説明

シート処理装置及び画像形成装置

【課題】シート材の束に整合処理を行うシート処理装置で、装置を大型化することなくサイドフェイスカールが発生したシート材を含むシート材の束に対して幅方向の整合を適切に行うことができるシート処理装置、及びこのシート処理装置を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】シート材である用紙Sを複数枚重ねて用紙束等として保持するステープルトレイ90と、用紙Sの幅方向の整合を行うジョガーフェンス11と、を有する用紙処理装置において、ステープルトレイ90の上面の水平に対する傾きが30[°]以下であり、用紙Sの下面に当接し、用紙Sを「へ」の字状に曲げるように突出した凸部材である用紙下面押圧部材15を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙やOHPシートなどのシート材を複数枚重ねて整合処理を行うシート処理装置、及び、このシート処理装置を備えるプリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置として、画像形成部で画像が形成されたシート材に対して、整合処理及び綴じ処理の後処理を行うシート処理装置を備えたものが知られている。このシート処理装置では、搬送されてきたシート材をステープルトレイ上で複数枚積載してシート束とし、シート束に対してシート材の搬送方向の整合を行い、さらに、シート材の搬送方向とシート材の積載方向との両方に直行するシート材の幅方向の整合を行う整合処理を行う。整合処理によって整えられたシート束の綴じ位置に綴じ処理手段であるステープラが針を打ち込むことで綴じ処理を行う。
【0003】
特許文献1に記載のシート処理装置は、シート材の搬送方向について下流側よりも上流側が下方となるように平面状の上面が傾斜したステープルトレイと、ステープルトレイの搬送方向上流側端部に配置された後端基準フェンスと、ステープルトレイの上面の上方に配置された一対のジョガーフェンスとを備える。
このシート処理装置が備えるステープルトレイの上面は、水平に対して45[°]以上傾斜しており、ステープルトレイに供給されたシート材は、ステープルトレイの上面の傾斜に沿ってその自重により搬送方向上流側に滑り落ちる。これにより、シート材の搬送方向後端が後端基準フェンスに突き当たり、シート束の搬送方向の整合が行われる。
【0004】
また、一対のジョガーフェンスはステープルトレイの上面の上方で幅方向の両側に互いが対向するように設けられており、シート材の横幅よりも大きな間隔を開けて待機する待機位置からシート材の幅方向に互いが近づくように移動することができる。待機位置から互いが近づくように一対のジョガーフェンスを移動させて、ジョガーフェンスの幅方向内側面をシート材の幅方向両端に当てることで、ステープルトレイ上に積載されたシート束の幅方向の整合が行われる。
【0005】
シート処理装置に供給されるシート材にはカールが発生している場合があり、ステープルトレイの上面が平坦な単なる平面状の構成では、シート材のカール状態によってはジョガーフェンスによる幅方向の整合が十分に行えない場合がある。
シート材の幅方向端部が搬送方向に平行に浮き上がるカール、いわゆるサイドフェイスカールが発生した状態のシート材は、幅方向端部がカールで浮き上がっている分、シート材の幅が実質短くなる。このため、サイドフェイスカールが発生した状態のままでは、ジョガーフェンスはシート材を幅方向内側に向けて寄せきれず、整合できなくなる。また、サイドフェイスカールが発生している状態では、対向するジョガーフェンスの間隔がシート材の幅方向の長さよりも短くなる位置までジョガーフェンスを幅方向内側に寄せても、ジョガーフェンスとシート材の幅方向端部が接触したときにシート材がカールによってしなることがある。シート材がカールによってしなると、ジョガーフェンスの幅方向に寄せる力が吸収されてしまい、シート束の幅方向の整合を十分に行うことが出来ない。
【0006】
サイドフェイスカールが発生したシート材を含むシート束に対して幅方向の整合を適切に行う構成として、特許文献1のシート処理装置は、ステープルトレイ上の搬送方向の一部に設けた凸形状面と、この凸形状面にシート材が沿うように凹形状面によってステープルトレイの上面に直交する方向からシート材を押さえ付ける押さえ付け機構とを有する。このシート処理装置では、後端基準フェンスに突き当たり、搬送方向の整合が行われたステープルトレイ上のシート材に対して凹形状面を押し付ける。これにより、ステープルトレイ上のシート材は、凸形状面と凹形状面に挟まれる個所が上に凸となり、この凸となる個所を挟んで先端側と後端側が下方に下がるような「へ」の字状に曲がってスタックされる。このシート処理装置では、サイドフェイスカールが発生したシート材がステープルトレイ上に供給されても、シート材の搬送方向における一部が凸となるように曲がることで、サイドフェイスカールが矯正される。サイドフェイスカールを矯正することができるので、特許文献1にシート処理装置では、サイドフェイスカールが発生したシート材を含むシート束に対して幅方向の整合を適切に行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のシート処理装置は、凹形状面をステープトレイの上面に直交する方向に移動させてシート材を押さえ付ける押さえ付け機構が必要なため、装置が大型化してしまうという問題が生じる。
上述の説明では、シート処理装置がシート材を束ねて整合処理を行い、その後、綴じ処理を行う構成について説明したが、シート処理装置としては、綴じ処理を行うものに限るものではない。整合処理のみを行うものや、整合処理を行った後に綴じ処理とは異なるシート処理を行うもののように、シート材を束ねて整合処理を行うものであれば同様の課題は生じ得る。
また、上述の説明では、シート処理装置が画像形成装置で表面に画像が形成されたシート材に綴じ処理等の後処理を行う後処理装置である場合について説明した。シート処理装置としては後処理装置に限るものではなく、画像形成装置とは独立したシート処理装置等、シート束に整合処理を行うシート処理装置であれば同様の課題は生じ得る。
【0008】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、シート材の束に整合処理を行うシート処理装置で、装置を大型化することなくサイドフェイスカールが発生したシート材を含むシート材の束に対して幅方向の整合を適切に行うことができるシート処理装置、及びこのシート処理装置を備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、シート材を搬送する搬送手段と、該搬送手段によって搬送された該シート材を積載する積載トレイと、該積載トレイに積載された該シート材の幅方向を整合する幅方向整合手段と、を有するシート処理装置において、上記積載トレイの上面の水平に対する傾きが30[°]以下であり、上記積載トレイに積載された上記シート材の下面に当接する凸部材を備えることを特徴とするものである。
【0010】
本発明においては、積載トレイに積載されたシート材の下面に当接する凸部材によって、シート材の半沿う方向における先端及び後端以外の一部を上方に押し上げ、シート材を「へ」の字状に曲げる。特許文献1に記載のシート処理装置は、積載トレイ(ステープルトレイ)上の搬送方向の一部に凸形状面を備え、積載トレイに積載されたシート材の下面に当接する凸部分という点では、上記凸部材と同様の構成を備える。ここで、シート材の一部を上方に押し上げてシート材を「へ」の字状に曲げるには、シート材が押し上げられたまま上方に反るように作用するシート材の腰に抗して、シート材の先端側と後端側とを下方に下げる力が作用する必要がある。
【0011】
しかし、特許文献1のシート処理装置が備える積載トレイの上面は、水平に対して45[°]以上傾斜しているため、シート材に作用する重力の分力のうち、傾斜に沿って作用する分力が大きくなり、積載トレイに向けて作用する分力が小さくなる。また、凸部形状面ではさらに傾斜が大きくなるため、積載トレイに向けて作用する分力はさらに小さくなる。よって、凸形状面に持ち上げられた個所よりも先端側のシート材の部分には自重によって積載トレイに向かう力が作用し難く、凸形状面を備えた積載トレイにシート材がストックされただけではシート材の腰によって先端側が浮いた状態となり、シート材を「へ」の字状に曲げることは困難である。よって、特許文献1のシート処理装置では、シート材を「へ」の字状に曲げ、サイドフェイスカールの矯正を行うためには、凸形状面に対してシート材を凹形状面によって押さえ付ける押さえ付け機構が必要であった。
【0012】
一方、本発明においては、積載トレイの上面の水平に対する傾きが30[°]以下で水平に近いため、シート材に働く重力の分力のうち下方にある積載トレイに向けて作用する分力が大きくなり、シート材には自重によって積載トレイに向かう力が作用し易い。これにより、積載トレイ上のシート材は、凸部材が接触する個所が上に凸となり、この凸となる個所を挟んで先端側と後端側がシート材の腰に抗して自重によって下がり、シート材は「へ」の字状に曲がってスタックされる。サイドフェイスカールが発生したシート材の搬送方向における一部が凸となるように曲がることで、サイドフェイスカールが矯正される。このように、押さえ付け機構がなくてもシート材の自重によってシート材の一部が凸となるように曲げることができるので、装置を大型化することなく、サイドフェイスカールの矯正を行うことができる。
その後、サイドフェイスカールが矯正された状態で幅方向整合手段によってシート材の幅揃え処理が行われるため、積載トレイに積載されたシート材の束の幅方向の整合を十分に行うことが出来る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シート束に整合処理を行うシート処理装置で、装置を大型化することなくサイドフェイスカールが発生したシート材を含むシート束に対して幅方向の整合を適切に行うことができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】用紙処理装置におけるステープル排紙モードのときの用紙の動きの説明図、(a)は、用紙の後端がシフトローラ対のニップを通過した直後のタイミングの説明図、(b)は、用紙の後端が後端基準フェンスに到達したタイミングの説明図。
【図2】本実施形態の複写機の概略構成図。
【図3】用紙処理装置を装置正面から見た概略構成図。
【図4】用紙処理装置が備えるステープルトレイ近傍の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を画像形成装置としての複写機(以下、複写機100という)に適用した実施形態について説明する。図2は、複写機100の概略構成図である。
図2に示す複写機100の中央部には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンダ(M)、ブラック(Bk)の各色のトナー像を形成するための画像ステーション65(Y,C,M,Bk)を備えている。以下、各符号の添字Y,C,M,Bkは、それぞれイエロー、シアン、マゼンダ、ブラック用の部材であることを示す。
【0016】
複写機100は、各画像ステーション65(Y,C,M,Bk)の下方に、ドラム状の感光体20(Y,C,M,Bk)にレーザ光を照射可能な潜像形成手段としての露光装置8を備えている。四つの画像ステーション65の上方には、中間転写ベルト61や、中間転写ベルト61を介して各色の感光体20(Y,C,M,Bk)と対向する四つの一次転写ローラ62(Y,C,M,Bk)を備えた転写手段たる中間転写ユニット60を備えている。また、複写機100は、中間転写ベルト61に転写されたトナー像を用紙Sに定着する定着手段たる定着ユニット76を備えている。また、中間転写ユニット60の上方には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の四色のトナーをそれぞれ収容する四つのトナーボトル9(Y,C,M,Bk)が装填されている。さらに、複写機100の上部には原稿の画像データを読み取るスキャナ300が設けられている。そのスキャナ300の下方には、画像形成がなされた用紙Sを入口ローラ対2により受け入れ、用紙Sに対して所望の後処理を行うシート処理装置たる用紙処理装置200が設けられている。
【0017】
四つの画像ステーション65(Y,C,M,Bk)は、互いに異なる色(Y,C,M,Bk)のトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっている。このため、以下、添字Y,C,M,Bkを省略し、画像ステーション65として説明する。
画像ステーション65は、潜像担持体たる感光体20、感光体20を所定の電位に帯電させる帯電手段たる帯電装置30、感光体20に形成された潜像を現像する現像手段たる現像装置50、感光体20上の残留トナーをクリーニングするクリーニング装置40を備えている。現像装置50は、開口部を有する現像剤収容部としての現像ケース内に、感光体20表面に近接対向するように配置された現像ローラ51を備える。クリーニング装置40には、感光体20と当接するクリーニングブラシを備えている。また、画像ステーション65は、必要に応じて、クリーニング装置40を通過した感光体20の表面を除電する除電手段を設けてもよい。また、クリーニング装置40で感光体20の表面上から除去したトナーを現像装置50へ戻すリサイクル手段を設けてもよい。
【0018】
画像ステーション65は、感光体20、帯電装置30、現像装置50、クリーニング装置40を一体に支持し、複写機100本体に着脱可能なプロセスカートリッジとして構成されている。これによって、ユーザーはカートリッジ形態で感光体20、現像装置50、帯電装置30、クリーニング装置40を一括して交換することができる。
【0019】
中間転写ユニット60は、図2に示すように、複数のローラに張架される中間転写ベルト61と、感光体20(Y,C,M,Bk)に形成されたトナー像を中間転写ベルト61上に転写する四つの一次転写ローラ62(Y,C,M,Bk)とを備えている。また、中間転写ユニット60は、中間転写ベルト61上に転写されたトナー像を被転写体たる用紙Sに転写する二次転写ローラ66と、用紙S上に転写されなかった中間転写ベルト61上の転写残トナーをクリーニングするベルトクリーニング装置63とを備えている。
【0020】
給紙カセット81内の用紙Sは、給紙カセット81の近傍に配設された給紙ローラ83によって、中間転写ベルト61と二次転写ローラ66との間の二次転写部へ搬送される。給紙ローラ83と二次転写ローラ66の間の転写紙搬送経路には、給紙された用紙Sの二次転写部への送り出しタイミングを図るレジストローラ対67が配置されている。
【0021】
定着ユニット76は、用紙S上に転写されたトナー像に熱と圧力とを加えることで、トナー像の用紙Sに対する定着を行う。定着ユニット76における加熱は、通常、80[℃]〜200[℃]が好ましい。そして、複写機100では、定着を終えた用紙Sを上方に搬送し、入口ローラ対2により用紙処理装置200内に搬送する。定着ユニット76は、加圧ローラ76aと内部に発熱源を備えた定着ローラ76bとを備え、加圧ローラ76aが定着ローラ76bに当接して、定着ニップを形成している。
【0022】
次に、複写機100において、カラー画像を得る画像形成工程(画像形成方法)について説明する。画像形成工程は、四つの感光体20(Y,C,M,Bk)表面を所定電位に帯電する帯電工程、帯電した各感光体20(Y,C,M,Bk)表面に画像データに基づいて露光し、各感光体20(Y,C,M,Bk)表面に潜像を形成する潜像形成工程を有している。また、各現像装置50(Y,C,M,Bk)の現像ローラ51(Y,C,M,Bk)から、各感光体20(Y,C,M,Bk)上の潜像にトナーを供給して可視像化する現像工程を有している。そして、各感光体20(Y,C,M,Bk)表面の可視像を用紙Sに転写する転写工程、転写された可視像を用紙S上に定着させる定着工程とを有している。以下、具体的に説明する。
【0023】
まず、スキャナ300で読み取られた原稿、ファクシミリなどの受信データ、またはコンピュータから送信されるカラー画像情報は、各色に色分解され、各色の版のデータが形成され、露光装置8に送られる。また、各画像ステーション65(Y,C,M,Bk)では、感光体20(Y,C,M,Bk)が帯電装置30(Y,C,M,Bk)によって一様に帯電される。その後、露光装置8により、各色の画像情報に基づきレーザ光が走査露光されて各感光体20(Y,C,M,Bk)表面に潜像が形成される。感光体20(Y,C,M,Bk)上の潜像は、現像装置50(Y,C,M,Bk)の現像ローラ51(Y,C,M,Bk)に担持された各色のトナーによって現像されてトナー像として可視像化される。
【0024】
各感光体20(Y,C,M,Bk)上の各色のトナー像は、各一次転写ローラ62(Y,C,M,Bk)の作用によって反時計回り方向に回転駆動される中間転写ベルト61上に順次重ねて転写される。このときの各色の作像動作は、そのトナー像が中間転写ベルト61上の同じ位置に重ねて転写されるように、中間転写ベルト61の移動方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして実行される。一次転写終了後の感光体20(Y,C,M,Bk)は、クリーニング装置40(Y,C,M,Bk)によってその表面がクリーニングされ、次の画像形成に備えられる。
【0025】
一方、給紙カセット81内の用紙Sは、給紙カセット81の近傍に配設された給紙ローラ83によって搬送され、レジストローラ対67によって所定のタイミングで二次転写ローラ66と中間転写ベルト61とが対向する二次転写部に搬送される。そして、二次転写部において、中間転写ベルト61上に形成されたトナー像が用紙Sに転写される。トナー像が転写された用紙Sは、定着ユニット76を通過することで画像定着が行われ、入口ローラ対2によって用紙処理装置200に受け渡される。用紙処理装置200に受け渡された用紙Sは、ユーザーに選択された排紙モードにしたがい所望の後処理を行うなどした後に排紙トレイ6へ排出される。
【0026】
感光体20(Y,C,M,Bk)と同様に、二次転写部を通過した中間転写ベルト61上に残った転写残トナーは、中間転写ベルト61に接触するベルトクリーニング装置63によってクリーニングされる。また、トナーボトル9(Y,C,M,Bk)に充填されているトナーは、必要性に応じて、不図示のトナー補給装置によって各現像装置50(Y,C,M,Bk)に所定量補給される。
【0027】
次に、用紙処理装置200について説明する。図3は用紙処理装置200を装置正面から見た概略構成図であり、図4は、用紙処理装置200が備えるステープルトレイ90近傍の上面図である。
用紙処理装置200は、定着ユニット76を通過した用紙Sを用紙処理装置200内部に向けて搬送する入口ローラ対2と、内部の用紙搬送路L中の用紙に対して搬送力を付与する中継ローラ対3とを備える。また、用紙搬送路Lの下流側端部にはシフトローラ対4、その下方には綴じ処理を行う用紙束を保持するステープルトレイ90が配置されており、ステープルトレイ90の図3中の右側には、ステープルトレイ90上の用紙束に対して閉じ処理を行うステープルユニット14が配置されている。
【0028】
ステープルトレイ90の上方には、シフトローラ対4を通過してステープルトレイ90に落下した用紙Sに対して、それまでの搬送方向(図中矢印B方向)とは逆方向(図中矢印C方向)の搬送力を付与する叩きコロ10が配置されている。叩きコロ10は、支持部材揺動軸70a(図2参照)を中心に揺動可能な叩きコロ支持部材10aに回転可能に支持されている。また、ステープルトレイ90の搬送方向上流側端部には用紙Sの搬送方向後端が突き当たり、用紙Sの搬送方向についての用紙束の整合を行う後端基準フェンス13が配置されている。ステープルトレイ90の上方の後端基準フェンス13の近傍には、ステープルトレイ90上の用紙Sの後端部に対して叩きコロ10と用紙Sの搬送方向(図中矢印B方向)とは逆方向(図中矢印C方向)の搬送力を付与する後端戻しコロ12が配置されている。後端戻しコロ12は、後端戻しコロ支持部材揺動軸12b(図2参照)を中心に揺動可能な後端戻しコロ支持部材12aに回転可能に支持されている。
【0029】
用紙搬送路Lを搬送されてきた用紙Sがステープルトレイ90に落下した後、支持部材揺動軸70aを中心に叩きコロ支持部材10aが図中反時計回り方向に回転することでステープルトレイ90上の用紙Sの上面に叩きコロ10が接触する。同様のタイミングで後端戻しコロ支持部材揺動軸12bを中心に後端戻しコロ支持部材12aが図中反時計回り方向に回転することでステープルトレイ90上の用紙Sの後端部の上面に後端戻しコロ12が接触する。そして、叩きコロ10と後端戻しコロ12とを図中反時計回り方向に回転させて用紙Sを後端基準フェンス13側に送り込み、用紙Sの後端を後端基準フェンス13に突き当てることによって用紙Sの搬送方向についての用紙束の整合である縦揃え処理を行う。
【0030】
ステープルトレイ90の上面で用紙幅方向(用紙Sの搬送方向に直交する方向で、図2及び図3の紙面手前奥方向)の両側には一対のジョガーフェンス11が幅方向で用紙束を挟んで互いに対向するように設けられている。ステープルトレイ90上に用紙束が積載された状態で、用紙Sの横幅よりも大きな間隔を開けて待機する待機位置から用紙幅方向で互いが近づくようにジョガーフェンス11が移動し、用紙束の幅方向両端にジョガーフェンス11の内側面が当ることにより、積載トレイ上に積載された用紙束の幅方向の整合である幅揃え処理を行う。なお、幅方向規制フェンスであるジョガーフェンス11としては、互いが近づくように移動する構成に限らず、少なくとも一方をシート幅方向に移動させることよってシート束のシート幅方向の整合を行うものであればよい。
【0031】
ステープルトレイ90の下流側端部には、シフトローラ対4を通過した用紙S、または、シフトローラ対4を通過した複数枚の用紙Sに綴じ処理が行われた用紙束を排紙トレイ6に排紙する排紙ローラ対5が配置されている。
【0032】
用紙処理装置200内には各種センサが配置されている。用紙搬送路L中の入口ローラ対2と中継ローラ対3との間に配置された入口センサS1、及び、中継ローラ対3とシフトローラ対4との間に配置された中継センサS2は、検知位置における用紙Sの有無状態を検知する光学式のセンサである。また、積載量センサS3は光学式のセンサであり、紙押さえ部材18と一体的に揺動する被検知部が積載量センサS3の検知領域から外れたことを検知することにより、紙押さえ部材18が接触する用紙Sの上面の高さが所定量以上となったことを検出することができる。
満杯センサS4は可動排紙トレイ6aが満杯となったことを検知するセンサであり、トレイ先端側センサS5及びトレイ後端側センサS6は、ステープルトレイ90上の所定の位置における用紙Sの有無状態を検知する光学式のセンサである。
【0033】
用紙処理装置200は、複写機100の定着ユニット76を通過した用紙Sを矢印A方向から受け入れる。本実施形態の用紙処理装置200は、ストレート排紙モード、シフト排紙モード及びステープル排紙モードの動作モードを選択することができる。以下、各動作モードについて説明する。
【0034】
<ストレート排紙モード>
ストレート排紙モードは、定着ユニット76を通過した用紙Sに対して、後処理を行わず、そのまま排紙トレイ6に排出する動作モードである。
用紙処理装置200は受け渡された用紙Sを、入口上ローラ2aと入口下ローラ2bとからなる入口ローラ対2により、用紙搬送路Lに導入する。その後、中継上ローラ3aと中継下ローラ3bとからなる中継ローラ対3のニップを経由して、シフト上ローラ4aとシフト下ローラ4bとからなるシフトローラ対4のニップに導入される。続けて、用紙Sは排紙上ローラ5aと排紙下ローラ5bとからなる排紙ローラ対5に搬送されてくる。
【0035】
排紙ローラ対5の排紙上ローラ5aは、図2に示すように、支持部材揺動軸70aを中心に揺動可能な排紙開閉ガイド板70に支持されており、排紙開閉ガイド板70の揺動によって上下に移動する構成となっている。図2及び図3に示す状態では、排紙上ローラ5aは上方に位置しており、この状態では排紙ローラ対5のニップが開放された状態である。ストレート排紙モードの場合は、図2に示す状態から排紙開閉ガイド板70を反時計回り方向に回転させて排紙上ローラ5aを排紙下ローラ5bに当接させてニップを形成する。ニップが形成された状態の排紙ローラ対5にシフトローラ対4を通過した用紙Sが搬送されてくることで、排紙ローラ対5により用紙Sを図3中の矢印B方向に搬送し排紙トレイ6に排紙する。
【0036】
排紙トレイ6は、可動排紙トレイ6aと固定排紙トレイ6bとを備える。可動排紙トレイ6aは用紙Sの搬送方向下流側端部を中心に搬送方向上流側が上下方向に揺動可能となっており、排紙動作開始時には、図3中の破線で示すように可動排紙トレイ6aの上面が水平に近い位置となっている。排紙トレイ6上に排出された用紙Sは、可動排紙トレイ6a上を滑り、エンドフェンス7にその後端が突き当たった状態で積載されていく。
【0037】
可動排紙トレイ6aに用紙Sが積載されると、紙押さえ部材18と光学式の積載量センサS3とによって、可動排紙トレイ6a上の紙面高さを検知し、不図示の制御手段は、用紙Sの積載量に応じて可動排紙トレイ6aの上流側を徐々に下降していく。可動排紙トレイ6aの上流側が徐々に下降し、可動排紙トレイ6aが図3中の実線で示す位置に到達すると、光学式の満杯センサS4の光路を、可動排紙トレイ6aのフィラー6sが遮断して満杯センサS4の検出結果がONとなる。これにより、不図示の制御部が可動排紙トレイ6aが満杯となったことを検知し、可動排紙トレイ6aの下降を停止する。
【0038】
<シフト排紙モード>
シフト排紙モードは、定着ユニット76を通過した用紙Sに対して、予め入力された設定に従い、用紙Sによって排紙トレイ6における排出位置を用紙幅方向で変化させて排出する後処理を行う動作モードである。複数部の用紙束として画像形成する場合等に用いることが出来る動作モードであり、一部の用紙束を排出する度に排出位置の幅方向の位置を変化させ、互い違いに重ねることで、用紙束同士の間で用紙Sが混ざることを抑制できる動作モードである。
【0039】
用紙処理装置200は受け渡された用紙Sを、入口ローラ対2により用紙搬送路Lに導入した後、中継ローラ対3のニップを経由して、シフトローラ対4のニップに導入される。続けて、用紙Sは排紙ローラ対5に搬送されてくるが、シフト排紙モードでは、上下可動の排紙上ローラ5aが上方に位置し、排紙ローラ対5のニップを開放した状態で用紙Sを受け入れる。シフトローラ対4を構成するシフト上ローラ4a及びシフト下ローラ4bは、用紙処理装置200本体に対して用紙幅方向に移動可能となっているが、中継ローラ対3を構成する中継上ローラ3aと中継下ローラ3bとは用紙幅方向に移動できない。このため、用紙Sの排出位置を用紙幅方向に移動させる(シフトさせる)ときには、シフトローラ対4のみで用紙Sを挟んでいる状態で、シフト上ローラ4a及びシフト下ローラ4bをシフトさせる。
【0040】
光学式の入口センサS1は検知位置における用紙Sの有無状態を検知しており、用紙Sが検知位置にあると入口センサS1がONとなる。このため、入口センサS1がONとなった後にOFFとなったタイミングが用紙Sの後端が入口センサS1の検知位置を通過したタイミングとなる。よって、入口センサS1がONとなった後にOFFとなったタイミングをトリガーにとって、用紙Sの搬送速度で入口センサS1の検知位置から中継ローラ対3のニップまで到達するために要する一定時間経過後の用紙Sの後端が中継ローラ対3を通過するタイミングを検出することができる。
このため、シフト排紙モードでは、用紙Sの後端が中継ローラ対3のニップを通過した後、且つ、用紙Sの後端がシフトローラ対4のニップを通過する前のタイミングで、シフト上ローラ4a及びシフト下ローラ4bを用紙幅方向(図3中の手前側または奥側)にシフトさせる。これにより、シフトローラ対4のニップで挟んでいる用紙Sの用紙幅方向の位置をシフトさせる。
【0041】
シフトローラ対4による用紙Sのシフト処理が完了すると、排紙開閉ガイド板70を反時計回り方向に回転させて排紙上ローラ5aを排紙下ローラ5bに用紙Sを介して当接させてニップを形成し、用紙Sをニップに挟み込む。そして、ニップを形成する排紙上ローラ5aを排紙下ローラ5bが回転することで用紙Sを排紙トレイ6に用紙Sを図3中の矢印B方向に搬送し排紙する。
【0042】
シフト排紙モードでもストレート排紙モードと同様に、排紙動作開始時には、図3中の破線で示すように可動排紙トレイ6aの上面が水平に近い位置となっている。排紙トレイ6上に排出された用紙Sは、可動排紙トレイ6a上を滑り、エンドフェンス7にその後端が突き当たった状態で積載されていく。
可動排紙トレイ6aに用紙Sが積載されると、紙押さえ部材18と光学式の積載量センサS3とによって、可動排紙トレイ6a上の紙面高さを検知し、不図示の制御手段は、用紙Sの積載量に応じて可動排紙トレイ6aの上流側を徐々に下降していく。可動排紙トレイ6aの上流側が徐々に下降し、可動排紙トレイ6aが図3中の実線で示す位置に到達すると、光学式の満杯センサS4の光路を、可動排紙トレイ6aのフィラー6sが遮断して満杯センサS4の検出結果がONとなる。これにより、不図示の制御部が可動排紙トレイ6aが満杯となったことを検知し、可動排紙トレイ6aの下降を停止する。
【0043】
<ステープル排紙モード>
ステープル排紙モードは、定着ユニット76を通過した用紙Sを複数枚重ねて用紙束として、ステープラーで綴じる後処理を行う動作モードである。
図1は、ステープル排紙モードのときの用紙Sの動きの説明図である。図1(a)は、用紙Sの後端がシフトローラ対4のニップを通過した直後のタイミングの説明図であり、図1(b)は、用紙Sの後端が後端基準フェンス13に到達したタイミングの説明図である。
【0044】
用紙処理装置200は受け渡された用紙Sを、入口ローラ対2により用紙搬送路Lに導入した後、中継ローラ対3のニップを経由して、シフトローラ対4のニップに導入される。続けて、用紙Sは排紙ローラ対5に搬送されてくるが、ステープル排紙モードではシフト排紙モードと同様に、上下可動の排紙上ローラ5aが上方に位置し、排紙ローラ対5のニップを開放した状態で用紙Sを受け入れる。そして、ステープル排紙モードでは、用紙Sの後端が中継ローラ対3を通過するタイミング以降も排紙ローラ対5のニップを開放した状態とし、用紙Sの後端がシフトローラ対4のニップを通過すると用紙Sの後端側はステープルトレイ90上に排出される。
【0045】
ステープル排紙モードでは、用紙Sがステープルトレイ90に排出した後、支持部材揺動軸70aを中心に叩きコロ支持部材10aが図2中の反時計回り方向に回転してステープルトレイ90上の用紙Sの上面に叩きコロ10を図1(b)中の破線で示すように接触させる。そして、叩きコロ10と後端戻しコロ12とを図1中反時計回り方向に回転させて用紙Sを図1(b)中の矢印C方向に押し戻す。これにより、用紙Sを後端基準フェンス13側に送り込み、用紙Sの後端を後端基準フェンス13に突き当てることによって用紙Sの用紙束の縦揃え処理を行う。さらに、ジョガーフェンス11を移動させて、ステープルトレイ90上にスタックされた用紙Sの用紙束の幅揃え処理を行うことで用紙束を揃える。
【0046】
複写機100の制御部より予め指示された枚数の用紙Sがステープルトレイ90上に積載されると、ステープルユニット14により用紙束に綴じ処理を施す。綴じ処理が完了すると、排紙上ローラ5aが下降し、排紙ローラ対5のニップが用紙束を挟み込み、排紙トレイ6上に用紙束を排出する。
ここで、トレイ先端側センサS5は光学式のセンサで、ステープルトレイ90上の用紙S有無を検知するセンサである。また、トレイ後端側センサS6は用紙Sの後端を検知するセンサであり、トレイ後端側センサS6がONのときに綴じ処理を可能とする信号を発し、OFFの場合は綴じ処理を禁止する信号を発することで、ステープルユニット14の針詰まりを防止する。
【0047】
なお、排紙ローラ対5のニップを開放された状態であっても、用紙Sが排紙下ローラ5bと接触していると、用紙Sを図1(b)中の矢印C方向に押し戻すときの抵抗となる。このため、ステープルトレイ90の下流側端部近傍には、排紙ローラ対5のニップを開放した状態のときに用紙Sが排紙下ローラ5bに接触することを防止する不図示の突起部が形成されている。この突起部によってある程度の方向付けステープルトレイ90上の用紙Sに対してある程度の方向付けがなされ、この方向付けと用紙Sの腰の強さとによって用紙Sが排紙下ローラ5bに接触することを避けることができる。このように用紙Sが排紙下ローラ5bとの接触は避けた状態で、排紙上ローラ5aを下降させて排紙ローラ対5のニップを形成すると、用紙Sの腰よりも排紙上ローラ5aによる押圧力の法が強いため、ステープルトレイ90上の用紙Sのうち一番下の用紙Sが排紙下ローラ5bに接触し、排紙ローラ対5によって用紙Sに搬送力を付与することが出来るようになる。
【0048】
次に、本実施形態の用紙処理装置200の特徴部について説明する。
ステープルトレイ90の上面の傾斜は水平に近い傾きであり、ステープルトレイ90の下流側端部には、ステープルトレイ90の平面状の上面に対して突出した弾性部材からなる用紙下面押圧部材15を備える。用紙下面押圧部材15は、その上流側の半分がステープルトレイ90の上面に沿う形状でステープルトレイ90に対して固定されており、その下流側の半分が下流側ほど上方となるように傾斜し、ステープルトレイ90の上面に対して突出している。
【0049】
用紙Sの幅方向端部が搬送方向に平行に浮き上がるカール、いわゆるサイドフェイスカールが発生した状態の用紙Sは、幅方向端部がカールで浮き上がっている分、用紙Sの幅が実質短くなる。このため、サイドフェイスカールが発生した状態のままでは、ジョガーフェンス11は用紙Sを幅方向内側に向けて寄せきれず、整合できなくなる。また、サイドフェイスカールが発生している状態では、対向するジョガーフェンス11の間隔が用紙Sの幅方向の長さよりも短くなる位置までジョガーフェンス11を内側に寄せても、ジョガーフェンス11と用紙Sの幅方向端部が接触したときに用紙Sがカールによって撓ることがある。用紙Sがカールによって撓ると、ジョガーフェンス11の幅方向に寄せる力が吸収されてしまい、用紙束の幅方向の整合を十分に行うことが出来ない。
【0050】
本実施形態の用紙処理装置200では、ステープル排紙モードで用紙Sが搬送されるときに、搬送されてきた用紙Sは、ステープルトレイ90に排出され、叩きコロ10により図1(b)中の矢印C方向へ押し戻される。その際、ステープルトレイ90に設けられた用紙下面押圧部材15によって用紙Sの一部が浮きあがる。ステープルトレイ90が水平に近いため用紙Sの重量が下方にあるステープルトレイ90に向けて作用し易い。これにより、ステープルトレイ90上の用紙Sは、用紙下面押圧部材15が接触する個所が上に凸となり、この凸となる個所を挟んで先端側と後端側が下方に下がるような「へ」の字状に曲がってスタックされる(図1(b)参照)。サイドフェイスカールが発生した用紙Sの搬送方向における一部が凸となるように曲がることで、サイドフェイスカールが矯正される。
【0051】
特許文献1のような押さえ付け機構がなくても用紙Sの自重によって用紙Sの搬送方向の一部が凸となるように曲げることができるので、装置を大型化することなく、サイドフェイスカールの矯正を行うことができる。また、用紙下面押圧部材15をステープルトレイ90の上面における幅方向の二箇所に配置することで、用紙Sを幅方向の全域に渡って凸となるように曲げることができ、より確実にサイドフェイスカールが矯正される。
その後、サイドフェイスカールが矯正された状態でジョガーフェンス11によって用紙束の幅揃え処理が行われるため、用紙束の幅方向の整合を十分に行うことが出来る。
【0052】
本実施形態の用紙処理装置200では、使用する用紙サイズのうち最小サイズとなる用紙Sの搬送方向の長さよりもステープルトレイ90の搬送方向の長さの方が短くなっている。このため、ステープルトレイ90に用紙Sがスタックされた状態では、図1(b)に示すように、用紙Sの搬送方向上流側は、排紙トレイ6の可動排紙トレイ6aに保持された状態となる。このとき、可動排紙トレイ6aはステープルトレイ90とともにシート材保持トレイを構成する。
本実施形態の用紙処理装置200で後処理を行う用紙Sの最小サイズはB5縦であり、縦方向で排出されたA5用紙が後端基準フェンス13に接触している状態で、用紙の先端から14[cm]の位置に用紙下面押圧部材15が接触する構成となっている。また、ステープルトレイ90の上面の水平に対する傾きは10[°]であり、ステープルトレイ90の上面から用紙下面押圧部材15の上端までの高さは4.5[mm]であった。このような構成で、B5の普通紙(NBSリコー 複写印刷用紙<90> B5 Y目)をステープルトレイ90に排出したところ、用紙下面押圧部材15が接触する位置よりも先端側が下方に曲がり、用紙Sを「へ」の字状とすることが出来た。
【0053】
なお、ステープルトレイ90を使用する最大サイズの用紙Sよりも長くして、ステープルトレイ90が単体でシート材保持トレイ(積載トレイ)として機能する構成としてもよい。ステープルトレイ90の搬送方向の長さを使用する最小サイズの用紙Sの長さよりも長くする場合は、用紙下面押圧部材15はステープルトレイ90の下流側端部に配置せず、最小サイズの用紙Sが用紙下面押圧部材15の接触する位置よりも先端側および後端側が自重によって下方に曲がり、用紙Sを「へ」の字状とすることが出来る位置に用紙下面押圧部材15を配置する必要がある。
また、本実施形態の用紙処理装置200のように、ステープルトレイ90の搬送方向の長さを使用する用紙Sの長さよりも短くし、可動排紙トレイ6aがステープルトレイ90とともにシート材保持トレイ(積載トレイ)としての役割を有する構成とすることで、ステープルトレイ90を水平に近い配置とすることによる用紙処理装置200の水平方向の大型化を防止することができる。
【0054】
二枚目以降の用紙Sは一枚目の形状にならい、「へ」の字形状にスタックされるため、二枚目以降の用紙Sに関しても同様に、サイドフェイスカールが矯正される搬送方向に平行な端分の曲がりは矯正される。また、用紙下面押圧部材15の下流側半分は、下流側ほど上方となるように傾斜しているため、綴じ処理を行った用紙束を排紙する際、弾性体からなる用紙下面押圧部材15が弾性変形するため、ステープルトレイ90の上面に対して突出した用紙下面押圧部材15が排紙抵抗になることを抑制できる。
【0055】
ステープルトレイ90に用紙Sがスタックされる際に搬送方向に平行な端縁の曲がり(サイドフェイスカール)を矯正し、用紙束の幅方向の揃えを良くするためには、ジョガーフェンス11の付近での曲がりを矯正したい。そのため、用紙下面押圧部材15はジョガーフェンス11の近くに設置するのが好ましい。しかし、幅揃え処理を行うときのジョガーフェンス11の動きを妨げてはならないため、ジョガーフェンス11の摺動範囲に設置するのは避ける必要がある。また、用紙下面押圧部材15の設置位置は各用紙サイズに対応できるように、綴じ処理を行う最小サイズの用紙の幅よりも狭い位置に配置しておく。また、排紙ローラ対5のニップを開放した状態で、排紙下ローラ5bに用紙Sが接触しないようにステープルトレイ90上に設けられている上述した不図示の突起部よりも用紙下面押圧部材15は高くなるように配置されている。さらに、トレイ先端側センサS5の誤検知を避けるために、用紙下面押圧部材15によって持ち上げられた用紙Sの下面がトレイ先端側センサS5の検知範囲より低くなるように用紙下面押圧部材15には角度を設けている。
【0056】
また、用紙下面押圧部材15としては、ステープルトレイ90の上面に対して突出していれば良く、弾性部材である必要はない。しかし、変形しない形状固定固定型の凸形状の用紙下面押圧部材15であってもサイドフェイスカールを解消することはできるが、スタックした用紙束を排紙するときに搬送抵抗となる。排紙するときの搬送抵抗が大きいと紙詰まりが発生しやすくなるが、本実施形態では、用紙下面押圧部材15として弾性部材を用い、排紙時には弾性変形させることで、排紙時の搬送抵抗を抑制し、紙詰まりの発生を抑制している。
本実施形態の用紙処理装置200では、用紙下面押圧部材15を形成する弾性体としてポリエステルフィルム(東レ製 ルミラー S10(厚さ:0.125[mm]))を用いているがこれに限るものではない。
【0057】
本実施形態のステープルトレイ90は、上面の水平に対する傾きが30[°]以下の水平に近い構成となっている。このため、ステープルトレイの傾きが大きな従来の用紙処理装置(特許文献1に記載のものなど)と比較して上下方向の大きさを小さくすることができる。
本実施形態の複写機100では、画像形成が成された用紙Sは、トナーボトル9の上方で、且つ、スキャナ300の下方となる上下方向の大きさが限られた空間に排出される。このような構成の複写機100に、装置の水平方向を大きくすること無く、用紙処理装置を配置するには用紙Sが排出される上下方向の大きさが限られた空間に配置することができる用紙処理装置が求められる。
本実施形態の用紙処理装置200は、上述したように上下方向の大きさを小さくすることが出来るため、図2に示すように、複写機100に対して、装置の水平方向を大きくすること無く、用紙処理装置を配置することができる。
【0058】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
〔態様A〕
用紙S等のシート材を搬送する中継ローラ対3及びシフトローラ対4等の搬送手段と、搬送手段によって搬送されたシート材を積載するステープルトレイ90等の積載トレイと、積載トレイに積載されたシート材の幅方向を整合する、一対のジョガーフェンス11等の幅方向整合手段と、を有する用紙処理装置200等のシート処理装置において、積載トレイの上面の水平に対する傾きが30[°]以下であり、積載トレイに積載されたシート材の下面に当接する用紙下面押圧部材15等の凸部材を備える。これによれば、上記実施形態について説明したように、ステープルトレイ90等の積載トレイの上面が水平に近いため、用紙S等のシート材の重量が下方にある積載トレイに向けて作用し易い。これにより、シ積載トレイ上のシート材は、用紙下面押圧部材15等の凸部材が接触する個所が上に凸となり、この凸となる個所を挟んで先端側と後端側がシート材の自重によって下がり、シート材は「へ」の字状に曲がってスタックされる。サイドフェイスカールが発生したシート材の搬送方向における一部が凸となるように曲がることで、サイドフェイスカールが矯正される。このように、押さえ付け機構がなくてもシート材の自重によってシート材の一部が凸となるように曲げることができるので、装置を大型化することなく、サイドフェイスカールの矯正を行うことができる。その後、サイドフェイスカールが矯正された状態で幅方向整合手段によってシート束の幅揃え処理が行われるため、シート束の幅方向の整合を十分に行うことが出来る。このように、装置を大型化することなくサイドフェイスカールが発生したシート材を含むシート束に対して幅方向の整合を適切に行うことができる。
〔態様B〕
〔態様A〕において、ステープルトレイ90等の積載トレイに積載された用紙S等のシート材の搬送方向を整合する搬送方向整合手段を備える。これによれば、上記実施形態について説明したように、本発明においては、積載トレイの上面の水平に対する傾きが30[°]以下で水平に近いため、積載トレイに供給されたシート材が自重でトレイ上を滑ることで後端基準フェンスに突き当たって、シート束の搬送方向の整合が行われる作用が生じ難いが、搬送方向整合手段を備えることで搬送方向の整合を行う。
〔態様C〕
〔態様B〕において、搬送方向整合手段は、ステープルトレイ90等の積載トレイ上の用紙S等のシート材の搬送方向後端が突き当たることで、シート材の搬送方向の整合を行う後端基準フェンス13等の後端整合フェンスと、積載トレイ上のシート材に対して搬送方向とは逆方向の搬送力を付与し、シート材の後端を後端整合フェンスに突き当てる叩きコロ10及び後端戻しコロ12等のシート材逆搬送手段と、を備える。これによれば、上記実施形態について説明したように、叩きコロ10及び後端戻しコロ12等のシート材逆搬送手段によって用紙S等のシート材の後端を後端基準フェンス13等の後端整合フェンスに突き当てることで、ステープルトレイ90等の積載トレイの上面が水平に近い構成であってもシート束の搬送方向の整合を行うことができる。
〔態様D〕
〔態様A〕乃至〔態様C〕の何れか一つの態様において、用紙下面押圧部材15等の凸部材は、接触する用紙S等のシート材が搬送方向に移動することによって、搬送方向下流側に倒れ込むように弾性変形する弾性部材である。これによれば、上記実施形態について説明したように、排紙時には凸部材を弾性変形させることで、排紙時の搬送抵抗を抑制し、紙詰まりの発生を抑制している。
〔態様E〕
〔態様A〕乃至〔態様D〕の何れか一つの態様において、ステープルトレイ90等の積載トレイに保持された用紙S等のシート材の束に対して綴じ処理を行うステープルユニット14等の綴じ手段を備える。これによれば、上記実施形態について説明したように、幅方向の整合が適切に行われた用紙束等のシート束に対して綴じ処理を行うため、良好な綴じ処理を行うことが出来る。
〔態様F〕
〔態様A〕乃至〔態様E〕の何れか一つの態様において、用紙下面押圧部材15等の凸部材は、ステープルトレイ90等の積載トレイの上面における幅方向の二箇所等の複数箇所に配置されている。これによれば、上記実施形態について説明したように、シート材を幅方向の全域に渡って凸となるように曲げることができ、より確実にサイドフェイスカールが矯正される。
〔態様G〕
用紙S等のシート状の記録体に画像を形成する画像ステーション65、中間転写ユニット60及び定着ユニット76等の画像形成手段と、画像形成手段によって画像が形成された後の記録体に対して綴じ処理等の後処理を行う後処理手段とを有する複写機100等の画像形成装置において、後処理手段として、〔態様A〕乃至〔態様F〕の何れか一つの態様の用紙処理装置200等のシート処理装置を用いる。これによれば、実施形態について説明したように、装置を大型化することなく記録体束に対して幅方向の整合を適切に行うことができる。
【符号の説明】
【0059】
2 入口ローラ対
2a 入口上ローラ
2b 入口下ローラ
3 中継ローラ対
3a 中継上ローラ
3b 中継下ローラ
4 シフトローラ対
4a シフト上ローラ
4b シフト下ローラ
5 排紙ローラ対
5a 排紙上ローラ
5b 排紙下ローラ
6s フィラー
6a 可動排紙トレイ
6b 固定排紙トレイ
6 排紙トレイ
7 エンドフェンス
8 露光装置
9 トナーボトル
10 叩きコロ
10a 叩きコロ支持部材
11 ジョガーフェンス
12 後端戻しコロ
12a コロ支持部材
12b コロ支持部材揺動軸
13 後端基準フェンス
14 ステープルユニット
15 用紙下面押圧部材
18 紙押さえ部材
20 感光体
30 帯電装置
40 クリーニング装置
50 現像装置
51 現像ローラ
60 中間転写ユニット
61 中間転写ベルト
62 一次転写ローラ
63 ベルトクリーニング装置
65 画像ステーション
66 二次転写ローラ
67 レジストローラ対
70 排紙開閉ガイド板
70a 支持部材揺動軸
76 定着ユニット
76a 加圧ローラ
76b 定着ローラ
81 給紙カセット
83 給紙ローラ
90 ステープルトレイ
100 複写機
200 用紙処理装置
300 スキャナ
L 用紙搬送路
S 用紙
S1 入口センサ
S2 中継センサ
S3 積載量センサ
S4 満杯センサ
S5 トレイ先端側センサ
S6 トレイ後端側センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】
【特許文献1】特許4141113号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を搬送する搬送手段と、
該搬送手段によって搬送された該シート材を積載する積載トレイと、
該積載トレイに積載された該シート材の幅方向を整合する幅方向整合手段と、
を有するシート処理装置において、
上記積載トレイの上面の水平に対する傾きが30[°]以下であり、
上記積載トレイに積載された上記シート材の下面に当接する凸部材を備えることを特徴とするシート処理装置。
【請求項2】
請求項1のシート処理装置において、
上記積載トレイに積載されたシート材の搬送方向を整合する搬送方向整合手段を備えることを特徴とするシート処理装置。
【請求項3】
請求項2のシート処理装置において、
上記搬送方向整合手段は、上記積載トレイ上の上記シート材の搬送方向後端が突き当たることで、該シート材の搬送方向の整合を行う後端整合フェンスと、該積載トレイ上の該シート材に対して搬送方向とは逆方向の搬送力を付与し、該シート材の後端を該後端整合フェンスに突き当てるシート材逆搬送手段と、を備えることを特徴とするシート処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のシート処理装置において、
上記凸部材は、接触する上記シート材が搬送方向に移動することによって、搬送方向下流側に倒れ込むように弾性変形する弾性部材であることを特徴とするシート処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のシート処理装置において、
上記積載トレイに積載された上記シート材の束に対して綴じ処理を行う綴じ手段を備えることを特徴とするシート処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のシート処理装置において、
上記凸部材は、上記積載トレイの上面における上記幅方向の複数箇所に配置されていることを特徴とするシート処理装置。
【請求項7】
シート状の記録体に画像を形成する画像形成手段と、
該画像形成手段によって画像が形成された後の該記録体に対して綴じ処理等の後処理を行う後処理手段とを有する画像形成装置において、
上記後処理手段として、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシート処理装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−100182(P2013−100182A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−137092(P2012−137092)
【出願日】平成24年6月18日(2012.6.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】