説明

シートポジション調節装置

【課題】車両用シートのメモリー位置を乗員毎に登録する必要がなく、使い勝手の良い、シートポジション調節装置を提供する。
【解決手段】車両用シート20のシートポジション調節装置1において、車両用シート20を前後方向に移動可能な駆動手段13と、車両用シート20の前後方向の位置を検出可能なシート位置検出手段12と、携帯端末装置50から送信される乗員の身体情報を含む送信情報を受信する受信手段11と、受信手段11が受信した送信情報に含まれている身体情報と、シート位置検出手段12からの検出信号と、に基づいて、駆動手段13を制御して身体情報に応じたシート位置となるように車両用シート20の前後方向の位置を調節する制御手段10と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの前後方向の位置を自動的に調節するシートポジション調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用シートの前後方向の位置を調節する種々の調節装置が開示されている。
例えば特許文献1に記載された従来技術には、ユーザの携帯電話の情報と、当該ユーザに対応させた車両用シートのメモリー位置を、予め車両機器制御装置に記憶させておき、携帯電話の電波を検知させて乗員が「誰」であるか特定させ、ドアを開けた際に車両用シートの位置を、メモリー位置に自動的に調節させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−195228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された従来技術では、ユーザは、予め車両用シートのメモリー位置と自身の携帯電話の情報とを、車両機器制御装置に記憶させておく必要があり、使い勝手が悪い。また当然であるが、メモリー位置及び携帯電話の情報が車両機器制御装置に登録されていないユーザでは、自動調節することができない。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、車両用シートのメモリー位置を乗員毎に登録する必要がなく、使い勝手の良い、シートポジション調節装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係るシートポジション調節装置は次の手段をとる。
まず、本発明の第1の発明は、車両用シートのシートポジション調節装置において、車両用シートを前後方向に移動可能な駆動手段と、前記車両用シートの前後方向の位置を検出可能なシート位置検出手段と、携帯端末装置から送信される乗員の身体情報を含む送信情報を受信する受信手段と、前記受信手段が受信した前記送信情報に含まれている身体情報と、前記シート位置検出手段からの検出信号と、に基づいて、前記駆動手段を制御して前記身体情報に応じたシート位置となるように前記車両用シートの前後方向の位置を調節する制御手段と、を有する。
【0006】
この第1の発明によれば、乗員の身体情報を携帯端末装置から送信することでシートポジションを自動的に調節するので、車両用シートのメモリー位置を乗員毎に登録する必要がない。このため、手間なく、使い勝手の良いシートポジション調節装置を提供することができる。
【0007】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係るシートポジション調節装置であって、更に、乗員が前記乗物用シートに着座したことを検知可能な検知手段を備え、前記制御手段は、前記受信手段が前記送信情報を受信した場合、前記車両用シートの前後方向の位置が前記身体情報に対応させた運転適正位置よりも所定量だけ後方となるように前記駆動手段を制御し、前記検知手段を用いて乗員が前記車両用シートに着座したことを検知した場合、前記車両用シートの前後方向の位置が前記運転適正位置となるように前記駆動手段を制御する。
【0008】
この第2の発明によれば、乗員の身体情報に合わせて運転適正位置にシートポジションを調節することはもちろんのこと、乗員が着座する際に、より容易に着座できるように適切な位置にシートポジションを移動させるので、非常に便利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】シートポジション調節装置1の全体構成を説明する図である。
【図2】携帯端末装置の操作画面等を説明する図である。
【図3】乗降時シートポジション調節処理を説明するフローチャートである。
【図4】運転時シートポジション調節処理を説明するフローチャートである。
【図5】乗降時のシートポジション調節動作を説明する図である。
【図6】運転時のシートポジション調節動作を説明する図である。
【図7】乗降時、及び運転時の座面の高さを調節する機能を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。
●[シートポジション調節装置1の全体構成(図1)]
図1に示すように、シートポジション調節装置1は、制御手段10、受信手段11、シート位置検出手段12、駆動手段13、乗降検知手段14(検知手段に相当)等にて構成されており、車両の床面Fに対して車両用シート20の前後方向の位置を自動的に調節する。
受信手段11は、乗員の携帯端末装置50から送信される乗員の身体情報を含む送信情報を受信し、受信した送信情報を制御手段10に出力する。
なお、携帯端末装置50は、例えばスマートフォン、携帯電話、PDA(Personal Disital Assistant)、携帯用パーソナルコンピュータ、タブレット型パーソナルコンピュータ等、携帯可能な端末装置である。
シート位置検出手段12は、車両用シート20の前後方向の位置に応じた検出信号を制御手段10に出力する。
駆動手段13は、制御手段10からの制御信号に基づいて、車両用シート20を前後方向に移動可能である。
乗降検知手段14は、乗員が乗車したこと、及び乗員が降車したこと、を検知可能であり、検出信号を制御手段10に出力する。例えば乗降検知手段は、車両用シート20に設けられた着座センサや、携帯端末装置50を収納可能な収納ボックスや、車両のドアの開閉スイッチ等である。
【0011】
制御手段10には、身体情報に対応させて運転適正位置情報を記憶した適正位置情報が予め記憶されている。
例えば身長170〜180[cm]という身体情報には、最前端から12[cm]後退した運転適正位置情報が対応させて記憶されており、身長160〜170[cm]という身体情報には、最前端から8[cm]後退した運転適正位置情報が対応させて記憶されている。
なお身体情報は、乗員の身長に関する情報に限定されず、乗員の体重に関する情報等、乗員の身体に関する情報であれば良い。本実施の形態にて説明する身体情報は、乗員の身長に関する情報であり、150[cm]未満、150〜160[cm]、160〜170[cm]、170〜180[cm]、180〜190[cm]、190[cm]以上、の中から選択された情報を例として説明する。
【0012】
シートポジション調節装置1の制御手段10は、携帯端末装置50から送信情報を受信すると、受信した送信情報に含まれている身体情報と、シート位置検出手段12からの検出信号と、適正位置情報に基づいて、駆動手段13を制御して身体情報に応じたシート位置となるように車両用シート20の前後方向の位置を制御する。
なお、シートポジション調節装置1には、車両用シート20の前後方向の位置を手動で調節可能な手動操作スイッチ等も備えられている。
【0013】
●[携帯端末装置50の操作画面(図2)]
次に図2を用いて、乗員の携帯端末装置50の操作画面等を説明する。
携帯端末装置50には、シートポジション調節用アプリケーションソフトウェア(以下、アプリソフトと記載する)がインストールされている。
乗員が携帯端末装置50を操作してアプリソフトを起動すると、図2に示すような操作画面が表示される。操作画面は、乗員の身体情報を入力(選択も入力の概念に含む)する入力部51と、入力した身体情報を送信する送信ボタン52にて構成されている。
図2に示す入力部51の例では、乗員は、150[cm]未満、150〜160[cm]、160〜170[cm]、170〜180[cm]、180〜190[cm]、190[cm]以上、の中からいずれかを選択する画面の例を示している。
【0014】
例えば乗員が、自身の身長に応じた170〜180[cm]を選択し、送信ボタン52を操作すると、携帯端末装置50から身体情報(この場合、170〜180[cm]に対応する情報)を含む送信情報が送信される。
また、送信情報の送信は、Bluetooth(登録商標)等の無線にて行われる。なお、無線通信方法は、Bluetooth(登録商標)に限定されず、種々の方法を用いることが可能であり、受信手段11は、無線通信方法に応じた受信手段であればよい。
なお、上記に説明したように、携帯端末装置50から身体情報を送信するので、例えば乗員Cの友人Dが運転する場合でも、乗員Cの携帯端末装置50から、友人Dの身体情報を送信するだけでよいので、非常に便利である。
【0015】
●[乗降時シートポジション調節処理(図3)と動作(図5)]
次に図3のフローチャートを用いて乗降時シートポジション調節処理の手順について説明するとともに、図5を用いて乗員の乗降時におけるシートポジション調節装置1による車両用シート20の移動について説明する。
例えば制御手段10は、所定時間毎(例えば100ms毎)に図3の処理を起動する。
【0016】
ステップS10では、制御手段10は、受信手段11が携帯端末装置50から送信情報を受信したか否かを判定し、送信情報を受信した場合(Yes)はステップS20に進み、送信情報を受信していない場合(No)はステップS15に進む。送信情報を受信した場合、乗員が乗車したことを検知する。
ステップS15に進んだ場合、制御手段10は、乗降検知手段14の検出信号に基づいて、乗員の降車を検知したか否かを判定し、乗員の降車を検知した場合(Yes)はステップS20に進み、乗員の降車を検知していない場合(No)は処理を終了する。なお、降車の検知は、例えば車両のドアが閉状態から開状態となった場合や、携帯端末装置50の収納ボックスから携帯端末装置50が取り出された場合に、乗員が降車したことを検知する。
【0017】
ステップS20に進んだ場合、制御手段10は、シート位置検出手段12からの検出信号に基づいて、現在シート位置(例えば最前端からの距離)Lを読み込み(検知し)、ステップS30に進む。
ステップS30では、制御手段10は、受信した送信情報に含まれている身体情報(乗員の降車を検知した場合は、乗員の乗車時に記憶した身体情報)と、記憶している適正位置情報と、に基づいて、運転適正位置を求め、求めた運転適正位置から所定距離だけ後退した後退適正位置Aを求める。そして現在シート位置Lと後退適正位置Aとを比較し、現在シート位置Lが後退適正位置Aよりも前であるか否かを判定する。現在シート位置Lが後退適正位置Aよりも前である場合(Yes)、ステップS40に進み、現在シート位置Lが後退適正位置Aよりも後ろである場合(No)、ステップS50に進む。
【0018】
ステップS40に進んだ場合、制御手段10は、シート位置検出手段12からの検出信号に基づいたシート位置が後退適正位置Aとなるまで、駆動手段13を制御して車両用シート20を後方に移動させ、処理を終了する。このステップS40により、図5(A)及び(B)に示すように、車両用シート20が、後退適正位置Aまで後退し、乗員が容易に着座できるようにする。なお、後退適正位置Aは、図5(C)の後退適正位置情報に示すように、乗員の身体情報に、後退適正位置A1〜A6のそれぞれが対応させて記憶されている。例えば図5(C)に示す後退適正位置A1は、図6(C)に示す運転適正位置B1から所定距離(例えば50[mm])だけ後退した位置であり、後退適正位置A2は、運転適正位置B2から所定距離だけ後退した位置である。
ステップS50に進んだ場合、制御手段10は、シート位置検出手段12からの検出信号に基づいたシート位置が後退適正位置Aとなるまで、駆動手段13を制御して車両用シート20を前方に移動させ、処理を終了する。
【0019】
●[運転時シートポジション調節処理(図4)と動作(図6)]
次に図4のフローチャートを用いて運転時シートポジション調節処理の手順について説明するとともに、図6を用いて乗員の着座時におけるシートポジション調節装置1による車両用シート20の移動について説明する。
例えば制御手段10は、所定時間毎(例えば100ms毎)に図4の処理を起動する。
【0020】
ステップS110では、制御手段10は、乗降検知手段14の検出信号に基づいて、乗員が着座したか否かを判定し、乗員の着座を検知した場合(Yes)はステップS120に進み、乗員の着座を検知しなかった場合(No)は処理を終了する。なお、着座の検知は、例えば車両用シート20の座面の着座センサの信号がOFFからONとなった場合や、車両のドアが開状態から閉状態となった場合や、携帯端末装置50の収納ボックスに携帯端末装置50が入れられた場合に、乗員が着座したことを検知する。
【0021】
ステップS120に進んだ場合、制御手段10は、シート位置検出手段12からの検出信号に基づいて、現在シート位置(例えば最前端からの距離)Lを読み込み(検知し)、ステップS130に進む。
ステップS130では、制御手段10は、記憶している身体情報(送信情報に含まれていた身体情報)と、記憶している適正位置情報と、に基づいて、運転適正位置Bを求める。そして現在シート位置Lと運転適正位置Bとを比較し、現在シート位置Lが運転適正位置Bよりも前であるか否かを判定する。現在シート位置Lが運転適正位置Bよりも前である場合(Yes)、ステップS140に進み、現在シート位置Lが運転適正位置Bよりも後ろである場合(No)、ステップS150に進む。
【0022】
ステップS140に進んだ場合、制御手段10は、シート位置検出手段12からの検出信号に基づいたシート位置が運転適正位置Bとなるまで、駆動手段13を制御して車両用シート20を後方に移動させ、処理を終了する。
ステップS150に進んだ場合、制御手段10は、シート位置検出手段12からの検出信号に基づいたシート位置が運転適正位置Bとなるまで、駆動手段13を制御して車両用シート20を前方に移動させ、処理を終了する。このステップS150により、図6(A)及び(B)に示すように、車両用シート20が、運転適正位置Bまで前進し、乗員を運転適正位置へと自動的に調節(案内)する。なお、運転適正位置Bは、図6(C)の運転適正位置情報に示すように、乗員の身体情報に、運転適正位置B1〜B6のそれぞれが対応させて記憶されている。例えば図6(C)に示す運転適正位置B1は、図5(C)に示す後退適正位置A1から所定距離(例えば50[mm])だけ前進した位置であり、運転適正位置B2は、後退適正位置A2から所定距離だけ前進した位置である。
【0023】
●[前後方向だけでなくシート高さも調節する例(図7)]
以上の説明では、車両用シート20の前後方向の位置を自動的に調節したが、車両用シート20の座面の高さを自動的に調節することも可能である。以下、図7(A)〜(D)を用いて、車両用シート20の前後方向の位置とともに、車両用シート20の座面の高さを自動的に調節する構成について説明する。
なお、シートポジション調節装置1は、新たに、シート座面の高さを検出可能なシート高検出手段と、シート座面の上下方向の高さを調節可能な高さ調節手段と、備えている。
また制御手段10には、図7(B)に示すように、車両用シート20のスライド位置(この場合、運転適正位置B)に座面適正高さを対応させた座面適正高さ情報が記憶されている。また制御手段10には、図7(D)に示すように、車両用シート20のスライド位置(この場合、後退適正位置A)に後退適正高さを対応させた後退適正高さ情報が記憶されている。なお、図7(D)において後退適正位置A1に対応する後退適正高さG1は、図7(B)における運転適正位置B1に対応する座面適正高さH1よりも低い(G1<H1)。以下同様に、G1<H2、G1<H3、G1<H4、G1<H5、G1<H6に設定されている。
図7(B)に示す座面適正高さ情報の例では、例えば運転適正位置B1に対応させて座面適正高さH1が記憶されており、運転適正位置B2に対応させて座面適正高さH2が記憶されている。
また図7(D)に示す後退適正高さ情報の例では、例えば後退適正位置A1に対応させて後退適正高さG1が記憶されており、後退適正位置A2に対応させて後退適正高さG1が記憶されている。
【0024】
制御手段10は、乗員の乗降時において、図3に示すステップS40、またはステップS50にて、車両用シート20を後退適正位置Aに移動させるとともに、身体情報と後退適正高さ情報とシート高検出手段の検出信号と、に基づいて座面の高さが後退適正高さG(G1)となるように高さ調節手段を制御する(図7(C)参照)。
また制御手段10は、乗員の着座時において、図4に示すステップS140、またはステップS150にて、車両用シート20を運転適正位置Bに移動させるとともに、身体情報と座面適正高さ情報とシート高検出手段からの検出信号と、に基づいて座面の高さが座面適正高さH(H1〜H6)となるように高さ調節手段を制御する(図7(A)参照)。
【0025】
以上に説明したように、本実施の形態にて説明したシートポジション調節装置1を用いれば、車両用シート20のメモリー位置を乗員毎に登録する必要がなく、身長等、身体情報を選択するだけでシート位置が適正な位置に調節されるため、非常に使い勝手が良い。
また、後退適正位置Bは、対応する運転適正位置Aより所定距離だけ後退した位置であり、最後端でないので、運転適正位置Aまで車両用シート20が戻ってくるまでの時間が短くなり、使い勝手が良い。
【0026】
本発明のシートポジション調節装置1は、本実施の形態で説明した外観、構成、構造、処理、表示例等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 シートポジション調節装置
10 制御手段
11 受信手段
12 シート位置検出手段
13 駆動手段
14 乗降検知手段
20 車両用シート
50 携帯端末装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートポジション調節装置において、
車両用シートを前後方向に移動可能な駆動手段と、
前記車両用シートの前後方向の位置を検出可能なシート位置検出手段と、
携帯端末装置から送信される乗員の身体情報を含む送信情報を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した前記送信情報に含まれている身体情報と、前記シート位置検出手段からの検出信号と、に基づいて、前記駆動手段を制御して前記身体情報に応じたシート位置となるように前記車両用シートの前後方向の位置を調節する制御手段と、を有する、
シートポジション調節装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシートポジション調節装置であって、
更に、乗員が前記乗物用シートに着座したことを検知可能な検知手段を備え、
前記制御手段は、
前記受信手段が前記送信情報を受信した場合、前記車両用シートの前後方向の位置が前記身体情報に対応させた運転適正位置よりも所定量だけ後方となるように前記駆動手段を制御し、
前記検知手段を用いて乗員が前記車両用シートに着座したことを検知した場合、前記車両用シートの前後方向の位置が前記運転適正位置となるように前記駆動手段を制御する、
シートポジション調節装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate