シート供給装置
【課題】収容部において下から順番に積層されたシート状体から、吸着搬送手段により最上のシート状体の一枚だけを確実に取り出せるようにする。
【解決手段】収容部2に収容された最上のシート状体101Aよりも上方に間隔をあけた位置に、吸着搬送手段3による最上のシート状体101Aの上昇に伴って、最上のシート状体101Aの上面101cの両端部に当接することで最上のシート状体101Aの両端部が下方に向くように、最上のシート状体101Aを湾曲させる一対の爪部4,4を設ける。
【解決手段】収容部2に収容された最上のシート状体101Aよりも上方に間隔をあけた位置に、吸着搬送手段3による最上のシート状体101Aの上昇に伴って、最上のシート状体101Aの上面101cの両端部に当接することで最上のシート状体101Aの両端部が下方に向くように、最上のシート状体101Aを湾曲させる一対の爪部4,4を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シート供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙や樹脂製シート等のように可撓性を有するシート状体を用いた各種製品の量産、あるいは、多数枚のシート状体の検査などを効率よく行うために、多数のシート状体を積層状態でシート収容部(収容手段)に収容しておき、シート状体をこのシート収容部から一枚ずつ外部に供給するシート供給装置が用いられている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1に記載のシート供給装置では、シート収容部のうちシート状体の積層方向の一端に、シート状体をシート収容部から取り出すための供給口が形成されている。また、このシート供給装置は、シート状体の積層方向に進退可能とされた吸着部材を、積層された多数枚のシート状体のうち供給口側に位置する一枚のシート状体の表面に吸着させた上で、供給口からシート収容部の外側に移動させるように構成されている。
【0003】
また、特許文献1に記載のシート供給装置には、シート収容部内において積層されたシート状体をシート収容部の供給口に向けて押し付ける押圧手段が設けられている。さらに、シート収容部の供給口には、シート収容部内において最も供給口側に位置するシート状体の表面の端部に当接する爪(仮保持手段)が形成されており、シート収容部内のシート状体が、押圧手段の押付力によって外部に抜け出ることを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−301557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように構成される従来のシート供給装置では、一枚のシート状体の表面に吸着部材を吸着させてこのシート状体を移送する際、このシート状体の裏面側に別のシート状体が静電気等によって密着したままで、シート状体が移送されてしまう場合がある。すなわち、複数枚のシート状体が重なった状態でシート供給装置の外部に供給されてしまう虞がある。
このシート状体の重ね取りを防ぐために、特許文献1に記載のシート供給装置では、吸着部材に吸着されたシート状体と、このシート状体の裏面側に密着した別のシート状体との間にエアーを吹き付けて、別のシート状体を吸着部材に吸着されたシート状体から引き剥がすようにしている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のシート供給装置では、密着した二枚のシート状体の間に隙間が全く無いと、エアーを吹き付けても二枚のシート状体を引き剥がすことができない、という問題がある。
また、特許文献1に記載のシート供給装置では、エアーを吹きつけるための動力源が必要となるため、シート供給装置の製造費用や維持費用が高くなってしまう、という問題もある。
【0007】
さらに、特許文献1に記載のシート供給装置では、シート収容部内に積層されたシート状体が、押圧手段によって常に供給口の爪に押し付けられているため、シート状体が変形したり、傷つけられてしまう、という問題もある。特に、シート状体が製品の製造に使用するものである場合、シート状体の変形や損傷に起因して、製品が不良品となってしまう虞がある。
【0008】
この発明は、上述した事情に鑑みたものであって、製造費用や維持費用を安価に抑えながらもシート状体の重ね取りを防止でき、さらに、シート状体の変形や損傷も防ぐことが可能なるシート供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明のシート供給装置は、可撓性を有するシート状体を下から順番に複数枚積層した状態で収容可能な収容部と、当該収容部に収容された最上の前記シート状体の上面に吸着する吸着部を有し、当該吸着部に前記最上のシート状体を吸着させた上で、当該最上のシート状体をその積層方向の上側に移動させる吸着搬送手段と、前記収容部に収容された前記最上のシート状体よりも上方に間隔をあけた位置に配され、前記吸着搬送手段による前記最上のシート状体の上昇に伴って、当該最上のシート状体の上面のうち前記吸着部に吸着される領域を挟み込む両端部に当接し、前記最上のシート状体の両端部が下方に向くように、前記最上のシート状体を湾曲させる一対の爪部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成のシート供給装置では、最上のシート状体の下面に別のシート状体(以下、下側のシート状体と呼ぶ。)が密着している状態で、吸着搬送手段によって最上のシート状体が上昇すると、最上のシート状体及び下側のシート状体が、収容部に積層された残りのシート状体から離れた後に、最上のシート状体が一対の爪部に当接する。
そして、この当接状態からさらに最上のシート状体を上昇させると、最上のシート状体及び下側のシート状体の両端部が下方に湾曲する。この際、下側のシート状体が湾曲する曲率は、最上のシート状体が湾曲する曲率よりも大きくなるため、最上のシート状体と下側のシート状体とが隙間なく密着していても、下側のシート状体を確実に最上のシート状体から離間させ、下方に落下させることができる。すなわち、シート状体の重ね取りを確実に防止することができる。
【0011】
また、シート状体の重ね取り防止に要する構成が、収容部の上方に配される爪部のみであることから、従来のものと比較して、シート供給装置の製造費用や維持費用を安価に抑えることができる。
さらに、一対の爪部が収容部内に積層されたシート状体よりも上方に間隔をあけて配されていることで、収容部内に積層されたシート状体には、従来のような外力がかからないため、シート状体の変形や損傷も防止することができる。
【0012】
そして、前記シート供給装置においては、前記一対の爪部が、当該一対の爪部の配列方向から見て互いに交差するように配されていると好ましい。
この構成では、吸着搬送手段によって収容部内の最上のシート状体が上昇して一対の爪部に当接した後、最上のシート状体をさらに上昇させると、前述した湾曲変形に加え、最上のシート状体の両端部が互いに交差することになる。すなわち、最上のシート状体がねじれるように変形する。
したがって、最上のシート状体の下面に別のシート状体(下側のシート状体)が密着している状態で最上のシート状体が吸着搬送手段によって上昇しても、前述したシート状体のねじれ変形によって、下側のシート状体をより確実に最上のシート状体から離間させ、下方に落下させることができる。
【0013】
また、前記シート供給装置においては、前記一対の爪部の間隔が、前記積層方向の上側に向かうにしたがって狭くなるとよい。
そして、一対の爪部の間隔を前記積層方向の上側に向かうにしたがって狭くするためには、例えば、前記一対の爪部の少なくとも一方が、複数の段差を有して階段状に形成されていればよい。
【0014】
また、前記一対の爪部の少なくとも一方が、前記積層方向の上側に向かうにしたがって平面視したシート状体の内側に延びる傾斜面を有していてもよい。
なお、前記爪部が前記傾斜面を有する場合、前記傾斜面には凹凸部が形成されていてもよい。
【0015】
これらの構成では、吸着搬送手段によって収容部内の最上のシート状体が上昇して一対の爪部に当接した後、最上のシート状体をさらに上昇させるにしたがって、最上のシート状体の両端部の少なくとも一方(以下、一端部と呼ぶ。)が湾曲する度合い(曲がり具合)が徐々に大きくなる。すなわち、一対の爪部の間隔が等しい場合と比較して、最上のシート状体の上昇に伴う最上のシート状体の一端部(両端部)の湾曲変形がゆっくりと行われることになる。
【0016】
したがって、最上のシート状体の下面に別のシート状体(下側のシート状体)が密着している状態で最上のシート状体を吸着搬送手段によって上昇させた際には、最上のシート状体及び下側のシート状体の一端部(両端部)の湾曲度合いが徐々に大きくなる。そして、密着したシート状体の離間に必要な最小限の湾曲度合いに達した時点で、下側のシート状体が最上のシート状体から離間することになる。すなわち、下側のシート状体の湾曲度合いを最小限に抑え、下側のシート状体が湾曲変形したままで収容部内に収容されることを抑制できる。
【0017】
さらに、前記シート供給装置においては、前記一対の爪部の少なくとも一方が、前記積層方向に互いに間隔をあけて配列された複数の突起によって構成されていることが好ましい。
【0018】
この構成では、吸着搬送手段による最上のシート状体の上昇に伴って、最上のシート状体の両端部の少なくとも一方(以下、一端部と呼ぶ。)が、前記積層方向の下側に配された突起(下側の突起)に当接し湾曲した後、下側の突起よりも上方に移動することで、最上のシート状体の一端部(両端部)の湾曲状態が解除されることになる。さらに、この湾曲状態の解除後には、下側の突起よりも上方に位置する別の突起(上側の突起)によって、最上のシート状体の一端部(両端部)が再度湾曲することになる。すなわち、吸着搬送手段による最上のシート状体の上昇に伴って、最上のシート状体の一端部(両端部)の湾曲状態とその解除が繰り返されるため、最上のシート状体の一端部(両端部)が振動することになる。
したがって、最上のシート状体の下面に別のシート状体(下側のシート状体)が密着している状態で最上のシート状体を吸着搬送手段によって上昇させた際には、上述したシート状体の振動によって、下側のシート状体をより確実に最上のシート状体から離間させることが可能となる。
【0019】
また、前記シート供給装置においては、前記複数の突起のうち前記積層方向の上側に位置する突起が、前記積層方向の下側に位置する突起よりも、平面視したシート状体の内側に突出していてもよい。
この構成では、上側の突起による最上のシート状体の一端部(両端部)の湾曲度合いが、下側の突起による最上のシート状体の一端部(両端部)の湾曲度合いよりも大きくなる。言い換えれば、最上のシート状体が上昇するにしたがって、最上のシート状体の一端部(両端部)が振動する振幅が大きくなる。
【0020】
したがって、最上のシート状体の下面に別のシート状体(下側のシート状体)が密着している状態で最上のシート状体を吸着搬送手段によって上昇させた際には、最上のシート状体及び下側のシート状体が上下方向に配列された突起を通過するたびに振動するが、密着したシート状体の離間に必要な最小限の振動の大きさに達した時点で、下側のシート状体が最上のシート状体から離間することになる。言い換えれば、下側のシート状体の湾曲度合いを最小限に抑えて、下側のシート状体が湾曲変形したままで収容部内に収容されることを抑制できる。
【0021】
さらに、前記シート供給装置において、前記一対の爪部が、それぞれ前記複数の突起によって構成されている場合には、前記一対の爪部の間で、前記突起の高さ位置が互いにずれているとよい。
この構成では、前述したように、吸着搬送手段による最上のシート状体の上昇に伴って、最上のシート状体の両端部の湾曲状態とその解除が繰り返されるものの、湾曲状態とその解除の繰り返し動作のタイミングが、最上のシート状体の両端部の一方(一端部)と他方(他端部)とで互いに異なる。このため、一対の爪部の間で突起の高さ位置が等しい場合と比較して、最上のシート状体の振動数を増加させることができ、その結果として、最上のシート状体に密着した下側のシート状体をさらに離間させ易くなる。
【0022】
また、前記シート供給装置においては、前記一対の爪部の少なくとも一方が、導電性を有すると共に接地されているとよい。
この構成では、最上のシート状体及び下側のシート状体が静電気によって密着していても、最上のシート状体が爪部に当接することで、最上のシート状体及び下側のシート状体の静電気が除去されるため、静電気によるシート状体の密着力を無くすあるいは減らすことができる。したがって、爪部によるシート状体の湾曲変形や、ねじれ変形、振動の度合いを小さく設定しても、下側のシート状体を最上のシート状体から容易に離間させることが可能となる。
【0023】
さらに、前記シート状体にその厚さ方向に貫通する貫通孔が形成されている場合には、前記シート供給装置が、積層状態の前記シート状体を載置する前記シート収容部の底面から前記一対の爪部の上方まで延びて、前記シート状体の貫通孔に挿通されるガイドピンを備えているとよい。
この構成では、最上のシート状体が一対の爪部の下方から上方に通過する際に、最上のシート状体の下面に張り付いていた下側のシート状体が、一対の爪部において最上のシート状体から離間して下方に落下する際に、下側のシート状体に位置ずれが生じることを抑制できる。
【0024】
したがって、最上のシート状体を収容部から取り出した後、吸着搬送手段で下側のシート状体を収容部から取り出す際に、下側のシートの上面に対する吸着部の吸着位置がずれることを抑えることができる。言い換えれば、上記ガイドピンを設けることで、吸着部に対するシート状体の被吸着部分がずれてしまうことを抑制できる。その結果として、吸着搬送手段によってシート状体を外部の所定位置まで搬送する際に、外部の所定位置におけるシート状体の位置精度を向上させることができる。
また、ガイドピンが一対の爪部よりも上方に延びていることで、前記貫通孔の形成部分が一対の爪部よりも上方に移動した後に、下側のシート状体が最上のシート状体から離間したとしても、貫通孔に対するガイドピンの挿通状態を保持することができる。すなわち、下側のシート状体が最上のシート状体と共に上昇してから離間するまでの間に、ガイドピンが下側のシート状体の貫通孔から抜け出ることを確実に防止できる。
【0025】
そして、前記シート状体が平面視多角形状に形成される場合には、前記シート供給装置において、前記一対の爪部の少なくとも一方が、それぞれ平面視した前記最上のシート状体の角部の上方に配されてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、シート供給装置の製造費用や維持費用を安価に抑えながらもシート状体の重ね取りを防止することができる。また、シート状体の変形や損傷も防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一実施形態に係るシート供給装置を上方から見た状態を示す概略上面図である。
【図2】図1のA−A矢視断面図である。
【図3】図1,2に示すシート供給装置によるシート状体の取り出し動作を示す概略断面図である。
【図4】図1,2に示すシート供給装置によるシート状体の取り出し動作を示す概略断面図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係るシート供給装置を構成する一対の爪部の一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係るシート供給装置を構成する一対の爪部の他の例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係るシート供給装置を構成する一対の爪部の他の例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の第三実施形態に係るシート供給装置を構成する一対の爪部を示す概略断面図である。
【図9】本発明の第四実施形態に係るシート供給装置を構成する一対の爪部を示す概略断面図である。
【図10】本発明の第五実施形態に係るシート供給装置を構成する一対の爪部を示す概略断面図である。
【図11】本発明の第六実施形態に係るシート供給装置を上方から見た状態を示す概略上面図である。
【図12】図11に示すシート供給装置をC方向から見た状態を示す概略側面図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係るシート供給装置を上方から見た状態を示す概略上面図である。
【図14】図13に示すシート供給装置をD方向から見た状態を示す概略側面図である。
【図15】本発明の他の実施形態に係るシート供給装置を上方から見た状態を示す概略上面図である。
【図16】本発明の他の実施形態に係るシート供給装置を上方から見た状態を示す概略上面図である。
【図17】本発明の他の実施形態に係るシート供給装置を上方から見た状態を示す概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第一実施形態〕
以下、図1〜4を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1,2に示すように、この実施形態に係るシート供給装置1は、紙、樹脂製シートあるいは封筒等のように薄膜あるいは薄板状に形成されて可撓性を有するシート状体101を取り扱うものである。なお、本実施形態で用いるシート状体101は平面視長方形に形成されている。また、シート状体101には、その厚さ方向に貫通する貫通孔101dが複数(図示例では二つ)形成されている。これら複数の貫通孔101dは、平面視したシート状体101の長辺に沿うように、互いに間隔をあけて配列されている。
そして、シート供給装置1は、上記シート状体101を複数枚あるいは多数枚積層した状態で収容可能な収容部2と、収容部2内のシート状体101を外部に移動させるための吸着搬送手段3とを備えて大略構成されている。
【0029】
収容部2は、シート状体101を積層状態で載置する平坦な底壁上面(底面)21aを有する底壁部21と、底壁上面21aから突出する一対の側壁部22,22とを備えている。底壁部21は、その底壁上面21aが鉛直方向(Z軸方向)上側に向くように配されており、これによって、シート状体101は収容部2において下から順番に積層されることになる。なお、以下の説明では、シート状体101を底壁上面21a上に複数積層した集合体のことを積層体100とも呼ぶ。
【0030】
一対の側壁部22,22は、底壁上面21a上に載置された積層体100を両側から支持するように互いに間隔をあけて配されている。
具体的に説明すれば、各側壁部22は、底壁上面21aから垂直に延びる平坦な内側面22aを有しており、一対の側壁部22,22の内側面22a,22aは、積層体100を挟み込むように互いに平行し対向している。そして、各内側面22aは、積層されたシート状体101の長辺に対向し、一対の内側面22a,22a同士の間隔は、平面視したシート状体101の短辺長さと略同等となるように、あるいは、短辺長さよりも若干長くなるように設定されている。
【0031】
したがって、一対の側壁部22,22は、積層されたシート状体101がその短辺方向(X軸方向)に平行移動(位置ずれ)しないように、また、底壁上面21aに沿う面内で回転(位置ずれ)しないように規制する役割を果たしている。
なお、図示例において、シート状体101の長辺方向(Y軸方向)に沿う側壁部22の内側面22aの寸法(以下、内側面22aの幅寸法と呼ぶ。)は、シート状体101の長辺長さよりも短く設定されているが、これに限ることは無く、例えばシート状体101の長辺長さと略同等あるいは長辺長さよりも長く設定されていてもよい。
以上のように構成される収容部2は、導電性を有する材料によって形成されており、アース線23を介して接地されている。
【0032】
吸着搬送手段3は、収容部2に収容された積層体100のうち最上のシート状体101Aの上面101cに吸着させる吸着部31と、吸着部31を収容部2に対して少なくともシート状体101の積層方向(Z軸方向)に上下移動させる駆動機構(不図示)とを備えている。また、吸着部31は、エアーを吸引する吸引パイプ32の先端に吸着パッド33を設けて構成されている。
したがって、この吸着搬送手段3では、吸着パッド33を最上のシート状体101Aに押し付けた状態で、真空ポンプ(不図示)等により吸引パイプ32内のエアーを吸引することで、最上のシート状体101Aを吸着パッド33に吸着させることができる。また、最上のシート状体101Aを吸着パッド33に吸着した上で、駆動機構により吸着部31を上方に移動させることで、最上のシート状体101Aをその積層方向の上側に移動させることができる。
【0033】
なお、図示例では、吸着パッド33が最上のシート状体101Aの上面101cの中央領域に吸着するように設定されているが、少なくとも後述する一対の爪部4,4の間において最上のシート状体101Aの上面101cのうち貫通孔101dに干渉しない領域(被吸着領域101e)に吸着するように設定されればよい。
また、吸着搬送手段3の駆動機構は、吸着部31を上下方向に移動させることに限らず、シート状体101を収容部2の外部の所定位置まで搬送できるように、吸着部31を縦横方向(X軸方向やY軸方向)に移動させるように構成されてもよい。
【0034】
さらに、本実施形態のシート供給装置1は、吸着搬送手段3によるシート状体101の重ね取りを防止するための一対の爪部4,4を備えている。
各爪部4は、各側壁部22のうちその突出方向先端において内側面22aから突出しており、また、底壁上面21aに平行するように側壁部22の内側面22aの幅方向(Y軸方向)に延在している。なお、図示例では、各爪部4の幅寸法が、側壁部22の内側面22aの幅寸法と同等に設定されているが、これに限ることは無く、例えば内側面22aの幅寸法よりも小さく設定されてもよい。
そして、各爪部4は、各側壁部22に一体に形成され、前述した収容部2と同様に導電性を有している。
【0035】
各爪部4の高さ位置は、収容部2に収容された最上のシート状体101Aよりも上方に間隔をあけた位置となるように設定されている。言い換えれば、本実施形態のシート供給装置1の使用に際しては、最上のシート状体101Aの上面101cが一対の爪部4,4よりも低く位置するように、底壁上面21aに積層されるシート状体101の枚数が制限される。
そして、一対の爪部4,4は、平面視で最上のシート状体101Aの上面101cのうち吸着部31に吸着される領域(被吸着領域101e)を挟み込む両端部に対向するように配されている。なお、本実施形態では、一対の爪部4,4が、最上のシート状体101Aの上面101cのうちその短辺方向(X軸方向)の両端部に位置する二つの周縁領域に対向している。
【0036】
また、一対の爪部4,4は、前述した吸着搬送手段3による最上のシート状体101Aの上昇に伴って、最上のシート状体101Aの上面101cの両端部に当接し、最上のシート状体101Aの両端部を下方に向かせるように、最上のシート状体101Aを湾曲させる役割を果たすように、その突出長さが設定されている(図3等参照)。したがって、一対の爪部4,4の突出長さは、例えば、平面視で最上のシート状体101Aの上面101cの被吸着領域101eや貫通孔101dに干渉しない程度に、また、吸着搬送手段3によって上昇された最上のシート状体101Aの上面101cの両端部への当接によって最上のシート状体101Aが吸着パッド33から剥がれない程度に設定されている。
【0037】
さらに、本実施形態のシート供給装置1には、収容部2の底壁上面21aから一対の爪部4,4よりも上方に延びる複数(図示例では二つ)のガイドピン5が設けられている。各ガイドピン5は、底壁上面21a上に積層されるシート状体101の各貫通孔101dに挿通させるものである。したがって、複数のガイドピン5は、平面視でシート状体101の複数の貫通孔101dの形成位置に一致するように配列されている。なお、図示例では、各ガイドピン5の延出方向先端が先細り状に形成されているが、これに限ることはない。
【0038】
このようにガイドピン5が形成されていることで、収容部2内に収容されたシート状体101が底壁上面21aに沿う方向(X軸方向、Y軸方向)に平行移動(位置ずれ)することが防止されている。また、ガイドピン5が複数形成されていることで、底壁上面21aに沿う面内で回転(位置ずれ)することも防止されている。したがって、底壁上面21a上に積層されたシート状体101同士で位置ずれが生じることを防止できる。
【0039】
次に、以上のように構成されるシート供給装置1の動作の一例について説明する。
収容部2内において積層されたシート状体101を外部に供給する際には、はじめに、図3(a)に示すように、吸着部31を下方に移動させ、吸着パッド33を最上のシート状体101Aの上面101cに押し付ける。次いで、吸引パイプ32内のエアーを吸引して最上のシート状体101Aを吸着パッド33に吸着させる。そして、この吸着状態を保持したままで吸着部31を上方に移動させることで、図3(b)に示すように、吸着パッド33に吸着された最上のシート状体101Aも上昇する。
【0040】
ここで、図示例のように、最上のシート状体101Aの下面に別のシート状体101B(以下、下側のシート状体101Bとも呼ぶ。)が静電気等によって密着している場合には、一対の爪部4,4及び吸着搬送手段3の協働によって下側のシート状体101Bを最上のシート状体101Aから引き剥がすことができる。
詳細に説明すれば、最上のシート状体101A及び下側のシート状体101Bが密着状態で上昇すると、収容部2に積層された残りのシート状体101から離れた後に、図4(a)に示すように、最上のシート状体101Aの上面101cの両端部が一対の爪部4,4に当接する。
【0041】
その後、この当接状態からさらに最上のシート状体101Aを上昇させると、図4(b)に示すように、最上のシート状体101A及び下側のシート状体101Bの両端部が下方に湾曲する。なお、この湾曲度合いは、最上のシート状体101Aが上昇するにしたがって徐々に大きくなる(図4(a),(b)参照)。この湾曲の際、下側のシート状体101Bが湾曲する曲率は、最上のシート状体101Aが湾曲する曲率よりも大きくなるため、最上のシート状体101Aと下側のシート状体101Bとが隙間なく密着していても、下側のシート状体101Bを確実に最上のシート状体101Aから離間させ、下方に落下させることができる。
【0042】
下側のシート状体101Bから離間した最上のシート状体101Aは、図4(c)に示すように、一対の爪部4,4よりも上方まで移動することで、一対の爪部4,4との当接状態が解除されると共に、その湾曲状態も解除される。また、最上のシート状体101Aがガイドピン5の先端よりも上方に移動することで、ガイドピン5が最上のシート状体101Aの貫通孔101d(図1参照)から抜け出ることになる。
【0043】
一方、図4(b)に示すように、最上のシート状体101Aから離間した下側のシート状体101Bが落下する際には、下側のシート状体101Bが、その貫通孔101dに挿通されたガイドピン5や側壁部22の内側面22aによって、底壁上面21aに沿う方向(X軸方向、Y軸方向)に平行移動することがなく、また、底壁上面21aに沿う面内で回転することもない。したがって、最上のシート状体101Aから離間して落下する下側のシート状体101Bが、積層されている残りのシート状体101に対して位置ずれした状態で残りのシート状体101上に配されてしまうことを防止することができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係るシート供給装置1によれば、収容部2内で積層されたシート状体101のうち最上のシート状体101Aを吸着搬送手段3で収容部2から取り出す際には、一対の爪部4,4で最上のシート状体101Aを湾曲させることで、最上のシート状体101Aの下面に密着した別のシート状体101Bを引き剥がすことができるため、シート状体101を確実に一枚ずつ取り出すことが可能となる。言い換えれば、シート状体101の重ね取りを確実に防止することができる。
【0045】
また、少なくとも収容部2の上方に一対の爪部4,4を設けるだけで、シート状体101の重ね取りを防止できるため、従来のものと比較して、シート供給装置1の製造費用や維持費用を安価に抑えることができる。
さらに、一対の爪部4,4が収容部2内に積層されたシート状体101よりも上方に間隔をあけて配されていることで、収容部2内に積層されたシート状体101には、従来のような外力がかからないため、シート状体101の変形や損傷も防止することができる。
【0046】
また、収容部2が導電性を有すると共に接地されていることで、収容部2内に積層されたシート状体101が静電気を帯びることを抑えて、最上のシート状体101Aの下面に別のシート状体101B(下側のシート状体101B)が静電気によって密着することを抑制できる。
さらに、一対の爪部4,4が導電性を有すると共に接地されているため、最上のシート状体101A及び下側のシート状体101Bが静電気によって密着した状態で吸着搬送手段3によって上昇したとしても、最上のシート状体101Aが爪部4に当接することで、最上のシート状体101A及び下側のシート状体101Bの静電気を除去することができる。すなわち、最上のシート状体101A及び下側のシート状体101Bの密着力を無くすあるいは減らすことができる。したがって、爪部4の突出長さを小さく設定する等して、爪部4によるシート状体101の湾曲変形の度合いを小さく設定したとしても、下側のシート状体101Bを最上のシート状体101Aから容易に離間させることが可能となる。
【0047】
また、シート供給装置1がガイドピン5を備えることで、最上のシート状体101Aから離間して落下する下側のシート状体101Bが、積層されている残りのシート状体101に対して位置ずれした状態で、残りのシート状体101上に配されることを防止することができる。したがって、吸着搬送手段3で最上のシート状体101Aを収容部2から取り出した後、下側のシート状体101Bを収容部2から取り出す際に、下側のシート状体101Bの上面に対する吸着部31の吸着位置がずれることを抑えることができる。言い換えれば、吸着部31に対するシート状体101の被吸着部分がずれてしまうことを抑制できる。その結果として、吸着搬送手段3によってシート状体101を外部の所定位置まで搬送する際に、外部の所定位置におけるシート状体101の位置精度を向上させることができる。
【0048】
さらに、ガイドピン5は一対の爪部4,4よりも上方に延びているため、下側のシート状体101Bの貫通孔101dが一対の爪部4,4よりも上方に移動した後に、下側のシート状体101Bが最上のシート状体101Aから離間したとしても、貫通孔101dに対するガイドピン5の挿通状態を保持することができる。すなわち、下側のシート状体101Bが最上のシート状体101Aと共に上昇してから離間するまでの間に、ガイドピン5が下側のシート状体101Bの貫通孔101dから抜け出ることを確実に防止できる。
【0049】
なお、複数の貫通孔101d及びガイドピン5は、上記第一実施形態のように配列されることに限らず、少なくとも一対の爪部4,4や吸着部31に干渉しない領域において互いに間隔をあけて配されていればよい。
【0050】
〔第二実施形態〕
次に、図5〜7を参照して本発明の第二実施形態について説明する。
この実施形態に係るシート供給装置は、第一実施形態のシート供給装置と比較して、一対の爪部4,4の形状のみが異なっている。
図5〜7に示すように、この実施形態のシート供給装置を構成する一対の爪部4,4は、第一実施形態と同様に、それぞれ側壁部22の内側面22aから突出して形成されている。そして、これら一対の爪部4,4は、その間隔がシート状体101の積層方向の上側(Z軸正方向側、図2等参照)に向かうにしたがって狭くなるように形成されている。以下、図5〜7に示す各爪部4の形状について説明する。
【0051】
図5に示す各爪部4は、Z軸正方向側に向かうにしたがって平面視したシート状体101の内側(図2等参照)に延びる傾斜面41を有している。この傾斜面41は、収容部2内に積層された最上のシート状体101Aの上面101c側に面している。このため、最上のシート状体101Aが吸着搬送手段3によって上昇した際には、爪部4の傾斜面41に当接することになる。
【0052】
また、図6に示す各爪部4は、図5に示す構成と同様の傾斜面41に、収容部2内のシート状体101の積層方向(Z軸方向)に波打つ凹凸部42を形成して構成されている。したがって、最上のシート状体101Aが吸着搬送手段3によって上昇した際には、この爪部4の凹凸部42に当接することになる。
なお、図示例では、一方の爪部4(紙面右側の爪部4)の凹凸部42が傾斜面41から突出する複数の凸部42Aによって構成され、他方の爪部4(紙面左側の爪部4)の凹凸部42が傾斜面41から窪む複数の凹部42Bによって構成されているが、これに限ることは無い。例えば、一対の爪部4の凹凸部42が双方共に凸部42A及び凹部42Bの一方のみによって構成されてもよいし、同一の傾斜面41に凸部42A及び凹部42Bの両方が形成されてもよい。
また、凸部42Aや凹部42Bは、少なくとも傾斜面41の下端側から上端側に向けて間隔をあけて複数配列されていればよく、例えば、側壁部22の幅方向(Y軸方向)に延びるように形成されていてもよいし、側壁部22の幅方向にも間隔をあけて複数配列されてもよい。
【0053】
そして、図6に示す各爪部4は、複数の段差43を有して階段状に形成されている。これら段差43の角部や段差面は、収容部2内に積層された最上のシート状体101Aの上面101c側に面している。このため、最上のシート状体101Aが吸着搬送手段3によって上昇した際には、これら段差43の角部や段差面に当接することになる。
【0054】
本実施形態のシート供給装置によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、本実施形態のシート供給装置では、吸着搬送手段3によって収容部2内の最上のシート状体101Aが上昇して一対の爪部4,4に当接した後、最上のシート状体101Aをさらに上昇させるにしたがって、最上のシート状体101Aの両端部が湾曲する度合い(曲がり具合)が徐々に大きくなる。すなわち、第一実施形態のように一対の爪部の間隔が等しい場合と比較して、最上のシート状体101Aの上昇に伴う最上のシート状体101Aの両端部の湾曲変形がゆっくりと行われることになる。
【0055】
したがって、最上のシート状体101Aの下面に別のシート状体101Bが密着している状態で最上のシート状体101Aを吸着搬送手段3によって上昇させた際には、最上のシート状体101A及び下側のシート状体101Bの両端部の湾曲度合いが徐々に大きくなる。そして、密着した二つのシート状体101A,101Bの離間に必要な最小限の湾曲度合いに達した時点で、下側のシート状体101Bが最上のシート状体101Aから離間することになる。すなわち、下側のシート状体101Bの湾曲度合いを最小限に抑え、下側のシート状体101Bが湾曲変形したままで収容部2内に収容されることを抑制できる。
【0056】
なお、上記第二実施形態では、傾斜面41や凹凸部42、段差43が、一対の爪部4,4両方に形成されるとしたが、少なくとも一方の爪部4に形成されていればよく、例えば他方の爪部4は第一実施形態と同様の形状としても構わない。
また、爪部4が複数の段差43を有して構成される場合、各段差43の段差面は、図7に例示したように側壁部22の内側面22aに平行あるいは直交することに限らず、例えば図5に示す傾斜面41と同様に傾斜していても構わない。また、段差43が傾斜面41を有する場合、この傾斜面41に図6と同様の凹凸部42が形成されてもよい。
【0057】
〔第三実施形態〕
次に、図8を参照して本発明の第三実施形態について説明する。
この実施形態に係るシート供給装置は、第一、第二実施形態のシート供給装置と比較して、一対の爪部4,4の形状のみが異なっている。
図8に示すように、この実施形態のシート供給装置を構成する一対の爪部4,4は、第一実施形態と同様に、それぞれ側壁部22の内側面22aから突出して形成されている。そして、各爪部4は、シート状体101の積層方向(Z軸方向、図2等参照)に互いに間隔をあけて配列された複数(図示例では四つ)の突起44によって構成されている。
ここで、同一の爪部4を構成する複数の突起44は、同一の突出長さとされ、また、等間隔で配列されている。また、一対の爪部4,4の間で、突起44の数は同じに設定され、各突起44の高さ位置は同一とされている。
【0058】
本実施形態のシート供給装置によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、本実施形態のシート供給装置では、吸着搬送手段3による最上のシート状体101Aの上昇に伴って、最上のシート状体101Aの両端部が、シート状体101の積層方向の下側(Z軸負方向側)に配された突起44(下側の突起44)に当接し湾曲した後、下側の突起44よりも上方に移動することで、最上のシート状体101Aの両端部の湾曲状態が解除されることになる。さらに、この湾曲状態の解除後には、下側の突起44よりも上方に位置する別の突起44(上側の突起44)によって、最上のシート状体101Aの両端部が再度湾曲することになる。すなわち、吸着搬送手段3による最上のシート状体101Aの上昇に伴って、最上のシート状体101Aの両端部の湾曲状態とその解除が繰り返されるため、最上のシート状体101Aの両端部が振動することになる。
したがって、最上のシート状体101Aの下面に別のシート状体101B(下側のシート状体101B)が密着している状態で最上のシート状体101Aを吸着搬送手段3によって上昇させた際には、上述した最上のシート状体101Aの振動によって、下側のシート状体101Bをより確実に最上のシート状体101Aから離間させることができる。
【0059】
〔第四実施形態〕
次に、図9を参照して本発明の第四実施形態について説明する。
この実施形態に係るシート供給装置は、第三実施形態のシート供給装置と比較して、一対の爪部4,4を構成する突起44の形状のみが異なっている。
図9に示すように、この実施形態のシート供給装置を構成する各爪部4の複数の突起44は、第三実施形態と同様に、シート状体101の積層方向(Z軸方向、図2等参照)に互いに間隔をあけて配列されている。また、同一の爪部4を構成する複数の突起44は、等間隔で配列されている。さらに、一対の爪部4,4の間で、突起44の数は同じに設定され、各突起44の高さ位置は同一とされている。
そして、本実施形態では、同一の爪部4を構成する複数の突起44のうちZ軸方向の上側に位置する突起44(上側の突起44)が、下側に位置する突起44(下側の突起44)よりも、平面視したシート状体101の内側に突出している。すなわち、側壁部22の内側面22aから突出する上側の突起44の突出長さが、下側の突起44よりも長くなるように設定されている。
【0060】
本実施形態のシート供給装置によれば、第三実施形態と同様の効果を奏する。
また、本実施形態のシート供給装置では、上側の突起44による最上のシート状体101Aの両端部の湾曲度合いが、下側の突起44による最上のシート状体101Aの両端部の湾曲度合いよりも大きくなる。言い換えれば、最上のシート状体101Aが上昇するにしたがって、最上のシート状体101Aの両端部が振動する振幅が大きくなる。
したがって、最上のシート状体101Aの下面に別のシート状体101B(下側のシート状体101B)が密着している状態で最上のシート状体101Aを吸着搬送手段3によって上昇させた際には、最上のシート状体101A及び下側のシート状体101Bが上下方向に配列された突起44を通過するたびに振動するが、密着した二つのシート状体101A,101Bの離間に必要な最小限の振動の大きさに達した時点で、下側のシート状体101Bが最上のシート状体101Aから離間することになる。言い換えれば、下側のシート状体101Bの湾曲度合いを最小限に抑えて、下側のシート状体101Bが湾曲変形したままで収容部内に収容されることを抑制できる。
【0061】
なお、上述した第三、第四実施形態では、一対の爪部4,4が複数の突起44によって構成されているが、少なくとも一方の爪部4のみが、複数の突起44によって構成されていればよい。この場合、他方の爪部4は、例えば第一、第二実施形態において示した形状に形成されてもよい。
【0062】
〔第五実施形態〕
次に、図10を参照して本発明の第五実施形態について説明する。
この実施形態に係るシート供給装置は、第三実施形態のシート供給装置と比較して、一対の爪部4,4を構成する突起44の配列のみが異なっている。
図10に示すように、この実施形態のシート供給装置を構成する各爪部4の複数の突起44は、第三実施形態と同様に、シート状体101の積層方向(Z軸方向、図2等参照)に互いに間隔をあけて配列されている。また、同一の爪部4を構成する複数の突起44は、同一の突出長さとされ、また、等間隔で配列されている。さらに、一対の爪部4,4の間で、突起44の数、及び、上下方向に隣り合う突起44同士の間隔が同じに設定されている。
そして、本実施形態では、一対の爪部4,4の間で、突起44の高さ位置が互いにずれている。なお、図10における符号t1は、一対の爪部4,4の間での突起44のずれ量を示している。また、本実施形態では、同一の爪部4を構成する複数の突起44同士の間隔が、一対の爪部4,4の間で等しくなるように設定され、一対の爪部4,4を構成する複数の突起44が千鳥状に配列されている。
【0063】
本実施形態のシート供給装置によれば、第三実施形態と同様の効果を奏する。
ただし、本実施形態の構成では、第三実施形態と同様に、吸着搬送手段3による最上のシート状体101Aの上昇に伴って、最上のシート状体101Aの両端部の湾曲状態とその解除が繰り返されるものの、湾曲状態とその解除の繰り返し動作のタイミングが、最上のシート状体101Aの両端部の一方(一端部)と他方(他端部)とで互いに異なる。このため、第三実施形態の場合と比較して、最上のシート状体101Aの振動数を増加させることができ、その結果として、最上のシート状体101Aに密着した下側のシート状体101Bをさらに離間させ易くなる。
上記第五実施形態の構成は、前述した第四実施形態にも適用することが可能である。
【0064】
なお、上述した第三〜第五実施形態では、同一の爪部4を構成する複数の突起44が等間隔で配列されているが、例えば不等間隔で配列されてもよい。また、一対の爪部4,4の間で、突起44の数が異なっていてもよい。
【0065】
〔第六実施形態〕
次に、図11,12を参照して本発明の第六実施形態について説明する。
この実施形態に係るシート供給装置は、第一実施形態のシート供給装置と比較して、主に各爪部4の配置について異なっている。なお、図11,12に記載の構成では、第一実施形態において示したシート状体101の貫通孔101d及びガイドピン5が記載されていないが、例えば第一実施形態の構成と同様に有していてもよい。
図11,12に示すように、この実施形態のシート供給装置11を構成する各爪部4は、第一実施形態と同様に、各側壁部22の内側面22aから一体に突出している。また、各爪部4は、第一実施形態の構成と同様に、シート状体101の積層方向及び一対の爪部4,4の配列方向に直交する方向(Y軸方向)に延在している。なお、図示例では、各側壁部22及びこれに形成された爪部4の幅寸法(Y軸方向の寸法)が、シート状体101の長辺長さよりも長く設定されているが、これに限ることは無く、例えばシート状体101の長辺長さと略同等あるいは長辺長さよりも短く設定されていてもよい。
【0066】
そして、本実施形態においては、一方の爪部4(第一爪部4A)が、平面視で一対の爪部4,4の配列方向に直交する方向(第一爪部4Aの延在方向;Y軸方向)の一端から他端に向かうにしたがって最上のシート状体101Aの上面101cに近づくように傾斜している。また、他方の爪部4B(第二爪部4B)は、第二爪部4Bの延在方向の一端から他端に向かうにしたがって、最上のシート状体101Aの上面101cから遠ざかるように傾斜している。すなわち、各爪部4は、収容部2の底壁上面21aや最上のシート状体101Aの上面101cに対して傾斜している。
そして、一対の爪部4,4は、その配列方向(C方向)から見て、その傾斜方向が互いに逆向きとなるように、また、各爪部4の延在方向の中途部分において互いに同一の高さとなるように配されている。すなわち、一対の爪部4,4は、その配列方向から見て互いに交差するように配されている。
【0067】
図11,12に示す構成についてより詳細に説明すれば、各側壁部22の突出方向先端の高さが、側壁部22の幅方向の一端側から他端側に向かうにしたがって、高くあるいは低くなるように傾斜して設定され、各爪部4は傾斜した各側壁部22の先端に形成されている。
また、一対の爪部4,4の間で、これらの傾斜方向下端の高さ位置は互いに等しく、また、傾斜方向上端の高さ位置も互いに等しくなるように設定されている。さらに、一対の爪部4,4の間で、これらの傾斜角度は同一に設定され、また、その延在方向の寸法も同一に設定されている。これにより、一対の爪部4,4は、その延在方向の中間位置において同じ高さ位置となるように交差している。したがって、図11におけるB−B断面は、第一実施形態の図2に示すものと同様になる。
【0068】
本実施形態のシート供給装置11によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、本実施形態のシート供給装置11によれば、吸着搬送手段3によって収容部2内の最上のシート状体101Aが上昇して一対の爪部4,4に当接した後、最上のシート状体101Aをさらに上昇させると、最上のシート状体101Aが第一実施形態と同様に湾曲することに加え、最上のシート状体101Aの両端部が、一対の爪部4,4の傾斜方向に対応するように、互いに逆向きに傾斜することになる。すなわち、最上のシート状体101Aがねじれるように変形する。
したがって、最上のシート状体101Aの下面に別のシート状体101B(下側のシート状体101B)が密着している状態で最上のシート状体101Aが吸着搬送手段3によって上昇しても、前述した最上のシート状体101Aのねじれ変形によって、下側のシート状体101Bをより確実に最上のシート状体から離間させ、下方に落下させることができる。
上記第六実施形態の構成は、前述した第二〜第五実施形態のいずれにも適用することが可能である。
【0069】
なお、第六実施形態においては、一対の爪部4,4が、両方共に最上のシート状体101Aの上面101cに対して傾斜しているが、少なくとも一対の爪部4,4の配列方向から見て互いに交差するように配されていればよい。したがって、例えば一対の爪部4,4の一方のみがシート状体101Aの上面101cに対して傾斜するように配され、他方がシート状体101Aの上面101cに対して平行するように配されてもよい。
【0070】
以上、本発明の第一〜第六実施形態により本発明の詳細ついて説明したが、本発明の技術的範囲はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、一対の爪部4,4は、平面視長方形状とされたシート状体101の上面101cのうち、長辺に対応する二つの周縁領域に対向するように配されているが、例えば図13,14に示すように、短辺に対応する二つの周縁領域に対向するように配されてもよい。なお、図13,14においては、爪部4を形成した一対の側壁部22,22が、積層されたシート状体101の短辺に対向するように配されることで、収容部2内のシート状体101をその長辺方向の両側から支持している。
【0071】
そして、図13,14に示すように、シート状体101に貫通孔101dを形成することができない場合には、上記実施形態のガイドピン5の代わりに、例えば、収容部2内のシート状体101をその短辺方向の両側から支持する一対の側壁部25,25を収容部2の構成として別個に設ければよい。また、別個の側壁部25を設ける場合には、収容部2内におけるシート状体101の残り枚数を容易に把握できるように、別個の側壁部25にその突出方向先端から底壁上面21a側に向けて窪むスリット25aを形成することが好ましい。
【0072】
また、爪部4は、平面視長方形状とされたシート状体101の上面101cのうち辺(長辺・短辺)に対応する周縁領域に対向配置されることに限らず、吸着搬送手段3で最上のシート状体101Aを収容部2から取り出す際に、最上のシート状体101Aの両端部が爪部4によって湾曲するように、少なくとも平面視でシート状体101を挟み込むように、その上面101cの周縁領域に対応する位置に一対配されていればよい。したがって、爪部4は、例えば図15に示すように、平面視した収容部2内のシート状体101の角部に対応する周縁領域に対向配置されてもよい。
なお、図15においては、爪部4が一対二組形成されているが、少なくとも互いに対角に位置するように一対一組だけ形成されていればよい。また、爪部4を形成した各側壁部22は、平面視したシート状体101の長辺のみに対向するように形成されているが、例えば短辺のみに対向するように形成されてもよいし、あるいは、長辺及び短辺の両方に対向するように形成されてもよい。
【0073】
さらに、本発明に係るシート供給装置は、平面視長方形状のシート状体101に限らず、円形状、楕円形状、任意の多角形状等のように任意の平面視形状を有するシート状体に適用可能である。
なお、シート状体の平面視形状が任意の多角形状となっている場合、全ての爪部4が、図2や図13に示したように平面視したシート状体の辺に対応する位置、あるいは、図15に示したようにシート状体101の角部に対応する位置に配されてもよいが、例えば図16に示すように、一方の爪部4がシート状体の辺に対応する位置に配され、他方の爪部4がシート状体102の角部に対応する位置に配されても構わない。図16に示す構成においても、一対の爪部4,4は、上記実施形態と同様に、平面視で最上のシート状体102Aの上面102cのうち吸着部31に吸着される領域(被吸着領域102e)を挟み込む両端部に対向するように配されている。
【0074】
また、例えば図17に示すように、シート状体103が平面視円形状あるいは平面視楕円形状となっている場合、一対の爪部4,4や側壁部22,22の各内側面22aは、平面視したシート状体103の周縁形状に対応するように、シート状体103の周縁の周方向に延びる円弧状に形成されてもよいが、例えば図17に示すように、平面視したシート状体103の周縁の接線方向に延びる直線状に形成されてもよい。図17に示す構成においても、一対の爪部4,4は、上記実施形態と同様に、平面視で最上のシート状体103Aの上面103cのうち吸着部31に吸着される領域(被吸着領域103e)を挟み込む両端部に対向するように配されている。
なお、図17に示す構成では、図13,14に示した構成の場合と同様に、一対の側壁部22,22と共に底壁上面21aに沿う方向へのシート状体103の移動を規制するための別個の側壁部29が一対形成されている。
【0075】
ところで、図16に示す構成では、底壁上面21aに積層されたシート状体102が、平面視で縦方向(Y軸方向)に長く、横方向(X軸方向)に短い形状に形成されている。そして、収容部2を構成する一対の側壁部22,22及び一対の爪部4,4が、平面視したシート状体102の長手方向(Y軸方向)の両端部に配されている。これにより、一対の側壁部22,22は、シート状体102の長手方向への移動を規制している。
さらに、積層されたシート状体102の短手方向(X軸方向)の両端には、底壁上面21aから上方(Z軸正方向)に突出する一対の支持ピン27,27が配されている。各支持ピン27,27は、積層されたシート状体102の長手方向に沿う辺に対向するように配されている。すなわち、一対の支持ピン27,27は、図13,14に示した別個の側壁部25と同様に、収容部2内のシート状体102をその短手方向の両側から支持し、シート状体102の短手方向への移動を規制している。
【0076】
ところで、図16に示した構成では、第一実施形態と同様に、シート状体102に複数の貫通孔102dが形成されると共に、底壁上面に載置されるシート状体102の各貫通孔102dに挿通させる複数のガイドピン5が形成されている。ただし、シート状体102の底壁上面21aに沿う方向への移動は、一対の側壁部22,22及び支持ピン27,27によって規制されているため、ガイドピン5は、例えば一つだけ形成されてもよいし、形成されていなくてもよい。あるいは、複数のガイドピン5を形成しておき、支持ピン27を形成しなくてもよい。
【0077】
また、全ての実施形態では収容部2が導電性を有するとしたが、少なくとも一つの爪部4が導電性を有すると共に接地されていればよい。なお、静電気によるシート状体101〜103の密着状態を考慮する必要が無ければ、爪部4は電気的な絶縁材料によって形成されてもよい。
さらに、各爪部4は、収容部2の側壁部22から一体に突出するように形成されることに限らず、上記実施形態のように、シート状体101〜103の重ね取りを防止できる位置に配されていればよいため、収容部2とは別個に形成されてもよい。より具体的に説明すれば、爪部4は、例えば側壁部22の上端よりも上方に間隔をあけた位置に設けられてもよい。
【0078】
また、少なくとも一つの爪部4のうち最上のシート状体101Aの両端部が当接する部分は、例えばゴム等のように摩擦係数の高い材料によって構成されてもよい。この場合には、爪部4に当接する最上のシート状体101Aの両端部が、爪部4との摩擦力により、爪部4に対して断続的に移動することになる。すなわち、最上のシート状体101Aの両端部が振動することになる。
したがって、最上のシート状体101A及び下側のシート状体101Bが密着した状態で最上のシート状体101Aを吸着搬送手段3によって上昇させると、前述した振動によって下側のシート状体101Bをより確実に最上のシート状体101Aから離間させることが可能となる。なお、この構成を第二実施形態において示した構成に適用した場合には、最上のシート状体101Aの両端部が振動する時間を特に長く設定することができるため、下側のシート状体101Bの離間には特に有効である。
【符号の説明】
【0079】
1,11 シート供給装置
2 収容部
21a 底壁上面(底面)
3 吸着搬送手段
31 吸着部
4,4A,4B 爪部
42 凹凸部
43 段差
44 突起
5 ガイドピン
101,102,103 シート状体
101A,102A,103A 最上のシート状体
101B 別のシート状体(下側のシート状体)
101c,102c,103c 上面
101d,102d 貫通孔
101e,102e,103e 被吸着領域
【技術分野】
【0001】
この発明は、シート供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙や樹脂製シート等のように可撓性を有するシート状体を用いた各種製品の量産、あるいは、多数枚のシート状体の検査などを効率よく行うために、多数のシート状体を積層状態でシート収容部(収容手段)に収容しておき、シート状体をこのシート収容部から一枚ずつ外部に供給するシート供給装置が用いられている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1に記載のシート供給装置では、シート収容部のうちシート状体の積層方向の一端に、シート状体をシート収容部から取り出すための供給口が形成されている。また、このシート供給装置は、シート状体の積層方向に進退可能とされた吸着部材を、積層された多数枚のシート状体のうち供給口側に位置する一枚のシート状体の表面に吸着させた上で、供給口からシート収容部の外側に移動させるように構成されている。
【0003】
また、特許文献1に記載のシート供給装置には、シート収容部内において積層されたシート状体をシート収容部の供給口に向けて押し付ける押圧手段が設けられている。さらに、シート収容部の供給口には、シート収容部内において最も供給口側に位置するシート状体の表面の端部に当接する爪(仮保持手段)が形成されており、シート収容部内のシート状体が、押圧手段の押付力によって外部に抜け出ることを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−301557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように構成される従来のシート供給装置では、一枚のシート状体の表面に吸着部材を吸着させてこのシート状体を移送する際、このシート状体の裏面側に別のシート状体が静電気等によって密着したままで、シート状体が移送されてしまう場合がある。すなわち、複数枚のシート状体が重なった状態でシート供給装置の外部に供給されてしまう虞がある。
このシート状体の重ね取りを防ぐために、特許文献1に記載のシート供給装置では、吸着部材に吸着されたシート状体と、このシート状体の裏面側に密着した別のシート状体との間にエアーを吹き付けて、別のシート状体を吸着部材に吸着されたシート状体から引き剥がすようにしている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のシート供給装置では、密着した二枚のシート状体の間に隙間が全く無いと、エアーを吹き付けても二枚のシート状体を引き剥がすことができない、という問題がある。
また、特許文献1に記載のシート供給装置では、エアーを吹きつけるための動力源が必要となるため、シート供給装置の製造費用や維持費用が高くなってしまう、という問題もある。
【0007】
さらに、特許文献1に記載のシート供給装置では、シート収容部内に積層されたシート状体が、押圧手段によって常に供給口の爪に押し付けられているため、シート状体が変形したり、傷つけられてしまう、という問題もある。特に、シート状体が製品の製造に使用するものである場合、シート状体の変形や損傷に起因して、製品が不良品となってしまう虞がある。
【0008】
この発明は、上述した事情に鑑みたものであって、製造費用や維持費用を安価に抑えながらもシート状体の重ね取りを防止でき、さらに、シート状体の変形や損傷も防ぐことが可能なるシート供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明のシート供給装置は、可撓性を有するシート状体を下から順番に複数枚積層した状態で収容可能な収容部と、当該収容部に収容された最上の前記シート状体の上面に吸着する吸着部を有し、当該吸着部に前記最上のシート状体を吸着させた上で、当該最上のシート状体をその積層方向の上側に移動させる吸着搬送手段と、前記収容部に収容された前記最上のシート状体よりも上方に間隔をあけた位置に配され、前記吸着搬送手段による前記最上のシート状体の上昇に伴って、当該最上のシート状体の上面のうち前記吸着部に吸着される領域を挟み込む両端部に当接し、前記最上のシート状体の両端部が下方に向くように、前記最上のシート状体を湾曲させる一対の爪部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成のシート供給装置では、最上のシート状体の下面に別のシート状体(以下、下側のシート状体と呼ぶ。)が密着している状態で、吸着搬送手段によって最上のシート状体が上昇すると、最上のシート状体及び下側のシート状体が、収容部に積層された残りのシート状体から離れた後に、最上のシート状体が一対の爪部に当接する。
そして、この当接状態からさらに最上のシート状体を上昇させると、最上のシート状体及び下側のシート状体の両端部が下方に湾曲する。この際、下側のシート状体が湾曲する曲率は、最上のシート状体が湾曲する曲率よりも大きくなるため、最上のシート状体と下側のシート状体とが隙間なく密着していても、下側のシート状体を確実に最上のシート状体から離間させ、下方に落下させることができる。すなわち、シート状体の重ね取りを確実に防止することができる。
【0011】
また、シート状体の重ね取り防止に要する構成が、収容部の上方に配される爪部のみであることから、従来のものと比較して、シート供給装置の製造費用や維持費用を安価に抑えることができる。
さらに、一対の爪部が収容部内に積層されたシート状体よりも上方に間隔をあけて配されていることで、収容部内に積層されたシート状体には、従来のような外力がかからないため、シート状体の変形や損傷も防止することができる。
【0012】
そして、前記シート供給装置においては、前記一対の爪部が、当該一対の爪部の配列方向から見て互いに交差するように配されていると好ましい。
この構成では、吸着搬送手段によって収容部内の最上のシート状体が上昇して一対の爪部に当接した後、最上のシート状体をさらに上昇させると、前述した湾曲変形に加え、最上のシート状体の両端部が互いに交差することになる。すなわち、最上のシート状体がねじれるように変形する。
したがって、最上のシート状体の下面に別のシート状体(下側のシート状体)が密着している状態で最上のシート状体が吸着搬送手段によって上昇しても、前述したシート状体のねじれ変形によって、下側のシート状体をより確実に最上のシート状体から離間させ、下方に落下させることができる。
【0013】
また、前記シート供給装置においては、前記一対の爪部の間隔が、前記積層方向の上側に向かうにしたがって狭くなるとよい。
そして、一対の爪部の間隔を前記積層方向の上側に向かうにしたがって狭くするためには、例えば、前記一対の爪部の少なくとも一方が、複数の段差を有して階段状に形成されていればよい。
【0014】
また、前記一対の爪部の少なくとも一方が、前記積層方向の上側に向かうにしたがって平面視したシート状体の内側に延びる傾斜面を有していてもよい。
なお、前記爪部が前記傾斜面を有する場合、前記傾斜面には凹凸部が形成されていてもよい。
【0015】
これらの構成では、吸着搬送手段によって収容部内の最上のシート状体が上昇して一対の爪部に当接した後、最上のシート状体をさらに上昇させるにしたがって、最上のシート状体の両端部の少なくとも一方(以下、一端部と呼ぶ。)が湾曲する度合い(曲がり具合)が徐々に大きくなる。すなわち、一対の爪部の間隔が等しい場合と比較して、最上のシート状体の上昇に伴う最上のシート状体の一端部(両端部)の湾曲変形がゆっくりと行われることになる。
【0016】
したがって、最上のシート状体の下面に別のシート状体(下側のシート状体)が密着している状態で最上のシート状体を吸着搬送手段によって上昇させた際には、最上のシート状体及び下側のシート状体の一端部(両端部)の湾曲度合いが徐々に大きくなる。そして、密着したシート状体の離間に必要な最小限の湾曲度合いに達した時点で、下側のシート状体が最上のシート状体から離間することになる。すなわち、下側のシート状体の湾曲度合いを最小限に抑え、下側のシート状体が湾曲変形したままで収容部内に収容されることを抑制できる。
【0017】
さらに、前記シート供給装置においては、前記一対の爪部の少なくとも一方が、前記積層方向に互いに間隔をあけて配列された複数の突起によって構成されていることが好ましい。
【0018】
この構成では、吸着搬送手段による最上のシート状体の上昇に伴って、最上のシート状体の両端部の少なくとも一方(以下、一端部と呼ぶ。)が、前記積層方向の下側に配された突起(下側の突起)に当接し湾曲した後、下側の突起よりも上方に移動することで、最上のシート状体の一端部(両端部)の湾曲状態が解除されることになる。さらに、この湾曲状態の解除後には、下側の突起よりも上方に位置する別の突起(上側の突起)によって、最上のシート状体の一端部(両端部)が再度湾曲することになる。すなわち、吸着搬送手段による最上のシート状体の上昇に伴って、最上のシート状体の一端部(両端部)の湾曲状態とその解除が繰り返されるため、最上のシート状体の一端部(両端部)が振動することになる。
したがって、最上のシート状体の下面に別のシート状体(下側のシート状体)が密着している状態で最上のシート状体を吸着搬送手段によって上昇させた際には、上述したシート状体の振動によって、下側のシート状体をより確実に最上のシート状体から離間させることが可能となる。
【0019】
また、前記シート供給装置においては、前記複数の突起のうち前記積層方向の上側に位置する突起が、前記積層方向の下側に位置する突起よりも、平面視したシート状体の内側に突出していてもよい。
この構成では、上側の突起による最上のシート状体の一端部(両端部)の湾曲度合いが、下側の突起による最上のシート状体の一端部(両端部)の湾曲度合いよりも大きくなる。言い換えれば、最上のシート状体が上昇するにしたがって、最上のシート状体の一端部(両端部)が振動する振幅が大きくなる。
【0020】
したがって、最上のシート状体の下面に別のシート状体(下側のシート状体)が密着している状態で最上のシート状体を吸着搬送手段によって上昇させた際には、最上のシート状体及び下側のシート状体が上下方向に配列された突起を通過するたびに振動するが、密着したシート状体の離間に必要な最小限の振動の大きさに達した時点で、下側のシート状体が最上のシート状体から離間することになる。言い換えれば、下側のシート状体の湾曲度合いを最小限に抑えて、下側のシート状体が湾曲変形したままで収容部内に収容されることを抑制できる。
【0021】
さらに、前記シート供給装置において、前記一対の爪部が、それぞれ前記複数の突起によって構成されている場合には、前記一対の爪部の間で、前記突起の高さ位置が互いにずれているとよい。
この構成では、前述したように、吸着搬送手段による最上のシート状体の上昇に伴って、最上のシート状体の両端部の湾曲状態とその解除が繰り返されるものの、湾曲状態とその解除の繰り返し動作のタイミングが、最上のシート状体の両端部の一方(一端部)と他方(他端部)とで互いに異なる。このため、一対の爪部の間で突起の高さ位置が等しい場合と比較して、最上のシート状体の振動数を増加させることができ、その結果として、最上のシート状体に密着した下側のシート状体をさらに離間させ易くなる。
【0022】
また、前記シート供給装置においては、前記一対の爪部の少なくとも一方が、導電性を有すると共に接地されているとよい。
この構成では、最上のシート状体及び下側のシート状体が静電気によって密着していても、最上のシート状体が爪部に当接することで、最上のシート状体及び下側のシート状体の静電気が除去されるため、静電気によるシート状体の密着力を無くすあるいは減らすことができる。したがって、爪部によるシート状体の湾曲変形や、ねじれ変形、振動の度合いを小さく設定しても、下側のシート状体を最上のシート状体から容易に離間させることが可能となる。
【0023】
さらに、前記シート状体にその厚さ方向に貫通する貫通孔が形成されている場合には、前記シート供給装置が、積層状態の前記シート状体を載置する前記シート収容部の底面から前記一対の爪部の上方まで延びて、前記シート状体の貫通孔に挿通されるガイドピンを備えているとよい。
この構成では、最上のシート状体が一対の爪部の下方から上方に通過する際に、最上のシート状体の下面に張り付いていた下側のシート状体が、一対の爪部において最上のシート状体から離間して下方に落下する際に、下側のシート状体に位置ずれが生じることを抑制できる。
【0024】
したがって、最上のシート状体を収容部から取り出した後、吸着搬送手段で下側のシート状体を収容部から取り出す際に、下側のシートの上面に対する吸着部の吸着位置がずれることを抑えることができる。言い換えれば、上記ガイドピンを設けることで、吸着部に対するシート状体の被吸着部分がずれてしまうことを抑制できる。その結果として、吸着搬送手段によってシート状体を外部の所定位置まで搬送する際に、外部の所定位置におけるシート状体の位置精度を向上させることができる。
また、ガイドピンが一対の爪部よりも上方に延びていることで、前記貫通孔の形成部分が一対の爪部よりも上方に移動した後に、下側のシート状体が最上のシート状体から離間したとしても、貫通孔に対するガイドピンの挿通状態を保持することができる。すなわち、下側のシート状体が最上のシート状体と共に上昇してから離間するまでの間に、ガイドピンが下側のシート状体の貫通孔から抜け出ることを確実に防止できる。
【0025】
そして、前記シート状体が平面視多角形状に形成される場合には、前記シート供給装置において、前記一対の爪部の少なくとも一方が、それぞれ平面視した前記最上のシート状体の角部の上方に配されてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、シート供給装置の製造費用や維持費用を安価に抑えながらもシート状体の重ね取りを防止することができる。また、シート状体の変形や損傷も防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一実施形態に係るシート供給装置を上方から見た状態を示す概略上面図である。
【図2】図1のA−A矢視断面図である。
【図3】図1,2に示すシート供給装置によるシート状体の取り出し動作を示す概略断面図である。
【図4】図1,2に示すシート供給装置によるシート状体の取り出し動作を示す概略断面図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係るシート供給装置を構成する一対の爪部の一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係るシート供給装置を構成する一対の爪部の他の例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係るシート供給装置を構成する一対の爪部の他の例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の第三実施形態に係るシート供給装置を構成する一対の爪部を示す概略断面図である。
【図9】本発明の第四実施形態に係るシート供給装置を構成する一対の爪部を示す概略断面図である。
【図10】本発明の第五実施形態に係るシート供給装置を構成する一対の爪部を示す概略断面図である。
【図11】本発明の第六実施形態に係るシート供給装置を上方から見た状態を示す概略上面図である。
【図12】図11に示すシート供給装置をC方向から見た状態を示す概略側面図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係るシート供給装置を上方から見た状態を示す概略上面図である。
【図14】図13に示すシート供給装置をD方向から見た状態を示す概略側面図である。
【図15】本発明の他の実施形態に係るシート供給装置を上方から見た状態を示す概略上面図である。
【図16】本発明の他の実施形態に係るシート供給装置を上方から見た状態を示す概略上面図である。
【図17】本発明の他の実施形態に係るシート供給装置を上方から見た状態を示す概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第一実施形態〕
以下、図1〜4を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1,2に示すように、この実施形態に係るシート供給装置1は、紙、樹脂製シートあるいは封筒等のように薄膜あるいは薄板状に形成されて可撓性を有するシート状体101を取り扱うものである。なお、本実施形態で用いるシート状体101は平面視長方形に形成されている。また、シート状体101には、その厚さ方向に貫通する貫通孔101dが複数(図示例では二つ)形成されている。これら複数の貫通孔101dは、平面視したシート状体101の長辺に沿うように、互いに間隔をあけて配列されている。
そして、シート供給装置1は、上記シート状体101を複数枚あるいは多数枚積層した状態で収容可能な収容部2と、収容部2内のシート状体101を外部に移動させるための吸着搬送手段3とを備えて大略構成されている。
【0029】
収容部2は、シート状体101を積層状態で載置する平坦な底壁上面(底面)21aを有する底壁部21と、底壁上面21aから突出する一対の側壁部22,22とを備えている。底壁部21は、その底壁上面21aが鉛直方向(Z軸方向)上側に向くように配されており、これによって、シート状体101は収容部2において下から順番に積層されることになる。なお、以下の説明では、シート状体101を底壁上面21a上に複数積層した集合体のことを積層体100とも呼ぶ。
【0030】
一対の側壁部22,22は、底壁上面21a上に載置された積層体100を両側から支持するように互いに間隔をあけて配されている。
具体的に説明すれば、各側壁部22は、底壁上面21aから垂直に延びる平坦な内側面22aを有しており、一対の側壁部22,22の内側面22a,22aは、積層体100を挟み込むように互いに平行し対向している。そして、各内側面22aは、積層されたシート状体101の長辺に対向し、一対の内側面22a,22a同士の間隔は、平面視したシート状体101の短辺長さと略同等となるように、あるいは、短辺長さよりも若干長くなるように設定されている。
【0031】
したがって、一対の側壁部22,22は、積層されたシート状体101がその短辺方向(X軸方向)に平行移動(位置ずれ)しないように、また、底壁上面21aに沿う面内で回転(位置ずれ)しないように規制する役割を果たしている。
なお、図示例において、シート状体101の長辺方向(Y軸方向)に沿う側壁部22の内側面22aの寸法(以下、内側面22aの幅寸法と呼ぶ。)は、シート状体101の長辺長さよりも短く設定されているが、これに限ることは無く、例えばシート状体101の長辺長さと略同等あるいは長辺長さよりも長く設定されていてもよい。
以上のように構成される収容部2は、導電性を有する材料によって形成されており、アース線23を介して接地されている。
【0032】
吸着搬送手段3は、収容部2に収容された積層体100のうち最上のシート状体101Aの上面101cに吸着させる吸着部31と、吸着部31を収容部2に対して少なくともシート状体101の積層方向(Z軸方向)に上下移動させる駆動機構(不図示)とを備えている。また、吸着部31は、エアーを吸引する吸引パイプ32の先端に吸着パッド33を設けて構成されている。
したがって、この吸着搬送手段3では、吸着パッド33を最上のシート状体101Aに押し付けた状態で、真空ポンプ(不図示)等により吸引パイプ32内のエアーを吸引することで、最上のシート状体101Aを吸着パッド33に吸着させることができる。また、最上のシート状体101Aを吸着パッド33に吸着した上で、駆動機構により吸着部31を上方に移動させることで、最上のシート状体101Aをその積層方向の上側に移動させることができる。
【0033】
なお、図示例では、吸着パッド33が最上のシート状体101Aの上面101cの中央領域に吸着するように設定されているが、少なくとも後述する一対の爪部4,4の間において最上のシート状体101Aの上面101cのうち貫通孔101dに干渉しない領域(被吸着領域101e)に吸着するように設定されればよい。
また、吸着搬送手段3の駆動機構は、吸着部31を上下方向に移動させることに限らず、シート状体101を収容部2の外部の所定位置まで搬送できるように、吸着部31を縦横方向(X軸方向やY軸方向)に移動させるように構成されてもよい。
【0034】
さらに、本実施形態のシート供給装置1は、吸着搬送手段3によるシート状体101の重ね取りを防止するための一対の爪部4,4を備えている。
各爪部4は、各側壁部22のうちその突出方向先端において内側面22aから突出しており、また、底壁上面21aに平行するように側壁部22の内側面22aの幅方向(Y軸方向)に延在している。なお、図示例では、各爪部4の幅寸法が、側壁部22の内側面22aの幅寸法と同等に設定されているが、これに限ることは無く、例えば内側面22aの幅寸法よりも小さく設定されてもよい。
そして、各爪部4は、各側壁部22に一体に形成され、前述した収容部2と同様に導電性を有している。
【0035】
各爪部4の高さ位置は、収容部2に収容された最上のシート状体101Aよりも上方に間隔をあけた位置となるように設定されている。言い換えれば、本実施形態のシート供給装置1の使用に際しては、最上のシート状体101Aの上面101cが一対の爪部4,4よりも低く位置するように、底壁上面21aに積層されるシート状体101の枚数が制限される。
そして、一対の爪部4,4は、平面視で最上のシート状体101Aの上面101cのうち吸着部31に吸着される領域(被吸着領域101e)を挟み込む両端部に対向するように配されている。なお、本実施形態では、一対の爪部4,4が、最上のシート状体101Aの上面101cのうちその短辺方向(X軸方向)の両端部に位置する二つの周縁領域に対向している。
【0036】
また、一対の爪部4,4は、前述した吸着搬送手段3による最上のシート状体101Aの上昇に伴って、最上のシート状体101Aの上面101cの両端部に当接し、最上のシート状体101Aの両端部を下方に向かせるように、最上のシート状体101Aを湾曲させる役割を果たすように、その突出長さが設定されている(図3等参照)。したがって、一対の爪部4,4の突出長さは、例えば、平面視で最上のシート状体101Aの上面101cの被吸着領域101eや貫通孔101dに干渉しない程度に、また、吸着搬送手段3によって上昇された最上のシート状体101Aの上面101cの両端部への当接によって最上のシート状体101Aが吸着パッド33から剥がれない程度に設定されている。
【0037】
さらに、本実施形態のシート供給装置1には、収容部2の底壁上面21aから一対の爪部4,4よりも上方に延びる複数(図示例では二つ)のガイドピン5が設けられている。各ガイドピン5は、底壁上面21a上に積層されるシート状体101の各貫通孔101dに挿通させるものである。したがって、複数のガイドピン5は、平面視でシート状体101の複数の貫通孔101dの形成位置に一致するように配列されている。なお、図示例では、各ガイドピン5の延出方向先端が先細り状に形成されているが、これに限ることはない。
【0038】
このようにガイドピン5が形成されていることで、収容部2内に収容されたシート状体101が底壁上面21aに沿う方向(X軸方向、Y軸方向)に平行移動(位置ずれ)することが防止されている。また、ガイドピン5が複数形成されていることで、底壁上面21aに沿う面内で回転(位置ずれ)することも防止されている。したがって、底壁上面21a上に積層されたシート状体101同士で位置ずれが生じることを防止できる。
【0039】
次に、以上のように構成されるシート供給装置1の動作の一例について説明する。
収容部2内において積層されたシート状体101を外部に供給する際には、はじめに、図3(a)に示すように、吸着部31を下方に移動させ、吸着パッド33を最上のシート状体101Aの上面101cに押し付ける。次いで、吸引パイプ32内のエアーを吸引して最上のシート状体101Aを吸着パッド33に吸着させる。そして、この吸着状態を保持したままで吸着部31を上方に移動させることで、図3(b)に示すように、吸着パッド33に吸着された最上のシート状体101Aも上昇する。
【0040】
ここで、図示例のように、最上のシート状体101Aの下面に別のシート状体101B(以下、下側のシート状体101Bとも呼ぶ。)が静電気等によって密着している場合には、一対の爪部4,4及び吸着搬送手段3の協働によって下側のシート状体101Bを最上のシート状体101Aから引き剥がすことができる。
詳細に説明すれば、最上のシート状体101A及び下側のシート状体101Bが密着状態で上昇すると、収容部2に積層された残りのシート状体101から離れた後に、図4(a)に示すように、最上のシート状体101Aの上面101cの両端部が一対の爪部4,4に当接する。
【0041】
その後、この当接状態からさらに最上のシート状体101Aを上昇させると、図4(b)に示すように、最上のシート状体101A及び下側のシート状体101Bの両端部が下方に湾曲する。なお、この湾曲度合いは、最上のシート状体101Aが上昇するにしたがって徐々に大きくなる(図4(a),(b)参照)。この湾曲の際、下側のシート状体101Bが湾曲する曲率は、最上のシート状体101Aが湾曲する曲率よりも大きくなるため、最上のシート状体101Aと下側のシート状体101Bとが隙間なく密着していても、下側のシート状体101Bを確実に最上のシート状体101Aから離間させ、下方に落下させることができる。
【0042】
下側のシート状体101Bから離間した最上のシート状体101Aは、図4(c)に示すように、一対の爪部4,4よりも上方まで移動することで、一対の爪部4,4との当接状態が解除されると共に、その湾曲状態も解除される。また、最上のシート状体101Aがガイドピン5の先端よりも上方に移動することで、ガイドピン5が最上のシート状体101Aの貫通孔101d(図1参照)から抜け出ることになる。
【0043】
一方、図4(b)に示すように、最上のシート状体101Aから離間した下側のシート状体101Bが落下する際には、下側のシート状体101Bが、その貫通孔101dに挿通されたガイドピン5や側壁部22の内側面22aによって、底壁上面21aに沿う方向(X軸方向、Y軸方向)に平行移動することがなく、また、底壁上面21aに沿う面内で回転することもない。したがって、最上のシート状体101Aから離間して落下する下側のシート状体101Bが、積層されている残りのシート状体101に対して位置ずれした状態で残りのシート状体101上に配されてしまうことを防止することができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係るシート供給装置1によれば、収容部2内で積層されたシート状体101のうち最上のシート状体101Aを吸着搬送手段3で収容部2から取り出す際には、一対の爪部4,4で最上のシート状体101Aを湾曲させることで、最上のシート状体101Aの下面に密着した別のシート状体101Bを引き剥がすことができるため、シート状体101を確実に一枚ずつ取り出すことが可能となる。言い換えれば、シート状体101の重ね取りを確実に防止することができる。
【0045】
また、少なくとも収容部2の上方に一対の爪部4,4を設けるだけで、シート状体101の重ね取りを防止できるため、従来のものと比較して、シート供給装置1の製造費用や維持費用を安価に抑えることができる。
さらに、一対の爪部4,4が収容部2内に積層されたシート状体101よりも上方に間隔をあけて配されていることで、収容部2内に積層されたシート状体101には、従来のような外力がかからないため、シート状体101の変形や損傷も防止することができる。
【0046】
また、収容部2が導電性を有すると共に接地されていることで、収容部2内に積層されたシート状体101が静電気を帯びることを抑えて、最上のシート状体101Aの下面に別のシート状体101B(下側のシート状体101B)が静電気によって密着することを抑制できる。
さらに、一対の爪部4,4が導電性を有すると共に接地されているため、最上のシート状体101A及び下側のシート状体101Bが静電気によって密着した状態で吸着搬送手段3によって上昇したとしても、最上のシート状体101Aが爪部4に当接することで、最上のシート状体101A及び下側のシート状体101Bの静電気を除去することができる。すなわち、最上のシート状体101A及び下側のシート状体101Bの密着力を無くすあるいは減らすことができる。したがって、爪部4の突出長さを小さく設定する等して、爪部4によるシート状体101の湾曲変形の度合いを小さく設定したとしても、下側のシート状体101Bを最上のシート状体101Aから容易に離間させることが可能となる。
【0047】
また、シート供給装置1がガイドピン5を備えることで、最上のシート状体101Aから離間して落下する下側のシート状体101Bが、積層されている残りのシート状体101に対して位置ずれした状態で、残りのシート状体101上に配されることを防止することができる。したがって、吸着搬送手段3で最上のシート状体101Aを収容部2から取り出した後、下側のシート状体101Bを収容部2から取り出す際に、下側のシート状体101Bの上面に対する吸着部31の吸着位置がずれることを抑えることができる。言い換えれば、吸着部31に対するシート状体101の被吸着部分がずれてしまうことを抑制できる。その結果として、吸着搬送手段3によってシート状体101を外部の所定位置まで搬送する際に、外部の所定位置におけるシート状体101の位置精度を向上させることができる。
【0048】
さらに、ガイドピン5は一対の爪部4,4よりも上方に延びているため、下側のシート状体101Bの貫通孔101dが一対の爪部4,4よりも上方に移動した後に、下側のシート状体101Bが最上のシート状体101Aから離間したとしても、貫通孔101dに対するガイドピン5の挿通状態を保持することができる。すなわち、下側のシート状体101Bが最上のシート状体101Aと共に上昇してから離間するまでの間に、ガイドピン5が下側のシート状体101Bの貫通孔101dから抜け出ることを確実に防止できる。
【0049】
なお、複数の貫通孔101d及びガイドピン5は、上記第一実施形態のように配列されることに限らず、少なくとも一対の爪部4,4や吸着部31に干渉しない領域において互いに間隔をあけて配されていればよい。
【0050】
〔第二実施形態〕
次に、図5〜7を参照して本発明の第二実施形態について説明する。
この実施形態に係るシート供給装置は、第一実施形態のシート供給装置と比較して、一対の爪部4,4の形状のみが異なっている。
図5〜7に示すように、この実施形態のシート供給装置を構成する一対の爪部4,4は、第一実施形態と同様に、それぞれ側壁部22の内側面22aから突出して形成されている。そして、これら一対の爪部4,4は、その間隔がシート状体101の積層方向の上側(Z軸正方向側、図2等参照)に向かうにしたがって狭くなるように形成されている。以下、図5〜7に示す各爪部4の形状について説明する。
【0051】
図5に示す各爪部4は、Z軸正方向側に向かうにしたがって平面視したシート状体101の内側(図2等参照)に延びる傾斜面41を有している。この傾斜面41は、収容部2内に積層された最上のシート状体101Aの上面101c側に面している。このため、最上のシート状体101Aが吸着搬送手段3によって上昇した際には、爪部4の傾斜面41に当接することになる。
【0052】
また、図6に示す各爪部4は、図5に示す構成と同様の傾斜面41に、収容部2内のシート状体101の積層方向(Z軸方向)に波打つ凹凸部42を形成して構成されている。したがって、最上のシート状体101Aが吸着搬送手段3によって上昇した際には、この爪部4の凹凸部42に当接することになる。
なお、図示例では、一方の爪部4(紙面右側の爪部4)の凹凸部42が傾斜面41から突出する複数の凸部42Aによって構成され、他方の爪部4(紙面左側の爪部4)の凹凸部42が傾斜面41から窪む複数の凹部42Bによって構成されているが、これに限ることは無い。例えば、一対の爪部4の凹凸部42が双方共に凸部42A及び凹部42Bの一方のみによって構成されてもよいし、同一の傾斜面41に凸部42A及び凹部42Bの両方が形成されてもよい。
また、凸部42Aや凹部42Bは、少なくとも傾斜面41の下端側から上端側に向けて間隔をあけて複数配列されていればよく、例えば、側壁部22の幅方向(Y軸方向)に延びるように形成されていてもよいし、側壁部22の幅方向にも間隔をあけて複数配列されてもよい。
【0053】
そして、図6に示す各爪部4は、複数の段差43を有して階段状に形成されている。これら段差43の角部や段差面は、収容部2内に積層された最上のシート状体101Aの上面101c側に面している。このため、最上のシート状体101Aが吸着搬送手段3によって上昇した際には、これら段差43の角部や段差面に当接することになる。
【0054】
本実施形態のシート供給装置によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、本実施形態のシート供給装置では、吸着搬送手段3によって収容部2内の最上のシート状体101Aが上昇して一対の爪部4,4に当接した後、最上のシート状体101Aをさらに上昇させるにしたがって、最上のシート状体101Aの両端部が湾曲する度合い(曲がり具合)が徐々に大きくなる。すなわち、第一実施形態のように一対の爪部の間隔が等しい場合と比較して、最上のシート状体101Aの上昇に伴う最上のシート状体101Aの両端部の湾曲変形がゆっくりと行われることになる。
【0055】
したがって、最上のシート状体101Aの下面に別のシート状体101Bが密着している状態で最上のシート状体101Aを吸着搬送手段3によって上昇させた際には、最上のシート状体101A及び下側のシート状体101Bの両端部の湾曲度合いが徐々に大きくなる。そして、密着した二つのシート状体101A,101Bの離間に必要な最小限の湾曲度合いに達した時点で、下側のシート状体101Bが最上のシート状体101Aから離間することになる。すなわち、下側のシート状体101Bの湾曲度合いを最小限に抑え、下側のシート状体101Bが湾曲変形したままで収容部2内に収容されることを抑制できる。
【0056】
なお、上記第二実施形態では、傾斜面41や凹凸部42、段差43が、一対の爪部4,4両方に形成されるとしたが、少なくとも一方の爪部4に形成されていればよく、例えば他方の爪部4は第一実施形態と同様の形状としても構わない。
また、爪部4が複数の段差43を有して構成される場合、各段差43の段差面は、図7に例示したように側壁部22の内側面22aに平行あるいは直交することに限らず、例えば図5に示す傾斜面41と同様に傾斜していても構わない。また、段差43が傾斜面41を有する場合、この傾斜面41に図6と同様の凹凸部42が形成されてもよい。
【0057】
〔第三実施形態〕
次に、図8を参照して本発明の第三実施形態について説明する。
この実施形態に係るシート供給装置は、第一、第二実施形態のシート供給装置と比較して、一対の爪部4,4の形状のみが異なっている。
図8に示すように、この実施形態のシート供給装置を構成する一対の爪部4,4は、第一実施形態と同様に、それぞれ側壁部22の内側面22aから突出して形成されている。そして、各爪部4は、シート状体101の積層方向(Z軸方向、図2等参照)に互いに間隔をあけて配列された複数(図示例では四つ)の突起44によって構成されている。
ここで、同一の爪部4を構成する複数の突起44は、同一の突出長さとされ、また、等間隔で配列されている。また、一対の爪部4,4の間で、突起44の数は同じに設定され、各突起44の高さ位置は同一とされている。
【0058】
本実施形態のシート供給装置によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、本実施形態のシート供給装置では、吸着搬送手段3による最上のシート状体101Aの上昇に伴って、最上のシート状体101Aの両端部が、シート状体101の積層方向の下側(Z軸負方向側)に配された突起44(下側の突起44)に当接し湾曲した後、下側の突起44よりも上方に移動することで、最上のシート状体101Aの両端部の湾曲状態が解除されることになる。さらに、この湾曲状態の解除後には、下側の突起44よりも上方に位置する別の突起44(上側の突起44)によって、最上のシート状体101Aの両端部が再度湾曲することになる。すなわち、吸着搬送手段3による最上のシート状体101Aの上昇に伴って、最上のシート状体101Aの両端部の湾曲状態とその解除が繰り返されるため、最上のシート状体101Aの両端部が振動することになる。
したがって、最上のシート状体101Aの下面に別のシート状体101B(下側のシート状体101B)が密着している状態で最上のシート状体101Aを吸着搬送手段3によって上昇させた際には、上述した最上のシート状体101Aの振動によって、下側のシート状体101Bをより確実に最上のシート状体101Aから離間させることができる。
【0059】
〔第四実施形態〕
次に、図9を参照して本発明の第四実施形態について説明する。
この実施形態に係るシート供給装置は、第三実施形態のシート供給装置と比較して、一対の爪部4,4を構成する突起44の形状のみが異なっている。
図9に示すように、この実施形態のシート供給装置を構成する各爪部4の複数の突起44は、第三実施形態と同様に、シート状体101の積層方向(Z軸方向、図2等参照)に互いに間隔をあけて配列されている。また、同一の爪部4を構成する複数の突起44は、等間隔で配列されている。さらに、一対の爪部4,4の間で、突起44の数は同じに設定され、各突起44の高さ位置は同一とされている。
そして、本実施形態では、同一の爪部4を構成する複数の突起44のうちZ軸方向の上側に位置する突起44(上側の突起44)が、下側に位置する突起44(下側の突起44)よりも、平面視したシート状体101の内側に突出している。すなわち、側壁部22の内側面22aから突出する上側の突起44の突出長さが、下側の突起44よりも長くなるように設定されている。
【0060】
本実施形態のシート供給装置によれば、第三実施形態と同様の効果を奏する。
また、本実施形態のシート供給装置では、上側の突起44による最上のシート状体101Aの両端部の湾曲度合いが、下側の突起44による最上のシート状体101Aの両端部の湾曲度合いよりも大きくなる。言い換えれば、最上のシート状体101Aが上昇するにしたがって、最上のシート状体101Aの両端部が振動する振幅が大きくなる。
したがって、最上のシート状体101Aの下面に別のシート状体101B(下側のシート状体101B)が密着している状態で最上のシート状体101Aを吸着搬送手段3によって上昇させた際には、最上のシート状体101A及び下側のシート状体101Bが上下方向に配列された突起44を通過するたびに振動するが、密着した二つのシート状体101A,101Bの離間に必要な最小限の振動の大きさに達した時点で、下側のシート状体101Bが最上のシート状体101Aから離間することになる。言い換えれば、下側のシート状体101Bの湾曲度合いを最小限に抑えて、下側のシート状体101Bが湾曲変形したままで収容部内に収容されることを抑制できる。
【0061】
なお、上述した第三、第四実施形態では、一対の爪部4,4が複数の突起44によって構成されているが、少なくとも一方の爪部4のみが、複数の突起44によって構成されていればよい。この場合、他方の爪部4は、例えば第一、第二実施形態において示した形状に形成されてもよい。
【0062】
〔第五実施形態〕
次に、図10を参照して本発明の第五実施形態について説明する。
この実施形態に係るシート供給装置は、第三実施形態のシート供給装置と比較して、一対の爪部4,4を構成する突起44の配列のみが異なっている。
図10に示すように、この実施形態のシート供給装置を構成する各爪部4の複数の突起44は、第三実施形態と同様に、シート状体101の積層方向(Z軸方向、図2等参照)に互いに間隔をあけて配列されている。また、同一の爪部4を構成する複数の突起44は、同一の突出長さとされ、また、等間隔で配列されている。さらに、一対の爪部4,4の間で、突起44の数、及び、上下方向に隣り合う突起44同士の間隔が同じに設定されている。
そして、本実施形態では、一対の爪部4,4の間で、突起44の高さ位置が互いにずれている。なお、図10における符号t1は、一対の爪部4,4の間での突起44のずれ量を示している。また、本実施形態では、同一の爪部4を構成する複数の突起44同士の間隔が、一対の爪部4,4の間で等しくなるように設定され、一対の爪部4,4を構成する複数の突起44が千鳥状に配列されている。
【0063】
本実施形態のシート供給装置によれば、第三実施形態と同様の効果を奏する。
ただし、本実施形態の構成では、第三実施形態と同様に、吸着搬送手段3による最上のシート状体101Aの上昇に伴って、最上のシート状体101Aの両端部の湾曲状態とその解除が繰り返されるものの、湾曲状態とその解除の繰り返し動作のタイミングが、最上のシート状体101Aの両端部の一方(一端部)と他方(他端部)とで互いに異なる。このため、第三実施形態の場合と比較して、最上のシート状体101Aの振動数を増加させることができ、その結果として、最上のシート状体101Aに密着した下側のシート状体101Bをさらに離間させ易くなる。
上記第五実施形態の構成は、前述した第四実施形態にも適用することが可能である。
【0064】
なお、上述した第三〜第五実施形態では、同一の爪部4を構成する複数の突起44が等間隔で配列されているが、例えば不等間隔で配列されてもよい。また、一対の爪部4,4の間で、突起44の数が異なっていてもよい。
【0065】
〔第六実施形態〕
次に、図11,12を参照して本発明の第六実施形態について説明する。
この実施形態に係るシート供給装置は、第一実施形態のシート供給装置と比較して、主に各爪部4の配置について異なっている。なお、図11,12に記載の構成では、第一実施形態において示したシート状体101の貫通孔101d及びガイドピン5が記載されていないが、例えば第一実施形態の構成と同様に有していてもよい。
図11,12に示すように、この実施形態のシート供給装置11を構成する各爪部4は、第一実施形態と同様に、各側壁部22の内側面22aから一体に突出している。また、各爪部4は、第一実施形態の構成と同様に、シート状体101の積層方向及び一対の爪部4,4の配列方向に直交する方向(Y軸方向)に延在している。なお、図示例では、各側壁部22及びこれに形成された爪部4の幅寸法(Y軸方向の寸法)が、シート状体101の長辺長さよりも長く設定されているが、これに限ることは無く、例えばシート状体101の長辺長さと略同等あるいは長辺長さよりも短く設定されていてもよい。
【0066】
そして、本実施形態においては、一方の爪部4(第一爪部4A)が、平面視で一対の爪部4,4の配列方向に直交する方向(第一爪部4Aの延在方向;Y軸方向)の一端から他端に向かうにしたがって最上のシート状体101Aの上面101cに近づくように傾斜している。また、他方の爪部4B(第二爪部4B)は、第二爪部4Bの延在方向の一端から他端に向かうにしたがって、最上のシート状体101Aの上面101cから遠ざかるように傾斜している。すなわち、各爪部4は、収容部2の底壁上面21aや最上のシート状体101Aの上面101cに対して傾斜している。
そして、一対の爪部4,4は、その配列方向(C方向)から見て、その傾斜方向が互いに逆向きとなるように、また、各爪部4の延在方向の中途部分において互いに同一の高さとなるように配されている。すなわち、一対の爪部4,4は、その配列方向から見て互いに交差するように配されている。
【0067】
図11,12に示す構成についてより詳細に説明すれば、各側壁部22の突出方向先端の高さが、側壁部22の幅方向の一端側から他端側に向かうにしたがって、高くあるいは低くなるように傾斜して設定され、各爪部4は傾斜した各側壁部22の先端に形成されている。
また、一対の爪部4,4の間で、これらの傾斜方向下端の高さ位置は互いに等しく、また、傾斜方向上端の高さ位置も互いに等しくなるように設定されている。さらに、一対の爪部4,4の間で、これらの傾斜角度は同一に設定され、また、その延在方向の寸法も同一に設定されている。これにより、一対の爪部4,4は、その延在方向の中間位置において同じ高さ位置となるように交差している。したがって、図11におけるB−B断面は、第一実施形態の図2に示すものと同様になる。
【0068】
本実施形態のシート供給装置11によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、本実施形態のシート供給装置11によれば、吸着搬送手段3によって収容部2内の最上のシート状体101Aが上昇して一対の爪部4,4に当接した後、最上のシート状体101Aをさらに上昇させると、最上のシート状体101Aが第一実施形態と同様に湾曲することに加え、最上のシート状体101Aの両端部が、一対の爪部4,4の傾斜方向に対応するように、互いに逆向きに傾斜することになる。すなわち、最上のシート状体101Aがねじれるように変形する。
したがって、最上のシート状体101Aの下面に別のシート状体101B(下側のシート状体101B)が密着している状態で最上のシート状体101Aが吸着搬送手段3によって上昇しても、前述した最上のシート状体101Aのねじれ変形によって、下側のシート状体101Bをより確実に最上のシート状体から離間させ、下方に落下させることができる。
上記第六実施形態の構成は、前述した第二〜第五実施形態のいずれにも適用することが可能である。
【0069】
なお、第六実施形態においては、一対の爪部4,4が、両方共に最上のシート状体101Aの上面101cに対して傾斜しているが、少なくとも一対の爪部4,4の配列方向から見て互いに交差するように配されていればよい。したがって、例えば一対の爪部4,4の一方のみがシート状体101Aの上面101cに対して傾斜するように配され、他方がシート状体101Aの上面101cに対して平行するように配されてもよい。
【0070】
以上、本発明の第一〜第六実施形態により本発明の詳細ついて説明したが、本発明の技術的範囲はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、一対の爪部4,4は、平面視長方形状とされたシート状体101の上面101cのうち、長辺に対応する二つの周縁領域に対向するように配されているが、例えば図13,14に示すように、短辺に対応する二つの周縁領域に対向するように配されてもよい。なお、図13,14においては、爪部4を形成した一対の側壁部22,22が、積層されたシート状体101の短辺に対向するように配されることで、収容部2内のシート状体101をその長辺方向の両側から支持している。
【0071】
そして、図13,14に示すように、シート状体101に貫通孔101dを形成することができない場合には、上記実施形態のガイドピン5の代わりに、例えば、収容部2内のシート状体101をその短辺方向の両側から支持する一対の側壁部25,25を収容部2の構成として別個に設ければよい。また、別個の側壁部25を設ける場合には、収容部2内におけるシート状体101の残り枚数を容易に把握できるように、別個の側壁部25にその突出方向先端から底壁上面21a側に向けて窪むスリット25aを形成することが好ましい。
【0072】
また、爪部4は、平面視長方形状とされたシート状体101の上面101cのうち辺(長辺・短辺)に対応する周縁領域に対向配置されることに限らず、吸着搬送手段3で最上のシート状体101Aを収容部2から取り出す際に、最上のシート状体101Aの両端部が爪部4によって湾曲するように、少なくとも平面視でシート状体101を挟み込むように、その上面101cの周縁領域に対応する位置に一対配されていればよい。したがって、爪部4は、例えば図15に示すように、平面視した収容部2内のシート状体101の角部に対応する周縁領域に対向配置されてもよい。
なお、図15においては、爪部4が一対二組形成されているが、少なくとも互いに対角に位置するように一対一組だけ形成されていればよい。また、爪部4を形成した各側壁部22は、平面視したシート状体101の長辺のみに対向するように形成されているが、例えば短辺のみに対向するように形成されてもよいし、あるいは、長辺及び短辺の両方に対向するように形成されてもよい。
【0073】
さらに、本発明に係るシート供給装置は、平面視長方形状のシート状体101に限らず、円形状、楕円形状、任意の多角形状等のように任意の平面視形状を有するシート状体に適用可能である。
なお、シート状体の平面視形状が任意の多角形状となっている場合、全ての爪部4が、図2や図13に示したように平面視したシート状体の辺に対応する位置、あるいは、図15に示したようにシート状体101の角部に対応する位置に配されてもよいが、例えば図16に示すように、一方の爪部4がシート状体の辺に対応する位置に配され、他方の爪部4がシート状体102の角部に対応する位置に配されても構わない。図16に示す構成においても、一対の爪部4,4は、上記実施形態と同様に、平面視で最上のシート状体102Aの上面102cのうち吸着部31に吸着される領域(被吸着領域102e)を挟み込む両端部に対向するように配されている。
【0074】
また、例えば図17に示すように、シート状体103が平面視円形状あるいは平面視楕円形状となっている場合、一対の爪部4,4や側壁部22,22の各内側面22aは、平面視したシート状体103の周縁形状に対応するように、シート状体103の周縁の周方向に延びる円弧状に形成されてもよいが、例えば図17に示すように、平面視したシート状体103の周縁の接線方向に延びる直線状に形成されてもよい。図17に示す構成においても、一対の爪部4,4は、上記実施形態と同様に、平面視で最上のシート状体103Aの上面103cのうち吸着部31に吸着される領域(被吸着領域103e)を挟み込む両端部に対向するように配されている。
なお、図17に示す構成では、図13,14に示した構成の場合と同様に、一対の側壁部22,22と共に底壁上面21aに沿う方向へのシート状体103の移動を規制するための別個の側壁部29が一対形成されている。
【0075】
ところで、図16に示す構成では、底壁上面21aに積層されたシート状体102が、平面視で縦方向(Y軸方向)に長く、横方向(X軸方向)に短い形状に形成されている。そして、収容部2を構成する一対の側壁部22,22及び一対の爪部4,4が、平面視したシート状体102の長手方向(Y軸方向)の両端部に配されている。これにより、一対の側壁部22,22は、シート状体102の長手方向への移動を規制している。
さらに、積層されたシート状体102の短手方向(X軸方向)の両端には、底壁上面21aから上方(Z軸正方向)に突出する一対の支持ピン27,27が配されている。各支持ピン27,27は、積層されたシート状体102の長手方向に沿う辺に対向するように配されている。すなわち、一対の支持ピン27,27は、図13,14に示した別個の側壁部25と同様に、収容部2内のシート状体102をその短手方向の両側から支持し、シート状体102の短手方向への移動を規制している。
【0076】
ところで、図16に示した構成では、第一実施形態と同様に、シート状体102に複数の貫通孔102dが形成されると共に、底壁上面に載置されるシート状体102の各貫通孔102dに挿通させる複数のガイドピン5が形成されている。ただし、シート状体102の底壁上面21aに沿う方向への移動は、一対の側壁部22,22及び支持ピン27,27によって規制されているため、ガイドピン5は、例えば一つだけ形成されてもよいし、形成されていなくてもよい。あるいは、複数のガイドピン5を形成しておき、支持ピン27を形成しなくてもよい。
【0077】
また、全ての実施形態では収容部2が導電性を有するとしたが、少なくとも一つの爪部4が導電性を有すると共に接地されていればよい。なお、静電気によるシート状体101〜103の密着状態を考慮する必要が無ければ、爪部4は電気的な絶縁材料によって形成されてもよい。
さらに、各爪部4は、収容部2の側壁部22から一体に突出するように形成されることに限らず、上記実施形態のように、シート状体101〜103の重ね取りを防止できる位置に配されていればよいため、収容部2とは別個に形成されてもよい。より具体的に説明すれば、爪部4は、例えば側壁部22の上端よりも上方に間隔をあけた位置に設けられてもよい。
【0078】
また、少なくとも一つの爪部4のうち最上のシート状体101Aの両端部が当接する部分は、例えばゴム等のように摩擦係数の高い材料によって構成されてもよい。この場合には、爪部4に当接する最上のシート状体101Aの両端部が、爪部4との摩擦力により、爪部4に対して断続的に移動することになる。すなわち、最上のシート状体101Aの両端部が振動することになる。
したがって、最上のシート状体101A及び下側のシート状体101Bが密着した状態で最上のシート状体101Aを吸着搬送手段3によって上昇させると、前述した振動によって下側のシート状体101Bをより確実に最上のシート状体101Aから離間させることが可能となる。なお、この構成を第二実施形態において示した構成に適用した場合には、最上のシート状体101Aの両端部が振動する時間を特に長く設定することができるため、下側のシート状体101Bの離間には特に有効である。
【符号の説明】
【0079】
1,11 シート供給装置
2 収容部
21a 底壁上面(底面)
3 吸着搬送手段
31 吸着部
4,4A,4B 爪部
42 凹凸部
43 段差
44 突起
5 ガイドピン
101,102,103 シート状体
101A,102A,103A 最上のシート状体
101B 別のシート状体(下側のシート状体)
101c,102c,103c 上面
101d,102d 貫通孔
101e,102e,103e 被吸着領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するシート状体を下から順番に複数枚積層した状態で収容可能な収容部と、
当該収容部に収容された最上の前記シート状体の上面に吸着する吸着部を有し、当該吸着部に前記最上のシート状体を吸着させた上で、当該最上のシート状体をその積層方向の上側に移動させる吸着搬送手段と、
前記収容部に収容された前記最上のシート状体よりも上方に間隔をあけた位置に配され、前記吸着搬送手段による前記最上のシート状体の上昇に伴って、当該最上のシート状体の上面のうち前記吸着部に吸着される領域を挟み込む両端部に当接し、前記最上のシート状体の両端部が下方に向くように、前記最上のシート状体を湾曲させる一対の爪部と、を備えることを特徴とするシート供給装置。
【請求項2】
前記一対の爪部が、当該一対の爪部の配列方向から見て互いに交差するように配されていることを特徴とする請求項1に記載のシート供給装置。
【請求項3】
前記一対の爪部の間隔が、前記積層方向の上側に向かうにしたがって狭くなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシート供給装置。
【請求項4】
前記一対の爪部の少なくとも一方が、複数の段差を有して階段状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のシート供給装置。
【請求項5】
前記一対の爪部の少なくとも一方が、前記積層方向の上側に向かうにしたがって平面視したシート状体の内側に延びる傾斜面を有することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のシート供給装置。
【請求項6】
前記傾斜面には、凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のシート供給装置。
【請求項7】
前記一対の爪部の少なくとも一方が、前記積層方向に互いに間隔をあけて配列された複数の突起によって構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシート供給装置。
【請求項8】
前記複数の突起のうち前記積層方向の上側に位置する突起が、前記積層方向の下側に位置する突起よりも、平面視したシート状体の内側に突出していることを特徴とする請求項7に記載のシート供給装置。
【請求項9】
前記一対の爪部が、それぞれ前記複数の突起によって構成され、
前記一対の爪部の間で、前記突起の高さ位置が互いにずれていることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のシート供給装置。
【請求項10】
前記一対の爪部の少なくとも一方が、導電性を有すると共に接地されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のシート供給装置。
【請求項11】
前記シート状体にその厚さ方向に貫通する貫通孔が形成され、
積層状態の前記シート状体を載置する前記シート収容部の底面から前記一対の爪部の上方まで延びて、前記シート状体の貫通孔に挿通されるガイドピンを備えることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のシート供給装置。
【請求項12】
前記シート状体が平面視多角形状に形成され、
前記一対の爪部の少なくとも一方が、それぞれ平面視した前記最上のシート状体の角部の上方に配されていることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のシート供給装置。
【請求項1】
可撓性を有するシート状体を下から順番に複数枚積層した状態で収容可能な収容部と、
当該収容部に収容された最上の前記シート状体の上面に吸着する吸着部を有し、当該吸着部に前記最上のシート状体を吸着させた上で、当該最上のシート状体をその積層方向の上側に移動させる吸着搬送手段と、
前記収容部に収容された前記最上のシート状体よりも上方に間隔をあけた位置に配され、前記吸着搬送手段による前記最上のシート状体の上昇に伴って、当該最上のシート状体の上面のうち前記吸着部に吸着される領域を挟み込む両端部に当接し、前記最上のシート状体の両端部が下方に向くように、前記最上のシート状体を湾曲させる一対の爪部と、を備えることを特徴とするシート供給装置。
【請求項2】
前記一対の爪部が、当該一対の爪部の配列方向から見て互いに交差するように配されていることを特徴とする請求項1に記載のシート供給装置。
【請求項3】
前記一対の爪部の間隔が、前記積層方向の上側に向かうにしたがって狭くなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシート供給装置。
【請求項4】
前記一対の爪部の少なくとも一方が、複数の段差を有して階段状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のシート供給装置。
【請求項5】
前記一対の爪部の少なくとも一方が、前記積層方向の上側に向かうにしたがって平面視したシート状体の内側に延びる傾斜面を有することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のシート供給装置。
【請求項6】
前記傾斜面には、凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のシート供給装置。
【請求項7】
前記一対の爪部の少なくとも一方が、前記積層方向に互いに間隔をあけて配列された複数の突起によって構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシート供給装置。
【請求項8】
前記複数の突起のうち前記積層方向の上側に位置する突起が、前記積層方向の下側に位置する突起よりも、平面視したシート状体の内側に突出していることを特徴とする請求項7に記載のシート供給装置。
【請求項9】
前記一対の爪部が、それぞれ前記複数の突起によって構成され、
前記一対の爪部の間で、前記突起の高さ位置が互いにずれていることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のシート供給装置。
【請求項10】
前記一対の爪部の少なくとも一方が、導電性を有すると共に接地されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のシート供給装置。
【請求項11】
前記シート状体にその厚さ方向に貫通する貫通孔が形成され、
積層状態の前記シート状体を載置する前記シート収容部の底面から前記一対の爪部の上方まで延びて、前記シート状体の貫通孔に挿通されるガイドピンを備えることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のシート供給装置。
【請求項12】
前記シート状体が平面視多角形状に形成され、
前記一対の爪部の少なくとも一方が、それぞれ平面視した前記最上のシート状体の角部の上方に配されていることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のシート供給装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−188181(P2012−188181A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50819(P2011−50819)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【出願人】(392033875)株式会社岡部新電元 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【出願人】(392033875)株式会社岡部新電元 (1)
【Fターム(参考)】
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