説明

シート排出装置及び該装置を備えた画像形成装置

【課題】 装置内部で発生した騒音を装置外部に漏れるのを抑え、排出口近辺のVOCを装置内部に吸引可能な排出装置及び該装置を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】 円柱状の排出下ローラ20の表面に設けた開口20aから、装置外部のVOCが含まれたエアを装置内部に吸引し、排出下ローラ20の内部に設けられた中空部20bを経由してフィルタ40aを通ったエアが装置外部に排出される。このとき、シャッター部材21は、装置内部側の開口20aを塞いでいるので装置内部の音を装置外部に漏れることを抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を形成したシートを排出するための、シート排出装置及び該装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機等の画像形成装置は、装置内部において画像形成された記録紙を排出口に設けた排出ローラ対によって装置外部の排出トレイに排出する。装置内部にはモータ、ギヤ等の騒音発生源が配置されている為、装置内部の騒音は、排出口と排出ローラとの間の隙間や、排出ローラ間の隙間を介して装置外部に漏れてしまっていた。騒音が装置外部に漏れないようにするために、円柱状の一対の排出ローラを隙間無く密着させるとともに、排出ローラ周辺の隙間を極力小さくすることにより、排出口の開口部分を減らし、音が装置外部に漏れることを抑える提案がされている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−336359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シート上に形成されたトナー像を熱により定着して排出する画像形成装置において、画像形成装置より排出されるシートから発生するVOCに起因するにおいによりユーザが不快に感じることがある。ここでVOCとは、Volatile Organic Compounds(揮発性有機化合物)の略語である。
【0005】
一般的には、排出トレイ上のシートから発生したVOCを含むエアは、一旦、シートを排出する排出口から装置内部に吸引され、フィルタでVOCを除去してから装置外部に排出している。しかし、従来技術を用いた画像形成装置は、排出口の開口部分を減らすことで装置内部の音が装置外部に漏れるのを防いでいるため、減少した排出口の開口部分から装置外部のVOCを含むエアを装置内部に吸引するが困難であった。
【0006】
したがって、従来技術を用いた画像形成装置では、VOCを含むエアを装置内部に吸引するために別途エアを吸い込む穴などを設ける必要があるが、穴を設けることにより装置内部の音が装置外部に漏れてしまうおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、装置内部で発生した音を装置外部に漏れるのを抑え、装置外部のVOCを含むエアを装置内部に吸引可能なシート排出装置及び該装置を備えた画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、排出口に設けられ、シートの排出方向と交差する方向において前記排出口の全域に亘って形成される円周面を有し、回転することによりシートを装置内部から装置外部に排出する一対の排出ローラと、前記排出ローラ対のうち少なくとも一方の表面に設けられた複数の開口と、前記排開口が設けられた出ローラの内部に設けられ、前記開口と連通する中空部と、前記開口から吸引したエアを、前記中空部を経由させてフィルタを通して装置外部へ排出する気流発生手段と、前記中空部の内面に沿って設けられ、前記排出ローラの回転中、前記装置内部側の前記開口を塞ぐように保持されるシャッター部材と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
排出ローラにエアを吸い込む開口を設けているので、吸引箇所として最も適した排出口から、装置外部のVOCを含むエアを吸引することができる。また、装置内部側の開口を塞ぐように保持されるシャッター部材を備えているので、吸引する開口を通じて、装置の内部と外部を連通させることがない。そのため装置内部から外部へ、開口を通じて音が漏れることを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態における複写機断面図
【図2】本発明の実施形態に係るシート排出装置の詳細図
【図3】本発明の実施形態に係るシート排出装置の詳細図
【図4】本発明の実施形態に係るシート排出装置の詳細図
【図5】本発明の実施形態に係る画像形成装置におけるコントローラブロック図
【図6】本発明の実施形態に係る画像形成装置の動作を説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した実施形態について、図1と2を参照して説明する。図1は本発明を適用した画像形成装置である複写機30の正面断面図、図3は本発明を適用したシート排出装置である。以下、図面に基づき構成を説明する。
【0012】
図1の複写機30はリーダー部32、シートPを積載した給紙部31、画像形成部24、熱定着装置25、不図示の駆動装置によって駆動される排出上ローラ13及び排出下ローラ20、及びシート冷却装置16から構成される。複写機30は、給紙部31から送り出されたシートPについて、シート検知手段42のレーザー光42aの反射光によりシートの種類を判断してから画像形成部24にシートPを搬送する。次に複写機30は、リーダー部32で読み取られた原稿像を、シートの種類に応じた像形成条件によりシートPにトナー像として転写する。そして、トナー像が転写されたシートPは、熱定着装置25によって定着され、排出上ローラ13及び排出下ローラ20によって挟持排出される。シートPは、排出される際、シート冷却装置16から吹き出されるエアによって冷却された後、排出上ローラ13及び排出下ローラ20によって挟持搬送され、排出トレイ15上に積載される。シートPを冷却する理由は、排出トレイ15上でシート同士が接着するのを防ぐと同時に、シートにカールが発生するのを防ぐためである。なおシート冷却装置16は、図3に示すように、不図示のファンによって外気B取り込み、エア吹き出し口16a〜16dからシートPにエアを吹き付けるものである。
【0013】
図2は、本発明のシート排出装置をシート排出方向下流側から見た図である。
【0014】
排出上ローラ13、及び排出下ローラ20は、排出口Oに設けられ、シートPの排出方向と交差する方向において排出口Oの全域に亘って形成される円周面によりシートPを挟持し、排出する一対の円柱状の排出ローラである。排出下ローラ20には開口20aが設けられているが、詳細は後述する。排出上ローラ13及び排出下ローラ20のシートPの排出方向と交差する方向における長さW1は、排出口Oの幅W2と略同じである。また、排出上ローラ13及び排出下ローラ20は、各々がニップした状態において、径方向寸法H1が排紙口Oの高さ方向寸法H2と略同じになるように配置されている。このように配置することで、排出口Oから外部に音が漏れることを抑えることができる。なお、排紙口Oと、排出ローラ対としての排出上ローラ13及び排出下ローラ20との間には、各ローラが回転することができるための隙間を設けている。
【0015】
図3に、本発明のシート排出装置を示す。なおAはシートPの排出方向である。
図3(a)は、シート排出装置の斜視図、図3(b)はシート排出装置の断面図である。排出下ローラ20は、外周全周に複数設けた開口20aと、中空部20bとを有している。断面C字形状のシャッター部材21は、中空部20bの内面に沿って設けられている。
【0016】
図3(b)に示すように、シャッター部材21は、複写機30の装置内部側の開口20aを塞ぎ、開放部分を複写機30の装置外部側に向けることで装置外部側の開口20aが中空部20bと連通するように構成されている。また、壁18は、複写機30の内部と外部とを隔てる壁であり、排出上ローラ13及び排出下ローラ20との隙間を極力小さくするように構成されている。
【0017】
気流発生手段である排気ファン40は、開口20aからエアを吸い込み、中空部20bから中空の軸受け部20gを経由してエアCを複写機30の装置外部に排出する。また、排気ファン40の下流側にはVOCを除去するフィルタ40aが設けられている。開口20aより吸込まれたVOCを含むエアはフィルタ40aにより除去され、複写機30の装置外部に排出される。なお排出下ローラ20外周に設けた開口20aは、吸引すべきエアの量に応じて外径サイズを適宜変更してもよい。吸引エア量が多くしたい場合は、外径サイズを大きくして、開口20aの開口面積を大きくすればよい。
【0018】
駆動手段20hは、回転軸20iに連結されたシャッター部材21を回転させて装置外部側を開放する位置と、装置内部側を開放する位置とに移動させることができる。なお、回転軸20i及び排出下ローラ軸部20fは互いに独立して回転することができる。すなわち、排出下ローラ20の回転中においても、回転軸20iとシャッター部材21を独立に回転させることができる。
【0019】
断面C字形状のシャッター部材21の開放部分を複写機30の装置外部側に向けて保持した時(図3(a)、(b)参照)、複写機30の装置外部側からエアDを吸引することができる。断面C字形状のシャッター部材21の開放部分を複写機30の装置内部側に向けて保持した時(図4(a)、(b)参照)、複写機30の装置内部側からエアEを吸引することができる。つまり、シャッター部材21は、複写機30の装置外部からエアを吸引するのか、複写機30の装置内部からエアを吸引するのか、を選択可能に構成されている。
【0020】
以上の構成により、シャッター部材21の開放部分を複写機30の装置外部側に向けた時(図3(a)、(b)参照)、排出下ローラ20の複写機30の装置外部側に向いた開口20aから、排出トレイ15上のシートPから発生するVOCを吸引することができる。しかし、シャッター部材21は、複写機30の装置内部側の開口20aを塞いでいるので、開口20aを通じて、複写機30の内部との外部が連通することがないので、複写機30の装置内部で発生した音を装置外部に漏らすことを抑えることができる。
【0021】
なおシートPから発生するVOCは、シートの種類によりその成分と濃度が大きく異なる。複写機30の使用者が気になる程度の異臭を発生するシートは比較的多い。本発明はそのような異臭のするシートから発生するVOCの回収を目的としている。なおそのようなシートの中には、定着直後の搬送中、つまり排出上ローラ13及び排出下ローラ20を通過中に大量のVOCを発生するものもあり、本発明はそのようなシートに対して特に有効である。本発明は、排出ローラ対を通過中のシートに最も近い位置、すなわちシートから発生するVOCの濃度がもっとも高い位置で、VOCを回収できるからである。
【0022】
図5は、本発明の実施形態に係る画像形成装置におけるコントローラブロック図である。
制御手段であるコントローラ26は、図示しないCPU回路部を有する。コントローラ26には、駆動手段20h、定着ファン、及び排気ファン40が接続されている。また、コントローラ26には、シート検知手段が接続されている。CPU回路部は、内部に不図示のROMを有している。ROMには、後述する図6示す制御手順に対応するプログラム等が格納されている。CPUは、このプログラムを読み出しながら各部の制御を行うようになっている。
【0023】
以下、図6のフローチャートに基づいてシャッター部材21の動作を説明する。
(S001)画像形成スタート。
(S002)図1記載のシート検知手段42により、コントローラ26がシートの種類を検知する。
(S003)コントローラ26は、シートがVOCを多量に発生する高VOCシートか、そうでないかを判定する。なお一般に表面を光沢処理した光沢シートは、高VOCシートであることが多い。光沢処理部分が熱定着装置25により熱せられた時、VOCを発生するからである。そこで本例では、シート検知手段42がシートにレーザー光42aを照射してその反射光の強さを読み取る時、反射光強さが一定以上の時に高VOCシートと判定する。なお高VOCシートか否かの判定は、ユーザ自身が行って判定結果を複写機30に入力するのでも良い。
(S004)高VOCシートと判定した場合、コントローラ26は駆動手段20hを制御して、断面C字形状のシャッター部材21の開放部分を、排出トレイ15側に向けて保持する(図3(b)参照)。このとき排気ファン40も動作する。
(S005)コントローラ26は、不図示の定着ファンの回転数を上げる。シート冷却装置16から放出された冷却風を回収するためである。
(S006)コントローラ26が画像形成動作終了と判断する場合は、一定時間、排気ファン40を動作させて残余のVOCを回収した後、動作終了となる。終了してない場合は再びシート検知S002に戻る。
(S007)コントローラ26が、S003で高VOCシートでないと判定した場合は、駆動手段20hを制御して、断面C字形状のシャッター部材21の開放部分を、複写機30の装置内部側に向ける(図4(b)参照)。そして、排気ファン40も動作する。
【0024】
以上の構成、動作の本実施形態によれば、シートの種類に応じて、排出下ローラ20が吸引する方向を選択できるメリットがある。方向を選択することにより、当該方向からの吸引量を増やすことができる。なお本例ではシート種類に応じてシャッター部材21を制御しているが、シートのトナー載り量を制御要因に加えて、制御を行っても良い。トナーのにおいをユーザが気にする場合は、排出トレイからのVOC吸引を行うと、ユーザの快適性を向上させることができる。
【0025】
なお、本実施の形態において、吸引機構を排出下ローラに設けた構成について説明したが、この吸引機構は排紙上ローラにも適用可能であり、VOC発生源、VOCの濃度、量等に対応して上下の排紙ローラのうち少なくとも一方に設けることによって効果を奏する。
【符号の説明】
【0026】
13 排出上ローラ
15 排出トレイ
20 排出下ローラ
20a 開口
20b 中空部
21 シャッター部材
20h 駆動手段
40 排気ファン
40a フィルタ
O 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出口に設けられ、シートの排出方向と交差する方向において、前記排出口の全域に亘って形成される円周面を有し、回転することによりシートを装置内部から装置外部に排出する一対の排出ローラと、
前記排出ローラ対のうち少なくとも一方の表面に設けられた複数の開口と、
前記開口が設けられた排出ローラの内部に設けられ、前記開口と連通する中空部と、
前記開口から吸引したエアを、前記中空部を経由させてフィルタを通して装置外部へ排出する気流発生手段と、
前記中空部の内面に沿って設けられ、前記排出ローラの回転中、前記装置内部側の前記開口を塞ぎ、前記装置外部側を開放するように保持されるシャッター部材と、
を備えたことを特徴とするシート排出装置。
【請求項2】
前記シャッター部材を、前記中空部の内面に沿って回転させる駆動手段を備え、
前記駆動手段は、前記シャッター部材を、前記装置内部側の前記開口を塞ぎ、前記装置外部側を開放する位置と、装置外部側の前記開口を塞ぎ、前記装置内部側を開放する位置とに移動可能であることを特徴とする請求項1に記載のシート排出装置。
【請求項3】
シートに画像を形成する画像形成手段と、
画像を形成されたシートを排出する請求項1又は2に記載のシート排出装置と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−100062(P2011−100062A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256235(P2009−256235)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】