説明

シート位置形状変更装置

【課題】複数種類に亘る各構成部の位置や形状の変更を1つの操作ノブによって選択して変更することができ、たとえ開閉するドアと隣接する狭い空間となる車両用シートの幅方向側部に操作ノブが設置される場合であっても、この狭い空間内で複数種類の操作を良好に行うことができるようにする。
【解決手段】回転操作ノブ51は、回転操作ノブ本体52と、回転操作ノブ本体52に設けられた収容凹部53に収容され回転操作ノブ本体52に対して相対回転操作することにより回転操作ノブ本体52に対して相対移動する切替ノブ57とを備える。切替ノブ57は、回転操作ノブ本体52に対して相対移動することによって、2つの作動力を受けるチルト用ギアと可変用ギアのうちの何れかのギアに対して、回転操作ノブ本体52からの作動力を入力するように入力位置を切り替えるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシートクッション、シートバック、ヘッドレスト、アームレスト等の車両用シートを構成する各構成部の位置や形状を変更するシート位置形状変更装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車等の車両に設置される車両用シートは、乗員が着座するシートクッション、着座した際の背凭れとなるシートバック、着座した際の頭凭れとなるヘッドレスト、着座した際の腕休めとなるアームレスト等の各構成部を備える。このような各構成部は、着座者の体格等に応じて位置や形状を変更することができるようになっている。例えば、シートクッションにあっては、シートクッションの前半分の位置を上下に昇降させるように位置を変更可能に構成されていたり、シートクッションの前面を前方向に出没させるようにシートクッションの前後長を変更するように形状を変更可能に構成されていたりする。
このため、この種の車両用シートは、各構成部の位置や形状を変更できるようにシート位置形状変更装置が内蔵されている。このシート位置形状変更装置は、概略、位置や形状を変更したい個所ごとに対応して設けられる位置変更機構と、この位置変更機構を操作するための操作ノブとを備える(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1にて開示されるシート位置形状変更装置は、複数の位置変更機構を1つの操作ノブで操作できるようになっている。このように複数の位置変更機構を1つの操作ノブにより選択してして操作することができるようになっていると、複数種類の操作を1つの操作ノブにより行うことができる。ちなみに、この位置変更機構は、操作ノブによる操作に応じた電気制御にて各構成部の位置や形状を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−88718
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、上記したシート位置形状変更装置にあっては、操作ノブを回転操作した際の回転操作動力を利用して作動するように構成されるメカニカル式のものがある。
図8は、メカニカル式に構成されるシート位置形状変更装置120の例である。図8に示すシート位置形状変更装置120の例では、操作ノブ121からの回転操作動力を、ギア127,128を介して位置変更機構125、126に伝達して作動させ、各構成部の位置や形状を変更する。
ここで、第1の位置変更機構125を作動させる場合には、図8(A)に示すように、内方(図示上方)に操作ノブ121を入れ込んで移動させて(W1)、操作ノブ121からの回転操作動力をギア127を介して位置変更機構125に伝達して作動させる。第2の位置変更機構126を作動させる場合には、図8(B)に示すように、外方(図示下方)に操作ノブ121を引っ張って移動させて、操作ノブ121からの回転操作動力をギア128を介して位置変更機構126に伝達して作動させる。このように、操作対象となる所望の位置変更機構125、126を作動させるには、車両用シート110の幅方向Wに操作ノブ121を移動させる必要があった。
【0005】
他方、上記した操作ノブ121は、開閉するドアと隣接する狭い空間となる、車両用シート110の幅方向側部に設置される。ここで、車両用シート110の幅方向側部のスペースは、着座者の居住性を鑑みて着座者の手1本を入り込ませる程度の狭い空間しか確保されておらず、上記したように車両用シート110の幅方向Wに操作ノブ121を移動するには、操作し難い問題が残される。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、車両用シートを構成する各構成部の位置や形状を変更するシート位置形状変更装置において、複数種類に亘る各構成部の位置や形状の変更を1つの操作ノブによって選択して変更することができ、たとえ開閉するドアと隣接する狭い空間となる車両用シートの幅方向側部に操作ノブが設置される場合であっても、この狭い空間内で複数種類の操作を良好に行うことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明に係るシート位置形状変更装置は、次の手段を採用する。
すなわち、本発明の第1の発明に係るシート位置形状変更装置は、車両用シートに設置され該車両用シートを構成する各構成部の位置や形状を変更するシート位置形状変更装置であって、位置や形状を変更する個所ごとに対応して設けられる複数の位置変更機構と、該複数の位置変更機構を作動させる作動力を回転操作することにより入力する回転操作ノブとを備え、前記複数の位置変更機構のそれぞれは、位置や形状を変更するにあたって作動する作動機構と、前記回転操作ノブから入力された作動力を受けて前記作動機構を作動させる作動力受部とを備え、前記回転操作ノブは、回転操作する位置が一定位置に固定され且つ回転操作した際の動力が前記作動機構の作動力となる回転操作ノブ本体と、前記回転操作ノブ本体に設けられた収容凹部に収容され該回転操作ノブ本体に対して相対回転操作することにより該回転操作ノブ本体の回転操作方向と交差する方向に相対移動する切替ノブとを備え、前記切替ノブは、前記回転操作ノブ本体に対して相対移動することによって、前記複数の位置変更機構のそれぞれに設けられる複数の前記作動力受部のうち、何れかの前記作動力受部に、前記回転操作ノブ本体からの作動力を入力するように、前記回転操作ノブ本体からの作動力の入力位置を切り替えることを特徴とする。
【0008】
このシート位置形状変更装置によれば、回転操作ノブは、回転操作ノブ本体と、回転操作ノブ本体に設けられた収容凹部に収容され回転操作ノブ本体に対して相対回転操作することにより回転操作ノブ本体に対して相対移動する切替ノブとを備え、切替ノブは、回転操作ノブ本体に対して相対移動することによって、複数の作動力受部のうちの何れかの作動力受部に、回転操作ノブ本体からの作動力を入力するように回転操作ノブ本体からの作動力の入力位置を切り替えるので、複数種類に亘る各構成部の位置や形状の変更を1つの操作ノブによって選択して変更することができる。
また、このシート位置形状変更装置によれば、位置や形状の変更するにあたっての回転操作対象を収容凹部に収容される切替ノブにて切り替えつつ、回転操作ノブ本体の回転操作する位置は一定位置に固定されているので、複数種類に亘る位置や形状を変更するにあたって操作の何れかを選択した場合であっても、回転操作位置を一定の位置に固定したまま回転操作を行うことができる。これによって、何れの操作であっても、回転操作ノブの回転操作を、いつも同じ操作感(同一位置の同様操作)にて良好に行うことができる。もって、例えば、回転操作ノブが開閉するドアと隣接する狭い空間となる車両用シートの幅方向側部に設置される場合であっても、この狭い空間内で複数種類の操作を良好に行うことができる。
【0009】
第2の発明に係るシート位置形状変更装置は、前記第1の発明に係るシート位置形状変更装置において、前記回転操作ノブ本体に対する前記切替ノブの相対移動の範囲が、前記回転操作ノブ本体の前記収容凹部に収まる範囲に設定されていることを特徴とする。
このシート位置形状変更装置によれば、回転操作ノブ本体に対する切替ノブの相対移動の範囲が、回転操作ノブ本体の収容凹部に収まる範囲に設定されているので、切替ノブによって操作対象を切り替える場合であっても、この切替ノブを回転操作ノブ本体内に収容したままとすることができる。これによって、回転操作ノブ本体の操作は、切替ノブにより邪魔されることなく操作感を一定に保つことができる。したがって、例えば、回転操作ノブが開閉するドアと隣接する狭い空間となる車両用シートの幅方向側部に設置される場合であっても、この狭い空間内で複数種類の操作を同一の操作感触で良好に行うことができる。
【0010】
第3の発明に係るシート位置形状変更装置は、前記第1または第2の発明に係るシート位置形状変更装置において、前記回転操作ノブは、前記車両用シートの幅方向側部に設置され、前記切替ノブの前記回転操作ノブ本体の回転操作方向と交差する方向の相対移動は、前記車両用シートの幅方向に設定されていることを特徴とする。
このシート位置形状変更装置によれば、回転操作ノブは、車両用シートの幅方向側部に設置され、回転操作ノブ本体の回転操作方向と交差する方向となる切替ノブの相対移動の方向は、車両用シートの幅方向に設定されているので、幅方向に複数の作動力受部を配置することができ、部品点数の削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明に係るシート位置形状変更装置によれば、複数種類に亘る各構成部の位置や形状の変更を1つの操作ノブによって選択して変更することができ、たとえ開閉するドアと隣接する狭い空間となる車両用シートの幅方向側部に操作ノブが設置される場合であっても、この狭い空間内で複数種類の操作を良好に行うことができる。
第2の発明に係るシート位置形状変更装置によれば、複数種類の操作を、同一の操作感触で操作することができて良好に操作することができる。
第3の発明に係るシート位置形状変更装置によれば、幅方向に複数の作動力受部を配置することができ、部品点数の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態となるシート位置形状変更装置が設置される車両用シートの斜視図である。
【図2】シートクッションの前半分の位置を上下に昇降させるように位置変更可能状態となっているシートクッションの側面図である。
【図3】図2に示す状態のシート位置形状変更装置を模式的に示すシートクッションの内部概略模式図である。
【図4】シートクッションの前面を前方向に出没させるようにシートクッションの前後長を変更する形状変更可能状態となっているシートクッションの側面図である。
【図5】図4に示す状態のシート位置形状変更装置を模式的に示すシートクッションの内部概略模式図である。
【図6】回転操作ノブについての分解斜視図である。
【図7】組付け状態の回転操作ノブについて回転操作する回転軸線に沿った断面を示す断面図である。
【図8】従来例となるシート位置形状変更装置を模式的に示すシートクッションの内部概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態となるシート位置形状変更装置20が設置される車両用シート10の斜視図である。なお、以下においては、この車両用シート10に着座した際の着座姿勢前方を『前』方向(図1においては略手前方向)としており、その逆方向を『後』方向としている。また、この前後方向に対して直交交差する方向が、車両用シート10の幅方向Wである。
図1に示すように、車両用シート10は、車両としての自動車に設置される車両用シートである。車両用シート10は、乗員が着座するシートクッション11と、着座者の背凭れとなるシートバック12と、着座者の頭凭れとなるヘッドレスト13とを備える。また、これらシートクッション11と、シートバック12とのそれぞれは、骨組みとなるクッションフレーム16と、バックフレーム(図示省略)とを備える。また、図示符号19は、シートクッション11の幅方向側部において設けられるシールドである。なお、このシールド19は、図を分かり易いものとするために、図3,図5,図7においては図示省略している。また、図2および図4において、符号17はスライドレールを示しており、符号18はブラケット部材(レッグ)を示している。
【0014】
ところで、この車両用シート10を構成するシートクッション11には、シート位置形状変更装置20が設置されている。このシート位置形状変更装置20は、シートクッション11を構成する各構成部の位置や形状を変更するものである。具体的には、シート位置形状変更装置20は、シートクッション11の前半分の位置を上下に昇降させるように位置を変更可能に構成されていたり、シートクッション11の前面を前方向に出没させるようにシートクッション11の前後長を変更するように形状を変更可能にするものである。
図2は、シートクッション11の前半分の位置を上下に昇降させるように位置変更可能状態となっているシートクッション11の側面図である。図3は、図2に示す状態のシート位置形状変更装置20を模式的に示すシートクッション11の内部概略模式図である。図4は、シートクッション11の前面を前方向に出没させるようにシートクッション11の前後長を変更する形状変更可能状態となっているシートクッション11の側面図である。図5は、図4に示す状態のシート位置形状変更装置20を模式的に示すシートクッション11の内部概略模式図である。なお、図2および図4における符号Tは、回転操作ノブ51の回転操作方向となる回転方向である。
このシート位置形状変更装置20は、図3および図5に示すように、位置や形状を変更する上記個所ごとに対応して設けられる2つの位置変更機構30,40と、この2つの位置変更機構30,40を作動させる作動力を回転操作することにより入力する回転操作機構50とを備える。具体的には、シート位置形状変更装置20は、シートクッション11の前半分を上下に昇降するように位置を変更するチルト式位置変更機構30と、シートクッション11の前面が前方に向かって出没するように形状を変更するクッション長可変式位置変更機構40とを備える。また、回転操作機構50は、これらチルト式位置変更機構30およびクッション長可変式位置変更機構40のうちの何れか1つの位置変更機構30,40に対して、作動力を入力できる回転操作可能に切り替える。この回転操作機構50は、クッションフレーム16に設置され、詳しくは次に説明するクッション前半フレーム16bに設置される。
【0015】
ここで、クッションフレーム16は、シートバック12側に配置されるクッション後半フレーム16aと、このクッション後半フレーム16aに対して前側に配置されるクッション前半フレーム16bと、このクッション前半フレーム16bに対して前側に配置される前側可動フレーム16cとを備える。
ここで、クッション前半フレーム16bは、図2に示すように、チルト式位置変更機構30において位置や形状を変更するにあたって作動する作動機構を構成するものである。クッション前半フレーム16bは、クッション後半フレーム16aに対して相対回転するように構成されており、この相対回転によりシートクッション11の前半分の位置を上下に昇降させる。具体的には、クッション後半フレーム16aと、クッション前半フレーム16bとの間には、回転軸部材31,31が配されており、この回転軸部材31,31にて互いを相対回転可能に連結している。
また、前側可動フレーム16cは、図4に示すように、クッション長可変式位置変更機構40において位置や形状を変更するにあたって作動する作動機構を構成するものである。前側可動フレーム16cは、クッション前半フレーム16bに対して相対回転するように構成されており、この相対回転によりシートクッション11の前面を前方向に出没させるようにシートクッション11の前後長を変更させる。具体的には、クッション前半フレーム16bには、前側可動フレーム16cを相対回転可能に支持する回転支持部39,39が設けられており、この回転支持部39,39にて前側可動フレーム16cの回転軸41が回転可能に支持されている。
【0016】
チルト式位置変更機構30は、上記したクッション前半フレーム16bのほか、回転操作機構50から入力された作動力を受けてクッション前半フレーム16bを作動させる作動力受部としてのチルト用ギア32を備える。
このチルト用ギア32は、上記した回転操作機構50から入力された作動力を受けてクッション前半フレーム16bを作動させるものであり、クッション後半フレーム16aに固定して取り付けられるものである。具体的には、チルト用ギア32は、第1回転操作機構側ギア72が噛合するように着座姿勢前方向に歯が形成されている。このように構成されたチルト式位置変更機構30は、チルト用ギア32に噛合する第1回転操作機構側ギア72が回転することによって、回転操作機構50をチルト用ギア32に対して上下に昇降させ、もって、クッション前半フレーム16bを上下に昇降させることとなる。
クッション長可変式位置変更機構40は、上記した前側可動フレーム16cのほか、回転操作機構50から入力された作動力を受けて前側可動フレーム16cを作動させる作動力受部としての可変用ギア42を備える。
この可変用ギア42は、上記した回転操作機構50から入力された作動力を受けて前側可動フレーム16cを作動させるものであり、前側可動フレーム16cに一体的に取り付けられる回転軸41に一体的に設けられている。可変用ギア42は、第2回転操作機構側ギア73が噛合可能になっており、第2回転操作機構側ギア73と噛合した場合には、この第2回転操作機構側ギア73の回転にしたがって、可変用ギア42も回転して回転軸41を回転させることとなる。これによって、クッション前半フレーム16bに対して前側可動フレーム16cを回転させ、前側可動フレーム16cをクッション前半フレーム16bに対して前方向に出没させることとなる。
【0017】
次に、回転操作することにより上記したチルト式位置変更機構30およびクッション長可変式位置変更機構40を作動させる回転操作機構50について説明する。
図6は、回転操作機構50を構成する回転操作ノブ51についての分解斜視図である。図7は、組付け状態の回転操作ノブ51について回転操作する回転軸線に沿った断面を示す断面図であり、図7(A)がチルト式位置変更機構30を回転操作状態とする際の回転操作ノブ51について断面図であり、図7(B)がクッション長可変式位置変更機構40を回転操作状態とする際の回転操作ノブ51について断面図である。
回転操作機構50は、図3および図5に示すように、概略、着座者が回転操作する回転操作ノブ51と、この回転操作ノブ51の回転操作により入力される動力を伝達するシャフト71とを備え、上記したようにクッション前半フレーム16bに支持されるように設置される。また、回転操作ノブ51は、図6に示すように、概略、着座者が回転操作する回転操作ノブ本体52と、この回転操作ノブ本体52に設けられた収容凹部53に収容される切替ノブ57と、切替ノブ57の相対移動をシャフト71に連動させるための連動案内部材54とを備える。
回転操作ノブ本体52は、着座者が回転操作した際の動力を、上記したチルト式位置変更機構30やクッション長可変式位置変更機構40の作動力とするものである。この回転操作ノブ本体52は、ダイアル式のノブ形状を有して形成される。具体的には、回転操作ノブ本体52は、外周には着座者が握り易いように適宜の窪んだ形状が形成された外周面を有する。また、回転操作ノブ本体52は、中央部には回転軸線で内外に貫通する形状を有して形成されている。具体的には、回転操作ノブ本体52の中央部のうち回転軸線外側には、切替ノブ57を収容するように形成される収容凹部53が設けられている。また、回転操作ノブ本体52の中央部のうち回転軸線内側には、連動案内部材54を案内可能に配設するように形成される案内用凹部55が設けられている。
また、回転操作ノブ本体52は、図3、図5、図7に示すように、上記したクッション前半フレーム16bに対して回転操作する際の位置が常に一定位置に固定されるように、内側に回転固定用取付け部52aが設けられている。
【0018】
この収容凹部53は、切替ノブ57を回転操作可能に収容するものである。図6および図7に示すように、この収容凹部53の内周面には、回転操作ノブ本体52に対する切替ノブ57の回転を案内するために、切替ノブ57に設けられる案内凸部57aが嵌る螺旋状に形成された案内溝53aが設けられている。つまり、切替ノブ57は、案内凸部57aを案内溝53aに嵌めた状態で収容凹部53に収容して相対回転操作すると、この収容凹部53内で回転操作ノブ本体52に対して、回転操作ノブ本体52の回転軸線上で相対移動することができる。
また、案内用凹部55は、連動案内部材54を相対移動可能に収容するものである。この案内用凹部55の内周面には、回転操作ノブ本体52に対する連動案内部材54の相対移動を案内するように、連動案内部材54に設けられたガイド凸部54bが嵌るガイド溝55aが設けられている。このガイド溝55aは、案内用凹部55の内周面において、回転操作ノブ本体52に対する連動案内部材54の相対移動方向(回転方向Tと直交する方向(幅方向W))に延びるように、等間隔複数にて形成されている。つまり、連動案内部材54は、案内用凹部55にて、回転操作ノブ本体52に対する連動案内部材54の相対移動方向と合致する回転操作ノブ本体52の回転軸線上で、回転操作ノブ本体52に対して相対移動することができる。
このようにして構成される回転操作ノブ本体52は、回転操作する際の位置が常に一定位置に固定されることとなる。言い換えれば、回転操作ノブ本体52は、周囲に対しての相対位置が変わることなく回転操作可能に構成されている。回転操作ノブ本体52は、この着座者の回転操作によって、後に説明するシャフト71に作動力となる回転力を与える。
【0019】
連動案内部材54は、切替ノブ57を回転操作可能に嵌めるために、外側端に遊嵌用フランジ部54aが設けられている。また、連動案内部材54は、上記した案内用凹部55に設けられたガイド溝55aに嵌まるガイド凸部54bが、相対移動方向(回転方向Tと直交する方向(幅方向W))に延びるように、等間隔複数にて形成されている。また、連動案内部材54の内側端は凹状に形成されており、この内側端には上記したシャフト71の端部が圧入され一体化される。
切替ノブ57は、上記した回転操作ノブ本体52の収容凹部53に収容されるものであり、−(マイナス)型のノブ形状を有して形成される。この切替ノブ57には、収容凹部53の内周面に設けられる案内溝53aに嵌る案内凸部57a(図6参照)が設けられている。また、この切替ノブ57の内側端には、上記した連動案内部材54の外側端に設けられた遊嵌用フランジ部54aに遊嵌されるように嵌められる連結部57b(図7参照)が設けられている。
このようにして、切替ノブ57は、収容凹部53内に収容された状態で回転操作ノブ本体52に対して相対回転操作するようになっており、この相対回転操作により、切替ノブ57は回転操作ノブ本体52の回転方向Tと交差する方向(幅方向W)に相対移動する。この切替ノブ57の相対移動は、連動案内部材54を連動させ、シャフト71を車両用シート10の幅方向Wにスライド移動させる。この際、連動案内部材54は、切替ノブ57に対して、回転方向Tには連動せず相対移動方向(回転方向Tと直交する方向)に応じてのみ連動する。
【0020】
シャフト71は、上記したように連動案内部材54に対して一体的にスライド移動するようになっており、このスライド移動によって回転操作ノブ本体52からの作動力の入力位置を切り替えるようになっている。具体的には、図3および図5に示すように、シャフト71は、車両用シート10の幅方向Wにスライド移動可能に延びて配設されるものであり、回転操作ノブ51が取り付けられる一端側と、その逆側の他端側とが、上記したクッション前半フレーム16bにて回転可能に支持されている。シャフト71は、上記したチルト式位置変更機構30のチルト用ギア32と、クッション長可変式位置変更機構40の可変用ギア42とに対し、噛合することにより回転操作した際の回転動力を入力する回転操作機構側ギア72,73を備える。具体的には、この回転操作機構側ギア72,73としては、上記したチルト用ギア32に噛合する第1回転操作機構側ギア72と、上記した可変用ギア42に噛合する第2回転操作機構側ギア72とにより構成される。この第1回転操作機構側ギア72は、シャフト71を回転操作ノブ51設置側一杯にスライド移動させた場合に、チルト用ギア32に噛合するように設けられている。また、第2回転操作機構側ギア73は、シャフト71を回転操作ノブ51設置反対側一杯にスライド移動させた場合に、可変用ギア42に噛合するように設けられている。なお、第1回転操作機構側ギア72がチルト用ギア32に噛合した場合には、チルト式位置変更機構30が回転操作可能状態となり、第2回転操作機構側ギア73が可変用ギア42に噛合した場合には、クッション長可変式位置変更機構40が回転操作可能状態となる。
【0021】
以上説明したシート位置形状変更装置20は、次のように作動させることができる。
なお、図7における符号Dは、このシートクッション11に隣接する車両のドアである。また、図7(A)の符号S1と図7(B)の符号S2は、回転操作ノブ51の車両のドアDに対する距離である。
図2に示すようにシートクッション11の前半分を上下に昇降するように位置を変更するにあたっては、回転操作ノブ51からチルト式位置変更機構30に対して回転操作する動力を作動力として入力することとなる。ここで、回転操作ノブ本体52からの作動力をチルト式位置変更機構30に入力するにあたっては、回転操作ノブ本体52からの作動力をチルト式位置変更機構30に入力する入力位置とすることを要する。すなわち、切替ノブ42を右回しして最外端(図7(A)参照)に位置させるようにシャフト71をスライド移動させ、これによって、図3に示すように第1回転操作機構側ギア72がチルト用ギア32に噛合した状態となる作動力の入力位置とする。次いで、第1回転操作機構側ギア72がチルト用ギア32に噛合した状態で回転操作ノブ本体52を回転操作すると、上記したようにシャフト71を回転させることとなり、チルト用ギア32に対して第1回転操作機構側ギア72を回転させ、クッション前半フレーム16bを昇降させて、もってシートクッション11の前半分を上下に昇降するように位置を変更することができる。この際、回転操作ノブ51の車両のドアDに対する距離S1は、一定の状態が保たれている。
【0022】
また、図4に示すようにシートクッション11の前面が前方に向かって出没するように形状を変更するにあたっては、回転操作ノブ51からクッション長可変式位置変更機構40に対して回転操作する動力を作動力として入力することとなる。ここで、回転操作ノブ本体52からの作動力をクッション長可変式位置変更機構40に入力するにあたっては、回転操作ノブ本体52からの作動力をクッション長可変式位置変更機構40に入力する入力位置とすることを要する。すなわち、切替ノブ42を左回しして最内端(図7(B)参照)に位置させるようにシャフト71をスライド移動させ、これによって、図5に示すように第2回転操作機構側ギア73が可変用ギア42に噛合した状態となる作動力の入力位置とする。次いで、第2回転操作機構側ギア73が可変用ギア42に噛合した状態で回転操作ノブ本体52を回転操作すると、上記したようにシャフト71を回転させることとなり、第2回転操作機構側ギア73が可変用ギア32を回転させて、前側可動フレーム16bを出没させて、もってシートクッション11の前面が前方に向かって出没するように形状を変更することができる。この際、回転操作ノブ51の車両のドアDに対する距離S2は、上記した回転操作ノブ51の車両のドアDに対する距離S1と全く変わりなく、『S1=S2』で一定の状態が保たれている。
【0023】
上記したシート位置形状変更装置20によれば、次のような作用効果を奏することができる。
すなわち、このシート位置形状変更装置20によれば、回転操作ノブ51は、回転操作ノブ本体52と、回転操作ノブ本体52に設けられた収容凹部53に収容され回転操作ノブ本体52に対して相対回転操作することにより回転操作ノブ本体52に対して相対移動する切替ノブ57とを備える。さらに、切替ノブ57は、回転操作ノブ本体52に対して相対移動することによって、2つの作動力を受けるチルト用ギア32と可変用ギア42のうちの何れかのギア32,42に、回転操作ノブ本体52からの作動力を入力するように回転操作ノブ本体52からの作動力の入力位置を切り替えるので、2種類の各構成部の位置や形状の変更を、1つの回転操作ノブ51によって選択して変更することができる。
また、このシート位置形状変更装置20によれば、位置や形状の変更するにあたっての回転操作対象を収容凹部53に収容される切替ノブ57にて切り替えつつ、回転操作ノブ本体52の回転操作する位置は一定位置に固定されているので、2種類に亘る位置や形状を変更するにあたって操作の何れかを選択した場合であっても、回転操作位置を一定の位置に固定(S1=S2)したまま回転操作を行うことができる。これによって、何れの操作であっても、回転操作ノブ51の回転操作を、いつも同じ操作感(同一位置の同様操作)にて良好に行うことができる。もって、上記したように回転操作ノブ51が開閉するドアDと隣接する狭い空間となる車両用シート10の幅方向側部に設置される場合であっても、この狭い空間内で2種類の操作を良好に行うことができる。
また、このシート位置形状変更装置20によれば、回転操作ノブ本体52に対する切替ノブ57の相対移動の範囲が、回転操作ノブ本体52の収容凹部53に収まる範囲に設定されているので、切替ノブ57によって操作対象を切り替える場合であっても、この切替ノブ57を回転操作ノブ本体52内に収容したままとすることができる。これによって、回転操作ノブ本体52の操作は、切替ノブ57により邪魔されることなく操作感を一定に保つことができる。したがって、上記したように回転操作ノブ51が開閉するドアDと隣接する狭い空間となる車両用シート10の幅方向側部に設置される場合であっても、この狭い空間内で2種類の操作を同一の操作感触で良好に行うことができる。
また、このシート位置形状変更装置20によれば、回転操作ノブ51は、車両用シート10の幅方向側部に設置され、回転操作ノブ本体52の回転方向Tと交差する方向の切替ノブ57の相対移動の方向は、車両用シート10の幅方向Wに設定されているので、幅方向Wに2つのギア32,42を配置することができ、部品点数の削減を図ることができる。
【0024】
なお、本発明に係るシート位置形状変更装置にあっては、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜に変更することができる。
例えば、上記した実施の形態におけるシート位置形状変更装置20は、回転操作ノブ51をシートクッション11の幅方向側部に設置し、切替ノブ57の回転操作ノブ本体52の回転方向Tと交差する方向の相対移動は、車両用シート10の幅方向Wに設定されるものであった。しかしながら、本発明に係るシート位置形状変更装置は、これに限定されるものではなく、例えば回転操作ノブ51をシートバック12の幅方向側部に設置したり、また例えば回転操作ノブ本体52の回転方向Tと異なる方向に作動力を入力するように適宜のカムが介装されたりするものであってよい。
また、上記した実施の形態におけるシート位置形状変更装置20は、回転操作ノブ本体52に対する切替ノブ57の相対移動の範囲が、回転操作ノブ本体52の収容凹部53に収まる範囲に設定されるものであった。しかしながら、本発明に係るシート位置形状変更装置は、これに限定されるものではなく、回転操作ノブ本体に対する切替ノブの相対移動の範囲は、回転操作ノブ本体の収容凹部から突出する範囲に設定されるものであってもよい。ただ、切替ノブ57の相対移動の範囲が収容凹部53に収まる範囲に設定した場合には、上記したS1,S2の距離が指1本分の距離で設定されている場合に、特に有利に上記した作用効果を奏することができる。
また、上記した実施の形態におけるシート位置形状変更装置20は、シートクッション11の前半分を上下に昇降するように位置を変更するチルト式位置変更機構30と、シートクッション11の前面が前方に向かって出没するように形状を変更するクッション長可変式位置変更機構40との2つの位置変更機構を、複数の位置変更機構の例として挙げて説明するものであった。しかしながら、本発明に係るシート位置形状変更装置を構成する複数の位置変更機構としては、これに限定されるものではなく、例えば、シートクッション全体を昇降させる所謂リフト機構や、シートバックの傾斜位置を変更する所謂リクライニング機構であってもよく、数量も2つに限定されることなく3つや4つであってもよい。なお、このように3つや4つの機構を回転操作する場合には、回転操作ノブ本体からの作動力の入力位置は、これに対応して3つや4つに設定されることとなる。したがって、切替ノブの相対移動は、この入力位置の数に伴って段階的に区分けされて設定されることとなる。
【符号の説明】
【0025】
10 車両用シート
11 シートクッション
12 シートバック
13 ヘッドレスト
16 クッションフレーム
16a クッション後半フレーム
16b クッション前半フレーム(作動機構)
16c 前側可動フレーム(作動機構)
17 スライドレール
18 ブラケット部材
19 シールド
20 シート位置形状変更装置
30 チルト式位置変更機構
31 回転軸部材
32 チルト用ギア
39 回転支持部(作動力受部)
40 クッション長可変式位置変更機構
41 回転軸
42 可変用ギア(作動力受部)
50 回転操作機構
51 回転操作ノブ
52 回転操作ノブ本体
52a 回転固定用取付け部
53 収容凹部
53a 案内溝
54 連動案内部材
54a 遊嵌用フランジ部
54b ガイド凸部
55 案内用凹部
55a ガイド溝
57 切替ノブ
57a 案内凸部
57b 連結部
71 シャフト
72 第1回転操作機構側ギア
73 第2回転操作機構側ギア
D 車両のドア
T 回転操作ノブの(操作)回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートに設置され該車両用シートを構成する各構成部の位置や形状を変更するシート位置形状変更装置であって、
位置や形状を変更する個所ごとに対応して設けられる複数の位置変更機構と、該複数の位置変更機構を作動させる作動力を回転操作することにより入力する回転操作ノブとを備え、
前記複数の位置変更機構のそれぞれは、位置や形状を変更するにあたって作動する作動機構と、前記回転操作ノブから入力された作動力を受けて前記作動機構を作動させる作動力受部とを備え、
前記回転操作ノブは、回転操作する位置が一定位置に固定され且つ回転操作した際の動力が前記作動機構の作動力となる回転操作ノブ本体と、前記回転操作ノブ本体に設けられた収容凹部に収容され該回転操作ノブ本体に対して相対回転操作することにより該回転操作ノブ本体の回転操作方向と交差する方向に相対移動する切替ノブとを備え、
前記切替ノブは、前記回転操作ノブ本体に対して相対移動することによって、前記複数の位置変更機構のそれぞれに設けられる複数の前記作動力受部のうち、何れかの前記作動力受部に前記回転操作ノブ本体からの作動力を入力するように、前記回転操作ノブ本体からの作動力の入力位置を切り替えることを特徴とするシート位置形状変更装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート位置形状変更装置において、
前記回転操作ノブ本体に対する前記切替ノブの相対移動の範囲が、前記回転操作ノブ本体の前記収容凹部に収まる範囲に設定されていることを特徴とするシート位置形状変更装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のシート位置形状変更装置において、
前記回転操作ノブは、前記車両用シートの幅方向側部に設置され、
前記切替ノブの前記回転操作ノブ本体の回転操作方向と交差する方向の相対移動は、前記車両用シートの幅方向に設定されていることを特徴とするシート位置形状変更装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−221803(P2010−221803A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70236(P2009−70236)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】