説明

シートフレームに対するボルト固定構造およびボルトの固定方法

【課題】ボルトのシートフレームへの固定作業において溶接ひずみが生じることなく、ボルト固定の精度が向上するボルト固定構造およびボルトの固定方法を提供する。
【解決手段】シートフレームに設けた挿通孔に挿通してシートフレームの一側面側又は両側面側に駆動部材を取り付けるボルトの固定構造において、ボルトの軸部に、このボルトの軸径より大きなカシメ突部を形成し、このカシメ突部をカシメてカシメ部とし、このカシメ部とボルトの頭部とでシートフレームに挟持して固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートのシートフレームに対するボルト固定構造およびボルトの固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種、ボルト固定構造としては、例えば一例として、特開2008−54715号公報に示すものがある。
この車両用シートは、高さ調整可能にするリフター装置を備え、シートクッションを構成する左右一対のシートクッションフレームに対し、シートバックを構成する左右一対のバックフレームが傾動自在にリクライニング装置を介して連結されている。
そして、シートクッションフレームの側面には、リフター装置の駆動源となる駆動用モータが固定してなる。
この駆動用モータは、シートクッションフレームの側面に形成した固定用孔にボルトを溶接固定し、シートクッションフレームの側面にボルトで固定している。
【0003】
駆動用モータは、シートクッションフレームに強固に固定する必要性から、シートクッションフレームの側面の複数個所に固定用孔が形成され、このシートクッションフレームの側面に複数のボルトを挿通して、ボルトを溶接固定し、ネジなどで螺合してシートクッションフレームに固定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−54715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかるボルト固定構造では、シートクッションフレームの側面に形成した複数個所の固定用孔に複数本のボルトを挿通して溶接固定しているので、各ボルト間で溶接ひずみが生じ、ボルトの軸間ピッチがばらつき、それにより、例えば、駆動用モータの取り付け性が悪化し、取り付け性の悪化によるモータのガタつきにより、モータの作動音が上がるとう言う不具合が生じていた。
即ち、シートクッションフレームに固定するボルトの位置、角度が一律に固定できず、ボルトの固定位置の精度が劣っていた。
【0006】
本発明は、溶接ひずみが生じることなく、ボルトの固定精度が向上するシートフレームに対するボルト固定構造およびボルトの固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シートフレームに設けた挿通孔に挿通してシートフレームの一側面側又は両側面側に駆動部材を取り付けるボルトの固定構造において、
前記ボルトの軸部に、このボルトの軸径より大きなカシメ突部を形成し、このカシメ突部をカシメてカシメ部とし、このカシメ部とボルトの頭部とでシートフレームに挟持して固定することを特徴とする。
【0008】
ボルトは、シートフレームに設けた挿通孔に挿通し、ボルトの軸部に形成したカシメ突部をカシメると、カシメ部とボルトの頭部とで、シートフレームに挟持して固定することができ、溶接しての固定作業でなく、ボルトの固定作業ができる。
【0009】
前記ボルトは前記シートフレームの一側面側のボルト頭部と、前記シートフレームの他側面側のカシメ突部をカシメたカシメ部とからなるので、他側面側のボルトのカシメ部から先端側に駆動部材が取り付けられる。
【0010】
前記ボルトは前記ボルト頭部から外方にネジ溝付きの軸部を延設してなるので、ボルト頭部から外方に延設したネジ溝付きの軸部に、物品が取り付けられる。
【0011】
前記複数本のボルトに設けたカシメ突部を同時にカシメてシートフレームに固定することができると、ボルトのシートフレームへの固定作業が円滑に行え、作業効率が上がる。また、同時にボルトをシートフレームに固定することができると、ボルトのシートフレームへの固定位置の精度が向上し、ボルトの固定位置のブレが無いので、駆動部材などの取り付け作業においての位置合わせが容易化して、駆動部材などの固定作業が行い易くなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ボルトを固定するボルト固定作業において、溶接ひずみが生じることなく、シートフレームへのボルト固定の精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るボルト固定構造を用いた車両用シートの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すボルト固定構造の要部を示す外側からの側面図である。
【図3】図1に示すボルト固定構造の要部を示す内側からの側面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】図2のV−V線断面図である。
【図6】ボルトを固定する前の図5相当の断面図である。
【図7】図6においてボルトを固定した際の断面図である。
【図8】ボルトを固定する前の図4相当の断面図である。
【図9】図8においてボルトを固定した際の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るシートフレームのボルト固定構造の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、車両用シートSは、高さ調整を可能にするリフター機構Lを備え、シートクッションSCを構成する左右一対のシートクッションフレーム5に対して、シートバックを構成する左右一対のバックフレーム7がリクライニング装置Rにより傾動自在に連結されている。なお、このリクライニング装置Rは従来周知の両側ロック式となっている。
【0016】
各シートクッションフレーム5は、前後で平行リンクをなす前側リフターリンク2と後側リフターリンク4を介してスライドレール6のアッパーレール61に連結され、このアッパーレール61は、車体側の車床に固定されたスライドレール6のロアレール62に対して前後に摺動自在に装着されている。
【0017】
以上の高さ調整を可能にするリフター機構Rは、シートクッションフレーム5の後側の内側面に固定されているセクターギア1と、シートクッションフレーム3の側面に有する駆動用ピニオン8と、セクターギア1に形成した上下方向のガイド1Aと駆動ピニオン7の駆動軸81とを連結する連結リンク3から構成されている。
セクターギア1の基端部1Cは後側リフターリンク4の上端4Aと同位置で、左右の後側リフターリンク4の上端4Aが連結シャフト9で連結されている。
【0018】
セクターギア1は、図3に示すようにギャ部1Bが前向きになるように、基端部1Cがシートクッションフレーム5側に固定されている。このセクターギア1に噛合する駆動用ピニオン7はモータ(駆動源)Mによって駆動部M1が駆動する駆動軸81に設けてある。
モータMと駆動部M1とは一体で、駆動部M1に駆動軸81が設けられ、駆動軸81の回転により駆動用ピニオン8が回転する。
【0019】
前記駆動用ピニオン8はモータ(駆動源)Mによって回転させることができ、このモータMは、昇降スイッチによって正逆転が可能であり、所望の方向にのみ回転を維持させるためのブレーキ機構や減速ギアを備えている。
従って、モータ(駆動源)Mを駆動することにより、駆動部M1の駆動軸81が回転するので、この駆動軸81に取り付けられている駆動用ピニオン8が回転してセクターギア1のギャ部1Aに噛合しながらセクターギア1のガイド1Aに沿って上下に移動する。そのため、平行リンクをなす前側及び後側リフターリンク2,4によってシートクッションフレーム5を昇降させることができる。
【0020】
そして、このモータMと一体の駆動部M1はシートクッションフレーム5の外側面にボルト10、100により取り付けられている。
シートクッションフレーム5の側面には、駆動部M1の駆動用ピニオン8が嵌り込むピニオン用孔(図示せず)と、このピニオン用孔の上下左右の4か所にボルト10、100が挿通する挿通孔11が形成されており、このボルト10、100によって、駆動部M1がシートクッションフレーム5に固定されている。
【0021】
ボルト10は、図4,5に示す様に、シートクッションフレーム5に形成した挿通孔11より大径の頭部10Aと、シートクッションフレーム5に形成した挿通孔11に挿通すると共に軸径より大きなカシメ突部10Bとを有し、カシメ突部10Bをカシメてカシメ部10Dとし、シートクッションフレーム5に係止する頭部10Aと、カシメ部10Dとで上下左右(図面の上下左右方向)4か所でシートクッションフレーム5に固定している。
【0022】
上下のボルト10は図5,6,7に示す様に、カシメ突部10Bから先端側にねじ溝10Cを形成して、左右のボルト10は頭部10Aから先端側と、カシメ突部10Bから先端側にねじ溝10Cを形成している。
【0023】
この上下のボルト10は、頭部10Aがシートクッションフレーム5の内側に位置すべく、シートクッションフレーム5の挿通孔11に挿通し、ボルト10のカシメ突部10Bから先端側のねじ溝10Cがシートクッションフレーム5の外側に突出しており、カシメ用治具12、12により挟持押圧すると、図7に示す様に、カシメ突部10Bがカシメてカシメ部10Dとなり、ボルト10の頭部10Aとカシメ部10Dとによりシートクッションフレーム5を挟持して、このボルト10をシートクッションフレーム5に固定することができる。
その為、ボルト10は、シートクッションフレームに溶接により固定することがない。
【0024】
左右のボルト100は、図4、8、9に示す様に、頭部100Aがシートクッションフレーム5の内側に位置すべく、シートクッションフレーム5の挿通孔11に挿通し、ボルト100のカシメ突部100Bから先端側のねじ溝100Cがシートクッションフレーム5の外側に突出し、頭部100Aから先端側のねじ溝100Cがシートクッションフレーム5の内側に突出しており、カシメ用治具12、12により挟持押圧すると、図9に示す様に、カシメ突部100Bがカシメてカシメ部100Dとなり、ボルト100の頭部100Aとカシメ部100Dとにより、このボルト100はシートクッションフレーム5に固定することができ、シートクッションフレームに溶接により固定することがない。
【0025】
上下左右のボルト10、100はシートクッションフレーム5に固定すると、シートクッションフレーム5の外側には4本のボルト10、100のねじ溝10C、100Cが位置しているので、スペース材13を介して駆動源M1を取り付け、ボルト10、100のねじ溝10C、100Cにネジ12を螺合すると、図4,5に示す様に、駆動源M1はシートクッションフレーム5の側面に固定することができる。
【0026】
更に、左右のボルト100はシートクッション5の内側にねじ溝100Cが形成されているので、連結リンク3の両端を差込み、ボルト100のねじ溝100Cにネジ12を螺合すると、連結リンク3はシートクッションフレーム5の側面に固定することができる。
【0027】
図6,8に示す様に、このボルト10、100にはカシメ突部10B、100Bが形成されているので、カシメ治具14によりカシメ突部10B、100Bをカシメてカシメ部10D、100Dとして、頭部10A、100Aとカシメ部10D、100Dにより、ボルト10、100をシートクッションフレーム5に固定することができので、溶接固定することもない為、溶接ひずみが生じない。
【0028】
複数のボルト10、100の場合には、カシメ治具14により、同時に複数のボルト10、100をシートクッションフレーム5の固定することができ、ボルト10、100の軸間ピッチのばらつき発生が防止でき、ボルト10、100に駆動部M1を取り付けた際には、ボルト10、100への駆動部M1の位置合わせが容易で、取付作業が容易化し、ボルト10、100の軸間ピッチのばらつきにより生じていたモータMの作動音の減少化が図られる。
【0029】
また、複数のボルト10、100を同時に固定することができるので、ボルト10、100の取り付け精度が向上すると共に、ボルト10、100のシートクッションフレーム5への固定作業が効率的に行える。
【0030】
更に、ボルトには頭部10A、100Aの両側、若しくは片側にねじ溝10Cが形成されているので、ボルトの両側若しくは片側に物品を取り付けることができ、利便性が生じる。
【0031】
上記では、駆動用モータの取り付けにつき説明しているが、駆動用モータの取り付けだけに限るものではなく、他の物品を取り付けることもできることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0032】
S…車両用シート、SC…シートクッション、3…連結リンク、5…シートクッションフレーム、10、100・・ボルト、10A、100A・・頭部、10B、100B・・カシメ突部、10D,100D・・カシメ部、14・・カシメ治具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートフレームに設けた挿通孔に挿通してシートフレームの一側面側又は両側面側に駆動部材を取り付けるボルトの固定構造において、
前記ボルトの軸部に、このボルトの軸径より大きなカシメ突部を形成し、このカシメ突部をカシメてカシメ部とし、このカシメ部とボルトの頭部とでシートフレームに挟持して固定することを特徴とするシートフレームに対するボルト固定構造。
【請求項2】
前記ボルトは前記シートフレームの一側面側のボルト頭部と、前記シートフレームの他側面側のカシメ突部をカシメたカシメ部とからなり請求項1記載のシートフレームに対するボルト固定構造。
【請求項3】
前記ボルトは前記ボルト頭部から外方にネジ溝付きの軸部を延設してなる請求項1、2記載のシートフレームに対するボルト固定構造。
【請求項4】
前記複数本のボルトに設けたカシメ突部を同時にカシメてシートフレームに固定することを特徴とするシートフレームに対するボルト固定方法。













【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−127411(P2012−127411A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279131(P2010−279131)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】