説明

シート付きパネル

【課題】シート付きパネルを熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成するにあたって、パネル基板を薄肉化して軽量化でき、外観も美麗であるシート付きパネルを提供する。
【解決手段】内側に10000MPa以上の引張り弾性係数を有する高剛性繊維からなるシート2を、外側に5000MPa以下の引張り弾性係数を有する低剛性繊維からなるシート3を成形同時張りするので、パネル基板を薄肉化して軽量化してもチョップドストランドマットの高剛性によってパネル全体の曲げ剛性を低下させることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のデッキボード等に使われるシート付きパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
シート付きパネルに関する従来技術としては特許文献1に開示されているようなものがある。
【0003】
シート付きパネルは見た目も美しく、軽量であるわりには曲げに対する剛性が高く、近年では様々な分野で剛性と軽量化が共に求められる状況において重要な役割を果たしてきた。
しかしながら更なる軽量化を望む声もますます強まる中で、より薄肉化を図ろうとすると曲げ剛性も一緒に減少してしまうという難点があり、特許文献1に開示されているような方法ではそれ以上薄肉化できないという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平4−53696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、シート付きパネルの薄肉化を図ろうとすると曲げ剛性も一緒に減少してしまうという点である。本発明は上記の点を解決するためになされた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を果たすため本発明は、熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成されるシート付きパネルであって、内側に10000MPa以上の引張り弾性係数を有する高剛性繊維からなるシートを、外側に5000MPa以下の引張り弾性係数を有する低剛性繊維からなるシートを成形同時張りすることを最も主要な特徴とする。
【0007】
また、上記高剛性繊維からなるシートがガラス繊維製のチョップドストランドマットであることを第2の主要な特徴とする。
【0008】
また、上記低剛性繊維からなるシートが不織布であることを第3の主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、チョップドストランドマットの高剛性によってパネル全体の曲げ剛性を低下させることなくパネル基板を薄肉化して軽量化でき、表面の不織布によって外観も美麗であるシート付きパネルを得ることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るパネル基板、チョップドストランドマット、不織布の斜視図
【図2】本発明に係るパリソン、チョップドストランドマット、不織布、分割金型の斜視図。
【図3】図1のA−A断面相当の部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
パネル全体の曲げ剛性を低下させることなくパネル基板を薄肉化して軽量化するという目的を、内側に10000MPa以上の引張り弾性係数を有する高剛性繊維からなるシートを、外側に5000MPa以下の引張り弾性係数を有する低剛性繊維からなるシートを成形同時張りすることによって、ブロー成形という安価な工法を用いて、経済性を損なわずに実現した。
【実施例1】
【0012】
本発明の構成を発明の実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。図1は、本発明の1実施例を示す斜視図である。1はポリプロプレン(引張り弾性係数≒1000MPa)製のパネル基板、2,2は高剛性繊維のガラス繊維(引張り弾性係数≒70000MPa)製のチョップドストランドマット、3,3は低剛性繊維のポリプロプレン繊維(引張り弾性係数≒1000MPa)製の不織布を示す。
【0013】
図3は図1のA−A断面相当の部分断面図であり、上記の該パネル基板1、該チョップドストランドマット2,2、該不織布3,3を成形同時張りして形成されたシート付きパネル20を示す。
【0014】
次に図2により本発明による該シート付きパネル20の製造方法を説明する。
本発明によるパネル用の分割金型5,5内に該不織布3,3を、次いで該不織布3,3の内側に、該不織布3,3に重ねるように該チョップドストランドマット2,2を予めセットする。
【0015】
次に、半溶融状態にある熱可塑性樹脂ポリプロピレンのパリソン10を垂下させ該分割金型5,5を型締めする。
尚、前記「該不織布3,3の内側に」とは該パリソン10が垂下する側を指すことは言うまでもない。
【0016】
尚、該パリソン10に適用される熱可塑性樹脂としてはポリプロピレンに限らず、ポリエチレンや他のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、ポリスチレン、ゴム改質ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート等、ブロー成形が可能な樹脂であれば何でも良い。
【0017】
その後、該パリソン10内に圧縮空気を吹き込んで該パリソン10の膨張により該チョップドストランドマット2,2と該不織布3,3を該分割金型5,5のキャビティー面に押し付けると、半溶融状態の該パリソン10は該チョップドストランドマット2,2の目の粗い隙間を流動通過して該不織布3,3まで達し、該不織布3,3の毛足を包み込んでいわゆるアンカー効果により該不織布3,3を、そして該チョップドストランドマット2,2を共に固定しながら該パネル基板1として冷却固化する。
【0018】
即ち、該チョップドストランドマット2,2と該不織布3,3は共に該パネル基板1に固定され、一体化された該シート付きパネル20となる。
【0019】
その後離型して、該シート付きパネル20のブロー成形を完了させる。
【0020】
以上に述べた製造方法によって形成された該シート付きパネル20は、該パネル基板1を薄肉化して曲げ剛性が低下しても、該チョップドストランドマット2,2の高剛性によって該シート付きパネル20全体の曲げ剛性はほとんど低下することはなく、尚且つ表面の該不織布3,3によって外観が美麗になるという効果を得ることができる。
【0021】
尚、該チョップドストランドマット2,2の材質としてはガラス繊維に限るものではなく、炭素繊維、ボロン繊維等、10000MPa以上の引張り弾性係数を有しシート状に形成できる材質(いわゆる強化繊維がこれに該当する。)であればなんでもよく、その形態もチョップドストランドマットに限らずニットやクロス等、シート状であり且つ半溶融状態の該パリソン10が流動通過できる程度に目の粗い隙間を有するものであればなんでもよい。
【0022】
また、該不織布3,3の材質としてはポリプロプレン繊維に限るものではなく、その形態も不織布に限らず5000MPa以下の引張り弾性係数を有する材質(いわゆる汎用の化学繊維がこれに該当する。)のニットやクロスや皮革等、シート状のものであればなんでもよい。
尚、一般にポリプロピレン繊維のような低剛性繊維からなるシートは、ガラス繊維のような高剛性繊維からなるシートよりも美麗さにおいて意匠的に好まれることが多い。
【0023】
また、上記実施例では該パネル基板1の表と裏の両側に該チョップドストランドマット2,2と該不織布3,3を設けたが、片側だけに設定してもよい。
この場合でも該不織布3の内側(該パリソン10が垂下する側)に該チョップドストランドマット2が位置する位置関係は、表裏両側に設ける場合と変わらない。
【0024】
以上実施例に述べたように本発明によれば、シート付きパネルを形成するに際し、熱可塑性樹脂のブロー成形によって内側に10000MPa以上の引張り弾性係数を有する高剛性繊維からなるシートを、外側に5000MPa以下の引張り弾性係数を有する低剛性繊維からなるシートを成形同時張りしたため、パネル基板を薄肉化して軽量化してもチョップドストランドマットの高剛性によってパネル全体の曲げ剛性を低下させることがなく、表面の不織布によって外観も美麗になるという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、自動車のデッキボード等に利用可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 パネル基板
2 チョップドストランドマット
3 不織布
5 分割金型
10 パリソン
20 シート付きパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成されるシート付きパネルであって、内側に10000MPa以上の引張り弾性係数を有する高剛性繊維からなるシートを、外側に5000MPa以下の引張り弾性係数を有する低剛性繊維からなるシートを成形同時張りしてなることを特徴とするシート付きパネル
【請求項2】
請求項1における高剛性繊維からなるシートがガラス繊維製のチョップドストランドマットであることを特徴とする請求項1記載のシート付きパネル
【請求項3】
請求項1または請求項2における低剛性繊維からなるシートが不織布であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のシート付きパネル

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−161980(P2012−161980A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23659(P2011−23659)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(503233130)株式会社アイテック (96)
【Fターム(参考)】