説明

シートベルト装置

【課題】シートベルトの装着、格納が容易で、かつ乗降の妨げにならないシートベルト装置の提供。
【解決手段】本発明のシートベルト装置10は、シートベルト30のラップ部32に設けられたエア袋11と、エア袋11に接続されたエアポンプ12と、エアポンプ12のエアON、OFFを制御する制御装置14と、エアポンプ12のエアON時にラップ部32を前傾させエアOFF時にラップ部32を格納位置に戻す傾動装置13と、を備える。制御装置14によりエアポンプ12のエアON、OFFを制御することにり、エア袋11を内蔵したラップ部32の剛性と姿勢を、ドア開閉またはシートへの着座、およびバックル37の装着、離脱に応じて、最適な剛性と姿勢に制御することができる。その結果、シートベルトを、装着、格納が容易で、かつ乗降の妨げにならないようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルトの装着、格納が容易で、かつ乗降の邪魔にならないシートベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、図15に示すように、アウタアンカ2にシートベルト3の先端部分を包むブーツ部材1を設け、ブーツ部材1とシートの下部とに、ブーツ部材1が前傾位置に回動したときにブーツ部材1を前傾位置に保持してシートベルト3の取り出しを容易にするとともに、この保持力を越える後方への操作力で保持を解除する、磁石4と鉄板5とからなる前傾保持手段6を設けたシートベルト装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−256532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のシートベルト装置にはつぎの課題がある。
磁石4と鉄板5でブーツ部材1を保持するため、乗員がブーツ部材1を前傾させないと、シートベルト3およびタングプレートが持ちやすい前方位置に移動しない。また、乗員がブーツ部材1を後方へ移動しないと、シートベルト3を格納することができず、自動ではシートベルト3を格納できない。したがって、シートベルトの装着性、格納性に改善の余地がある。
また、シートベルト3の支持を剛性のある樹脂製ブーツ部材1としているため、シート剛体物7よりも上方までシートベルト3を支持できず、必要位置までシートベルト3を前方に出せない。ブーツ部材1をシート剛体物7よりも上方まで長くすると、ブーツ部材1が前傾位置にある時にブーツ部材1が乗降性を阻害し、かつ、ブーツ部材1がラップベルト部にかかってしまってラップベルト部の腰部拘束性が悪くなる。
【0005】
本発明の目的は、シートベルトの装着、格納が容易で、かつ乗降の妨げにならないシートベルト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する、または上記目的を達成する、本発明のシートベルト装置はつぎのとおりである。
【0007】
(1)本発明のシートベルト装置は、シートベルトのラップ部に設けられたエア袋と、エア袋に接続されたエア圧源と、エア袋の内圧を制御する制御装置と、エア袋の内圧が上がった時にエア袋が設けられたラップ部を前傾位置に移動し、エア袋の内圧が下がった時にエア袋が設けられたラップ部を格納位置に戻す傾動装置と、を備える。
上記(1)は、本発明の全実施例に共通に適用される。
【0008】
(2)上記(1)のシートベルト装置において、エア圧源がエア袋に接続されたエアポンプからなり、制御装置がエアポンプのエアON、OFFを制御する装置からなり、傾動装置がエアポンプのエアON時にエア袋が設けられたラップ部をラップアンカまわりに前傾位置に移動し、エアポンプのエアOFF時にエア袋が設けられたラップ部をラップアンカまわりに格納位置に戻す装置からなる。
ここで、「エアON」とはエア袋の内圧が上がるようにエアポンプが駆動されることであり、「エアOFF」とはエア袋の内圧が下がるようにエアポンプが駆動されることである。したがって、エアポンプのエアON、OFFとエア袋の内圧の上げ、下げとが、それぞれ、対応する。
上記(2)は、本発明の全実施例に共通に適用される。
【0009】
(3)上記(1)または(2)のシートベルト装置において、エア袋は、エア袋の内圧が上った時にシートベルトのラップ部の剛性を上げ、エア袋の内圧が下がった時にシートベルトのラップ部の剛性を下げる。
上記(3)は、本発明の全実施例に共通に適用される。
【0010】
(4)上記(2)または(3)のシートベルト装置において、傾動装置が、エア袋とエアポンプとを接続するエア通路の途中に設けられラップアンカに対する相対位置を固定されたパイプジョイントと、エア通路の途中でパイプジョイントよりエア袋に近い側に設けられた、蛇腹または弾性パイプからなる弾性部とを、有する。
上記(3)は、本発明の全実施例に共通に適用される。
【0011】
(5)上記(2)〜(4)の何れか1つのシートベルト装置において、制御装置が、ドアカーテシまたはシート乗員センサ、およびバックルスイッチに基づいて、エアポンプのエアON、エアOFFを制御するECUまたはリレーユニットを備えている。
上記(5)は、本発明の全実施例に共通に適用される。
【0012】
(6)上記(5)のシートベルト装置において、制御装置は、
ドア開信号またはシート着座信号によりエアポンプをエアONとし、
バックル挿入信号によりエアポンプをエアOFFとし、
バックル解除信号によりエアポンプをエアONとし、
ドア閉信号またはシート非着座信号によりエアポンプをエアOFFとする。
上記(6)は、本発明の全実施例に共通に適用される。
【0013】
(7)上記(5)または(6)のシートベルト装置において、制御装置は、衝突予知時または衝突検知時にエアポンプをエアONとする。
上記(7)は、本発明の全実施例に共通に適用される。
【0014】
(8)上記(2)〜(7)の何れか1つのシートベルト装置において、ラップアンカとエアポンプが車体に固定されており、傾動装置が蛇腹を有する。
上記(8)は本発明の実施例1に適用される。
【0015】
(9)上記(2)〜(7)の何れか1つのシートベルト装置において、ラップアンカがシートのアッパレールに固定されており、エアポンプがシートに固定されるか、または車体に固定されている。傾動装置は蛇腹を有する。
上記(9)は本発明の実施例2に適用される。
【0016】
(10)上記(7)のシートベルト装置において、ラップアンカとエアポンプが車体に固定されており、傾動装置が内圧がかかると湾曲が少なくなる弾性パイプ部からなる。
上記(10)は本発明の実施例3に適用される。実施例3は後部シートの中央席に適用した例である。
【0017】
(11)上記(2)のシートベルト装置において、シートベルト装置が可倒式シートバックを備えた後部シートに取り付けられ、
制御装置は、シートバックロック解除信号によりエアポンプをエアONとする。
上記(11)は本発明の実施例4に適用される。実施例4は後部シートに適用した例である。
【発明の効果】
【0018】
上記(1)のシートベルト装置によれば、シートベルトのラップ部に設けられたエア袋と、エア袋に接続されたエア圧源(エア圧源装置)と、エア袋の内圧を制御する制御装置と、エア袋の内圧が上がった時にエア袋が設けられたラップ部を前傾位置に移動し、エア袋の内圧が下がった時にエア袋が設けられたラップ部を格納位置に戻す傾動装置と、を備えるので、エア袋の内圧を制御することにより、ラップ部の姿勢を変えることができる。
【0019】
上記(2)のシートベルト装置によれば、シートベルトのラップ部に設けられたエア袋と、該エア袋に接続されたエアポンプと、エアポンプのエアON、OFFを制御する制御装置と、エアポンプのエアON時にエア袋が設けられたラップ部を前傾位置に移動し、エアポンプのエアOFF時にエア袋が設けられたラップ部を格納位置に戻す傾動装置と、を備えるので、エアポンプのエアON、OFFを制御することにより、ラップ部の姿勢を変えることができる。
【0020】
その場合に、ドア開時またはシートに着座時に、ラップ部が前傾位置にくるようにエアON、OFFを制御することにより、タングプレートまたはウエビングを掴みやすい位置にもってくることができ、シートベルトの装着が容易になる。
また、ドア閉時または下車時に、ラップ部が格納位置にくるようにエアON、OFFを制御することにより、ラップ部の格納が自動化され、格納が容易になる。
また、エア袋を用いてラップ部の剛性を変えるので、エア袋は横方向(シートベルトラップ部の厚み方向)へ容易に曲がることが可能なため、タングプレートのバックルへのアクセスや、乗降の妨げにはならない。
また、エア袋が容易に曲がるため、特許文献1のようなブーツ材を設ける場合に比べて、エア袋をシート剛体物(シールド)より上方に突出させることができ、エア袋およびタングプレートを掴みやすい位置にもってくることができる。
【0021】
さらに、格納時にラップ部が前傾姿勢から格納姿勢へと変化するため、シートベルトがリトラクタに巻き取られるスピードが規制され、シートベルトのエンドロックの発生が防止される。ここで、エンドロックとは、巻取りエンドの衝撃によってリトラクタにベルト引出し側にロックが生じることがあるが、そのロックのことである。
【0022】
上記(3)のシートベルト装置によれば、エア袋は、エア袋の内圧が上った時にシートベルトのラップ部の剛性を上げ、エア袋の内圧が下がった時にシートベルトのラップ部の剛性を下げる。そのため、ラップ部が前傾位置にある時にはエア袋の内圧を上げてラップ部の剛性を上げることにより、タングプレートを掴みやすい位置に確実に保持することができる。また、ラップ部が格納位置および乗員腰部に掛かる位置にある時にはエア袋の内圧を下げてラップ部の剛性を下げることにより、通常のシートベルトと同様の格納と腰部への掛かり感を得ることができる。
【0023】
上記(4)のシートベルト装置によれば、傾動装置が、エア袋とエアポンプとを接続するエア通路の途中に設けられラップアウトアンカに対する相対位置を固定されたパイプジョイントと、エア通路の途中でパイプジョイントよりエア袋に近い側に設けられた、蛇腹または弾性パイプからなる弾性部とを、有するので、蛇腹または弾性パイプの、エア圧による弾性変形を利用して、エアON、OFFに応じて自動的に、ラップ部を前傾位置と格納位置とに移動させることができる。
【0024】
上記(5)のシートベルト装置によれば、制御装置が、ドアカーテシまたはシート乗員センサ、およびバックルスイッチの信号に基づいて、エアポンプのエアON、OFFを制御するので、ドアの開閉または乗員の乗降、タングプレートのバックルへの挿入離脱に連動して自動的に、ラップ部を前傾位置と格納位置との間に移動させることができる。
【0025】
上記(6)のシートベルト装置によれば、
(イ)制御装置が、ドア開信号またはシート着座信号によりエアポンプをエアONとするので、ラップ部が、前傾姿勢をとり剛性を増大させるとともに、リトラクタからウエビングを引き出す。
(ロ)制御装置が、バックル挿入信号によりエアポンプをエアOFFとするので、タングプレートをバックルに挿入すると、ラップ部が通常のエア袋をもたないラップベルトとなり、ラップ部の腰部への掛かり感が通常のラップベルトと同じになる。 (ハ)制御装置が、バックル解除信号によりエアポンプをエアONとするので、タングプレートをバックルから離脱させると、ラップ部が前傾姿勢をとる。ついで、つぎの(ニ)によって自動的にシートベルトが格納されるので、(ハ)の段階では、乗員はシートベルトを格納せずに下車できる。
(ニ)制御装置が、ドア閉信号または降車信号によりエアポンプをエアOFFとするので、リトラクタの巻取りにより、自動的にシートベルトを格納できる。この場合、シートベルトは前傾位置(ベルトが曲がった状態)から格納位置(ベルトが直線状の状態)へと変化していくので、シートベルトが巻き取られるスピードが規制され、エンドロックの発生を防ぐことができる。
【0026】
上記(7)のシートベルト装置によれば、衝突検知時または衝突予知時に、制御装置が、エアポンプをエアONとするので、エア袋が膨張してラップ部の乗員腰部拘束力が上がり、衝突予知時または衝突検知時におけるラップ部の乗員腰部拘束性能が向上する。
【0027】
上記(8)のシートベルト装置によれば、ラップアンカとエアポンプが車体に固定されており、傾動装置の弾性部が蛇腹からなるので、エアポンプのエアON時に、蛇腹が伸びてラップ部を前方に押し、ラップ部を前傾させる。
【0028】
上記(9)のシートベルト装置によれば、ラップアンカがシート付けである。エアポンプはシートに取付けられてもよいし、あるいは車体に固定されてもよい。エアポンプがシートに取付けられる場合は、シートの位置が変わっても、ラップアンカとエアポンプとの相対位置は変わらないため、可撓性ホースを省略でき、部品点数を削減できる。エアポンプが車体に固定される場合は、可撓性ホースが必要となるが、シートの位置が変わっても、ラップアンカとエアポンプとの相対位置の変化を、可撓性ホースによって吸収できる。
【0029】
上記(10)のシートベルト装置によれば、ラップアンカとエアポンプが車体に固定されており、傾動装置の弾性部が弾性パイプからなるので、エアポンプのエアON時に、弾性パイプは、内圧アップによるパイプの剛性アップと自身の弾性で湾曲度を少なくし(直線状に近づき)、ラップ部を前傾させる。この場合、比較的高価な蛇腹が不要なため、コストを低減できる。
【0030】
上記(11)のシートベルト装置によれば、制御装置が、シートバックロック解除信号によりエアポンプをエアONとするので、シートベルトがシートのロックとストライカーに噛み込むことを防止できる。
従来装置においては、シートバックを前倒しすると、シートベルトがストライカーの前方に残るため、シートバックを引き起こす時に、ベルトがロックとストライカーに噛み込むおそれがあるが、本発明では、エア袋の内圧を上げ、シートバックに干渉しない位置にラップ部を移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例1のシートベルト装置の、エアポンプのエアON時とエアOFF時の両方のシートベルト姿勢を示した、側面図である。
【図2】図1のシートベルト装置の、シートおよび乗員を除去した状態における、側面図である。
【図3】図2のA−A線に沿って見た、エア袋内蔵ラップ部の拡大断面図である。
【図4】図2のB−B線に沿って見た、エア袋内蔵ラップ部の拡大断面図である。
【図5】本発明のシートベルト装置の、制御装置の制御ブロック図である。
【図6】本発明の実施例2のシートベルト装置の、エアポンプのエアON時とエアOFF時の両方のシートベルト姿勢を示した、斜視図である。
【図7】図6の、エア袋の下部とその近傍における拡大側面図である。
【図8】本発明の実施例3のシートベルト装置の、エアポンプのエアON時とエアOFF時の両方のシートベルト姿勢を示した、側面図である。
【図9】図8の装置におけるエア袋の下部とその近傍の拡大斜視図である。
【図10】図9のC−C線に沿って見た、エア袋装着部の拡大断面図である。
【図11】図9のD−D線に沿って見た、エア袋装着部の拡大断面図である。
【図12】図9のD’−D’線に沿って見た、シートベルトのラップ部の、エア袋内圧が上がった時の断面図である。
【図13】本発明の実施例4のシートベルト装置で、後部シートの左右席における、エアポンプのエアON時とエアOFF時の両方のシートベルト姿勢を示した、側面図である。
【図14】(A)、(B)は本発明に適用可能なエアポンプの動作原理図である。
【図15】特許文献1に提案されている、前傾可能なブーツ材を有するシートベルト装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔実施例1〕
本発明の実施例1のシートベルト装置を、図1〜図5、図14を参照して、説明する。図中、FRは、車両前方を示す。
【0033】
まず、本発明の実施例1のシートベルト装置の構成を説明する。
本発明のシートベルト装置10は、シートベルト30のラップ部32に設けられたエア袋11と、エア袋11に接続されたエア圧源(たとえば、エアポンプ等、ただし、エアポンプに限るものではない)12と、エア袋11の内圧を制御する制御装置14と、エア袋11の内圧が上がった時にエア袋11が設けられたラップ部32を前傾位置bに移動し、エア袋11の内圧が下がった時にエア袋11が設けられたラップ部32を格納位置aに戻す傾動装置13と、を備える。
【0034】
エア圧源12としては、つぎのものがある。
(イ)以下に説明するエアポンプ12(エア圧源と同じのため、エアポンプにも符号12を付す)。
(ロ)エアポンプ12と同じかまたは類似の、機能、作用、効果を果たす装置。該装置として、図示は略すが、つぎの(ロ−1)〜(ロ−3)等がある。ただし、(ロ−1)〜(ロ−3)に限るものではない。
(ロ−1)エアポンプと、該エアポンプとエア袋を接続するエア通路に設けられエアポンプからエア袋へのエアの供給とエア袋から大気へのエアの排出を切り換える切り換え弁と、を有する装置。この場合は、エアポンプはエア供給専用であってもよい。また、エア袋11にエアポンプからのエア供給OFF時における格納位置aへの復帰性を付与しておくことが望ましい。
(ロ−2)エアタンクと、該エアタンクとエア袋を接続するエア通路に設けられエアタンクからエア袋へのエアの供給とエア袋から大気へのエアの排出を切り換える切り換え弁と、を有する装置。この場合は、エア袋にエアタンクからのエア供給OFF時における格納位置aへの復帰性を付与しておくことが望ましい。
(ロ−3)エアタンクと、排出専用のエアポンプと、エア袋ぽエアタンクおよびエアポンプに接続するエア通路の分岐部に設けられエアタンクからエア袋へのエアの供給とエア袋からエアポンプを通しての大気へのエアの排出を切り換える切り換え弁と、を有する装置。
【0035】
本発明の実施例1のシートベルト装置10は、図1、図2に示すように、3点式シートベルト30のウエビング31のラップ部32に設けられた(たとえば、内蔵された)エア袋11と、エア袋11に接続されたエアポンプ12と、エアポンプ12のエアON、OFFを制御する制御装置14と、エアポンプ12のエアON時にエア袋11が設けられたラップ部32を前傾位置bに移動し、エアポンプ12のエアOFF時にエア袋11が設けられたラップ部32を格納位置aに戻す傾動装置13と、を備える。エアポンプ12のエアONはエア袋11の内圧アップに対応し、エアポンプ12のエアOFFはエア袋11の内圧ダウンに対応する。
【0036】
シートベルト30のウエビング31は、ラップアンカ33より上部ウエビングの高さ方向中央部(ラップアンカ33と上部のスリップジョイント34との間の高さ方向中央部)までの部分が、ウエビング31を折り返して重ね合わせられる。エア袋11は、ウエビング31とは別体に形成され、重ね合わされた2枚のウエビング部分の間に、挟まれて配置される。重ね合わされた2枚のウエビング部分の幅方向両端部は縫製される(縫製部35)。エア袋11を内蔵した、重ね合わされた2枚のウエビング部分は、乗員がシートベルトを装着した時に、ラップ部となる部分(以下、ラップ部32という)を構成する。折り返して重ね合わされる2枚のウエビング部分の上端は、シート剛体物であるシールド54(図6)の上端よりは上方にある。
【0037】
エア袋11は、エア非透過性(ゴム製、または樹脂製、または布製でシリコーンゴムを塗布したもの)で、可撓性を有する。重ね合わされた2枚のウエビング部分より上部のウエビング部分は、1枚もののウエビングである。この1枚もののウエビング部分に、タングプレート36が摺動可能に設けられている。この1枚のウエビング部分は、スリップジョイント34部位で下方に折り曲げられ、ピラーガーニッシュの裏側に設置されたリトラクタ38に接続している。タングプレート36はバックル(インナーバックル)37に挿入、離脱可能である。バックル37は、ワイヤまたはウエビングを介してシート51に連結される。
ただし、上記のエア袋11を重ね合わされた2枚のウエビング部分に挟む構造に代えて、ラップ部ウエビングを1枚ウエビングから構成しそのウエビングにエア袋11を離脱しないように取付ける構成としてもよい。
【0038】
エア袋11は、エア袋11の内圧が上った時にエア袋内蔵ラップ部32の剛性を上げ、内圧が下がった時にエア袋内蔵ラップ部32の剛性を下げる。図4は、エア袋11の内圧が上ったラップ部32を示し、図3は、エア袋11の内圧が下がったラップ部32を示す。
なお、図3に示すように、エア袋11の中にワイヤ19を入れておいて、密着状態にあるエア袋11内にエアを供給しやすいようにしてもよい。
【0039】
図14にエアポンプ12の一例を示す。図14のエアポンプ12は、交流作動型のダイヤフラム型エアポンプであるが、エアポンプ12はこれに限るものではなく、直流作動型のエアポンプであってもよい。
【0040】
図14のエアポンプ12は、ダイヤフラム12aと、ケーシング12bと、ダイヤフラム12aとケーシング12bとの隔壁に設けられたバルブ12cと、ダイヤフラム12aに連結された左右に可動なロッド12dと、ロッド12dに取り付けられた永久磁石12eと、永久磁石12eに対向して設けられた電磁石12fと、を有する。電磁石12fに交流を流すと、図14の(A)と(B)の状態が交互に表れ、ロッド12dが左右に繰り返し往復動し、左右のエア通路を通ってエアが圧縮されてエアポンプ12からエア袋に送り出される。
【0041】
エアポンプ12のエア出口に接続するエア通路とエアポンプ12のエア入口に接続するエア通路を切り換え可能に合流させ、その合流点に電磁弁(図示せず)を設ける。エアポンプ12を使ってエア袋11からエアを排出または吸引するときは、電磁弁を切り換えて、今まで出側のエア通路を入り側のエア通路とするとともに、今まで入り側のエア通路を出側のエア通路とする。これによって、エア袋11に圧縮エアを供給したのと同じエアポンプ12を使って、エア袋11からエアを排出または吸引できる。
【0042】
傾動装置13は、エアポンプ12のエアON時にラップ部32上端がラップ部32下端より前方に位置するように、ラップ部32をラップアンカ33まわりに前傾させて、ラップ部32を前傾位置bに移動させるとともに、シートベルト30をリトラクタ38から引出す。傾動装置13は、エアポンプ12のエアOFF時に、ラップ部32を含むシートベルト30を格納位置aに戻す。格納位置aは、ラップアンカ33とスリップジョイント34とを直線で結ぶ位置上にある。
【0043】
傾動装置13は、エア袋11とエアポンプ12とを接続するエア通路の途中に設けられラップアンカ33に対する相対位置を固定された剛体のパイプジョイント15と、エア通路の途中でパイプジョイント15よりエア袋11に近い側に設けられた弾性部16とを、有する。
弾性部16は、蛇腹16A(実施例1、2、4)、または、弾性パイプ16B(実施例3)からなる。
【0044】
弾性部16が蛇腹16Aの場合は、エアポンプ12がエアONされてエア袋11に内圧がかかると、蛇腹16Aが伸びてラップ部32を前方に押す。
弾性部16が弾性パイプ16Bの場合は、エアポンプ12がエアONされると、弾性パイプ16Bの曲がり度合いが少なくなって直線状に近づき、ラップ部32を前傾させる。
パイプジョイント15は、ラップアンカ33ブラケット17に固定されている。パイプジョイント15とエアポンプ12とは、可撓性ホース18によって、互いに接続されている。
【0045】
制御装置14は、ECU(制御装置14と同じであるため、ECUの符号を制御装置と同じ符号とする)またはリレーユニットからなる。以下、ECUの場合で説明する。ECU14は、ドアの開閉を検知するドアカーテシ39または乗員がシートに着座したことを検知するシート乗員センサ40、およびバックル37にタングプレート36が挿入されたことを検知するバックルスイッチ41と、電気的に接続している。ECU14は、さらに、衝突検知(または予知)センサ42、およびロック検知センサ43と接続されてもよい。
【0046】
ECU14は、図5に示す、制御ブロック101〜104を有する。
ブロック101では、ECU14は、ドア開または乗員のシートへの着座信号を受けると、エアポンプ12を、エアONにし、エア袋11の内圧を上げる
ブロック102では、ECU14は、バックル挿入信号を受けると、エアポンプ12を、エアOFFにし、エア袋11の内圧を下げる。
ブロック103では、ECU14は、バックル解除信号を受けると、エアポンプ12を、エアONにし、エア袋11の内圧を上げる。
ブロック104では、ECU14は、ドア閉または乗員のシートへの非着座信号を受けると、エアポンプ12を、エアOFFにする。
【0047】
制御装置14に、衝突予知時または衝突検知時に、エア袋11の内圧を上昇させるようにエアポンプ12の運転を制御する制御機能を追加してもよい。
そのためには、ECU14と衝突検知または予知センサ42とを接続し、ECU14に、衝突検知または予知センサ42からの信号を受けた時に、エアポンプ12を、エアONにする制御を追加する(ブロック102に示す)。ただし、タングプレート36はバックル37に挿入したまま(バックルスイッチONのまま)、ECU14がエアポンプ12をエアONにし、エア袋11の内圧を上げる。
以上の構成は、本発明の全実施例に共通に適用可能である。
【0048】
本発明の実施例1は、さらに、つぎの構成を有する。
本発明の実施例1では、シートベルト装置10が前席(運転席または助手席)または後席の左右席用に適用される。ラップアンカ33とエアポンプ12は、車体50に固定されており、シート51に固定されていない。エア袋11は可撓性ホース18を介してエアポンプ12に接続している。また、傾動装置13の弾性部16は、蛇腹16Aからなる。
図6および図7は運転席の場合を示しているが、助手席の場合もこれに準じる。
【0049】
つぎに、本発明の実施例1の作用、効果を説明する。
ECU14からの指示により、エアポンプ12がエアONとされると、エアポンプ12より高圧エアがエア袋11に供給される。エア袋11の内圧が上がって、エア袋11を内蔵したラップ部32の剛性が上がり、かつ、弾性部16(蛇腹16Aまたは弾性パイプ16B)がラップ部32を前傾させてb状態にする。これによって、タングプレート36が前方に移動し、乗員がタングプレート36またはウエビング31を持ちやすくなる。
また、ECU14からの指示により、エアポンプ12がエアOFFになると、エアポンプ12によりエア袋11からエアが排出または吸引され、エア袋11の内圧が下がり、弾性部16(蛇腹16Aまたは弾性パイプ16B)がラップ部32を格納位置aに戻す。
【0050】
さらに詳しくは、図5のブロック101〜104に示すとおりである。
ドア開または乗員のシート着座時には、ブロック101で、ECU14がエアポンプ12をエアONとする。エアONにより、ラップ部32が前傾位置bに押し出され、乗員はシートベルト30およびタングプレート36を容易に持つことができる。
シートベルト30のウエビング31のエア袋11が設けられた部分は、エア袋11の内圧アップにより直線状を保つことができる程度に剛性が上がる。しかし、エア袋11が設けられたシートベルト30部分は横方向(シートベルト厚み方向)には容易に折り曲げることが可能なため、タングプレート36のバックル37へのアクセスや乗降の妨げにはならない。
【0051】
バックル挿入時(タングプレート36がバックル37に挿入されている時)には、ブロック102で、バックルスイッチ41ONの信号を受けて、ECU14がエアポンプ12をエアOFFとする。これによって、エア袋11の内圧が低下する。エア袋11の内圧低下により、エア袋11は偏平になり、ラップ部32は、エア袋が無い通常のラップベルトの装着状態(図3の状態)となる。
また、衝突時または衝突予知時(衝突直前時)には、タングプレート36をバックル37に挿入したまま、ブロック102で、ECU14がエアポンプ12をエアONとすることにより、エア袋11を内蔵したラップ部32は図4の状態になり、ラップ部32の乗員拘束性能を向上できる。すなわち、本発明は、ラップベルトの乗員拘束性能向上に応用可能である。
【0052】
バックル解除時(タングプレート36がバックル37から外された時)には、ブロック103で、バックルスイッチ41OFFの信号を受けて、ECU14がエアポンプ12をエアONとする。バックル操作のみでラップ32はブロック101と同じ状態になる。この状態で、乗員はシートベルト30を格納せずに下車する。シートベルト30の人手による格納操作を省くことができる。エア袋11が設けられたシートベルト30部分は横方向(シートベルト厚み方向)には容易に折り曲げることが可能なため、乗降の妨げにはならない。
【0053】
ドア閉または乗員下車時には、ブロック104で、ドアカーテシ39またはシート乗員センサ40からの信号を受けて、ECU14がエアポンプ12をエアOFFとする。これによって、エア袋11は内圧ダウンにより剛性が下がる。その結果、シートや内装の障害物に引っかかることなくシートベルト30が格納される(格納位置aに戻る)。
また、格納時にシートベルト30が曲がった前傾位置bから格納位置aに移動するため、リトラクタ38に巻き取られるスピードが規制され、ベルトのエンドロックの発生を防ぐことができる。
以上の作用、効果は、本発明の全実施例に共通に適用可能である。
【0054】
本発明の実施例1は、さらに、つぎの作用、効果を有する。
傾動装置13の弾性部16が蛇腹16Aからなるので、エアポンプ12のエアON時に、蛇腹16Aが伸びて、ラップ部32のうち、蛇腹16Aの伸び力がかかる部分を前方に押し、ラップ部32をラップアンカ33まわりに回動させて、ラップ部32を前傾させる。これによって、ラップ部32は前傾位置bに移動する。
また、エアポンプ12のエアOFF時に、蛇腹16Aが縮んで、ラップ部32のうち、蛇腹16Aの縮み力がかかる部分を後方に引いて、ラップ部32をラップアンカ33まわりにエアONの場合と反対方向に回動させて、ラップ部32を格納位置aに戻す。
蛇腹16Aがラップ部22を前方に押す、または後方に引く力は、蛇腹16Aより前方のエア通路部分の通路断面積と該エア通路部分におけるエアの圧力との積である。
また、ラップアンカ33とエアポンプ12が車体50に固定されており、エア袋11が可撓性ホース18を介してエアポンプ12に接続しているので、前席のようにシート51が前後に位置が調整される場合であっても、シート51が前後に移動された時の、エア袋11とエアポンプ12との相対位置の変化は、可撓性ホース18によって吸収される。
【0055】
〔実施例2〕
本発明の実施例2のシートベルト装置10を、図6および図7を参照して説明する。実施例1の説明で全実施例に適用可能とした部分は、本発明の実施例2にも適用される。
本発明の実施例2のシートベルト装置10は、さらに、つぎの構成、作用、効果を有する。
【0056】
まず、本発明の実施例2の構成を説明する。
図6および図7は助手席の場合を示しているが、運転席の場合もこれに準じる。
傾動装置13の弾性部16は蛇腹16Aからなる。
ラップアンカ33は、シート付けであり、アッパレール52に固定されており、シート51と共に移動可能である。アッパレール52は、車体に固定のロアレール上を前後に移動可能である。エアポンプ12はシート51(たとえば、シートクッション51aの後部、またはシートバック51bの下部)に取付けられるか、または、車体50に固定されている。エアポンプ12にはワイヤハーネス60が接続している。
【0057】
エアポンプ12がシートクッション51aに取付けられる場合は、ラップアンカ33とエアポンプ12とを接続するエア通路上に可撓性ホース18が設けられなくてもよいが、エアポンプ12が車体50またはシートバック51bに固定される場合は、ラップアンカ33とエアポンプ12とを接続するエア通路上に可撓性ホース18が設けられる。
図6において、部材53は、ラップアンカ33を覆う蓋であり、シールド54の切欠55部位に装着される。
【0058】
次に、本発明の実施例2の作用、効果を説明する。
傾動装置13の弾性部16が蛇腹16Aからなるので、エアポンプ12のエアON時に、蛇腹16Aが伸びて、ラップ部32を前傾位置bに移動し、エアポンプ12のエアOFF時に、蛇腹16Aが縮んで、ラップ部32を格納位置aに移動する。
【0059】
ラップアンカ33がシート付けで、エアポンプ12がシート51に取付けられる場合は、シート51の位置が前後方向に変わっても、ラップアンカ33とエアポンプ12との相対位置は変わらない。したがって、可撓性ホース18が設けられなくてもよく、ラップアンカ33とエアポンプ12とを接続するエア通路の構成が単純化され、部品点数も削減される。
ラップアンカ33がシート付けで、エアポンプ12が車体50に固定される場合は、シート51の位置が変わった時の、ラップアンカ33とエアポンプ12との相対位置の変化は、可撓性ホース18によって吸収される。
【0060】
〔実施例3〕
本発明の実施例3のシートベルト装置10を、図8〜図12を参照して説明する。実施例3は、後部シートの中央席にシートベルト装置10を設けた場合である。実施例1の説明で全実施例に適用可能とした部分は、本発明の実施例3にも適用される。
本発明の実施例3のシートベルト装置10は、さらに、つぎの構成、作用、効果を有する。
【0061】
まず、構成を説明する。
後部シートの中央席のシートベルト30は3点式シートベルトで、上端がリトラクタ38に常時連結され、下端がラップアンカ33に常時連結される。中間部にタングプレート36が摺動自在に設けられ、乗員が着座した時に、リトラクタ38からウエビングを引き出すとともに、タングプレート36を、ラップアンカ33と乗員を挟んで反対側にあるインナーバックル37に挿入して3点式シートベルトを構成する。この場合、乗員腰部を拘束する部分がラップ部32であり、ラップ部32よりリトラクタ38側のウエビング部分がショルダベルトを構成する。
【0062】
シートベルト上端はシートバック51bの上端部に設けられたベルトガイド44を通って、アッパバックパネル45の下方に内蔵されたリトラクタ38に延びている。ただし、リトラクタ38は、アッパバックパネル45の下方で車体に固定される場合に代えて、天井のルーフインナパネルに固定されてもよい。
【0063】
本発明の実施例3では、ラップアンカ33は車体50に固定されている。エア袋11は、やや剛性がある(エア袋11よりは剛性がある)樹脂製またはゴム製の弾性パイプ16Bを介して、剛性があるジョイントパイプ15に接続されている。ジョイントパイプ15は可撓性ホース18を介してエアポンプ12に接続されている。エアポンプ12は車体50に固定されている。エアポンプ12にはワイヤハーネス60が接続している。ジョイントパイプ15の位置、姿勢が安定しない場合は、ブラケット17により、車体50に固定する。
【0064】
ラップ部32のウエビングを折り返し構造としエア袋11を挟み込む構造は、実施例1に準じる。弾性パイプ16Bは、エア袋11と同じように、折り返した2枚のウエビング間に挟まれて設けられる。エア袋11は、2枚のウエビングからなるラップ部32のうち、シートクッション51aとシートバック51bとによって挟まれる部分より上側に、設けられ、弾性パイプ16Bは、シートクッション51aとシートバック51bとによって挟まれる部分に設けられる。
【0065】
傾動装置13の弾性部16は、弾性パイプ16Bからなる。
エア袋11および弾性パイプ16Bの内圧が下がると、エア袋11および弾性パイプ16Bを内蔵したラップ部32の剛性が下がり、リトラクタ38によるシートベルト引張力によって、シートベルト30は、格納状態aに移動し、シートバック51bの表面に接触する。この状態では、弾性パイプ16Bは湾曲度合いが大きい。
エア袋11および弾性パイプ16Bの内圧が上がると、エア袋11および弾性パイプ16Bの剛性が上がるとともに、弾性パイプ16B自身の、直線状態へ戻ろうとする弾性力によって、弾性パイプ16Bの湾曲の度合いが少なくなる(湾曲の度合いが少なくなって直線状に近づく)。それによって、ラップ部32がシートバック51bの表面から離れて前傾し、シートベルト30は前傾位置bとなる。
【0066】
つぎに、本発明の実施例3は、つぎの作用、効果を有する。
ドア開または乗員のシートへの着座で、エアポンプ12がエアONとなると、エア袋11および弾性パイプ16Bの内圧が上がり、ラップ部32が前傾位置bに移動する。これによって、乗員はシートベルト10またはタングプレート36を容易に掴むことができる。
バックル挿入、バックル解除に伴う、ラップ部32の作動は、実施例1に準じる。
【0067】
ドア閉または下車で、エアポンプ12がエアOFFとなると、エア袋11および弾性パイプ16Bの内圧が下がり、シートベルト10はリトラクタ38に巻き取られ、ラップ部32は自動的にシート表面に接触する格納位置aに移動する。エンドロック防止は、実施例1に準じる。
【0068】
〔実施例4〕
本発明の実施例4のシートベルト装置10を、図13を参照して説明する。実施例4は、シートバックが前倒し可能な後部シートの左右席にシートベルト装置10を設けた場合である。実施例1の説明で全実施例に適用可能とした部分は、本発明の実施例4にも適用される。
本発明の実施例4のシートベルト装置10は、さらに、つぎの構成、作用、効果を有する。
【0069】
まず、本発明の実施例4の構成を説明する。
前倒し可能構造の後部シート51に対し、シート51のロック56と、該ロック56に係合するストライカー57が、設けられている。エアポンプ12、ジョイントパイプ15、弾性部16(蛇腹16A)、リトラクタ38、ECU14等のシートベルト装置部品は、図13には、図示を略しているが、図1、図2と同様の部品が準用される。
【0070】
本発明の実施例4では、シートバックロック56に、ロック検知センサ43(図1に図示)が追加して設けられる。ロック検知センサ43はロックまたはロック解除を検知し、該信号をECU14に入力する。
シートベルト装置10は、可倒式シートバック51bを備えた後部シート51に取り付けられる。ECU14は、ロック検知センサ43からのシートバックロック解除信号により、エアポンプ12をエアONにする制御が追加して設けられる。
【0071】
本発明の実施例4は、つぎの作用、効果を有する。
シートバックロックが解除されると、シートバック51bを前倒しできるようになる。制御装置(ECU)14は、シートバックロック解除信号によりエアポンプ12をエアONにするので、シートベルト30がシート51のロック56とストライカー57に噛み込むことを防止できる。
すなわち、シートバック51bを前倒しすると、シートベルト30がストライカー57の前方に残るため、シートバック51bを引き起こすと、シートベルト30がロック56とストライカー57に噛み込むおそれがあるが、エアONでエア袋11の内圧を上げ、ラップ部32をシートバック51bに干渉しない位置(前傾位置b)に移動させることができる。したがって、シートバック51bを起こす時に、シートベルト30がロック56とストライカー57に噛み込むことはない。
【符号の説明】
【0072】
10 シートベルト装置
11 エア袋
12 エア圧源(エアポンプ、等)
12a ダイヤフラム
12b ケーシング
12c バルブ
12d ロッド
12e 永久磁石
12f 電磁石
13 傾動装置
14 制御装置(ECU)
15 パイプジョイント
16 弾性部
16A 蛇腹
16B 弾性パイプ
17 ブラケット
18 可撓性ホース
19 ワイヤ
30 シートベルト
31 ウエビング
32 ラップ部
33 ラップアンカ
34 スリップジョイント
35 縫製部
36 タングプレート
37 バックル
38 リトラクタ
39 ドアカーテシ
40 シート乗員センサ
41 バックルスイッチ
42 衝突検知センサ
43 ロック検知センサ
44 ベルトガイド
45 アッパバックパネル
50 車体
51 シート
51a シートクッション
51b シートバック
52 アッパレール
53 蓋
54 シールド
55 切欠
56 ロック
57 ストライカー
60 ワイヤハーネス
101〜104 ブロック
a 格納位置
b 前傾位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートベルトのラップ部に設けられたエア袋と、
該エア袋に接続されたエア圧源と、
前記エア袋の内圧を制御する制御装置と、
前記エア袋の内圧が上がった時に前記エア袋が設けられたラップ部を前傾位置に移動し、前記エア袋の内圧が下がった時に前記エア袋が設けられたラップ部を格納位置に戻す傾動装置と、
を備えたシートベルト装置。
【請求項2】
前記エア圧源が前記エア袋に接続されたエアポンプからなり、
前記制御装置が前記エアポンプのエアON、OFFを制御する装置からなり、
前記傾動装置が前記エアポンプのエアON時に前記エア袋が設けられたラップ部をラップアンカまわりに前傾位置に移動し、前記エアポンプのエアOFF時に前記エア袋が設けられたラップ部を前記ラップアンカまわりに格納位置に戻す装置からなる、請求項1記載のシートベルト装置。
【請求項3】
前記エア袋は、該エア袋の内圧が上った時にシートベルトのラップ部の剛性を上げ、該エア袋の内圧が下がった時にシートベルトのラップ部の剛性を下げる、請求項1または請求項2記載のシートベルト装置。
【請求項4】
前記傾動装置が、前記エア袋と前記エアポンプとを接続するエア通路の途中に設けられ前記ラップアンカに対する相対位置を固定されたパイプジョイントと、前記エア通路の途中で前記パイプジョイントより前記エア袋に近い側に設けられた、蛇腹または弾性パイプからなる弾性部とを、有する請求項2または請求項3記載のシートベルト装置。
【請求項5】
前記制御装置が、ドアカーテシまたはシート乗員センサ、およびバックルスイッチに基づいて、前記エアポンプのエアON、エアOFFを制御するECUまたはリレーユニットを備えている、請求項2〜請求項4の何れか1項に記載のシートベルト装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
ドア開信号またはシート着座信号により前記エアポンプをエアONとし、
バックル挿入信号により前記エアポンプをエアOFFとし、
バックル解除信号により前記エアポンプをエアONとし、
ドア閉信号またはシート非着座信号により前記エアポンプをエアOFFとする、
請求項5記載のシートベルト装置。
【請求項7】
前記制御装置は、
衝突予知時または衝突検知時に前記エアポンプをエアONとする、請求項5または請求項6記載のシートベルト装置。
【請求項8】
前記ラップアンカと前記エアポンプが車体に固定されており、前記傾動装置が蛇腹を有する、請求項2〜請求項7の何れか1項に記載のシートベルト装置。
【請求項9】
前記ラップアンカがシートのアッパレールに固定されており、前記エアポンプがシートに取付けられるか、または車体に固定されており、前記傾動装置が蛇腹を有する、請求項2〜請求項7の何れか1項に記載のシートベルト装置。
【請求項10】
前記ラップアンカと前記エアポンプが車体に固定されており、前記傾動装置が弾性パイプを有する、請求項2〜請求項7の何れか1項に記載のシートベルト装置。
【請求項11】
前記シートベルト装置が可倒式シートバックを備えた後部シートに取り付けられ、
前記制御装置は、シートバックロック解除信号により前記エアポンプをエアONとする、請求項2記載のシートベルト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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