説明

シートベルトを装備した車両用シート

【課題】シートベルトが通常形状部と異形部との2種類の形状形態で形成される場合でも、それぞれの形状形態に対応した2個のリトラクタ装置で収納させることにより、シートベルトを安定して収納することができるようにする。
【解決手段】車両用シート10のシートバック14に装備されるシートベルト収納装置30を第1のリトラクタ装置40と第2のリトラクタ装置50の2個で構成する。そしてシートベルト20の通常形状部20aを第1のリトラクタ装置40で収納し、異形部20bを第2のリトラクタ装置50で収納する。第2のリトラクタ装置50は回転体60で構成され、シートベルトを挿通する貫通孔を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルトを装備した車両用シートに関する。詳しくは、汎用の通常形状部とは異なる異形部を有するシートベルトをそれぞれ別の収納装置により区別して収納するようにした車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両用シートには、車両衝突時における着座した乗員の保護を図る観点から周知の如くシートベルトが装備されている。シートベルトは車両衝突時において着座した乗員を車両用シートに拘束保持するものである。この拘束保持を効果的に行うためにシートベルトには各種の工夫がなされている。
例えば、車両衝突時におけるシートベルトから乗員胸部へ作用する荷重を分散させるため、乗員胸部箇所を受けるショルダベルト部位の横幅をその他の通常の部位の横幅に比べて幅広にするものがある(下記特許文献2参照)。すなわち、一般的なシートベルトの通常形状部の横幅は46mm〜50mmであるが、その横幅を75mmとして幅広とすることが行われている。この場合、乗員を拘束するために身体に直接当接する部位以外のシートベルト部位、例えば、シートベルトの長手方向の両端を固定箇所に支持させるための端部付近の部位等はコストや重量低減等の観点から通常形状部として形成されるのが普通である。これにより必要な個所のみ幅広の異形部として有効に車両衝突時に受ける荷重の分散化を図っている。
また、車両衝突時には、シートベルトを乗員に確実に密着させて、確実に保護することが行われている。そのためにシートベルトを巻き取るリトラクタ装置にプリテンショナー機構を備えて車両衝突検知時にシートベルトを瞬時にわすか引き込むようにしたものがある。これと同様に、最近では、シートベルト自体を空気袋形態に構成して、車両衝突時にこの空気袋箇所を膨らませることによりシートベルトを着座した乗員の身体に密着させる方策が提案されている。この空気袋を構成する際には、当該箇所のシートベルト部位は通常形状部に比べその厚みが厚く構成されることになる。そして、通常は、この空気袋として構成されるのはショルダベルト部位とされており、その他の部位は一般的な通常形状部として形成されている。
ところで、シートベルトは非装着時及び装着時における余剰の部位はリトラクタ装置等のシートベルト収納装置により収納されるようになっている。このリトラクタ装置の装備位置は車両用シートの内部に装備されることが多く、通常1個装備されるのが普通である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−301564号公報
【特許文献2】特開2007−245786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、シートベルトに通常形状部のほかに、シートベルトの横幅が幅広に形成されたり、空気袋として形成されてその厚みが厚く形成されるなど、通常形状部とは異なる形態形状の異形部が形成されると、その収納が不安定状態となる問題がある。すなわち、シートベルトはリトラクタ装置に引き込まれて収納されるが、形状形態の異なるシートベルト部位が1個のリトラクタ装置に混在して収納されると、その収納が不安定なものとなる。また、リトラクタ装置がシートバックの内部に装備される場合には、異形部として形成されるシートベルト部位からリトラクタ装置までの配索長さが比較的短いこともあって、異形部の多くの長さ部分がリトラクタ装置に巻取り収納されることになる。この様に異形部のシートベルト部位を、従来のように一個のリトラクタ装置で巻き取ろうとすると、その巻取り状態が大型化して、従来のシートバックの厚みの内部にはリトラクタ装置を装備することが困難となる問題が生じる。すなわち、異形部の形状形態が幅広の場合には、リトラクタ装置の横幅が従来に比べ大型化するという問題があり、異形部の形状形態が厚みの厚い場合には、径方向に大型化するという問題があった。
【0005】
而して、本発明は上記した問題点に鑑みてなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、シートベルトが通常形状部と異形部との2種類の形状形態で形成される場合でも、それぞれの形状形態に対応した2個のリトラクタ装置で収納させることにより、シートベルトを安定して収納することができるようにすると共に、リトラクタ装置の大型化を抑制してシートバック内部への装備を従前通り可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のシートベルトを装備した車両用シートは次の手段をとる。
すなわち、本発明に係るシートベルトを装備した車両用シートは、先ず、車両用シートへの着座者を拘束可能に配設されるシートベルトの一端部が、シートバックの内部に配設されるリトラクタ装置によって巻き取られる構成のシートベルトを装備した車両用シートである。
そして、前記シートベルトは着座時におけるシートベルト装着状態で着座者を拘束する部位の少なくとも一部が他の部位の通常形状部に比べ幅が広く形成されるか若しくは厚みが厚く形成される等の異なる形態形状とされた異形部として形成されており、
前記シートベルトの一端部を巻き取って収納するリトラクタ装置は、第1のリトラクタ装置と第2のリトラクタ装置とから成っており、シートベルトの一端部が収納される方向に対して第2のリトラクタ装置、第1のリトラクタ装置の順に直列に配設されて設置されており、
前記第2のリトラクタ装置は回転式巻取り装置として構成されており、車両用シートへの非着座状態で前記シートベルトの少なくとも異形部が回転式巻取り装置を通る状態では該回転式巻取り装置の巻取り回転機能が働いて当該異形部を該第2のリトラクタ装置で巻き取り収納する構成とされているが、車両用シートへの着座状態で前記シートベルトの通常形状部が回転式巻取り装置を通る状態では該回転式巻取り装置の巻取り回転機能を非回転の固定状態としてシートベルトの通常形状部をそのまま通過させて第1のリトラクタ装置で巻き取り収納する構成とされていることを特徴とする。
【0007】
上記した本発明によれば、シートベルトを収納するに際して、第1のリトラクタ装置と第2のリトラクタ装置の二個のリトラクタ装置が装備されている。そして、二個のリトラクタ装置は直列的に配置されており、シートベルトの長手方向で分けて収納するようになっているので、収納容積の小さい装置とすることができる。
なお、収納にあたっては、シートベルトの通常形状部は第1のリトラクタ装置、異形部は回転式巻取り装置の第2のリトラクタ装置で収納するようになっている。このため、その収納を安定性良く収納することができる。また、シートベルトは2個のリトラクタ装置に分散して収納されることから、リトラクタ装置一個当たり巻取りの大型化を抑制することができ、従前のシートバックにも容易に二個のリトラクタ装置を装備させることができる。すなわち、異形部によりその巻取りが多少大型化しても、一個のリトラクタ装置による巻取り長さは従前に比べ短くなることから一個あたりのリトラクタ装置の大型化を抑制することができることによる。
【0008】
なお、上記した本発明に係る車両用シートは、次の様に構成するのが好ましい。すなわち、上記した第2のリトラクタ装置の回転式巻取り装置は、円形の回転体を有して構成されており、該回転体にはシートベルトの通常形状部が挿通することのできる貫通孔が形成されているのが好ましい。
この構成とすることにより、通常形状部の第1のリトラクタ装置への収納移動は第2のリトラクタ装置の貫通孔を通過するのみの簡単な構成とすることができ、第2のリトラクタ装置を簡単に構成することができる。また、異形部の収納もこの第2のリトラクタ装置を回転させることにより巻き取ることができるので、簡単な構成とすることができる。
【0009】
更に、上記した本発明に係る車両用シートは、次の様に構成するのが好ましい。すなわち、第2のリトラクタ装置の回転体に形成される貫通孔は、該第2のリトラクタ装置の回転機能が働いていない非作動状態では、シートベルトの移動方向に沿って配設されている構成とするのが好ましい。
この構成とすることにより、通常形状部の第1のリトラクタ装置への収納移動に際して、第2のリトラクタ装置を通過するとき抵抗無く移動させることができる。
【0010】
更に、上記した本発明に係る車両用シートは、次の様に構成するのが好ましい。すなわち、シートベルトの異形部が第2のリトラクタ装置の巻取り開始位置にきたことを判断する判断手段を備え、この判断手段により前記巻取り開始位置にきたと判断されたとき前記第2のリトラクタ装置による回転巻取り作動が行われるのが好ましい。
この構成とすることにより、判断手段によりシートベルトの異形部が第2の収納装置の収納開始位置にきたことが判断される。そして、この判断に基づいてシートベルトの第1のリトラクタ装置による収納作動から第2のリトラクタ装置による回転巻取り収納作動へ切り替えられるため、その切り替え作動を確実に且つタイミング良く行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記手段とすることにより、シートベルトが通常形状部と異形部との2種類の形状形態で形成される場合でも、それぞれの形状形態に対応した二個のリトラクタ装置で収納させることができ、シートベルトを安定して収納することができると共に、各リトラクタ装置の大型化を抑制してシートバック内部への装備を可能とする。
なお、第2のリトラクタ装置を円形の回転体を有する回転式巻取り装置とすることにより、第2のリトラクタ装置を簡単に構成することができる。また、回転体にシートベルトの通常形状部が挿通することのできる貫通孔を形成し、この貫通孔を第2のリトラクタ装置の回転機能が働いていない非作動状態では、シートベルトの移動方向に沿って配設することにより、通常形状部の第1のリトラクタ装置への収納移動を抵抗を無く移動させることができる。
なお、シートベルトの異形部が第2のリトラクタ装置の納開始位置にきたことを判断する判断手段を備える場合には、シートベルトの第1のリトラクタ装置による収納作動から第2のリトラクタ装置による収納作動へ切り替えを確実に且つタイミング良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例に係るシートベルトを装備した車両用シートの着座状態でのリトラクタ装置による収納状態を原理的に示す側面図である。
【図2】図1に対比して非着座状態でのリトラクタ装置による収納状態を原理的に示す側面図である。
【図3】図1に示す二個のリトラクタ装置のシートベルト収納装置部分を拡大して示す拡大図である。
【図4】シートベルトが第2のリトラクタ装置の回転体の貫通孔を挿通する状態を上方から示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。なお、本説明において、上方、前方、外方等の方向表示は着座者が車両用シートに着座した状態における着座者から見た方向を示している。
図1及び図2はシートベルト20を収納する第1のリトラクタ装置40及び第2のリトラクタ装置50による収納作動状態の原理図を示す。図1は車両用シート10に乗員が着座してシートベルト20を装着した状態でのシートベルト収納作動状態を示し、図2は乗員が車両用シート10から離席してシートベルト非使用状態でのシートベルト収納作動状態を示している。
先ず、図1及び図2に基づいて、シートベルト20を配設した車両用シートの全体構成の概要を説明する。車両用シート(これを単に「シート」と称することもある)10はシートクッション12と、シートバック14とから成っており、シートバック14の上部にはヘッドレスト16が備えられている。この車両用シート10には、着座した乗員Mを拘束するためのシートベルト20が装備されている。シートベルト20は着座した乗員Mの胸部を拘束する部位であるいわゆるショルダベルト部位20Aと、腰部を拘束するいわゆるラップベルト部位20Bとが一体的連続した形態として形成されている。ラップベルト部位20Bとショルダベルト部位20Aとの境界領域には、図示を省略したタングプレートが摺動移動可能に装着されている。そして、このタングプレートをシートクッション12の骨組体に取付けられたこれも図示を省略したバックルに掛着することにより、車両用シート10へ着座者が着座した状態でシートベルト20により車両用シート10に拘束される。
上記シートベルト20の両端部は車両用シート10の所定の箇所に係止される。シートベルト20のラップベルト部位20B側の下端部はシートクッション12の骨組枠に固定されて係止されている。シートベルト20のショルダベルト部位20A側の上端部はシートバック14の内部に配設されたシートベルト収納装置30により収納されて係止されるようになっている。なお、シートベルト収納装置30へシートベルト20を収納移動するに当たっては、シートバック14の肩部に配設されたベルトガイド18により案内されて行われるようになっている。ベルトガイド18はシートバック14の前面位置のシートベルト20をシートバック14の肩部位置で折り返してシートバック14内部のシートベルト収納装置30に案内する。
【0014】
なお、この実施の形態におけるシートベルト20の形状は、ショルダベルト部位20A部分がいわゆる空気袋構造の厚みのある異形部20bの形状となっている。その他の部分は異形部20bより厚みの薄い従来汎用の通常形状部20aとなっている。すなわち、ラップベルト部位20B箇所及び図1においてショルダベルト部位20Aの上端位置であるK点からシートベルト収納装置30の配設位置までの巻取りベルト部位20Cは通常形状部20aの形状で形成されている。なお、必要に応じてこの実施の形態においてもラップベルト部位20Bを空気袋構造の異形部20bの形状とすることもできる。
更に、シートベルト20の異形部20bの態様としては、図4に仮想線(2点鎖線)で示すように、ショルダベルト部位20Aの横幅を幅広とした異形部20bの場合がある。この幅広に形成される異形部20bは図4で見て下方位置の通常形状部20aの横幅より広く形成されている。
【0015】
次に、シートベルト20を収納するためにシートバック14内に配設されるシートベルト収納装置30について説明する。シートベルト収納装置30部分の拡大図が図3に示されている。シートベルト収納装置30は第1のリトラクタ装置40と第2のリトラクタ装置50の二つのリトラクタ装置から構成されている。第1のリトラクタ装置40は従来汎用の巻取り式のリトラクタ装置である。従って、車両衝突時等におけるシートベルトの急激な引出し作動に対してロックするロック機構や、必要に応じていわゆるプリテンショナー機構も備えられている。第2のリトラクタ装置50は図示状態では第1のリトラクタ装置40の上方位置に配設されており、シートベルト20は第2のリトラクタ装置50を通って第1のリトラクタ装置40に収納移動するようになっている。このため、第2のリトラクタ装置50はシートベルト20を挿通する貫通孔62を有する回転体60からなる回転式巻取り装置として構成されている。
なお、回転体60の貫通孔62の配設状態は、第2のリトラクタ装置50の非作動状態、すなわち回転体60の回転機能が働いていない状態では、図3に良く示されるように、シートベルト20の第1のリトラクタ装置40への収納移動経路と一致する状態として配設されている。これによりシートベルト20の第1のリトラクタ装置40への収納移動時には、シートベルト20は第2のリトラクタ装置50箇所を抵抗無く移動することができるようになっている。なお、貫通孔62の大きさは、図4に示すように、この実施例ではシートベルト20の通常形状部20aの断面形状は挿通できるが、異形部20bの断面形状は挿通できない大きさに形成されている。このため、この実施例ではシートベルト20の異形部20bが貫通孔62の位置まで来たら、それ以上の第1のリトラクタ装置40への収納移動は停止されるようになっている。それ以降は、後述もするが第2のリトラクタ装置50によってシートベルト20の異形部20bの収納が行われる。なお、貫通孔62の大きさは、通常形状部20a及び異形部20bの両方共挿通できる大きさに形成しても良い。この場合には、異形部20bが第1のリトラクタ装置40により巻取りされる前に、後述の判断手段により第1のリトラクタ装置40の作動を停止させ、第2のリトラクタ装置50の作動を行わせる。
【0016】
第1のリトラクタ装置40と第2のリトラクタ装置50は収納されるシートベルト20(20a、20b)の収納移動方向に沿って直列的に配設されている。その収納移動方向に対して第2の収納装置50、第1の収納装置40の順で配設されている。シートベルト20の収納時の作動は、第1のリトラクタ装置40、第2のリトラクタ装置50の順で収納作動が行われるようになっている。そして、第1のリトラクタ装置40の作動時には第2のリトラクタ装置50は非作動状態とされており、この非作動状態ではシートベルト20は第2のリトラクタ装置50を抵抗無く通過できる構成となっている。第1のリトラクタ装置40によるシートベルト20の収納動作が終ると、第1のリトラクタ装置40の巻取り作動が停止し、第2のリトラクタ装置50の収納作動が開始する。すなわち、図1から図2の変遷で示すように、第2のリトラクタ装置50の回転体60が図で見て時計廻り方向に回転し、この回転によりシートベルト20の異形部20aが回転体60に巻き取られて、第2のリトラクタ装置50による収納作動が行われる。
図1に示すシートベルト20の着座者Mへの装着状態では、シートベルト収納装置30による収納作動は、第2のリトラクタ装置50は何ら機能していなく、第1のリトラクタ装置40による巻取り機能のみで収納作動が行われている。すなわち、この状態ではシートベルト20は第2のリトラクタ装置50は単に通過するのみで、何の作動もしなく、第1のリトラクタ装置のみで収納作動が行われている。
図2に示すシートベルト20の非装着常態では、シートベルト20の収納作動は、第1のリトラクタ装置40によるシートベルト20の異形部20bの収納作動が終了し、第2のリトラクタ装置50によるシートベルト20のショルダベルト部位20Aの異形部20bの収納作動が行われる状態にある。
【0017】
上記第1のリトラクタ装置40の作動から第2のリトラクタ装置50の作動への切替は、ショルダベルト部位20Aの異形部20bの位置が第2のリトラクタ装置50による巻取り収納位置にきたことを判断する判断手段により判断されて切替作動がおこなわれるようになっている。判断手段としては各種の手段が考えられる。例えば、第1のリトラクタ装置40の巻取り回転数を電気的に検知して、前記巻取りベルト部位20Cの長さ分に相当する巻き取り回転数を検知したとき、その検知信号に基づいて第1のリトラクタ装置40の作動を停止させ、第2のリトラクタ装置50の回転体60を作動回転させる方法がある。
次に、機械的な判断手段としては、通常形状部20aと異形部20bとの形状変化を利用して判断する方法がある。具体的にはシートベルト20を通過できる挿通孔を形成した検知具により行うものである。その挿通孔の大きさを通常形状部20aのシートベルト部位は通すが、異形部20bは通さない大きさとすることにより、シートベルト20はその収納移動時、検知具の挿通孔を巻取りベルト部位20Cの通常形状部20aは通過できるが、ショルダベルト部位20Aの異形部20bは通過できない。そして、このシートベルトの形状変化に基づいて検知具を作動させることができ、この作動に基づいて第2のリトラクタ装置50の回転体60を回転作させる構成とする方法がある。なお、上記の機械的判断手段が配設される位置としてはシートベルト20が収納移動する第2のリトラクタ装置50と第1のリトラクタ装置40との間が考えられる。
なお、上記の判断手段により第2のリトラクタ装置50が作動開始状態になったことに伴う回転体60を回転作動させる手段としては、回転体60をモータにより回転させる方法、あるいは回転体60に予め回転力をバネ付勢しておいて判断されたときにロックを解除して回転させる方法等がある。
【0018】
上記実施形態におけるシートベルト収納装置30によるシートベルト20の収納作動を説明する。
図1に示すシート10へ乗員Mが着座してシートベルト20の装着状態では、ショルダーベルト部位20Aにより乗員Mの胸部が拘束され、ラップベルト部位20Bにより乗員の腰部が拘束された状態にあって、ショルダベルト部位20Aに続く端部部位の巻取りベルト部位20Cの余剰部分が第1のリトラクタ装置40により巻き取られた状態にある。
なお、この状態では第2のリトラクタ装置50は何ら機能することがない。すなわち、回転体60は図3に示される状態にあって、貫通孔62がシートベルト20の収納移動方向と一致した状態となっていることからシートベルト20の第1のリトラクタ装置40への収納移動に際して障害となることなく何の抵抗も無く通過できるようになっている。従って、第1のリトラクタ装置40に、従来通り車両衝突を検知したときに作動するシートベルトロック機構が備えられていても、従来通り機能させることができる。
次に、シート10から乗員が離れ、図1のシートベルト装着状態から図2に示すシートベルト非装着状態となる場合のシートベルト収納装置30へのシートベルト20の収納作動を説明する。先ず、図1に示す第1のリトラクタ装置40からK点までの通常形状部20aで形成された巻取りベルト部位20C箇所は第1のリトラクタ装置40により巻取り収納される。かかる通常形状部20aの部位20Cが第1のリトラクタ装置40により巻き取られると、判断手段によりショルダベルト部位20Aの異形部20bが第2のリトラクタ装置50の収納作動開始位置にきたことが判断される。かかる判断がされると第1のリトラクタ装置40の巻取り作動が止められ、第2のリトラクタ装置50の作動が開始される。これにより第2のリトラクタ装置50の回転体50が回転して、図2に示されるように、異形部20aであるショルダベルト部位20Aが回転体20aに巻き取られ収納される。
【0019】
上記した本実施の形態によれば、通常形状部20aの巻取りベルト部位20Cは巻取り式の第1のリトラクタ装置40に収納され、ショルダベルト部位20Aは回転式の第2のリトラクタ装置50に分けて収納される。すなわち、二個のリトラクタ装置40,50に分けて収納されるため、それぞれの収納装置の収納容積を小さなものとすることができる。これは一般的に装備するスペースが制約されているシートバック14の中に収納装置を装備する場合には有利となるものである。
また、本実施形態では、収納にあたっては、通常形状部20aで形成される巻取りベルト部位20Cを第1のリトラクタ装置40、異形部20bで形成されるショルダベルト部位20Aを第2のリトラクタ装置50に分けて収納するようになっている。このため、各リトラクタ装置40,50はそのシートベルト20C(20a),20A(20b)の形態に適合した装置とすることができ、その収納を安定性良く収納することができる。
【0020】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明はその他各種の形態で実施可能なものである。
例えば、上記実施例の第1のリトラクタ装置を汎用の巻取り式のリトラクタ装置として説明したが、いわゆる引き込み式の扁平な装置であっても良い。扁平な装置とする場合には、厚みの薄いシートバックにも装備することがより容易となる利点がある。
【符号の説明】
【0021】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
16 ヘッドレスト
18 ベルトガイド
20 シートベルト
20A ショルダベルト部位
20B ラップベルト部位
20C 巻取りベルト部位
20a 通常形状部
20b 異形部
30 シートベルト収納装置
40 第1のリトラクタ装置
50 第2のリトラクタ装置
60 回転体
62 貫通孔
M 乗員(着座者)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートへの着座者を拘束可能に配設されるシートベルトの一端部が、シートバックの内部に配設されるリトラクタ装置によって巻き取られる構成のシートベルトを装備した車両用シートであって、
前記シートベルトは着座時におけるシートベルト装着状態で着座者を拘束する部位の少なくとも一部が他の部位の通常形状部に比べ幅が広く形成されるか若しくは厚みが厚く形成される等の異なる形態形状とされた異形部として形成されており、
前記シートベルトの一端部を巻き取って収納するリトラクタ装置は、第1のリトラクタ装置と第2のリトラクタ装置とから成っており、シートベルトの一端部が収納される方向に対して第2のリトラクタ装置、第1のリトラクタ装置の順に直列に配設されて設置されており、
前記第2のリトラクタ装置は回転式巻取り装置として構成されており、車両用シートへの非着座状態で前記シートベルトの少なくとも異形部が回転式巻取り装置を通る状態では該回転式巻取り装置の巻取り回転機能が働いて当該異形部を該第2のリトラクタ装置で巻き取り収納する構成とされているが、車両用シートへの着座状態で前記シートベルトの通常形状部が回転式巻取り装置を通る状態では該回転式巻取り装置の巻取り回転機能を非回転の固定状態としてシートベルトの通常形状部をそのまま通過させて第1のリトラクタ装置で巻き取り収納する構成とされていることを特徴とするシートベルトを装備した車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載のシートベルトを装備した車両用シートであって、
前記第2のリトラクタ装置の回転式巻取り装置は、円形の回転体を有して構成されており、該回転体にはシートベルトの通常形状部が挿通することのできる貫通孔が形成されていることを特徴とするシートベルトを装備した車両用シート。
【請求項3】
請求項2に記載のシートベルトを装備した車両用シートであって、
前記回転体に形成される貫通孔は、前記第2のリトラクタ装置の回転機能が働いていない非作動状態では、シートベルトの移動方向に沿って配設されることを特徴とするシートベルトを装備した車両用シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のシートベルトを装備した車両用シートであって、
前記シートベルトの異形部が第2のリトラクタ装置の巻取り開始位置にきたことを判断する判断手段を備え、この判断手段により前記巻取り開始位置にきたと判断されたとき前記第2のリトラクタ装置による巻取り作動が行われることを特徴とするシートベルトを装備した車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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