折れ機構7のロック装置を開錠作動できるため、バック上部2aを前方に立付け出しできる。
【0021】
バック上部2aを含むシートバック2の全体を最適な姿勢に位置調整するときには、これまた、図4で示すように座者がシートバック2に凭れ掛かった着座姿勢のままで、両手をシートクッション3の左右側部に分けて配設された各操作レバー6,9に掛けられる。このため、両機構4,7を操作レバー6,9で同時に作動でき、バック上部2aを含むシートバック2の全体を簡単な操作で最適な姿勢に位置調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る自動車用シートを通常の着座状態で示す左,右の側面図である。
【図2】図1のシートバックをリクライニング機構で後倒しに角度調整した状態で示す左側面図である。
【図3】図1のバック上部を中折れ機構で前方に立付け出しした状態で示す右側面図である。
【図4】図1のバック上部を含むシートバック全体をリクライニング機構,中折れ機構で最適な姿勢に位置調整状態で左側面図である。
【符号の説明】
【0023】
2 シートバック
2a バック上部
2b バック下部
3 シートクッション
4 リクライニング機構
6 リクライニング機構の操作レバー
7 中折れ機構
9 中折れ機構の操作レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックをレバー操作で角度調整し乃至は前後に傾倒可能なリクライニング機構と共に、シートバックのバック上部をレバー操作でバック下部より前方に立付け出し可能な中折れ機構を備える自動車用シートにおいて、リクライニング機構,中折れ機構の各操作レバーをシートクッションの左右側部に分けて配設すると共に、シートバックの角度に拘らず、座者が着座姿勢のままで各操作レバーを個別または同時に操作可能なシートクッションの領域内に配設したことを特徴とするシートバックの中折れ・リクライニング式自動車用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−43521(P2008−43521A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221877(P2006−221877)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【出願人】(000220066)テイ・エス テック株式会社 (625)
【Fターム(参考)】